2007年7月 8日 (日)

【入門】株式譲渡自由の原則(4)

ブルドックやら、司法試験ネタで、中断していた株式譲渡自由の原則の続きを
やりましょう。

株式譲渡自由の原則は、株主の投下資本回収手段を確保するために重要な原則
ですが
 「法律による制限」
 「定款による制限」
の2種類の制限があるというお話をしました。

今日は、法律による制限について、お話しします。

法律によって株式譲渡自由の原則が制限される場合を、さらに2つに分類する

(1)株券発行前の譲渡に対する制限
(2)会社又は子会社が譲渡・取得の主体となる場合の制限
に分けられます。

(1)株券発行前の譲渡に対する制限

 最初に「株式」と「株券」を区別することからはじめましょう。

「株式」というのは、株主が会社に対して持っている「権利」のことであり、
目に見えないもののです。

 「株券」というのは、株式という権利を流通させるための有価証券(=紙)
です。
 株券は、すべての会社について発行されるものではなく、株式会社は、定款
で「株券」を発行するかどうかを決めることができます。

 そのため、株式という権利を譲渡する方法としては
  ① 定款に「株券」を発行する旨の定めがある場合
       ・・・契約+株券の交付(128条1項)
    ②その定めがない場合
         ・・・契約のみ(ただし、株主名簿の名義書換が第三者対抗要
    件)
という2つのパターンがあります。

 この要件だけを見ると、株券を発行する会社の株式の方が、株券の交付が必
要な分だけ、譲渡がしにくいようにも見えますが、第三者対抗要件の具備まで
含めて考えると、
    株主名簿の名義書換をしなくても、株券の交付だけで第三者対抗要件が具
    備できる
いう点で
  株券発行会社の株式の方が流通させやすい
ということができます。

 しかも、株券発行会社の株式ならば、無権利者と株式売買契約をしても、善
意取得できますから、株式が欲しい人にとっては
  株券の交付さえ受けていれば、安心して株式を取得できる
ということができます。

以上の理解を前提に、株式譲渡自由の原則の例外と言われる128条2項を見
てみると、

「株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。」

と規定されています。

 先ほど説明したように、株券発行会社の株式は、株券の交付によって、権利
移転が生じますから、株券の発行前に株式を譲渡しようとしても
   株券の交付ができません
から、本来、権利移転の効力は生じないはずです。

 それにも、かかわらず、なぜ128条2項のような規定が置かれているので
しょうか。

 この点について、反対説は
 
 株券は「有因証券」であり、株券を発行しなくても、株式はすでに成立して
いる。
 そのため、株券の発行前は、本来、意思表示によって、株式を譲渡すること
ができるはずである。
 しかし、株券発行前の譲渡を認めると、株券を渡す相手がどんどん変わって
しまうから、事務処理が大変である。
 そこで、128条2項は、会社の株券発行事務の渋滞を避けるために、会社
に対する対抗要件を定めたものにすぎない。

ということを考えているようです。

 しかし、この反対説は、次のような問題点をはらんでいます。
 
(1)128条1項は、「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券
を交付しなければ、その効力を生じない。」と規定しているが、同項は、条文
上、株券の発行の前後を問わず、適用される。
 とすると、「株券の発行前は、意思表示によって株式の譲渡ができる」とい
う前提が間違っている。
(2)新株予約権証券や社債券も有因証券であるが、128条2項のような規
定はない。その考え方に立つと、新株予約権証券や、社債券が発行される前に
、意思表示でどんどん譲渡していいことになってしまう。
(3)反対説は「第三者対抗要件」をどう考えるか不明である。論理的には、
株券発行前の株式を指名債権ととらえ、確定日付ある証書による通知又は承諾
とすることになろうが、そうすると、株券の発行前の譲受人と発行後の譲受人
が存在する場合の対抗関係の処理がよく分からなくなる。

 (3)は、わかりにくいので、例をあげて説明しましょう。

 株式会社正直法務が、松真さんに新株を発行しましたが、株券の発行前に松
真さんは、湯水さんに株式を譲渡し、正直法務に対し、確定日付ある通知をし
たとします。
 正直法務は、128条2項があるので、そんな通知を無視して、松真さんに
株券を交付したところ、松真さんは、法曹川さんに、その株券を譲渡しました
。法曹川さんは、松真さんが湯水さんに株券発行前に譲渡したことは知ってい
ましたが、確定日付ある通知をしたことは知りませんでした。法曹川さんは、
「株券発行前だから譲渡は無効なはずだ」と思っていたのです。

 以上の事例で、仮に、株券発行前に譲り受けた湯水さんが、法曹川さんに勝
つということになると
        法曹川さんは、株券を譲り受ける前に、正直法務に、自分に優先
    する譲受人がいるかどうかを確認しなければならない
というルールを採用したことになってしまいます。

 もし、そんなルールになると、株券を譲り受ける人は、皆、その確認をしな
ければならなくなり、「株券の交付を受ければ、安心して株式を取得すること
ができる」という株券制度の目的を達成することができなくなってしまいます

 他方、悪意の法曹川さんが勝つというルールだとすれば、株券発行前の湯水
さんは、第三者対抗要件を備える方法がないということになりますが、これで
は、「128条2項は、対会社対抗要件の問題にすぎない」という反対説の前
提と矛盾します。だって、128条2項は、松真さんと湯水さんとの間で第三
者対抗要件を備える方法がないという法的効果も導いていることになりますか
ら。

ということで、どうも、株券発行前の株式の譲渡は
   対会社対抗要件の問題ではなく、
   権利移転の効力の問題
ととらえる方が合理的だと思います(条文も「その効力を生じない」となって
います)。つまり、128条2項は、1項から導かれる効果を注意的に規定し
たものと考えるわけです。

ただし、株券発行会社が、株主が株券の発行請求をしたにもかかわらず、不当
に株券を発行しなかった場合には、会社は、信義則上、株券の交付が欠如して
いることを理由に株式の譲渡の効力を否定することはできないと考えるべきで
しょう。

なお、以上の説明から、よくよく考えてみると、128条2項は
 株式譲渡自由の原則の「例外」
というのは適切ではないと思いませんか?

 手形を譲渡するときに、手形の交付が必要なことを、譲渡の「制限」とは言
わないのと同じように、128条2項は、譲渡自体を制限していないので、本
当は、「例外」というのは、不適切なのだと思います。

しかし、伝統的に「例外」に分類されているので、ここでも、一応、「例外」
扱いしてきます。

(2)会社又は子会社が譲渡・取得の主体となる場合の制限

 会社又は子会社が譲渡・取得の主体となる場合の制限は、

a 会社又は子会社が取得する場合(買い手)
b 会社が自己株式を譲渡する場合(売り手)
 (子会社が親会社株式を譲渡するのは、制限がありません)

に区別できます。

 aは、資本の空洞化を防止する観点から課される制限
 bは、会社が新株発行手続きを潜脱しないようにするための制限
です。

aも,bも、会社法において、非常に重要なところなのですが、他で詳しく説明
しますから、ここでは、説明を省略させてもらいます。

では、また。

(質問コーナー)
Q1
防衛策は「理論的には抑止力にならない気がするのですが。」という私の質問
に対して、
「①時間稼ぎにはなりますし、②8割の株主が防衛策に賛成したとなると、
TOBをかけても売り手がいないのではないかと思わせる政治的効果があります

とお答え頂きありがとうございます。

ただ、①についてはあまりに費用対効果が悪すぎますし(防衛策の目的が「交
渉のための時間稼ぎ」という点にあるのはよく言われることですが、発動効果
も「時間稼ぎ」の効果しかないという防衛策では、買収者との交渉材料にすら
使えない気がします。その割には、コストがかかりすぎると思います。)、②
については、むしろ防衛策発動の必要性を失わせる理由になるのではないかと
思います。そういう意味では、今回のブルドックの防衛策自体の効果は、「導
入のセレモニーを通じて、スティール死ね死ねモードを盛り上げた」という効
果があったにすぎないように感じるのですが、いかがでしょうか。

また、それだけの効果しかない防衛策であれば、そもそもスティールの訴えに
は保全の必要性がないことが明らかのような気がします。

投稿 paripasu | 2007年7月 1日 (日) 21時18分
A1
防衛策は、多分に政治的効果をねらって導入発動するものですから、費用対効
果は、あまり気にならないのでしょう。

Q2
早速質問ですが,ロー生はとにかく答案を書く量が少ないので,たくさん書け
とおっしゃっていたと思います。
これは,書くことが分からないような純粋未修者にも共通するのでしょうか。
参考答案の丸写しでもいいから書いたほうがいいのでしょうか。

また,葉玉先生が純粋未修者と仮定して,先生なら3年間を通じてどのような
自主ゼミ(生徒のみで組織)を組んで,どのように活動していきますか?具体
的にお答えいただければ幸いです。
お手数をおかけいたしますが,ご教授の程,よろしくお願いいたします。

投稿 絶対合格! | 2007年7月 2日 (月) 13時29分
A2
純粋未習であろうと、書いてみることです。
同じ問題を合格するまでに3回も4回も書きましょう。
見ながら書く丸写しは、駄目です。
まず、参考答案を読んで、その後、何も見ずに書くのはOKです。
自分で考えながら、書きましょう。

なお、3年間のカリキュラムをここで書くのは難しいので、また今度。

Q3
株式交換完全子会社に対する株式買取請求について、書き込ませていただいた
ものです。

丁寧にご回答していただき、ありがとうございました。

私の理解では、以下の通りたったのですが、よくわからないので再度確認させ
てください。

反対株主⇔株式交換完全子会社:
反対株主には、株式を引き渡す義務+対価をもらう権利(協議or裁判所で価格
決定)が生じる。要するに、株式は一瞬自己株式になる。

株式交換完全子会社⇔株式交換完全親株式会社:
株式交換完全子会社が自己株式(反対株主から取得した株式)を保有している
ので、株式交換完全子会社を株主として、株式交換完全親会社の株式(金銭等
)が割り当てられる。要するに、上記自己株式は、親会社に移転するとともに
、株式交換完全親会社の株式が株式交換完全子会社に割り当てられる(株式交
換も効力発生しているので。また、こう考えないと、当該株式交換により完全
親会社が発行すべき株式の数が変わってくる。)。

なので、反対株主は、「原則としては代金をもらう。786条3項の撤回をしたと
きは、代金を返して(or代金請求権を失って)、株式交換完全子会社が保有す
る親会社株式をもらう。」と考えております。

投稿 ぞう | 2007年7月 2日 (月) 15時26分
A3
一番、最後の「なので」と言うところが、問題なのだと思います。
つまり、株主は、買取請求をすることで、完全子会社との間で、完全子会社株
式の売買契約を締結したのと同じ効果を生じます。
 これを撤回するということは、完全子会社は、本来、株主に「完全子会社株
式」を返還すべき義務を負うということです。
 普通に考えれば、完全子会社は、完全子会社株式を返還することが履行不能
になっていますので、これが金銭返還義務に転化することになると考えるので
はないでしょうか。
 ぞうさんは、ここで、で「親会社株式」を返還する義務を負うと考えている
のですが、なぜ、そこで「親会社株式」になるのでしょうか?

Q4
見せ金による払い込みは無効で、これが会社の設立段階では、設立無効原因に
なります。
では、これが募集株式の発行の場合、株式会社の成立後における株式の発行
(828条1項2号)の無効原因になりうるでしょうか。
旧商法下の判例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrch
Kbn=02&hanreiNo=25537&hanreiKbn=01
の(四)は、会社法の下でどう考えれば宜しいでしょうか。
投稿 去年商法C | 2007年7月 3日 (火) 01時06分
A4
その判例自体を変更する必要はないと思います。

Q5
葉玉先生。
初めまして。
僕は司法試験ではないのですが、弁理士試験の勉強をしています。
葉玉先生の勉強法を参考に初心者の僕は、刺激を受けています。
基本的な質問で、申し訳ないですが
法律の勉強の仕方・条文を読む上で注意すべきこと
是非アドバイス頂ければと思いコメント書きました。
是非アドバイス宜しくお願いいたします。
投稿 ガンバ | 2007年7月 3日 (火) 12時16分
A5
会社法100問の最後の方にある勉強の仕方を読んでください。
詳しく書いています。

Q6
会社法の条文について質問させてください。
「支配人の競業の禁止」(会社法12条)については、
「支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為〔ニ 自己又は第三
者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。〕をしてはならない。

と規定されており、他方、取締役の「競業(および利益相反取引)の制限」(
会社法356条)については、
「取締役は、次に掲げる場合〔一 取締役が自己又は第三者のために株式会社
の事業の部類に属する取引をしようとするとき。〕には、株主総会において、
当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」
と規定されており、その体裁が異なっているように思います。

これには理由があるのでしょうか?

両者は対偶関係(許可がない→競業取引ダメ⇔競業取引をする→許可がいる)
にあり、実質的には同じことを言ってるような気もするのですが、支配人の場
合は競業取引は原則ダメといっているのに、取締役の場合はそうはいっていな
いので、取締役の場合は、少なくとも会社法上は「競業<避止>義務」なるも
のは観念できない(そのため、356条も「禁止」ではなく「制限」としている
)のかと思っていたのですが、100問をみると、普通に「取締役の競業避止
義務」という言葉が使われており、どうもこの理解は誤っている気がします。

長くなりましたが、
①支配人の競業の禁止と取締役の競業の制限の条文の体裁が異なる理由
②取締役に競業「避止」義務はあるのか
③競業「避止」義務違反があるとすると、その違反行為に対して、会社自身が
、直接会社法上の条文を根拠として差止請求をすることができるのか(360条
、385条による差止請求を除く)
という点について、よろしくご教授願います。

投稿 さる | 2007年7月 4日 (水) 05時56分
A6
①使用人と役員の違いを踏まえた、伝統的な表現の仕方の違いで、実質はそん
なに変わらないと思います。
②取締役も、株式会社の事前承認を得る必要があるので、避止義務はあるので
しょう。
③直接の差し止めというのは、ちょっと根拠が弱いかな。委任契約の内容にな
っていると考えれば、契約上の義務履行として差し止めはできると思います。

Q7
失念株がらみで、ご教授ください。
剰余金配当について、当事者意思が不明確な場合、民法575条1項を類推す
る、というくだりです。
民法の知識で言えば、575の趣旨は果実と利息と管理費などの簡易決済のた
め認められた規定であり、バランスが崩れたら、すなわち金払った場合には5
75条い1項は適用されず、果実は買い主の物になると思います。
とすれば、同条類推ならば、失念株主が譲渡人に支払いを済ませていれば配当
金は失念株主のものになると考えるのが素直と思いますが、如何でしょうか?
(そう書いても間違いではないでしょうか?)

投稿 択一通りました | 2007年7月 4日 (水) 22時36分
A7
それも、一つの考えです。

Q8
種類株式発行会社における会社法188条3項及び191条に関する質問です。
ご教授の程お願い申し上げます。

①普通株式と、配当優先株式(議決権なし)を発行している種類株式発行会社
(公開会社)において、会社法第115条の措置のために普通株式のみ株式分割
(1株→2株)と同時に単元株式数設定(2株を1単元)の効力発生するよう
第191条に基づき取締役会で定款変更決議をし、配当優先株式についてはなん
ら変更を加えなかった場合、普通株式についての単元株式数設定による定款変
更の効力は発生しないのでしょうか。
会社法第188条3項では単元株式数は全ての種類株式に設定しなければならない
とされています。

②①の説例で、第188条3項の文面どおり優先株式についても単元株式数を設定
する必要があるならば、1単元を1株とせざるを得ません。(商法時代の法務
省民事局商事課の商業登記事務取扱のQ&Aに同様の解釈があります)
普通株式については①のとおり、株式分割と同時に単元株式数を設定し、優先
株式については株式分割をせずに1単元を1株とする単元株式数を設定する場
合は、191条の適用はあるのでしょうか。
191条は株主にとって明らかに不利益が発生しない定款変更にまで、株主総会
の特別決議を求める必要がないと理解しているのですが、そうであれば本件説
例の場合も取締役会の決議をもって定款変更は可能と考えますがいかがでしょ
うか。
投稿 seiquro | 2007年7月 5日 (木) 13時48分
A8
なかなか悩ましい問題ですね。
①は、形式的に考えると、各種類について単元株式数を定めていないとすると
、191条の要件を満たさないと考えるんでしょうね。

なお、方法とししては、優先株式について、1:1.00000000000
001の株式の分割をすることが考えられますが、そんな姑息なことをするく
らいなら、正面から、分割も単元株式数の設定もなしでいいと考えたいところ
ですよね。でも、なかなか難しいです。

Q9
株式会社の発起設立において、設立時取締役の報酬を発起人会ないしは発起人
全員の同意で決めることはできませんか?
投稿 中小企業の味方 | 2007年7月 6日 (金) 00時09分
A9
定款で決めればできます。

Q10
最近会社法の勉強をはじめたばかりのものです。会社法199条4項や200条4項が
具体的に適用される場面がイメージできません。会社法の本は高いので本屋で
立ち読みしますがこの点を具体的に記述している本はないようです。第三者割
り当てにおいて種類株主総会の特別決議がいる場合とはどのような場面なのか
恐れ入りますがご教示ください。(できれば非公開会社と公開会社の場合の両
方についてくわしくおねがいします。)当該種類の株式は譲渡制限株式のこと
なのでしょうか。
投稿 初心者 | 2007年7月 6日 (金) 11時48分
A10
会社法の勉強をするのなら、高くても会社法の本を買わないといけないと思い
ます。
とりあえず、種類株主総会を詳しく勉強するより、もっと別のことを勉強しま
しょう。

Q11
監査委員の兼任禁止規定について教えてください。「当該会社の執行役又は業
務執行取締役」と監査委員の兼任が禁止されていますが当該会社の業務執行取
締役つまり委員会設置会社の業務執行取締役とはどういう意味なのでしょうか
。原則的に委員会設置会社の取締役は業務執行できないので取締役が執行役を
兼ねている場合のことですか。ご教示ください。よろしくお願いいたします。

投稿 初心者 | 2007年7月 7日 (土) 23時45分
A11
委員会設置会社の業務執行取締役は、取締役と執行役を兼ねている場合や、取
締役が違法に業務執行をした場合等です。

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2007年6月 8日 (金)

【入門】株式譲渡自由の原則(2)

 新司法試験の択一試験(足きり)の発表がありました。
「去年あれほど言ったのに、東大は、あいかわらず択一が強くないなあ。受け控えも結構いるし」とか
「早稲田は知り合いが多いから、もう10歩くらい、がんばってほしい」とか
「九大、大丈夫か。福大はがんばってるけど、ちょっと受け控えが多いな」
等と、自分に係わり合いのある大学について、いろいろ感想はありますが、大事なのは最終合格の分析なので、論文発表後に詳しく分析します。

次に、ポップンさんに紹介していただきましたが、昨日から、日経ビジネスオンラインというところで、勉強術の連載を始めることになりました。題して
「葉玉匡美の脱時空勉強術」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070524/125480/
 毎週木曜日に更新で、全12回の予定です。
 
 このブログでも、司法試験の勉強の仕方についてお話したことがありますが、今回は、ビジネスマン向けという依頼があったので、忙しいビジネスマンの顔を思い浮かべながら、書いてます。
 
 司法試験に特化したノウハウは紹介しませんが、どんな勉強もやり方は同じですから、受験生にも役に立つでしょう。無料登録をすれば、誰でも見られるはずなので、興味ある人は覗いてください。
 ちなみに、この連載、読者がコメントを書く欄があるのが特徴です。
 私がグータラ人間だと書いたら、何人かの人が「グータラ」観について語っていて、これが結構、面白い。
 私は、グータラで、面倒くさがりで、あまり人の言うことを聴きたくない人間ですが、いろいろな仕事が身の上に降りかかってきて、24時間ダラーッとしていられるような環境にありません。
 そこで、仕事を無視して文句を言われても、気にもとめずに自分勝手にダラーッとできるい人は、強いグータラなんですが、小心者の私は、そういうことができませんし、第一、文句を言われたら、ゆっくりした気分になれません。
 だから、私のグータラ感は、「やらなきゃいけないことを早めにこなして、他人に干渉されない時間を作るグータラ」。多忙グータラです。
 そういう人向けの連載なので、キッチリしたのが好きな人と、強いグータラの人には向かない勉強術かもしれません。

 さて、話題を変えて、株式譲渡自由の原則の続きをお話しましょう。
 
 前回は、株式譲渡自由の原則は
   譲渡禁止特約を許さない
という点で、民法の債権譲渡自由の原則よりも譲渡性が強化されていて
   譲渡制限株式ですら、株式会社の承認なく、有効に譲渡することができる
   (会社に譲渡を対抗することができないだけ)
というお話をしました。
   
 なぜ、そのように譲渡性が強化されているか、一言でいえば
   株主にとって、株式の譲渡が唯一の投下資本回収手段だから
ということになります。

 株主が、会社に出資したり、株式を購入したりするのは、究極的には、
   お金儲け
をするためです。
 例えば、裁判官の松真さん(仮名)が裁判所を退職し、退職金700万円を出資して、300万円を出資した湯水さんと一緒に、株式会社正直法務を設立したとしましょう(株式を1000株発行)。湯水さんは代表取締役として働き、松真さんは,単に株主としてだけ、会社にかかわっています。

 株主である松真さんは、通常は、1年に1回か2回、交付される
  配当
を楽しみにするでしょうが、湯水さんが常軌を逸するほど商売がうまいか、よほど手を汚すような商売をしない限り、短期間に配当だけで、松真さんに700万円相当額の元をとらせるのは難しいでしょう。

 もちろん、長年配当が続けば、松真さんは、700万円を超える配当を受け取ることができるでしょうが、1年あたりの配当額が、仮に出資額の5%(35万円)だとしても、松真さんは、「配当は、俺のタバコ代だな」という程度にしか考えないのでしょうか。

 松真さんとしては、退職金700万を元手にして、「10年後には、子供が私立の医学部に行くだろうから、そのときに入学金と授業料をまかなえるくらいのお金に換金できればいいな」などと夢を膨らませているでしょう。

つまり、株主は、通常、配当を受け取るだけではなく、いつか株式を手放して、お金に換えることを予定しているのです。このように投資により取得した株式をお金に換えることを、
 「投下資本の回収」
と呼んでいます。

この投下資本の回収手段は、理論的には、①持分の払戻しと、②株式の譲渡の2種類の方法があります。

1 持分の払戻し
1つ目は、退社による持分の払戻し。
たとえば、松真さんが700株を「消滅」させて株主ではなくなる代わりに、会社からお金をもらう方法ですが、この持分の払戻しは
  株式会社では、禁止
されています(ちなみに、持分会社では許されています)。

 通常、退社というのは、会社の「一部解散」というイメージで捉えられています。
 つまり、社員が全員社員でなくなるのが「解散」で、社員の一部が社員でなくなるのが、「退社」だから、一部解散。
 それで、解散時に社員に残余財産を分配するのと同じように、社員が退社するときに、その持分相当分の会社財産を分配するべきだという発想になり、それを「持分の払戻し」と呼んでいるのです。ですから、持分の払戻しは、いわば、共有物の分割みたいなものです。

 このように退社を「一部解散」というイメージで捉えてみると、
「なぜ、株式会社では、株式を消滅させて払戻しをするのを禁止するのか」
という理由が分かります。

 本来、会社が解散するときには、債権者が会社財産からまず支払いを受け、その残りの財産を社員で分配するのが原則です(このことを、社員は債権者に劣後するといいます)。このルールは、株式会社でも持分会社でも同じです(664条を見てください)。

 このように、会社を解散するときは、債権者への支払いが先なのだから、社員が退社する場合(つまり一部解散する場合)には
  「債権者との間の清算がまだ済んでいないから、お金はまだ返せないよ。」
というのが本筋なのです。

 しかし、会社が存続している限り、自分の出資したお金が戻ってこないとなると、出資をする方はたまったものではありません。

そこで、持分会社では
  債権者が、退社した社員に対して、退社前の責任を追及することができる(612条)
というルールを採用するかわりに、持分の払戻しを認めています(なお、合同会社のことを話すと話が複雑になるので、後日、詳しくお話します)。

これに対して、株式会社は、出資者のリスクを限定するために
  株主は、間接有限責任しか負わない
ということにしていますから、持分の払戻し後の株主の責任を追及させるわけにはいきません。

 それで、株式会社では、持分の払戻しは、原則どおり、禁止されているのです。

 ちなみに、株式の消却は、社員の地位を消滅させるので、退社に分類されます。しかし、会社法では、自己株式の消却しか認められていないので、株主が消却によって財産を受け取ることはなく、持分の払戻しに相当するものはありません。

2 株式の譲渡
 1で述べたように、株式会社では、持分の払戻しが禁止されているため、株主が投下資本を回収するためには、
   株式を他人に売って換金する
とことになります。
 たとえば、松真さんのお子さんが医学部に進学したとき、入学金が1000万円必要になったとしましょう。松真さんは、これまで貰った配当を全てタバコの煙に変えてしまっていたので、お金がぜんぜんありません。では、どうするか。松真さんは、湯水さんのところにいき
  「出資金1000万円で始めた正直法務も、10年で純資産が2000万円に増えた。湯水さん、俺の株式を1400万円で買ってもらえないだろうか」
と頼みにいけばいいのです。

 湯水さんは、松真さんの株式を買う義務はありませんし、値段は必ずしも、純資産ベースで決める必要はなく、税金の問題を抜きにすれば、交渉次第でいくらに決めても構いません。
 
 しかし、代表取締役の湯水さんが
 「ここで松真さんからの頼みを断ったりすると、松真さんは、ヤメ検弁護士の法曹川さんのところに株式の買取りを頼みにいきそうだな。法曹川さんが株主になると、僕が経営に失敗したとき「死ね!」とか言いそうだし、ここは松真さんの言い値で買っておくか・・・」
等と考えて、松真さんと株式の売買契約を結ぶかもしれません。
 もしそうなれば、一件落着。
 松真さんは、700万円で取得した株式を1400万で売って無事投下資本回収を完了したことになります。

 この例からもわかるとおり、
  株式の譲渡は、株主にとって唯一の投下資本回収手段
であり、もし、株式の譲渡ができなくなってしまうと、松真さんは、せっかく退職金をはたいて出資した株式を現金に換える方法がなくなってしまいます。
 だからこそ、会社法は、株式譲渡自由の原則を採用する必要があるのです(必要性)。

 しかも、株式会社では、所有と経営が分離していて、株主が必ずしも経営にタッチしていません。また、定款の変更等重要な事項も「多数決」で決めることになっていて、株主全員の同意が必要な事項は、ごく例外的なものにすぎません。

 先ほどの例でも、松真さんは、出資しているだけで、経営にはタッチしていませんでしたから、松真さんが株主でなくなっても、正直法務の経営には、何の影響もありません。
 すなわち、所有と経営の分離は、株式譲渡自由の原則を認める前提となっているのです(許容性)。
 
 この必要性と許容性を双方考慮にいれて、会社法の株式譲渡自由の原則ができあがっているのです。
 
  最後に2点だけ、注意点を。
(1) 株式譲渡自由の原則は、株主が、株式会社の承認なく、会社が株式を買い取ってくれることを保障しているわけではありません。 
 松真さんが、いくら投下資本を回収しようとしても、湯水さん、法曹川さんなど他の人が誰も買ってくれなかったら、投下資本を回収することはできません。
 初心者の中には、出資したお金が必ず回収できると勘違いする人がいますので、念のため説明しました。最悪の場合、会社が解散するまで、回収できない可能性もあるのです。

(2) 株式の交付を受けることができる権利である新株予約権にも譲渡自由の原則があります(254条)。しかし、新株予約権者は債権者であって株主ではないので、同原則は、株式譲渡自由の原則とは趣旨が異なりますし、譲渡制限についてのルールも違います。
 また、社債には、127条や254条のような規定はなく、譲渡禁止特約を付すことができます。
 このように会社法上の権利であっても、権利の性質によって譲渡性が異なることは、意識しておいてください。

次回は、株式譲渡自由の原則の例外についてお話します。

(質問コーナー)
Q1
「譲渡禁止特約に違反する債権譲渡の効力については、民法でも学説が分かれていますが、悪意の債務者との関係では譲渡は無効であると考えるのが判例通説です。」とありますが、
「悪意の第三者」または「悪意の譲受人」の誤りではないでしょうか
投稿 | 2007年6月 6日 (水) 19時47分
A1
おっしゃるとおり。ケアレスミスです。訂正しました。
ありがとうございます。

Q2
反対株主の株式買取請求における公告について質問させてください。
 785条4項および797条4項は 通知を公告に代えることができる例外要件を定めています。そして各条1号は 公開会社では会社の承認なく株式の譲渡ができるので、株主名簿に記載されたものに通知するよりも公告で株主名簿に記載されていない現在の株主に公告したほうが適切な場合があることを趣旨とすると理解しています。
 まだ各条2号は すでに株主総会の召集通知で株主に通知しているので再度通知する必要性が少ないことを趣旨とすると理解しています。
 この趣旨は新設合併等の手続きにも当てはまると考えますが、
806条4項は無条件に通知を公告に代えることができると定めています。
 この理由を教えてくだされば幸いです。
投稿 maru | 2007年6月 7日 (木) 00時08分
A2
承認決議を経ていますから。

Q3
弁護士の仕事について質問です。
学校の弁護士の先生が「弁護士の仕事は当事者のかわりにするケンカする喧嘩屋だよ」よくおっしゃられます。
そういう部分もあるのでしょうか?
投稿 yosh | 2007年6月 7日 (木) 13時35分
A3
喧嘩の定義によりますが、喧嘩したり、なだめたり、すかしたり、一緒に泣いたり、笑ったりする仕事です。

Q4
葉玉先生、会社法施行規則24条についてご教授ください。
当社の株主が所有する譲渡制限株式について、差押債権者が譲渡命令の申立(民事執行法161条)を行ったため、裁判所の譲渡命令が発令されそうです。
この裁判所の発令する「譲渡命令」は会社法施行規則24条1項2号にいうところの「確定判決と同一の効力を有するもの」と理解してよろしいでしょうか?
実務的な質問で恐縮ですがよろしくお願いいたします。
投稿 hi | 2007年6月 7日 (木) 21時02分

A4
譲渡命令そのものは、確定判決と同一の効力を有するものには、該当しないと思います。
ただ、設問の前提となっている事実関係や裁判所の命令の内容によっては、名義書換えに応じなければならない場合もあると思いますので、弁護士に相談されたほうがよいでしょう。

Q5
非公開会社(公開会社でない株式会社)で法務を担当している者ですが、
株式交換の株式交換完全親会社について質問させていただきます。
株式交換完全親会社は株式交換契約を締結する必要がありますが(767条)、
この契約は株式交換の効力発生日までに締結すればよいのでしょうか(吸収
合併契約等の内容の事前開示(794条)は締結前の契約でも可と考えてよろ
しいでしょうか)。
また、株式交換に関する取締役会決議が行われる前(総会召集や契約締結
等について何ら決議していない状態)で事前開示(794条)を行うことは可能
でしょうか(代表取締役の権限で開示)。
不躾かつ不自然な取り扱いについての質問ではありますが、よろしくご教授
ください。
投稿 OGT | 2007年6月 8日 (金) 00時42分
A5
株式交換契約前に事前開示をすることはできません。

Q6
種類株主総会について疑問に思ったことがあって質問です。
1 全部取得条項の付加する定款変更(111Ⅱ) の例なんですが知ってるのは100%減資だけなんですが、そのほかでどんな利用方法があるんですか??
2 それと、その場合で株主総会の決議があっても111条でこういった規定がなされているので種類株主は自己の不利益になるような場合には種類株主総会の決議で賛成しなければいい、という解釈であってますよね??
投稿 ksuke | 2007年6月 8日 (金) 00時49分
A6
1 全部取得条項は、少数株主の追い出しや取得条項付株式への転換のため等に使われます。
2 そのとおりです。

Q7
葉玉先生、ライツプラン事前警告型について、
財産権を侵害しないライツプランといってもなかなか難しい新株予約権の設計だと思います。
先生も「政治的な道具」とおっしゃっています。確かに米国の事例を見てても、ライツプランの償却や取り消しのプロクシーファイトが繰り広げられます。
しかし、普通決議のみで導入したライツプランで、差別的な予約権の付与が「不公正発行」として差止められることがある程度想定できれば、買収者側も「やれるものならやってみろ」ぐらいの形でドンドンTOBを仕掛ける可能性も考えられ、政治的道具の役割を果たさず、単なるお飾りと化さないか心配なのですが?
なぜ、ストラテジックでシナジーの見込める買収者(買収者側の弁護士)は、イケイケにならず、躊躇するのでしょう?(楽天とか)
ある弁護士には発動しない前提で導入するんです、といってましたが、絶対に発射しない核ミサイルだと解れば、抑止力としてすこし疑問を感じてしまいます。
投稿 katsu | 2007年6月 8日 (金) 02時23分
A7
買収者にも世間体があります。
株主総会でルールを決めたのに、そのルールを守らないと悪評が立ちます。
それが、買収者の商売に悪影響を及ぼすかもしれないし、TOBをかけたときに株主が売却を拒む理由になるかもしれない。
それが政治的な道具としての事前警告です。

Q8
定義規定の書き方についての質問です。
以前からすごく気になっていたのですが,定義規定(2条)の書き方には,2種類あります。一つは,「この法律において『破産手続』とは,XXX」という書き方です(破産法,独禁法など)。もう一つは,「一 会社 XXX」という書き方です(会社法,民事再生法,租税法など)。後者のほうが文字数が少なく簡明だと思うので,あえて前者の書き方をする理由が分からないし,新しい会社法が後者だったので,最近の法律は後者で書かれていると思っていました。しかし,一番新しいはずの新信託法は前者で書かれているので,なぜ使い分けるのかがよく分からなくなりました。初学者の私からすれば,どちらかに統一したほうがよいように思えるのですが,立法技術の慣習上,どのような理由によって使い分けているのでしょうか。
瑣末な質問で恐縮ですが,毎日条文を読んでいる学習者としてはとても気になるところです。
投稿 tom | 2007年6月 8日 (金) 17時58分
A8
趣味です。
が、一般的には定義すべき後が少なければ前者、多ければ後者かな。

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2007年6月 5日 (火)

【入門】株式譲渡自由の原則(1)

 金曜日は、ビジネスブレイクスルー大学院大学(http://www.ohmae.ac.jp/cls/)でセミナーの収録をしてきました。 

 ここは、日本で唯一文部科学省が認可した、インターネットによる経営大学院で、学長は大前研一さんです。これだけでも、ユニークな学校だということが分かると思いますが、ビジネスブレイクスルーでは、弁護士や企業法務に従事している方等を対象に企業法務セミナーをインターネットで開催していて、その名も「サイバー・ロースクール」(ちなみに、法科大学院ではありません)。
 申し込みをすれば、誰でもセミナーを受講できるので、興味のある方は覗いてみてください(企業法務担当者用なので、ロースクールの学生には、ちょっと受講料が厳しいかもしれませんが・・・)。ただし、今日、私が収録した買収防衛策についてのセミナーは、まだリリース前なので、ホームページを見ても載っていません。載ったら、お知らせします。

今日は、最初に、前回の答えの間違い直しから始めます。
前回のA14で、会社計算規則163条3号が「・・・監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。」という要件が定められていることから、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社には、163条の適用がないというお答えをしました。
この点は、ある人と意見交換をして、それなりに考えた上で結論付けたのですが、私の回答を見た某立案担当者(現民間人)が
「3号だけを見ると、どちらとも読めるが、163条2号かっこ書や5号が存在するということは、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社にも、163条の適用があることを前提にしなければ、説明しにくい」という趣旨のメールをくれました。
 そう言われてみれば、そのように思いますし、監査役会も監査委員会もない会社では、監査役会や監査委員会の監査報告そのものが存在しないことから、163条3号の「監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でない」という要件を充たすと考えることもできます。

3号は、ややミスリーディングかもしれませんが、実質としては、総会承認なく、確定させても特に問題はないので、前回のA14を訂正し
 監査役会・監査委員会のない会計監査人設置会社でも、規則163条のすべての要件を充たす場合はある

と考えます。

次に、久々の入門編「株式譲渡自由の原則」について解説いたします。

  25問「株式譲渡自由の原則とその制限について論ぜよ。」

 株式会社に出資した人は、出資と引き換えに、「株式」という権利をもらい、株主になります。お金を出したのだから、代わりに財産的な価値のある権利をもらうのは、当然のことです。
 株式譲渡自由の原則は、読んで字のごとく、株主は、株式を自由に譲渡することができるという原則です。会社法127条は、この原則を「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」と端的に規定しています。
 
 自分がお金を出してもらった権利を自由に譲渡できることは当たり前すぎて、このままでは「へえーっ、そんなものですか」で終わってしまいますので、一つ、皆さんに問題を出します。
  民法466条は「債権は、譲り渡すことができる。」と規定して債権譲渡自由の原則が採用されているのに、なぜ民法の特別法である会社法は、あえて127条で株式譲渡自由の原則を置いたのでしょうか?

 いろいろな答えが考えられると思います。

 例えば、「株式は債権ではなく、民法466条1項が適用されないから」という答えもあるかもしれません。しかし、つい最近まで民法は株式が債権であることを前提とした規定を置いていましたし、契約により発生する会社に対する権利である株式が債権としての性質を持つことは否定できないように思います。

 私は、会社法127条は、民法466条2項(譲渡禁止特約)の適用除外を定めたものだと考えています。

 譲渡禁止特約に違反する債権譲渡の効力については、民法でも学説が分かれていますが、悪意の譲受人との関係では譲渡は無効であると考えるのが判例通説です。

 会社法127条が、この規定の適用を排除すると、どういうことになるかというと
  会社と株主が、株式の譲渡を禁止する特約を結んだとしても、株主が、その譲渡禁止特約に違反して株式を譲渡してしまえば、譲受人がその特約について、知っていても(悪意)でも、知らなくても(善意)でも、譲渡は有効になってしまう
ということになるのです。

 正義感の強い人は、「悪意の人を何で保護するのよ!」と怒り出すかもしれません。

 しかし、このルールの良いところは、譲受人が「悪意」でも有効とするところなのです。
譲受人の善意や悪意という分かりにくい部分で、譲渡が有効かどうかを決めるルールは、争いのタネを残します。つまり、会社側に、「お前は悪意だったんだろう」という株式譲渡の効力を争うネタを与えてしまうことになるのです。
 本当は、善意なのに、悪意だと言いがかりをつけられて、譲渡の効力を争われるとすれば、株式を買う気がなくなる人もいるのではないでしょうか。
 
 逆に、悪意者でも保護するルールにしておけば、株式を買おうとしている人は、会社と株主との間でどんな約束があるかを気にせずに、株式を買うことができます。
 株主は、悪意の人に売っても譲渡が有効になるので、出資したお金(投下資本)を回収しやすくなります。

 このように株式譲渡自由の原則では、株主の投下資本回収手段を確保するために、譲受人の善悪を問わず、譲渡を有効とすることにその本質があるのです。
 
 このように説明すると、会社法を勉強しはじめたばかりの人は
  「でも、株式も、定款で譲渡制限ができるから、結局、債権譲渡自由の原則とあまりかわらないんじゃないですか」
という質問をしたくなるでしょう。

 確かに、株式には、定款で、譲渡に株式会社の承認を要するという条項を置くことができますが、株式の譲渡制限と、債権の譲渡禁止特約は、次の2つの点で大きく違います。

①   株式の譲渡制限は、譲渡自体は制限していない。
譲渡制限株式の譲渡を、株式会社が承認しないときには、会社又は指定買取人がその株式を買わなければいけません。
 つまり、いったん買い手がつきさえすれば、少なくとも、買い手か、会社か、指定買取人が買ってくれるわけで、譲渡自体が制限されるわけではありません。
 つまり、譲渡制限株式というより、譲渡『先』制限株式という方が実態を表しています。
 これに対し、債権の譲渡禁止特約は、悪意の第三者に対する譲渡は、譲渡自体が制限されます。

②  譲受人の善意悪意に譲渡の効力が左右されない。
 株主は、株式会社の承認を得ずに、譲渡制限株式を譲渡することができます。その際、譲受人が、譲渡制限について善意でも、悪意でも、譲渡自体は有効です。
 しかも、譲受人は、善意・悪意を問わず、会社に対して、
   譲渡を承認して自己を株主と認めてください
という請求することができ、もし会社がそれを断るのならば、会社か指定買取人が譲受人から譲渡制限株式を買い取らなければなりません。
 これに対し、譲渡禁止特約付の債権は、悪意の譲受人には譲渡することができませんし、悪意者が債務者に何かを要求することもできません。

以上の2点を見てもわかるとおり、実は、株式の譲渡制限という制度は、株式譲渡自由の原則の狙い(=民法の譲渡禁止特約を排除し、譲受人の善悪を問わず、譲渡を有効にする)を何も損なうことなく、譲受人が会社に株主として参加することだけを防止する制度なのです。

 しかも、譲渡制限は、定款の記載事項であり、株券の記載事項であり、登記事項でもありますから、株式を譲り受けようとする人は、その株式が譲渡制限株式であるかどうかを、すぐに調査することができます。これは、債権譲渡禁止特約が、債務者から話を聞かない限り、存在するかどうかはっきり分からないのと大きな違いです。

こうして見ると、譲渡制限株式は、一旦、買い手を見つければ、必ず誰かには譲渡できるように工夫されています。

 では、なぜ、株式に、これほどの自由譲渡性が認められているのか。
 それは、次回、お話しましょう。
 
(質問コーナー)
Q1
100パーセント子会社においても796条1項但書きの適用が除外されないのはなぜでしょうか。ご教示ください。
投稿 再編マン | 2007年6月 1日 (金) 08時20分
A1
特殊な一場合だけを捉えて、例外を認めるかどうかは、立法政策の問題です。
Q2
現在株主からの閲覧請求への対応を検討している者です。法定書類の備置・閲覧・保存に関して教えて下さい。
①株主名簿や議事録等は、「本店に」「支店に」等と備え置く場所まで規定されていますが、会計帳簿には同様の規定がありません。432条の保存場所は、本店、支店、倉庫等々、会社が任意に決められると解釈して良いでしょうか?
A2
そのとおりです。
Q3
②計算書類(等)には、備置本店5年、支店3年(442条ⅠⅡ)と保存10年(435条Ⅳ)があり、「備置」と「保存」の両方があります。基本的な質問で恐縮なのですが、そもそも「備置」と「保存」の違いは何でしょうか?
A3
備え置くのは、いつでも見せられるようにするために備え置くのです。
保存は、単に保存です。
Q4
③各書類に関して、株主は「株式会社の営業時間はいつでも閲覧等を請求できる」旨の規定がありますが、その請求先は、備え置くこととされている場所(本店または支店)に限ると解釈して良いでしょうか?またその場合、保存場所の規定が無い会計帳簿の請求先は、どこになると考えれば良いでしょうか?(旧商法293条ノ6Ⅰでは「本店において」請求可能となっていましたが、この限定が無くなっています。)
よろしくお願いいたします。
投稿 YKK | 2007年6月 1日 (金) 17時27分

A4
請求の一般原則によることになります。代表者宛に請求してください。

Q5
433条のように「総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主」といった規定の株主は1人に限られるのでしょうか?例えば、1/100の議決権を持っている株主3人が集まって請求すれば、会社は会計帳簿を閲覧させなければならないのでしょうか?
投稿 リアル初心者 | 2007年6月 2日 (土) 11時06分
A5
あわせ技で大丈夫です。

Q6
ロースクールの未修1年生です。
法学部卒ですが、未修に入りました。
勉強法について質問です。
私は、基本書と判例百選を読み込んでいくという勉強スタイルをとってきました。
それは学部時代からの習慣です。
でも、百選を読むのがとても時間がかかるし、解説も玉石混交で1年次のうちから百選を読み込むのは逆に基礎が固まらないうちは有害かなとも感じてきました。
そこで、事案と判旨だけ読んで、解説は読まずにという方法を取ろうと思うのですが、どうでしょうか?
基本を徹底的に作り上げることを重視するなら、そもそも百選なんて読まない方がいいのでしょうか?
投稿 ポン | 2007年6月 2日 (土) 23時11分
A6
百選というツールを使うかどうかは、どちらでもいいことです。
百選に載っている判例の事例の概要と判例の内容を知っておけばいいのです。

Q7
 論点でよくある、株券不発行会社が正当な理由なく名義書換を怠った場合、それにより当該株式譲受人と第三者との関係についてです。
 条文を素直に解釈すると、130条1項より、株式譲受人は第三者に対抗することはできません。
 ただ、江頭先生は、対抗できるとして、その理由を中少会社の株主名簿の記載はあまり信頼に値しない、としています。
 また判例は、指名債権の二重譲渡における優劣関係を決する基準によるべきとしています。
投稿 ももんにょ | 2007年6月 3日 (日) 19時53分
A7
130条1項という条文があるのですから、130条1項でしょう。

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2007年4月11日 (水)

【入門】株主平等の原則(4)

今日は、株主平等の原則の最終回です。

これまでの説明でサミーさんが言いたかったことをまとめると
 1 株主平等の原則の本質は、株主の非個性化にある。
 2 保有株式の数に比例的に取り扱うことは、株主平等の原則の本質的内容ではない。
   だからこそ、比例的に取扱わなければならない剰余金の配当、議決権、残余財産の分配等については、明文で、比例的な取扱いが強制されている。
ということでしょう。

 これを前提に、旧商法で株主平等の原則の「例外」と呼ばれていた諸制度について外観してみましょう。

1 単元未満株主
 単元株式数に満たない数の株式のみを有する単元未満株主は,株主総会等における議決権を行使することができません(189条1項)。これは、株主管理コストを低下させるための制度です。
 「比例的な取扱い」を株主平等の原則の内容と考えるならば、単元株式数の制度は、「例外」になりますが、保有株式の数のみに着目して差別的取扱いをするものですから、109条1項の例外ではありません。ですから、188条1項には、「109条1項の規定にかかわらず」という文言がありません。

2 剰余金の配当における基準株式数
 現物配当をする場合には、基準株式数以上の株式を有する株主に対しては当該財産を,基準株式数未満の株式しか有しない株主に対しては金銭を交付するという取扱いの差異を設けることができます(456条)。
 これも、「比例的な取扱い」を株主平等の原則の内容と考えるならば、単元株式数の制度は、「例外」になりますが、保有株式の数のみに着目して差別的取扱いをするものですから、109条1項の例外ではありません。「109条1項の規定にかかわらず」という文言がないのもそのためです。

以上のように、会社法の明文上の「例外」と言われていた制度は、いずれにせよ、109条1項の「例外」ではなくなったと考えるべきでしょう。

次に、従来から、解釈上認められていた制度について説明します。

3 株主優待制度
 株主優待制度は、内容が各社ばらばらなので、109条1項に違反するかどうかは、その内容次第です。
 保有株式数に純粋に比例するのではなく、
① 階段型 1000株につき割引券1枚
② ハードル型 10000株以上なら、皆、割引券1枚
のように、株主の個性に着目することなく,株式の数のみに着目して株主を別異に取り扱う限りにおいては,109条1項には違反しません。
③ 逆ハードル型  1000株以下の株主様には、割引券1枚

これは、株式の数に着目しているので、109条1項の本質には触れませんが、合理性がなければ、109条2項違反になる可能性はあります

 駄目そうなのは、
 3年以上保有している株主様は、割引券1枚
というもので、これは、株式の数に着目していないので、109条1項違反でしょう。
 これについては、http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50979279参照です。

 まして
 「株主のうち、創始者は・・・」「偉大なる松真様は・・」とか、そういうのは、駄目です。
 109条2項でいきましょう。

 また、財産を株主に配分するような優待制度は、株主平等の原則とは別に、現物配当に係る手続的規制(453条以下)や財源規制(461条)に触れる可能性が高いと思います。

4 日割配当
 事業年度の途中で新株を発行した場合にその発行時期に応じて日割りで配当する日割配当は、会社法では禁止されましたので、もはや論ずる必要はないと思います。

最後に、従来、あまり論じられなかった「株式の内容」と109条1項の関係をお話ししましょう。

5 株式の内容
 これは、商事法務の論文で書いたところです。
 109条1項は、「株式の数」だけではなく、「株式の内容」に応じて、取り扱わなければならないことを定めたものです。
 この「内容に応じて」という部分は
 種類が違う株式を差別的に取り扱うのは、平等原則の内容である
ということを意味しています。
 では、内容自体が差別的なものは、どうでしょうか。

 従来は、株主平等の原則は、明文化されていなかったので、株式の内容自体の差別性も平等原則の問題とすることができました。

しかし、会社法では、条文の文言を見てもわかるとおり、109条1項は、内容自体の差別については、無力です。
 「株式の内容に応じて、株式の内容を平等に取り扱わなければならない」
というルールでは、何を言っているか意味がわからないでしょ?

とはいえ、定款で
  株主が偉大なる松真様である場合には、拒否権がある
という内容の株式が定められるとすれば、それは
 109条2項の「株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定め」
になります。
 ですから、公開会社では、そのような内容の株式を発行することはできません。

 そういうことを考えると、109条1項と、2項が合わさって、株主平等の原則を形作っているということはできるかもしれません。

 サミーさんの時代から、長々と、株主平等の原則について説明が続きました。
 今までは、明文がなかっただけに、その射程もあいまいでした。
 射程があいまいであることは
  ① 規制すべき事実について、規制できないおそれがある。
  ② 規制していない点について、威嚇効果を与えるおそれがある。
という点で、あまりいいことではありません。
 109条1項2項は、一般条項的側面もあるので、絶対的な明確性があるわけではありませんが、この条文を足がかりに、株主平等の原則の射程を以前より明確化することができのではないか、というのが、今回の一連の入門記事の望むところです。

(質問コーナー)
Q1
今回は会計参与が取締役会に出席した場合の議事録への署名等の義務につきご教授ください。
会計参与は計算書類の承認を受ける場合等一定の場合は、取締役会への出席義務があります(376条1項)が、この場合当該会計参与は議事録への署名等の義務が規定されていません(369条3項参照)がこれはなぜでしょうか?
会計限定監査役にも署名義務を認める(千問№505)点、一定の会社では監査役と会計参与は同機能の機関と位置づけられている(327条2項)点、損害賠償責任は会計参与も監査役も「役員等」の責任として負う点、等を考慮すると疑問に感じました。
以上の点宜しくお願いします。
投稿 NK | 2007年4月 8日 (日) 00時54分
A1
取締役が出席義務を負うのは、取締役会の一員として、審議・決議に参加するため
監査役が出席義務を負うのは、監査のため
会計参与が、出席義務を負うのは、基本的には、取締役等から質問等を受けるためです。
会計参与は、受け身の立場なので、議事録への署名義務は規定されていません。

Q2
789条1項3号及び810条1項3号では、株式交換(or移転)契約(or計画)新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合、当該新株予約権付社債についての社債権者は、当該消滅会社等に対し、異議を述べることができると規定されています。
この点につき、単なる新株予約権ではなく、新株予約権付社債と限定をつけているのはなぜでしょうか?
基本的なことが分っていないからだと思いますが、宜しくお願いいたします。
投稿 NK | 2007年4月 8日 (日) 15時40分
A2
株式交換は、基本的には、完全子会社の債権債務に影響を与えない行為なので、原則として、完全子会社の債権者に異議権はありません。
そして、株式交換契約新株予約権の新株予約権者については、新株予約権買取請求で対応すれば十分なので、あえて異議権を認める必要はなく、弁済等による救済も難しいので、認められていません。
他方、株式交換契約により完全親会社に移転する新株予約権付社債の社債権者は、新株予約権買取請求をできる場合もありますが、できない場合もあり(787条2項)、弁済等による救済も可能なので、債務者の変更という重大な利害関係を生ずることに鑑みて、異議権が認められているのだと思います。

Q3
合併の場合、合併比率が5000円:5000円とします。消滅会社の株主のうち残る株主には、1:1で株式を交付しますが、現金で渡す株主もいる場合、この「5000円」より極端に多い(1万円渡す)のは、構わないのでしょうか?つまり、残る株主との間に差があっても構わないかということですが
投稿 ひみこ | 2007年4月 8日 (日) 15時45分
A3
原則、駄目だと思います。いろいろな可能性は考えられますが。

Q4
事業報告の「会社役員に関する事項」について、根本的なことを教えていただけますでしょうか。
会社法施行規則121条各号に定められている事項のうち、
・「会社役員の氏名」(1号)
・「会社役員の地位及び担当」(2号)
・「会社役員が他の法人等の代表者その他これに類する者であるときは、その重要な事実」(3号)
については、7号(重要な兼職の状況)等と異なり、「当該事業年度に係る」という限定が付いていませんが、どの時点での状況を事業報告に記載すればよいのでしょうか。
①事業年度の末日時点でしょうか、②事業報告作成時点でしょうか、それとも、③事業年度中の異動をすべて記載する必要があるのでしょうか。
①または②だとすると、例えば、定時総会以降、事業年度末日の前日までに退任した役員については、退任時点で他の法人等の代表者であったとしても、その事実を事業報告に記載する必要はないという理解でよいでしょうか。
投稿 今さらですが | 2007年4月 8日 (日) 19時49分
A4
③事業年度中の異動をすべてです。
事業年度末日までに退任した役員は、含まれます(119条2号)。

Q5
葉玉先生,補欠役員の選任について教えてください。
監査役が3名で、うち社外監査役2名の監査役会設置会社です。
次回定時株主総会で補欠監査役1名を選任しようとしております。
①会社法施行規則96条2項3号によって補欠の社外監査役として選任した場合、選任後、社外でない監査役が辞任した際には監査役に就任できないのでしょうか?
(補欠の社外監査役として選任しなければ、このように悩まなくとも良いのですが、社外でない監査役が辞任した際でも、補欠監査役を社外監査役として就任させたい事情があります。)
②定款規定で補欠監査役の選任決議の有効期限を選任後4年まで伸張している場合です。
補欠監査役Aの選任の後、監査役Bが次の総会終結の時をもって辞任することになりました。その際、既に補欠監査役Aが選任されているにもかかわらず、別の人Cを監査役候補者とする監査役選任議案を出せるのでしょうか?
(補欠監査役選任時に会社法施行規則96条2項6号も決議しておけば、その決議された手続きに従って補欠監査役Aの選任決議を取り消せば良いのでしょうか?)
(96条2項6号を決議していなければ、総会での監査役Cの選任議案のなかで同時に補欠監査役A選任決議を取り消す旨、決議すれば良いのでしょうか?)
投稿 | 2007年4月 8日 (日) 22時08分
A5
①補欠選任時の決議の趣旨にもよりますが、監査役に就任することはできます。
②これも補欠選任時の決議の趣旨にもよりますが、別の人を監査役候補者とする議案を出すこともできます。

Q6
葉玉先生、「会社法マスター115講座」を拝見しました。
レイアウト(見開き2頁:左に解説・右に図表)は、以前、ブログで推薦
されていた「ビジュアル 株式会社の基本」に似ていると感じましたが、
執筆の際、意識されたのでしょうか?(笑)
投稿 玉屋 | 2007年4月 8日 (日) 23時29分
A6
レイアウトは、郡谷さんが担当していたので、意識はしていないと思います。

Q7
新株予約権買取請求について質問させてください。
787条1項2号においては 吸収分割契約新株予約権、
787条1項3号においては 株式交換契約新株予約権が
あげられています。
 ところが 787条1項1号においては 吸収合併契約新株予約権
なるものはあげられていません。
 これは、そんなもの(吸収合併契約新株予約権なるもの)が存在しないからなのでしょうか?
 仮に存在しないなら なぜそのような概念を認めることは出来ないのでしょうか?
投稿 maru | 2007年4月 8日 (日) 23時32分
A7
合併は、包括承継であるため、新株予約権者が消滅会社に留まることはできないからです。

Q8
337条3項2号で「公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者」とは具体的にどんな人を指すのですか?
 例えば、子会社の役員がこの具体例として挙げられるのでしょうか?その他にも具体例を教えてください。
投稿 maru | 2007年4月 8日 (日) 23時34分
A8
子会社の従業員等です。

Q9
1.立法者は「効力を生じない」(128条など)と「無効とする」(352条2項など)とを区別して規定していますが,どのような違いがあるのでしょうか。初学者の私には,どちらも講学上の「無効」を指しているように読めます。民法でも,「無効とする」(94条・95条など)と「効力を生じない」(113条1項)のように区別しており,例えば,前者が有効要件を欠く場合,後者が効果帰属要件を欠く場合という説明がされることがあります。この説明が一般的かはわからないのですが,会社法にもあてはまるという前提で,起案されているのでしょうか。基本的な法制用語が分からず,困っています。
2.108条1項9号の種類株式を「選解任」付種類株式と教科書ではされているのですが,この条文を読む限り,「解任」権限が付与されているとは読めません。どう考えればよろしいのでしょうか。
投稿 とむ | 2007年4月 9日 (月) 14時34分
A9
1 民法の該当条文で、たまたまそうなっているだけで、他の法律では、必ずしもそのような区別になっていません。あまり気にしない方が合理的です。
2 347条を見てください。

Q10
非公開会社の従業員持株会について教えてください。配当優先・完全無議決権株式です。当該会社(存続会社)が債務超過会社(消滅会社)を合併したい場合、従業員持株会の種類株主総会で拒否したら、他の者がどれだけ合併したくても、合併できないということになるのでしょうか?
投稿 はる | 2007年4月 9日 (月) 14時46分
A10
322条の適用があるならば、そうでしょうね。
種類株式を消す工夫はできるでしょうが。

Q12
「千問の道標」の種類株式の箇所に「株主総会の決議および種類株主総会の決議が必要‥」とあります。
この意味は、すべての種類株式の株主が出る株主総会
特定の種類の株主が出る種類株主総会があるということですか?
このように種類株主総会の賛成が必要だと、定款を二度と改訂できなくなる可能性もしょうじてしまう。そんなことはあるはずがないと思うのですが
投稿 くぼ | 2007年4月 9日 (月) 16時43分
A12
322条等に列挙された定款変更であれば、そのような場合もありえます。
種類株主総会は、種類株主の権利を守るためのものですから。

Q13
監査役会設置会社において,「各監査役の監査報告」と「監査役会の監査報告」があります。招集通知に添付すべきは後者のみとされていますが(会社法437条を受けた施行規則133条1項2号ロ),備え置くべき監査報告(会社法442条1項)については両者であると解されています(千問410頁)。
会社法437条と442条の規定ぶりは同じなのに,どうして異なる解釈をとるのでしょうか。
「株主への情報提供の充実」を備え置きに際してのみ,特に重視されたのでしょうか。
そうであれば,たとえば,「監査役会の監査報告」の作成のための監査役会の議事録に,「各監査役の監査報告」を添付する(閲覧に際して裁判所許可等の要件が加重されますが),というような実務も許容されるのではないかと考えますが,いかがでしょうか。
投稿 のぞみ | 2007年4月10日 (火) 01時26分
A13
形式的には、省令に委任されているか、委任されていないかの違いでしょう。
省令に委任されている部分については、コストが沢山かかるものなので、楽にしてあげているということです。
監査役会の議事録添付は、裁判所の許可が必要になるので、駄目でしょう。

Q14
 募集株式の発行の際の検査役の選任不要事由についてお聞きします。会社法207条9項1号は,旧商法280条ノ8第1項但書にあった「現物出資を為す者に対して与ふる」に相当する文言がありませんので,金銭出資者も含めて今回割り当てる株式の総数が発行済の10分の1であることを要求しているようにも読めます。
 しかし,この点について言及している参考書は見当たらず,旧商法と同様の取扱いで説明している参考書を多数見ました。旧商法と取扱いに変更がないっていうことでいいんですよね?それと,上記文言がないことが気になる私みたいな困った性格の人のための,会社法207条9項1号の読み方も教えていただけるとありがたいです。
投稿 みわ | 2007年4月10日 (火) 15時13分
A14
 現物出資を行う引受人が引受ける株式数という意味です。
 読み方といわれても、ちょっと難しいですが、209条8項で「募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。以下この条において同じ。)」とありますので、9項も同じ意味になります。

Q15
1.設立時発行株式の引受の取消についてです。
発起人については、会社法33-8で1週間以内とされています。
募集設立の設立時株主は、会社法97で2週間以内とされています。
発起人も設立時株主である(会社法65)ので、募集設立の発起人は、2週間以内なら取り消すことができるということになりませんでしょうか?
2.合同会社の減資の効力発生日は、債権者保護手続きが終了した日で、株式会社と異なりますが、何か理由があるのでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2007年4月10日 (火) 15時46分
A15
1 33条8項は裁判所が定款を変更した場合、97条は創立総会で定款を変更した場合なので場面が違うのですが。
2 実質的には、あまり違いはないと思います。

Q16
葉玉先生、引越しお疲れ様です。CBについて、ご質問させてください。
CBについて、新株予約権の数が、新株予約権付社債についての社債の金額ごとに均等に定められているという条件が必要と規定されている(会社法236条2項)のは、CBホルダー間の公平、というのが理由、という理解で正しいでしょうか?
従って、例えば、新株予約権行使時に、
社債100円につき、20円分については株式が交付され、残80円分については期限前償還される、というCBも設計可能でしょうか。
上記が可能な場合、社債100円につき、[現在の時価―転換価額]分について株式が交付され、残額については、期限前償還される(株式交付部分がmoving)という設計も可能でしょうか。
会社法上、転換社債型の新株予約権付社債に係る社債の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額とが同額でなければならないとする規制は廃止されているので、可能と理解していますが、ご意見よろしくお願いします!
投稿 かおるん | 2007年4月10日 (火) 18時15分
A16
設問のような転換社債も可能だと思います。

Q17
計算書類等の株主への提供についてお尋ね致します。
計算規則第161条2項などで規定される計算書類等の電磁的方法による提供につき、書面による交付又はEメールの添付書類としての送付といった請求権を全ての株主に保障した上で、当初の提供方法としてはWebサイトへの掲載による方法で行うことは可能でしょうか?
計算書類については、いわゆるWeb開示制度の対象外とされている点からすると、Webサイトへの掲載による方法は難しいのではと考えています。
もし上記事例において可能であるとされるならば、一般的な電磁的方法による提供とWeb開示制度の違いは、どの点にあるのでしょうか?
投稿 ここあ | 2007年4月10日 (火) 18時34分
A17
WEBとE-MAILの差をどう考えるかですが、WEBは株主が見に行くもの、E-MAILは株主に送られるものという理解を前提にすると、WEB化するのは難しいでしょう。

Q18
吸収合併時の株式買取請求通知(会社法785条、同797条)についてです。
上記通知は、効力発生日の20日前までに行えばよいこととされております。
また、全ての株主に通知を要するともされていますが、合併承認総会を効力発生日の20日前より前に行っていた場合に、総会後、効力発生日20日前に通知をする場合には、買取請求権を行使することができない総会で反対した株主には、通知する必要はないと思いますがいかかでしょうか。
投稿 k.y | 2007年4月10日 (火) 18時54
A18
意味が分かりにくいのですが、反対した株主が、反対した後に、株主ではなくなったということでしょうか?それならば、通知する必要はありません。
株主ならば、通知が必要です。

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2007年3月27日 (火)

【入門】株主平等の原則(3)

今回は、株主平等の原則を定めた109条1項の
 「その有する株式の内容及び数に応じて」
の意味を探りましょう。

 旧商法の時代は、株主平等の原則は
   保有株式数に応じて比例的な取扱いをする原則
と考えられていましたから
   株式の内容が異なる株式(種類株式)について比例的な取扱いをしないこと
は、
  株主平等の原則の「例外」
と言われていました。

 しかし、109条1項は
   「株式の内容に応じて」取り扱わなければならない
旨定めているので、種類株式について比例的な取扱いをしないことは、
  株主平等の原則の「例外」ではなく、原則そのもの
になったということができます。

 また、「数に応じて」という文言についても、必ずしも、比例的な取扱いを意味するのではなく、「株主の個性に着目してはいけない」という趣旨であるということは、すでにお話ししたとおりです。

1項は、言い換えれば、、109条2項の「株主ごとに異なる取扱い」をすることはできないということを意味しているのです。

 なお、この「株主ごとに異なる取扱い」の意味は、
   創業者、代表者、相続人など株式の保有数とは無関係の事情
に基づく取扱いを意味します。

 学説の中には、例えば
   総議決権の20%以上の株式を保有する株主
という属性で区別することも、「株主ごとに異なる取扱い」であるという見解もあります。
 株主平等の原則を、従来のように、比例的な取扱いを求めるものだと考えれば
   比例的でない取扱いは、すべて株主ごとに異なる取扱いになる
という考えにいきつくのが自然なのでしょう。

 しかし、109条1項が、比例的な取扱いを強制する原則であるとすれば、議決権や配当等について、わざわざ比例的な取扱いを強制する規定を設けていることをうまく説明することができません(個別規定は、確認的なものと解釈するのでしょうか?)。
 また、会社法上、比例的な取扱いをしない制度(単元株式数、現物配当における基準株式数等)について
   109条1項を適用除外した文言(「第百九条第一項の規定にかかわらず」)がない
ということも不自然です。現代の立法は、適用除外規定については、相当シビアな検討を行っていて、たまに失敗することもないとはいいませんが(汗)、会社法のいたるところに散らばっている「比例的な取扱いをしていない制度」について、一切、適用除外の文言が入っていないということは、それらの制度は
   109条1項の「例外」にはなっていない
ということを意味すると考えるべきです(109条2項だけは、「前項の規定にかかわらず」という文言がありますので、1項の例外です。)

 以上のように、条文構造を考えると、109条1項の「数に応じて」は、必ずしも、比例的な取扱いを意味しないと解するのが、ごく普通の解釈ですし、実際上も、109条1項が比例的な取扱いを強制するものだとすると、買収防衛策であるとか、株主優待制度であるとか、比例的な取扱いをしていないものが、軒並み、109条1項違反になってしまい、現実に支障が生じます。

 まあ、従来の考え方でも、「明文にない例外」を認めることで、実際上の不都合を回避してきたわけですが
    実際に困るから、明文にないけど、例外的に認める
という論理は
    超論理・超科学
であって美しくありませんし、「どこまで例外が認められるか」という限界も不明確になります。

 そういうことを考えて、109条1項は、株主の無個性化のみを原則化し、比例的取扱いの強制まで踏み込んでいないのですから、
   一定の数以上の株式を保有する株主にのみ異なる取扱いをすること
は、109条1項に違反しないと考えるべきであり、そうすると、109条1項の例外を認める2項の「株主ごとに異なる取扱い」にも該当しないと考えないと理屈にあいません。

 本日は、条文操作ばかりで、つまんなくて、申し訳ありません。
 条文の文言と構造から、ある規定の文言の意味と適用範囲を明確にすることは、法律家の基礎なので、何事も勉強だと思って、我慢してくださいね。

(質問コーナー)
Q1
345条4項・2項・3項の辞任監査役の意見陳述権について
辞任した監査役につき辞任後最初に招集される総会における辞任した旨およびその理由の陳述権が認められておりますが、319条の株主総会書面決議はこの「招集される総会」には該当しないと考えてよいのでしょうか。
すなわち、直近で新たな監査役選任の319条の書面決議を予定しており、実際に開催する株主総会は3ヶ月後の定時総会となってしまうという状況において、345条2項の辞任監査役への通知は、3ヶ月後の定時総会の招集について行なえば足りると考えればよいのでしょうか。
投稿 マナカナ本購入しました | 2007年3月23日 (金) 00時52分
A1
そうです。正確には、書面決議ではなく、決議の省略なのです。

Q2
取締役会設置会社、会計限定監査役設置会社、非公開会社、毎年1月1日から12月31日までの1年が事業年度、定款に「定時株主総会は、毎事業年度末日の翌日から3ヶ月以内に開催する」旨の定めがある会社において、
3月15日に計算書類およびその附属明細書を完成させて監査役に提出したものの、監査役が監査期間の短縮に同意せず、4週間めいいっぱい使って監査報告を作成しようとする場合には、どうするのが良いでしょうか。
1)監査報告の提出まで待って、取締役会で計算書類および附属明細書を承認し、監査報告を含めた総会招集通知を出す。定款の定めに違反する。
2)監査報告の定款を待たずに、3月23日までに取締役会で計算書類および附属明細書を承認し、監査報告を付けず、監査を受けたものとみなされた旨の記載もせずに、総会招集通知を出す。3月31日の総会で計算書類を承認する。監査役には総会後に監査報告を出してもらう。定款の定めに違反しないが、法に違反するかも。
3)その他。
1)では定款に違反していることが、2)では監査を受けていない計算書類を承認していることが、計算書類の有効な確定にどのように影響するのかよくわかりません。
監査役に早く監査報告を出してもらう以外の方法で、有効に計算書類を承認・確定するにはどうしたら良いでしょうか。
 上記事案が、監査役が2名いるうちの1名はすぐに監査報告を提出してくれるが、もう1名が上記事案のように言い張っているというものである場合、結論は変わりますでしょうか。
投稿 間に合わない | 2007年3月23日 (金) 09時35分
A2
1)招集手続きの定款違反ですから、決議取消事由になります。したがって、株主総会が計算書類を承認して確定しても、その承認決議が取り消される可能性があります。
2)監査を受けていない計算書類ですから、取締役会が承認しても、その承認は効力がありません。

結局、取締役が、3月15日に計算書類を監査役に提出したというのが、失敗です。
監査役が2名いるうちの1名はすぐに監査報告を提出してくれるが、もう1名が上記事案のように言い張っているというものである場合でも、結論は変わりません。

Q3
 まず、吸収合併、吸収分割、株式交換をする際、消滅株式会社等が新株予約権を発行しており、236条1項8号の定めをしていた場合、合併契約や分割契約などで存続株式会社等の新株予約権を交付しない(交付するとの定めを置かない)ことはできるのでしょうか。
もしできるとすると、そのような新株予約権者は、吸収合併の場合であれば787条1項1号により、吸収分割の場合であれば787条1項2号ロによって、新株予約権買取請求によって保護されるだけになると思われるのですが。
A3
236条1項8号の定めをしていても、存続株式会社等が新株予約権を交付しないという場合はありえます。

Q4
 消滅株式会社等の新株予約権について、236条1項8号の定めがなく、合併契約や分割契約において、存続株式会社等の新株予約権の交付についての定めがなかった場合、合併については新株予約権の買取請求ができるが、吸収分割においては買取請求はできない、との結論でよろしいですか。
投稿 ダダ ハナコ | 2007年3月23日 (金) 18時37分
A4
 そうです。

Q5
 199条4項につき教えてください。
 ①譲渡制限普通株式と②譲渡制限優先株の2種を発行している非公開会社で、普通株式につき追加発行の増資を予定した場合に、199条4項の優先株の種類株主総会は必要ですか。
 当初、私は、①も②も譲渡制限株式だから、①②の種類株主総会が必要だと考えましたが、種類株式ごとに募集を決定する会社法の立場からは、発行する種類の株式の種類株主総会という意味だと考え直しています。その種類の中の持分比率の維持を目的とした規定だとの思いです。
 同項の「当該種類の株式」の意味は、どちらでしょうか。
投稿 KE | 2007年3月25日 (日) 05時16分
A5
 設問の事例では、199条4項は、①普通株式についての種類株主総会です。

Q6
何故、会社法は445条1項により、資本金の額を原則として「払込み又は給付を
した財産の額」とするとしたのでしょうか?
「資産=負債」配当制限ラインではなく、「資産-資本金=負債」ラインにより、
債権者保護を充実させるため、設けられたのですが、何故その資本金の額は
原則として、「払込み又は給付をした財産の額」なのですか?
もちろん、その後の手続きで資本金の額の減少をすることができるので、
論理必然性は無いのですが、「原則」とした理由はなぜなのでしょう。
A6
 歴史がそうさせたのでしょう。
 詳しい説明は、過去ログを読んでください。

Q7
こんばんは。株主総会の招集についてお教えください。
招集通知の発出は原則総会の日の2週間前までであるが、非公開会社の場合は、書面による議決権の行使を定めていなければ1週間前まででよい(会社法299条)。これに関連して質問です。
①書面による議決権の行使を定めるというのは、定款で定めているか、あるいは総会招集を決議する取締役会において定めるということですか?
②書面による議決権の行使を定めず、議決権の代理行使を定款で定めている場合、その代理人は株主でなければならないと思いますが、株主が極めて少数で実際のところ決議事項について事前に全員から同意を得ている場合について。総会に株主が1人も出席しないとすると、委任状を託す代理人(株主)が出席しない総会で決議をすることはできないということになりますか?親会社なり誰か必ず1人は株主が出席し、これに他の株主が委任状を託す形を取る必要があることになりますか?
③定款で総会招集通知の発出を総会の1週間前までと定めている場合、当然のことながら、書面による議決権の行使を定めることはできないということになりますね?
投稿 きんた | 2007年3月26日 (月) 22時52分
A7
①総会招集の取締役会決議です。
②株主総会を開催する場合には、株主か、代理人が出席しないと、定足数を充たしません。
③「1週間前まで」という定款の定めが、どういう趣旨で定められたものかによって、異なるでしょうが、文言通りに受け取ると、書面による議決権の行使は、難しそうですね。

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2007年3月23日 (金)

【入門】株主平等の原則(2)

1 比例的取扱い
 株主平等の原則のあらわれとして、よくあげられるのは
  剰余金の配当(454条3項)
  議決権(308条3項)
  残余財産の分配(504条3項)
です。
 これらは、いずれも、株主が保有している株式の数に比例的に権利が与えられるのが原則となっている条文です。

 株主の保有株式数に比例的に権利が与えられるものには、その3つ以外に
 全部取得条項付株式の取得対価の割当て(171条2項)
 株式無償割当(186条2項)
 新株予約権無償割当(278条2項)
がありますし、公開会社において、株主に募集株式の割当を受ける権利(202条)を与える場合には、有利発行の場合でも株主総会の特別決議がいらないというのも、株主平等の原則に配慮した規定ということができるでしょう。

2 均等条項
 以上に対し、少し毛色の違うものとして、「均等」条項があります。

 「均等」という言葉が使われている条文のうち
 「自己株式の取得の条件は、決定ごとに均等に定めなければならない」という157条3項
は、その決定によって取得される「株式」について均等な条件が定められる結果「株主」は保有株式数に応じて取得の対価が貰えるという意味では比例的な取扱いを求めているのなので、株主平等の原則の現れということができるかもしれません。
 また、自己株取得を行う場合に原則として行われるミニ公開買付のような手続きは、株主に平等に売却の機会を与えるという意味では、株主平等の原則の表れでしょう。
 
 しかし、「募集株式についての募集事項は、募集ごとに、均等に定めなければならない」という199条5項は、株主ではなく、株式引受人が平等な条件で引き受けられるようにした規定ですから、株主平等の原則を直接定めたものとは言うのは難しい。募集新株予約権についての募集事項の均等性を求める238条5項も同様です。

 ただ、199条5項や238条5項は、
  「同じ機会に、同じ条件で株主になったのだから、株主になった後も平等にするよ」
という理屈で、株主平等の原則の前提を整える規定であるということはできるでしょう。
 同じ募集で、松真さんは1円、湯水さんは100円出資したのに、どちらも1株ずつ株式を取得したというのでは、
   出資額に応じて株主としての権利を取得する
という合理的な取扱いができませんから。

 ただ、例えば、最初の募集のときに1株1円だったものが、設立1年後には、1株100円になっていることはありますから
   募集が異なれば、募集条件も異なる
のは、当然です。
 こういうと、悪い人は
   同じ日に、同じ種類の株式を、「2回」募集して、募集ごとに条件を変える
ということをやりたくなってしまいますが、あまりに悪どいと、裁判官の逆鱗に触れ、差し止めの憂き目にあうことになるでしょう。

 以上に対し、「新株予約権付社債に付された新株予約権の数は、当該新株予約権付社債についての社債の金額ごとに、均等に定めなければならない」(236条2項)という規定は、同一種類の新株予約権付社債について、単位を均一に揃えるための規定で、株主平等の原則とは関係ありません。

3 109条1項の意味
 こうして明文で、株主平等の原則が具体化した条文を見ていると
  109条1項なんて、いらない
ような気がしてきます。
 実際、109条1項が適用される場面というのは、限定的であり、
   公開会社が、株主ごとに異なる取扱をする定め(例えば、創業者の松真さんは、株式の保有数にかかわらず、51%の議決権を行使することができる、とか)をすることができるか
と聞かれれば
   109条1項に反するのでできない
ということはできますが、法制的には、109条2項さえ置いておけば、その反対解釈で十分なような気もしますが、最近の条文の書き方では、例外を書くときには、必ず原則を書くというのが流行りですから、109条2項という例外を設ける以上、109条1項という原則も設けるのが常道なのでしょう。

 しかし、それ以上の意味を109条1項に求めようとすると、具体例に困るのが実情です。
 特定の株主に利益供与をすれば、それは109条1項の問題ではなく、剰余金の配当についての454条3項違反になるように、ほとんどの不平等取扱いは、具体的な条文に違反するものとして構成することができるからです。
 あえて、109条1項にのみ違反する事例を考えようとすると
   ①取締役が、与党株主についてだけ、招集通知の発送前に、議題や議案についての情報を提供した
   ②取締役が、創業者で大株主の松真さんの指示には従うが、他の株主の指示には従わない。
という
  株主に本来認められている権利以上の利益を特定の株主にのみ与える
事例がありますが、どちらの事例も
   取締役の裁量によって、ある程度、許されるべきもの
であり、これらを直ちに109条1項違反とはいえません。
 
 109条1項は、受験生が、株主平等原則の定義を暗記しなくてよくなったという意味では役に立つ規定ですが、
   平等を実現する実際上の効果は必ずしも高くなく
むしろ
  「株式の数と株式の内容に応じて」株主を取り扱えばよい
という意味で、株主平等の原則の範囲を限定したことに法的な意味があるように思います。

(質問コーナー)
Q1
全部取得条項付種類株式の定めを設ける場合についてお教えください。
現在,種類株式発行会社でない会社が全部取得条項付種類株式の定めを設ける場合,当て馬として別の種類株式を設け,現在発行している株式について全部取得条項を設けることになります。
その際,当て馬の方の種類株式について新株を発行しない場合,全体の株主総会決議のほかに,全部取得条項設定の対象となる種類株式の種類株主総会決議も必要となるでしょうか?
というのは,この場合,全体の株主総会でも,種類株主総会でも,構成員である株主は同じなので,全体の総会決議を種類株主総会決議でもあると評価することは可能でしょうが,そもそも,全体の総会だけでよいのではないか,と疑問に思ったのです。
投稿 たつきち | 2007年3月20日 (火) 01時08分
A1
株主総会と種類株主総会の招集手続きを兼ねることも、同時に行うことも可能です。
評価の問題ではなく、それぞれの招集手続がされたかどうかが問題だと思います。

Q2
整備法14条3項で会社法309条2項が読み替えられた特例有限会社の特別決議の決議要件のうち,議決権要件についてです。
これまでの立案担当者の方々のご説明では,法定の要件を上回る要件を定款で定めうることを明確にした点を除き,旧有限会社の特別決議と同様とされ,また会社法109条2項の株主のごとの異なる定めを設ける定款変更をする場合の決議要件(会社法309条4項)と同様とされています(商事法務1738号17頁の山本検事(当時)の解説及び郡谷局付(当時)編著の『中小会社・有限会社の新・会社法』188頁)。
ところが,読み替えられる条文の規定振りでは,議決権要件のところが「当該株主の議決権の4分の3以上」となっており,会社法309条4項(「総株主の議決権の4分の3以上」)や旧有限会社法48条(「総社員ノ議決権ノ4分ノ3以上」)とは規定振りが異なっています。
結論は上記の解説のとおりと認識しているのですが,なぜこのような規定振りの違いがあるのでしょうか?
投稿 たつきち | 2007年3月20日 (火) 01時14分
A2
読替えられたとおりというほかないでしょう。

Q3
会社法マスター115講座どこにも売ってないんですが、どこで売ってるか教えてください。
投稿 KATU | 2007年3月20日 (火) 12時36分
A3
紀伊国屋などの大手書店には置いていると聞いていますが、出版社じゃないのでよく分かりません。すいません。

Q4
はじめまして。fujiと申します。
「株主平等の原則」興味深く読ませていただきました。そこで質問なのですが、以前どこかのブログでインサイダー規制が話題になったとき、インサイダー規制の根拠の一つには「株主平等の原則」もあるはずだ、と書いたら皆から散々バカにされました。株式市場のインサイダー規制と株主平等原則は全く無関係なのでしょうか?
投稿 fuji | 2007年3月21日 (水) 08時25分
A4
 法的な意味での株主平等原則とは違うのでしょうが、「株主を平等に取り扱うべきだ」という広い意味では、株主平等の原則のあらわれでしょう。

Q5
事業報告の会計監査人に関する記載について質問です。
ある株式会社(大会社・公開会社・有報提出会社・3月決算)の会計監査人Aが2006年7月1日に業務停止の処分を受けて資格喪失により退任したため、当該会社は同日付でいわゆる一時会計監査人Bを選任しました。
質問1:この場合、2006事業年度に関する事業報告に記載する会計監査人(施行規則126条1号)は、1)Bだけ、2)Bだけ、但しAについて注記、3)AとB両方を在任期間毎に記載、等が考えられますが、どれが適切なのでしょうか。2006事業年度に在任した会計監査人を記載すると考えれば3)が妥当に思えますが、実務上2006事業年度の監査業務は2006年7月からスタートし、A会計監査人は2006年事業年度の監査には一切タッチしていなかったとすれば、1)か2)でもよいように思えます(但し業務停止という事情ですから、少なくとも注記は必要と思われますが。)。サミー先生はどのようにお考えでしょうか。
質問2:A会計監査人について、126条5号または6号による記載は必要でしょうか。
質問3:126条8号イの報酬は、A会計監査人に対するものも(もしあれば)記載が必要でしょうか。
投稿 丸坊主 | 2007年3月21日 (水) 16時02分
A5
質問1 A、Bともに記載する必要があります。
質問2 必要です。
質問3 必要です。

Q6
100%子会社(非公開小会社、取締役会非設置)の株主総会招集について、
①株主総会の招集は、定款に別段の定めが無い場合、348条3項3号により各取締役の決定に委任することができないので、株主総会の招集は取締役の過半数以上による決定が必要。
②過半数以上による決定がなされたことを「取締役の決定書」等で書面に残すことが必要。
なのでしょうか?
③また、①の場合の「定款に別段の定め」は「株主総会の招集は社長がこれを行う」とあれば該当するのでしょうか。このような定めはあくまで招集手続きのことであり、株主総会を開くこと自体の決定には①のように過半数以上による決定が必要なのでしょうか。

100%子会社で取締役会を非設置とした理由は業務の簡素化であり、株主総会招集の決定に取締役の過半数の決定が必要だとしても、決定の存在自体を書面に残す必要性は感じられないのですがいかがでしょうか。
投稿 RF | 2007年3月21日 (水) 22時16分
A6
取締役の決定書のようなものは、不要です。
定款の解釈の問題ですが、社長に総会招集決定権まで与えたと認められれば、あたります。

Q7
株券提供公告について
 株券提供公告について、会社法第219条第1項で、「公告し、かつ、通知しなければならない。」とされていますが、公告はしたが、通知はしなかった場合の効力は、どうなりますか? なお、登記については、通達で公告をしたことを証する書面のみが添付書類とされています。
投稿 橋爪 | 2007年3月22日 (木) 13時26分
A7
 株券提供の通知義務に違反していますから、手続きは瑕疵を帯びます。
 ただし、その瑕疵が、行為の効力にまで影響するかどうかは、行為ごとに解釈すべき問題です。
 なお、過料の制裁はあります。

Q8
当社は閉鎖会社であり、中小会社です。
(他に1名監査役はいますが、親会社都合により)監査役を追加選任する必要があり、4月に臨時株主総会を開催する必要が生じました。でも、面倒なので会社法319条により書面決議にしたく思いました。
しかし、昨年6月に辞任した監査役がおりまして、同法345条により招集通知を送付する必要があるのではないかと言うことに気づきました(辞任以降株主総会は開催しておりません)。
この場合、
1.345条には臨時株主総会は含まない解して良いのでしょうか?(含むかなあ・・・と思っております)
2.このケースでは、「招集通知」を発送する必要があるので、同法319条による書面決議はできないということでしょうか?
投稿 pin | 2007年3月22日 (木) 17時56分
A8
1 臨時株主総会を含みます。
2 調整マターですが・・・。
 319条は、株主総会の決議とみなすだけで、株主総会を開催するわけではありません。したがって、345条2項の「辞任後最初に招集される株主総会」に該当しません。
とすると、設問のケースで、319条の決議は可能です。

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2007年3月20日 (火)

【入門】株主平等の原則(1)

久しぶりの入門編ですが、今日は、23問の
  「株主平等の原則について論述せよ。」
について説明しましょう。

1 平等とは?
 株主平等の原則は、旧商法では明文のない原則として理解されていましたが、会社法は、109条1項に
「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」
と規定しました。

 「平等」という言葉は美しいため、株主平等の原則を聞いたばかりの会社法初心者は
   人間は、皆、平等。
   会社法も、憲法と正義の観点から「平等」を定めているんだな。
と勘違いしてしまいます。
 また、その勘違いが
   公開会社の株主は平等だけど、非公開会社は不平等だから、非公開会社は、ずるい。
   合同会社は、出資者の平等がないから、時代遅れだ。
という誤ったイメージにつながってしまいます。

 はたして、株主平等の原則は、「正義の原則」なのでしょうか?

 憲法の平等原則を思い出してください。憲法14条には
   形式的平等=すべての人を一律に取り扱う
   実質的平等=その人の個性に応じて、取り扱う
2種類の平等が規定されています。

 株主平等の原則は、憲法14条の平等と同じですか。違いますよね。
 株主平等の原則は、
   すべての株主を「一律に取り扱わず」、株式を沢山持っている人には、沢山の権利を与える
ものですし、
   「株主の個性に応じて取り扱うのではなく」、むしろ株主の個性を無視して、持っている株式の内容と数だけで、その株主の取り扱いを決める
というものです。

 ラフに言えば、株主平等の原則は
   「沢山、会社に出資した株主が、それだけ多くの権利をもらえる。」
というルールであり、偽悪的表現を用いれば
   金こそ力
という金銭至上主義的なルールです。

 小学校で学級委員を決めるとき
   俺は、給食費を5000円払っているから、5票。
   お前は、給食費を払っていないから0票。
などと言う小学生がいたら、相当、嫌な奴です。

 株主平等原則というのは、そういう「嫌な奴の論理」なので、この原則を勉強するときは
   美しい法原理
などという訳の分からないものは追い求めず
   株主平等により、どんな政策目的を実現しようとしているか。
というプラグマティックな目で制度を眺めた方がいいと思います。

2 株主の非個性化

 さて、株式会社が、株主平等の原則を採用している理由は、大きく分けて、2つあります。
 1つは、株主の非個性化。
 2つは、少数派株主の保護です。

 「株主の非個性化」というのは
   忙しくて会社経営に参加できなくてもいい。
   無能で、経営のことが何も分からなくてもいい。
   借金まみれの無資力でもいい。
   とにかく、金さえ出資してくれたら、きちんと株主としての権利を認めます。
ということです。
 株主が非個性化すれば
   株主が、会社に出資をするときに感じるハードルが低くなり、出資しやすく
なります。
 
 また、株主の非個性化(=経営能力・資力不問)を実現することにより、
   株式譲渡は自由にしてよい=株式譲渡自由の原則
というルールを実現することができますし、そのことにより
   会社債権者の保護のため、株主の出資の払戻しを禁止する
というルールも実現することができます。

 このように株主平等の原則は、間接有限責任や、所有と経営の分離などと並び、株式のの非個性化のためのルールであり、究極的には、会社が出資金を集めやすくするためのものなのです。

 なお、本の中には、株主平等の原則について
    保有する株式の数に「比例的に」取り扱うべきこと
を強調するものもあります。

 確かに、1株の株主と1000株の株主が、同じ額の配当、同じ額の議決権しかもらえないとしたならば、みんな1株しか出資しなくなりますから
   会社が出資金を集めやすくする
という株主平等の原則の目的を考えれば、「比例的」な取扱いをするのが一番合理的です。

 しかし、株主による取締役の違法行為差し止め請求権のように、1000株の株主に1000個与えるようなことができない権利もありますし、株主管理コストを低くするために、単元株のように一定以上の株式数を持っていない株主には権利を認めないという場合もあります。
 これらの場面でも、株主は、保有株式数「以外」の要素で差別されているわけではないので、株主の非個性化は実現されていますが、比例的な取扱いはされていません。

 ですから、株主の非個性化と、比例的な取扱いは、必ずしも同じ意味ではなく、株主平等の原則の本質は、「株主の非個性化」にあり、
   「比例的」取扱いは、他の政策目的を達成するために、合理的な範囲で、修正される場合もある
ということを覚えて置いてください。

3 少数派株主の保護
 株主平等の原則の2番目の政策目的は、少数派株主の保護です。

 株主平等の原則には、1株1議決権という資本多数決も内容も含まれています。
 つまり、株式を沢山持っている株主が、少数派の株主の反対する議案を、多数決で決議することができるというのも、株主平等の原則のあらわれです。

 他方、多数派株主が、どんなに定款を変更しようとしても、
   少数派株主が、保有株式数に応じて有する配当や議決権を奪う
ことは、株主平等の原則に反するので、できません。

 これが、株主平等の原則の持つ少数派株主の保護機能です。

 初心者の皆さんの中には
   やっぱり、少数派の人権を守るための正義の制度だったんだ
と嬉しくなる人や
   金をあまり出していない貧乏人が少々迫害されてもいいじゃないか。
   会社は、金持ちさえ相手にしていれば、出資は沢山集まるよ。
という荒んだ心の人もいるでしょう。

 しかし、どちらの考えも、ちょっと足りません。
 
 少数派の株主の権利が多数派の株主によって自由に奪われてしまうと、自分が少数派になりそう会社には、誰も出資しなくなってしまいます。

 また、多数派株主としても、少数派に絶対転落したくないので、第三者への新株発行に必死で反対することになるでしょうし、株式を譲渡したくても、少数派への転落リスクが高すぎると、譲渡することもできなくなってしまいます。

 このように多数派株主が、少数派の株主の権利を奪うことができないという株主平等の原則は
    出資を確保する
という点においても重要なルールなのです。
 
実際、株主平等の原則が問題となる場面は、主として、この少数派株主の保護の局面ですから、初心者の皆さんは、少数派の株主が困っているような事例問題のときに
  「株主平等の原則は使えないだろうか。」
と発想するということも覚えておきましょう。

 次回は、株主平等の原則の具体的な現れについて説明します。

(質問コーナー)
Q1
 「取締役が自らの法律上の行為を何も介さずに(代理ではない)、
  自分の妻をして第三者との間で
  会社の事業の部類に属する取引を行わしめ、
  これによって会社に損害を与えうる場合」です。
イメージとしては、会社のノウハウ等を妻に直接こと細かく言い含めているが、
実際の法律行為が、本人(妻)・相手方(第三者)で行われている場合、です。
この場合、行為主体が妻、効果帰属は妻(と相手方)、となります(よね?)。
「行為主体が取締役でないことから、競業の要件の1つである
 『取締役の行為』がない以上、名義説、計算説のいずれを
 採ったとしても競業に当たらない」とされていましたが、実際問題として、
このような取締役の事実行為を抑制する方法はないのかなぁ、と思った次第です。
投稿 受験生 | 2007年3月15日 (木) 08時16分
A1
 ご指摘の場合であれば、競業取引にはあたらず、忠実義務違反で損害賠償を求めていくことになるでしょう。

Q2
優先株式と普通株式を発行する種類株式発行会社の定款に
「自己株式を消却したときは、消却した株式の数について発行可能株式総数を減少する。」旨の定めだけがあり、発行可能種類株式総数については別段の定めがない場合に、例えば、「発行可能株式総数100、優先株式の発行可能種類株式総数100、普通株式の発行可能種類株式総数100」の会社で、優先株式1株を消却すると、「発行可能株式総数99、優先株式の発行可能種類株式総数100、普通株式の発行可能種類株式総数100」とはならないということでしょうか?
ということは、当該定款の定めは、目には見えないが、「一つの種類の発行可能種類株式総数を下回らない限度で…」という文言があるという理解で宜しいのでしょうか?
まあ常識的に考えて、一つの種類の発行可能種類株式総数が発行可能株式総数より大きい数というのはおかしいですね。
投稿 南斗六星 | 2007年3月15日 (木) 09時31分
A6
 ご指摘のような場合には、発行可能株式総数が発行可能種類株式総数を下回ることもありうるでしょう。
 会社法が、「発行可能株式総数が発行可能種類株式総数以上でなければならない」というルールを強制しているわけではなく、定款という意思表示の解釈の問題です。定款の定めを置くときに、「発行可能株式総数<発行可能種類株式総数」という規定にすると、一体、どういう規律にしようとしているのか、その内容を特定することが困難になるということです。
Q7
当社では、監査報告の通知期限の取扱いにつき、これまでのQ&A等の回答にもあるように、監査役の裁量で監査期間は短縮可能と考えて総会スケジュールを構築してきました。

しかし先日、ある先生の講話を聴いたところ、「監査役が計算書類等を受領した日と総会開催日との間に4週間以上の期間がなければ、規132・152の規定により法令違反となる」旨の説明をされておりました。
この点につき、「どの時点で」「誰の」「どのような」違法になるのかを質問したところ、「同規定は、取締役が計算書類等を監査役に提出すべき期限をも定めたものであり、現実の監査期間にかかわらず、監査役に提出した時点で4週間以上の監査期間が確保されていなければ、取締役の忠実義務違反となる」との回答を受けました。
当該条項を素直に読む限り、旧商法のように取締役の義務を明記したものとは思えず、そもそも、計算書類等を監査役に提出した時点で、必ずしも総会開催日を確定させておく必要もないのではと考えています。
そこで、例えば、総会開催日(6/20)、取締役が計算書類等を監査役に提出した日(6/1)、監査報告を受領した日(6/5)の場合、他の手続が適正に行われていても、取締役の忠実義務違反となるのでしょうか?
投稿 悩める子豚 | 2007年3月15日 (木) 10時52分
A7
取締役が監査役に強制しなければ忠実義務違反にはならないでしょう。

Q8
3月15日A4に関して質問させてください。
「株主総会は、取引ではないので、民法142条は適用されません。」ということです。そこで、総会の招集に関する日程等の問題ですが、例えば非公開会社の場合に会社法299条で総会の日の1週間前までに招集通知を出す必要がありますが、「この過去に遡る期間計算は、民法の規定(140~142条)を準用し、中間に1週間(7日間)を要すると解するのが通説、判例である」(商事法務No.1690 p20)とあります。このような日程の計算には民法を準用するのではないのでしょうか?何が根拠になるのかお教えください。
投稿 きんた | 2007年3月15日 (木) 22時44分
A8
取引ではないので、142条が適用されないというだけで、それ以外は適用されます。

Q9
Q27を見ると
持分会社の場合、資本剰余金を減少し、利益剰余金に振り替えた場合、資本剰余金減少分については、出資の払戻を受けることはできないが、持分はあるので利益の配当を請求することができる(621条)ということでしょうか?
投稿 青葉 | 2007年3月16日 (金) 13時47分
A9
「資本剰余金を減少し、利益譲与金に振り替えた場合」というあたりが、すごく気になります。どうも何かの誤解があると思います。
 私が言っているのは、利益の配当と、出資の払戻と、持分の払戻は全部違うとうことです。

Q10
【状況1】
社外監査役AがXの代表取締役の指揮の下で業務執行を行った場合
【状況2】
XがAが取締役を務める株式会社Bを買収して子会社化した場合
【考え得る回答】
状況1では、前回の回答と同様に、Aは兼任禁止違反状況になることを知って業務執行を行うことになっているので、①監査役辞任の意思表示を行ったということになるのでしょうか。この場合の登記において、本人がかかる意思表示を行ったことはどのような添付書類で証明することになるのでしょうか。
状況2については、旧監査特例法に関して、稲葉威雄他編「実務相談株式会社法 補遺」(商事法務研究会)215頁以下では、「社外監査役の要件は、就任時に満たしていることを要し、かつ、それで足りる」ため、「当然に、Aの社外性が失われるものではありません」として、③の社外監査役のままであるという回答となっています。仮に、この場合でも監査役を辞任する意思表示があるとみなすのであれば、どの時点で意思表示があったことになるのでしょうか。また、登記において、どのような添付書類で証明することになるのでしょうか。
投稿 ぞう | 2007年3月16日 (金) 16時33分
A10
登記の添付書類のことは、すいませんが、調整が必要なので、答えられません。
社外監査役の要件が、就任時に充たしていれば足りるかどうかは、稲葉先生にお聞き下さい。

Q11
会社法第828条第2項第12号に、「株式移転について承認しなかった債権者」が含まれていないのはなぜでしょうか?
 これは、立案上のミスなのでしょうか?
投稿 受験生X | 2007年3月16日 (金) 17時02分
A11
 「ミスです」と認めると、叱られます。
 ですから、ミスではないものの、端から見ると、ミスに見えますね。

Q12
合併契約の株主総会における承認についての質問があります。
特別支配会社において株主総会の決議による承認が必要とされる場合で、消滅会社の承認を要する場合、784条1項ただし書の「承認」は特別決議なのですか、それとも特殊決議なのですか。
投稿 ぴろ | 2007年3月16日 (金) 22時26分
A12
784条1項ただし書には、「承認」はありませんが、要するに、同項ただし書の場合の承認要件を聞きたいということですね。
784条1項が適用されないので、単に原則に戻るだけであり、公開会社の株主が譲渡制限株式等の交付を受ける内容の合併なので、特殊決議です。

Q13
早速質問なんですが、会社法100問の93講の事業の重要な一部譲受けと合併・事業譲渡は如何なる点で異なるんでしょうか。783条(吸収合併)・469条(事業譲渡)の条文を挙げられていますが、これはどういう意味なんでしょうか。
A13
 ご質問の意味がよく分からないところがありますが、
 事業の重要な一部の譲り受けは、譲り受ける方。事業譲渡は、譲り渡す方です。
 合併は、消滅会社の法人格が消滅し、包括承継が生じる点が違います。

Q13
95講の全株取得条項付株式の取得なんですが、A社側の手続がよくわかりません。種類株式発行会社でなければ、種類株式発行会社になる為に定款を変更、その上で発行株式を全部取得条項付種類株式にする為の定款変更をする、ここまではわかるのですが、「取得条項付株式を対価として発行される株主に種類株主総会が必要になる」がよくわかりません。そもそも取得条項付株式を取得の対価として株主に交付することに意味があるのでしょうか。募集株式発行とは種類株式発行もありうるという意味なのでしょうか。ということは、募集株式を受け取った株主の中でも種類株主のみが保護されることになりませんか。
投稿 会社法大嫌い | 2007年3月16日 (金) 22時51分
A13
 基本的なところに誤解があるようなので、非常に答えにくいです。
 まず、「全株取得条項付株式」ではなく、「全部取得条項付株式」です。
 種類株主総会が必要になる場合は、111条2項の条文のとおり書いているだけです。
 X株を対価とする取得条項付株式がある場合には、対価の内容(X株)が全部取得条項付に変われば、取得条項付株式の内容も変わるため、種類株主総会が必要だということですね。
 それから、よく読んでいただければ、「取得条項付株式を取得の対価とする」とは、言っていないことは分かるはずです。
 種類株式の発行は、募集株式の発行の一場合です。
 最後の一文は、意味が分かりません。

Q14
1、確認なのですが、304条は、いわゆる動議を定めたものとの理解でよろしいでしょうか。
2、監査役設置会社では、「著しい損害」が生ずるおそれがある場合には、差止請求権は株主ではなく監査役にあるとのことですが、この時株主は監査役を法的に突っつけないのでしょうか。
投稿 あと2ヶ月 | 2007年3月17日 (土) 20時36分
A14
1 「動議」の意味次第ですが、動議も304条に含まれます。
2 株主が、監査役に何か言うことはできませんが、損害が生じれば、代表訴訟をするぞと言えばいいでしょう。

Q15
反対株主の株式買取請求権ですが、会社法117条4項で裁判所の価格決定がなされた場合には、効力発生日から60日の満了後は年6分の利息を支払うこととされていますが、117条6項で株券発行会社の場合は対価の支払いを株券の交付と引き換えとされています。これは株券の交付と対価の支払いにつき同時履行の抗弁権を認めたものでしょうか?そうであるとすれば利息についても同時履行の抗弁権を主張している間には発生しないこととなるのでしょうか?
A15
117条4項は、債務不履行責任ではないので、株券未交付の場合でも、適用されると思います。

Q16
千問のQ120についての質問です。全部取得条項付種類株式の対価として取得条項付株式や譲渡制限株式を交付する旨の決定をする場合にも株主総会の特別決議で足りるとされておりますが、定款に取得条項付株式や譲渡制限株式を発行できる旨の定め(これは株主全員の同意ですよね?)を設けていない場合でも、全部取得条項付株式の対価としてこれらの株式を発行する場合にはこれらの株式を発行できる旨の定款の変更についても特別決議で済むという趣旨でしょうか?Q122の中で個々の株主の同意がなければ付すことができない取得条項を株主総会の特別決議を持って付すことができるということはこの意味で解してよろしいのでしょうか?江頭憲治郎『株式会社法』149頁注30では既発行の株式を株主全員の同意なしに取得条項付株式へ切り替える方法として上記のような同一の会社内での全部取得条項付株式を用いる場面を例示しておらず、取得条項付株式発行会社を存続会社とする合併をあげておられるので、取得条項付株式を発行できる旨の定款の定めについては株主全員の同意がやはり必要なのではないのかと思った次第です。
投稿 MZM | 2007年3月18日 (日) 00時01分
A16
ご質問の場合でも、特別決議でできます。

Q17
会社法上、会社は自己株式を消却せずに保有しておくことが認められていますが、この「消却せずに保有しておき、必要な時にそれを新たに処分(譲渡)する」ことと、「消却しておいて、必要な時に新たに発行する」こととの違いは何でしょうか?
投稿 paripasu | 2007年3月18日 (日) 00時08分
A17
 自己株式の処分では、資本金が増えないので、登録免許税が安くすみます。

Q18
 お聞きしたいのは、株主総会招集通知時期についてです。
・平成14年改正前は2週間とされ、平成14年改正で「定款で規定」した場合に限り「1週間」とすることができるとされていました。
 新会社法によると、法299条1項で、公開会社は2週間・非公開会社(取締役会設置会社)で署名投票制度・電子投票制度を採用しない場合は、「1週間」とできる。そしていくつかの文献によれば、「定款に規定なくても、1週間とできる。」
と解されています。
 ここで、A会社は、従来の定款に、署名投票制度等の記載はないが、総会招集について、「2週間」の規定を設けていた(会社法施行にもかかわらず、定款変更を行わず、そのまま放置していたようです)場合に、会社法の規定に基づいて299条で「1週間」で総会招集通知を行うことは適法かという問題です。
 この場合、1週間で行うことは会社法299条の規定には違反しませんが、定款の定め(2週間)に抵触することになり、株主総会決議取消事由になってしまうのではないかと疑問を持っております。
投稿 コロロ | 2007年3月18日 (日) 05時05分
A18
 定款の定めに違反するから、決議取消事由になるでしょう。

Q19
私は、会社法362条4校1号の「重要な財産の処分」の該当性判断は代表取締役に業務執行の決定権限が委任されている場合に問題となると考えています。
代表取締役は業務執行権しか持たないはずなので、そもそも決定権限の委任がない場合には「重要」かどうかにかかわらず取締役会の決定が必要になると思うのです。
しかしながら、ちまたの答案例などを見ているとあまり決定権限の委任の有無について配慮している答案が少ないのです。
あえて重ねて疑問点を言いますと、決定権限の委任の有無にかかわらず、「重要」かどうかが当然問題となるのか、です。
この点について、私の基本的な考えが間違っているのでしょうか。
投稿 とんかつ | 2007年3月18日 (日) 20時10分
A19
 362条4項1号は、委任できない事項をあげたものですから、委任がなければ、重要かどうかにかかわらず、取締役会が決定します。

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2007年2月20日 (火)

【入門】募集株式の発行(4)

 これまで、3回にわたり、第三者に対する募集株式の発行が行われる場合に既存株主の利益や種類株主の利益を守るために
    どのような手続きが用意されているのか
ということについて、お話ししてきました。
 さて、今日は、会社が、そのような手続を無視する等して違法な募集株式の発行が行われる場合に
    どのように救済がなされるのか
という点についてお話しします。

(なお、募集株式の発行(3)で、株主に割り当てを受ける権利を与える募集株式の発行で種類株主総会が必要な理由について、うっかり間違った設例をしてしまったので、訂正しました。興味のある方はもう一度該当箇所を見ておいてください。)

1 救済の分類
 どんな問題にせよ、当事者の救済のことを考えるときには
   「どの時点で」「どんな」救済をしようとしているのか
ということを頭に浮かべる必要があります。

 こういうとき、法律家は、ある違法行為が行われる前なのか、後なのかに応じて
  事前の救済=差し止め・・・・・・・「たんま!」
  事後の救済=行為の無効・取消・・・「無しね!」
     and/or 損害賠償・担保・・・「金をくれ!」
という基本的な救済手段を思い浮かべなければいけません。
 いわゆる「困ったときの、たま無し金」です。

この「たま無し金」を募集株式の発行について言えば
 事前=差し止め=株主の株式発行差し止め請求権(210条)
 事後=①行為の無効=株式発行無効の訴え(828条1項2号)
          株式発行不存在確認の訴え(829条)
    ②損害賠償・担保責任
         =業務執行者・引受人に対する担保責任(212条・213条)
になります。
 これらの条文さえ出てくれば、後は、それぞれの趣旨と要件・効果を述べるだけでOKです。

2 株式発行差し止め請求権
 株主による差し止め請求権というと
  違法行為差し止め請求権(360条)
を思い浮かべる人が多いと思いますが、同請求権は
  「会社に」損害が生じそうな場合に、株主が会社のために行使する権利
であるのに対し、
  株式発行差し止め請求権は、「株主に」損害が生ずるおそれがある場合に行使する権利
です。

 株式の発行というと、募集株式の発行のほかに、新株予約権の行使に伴う株式発行や合併等の対価としての株式発行、株主無償割当てもありますし、「発行」ではありませんが、株式の分割により株式の数が増加する場合もあります。

 これらの株式の発行の中で、差し止め請求権が明文で規定されているのは、
  募集株式の発行差し止め請求権と略式合併等の差し止め請求権(784条2項等)だけ
です。
 ただ、それ以外の場合に一切差し止めが認められないかというと、そうでもなく、いろいろな法律構成でこれを認めるべきではないかと考えられています。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50499174
 まあ、適用要件をどう考えるのか、なかなか難しいところではありますが。

 他方、募集株式の発行差し止め請求権は、適用される要件は明確であり
  ① 法令又は定款違反
  ② 著しく不公正な方法
により株主が不利益を受けるおそれがあれば、差し止めができます。
 
 ①は、法定の手続に違反する場合等です。
 実務的には、「有利発行であるにもかかわらず、特別決議を得ていない」という主張で用いられるのがほとんどです。
 その他、「発行可能株式総数を超える」とか、「非公開会社会社なのに、株主総会の決議を経ていない」とかいうのも、①になります。

 ②は、形式的には法律の手続きに則っているものの、著しく不公正な方法による場合です。実務的には、「経営者が自己保身の目的で株式を発行する」ような場合に主張される要件です。

 これらの要件が充たされれば、裁判所は、会社に対して、株式の発行の差し止めを命じます。
 ただ、本案で、差し止め請求をしていると時間がかかるので、まず、株主は、差し止めの仮処分を求めるのが常識です。
 しかも、差し止めの仮処分が出てしまうと、本案についての裁判を行うまでもなく、会社側が株式の発行を中止してしまうのがほとんどなので、この株式発行の差し止め請求権は、まず99%は仮処分段階で決着がつきます。

 逆に、差し止めの仮処分が出たにもかかわらず、会社が、株式の発行を強行すれば、その株式発行の無効事由となります(判例)。
 初心者は、「差し止めを無視したのだから、当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、「違法行為差し止め請求権」については、差し止めを無視して、取締役が行為を行っても、その行為は有効であり、差し止めには法的な効力がほとんどないので、それと比べると「株式発行差し止めの仮処分」は、なかなか強力な武器だということができます。

3 株式発行無効の訴え
 「差し止めは無視したら、無効」と言ったばかりで恐縮ですが、差し止めを無視して株式を発行しても、「とりあえずは有効」です。
 というのも、株式の発行が行われると、
 ①発行された株式について議決権が与えられ、株主総会が行われる場合がある
 ②株式が譲渡されて転々流通することがある
など利害関係者が沢山出てくるため、もし、これを当然に無効とすると
 ①議決権のない者が議決権を行使したことになり、総会の決議取消事由となる。
 ②無効な株式が譲渡されたことになるので、株式譲渡契約が全て債務不履行になる
という混乱が生ずることになるので、会社法は
  無効事由があったとしても、株式が一旦発行されたら、とりあえず有効
とした上で
  株式発行無効の訴えの認容判決が確定したら、将来的に無効になる
という制度を採用しているのです。

 この株式発行無効の訴えのように
   有効な行為を、判決により無効にする
というような訴訟を「形成訴訟」といいます。

 この形成訴訟のポイントは2つあり、一つめは
  形成訴訟には、提訴期間が設けられているため、提訴期間内に提訴が行われないと有効のまま法律関係が確定する
ということです。
 なぜそうするかというと、
   株式を無効にすると、いろんな人が迷惑するから、文句を言う人がすぐに出てこない場合には、法律関係をさっさと確定させたい
からです(法律関係の早期安定)。

 もちろん、提訴期間内に提訴されちゃえば、法律関係が早期に確定することはないですが、そのような場合でも
   判決を将来効にして、法律関係が混乱しないようにする
という制度設計になっています(将来効)。
 これが2つ目のポイント。

 このように見てみると、株式発行無効の訴えというのは、株主の保護の制度というより
   株主の無効主張を制限して、会社その他の利害関係人の保護を図る制度
という方がふさわしいことが分かるでしょう。

 そのような制度趣旨も踏まえ、株式発行の無効事由については、大変、制限的に解釈されています。

 株式発行差し止め請求権の差止め事由と違って、株式発行無効の訴えにおける無効事由については、明文がありません。

 そこで、無効事由を解釈によって導くことになっているのですが、判例通説は、
 ① 差し止めの仮処分を無視した場合
 ② 差し止めの機会を保障するための手続きである通知・公告を怠り、かつ、差し止め事由がある場合
等極めて限られた事由だけを無効事由としています。
 これは、一旦、株式が発行された以上、それを無効にすることは、法律関係を混乱させるという価値観に基づくものです。
 そのため、公開会社において、株主総会の決議を経ずに、有利発行をした場合等は、無効事由にはならないと考えるのが判例・通説です。
 差し止め事由があるにもかかわらず、差し止めをしないまま、放置した株主が悪い、という厳しい考え方が根底にあるわけです。

 もっとも、会社法の下では、非公開会社の株式発行無効の訴えの提訴期間が1年に延長されたことから
   非公開会社において株主総会の決議を経ずに株式が発行されたことは、無効事由となる
と考えるべきでしょう。
 それが無効事由になるということを前提に、その主張させるために、わざわざ1年間に提訴期間を延長したのですから。

4 株式発行不存在確認の訴え
 3で述べたように株式発行無効の訴えは、提訴期間により株主の主張を制限するところに本質がありました。
 しかし、実務においては
   「株主が全然知らない間に、株式が発行されたことになっている。」
ということも、よくあることで、提訴期間の制限が、株主に可哀想な結果をもたらす場合もあります。
 そこで、株式の発行手続きが全く取られておらず、株式が発行されたとは認められないような場合には
   株式発行不存在確認の訴え
をすることができます。
 この訴えは、確認の訴えであり
   提訴期間に制限がない
というメリットがある一方で
   「不存在」の場合にしか、訴えは認められない
という点では、株式発行無効の訴えよりも、制限されています。

 なお、民事訴訟の一般原則によっても、「確認の訴え」が認められる場合があるにもかかわらず、あえて明文でこの訴訟類型を認めているのは
  ①確認の訴えの利益があることを明文化する
  ②判決効の第三者に対する拡張を認める
という2つの目的があるからです。

5 損害賠償・担保責任
 以上のように、一旦、発行された株式を無効にするというのは、なかなか難しいので、既存の株主の救済は、多くの場合、「金」で解決する必要があります。
 
 金で解決する方法には
  ①会社に金を入れてもらい、低下した株式の価値を復活させる間接的な方法
  ②株主が金をもらい、損害を回復する直接的方法
の2種類があります。

 「不公正な価額で引き受けた引受人に対し、差額を会社に支払わせる」
 「価値の低い現物出資財産を給付した引受人に、差額を会社に支払わせる」
という212条の担保責任は、①の考え方です。
 また、取締役の213条責任も①ですね。

 これに対し、株主が、有利発行によって株式の価値が低下したこと等を理由として、429条1項に基づき業務執行者等に対し損害賠償を求めるというのが②です。
 もっとも、このような損害賠償が可能かどうかについては、難しい問題があるので、この問題で触れる必要はないかも知れません。

6 まとめ
 4回にわたって、募集株式の発行について説明してきました。この問題は、解釈論が沢山あるため、これまでも何度も試験に出てきたところですし、敵対的買収に対する防衛等、最近の実務でもホットな話題でもありますから、基本的な要件・効果がすらすらと出てくるように訓練し、かつ、事例でも適切な当てはめができるようにしておいてください。

(質問コーナー)

Q1
前回のQ15について確認させてください。
>全員の同意があるのに、通知はないという事態がどんな場合か想定できません。
>遅くとも同意をとる直前に内容は知らせていますよね。
>同意は、当然のことながら、内容を理解していることが前提です。

ということは,知らせるべき事項の一部を欠く通知しかされなかった場合に,株主全員が同意していても,適法なものとはならないという理解でよろしいでしょうか?
投稿 たつきち | 2007年2月16日 (金) 23時03分
A1
同意が錯誤に基づくものであれば、駄目でしょう。

Q2
早速ですが、種類株式発行会社において、ある種類の既発行株式の一部を別の種類株式に変更する場合、例えば、普通株式から無議決権配当優先株式への変更をする場合、株主全員の同意が必要でしょうか?旧商法時代は、明文の規定はありませんでしたが、全員の同意が必要という実務上の運用だったと思いますが、会社法上はいかがでしょうか?
投稿 法務部員1 | 2007年2月17日 (土) 20時52分
A2
 全員の同意が必要です。

Q3
最近、分配可能額を超えた違法な自己株式取得の事例が出たようです。
http://www.nos.co.jp/ir/pdf/r070216.pdf
このケースでは、上記ニュースリリースを見ると、違法な自己株式取得について無効説を前提として処理するようです。もちろん現時点で最高裁の判断があるわけでもないですし、有効説、無効説どちらを取っても解釈論としては成り立つと思うのですが、サミーさんはこの件について何かご意見・ご感想とかを持っていらっしゃるのでしょうか? もしよろしければ教えてください。
投稿 ymchn | 2007年2月18日 (日) 00時44分
A3
まあ、いろんな考え方があるということでしょう。
皆、オウンリスクで頑張っているのです。

Q4
社債権者集会の召集について質問させてください。
ある種類の社債の総額の10分の1以上にあたる社債を有する
社債権者は召集の請求をすることができます。(718条1項)
 ここで なぜ 「ある種類の社債の総額の10分の1以上」
という 株主総会召集請求権(297条 総株主の議決権の
100分の3以上)に比べて厳しい要件を718条で定めているのですか? 
 そもそも、社債権者集会の決議は出席した議決権者の議決権の2分の1を超える議決権を有するものの同意でたります。
(724条1項)そして、これは議決権の要件を軽減することで
社債権者の権限を強化する趣旨だと理解しています。
この流れからいくと、社債権者集会の召集についても
もうすこし緩やかな要件で定めた方がいいのでは と考えてしまいます。
投稿 maru | 2007年2月18日 (日) 01時14分
A4
 社債権者は、所詮、債権者です。
 社債権者集会の決議事項を考えれば、株主総会の招集請求の要件と比べるのは、意味がないと思います。

Q5
組織再編行為と情報開示のうち事後の開示について
分割会社・承継会社・新設分割により設立された会社で
事後の開示をされた書面につき、株主・債権者・その他利害関係人が閲覧・交付請求等をすることができます。
 ここで「その他利害関係人」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか?
 また、株主・債権者に加えて「その他利害関係人」まで
広く閲覧・交付請求等をすることができると定めたのは何故ですか?ご教授ください。
投稿 maru | 2007年2月18日 (日) 01時16分
A5
 分割により承継された財産の担保権者等利害関係を有する人は、見せた方がよいからです。

Q6
 株主総会における書面投票および電子投票について教えてください。
①株主の数が1000人未満であれば、株主総会の電子投票を認めて書面投票を認めない(=298条1項3号を定めずに4号のみ定める)ことも可能と理解しています。その場合、会社には全株主に対して参考書類を交付する義務がある(302条1項・2項)が、299条3項の承諾をした株主以外の株主に対しては、302条4項の請求がない限り、議決権行使書面(に記載すべき事項の電磁的方法による)提供の義務がないように読め、結論にやや違和感を覚えるのですが、当方の理解に何か誤りがあるのでしょうか?

②株主総会の書面投票も電子投票も認めており、全株主に書面で招集通知・参考書類・議決権行使書面を送付している会社に対して、299条3項の承諾をしていない株主から302条4項の請求がなされた場合、会社にはなお議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の義務が発生するのでしょうか。

投稿 まいたけごはん | 2007年2月18日 (日) 10時46分
A6
① 誤りはありません。電子投票に興味のない人に、教える必要のない事項を教えないだけのことです。
② 面倒くさいのは分かりますが、法文上は、必要と考えた方が素直ですね。

Q7
 会社法817条1項と同法933条1項1号括弧書との関係についてお聞きします。
 817条1項では,日本における代表者のうち一人以上は日本に住所を有する者でなければならないと規定しているので,外国に住所を有する者でも日本における代表者となりうることを前提としていると思います。他方,933条1項1号括弧書では,「日本における代表者(日本に住所を有する者に限る。以下この節において同じ)」と規定しているので,外国会社の登記を定める第3節においては,「日本における代表者」とは日本に住所を有する者に限られ,例えば日本における代表者として登記されるのも日本に住所を有する者のみということになると解釈するのでしょうか?
 それとも,933条1項1号括弧書は登記の管轄についてのこのだけに限定して読むべきで,管轄以外のことについては,外国に住所を有する者も「日本における代表者」に含まれ,例えば外国に住所を有する日本における代表者も登記事項となると解釈するのでしょうか?
投稿 パケット | 2007年2月18日 (日) 12時10分
A7
 外国に住所を有する日本における代表者は、登記事項ではないと思います。

Q8
100問の第62問です。小問1で、名義説を展開して356条1項2号に当たらないとしています。
もし計算説をとって、自分に経済効果が帰属すると考えれば「自己または第三者のため」に当たるのだと思うのですが、そうだとしてもそもそも同条は「取締役が」「株式会社と」取引しようとする場合の規定なので、どのみち同条には該当しないように思えるのですが・・。
何故2号を検討しなければならいのでしょうか?
投稿 マーキュリー | 2007年2月18日 (日) 16時38分
A8
 株式会社と取引をしないのだから、2号ではないというのでも良いと思います。
 ただ、3号は、2号で拾いきれないものを拾う規定なので、「2号ではない」ということは、論じる必要があると思います。

Q9
親子会社間で、親会社が子会社を吸収合併することがありますが、メリットは何でしょうか?考えられるのは、子会社の管理部門の整理等の無駄をなくすことが考えられますが、これは親子のままでは無理なのでしょうか?
敢えて合併するメリット(税金や労務関係等)がありましたら、教えて下さい。今度、グループ会社の再編を行うについて、意見を求められそうなので・・・
投稿 のりのり | 2007年2月18日 (日) 21時21分
A9
法律論ではないので、お答えしづらいです。

Q10
「取締役会の決議の省略」(会社法370)「取締役会への報告の省略」(同372)「監査役会への報告の省略」(同395)についてお尋ねします。
いずれも議事録作成が義務付けられており、いわば「みなし取締役会(監査役会)」とでもいうべきものかと理解しておりますが、事業報告における社外役員の活動状況にいう取締役会/監査役会への出席状況(施行規則124④)との関係がよく判りません。
「みなし取締役会(監査役会)」もここでいう「取締役会(監査役会)」にカウントすべきでしょうか? (全株懇ひな型などでは、「○回中△回出席」などと書くべし」とされていますが、ここでの回数に算入すべきか、という趣旨です。)
確かに、議事録にする以上「取締役会(監査役会)」には違いないのでしょうが、他方で「出席」という概念には入って来ないように思います。
また、もしこれを算入すべしとなると、多忙な社外役員の立場からすると、現に開催される取締役会(監査役会)は少な目にして貰って、「みなし」を多用して貰うと出席率が向上する、という誠に奇妙な”メリット感”が出てしまい、実質的にもおかしいように思います。
というように考えますと、このような「みなし取締役会(監査役会)」は、事業報告での開示においては、回数に算入すべきではなく、必要があればその旨特記する(例:「○回中△回出席。なお、このほかに、当期中において×回『報告の省略』がありました。」などと)のが妥当ではないかと思うのですが、サミーさんのお考えをご教示頂ければ幸いです。
投稿 ETC | 2007年2月18日 (日) 22時53分
A10
ETCさんの言うとおりでしょう。

Q11
同回答において「監査役会で監査報告の内容を決議する必要がありますから、現に監査役会を開催してください。」とありますが、
①監査役会の監査報告は、監査委員会のそれと異なり、「決議」の必要はないのではないでしょうか(施行規則156条3項vs.同157条2項)。「決議」だったら、過半数とか全員一致とかの「決議要件」が必要になってしまいますが。
②施行規則156条3項に「会議を開催する方法又は・・・」とありますから、監査報告作成にあたっては、「現に監査役会を開催」する必要はない、ということになりませんか。
実はここが元のQの根底にある疑問です。「監査役会が監査報告を作成」する(因みに、サミーさんが仰るように、監査役会「で」ではなく、監査役会「が」の筈です)以上、現に監査役会を開催しなければ作成できない筈なのに、なぜ施行規則は、わざわざ「必ずしも現に会議を開催しなくてもよい」と読めるような条項を入れたのが理解できないのです。結局整合的に理解するためには、
1)現に監査役会を開催して監査報告を作成するのが原則だが、
2)その監査役会に欠席した監査役がいる場合、これを”救済”するために(旧商法下では、欠席監査役は署名押印できず、その旨を注記していましたね)、敢えて入れた条項が施行規則156条3項であると、理解せざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
投稿 ぽっぽー | 2007年2月18日 (日) 23時39分
A12
①監査役会の決議要件は、393条にあるとおりです。
②情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法も監査役会の開催方法の一つと考えているのでしょう。

Q13
会社法100問第2版のP.102、№105についてです。

誤:
募集株式の引受人が株式会社に対して金銭債権を有している場合は、
株式会社は、当該金銭債務について引受人に対する出資履行請求権を
自働債権として、相殺により消滅させることができる。
とあり、
正:
募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と、株式会社に対する債権とを
相殺することができないが(208条3項)、株式会社による相殺は禁止されていない。
とあります。
誤では、「会社からの相殺」が記述されているように思えます。
とすれば、正の後段の「株式会社による相殺は禁止されていない」に
あたり、正しい記述のように思えます。
どの点が誤りなのかがよくわからないので、
よろしければ簡単に指摘していただけるとありがたいです。
投稿 受験生 | 2007年2月19日 (月) 12時23分
A13
 以前も訂正したのですが、「誤」の部分が、実は誤りではなかったという誤植です。

Q14
「つまみ食い問題」とはどういうことでしょうか?
聞きたかったのは、連結計算書類作成会社の事業報告において、会社の現況に関する事項(施行規則120条)に掲げる事項の一部を企業集団について記載し、一部を単体についてのみ記載することは可能かということです。
同条2項で「前項各号に掲げる事項については、・・・企業集団の現況に関する事項とすることができる。」とありますが、これは、企業集団についての記載にする場合は、「前項各号に掲げる事項」の全部を企業集団についての記載にしなければならないと読めますし、そうでないようにも読める気がします。全体として統一するべきとは思っているのですが、確認させていただければと。。。
投稿 んーー | 2007年2月19日 (月) 13時17分
A14
 つまみ食い問題というのは、会社が、自分に都合のいいように、企業集団の現況に関する事項と、単体の事項をつまみ食いして、自分の実体を良く見せることです。
 120条は、そういう会社側の恣意的なつまみ食いを認める趣旨ではないので、あまり答えたくないということです。

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2007年2月14日 (水)

【入門】募集株式の発行(3)

 前回は、募集株式の発行を行う場合に、既存の株主の
 ①議決権比率の維持の利益
 ②株式の経済的価値
の2点がどのように保護されているかについてお話ししました。

 今日は、募集株式の発行と種類株主の保護について説明します。

1 種類株主の保護
 初学者の中には、「種類株式」と聞いただけで
   難しい。よく分からん。どうせ試験には出ない。
と考え、思考停止に陥ってしまう人がいます。
 しかし、種類株式は、株式の内容について特別の約束がされているだけで、普通株式と本質的な違いはありません。

 株式の内容は、会社と株主との間の権利義務を定めたものであり、契約自由の原則の下では、本来、どんなものを定めても良いはずです。
 しかし、株式の場合には、株主平等の原則や「権利内容を定型化することで株式を安心して取得することができるようにしたい」という要請から、契約自由の原則が修正されていて
  ① 定款で内容を定める(明確化)。
  ② 株式の内容を登記する(公示)。
  ② 107条1項・108条1項に掲げられた条項以外の種類を認めない(定型化)。
というルールが採用されています。
 これが、種類株式制度の第1のポイントです。

2 種類株式と単元株式数
 ちなみに、「単元株式数」も、定款で定めることにより株式の内容になりますが、これは、108条1項に掲げられた条項ではないので
  単元株式数だけが違う種類株式
というものを設計することはできません。

 単元株式数は、108条1項に掲げられた条項のどれかを定めたときに、オプションとして付加できるもの、いわば
  「グリコのおまけ」
  「チョコエッグのフィギュア」
なのです。

 「おまけ」や「フィギュア」だけでは買えないため、マニアの人たちが
  グリコやチョコエッグを大人買いしてお菓子は食べない
というようなことがあるように
   単元株式数だけを変えて、複数議決権株式を作りたい
という要望があるような場合には
   残余財産分配など、どうでもいいようなところを、チョコっとだけ変えた種類株式を定めた上で、その種類の株式に単元株式数を定める
ということも行われているという噂があります・・・。
 まあ、おまけ目的でチョコを捨てると非難されるように、単元株式数目的でチョコっと変えた種類株式を作ると、裁判所が怒りだす心配はありますが。

 話は脱線しましたが、
   「株式の内容」については、定款で定めなければならない
というルールはすべての条項について共通するものの、「株式の内容」の中には
  ①その条項だけで種類株式になるもの
  ②その条項だけでは種類株式にならないもの
  (単元株式数・種類株主総会を不要とする定め)
の2種類があるということを覚えておいてください。

3 種類株主総会
  種類株式は、株式の内容の一部を変えただけのものですから
   その変えた部分だけが普通株式と違うだけで、それ以外の部分は普通株式と同じ
です。

 ですから、例えば、配当優先株式(例えば、1株あたり50円の配当を優先的に行う)と普通株式の2種類の株式があるからといって、別々に株主総会を開くわけではなく、
   配当優先株の株主も、普通株式の株主も、入り乱れて「株主総会」を開催する
ことになります。
 株主総会というのは、株式の種類とは関係なく、全ての株主が集まる総会なのです(もちろん、議決権制限株式の株主は、議決権がない場合には出席はできませんが)。

 これに対し、種類株主総会は、ある特定の種類株式の株主だけが集まるものである上、株主総会のように、毎年、開催されるようなものではありません。実務的には

  種類株主総会を開くくらいなら、何もしない方がましだ。

と思われるくらい滅多に開かれないものです。
 
 例えば、株主総会で、配当優先株主の優先額を1株50円から1株30円にする定款の変更決議があったとしましょう。
 配当優先株主も、株主総会に参加して、その議案に反対しましたが、普通株式の株主の方が多数派だったので、配当優先株式に不利な決議が多数決で通ってしまったのです。

 しかし、このような種類株主を無視したような決議が何の制限もなく行われてしまうと、誰も、種類株式を取得しなくなってしまいます。
 これは、定款の変更だけでなく、株式の分割のように取締役会の決議で行われるような行為でも同様ですし、配当優先株主の方が多数派のときに、普通株主に不利な定款変更をやるような場合には、普通株主を保護する必要がある場合もあります。

 そこで、会社が322条1項に掲げられている行為を行う場合、ある種類の株式(普通株式も含む)の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合には、「種類株主総会」の決議を得ない限り、その効力を生じないものとして、歯止めをかけているのです。
 逆に言うと、種類株主総会を開くということは

 あなたたちに不利なことをしていますよ。

と公言しているようなもので、会社が種類株主総会を開きたくないのは、当然ですね。

これが、第2のポイント。

4 募集株式の発行と種類株主総会
 それでは、募集株式の発行が行われる場合に、種類株主は、どのように保護されるのでしょうか。

 322条1項の中で、募集株式の発行に関するものとしては、
 1号 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
  イ 株式の種類の追加
  ロ 株式の内容の変更
  ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
 4号 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
ですね。
 
 この322条1項については、
   限定列挙説 各号に掲げる行為以外の行為については、損害を及ぼすおそれがある場合でも、種類株主総会は不要
   例示列挙説 各号に掲げる行為以外の行為でも、種類株主総会を要する場合がある。
という説の争いがあります。
 私達も当初、ある理由から例示列挙説を採っていましたが、その後、議論して
   条文の文言を見る限り、どうひっくり返っても、例示列挙というのは無理だろう。
   種類株主総会の範囲を明確化するために明示したのに、わざわざ例示列挙説に立つ必要はないだろう
ということから、その後は、限定列挙説で書くようにしたというイワク付のところです。

 限定列挙説に立った場合、募集株式の発行について、株式の種類の追加等の定款変更を伴って募集株式を発行する場合(1号)と株主に割当を受ける権利を与えて募集する場合(4号)以外には、種類株主総会は、不要となります。

 つまり、発行可能株式総数・発行可能種類株式総数の範囲内で、通常の募集をやる場合には、種類株主総会はいらないのです。

 確かに、配当優先株式を追加で1000株募集するときには、普通株主は、その分、配当が減るので「損害を及ぼすおそれ」はありますが、
  定款で定められた発行可能種類株式総数の範囲内の発行については、普通株式も不利益を覚悟しておくべきである
という価値観から322条1項各号には、通常の募集株式の発行は、列挙されていません。

 他方、株主に割当を受ける権利を与える場合については、募集株式の発行であっても、不利益を受ける種類株式の種類株主総会が必要です。

 一見、「株主に割当を受ける権利を与える方が、株主平等なんだから、種類株主総会なんかいらないんじゃないの?」という気持ちになりそうですが、実は、その「株主平等」がくせ者です。

 株主に割当を受ける権利を与える場合、株主平等であることを考慮して、公開会社が有利発行を行う場合でも、役会決議で行うことができるなど、募集手続きが軽くなっています。

 しかし、種類株式は、本来、種類株主を特別扱いをするために設計される場合もあるので、「株主平等」だからといって、手続きを軽くされては困るのです。

 例えば、松真さんが配当優先株式、湯水さんが普通株式を持っているときに、取締役会で、配当優先株式を著しく安い価格で割当を受ける権利を与えると、普通株式よりも高い価値のある配当優先株式を安く引き受けることができ、現在、普通株式をもっている湯水さんだけが、相対的に損をします。
 つまり、「平等に扱うべきでない種類株主について、全株主を平等に扱ってしまうことの不都合」を回避する必要があるのです。

 そこで、202条で募集手続きについて特例が置かれている株主に割当を受ける権利を与える場合に限っては、募集株式の引受人の募集の場合も、損害を受けるおそれのある種類株式の種類株主総会が必要であるという整理がされているのです。

 種類株主総会については、以上説明したほか、322条の特則的な規定である111条の存在を理解しておけば、とりあえず十分なので、今日の記事をきっかけに勉強してくださいね。

(質問コーナー)
Q1
新株引受権付社債について質問いたします。
平成12年発行の新株引受権付社債があります。
今般、その「新株の引受権を行使することができる期間」を延長する変更をしたいのです。
①変更できますか?
②決議は「株主総会」なのか「取締役会」なのか「種類株主総会」なのか???
③決議以外に何かしら手続は必要ですか?
投稿 しずおか | 2007年2月 9日 (金) 16時52分
A1
 私の記憶に間違いがなければ、なお従前の例により、旧商法どおりだったと思います。

Q2
 非取締役会設置会社における191条の意義について質問させてください。
 株式会社は191条の要件に当てはまる場合、株主総会の決議によらないで単元株式数の増加または設定をすることができます。
 そして取締役会設置会社では 株式分割も取締役会の権限なので 株式分割及び191条による定款変更ともに取締役会の決議でなされます。
 つまり株式分割と191条の定款変更はともに取締役会によってなされます。この場合、株式分割と単元株式数ともに取締役会の決議でなされるから費用の節約になるし 楽に決めることができます。そうだとすれば取締役会設置会社における191条の意義は非常に分かりやすいです。
 ところが、非取締役会設置会社では、株式分割は株主総会の権限です。そこで 株式分割は株主総会の決議でなされるが、191条による定款変更は取締役によってなされることになります。
 この場合わざわざ費用をかけて株主総会を開いたのだから株式分割と単元株式数ともに株主総会で決定してしまえばいいわけで、191条という特則の意義が見えてきません。
 そういうわけで非取締役会設置会社における191条の意義についてご教授ください。
投稿 maru | 2007年2月10日 (土) 00時02分
A2
 特則に実益がない場合があってもよいのではないでしょうか?
 非取締役会設置会社だけ、適用除外する必要はないように思います。

Q3
委員会設置会社の委員会が業務執行の決定を執行役に委任できない場合について(416条4項但書)質問させてください。
 委員会設置会社では、譲渡制限株式の取得について承認をするか否かの決定について執行役に委任することをできません(1号)
 しかし、委員会設置会社でない株式会社では 代表取締役に
譲渡制限株式の取得について承認をするか否かの決定をさせることもできます。(139条1項但書による定款の定めによる)
 委員会設置会社と委員会設置会社でない会社とでこのような違いが生じる理由についてご教授ください。
 また、法が416条4項但書各号に定めるものに何か基準があればそれについてもご教授くだされば幸いです。
投稿 maru | 2007年2月10日 (土) 00時04分
A3
 株主総会で選んだわけでもない執行役が、株主構成を判断するのは僭越だからなんでしょうね。
 416条4項ただし書各号の選別基準は特にありません。政策です。

Q4
分配可能額の計算についてでございます。ある3月決算会社が、昨年、経過規定により、旧商法の利益処分案を承認し、利益処分によって役員賞与金を支払ったものとします。この会社が、本年2月現在の分配可能額を計算する場合、当該役員賞与金の支払額は、最終事業年度の剰余金から控除されるのでしょうか?されないのでしょうか?(昨年3月期が最終事業年度であり、臨時決算や決算期変更もないと仮定します。)
投稿 こころん | 2007年2月10日 (土) 00時50分
A4
分配可能額からは控除する必要はないと思われます。

Q5
 株式会社の解散に際しての株式譲渡制限規定の変更の要否について質問致します。
 取締役会設置会社であって,譲渡制限株式についての譲渡承認機関を「取締役会」として定款に規定し,かつ登記している株式会社が解散して清算会社となった場合,取締役会が存在しないことになりますので,それに伴って譲渡制限株式の譲渡承認機関(株式譲渡制限規定)を変更する定款変更をしたり,その旨の登記をしなければならないのでしょうか?
 上記は,清算会社においても株式譲渡制限規定が有効であるという前提での話ですが,それとは逆に,清算会社においては株式譲渡制限規定の効力が停止されるのでしょうか?
投稿 hige | 2007年2月10日 (土) 19時27分
A5
 譲渡制限をかける以上、譲渡承認機関を変更する必要があるし、登記も必要です。

Q6
剰余金の分配可能価額について質問させてください。
期中に再評価した事業用土地を売却し、土地再評価差額金取崩額を計上しています。会計上損益計算書に計上されることなくその他利益剰余金が直接増加となります。446条・計規178条に剰余金の額に加算すべき項目としてあげられていないので、「現段階で」分配可能価額算定する上で土地再評価差額金取崩額を考慮しないという理解でよろしいでしょうか。
投稿 初心者 | 2007年2月11日 (日) 14時06分
A6
 そうなるでしょう。

Q7
3月決算の当社は、負債基準(2Ⅰ⑥ロ)にて大会社と判定され、会計監査を受けておりますが(328Ⅱ)、2月現在、負債が100億円まで減額しています。
資本金は3億円で、会計監査人設置の定款規定(326Ⅱ)はありません。
さて、このままの場合、2007年6月に承認される(予定である)2007年3月期の決算書をもって大会社ではなくなり、2007年度より会計監査も不要となる(おまけで6月の総会まではついてくる(338Ⅰ))との認識でよいのでしょうか?
また、6月の総会では、現在の監査法人を解任し(339)、その後、会計監査人につき消滅登記(909)を行うとの認識でよいのでしょうか?
投稿 ITロマンス | 2007年2月11日 (日) 20時14分
A7
 会計監査人設置の定款はあるはずです(多分、経過措置で、みなされているはず)。
 したがって、大会社ではなくなっても、定款を変更して、会計監査人を置く旨の定めを廃止しなければ、会計監査を受ける必要があります。

Q8
監査役(会)の監査報告の記載についてアドバイスをお願いいたします。
当社(3月決算)は、当期中に、会計監査人が金融庁の行政処分により欠格事由に該当したため退任となり、一時会計監査人を選任し今日に至っております。
このような状況下、監査報告で会計監査人に言及する際は、全て「一時会計監査人」と表記しなければならないものでしょうか。それとも「会計監査人」でいいのでしょうか。あるいは、文脈により使い分けすべきなのでしょうか。
昨年9月に公表された監査役協会の指針によれば、「監査の結果」のところでは「一時会計監査人」と表記すべしとしていますが、「監査の方法」のところでは「会計監査人」のままになっており、しかもその点につき何ら注釈を付しておりません。
そもそも論で言えば、会計監査人と一時会計監査人はその職務(権利義務)において何らの差異はない訳ですから(因みに、会計監査人不在で、一時会計監査人が就任しているに過ぎない会社でも、やっぱり「会計監査人設置会社」ですよね)、一時会計監査人も概念として包含されるという意味で単に「会計監査人」と表記すれば十分であるとも思えるのです。
監査役協会の指針を強いて善解すれば、上記のような考えに立ちつつも、「監査の結果」のところでは、”肩書”としての表記ですから、「一時会計監査人」とせざるを得ないでしょう、ということかとも思われます。
投稿 black out | 2007年2月12日 (月) 22時39分
A8
 会計監査人と表記してもよいと思います。

Q9
1000問P682「Q917 3」についてお伺いいたします。
吸収合併存続会社株主が、会社法798条3項の規定に基づいて、価格決定の申立てがなく効力発生日から60日が経過したことにより、株式買取請求を撤回した場合であっても、当該撤回により、存続会社の株主に留まることはできないという意味でしょうか?
A9
 そうです。

Q10
事業報告とその附属明細書における、役員の兼務状況の記載についてです。
事業報告の記載事項は、施行規則121条3号及び7号に、同附属明細書は施行規則128条1号に規定されておりますが、この違いはあるのでしょうか?
条文だけ見ると、附属明細書に記載すべきものは、事業報告で既に記載しなければならないように思えます。
投稿 tanukick | 2007年2月13日 (火) 20時38分
A10
附属明細書は、「明細」です。

Q11
委員会設置会社において、会計監査人の設置が義務付けられている理由を教えてください。
本には、執行役へ権限委譲した正当化根拠のひとつだからとありますが、どういう意味ですか?
投稿 プリン | 2007年2月13日 (火) 21時20分
A11
 法制審議会で、「委員会設置会社には、必ずしも会計監査人の設置はいらないのではないか」という提案がありましたが、反対意見が強かったからです。
 会計監査人がいることも、執行役の適正な活動を確保するための正当化根拠だからということです。

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2007年2月 6日 (火)

【入門】募集株式の発行(2)

 募集株式の発行が、既存の株主にどのような影響を与えるかについては、既に「設立と新株発行」の問題で説明しました。
 http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13272409

1 概観
 株主は、原則として、①議決権、②配当請求権、③残余財産分配請求権等を有しており、これらの権利は、いずれも法的な利益として保護に値するものです。
 他方、既存の株主の持株比率を絶対的に維持しなければならない(=新株発行に、全株主の同意を要求する)とすると、株主が多数いる株式会社では、新株発行により資金調達等を行うことが極めて難しくなってしまいます。
 
 出資者が、持株比率を絶対的に維持したいと思うのならば、「持分会社」を作ればいいのですから、株式会社は
  自分の意思によらずに、持株比率が変更されるのは、ある程度仕方がない。
  それよりも、株式の発行による資金調達がやりやすい方がよい。
と考えている出資者のための制度設計がされています(つまり、株主全員の同意は不要)。

 とはいえ、持株比率の変更は、会社の支配権(議決権比率)や株主の財産権(株式の経済的価値)に影響を与えますから、会社法では、次のような整理をして、会社と既存株主との間の利益調整を図っています。

  非公開会社 ・議決権比率維持の利益を保護する
          =募集事項を株主総会の決議で決定する。
             但し、持分会社のように全員の同意は不要
        ・一株の経済的価値は保護する
            =募集事項を株主総会の決議で決定する。

  公開会社  ・議決権比率維持の利益は原則として保護しない。
            例外 発行可能株式総数による歯止めがある。
               不公正な株式発行は差し止めの対象となる。
         ・一株の経済的価値は保護する。
            =有利発行の場合には、募集事項を株主総会の決議で決定する

2 議決権比率維持の利益
 なぜ、公開会社では、議決権比率維持の利益は、保護されないのでしょうか。

  公開会社(2条5号)というのは、簡単に言えば、
    譲渡制限の付いていない株式を発行する株式会社
のことです。

 東京証券取引所等に上場していなくても、譲渡制限が付いていない株式を発行していれば、「公開会社」ですし、一部の株式に譲渡制限が付いていたとしても、他の株式に譲渡制限が付いていなければ、「公開会社」になります。

 この定義から分かるとおり、公開会社では、株式の譲渡によって
 ・氏素性が分からないような人が、突然、株主として会社の運営に参加する(株主総会で議決権を行使する等)ようになったり、
 ・去年まで少数派株主だった人が、今年は多数派株主になったり
ということがありえます。

 既発行の株式を「譲渡」することと、新しく株式を「発行」することは、別のことではありますが、
 ・既存の株主以外の人が株主となったり
 ・少数派株主が、多数派株主になったり
することがあるという点は同じです。

 ですから、「公開会社」においては、募集事項の決定について株主の判断を仰ぐほどの必要はないだろうという判断のもと、原則として
  取締役会
が募集事項を決定することとなっているのです。

 もっとも、株式の「譲渡」では、自己の議決権比率が下がることはありませんが、募集株式の「発行」がされると、既存株主の議決権比率は下がります。

 そのため、取締役が、オーナー(大株主)に反旗を翻して、募集株式の発行を行って多数派株主に成り上がろうとしたり、議決権比率を下げて少数株主権を行使できないようにしたりして、募集株式の発行は何かと悪用されることが多いのです。

 まあ、多数派を少数派に転落させる募集株式の発行が、常に違法というわけではありませんが、取締役が、自己の保身のために、募集事項の決定権を濫用することは許されないので、そのような
  「著しく不公正」
な募集株式の発行が行われそうなときは、株主による株式発行の差し止めが認められています。

3 一株の経済的価値の保護
ところで、民商法の世界には、「個人の財産を、その人の意思によらずに、奪ってはいけない」という基本ルールがあります(財産権の保護)。

 株式会社が、募集株式の発行を行う場合には、既存の株主の株式自体を奪うわけではないものの、現在の株価よりも、著しく安い価格で株式を発行すると、一株あたりの経済的価値が下落してしまい、実質的には財産を毀損することになってしまいます。

 そこで、公開会社であっても、特に有利な金額で募集する場合には、株主総会で、その払込金額で募集する理由を説明し、株主総会の決議で募集事項を決めなければならないこととされています(199条3項・201条1項)。

一通りの説明は、以上のとおりなのですが、実際には、払込金額がどの程度になったら、「特に有利な金額」になるのか、その判断は容易ではありません。

「特に有利」かどうかの判断は
 ①現在の株価をどう評価するか
 ②どの程度、ディスカウントすると「特に」有利な金額となるか
という2段階の検討が必要であり、そのいずれにも確定的な基準はありません。

 株価の算定方法の一つとして「純資産方式」があります。
 これは、単純に言えば
  「純資産1000万円の株式会社が1000株発行しているとすれば、1株あたり、1万円である」
というようなに、会社財産を株式の数で山分けするという発想の評価方式です。
 この他にも、
 ・資産や利益を他の会社と見比べてみて評価する方法(類似業種比準方式)
 ・配当から逆算して評価する方法(配当還元方式)
 ・収益から逆算して評価する方法(収益還元方式)
 ・将来の現金をどの程度生み出すかから逆算する方法(DCF方式)
等様々な評価方式がありますし、上場株式であれば、
   市場価格
が、株価算定の大きな指標になります。

 もともと、199条3項が「有利」ではなく、「特に有利」と規定してるのは、上場株式の場合、募集事項の決定時から、払込期日までの間に株価が下落する可能性があるため、ある程度、ディスカウントして払込金額を決めておかないと、引受人が、払込期日にお金を払い込まない可能性があるからです。

 例えば、払込金額1000円で引き受けた人は、時価が900円の時には払い込んでくれません。市場から900円で買ってくる方が得ですからね。
 だから、会社法は、「特に」という文言をくっつけて
  「払込金額を決めるときに時価1000円であったとしても、払込金額を100円引きの900円にするくらいなら、わざわざ株主総会の決議を開かなくてもいいですよ」
と言っているわけです。

この「特に有利」の基準を、どの程度と考えるのかは、解釈に委ねられているのですが、100問にも記載したとおり、裁判所は、発行決議前3か月の平均株価の10%引きというのを一応の基準にしているようです。

本当言うと、株価の変動率が大きい株式ならば、30%引きでもおかしくないし、逆に変動率が小さいならば、10%でもディスカウントし過ぎだと思いますが、規範としての明確性を考えると10%という基準を採るのは、それなりに合理的です。

 また、株価は毎日変動する(1日で10%以上変動することも希ではありません)ので、発行決議時の株価ではなく、3か月の平均株価とするのも合理的です。

 ところが、平均株価の期間を3か月に固定すると、都合の悪い場合があるためか、最近の証券発行実務の世界では
  6か月以内で任意に設定した期間の平均株価の10%引きならよい
という解釈も一般的になってきました。

 その解釈が悪いというわけではありませんが、巷の発行手続を見ていると、会社が、株主総会の決議をせずに第三者に株式を割り当てるために、恣意的に平均株価の算定期間を設定しているんじゃないかと疑われることもないわけではありません。

 いずれにせよ、明文に基準のない世界の話なので、裁判所も杓子定規に3か月とは判断してはいませんが、もし、裁判所から発行手続の公正さを疑われたら、いくら6か月以内で適当な期間を定めていたとしても、「特に有利」だと認定されてしまうリスクはあるでしょうね。

 他方、非上場株式は、相場の変動がない世界ですから、「10%引き」という基準は、あまり合理的ではありません。

 例えば、純資産方式(簿価純資産で評価すると、不動産や有価証券等相場の変動があるような財産について、含み損や含み益が評価されないので、実質純資産で評価するとします)の場合、資産の評価の誤差をある程度見込んでディスカウントすることはできるかもしれませんが、それを超えて払込金額をディスカウントする場合には、何らかの合理的理由がない限り「特に有利」なものと認定されるのではないでしょうか。

 また、非上場株式について、株価の評価方式がいろいろあるからといって、取締役が、自分勝手に、募集ごとに評価方式を変えて、株主総会の決議を回避するのは、許されませんし、DCF方式(将来の収益をどう予測するかによって、株価が左右されるため恣意的な評価を行いやすい)で「特に有利」かどうかを判断する場合には、評価の基礎となるデータの信頼性を詳細に検証しなければならないでしょう。

 まあ、非上場株式の多くは、非公開会社ですし、非公開会社ならば「特に有利」かどうかにかかわらず、株主総会の決議が必要なので、これまで、非公開会社における「特に有利」の判断基準は、あまり深く論じられてきていなかったように思います。

 しかし、最近は、公開会社が、新株予約権を用いた買収防衛策を導入したりすることがあるため、市場価格のない新株予約権について、どの程度の払込金額を「特に有利」とするかの判断が求められる場合も多いのです。
  特に新株予約権は、権利内容を工夫することにより、その価格を左右しやすいため、株式よりも恣意的な「総会決議外し」がされやすく、この分野は、もっと研究が進んで欲しいところですね。

 初心者の皆さんは
   公開会社でも、株式の経済的価値を保護するために、「特に有利な」株式発行については、総会決議が要求されていること
   「特に有利」かどうかは、一般には、3か月(又は6か月)の平均株価の10%引きが基準となっていること
くらいを覚えておけば、とりあえずOKですが、発行差し止めの仮処分という修羅場では、
 ① 払込金額が特に有利かどうか
   →役会で発行決議をしている場合がほとんどなので、特に有利だと、総会決議の欠缺という違法が生じる
 ② 主たる目的が取締役等の保身にあるか
   →もし、そうならば、著しく不公正な発行になる
という点が主たる争点になることが多いというのも、知っておいて損はありません。

(質問コーナー)
Q1
社外役員(候補者)に係る事業報告と総会参考書類の記載事項に関する質問です。
似たような規定を並べて見てみると、何とも趣旨を理解し難い微妙な差異があります。

例えば、
①親族関係の開示:事業報告では「その事実」とあり、「重要でないものを除く」とある一方、参考書類では、「その旨」とあり、「重要性」による限定はありません。全株懇は、前者は具体的事実を書く必要がある一方、「重要性」基準で絞り込むことが可能、後者は抽象的・包括的な記載で足りる一方、「重要性」基準による絞込みは不可、と解説しています。
②兼務状況の開示:事業報告では「代表者その他これに類する者」とあり、参考書類では「代表者」とだけあります。前者の方が範囲が広そうです。

このような微妙な差異を設けた趣旨・狙いはなんでしょうか。そして、そういった差異にきめ細かく対応した厳密な書き分けが必要なのでしょうか。所詮最後は、株主の判断に委ねる、ということでしょうか。
投稿 ぽっぽー | 2007年2月 2日 (金) 00時53分
A1
差違は、歴史的な経緯等から設けられたもので、理屈で説明できるようなものではありません。
「書き分け」の意味は分かりませんが、最低限の開示をしようとするのではなく、各規定の趣旨に沿って、株主に誠意をもって開示すればいいのだと思います。

Q2
問33の失念株主の問題ですが、
甲社株主AがBに株式を譲渡したがBが名義書換を行わず、Aに甲社から株式に割り当てを受ける権利(新株引受権)が渡された場合の話です。
判例からいくと、Bは何もAに追求することはできません。しかし、不当利得を論拠としてこれに反論する場合、なぜ「不当利得は売買契約の当事者でない場合の規定から適用しない」と判断できるのですか?(通説はこっちをとっていると聞きますが)
また、「AはBに新株引受権分のプレミアムを付加した価格で株式を譲渡した」と捉えれば、やはりAは不当利得を得たと考えられるため、BはAにプレミアム(新株引受権相当分の金額)を請求できるのではないでしょうか?(株式そのものは請求できないとしても)
公認会計士試験受験者のため、民法をして勉強していないのでここがよくわかりません。
投稿 あっきん | 2007年2月 2日 (金) 01時24分
A2
 問題意識が、今ひとつ、よく分かりませんが、不当利得というのは、法律上の原因がない当事者間の利益調整の問題です。
 有効な売買契約が存在する当事者間の利益調整は、普通、不当利得ではやりません。
 目的物に、果実・従物・従たる権利がある場合でも、当事者の意思によって、それを決めるのが原則です。

Q3
決議の省略の場合、株主総会参考書類の交付は不要であると思うのですが、そうすると、100%子会社の社外取締役を書面決議で選任する場合に、会社の提案の内容や同意書、議事録に、施行規則74条4項の「社外候補者である旨」等の記載はなくてもよいということになるのでしょうか。
つまり、どこにも社外取締役である旨の明示がなくても、書面決議の場合には取締役として選任の決議をしてしまうだけで「社外取締役」としてしまうことができるのでしょうか。
投稿 カフェイン中毒 | 2007年2月 2日 (金) 10時22分
A3                                                   
 社外取締役は、社外として選任するから、社外になるのではありません。
 客観的に社外取締役に該当するかどうかで決まります。
 決議の省略のときには、株主総会参考書類は不要です。

Q4
株式会社同士の合併の際、合併の効力発生日をもって消滅会社は解散するため、消滅会社の監査役は、存続会社の監査役として新たに選任されない限り、合併の効力発生日をもってその任を終えるものと理解しています。
さて、ここからが質問ですが、例えば、決算期が3月の消滅会社が4月1日に合併する場合、その前日(3月末日)までの会計年度の決算については、消滅会社の監査役による監査と監査報告は不要なのでしょうか? あるいは、存続会社の監査役が代わりに消滅会社分の決算の監査も行うのでしょうか? また、仮に監査報告を行う場合は、存続会社の株主総会で行うのでしょうか?             
投稿 やむ | 2007年2月 2日 (金) 11時53分
A4
消滅すれば監査は不要です、というか、できません。

Q5
【入門】募集株式の発行(1)は大変勉強になります。ところで,会社法の基本書にはよく「割当自由の原則」があるとされていますが,根拠条文が分かりません。204条1項がその旨を規定しているとは思えるのですが,正面から定めた規定とは読め無いのです。一般に,「○○の原則」とされるような会社法の原則は,127条の株式譲渡自由の原則のように明文規定があるものなのでしょうか。明文規定を設ける場合とそうでない場合とでは,立法技術上の配慮があるのでしょうか。
投稿 とみん | 2007年2月 2日 (金) 16時56分
A5
 204条には、何の制限もされていないので、割当ては、誰に対してしてもかまいません。
 「原則を正面から定める」という意味がよく分かりません。法律は、要件と効果があるだけです。それを、説明をするために、「○○の原則」と呼んでいるだけです。

Q6
本日の記事の件ですが、「募集手続は202条等の手続に従ったのに、結果的に、株主の一部にしか「発行」されなかった」場合には、株主以外の者に対する発行という整理になるのでしょうか。
投稿 DAN | 2007年2月 2日 (金) 18時30分
A6
 「株主以外の者に対する発行」に整理するかどうかは、単に便宜的な分類に過ぎませんので、質問の場合をどちらに整理するかについて「正解」というものはありません。DANさんは、どちらで整理する方が書きやすいですか?法律効果を考えれば、おのずと答えがでるはずです。

Q7
株券発行会社が、自己株式の消却について取締役会で可決した後、取締役が当該株券をシュレッタにかけるのを忘れて、会議室の机の上に放置したままにしていたところ、泥棒に入られ、当該株券が盗まれ、それを何も知らない第三者が買受けた場合、第三者の運命は、どうなるのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月 3日 (土) 10時55分
A7
 消却の効力が生じていれば、その株券は、無効で、善意取得の余地はありません。
 しかし、会社に損害賠償を請求することはできるかもしれません。

Q8
民法では「仮理事」という言葉が使われ、証券取引法では(金融商品取引法になっても)「仮取締役」などといった言葉が使われています。他方、新しい「一般社団法人・・・法」では、旧商法・会社法と同様、「一時○○の職務を行うべき者」といった言葉が使われています。また、商業登記の実務では「仮○○」といった言葉が使われているようです。
とまぁ、とても付き合いきれないなぁ、所詮どうでもいいということでしょうか。
A8
そのとおりです。

Q9
サミーさんのご回答で「正式名称は『一時会計監査人の職務を行う者』」とありますが、正確には「一時会計監査人の職務を行うべき者」かと思います。ご確認を頂きたく存じます。
投稿 ぷろめてうす | 2007年2月 3日 (土) 10時59分
A9
失礼しました。そのとおりです。

Q10
米国の州会社法では,労務出資は禁止されていないと聞きます。また,民法上の組合も労務出資はOKです(民法667条2項)。一方,なぜ,日本の会社法は,労務出資は駄目なのでしょうか。基本書を読んでも,当然のこととしてあまり丁寧な説明がされていないので,よく分からなくて困っています。初心者の質問で恐縮ですが,教えていただけたらと思います。
投稿 会社法初心者 | 2007年2月 4日 (日) 08時30分
A10
労務は、将来の給付なので、株式の発行時点において、未給付とみられるから、また、金銭的評価がしにくいので、資本金を確定できないからです。

Q11
100問2版P498What's Misssing1030についてお伺いいたします。
465条を「配当を受けた財産の帳簿価額ではなく、欠損額である」としてますが、446条6号イの配当財産の帳簿価額の場合もあるのではないでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月 4日 (日) 16時47分
A11
○×問題ですから、配当財産の帳簿価額になる場合「も」あるからと言って、帳簿価額であるという選択肢が正解にはなりません。

Q12
サミー先生、本日は株券提出公告(219条)について教えてください。
219条1項は、各号の行為を株券発行会社がする場合、公告かつ各別の通知をする日と、各号の行為の効力発生日までに一箇月の期間があることのみを要求しており、株券の実際の提出期限はこの一箇月の期間内であれば適法と読めますが、実際に株券を提出する日は一ヶ月の期間内のいずれの日でも会社が任意に定めても構わないのでしょうか?極端な話ですが、公告時に「明日までに株券を提出してください。」と定めても問題はないのでしょうか?
投稿 NK | 2007年2月 4日 (日) 18時48分
A12
株券の提出期限は、「効力を生ずる日まで」ですから、勝手に短くすることはできません。

Q13
先日,株式の引受は契約か?という質問をした者ですが,ご回答ありがとうございます。ところで,出資の不履行による失権は,契約の終了原因ではなく、債権の消滅原因とすると,出資の不履行後も契約関係は残るということでしょうか。観念的な質問で恐縮ですが,ご教授ください。
投稿 とむ | 2007年2月 5日 (月) 13時33分
A13
「契約」は要件であり、効果が重要です。
 契約上の付随的義務が残る場合はありうるでしょう。

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