定款自治の範囲(3)
「ふぉーりんあとーにーの憂鬱」で有名な47thさんから,ご質問をいただきましたので,今日も,定款自治の範囲の話をします。
「種類株主総会の拒否権に時間的制限を設ける件については、A「○○の事項につい
ては、▲▲までの間、X種種類株主総会の決議があることを必要とする。」という
ことは書けなくても、B「定款第×条に規定する事項につき拒否権を有する」とし
た上で第×条で「▲▲までの間になされた○○の事項」という書き方にすれば、
実質的に同様の効果を持つことができるという趣旨だと理解したのですが、その
ような理解で宜しいでしょうか。
もし、そうした理解で宜しいとした場合ですが(誤解があればご教示いただければ
幸いです)、B方式では会社法上問題なく認められることについて、敢えてA方式で
書くことが禁じられる理由はどこにあると考えればよろしいのでしょう?
また、○○の事項が取締役の選解任のように定款ではなく法令上既に株主総会の
権限とされている事項についてはB方式のような記載方法は難しいようにも思われ
るのですが、どう考えればいいのでしょう?」
私達は,「定款への記載方法」については,当該定めについて一般的な解釈を行った場合に,会社法が明文で許容している定めと読めるのならば,有効であると考えています。
説例でいえば,Aにせよ,Bにせよ,108条2項8号に掲げる事項を定めたものであるならば,許されるでしょう。
ただし,種類株式の内容を登記する際に,AやBが,108条2項8号に掲げる事項を定めたものであるということが,誰にでもわかるようでなければ登記できないリスクがあることは,47thさんもご承知のとおりです。
さて,トラックバックしていただいた47thさんのブログも拝見させていただきましたので,それを踏まえて,もう少し掘り下げてみますと
「○○という定款の定めを置くことができるか」
という議論がされる場合,その定めは
1 会社法で認められている定めを使えば,同じことが実現できるもの
2 会社法で認められている定めでは,実現できないもの
の2つに大きく分類することができます。
このうち,1に該当するような定めは,定款の定め方が,ノーマルか,アブノーマルかという違いに過ぎず,アブノーマルになればなるほど,「会社法で認められている定め」と世間の人が思ってくれなくなるだけで,会社法で認められる定めであると読める限りにおいては,有効です。
たとえば,宍戸教授が提起された議決権拘束契約についていえば,一定の条件のもとで議決権拘束をやりたいというのであれば,ほとんどの場合,議決権行使条項付株式を用いることにより実現することができます。
ただ,正面から
「議決権拘束契約を定款で定めることができるか」
と言われると,
「種類株式を発行するのかどうか」,「登記するのかどうか」
等を明らかにしてもらわないと判断できませんと答えるしかありません。
種類株式であり,登記もするつもりだというのならば,議決権行使条項付株式について定めるべき事項がきちんと定まっているかどうかを検証すればよいだけです。
逆に,議決権拘束契約の定めをしたいが,種類株式を出すわけではないということであれば,それは,2の問題,つまり,「会社法で認められている定めでは実現できないことをやろうとしている」ことになります。
この場合,前回,分類したとおり,
「その定めが,会社法が規律している事項かどうか」
が問題になりますが,議決権拘束契約は,「株式の内容」に関する定めになるので,会社法が規律している事項になるでしょう。
そして,会社法107条は,議決権拘束条項を認めていないので,そのような定めは認められないという結論になります。
こうした論理に対し,議決権拘束契約の定めを肯定する論者の中には
「株式の内容にはならないが,拘束力のある定めにはなる」
とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし,定款の定めに同意した株主だけではなく,それに反対した株主や,その後に株式を取得した者に対しても,善意悪意を問わず,議決権拘束の効力を及ぼすとすれば,それは,「株式の内容」になっているといわざるをえないでしょう。
宍戸教授は,会社法が,株式関係のところで定款自治の範囲を明確化していない部分が多いという分析をされていましたが,実は,「株式の内容」は,107条や108条など会社法に明文の規定がない限り,定款で定めることができないというルールがあるので,私は,定款自治の範囲は十分明確だと思っています。
まあ,これを言うと
「会社法=強行法規」という前提に立てば明確かもしれないが,そうでない立場の人に立てば不明確ではないか。
と反論されそうですが,逆にいえば,
だからこそ,不明確性をなくすために,「会社法=強行法規」と解する必要がある
ということになります。
47thさんのブログにあった
「何故,会社法の条文の任意法規性が限定されなければならないのか?」
という問に対する答えの出発点は,この「定款自治の範囲を明確化する」ことにあるでしょう。
47thさんのブログを引用すれば,従来,商法の条文の中で,何を強行法規として,何を任意法規とすべきかという点についての関心は
「立法者よりも当事者の方が社会的に効率的なアレンジ(契約)を結ぶ情報と能力を有している場合があるという前提の下で、会社法規範 のうち、どの部分について当事者自治あるいは手続的規制に委ねることが可能で、どの部分についてはそれが許されないかという線引きをどうするかという問題」
だと捉えられてきました。
しかし,株式会社の定款は,株主全員の同意によって成立する契約ではなく,多数決によって決められるものですから,少数株主や能力のない株主の保護の観点から,定款自治の範囲を限定する必要があります。
「立法者よりも当事者の方が社会的に効率的なアレンジ(契約)を結ぶ情報と能力を有している場合がある」ことを否定するものではありませんが,そこでいう当事者は,必ずしも株主全体の利益のために活動する当事者ではなく,また,情報と能力のない当事者がいる場合にその者をどう保護するか,という限界があるのも,また事実です。
能力のない者が不利益を受けるのは仕方がないという反面,そうした能力が無くてもお金を出資したら株主になれるようにすることで,お金を集めるのが株式会社制度であることを考えると,「株式会社」そのものに対する最低限の安心感を与えるため,強行法規性が必要であることは誰も否定しないでしょう。
そして,その趣旨からすれば,高度な能力を持つ取締役や株主が
「この定款の定めと矛盾することが,会社法に書かれているけれど,この規定は任意規定だから,定款の定めは有効だよ」
と言って,能力の低い株主を説得できるという法制度よりも
「会社法には,こう書いてあるから,それと矛盾する定款の定めは無効だよ」
という法制度の方がわかりやすく,少数株主保護のためには効果的です。
また,会社法は,登記を始め,形式的手続的要件の固まりであり,そうした方面から「画一性」が要求されることもあります。定款自治の範囲が不明確であれば,登記の前提となる手続きが履行されたかどうか,登記ができる事項なのかどうか等が不明確になり,審査が困難になるのは必定です。
なお,私達は,世の中に,経営能力のある者同士がプライベートな会社を作るため,全員一致の定款を作り,新規株主も入ってこないという場面があることは,重々承知しています。
ただ,
「そういう用途で会社を作りたければ,合同会社でやったらいいのに」
ということは抜きにしても,
「そうした用途については,普通,株主間契約で縛れば十分でしょう」
ということは言いたくなります。
逆に,契約でまかなえないのだとすれば,それは,
「取締役が裏切って誰かに株式を発行した」
「株主の一人が破産して株式が差し押さえられ,見知らぬ株主がやってきた」
とかいう場面のことですから,やはり新規株主の保護を考えてあげなければいけません。
新規株主にについては,「定款を知り,または,知るべくして株式を購入したのだから,定款に何が書かれていても拘束されるのは当然」という理屈もあり,それを全否定はしませんが,「知るべくして」というところに擬制があることを忘れてはならず,また,三角合併や人的分割のように「欲しくてもらった株式じゃない」という場面もあることを忘れることはできません。そうすると,定款変更に参加していない新規株主をも拘束する定款は何かを明確にしてあげる必要はあると思うのです。
以上のようなことをいろいろ考えると,会社法が
(1) 定款自治の範囲を商法よりも大幅に広げるかわりに,
(2) 会社法で規律している事項については,定款で別段の定めができるという規定がない限り,すべて強行法規(定款で変えられないルール)とし,
(3) それで,まかなえないニーズは,多数決ではなく,株主間で納得の上,契約ベースで処理してください(同意をしていない反対株主や,新規に入ってくる株主を拘束するのはやめてください)
というスタンスをとっているのは,正しいと思うのです。
もちろん,定款自治の範囲の明確化といっても,
「会社法が規律している事項かどうか」
「会社法に違反しているかどうか」
という点については,当然,解釈の余地はあるわけですし,そんなところまで,
「全部決まっています」
というつもりは,毛頭ありません。
また,
「会社法に反する定款の定めでも有効とすべきものがある」
ということであれば,積極的に議論して,次期改正で採用するとうこともあると思います。
その意味で,任意規定説の論者が,どんどん,会社法で実現できないような定めを提案し,その議論が深まるのは望むところであり,会社法が,定款自治を不当に狭くしていないかどうかを今後も検証していきたいなと思っています。
(質問コーナー)
Q1
従来から、定款に書くことができる事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があると整理されてきたと思います。その整理と、会社法29条の整理には対応関係があるのでしょうか?29条は、①27条、28条に掲げる事項、②この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項、③その他の事項でこの法律の規定に違反しないものという整理ですが、株主を代理人に限る旨の定款規定に関する本日の回答を考慮すると、相対的記載事項は、28条のほかに②と③に分散して整理されていることになりますが、任意的記載事項も③に含まれるという整理でしょうか?よろしくおねがいします。
投稿 ロゴス | 2006/10/17 23:59:08
A1
相対的記載事項と任意的記載事項という分類は,論者によって意義が異なっていると思いますが,ロゴスさんは,どういう定義でその言葉を用いられているのでしょうか?
Q2
国公立ロースクール入試に向けて勉強中の大学4年の者ですm(_ _)m
入試に備えて葉玉先生の「会社法100問」で実力強化したいと思っているのですが、100問全てやり遂げる時間を確保できそうにありません。
そこで重要問題に絞って取り組みたいと思うのですが、重要度ランクの付いている改訂版の発売はまだ先になるようです。。
もし出来れば、100問のランク付けを先取りで教えて頂けないでしょうか?
投稿 だだ | 2006/10/18 0:34:02
A2
すいません。私も100問のゲラの校正をやっている最中ですが,自分の担当分しか分かりません。葉玉さんに聞きますから,もうしばらくお待ち下さい。
Q3
あまり実務上は問題にならないでしょうが,募集設立について質問させてください。
募集設立において,全部取得条項付種類株式の定めを設ける場合に,
種類創立総会における決議要件が,譲渡制限を設定する場合と同様に
されている(会社法85条3項)理由は何でしょうか?
「具体的な状況がまだない設立時においては,全部取得条項付種類株式の
定めを設けることには慎重になるべき」とか,
「創立総会の決議要件との調整」といった理由が成り立つかどうか
考えてみたのですが,どうもしっくり来ません。
以前,葉玉先生が回答されていたような気もするのですが,
どうも見つけられません。
立案にあたって,どのようなお考えで設立後とは決議要件を区別されたのか,
お教えただければ幸いです。
投稿 たつきち | 2006/10/18 1:13:52
A3
種類創立総会の決議は,いわゆる普通決議はなく,特別決議が原則です(85条2項)。
種類株主総会の決議は,普通決議が原則です(324条1項)。
全部取得条項の設置の定款の変更の決議要件は,原則的決議要件よりも厳しくすべきであるという価値観で考えると,種類創立総会では,特殊決議になるという感じでしょうか。
Q4
ある特定の者より会社に対して株式買い上げの依頼があったときは、会社は自己株式取得の決議を株主総会で行こなわなければなりません。
そして、議案及び招集通知には、取得株式の総数及び取得価額の総額のほかに、
「会社法第160条3項の規定に基づき、他の株主から本総会会日の5日前までに書面をもって売主として追加の申し出があったときは、上記株数、取得価額の範囲内おいてその株主からの取得も追加するものとする。」を記載することになっています。
この場合、取得株式の総数及び取得価額の総額を買い取り申し出があった株主の株数、金額と同数、同額にしておいたのでは、他の株主から申し出があったときに、最初に申し出のあった株主の希望数を買い上げることができなくなります。
方法として、
①取得株式の総数及び取得価額の総額を財源規制の範囲内で多目に設定しておく。
②株主総会当日に先ず追加申し出のあった他の株主からの株式数を追加して、
取得株式の総数及び取得価額の総額について議案修正する。
ことが考えられますが、どちらが一般的なのでしょうか?また、②の方法だと欠席株主は議案の内容を知ることができないことになりますが、法律が許容した議案の追加なので、欠席者は保護されないと見ることでよろしいでしょうか?
投稿 KIRABO | 2006/10/18 8:58:47
A4
好きな方でやればよいと思います。
議案が総会で修正されることは,株主提案があった場合を含め,法が許容しているところなので,欠席する方が悪いというしかありません。
Q5
前回のQA11について:
「1.当会社の剰余金の配当の基準日は、毎年3月31日及び9月30日とする。」として
「2.前項に定める場合の他、当会社は基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。」
の規定を置かないのは、定款によって取締役会の権限を制限したものとはなりませんでしょうか?
そもそも、配当決定の権限を取締役会に与えるには定款規定が必要ですから、会社法自体ではなく定款が与えた権限だと思いますが。
そういうのを「定款が与えた」といって悪ければ、「株主総会が定款を通じて与えた」権限と言ってもいいと思います。
まさに、本日の本文の「定款で定められる旨の規定がない事項で、この法律の規定の違反しないもの」ではないでしょうか。
投稿 銀行屋は荒野の藤袴 | 2006/10/18 12:14:46
A5
銀行屋は荒野の藤袴さんのような定款の解釈をすれば,定款で「基準日を定めて剰余金の配当をすることができる」と書かない限り,定款で,総会の配当決定権も制限したことになりませんでしょうか?
「できる」という規定がないことを,制限規定と読む解釈は不自然だと思います。
あえていえば,上記2の規定を
「基準日を定めずに剰余金の配当をすることを制限した規定である」
と解釈するのならば,わからないわけではありません。
いずれにしても,定款で取締役会に配当決定権を与えた場合には,法律上,その配当決定権には何の制約もされていませんから,わざわざ「基準日を定めて・・」と書かなくても,配当をすることができます。
Q6
設立中の会社概念が会社法でも有用と解した場合、たとえば以下のように整理すれば、
「百問」(とくに第15問)の論筋と矛盾しないと考えたのですが
いかがでしょうか?
①発起人がなした行為は、その権限に基づくものに限り別段の意思表示なくとも、成立した会社に効果帰属する
②発起人の権限は、会社の組織的・財産的基礎をつくるために必要な範囲でのみ認められる(ゆえに開業準備行為・事業行為はそもそも権限外)が、権限の具体的範囲は法に規定するもののほか、定款で定めてもよい
(権限内での売買契約等は28条1号が根拠、賃貸借・雇用契約等は、その債務額を基準とし、同4号が根拠)
③発起人の権限外の行為を設立後の会社が追認することは、発起人の権限制限の潜脱に利用されるおそれがあり、ひいては出資者間の公平を害することになるから、認められない
どうやら私は、設立に伴う債務が会社と発起人のどちらに帰属するかについて、会社成立の前後で区別するのが原則だと誤解していたようです。
一般的には、発起人の権限の有無で区別するんですよね?
投稿 らくだ | 2006/10/18 15:57:00
A6
②の「権限の具体的範囲は法に規定するもののほか、定款で定めてもよい」というのは,言い過ぎでは?
定款によっても,財産引受以外の開業準備行為はできないというのが財産引受の規定の類推適用を否定する立場の結論です。
それ以外は,よいと思いますが。
Q7
完全孫会社への現物出資について、ご質問させてください。
1.完全親会社A⇒完全子会社B⇒完全孫会社C の関係にある場合、AがCに対して現物出資を行います。引受人Aに割当てる株式の総数がCの発行済株式総数の10分の1を越えなければ、検査役の調査は不要となると思います。AがそれでOKというのであれば、この方法は、常に法律上問題なく可能といういうことで宜しいのでしょうか。
2.たとえば現物出資財産の時価がにかかわらず、1株とするということも可能ということになりますでしょうか。
よろしくお願い致します。
投稿 moremi | 2006/10/18 22:02:31
A7
1 それで宜しいのでしょうかというのに答えられるほどの事実が記載されていませんが,発行済み株式総数の10分の1を超えなければ検査役の調査は不要です。
2 現物出資財産の時価がいくらであろうと,そのその価額はいくらにすることもできます。ただし,時価の方が著しく低ければ,責任が生じます。
また,資本金は,時価がベースになります。
Q8
会社法施行規則77条7号において記載しなければならない内容は「非監査業務の対価」だと思いますが、「・・・会計監査人としての報酬等及び公認会計士法2条1項の業務の対価を除く・・・」の「会計監査人としての報酬等」とは何が該当するのでしょう?
また、会社法施行規則126条により記載しなければならない事項は、1号は「当該会社が監査業務及び非監査業務として会計監査人に支払わなければならない報酬額」、8号イは「当該会社及びその子会社が監査業務及び非監査業務として会計監査人に支払わなければならない報酬額の合計」を記載するという考えで、宜しいでしょうか?
なお、旧商法105条については旬刊商事法務1672号27頁を、126条については日本公認会計士協会「法務研究委員会研究報告第5号(中間報告)」を参考に質問させて頂きました。
投稿 AB | 2006/10/18 22:05:56
A8
・前段の質問
会計監査人の職務は,会計以外の不正行為を監査役に報告する義務等必ずしも公認会計士法2条1項の業務でカバーできるものではないので,会計監査人としての報酬等の全てが,公認会計士法2条1項の業務の対価に含まれているとは限りません。
それで,「会計監査人としての報酬等」が入っています。
・後段の質問
「当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額」は,会計監査人としての報酬等の額なので,非監査業務は含みません。
Q9
事業譲渡についての質問です。
467条1項1号2号により、株式会社は、事業の全部または重要な一部の譲渡には株主総会の特別決議が必要ですし、また取締役会設置会社では、362条4項1号により重要な財産の処分および譲受けの業務執行の決定には取締役会の決議が必要です。株式会社が重要な一部の事業を譲渡する場合には、まず株主総会の特別決議を経てから、取締役会決議で事業譲渡について執行の決定して、それから具体的に業務執行していくということですか?手続きの順番がよくわかりません。
投稿 リー | 2006/10/18 23:20:46
A9
取締役会の決議が1番です。
その後,総会決議をして,事業譲渡契約を締結するか,事業譲渡契約をして,その効力発生日の前日までに総会決議をするかは,どちらでもよいと思います。
Q10
取締役会設置会社で且つ、代表取締役がA・Bの2名いる会社で、代表取締役印はAのみ作成し法務局に登録してあります。この会社が契約を交わす場合、契約書の記名押印欄に代表取締役Bの名前だけしか記載していないにも関わらず、A名義で登録された代表取締役印で押印しても問題はないのでしょうか?
取締役会議事録のように厳格に考える必要はないのでしょうか?
投稿 アウトソーシング | 2006/10/18 23:57:08
A10
問題はないかと言う質問は,むずかしいですね。
押印というのは,契約成立要件でも,効力発生要件ではないので。
契約の相手方が問題だというのなら,問題だし,問題ないと言えば問題ないと思います。
Q11
整備法には「この法律の施行の際」(整備法10条など)と「施行日前」(整備法11条など)という言い回しが色々な条文で登場してきますが、両者の違い(施行の際と施行日の言い回しの違い)がよくわからないのでご教授いただければ幸いです。
投稿 KOKO | 2006/10/19 0:39:28
A11
単に言い回しの違いです。「施行の際の前」とはいわないので,「施行日前」になります。
Q12
新株予約権付社債の発行に瑕疵・無効原因が含まれている場合、新株予約権部分の差止・発行無効が問題となるだろうとは思うのですが、その際、社債部分についてはどのような処理になるのか、ご教示いただければ幸いです。
投稿 大杉謙一@異端児? | 2006/10/19 8:23:45
A12
解釈によると思いますが,私は,差し止めと,発行無効は分けて考えるべきではないかと思います。
まず,新株予約権の差し止めです。
会社側は,新株予約権部分抜きで社債のみ発行する意思がないでしょうし,引受人側も,新株予約権がついているからこそ,低い利率で我慢するので社債だけならいらないというのが通常でしょう。
①新株予約権付社債の発行決議は,新株予約権と社債を一体的に決議するものであること,②新株予約権と社債を切り離して譲渡することができないため,新株予約権の発行の差し止めの仮処分がかかった状態で,社債部分だけを発行しなければならないことになると,後の差し止めの本案が認められなかった場合の処理に困難を来すこと等を考えると,新株予約権の発行の差し止めが行われる場合には,新株予約権付社債自体が差し止められると解すべきだと思います。
これに対し,新株予約権発行無効の訴えが確定した場合には,既に効力の発生している社債をも効力を失わせるかという問題ですから,慎重に解すべきです。私は,新株予約権の行使期間が経過して消滅した場合であっても社債自体は存続することとパラレルに考え,無効の訴えが確定しても新株予約権のみが無効となり,社債としては存続すると考えています(会社法100問の58問の最後の方にこの論点が載っています)。
ちなみ,大杉先生は,異端児ではなく,王道を行く者でしょう。
会社法立案担当者の会のメンバーは,異端児というか,極端児です。
Q13
取締役会の決議の省略と会計参与の関係について質問します。
会計参与は、計算書類の承認に関する取締役会に出席する義務がありますが(376条1項)、計算書類の承認に関する取締役会を決議省略(370条)で行う場合、会計参与について何の手当も無いのは何故でしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/10/19 13:26:51
A13
会計参与が,取締役会に出席する義務を負うのは,主として,自己の作成した計算書類について,取締役からの質問等を受けたりすることができるようにするためであり,取締役を監査するためではありません。
そこで,会計参与には,取締役会の決議の省略について異議権を認めていません。
Q14
会社法11条3項について質問いたします。
支配人が,代理権に対する内部制限に違反して約束手形を振り出した場合,直接
の相手方だけでなく,手形の転得者も「第三者」に含まれ,転得者が善意の場合
には,会社は手形債務を負うことになるのでしょうか。
私は,民法上の表見代理規定が手形行為に適用される場合,「第三者」は直接の
相手方に限られる,という判例の見解を支持しております。この見解との整合性
を考慮すると,支配人の代理権に対する内部制限違反の場合も,「第三者」は直
接の相手方に限るというのが自然ではないか,というのが,私が到達した結論で
す。
A14
そのような見解もありでしょう。
| 固定リンク | コメント (19) | トラックバック (1)
最近のコメント