2007年10月 6日 (土)

三角株式交換

いささか旧聞になってしまいましたが、シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社(CJH)と株式会社日興コーディアルグループ(NCG)が、シティグループインク(CG)の株式を対価とする三角株式交換をやるそうです。
http://www.nikko.jp/ICSFiles/afieldfile/2007/10/03/071003.pdf

今日は、最初、「エリカ様と時津風親方の危機管理手法の比較」という記事をやろうかと思いましたが、書いてみたら「会社法であそぼ」の趣旨から外れてしまいそうだったので、やっぱり、三角株式交換のことをお話しします。

「三角合併の解禁」として騒がれていたので、「三角株式交換」にはピンとこないという人もいるでしょう。
 三角株式交換というのは、完全親会社となる会社(CJH)が、そのさらに親会社(CG)の株式を,完全子会社となる会社(NCG)の株主に交付するという株式交換です。

 つまり、三角株式交換をやれば、

 既存のCGの株主  旧NCGの株主
     ↓              ↓
   シティグループ・インク
         ↓
   シティグループ・ジャパン・ホールディングス
         ↓
            日興コーディアルグループ

という体制になるわけです。

 三角合併と三角株式交換の違いは、
    前者は日興コーディアルが消滅してしまうのに対し、
    後者は、同社が存続する
という点にあります。

 日興コーディアルが消滅してしまうと
 (1)日興コーディアルグループが行政庁から受けている許認可等をCJHで取り直さなければならなくなる
 (2)日興コーディアルグループ名義で登記・登録している財産について名義の変更が必要となる
など面倒くさいのですが、三角株式交換だとそうした面倒がないというメリットがあります。

 今回のスキームは、日本初ということで注目されていますが、三角合併・三角株式交換は、外国会社との組織再編を可能にするという点に特徴があるので、当事者のひとつが外国会社である本件では、いたってオーソドックスな組織再編手法ということができるでしょう。

 ざっと見たところ、対価の適正さの確保に配慮しているようですし、シティグループの株式を東京証券取引所に上場させる等流動性の確保にも気をつかっています。また、グループ会社内の再編なので、税制適格も大丈夫でしょう。
 CJHがCGの普通株式を持つことは、親会社株式の取得禁止(135条)にはもともと該当しませんが、CG株式をCJHにどのような形式で交付するのかは興味があります(特に税制・会計面で)。

 いずれにせよ、基本的には、三角株式交換のお手本のようなスキームですから、私の興味の中心は、どっちかというと、シティグループの普通株式が東京証券取引所に上場することによって、今後、どういう影響があるのかという点にあります。

 ご承知のように、東証には、外国株式も上場しているのですが、お世辞にも、取引が活発とはいいがたく、日本の一般投資家も、あまり外国株式を買ってくれません。
 しかし、今回の三角株式交換により、沢山の日本の投資家が、一気にシティグループの株主になるわけですから、これをきっかけに一般株主が外国株式を売り買いするのに慣れて、外国株式市場が盛り上がってくれるといいですね。

 また、沢山の日本人株主が誕生するということは、議決権(というかproxy)や配当関連の株主管理事務も結構大変そうな気がします。日本上場分は、シティグループの時価総額からすればたいしたことはないですが、絶対的事務量は、他の外国会社よりも、かなり多くなるのではないでしょうか?

 さらに、極めてマイナーな話ですが、「社債、株式等の振替に関する法律」は、外国株式には対応していないので、外国株式の振替に関する法律関係をもう少し頭を整理する必要があるかなあとも思っています。

 以上のように私自身は、マニアックなところに関心が向かっているものの、何はともあれ、三角株式交換がうまく行くことをお祈りしております。
 私がお祈りしても、何の役にも立ちませんが・・・。

追伸 「信託大好きおばちゃん」さん。「むぎゅ」さんモックの件で税金のことについて教えていただきありがとうございました。私はどちらかというと、「信託大好きおばちゃん」さんのご意見に近いです。ちなみに、「信託大好きおばちゃん」さんのブログは、マニアにはたまらない魅力があります。

(質問コーナー)
Q1
297条(株主による招集の請求)関連のご質問です。
同条4項の規定により少数株主が株主総会を招集した場合、株主総会の議長は誰が務めることとなるのでしょうか? (定款に議長についての規定がある場合)
1.定款に規定するもの(会長・社長等の代表取締役)
2.招集した少数株主
3.議場にて互選
仮に、2.が認められるとするならば、議事運営等を有利に運ぼうと企図する少数株主自身が議長となるには、どのような規定・手順に沿って議長となればよいのでしょうか?
投稿 ツェーベーツェー | 2007年9月28日 (金) 13時34分
A1
定款に規定があれば、定款でしょう。
定款の規定がない場合や定款では決められない場合には、議場で互選でしょう。

Q2
さっそく商事法務1811号に掲載されました先生方の論文を読ませていただきました。そこで気になる部分が1点あります。
(注21)の「会社法322Ⅱとの関係でどのような意味を持つのか明確でない部分」とは、どのようなことでしょうか?
とても気になりますので、是非ご教示いただきたく存じます。
投稿 気になります | 2007年9月28日 (金) 14時25分
A2
 うーん。共同執筆で、かつ、お仕事に関連するものなので、即答は控えておきます。

Q3
非公開会社(取締役会設置会社です)で株式譲渡承認請求があり,承認をしない旨の通知を出し,会社が買い取る旨の株主総会決議も済みました。その間にも経営者と承認請求者との間でやりとりがあり,価格について合意が成立し,供託は面倒だからお互いしないことにしましょうという話になりました。(要するに,価格の合意が141条1項の通知前に成立して,供託はやめようという話になったという事例です)
 この場合,履行の問題にすぎないとして供託をしないで法141条の買取手続をすすめてもよいものでしょうか?それとも特定株主からの合意による取得にあたるとして,他の株主に議案追加請求権行使の機会を与えた上で再度株主総会を開く等特定株主からの合意による取得手続ですすめなければならないでしょうか?
投稿 ポケット | 2007年9月28日 (金) 16時28分
A3
供託をしなかったら、会社に解除権が発生するだけでしょう。
それでよければ、手続きを進めて良いんじゃないでしょうか。

Q4
私は旧試験の受験生です。
前々回のQ・Aで、論文の演習は繰り返す必要はあまりないということでしたが、出来が悪かった問題についても繰り返さなくてよいのでしょうか。繰り返すよりも新しい問題を解くべきだとお考えなのでしょうか。
繰り返さなければ知識が定着しないのではないかと思ったのですが、どうでしょう。
演習するにあたって、間違えた知識・覚えていなかった知識をどう身に着けるのが効果的かという点につき、ご教示をお願いします。
投稿 受験生 | 2007年9月28日 (金) 19時47分
A4
 受験生さんが、どの程度の時間を持ち、どの程度の力を持っているかによって、答えが異なります。
 各科目100問の問題を8科目やれば、800問です。毎日2問やっても、400日。
 これを単純に2回繰り返せば、800日で2年以上かかります。3回繰り返せば、1200日。受験生さんが、無限に時間をお持ちならば、繰り返し解くことを重視すればいいでしょうが、普通はそうではありません。
 大事なのは、まず間違ってもいいから、すべての分野について書いてみること。
 その後に、苦手な分野について繰り返して解いてみることです。
 この順番を逆にすると、まず待ちがない無く、最後まで行き着けません。
 受験生さんは、論文の問題を繰り返し解くと、その問題について、100点になると思いますか?残念ながら、そうはなりません。論文には「正解」がないため、どんなに頑張っても、そのときの実力を超える答案は書けないのです。
 また、知識を身につけるのは、論文の演習を繰り返すことでやるのではありません。知識の習得は、論文の演習で間違ったポイントや分析不足の点をノートに書き写して、それを繰り返してチェックしたりすること等にやってやるのです。

Q5
会社法上、一つの規定を形式的に適用すればできそうだからといって、他の規定を含めて検討したときに実際に出来るかどうかは別問題であり、会社法全体として、それらの行為ができるのか、できないのかを検討するのが出発点だと思います。

そのとおりだと思います。取得条項の付いた新株予約権を株主無償割当てで発行することもできるし、取得の対価を現金と定めることもできるが、配当可能額がないのに取得できるかとか、一部の株主を差別する行使条件・取得条件の付いた新株予約権を株主無償割当てで発行することはできるが、他の株主すべてが特別利害関係人になってしまい決議に瑕疵が生じないかとか、議決権制限株式を発行することもできるし、議決権行使の条件を持ち株比率20%以下と定めることもできるが、全株式をそういう議決権制限株式に替えることが許されるかも、同じような検討が必要ですね。
投稿 克匡恭 | 2007年9月29日 (土) 01時59分
A5
そうです。ただし、全株式を議決権制限条項付株式に替えることができるのは、論文で書いたとおりです。

Q6
先生のゼミ生の勉強方法について質問させてください。
質問への回答で、基本書は使用していませんというものがありました。
これは、葉玉先生のゼミ生は、ゼミ中に基本書を用いなかったという意味で、独自で学習する際には、基本書や百選は使用しているのでしょうか?
それともゼミ外の自分達で勉強する時間も含めて、論文、択一の問題集とそれに付属する解説を読むのみなのでしょうか。
もしくはその両者でもなく、中間的なものなのでしょうか。
宜しくお願いします。
民訴の過去問では、一行問題まで含めて演習をしていましたか?
投稿 | 2007年9月24日 (月) 15時22分
A6
私は、ゼミの中では基本書は使いませんでした。
基本書を使ってもいいですが、いちいち基本書を使って「調べる」ようなことをやっていたら、時間がいくらあっても足りません。
基本書を使うなら、「何度も通読して、3時間で1科目分を読めるようになる」というのが目標であり、演習時に問題となった点を検索する作業は、せいぜい5分以内にしておきましょう。

Q7
別サイトですが、先生の脱時空勉強術について質問をよろしいでしょうか。
それは、「説得文書」の書き方ですが、これは長文の論述の際にも、効果はあるのでしょうか(新司等)。
個人的には、十分効果的だとは思っております。
新司法試験では、長文化したため、その論述も長くなってしまいます。多くの答案を見る試験管に対し、説得ある論述をし、他の答案と差をつけるためにも、気をつけるべき点、効果的な方法がありましたら教えてください。
投稿 十六夜 | 2007年10月 2日 (火) 08時26分
A7
 長文でももちろん有効です。
 他の答案と差をつけることに気を取られるよりも、100問の最後に書いたように、オウムの力、キリンの力、サイの力を発揮できるようにがんばりましょう。
 基本的なことを普通に書けば合格します。

Q8
先生のブログは受験のモチベーションをあげるのに、役立ち助かりました。
今回、司法書士筆記試験に合格することができました。
しかし、最近の記事は、私にはとても難しく、ぜひ、入門シリーズを復活させていただけたら、と、思っております。
沖縄では、会社法に詳しい司法書士はそんなにいないと思うので、会社法、税法にくわしい司法書士めざしてがんばりたいと思います。
投稿 むつみ | 2007年10月 2日 (火) 21時53分
A8
おめでとうございます。
入門編は長く中断していますが、そろそろ復活させましょう。

Q9
会社法116条について。
今回、株式の譲渡制限に関する規定を設定することになりました。
そこで、株式買取請求権の行使の判断材料として、効力発生日の20日前までに株主に通知しなければなりませんが、効力発生日を10月1日にすることになったとして、通知をしたいのですが、先に、10月1日を効力発生日とする、株式移転がなされ、1人株主となっております。

要するに、10月1日の午前中に、株主移転の設立登記が提出され、同日午後に、完全子会社の臨時株主総会を開いたということです。
このとき、通知をする相手方というのは、10月1日以前の株主ですか?
それとも、株主移転により、完全親会社となった株主ですか?
通知の相手方によっては、10月1日を効力発生日として、当該規定を設定できないのでは?と思い質問させていただきました。
投稿 ころまる | 2007年10月 3日 (水) 09時25分
A9
通知をするときの株主に対してです。

Q10
124条(基準日)関連で悩んでおります。なお当社は、100%親会社が存する完全子会社です。
1.臨時配当をする際に、完全子会社であることから株主を確定する必要がないため、配当を受ける株主について特に基準日を定めない場合、配当を受ける株主は、454条により決定する「配当がその効力を生ずる日」現在の株主と考えていいのでしょうか?
2.同様に臨時株主総会を開催する場合、298条により決定する「株主総会の日時」現在の株主が、当該臨時株主総会にて議決権を行使できる株主と考えていいのでしょうか?
3.上記1.および2.のように、基準日を定めずに臨時配当や臨時株主総会を行いたい趣旨は、基準日を定めると124条3項により公告をする必要があるからです。仮に基準日を設定しなければいけない場合、当社のような完全子会社であっても、124条3項による公告は免れないのでしょうか?
投稿 ツェーベーツェー | 2007年10月 4日 (木) 12時43分
A10
1 そうです。
2 基準日を設けない場合はそうです。
3 基準日を設定するならば、公告は必要です。

Q11
株主名簿の閲覧謄写請求で,実質的に競業を営み,または,これに従事している場合,拒否できることにされましたが,この趣旨は「本当のところは」難なのでしょうか。ダヴィンチアドバイザーさんが起こした仮処分で,東京地裁がおっしゃっている理由はどうもしっくりきません。帳簿閲覧権なら,競業している業者が帳簿を手に入れると商売の秘密がばれてしまうかも知れないので類型的に(実際利用可能か,利用する意図があるかを問わず)拒絶可能という法制は妥当だと思います。しかし,株主名簿はそんなことないと思います。特に上場会社でしたら,ライバル会社の株主名簿を見たところで何が問題なのかよくわかりません。事業会社が全うに公開買付をしたり,委任状勧誘を行って,戦うケースで,たとえば,現経営陣がおかしいのでまさに監視の趣旨で株主名簿を閲覧し,同志を募ろうとしたら,あなたは競業だからだめです,というのはやはりちょっと行き過ぎではないか,と思います。また,株主総会の招集決定を得ていたような場合を想定しますと,拒否できたら,もう適法に招集通知を出すことすら出来ません。この改正の趣旨を合理的にどうお考えだったのか,あるいは,この状態になった場合にどのような解決策があって妥当性が確保できるとお考えだったのか,ご教示願えませんか。
投稿 ik | 2007年10月 5日 (金) 02時52分
A11
 これは、確か法制審議会で議論したところでしたね。ikさんのお気持ちもわからないではないですが、上場企業の株主には、その取引先も多いので、あながち不合理ではないように思います。

Q12
旧司法試験の口述試験について,伺わせてください。
先日の発表で,運良く論文を突破しました。しかし,私は法科大学院と二足の草鞋のため,基本書もここ1年以上,読んでおらず,夏休みは新試験の択一問題ばかり解いており,
口述過去問を見ても半分も答えられないようなひどい有様です。
そこで,もし先生が今の私の状況なら,何をされるでしょうか?
それから,実務家の先生からご覧になって,こういう奴は絶対に仲間にしたくない,こういう態度やこういう姿勢の奴は落としたい,と思うような人物像はありますか?もしありましたらご教示いただけないでしょうか。
投稿 ゆり | 2007年10月 5日 (金) 13時50分
A12
おめでとうございます。
口述対策は、
1 家族法や会社の計算などマイナーなところもフォローして穴を作らないこと
2 定義を覚えておくこと
3 一度は、口述の模試を受けること
4 試験管を論破しようなどと、思わないこと。
5 すぐに自分の意見を変えないこと
6 矛盾や問題点を聞かれた場合に、素直にそこが矛盾点であることを認めた上で、何か対策を提案すること
です。

Q13
定款に定めがないにもかかわらず、株主総会の決議を経ずに取締役会の決議のみで公開市場における自己株式の取得を行った場合、取締役・監査役はどのような責任を負わなくてはならないのでしょうか?
投稿 hiro | 2007年10月 5日 (金) 16時20分
A13
分配可能額があるという前提でしょうから、普通に423条、429条の問題なのではないでしょうか。

Q14
会社法の「会社分割」と「株式交換・株式移転」についての質問です。
従来の商法では、事業部門を切り離す場合、事業譲渡や、現物出資・財産引受などが用いられていたようです。(現在の株式分割)
また、完全な親子会社関係を作り出す場合、子会社となる会社の株式を全て買い取る方法や、子会社となる会社を設立し、親会社の事業全てを現物出資していたようです。
(現在の株式交換・株式移転)
 ここでひとつ疑問がわいたのですが、何故、後者の組織再編には、財産引受が用いられなかったのでしょうか?分割で財産引受が可能なら、交換・移転でも可能のように思います。
投稿 nak | 2007年10月 5日 (金) 17時31分
A14
 「従来の商法」は、大昔の従来の商法ですね(ちなみに「現在の株式分割」ではなく、「会社分割」ですね)。
 また、「財産引受」についても用語の理解が不十分なようなので、質問の意味が、いまいちよく分かりませんが、後者の場合でも、法律上は、財産引受けをしたければできたと思います。たぶん、子会社に親会社の事業の全部について支払う対価がないだけの話でしょう。

Q15
459条1項1号に定めのある160条1項、156条1項の自己株式の取得は特定の株主からの自己株式の取得であると考えていたため、その取得方法には市場取引は含まれず、市場取引は165条2項の守備範囲だと解釈しておりましたが・・・459条1項1号の自己株式取得の方法に市場取引も含まれるということが書いてあるものを見つけました。果たしてこれは正しい解釈なのでしょうか?また、正しいのであればそういった解釈はどのように導き出されるのでしょうか?
投稿 hiro | 2007年10月 5日 (金) 19時39分
A15
市場取引は、特定の株主からの取得ではありますが、157条から160条の適用はありません(165条1項)。
ですから、156条1項の決定だけで、市場取引はできるわけです。
とすると、459条1項1号は、160条1項による決定以外の156条1項の決定を取締役会が定めることを認めているので、市場取引における156条1項の決定もすることができるという解釈だと思います。

| | コメント (21) | トラックバック (6)

2006年12月 2日 (土)

事業の価値と株主の保護

 今日は、閑話休題っぽいネタで
  事業の価値と株主の保護
についてお話ししたいと思います。

 会社が、事業の現物出資をして株式を発行したり、事業を承継させる会社分割や合併を行うときに、しばしば論じられるのは、その事業が「債務超過」又は「実質債務超過」であっても、受け入れた会社が株式を発行することができるか、という問題です。

 昔から、「債務超過の会社を吸収合併することができるか」という論点はあり、この点については、旧商法のもとでも「無対価ならばできる」というのが通説でした。
 この通説は、「存続会社の株式が発行されないならば」という意味で「無対価」という言葉が使っていたので、対価が柔軟化された会社法では、無対価でなくても、「存続会社の株式以外の財産」を対価とするような合併ならば許されるというのは、誰もが認めるところだろうと思っています。

 これに対し、実質債務超過の事業を受け入れて、「株式を発行することができるか」という点については、現在も意見の対立があるところです。

 株式発行否定説は、
   株主になるためには、出資によって、リスクを負うことが必要であり、実質債務超過の事業を譲渡するような場合には、譲渡人がかえって、負担が軽くなるのだから、リスクを負担することにはならない
ということを根拠にしているようです。

 これに対し、
   事業の価値を決めるのは、当事者なのだから、実質債務超過というあいまいな概念を用いて、株式の発行を禁止するのは法律関係を不安定にする。株主の保護や債権者の保護がきちんと図られるのならば、株式の発行自体を禁止する必要はない。
というのが私達の考えです。
 実質債務超過という言葉の意味のあいまいさについては、以前、葉玉さんが記事にしていますので、そちらを参考にしてください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50521126

 実際、事業を構成する財産(物、債権、債務等)の値段が「客観的」にいくらなのかを決めるのは、非常に難しい。
 「物」の値付けが難しいのは、上のリンクの記事を見て貰えればわかりますが、特許やノウハウ等も価値評価をすることが大変難しい財産の一つです。
 例えば、一般的には全く使えないような知的財産であるが、ある特定の会社が使ったら、100億円の利益を得ることができるような場合、流通性がないから価値はゼロなのか、それとも、その会社にとっては100億円の利益が得られるから、価値も100億円なのか? 一般的な価値がゼロだから、その知的財産を出資することはできないというのでは、怒る人もいるでしょう。

 難しいのは、権利の評価だけではありません。義務だって評価は難しい。1000万円の債務を負っていれば、マイナス1000万円かもしれませんが、事業譲渡が問題になる場面では、話はそんなに単純ではありません。
 大手企業に商品を納入する義務は、それだけを見ればマイナスですが、その後に継続して商品を納入することができる期待があれば、その期待に価値が生まれます。

 極端な話、例えば、長澤まさみさんが、ドラマの疲れを癒すために、ある会社に電話でマッサージを依頼したとしましょう。
 その場合、私は、その会社が
  「長澤さんの体をマッサージしなければならない義務」
を10万円で売ってくれるのならば、喜んで買います。
 一般的には
 「金を払って、債務を引き受けるのはおかしい。」
と考えるのでしょうが、実際には、債務に値段がつくことだってあるのです。

 このような個々の財産の評価の難しさが分かっているので、事業の価値を評価するときには、純資産を見るだけではなく、配当還元法であるとか、ディスカウントキャッシュフロー法であるとか、いろいろな評価方式を使って評価します。

 しかし、評価方式ごとに、何倍もの開きのある価格が算定されるのが一般的であり、そのこと一つをとっても、いかに「客観的な価値」というものが幻想なのかを思い知らせてくれます。

 こうしたことを考えると、株式発行否定説は、客観的評価のあいまいさや、その評価を適法性の要件とすることの危険性、さらには、一般人にとってはマイナス財産としてしか評価できないが、当事者には極めて高い経済的価値があるものの存在を、見逃していると言わざるを得ないと思います。

 このように事業の価値の相対性を前提にすれば、

一般人が「実質的債務超過」と評価する事業を承継するような場合でも、承継会社が、その事業にプラスの価値があると判断し、株主や債権者が、十分な情報をもとに、承継会社の判断に賛成するのならば、

株式の発行自体を禁止する必要はありません。

 むしろ、大事なのは、株式の発行の可否ではなく
  株主や債権者に十分な情報を与えること
  反対した株主や異議を述べた債権者を保護すること
の2点なのです。

 たとえば、株主の保護の制度としては
  事業の現物出資による新株発行においては、現物出資財産の価額てん補責任
  会社分割や合併においては、反対株主の株式買取請求権
等が考えられ、これらの制度をきちんと機能させていくことが、事業の承継や組織再編に関する諸制度の法的安定性を高めるための要になると思います。

 例えば、最近、MBO(マネージングバイアウト)による非上場化が流行していますが、MBOが行われるときは、通常、株主に
  ① 経営者が出資したSPCによる公開買付に応じる。
  ② 公開買付後に会社とSPCとの株式交換等が行われる場合に、反対せずに、対価を受け取る。
  ③ 株式交換等反対して株式買取請求権を行使する。
という3回の対価の受け取りの機会が与えられます。
 
 経営者側としては、①と②と③の価格は、安ければ安い方が良いため、株主側に
   ①の公開買付にに応じないと、②や③では、もっと安い値段を提示されるかもしれない
という恐怖感があると、非常に安い公開買付価格で、公開買付への応募を事実上強制されるような事態が生じることになりかねません。

 しかし、①から③のうち、③だけは、会社と株主の協議が整わなければ、裁判所が
  「公正な価格」
を決めてくれるという特徴があります。
 ここでいう「公正な価格」は、株式交換等の当事会社が決めた対価に不満な株主を救うために一般的な価格を保障する趣旨で決定される価格ですから、今日の前半で述べたような相対的な価格ではなく
  一般的な価格
ということになります。

 もちろん、既に述べたとおり、一般的な評価方式を用いても、その価格はバラバラになりますが、その欠点を、裁判所の良識によって補うために、わざわざ非訟事件にしているわけですから、裁判所には、諸般の事情を考慮して、適切な価格を決めてもらう必要があります。

 「裁判所は、公開買付価格や株式交換の対価の額に惑わされずに、真に「公正な価格」で買取を認めてくれる」

という信頼が生まれてくれば、株主は
  公開買付価格が安いときは、株式買取請求権を行使すればよい
という安心を得ることができます。

 そうなれば、公開買付をする側も
  公開買付価格が安いと、公開買付自体が失敗する可能性がある
と考えて、適正な値付けをするようになるでしょう。

 株式買取請求権という最後の砦がしっかりと機能することにより、良い循環が生まれるのです。

 これまで行われてきたMBOにおける公開買付価格が妥当かどうかは、私には分かりませんが、制度の健全性を保つために、株式買取請求における「公正な価格」の持つ重要性がこれから高まっていくように思います。

(質問コーナー)
Q1
 略式組織再編・簡易組織再編についてご教示ください。
 非公開会社の完全親子会社間において、無対価で、吸収型再編を行うのですが、この場合、会社法条文上の「交付する」に該当しないため、当然に、略式組織再編・簡易組織再編が選択可能でしょうか?
 また、その場合、会社法796条3項1号の合計額は、必然的に「ゼロ」となり、ゼロを除することができなくなることは、どのように理解したらよろしいのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/30 9:35:53

A1
 796条3項1号の合計額がゼロならば、簡易合併をすることはできます。
 ゼロで除することはできませんが、ゼロを除するとゼロです。
 ちなみに、2号が0ならば、その問題は生じますが、その場合は、簡易合併はできません。

Q2
 A社100%出資による完全子会社(以下、「B社」)の設立に際して、『A社株の一部を現物出資することの可否』についてご教授下さい。

①会社法135条1項(親会社株式の取得の禁止)は、「子会社は、親会社株式を取得してはならない」と規定しており、仮に、当該現物出資を許容すると、B社(子会社)が、A社株式(親会社株式)を取得する状況が作出されるたため、当該現物出資は「不可」と考えますが、いかがでしょうか。

②この点、会社法135条1項5号・施行規則23条4号(子会社による親会社株式の取得の例外的許容事項)の「親会社株式を無償で取得する場合」にあたり、当該現物出資は「可能」という解釈は成り立つのでしょうか。

③「発起人が割当を受ける設立時株式の数」を、「発起人による(現物)出資」に対する(有償)対価とみてよいか否かが問題となっている気がしています。
以上、宜しくお願い申し上げます。

投稿 現代のファイロ・ヴァンス | 2006/11/30 10:25:52
A2
 A社が自己株式を処分するためには募集手続が必要です。ですから、無償は無理ですし、B社を設立する場面ですから、A社の募集手続にB社が応募することができず、135条を持ち出すまでもなく、無理でしょう。

Q3
議決権の不統一行使について質問させてください。

株主はその有する株式を統一しないで行使することができます。
(313条1項)
ところが、取締役会設置会社では 株主は株主総会の3日前までに理由を通知しないと 議決権の不統一行使をすることができません。(313条2項)
この様に、取締役会の設置の有無で差が出る理由について教えてください。
 また募集設立では 将来、会社が取締役会設置会社になるかどうかを問わず、設立時株主は創立総会の3日前までに理由を通知しないと 議決権の不統一行使をすることができません。(77条1項)この様に募集設立で 将来、会社が取締役会設置会社になるかどうかを問わず 理由の通知を要求する理由について教えてください。

投稿 maru | 2006/11/30 14:06:48
A3
伝統です。

Q4
 会社更生法第224条第6項に「第182条の3第3項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合」とあり、同法第182条の3第3項では、「株式交換(更生会社が株式交換完全親会社となるものに限る。)」と規定されています。
 しかし、千問の道標671頁の解説にあるとおり、「株式交換は、完全子会社となる会社の行為であり・・・会社法上「株式交換をする株式会社」(234条1項7号等)とは、完全子会社のみを指す。」のはずですから、会社更生法の規定は、会社法と矛盾しているように思いますが、いかがでしょうか。

投稿 内藤卓 | 2006/11/30 16:53:05
A4
法律ごとの概念の相対性ということで勘弁してください。

Q5
欠損填補のための資本金・準備金の額の減少について教えてください。
定時総会でいわゆる欠損填補のための資本金の額の減少(会社法309条2項9号イロ)を行う際に、単に分配可能額のマイナスを消すだけでなく、表示上の欠損(その他利益剰余金のマイナス)をも消すためには、会社法309条2項9号イロの普通決議とは別に、会社法452条による剰余金の計数変動(会社計算規則50条1項1号により増加するその他資本剰余金をその他利益剰余金に振り替える処理)の株主総会決議が必要ということになるのでしょうか。
他方、欠損填補のための利益準備金の額の減少の場合は、会社計算規則52条1項1号により、直接、その他利益剰余金の額を増加させることができるので、資本金・資本準備金の額の減少の場合とは異なり、会社法448条の株主総会決議のみによって、表示上の欠損も消すことができるという理解でよいでしょうか。
投稿 法務スタッフ | 2006/11/30 19:30:07
A5
資本金を減少しても、その他資本剰余金が増加するだけですので、その他利益剰余金を増加させたければ、452条の決議が必要でしょう。利益準備金を減少すれば、その他利益剰余金が増加するので、別途452条の決議は不要です。

Q6
権利株の譲渡についてご教授ください。
発起人については、出資履行前の権利株の譲渡について成立後の会社に対抗できないとする規定が35条に設けられており、出資履行後についても50条2項に設けられています。
ところが、設立時募集株式の引受人については、履行前の権利株の譲渡について63条2項に規定がある他、出資履行後、会社成立前の権利株の譲渡については規定が見当たりません。
これは、何か理由があるのでしょうか?

投稿 しーぽん | 2006/12/01 2:03:58
A6
それは、確か、ずーっと昔にご指摘がありましたが、特に理由はありません。
でも、会社に対抗することはできないと解すべきでしょう。

Q7
1. 平成8年成立の非公開会社(いわゆる閉鎖会社)
2. 定款には、3月決算、6月定時総会の定めがあり、種類株式を発行する定めがない
3. 旧特例法上の小会社であったが、平成18年2月増資により資本金が1億円を超えた(大会社には該当しない)

以上の様な株式会社において、平成16年定時総会で就任した監査役Aは、会社法施行と同時に任期が満了します。これを防ぐために、

4. 平成18年4月臨時総会において、監査役の範囲を限定する旨の定めを会社法施行と同時に設定する旨の条件付決議

をしました。この場合には、監査役Aの任期について整備法95条が適用されますが、同条にいう「従前の例」とは、旧特例法26条3項でしょうか。それとも、旧商法273条1項でしょうか。

監査役の監査の範囲が拡大しなくなった以上、後者の4年の任期を維持するのが自然だと思われます。が、経過措置本の100ページには「施行時に在任する監査役については、次に掲げる行為等が行われない限り、(1)で述べた現行商法の任期に関する規律が適用される((1)⑤および⑥を除く)」とあり、(1)④のケースが除外されていないのが引っかかっています。
投稿 シーン | 2006/12/01 2:39:19
A7
 なお従前の例による以上、旧特例法26条3項も適用になると解するほかないでしょう。

Q8
新株予約権の目的とされた株式に取得条項を付す旨の定款変更がされた場合には、当該新株予約権者は新株予約権買取請求できないのは、なぜですか?

組織再編についての実務書で何か良いものを知っていたら、教えてください。
もちろん、千問、100問は、既に購入済ですので、それら以外でお願いします(笑)

投稿 パラリーギャル | 2006/12/01 9:05:11
A8
新株予約権買取請求の範囲は、もっぱら政策的な判断というしかないです。
組織再編についての実務書は、まだあまり出ていないと思いますが、郡谷・和久編著の計算詳解が一番よくまとまっています。

Q9
4月5日のQ&A3で葉玉先生は以下のようにご回答されております。

「477条6項で第4章第2節の規定が適用除外されているので、取締役会を置く旨の定款の定めは、清算株式会社では効力を失います。
 清算株式会社が、取締役会設置会社として継続したい場合には、継続決議の際に、取締役会を置く旨の定款の定めをしなければいけません。」

一方、相澤先生・松本先生の清算株式会社の機関設計(登記情報12月号)で
「取締役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社が継続をした場合には、特に定款変更を要することなく取締役会を置くべきこととなる。」
と書かれています。

後者に変更になったと考えてよろしいでしょうか?
A9
 そのとおりです。葉玉さんが答えを書いたころは、主として登記との関係で、保守的な見解を採っていました。
 その後、各方面とすりあわせの結果、「継続時の定款変更は不要」ということで話がまとまりました。ただし、登記は必要です。

Q10
111条2項について教えてください。
株式の内容として譲渡制限のみを規定している非公開会社が、新たに剰余金の配当(108条1項1号)と譲渡制限(108条1項4号)の事項を規定した異なる内容の株式を発行しようとする場合には、『ある種類株式の内容として第108条第1項第4号…に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合』(111条2項)に該当するのでしょうか?
よろしくお願いします。

投稿 リー | 2006/12/01 16:11:59
A10
該当しません。

Q11
会社法第8条1項の「不正の目的」について、教えて下さい。他の会社であると誤認される商号を使用するのは、とりもなおさずそのまま「不正な目的」だと思います。つまり、条文の「不正な目的をもって」は、当然のことへの説明語に思われます。登記簿で公示されている以上、他の会社の商号は知ってしかるべきなので、不正ではない「他の会社であると誤認される商号の使用」がありうるのでしょうか、と疑問に思いました。古い資料ですが、昭和57年4月8日の、参議院会議録の、「96国会、法務委員会第7号」の政府委員のかたの説明にも「不正の目的とは、ある名称を自己の商号として使用することにより、世人をして、自己の営業を他人の営業と誤認させようとする意図をいうと理解されてる」とありました。もしかすると、不正の目的とは、この「意図」の有無で決するのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/12/01 18:06:28
A11
登記されている商号を使用したからといって、不正の目的が必ずあるわけではありません。不正の目的は、意図です。

| | コメント (22) | トラックバック (0)

2006年10月 7日 (土)

異議を述べた債権者

ニモさんが,会社分割における債権者保護手続について,質問されています。

要するに,債権者が現に異議が述べられたにもかかわらず、分割会社が789条5項に定める担保提供等の措置を執らなかったときに,当該債権者が,分割会社に対して,履行を請求することができるかということです。

ニモさんの問題意識は,,789条2項の催告義務違反の場合は、759条2項で,分割会社への履行請求権が認められていますが、789条5項の担保提供等義務違反の場合は、759条2項に相当するような分割会社への履行請求権を特に定めた規定はないところです。

しかし,759条2項は,債権者に異議申述権があることを前提に,債権者がその権利を行使しなかった場合でも,保護されるという特別な規定ですから,異議を述べた債権者について,同様の規定がないことを根拠に,分割会社への請求を否定するのは無理です。

では,異議を述べた債権者は,何条を根拠に分割会社に対して請求することができるかというと,まずは789条5項でしょう。

同項は,「債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。」と規定しています。

簡単にいえば,分割会社は,異議を述べた債権者に,履行期が到来していれば弁済し(特定物の給付を含みます。),そうでなければ,担保提供等の義務を負います。

この分割会社の義務は,会社分割の効力発生日後も,当然に継続しますから,ニモさんの事例のように,分割会社が担保提供義務を拒否しても,単に債務不履行に過ぎず,ずっと担保提供等義務を負い続けているのです。

 そして,その後,履行期が到来すれば,分割会社は,789条5項に基づき,担保提供義務ではなく,弁済する義務を負うと考えます。
 もちろん,ニモさんの事例のように,特定物の引渡債務である場合には,分割会社は,履行不能で損害賠償義務が生ずるだけでしょうが,いずれにせよ,担保提供を怠っている場合には,履行期後は,分割会社は,損害賠償義務を負う点は,催告義務違反の場合と同じです。

なお,もう一つのアプローチは,789条4項の反対解釈として、異議を述べた債権者は,吸収分割を承認したものとはみなされないことです。

合併の場合には,消滅会社の法人格自体が消滅してしまいますから,異議を述べた債権者が「存続会社に移転されたくない」と考えても,合併無効の訴えを提起する以外,その望みは通りません。

しかし,会社分割は,分割会社の法人格はあるので,「債務の移転の効果は生ずるが(会社分割は有効),異議を述べた債権者については,「免責」を認めない」という解釈も十分なりたちます(労働契約承継法で労働者が異議を述べたときも,似たような処理ですが,同法は,労働者に対する権利を含めた契約の移転の承継自体を認めないものなので,ちょっと違います。)

 もっとも,こちらは,789条5項ただし書に該当する場合の解釈が難しく,異議を述べれば,常に,分割会社の「免責」を認められないというわけにはいかないと思います。
 このあたりは,どこにも文献がない世界なので,私も断言するのは差し控えたいと思いますが,789条5項ただし書に該当しない限りでは,免責を認めないというアプローチはあるではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

(質問コーナー)
Q1
A種,B種に譲渡制限の定めが設けられている場合に,譲渡制限の定めがないC種の株式を新たに定めた場合,336条4項による役員の退任はあるのでしょうか?
 条文の文言は「~の定めを廃止する定款の変更」の時に任期が終了すると去れていますが,条文の趣旨から考えると上記の場合にも非公開会社から公開会社になる場合なので,役員が退任する場合のように感じます。
投稿 ヒーロー | 2006/10/05 21:11:58
A1
なるほど,そういうパターンもありますね。
調整の必要がありますが,全部の株式の内容としては,廃止されたと見て,退任と捉えるべきでしょう。

Q2
サミー様、Q2で質問をさせて頂いた会社法初級です。
私の理解が悪いので、再度具体的に質問をさせていただきます。
たとえば、総会決議日が6/15日、配当支払開始日が6/18日からとしますと、
剰余金の効力発生日は6/18日になるということでしょうか。
ご回答願います。
投稿 会社法初級 | 2006/10/05 23:23:49
A2
発想が間違っています。
総会でどのように定めたかによって決まるので,総会決議日を効力発生日と定めれば,総会決議日が効力発生日であり,配当支払開始日を効力発生日と定めれば,配当支払開始日です。
 通常は,配当支払開始日を決めているのなら,その日が効力発生日と見るのでしょう。

Q3
千問のQ352に関してご教示ください。
読解力がないもので、回答の4行目以降の「株式会社が自己新株予約権を取得した場合には、当該新株予約権が自己新株予約権でないとすれば、行使することが可能なものである限り、当該株式会社が当該自己新株予約権を処分することにより、別の者が新株予約権者として再び新株予約権を行使することができることとなるので、287条の規定の適用はない」・・・の意味が全く理解できません。。。
具体的にどのようなケースのことを言っているのか、お教えいただけましたら幸甚に存じます。どうぞ宜しくお願い申しあげます。
投稿 悩める株式課員 | 2006/10/06 12:20:18
A3
読解力というより,分かりにくい文章でした。ようするに,現在の新株予約権者が行使できなくなったから,当然に消滅するのではなく,誰が新株予約権者になったとしても行使できなくなったときに消滅するということです。

Q4
サミーさん、「株主総会の目的たる事項」の範囲につきお尋ねいたします。
旧商法では、232条2項に「会議の目的たる事項」という表現があり、一般的に報告事項と決議事項を総称して「会議の目的事項」と称していたと思います。各社の招集通知もそのような記載となっていました。
会社法319条では「株主総会の目的である事項について提案をした場合において」とあり、決議事項は「目的である事項」なのだと思いますが、320条では「株主総会に報告すべき事項を通知した場合において」とあり、「目的である事項」という用語が用いられていません。これは報告事項は「株主総会の目的である事項」に含まないという趣旨でしょうか。
そうだとすると、招集通知は
(報告事項)
○○報告の件
(本株主総会の目的である事項)
第1号議案 ××の件
のように記載するのが正しいでしょうか。
投稿 CCC | 2006/10/06 18:26:08
A4
報告を目的とする総会を否定するものではありませんので,報告事項も「株主総会の目的である事項」に含みます。

Q5
御質問は,「機関」概念は改正前商法と会社法では実質的に変容したのでしょうか?何故このようなことを疑問に思ったかと申しますと,会社法においては,「会計監査人」が「機関」とされたからです。「会計監査人は,昭和49年商法改正以来導入されたものであるが,旧会社法のもとでは会社の外部にあって会社と契約関係で結ばれているものと解されており」(前田庸「会社法入門[第11版]」(有斐閣・2006)331頁),改正前商法のセンスからすると,どうも「機関」というのがしっくりきません。私は「機関設計の自由化」のパーツとして,会計監査人を入れざるを得なかったので,これを会社法上は「機関」の扱いにしただけと思うのですが,だとすれば会社法に規定されている「機関」という概念は,従来の講学上の「機関」概念と異なり,機関設計の自由化のための単なる機能概念になったのではないかとも考えられるような気もします。裏返せば,会計監査人って,ほんとに機関なのかという単純な疑問なのですが,いかがでしょうか?実務上はどうでもいいことですが。
投稿 T.I.ネットワーク | 2006/10/06 20:49:08
A5
もともと,「機関」という概念は不明確なものでした。会社法は,旧商法では機関とされていなかった取締役・会計監査人も機関に含めていますので,機関概念は変わったのでしょう。なぜ変わったのかは,会社法100問の機関設計自由の原則のところを読んでください。

Q6
葉玉先生時代に既出かとは思うのですが、譲渡制限株式の譲渡承認機関?(139条1項但書)ついて質問させてください。
① 譲渡承認機関を定款で監査役にしても良いか?
② 同じく譲渡承認機関を三委員会のいずれかの機関にしても良いか?
③ 特定の大株主にしても良いか?
④ 株主でない会社と全く関係のない個人にしても良いか?構わないとするならば、その個人が死亡した場合、その地位は相続されるのか?
以上お答えを頂ければ大変ありがたいです。激務の中大変恐縮ですが宜しくお願いいたします。
P.S ライブドアのブログの検索機能はもうちょっと向上できませんでしょうか?
激務の方々に同じ質問をしてお手数をかけることが申し訳ないので。
投稿 NK | 2006/10/06 21:51:35
A6
①監査役の職責と矛盾しないかどうかですね。断言するのは難しいです。防衛策の一環だといえば,大丈夫かもしれないです。
② ①と同じです。あまり普通じゃないですが,駄目とまでいえるかどうか。
③ 会社の機関ではないので,駄目そうです。
④ 駄目だと整理しています。

Q7
以前このブログで、「総会終了時に退任した役員に支払った報酬については次の事業報告での開示義務がなくなった。すると、その退任役員に支払われた退職慰労金は、事業報告では開示されないが、それで良いですか?」と
いう趣旨の質問に対し、初代サミーさんは、何らかの形で記載したほうが良い旨を
回答されておられました。この記載の要否の明確化については、今回の省令改正案
の中では特に触れられていないようですが、やはり、記載すべきであるということなのでしょうか?
投稿 みひろ | 2006/10/06 22:58:23
A7
その点は,今回の改正案にはありません。
重要な事項ならば,開示すべきですが,重要でなければ,開示は不要です。一般的には,①退任する総会に提出する事業報告に与える予定の退職慰労金を記載する必要がある,あえていえば、過去の事業報告に記載してない報酬を与えるので、よっぽどのことがない限り、重要事項なので個別に開示する必要がある
②ただし,あくまで与える予定の退職慰労金であり、賞与と同じように、結果的に、少しくらい違っても仕方がない
③退職慰労金を与える予定がなかったのに、退任する総会(ないし、その後の総会)で与えることが決まったのなら、よっぽどのことがない限り、重要事項なので,個別に開示する必要がある

ということでしょうか。

Q8
LEC司法試験課の最新パンフ(商品コード:LV06025)17ページに、12月開講予定の講座として、
『新会社法100問徹底整理講座』
『C-BOOK会社法徹底攻略講座』
が掲載されており、紹介文には、
・立法担当官の視点から、わかりやすく解説いたします。
・立法担当官以外の見解にも言及します。
との記載がありました。
もしかして・・・、上記2講座の担当者は、サミー先生でしょうか??
投稿 昭允 | 2006/10/07 7:11:01
A8
違います。

| | コメント (223) | トラックバック (0)