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2009年3月21日 (土)

会社訴訟・非訟と個別株主通知

 DVD「会社法と実務」全10巻は、おかげさまで、沢山のお申し込みをいただいております。大変ありがとうございます。
http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 更新の度にコマーシャルをするのは申し訳ないのですが、実は、もう一つコマーシャルさせていただきます。

 この度、民事局時代に株券の電子化の担当者だった私と仁科さんで、商事法務から

 「株券電子化ガイドブック 実務編」

という本を出しました。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A0%AA%E5%88%B8%E9%9B%BB%E5%AD%90%E5%8C%96%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%AE%9F%E5%8B%99%E7%B7%A8-%E4%BB%81%E7%A7%91-%E7%A7%80%E9%9A%86/dp/4785716347

 この本は、上場株式の株主、質権者、株式事務に携わる担当者、株主名簿管理人、証券会社の法務担当者等、上場株式に関係する方にとって役に立つQ&Aや資料等を集めたものです。

 内容は、盛りだくさんですが、一般の株主さんをはじめ、株式質をとっている金融機関、弁護士、上場企業の総務法務担当者等あらゆる人に役に立つのは
  上場株式の株主・株式質権者のためのQ&A
というパートだと思います。
 
 たとえば、
  株式、新株予約権、転換社債、ETF, REIT等が株券電子化によってどうなったのか。
  失念株主や略式質権者が電子化後に自分の権利を守るためにどうしたらよいか。
  株主が配当を受けたり、少数株主権等を行使する場合の手続きはどうするか。
  株式を市場外で売買したり、担保に入れたりする場合の注意点は何か。
  振替株式に対して強制執行するときにどうしたらよいか
等上場株式その他の有価証券について、よくある質問に、できるだけ分かりやすく回答しています。

 回答の中には、この本にしか載っていないこともありますし、どの説明も、実務的な回答をしていますので、きっと役に立つと思います。

 それから、
 有価証券担保提供証書(担保差入書)
 売買契約書
 定款変更議案
 株式取扱規則
 ストックオプション引受契約
 持株会規約
等のひな型を、ポイント解説付で掲載しています。

 特に、有価証券担保提供証書は、金融機関や事業会社が株式担保を取るときのスタンダードになっているものですから、株式担保に関わっている方は、ぜひ逐条解説を読んでいただければ、と思います。

 また、情報提供請求権や総株主通知請求権における「正当な事由」について、株式取扱規則に規定していない上場会社も多数あるようですが、株式取扱規則のひな型と解説をみて、導入を検討した方がよいでしょう。

 さらに、主として弁護士向けに、
  振替株式の差押命令申立書、仮差押命令申立書
のひな型も掲載しています。これも、たぶん、この本にしか掲載されていません。

 このように、ひな型とポイントの解説だけでも価値のある本であると自負しております。

 そして、この本で、一番ページ数を割いているのは
     読み替え、折り込み版の振替法
です。
 振替法は、政令省令委任が多い上、株式等の規定を準用して読み替え表を置いている規定も多いため、弁護士でも、その内容を読み取るのに苦労します。
 そこで、読み替え規定が置かれているものは読み替えた上、政令省令の条文を法律の該当部分に織り込んで、読みやすくしました。
 振替法の条文を調べなければならない人にとっては、天国のような条文集です。

 さらに、
   振替法によって変更される会社法の規定
を抜粋して掲載しています。
 どのように会社法のルールが変容しているのか、コメントをつけていますので、上場会社について会社法の適用が問題になるような場合には、ガイドブックを参照していただき、振替法の特例が置かれていないかどうか、チェックしてください。

 この他、証券保管振替機構の業務規程のように、上場株式に関わる人にとって重要だけど六法に掲載されていないものや、情報提供請求権のガイドライン等、株券電子化に関わる資料がてんこ盛りです。

 弁護士だけではなく、上場株式の法務に携わる人にとって必携の本だと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、「株券電子化ガイドブック」刊行記念として、
      株券電子化時代の会社訴訟・非訟の手続
についてお話ししたいと思います。

 会社法は
  代表訴訟や株主総会決議取消しの訴えのような特殊な訴訟手続
  株式買取請求における株式価格決定の申立てや株主総会検査役の選任申立てのような非訟手続
を用意し、株主に提訴権・申立権を認めています。

 このような提訴や申立ては、一定の要件を満たした株主だからこそ認められるものですから、
  原告・申立人が株主であることは、訴訟要件
であり、株主でなければ、訴えや申立ては却下されます。

 そこで、従来から、提訴や申立てにおいて、原告・申立人は、自ら「株主であること」を疎明しなければならないこととなっており、株主としては、株主名簿の謄本を示したり、株券を保有していることを示したりしていました。

 株券電子化後も、原告や申立人が自らが株主であることを疎明しなければならないのは、同じなのですが、振替法では
  株主が単独株主権・少数株主権を行使する場合には、個別株主通知をしなければならない
というルールがあるので、
  株主が、個別株主通知をし、会社に到達後2週間(改正後は4週間)以内に提訴・申立てをしなければ、当該提訴・申立ては、不適法
となります。

 つまり、振替法は、少数株主権等を会社に対して行使する場合においては、
   株主名簿ではなく、
   個別株主通知を会社に対する対抗要件にする
こととしているのです。

 したがって、裁判所が株主から提訴・申立てを受けた場合には、株式が上場株式であるときは
   株主に「個別株主通知をしたこと」を疎明させる
のが適切です。

 ところが、今のところ、裁判所は、このあたりの取扱いが確立していないせいか、従来のように株主名簿の謄本等をもとにした疎明が行われているようです。

 会社が被告となったり、申立ての相手方として審尋が行われれば、会社が
   原告・申立人が個別株主通知をしていないこと
を主張・立証することで、判決や決定がなされることを防止することができますが
      株主総会検査役の選任申立て
のように、会社が審尋を受けることがないまま手続きが進行すると
  申立人が個別株主通知をしていないにもかかわらず、選任の決定が行われる
ことになりかねません。

 裁判官も万能ではないので
   個別株主通知という制度を知らない
人がいるのは仕方がないことですが、その確認を怠ったまま、決定を出せば
   会社が即時抗告をすれば、取り消されてしまう
ことになり、裁判所や申立人にとって、手間、時間、コストの無駄が生じます。

 したがって、裁判所においては、上場会社の株主であることの疎明として
   個別株主通知の受付票
を確認する実務を確立させてもらいたいと思います。

 受付票は、振替法が義務づけている制度ではありませんが、株主が口座管理機関に個別株主通知の請求をしたときには、必ず交付される実務になっていますので、
  個別株主通知をしたこと
    請求日
    株式数
等を確認するには最適です。

 個別株主通知が会社に到達した日は、受付票からは読み取れないため、「到達後」2週間(改正後は4週間)以内の提訴・申立てかどうかは、分からない場合もあるものの、とりあえず通知の日付を基準に判断し、期限ぎりぎりの場合には、申立人に「会社への到達日がいつか」を疎明するよう指揮すれば十分だと思います。

なお、株主であることの確認において、注意を要するのは
  株式買取請求権における価格決定の申立て
のときです。

 たとえば、合併に伴う株式買取請求権の場合
   存続会社の株主からの買取の効力は、会社が株主に代金を支払った時
に生ずるのに対し、
   消滅会社の株主からの買取の効力は、合併の効力発生日
に生じます。

 そのため、価格決定の申立てを行う時点において
   存続会社の株主は、まだ株式を保有しており、個別株主通知をすることができますが
   消滅会社の株主は、すでに株式を失っており、振替口座上の記録も抹消されていますから、個別株主通知をすることはできません。

 したがって、消滅会社の株主が、価格決定の申立をする場合には

   合併の効力発生日の直前において、消滅会社の株主で「あった」こと
      (株式買取請求権の行使のときの個別株主通知の受付票)
を疎明すれば足り、
   価格決定の申立時の個別株主通知は不要
と解すべきです。

 理論的に言えば、会社法上、価格決定の申立権は
      存続会社では、「株主」に認められる権利であるのに対し
  消滅会社では、効力発生日の直前に「株式買取請求権を行使した株主であった者」に認められる権利
であるため、後者については、振替法の個別株主通知に関する規定が適用されないということになります。

 「株券電子化ガイドブック」には、こうした細かな問題点を含めて、実務の知恵が詰まっていますので、参考にしていただければ幸いです。
 
 商事法務の京美人編集者のボーナスが、この「株券電子化ガイドブック」の売れ行きにかかっているという噂もあるので、本日は、普段よりも五割増しのコマーシャルをさせていただきました。

(質問コーナー)
Q1
お忙しく働いておられる先生がスタッフとして一緒に仕事したい!と思われる人はどのような素質を備えた人でしょうか?
投稿: ruru | 2009年3月 6日 (金) 08時52分
A1
 スタッフは、それぞれの役割があり、必要とされる素質も役割ごとに違います。
 ただ、共通するのは、
  正直であること
  責任感があること
  時間を守ること
の3点です。

Q2
今回のA2でご紹介のあった下記の記事に目を通してみたのですが、そのなかに、、
「弁護士の年俸として、「年収500万円だと弥生時代から働らかなければならない」というほど稼ぐのは無理だと思いますが、アテネオリンピックくらいの収入がないと、先行きが不安になってくるでしょう。」
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_7d09.html
とありますが、
1、「弥生時代から働く」とは、具体的にどのくらい働くことを意味するのですか?
また、なぜその働きぐあいを「弥生時代から働く」と表現するのですか?
2、「アテネオリンピックくらいの収入」とは、具体的に年収にして何円のことを意味するのですか?
また、なぜその金額を「アテネオリンピックくらいの収入」と表現するのですか?
投稿: 平石眞男 | 2009年3月 6日 (金) 12時32分
A2
1 年表を見てください。表現はしゃれです。
2 あなたの思う金額です。表現はしゃれです。

Q3
弁護士という仕事(刑事弁護)について、「なぜ犯罪者の味方をするのですか?」と聞かれたら、葉玉先生はどのようにお答えになりますか?
また、仮にその質問をした人が小学生くらいであるとしたら、回答をどのような表現でお伝えになりますか。
投稿: あべ | 2009年3月 7日 (土) 02時02分
A3
 犯罪者も人間だからです。
 人間は、良いところも、悪いところも含めて一人の人間です。
 あなたも、お父さん、お母さんから叱られるような悪いことをしたことはあるでしょう。
 でも、一度悪いことをしたからといって、あなたは、救いようのない悪人というわけではないですよね。
 弁護士が犯罪者の味方をするのは、裁判官に、犯罪者の悪いところだけではなく、良いところも見てもらって、その人の「本当の姿」を分かってもらうためです。

Q4
小沢氏の秘書逮捕について、東京地検特捜部は、どうもその先の汚職逮捕を見据えて逮捕したようで、小沢氏はご自身の息のかかった幹部クラス検事がいることから、不起訴にさせる圧力の意味を込めて強気の記者会見をしたようですね。
A4
収賄罪は、あっせん収賄以外は、行為者に職務権限がないと成立しません。
小沢氏は、野党党首であり、国会議員に過ぎません。
プロであれば、汚職の成立は可能性が薄いことが、捜査の開始時から分かっていると思います。
 また、特捜部が、被疑者を逮捕して、起訴しないことは、普通ありません。逮捕の時から、起訴は決まっているといっても過言ではなく、不起訴にさせる圧力をかけても何の意味もありません。

Q5
実は、私、現行司法試験を7年ほど前に挫折したのですが、
葉玉先生のレジュメを使っていた(何回もまわした)憲法は
ずっと択一、論文ともに良い結果が出ておりました。
7年のブランク明けでも憲法は何もしないでもバッチリなほどです。
(私が大学入学するのと入れ替わりに葉玉先生は東京へ行かれた
 と伺っておりました。そのゼミからかなり合格者が出ておりました。)
一度はあきらめた司法試験ですが、退職して一念発起。
ロースクールの教授の中には、
新司法試験は旧司と違う、等と力説される方もいます。
ですが、入学して1年。私は勉強の基本スタイルは
旧司のときと何ら変わっておらず、
INPUT教材としてであれば、かつての葉玉先生の
レジュメがいちばんいいなと改めて痛感しております。
葉玉先生のレジュメは今もあるのでしょうか?
早稲田のロー生ゼミではあの形式のレジュメは
復活していたのでしょうか?
投稿: 葉玉ゼミ生の後輩 | 2009年3月 7日 (土) 14時52分
A5
 一問一答と、過去問の解答例ですね。
 昔のパソコンのハードディスクの中を探せば、どこかにあると思いますが、最近は使っていません。

  Q6
清算人の解任について質問です。
清算結了登記まで済んでいる会社の代表清算人(清算人は当該1名のみ)を解任して、新たに別の者を代表清算人に選任するには、どのような手続きが必要でしょうか。
会社法では株主総会の決議によって解任・選任できると規定されていますが、清算結了してしまっているので株主がおらず総会決議ができないと理解しています。
例えば、親会社のサラリーマンが子会社の代表清算人を引き受けて処理したが、その後退職するにあたり10年間の重要書類保管義務を後任に引き継ぎたい、といったケースです。
投稿: ジャッキー | 2009年3月 7日 (土) 15時54分
A6
 508条2項は使えませんでしょうか。

Q7
今回の地検は、あまりに政治的影響が強すぎる捜査ではないかと思うのですけれど、もと検事である先生はどうお感じですか。
国策捜査などというつもりはさすがにありませんが(笑)、
政治的な影響を司法が与えてしまうということについて、
無頓着すぎるような気がいたしますが、実際のところ考えないのでしょうか。
投稿: 教え子その1 | 2009年3月 7日 (土) 19時14分
A7
 今回の事件の着手時期は、適切です。
 証拠関係を考えれば、西松の事件をやっている最中なので、参考人聴取がやりやすいというメリットがあります。
 しかも、これから選挙が近づけば近づくほど、逮捕しにくくなりますし、小沢氏が総理大臣になった直後にその秘書を逮捕するのは、今よりももっと社会的影響が大きいでしょう。
 犯罪がそこにあり、逮捕しなければならないというシチュエーションに置かれたとしたら、どこで逮捕するのが適当か、考えてみてください。
 今がベストです。

Q8
今日は,株式市場の低迷についてお尋ね致します。
先生は日本株の低迷は今後何年間くらい続くとお考えでしょうか?
私は現在数銘柄を保有しておりますがどれも膨大な含み損で憂鬱な日々です。
「あと1-2年で底打つ」と根拠の無い希望を持っていますが,著明な経済学者の中にはあと10年間景気悪化は続くという方もいます。
法的問題ではないので根拠は不要です。
投稿: だいざぶろう | 2009年3月 8日 (日) 08時46分
A8
低迷というのは、相対的なものです。
日経平均7000円で株を始めた人は、短期間で10%以上利ざやが取れています。
バブル期に購入した株式は、いまだに含み損です。
株価の値上がり益を目指すならば、保有銘柄が値上がりすることを期待するよりも、損切りして、値上がりする銘柄に乗り換える方が得策です。
そうでなければ、配当のよい銘柄を長期保有した方が、普通預金よりも有利です。

Q9
先生の著書「新・会社法100問」の第3版について、近日中に出版される予定はございますでしょうか。

以前のブログ(2008年3月 9日 (日))では、現在発売されている第2版について、当分改訂のご予定はないとのことでしたが、ちょうど1年が経過していたので、ご質問させていただきました。
投稿: 法科大学院生 | 2009年3月 9日 (月) 23時50分
A9
改訂予定はありません。
省令改正があるので、改訂したいところですが、暇がありません。

Q10
ある要件の該当性(たとえば刑罰法規の明確性の有無)が問題となる際、判例や学説では、一般人を基準として判断すべきであるとしつつ、担当裁判官ないし学者の個人的見解をもって、(あたかもそれが一般人の見解であると断定するかのように)結論を導く、ということがよく見受けられます。その見解につき一般人多数からアンケートをとって検証したわけでもないのに、どうしてこのような判断が正当化されるのか不思議に思っていますが、裁判官や学者は、自らを一般人の代表であるかのように振る舞うことが許されるということでしょうか?
投稿: 一般人の一人 | 2009年3月10日 (火) 03時04分
A10
一般人として振る舞っているわけではありません。
裁判においては、裁判官が、法律を解釈・適用する権限を持っているので、法律要件として、一般人基準が要請されるのならば、裁判官が、自ら信ずるところに従い、一般人基準が何かを考え、事実に当てはめているだけなのです。もし、その裁判官の考え方が間違っていれば、上訴すればよく、裁判という制度の中で裁判官が下す判断の信頼性を確保しているのです。

Q11
先生は,「基本書の読み込みをしてもよいが,3時間で読めるものが良い」と,おっしゃっていると思います。
これは,「3時間で読めるものを選択すべき」なのか,「3時間で読めるように1冊を何度も読んで,最終的にそうなるようにする」なのか,それとも違う考えなのか,どうなのでしょうか?
一番膨大な量を読まなくてはならない民法に限っていいますと,試験に必要な知識が整理された予備校の択一本でも約700頁くらいあります。となると,これが最低限抑えておきたい知識の量だと思います。そうすると,なかなか3時間で読むことは難しいと思います。しかも,論文用も併記するとさらに困難が伴うのではないかと。
体的に,何をどのように「3時間で読む」かについて,教えていただければと存じます。
よろしくお願いいたします。
投稿: こんにちは | 2009年3月11日 (水) 13時52分
A11
もちろん最初から3時間で読めるはずはありません。
テキストを何度も読む中で、「読まなくてよい部分」「ここだけ読めばよいという部分」に印をつけていき、3時間で読めるようなテキストを自分で作るのです。

Q12
実務において英語はどういったところで役に立つのでしょうか。渉外事務所でしか役に立たないのでしょうか、教えていただけると幸いです。
投稿: | 2009年3月11日 (水) 17時54分
A12
私は、日本人を相手にする仕事がほとんどですが、今の日本企業は多かれ少なかれ、外国企業と取引をしていますし、検事だって、英語の証拠物が押収されることもありますから、時々、英語を使います。

Q13
弁護士の就職難が叫ばれるなかですが、なんとか就職口がみつかりそうです。
地方都市の小規模事務所です。いわゆる「マチベン」です。
私は脱サラして実家のある地方ローに入り、昨年の試験に合格しました。
もともとは渉外事務所で「最先端」の仕事に就くことに憧れがありました。
大手への就職が難しいと思ったとき、苦労しても都会の大きなローに行くべきだったかとも思いました。
しかし、ローで過ごした3年間の喜怒哀楽を思えば後悔はしていませんし、現実的にそれ以外の選択肢もありませんでした。
今年三十路を迎えるのに就職先が確保できるだけでも万歳と思っています。
そこで、地方の事務所で「最前線」の弁護士としてキャリアスタートする決意をしました。
どんな仕事でも誇りをもってやっていくつもりです。そして、最前線でキャリアを積みながら、いつか渉外事務所で勤務できるようになりたいとも思っています。弁護士の就職難は当分続くでしょうから、仮に渉外事務所への再就職の可能性があったとしても、即戦力を求められるでしょうし、その壁は中小企業に就職した新卒が国際優良企業に総合職として転職するより難しいことは想像できます。
 そこで、先生やお知り合いの事務所をみて、そのようなキャリア形成の方はいらっしゃるのでしょうか(おそらく過去にはいたでしょうが、5年、10年後にはどうでしょうか)。また、弁護士大増員を前提に、新人弁護士として、渉外事務所に再就職するために、どのような仕事や知識を身につけていくのがよいのでしょうか(はじめは仕事は選べないでしょうが、心持やあえて専門形成など)。
 それとも、いっそのこと「最前線の鬼小隊長」のような弁護士を目指すべきでしょうか。
投稿: 小隊長 | 2009年3月11日 (水) 20時45分
A13
 法律の世界には、事実と法律があるだけで、最前線というものはないように思います。
 どんなケースでも、そのケースに特異の部分があり、最適の解決法があります。あえていえば、目の前の事実に最適解を見つけることができれば、それが「最前線」でしょう。
 地方の法律事務所に勤めた後、お金を貯めて自費で留学したり、役所の任期付任用のキャリアを経て、大事務所に入っている人は、結構いると思います。
 夢があるのならば、それに向かって努力すれば、どうにでもなります。

Q14
2006年07月17日の会社法における基本的制度というテーマについて質問させてください。

『4 株主 vs 株式会社
  → 株主権(配当請求権・議決権・残余財産分配請求権・単独株主権・少数株主権)
  → 株式譲渡自由の原則
  → 反対株主の株式買取請求権』
とありました。ここに株主平等原則を加えるのは間違っていますでしょうか?
株主平等の原則は
『1 株主 vs 株主
  → 株主平等の原則』
とでておりました。
投稿: 短答が近くて忙しい50歳 | 2009年3月14日 (土) 12時01分
A14
 間違いではないでしょう。

Q15
今年の東大入試(前期)ですが、久留米大附設からの合格者は38人でした。
ちなみに、先生は中学から附設なのでしょうか?
また、東大を目指したのはいつ頃でしょうか?(小学生、中学生、高校生)
投稿: ルージュの伝書鳩 | 2009年3月14日 (土) 12時57分
A15
私は、中学から附設です。
附設は、中学入試の偏差値はそれほど高くないのですが、大学合格実績は、東京の有名私立高校よりも良いので、結構、お得な学校です。
東大を目指し始めたたのは、高2の3学期くらいだったかなあ。
法律家になることは全然考えておらず、「東大文Ⅰなら潰しがきくだろう。」と思って、決めましたね。

Q16
757条、762条、2条29号30号から、合名会社・合資会社は分割会社になれないと読み取れます。
その趣旨ですが、私が持っている教科書には「分割会社の債権者に不利益をもたらすから」と書いてあります(江頭)。これは無限責任に期待していた債権者が、無限責任社員にかかっていけなくなる可能性があるから、ということなのだと思います。
しかし、それは合併において持分会社が消滅会社になってしまう場合も同じことだと思います。しかし会社法は合名会社と合資会社が消滅会社になることを否定していません。
消滅会社になるのはOKで分割会社になるのはダメな理由は何なのでしょう。
投稿: yasuchan | 2009年3月14日 (土) 13時22分
A16
組織変更ができるのですから、合併ができるとしても問題ないからです。
会社分割は、分割会社の法人格を残したまま、債務だけを分割することもできるので、悪用されるリスクがあるから、制限しているのでしょう。

Q17
持分会社の種類変更につきまして質問させていただきます。
種類変更の際、債権者保護手続は不要でありますが、どのような趣旨で不要と解せばいいでしょうか?
合名が合同に種類変更しても従前の無限責任を負う社員として変更後も居続けるからといったことでしょか?
投稿: 匿名希望 | 2009年3月16日 (月) 14時27分
A17
そうです。

Q18
現在、毎日論文の勉強をしています。
具体的に申しますと、
1.パソコンで答案を作成する

2.予備校やローの勉強をする

3.2と同様の範囲の答案を復習する

4.2で参考になることがあった場合には、
それを具体的な答案の内容として反映させる
という形で勉強をしています。
 
こうして答案を日々更新しているのですが、
たとえ自分で納得のいく答案が出来ても、
独善的になっていないかどうか、それが気がかりです。
(もちろん誰かに見てもらうのが一番ですが、
すべての答案を添削してもらうことは不可能ですし・・・)
 
論文の勉強において、独善的な答案にならないために、
気をつけるべき点があれば、教えていただけないでしょうか?
大変恐縮なのですが・・・どうかお願いします。
投稿: モッフン | 2009年3月16日 (月) 20時08分
A18
声を出して読んでみることです。独善的な答案は、自分で読んでみても不自然さを感じます。
なお、「答案は絶対に手で書く」こと。パソコンは駄目です。書き始めたら、後戻りできないという手書きで答案を書くことに大きな意味があります。

Q19
記者会見についての法的判断と、政治的判断は、違うんですかね。
正直、最初の記者会見で、小沢さんがいわば平身低頭していたとしても、どれほどプラスだったか、疑問です。つまり、強面というイメージが、ある種の売りであったのに、捜査機関が出てくると腰砕けになる、というマイナスのイメージが出来てしまい、穏便にすませた会見が賢明だ、穏当だという評価を受けることは、なかったのではないかと思います。それに、今回の事件は無理筋のようにも思え、今後は、世論を見極めながら落としどころを探るという、後出し的な解決に落ち着くような気もします。印象論で申し訳ありませんが。法的な発想、過去の特定の経験に基づいたコツなるものの、限界を感じますが、いかがでしょうか。
投稿: 失礼しますが、 | 2009年3月16日 (月) 22時44分
A19
今回の事件は、全く無理筋ではありません。
事実の把握と処分の予測が正確であれば、起訴ないし有罪になったとき、小沢氏が不利な立場に置かれるのは、最初から見えています。
この確実な予測を前提に、最初の報道対応をすることが重要なのです。

実際、前回の記事を書いた後、小沢氏と民主党の支持が急降下し、小沢氏の態度はやや変容していますが、最初に検察批判を展開したため、小沢氏としては、対応が難しくなっています。

もし「政治資金規正法違反ではない」ということを前提に代表の座に居座り続ければ、選挙で政権交代を訴えても、有権者は、しらけてしまうのではないでしょうか。
他方、小沢氏が、世論の動きを見ながら、態度を変えてしませば、麻生総理と同じように、小沢氏も、「言うことがコロコロ変わる」と批判されるのではないでしょうか。

今後の展開としては、起訴時の記者会見が重要でしょう。
ここで小沢氏が徹底抗戦の構えを見せれば、民主党も、それに追随せざるをえず、選挙戦では窮地に立たされるでしょうし、小沢氏が、しぶしぶ「愚痴」「言い訳」がにじみ出るような謝罪会見をすれば、それも批判されるでしょう。

もし謝罪するのならば、「潔い」印象を与えてほしいところです。

ただ、私の勘では、仮に謝るとしても、プライドを捨てきれない会見になるような気がします。
最初に記者会見で言ったことを自己否定することは、人間にとって難しいことで、どうしても引きずられます。だからこそ、最初の記者会見で、先を見通すことが大事なのです。

マスコミ対応は、政策論ですので、どのような対応がベストなのかは、事後的に評価するしかないのですが、落ち着いた頃に、私の考えた対応が適切だったか、「失礼しますが」さんが考えた対応が適切だったかを、検討するのも面白そうですね。

Q20
合資会社が株式会社に組織変更する場合の登記手続きで要求される資本金の額の計上に関する書面について質問させてください。
 この書面の記載内容につき、「資本金○〇円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号の規定に従って計上されたことに相違ありません。」としている書籍と「資本金○〇円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号及び第53条第1項の規定に従って計上されたことに相違ありません。」としている書籍とに分かれています。
 合資会社が株式会社に組織変更する場合は、あくまで会社がその同一性を維持しながらその組織を変更する手続きであり、資本金の構成はそのまま維持されます。(会社法千問Q880)
 そこで、会社計算規則第57条第1号を資本金の額の計上に関する書面の記載内容とすることについては理解できます。
 しかし、会社計算規則第53条第1項の規定に従って計上されたことまで要求しているとすれば、それは組織変更時の資本金の計上だけではなく、合資会社が設立されてから組織変更するまでの資本金の計上まで証明しなければならないこととなりますよね?

このような理解を前提として、
1 登記の添付書面として登記が通るものかどうかということは抜きにして、理論的に、会社計算規則第53条第1項を資本金の額の計上に関する書面の記載内容とすることを先生はどう考えられますか?合資会社では、資本金が登記事項ではないので組織変更前の資本金の計上についても会社計算規則第53条第1項を記載内容とすることで証明しなければいけないのでしょうか?

2 仮に、会社計算規則第53条第1項を記載内容とするとして、

  ①社員が履行した出資の価格(②を除く)        金○〇円
  ②社員が履行した出資のうち帳簿価格を付すべき場合の帳簿価格の合計額
                                   金○〇円
  ③資本金の額又は資本剰余金の額から減ずるべき額と定めた額
                                   金○〇円
  ④資本金等限度額(①+②-③)             金●●円
  ⑤資本金の額                         金●●円

上記のとおり、資本金●●円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号及び第53条第1項の規定に従って計上されたことに相違ありません。

と記載することになりますが、最後三つの●●部分は同じ金額が入るという理解で良いでしょうか?

計算規則について、理解が不十分なため質問が膨大になってしまいましたが、
どうかご教授していただけませんか?よろしくお願いいたします。

投稿: | 2009年3月16日 (月) 23時33分
A20
合資会社も出資時に資本金を計上しますが、登記されないので、その計上の正確性について法務局は何の証明も受けていません。
 そこで、法務局に組織変更の登記をするときに、組織変更時の資本金の計上(=組織変更前の資本金)だけではなく、組織変更前の資本金がきちんと計上されたことを証明をさせるのは、理論的にはおかしくないと思います。

Q21
剰余金の分配に関してご教示お願いします。
中間期に利益が見込めない(中間期に赤字となる見込みの)場合に中間配当を行おうとする場合、その前の定時株主総会で任意積立金を取り崩して「中間配当積立金」などに計上して対応していたと思いますが、この考え方は会社法の下でも変わってないと考えてよいのでしょうか。(貸借対照表上、「別途積立金」は十分に計上されている前提です。)
投稿: 悩ましい | 2009年3月18日 (水) 19時31分
A21
変わっていません。

Q22
会社法31条で定款の備置き及び閲覧等とありますが、会社成立後は、本店及び支店にて、株主及び債権者と裁判所の許可を得た親会社社員が会社の営業時間内に会社の定めた手数料をもって閲覧可能となっていますよね。
では株主になろうとして、または自社の従業員がどんな定款なんだろうと調査の目的で定款(特に相対的記載事項など)を見る場合の方法はあるのでしょうか?
特に非公開会社で株主兼オーナーの場合になると、役員や幹部クラスすら定款を見せてもらえないような場合もあるとききます。
誰でも取得可能な登記事項証明書には必要最低限の事項しか確認できないようなので不思議に思っています。
投稿: ぴんぽん | 2009年3月18日 (水) 20時46分
A22
株主・債権者以外の者が定款を見る権利はありません。

Q23
ブログをいつも有効に活用させていただいております。先般取り上げておられました個別株主通知と総会検査役について質問させてください。実は総会検査役選任事件に仕事上よく関わるのですが、株主(原告)資格の確認(=継続保有)を裁判所が発行会社に対して照会しているケースを殆ど(≒全く)聞いたことがありません。電子化以前は、申立人が疎明していることなのかなあ、と思っておりましたが、電子化後は決定的に個別株主通知(現在は抹消減少証明も)での確認が必要ですよね。裁判所が原告資格を確認しているのでしょうか? 発行会社が株主提案(特に共同提案など)を受ける場合はかなり神経を尖らして資格審査をしていますが、一方似たような検査役選任申立では、会社法874で不服申し立てすらできないのに、裁判所の審査面でどうも疑問があるのですが・・・。
投稿: T/A | 2009年3月18日 (水) 23時51分
A23

Q24
現在会計士試験を目指しているものでして、度々、貴サイトを閲覧させて頂いております。
リンクの方はフリーでしょうか?
投稿: 作山 | 2009年3月19日 (木) 02時31分
A24
フリーです。

Q25
 葉玉先生、こんにちは。
 ロー未修(4月から)2年目の者です。
 今回のコメントにある「こんにちは」さんの質問ともかぶりますが、民法の「直前に見回す資料」として、「判例六法」を使うか「択一六法」を使うかで迷っています。
 ①両者のメリット・デメリット
 ②「判例六法」はどんな人向けで、「択一六法」はどんな人向けか
 ③どの時期から「買い替え」を控えるべきか(2011年に試験があるとして、現在出版されている択一六法or判例六法で臨んでもいいのか、それとも、2010年に出版される最新のものを買うべきか)
 ④それらをどのように使うか(間違った箇所にマークする、過去問に出た箇所をチェックする等)
 ⑤その他、思い浮かぶこと
を教えてください。
投稿: 春から未修2年目 | 2009年3月19日 (木) 09時22分
A25
 好きなものを使ったらいいでしょう。
 ただし、六法は、常に最新の六法を使うべきです。
 

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2009年3月 6日 (金)

記者会見のコツ

 確定申告の申告期限が近くなってきたので、申告の準備をぼちぼちしていま
す。

 同僚の弁護士の中には、税理士に依頼している人もいるのですが、私は、税
金関係の仕事をすることも多いので、申告の肌感覚を失わないように自分で帳
簿をつけて申告書も書いています。

 このように私は、自分の収支を全て管理しているので、入出金の詳細もすべ
て把握しているのですが、小沢代表ほどの人になると、そういうわけにもいか
ないようですね。

 秘書の政治資金規制法違反被疑事件で、大揺れに揺れています。

 この事件は、非常にシンプルな話であり
   政治家個人の資金管理団体は、企業から政治献金を受けることができな

というルールがあるにもかかわらず、
   政治家個人の資金管理団体の会計責任者が、企業からの政治献金である
と知りつつ、ダミーの政治団体から政治献金を受けた
という疑いがあるというものです。

 小沢代表は、この逮捕に対し、昨日、記者会見を開きましたが、本日は、こ
の記者会見をネタに
   不祥事発覚時の記者会見
についてお話をします。

 私は、企業向けにマスコミ対策のセミナーをやったことがあるせいか、企業
の不祥事が起こったときに
  企業の法的責任を最小化しつつ
  報道被害を被らないような報道対策をアドバイスする
という仕事を依頼されることが比較的多いように思います。

 また、私は、以前、義父に対する深刻な報道被害に対し、義父を助けながら
週刊誌・テレビ・夕刊紙・スポーツ新聞と、数年にわたって戦い続けたことが
あるので、その時の経験から
  各種マスコミが、取材対象に対し、どのような対応を取るのか。
ということをそれなりに理解しているつもりです。

 私のこうした経験に照らして考えれば、今回の小沢代表の記者会見は
  失敗だった
と思います。

 不祥事が発覚し、マスコミ対応を迫られるときの最大のポイントは
   過剰な連鎖的報道を防止すること
です。
 なぜならば
  1回ないし短期間の報道ならば、レピュテーションは対して低下しないが
  長期間にわたる連鎖的報道は、致命的な風評被害や社会的な死をもたらす
からです。
 
 マスコミで報道されると、報道された人は、多かれ少なかれ、ショックを受
けるのですが、単発の報道であれば、世間の多くの人は気付かないか、気付い
てもあっと言う間に忘れます。

 それに対し、連鎖的報道がなされると、本当は大した不祥事ではないにもか
かわらず、世間の人は、重大事件のように感じて、報道された人に「悪人」の
レッテルを貼り、そのうち、
   見ず知らずの人が、根拠のないデマをあたかも見たことのように喋りは
じめたり
   違法ではない行為を、極悪非道の行為のように評価されたり
するようになります。

 こうした連鎖的報道が企業を倒産に追い込むことすらあることは、昨今の各
種「偽装」事件で明らかとなっているところです。

 では、そうやったら連鎖的報道を予防できるのでしょうか。

 そのコツは、ケースバイケースではあるものの、大雑把に言えば
   1 マスコミから完全に隠れる
   2 とことん謝る
   3 他のもっと重大な事件に関心を移させる
のどれかということになるでしょう。

 たとえば、1の「完全に隠れる」というのは、あまり有名でない人や企業の
場合には、有効な手法です。

 マスコミは、国民が感心を持ちそうな事件を報道することで飯を食っている
ので
  「人」又は、その人がやった「行為」
のいずれかで関心を引く必要があります。

 このうち「行為」は、一度報道してしまうと、他に報道するに値するような
「行為」を見つけてこない限り、すぐにネタ切れになってしまうので、連鎖的
報道には向きません。大量殺人や猟奇的殺人のような場合は、行為そのものに
対する関心で、それなりに長期間報道されますが、それでも「行為」だけなら
ば、通常1週間が限度でしょう。


 これに対し、国民が、その「人」自体に関心を持ってくれると
  その人の生い立ち、知人友人からの評価等、比較的取材しやすいネタで間
を持たすことができるし
  その人に突撃取材をすれば、その人の取材に対する対応自体がネタになる
という点で、長期間、報道を継続することができます。

 逆に、国民が、その「人」に対する関心を持つことができなければ、報道は
、比較的短期間で収束します。

 そのため、あまり有名でない人や企業の場合、マスコミの取材から完全に隠
れ(場合によっては海外に身を潜め)ていると、ネタがなくなり、報道はすぐ
に収束に向かいます。

 この場合、大事なのは、「完全に隠れる」ことであり、渦中の人が、中途半
端に記者の質問に答えたり、ぶら下がりの取材に捕まったりすると、思わず
  テレビカメラの前で、視聴者の怒りを買うような言動をしてしまい
いきなり
   「有名人」に格上げ
されてしまいます。

 もっとも、今回の小沢代表のようにもともと有名人の場合には、「完全に隠
れる」という方法は採れません。

 有名人が隠れると、朝青龍のときのように、その所在探し自体が、ネタにな
るので、かえって連鎖的報道を誘発します。

 ですから、有名人や有名企業の場合には、不祥事が発覚したら、すみやかに
(できれば、その日のうちに)、記者会見を開く方がベターでしょう。

 その際、できる限り、「目立たない」「無個性」な言動で、冷静な会見を行
うことに気をつけるべきです。

 テレビの視聴者にとって、記者会見は、一種のショーです。

 面白ければ、何度でも見たくなるし、型どおりならば、一度見れば十分です
。きっと、二度目からは、別のチャンネルに回したくなるでしょう。

 だからこそ、有名人の記者会見でも、連鎖的報道を避けるために、目立たな
い、無個性な会見を心がけるべきなのです。

 ところが、小沢代表は、今回の逮捕について、怒りを露わにし

   政治的にも法律的にも、非常に不公正な国家権力、検察権力の行使だ

等と、かなり目立つ会見を行いました。

 この会見は強烈で、今後、事件の進展の度に、テレビで何度でも報道される
でしょう。
 その一点だけを考えても、不祥事発覚時の記者会見としては、あまり適切な
対応とはいえません。
 小沢代表は、強面のおじ様なので、テレビ的には、非常に悪役にしやすいキ
ャラですから、
    沈痛な面持ちで、誠実な回答
を心がけないと、視聴者の反感を買うだけです。

 また、秘書の行為が適法である旨断言した点については

    記者会見前になすべき基礎的な事実調査をやっていないか
    事実認定の見通しが甘いか

のどちらかであり、後日、マスコミから
    適法であると断言したこと自体を非難される
のは、ほぼ確実であるように思われます。

 本件は、報道を見る限り
   客観的にダミーの政治結社からの献金であるという点は反論できないだ
ろう
と思われ、そうすると、政治資金規正法違反かどうかの分水嶺は
   秘書が、西松建設からの企業献金であるということを知っていたか
という点になります。

 このように、客観的事実については争う余地がほとんどなく、秘書の主観に
よって左右されるような状況で、小沢代表が

   何ら政治資金規正法に違反する点はない

等と断言するのは、危険です。

 案の上、今日になって
   秘書が西松建設宛てに送った請求書
という主観的要素を裏付ける客観的証拠が存在することが明らかになり、たっ
た一日にして
 
  小沢代表の昨日の発言は、何だったの?

ということになってしまいました。

 請求書の内容にもよりますが、そのような請求書が実在するとすれば、起訴
される可能性は極めて高く、しかも、否認事件であれば
   次の衆議院議員選挙までに、判決が確定しない可能性
も、かなり高いです。

 この請求書の存在は、逮捕前からマスコミはある程度知っていたようであり
、小沢代表サイドが
   そのような重要証拠の存在を知らなかったとすれば、調査が甘く
   知っていたとすれば、見通しが甘かった
というほかないでしょう。

 いずれにせよ、この事件は、自白事件にでもならない限り、長引くのはほぼ
確実であり、今後、小沢代表は、マスコミと接する度に
  「何ら政治資金規正法に違反する点はない」と断言したことについて、厳
しいツッコミがされる
でしょうし、起訴されたり、有罪判決が出たりすれば、
  「今でも、不公正な国家権力、検察権力の行使だと思われていますか?」
などという答えるのが大変むずかしい質問が浴びせられるでしょう。

 私は、
   客観的事実について確実に争うことができる証拠を握っているとき
ならば、小沢代表のように

   あえて潔白を強く主張することにより、ピンチをチャンスに変える

という方法を採るかもしれませんが、本件のように客観的事実を争うことが難
しい場合において、秘書が被疑者となっている事件について
   断定的な発言をすること
は、絶対にしません。

 たとえば、本件ならば
   秘書が逮捕されたことにより、世間をお騒がせして申し訳ない。
   秘書からは企業献金とは知らなかったと聞いており、私としては、長年
、一緒にがんばってきた秘書を信じたい気持ちで一杯である。
しかし、秘書の主観がどうであれ、実質的な企業献金だったすれば、今
回の献金は許されないことであるから、事実関係を調査の上、もし企業
献金であった場合には、即刻、返金する。
   また、万が一、秘書が本当に政治資金規正法違反を犯しているとすれば
、私は責任逃れをするつもりはない。
   私は、私の目で、検察の主張が正しいのか、秘書の主張が正しいのかを
確認し、政治資金規正法違反の事実があったと判断すれば、当然、その責任を
取る。
とでも答え、基本的には
    とことん謝る
という路線をとるの正解であるように思います。

 部下が悪いことをしたときに、責任逃れをせず、しっかり謝る上司は、評判
があがるので、今回のケースでは、小沢代表が思いっきり謝った方がよかった
のではないでしょうか。

 おそらく、小沢代表が強気の発言に終始したのは
   責任問題に言及すれば、秘書の起訴と同時に、どんな責任を取るのかと
いう点に関心が集まってしまう
ということが念頭にあったのかもしれません。

 しかし、小沢代表がどのような発言をしようとも、党首の秘書が政治資金規
正法違反の刑事裁判を抱えたままで、政権をかけた選挙に突入するというのは
、民主党にとっては、考えにくいシナリオであり、起訴がほぼ確実であるとみ
るのならば
    引き際の好感度をどう高めるのか
を考えた方が得策ではないでしょうか

(私なりに好感度を高めるシナリオは考えているのですが、実際に進行中の事
件に関することなので、自粛します)

 いずれにせよ、この件を短期間で幕引きさせることができれば
    献金問題が他の党に飛び火して
いつの間にか、この件の印象が薄くなったり、
    別の問題で与党が沈んだり
して、選挙までに盛り返すことも不可能ではないでしょう。

 私は、民主党の味方でも、自民党の味方でもありませんが、今回のような不
祥事においては
   迅速な調査により、希望的観測ではなく、事実を見すえ
   今後の検察や裁判の動きについての正確に予測し
マスコミを早く落ち着かせる
ことが大事なのに、小沢代表は、今のところ、どれもうまくやれてないように
見えるのは、私だけでしょうか。

追伸

 DVD「会社法と実務」全10巻は、おかげさまで、大変、好調な滑り出し
を見せております。
http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 企業の法務研修用に1セットあれば、今後、低コストで、かつ、担当者が楽
をして(笑)、研修を実施できますので、ぜひご検討ください。
 よろしくお願いします。

(質問コーナー)
Q1
 私は不真面目な法学部卒で、未修としていわゆる一流の法科大学院に通って
おります。恥ずかしながらGPAの数値も、それ以外での評価もそれなりに高
いものをいただいております。司法試験の過去問にあたっても、客観的に判断
してもいい勝負をしているのではないかと思えます。

しかし、私自身、「私は法律をマスターした、または、マスターしつつある」
という実感を全く持てておりません。司法試験が法曹資格を得るための試験で
あることを考えると、合格レベルに達したときには、そのような実感が得られ
るはずだと思っていたのですが、このような理解は誤りでしょうか。

また、葉玉先生ご自身が、法律をマスターしたと感じられたのは、いつ頃でし
ょうか。

投稿: 未修2年系男子 | 2009年3月 3日 (火) 01時22分

A1
 法律を「マスター」した実感なんて、実務に出て、自分で何件か事件を解決
してはじめて生まれてくるものでしょう(しかも、その事件と同種の事件につ
いてだけ)。
 合格レベルに達しただけでは、マスターなどほど遠いと思います。

 
Q2
ご多忙の中、ブログ更新、楽しみにしています。
法曹を目指す私にとって、新司すら高いハードルですが、先生は、日経弁護士
ランキングに載るなど、数多いる普通の弁護士の中でも、他にはない優れた特
質をお持ちだと思っています。(先生ご自身は否定されるかもしれませんが。

そこで、下記についてどのようにお考えか、これからの勉強も含めた指針にな
るような言葉をいただければ幸いです。いつか、どこかでお会いしたり、一緒
に仕事できる日を目指して。。。

○優れた法律家として持つべき特質(複数回答可。←偉そうにすみません。た
だし、下記と重複しないような、法律家特有の思考・法解釈の姿勢・視点等の
観点から)。
○クライアントの信頼を得て、満足してもらえるために持つべき特質。

投稿: 希望を現実に | 2009年3月 5日 (木) 11時14分
A2
とりあえず、次の記事を読んでください。

http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_7d09.html

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2009年3月 1日 (日)

個別株主通知

久しぶりの更新で、いきなりコマーシャルというのもナンですが、ずーっと以前に告知しておりました

  DVD「会社法と実務」 全10巻

が、LOTUS21のサイトで発売開始となりました。

http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 このDVDは、私が、全10回にわたり、

   企業の法務総務担当者
   法律専門家
   司法試験、司法書士試験、公認会計士試験等の受験生

等を対象に会社法の使い方を実務に則して分かりやすく解説したものです。

 1回から3回は、お試しでインターネットで見ることができますから、それを見ていただければ分かりますが、できる限り初心者にも理解できるよう心掛けて講義しているものの、実

務に役立たないことを勉強しても仕方がないので

  こういうことをやりたいときには、どうしたらよいのだろう?

  この規定が邪魔になるときには、どういう工夫をすればよいのだろう?

 というプロの疑問にも答えられるよう、実務上の小ネタ、裏技の類もふんだんに盛り込んでいます。

 
  講義は、各巻ごとに、独立したテーマを扱い、それぞれ完結しています。
  
  これは、条文に沿って勉強するよりも、あるテーマで問題になる条文を有機的に解説する方が「生きた知識」になると考えているからです。

  また、1回約2時間で1テーマとなっているので、会社の研修等にも使いやすいと思います。

 
 このDVDについては、さっそく「久留米在住の人」さんから、次のようなご質問をいただきました。

「ついに115講のDVD発売ということですが、このDVDの対象者に法科大学院の生徒は含まれますか?
つまり、率直に聞きますと、新司法試験に「使える」講義でしょうか?学生は常に金欠なものでして・・・」

 私は、「使える」と思います。

 このDVDは、具体的な答案の書き方を教えるものではありませんが、新司法試験は具体的事例に対し条文を使いまわす試験なので、このDVDの中で解説される事例の分析の仕方や

条文解釈のポイントは、新司法試験に役に立ちます。
(各種試験に役に立つと思われるので、学生限定のストリーミングサービスを用意しています)

 
 なお、各講義中、その場をもりあげるために、やや過激な発言をしていることもあります。
 そこらへんは、笑って許して下さい。

 価格は
  DVD10巻セット 98,000円(税込)のところを
           3月31日までの特別価格は、なんと「8万8000円」

  単品販売は、各回 1万2000円

  学生限定 ストリーミングサービス 10回 2万8000円

です。

 この手のDVDは数が出ないので、映画のように安くできないの心苦しいのですが、法律系のDVDとしては破格の値段に設定しているつもりです(通常、実務に役に立つ法律系セミ

ナーは、一人1回2-3万円はとられると思いますが、特別価格ならば、1巻8800円です。)
 
 会社で1セット購入して、毎年、新人研修に使ってもらえれば、非常にお徳用なのではないかと思います。

 また、学生限定のサービスは、予備校の会社法の講義より安くすることを目指しました。

 ちなみに、パブコメ中の会社法施行規則等の改正には、まだ対応していませんが、公布された時点で、購入者に対して、追加情報を提供する予定ですので、安心してお買い求めくださ

い。

 私のノウハウを詰め込んだDVDですので、一人でも多くの人に見ていただけると、大変、嬉しいです。

 さて、長い前振りはこの辺でおしまいにして、本日のテーマ

     「個別株主通知」

について、お話しましょう。

 最近、この個別株主通知について、「社債、株式等の振替に関する法律施行令の一部を改正する政令案」のパブリックコメントが開始されました。

 個別株主通知は、振替法(社債、株式等の振替に関する法律)の制度であり、振替株式(≒上場株式)の株主が、単独株主権・少数株主権を行使する前提として行わなければならない

通知のことです。

 
 株券の電子化の前は、上場会社の株主が、少数株主権等を行使するためには、株主名簿または実質株主名簿に株主の氏名等が記録されることが必要でした。

 そのため、株式を購入した人が、少数株主権等を行使したい場合には  

    (1)株券の交付を受けて株主名簿の名義書換をする
または、(2)証券保管振替機構に預託されている株券ならば、決算期・中間決算期に実質株主名簿が作成されるのを待つ

という方法を取る必要がありました。

 この方法については、株主にとって、それぞれ次のデメリットがありました。

 (1)名義書換

  ① 名義書換に時間と手間がかかる
  ② 株式市場で株式を売却するときには、株券を預託しなければならない証券会社が多いため、一旦、名義書き換えをすると、売却をしたくても、すぐに市場売却できない。
  ③ 名義書換をした後に、株券を機構に預託すると、機構名義に書き換えられてしまうため、次の実質株主名簿に載るまで、単独株主権・少数株主権は行使することができず、また

、継続保有期間が途切れてしまう。

 (2)実質株主名簿
  ① 原則として、1年に2回しかアップデートされないので、株式を購入してすぐに単独株主権・少数株主権を行使することはできない。
  ② 6か月の継続保有要件がある少数株主権等に関しては、実質的に約1年間行使することができない場合がある。
   (実質株主名簿に2回連続で株主の氏名等が記録されることが要件となるので、たとえば、3月決算会社の株式を4月に購入した株主は、その年の9月末の翌年の3月末の実質株

主名簿に記録される翌年の4月まで、当該少数株主権等を行使することができない。
  ③ 機構から株券の交付を受けた場合、次の基準日までに名義書換をしないと、機構名義の失念株主となり、名義書換をするまで株主としての権利を行使することができない。

 
 また、株券の電子化後は、上場株式は、すべて振替株式になり、株主名簿は、原則として、決算期と中間決算期の2回しか、アップデートされません。

 そのため、次のような問題を解決する必要がありました。

  ① 期中に株式を購入した株主が、すぐに少数株主権等を行使したい場合、従来のように株券を引き出して名義書き換えをするという手段を取ることができない。

  ② 株主名簿に記録されている株主が株式を売却しても、株式取得者が名義書換を行うことができないので、株主名簿に記録されている株主が、現在も株式を保有しているという蓋

然性は高くなく、会社が、期中において、株主名簿を基準に株主に少数株主権等を行使させることは困難である。
  (従来は、株主名簿に記録されている株主から株式を買った人は、すぐに名義書換をするため、株主名簿に記録されている株主が、現在も株式を保有しているという蓋然性が高かっ

た)。

 以上のような従来の制度のデメリットを克服し、かつ、新制度の問題点を解決するための制度が「個別株主通知」なのです。

 つまり、振替株式の株主が、少数株主権等を行使したい場合には、まず、その振替株式が記録されている口座を管理している証券会社や信託銀行等(口座管理機関等)に対し
    「個別株主通知」の請求
をします(その際、実務上、口座管理機関等から「受付票」を交付されます)。
 
 すると、口座管理機関等及び振替機関(機構)を通じて、その振替株式の発行会社に対し、
   ① その株主の氏名等
   ② その口座に、何株記録されているか
   ③ その株式が、通知対象期間(請求前6か月+14日間)において、いつ何株購入され、何株売却されたのか
等という情報が通知されます(個別株主通知)。

 これで、会社は、その株主が少数株主権等を行使することができる要件を備えているかどうかが分かるので
   株主は、株主名簿に記録されているか、どうかにかかわらず、少数株主権等を行使することができる
ようになるのです。

 この個別株主通知制度には、次のようなメリットがあります。
 
 ① 株主は、名義書換をしなくても、少数株主権等を行使することができるようになった。
 ② 6か月の継続保有期間は、実際に株式を購入した日からカウントされるようになった。
 ③ 従来のように機構への株券の預託や機構からの株券の引き出しによって、少数株主権等の行使が制限されるような事態がなくなった。
 ④ 少数株主権等を行使した株主であっても、株式を迅速に売却することができるようになった。
 ⑤ 会社は、個別株主通知を見て、株主の6カ月間の株式保有状況を知ることができるので、安心して株主からの権利行使に応ずることができるようになった。

 反面、従来の制度と比べると

  株主名簿に記録されている株主でも、個別株主通知をしなければ、少数株主権等を行使することができない

というデメリットもあります。
 
 ただ、このデメリットは、株主名簿のアップデートが年2回に限定されていることから、やむをえない制約です。

 
 立案プロセスにおいては、「株主名簿に記録されている株主の少数株主権等の行使については、個別株主通知は不要である」
という法制度も検討されたのですが、もしそのような制度を採用すると、

  ① 会社は、少数株主権等の行使の度ごとに、情報提供請求権を行使して、その株主の株式の保有状況を調査しなければならなくなる。
   (情報提供請求権は、会社が振替機関等に費用を支払って行わなければならないので、一部の株主の権利行使により、会社(ひいては、すべての株主)が高いコストを負担しなけ

ればならなくなる。)

  ② 会社が、その株主の株式の保有状況を調査している間は、履行遅滞に陥らないものとしなければならないが、その期間を法定することは困難であった。

  ③ 法律上、情報提供請求権は、会社が、株主の口座がどこの証券会社等に開設されているかを知らなければ行使できないこととされており、株主が、自分の口座の所在を隠すと、

会社は情報提供請求権を行使することができない(この問題点は、実務の工夫によって、解決されましたが、立案当時は、そのような実務上の工夫がされるかどうか不明でした)

という問題があり、採用されませんでした。

 つまり、個別株主通知は

  株主の少数株主権等の行使に伴うデメリットの解消と
  会社が情報提供請求権等により株主の株式保有状況を確認せずに権利行使に応じられる状況の確保

という2つの要請を満たすことを目的とした制度なのです。

そこで、今回のパブリックコメントに付された政令の改正について、その妥当性を検討します。

 今回の改正は、簡単にいえば、
  
  「個別株主通知が会社に到達した後、どのくらいの期間、その通知は有効か?」という点について、
   従来は、「2週間」だったものを「4週間」に延長する

というものです。

 この期間が短ければ
   株主は、個別株主通知が到達した後、すぐに権利行使をしないと、もう一度、個別株主通知をしない限り、権利行使できなくなる
ので、期間が長い方が、株主にとっては有利です。

 他方、個別株主通知は、個別株主通知の請求時までの株式の保有状況を通知するものですから、この期間が長くなりすぎると
   個別株主通知の請求後に、株主が株式を売却することができる期間が長くなり
   「個別株主通知の内容が、現在も継続している」という蓋然性
は薄れます。

 その結果、会社は、通知後の株主の株式保有状況を確認するために、情報提供請求等を行使しなければならなくなるでしょう。

 こうしたバランスを取るために、現行政令は、利害関係者の意見を聞きながら、その期間を
   2週間
と定めたわけです。

 この2週間は、理論的に導かれるものではなので、1週間でも、10日間でも、4週間でも、バランスが取れていればOKなのですが、それにしても、現行政令の施行直後に、いきな

   4週間

という案が出たのは何故なのでしょうか。

 通常、単独で株主権を行使するような場合には、2週間もあれば十分ですから、今回の期間の延長は、複数の株主が共同で株主提案権を行使する場合に対応するためであろうと推測さ

れます。

 提案権は、議決権の1%または300個以上の議決権を持っている株主が行使することができる権利であり、複数の株主であわせて300個の議決権を持っている場合には、共同で請

求することができます。

 共同請求の場合には、通常、各株主が個別株主通知の請求を行い、各株主が中心となる株主に受付表と委任状を交付し、中心となる株主が、他の株主を代理して、共同で提案権を行使

するという手順を踏むことになります。

 株主の一部について、個別株主通知が2週間以上遅れたり、証券会社の一部の対応が遅れたりした場合には、2週間以内に全員の受付表や委任状が集まらないこともあるので、改正案は、4週間に延長しようとしているのでしょう。

しかし、2週間を4週間にすれば解決できる程度の不都合なら、提案権を共同で行使する株主がきちんと協調すればよく、施行直後に政令を改正するほどの必要性があるのか、疑問は残ります。

そもそも、そうしたニーズに対応するためには、本当は、政令改正など必要ではありません。

証券保管振替機構の規則改正で、個別株主通知の通知対象期間を7か月に延長してもらえば十分です。

そうした上で、たとえば、ABCという3人の株主が、共同で提案権を行使する場合において、Cの個別株主通知の手続きが遅れたような場合には

 先に個別株主通知の手続きができたABが通知の到達後2週間以内に、後日、Cの提案権行使が行われることを停止条件として、共同の株主提案権を行使する

こととすればよく、わざわざ政令を改正するほどのことはありません。

 仮に、株券の電子化直後で個別株主通知に関する証券会社等のシステム整備が遅れているという理由で政令改正をするのであれば、

   経過措置として、今年に限って、4週間とする

ということでも良さそうです。

 さらに、どうしても政令の本則を改正するというのであれば

  株主提案権の行使のみ4週間とし、それ以外は2週間とする

という改正も考えられます。

 施行後に、実際に生じた不都合を是正するために、必要な政令の改正を行うのは当然ですが、施行直後のこの時期に、すべての少数株主権等について、具体的な不都合が生じていると

は考えにくいところであり、こんな時期に改正案が出てくると、多くの人が

   現行政令のときにパブコメをし忘れた声の大きな人が、株券の電子化後に法務省に圧力をかけたのではないか。

と憶測してしまいます。

 個別株主通知については、法制審議会以来、利害関係者との長く困難な調整と、パブリックコメント手続きを経て決定されたものであり

   施行直前に、よく分からないルートから苦情があったので、施行後すぐに改正する

というのは、あまり格好のよいことではありません。

 この改正は、理論的な話ではないので、前の記事にとりあげた

    200単元制限という理論的におかしく、誰の役にも立たない改正
   (しかも、わざわざ法制審議会を開いて改正するようなマターではないため、ずっと不合理な規定が残り続ける改正)

とは異なり、理論的に4週間がおかしいというわけではありません。

 しかし、現行政令の「2週間」は、法制審議会の当時から考えると、6年の歳月をかけて議論してきた結晶ですから、

   これが、実際の不都合が生じていないのに、あっけなく4週間に変わる

ということになると
   法務省は、当時の議論を反故にした
と感じる人もいるだろうというのが、気になります。

 少なくとも、当時、利害関係者が妥協した線とは大きく異なるので、個別株主通知をめぐる解釈論を少し会社よりにする必要がありそうです。

 たとえば、この期間が4週間に伸びれば、その分、通知の内容が、現在の状況と同じであるという蓋然性は下がるので

   会社が、情報提供請求権を行使し、情報を取得するまでは、株主の少数株主権等の行使に応じなくても、履行遅滞に陥らない。

と解釈すべきであろうと思います。

 さらに、過激なことをいえば

  会社は、株式取扱規則により、個別株主通知に記録されている株式が記録された口座の特定に関する情報(口座番号等)を株主に質問することができる

とか

  会社は、株式取扱規則により、情報提供請求権の手数料を株主に対して償還することができる

とか、そういう解釈を検討するのもアリなのではないでしょうか。
 

 株式取扱規則の部分は、半分、冗談ですし、きっと法務省も政治的に苦しい立場におかれたのだとは思いますので、4週間について反対するわけではありませんが、施行直後の政令改正案は、そうした政治的な部分が鮮明に見えてしまうため

   せめてシステムの対応の遅れを理由に経過措置のみ改正して、今年の年末ころに、再度、本則の改正について議論する

という落とし所の方が、関係者の理解を得やすかったのではないか、と思ってしまいます。 

(質問コーナー)
Q1
 葉玉先生が刑事弁護までされているのはちょっと意外でした。
 私は、検察の起訴罪名が謙抑的に過ぎるのではないかと思うことがあります。私なんかは「これだけの間接事実じゃちょっと弱いかもしれない。でも、裁判所が認めてくれる確率は五

分五分かな」と思ったら、重い罪を主位的訴因として、軽い罪を予備的訴因として起訴することは構わないと思うのです。それを軽い罪で起訴してしまうのは、被害者にとっては不満だ

と思います。
 もちろん捜査を尽くすことが前提ですが、それでも「五分五分」だと思ったら、検事はチャレンジすべきなのでしょうか?そうすべきでないとすれば、なぜでしょうか?
投稿: ロー生 | 2009年2月12日 (木) 15時21分
A1
 起訴時から予備的訴因として起訴することはないですね。
 私は、自分の事実認定の見通しについては、かなり絶大な自信を持っているので、「もしダメなら・・」ということは考えません。
 「証拠が弱いから、軽い罪で・・」というようなことも、ほとんどしたことありません。
 
Q2
今回は検察時代の話ですので、刑法がらみの話題でもよろしいでしょうか。
教室事例のような現実の事件です。
仮にこれが真実であれば、条件説といわれる判例の立場では既遂罪が成立すると思うのですが、
相当因果関係説では未遂罪にとどまるのでしょうか。
結構、限界事例だと思うのですが。
また、先生がこのような事件を弁護するとしても、
本日の記事のようにされるのでしょうか。
 A市で2007年某月、横断歩道上で女性が首を絞められている最中にタンクローリーにひかれて死亡した事件があり、殺人罪に問われた同市B区、元会社員○○被告の初公判が12日

、C地裁(××裁判長)で行われた。
 ○○被告は「殺意はなかった。首を絞めたことも覚えていない」と殺意を否定し、起訴事実を否認した。
 起訴状によると、○○被告は07年某月日早朝、B区の横断歩道上で、あおむけになった同区の飲食店従業員△△さんに馬乗りになって首を絞めた。
その後、〈1〉頚部圧迫による心停止〈2〉頸部骨折で身動きできなくなった後、通りかかったタンクローリーに頭部をひかれて脳挫滅――のいずれかで△△さんを殺害した、としてい

る。
2月12日の読売新聞HPより(実名等一部省略しました)
投稿: | 2009年2月12日 (木) 17時50分
A2
 経緯次第ですが、たぶんその事例は、実務的には、相当因果関係がほぼ確実に認められるでしょう。

Q3
 私は法科大学院の未修2年生です(もうすぐ3年生)。
 法科大学院の成績が伸びなくて悩んでいます。成績が優秀な人は、ローの授業も淡々とこなして着実に力をつけていっているように感じます。
 自分のように、法科大学院の授業にもあまりついていけず単位をとるので精いっぱいな人間は、これからどのように勉強していけばいいのかがわかりません。
2年間でたまった膨大なレジュメ、ケースブック等々も、結局積み上げてあるばかりで途方に暮れてしまいます。
 春休み期間中の勉強計画を立てていたら、こうした悩みで頭がいっぱいになってしまいました・・・
投稿: 苦労院生 | 2009年2月12日 (木) 19時26分
A3
 予備校に通い、 予備校のテキストと択一の問題集と論文過去問だけをやりましょう。たまったものは、全部捨てましょう。たまったものを見直そうなどと考えてたら、絶対に自滅し

ます。
 まず、勉強する対象を絞り込み、それを繰り返すこと。
 そして、勉強時間は1日12時間以上確保すること
 最後に択一と論文の演習を毎日すること
 これだけ考えてください。
Q4
現在パブリックコメント手続中の会社法施行規則の改定案を見てこれは無茶な改正
ではないかとふと思ったことがあるのですが、第74条2項2号の改正案です。
同改正では、候補者が選任された場合において重要な兼職に該当する事実があることとなるときは、その事実を参考書類に記載しろとあります。
従来では、参考書類作成時点での兼職の状況を書けばよかったと思いますが、この
改正案のとおり改正されると、参考書類作成時点ではなく、役員に就任した時点で、
要するに「見込み」で兼職の状況を書かなければならなくなってしまいます。
仮に自社の総会が6月26日に開催するとして、同日やその前日などに他の上場会社で役員(しかも代表取締役)に就任する予定がある場合なども参考書類に書かなければならないことにな

らないでしょうか?未上場会社での役員就任予定の話ならまだしも、上場会社で、しかも未公表の代表取締役就任予定の話を他の会社の参考書類で開示することは現実的に不可能ではな

いかと思いましたので。
投稿: ここりこ | 2009年2月13日 (金) 08時12分
A4
 そこらへんは、パブコメで指摘してください(と書いて気付きましたが今日までですね)。
 まあ、省令が交付されてから考えましょう。

Q5
どのテキストでも授業でも"株式"とは「均等に細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位」といった感じで書いてあります。
「均等に細分化された」とか「株式会社の社員たる地位」はわかるのですが、「割合的単位」という聞きなれない言葉の意味がわかりません。法律独特の言い回しなのでしょうか?
投稿: かな | 2009年2月13日 (金) 22時52分
A5
 割合的単位というのは、非個性化されていることを表す言葉です。
 持分会社の持分は、各社員がそれぞれ持分をもち、その持分の内容がそれぞれ違います。たとえば、Aは100万円の持分で業務執行権なし、Bは1000万円の持分で業務執行権あ

りというかんじです。
 株式会社の場合には、同一種類の株式の権利内容は、どれも皆、同じであり、それをAが100個、Bが1000個持っているというように、何個持っているかで、AやBが行使でき

る権利の内容が決まります(100個持っているひとは1000円配当をもらえ、1000個持っている人は10000円配当が貰えるとか)。
 つまり、株式は、各株主の権利内容を決めるための単位となっているということです。割合的というのは、各会社の配当や残余財産の分配は、配当原資や残余財産を発行済み株式総数

で割って配ることから、「割合的」といっているのでしょう。

Q6
前回Q15について、アドバイスありがとうございました。脱時空勉強術も非常に興味深く読ませていただきました。ところで「必ず真一に1時間以上」はどの程度の頻度でしょうか?

また、記憶用に何かツールのようなもの(単語カード等)は利用されたでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月14日 (土) 11時03分
A6
 毎日1時間以上ということです。
 単語カードはあまり使わず、A5カードをつかっていました。

Q7
1日12時間勉強するにはリビドーが必要だと聞きました。
葉玉先生のリビドーも知りました。
僕には1日12時間も頭をフル回転させるほどのリビドーが今現在ありません。
リビドーはどんな風に得られるものなのでしょうか。
投稿: ぱっしょん | 2009年2月14日 (土) 13時07分
A7
最近は、草食系男子が増えているようなので、リビドーが足りないのかもしれません。
私は、リビドーの塊なので、どんな風に得られるかと聞かれても困ります。
私が分けてあげたいくらいです。

Q8
株式移転について質問させていただきます。
株式移転の対価として、株式移転完全親会社の株式を交付する場合、完全子会社が自己株式を持っていたら、自己株式にも親会社の株式の割り当てを受けることができるとのことですが

、同様の事例で合併では消滅会社が所有する自己株式には存続会社の株式の割り当ては出来ないとされています。
 株式移転と合併でこのような違いがあるのはどういった趣旨なのでしょうか?
投稿: 匿名希望 | 2009年2月14日 (土) 22時08分
A8
 合併の場合には、存続会社が自分に自己株式を割り当てることになるので意味がありませんが、株式移転の場合は、完全子会社にとって自己株式の割り当てではなく、親会社株式の割

り当てだからです。
Q9
会社法制における役員等の相互間の信頼の原則と監視監督責任との関係を
任務け怠乃至過失責任の観点からなんらかの法令違反を考慮すべきときのファクターには、どのようなものがありますか?
A9
質問が抽象的すぎて何ともいいようがありません。

Q10
任務け怠と過失の関係について、前者があれば後者があると一応の推定があるのかないのでしょうか?
投稿: ある法学を学ぶ初学者 | 2009年2月15日 (日) 00時10分
A10
「一応の推定」というのは、立証責任が請求者側にある場合に、立証責任を転換するための概念です。
任務け怠を立証すれば、法律上、取締役が無過失を立証しなければならないので、「一応の推定」という概念は必要ありません。
また、任務け怠を立証できなければ、そもそも過失を問うまでもなく、責任は認められません。

Q11
今回は刑事実務の検察官側について主にご教授してもらったわけですが、個人的に疑問に思うのは、刑事実務の弁護人側における「真実義務」についてです。
弁護人は、人権保障のため、被告人にとって不利益になる行為をしてはならないわけですよね。でも、被告人が無罪を主張するけど、弁護人の内心・本音としては「絶対嘘言ってるよ」

と感じてしまった場合でも、やはり自分の本音は隠して被告人の主張どおりに弁護すべきなのでしょうか?または、被告人が本当のことを言ってくれるまで接見し続けるべきなのですか

?それとも、信頼関係が成り立ってないとして被告人の弁護人を降りるべきなのでしょうか?
さらに、刑事実務の大半は反社会的勢力関連の事件だと法曹の先生に聞いたのですが、実際私のように反社会的勢力とは縁の薄い者が、弁護士にしろ、検察にしろ、(裁判官にしろ?)

反社会的勢力と向き合っていくには、どのような信念をもつべきでしょうか?
お忙しいところなのは百も承知であり、守秘義務とかもあるとは思いますが、刑事実務の本音みたいなのが聞きたいので、可能な限りご教授よろしくお願いします。
投稿: しがない受験生 | 2009年2月15日 (日) 14時03分
A12
 被疑者・被告人が真実を言ってくれないことなんてよくあります。
 その「嘘」が証拠から明らかに嘘ならば、接見のときに「それは言わない方がいい。それなら黙秘の方がまし」と言います。
 それでも、「嘘」を前提とした主張をしたいというのなら、仕方がないので、私なら、捜査官の主張の中にある嘘を立証し、その信用性を疑わせる弁護をします。被疑者被告人が嘘を

言っているからといって、捜査官が本当のことを言っているわけではないので。
 それから、反社会的勢力についてですが、被疑者・被告人は、反社会的勢力じゃない人もたくさんいます(むしろそちらの方が多いでしょう)。長年刑事事件をやってきましたが、検

事でも、弁護士でも、反社会的勢力だからといって、特別に身構えないことが一番大事だと思います。普通のことをきちんとやれば、何の問題もありません。

Q13
会社法349条第4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」とあり、私は、代表取締役を設置すれば取締役会非設置会社にお

いても代表権だけでなく、業務執行権も代表取締役に一本化できると思っていたのです。
しかし今回のQ5や会社法第363条の規定から、取締役会非設置会社では代表取締役への業務執行権の一本化をはかるには、定款に記載する必要があるのでしょうか?
投稿: 中小企業の法務担当者? | 2009年2月16日 (月) 16時58分
A13
 取締役は、原則として業務執行権を持っていますから、代表取締役を選定しても、それにより、当然に業務執行権がなくなるわけではありません。ですから、厳密にいえば、業務執行

権を定款で制限すべきでしょう。

Q14
2008年2月28日のエントリ「失念株主に対する配当」で、先生は、外国人制限銘柄で、名義書換が拒否された外国人株主に配当をすることについて、①株主平等の原則、及び、②放送法第

52条の8第2項の趣旨(議決権制限制度ではなく、あえて名義書換拒否制度を残したこと)から、消極的な考えを示されておられました。
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_4936.html
一方で、昨年末に、㈱フジ・メディア・ホールディングスが、名義書換が拒否された外国人株主にも配当する旨のニュースリリースを行いました。
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20081225165328.pdf
この件に関して、現時点で、先生はどのようにお考えでしょうか。
投稿: Koenig | 2009年2月17日 (火) 16時06分
A14
 他の失念株主との関係で株主平等の原則を守ることができるか、日本人株主が本来自分に配当することができるお金を株主名簿に載っていない外国人に配当することを認めてくれるか

、などの問題を経営者がリスクをとって、実行するというのですから、見守る以外に方法はありません。
Q15
「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」
で、「株式会社が資本金の額を増加する場合の原資を資本準備金及びその他資本剰余金に限定しないものとすること(同規則第48条)」
という改正案があるのですが、改正する趣旨がわかりません。
確か、商法の時代では配当可能利益の資本組入が認められていましたが、資本と利益の明確な峻別という観点から会社法では認められなくなったと記憶しています。
それを、今になってなぜまた改正するのでしょうか。
国際的な会計基準とのコンバージェンスが関係しているのでしょうか。それとも、金融不安の影響から資本金を増強できる選択肢を増やしたのでしょうか。
宜しくお願いします。
投稿: 猫野ゴエモン | 2009年2月19日 (木) 12時18分
A15
コンバージェンスや金融不安は関係ないでしょう。
理論的にも何の説明もつかないでしょう。
ただ、理論的でなくても、あった方が便利ですので、改正するのではないでしょうか。

Q15
役員報酬に関してちょっとお聞きしたいです。
明らかに過大な役員報酬につき一部の大株主の賛成により総会で承認されてしまったとします。その場合当該報酬の支払により流出した会社財産を取り戻すために株主が取れる手段とし

てはどのようなものがあるのでしょうか?
総会決議の取消(831条1項3号)をして不当利得返還請求(代表訴訟)でしょうか?この場合、報酬を受ける役員と決議に賛成した大株主が同一人物でなくても、ある種の緊密な関係があ

れば特別利害関係を有するといえるでしょうか?
この他なにか方法はありますでしょうか?423条の責任追及をしたり、120条の責任を追及することは厳しいですよね?
投稿: 素朴な疑問 | 2009年2月19日 (木) 20時42分
A15
明らかに過大なら、そのような議案を提出した取締役の責任が認められる可能性はあるのではないでしょうか。特別利害関係は、実質的に判断するので、場合によっては認められる余地

はあります。

Q16
一つ教えていただきたいのですが、葉玉先生が修習生の頃、簿記1級の勉強をされなかったのは、法曹として1級までは必要ないとお考えになったからなのでしょうか。
私は現在、司法修習生なのですが、簿記の勉強をどこまでやるべきか悩んでいます。
どうぞよろしくお願いします。
投稿: 大分トリニータ | 2009年2月23日 (月) 08時04分
A16
簿記2級でいいんじゃないでしょうか。
細かいことより、簿記の考え方、見方がわかればよいのです。

Q17
まず事業譲渡なんですが、事業と一緒に債権や債務も譲渡されることは多いと思うのですが、債権譲渡の場合の債務者対抗要件や第三者対抗要件、免責的債務引受の場合の債権者の承諾

についても、別途当然に手続をする必要があるのでしょうか。
A17
 普通の売買契約なので、対抗要件も債務者の承諾もそれぞれ必要です。

Q18
次に、株式交換の完全親会社に合同会社がなれて合名合資会社がなれない理由、株式移転の完全親会社に合同会社がなれない理由がよくわかりません。
基本的な質問で恐縮ですが教えてください。
投稿: Tak | 2009年2月23日 (月) 19時20分
A18
政策的なもので理屈はありません。
 
Q19
葉玉先生、こんばんわ。刑事訴訟法について質問させてください。
 捜査の論点で「捜査機関への不出頭と逮捕の必要性」があります。
 ここで、捜査機関への不出頭が重なった場合、逮捕の必要性を満たすかという論点で、肯定説をとる場合、
  1,刑事訴訟規則143条の3だけではなく、刑事訴訟法199条1項但書きも根拠条文とした方がよいでしょうか。
  2,刑事訴訟法199条1項但書きを根拠とした場合、但書きは「正当な理由なく、出頭要求に応じない場合、逃亡・罪証隠滅の恐れがなくとも逮捕を許す趣旨である」と読むべきなので

しょうか。また、そうであるとした場合、「限られる」の文言をどのように解釈したらよいでしょうか。
  3,2の解釈をした場合、逮捕の必要性については、逃亡及び罪証隠滅の恐れがある場合に限られないと解釈して大丈夫でしょうか(それとも、不出頭が重なる→経験則上、逃亡・罪

証隠滅の恐れが高まる→逮捕の必要性を推認しうるとした方がよいでしょうか)
  4,この論点について検察講義案や書研の刑事訴訟法講義案・元検事の渡辺咲子先生の刑事訴訟法講義を読んでみましたが、通常逮捕の要件として、「被疑者が~任意出頭の求めに応

じない場合に限られる」とあり、逮捕の要件を加重したように読めます。捜査実務や判例は一般的には肯定説をとっているといわれていますが、そのような理解でよいでしょうか。
投稿: 不孤 | 2009年2月23日 (月) 23時35分
A19
 1-3 いずれも自分の信じるところを書けばいいと思います。
 4 実務は、出頭拒否だけで、逮捕することはないように思います。ただ、通常、出頭拒否以外にも逮捕の必要性があることが多いので、それらの理由とあわせて出頭拒否についても

捜査報告書に書きます。

Q20
さて、「会社法であそぼ」で会社法以外の話題なのですが最近話題の(?)民法改正についてうかがいたいと思います。
民法の改正は、現在のところ某内○先生とする学者中心のメンバーで進められ、いわゆる実務家のメンバーがほとんど参加してないそうです。
ここのあたり、同じ大改正でも会社法の検討過程とは大分異なる(もっといえば正反対?)のような感じがしますが、葉玉先生は民法のような私法の大原則となる法律を改正するに当た

ってその改正案を考えるメンバーとしては、どのようなメンバーの配分が望ましいとお考えでしょうか?
投稿: いつかTMIを見返してやろうと企む修習生 | 2009年2月24日 (火) 21時49分
A20
法務省民事局の実力派参事官も入っていますし、内閣法制局があるので、あまり心配はしていませんが、現在公表されているのは、ちょっと気が遠くなる感じを受けています。
弁護士・裁判官・その他民間の方の意見も幅広く取り入れて、立案した方がいいのではないでしょうか。
特に、ニーズがないような改正は、実務家から反対されて、国会にたどりつかない可能性もありますから。

Q21
>A6
>持分会社は、多数決ではなく、社員の全員一致によって重要な意思決定をす>る点に意味があり、実際に、合同会社は、沢山、利用されています。
とありますが、590条2項では「社員が2人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。」と
なっております。
ということは、定款に別段の定めをして、「全員一致」とすることが常態化しているということなのでしょうか。それとも「業務」は「重要な意思決定」でなないということなのでしょ

うか。
投稿: 安直な初心者 | 2009年2月25日 (水) 14時50分
A21
合同会社をどう使うかは、人それぞれなので、何が常態化しているかというのは、私にもよくわかりません。株式会社よりも、各会社の定款に個性があるように思います。

Q22
葉玉先生の高校の後輩が、今度の日曜日にテレビに出ます。
もし、お時間があれば、ご覧に・・・
毎日放送(TBS系) 情熱大陸 3月1日 23:00~
上田泰己氏(理化学研究所)
http://www.mbs.jp/jounetsu/
投稿: カフェ丸 | 2009年2月25日 (水) 23時18分
A22
上田さんは、すごい人です。情熱大陸は、いつも見てます。

Q23
持分会社において社員Aが社員Bに対して持分の全部譲渡をした場合について質問させてください。この場合、社員Aは社員たる地位を喪失して退社し、社員Bの持ち分は増加します。
 この場合、社員Bの持分が増加するということの具体的な意味がよく分かりません。
このことについて、
1、社員Bが将来退社するときの持分払戻額が増加すると言う意味でしょうか
2、持分単一主義により、社員Bの議決権は持分を譲り受けたにもかかわらず、
一議決権のままですよね
という理解で正しいでしょうか? 
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 00時48分
A23
 1・2ともそのとおりです。

Q24
先生の事務所のサマークラークは、GPAが3.0の私のような学生でもいかせてもらえる可能性はあるのでしょうか。
投稿: naoko | 2009年2月26日 (木) 20時47分
A24
可能性はあります。

Q25
旧商法時に設立された合資会社の有限責任社員について質問させてください。
旧商法時には、合資会社の有限責任社員は業務を執行することを禁じられていました(旧商法156条)
ということは、旧商法時には、わざわざ定款において合資会社の有限責任社員の業務執行を禁じる規定を授けることは少なかったと推測しています。 
 このように、旧商法時に定款において合資会社の有限責任社員の業務執行権を禁じる規定がなかった場合、この合資会社の有限責任社員は会社法上、業務執行権を有するのでしょうか


 整備法66条3項では、旧合資会社の定款は存続する合資会社の定款とみなされます。ということは、旧商法時に業務執行権を禁ずる旨定款に記載がなければ、存続する定款にも業務執行

を禁ずる旨の記載がないとみなすと考えられます。
 この場合、存続する合資会社の有限責任社員は業務執行権を有するとされるのでしょうか?
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 22時46分
A25
 理論的には、定款の解釈の問題です。定款に明確に書かれていないから、業務執行権を有すると考えるのが素直だと思いますが、制限していると解釈することも不可能ではないように

思います。

Q26
 合資会社において、業務を執行する有限責任社員が無限責任社員に持分全部を譲渡した場合の同意書の記載方法について質問させてください。
 前提として、無限責任社員をA、有限責任社員をB,C,Dとします。この場合において①有限責任社員Bが無限責任社員Aに持分を全部譲渡します。
 次に②有限責任社員Cが無限責任社員Aに持分を全部譲渡します。
 このとき①においてⅠBからAへの譲渡及びⅡBを削除、Aの持分増加の定款変更につきACDの同意が必要となります。
 また②においてⅡCからAへの譲渡及びⅡCを削除、Aの持分増加の定款変更につきADの同意が必要となります。(Cは、すでに退社済みなので②の同意権者ではない)
 この場合、①②を同一の書面で同意の対象とした場合の同意書の記載をうまくかくことはできないでしょうか?
 ①ⅠBからAへの譲渡→②ⅡCからAへの譲渡→③B及びCの削除、Aの持分増加の定款変更という順に記載し、同意権者としてACDに押印してもらうと③において退社済みのCま

で同意をしているような記載になってしまいます。
 このような記載の仕方でやむを得ないのでしょうか?
 もしくは、一枚の同意書の中に①ⅠBからAへの譲渡及びⅡBを削除、Aの持分増加の定款変更②ⅡCからAへの譲渡及びⅡCを削除、Aの持分増加の定款変更という順に記載し同意

権者としてACDに押印してもらったほうがまだわかりやすいのか(②においてCも同意しているような記載になっているが項目をわけたのでわかりやすい?)、もしくは他にいい案が

あるのか、先生のご意見を聞かせてくださいませんか?どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 23時44分
A26
 わざわざ一枚で処理しなくてよいのではないでしょうか。

Q27
 葉玉先生こんにちは。「副検事」について質問をさせてください。
 私は現在ロースクールの学生で、将来、検察官検事、もしくは、検察官検事になれなかった場合、検察官副検事になりたいと考えております。
  現在、副検事になるためには、数種のルートがあると思いますが、私は、検察庁法18条2項1号で定められる、「裁判所法66条1項の試験に合格した者」、すなわち司法試験合

格者として副検事になるための考試を受けようと考えています。
 そこで、葉玉先生に質問をさせていただきます。
例年、副検事受験者は200人程度で合格者は20人程度ですが、そのうち、司法試験合格者あるいは弁護士有資格者の受験者・合格者はどれくらいなのでしょうか。
 また、選考基準に、筆記試験・口述試験の結果並びに「調査書」等と書いてあるので、検察事務官や裁判所事務官以外の出身の受験者は、「調査書」はどのように考慮されるのでしょ

うか。
 わかる範囲で構いませんので、回答よろしくお願いします。 
投稿: ロースクール生 | 2009年2月27日 (金) 09時29分
A27
 なぜ司法試験に合格しているのに、副検事なのか、よくわかりませんが、私の知る限り、司法試験合格者の副検事というのは聞いたことがありません。また、司法警察員等としての捜

査についての実務経験が全くないまま、副検事は厳しいのではないでしょうか。

Q28
会社法436条計算書類等の監査について質問をさせてください。
436条は、各事業年度にかかる計算書類および「事業報告」並びにこれらの付属明細書について、会計監査権限定の監査役であっても監査をしなければならない旨が規定されています

が、
会計監査権限定の監査役がなぜ「事業報告」を監査できるのでしょうか?
投稿: Tです。 | 2009年2月27日 (金) 19時37分
A28
会社法施行規則129条2項を見てください。

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