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2009年2月11日 (水)

捜査と弁護

 長男の中学受験が終わりました。
 長男の表情を見ていると、この数ヶ月間つらく、苦しいこともあったと思います。
 ただ、自分の一番行きたかった中学に合格したことで、今は憑き物が落ちたように穏やかな表情が戻ってきました。
 私も、ここ数ヶ月、何かと心にひっかかっていた中学受験のことから解放されて、のびのびと仕事に集中できる環境が整いました。

 ところで、ザ・ローヤーズという雑誌の最新号の表紙に、私が偉そうに載っております。
http://www.fujisan.co.jp/Product/1281681227/b/233116/
 
 突如、インタビューの申込みがあって、何を聞かれるかよく分からないまま、インタビューを受けたのですが、会社法のことより、検事時代の経験やコンプライアンス系の話が多くなりました。そして、つけられたタイトルが
 「特捜検事の経験から言える「社長のひとことで会社は変われる」」。

 私は、特捜部の在籍期間は、あまり長くないので、「特捜検事」と言われると、気恥ずかしいのですが、特捜部に在籍していないときも、沢山の特捜事件の捜査に携わってきましたし、自分自身でそれなりの数の独自捜査をこなしてきましたから、そうした経験から感じたことを率直に話しました。

 検事は、警察等から送致された事件を処理する場合と、独自捜査(自分自身がつかんだ情報から事実を解明して事件を立件すること)の場合がありますが、私は、どちらかと言えば、独自捜査が好きでした。

 独自捜査では、どういう犯罪が誰に成立するかということもハッキリしない状態で、秘密裏に事実を明確にしていき、被疑者が捜査が行われているということに気付く前に、事件の本筋が動かないように固めておくことが重要です。
 捜索差押をやるタイミングや逮捕状をとるタイミングを図りながら、
    動かない事実と
    動く事実と
    判明していない事実
を徐々に確定していき、
    動く事実を固定し
    判明していない事実を減らしていく
ことによって、事件の本筋が固まります。

 刑事弁護や刑事訴訟法の本などでは、捜査官が「事件の絵を描く」ことについて、予断に基づく捜査として非難されることがありますが、証拠は最初から捜査官の目の前に並べられているものではありませんから、限られた証拠をもとに
    このような事実があったのではないかと推論し、
    その推論が正しければ、必ず残っているはずの証拠を探していく
というのが捜査の王道です。

 たとえば、私が1年生検事のときに、覚せい剤の自己使用で逮捕されたXが、「別の男Yと一緒に、同じ注射器を使って回し打ちしていた。その時、Yは3回左腕に注射した」と供述したので、Yを逮捕しましたが、残念ながら、使用日から日数が経っていたため、Yの尿からは覚せい剤が検出されませんでした。

 私は、Xの供述の信用性を立証するために、Yの左腕に注射痕が残っていないか目視してみたのですが、Yは、覚せい剤の前科を多数持っている常習者であり、古い注射痕だらけで、Xと一緒に注射したときの痕があるのかどうか、分かりませんでした。

 「Yが3回左腕に注射した」という事実は、この時点では、まだ目撃証拠しかない「動く事実」です。覚せい剤使用者のXの供述だけでは、裁判所は信用してくれませんから、その事実は、このままでは、「存在しない」と判断される可能性が大です。
 かといって、「新しい注射痕が3個ある」という立証の仕方など、どの本を見ても、検事仲間に聞いても、分かりませんでした。

 しかし、この「動く事実」は、間違いなく、存在する事実であると確信していたので、医師等と相談したところ、
   オキシフルを塗れば、まだ皮膚が固まっていない注射痕からは、泡が出る
というアドバイスを受けました。

 そこで、Yの同意を得て、Yの左腕にオキシフルを塗ってみたところ、3個の泡が確認できたのです。
 これにより、「動く事実」が「動かない事実」になりました。

 また、私は、Xから、Yが覚せい剤を打つまでの行動について、細かく聞き出しているとき
   Yは、コップの裏に覚せい剤を乗せて水を入れ、注射器でかき回していた
という供述を得たので、
   コップをすべて押収して、その裏を顕微鏡で確認させたところ、1個のコップから針のようなものでかき回した痕跡
が検出されました。

 そのほかにも、
   もしYがこのとき覚せい剤を使用していたとすれば、どういう行動を取ったのだろうか
ということをできるだけ具体的に想像し、Xから情報を聞き出し、具体的事実を証明する方法を考えることを繰りかえしていくうちに
   「動く事実」が動かなくなり
    判明していない事実が減っていき
やがて事件の本筋が固まったのです。

 これは、ひとつの例ですが、こうした捜査を何度も経験すると
   証拠が少ない時点で、事件の大筋が見えてきて
   その大筋をより具体的に事実にしていくために必要な証拠の採集方法も見えてくる
ようになります。

 私は、今は、弁護士として、刑事事件の弁護や証券取引等監視委員会・公正取引委員会の調査に対する弁護などもやりますが、弁護の本質も、独自捜査のときも同じです。

 おおざっぱにいえば、弁護の方法には
  捜査機関の捜査結果を否定する弁護

  捜査機関よりも先に真実にたどり着き、真実をもって対抗する弁護
の2種類があると思います。

 私は、検事・弁護士の双方の経験から、前者の弁護方法は、あまり効果的ではないと感じます。
 それは、捜査機関の捜査の方法や事実の見方について、その非を主張するだけでは、捜査機関の手の内で暴れているだけで、捜査機関側も、そうした主張に対する防御策を用意しているからです。

 私は、真実をもって対抗する弁護が、有効で正義に叶う弁護方法であると信じています。
 よく「捜査機関は、国家権力による強大な捜査権を持っているのに対し、弁護士は、捜査権がない」ということを言いますが、私は
    権力があるかどうかなんて、真実の解明においては大した意味はない
    真実を解明しようとする者の洞察力と想像力と実行力が真実を解明する
と思います。
 弁護士は、クライアントという最も真実を知る者から率直な供述を得ることができるのですから、その点において、捜査機関よりも数段有利な立場にあります。

 捜査機関が捜査しているのだから、当然、クライアントには、犯罪等を行った疑われる証拠があるはずです。

 弁護人として大事なことは、そうした証拠から目をそらさず、
  不利な事実のうち、何が「動く事実」で「動かない事実」か
  動かない不利な事実を、有利な事実に転換するには、どういう事実が必要か
を考え付くし、
  犯罪等を行っていないという事実を「動かない事実」にすること
です。

 私は、犯罪事実について「検察官が立証責任を負っている」などということを考えながらやる弁護は、負け戦であると思います。

 弁護士であろうと、検事であろうと、
    より具体的な真実に近づいたものが勝つ
のです。

 ところで、2月3日に村上ファンドの控訴審判決で

「重要事実にあたるかどうかは、企業の計画や対外交渉などの状況を総合的に検討し、個別具体的に判断すべきであり、投資家の判断に影響を及ぼす程度の相応の実現可能性が必要である」

との判断をしました。
 この控訴審判決は、一審判決が「実現可能性があれば足り、可能性の高低は問題とならない」と判断していたことからすれば、弁護側にとって有利な解釈です。
 しかも、故意の内容として「実現可能性の認識」が必要になるわけですから
    被疑者がどの程度の実現可能性を認識していれば、故意が認められるか
という検察側にとっては、やっかいな法律問題を抱え込むことになります。

 しかし、私は、実際には、インサイダー取引の捜査や弁護の実務において、「投資家の判断に影響を及ぼす程度の相応の実現可能性」という抽象的な要件の有無で結論が分かれるようなことはないと思います。

 実際、控訴審判決は、有罪判決にした上で、「違法性の認識が薄い」ということを情状として斟酌したにすぎません。

 インサイダー取引の事件では
  「重要事実の認識」
が最大の争点になりますから、弁護において最も重要なのは、被疑者が
  どんな具体的事実を、誰から、どのような方法で伝えられたか
  どんな理由で株式の売買を行ったか
という点について、捜査機関より先に真実にたどり着くことであり、
  被疑者が具体的事実を何も知らなかった又は大したことを聞いていなかった
  被疑者が、その時期に売買をした理由が重要事実と無関係なものであった
ということが客観的に立証できれば、これまでもインサイダー取引として立件されることはあまりなかったと思います。

 控訴審判決の解釈は、刑法理論的には
  167条の規定から、「実現可能性」という規範的な要素を導かれる根拠は何か
  規範的構成要件要素の認識は、故意の要素か
等という面白い問題を含んでいますが、この解釈によって
  違法性の意識のない「うっかりインサイダー」が無罪になる
というわけでもないので、過大な期待は禁物です

(質問コーナー)
Q1
僕は京大生ですが、
「京大生のノートの8割は例外なく汚い・読めない。
 2割ぐらいきれいな人もいて、残りの8割はそんな美しいノートを借りていた。」
と言う感じでした。
 かといって、そのキレイな2割が成績がいいかと言うとそうでもないんですよね。
 自分が読める最低限のレベルで字を書けば早くたくさんの情報を書き取れるし、ほかの人にはわけわからんぐらいに必要なエッセンスだけを集約したノートが情報素材としても、ベストのように考えているのですが。。。
葉玉先生の御考えもまたお教え下さい。
投稿: たけし | 2009年2月 1日 (日) 18時46分
A1
 私は
「自分が、何も見ず、何も意識せず、使いこなせるようになった知識だけが、知恵となる」
と考えています。
 ノートは、自分の中に知識を染みこませるための道具に過ぎません。
 だから、時間をかけて、綺麗なノートを作るような無駄なことはせず、自分の頭に入りきらないものを断片的に記録していました。
 イメージとしては、
   ノート+自分の頭の中=必要な知識
という感じでしょうか。
 だから、知識が身についたら、そのページはバインダーから外して捨てていました。

Q2
>好きだからやっているだけです
弁護士の仕事を始めて、好きだと気づいたことなんでしょうか?
受験生のころから検察官、弁護士の仕事についてどのようにかんがえていらっしゃいましたか?
また、他の職業を選択する際には、仕事をしたことのない場合どのレベルまで調べたうえで志望すべきなのでしょうか?
投稿: 受験生 | 2009年2月 1日 (日) 23時46分
A2
 「好き」というのは、瞬間瞬間、自分の心の中に生じる「こういうことをやってみたいな」という程度のものです。
 検事の仕事も弁護士の仕事も、目の前の仕事を「葉玉流」に片付けるのは楽しいから、あまり「弁護士の仕事だから楽しい」ということでもないです。
受験生のころは、検察官がどんな仕事をしているのか知りませんでしたし、弁護士だって、あまり具体的なイメージは持っていませんでした。
 仕事の面白さなんて、実際に仕事をしてみなければわかりませんし、多くの人は、漠然としたイメージで仕事を選んでいるんじゃないでしょうか。
 実際に働いている人から話を聞くのが、一番いいでしょうが、あれこれ悩む前に勉強した方が建設的かなと思います。
 私は、弁護士も検事も裁判官もこなせる「法律家」でありたいし、法律家の仕事なら何でも面白いです。

Q3
前回いただいた回答「監査役監査規定、監査役監査基準、監査役会議事録は、監査役会ないし監査役が作りますが、それは、会社法の善管注意義務や議事録の作成義務を果たすために作成するものであって、金商法の内部統制整備の一環として行うものではありません。」からすると、監査役は金商法の内部統制整備とは完全に一線を画し、統制環境中の監査役に関わる評価項目の評価についても社内のどこかの部署が規程類のチェック、監査役へのヒアリングを通じて行うべきであり、監査役は監査役監査に専念した方が良いということでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月 2日 (月) 10時29分
A4
 禅問答のようになっていますが、金商法上は、内部統制の評価は、経営者がやるべきものであり、監査役は、金商法上の評価義務を負っていません。
 他方、監査役は、会社法上、監査権限を持っており、その監査権限を適切に行使することができない事情があれば、経営者に対しその事情を取り除くことを求めるべきでしょう。それが監査役の内部統制整備なのだと思います。

Q5
非取締役会設置会社の取締役(2人以上いて、定款により取締役の互選で代表取締役を選定することとしているケース)は、原則として、代表取締役として選定されている者以外の取締役も業務執行取締役となります(会社法348条1項)が、いろいろな事情で実態としては業務執行していないご意見番あるいはアドバイザー的な取締役がいる場合の対応として、定款で、「当会社の業務は、代表取締役のほか、取締役の互選により業務を執行する取締役として選定された取締役が執行する」と定めた場合、この規定およびこれにより運用することは有効でしょうか? すなわち、会社法348条1項の「定款に別段の定めがある場合」に該当しますでしょうか?(間接的なので厳しいでしょうか)
ひな形などでは、「専ら代表取締役が執行する」としているものもあるようですが・・・。
投稿: スケジューラ | 2009年2月 4日 (水) 10時53分
A5
よろしいと思います。

Q6
質問というか、元立法担当官に問いたいのですが、
何で持分会社なんかあるんですか??
株式会社が1円で設立できるならば、
持分会社、特に合同会社なんぞ不要じゃないですか。
人的保証の強化というならば、
社長に個人保証(連帯保証)させればいいだけでしょう。
持分会社の意義は何でしょうか??
特に合同会社なんて、へんちくりんなものの存在意義は??
あと、加えて株式会社でも委員会設置会社の意義は何なんでしょうか??
アメリカに上場するために必要なだけなんでしょうか??
まあ、立法担当官も自分の意思だけではなく、多方面から、いろいろ事前に注文つけられて妥協の産物が会社法だと思うので
投稿: | 2009年2月 4日 (水) 18時05分
A6
持分会社は、多数決ではなく、社員の全員一致によって重要な意思決定をする点に意味があり、実際に、合同会社は、沢山、利用されています。
社員の責任は、持分会社と株式会社を区別する指標にはなりません。
委員会設置会社は、ガバナンスの強化と業務執行の自由度を増すことを同時に実現するために設計された会社ですが、使うか使わないかは、好みです。

Q7
素朴な疑問ですが、取締役会設置会社においては、株主提案権は原則、総会の8週間前までに行使しなければならないことになっていますが、よくよく考えれば、8週間も前となると、定時株主総会にしてもそれが何月何日に開かれるかは通常機関決定されていないので、株主に分かるはずがなく、会社に問い合わせたとしても、機関決定されていないことについて会社は回答しないはずです。

例年集中日に開催している会社に対し、株主が例年通りの日程で開催するとの思惑でギリギリに提案権を行使した場合、その対応をしたくないので、3日前倒しで開催することを機関決定して期限オーバーで不受理扱いにし、株主には「実は、その日しか会場であるホテルの空きがなくてずっと以前から決まっていたんです」とでも回答しておくような荒業もでき得ると思われます。それは極端すぎますが、逆に、意図的でなく、本当に会場が取れなくてやむなく3日前倒しで開催するケースもあり、厳密にルールを適用しようとすれば不受理扱いとせざるを得ない、ということも起こり得るかと思われます。
投稿: にっち | 2009年2月 5日 (木) 12時42分
A7
 理論的にはそうでしょうが、実際には、8週間よりもずっと前から提案権を行使していることが多いので、あまり問題にはならないでしょう。
 また、故意に総会の日を前倒しすれば、権利乱用で、総会手続自体の瑕疵を主張される可能性が高いでしょう。

Q8
吸収分割について質問させて下さい。
完全子会社Aが完全親会社Bの株式を保有しています。
この状況を解消するために、Aを分割会社、Bを承継会社として吸収分割を行い、B株式のみをAからBへ移動させることは可能でしょうか。
簿価のまま親会社株式を移動させることが目的なのですが、そもそも、親会社株式が「事業に関して有する権利義務」と言えるかどうか、先生はどのように考えられますでしょうか。
投稿: hana | 2009年2月 6日 (金) 21時02分
A8
親会社株式だけだと、税務署も会計士も納得しないでしょうね。

Q9
資産60、負債70、資本金40の会社が
①100%減資をして、
②負債額すべてデッド・エクイティ・スワップ
した場合の仕訳はどのようになるのでしょうか。
投稿: ほいほほい6 | 2009年2月 6日 (金) 22時00分
A10
仕分けは、会計士に聞いてください。
ちなみに100%減資というだけでは、何をやろうとしているかは、必ずしも明確になっていません。

Q11
「発行可能株式総数」について教えて下さい。
会社法113条3項によって、公開会社の「発行可能株式総数」は、「発行済株式総数」の4倍までと規定されています。
また、同4項で、権利行使期間の到来した新株予約権の目的となる株式の数は、
「発行可能株式総数」から「発行済株式総数」を控除して得た数を超えてはならないと
あります。
転換期の到来した転換社債等の新株予約権の行使によって発行される株式の数が、
発行可能株式総数を越えてしまう様な場合、超えてしまう転換社債等の新株予約権は行使できないと考えて宜しいのでしょうか?
A12
行使できません。

Q12
将来、新株予約権を全部行使すると、その新株予約権の目的となる株式の数が、
現在の「発行可能株式総数」の上限(「発行済株式総数」×4)を超えてしまう場合、
あらかじめ公開会社は「発行可能株式総数」を、新株予約権を全部行使できるような上限まで引き上げることはできるのでしょうか?
A12
できません。

Q13
会社法113条4項は、
①「予め新株予約権や転換社債を発行するときは、
その目的となる株式の数が発行済株式総数内にしなければならない」
と読むのか、
②「権利行使期間が到来した新株予約権や転換社債は、
発行可能株式総数内でのみ権利行使できる」
と読むのか教えてください。
A13
行使期間の到来した新株予約権の潜在株式数が発行可能株式総数内でなければならないということです。
たとえば、行使期間が到来していない新株予約権ならば、いくらでも発行できます。

Q14
昔、旧商法時代だったかと思いますが、
何かのセミナーで、
「発行可能株式総数(会社が発行する株式の総数)」=
(発行済株式総数+潜在株式)×4
もOKと聞いたような気がします。
考えてみれば、商業登記の際に却下されそうな気もしますが、潜在株式を考慮して発行可能株式総数を定めるのは、会社法113条3項の違反になりますよね?
投稿: UR | 2009年2月 7日 (土) 22時10分
A14
113条3項に書かれているとおりです。

Q15
先生の中学受験に関する記事を読み、一人っ子の長男の受験を思い出しました。なんとか受験を通過し、今は高校受験がないため、世の中が受験シーズンであることを尻目に高校の部活に一足早く参加してサッカー三昧の毎日ですが、4年前は私が仕事を終えた後、塾通いをする長男の帰りを待ち受け、帰りの電車内で宿題を教えながら(1時間ほど)、帰宅するということを1年間続けていました。メネラウスの定理など、中学受験の内容を自分が結構覚えていることに驚き、幼い頃の記憶は何と強固なのだろう・・・と思ったものです。
それに引き換え、最近はなかなか「強固な記憶」といかないことが多いのですが、先生は受験勉強中、定義・趣旨・条文番号・論証のキーワードといった知識については、特に記憶の時間を確保されたでしょうか?記憶の方法を意識されたでしょうか?また記憶のためのツールは用意されたでしょうか?あるいはそういったものをただ繰り返し読むうちに自然に記憶していったというような感じでしょうか?司法試験合格には相当量の知識が必要になると思われますが、それらをどう会得されたのでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月 9日 (月) 15時43分
A15
記憶と記憶の喚起の訓練は、必ず真一に1時間以上行うようにしていました。
記憶方法は
①まず書いてみること
②書いたことを覚えているかどうかを確かめてみること
③①と②を繰り返すこと
という程度です。
詳しくは、脱時空勉強術をお読みください。2×4です。

Q16
(旧司法試験の受験生です)
1.民法の親族相続の択一問題練習について
 過去問の中でも、親族相続の部分は、暗記が主体だという固定観念が私の中にあるのです。 直前期にやるよりも、平素からどんどん繰り返し過去問・択一模試の復習などを練習してもかまわない・・・ですか?
2.刑法の各論について
 すべての犯罪について、学習できていないのが素直な現状です。
 出題傾向を考え、優先順位をつけて学習すべきか・・・
 それとも、ある程度は抜け目なくやるべきか・・・
 ちょっと悩みが生じてきました。
 でもやはり、メリハリ付けをつけたほうがよいかな・・・という気がするのですが、いかがですか?
3.憲法の統治について
 統治の問題で落とすのは、非常にくやしいのですが、点にならないことも多いです。
 確認のために質問させていただきたいのですが、条文の正確な知識と徹底した問題練習しかない・・・ですよね?
投稿: ミナミアルプス | 2009年2月 9日 (月) 17時24分
A16
 択一で苦労するのは、勉強量が絶対的に不足しているからです。
 勉強時間を増やし、ボーッとしている時間をなくし、徹底的に勉強してください。
 
Q17
従来の配達記録郵便が諸事情により廃止され、今後は特定記録郵便という
ものに生まれ変わるようです。ただ、特定記録郵便によると受取人側が受領した
ということまでは明らかとなるわけではなく、従来の配達記録郵便の代替としては十分ではないような気もしているのです。企業実務について従来の配達記録郵便と同等の効果を得ようとする場合には、簡易書留による方が良いのでしょうか。
投稿: smoky | 2009年2月 9日 (月) 17時58分
A17
ケースバイケースとしか言いようがない問題です。
確実性を求めるならば簡易書留になるでしょう。

Q18
三角合併における合併対価の割り当てについてです。
存続会社Bと消滅会社Cの合併において、Bの完全親会社であるA社(国内の株式会社)の株式をCの株主に割り当てる計画ですが、Cの株主の一部にAが存在します。このとき契約書に定める合併対価と割り当ての規定を
「Bは、合併に際してBの完全親会社であるA社の普通株式を交付することとし、効力発生日前日最終のCの株主名簿に記載されたCの株主(但し“Aを除く”)に対して、C株式1株に対しA社の普通株式●株の割合で割り当てる」とすることは、割当に関する株主平等の原則には反しないという理解でよろしいですよね?
株式交換の場合に完全親会社が有する完全子会社の株式に対しては割当不可(会社法768Ⅲ)を根拠にそう思いました。よろしくお願いします。
投稿: ヤサオトコ | 2009年2月 9日 (月) 17時58分
A18
駄目でしょう。750条3項に反します。

Q19
さて、会社法100問の92問目(司法試験平成14年)について質問させてください。
解答例には、「Xは、①株主総会の決議の取消しの訴えを提起するとともに、②取締役の違法行為の差止め請求権(360条)を本案として、吸収合併の差止めの仮処分を申立てることができる。」
とありますが、取締役の違法行為に該当するのは、どの行為でしょうか。
合併契約の締結手続は、合併契約を締結する→合併契約に関する書類等の備え置き等→株主総会の特別決議による承認→合併する旨の通知・公告→反対株主の株式買取請求権の行使→会社債権者の意義手続→合併の効力発生という流れになると理解しています。
この中で、差止めの対象となる「取締役」の「行為」(360条1項)は、どれになるのか、良く分かりません。
投稿: まほろば | 2009年2月10日 (火) 22時15分
A19
法定の手続に限らず、合併に関する事実行為も行為になりうるでしょう。


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2009年2月 1日 (日)

会社法施行規則等改正案

ご存知の方も多いと思いますが、現在、会社法施行規則・会社計算規則の改正案がパブリックコメント中です(2月27日まで)。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=300080050&OBJCD=&GROUP=

これが、なかなか大きな改正ですので、会社法の実務に携わる皆様は、特に会社法施行規則を読んで、法務省に建設的な意見を送っていただけると、民事局も喜んでくれると思います。

たとえば、
改正案122条に「当該種類株式」とありますが、同条には「種類株式発行会社」という文言は出てきているものの、「種類株式」という文言は出てきていないので、「当該」では受けられないし、まして「当該種類株主」という文言は、全く出てきていないので、「当該」は使えない
というような形式面の指摘でも、立案担当者は大変助かるはずです。

実質的な中身については、合理的な改正や従来の解釈をより明確にしたものが多いので、その点は賛成意見を法務省に出しましょう。パブリックコメントは、賛成する人はあまり意見を出さないので、意見だけ見ていると、反対ばかりに見えてしまうので、賛成意見もほしいでしょう。

他方、【H21.2.3追記 初出時「第20条のように会社のファイナンスの自由度を制限する条項」と書きましたが、逆に、自由度を増す条項でした。謹んで訂正させていただきます)「王政復古」的な改正もあります。

たとえば、改正案122条は、大株主の氏名等について、「発行済み株式の10分の1以上」から「上位10名」に戻っています。こうした改正は、私のように会社法を飯の種にしている弁護士にとっては、仕事が増えてうれしいのですが、上位10名に戻さなければまずいような出来事があったとも思えず、
  あえて今変更しなければならないのかなあ
と不思議に思います。

ただ、この改正は趣味の問題なので、最後は、どちらでもいいのですが、改正案34条の単元株式数の設定について
  「発行済株式の総数の二百分の一に当たる数」
を追加する改正は、改正をなすべき実質的な意味もなければ、会社法の規定とも整合しない不合理なものです。

この改正案は、要するに
  単元株式数を設定するときには、最低200単元以上になるようにしなさい
というルールであり、旧商法にあったルールを会社法で排除したものです。

このルールは、
  発行済み株式総数は、200株以上にしなければならない
  株式の併合により、200株未満になる場合には、株式の併合をすることができない
というルールが存在する場合に、はじめて意味を持つ規定であり、
  1円出資で1株の株式会社が存在する会社法の世界で、なぜ200単元以上ないと単元株式数が設定できないのか
  種類株式発行会社で、無議決権株式等を含めた「発行済み株式の総数」を基準とすることに、何の合理性があるのか
私には、全く分かりません。

 実質的に見ても
 株式市場は、単元が取引単位になっている関係で、200単元等という上場会社はありえず、この規定は上場会社には無関係な規制であり
 多くの非上場会社では、「単元株式数」を設定するほどの株式を発行していない上、単元株式数を設定する定款変更ができるオーナー株主ならば、少数派株主をスクイーズアウトすることも可能であり、わざわざ200単元以上という制限を設ける必要性もない
と思います。
そもそも200単元という数自体が
  最低資本金1000万円÷1株あたりの純資産額最低5万円=200単元
という、いずれも、会社法で存在しない制度をもとに算定された数なのですから、
  会社法において、なぜ200単元という数が基準となりうるのか
という点も、問われるべきです。

 また、単元株制度ができた平成13年当時の少数派株主の保護のあり方と、ブルドック事件を始め買収防衛策の採用が一般的となり、全部取得条項付種類株式や現金対価株式交換を用いたスクイーズアウトが多数行われている現在における少数派株主の保護のあり方は、根本的に変化しており、ここで200単元基準を復活させるのは、
  時代遅れ
というほかありません。

 しかも、仮に、この改正により
  既に200単元未満になっている会社が、変更登記をしなければならない
ということになれば、法務局は、全株式会社について200単元未満になっていないかどうかをチェックしなければならないし、会社は、会社法施行規則の改正によって、実質的な不利益を受けることになります。

当然、経過措置を置かれると思いますが、
 200単元未満の会社は許さない
という価値観で会社法施行規則を改正するのならば、猶予期間を置いて
 変更登記の義務を課す
ことにならざるをえないのではないでしょうか。

 この改正案は、
   既存の適法に登記している会社に対し、省令改正により、登記義務を課すことが許されるか
という憲法問題を含めて、検討すべきもので
   そこまでして、こんな意味のない不合理な改正をする必要はない
というのが、私の感想です。

【H21.2.3追記 経過措置を置くようです。ただ、自己株式の消却により発行済み株式総数が減少する場合などは、どうなるのか、よく分かりません。改正前の単元株式数がずっと有効であるという経過措置だとすると、なぜ200単元規制を復活させるのかよく分かりません。定款変更により少数株主の議決権を奪うのがまずいというのならば、設立時から単元株式数を規制するのは過剰規制ではないでしょうか。こうした問題が起こるのは、すべて、200単元規制がナンセンスな規制だからです。】

 昔、現行の会社法施行規則を制定したときに、200単元の規制を撤廃したときに、ある学者の先生から
  法制審議会で議論すべきだ
と批判を受けましたので、元に戻す場合も、法制審議会で議論した方がよいでしょう(笑)。

 以上のように改正案34条は
  多くの会社にとってほとんど意味がなく
  少数は株主の保護にも役に立たず、
 一部の会社には無意味に登記義務を課すという有害で、憲法違反の疑いがあり
 しかも、会社法との論理的整合性もない
ものであり、私は、この案だけは、削るべきだと考えます。

 せっかく書いたので、このブログを、このままメールにして、パブリックコメントに投稿しようかなあ、という気持ちになりました。私の意見に賛同していただける方がいらっしゃれば、ぜひパブリックコメントに応募してください。
 
(質問コーナー)
Q1
非取締役会設置会社(特例有限会社も同じ)の業務執行は、取締役の過半数で決定する(会社法348条2項)とありますが、取締役会設置会社における取締役会議事録のように、何か証拠となるものを書面などで残しておく必要はなく、任意の方法で決をとればよいのでしょうか?
そうであれば、株主3名全員が、そのまま取締役であるというような場合、株主総会を開くのも取締役会を開くのも手間はほとんど同じなので、取締役会を設置するよりも楽という気がしております。3か月に1回以上の業務執行報告取締役会も開催しなくて済むかと思いますので・・・。
投稿: 悩める法務担当者 | 2009年1月22日 (木) 13時08分
A1
 そうですね。非取締役会設置会社の方が楽です。

Q2
法学教室2月号で連載されている「事例で考える会社法」64頁で、
「東京高裁決定・平成20年6月12日」が、
125条3項3号を立証責任の転換規定と解したことで、
会計帳簿閲覧請求(433条)と株主名簿閲覧請求(125条)の拒絶理由は、
条文は同じ構造だが、株主名簿閲覧請求の拒絶理由だけ(125条3項3号)は、
立証責任転換規定だとしていると書いていますがどうなんでしょうか??
そんな解釈できるんですかね??
投稿: 太郎 | 2009年1月22日 (木) 17時02分
A2
私は、実質的には、同じ結論になりますが、拒絶権の権利濫用と考えた方がよいと思います。

Q3
非取締役会設置会社に関して3点お教えください!
① 株主総会で、例えば自己取引の承認を株主総会で決議する場合、利害関係を有する取締役は議長になれますでしょうか?
② ①の場合で、利害関係を有する取締役(議長を含む)が株主であったとしても、総会で議決権を行使できると考えて良いでしょうか?
③ 総会で決議する程でもない案件を、取締役の過半数で決する場合において、当該案件について利害関係を有する取締役がいるとき、その人は決を採ることに加わることができますでしょうか? 会社法348条2項は、同369条1項のように「議決に加わることができる取締役」というようには表現されていないので、加われるのではないかと考えておりますが…。
投稿: リアルヴォイス | 2009年1月22日 (木) 17時49分
A3
① なれます。
② できます。
③ できます。

Q4
いきなりで失礼なのですが、基準日に関して質問させてください。
(1)新・会社法百問51(296ページ二1)では、、基準日後に株式の第三者割当てを受けた者に対して議決権を付与できるかという問題について、「Cの議題提出権等の持株要件には影響を与えないから、」124条4項ただし書にはあたらないとされています。しかし、124条4項ただし書の、「当該株式の基準日株主権利」という文言からすれば、同ただし書は基準日の時点で存在していた株式についての条文であって、基準日後の第三者割当てのような場合にはそもそも適用がないように読めるのですが、いかがでしょうか。
(2)同じ問題についてのなのですが、297ページ二2において、議題提出権等の継続保有要件は、議題提出権等の行使日と基準日のいずれか遅い日まで充たし続ける必要があるとされており、その理由づけとして、「①議決権のない者に議題提出権のみ認めるのは不合理である」という点が挙げられています。しかし、本問においては、新株発行によって1%の保有要件は下回っているものの、議決権がなくなっているわけではないことから、上記の理由づけは説得的ではないように思えます。この点についてはどのように考えればよろしいでしょうか。
投稿: カリヨン | 2009年1月22日 (木) 23時00分
A4
(1) 124条4項は、基準日後の株式を発行を主として念頭においている規定です。
(2) 一般的な規範とあてはめを区別した方がよいでしょう。

Q5
会社法以外の質問で恐縮ですが、私も現在、小学2年生の子供を持っています。
先生は、「中高一貫の良さを長男にも経験させたいと思い」とありますが、
中高一貫の良さって具体的に何ですか??
私も、子供の進路を考えるのですが
私は中学受験したこともないし、私が小学生の頃は中学受験する子供なんて学年に1人いる程度で、中学受験に関してよくわからないですし。
中高一貫を経験したことがないのですが、
やはり先生のように上りつめた方から見ても中高一貫のほうが子供は伸びると思われますか??
投稿: 親子 | 2009年1月23日 (金) 00時13分
A5
 中高一貫もいろいろだと思いますが、私の母校久留米大学附設中学高校は、その良さを生かしている学校でした。
 私は、長年教える側だったので、生徒を伸ばす授業をするためには
  1 生徒の能力が均等であること
  2 習得スピードに応じた授業のスピードを確保できること
  3 同じことを角度を変えて、繰り返し教えること
が重要な要素であると感じています。
 中高一貫校は、中学受験を通じて、
  ある程度能力が均等の生徒に一から教えることができる
  能力の高い生徒を集めることで、授業スピードをあげられる
  6年間同じ先生が同一科目を教えることもできるので、計画的に反復をさせることができる
等のメリットもあります。
 また、友達も、中学から高校という思春期をともにすごすと
  30年経っても、あっという間に昔に戻れる
ような友達ができます。

Q6
はじめまして。いつも楽しく拝読させていただいております。
質問なのですが、新株予約権の行使に基づく株式の発行を差し止めることはできるのでしょうか。
判例タイムズ1282号の「ピコイ新株発行差止事件」で認められているのですが、判決文を読む限りでは特に争点とはなっていないのですが、210条または247条の文言とは整合しないような気がします(ちなみに判タは参照条文として247条を掲げています)。また、これが一般的に認められると、新株予約権者に新株予約権の取得額相当の損害が生じてしまい妥当でないと思います(もっとも、当該事件では無償割当のようです)。
手元の基本書等に当たっても判然としなかったので、ご教示頂けますでしょうか。宜しくお願いします。
投稿: 法科大学院生 | 2009年1月23日 (金) 01時42分
A6
 論点ではありますが、仮の地位を定める仮処分で差し止めをすることができると考えます。

Q7
当社非公開の会社です。今、合併といいますかM&Aの話があります。
相手も非公開の会社で、株式の取得による方法を考えていますが、
双方とも取締役会を設置しています。
この場合、発行済みの株式をそれぞれの株主が譲渡するについて
取締役会で承認をするだけでいいと思うのですが、その場合、
発行済み全株式について譲渡が結果的になった場合、完全子会社に
なると思うのですが、株式移転の場合、株主総会での承認が必要と
されているようですが、結果的に100%譲渡であっても、株主
総会での承認は必要なく、取締役会での譲渡承認だけで問題は
無いのでしょうか。

投稿: ご苦労さん | 2009年1月23日 (金) 11時30分
A7
譲渡ならば、取締役会の承認で結構です。

Q8
自己株式の消却が合理性を欠く件、なぜか投資家さんが理解してくれないので発行会社としても困っています。やむなく消却要請に応じるにしても、「希薄化防止」を理由にしてはうそになりますし、不合理と思っているので、開示文書が歯切れの悪いこと。財務指標の1株当たり情報では、分母から自己株式を除く(会計基準による)ので、こちらにも影響はありませんし。取引所を巻き込んで教育キャンペーンでも行うしかありませんかね。
投稿: 金庫株番 | 2009年1月23日 (金) 20時43分
A8
本当にそのとおりですよね。
まあ、世の中は、合理的なことばかりではないですが。

Q9
先生のいつも明朗かつ端的な回答に毎回感銘を受けているものです。
この時期に突然法務省から択一の配点が半分になることが発表されました。
この点について先生はどうお考えになるか聞いてみたく質問しました。
個人的には嬉しい変更なのですが、周囲は戸惑っている人が多いみたいです
投稿: 三十路 | 2009年1月23日 (金) 23時53分
A9
択一の点と論文の点は、相関関係にあるので(択一のできる人は論文もできる、択が苦手な人は論文も苦手)、実は、あまり関係ないように思います。

Q10
会社法第298条(株主総会の招集の決定)および同施行規則第63条(招集の決定事項)についてのご質問です。(当該会社は取締役会設置会社で、株主による招集の場合は除くものとします。)
前回の株主総会招集に関する取締役会において、招集決議事項とあわせて、「以後当社が開催する株主総会については、別段の決議がない限り、当該決議事項を有効なものとする」と決議することにより、今回の株主総会招集に関する取締役会決議を一部省略することは可能なのでしょうか。
例えば、前回の取締役会決議において、「日時:事業年度末から××日を経過した後の最初の木曜日、場所:○○市△△ □□ホール、株主総会に出席しない株主は、書面(電磁的方法)によって議決権を行使できる…」と決議している場合、当該事項に変更がなければ、当該事項については、今回の取締役会で決議しなくともよいのでしょうか。
施行規則63条に規定される事項(特に3号ロハニヘ)については、このような扱いをすることができると解される、とする実務書が多いようです。この扱いは、298条1項の各号(2号はさすがに無理だと思いますが…)においても、することが可能なのでしょうか。
以前、当ブログで「298条1項各号に掲げる事項は、複数回の取締役会決議等で決定することが予定されている(施行規則67条参照)」との記載を見た記憶があるのですが、上記は、まさにこのようなケースと理解すればよいのでしょうか。また、310条2項には「株主総会ごとに」との文言がありますが、298条ではそのような文言が特にないことから、上記のような扱いができると理解すればよいのでしょうか。
投稿: ツェーベーツェー | 2009年1月24日 (土) 13時34分
A10
 決議を一部省略するというよりも、前の決議で決められたことを取り込んで、決議をするという方が正しいでしょう。
 それは、決議内容の解釈の問題に過ぎず、適宜、かつての決議を援用することは可能でしょう。

Q11
前回Q6&A6の続きです。
監査役監査規程、監査役監査基準や監査役会議事録等は、取締役、監査役のどちらが整備すべきものでしょうか?
金商法上の内部統制に関して、「監査役の監査を適切に行いうる体制の整備」が全社統制評価項目の4,5辺りで問われており、評価を有効とするためには監査役監査規程、監査役監査基準や監査役会議事録等を整備する必要があると考えられます。
もしこれらを監査役が整備しなければならないとし、実際に監査役により整備が行われているとすれば、結果として内部統制上の統制環境の一部の整備を監査役が行っていることなりますが、その場合には監査役も内部統制整備の一翼(あくまでも一翼です)を担っていると考えることはできないでしょうか?
投稿: hiro | 2009年1月24日 (土) 15時30分
A11
監査役監査規定、監査役監査基準、監査役会議事録は、監査役会ないし監査役が作りますが、それは、会社法の善管注意義務や議事録の作成義務を果たすために作成するものであって、金商法の内部統制整備の一環として行うものではありません。

Q12
議題提案権(303)についてですが、
非公開会社かつ取締役会設置会社には議決権数要件を課しているのに、
非公開会社かつ取締役会非設置会社には議決権数要件を課していない、
これはなぜでしょうか。
私が学んだ範囲では「前者には議題提案権の濫用の余地があり、後者にはないから」という理由が思い当たりますが、どちらも非公開会社である以上、どちらにも濫用の余地はないのではないかと思われて仕方ありません。
濫用といえば総会屋や市民団体による濫用が思い浮かびますが、譲渡制限がかかっている以上、彼らのような方々による濫用の危険は、いずれにしても考える必要はないと思うのです。
非公開会社からスタートして更に類型分けをし、制限に違いを設ける必要が本当にあるのでしょうか。
これに派生して葉玉先生は
「非公開会社かつ取締役会設置会社」
をどのような会社とイメージしておいでなのでしょうか。非公開会社かつ取締役会非設置会社については所有と経営の分離を前提としていない家族経営の会社などを思い浮かべられますが、上についてはいまいちピンときません。
よろしくお願いいたします。
投稿: yasuchan | 2009年1月25日 (日) 11時06分
A12
旧有限会社と旧譲渡制限株式会社の違いでしょう。

Q13
先生、はじめまして。上場はしておりませんが、上場企業との取引がある地方中小企業の総務法務担当の者です。みずほセミナー「反社会的勢力の排除・関係遮断への組織的実践」(成21年3月2日)に参加させていただきます。
 基本方針の策定、一応の社内教育、暴排条項の装備は行いましたが、データベースについては構築や運用のノウハウ・ドゥハウがなく、田舎弁護士さんに聞いても、金融機関さまに聞いてもいまひとつな状況です。
 今回、有意義なセミナー参加にいたしたく存じますので、事前に確認しておくとよい資料、書籍やWEB情報等がございましたらご教授のほど、よろしくお願いいたします。また、BLOG記事でも反社会ネタを扱っていただければ幸甚です。m(_ _)m
なお小職では、次の確認をいたしております。
・BLOG内をキーワード検索
・「ビジネス法務 2009.3 特別企画」
・指針、指針の解説
・第一東京弁護士会民事介入暴力対策委員会のHPの確認
・「共生者」、「ヤクザマネー」、「ブラックマネー」
・「反社会的勢力関係遮断チェックリスト」
・「内部統制による企業防衛指針の実践」
投稿: | 2009年1月25日 (日) 12時23分
A13
それだけ勉強されていれば、十分です。
セミナーでは、かなり生々しい実践的な話をします。

Q14
進路に悩んでます。
以前司法試験を受験した動機についてのお話がありましたが、その後どの段階でどのように変わっていったのでしょうか?
弁護士の仕事は、やっているうちに意義などがわかってくるものでしょうか?
投稿: 受験生 | 2009年1月25日 (日) 15時51分
A14
 私は、弁護士の仕事に「意義」があるからやっているのではなく、好きだからやっているだけです。
 「意義」を求めるのならば、自分で意義を考えればよいし、わざわざ「意義」を求める必要もないように思います。

Q15
自己株式の消却について、おっしゃる通りだと思いますが、若干の補足です。
自己株式の処分の場合、金融商品取引法では売出しに当たり、第三者割当を行う際に、実務上、有価証券届出書、通知書による開示を不要としているようです。
企業の財務担当者としては、有価証券届出書を作成する手間は相当大変であり、自己株式を消却した場合、特定の相手先(持合先など)に対して、開示なしで割当できるというメリットを放棄することになるのではないでしょうか。
投資家やアナリストがそんなことまで考えているとは思えませんが・・・・
投稿: 竹下ゼミOB | 2009年1月26日 (月) 10時45分
A15
これまた、全くそのとおりです。

Q16
困ったことが起きそうで、ご質問させていただいております。ぜひともご教示くださいませ。
小さい株式会社で、株主は10人程度です。取締役会決議により書面投票制度を採用し、株主総会を開催しようとして、招集通知と議決権行使書用紙を株主に送付したところ、株主全員から行使書が返送されてきた場合、出席株主はいなくなってしまいますが、どのように開催したらよいのでしょうか? 無人の株主席に向かって、淡々と議事を進行したらよいでしょうか?
当日、先に行使書を返送した株主がやっぱり出席したいと言ってやって来るかもしれませんし、開催しないわけにはいかないと思っております。
投稿: いさりび | 2009年1月26日 (月) 12時13分
A16
無人でも開催しましょう。行使書を送った株主も出席株主です。

Q17
質問ではないのですが、一言お礼を言わせて下さい。
自分は、働きながら独学で司法書士試験の勉強をしているのですが、去年の秋に、腕試しに行政書士試験を受けたところ、こちらの方は本日結果発表で、合格する事ができました。
会社法については、このブログの入門編で、テキストだけでは解らない事を1から学ばせてもらっていたのです。
初学者にも優しく、かつ読んで楽しく学べるこのブログと、そして葉玉先生へ、本当にありがとうございます。また、これからも引き続き勉強させて戴きます。失礼致します。
投稿: ニャア | 2009年1月26日 (月) 21時25分
A17
おめでとうございます。
勉強になるようなことや、無駄なことなどを取り混ぜてこれからもがんばります。

Q18
親会社が子会社株式を売却する以外に親会社としての地位を失うパターンについて質問させていただきます。
とりあえず、典型例としては、子会社が第三者割当増資を行うとか、子会社がある会社から事業を譲り受け対価として株式を発行した場合に親会社の持分が減少するとかが考えられます。
その他にも何か典型例等あれば御教示いただければ幸いです。
投稿: ポン | 2009年1月26日 (月) 22時47分
A18
子会社が第三者に株式を交付する場合は、たくさんあります。新株予約権の行使とか、取得条項付株式の取得の対価として株式を交付する場合とか。

Q10
今回のブログに、「中高一貫の良さを長男にも経験させたいと思い」ということがありました。
実は私も中高一貫でしたが必ずしも子供に中学受験をさせたいという訳ではないというより、むしろさせたくないかな、と思っております。
私が通っていたところは都内でもそれなりに進学実績があるところで、私もそれなりの大学は卒業できましたが、学校内が勉強第一で中高の思い出のうち勉強が占める割合が多く、また男子校だったのでそういった面の思い出もなかったので、必ずしも中学受験したことがいいとは言い切れないかなと感じているからです。
ですので子供(まだ低学年です)を公立に進ませたほうがいいかと思っているのですが、葉玉先生が中高一貫がよいと感じられたところを教えていただけないでしょうか?(私が見逃している視点があるかと思うので。)
投稿: KK | 2009年1月27日 (火) 00時27分
A10
 学校によるのではないでしょうか。
 私は、あまり「勉強第一」という感じではなかったです。
 柔道部や演劇部の思い出や
 友達とむちゃくちゃなことをやっていた思い出
 の方が強烈です。
 附設は、基本的に自由な学校でした。

Q11
企業法務をするにあたって、葉玉先生は税務と会計が必須だとおっしゃられましたが、
就職の際にその能力を判断する基準はどのようなものなのでしょうか。
事務所によってその判断は様々だとは思われますが、
たとえば、税務だと税理士試験の法人税法だけ合格するとか、会計だと、簿記1級を取得するというのは、どのような評価なのでしょうか。
というよりは、まず事務所に入ってから、身につけるスキルなのでしょうか??

投稿: ほいほほい5 | 2009年1月27日 (火) 10時18分
A11
評価は、面接担当者によって違うのではないでしょうか。
資格があれば、それだけ客観的な根拠になるし、なければないで、どういうことをやったのかが明確に話せるのならば、プラスにすることもあります。

Q12
勉強の進め方についてご教示下さい。
個別の論点の論証はそれぞれ暗記をする必要があるでしょうか?先生は論証の暗記をなさいましたか?もし、論証の暗記をなさったのであれば、どのような点に留意して暗記をされましたか?また、具体的にはどのような方法で暗記作業を行われましたか(ツール、時間帯など)?
投稿: hiro | 2009年1月27日 (火) 13時23分
A12
 論証の丸暗記は無意味です。
 キーワードやキーフレーズが自然と頭に浮かび、それをその場で文章化する能力は必要です。
 私のノートは、キーワードと矢印と接続詞しかなく、私以外の誰も読めませんでした。
 「東大生のノートは例外なく美しい」という本があるそうですが、
 私は、例外に該当します。

Q13
1、新司法試験の配点変更は合格率で東大を凌駕する一橋、慶應、中央の3校を懲らしめるための高橋宏志氏のお灸だとの見解がまことしやかに人口に膾炙しています。この当否、適否、是非につき貴殿はどうお考えですか。
A13
 高橋先生に聞いてください。
 大変、馬鹿馬鹿しい意見です。
 東大ローの合格率が低いのは、受験勉強をしていないからではないでしょうか。

Q14
2、貴殿はごじぶんが資本の犬であるとのご自覚がありますか。
A14
 私は犬というより、熊に似ています。

Q15
3、貴殿はことわざの飼い犬に手を噛まれるよろしく資本を噛んだことがありますか。
投稿: 苅部徂徠 | 2009年1月27日 (火) 23時04分
A15
 資本を噛んだことはありません。

Q16
いわゆる「信託型ライツプラン」には,自ら委託者となる「直接型」と,間にSPCを介在させて委託者にさせる「SPC型」があると理解しています。しかしながら,間にSPCを介在させることに何の意味があるのか,いまいちわかりません。
形式的にでもSPCを委託者にすることで,直接型と比較して,何かメリットがあるとか,何らかのリスクヘッジになるのでしょうか?
投稿: 信託型ライツプラン | 2009年1月29日 (木) 10時27分
A16
SPC型の中身をみないと分かりません。
SPCを噛ませることにより、信託的譲渡が、会社の計算による自己株式の取得にならないようにしているんでしょうか?

Q17
株式会社の決算公告について質問があり、メールさせていただきました。
会社法第440条第3項の規定は、5年間提供を継続することを求めていますが、ホームページ等で決算公告をしている会社が、解散し清算結了する場合は、清算結了時まで提供が継続されていれば、法令を順守したことになるのでしょうか?
会社法第509条第2号で、第440条第3項が除外されていることからすると、清算会社にも同項の適用があり、5年間提供を継続することが必要にも読めますし、清算結了してしまえば(そもそも「清算会社」ではなくなり)、ホームページ等は当然閉鎖しますので、提供は必要ないようにも思います。
投稿: 夢男 | 2009年1月29日 (木) 15時57分
A17
清算結了により法人格が消滅するので、公告義務もなくなると考えるべきでしょう。
Q18
はじめまして、ペンギンと申します。くだらない質問ですがよろしくお願いします。
①、「通説」「多数説」などとありますが、ある説がどれに該当するかは法学会にて決められるのでしょうか?
②、最も権威ある学者数名が唱えるA説と、その他大勢の学者達が唱えるB説となら、どちらが有力になるのでしょうか?
③、会社法において最も権威ある学者はどなたでしょうか?

投稿: ペンギン | 2009年1月31日 (土) 21時55分
A18
① 教科書や論文を書く人の主観で決められます。
② A説です。
③ 「最も」という冠は、危険です。私に踏み絵を踏ませないでください(笑)。
権威のある先生でも、間違っていることだってあるし、
裁判所が、権威のある先生の意見書ではなく、権威のない先生の意見書を採用することも、頻繁にあります。
私は、誰が最も権威があるかより、誰の見解が一番説得的か、の方が大事だと思います。

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