直接金融と開示のあり方
本日は、記事にしたいと思いながら、ホットすぎる話題なので熱が冷めるのを待っていた
アーバンコーポレーションの開示
についてお話をしたいと思います。
金融庁は、平成20年11月7日に株式会社アーバンコーポレーションに対し、臨時報告書の虚偽記載を理由として課徴金納付命令を発しました。
この課徴金納付命令のポイントについては、次回のT&Aマスターに掲載される予定ですが、このブログでは、この命令から読み取れる「開示のあり方」について考察を加えます。
この課徴金納付命令は、アーバンが、平成20年6月26日に提出した転換社債の発行に関する臨時報告書の「転換社債の発行による手取金の使途」に虚偽記載があったという事実に対し下されたものです。
この経緯については、BNPPの外部検討委員会の報告書の概要が簡潔にまとまっていますので、参照してください。
http://japan.bnpparibas.com/pdf/2008/2008.11.11.j1.pdf
簡単に言えば、6月18日にBNPPが、次のようなCB発行と2つのスワップ契約を組み合わせた資金調達を行う提案を行い、アーバンがその提案を承諾して実行したのです。
6月26日 CB発行決議+スワップ1契約
7月6日 スワップ2契約
7月11日 CB発行によりBNPPからアーバンに約300億交付
同時にスワップ2契約に基づきアーバンからBNPPに約300億交付
この経緯から明らかなとおり、7月11日のアーバンに入った300億円は、すぐにBNPPに交付されてしまうことになっていたにもかかわらず、アーバンは、6月26日に提出した臨時報告書の「新規発行による手取金の額及び使途の欄」に
「財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定」
と記載したことを虚偽記載と認定されています。
さて、ここで、私が注目したいのは、虚偽記載の本質的部分であるアーバンからBNPPへの300億円の交付は、
「スワップ2契約」を根拠としており、
そのスワップ2契約自体は、臨時報告書の提出日である6月26日よりも後の7月6日に締結されている
ということです。
通常、臨時報告書が虚偽かどうかというのは、その提出時の事実を前提に判断します。
とすると、臨時報告書の提出時点の事実関係を「形式的に見れば」
提出時点ではスワップ2契約は締結されていないのであるから
CBの払込金の使途は、スワップ2契約の払込金ではない
払込金を債務の返済に使おうと思えば使える
という外形が整っており、「虚偽記載」に該当しないように見えるのです。
そして、その臨時報告書の提出の後にスワップ2契約が締結されて、300億円がBNPPに環流することが決まり、それが履行されたような外形になっていますから、これも「形式的に見れば」臨時報告書に記載されているとおり、CBの払込金を「債務の支払」にあてています(スワップ2契約により生じた債務の支払という意味ですので、世間の人が受ける印象と大きく違いますが)。
しかし、実質を見れば、こうした臨時報告書の記載の仕方が「虚偽」と評価されるのは当然でしょう。
BNPPは、6月18日の時点で、スワップ1契約のみならず、スワップ2契約も含めて提案しているのですから、スワップ2契約の締結日だけを7月6日にする必要はなかったはずです。また、万一、アーバンが、7月6日に、スワップ2契約を締結しなかったとしたら、BNPPは、300億円をアーバンに拠出し、大きなリスクを背負うことになるのですから、スワップ2契約の締結は、CBの引受けの大前提だったはずです。
それにもかかわらず、あえて、スワップ2契約を、CBの発行決議日(=臨時報告書の作成日)以降の日に締結したのは
虚偽記載にならないような形式を整えようとした
という側面があったのではないかと思われます(関係者に真相を聞いたわけではないので、単なる推測です。別の理由であったかもしれません)。
言い換えれば、形式を整えることにより、開示を回避しようとしたようにみえるのです。
しかし、臨時報告書に書くべきは、「実質」であり、形式的な証拠があるだけでは、虚偽記載の責任を免れることはできません。
また、MSCBであれば、転換条件を含めて、すべて開示されるのに対し、今回のアーバンのスキームは、CB+2本のスワップという形式を取り、CB部分のみを開示しています。
CBの引受人と、スワップ契約の当事者が別人であるような場合はともかく、今回のように
CBの引受人=スワップ契約の相手方
という前提では
CBの内容の一部を、民法上の契約(スワップ契約)として外出しする
ということをやったとしても、法的には、ほぼ同じ効果を実現することができます。
逆もまた真なりで、今回のCB+2本のスワップ契約を、転換社債の内容に組み込み、開示することも可能だったはずであり、それにもかかわらず、あえてスワップ契約という形を取ったのは
スワップ契約は開示の対象とならない
という一般的な考え方に便乗し
市場受けの悪い情報については開示を回避した
ものと推認されます。
このように今回のスキームは、
一般的な開示ルールに適合するように、形式だけを整えて、開示を避けた
ものと推認され、このような開示に対する姿勢は、投資家保護という視点からは、非難を免れることはできません。
他方、金融の世界では、法形式を変更することにより、規制を回避することも法的テクニックと捉える傾向にあり、今回のスキームを構築し、リーガルチェックをするプロセスにおいて、アーバン・BNPPの関係者が、どこまで罪悪感をもっていたのだろうかということは気になります。
私自身、クライアント様からの要望を、なるべく法規制の少ない方法で実現するという仕事をすることも多く、すべての規制に対して過剰・過敏に対応するのはよくないと思っていますので
法形式を変更して規制を回避する
というテクニックが一切駄目だとは思いませんが、他方で、有価証券報告書等の虚偽記載は、巨額の損害賠償責任のみならず、課徴金や懲役刑が科されるリスクもある違法な行為ですから、自分がリーガルチェックした行為により、そのような責任を生じさせることが絶対にないように注意しなければならないのは当然です。
ですから、少なくとも開示にあたっては、
形式を変更するのならば、それに伴い実質も変更する
実質が変更できないならば、形式も変更しない
開示においては、実質をそのまま開示する
という基本理念に忠実であるべきだと思います。
この案件については、インサイダー取引等も注目されていますが、その点は、また別の機会に。
(質問コーナー)
Q1
先生、今進路のことで悩んでます。
それは本当に心からその仕事がしたいって言いきれない点です。
私は弁護士になりたいです。
でも、なんとなく法律が合ってるんじゃないか、勉強しててもそんなに苦痛に感じない、弁護士がかっこいいイメージがあるからという理由からです。
会社を退職して、旧司法試験を目指して2回挑戦してだめだったんです。
そして、今は司法試験の勉強は続けるつもりです。
経済面からも職について勉強続けるため、地元の公務員として働こうと思い昨日面接を受けてきました。
面接で、司法試験を目指してたことを伝えると「受かったらじゃ職やめるの?」と聞かれました。
もちろん、「行政のために法律を活かしていくつもり」ですと答えたのですが。
そうしないと、採用は難しいからです。
これは自分の本音とは逆の発言なんです。
質問です。
いろんな職業を志望する際、どうしてもこれになりたい、これじゃないとだめって言い切れるものなんでしょうか?
私は、やりがいは仕事ができるようになって感じられるものだと思うんです。
だから、私はどーしてもこれがやりたいとかって言い切れないんです。。
でも、面接では、入る前から詳しく「なんで志望したの?」「うちの会社(自治体)でどーやったら利益が出せる?」って聞かれますよね。
その回答に困るんです。
これは、入った後のおぼろげながらもビジョンが描けているかを聞きたいのでしょうか?
先生は、司法試験を目指す志望動機はどういいうものだったのでしょうか?
先生の以前のコメントで「司法試験を目指すと決めたなら、勉強が嫌だとかうんぬんいわず勉強をすればいい」とありました。
将来どの分野をやりたいとかって正直わかりません。。
それでは、だめでしょうか?
投稿: 進路悩んでます | 2008年11月 3日 (月) 09時05分
A1
駄目ではないと思いますが、面接のときは、自分が調べた範囲でやってみたいことを答えた方がよいでしょう。
「死んでも、この職につきたい」というほど、強い希望を持っている人は希であり、憧れ程度で進路を決めている人の方が圧倒的に多いと思います。
方向性を決めた後は、その職業について調べてみて、もう少し具体的に「やってみたい」という気持ちを固めますが、結局、その仕事の具体的イメージは、実際にその職についた後でなければ、分かりません。あなたの感覚は、きわめて正常です。
ただ、面接のときは、あなたは、自分自身のセールスマンになっているのですから、売り込みが下手なら、面接に落ちることになるでしょう。
なお、私は、当時好きだった人が、1年で司法試験に合格したら30秒キスしてくれると約束してくれたので、司法試験を目指しました。
Q2
買収防衛策について質問です。
少し古い話になりますが今年の6月
企業価値研究会から「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」が発表されましたが、この内容が今一つ理解できていません。
1.つまり、企業価値研究会は買収防衛策とはアメリカにおける買収者との交渉機会を得ることを目的とするようなライツプランを想定しており、そのような目的による防衛策と、
そんな機会を得ることは目的とせず、とにかく株主総会とかの賛成を得たりして実質的に判断して、会社の利益を図ることを目的とする防衛策とで、適法性の判断基準が異なるといっているのでしょうか??
憲法でいう職業選択の自由に対する規制目的二分論のような…単純に考えすぎなような気もしますが…
A2
その視点も、一つの要素と考えていると思います。
買収可能性を前提とした価格交渉と、買収の拒絶と比較すれば、前者の方が適法とされやすいというのは、理解しやすいところです。
ただ、実際には、両者を区別して、防衛策の適法性を区別するのは、困難だと思います。
Q3
買収防衛策における金員の交付について企業価値研究会は難色を示していますが、金員を交付したことを理由とする新株予約権発行差し止めというのは考えられるでしょうか??
その場合の根拠はなんでしょう??
A3
それは、普通はないでしょう。
対価が高すぎれば、利益供与や株主平等原則を根拠に違法とされる可能性はありますが。
Q4
ブルドックの買収防衛策は実質的には、株式分割とそれに続く買収者からの分割新株式の強制的な買取りであるとして、株主総会の特別決議および適正な対価(金員の交付)が必要となるという考えに対してはどうお考えでしょうか??
投稿: ほいほほい3 | 2008年11月 3日 (月) 15時49分
A4
分割新株式の「強制的な買取り」と捉えると、特別決議でもできないです。
Q5
役員等の会社に対する責任(423条等)の内,(ア)任務懈怠が推定されるのは利益相反取引のみです。他方,(イ)利益供与,剰余金配当では,任務懈怠がなかったこと(注意を怠らなかったこと)の証明責任が役員等に回っています。(ア)の「推定」は,暫定真実だと思われるので,(ア)(イ)の両者は一般論としては等価だと思われます。なぜ書き方を変えたのでしょうか。
投稿: 最終学年 | 2008年11月 3日 (月) 17時13分
A5
任務懈怠と、注意を怠らなかったことは、別の概念です。
それを、一緒だと考えると、役員の責任に関する規定は、まともに解釈できないと思います。
Q6
千問の道標の155頁の図表2-9について質問させていただきます。
この表を見ると、
459条1項1号の定めを定款に定めている会社(例外1に該当)が、例外3の、市場取引・公開買付等による取得の場合は、取締役会決議では自己株式を取得できないようにも見えるのですが、図表2-9でいう例外1(459条1項1号)と例外3(165条)の関係についてご教示いただけますでしょうか。
まとめますと、
459条1項の定款の定めをしている会社が、市場から自己株式を取得する場合は、
株主総会決議?取締役会決議?でしょうか?
投稿: kabukonmodel | 2008年11月 5日 (水) 16時21分
A6
2つの例外は、並列的なので、459条1項の定款の定めがある会社でも、取締役会決議で市場から自己株式を取得することもできます。
Q7
「株主Aには米を、Bには麦を、Cには金銭を配当する方式は”株式の種類及び数に応じて”配当財産を割り当てたとは認められず現物配当とは認められない」とありますが、この変形バージョンとして、「米5kgと麦5kgと金銭の選択制による配当」とした場合、現物同士の選択制だと価格の差がありますが、株主が自分で選択する以上、内容に差があっても平等原則には反しないと言えるでしょうか?
投稿: にこいち | 2008年11月 5日 (水) 16時25分
A7
選択制は、認められません。
ただ、「選択債権」となる1個の権利を創設することができれば、それを平等に分配することは認められます。微妙な違いですが、理論的には大きな違いです。
そうすると、株主平等減速にも反することはありません。
Q8
葉玉先生こんにちは。質問に何度か答えてくださってありがとうございます。
今回も質問なんですが、自分は理系出身で今年学部卒業と同時に法律を勉強して、今年中堅私立の既習に合格しました。
この場合は進学したほうがいいでしょうか。TMIのような法律事務所に入りたくてマスターに進学するのをやめてローを目指したんですが、やはりTMIなどは年齢よりもローのネームが聞いてくるのでしょうか?学部は東大なんですが、ローは違う場合はTMIはやはり厳しいでしょうか。東大も受けるつもりなんですが、私立に入学金を払うかなど悩んでいまして。。。
あと、質問なんですが、予備校の答練では自分ではできたと思うときに24点、失敗したと思ったときに27点をとったりすることがよくあるんですが、これは何か自分の答案作成の際の意識に何か問題があるんでしょうか。それとも一般的によくあるはなしでしょうか。意見を伺える人があまりいなくて。。。
お手数ですがよろしくお願いします。
投稿: 未修者 | 2008年11月 6日 (木) 23時38分
A8
ロースクールは、一つの要素に過ぎず、東大ローじゃなくても就職はできます。
答練の結果は、採点者の主観がある程度入りますし、相対評価という面もあることを忘れてはいけません。
あなたが、「できた」と思ったときは、他の人も「できた」と思っているのです。
Q9
会社法350条について質問させていただきます。
この条文は民法44条(削除)と同様の規定だと思うのですが、すると代表者が不法行為を行ったことが前提になりましょう。
では、会社法429条1項の責任を代表者が負う場合はどうなのでしょうか。
350条には、「株式会社は…代表者が職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」としか書いてないので、それだけ読むと、429条1項の「第三者に生じた損害」についても会社が賠償義務を負ってもよさそうです。
しかし、429条1項は(判例上)不法行為責任ではない法定責任ということになっています。すると、民法44条と同様に考えれば、429条1項の場合は350条は適用されないことになりそうです。
投稿: p17n | 2008年11月 7日 (金) 00時10分
A9
代表者は、429条1項の責任を負う場合でも、民法709条の責任を並列的に負うことはあります。
したがって、429条1項の責任が成立する場合に、会社に350条の責任が生ずることもありえます。
Q10
質問があるのですが、
①弊社は大会社でもなく、上場もしておりませんが、任意で②監査役会と会計監査人を設置しております。③また、将来的には上場も視野に入れております。
以上を踏まえ、まず、1つ目は弊社に会社法362条4項6号の事項の決議は必須であるのか?(条文を額面的に取れば必要ないように思えますが他社事例では決議している会社が多かったもので)。
2つ目に、これは会社の方針次第とも思えますが、仮に任意だった場合に、上場を目指すにあたり上記決議を行うことにメリットはあるのか?です
投稿: Tomo | 2008年11月 7日 (金) 10時54分
A10
内部統制システムに関する決議は、法的には必須ではありませんが、事業内容・規模によっては、取締役の善管注意義務の一環として決議すべきであると判断されることがあります。
また、上場を目指されているのであれば、上場準備のために決議するのが通常でしょう。内部統制がまったく構築されていない会社は、上場できないと思います。
どうせ金商法の内部統制報告制度の対象にもなるのですから、準備段階から構築した方がよいでしょう。
Q11
利益相反取引に関して、質問させてください。
第1に、356条1項2号の「取締役が…第三者のために株式会社と取引をしようとするとき」の「取締役」、「第三者」、「株式会社」が誰を指すのか、わかりません(厳密に定義することはできないのでしょうか)。
A11
厳密に定義しています。
「株式会社」は、取締役会の決議を要するかどうかが問題となる株式会社です。仮にこの株式会社を「X社」としましょう。
「取締役」は、X社の取締役です。この取締役をAとしましょう。
「第三者」とは、X社およびA以外の者のことです。Y社としましょう
したがって、Aが取締役をしているX社と、Aが代表取締役を務めているY社が契約する場合等のことを意味しています。
Q12
「取締役会設置会社A社の建物を、取締役設置会社B社が買い取る取引において、以下のような考え方は正しいか?
A株式会社(代取Q,平取P)―B株式会社(代取P,平取R)
建物
ⅰ)A社をQが代表し,B社をPが代表して取引→A社の取締役会の承認必要
(理由)A社の「取締役」であるPが,自らB社の代表取締役として(「第三者のために」),A「会社」を相手に行う取引であるから,A社にとって利益相反取引(356条1項)に該当し,A社の取締役会の承認が必要となる。
ⅱ)省略
ⅲ)省略
ⅳ)A社をPが代理し,B社をRが代理して取引→A社の取締役会の承認必要
(理由①)B社の「取締役」であるPが自らがA社を代理して(「第三者のため」),B「会社」を相手に行う取引であるから,A社にとって利益相反取引(356条1項)に該当し,A社の取締役会の承認が必要となる。
(理由②)B社を代理するRは,契約当事者の相手方であるA社の役員等ではないため,B社にとっては,利益相反取引とならず取締役会の承認不要。」
これに対して、先生は「i)正しい、iv)B社の取締役会が必要」と回答されていました。ここで質問なのですが、
[質問2-1]
まず、ⅰ)ではB社での承認は不要なのでしょうか。それは、PがA社(=第三者)を代表していないから、「第三のために」という要件が欠けて、B社においてBとPの利益対立がないから、というのが理由なのですか?
A12
そうです。条文に該当しません。
学説の中には、Pが、「A社をも実質的に代表している」と考えて、B社の承認を必要とする見解はありますが、私は、その考え方には、賛同できません。
Q13
[質問2-2]
次に、ⅳ)でB社での承認が必要なのは、ⅰ)でA社での承認が必要なのと同じ状況であるからでしょうか。
A13
B社の取締役Pは、A社(第三者)を代理していますから、B社の取締役会の承認が必要です。
Q14
[質問2-3]
最後に、ⅳ)でA社において承認が必要なのは、PがB社において代取であってRに影響を及ぼすため、PがB社を代表していると見うる(B社=「第三者のため」といえる)からなのでしょうか(そうすると理由①②は誤解でしょうか?)。
投稿: 学部2年生 | 2008年11月 7日 (金) 15時23分
A14
A社の承認は、不要です。回答はそういう趣旨です。
Q15
司法試験受験時代の葉玉先生はアルコールを飲むことはありましたか?
アルコールを口にすると、記憶力が低下して記憶した条文や定義が無駄になると聞きました。
投稿: こんちゃん | 2008年11月 8日 (土) 01時22分
A15
お酒は友達と飲んでいました。
酒を飲んで、条文や定義を忘れるというのならば、裁判官・検事・弁護士は、ほとんどの人が、条文や定義を忘れているはずです。
もちろん、酒を飲んでいる最中は、つとめて法律のことは忘れるようにしています。
Q16
任務懈怠責任と過失責任の相違について少々混乱していますので、確認させてください。
条文に、「職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合はこの限りでない」という文言があります(例えば52条2項2号や120条4項)。文言だけ見ると、任務懈怠責任に親和性があると思いますが、これは過失責任を意味するものですよね?
これに対して、任務懈怠責任は忠実義務違反を含む法令違反を指すと考えていいのでしょうか?
やはり、文言だけを見ると「任務懈怠≒法令違反」というのはおかしな気もするのですが・・・?
次に、上記の解釈が正しい場合の質問ですが、425条以下の「重大な過失」の「過失」は「職務を行うについて注意を怠った」という意味になるのでしょうか?
投稿: 混迷 | 2008年11月10日 (月) 11時21分
A16
任務懈怠「責任」、過失「責任」という言葉の使い方が混乱を招いていると思います。
たとえば、423条の責任の要件に、「任務懈怠」と「過失」があるのです。
重大な過失は、職務を行うについて、著しく注意を怠ったことを言います。
Q17
事業譲渡と会社分割について教えてください。
一般に、事業譲渡は債権債務を特定して譲渡できるから簿外債務承継の危険は少ないのに対し、会社分割は包括承継であるから簿外債務承継の恐れがあると論じられているようです。
他方で、会社分割においても、分割承継会社・分割設立会社が承継する債権債務を特定できることから、やはり簿外債務の承継のリスクを避けることができるとする見解も見受けられます。
また、仮に会社分割でも簿外債務承継のリスクを回避できるとして、それは、会社分割について、旧来「営業の全部又は一部を・・・承継せしむる」と定義されていたのが、会社法制定により、「事業に関して有する権利義務の全部又は一部を…承継させる」との定義に変わったことによるものでしょうか。それとも、旧法下から、実は会社分割でも、簿外債務の承継のリスクを避けることができたのでしょうか。
投稿: もう | 2008年11月10日 (月) 15時36分
A17
会社法改正以前から、事業の特定のために、どの財産を移転させるのかを具体的に特定しなければならなかったので、簿外債務承継のリスクは、ほとんどありませんでした。
ただ、分割契約の内容によっては、PL責任などの不法行為責任を承継することはあります。
Q18
会社法405条4項「当該各項の報告の徴収」の部分、報告はお金を徴収するようなものではないと思うのですが、なぜ文言に「徴収」と使っているのですか?
投稿: 3年生 | 2008年11月10日 (月) 18時30分
A18
用例があるからです。
ちなみに、細かいことを気にしすぎると、全体を見失うので、勉強をする際には気をつけましょう。
Q19
一流大手事務所に入っても、出来が悪いとバンバン肩たたきされて、10年後には2割ぐらいしか生き残れないって言うのはほんまなんでしょうか?
弁護士には労働組合もないっていうのもほんとなんでしょうか?
僕の学校(文京区の国立LS)の連中は、幸せ度ランキング、大手渉外≧任官・任検≧町弁 と言う感じで、大手渉外には入れたら超エリートで人生バラ色、、安定も高給も保証されて、定年まで安心して仕事が出来るぞ~、大手渉外バンザイ!と言う感じなんですけど。。。。
せっかく一流大学法学部・一流ロー出て新司法試験受かったんだから、人生保障してー、雇用の安定がないのんはやめてー、労働組合ほしいよーと言う声も多いです。
まあ、弁護士には、学生の延長上で一流企業に入れば将来安泰、と言う意識が間違っているのかもしれませんが。。。葉玉先生のお考えとか実態をお教え下さい。
投稿: たけりん | 2008年11月11日 (火) 11時18分
A19
「大手渉外」というくくりで、話をすることはできません。弁護士がどんどん入れ替わる事務所もあれば、ほとんど弁護士が辞めていかない事務所もあります。
TMIは、ほとんど弁護士が辞めていかない事務所だと思います(肩たたきをしていることもないはずです)。
アソシエートの弁護士の実態も、事務所によって違いますから、事業主とするのか、雇用とするのかも、事務所によって違います。
労働組合に入りたければ、労働組合のある事務所(少ないと思いますが)に入るか、企業に入るのがよいでしょう。
ちなみに、どんな事務所、どんな会社に入っても、「人生保障」はついていません。
Q20
①葉玉先生は、司法試験受験時代一日「12時間」勉強したそうですが、
それは、大学の講義を聴く時間も含めてでしょうか?
それとも自習している時間でしょうか?
出席しない科目があるとして
②どのような理由で休講なさいましたか?
投稿: K | 2008年11月12日 (水) 11時23分
A20
大学の講義は、まったく聴いていませんでした。法律科目については、テスト以外に大学に行ったことがありません。
ですから、出席しない理由を考えたことがありません。
Q21
以前,「相続と株主名簿の関係」の記事http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50658328.html
で,相続人を株主として取り扱うとしても,「会社が、招集通知や配当金を株主名簿に従って送ったところ、真の相続人でない人や、相続人のうちの一部が勝手に配当金を自分のものにしたり、議決権を行使した」場合には,「株主名簿の免責力の問題であり、会社が善意無重過失である限り、免責されます。」としておられますが,この根拠条文はどこに求められているのでしょうか。
①招集通知は,126条1項によって,会社の主観を問わず適用されるということでよろしいのでしょうか?
②また,配当金の送付は,「通知又は催告」には含まれないと思いますので,126条1項は適用されず,一般的な株主名簿の効力としての免責力(手形法40条3項類推(→善意無重過失でよい)や民法478条(→善意無過失が必要))を根拠としているということでよろしいのでしょうか?
投稿: たけ | 2008年11月13日 (木) 12時01分
A21
①②とも、そのとおりです。
Q22
本日旧司法試験の合格発表があり、なんとか合格していました。
会社法を理解する上で、社会における会社法の使われ方を知る上で、
このブログは非常に役に立ちました。
どうもありがとうございました。
投稿: 旧試験の受験生 | 2008年11月14日 (金) 00時45分
A22
本当におめでとうございます。
狭き門をくぐり抜け、感慨もひとしおでしょう。
就職が厳しい時期なので、一刻も早く就職活動をすることをお勧めします。
Q23
会社法34条1項の「引受け後遅滞なく」につき質問させてください。
ここでいう「引受け」とはどの時点をさしているのでしょうか?
「引受け」という文言からは、
① 「発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法」(25条1項1号)を定めた時点
とも思えます。
しかし、
具体的に各発起人に割当てられた株式数が決まらないと遅滞なく払い込みができないので、
② 各「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数」(32条1項1号)を定めた時点
とも思えます。
もしくは、
③それ以外のべつの時点
があるのか
投稿: 登記職人見習中 | 2008年11月15日 (土) 02時27分
A23
発起人が、それぞれ何株引受をするのかが決まった時点です。
Q24
今日は弁護士という職業について質問させてください。
現在自分は経済学部に通う大学3年生で,周りが就職活動をしているということもあり,自分自身も将来のことをあれこれ考えているのですが,将来やりたいこととして,税法やファイナンスなどの企業法務があります。
ですが,企業法務を十分にやるには会計士という資格だけでは役不足ではないかと思い,ダブルライセンスを取ろうかと検討しております。
そこでお聞きしたいのですが,
・企業法務をやるには会計士では果たせる役割に何か制限があるのでしょうか
・ダブルライセンスのメリットというのは何かありますか
お答えしていただけると幸いです。
投稿: 会計士受験生 | 2008年11月16日 (日) 22時50分
A24
「会計士」は、「法務」をやる職業ではないので、企業「法務」をやろうとすると弁護士法違反に問われるリスクがあります。
TMIにも、会計士の資格をもった弁護士が多数います。弁護士をやる上では、「会計士の資格」があることがセールスポイントになりますし、会計の知識は企業法務には必要不可欠です(実際には、世の中には、会計の知識のない弁護士も多数いますが)。
Q25
先生の座右の書を教えていただけないでしょうか?
日頃の試験勉強に役立てたいと考えております。
投稿: 司法試験受験生 | 2008年11月17日 (月) 00時16分
A25
千問の道標と会社法100問と会社法マスター115です(笑)。いつも右側に置いています。
好きな本はあっても、座右の書と呼べるほどのものはないですね。
Q26
会社法は、読みにくいのですが、
取締役、監査役は、欠格事由で法人はダメと書いてありますが(331条1項1号)、
欠格事由で法人がダメと書いてないものは全て法人もなれるということですか??
ならば発起人、募集設立の引受人も法人がなれるということですか??
投稿: よいこ | 2008年11月17日 (月) 11時38分
A26
なれます。
Q27
ケースブック会社法第3版の第4章株式会社のファイナンス第2節負債の諸問題writing①(213ページ)が何を問うているのかよく分かりません。よろしかったら教えてください。
投稿: えりこ | 2008年11月17日 (月) 18時06分
A27
ケースブック会社法は持っていません。著者にお聞きください。
Q28
会社法349条4項と386条1項2項と最判平成15年12月16日の関係について質問させて下さい。
私の理解を述べさせていただきます。
(1)349条4項により原則として代表取締役が代表権を有する。
(2)監査役設置会社の場合で、取締役(取締役であった者を含む)と会社との間の訴訟では、386条1項により例外的に監査役が代表権を有する。
(3)監査役設置会社の場合で、取締役(取締役であった者を含む)と会社との間の訴訟であっても、馴れ合いのおそれがないときは、386条1項の趣旨が妥当しないから、同条項の適用が解釈上排除され、原則に戻り、代表取締役のみが代表権を有する。最判平成15年12月16日は、そのままでは維持できない(立案担当者による新・会社法の解説p104参照)がこのような法理を導ける限度において意味をなお有している。また、この(3)の場合、監査役が代表取締役と競合して代表権を有しているとはいえない。最判平成15年12月16日は監査役と代表取締役とに競合して代表権を認めていたが、会社法の下ではそのようには解されない。386条2項も内容からして馴れ合いのおそれがあるときの規定であって、(3)の場合は馴れ合いのおそれがないときなのだから、(3)の場合に386条2項から監査役の代表権を導くことはできない。
投稿: s-k | 2008年11月17日 (月) 23時22分
A28
最高裁は、条文を根拠にしており、条文が変わった以上、条文通りと考えるべきでしょう。
馴れ合いのおそれという抽象的な概念で、代表権限が変わるのは、どうかなあと思います。訴訟要件なので、法的に不安定なのは、避けるべきです。
Q29
会社法362条(取締役会の権限)についてなのですが、同条4項の取締役会専権事項は、
条文に記していないので定款の定めで各取締役に委任できないのでしょうか?
これに対して、348条3項(取締役の権限)については、同条2項を根拠に定款で別段の定めが可能と解してよろしいのでしょうか?
投稿: | 2008年11月18日 (火) 07時38分
A29
基本的には、そう考えて良いでしょう。
Q30
先生はじめまして。
いつもブログで勉強させていただいております。
私は司法書士受験生です。
先生は、勉強に行き詰まったとき、どのようにモチベーションをUPさせていましたか?
私は、最近、義務感で勉強していて、気持ち的にかなり落ち込んでいます。
投稿: akina | 2008年11月18日 (火) 08時17分
A30
モチベーションは、好きな漫画を読んでアップさせていました。
「ガラスの仮面」とか、「がんばれ元気」とか読むと、がんばろうという気力が沸いてきましたね。
| 固定リンク | コメント (44) | トラックバック (2)
最近のコメント