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2008年10月29日 (水)

貯まった質問を一掃します

ここしばらく、更新をサボっていたところ、質問が貯まってしまいました。
質問が貯まりすぎると、それだけで更新の気力がなくなるので、本日は、質問を一掃させていただきます。


(質問コーナー)
Q1
今回は新司法試験対策についていくつかご質問させてください。
①短答対策について。旧司択一の問題を解いて間違えたところを復習→正解するまで解くというやり方と、新司法の択一は条文・判例が重視されていると思われることから条文と判例を読んでまとめる→それを何度も読むというやり方と、どちらか一方を選ぶとしたら葉玉先生はどちらを選びますか。理由もお聞かせください。
A1
 択一の問題ですね。暗記ではなく、自分に対して問いを投げかけてもらえるということが知識の定着の上では重要です。

Q2
②論文対策について。旧司法におけるいわゆる論証パターンは新司法においても必要でしょうか。新司法における上位答案を見ていると、規範部分が非常にあっさりしており、判例そのままなものも多数あります。これならリーディングケースといわれる判例の事案と判旨をそのまま覚えて、後は関連判例を読んであてはめのやり方を研究したほうが効率的なように思われるのですが、先生はどう思われますか。(実は旧司用の論証あてはめ講座の教材が家にあるのですが、それをやるかどうかで迷っています。紹介されている規範が判例と異なるので。)
投稿: 新司受験予定者 | 2008年10月14日 (火) 18時36分
A2
論証パターンの丸暗記は、旧試験でも不要だと思います。
他方で、論証がすらすらできるようにトレーニングすることは、旧試験でも新試験でも必要です。
 新司法試験が、判例の規範を覚えていれば合格する試験だとすれば、それは新司法試験が嫌っている「予備校的勉強」=「丸暗記」を推進する効果しかありません。

Q3
①抵当権のついた不動産の現物出資は可能であるとのQ&Aがありましたが、その不動産の評価額は、抵当権で把握された価値を差し引いたものでよろしいですか?
②ロータス21のDVDはいつごろ完成予定でしょうか。
投稿: アンナ | 2008年10月14日 (火) 19時06分
A3
1 一般的には、抵当権で把握された価値を引くということでいいと思いますが、根抵当なのか、どうか、被担保債権の弁済可能性がどうか等によって評価が変わると考えることも可能でしょう。
2 現在編集中です。すいませんがしばらくお待ちください。

Q4
吸収合併の消滅会社の株主への通知が効力発生20日前まで(会社法785条3項)であるのに対し、新設合併の消滅会社の株主への通知は決議から2週間以内(同806条3項)となっています。
もちろん吸収合併と新設合併は異なりますが、消滅会社の目線で見るとどちらも消滅することに変わりは無く、このように区別されている理由が解りません。何故このように区別されたのでしょうか?
投稿: 会社法漫遊 | 2008年10月14日 (火) 22時55分
A4
新設合併は、登記によって効力を生ずるところ、登記の時期が不明確であり、効力発生日の20日前という定め方が難しいからです。

Q5
主観的に自分の学歴をどう思うか、ということと、客観的に自分の学歴がどのように写り、どのように扱われるか、ということとがごっちゃですね。
投稿: | 2008年10月15日 (水) 08時37分
A5
ごっちゃにはしておりません。
 よく読んでいただければ分かりますが、主観的に自分の学歴をどう思うかという点に学歴の意味があり、客観的に自分の学歴がどのように写り、どのように扱われるかというのは、大した問題ではないと言っております。

Q6
会社法111条1項に関してなのですが、
取得条項付種類株式及び取得請求権付種類株式の取得対価の種類株式に取得条項を付す場合において、当該取得条項付種類株式及び取得請求権付種類株式の種類株主に会社法111条2項による保護規定が無いのは何故なのでしょうか?
投稿: T。 | 2008年10月15日 (水) 09時34分
A6
まあ、種類株主総会の決議ではなく、全員の同意を得なければならないというルールに、どこまで拘るかというバランスの問題ですね。
従来の取扱い等からバランスをとってそういう決め方をしているというほかありません。

Q7
葉玉先生こんばんは。総務部で法務担当二年目の24歳会社員です。
たびたびこちらのブログや先生の株券電子化の講演で勉強させていただいてます。
会社の剰余金処分案が否決され、株主提案または修正動議が可決された場合の対応についての質問です。会社は事前に会社案に基づいて、配当金の計算や配当金領収証等の作成を行っているため、想定外に株主提案側が可決されてしまった場合、配当金の支払いに大幅な遅れが生じる恐れがあります。
この場合、会社は遅滞遅滞等の責任に問われるのでしょうか?株主提案の場合、予め会社提案と株主提案の両方の書類等を作成しておくという手もあるかと思いますが、修正動議の場合には予め作成しておくことは不可能なので配当金支払いの遅滞は免れません。
仮にこうした事象が発生した場合、どういった対処を行うことが会社にとって最も適切でしょうか?
その他の議案の場合、会社提案が否決された場合に、一度会社案が可決されたと記載した決議通知を発送した後に、訂正の決議通知を発送するという手段が実務上は採られているようですが、剰余金処分案については分かりません。
先生のご意見を伺わせてください。
投稿: 嵯峨 | 2008年10月15日 (水) 21時14分
A7
金銭債権なので、効力発生日から遅延損害金が生ずるのは、通常、仕方がないですよね。
ただ、実務的には、配当金だけ払って、遅延損害金については、請求があったら払うというやり方でもおかしくはないと思います。親切心を出すならば、支払日を先に確定させて、その分の遅延損害金だけは上乗せして支払うということになるでしょう。

Q8
わたくしが通ってるロースクールの生協の本屋で、会社法100問は、来春改定予定と掲示してありましたが、本当ですか?
投稿: 某ロー生 | 2008年10月17日 (金) 00時55分
A8
嘘です。

Q9
株主総会議事録の本店備置義務についてご質問させてください。会社は議事録の原本を10年間保管しなくてはいけませんが、自社が消滅会社となる吸収合併の際にはこの義務はどうなるのでしょうか。
消滅会社の権利義務は存続会社に承継されるので、消滅会社は過去の議事録を存続会社に渡して、合併後は存続会社が保管するのか、そもそも会社そのものが消滅してしまっているので、保管など必要ないのか、考え込んでしまいました。
投稿: おせんべい | 2008年10月17日 (金) 13時43分
A9
存続会社が義務を引き継ぐと考えた方がよいでしょう。

Q10
私は今年の旧試験に落ちました。
私にとっては最後のチャンスと思って
挑んだ試験だったため、何ともいえない辛さを感じています。
そして私は法科大学院に行くことはできない現実を
未だ素直に受け止められないようです。
そのため、私は法科大学院制度と戦うことを
考えていますが、どのように思われますか?
投稿: 司法戦士 | 2008年10月17日 (金) 18時17分
A10
あなたに、子供がいるとしましょう。
その子供が、立派な大学を卒業して、司法試験で頑張っていたにもかかわらず、ある日、「司法試験に落ちたから、法科大学院制度と戦う」と言ったら、どんな気持ちがするでしょう。
 亀田興毅とは戦えても、「制度」と戦うことなんてできません。
 きっと、「そんな無意味なことに貴重な青春を費やすな」というのではないでしょうか。
 旧司法試験に落ちたという経験をプラスにするのもマイナスにするのも、あなた自身です。
 恨みは、何も生みません。

Q11
①優先株式・劣後株式の内容として、次のような停止条件又は解除条件を規定することは可能でしょうか。
「A株式については、●●が発生しない限り、剰余金配当金額の全てを受けることができるが、●●が発生した場合には、剰余金配当金額の一切を受けることができない。」
「B株式については、●●が発生しない限り、剰余金配当金額の一切を受け取ることができないが、●●が発生した場合には、剰余金配当金額の一切を受けることができる。」

②上記と同じ条件を、全株式譲渡制限会社において、属人的定めとして規定することはできるのでしょうか(すなわち、上記の「A株式」が「A株主」となり、「B株式」が「B株主」ということになるということです。)。

いずれについても、株主は二者のみであることを想定しております。
投稿: ボストン万歳 | 2008年10月18日 (土) 02時55分
A11
条件の書き方は、もう少し工夫を要しますが、やろうとしていることは、できると思います。
属人的な定めでも可能でしょう。
ただし、どちらも残余財産分配請求権は認めてください。

Q12
こんにちは。 今日の記事は、法律外のことなのでそれにぴったりの質問をさせてもらいます。
葉玉先生は、正解のない事で奥さんと口論になった場合、どのように対処しますか?
私は話が好きなのでよくしゃべり、するとどうしても付き合っている女性との間でつまらないことでもめる羽目に陥ってしまいます。
投稿: 独身男性 | 2008年10月20日 (月) 00時11分
A12
正解のない事であろうと、正解のあることであろうと、奥さんの言うことが正解です。
我が家も夫婦で「もめる」ことはありますが、
 「法は家庭に入らず」=家庭は無法地帯である(笑)
という原則に従い、私は、夫婦間のもめごとを、法や理屈ではなく
  「和をもって尊しとす」という聖徳太子の精神
で、妻のすべての受けいれる、というようにしようと心がけております。

Q13
この前、とある試験を受けて、自分が条文構造を全く理解できてないことに愕然としました。
「条文を大切に」とはよく言われますが、どう勉強すれば条文構造をしっかり理解でき、
条文を大切にする姿勢が身に付くでしょうか。
一応、基本書に出てくる条文は六法で参照して、
マーカーでチェックを入れたりはしてるんですが…
投稿: 明 | 2008年10月20日 (月) 19時06分
A13
 条文構造を分かっている先生に、条文構造を教えてもらってください。
 それが一番の早道です。

Q14
1 ストックオプションの付与の場面において、行使期間の異なる新株予約権を発行するにはいかなる手続を踏む必要があるのでしょうか。
2 また、同様にストックオプションを従業員に付与する場面において、同一部門内での従業員相互の譲渡は自由であるが、その他の場合には譲渡を禁止するという内容の、株式における属人的種類株式のような新株予約権を発行するにはいかなる手続を踏む必要があるのでしょうか。
投稿: civil | 2008年10月21日 (火) 10時17分
A14
1 行使期間が異なるということは、2種類以上の新株予約権を出すことになるので、議案を分けて、それぞれ決議してください。
2 新株予約権の内容に、譲渡制限を付せばよいです。

Q15
ロースクール進学が決まりましてこれから頑張って勉強していきたいと思っているのですが、私は検察官志望でして来春の入学前に法律は勿論ですが、簿記会計の勉強をしてみたいと思っています。もちろんあくまで余裕があればですが…。
そこで葉玉先生は修習時代に会計の勉強をされていたと聞いたのですがどのような勉強をされましたか(簿記何級であるとか)?
また弁護士として企業法務をやるなら役立つのは勿論ですが、検事として捜査する上で(主に特捜部でということになるのでしょうが)会計の知識は役立ちましたか?むしろ基本的な知識は持っていて当然という世界なのでしょうか?
投稿: あざらし | 2008年10月23日 (木) 00時03分
A15
 私は、修習時代、大原簿記学校の税理士講座で、簿記2級、3級、会計、法人税、所得税、相続税を勉強しました。
 会計の知識は、特捜部に限らず、また、検事に限らず、法曹としての基礎力であるとお思います。

Q16
振替法161条および会社法201条3項に関するご質問です。
振替法の施行に伴い、株主への募集事項の通知(201条3項)は適用除外になります。この場合、次のいづれの取扱いになるのか解りません。①従来どおり、上場会社(振替株式を発行してます)は、201条5項の適用を受け通知、公告とも不要、②201条3項の適用除外は201条5項にも及び公告をしなければならない。②と解釈しないと振替法161条で201条3項を適用除外した意味がないと考えるための質問です。また、②であれば、なぜ、こんな変更をしたのでしょうか。
投稿: 株券電子化くん | 2008年10月23日 (木) 16時18分
A16
改正の順番は、電子化が先で、201条5項が後ですね。
振替株式発行会社では、株主名簿は総株主通知により名義書換をするので、期中に、株主名簿を基準に通知しても、その時の真の株主に通知される蓋然性が低いので、公告を必須としたものです。
その後の会社法の改正で、有価証券届出書等を提出している場合には、投資家に広く開示されるので、通知・公告は不要とされ、現在に至っているのですが、結論としては、振替株式発行会社は、実際には、有価証券報告書提出会社となるので、201条5項が適用される場面では、「通知すべき事項」=公告すべき事項がないとして、公告を不要と解釈することができると考えます。

Q17
 今年の新司法試験で失敗し1振りした者ですが、今まで一回で合格するつもりで全力で勉強してきたので、正直、燃えつき感があり、現在、次回の試験への意欲が具体的に沸かないのですが、今の状況をどのように打開すべきでしょうか??ただ、不合格に対しては大変、悔しい思いがして、リベンジをしたいとは思うのですが、どうも現時点では心と頭と体がうまく一体化しないみたいです。
 あと、このような質問は無礼であることを承知しているのですが、あえて聞きたいのですが、葉玉先生は挫折の経験はあるのでしょうか??先生のコメントを見ると常勝のような感じがしてうらやましい限りです。
投稿: 吉事 | 2008年10月23日 (木) 17時08分
A17
 1回、司法試験に不合格になったくらいで、燃え尽きるのなら、もうやめたらどうでしょう。
 こういうことを言われて、「葉玉は、なんと不親切な奴だ。みかえしてやるぞ」と思って、勉強を始めるのなら、それでよし。「そうだなあ。やめようかなあ」と思うのならば、本当にやめましょう。
 やる気とか、悔しい思いとか、どうでもよいのです。
 来年、司法試験を受けるかどうかをまず決断し、受けるのならば、やる気がなかろうと、なんだろうと、無理矢理にでも勉強しなければならないというだけです。
 ちなみ、私は、自分の望んだことの10%くらいしか実現していないので、「挫折」経験は多いです。「常勝」どころか、オリックスよりも勝率が低いと思います。ただ、どんなときも
 「前を向いて生きるために、やるべきことはやる。絶対に逃げない。」
という精神で生きていると、当初望んだことではない結論になっても、それなりに良い結論になるものです。

Q18
特例有限会社では、会社法295条により、株主総会において、会社法に規定する事項および会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項について決議をすることができる一方で、整備法31条により会社法348条3項・4項の適用がなく、取締役に支配人の選任・解任、支店の設置・移転・廃止などを委任できることとなっており、それゆえに、会社法上絶対に総会にかけないといけない案件以外は、果たして会社のどういう案件については株主総会ではかるべきか、取締役の多数決で決める(複数いる場合)べきか、各取締役に委任するべきか、つまり決裁基準をどのように設定すべきか、非常に悩んでおります。

株主が、法人である場合など、株主=取締役でないケースです。

勝手に取締役サイドで決めて株主から文句を言われないか気にするくらいなら、なんでも総会にかけたほうが無難という気もしますが、さすがにそんなことをしていたら円滑に業務を運営できないと思われます。

会社の規模等に応じて適切と判断できる区分で設定したらよいものなのでしょうか?
投稿: 会社法実務に悩む者 | 2008年10月23日 (木) 19時47分
A18
定款や内規で決めればよいことですが、心配ならば、普通の株式会社と同じ仕切りにすればよいのではないでhそうか。

Q19
423条について質問があります、よろしくお願いします。
423条の会社に対する取締役の責任を過失責任と捉えた場合、取締役に善管注意義務違反という任務懈怠が認められると、善管注意義務違反から過失が常に導かれることになるのでしょうか。

投稿: ブルー | 2008年10月25日 (土) 03時03分
A19
 違います。任務懈怠と過失は、別のものとです。

Q20
会社の支配人は会社が解散すると代理権が消滅するようです。
しかし、会社法10条にも商法506条が適用(準用?)されるはずだから、消滅してはいけないのではないかとも思います。
ただ、支配人が代理人と言っても会社内部の組織構造の一部なので、会社解散の時に代理権が消滅するとしても、妥当な結論だとは思います。
そこで、消滅すると言う結論は正しいとして、その根拠はどこに求めればいいのでしょうか?
会社法506条を飛び越えて民法111条が根拠になるのでしょうか?あるいは、組織内部の構造であることを根拠に解釈するべきなのでしょうか?
投稿: 混迷 | 2008年10月26日 (日) 15時17分
A20
支配人は、支店の事業に関する包括代理権のみを持っています。
 解散によって、清算会社は、清算目的の範囲内でのみ権利能力を有することになり、その結果、事業に関する包括代理権は消滅すると考えるのではないでしょうか。

Q21
今現在、私は来年の新司法試験に向けて勉強中です。
しかしながら、生来の性格が心配性のためか、勉強をしていても
「はたして今の勉強法で大丈夫なのだろうか・・。」
「もっと有効な勉強の仕方があるのではないのだろうか・・。」
「今やっていることは試験には大して役に立たないのではないだろうか・・。」
といった不安が頭をよぎることが頻繁にあり、なかなか勉強に集中できません。

もし仮に先生がローの教員もしくは予備校の講師であるとしたら、こんな奴にどんな言葉を投げかけますか?
投稿: 悩み人 | 2008年10月26日 (日) 18時38分
A21
 受験生は、合格するまで、皆、悩み人さんと同じ悩みを持っています。
 悩みをもちつつ、勉強できる人は合格し、
 悩みのために勉強できない人は不合格になる。
 真実は、これだけです。

Q22
 葉玉先生が、新会社法100問の最後で本書を使った勉強法を執筆しておられます。ここで、論文試験突破のためにはオウムの力・キリンの力・サイの力をつけることが必要と書かれています。
 そこで、キリンの力・サイの力についてはほかの司法試験論文対策の本にも記載されていましたので、どんなことをすればよいのかということがわかりました。しかし、オウムの力についてはあまり触れられていないため、いま一つわかりません。
 オウムの力とは、「問題分の末尾をオウム返しにしてみて、端的に問いに対する答えを述べる能力をいう」とされています。
 たとえば、「会社に効果が帰属するか」と問われれば、「会社に効果が帰属するためには~の要件を満たす必要がある」という部分を抜き出すことだと思いますが、要件を満たすか否かについて論点となっており、論証をしなければいけない場合も多いと思います。このような場合、論証の部分も抜き出すのでしょうか。
投稿: 不孤 | 2008年10月26日 (日) 21時06分
A22
 オウムの力は、端的に問いに答える能力というくらいの意味です。
 「論証の部分も抜き出す」という質問の意味がよく分かりませんが、あまり深く悩まず、問いに対して、一言・一文で答えを言えるかどうかをチェックしてください。

Q23
第140条(株式会社又は指定買取人による買取り)についての質問です。

5  前項の規定による指定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。

取締役会設置会社においては指定買取人を取締役会決議にて指定できることが定められていますが、この場合においても、「一  対象株式を買い取る旨、二  対象株式の数」の決定は株主総会決議によらなければならない(同条2項)のでしょうか?

つまり、会社が譲渡承認をしない場合においては、会社が買い取るときも指定買取人に買い取らせるときも、どちらの場合も株主総会の開催が必須となるのでしょうか?
投稿: ツェーベーツェー | 2008年10月27日 (月) 10時51分
A23
1項が適用除外されているので、取締役会決議で決定して良いと考えます。


Q24
完全親子会社間で親会社から子会社へ債務超過の事業を分割しようとしております。
このときに、いわゆる無対価で行おうとしております。
この場合、会計では分割対象の資産と負債の差額を払込資本の増減で処理するらしいのですが、 とすると債務超過の場合には払込資本を増加させることになってしまいます。
この場合の増加する払込資本の内訳は任意で決めてしまっても会社法では問題ないのでしょうか?
そもそも、払込資本を増加させるような(剰余金を増加させるような)分割は会社法では適法なのでしょうか?
投稿: ジョゼッフォ | 2008年10月27日 (月) 21時37分
A24
 分割する事業内容によっては、分割会社の純資産が増加する場合もありえます。もちろん、適法です。

Q25
会社が剰余金の配当の決議をして、この配当金支払いの効力が発生したにも拘らず
支払われない場合に、この配当金を債務承認契約をもって期間が到来した債権として
現物出資することは可能でしょうか?
投稿: とっぽ | 2008年10月28日 (火) 10時41分
A25
「債務承認契約」の意味がわかりませんが、会社に対する金銭債権ですから、現物出資はできます。

Q26
2006年10月24日に次のようなQ&Aがありました。

Q1 会社法782条などの「吸収合併契約等備置開始日」についてお尋ねします。例えば、11月1日に、合併契約を締結する旨の取締役会決議を行って当該合併契約を締結した後、同日、会社法300条の規定に基づき(あるいは全員出席総会で)招集手続を経ずに臨時株主総会を開催してその合併契約を承認したとします。この場合、当該臨時株主総会の2週間前の日が会社法782条などの「吸収合併契約等備置開始日」に当たるとすると、その日にはまだ備置すべき合併契約書が存在しません。このような場合には、次のどれが正しいのでしょうか。
1.備置すべき書類が完成した日から備置すればよい。従って、11月1日から備置する。
2.上記のような事例では、会社法300条の規定に基づく(あるいは全員出席総会による)招集手続を経ずに開催する臨時株主総会は不可となる。
3.その他
A1 782条2項1号に「第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日」とあります。したがって,提案の日から備置を開始すれば足ります。

上記Q&Aに関連して、次の質問です。

1.319条(決議の省略)の場合は「提案の日」から備置すれば足りるということは明文があるので理解できますが、同様に300条(招集手続の省略)の場合も「第三百十九条第一項の場合」にあたるのでしょうか? つまり、「298条の規定により「株主総会の目的である事項」を定めたとき」が「第三百十九条第一項の提案があった日」となるのでしょうか?
… 弊社は一人株主会社なので、2006年のご質問の方と同様、できれば吸収合併締結に係る取締役会決議の同日に(その取締役会で招集決定をして)株主総会を開催して承認をするのが、実務上大変都合がいいのです。 …

2.319条規定による書面決議で吸収合併契約の承認を行う場合に、吸収合併存続会社において795条2項(または3項)の「説明」を行わなければならないときは、取締役はその「提案」の際に「説明」をすれば足りるのでしょうか?

投稿: ツェーベーツェー | 2008年10月28日 (火) 14時33分
A26
300条の場合はどうかと聞かれると、NOと言わざるを得ないですね。
319条のときの説明は、提案で説明すればよいと思います。

Q27
①会社法の施行により、剰余金の配当も、自己株式取得も、どちらも剰余金の分配として同様の財源規制を受けると整理されましたが、剰余金の配当もしていない会社が、自己株式の取得を行うことについては、特に問題ないのでしょうか? (それで株価が上がれがよいですが、下がろうものなら、株主は無駄に財源を減らしやがったと怒りそうですが・・・)
A27
問題ありません。自己株式の取得についても、株主平等の原則は守られています。

Q28
②会社法156条1項には、自己株式を取得する期間は1年を超えてはいけないとだけあり、起算日は特に明記されていませんが、これは、株主総会(or取締役会)から1年というわけではなく、任意に取得可能期間を設定し(もちろん決議日からだいぶ離れた日を起算日にするのはよくないと思いますが)、それが1年を超えてはいけないという理解でよろしいのでしょうか?
投稿: 百衛門 | 2008年10月28日 (火) 16時14分
A28
あまり考えたことがありませんでしたが、期間が1年を超えてはいけないと書かれているので、そのとおりだと思います。

Q29
「Q 株式(取締役会設置会社)分割の手続きについて
 普通株式及び各種優先株式(A優先株式を除く)の1株を100株とする株式分割並びにA種優先株式の1株を1000株とする株式分割を行う時、取締役会の決議に加え、各種優先株式の種類株主総会の決議が必要か?
A A優先株式の種類株主総会の決議を要する。」これは某法務局内で出されている質疑応答ですが正しいでしょうか?むしろ逆のような気がするのですが・・・
 そもそも、種類株式会社がある行為を行うに対して、特定の種類株主に損害を及ぼす恐れがあるときに種類株主総会が必要になるのかどうか、法務局が株式の内容だけで確定的に判断できるのでしょうか?債権者異議の時の「当該債権者を害する恐れがないとき」と同じで、結局、会社が損害を及ぼす恐れがないと判断すれば、その恐れがあったとしても種類株主総会議事録がないことで却下はできないのではないでしょうか?
投稿: サル頭 | 2008年10月28日 (火) 21時07分
A29
すいませんが、その通達は、私のやった案件に関連して出されたものなので、コメントを控えさせていただきます。

Q30
旧司法試験合格を目指して今夏から勉強をスタートしました。
現在予備校では論文の勉強をメインにしています。
自宅で択一対策をするのに過去問中心の勉強を考えているのですが、
葉玉先生オススメの択一過去問集・択一参考書を教えていただけないでしょうか。
投稿: トム | 2008年10月28日 (火) 21時53分
A30
択一については、予備校の出しているものならば、なんでもよいです。

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2008年10月14日 (火)

学歴雑感

今日は、会社法ネタではなく、私の「学歴」観を少し。

前々回のQ9で「黒猫のつぶやき」というブログの下記の記事についての質問にこたえました。http://blog.goo.ne.jp/9605-sak/e/dfb76f05822a47bba1aca141ad6909b8

私は、ブログの記事は、各執筆者の思いを伝えるもので自由自在に書くところに面白みがあるので、この記事そのものについての批判を行うつもりはありません。

 ただ、この記事を読んで、「一流の大学」とはなんだろうと、考えさせられました。

 私は、よく東大ローについて苦言を呈するようなことを書いていますが、心の底から東京大学法学部を卒業したことを誇りに思っています。

 死ぬほど勉強して入学した大学ですし、両親も東大に合格したとき狂喜してくれましたから、本当に入学できてよかったと思います。
 また、大学時代家庭教師のバイトをするときに、ほかの大学の友達よりも時給が高かったとか、大学4年時に就職活動をしたとき某大手都市銀行から即座に内定をいただいたとかいう経験ができたのは、もっぱら東大法学部というブランドのおかげであり、その時は、素直に「東大はすごいなあ」、と思いました。

 東大ブランドは、おそらく、東大が、これまでの歴史の中で、すぐれた研究業績を残してきたり、社会で活躍する優秀な卒業生を出してきたからこそ、形作られたものであり、少なくとも日本という市場の中で東大ブランドは「一流のブランド」だと思います。

  他方、私が、東大の優れた面を具体的に知っているかというと、ほとんど知りません。
それは、東大が悪いのではなく、大学時代に、試験以外、ほとんど学校に顔を出さず、麻雀と演劇に明け暮れる不良学生だった私が悪いのです。
私は、「一流」の大学に行きながら、それを実証することができないという情けない輩であります。

このような私が
 「俺は東大法学部卒業だぞ。すごいだろう。」
と威張った場合、私の学生時代を知らない人は騙されても、同級生からは白い目で見られるのは、確実です。なにより、私自身恥ずかしくて、そういうことは言えません。

 また、大学を卒業した後に、司法試験の予備校で専任講師をしたり、検事をしたり、弁護士になったりしましたが、どのキャリアでも、「東大卒だから得した」と実感できることはありませんでした。

そりゃそうです。

私自身も、仕事でいろいろな人と話をしたり、交渉したりするときに、相手がどこの大学を卒業したかということを一度も気にしたことはありません。
 たまに学歴を知ることもありますが、優秀な人が、東大卒のこともあれば、そうでないこともあり、
  「東大卒の方が優秀である確率が高い」
というほど、きちんと統計を取ったこともありません。

 しかも、私の知っている優秀な東大卒の人は、真面目に授業に出ていなかった人が多いため、「東大が一流」なのか、「東大卒の人が一流なのか」を証明することができません。
 正直ベースでいえば、たぶん、どのような生活を送るにせよ、社会に出た後は、「学歴」自体、それほど重視されないのではないような感触をもっています。
 
 以上のように、私は、東大はきっと一流の大学だとは思うものの、何が一流なのかを具体的に指摘することはできません。まして、他の大学を貶めるような言動ができるほど東大のことも、他大学のこともしりません。私にとって、他人の学歴というのは、「芸風の違い」程度のイメージでとらえています。

たとえば、私は、新人弁護士の採用面接をするときも
 東大ローで、司法試験2000番の人と
 他のローで、司法試験50番の人
がいれば、普通は、司法試験50番の人の方が法律の力があると考えるのが素直であり、「東大だからすごい」という目で見ることはありません。
 もしかしたら、「東大じゃないきゃダメ」という事務所もあるかもしれませんが、その採用方針は、「東大生よりもすごい新人」を取りこぼすことになるので、私は、あまり適切ではないと思っています。

 では、「学歴」って何の意味もないかというと、実は、そうではありません。

 それは、その学校で過ごした時間と経験が、自分の血となり、肉となっているはずだからです。

 たとえば、私は、東大での大学生活があったからこそ、今の自分があるのだと考えています。それは、東大が他の大学と比べて優れているとか、そういうことではありません。
 言葉にするのは、難しいですが、
「あのキャンパスで、あの友達と、あの時間を過ごしたことが、今の自分を形づくる要素だった。他のキャンパスで、別の友達と、別の時間を過ごしていたら、少なくとも今の自分ではなかった」
という感覚です。

 自分の人生におけるすべての経験は、何ものにも代え難く、東大で過ごした日々も、私に様々な刺激を与えてくれた大切な時間でした。
 だから、東大の社会的評価がどうであれ、私にとっては、東大がベストの大学だったと自信をもって言えます。
 そしえ、自分に向って正直にそう言えるからこそ、東大卒というのは、私にとって、良い「学歴」だと思うのです。

 また、私の母校の「久留米大学附設中学・高校」も、私にとっては最高の学歴です。
 わが母校は、首都圏の有名校と比較すれば入試時の偏差値は低いですが、私は、附設でなければ得られない経験を山ほどさせてもらったので、私にとっては、他のどの有名校よりも、立派な学歴なのです。

 こうした学歴は、ネガティブに考えようと思えばいくらでも考えられます。

 「東大なんて、世界的にみればランクが低い」とか
 「附設なんて、開成と比べると、東大合格者数が8分の1だ」とか

他の学校と比較し始めると、どんな学歴だろうと簡単に色褪せてしまいます。

 そうしたネガティブな考え方は
  ある一つの物差しで、学校を比較する
ことから生じます。

 論文の引用数であるとか、東大合格者数であるとか、分かりやすい物差しでランク付けするのは、野次馬としては面白いし、特定のニーズはあるので、ランク付け自体を否定はしません。

しかし、そうしたランキングは、現にその学校で学んでいる人にとっては、ほとんど何の意味もありません。

 学生にとって大事なことは、
   自分がその学校から何を学んだか
   その学校で何を経験したか
であり、
  自分が、それらの経験に満足感を得られれば、その学校は、あなたにとって、ベストの学歴
だと思います。

 どんなに学校の授業が良くても、あなたが何も得られなければ最悪の学校ですし、その逆もまた真です。

 つまり、「学歴」は、他人があなたを評価する際の指標ではなく、今のあなたを形作っている客観的要素の一つであり、
   その学歴を、「良い学歴」とするか、「悪い学歴」とするかは、あなた次第
なのです。

 さらに付言すれば、
   学歴だけではなく、職歴を含むすべての経験は、他人が評価するものではなく、自分が、意味付けをしていく
ものだと思っています。

 1秒1秒の時間が「良い経験」なのか、「悪い経験」なのかは、その経験をした自分が決めるものなのです。

 たとえば、第一志望のロースクールに不合格になったら悲しいでしょうが、「第二志望のロースクールの授業の方が俺の肌にあっていて、第一志望よりも実力を伸ばすことができた」という実感が得られれば、第二志望の方が良い学歴になるでしょう。
 
 たとえば、新司法試験に合格できず、一振りしてしまったら、世間の人は落ちた人を可哀そうだと思うかもしれませんが、「ロースクール時代に勉強できなった基本をたっぷり勉強する時間をもらった」と考えて1年間死にものぐるいで勉強できる人にとっては、一発で合格したとき以上に、厚い法律知識を身につけて実務に出ていくことができるという点で、いい経験と評価できるようになります。

「災い転じて福となす」とか、「ピンチこそチャンス」とかいう言葉を持ち出すまでもなく
悲しい経験に、どれだけ積極的意味を付けられるかによって、人間の強さ・深さは決まります。

すべての人に時間は平等に流れますが、同じ時間であっても、経験する事柄は、人ごとに異なります。
でも、それ以上に、人ごとに違うのは、その経験に、どのような意味を見出すことができるかという点です。

人生が充実しているかどうかの指標は、

 「時間をどれだけ長く過ごしたか」ということよりも、「これまでにどのような経験をしてきたか」ということでしょうし

 もう一歩踏み込めば、「どのような経験をしてきたか」ということよりも、「自分のした経験にどのような積極的な意味付けをしてきたか」
というところにあります。

 ロースクール試験、新旧司法試験、法律事務所の面接など様々な選別の機会にさらされているときは、「合格」「不合格」のデジタル思考になりがちですが、合格だろうと不合格だろうと、デジタルな結果に積極的な意味付けをすることができるかということで、皆さんの未来は大きく変わると思います。

(質問コーナー)
Q1
アドレスに判決の裁判所の判断が記載されている部分を貼っておきました。
謝罪広告は、最初から請求していません。
>事実の指摘ではなく、論評である
広島地裁判決は、民事上の名誉毀損については論評であっても成立すると指摘しています。 刑事法なら、侮辱と名誉毀損で厄介な問題になりますが、民事法なら区別不要というわけですね。
そちらの抱く違和感は、おそらくこの点に関する感覚の相違から出発しているのだと思います。
判決は、「懲戒相当の行為をした弁護士」と表現するも同然で名誉毀損と解しています。
投稿:?雪蒼銀の刀?| 2008年10月 4日 (土) 13時22分
A1
判決文、ありがとうございます。
ご指摘のように民事事件では、具体的事実の摘示の有無にかかわらず、名誉棄損は成立しますが、私の違和感は、その問題とは違うところにあります。
懲戒事由がないにもかかわらず、「懲戒相当の行為をした弁護士」と表現することは、むしろ社会的評価を低下させる事実の指摘であり、名誉棄損は当然だと思います。
また、具体的事実ではない差別用語等を用いた侮辱も、名誉棄損が成立します。
私の感ずる違和感は、懲戒事由が「ある」場合に「こんな弁護士は懲戒の請求をすべきである」ということが、名誉棄損になるかという点です。
これは、本件がそうであるというわけではないのですが、懲戒請求の扇動そのものを違法と捉えるのは、正当な論評をも封ずるのではないかという危惧感です。

Q2
葉玉先生、お忙しい中、ご回答(A15)いただき、ありがとうございました。
「過失とは、当該取締役にとっての予見可能性と回避可能性です。「能力」というよりも、当該取締役が、どのような事情を知っていたか、権限行使を怠った理由は何か等を調べて、それらの事情から、予見可能性と回避可能性を認定すべきだと思います。」とのことですが、これは、任務懈怠の有無の判断においては「取締役であるならば一般に予見可能性・回避可能性があったかどうか」で判断され、過失の有無の判断においては、「当該取締役にとって予見可能性・回避可能性があったかどうか」で判断されるということでしょうか。
なお、「私は、任務を怠ったという行為を「客観的過失」とは表現していない」とされておられますが、2006年8月8日の「大塚先生の論文」のA1において、「客観的注意義務違反=客観的過失=任務懈怠 と表現するならば,別におかしいことはありません。」とされています。その直後に、「ただし,概念が誤解されやすいので,やめた方がいいように思います。」とされており、私が大きな誤解をしている可能性も高いのですが・・・。
投稿: ケーニヒ | 2008年10月 4日 (土) 14時43分
Q3
 すいません。客観的過失と表現したことがあったわけですね。個人的にはなるべく使わないようにしているのですが。
論じ始めると大論文になりそうなので、簡単にお話しすると、私は、任務を怠るとは、予見義務違反・回避義務違反というよりも、法令違反と表現する方が正確であると考えています。
 取締役の行為が、法定の手続違反や業法違反等の違法行為に該当するのならば、当然に任務を怠ったことになりますし、経営判断原則を逸脱するような判断による行為は、任務を怠ったことになります。
ただし、そのような法令違反や経営判断原則の逸脱が見られる場合であっても、取締役の当時置かれた状況からは責めに帰すべき事由が認められない場合もありえるので、それを過失の有無で判断すべきであると考えています。

Q4
会社法100問の62問目のA会社を監査役設置会社にしている理由はなんでしょうか。
また,24問目の設問3は,すんなり剰余金の配当について異なる定めをした種類株式を発行すればいい,ということにはなりませんか?ならないのなら,どういった場合にこの種類株式が発行されるのでしょうか。
投稿: こんにちは | 2008年10月 5日 (日) 01時56分
A4
過去問なので、それを会社法に引きなおしているだけです。
24問目の設問3は、その問題の趣旨を考えれば、種類株式の話ではないです。平成19年以降に発行する株式は、すべて、配当を2分の1にするので。

Q5
抵当権が付いた土地を現物出資することは可能なのですか??
また質権が付いた絵画なども現物出資することは可能なのですか??
投稿: めがみ | 2008年10月 5日 (日) 11時56分
A5
可能です。
Q6
Q10,11,12で回答してくださりありがとうございました。その回答及び千問Q287からわたしは総数引受契約は以下の2パターンに分けることができると理解しました。
1、総数引受契約の締結を取締役会で決定する。この決定の中には誰と総数引受契約を締結するかまで含まれる。その後、代表取締役は取締役会の決定に基づき、契約を結ぶ。
2、総数引受契約の締結を取締役会で決定する。この決定の中には誰と総数引受契約を締結するかまで含まれない。その代り、取締役会は代表取締役に誰と総数引受契約と締結するか委任することができる。その後、代表取締役は取締役の決定及び委任に基づき、契約を結ぶ。
このような理解で正しいでしょうか?ご教授くだされば幸いです。
投稿: 登記職人見習中 | 2008年10月 5日 (日) 22時31分
A6
 「総数引受契約の締結を・・決定する」という言葉の意味がややあいまいですが、そんな感じでしょう。

Q7
種類株式について1つ質問なのですが、剰余金の配当についての優先の定めとして確定額ではなく、「普通株式に先立ち、金○○円以上金○○円以下の範囲で当該剰余金の配当を行う都度、取締役会が定める額の剰余金の配当を行う」といった形の幅をもたせたような形の定めは可能でしょうか?
内容が不明確であるため規定できないとも思えるのですが、はっきりしなかったため、大変お忙しいとは思いますが、お答え頂ければ幸いです。
投稿: サブマリン | 2008年10月 6日 (月) 10時09分
A7
 幅を持たせるのはよいですが、 取締役会で定めるならば、委員会設置会社等一定の会社じゃない無理でしょう。

Q8
① 会社法の機関に関する疑問なのですが、監査役会設置会社は取締役会設置義務を負っている(法327条2項)点が納得できません。というのは、「例えば1名の取締役しかいない会社に監査役会を置く必要がない」と説明を受けましたが、会社が費用負担のリスクを自己の責任で負い取締役の専横を防止しようとすることは機関設計自由の原則(326条2項)から許容されてもいいはずでは、と考えるからです。この規定だけが「なぜあるのか?」と理解できません。素人の質問ですが宜しくお願いします。
② 先生にとって、司法試験に合格するための「基礎(土台となるもの)」は何とお考えなのでしょうか?自分自身が日々の勉強で気付くしかないと考えているのですが、先生の意見をお伺いしたいです。
投稿: 須磨原人 | 2008年10月 6日 (月) 21時27分
A8
① 私も納得できません。が、法制審議会でそう決まってしまったので、仕方がないです。
② 1日12時間以上勉強することです。
Q9
論文の勉強法なんですが、答練を受けるのがよろしいということですが、それ以外はどういう風にすればいいんでしょうか(抽象的な質問ですいません)
論点まとめたノート暗記以外には問題集をひたすら見て解答構成をし続けるのがいいんでしょうか。このやり方が正しい!と確信を持って勉強できなくてご意見よろしくお願いします。
投稿: 未収者 | 2008年10月 7日 (火) 00時56分
A9
あまり勉強法を広げすぎず、各科目を同じ方法でとことんやるのが正しい方法です。

Q10
社外監査役の要件について、「過去に取締役になったことがないもの」となっているので、社外取締役だった人が監査役になる場合、社外の要件を満たさなくなるようです。一方で、委員会設置会社では社外取締役が社外役員として監査委員会を構成することとなっており、バランスを欠いているように思うんですけど、このように規定された趣旨はどういうことなんでしょうか。
投稿: こやぎ | 2008年10月 7日 (火) 10時10分
A10
社外監査役と、社外取締役の違いというしかないですね。

Q11
最近、就職がらみの質問が多いようですが、葉玉先生と、就職希望の学生さん(あるいは修習生さん?)のやり取りを見てずいぶんと弁護士という職業に対する認識に距離感があるように思います。
学生さんは、「どうやったら(おそらく潰れることもなく、高給で一生安泰にすごせるであろう)TMIのような一流事務所に雇ってもらえるんですか?」というサラリーマン発送の質問が多いような気がします。
でも、葉玉先生がおっしゃっているのは、経営者発想というか、TMIに雇ってもらうというのではなく、むしろTMIにショバ代(オフィス賃料とかスタッフの給料)とかを払って自分の席を作らせてもらうという意識が必要です、というような意味合いが強いように思います。
だから、弁護士は、入社ではなく、参画という言葉を使っているんだろうなあと思うのですが。
そういう意味では、自己PRをするなら、
「いくら稼げばTMIの一員としての義務を果たせるんですか?」とか「自分を雇えば一年で○億円は稼いできますよ」というような言葉が適切なのではないかと。
それが本当にできれば、新人弁護士だって、極論ですが葉玉先生のように一年目から「パートナー」としてTMIに参画する事だって可能なんじゃないでしょうか。
パートナーと言うと、企業の役員のように偉くて威張れるようなイメージがありますが、実際は中小企業の共同経営者という立場であり、一人○億円の営業成績の義務があるんじゃないかと。実感としては、パートナーになると「責任が重くてかなわんなあ、アソシエイトのときは楽だったなあ」というような感覚ではないかと。稼げなければ結局いずらくなって肩たたきに合うんでしょうし。弁護士には労働組合もないでしょうから。
なんかそんな認識のギャップを読んでいて強く感じました。
投稿: 企業法務担当者 たけし | 2008年10月 7日 (火) 13時55分
A11
弁護士に限らず、そこで働くものが、自ら主体となって企業を動かす感覚を持っていなければ、やがてその企業は力を落としていくでしょう。
特に弁護士は、事務所に「食わせてもらう」、「勉強させてもらう」という感覚の人が増えてくると、だんだん活力がなくなってくるでしょうね。
10年前には、「弁護士100人の事務所なんて無理だ」と思われていたことを知らない人や忘れている人が多いのです。
これから10年後に、どういう事務所が生き残り、成功しているかなど、誰にもわかりません。
今、大事務所だから安泰でもないし、今、章事務所だから危ないわけでもない。
結局は、日々、サービスを改善し、新たなサービスを提案していく中で、未来が切り開けるのだと思います。

Q12
さて、弊社(A)が弊社の完全子会社(B)を吸収合併いたします。この場合…、
1.吸収合併後、Bの法定備置書類はどのような扱いをすべきなのでしょうか?
① Bの法定備置書類は、備え置く必要はない。
② 包括承継するAが、当然に、その備置義務を承継する。
2.仮に1.の答えが②の場合、次の認識でよいでしょうか?
① Bの「常時」備置書類(定款、株主名簿等)は、Bが解散したので備え置く必要はない。
② Bの備置期間が法定されている書類(株主総会議事録、取締役会議事録等)のみを、その法定期間備え置けばいい。
3.仮に1.の答えが②の場合、Bの備置書類の備え置く場所について…
① 従前どおり、Bの本店(であった場所)に備え置くことは許されるのでしょうか?
② それとも、Aの本店に備え置くことが要求されるのでしょうか?
③ Aに支店が設置されている場合、Bの株主総会議事録・計算書類等を、Aの支店にも備え置く必要があるのでしょうか?
似たようなケースとして、清算の場合は508条に帳簿資料の保存について規定がありますが、吸収型再編における消滅会社について定めた規定が見当たらず、悩んでおります。(規定がないということは、やはり包括承継なのですよね…)
上記質問、3.に関連して、前提条件が抜けていましたので追加します。
・ A(親会社…存続会社)がB(子会社…消滅会社)を吸収合併する。
・ Aには、登記されている支店がいくつか存在する。
・ Bの本店は、Aの本店・支店とは別の地域に存在する。
・ Bには、登記されている支店が存在しない。
・ 吸収合併後、従前のBの本店を、Aの支店として登録する予定はない。
(Bの本店における営業を大幅に縮小するため)
投稿: ツェーベーツェー | 2008年10月 8日 (水) 09時19分
A12
包括承継をベースに、Aの本店で継続開示するのだと思います。

Q13
A種・B種の二種類の優先株式を発行しております。
それぞれ、取締役2名を選任することができる点以外、内容は同一です。
発行可能種類株式総数はそれぞれ1万株で、ともに1万株が発行済みです。
それぞれを1人ずつの株主が保有しておりましたが、今般、A種の株主がB種を全部買取り、一人の株主が両種をすべて保有することとなりました。
これに伴い、当該優先株主から以下の定款変更を行うよう要請がありました。
1.A種の発行可能種類株式総数を2万株とする
2.A種は取締役を4名選任できることとする
3.B種に関する規定はすべて削除する
4.発行済のB種をA種に変更する旨付則で規定する
上記手続によって、2種類の株式をA種のみに一本化するというのです。
定款変更のみでこのようなことを行うことが許されるのでしょうか?
特に、「発行済のB種をA種に変更する」という点が引っかかります。
「A種の発行可能種類株式総数を2万株とした上で、B種を取得してその対価としてA種を発行する」ことを提案したのですが、「発行可能種類株式総数を増やした後取得までにタイムラグがあるのがリスキーである。上記手法ならすべてが同時に行われるので安全」と主張されました。
まだ具体的に弁護士に依頼できない事情がありますし、地方でありTMIのような大手事務所に依頼することもできないため、「定款変更のみでこのようなことを行うことが許されるか?」の部分だけでもご見解いただけると幸甚です。
投稿: ファンド嫌い | 2008年10月 8日 (水) 23時17分
A13
できると思います。

Q14
会社法100問の「24 譲渡制限株式・株主優待制度」の177頁に、当該定款変更が108条1項1号の種類株式を発行すること、及び、既存の株式について114条1項の発行可能種類株式総数の減少を定めたものだとすれば、本問の定款変更を行うことも許される余地がある旨の記載がありますが、ここでの114条1項への言及にはどういった意味があるのでしょうか。
108条1項1号の種類株式を発行することだけではなく、この114条1項の発行可能種類株式総数の減少についても定款変更で定めなければ、本問の定款変更は許されない、という趣旨でしょうか。
基本書もいろいろ読んだのですが、114条1項への理解が足りないため、やはりよくわかりませんでした。
投稿: TK | 2008年10月 9日 (木) 17時19分
A14
平成19年までに発行されたのと同一種類の株式を新株発行させないために、発行可能種類株式総数という枠をはめるということです。

Q15
さて周知のとおり世界的な株価の大暴落が止まりません。
もし葉玉先生が担当大臣になられたら日本株式回復のためにどの様な政策をおとりになりますか?
法律家としてあるいは法律家としてではなく一知識人としてどちらでも結構です。
ご意見を伺えれば幸いです。
投稿: デコイオリゴ | 2008年10月10日 (金) 16時15分
A15
金融庁が、不動産向け融資への監督強化方針をやめる。
自己株式の取得のインサイダーを外す。
時価会計をやめる。
空売りで得た利益は、税率を倍にする。
日経225ファンド・TOPIXファンドを相続財産の対象外とする。
以上、適当に思いついたことをあげました。
ちなみに、私は、今、一生懸命、225ファンドを買っています。
Q16
司法試験を目指してる受験生です。今年旧試験で落ちました。
勉強方法を再考してるのですが、司法試験は実務家になるための試験です、その対策として自分でやはり問題を自分で答えを見ずに考えて解いて演習することで法律家になるための力がつくのでしょうか?
同じ法律資格として司法書士の試験をうけてみました。
受けた実感としては、司法試験より素直な問題が多かったです。
試験の難易度ではやはり司法試験のほうが高いなと感じました。
「二兎を追うものは一兎も得ず」ですが、書士と法曹3者では仕事内容がかなり違うなのでしょうか?
やはり難易度で選ぶものでなく、自分がどうしたいかでしょうか
先生の「ベストがベストではなく、ベターがベストだ」言葉はどうとらえたらよろしいですか?
投稿: 受験生 | 2008年10月11日 (土) 13時36分
A16
 司法試験と司法書士試験を同時並行で勉強するのは、難しいでしょう。
なお、答案練習をするのは、当然です。

Q17
お忙しいところ、失礼いたします。私は26歳の会社員です。
今年から、予備試験経由を含め旧司法試験の勉強を始めました。
勤務する会社で、かなり大きな不祥事が発生しました。
この件がきっかけとなり、以前から考えていた司法試験を目指し始めました。
企業法務の仕事をしたいと思っています。
司法試験に合格後、就職活動をするにあたって履歴書に不祥事があった企業名があると不利になりますでしょうか。会社の一社員としての責任はあると思っていますが、問題には関与していません。
投稿: TM | 2008年10月12日 (日) 19時23分
A17
不祥事があった企業名があっても、マイナスではないと思います。

 

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2008年10月 4日 (土)

名誉棄損

お久しぶりの更新です(反省)。

さて、まずは、最初にお知らせをひとつ。

TMI総合法律事務所に、青色発光ダイオード訴訟や巨額の課税処分取消訴訟等で著名な
  升永英俊先生
が加入されましたが、この度、升永先生の加入を記念いたしまして、次のとおり、升永先生による企業向け税務訴訟セミナーを開催することになりました。

テーマ: 「租税法律主義の現代的意義」            
      ①日本と租税法律主義     
      ②最新判例(航空機リース事件、
        映画フィルム・リース事件、外国税額控除事件等)
日時:  10/29(水) 10:00~12:00(受付開始9:30)
会場:  TMI総合法律事務所 Room 8
講師:  升永英俊 TMI総合法律事務所弁護士
参加費: 無料

升永先生が、これまで担当された税務訴訟のうち、主要なものだけをあげても

 ・1330億円贈与税決定処分取消等請求事件
    東京地裁 平成19年5月23日 判決(税経通信62-13-39)
 ・252億円法人税(重加算税)更正決定処分取消請求事件
    東京高裁 平成18年3月15日 判決(確定)
    (税務弘報55-9-145)
    東京地裁 平成17年7月21日 判決(判例体系ID28110920)
 ・28億円法人税(過小申告加算税)更正決定処分取消請求事件
    名古屋高裁 平成18年2月23日 判決(確定)
    (税務弘報55-4-152)
    名古屋地裁 平成17年9月29日 判決(判タ1256-81)
 ・107億円法人税更正決定処分取消請求事件
     東京地裁 平成13年11月9日 判決(判例時報1784-45)
など錚々たるものであり、升永先生が、すべての企業にとって無関係ではありえない「違法・不合理な課税処分」との闘いを実践されてきたことをこの歴史が物語っています。

企業の方であれば、TMIのクライアント様以外のお申し込みをすることができますので、興味のある方は、ぜひエントリーしてみてください。

税務訴訟の真髄を感じることができるでしょう。

お申込みは、以下をご参照ください。

http://www.tmi.gr.jp/information/topic/20081001.00001217.html?PHPSESSID=8c15fda9571bc607c928ec385a12b75a


さて、2週間さぼって更新しなかったせいか、書きたいことは、いくつかあります。

その中で、一番新鮮なネタは
  「橋下知事の名誉棄損裁判」
です。(10/04 初出時、お名前を間違っておりました。申し訳ありませんでした。)

光市母子殺害事件の被告人の弁護人について、橋下知事が、テレビで懲戒請求を扇動するような言動をしたために、懲戒請求が殺到し、名誉棄損等に基づく損害賠償請求訴訟に発展しました。


 実は、私の義父は、名誉棄損では、日本史上最高額の勝訴判決をとった当事者であり、私は、義父が報道被害に苦しむ姿を見ながら、間近で支えていた経験があるため、名誉棄損の裁判には一家言持っています。

そのため、一昨日の広島地裁判決には、大変、注目しておりました。
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho81002d.htm?from=tokusyu

テレビ報道を見ていると、「懲戒請求を扇動したから名誉棄損になった」という趣旨のコメントが多かったですね。
でも、私は、それを聞いて大変違和感を感じました。

「懲戒請求を扇動する」という行為それ自体は、事実の指摘ではなく、「名誉棄損」に該当しないと考えるからです。

誰かが
 「A弁護士は、○○をした。だから、みんなで、A弁護士の懲戒請求をやろう」
という発言をした場合、名誉棄損の本質は
  「A弁護士は○○をした」
という部分であり、懲戒請求の扇動は、損害の拡大をもたらす行為か、せいぜい「A弁護士は、みんなで懲戒請求をしなければならないほどの悪いことをした」という名誉棄損に該当する事実を強調する役割を果たす表現に過ぎない行為であるように思います。

たとえば、
「葉玉弁護士が、六本木交差点で、裸踊りをしていた。みんなで懲戒請求をしよう」
と言う場合と
「葉玉弁護士が、六本木交差点を歩いていたら、むちゃくちゃ可愛い女の子達に囲まれて、サイン責めにあっていた。みんなで懲戒請求しよう」
という場合では、「懲戒請求をしよう」という部分の意味合いが違います。

前者は、「裸踊りをしたら、弁護士の品位を汚す行為として懲戒請求されてもやむをえない」と思われますので、言っていることは、もっともです。
しかし、私が、裸踊りをしたという事実は、私の社会的評価を著しく低下させる事実ですから、その言動は、名誉棄損にあたります。
そのため、名誉棄損にあたることを前提に、公益性のある発言かとか、私が裸踊りをしたことが真実かどうか等が問題になります。

それに対し、後者(私が、可愛い女の子にサイン責めにあうという事実)は、一般には
  私がモテモテ
という良い評価につながる事実であり、名誉棄損には該当しません。

むしろ、そういうモテ男に対し、「懲戒請求をしよう。」という扇動をしたことが、正当な理由もないのに業務妨害をしようとしたという不法行為いあたります。

同じ「懲戒請求をしよう」という言葉でも、どういう文脈で言われたかによって、役割は違うのです。

橋下知事の行為について、どういう事実認定がされたか、判決がなくて正確にわからないのですが、一番詳しい報道によれば、おおむね、次の2つの事実に分類されるようです。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081002/trl0810022125012-n1.htm

1 名誉棄損 = 橋下知事が「光市事件の被告人の主張は弁護人が創作した」等という趣旨の発言をした

2 その他の不法行為 = 橋下知事は、懲戒請求をする根拠がないことを知りながら、マスメディアを通じて懲戒請求を呼び掛けた。

以上の報道が正しいと仮定すれば、1の部分については、私は、判決の理屈について、非常に納得がいきます。

「被告人の主張は、弁護人が創作したものだ」という事実は、少なくとも、弁護人の社会的評価を低下させる事実です。
弁護人は、被告人のための活動を行う役目を担っていますが、虚偽の主張を慫慂するようなことは許されません。
ですから、当該発言は、名誉棄損言動に該当すると評価したうえで
 橋下知事が、その真実性を証明するか、真実だと誤認するに必要な資料を有しているか
等を検討すれば足ります(なお、公益性はあるでしょう)。

もし、そのような言動があったとすれば、被告人が「弁護人から虚偽の主張を押し付けられた」と証言でもしない限り、当該言動の内容について真実性を立証することは極めて難しいでしょうから、この発言の違法性や過失を否定するのは、結構ハードです。

ですから、もし、このような真実性の立証がハードな発言については
    「断言したのではなく、一般的にはそのような可能性もあるから、そういう事実があるかどうかの調査を行うべきだという趣旨でいっただけである」
等と発言の趣旨を争い
    事実の指摘ではなく、論評である
というところで、頑張ることが多いです。テレビだと発言が正確に記録されているので、趣旨を争うのは難しいですが。

こうした「告発系」の発言をどのような形で行うかは、特に、犯罪報道などで、「キモ」となる部分です。

報道現場では、警察が逮捕する前の時点でも、「あの人が犯人ではないか」という噂が飛び交います。
犯人探しや犯人暴きは、推理小説の醍醐味とプライベートののぞき見の快感があるため、視聴率がとれます。

そのため、報道機関は
 「あの人は、こういう点が、すごくあやしい。警察は、もっと調べるべきだ」
という発言をして視聴者の関心をあおりたいという気持ちと
 「それを言っては、名誉棄損になりそうだ」
という気持ちのせめぎ合いが生じます。

 こうしたせめぎ合いの均衡が崩れるのは、どこか一社が、誘惑に勝てずに、疑惑報道を始めた時であり、そうなると、他の報道機関は、特オチの恐怖から、自社で裏付けをとっていないにもかかわらず
 他社が報道している
ということを根拠に、雪崩をうって疑惑報道を始めてしまいます。
 松本サリン事件の例をあげるまでもなく、これまでの報道被害は、そういうプロセスで起こってきました。
 最初の一社が、「相当の資料」をもとに報道しているのならよいのですが、そこが「憶測」で報道してしまうと、追随報道をした報道機関も、ドミノ倒しで名誉棄損をすることになります。
 
 今回の橋下知事の発言が、どの程度の裏付けのもとで行われたかはよくわかりませんが、指摘した事実が裏付けの取りがたいものであったことからすれば、やや迂闊な点があったのは否めません。


以上に対し、2の「それ以外の不法行為」については、若干、この判決に違和感を感じる部分があります。

 この判決は、
(1) 請求する者が、根拠を欠くことを知りながら懲戒請求したときには不法行為になる。
(2) 当該弁護士の所属弁護士会に請求すれば十分であって、公衆に対し請求するように呼びかける必要性は一般に想定できない。
(3) ことにマスメディアを通じて特定の弁護士への請求を呼び掛け、弁護士に不必要な負担を負わせることは、懲戒制度の趣旨に照らして相当性を欠き、不法行為に該当する。
という論理をとって、懲戒請求の扇動行為を不法行為と認定しています。

 この論理のうち、(1)は、正当です。
 根拠がないのに、懲戒請求をするのは、業務妨害でしょう。
 根拠がないのに、警察に告訴したり、裁判所に多額の損害賠償の訴えを提起するのも、不法行為になる可能性があるのと同じことです。

 ただ、私は、(2)と(3)には、やや違和感を感じます。

 たとえば、
   「葉玉弁護士が六本木交差点で裸踊りをして現行犯逮捕された。」
という事件があったときに、テレビのコメンテーターが
  「こんな弁護士は、みんなで懲戒請求しましょう」
とか
  「こんな弁護士を懲戒しない弁護士会はおかしい。はやく懲戒すべきだ」
とか言ったら、不法行為でしょうか?

 懲戒請求を持ち出すのは、上品なコメントとはないですが、不法行為にはならないように思います。

 つまり、
  「根拠がない」のか、「根拠がある」のか
が不法行為の成立については重要であり、(2)と(3)自体が「不法」になるとは思えないのです。

 もちろん、自分だけで懲戒請求するのと、たくさんの人が請求するのでは、業務妨害の程度が違うので、根拠なくやった場合には、損害が拡大するでしょうから、不法な言動があった場合に違法性を増加させる効果はあるでしょう。

 また、「不法行為」の問題ではなく、「弁護士倫理」の問題であれば、懲戒請求の扇動は弁護士倫理に違反するといえる場合もあるかもしれません。

 ただ、判例のように、「当該弁護士の所属弁護士会に請求すれば十分であって、公衆に対し請求するように呼びかける必要性は一般に想定できない」という考え方で本当に良いのだろうかという点は疑問がぬぐいきれないのです。

たとえば、交通事故の被害者の遺族が
  「私の子供の事件で、警察が積極的に捜査してくれるよう、嘆願書に署名してください」
という行動と、悪徳弁護士にだまされた被害者が
  「悪徳弁護士を懲戒するため、ご協力ください」
という行動は、本質的にはあまり違いがないように思います。

 ですから、今回の判例が、不正行為が行われたときやその疑いがあるときに
  被害者やマスコミが、社会に様々な呼びかけをすることを抑止する方向に解釈されるのは望ましくない
と思います。
 

 私としては、
 「根拠がなければ、不法行為になる可能性がある。」
 「根拠があれば、不法行為にはならない」
という規範を主として考えればよく、現在、報道されているように
  懲戒請求を扇動したこと
に重点を置かない方が、法の本質に近いと考えます。


 インターネットで自由な発信ができる現代社会では、名誉棄損されることも、することも、身近に起こりうる問題です。
 会社法ネタではありませんが、会社も、名誉棄損の被害者なるリスク、加害者となるリスクの双方に配慮しながら活動しなければならないので、この事件をネタに「名誉棄損」とは何かを考えてみるのも面白いと思います。

 なお、損害額については、名誉棄損の相場並みです。総額は800万ですが、弁護人が4人いるので、一人あたりは200万円.
 「名誉」の損害のほか、営業妨害の側面での損害があるでしょうから、それを踏まえると、一人あたりの損害はやや安いと感じます。
 まあ、名誉棄損は
  「お金の問題ではない」
という原告が多いので、損害額よりも、謝罪広告に関心がある場合も多いですけどね。

今回の判決は、謝罪広告がないようですが、もともと求めていなかったのでしょうか?
原告の好みなので、どちらでもいいのですが。

それでは、また。

 


【質問コーナー】
Q1
319条(株主総会の決議の省略)についての質問です。なお、当社は、親会社が一人株主である完全子会社(取締役会設置会社)です。
1.319条に「取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において」とあることから、ある取締役が単独で、つまり当該提案について取締役会決議を経ずに「株主総会の目的である事項について」の提案をすることができるように読めます。この場合、298条4項の「第一項各号に掲げる事項(株主総会の目的である事項)の決定は、取締役会の決議による」という規定は適用されないとの認識でよろしいのでしょうか? ……298条1項に「株主総会を招集する場合には」とあることから、そもそも319条の場合には株主総会が招集(も開催も)されないので、298条4項は適用されないという理解でよろしいのでしょうか?……
A1
適用されません。
Q2
2.(298条1項3号または4号に掲げる事項を定めずに)株主総会を招集する場合、株主総会の目的である事項が「役員等の選任」であるときは、施行規則63条7号の規定により、株主総会招集通知に「議案の概要」の記載が必要とされます。それでは、319条の場合の取締役提案(実務上、書面による提案になるかとは思いますが…)には「議案の概要」の記載は必要ないのでしょうか? ……そもそも319条の「提案」は(株主の全員の同意の意思表示とは違い)「書面又は電磁的記録」によることを要求されていないので、口頭による提案も可能なのでしょうか?……
投稿: ツェーベーツェー | 2008年9月20日 (土) 15時14分
A2
必要ありません。
口頭の提案もありでしょう。
株主が全員一致でよいというのなら、よろしいのではないか

Q3
はじまして、ロースクール生としていつもブログを楽しく、そして受験生として
刺激を受けながら拝見させていただいております。
私は検察官も視野に入れたいと考えておりますが、先日出た判決で迷いが生じてしまいました。
今月19日東京地裁で元国家公務員が休日に赤旗を配っていたことで有罪となった件です。
判決内容も疑問ですが、一番疑問なのがこうした軽微な国家公務員法違反に対して捜査当局が希少な捜査人員を積極的に投入している点です。
社会にはもっと取り締まられるべき行為が捜査人員の不足を理由として放置されているというのに、このようなことが正義に適うのか疑問です。
葉玉先生は元検察官としてどのように考えられますか?
不躾な質問で申し訳ありません・・・
投稿: 関西在住 | 2008年9月21日 (日) 05時32分
A3
 公安事件については、「ある人のある事件」という「点」ではなく、「組織」という「面」や、「歴史」という「奥行」を考えながら、評価しなければ、正確な評価ができません。
 たとえば、関西在住さんは、国家公務員が、オウム真理教に加入し、休日に、団地の郵便受けに勧誘の手紙を配っていたとしたら、どう考えますか?
 何を正しいとし、何を正しくないとするかは、一事件だけではとらえられません。

Q4
TMI事務所第一希望の関東某国立ロースクール未修一年生です。
とはいっても、GPAとかはなかなか成績が上がらず苦戦中。
葉玉先生のコメントを見ていると、トップ事務所に入るには、英語がめちゃくちゃ出来るとか資格があるとか自分の強みをつくること、というようなことが書かれていましたが、頭も悪いし、なかなか僕にはこれという強みはありません。
が、学生時代から親戚のやっているモデル事務所で4年間バイトしていてモデルとかレースクイーンのお姉ちゃん関係の人脈は豊富なので、合コンセッティング力には自信があります。
事務所の若手独身の先輩方に、モデルとかきれいなおねーちゃんとの合コンならいくらでもセッティングできます!なんていうのでも自己PRはありでしょうか?強みって言うのもこういう履歴書には堂々と書けないおばかなネタかもしれないですけど、この部分なら即戦力の自信があります。葉玉先生との直接面接のときにこっそりアピールしたりすれば、こっそりプラス評価にしてもらえたりするもんでしょうか(もちろんこっそり葉玉先生にも合コンにはご参加いただく、ということで)?こんなことでも自分の強みって考えてよいんでしょうか?
投稿: TMIに入るぞ! | 2008年9月22日 (月) 12時06分
A4
合コンセッティングも、ずば抜けた能力があれば、重要な加点要素です。
ただ、このブログで、それを明らかにされてしまいますと、私を含め採用担当者の奥様方の圧力により、欠格事由とされてしまう可能性がありますので、御配慮ください。

Q5
いつもブログを拝見しています。
私は現在ロー進学を検討中で,葉玉先生が講義を担当されている
上智ローにも興味があります。
上智ローは今年の新司法試験の合格率では全国平均を超え,トップ10にも入っていますが,トップの一橋とは結構差があるように思えます。
そこで質問なのですが
1.一橋や千葉,神戸大がなぜあんなに毎年合格率がいいのか。
元々頭のいい人しか入れないからなのか,中でとてもいい講義を
やってるのか,それ以外に何か(答案指導?)あるのか?
先生はTMIに入ってくる一橋,千葉,神戸ロー出身の方をみて
何か思い当たるところはありますか?
2.葉玉先生が上智で講義を担当されるようになったのは
今年からだと思うのですが,先生は上智で受験勉強のコツや
論文の書き方等を指導されたり,相談に乗っていただけたりも
するのでしょうか?
そうだとすると近い将来上智ローの合格率はもっと上がりそうな
気もするのですが。
3.先生の目から見て上智ローのセールスポイントはどこですか?
(葉玉先生がいるとか,女子学生が多いとかは抜きにして)
投稿: ロー進学検討中 | 2008年9月22日 (月) 15時29分

A5
1. 東大、早大、慶応は、それなりにロースクール生から話を聞いているので、雰囲気がわかりますが、一橋、千葉、神戸は、正直よくわかりません。
2. 私は、「受験勉強」は存在しないと思っています。司法試験は、実務家登用試験であり、実務家にとって必要な法律能力を鍛えれば、司法試験は当然に合格します。私は、常に、実務家にとって必要な事例分析能力、文章力をどう鍛えるかを考えながら、授業をしているつもりですが、「受験勉強のコツ」や「試験の書き方」を教えているわけではありません。
悩んでいることがあれば、相談には、いつでも乗ります。
3. 上智のセールスポイントは、人数が1学年100人で、一人一人に目が届きやすいということでしょう。
Q6
過去のブログも読んでみたのですが、ピタリとくるものがなかったものですから、念のため質問させてください。例えば、配当についてのみ内容の異なるA種類株式とB種類株式だけを発行している種類株式発行会社において、その両方を譲渡制限株式とする定款の定めを設ける定款変更の手続についてお尋ねします。
(1) 種類株式発行会社なので、株主総会の特殊決議(466条・309条3項1号)ではないと思いますが、正しいでしょうか。
(2) 正しいとすると、①原則どおり株主総会の特別決議(466条・309条2項11号)に加えて、②A種類株主を構成員とする種類株主総会の特殊決議(111条2項1号・324条3項1号)とB種類株主を構成員とする種類株主総会の特殊決議(111条2項1号・324条3項1号)がそれぞれ必要ということになると思いますが、正しいでしょうか。宜しくお願いします。
投稿: ロゴス | 2008年9月22日 (月) 17時09分
A6
そうです。

Q7
取引基本契約に基づいて株券担保(A社銘柄)の提供を受けている場合、株式電子化後にさらにB社銘柄株式の追加担保提供を受ける可能性もある場合、担保提供証書(TMIひな型で想定しています)はどのような取扱をすればいいのでしょうか。
・B社銘柄株式の担保提供があった際には新たに担保提供証書の書面を作成してB社の銘柄を記載し、計2通(A社記載分、B社銘柄記載分)の担保提供証書を保管する。
・A社銘柄が記載された担保提供証書の書面の空欄等にB社銘柄や日付等を記載し、担保提供者の押印等で記録を残す。
・あらかじめ担保提供証書に2者(債権者と債務者)の押印欄を設けておき、追記可能な方式にして2部作成して両者が保管する
取引基本契約を継続したまま株式担保の一部を設定解除する場合(1000株中600株を解除)の取扱についてもアドバイス願います。
投稿: ともち | 2008年9月22日 (月) 17時35分
A7
質問内容を考えると、チャージをいただきたいところです(笑)。
一概に言えませんが、担保変更依頼書や担保解除依頼書で対応すればよいと思います。

Q8
会社法322条(ある種類株主に損害を及ぼす場合の種類株主総会)についてなのですが、
取得請求権付種類株式の取得対価とするA種類株式に
取得条項を付した時は、株主総会特別決議 及び 当該A種類株主全員の同意の他、
会社法322条1項ロを根拠に、
当該取得請求権付種類株式の種類株主総会の特別決議を要するのでしょうか?
尚、ある種類株式に単元株式数を設定したときは、
定款変更における特別決議の他に、
会社法322条1項ロを根拠に、
当該種類株主総会の特別決議も要すると解してよろしいのでしょうか?
投稿: ななし | 2008年9月25日 (木) 13時01分
A9
種類株主の権利を害するおそれがあれば、必要でしょう。

Q10
総数引受契約と割当先決定手続について質問させてください。総数引受契約は、株式引受人と発行会社が締結するものですよね。そして、この契約は発行会社の代表取締役が発行会社を代表して締結しますよね。分からないのは総数引受契約と割当との関係です。
1、総数引受契約で引受先を決定すること=割当てなのでしょうか?
会社法205条から解釈すると総数引受契約を締結する場合には、割当てが不要となるので総数引受契約のなかに割当ても組み込まれているとも判断できます。一方、千問Q287の後段を読むと、「割当先の決定については」とあるので、
総数引受契約を締結する場合にも割当てが必要と読めます。
A10
総数引受契約は、割り当ても組み込まれています。
Q11
2、千問Q287の後段に記載してある、「割当先の決定については必ずしも取締役会の決議を要するものではなく、取締役会が取締役に割当先の決定を委任することもできるものと解される」という部分は、総数引受契約且つ譲渡制限株式の場合、割当先を誰が決定するのが原則だと指摘しているのでしょうか?
千問196ページの表では「代表取締役等」とあるので代表取締役が割当て先を決定するのが原則とも読めます。しかし、千問Q287の後段の記載(必ずしも取締役会の決議を要するものではなく、取締役会が・・・委任する・・という部分)からすると取締役会が割当先を決定するのが原則とも読めます。
A11
業務執行の決定権は、取締役会が有しており、代表取締役は、委任を受けない限り、決定権はありません。
Q12
3、2に関連して、取締役会の専決事項ではなく、総数引受契約の場合には取締役に委任することができるという解釈をとっているということならば、割当そのものの決議となるかどうかは別として結局は取締役会の決議が必要と指摘しているのでしょうか?
 そうだとすれば、千問196ページの表で「代表取締役等」と記載していることとの関係がますますわからなくなります。
 投稿: 登記職人見習中 | 2008年9月26日 (金) 01時11分
A12
表は、参考資料で、詳しく書けませんから、あまり厳密に考えすぎないでください。
普通の業務執行と同じです。

Q13
会社法は情報量がとても多くて、基本書を読んでいると、
全然おぼえきれないなぁとため息ばかり出てしまいます。
その後、肢別本や会社法100問の短答をやると、
基本書にある情報よりは遥かにすくないことしか聞かれていません。
葉玉先生は、脱時空勉強術で、忘れることも勉強である、といった趣旨の
記事を書かれていたと思うのですが、
やはり、肢別本にも100問にも問われていないようなことは、
覚えようとする必要はないのでしょうか?
さらにすすめて、基本書を読む歳にもそのような知識は飛ばしてしまってよいのでしょうか。
投稿: よみ | 2008年9月28日 (日) 06時11分
A13
誰も、基本書をすべて暗記している人はいませんし、そんなことは必要ありません。
なお、会社法100問のほうが、基本書より詳しい部分もたくさんありますが、会社法100問でも全部覆えるのは無理です。
バランスを考えながら、情報を捨てることがポイントです。

Q14
取締役の報酬のうち、役員賞与の取り扱い(株主総会等で定めた支給枠の範囲内の支給かどうかの判定時期)についてご教授ください。
取締役の報酬については、定款又は株主総会の決議により年間の支給枠を設け、その範囲内で支給している会社が多くみうけられます。

枠の範囲内の支給かどうかの判定時期についてお教えください。
前提:
3月決算会社とする。
X1年度 賞与引当金繰入額 100万円(=支給見込み額120万円x10ヶ月(6月~3月)÷12ヶ月(6月~5月)
X2年度 賞与の支給 120万円(うち、100万円は上記引当金を充当、当年度の負担額は20万円)
損益計算書では次のように記載されています。
X1年度 役員賞与引当金繰入額 100万円
X2年度 役員報酬(役員賞与)  20万円

質問:支給枠の範囲内かどうかの判定は次のいずれによることになりますか?
(1)X1年度 100万円 X2年度20万円として判定する。
(2)X2年度 120万円として判定する。
投稿: JGH | 2008年9月29日 (月) 11時32分
A14
 枠の問題は、法律解釈問題ではなく、株主総会の決議の意思解釈の問題なので、決議の趣旨によるとしかいいようがありません。
 なお、事業報告の記載事項の話だとすれば、報酬部分については、会社法施行規則が改正されましたので、そのとおりやってください。

Q15
取締役の任務懈怠責任における過失についての、先生の考え方について、お教えいただきたく存じます。
2005年12月29日の「取締役の任務懈怠責任(3) 」において、「「任務懈怠」という客観的要件と「故意・重過失・過失」という主観的要件を区別する考え方」に先生ご自身は立っていると記載されておられたため、先生は、過失について、客観的過失(結果発生を予見・防止すべき具体的な行為義務違反)ではなく、主観的過失(結果発生を予見できたのに不注意でそれを認識しない心理状態)と捉えられておられると理解しておりました。
しかし、2008年8月9日の「金商法の内部統制と善管注意義務」においては、「取締役の過失の有無において、当該取締役にとっての予見可能性・回避可能性を検討する」と記載されており、先生は、過失を客観的過失と捉えられておられることが分かりました。
そうすると、2005年12月29日の「取締役の任務懈怠責任(3) 」における「「故意・重過失・過失」という主観的要件」という表現をされる場合の「主観的」とはどのような意味で記載されておられるのでしょうか。
もしかすると、刑法学の新過失論において、「構成要件的過失」における注意義務を「抽象的な一般人の注意能力を標準とした客観的注意義務」とし、「責任過失」における注意義務を「本人の能力を標準とした主観的注意義務」とするように、「任務懈怠」における注意義務を「抽象的な一般人の注意能力を標準とした客観的注意義務」とし、「過失」における注意義務を「本人の能力を標準とした主観的注意義務」として捉えられたおられるのでしょうか。
投稿: ケーニヒ | 2008年9月29日 (月) 13時00分
A15
私は、任務を怠ったという行為を「客観的過失」とは表現していないと思いますが、その点を置いておくとして、「主観的」過失とは何かということすね。
過失とは、当該取締役にとっての予見可能性と回避可能性です。「能力」というよりも、当該取締役が、どのような事情を知っていたか、権限行使を怠った理由は何か等を調べて、それらの事情から、予見可能性と回避可能性を認定すべきだと思います。

Q16
会社法104条の間接有限責任について、教えて頂きたいことがあります。
株式会社が採用する間接有限責任においては、
株主は会社債権者に対して責任を負わないと教わりました。
この点、
100問(第2版)のP178、185では、
「株主は、出資額を超えて株式会社の債務につき会社債権者に対して責任を負わない」
とあります。(神田先生の基本書でも同様な記述がありました。)
 この記述からすると
「株主は、出資額を超えない範囲の株式会社の債務につき、会社債権者に対して責任を負うことがあり得る」
とも読めて、株主が一定の場合に会社債権者に対して責任を負う可能性があるとも思えてしまいます。
 そこで、(1)そもそも株主が会社債権者に責任を負うことがあるのでしょうか?   (2)(1)で株主が会社債権者に責任を負うとしたら、どのような場合なのでしょうか?
につき、ご教示をお願い致します。
単に、当方の誤読・誤解でしたら、ご容赦ください。 
投稿: チロ | 2008年9月30日 (火) 16時47分
A17
昔は、ありましたが、会社法では、株主が責任を負うことはありません。

Q18
 葉玉先生、こんばんわ。以前、先生に論文の勉強法について伺ったところ、過去問及び答練の受講がよいとのことでした。そこで、ある予備校が過去問を網羅的に潰す答練を開講していますのでそれを受講しようかと考えています。ただ、躊躇することが一つありますので葉玉先生の見解をお聞かせください。
 その予備校の答練は添削を合格者ではなく、受験生が行っているということです。添削者の基準としては、「添削を行う科目で、論文試験で2年連続A評価」を受けていることです。この点は予備校に確認しましたので間違いありません。
 このように添削を受験生が行っている場合でもその答練は受講する価値があるとお考えでしょうか。また、よろしければその理由についてもお聞かせください。
 お忙しいところ、申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
投稿: | 2008年10月 1日 (水) 23時55分
A18
書くことと、人に見せることに意味があり、採点の内容はそれほど気にする必要はありません。

Q19
会社法309条1項の「定款に別段の定め」は、定足数だけに掛かるのでしょうか? 決議要件まで掛かってもいいようにも思いますが、過半数に満たない賛成で議決と言うのもあまりに不自然ですので・・・。
また、このように規定されている場合、どこまで掛かるか読み方(解釈のしかた?)の法則のようなものがあるのでしょうか?それとも過半数に満たずに議決できるわけが無いといったような常識的な判断が必要でしょうか?
投稿: 会社法漫遊 | 2008年10月 2日 (木) 15時32分
A19
定足数以外にも、かかります。

Q20
株主2名の株式会社です。
既存株主による十億円単位の増資を行う場合において、資本金を増やすと登録免許税がかかって嫌なので、それを回避するため以下を考えました。
1)定款を変更し新たな種類株式の授権枠を設ける
  1株1円でも不公正とはいえないような内容とする
2)新種の種類株式の新株を1株1円で発行する
既存株主に割り当てる
⇒種類株式の内容や資本金のわずかな増加の登記で登録免許税がかかるのは仕方がない
3)その後すぐにその株式を1株1円で取得する
株主に損益は発生しない
⇒自己株式の簿価は1株1円
4)定款を変更し種類株式の内容を変更する
それなりの価値が認められる内容とする
⇒その登記で登録免許税がかかるのは仕方がない
(必要なら普通株式に変更して種類株式発行会社でなくなることもできますよね?)
5)取得した株式を処分する
それなりの価額で既存株主に割り当てる。
⇒処分の対価と簿価1円の差額は剰余金となる。資本金は増えないので登録免許税発生せず
見るからにインチキですが、これで登録免許税を免れることができそうに思うのです。
何か、目的が達成できないような不具合があるでしょうか?
(普通株式だと2)3)で1株1円とする論拠や、3)で株主に譲渡益が発生する点に問題があるので種類株式としました)
投稿: ニッチが好き | 2008年10月 2日 (木) 22時05分
A20
おっしゃる方法より、もっとよい方法がありますが、公開の場では教えられません。

Q21
会社法428条後段は「任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない」と、規定しています。
これを素直に読むと、任務を怠っていなければ(423条3項の推定も覆せたとする)免責されることになると思います。一方、任務を怠ったことが不可抗力であっても免責されないことになると思います。
しかし、「任務を怠っていない」と「任務を怠ったが不可抗力」の違いは相当微妙だと思います(簡単には実例が思い浮かばない)。
これらは、どのように区別されるのでしょうか?
また、区別できるとしてそのような特殊な事例のことまで考慮して立法されているのでしょうか?
投稿: 降参 | 2008年10月 2日 (木) 22時36分
A21
不可抗力という言葉は、因果関係が不存在の場合を意味するときもあるので、とりあえず、別の言葉を使わせていただきます。
 立案時は、明らかに「任務を怠っていない場合」と「怠ったが、無過失の場合」を分けて規律しました。
十分な説明義務を果たし、取締役会の承認を得て、事後の報告義務を果たしていたが、その後の事情の変化により、損害が生じたのならば、任務を怠っていません。

逆に、取締役が、いつの間にか、破産決定の申し立てを受けていて、資格を失っていたのに、それを知らずに取締役会の決議を開いたため、客観的には定足数に不足していたのならば、無過失でも責任を負います。

Q22
株主割当における権利内容の通知について質問させてください。
江頭会社法(第二版)p670(2)権利内容等の通知 の中に、一定の期日までに引き受けの申込みをしないときはその権利を失う旨を通知しなければならない(会社二〇二条四項)。この通知は、当該引受けの申込期日の二週間前までにしなければならない。という記載があります。
 しかし、一定の期日までに引き受けの申込みをしないときはその権利を失う旨を通知しなければならない旨は会社法204条4項に規定されているものであり、
202条4項の通知の絶対的記載事項ではないと考えております。(上場会社の株主への通知に、この会社法204条4項の記載がなされていることが多いのは株主の権利保障を厚くするためにすぎないと理解しております)
 私の理解、会社法204条4項の記載は株主割当における株主への通知(会社法202条4項)において、任意的記載事項にすぎないということ、は正しいのでしょうか?ご教授願います。
投稿: 登記職人見習中 | 2008年10月 3日 (金) 00時31分
A22
必須じゃないでしょう。

Q23
私のロースクールでは、答案添削をしてくださる方が基本的にいません。
唯一あるとするならば、弁護士の先生が主催するゼミしかありません。そのゼミの課題は、いつも重箱のスミをつっつくような、はしっこの論点ばかりです。このようなマイナーな論点しかやらない弁護士ゼミでも出席したほうがいいのでしょうか?
思い切って、そのゼミをやめて、予備校の答練の講座を受講したほうがいいのでしょうか?
とても、一人で勉強して論文の実力が上がるようには思えないので、どちらにすべきか悩んでいます。
投稿: 崖っぷちロー生 | 2008年10月 3日 (金) 01時18分
A23
予備校にいくのも、ひとつでしょう

Q24
勉強法についてですが、条文の素読は会社法においても必要とお考えでしょうか。
上三法や刑訴、民訴などは素読をやって実際に条文構造などの理解が深まった気がします。しかし、会社法は条文数が多くて、しかも複雑で。。。
やはり問題を解いたりしてでてきたところをやるという方法がいいでしょうか。
それともまとめて読むということが必要でしょうか。
お考えお聞かせ下さい。
投稿: 未習者 | 2008年10月 3日 (金) 20時06分
A24
ひとりで、素読するのは、あまり能率的な勉強ではないですね(会社法に限らず)。
よいナビゲーターがいれば、非常に役に立ちます。

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