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2008年4月27日 (日)

外為法の中止命令

ザ・チルドレンズ・インベストメント(TCI)が、外為法に基づく財務大臣及び経済産業大臣が行った 勧告の応諾を拒否するそうです(http://www.tcifund.jp/pdf/news_jp19.pdf)。

 外為法には、あまり親しみがない人が多いので、今回の一連の手続を簡単に説明すると、次のようになります。

1 外為法には、日本国の安全等を脅かすような対内直接投資について規制する規定があり、外国投資家であるTCIは、Jパワーの10%以上の株式を購入するためには、事前に、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び経済産業大臣(以下「政府」といいます)に届け出なければなりません(外為法27条1項)。それで、TCIは、20%まで買い増ししたい等ということを届出しました。

2 ところが、政府は、TCIの株式購入が、「国の安全等に係る対内直接投資等」(国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがある対内直接投資等など)(同条3項)に該当すると認め、株式の取得の中止を勧告しました(同条5項)。

3 TCIは、当該勧告を受けた日から起算して十日以内に、財務大臣及び事業所管大臣に対し、当該勧告を応諾するかしないかを通知しなければならないので(同条7項)、今月24日に「応諾しない」と判断し、政府に通知したました。

 現在は、この段階ですね。

 この次は、政府がTCIにボールを打ち返す番であり
4  政府は、TCIに対し、株式の取得の中止を命ずることができますが(同条10項)、命じないこともできます。
 ただ、この流れでは、ほぼ100%、中止命令を出すでしょう。

5 この中止命令が出ると、TCIに中止義務が生じます。
 もし、TCIが、この中止義務に反して株式を取得すると
   罰則(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)
が適用されます(同法70条25号)。

 100万円の罰金くらいなら、罰金を払って株式を取得する人もいるかもしれませんが、懲役だときついですね。

 しかも、TCIは、まともな投資家なので、中止命令を無視するようなことはないでしょう。

6 したがって、TCIが中止命令に不服ならば、行政不服審査法に基づき審査請求することになります。
 不服審査は、行政内部の審査庁が、中止命令が適法・妥当かどうかを判断する手続です。行政内部であっても、原庁の判断が覆ることもありますが、今回の件は、棄却される公算が大です。

7 そこで、TCIが、棄却裁決を受けても、なお頑張るとすれば、裁判所に取消訴訟を求めることになります。

 もし、そうなったら、その裁判は、行政法の側面でも、ビジネス法務の側面でも、大注目の裁判になるでしょう。

 裁判になった場合の争点は、いくつか考えられますが、おそらく
  今回のTCIの株式の買増が「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがある対内直接投資等」
に該当するかどうかが、最大の争点になります。

 外為法を見る限り、「国の安全等に係る対内直接投資等」に該当する場合に、中止命令を出すか出さないかは、政府の裁量となっていますが、
  「国の安全等に係る対内直接投資等」に該当しない場合には、中止命令を出すことはできない
ことになっています。

 TCIの主張も、その点に対する政府の判断に対する不満が爆発していますし、世間の人からすると
 「持株比率を10%から20%に増やすだけで、国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがあると言えるんだろうか?」
という素直な疑問が沸いてくるでしょう。

 仮に、取消訴訟となった場合、政府にとって一番有利な展開は、裁判所が、「国の安全等に係る対内直接投資等」の解釈や事実認定を避けてくれることです。
 たとえば、
 「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがある」かどうかの判断自体が、行政裁量の範囲である
と言ったり
 統治行為であるから、司法審査の対象とならない
と言ったりして、その点の解釈を避けてくれれば、TCIの株式の買増が「国の安全等に係る対内直接投資等」に該当するかどうかという点について、裁判所に深く立ち入らせることなく、取消訴訟に勝てます。

 ただ、「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがある」という要件は、抽象的な要件ですが、その事実認定について行政裁量を認めるような条文の書きぶりとは言い難いかもしれません。また、統治行為論が適用あるかどうかも、本件からすると微妙でしょう。

 もしそうだとすると、裁判所が、TCIの株式の買増行為の影響を具体的に検討し、「国の安全等に係る対内直接投資等」に該当するかどうかを判断することになりそうです。
 
 これは、政府にとっては、あまり望ましくない展開です。政府内部では、政府の論理が通じても、裁判所には、その論理が通じるとは限りません。通じるかもしれないし、通じないかもしれない。
 文言が抽象的であるだけに、裁判官によって、判断が違ってもおかしくないので、正直言って、結論が読めません。

 一つだけ言えるのは、滅多にない裁判になるので、裁判所に、バランスの取れた解釈論を展開していただきたいということです。

 日本の上場企業の中には、外為法27条の適用対象となる会社が結構沢山あります。特に、素材メーカーなんかは、何らかの形で、防衛産業等に関わっていることが多いんではないでしょうか。
 だからこそ、今回の中止勧告は、単にJパワーという一企業だけの問題ではなく、日本市場全体の問題として捉えられているように思います。

 もちろん、外国投資家が、Jパワー以外の上場企業の株式を大量買付したからといって、政府が、Jパワーと同様に、中止命令を出すかというと、
   普通は、たぶん、出さないだろうなあ
と思います。

 しかし、外為法27条は
   大量に株式を取得しようとする外国投資家にとっては、のどに刺さったホネのような存在で、忘れたくても忘れられない規定
なので
  外国では、今回の中止勧告が、日本市場の閉鎖性を示すものとして、実際の影響以上に大きく取り上げられている
のでしょうね。

 実際には、外為法27条のような規定はどの国にもありますし、こんなことで閉鎖的と言われるのならば
   アメリカのエクソンフロリオ条項なんて閉鎖性の極み
と言わざるをえないでしょう(北畑経済産業次官も、もう少し柔らかく同様のことを言っています)。

 私は、法律家なので、自分の国の制度を棚にあげた欧米の報道には、やや違和感を感じますし、TCIの味方でも、政府・Jパワーの味方でもないので、理論的な観点から外為法の中止命令の規定を分析しているだけですが、真面目に考え始めると、中止命令って、結構、よく分からない制度です。

 たとえば
 ①中止命令違反の行為をしても、私法上の無効になるわけではない
 ②中止命令違反は、国外犯処罰規定がないため、中止命令を受けた者が、国外で、国外にいる者から株式を買い受けた場合には処罰できないのではないかという疑問がある
などということを考えると
    案外、抜け穴が多いのでは・・
と思ってしまいます。

 TCIは、真面目なファンドなので、抜け穴は通らないと思いますが、これを機会にもう一度、外為法の中止命令を練り直した方がよいのではないかという印象を持ちました。

(質問コーナー)
Q1
 株主代表訴訟において、被告が、原告の「悪意」を疎明して、裁判所に、原告に対し相当の担保を立てる命令を出してもらう制度(847条7項・8項)がありますよね。
 同制度の「悪意」とは、一般に①不当訴訟要件②不法不当目的要件があるといわれていますが(江頭P452)、この②不法不当目的要件と847条1項ただし書きの訴訟要件の関係はどういうものなのでしょうか。
 不法不当目的要件が満たされる場合は、担保提供ができる場合を超えて、そもそも、847条1項ただし書きの訴訟要件を満たさないので、訴えを却下しなければならないケースなのではないでしょうか?

A1
 条文に書かれているとおり、担保提供命令の悪意は、被告取締役等に損害を与える目的である場合、847条1項ただし書は会社に損害を与える目的である場合のものです。
 場面が違います。

Q2
 849条1項において、法律上の利害関係がなくても、会社は、代表訴訟に補助参加できると解されていますが(江頭P454)、しかし、会社法においても、民訴法の補助参加の利益がなくても良いと書いてあるのではないので、未だ、民訴法としての「法律上の利害関係」は必要なのではないでしょうか。
投稿 kaz | 2008年4月19日 (土) 23時30分
A2
 849条1項は、民訴法の特則なので、別個に、法律上の利害関係は不要です。

Q3
最近の大手監査法人の傾向ですが、会計処理等の結論は、理論の背景ではなく、会計士協会の実務指針や通達が全てになっています。ここの例示に書いてあるからそれに従わなければなりません。これが彼らの口癖です。会計監査人の脳死状態は経理部の人誰しもが感じる現状です。マニュアル世代の若手もおり、ものを考えない人が増えているのもその背景かもしれませんが。
最近新聞で盛り上がった証券化の監査の厳格化についても、過剰にマスコミが反応しておりますが、財務諸表規則等各種法律で証券化の開示などはまったく求められていないのに、適切な開示などと書かれています。開示するにしても証券化の定義すら開示関連の法律で定められていないのですが。
会計士協会も上層部あるいは金融庁の圧迫により、保守的な路線をひた走り、近いうちに自己矛盾に陥ることでしょう。
アメリカの会計基準が実務指針を定めすぎ身動きがとれなくあり、プリンシパルベースのIFRSに近づこうとしているように。
別に監査法人を悪くいうきはありませんが、もう少しスキルアップをして欲しいと切に祈るのみです。
投稿 相沢 | 2008年4月20日 (日) 17時41分
A3
 士業は、一人一人が侍です。侍が、武士道に則りつつ、自ら剣を磨き、誇りをもって戦うように、プリンシパルに則りながら、自分の技能に対する絶対的自信と誇りをもって、職務に従事すべきです。
 具体的な事実を無視して実施基準に記された「例示」に闇雲に従うような公認会計士は、「士」を返上すべきでしょう。

Q4
さっそく会社法マスター115講座(第二版)を購入しました。
そこで、ひとつ気になる点があります。
P.51「図表22 募集事項の決定」の中で、「公開会社」「募集」「原則」と「第三者割当て・通常発行」のクロスする箇所です。
同記載は、「取締役会の決議(202Ⅲ③)」とあります。
これは、「取締役会の決議(201Ⅰ)」ではないでしょうか?
202条は割当増資を指しており、同表の右端にあたいすると思われます。いかがでしょうか?
投稿 公園前受験生 | 2008年4月21日 (月) 21時54分
A4
確かに該当部分は、201条1項ですね。申し訳ありませんでした。
誤植は、そのうち、LOTUS 21社が、適切な方法で知らせると思います。

Q5
5人の取締役中、2人を少数派株主が必ず選任できるようにするためには、どのような内容の種類株式を発行するのが実務上一般的なのでしょうか。少数派株主に、「取締役5人を選任でき、その中の3人は他の株主と共に選任する」という種類株式(108条9号)を発行するという方法は実務的にみて妥当でしょうか。
投稿 tk | 2008年4月23日 (水) 00時21分
A5
選び方が、普通の取締役選任権付株式と違いますね。
109条2項でも使ったらどうでしょうか。

Q6
ある種類株式に取得条項を付す場合なのですが、
この場合は、株主総会の特別決議のほかに、当該種類株式の株主の全員の同意を要しますが、当該種類株式を取得対価とする取得請求権付株式又は取得条項付株式の株主の同意は要しません。(会社法111条1項)
 ですが、ある種類株式に譲渡制限又は全部取得を付す時は、株主総会の特別決議及び、当該種類株主総会の所定の決議のほかに、当該種類株式を取得対価とする取得請求権付株式又は取得条項付株式の株主を構成員とする種類株主総会の所定の決議を要します。(会社法111条2項)
何故、取得条項を付す時は、同意を要する株主が当該取得条項を付す株式の株主に限定されるのでしょうか?
投稿 tです。 | 2008年4月23日 (水) 15時01分
A6
 誤解があるようです。まず、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類株主の種類株主総会が必要です(322条)。
 111条1項は、種類株主総会の特別決議ではなく、全員の同意が必要であるという点の特則です。

Q7
風の噂で、「株券電子化に際して上場会社が設置する特別口座管理人を、設置後に変更する際には会社分割が必要になる」との話を聞きました。
もしこの話が本当であるのならば、これはいかなる法律構成によるものなのでしょうか?似たような「株主名簿管理人」の変更ではこのような大掛かりな手続きは必要なく、契約の解除などで足りると理解しているのですが・・・。
投稿 窓辺の総務 | 2008年4月23日 (水) 22時39分
A7
 株主名簿管理人の交代は、会社と信託銀行等との委任契約の解約と新規締結に過ぎません。
 特別口座は、会社と信託銀行との間の契約で開設されるものですが、一旦、特別口座を開設した以上、特別口座だけを移動させるような手続はありません。それで、会社分割等が必要だということになります。

Q8
条文を読む限り、株式移転交付金は交付できないという理解でよろしいでしょうか?
投稿 くりっく | 2008年4月24日 (木) 07時35分
A8
工夫すれば、事実上、交付できます。

Q9
新・会社法100問第2版の555p(小問2)です。

2 合併契約において、消滅会社乙社の株主に対して、存続会社甲社の株式を交付する旨を定めた場合であっても、乙社の株主が甲社の株主にはならない場合がある。

(一)乙会社が自己の株式を有している場合においては、乙社は甲社の株式の割当てを受けず、甲社の株主とはならない(749条1項3号)。

(二)甲社が乙社の株式を有している場合においても、★乙★会社は自己の株式の割当てを受けず、自己の株主とはならない(749条1項3号)。自己に対する債権を原則として否定すべき(民法520条)だから。

(二)の意味が解らないのですが、★乙★を「甲」に変えると解るような気がします…ミスプリントと理解してよろしいでしょうか?
投稿 けい | 2008年4月25日 (金) 14時37分
A9
 甲です。すいません。

Q10
 電子公告の方法による決算公告についてお伺いしたいのですが、ご教示の
ほど宜しくお願いします。
上記の方法で決算公告をした場合、5年間公告を継続することが必要とされ
ていると思いますが、
①吸収合併消滅会社が上記の方法で決算公告をしていた場合、合併後、
 存続会社は、この公告を継続しなければならないのでしょうか。
 とあるブログで、合併により存続会社は消滅会社の決算公告義務を
 承継するので、存続会社が官報公告の方法で決算公告をしている場合、
 電子公告で決算公告で行っていた消滅会社の過去分の決算公告を
 合併後、改めて官報に掲載しなければならないといった意見が披露されて
 いたのですが、決算公告義務を承継するなどといったことがあるのでしょうか。
②電子公告の方法で決算公告をしていた会社が解散した場合、清算会社は、
 過去分の決算公告も継続する必要がなくなるのでしょうか。清算会社には、
 決算公告義務がありませんが、それは過去分の決算公告にも及ぶので
 しょうか。 
③公告の方法を電子公告から官報公告に変えた場合、過去分の電子公告
 による決算公告は継続する必要があるのでしょうか。アドレスの登記が
 抹消されてしまうので、履歴事項証明書には記載が残るとはいえ、
 疑問に思っております。
投稿 権兵衛 | 2008年4月26日 (土) 00時14分
A10
① 決算公告義務は、権利者が存在するような義務ではなく、包括承継とは無関係です。存続会社には、公告義務は、承継しないと考えます。
② 継続する必要があると思います。440条の適用除外は、すでに生じた公告義務を消滅させる効果はないと考えます。
③ 電子公告が5年継続していない段階で、公告方法を官報に変更した場合には、440条の公告義務をまだ果たしていないので、官報で公告すべきであると考えます。

Q11
800条2項は、「第135条第3項の規定にかかわらず、前項の存続株式会社等は、効力発生日までの間は、存続株式会社等の親会社株式を保有することができる。ただし、吸収合併等を中止したときは、この限りでない。 」と規定しています。

同項本文を反対解釈すると、存続株式会社は、効力発生日以降は親会社株式を保有することができないことを規定しているようにも読めるのですが、そのような内容を含むものなのでしょうか。
このような理解を前提とすると、存続株式会社は、効力発生日より前に、消滅会社の株主に親会社株式を交付しなければならないことになりそうなのですが、そのようにこの条文を解釈することができるのかどうかをお聞かせください。
投稿 t | 2008年4月26日 (土) 01時32分
A11
 効力発生日までは、親会社株式を保有することができるので、その日に子会社の株主に、親会社株式を交付することになります。

Q12
既に一時会計監査人を選任している会社について、インターネットの記事によると(http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/commercial/06051101commercial.pdf
『即ち、会社は「一時会計監査人」(仮会計監査人)を選任した後、最初に招集される株主総会
において、正式に新たな会計監査人を選任しなければならない。株主総会において、正式に新
たな会計監査人が選任された時点で欠員は補充され、「一時会計監査人」(仮会計監査人)は、
当然にその地位を失う、というわけである11。』
とあります。
ちょっと古い記事ですので今更の質問でしたら申し訳ありませんが、この解釈は実務でも採用されておりますでしょうか?
実務となっている場合、記事にいう株主総会に臨時株主総会は含まれますでしょうか?
投稿 一郎 | 2008年4月26日 (土) 02時19分
A12
私は、基本的に、実務で採用されている見解以外は書かないようにしています。
臨時株主総会でも同じことです。

Q13
臨時株主総会が記事の株主総会に含まれるとして、臨時株主総会で会計監査人を選任せず、また、当該総会後に監査役会が新ためて一時会計監査人を選任していない場合、当初の一時会計監査人は臨時総会後も一時会計監査人としての地位を有すると考えてよろしいでしょうか?
投稿 一郎 | 2008年4月26日 (土) 02時25分
A13
会計監査人が選任されるまでは、一時会計監査人でしょう。

Q14
支配人についてご教示いただけたらと思います。
まず、会社法11条2項の「他の使用人」には支配人は含まれるのでしょうか?
もし含まれるとすれば、362条4項3号との整合性はあるのでしょうか?
投稿 虎 虎 虎 | 2008年4月26日 (土) 12時40分
A14
「他の使用人」には、支配人は含まれないと考えます。
 支配人は、特定の本店・支店についてのみ、権限を持っているため、同じ本店・支店で同一の権限を有する支配人を選任するのは、論理的に困難であり、支配人は除く解する法が「他の」という文言とも整合的です。

Q15
 取締役会決議による自己株式取得について教えて下さい。
 今から約10年ほど前、株式消却特例法によって自己株式を取得していた頃、定款で取締役会の決議で株式消却ができる旨規定し、取締役会で株式の種類、数、取得価額の総額を決定した後、個々の買付(例えば毎日の具体的な買付)については、取締会が代表取締役(または業務執行取締役)に包括授権しなければならないといわれていました。
 現在の第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得について、第156条第1項により取締役会の決議を行った場合も、やはり個々の買付についての代表取締役(または業務執行取締役)への授権決議が必要と考えるのでしょうか?
 また、その授権期間は、取締役会への業務執行報告事項であるから3ヵ月が最長でしょうか?
 当時は、1ヵ月以上を授権期間とする取締役会議事録では、消却による発行済株式総数の変更登記を受理すべきではないという話がありましたが、今でもその考え方は残っているのでしょうか。
投稿 こまわり君 | 2008年4月26日 (土) 14時49分
A15
165条1項で、157条を適用除外していますので、個々の授権は不要です。
また、165条2項の包括授権は、特に期間の定めはありません。

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2008年4月19日 (土)

内部統制(続)

 内部統制報告制度は、上場企業およびその子会社の担当者が、昨年来、悩み苦しんできた問題です。
 ですから、前回の記事については、いろいろな反応があるだろうと思っていましたが、予想どおり、監査する方及び監査される方の双方から、沢山のコメントをいただきました。

本日は、それらのコメントのうち、「監査役さん」のコメントを中心に、前回の記事の補足をしてみようと思います。

監査役さんのコメント
「上場会社の監査役をしている者です。
先生のブログはいつも共感を持って拝見しております。
しかし本日のはかなり違和感というか反感に近いものを感じました。
三井さんの前の池田さんの時代から金融庁のいうことが一貫しているのはそのとおりでしょう。三井さんと葉玉先生がパネルディスカッションをすれば当然そういう結論になりましょう。
しかし公認会計士協会はどうでしょうか。協会の各種報告書に現れた監査の基準や手続は金融庁の言っている趣旨と全く異なるではありませんか。従来より金融庁や八田先生は上場会社に向かって「内部統制に誤解がある。SOXではない。既存の文書でよいのである」と言っていますが、それは会計士協会に対して言うべきことで、上場会社に向かっていうのは会計士協会に言えないから上場会社に八つ当たりをしている弱いものいじめでしかありません。
企業開示課が監査報告書をくれるわけではありません。
監査法人がOKといわない限り適正意見の監査報告書は出ないのです。
その監査法人は会計士協会の報告書どおりに動くのです。動かなければ上場会社の監査をできなくされます。
葉玉先生は本当に金融庁の「11の誤解」のように、3点セットは不要、既存の文書を活用すればよい、お考えでしょうか。そんな監査法人がいるのですか。TMI法律事務所のクライアントで、そのように内部統制を行っている会社が実在するのですか。」

 監査役さんが、私の記事について、「違和感」や「反感」をもたれるのは、よく分かります。監査役さんの監査法人は、きっと
  「3点セットは当然必要。
   既存の文書を活用するのは、一切認めない」
とおっしゃっているんでしょう。
 監査役さんの会社の監査法人の意見が正しいのかどうかは、監査役さんの会社の規模や既存の文書の整備状況によるので、なんともいえないのですが、私の知る限り、現実に
 ① 最低、RCMがあればよい
 ② 既存文書を活用してよい
という監査法人の方はいらっしゃいますし、そのような運用がされている会社もあります。

 もちろん、中には、「金融庁は、緩すぎる」という公認会計士もいますし、もしかしたら、監査役さんは、SOX法中毒の会計士さんに過剰な対応を求められ、「刷り込み」がされてきたために、私達の意見に「反感」すら感じていらっしゃるのかもしれません。

 私は、監査役さんのお気持ちは、分かるものの
  監査役さんのご意見には、3つの大事なことが忘れられている
と思います。

 一つ目は、「内部統制の基準は、ある特定の事例にその基準をあてはめると、自動的に答えが出るというようなものではない」ということです。
 基準についての解釈やあてはめは、人によって、時期によって、大きなブレが生じえます。監査人が変われば、意見も変わるし、同じ監査人でも、時がたてば意見が変わることもあります。
 経営者が、金商法の内部統制について正確に理解し、根拠を示して、監査人と議論すれば、監査人が譲歩せざるをえないことも多々あるでしょう。
 監査法人は、神様ではないのです。
 監査法人には、「不適正意見を出したら、会社や株主から訴訟を提起されるかもしれない」という不安感を持っている人も多いでしょう。経営者が、きちんとした論拠を示し、毅然として不当な要求をはねつければ、合理的な対応をしてくれる場合が多いと思います(もちろん、何の根拠もなく、泣きつくだけでは、相手にされないかもしれません)。

 二つ目は、監査法人は、金商法に基づいて監査を行うということです。
 金商法に反する内部統制監査報告書は、虚偽ないし違法なものであり、そのような不当な内部統制監査報告書を作成した監査法人は、金融庁の処分の対象となりえます。

 仮に、金融庁の見解に従えば、内部統制に問題がないのに、監査法人が過度に保守的になって、不適正意見を書くのならば、不当な記載のある監査報告書ということになります。
 監査人さんは、
   「金融庁が何をいっても、監査法人がウンと言わなければ仕方がない」
と思っていらっしゃいますし、それは、一面真理ですが
   「監査法人が何を言っても、金融庁がウンと言わなければ仕方がない」
というのも真理です。
 監査法人が「内部統制監査の見解の相違くらいで、金融庁が処分を下すはずがない」とタカをくくっていると、案外、痛い目に合うかも知れません。上場企業の多くが、監査法人の要求にヘキエキしており、政治家に泣きつき、何度も、金融庁が「過度な要求は辞めよう」と警告を発しているわけですから、今後、金融庁が、過度な要求をする監査法人に対して、どんな動きをするかなど、誰も予想はできないのです。

 三つ目は、内部統制監査は、はじまったばかりであり、内部統制監査報告が作成されるのは、来年だということです。
 経営者と監査人との見解の相違が、正式に顕在化するのは、来年ですから、監査法人と激論を戦わせるのならば、今年から来年にかけてが本番です。
 その本番に先駆けて、金融庁が
  「監査人の準備段階における各種言動は、まったくもって、正当である」
と言うのと
  「一部の監査人の言っていることは、おかしいぞ。」
と言うのとでは、どちらが望ましいかを考えてください。

 監査役さんは
 「従来より金融庁や八田先生は上場会社に向かって「内部統制に誤解がある。SOXではない。既存の文書でよいのである」と言っていますが、それは会計士協会に対して言うべきこと」
とおっしゃいますが、私は、「11の誤解」は、企業に向けられたものとではなく、真実は、監査人に向けられたメッセージであると理解しています。
 実際、昨年後半に、金融庁が火消しに入った頃から、公認会計士さんが、公式に内部統制について語るときのニュアンスは変化してきています。

 監査役さんのおっしゃるように
 「監査法人がOKといわない限り適正意見の監査報告書は出ない」
のですが、監査をするのは人間であり、監査法人は、金融庁や他の監査法人の動きを注視しながら、監査を行っています。

 監査法人の内部統制についての考え方が金商法に反していると思えば、監査役が
    監査報告の中で、「うちの会計監査人の内部統制の考え方はおかしい」
と書けばよいし、個別企業で対応するのは事実上無理だというのならば、上場企業同士で、連絡を取り合い
   「金商法の内部統制を理解していない監査法人を監視する会」
を結成し
  「不当な要求をする公認会計士リスト」
を作成して、金融庁に
  お殿様、助けてください。
  こんな悪代官がおります。
と駆け込むのはどうでしょうか(笑)。
 新聞ネタにもなるし、結構、効果が高いかも・・
(こんなこと書くと、公認会計士の皆さんから、監査の妨害をするな、と怒られそうですが)。
 いずれにせよ、内部統制報告制度の妥当な運用を導くために、
   金融庁が、SOX法的内部統制に否定的である
という態度を示し続けることは、意味のあることだと思います。

 なお、踊る内部統制さん、m.nさん、機野さんが、内部統制の不備を見逃した場合のリスクが、監査法人の過剰な対応を生んでいるというご指摘をされています。
 先週、金曜日に、大阪地裁で、トーマツの損害賠償責任を認める判決が出たと山口さんのブログに記事が出ていましたが(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/)、こういう判決が出ると、いよいよ監査法人が保守的になるのかもしれません。

 まあ、監査するのは、機械ではなく、人ですから、仕方ありませんし、内部統制の監査基準なんて、幅があるわけですから、厳しくもできれば、緩くもできます。会計処理には「正解」がありますが、内部統制には「正解」はありません。監査法人だって、本当のところ、何がその企業にとって必要な内部統制なのかなんて分からないはずです。抽象的な虚偽記載の可能性なら、いくらでもあるでしょう。しかし、真のリスクが何かを把握するのは、非常に難しい。だから、「過剰な対応」になるのか、そうではないのか、監査法人の態度によって大きく変わります。

 まあ、「内部統制の不備で訴えられるから、監査が必要以上に厳しくなる」
というのが本当ならば、
 「監査法人が、内部統制について、不適正意見を出したことを原因として、会社や株主が、巨額の損害賠償請求訴訟を、じゃんじゃん起こす」
ような世の中になれば、監査法人は、一気に、反対方向に流れるかもしれませんね。

 でも、そんなことで監査が厳しくなったり、緩くなったりするのは、おかしな話です。
 訴えられるかどうかにかかわらず、監査法人は、金商法の趣旨を踏まえた監査をすべきであり、それができない監査法人ならば、監査法人としての資格はありません。

 内部統制はプロセスであり、100点満点の内部統制などありえません。
 これまで気付かなかった不備や欠陥を発見したり、企業の内情の変化によって生ずる不備を把握したりしながら、それを補修する時期や予算を検討し、年々、改善していくのが正しい内部統制のあり方です。
 誤解を恐れずにいえば、「虚偽記載のある財務報告は一発アウト」ですが
   不備のある内部統制は、むしろ健全な姿
であると思うのです。

 監査法人の内部統制監査も同じです。
 100点満点の内部統制監査なんてありえません。
 監査法人による内部統制の「監査」だって、大きな目から見れば、会社法上の内部統制プロセスの一つであり、その監査に効率性を害するような不備や重要な欠陥がある場合もあるでしょうし、監査の方法も、会社の変化に応じて、年々、改善していくべきものです。
 そして、本来、それで足りるはずなのです。
 実施基準自体、きっと実際の監査経験をフィードバックさせながら、変化していくはずです。

 私は、「11の誤解」には、
  上場企業も、監査人も、冷静に金商法を見つめ直し、SOX法のような悪法のもとで培われた実務を真似することはやめ、合理的な内部統制報告制度を考えていきましょう
というメッセージが込められているものとと思っています。
 それなのに、経営者や監査法人が
  今更、言われても、何も変わらない。変えられない。
とあきらめているとすれば、それこそ、事情の変化に対応できない硬直的な内部統制システムが構築されている表れであり、そのような態度そのものが
  内部統制の不備
であると思います。

 なお、漉餡大福さんは、
「内部統制報告制度に関する11の誤解」批判
http://d.hatena.ne.jp/koshian_daifuku/20080312/1205240827
「内部統制報告制度に関する11の誤解」等に対する個人的な感想
http://lagrande.blog115.fc2.com/blog-entry-440.html
を引用されて、11の誤解は、批判されています。

 しかし、そこで引用されている「11の誤解」批判のほとんどが
  金商法の内部統制報告制度そのもの
に対する批判であり、「11の誤解」そのものに対する批判にはなっていないように思います。

 以前から申し上げていますように、私は、大きな不正は、内部統制報告制度では防げないので、内部統制報告制度への対応のために、巨額な資金と手間が投入されたと聞く度に、「そこまでして、やるようなことじゃないだろう」という気持ちがわき上がってきます。

 ただ、現実に、内部統制報告制度は存在していますから、その存在自体に文句を言うくらいならば、不当な要求をする監査法人に文句を言う方がよっぽどましです。
 また、アメリカ、イギリス、フランス等で内部統制報告制度が採用されたという潮流の中で、金融庁が、「何の法整備もしない」という選択肢を取ることはできなかっただろうし、今後、廃止することも、事実上不可能でしょう。

 「11の誤解」を始めとする金融庁の一連の「火消し」活動h
  上場企業と監査人の双方に、効率的で妥当な内部統制を考えるためのきっかけをあたえる
という点では、高く評価すべきであり、このきっかけを生かすも、殺すも、
  上場企業・監査法人、そして、金融庁の今後のフォロー(監査法人に対する監督も含む)
にかかっているのではないかと思います。

(質問コーナー)
Q1
葉玉先生
いつも参考にさせていただいております。
>誤解している人もいますが、4月1日から施行されている金商法には内部統制構築義務など存在しません。単に内部統制の「開示」義務が定められているだけです。
とありますが、「開示」のための根拠として、内部統制基準には、「財務報告に係る内部統制の有効性の評価手続及びその評価結果、並びに発見した不備及びその是正措置に関して、記録し保存しなければならない」とあり、内部統制実施基準には、「内部統制に係る記録の範囲、形式及び方法は一律には規定できないが」と言い訳したうえで、
>どーでもいいようなことを文書化・IT化すること
をしないと対応できないようなこと(「各業務プロセスにおいて重要な虚偽記載が発生するリスクとそれを低減する内部統制の内容(実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性との関係を含む。また、ITを利用した内部統制の内容を含む。)」など)が書かれていると感じるのですが、その点に関してどのようにお考えでしょうか?
投稿 ただの監査人 | 2008年4月12日 (土) 15時08分
A1
 実施基準は、開示を行う前提として、目安を提示したものであって、「義務」の根拠ではありません。
 それから、会計基準と実施基準の一番大きな違いは、会計基準は、どんな会社であろうとも、規模や性質にかかわらず、統一的に適用されるのに対し、実施基準は、会社が変われば、要求されるものが大きく変わるということでしょう。

 もちろん、多くの上場企業は、多かれ、少なかれ、文書化、IT化が必要な部分はあるでしょうが、金融庁が言いたいのは
1 国際的な拠点を多く持つ超巨大上場企業と、従業員30人で本店しかない上場企業では、要求されるものが全然違うということ
2 超巨大上場企業であったとしても、アメリカのSOX法のような業務プロセスを嘗めまくるような内部統制を、日本の金商法は要求していないということ
だと思います。

Q2
いろいろな使い方の一つとして私のような発想をする人種にとっての624の意義を考えあぐねているところです。
現行法の解釈と言うより立法の趣旨を知りたいと思っておすがりしております。
立法論としては、624を「会社は出資の払戻をすることができる」とすることは他の部分との整合性を保てるでしょうか?
もし可能なら、商法になかった規定を会社法でわざわざ明文化させるに当たり、なぜ会社の任意でなく社員の請求権の規定を選択したのか、その狙いはどこにあるのでしょうか?
投稿 ひで | 2008年4月14日 (月) 12時56分
A2
 ひでさんのような発想をしない人にとって、624条を使ってもらうためです。
 「払戻ができない」としたら、私が、これまで話していたような便宜をはかれるかどうか、考えてください。

Q3
東証マザーズ上場会社にはMSCBやMSワラントを発行して株価暴落している企業が多数あり,個人株主が市場から離れる原因の一つになっているようです。
株式会社がMSCBやMSワラントを発行して資金調達する場合,少数株主保護のため,議決要件を厳しくする法改正の動きなどはないのでしょうか?倒産するよりマシだからOKということでしょうか?
投稿 節約小僧 | 2008年4月17日 (木) 02時41分
A3
 そのような立法の動きはありません。
 むしろ、市場のルールの問題です。

Q4
剰余金配当についてご教示下さい。

当社のその他利益剰余金には「配当準備積立金」および「別途積立金」があります。
当期末時点で繰越利益剰余金がマイナスになっていますが、配当可能額の要件は満たしています。

1.この場合、「配当準備積立金」および「別途積立金」を直接の原資とする剰余金の配当決議は可能でしょうか?
(別段の手続きを経ることなく、各積立金を減額し剰余金配当を行うことの可否)
2.(1.が不可能な場合)
 株主総会による剰余金配当決議の前提として、各積立金の取崩し(結果として繰越利益剰余金の増加)を機関決定する必要があるでしょうか?
3.(2.で機関決定が必要な場合)
 各積立金の取崩しは取締役会決議事項か、株主総会決議事項か
(会社法452条の「任意積立金その他の剰余金の処分」にあたるか)
 ※会社法459条の要件をみたさないため、取締役会に決議権限はありません

4.(3.で株主総会決議が必要な場合)各積立金の取崩しと剰余金配当は同日の株主総会で決議可能でしょうか?
投稿 msm | 2008年4月17日 (木) 09時21分
A4
 株主総会が、配当準備積立金・別途積立金を積んだ趣旨が何かによります。
 会社が、任意で積んだものですから、会社で決めたルールに従って取り崩してください。不明ならば、総会決議で取り崩すのがいいでしょう。
 総会で取り崩すとして、剰余金配当決議と同日に取り崩すことは可能でしょう。

Q5
 3月28日のコメントにあった、事業報告に記載する会社役員に関する事項の基準日は、確かに考え出すと悩ましいですね。
私は、条文の表現が現在進行形のものは事業年度末日現在で記載し、「当該事業年度に係る」などの文言があるときは事業年度中の異動も含めて記載すれば良いと思いますが、いかがでしょうか。
つまり、施行規則121条の2、3、8号は末日現在で記載、7号は事業年度中のものも記載、124条の1~3、5号は末日現在で記載、4、6、7号は事業年度中のものも記載、ではないかと思います。
投稿 | 2008年4月17日 (木) 16時19分
A5
 私も基本的にはそれでいいと思っています。
 本来ならば、文言通りでいいはずですが、開示の問題ですので、条文の趣旨によって、広めに開示したほうがいいかもしれませんね。

Q6
 事後設立というのは事業譲渡等に含まれるのでしょうか?
 条文上は含まれるように読めますが、会社法マスター115では事後設立は株式買取請求はできないとなっております。
投稿 kingpsa | 2008年4月17日 (木) 22時25分
A6
 事業譲渡等には、含まれません。468条の定義を見てください。

Q7
  葉玉先生、こんばんわ。司法試験の論文作成能力について質問したいのですが、葉玉先生が、ライブドアブログの時代に初心者が論文作成能力をつけるためにはどうすればよいかということを書いておられました。その中に「一日1通は典型的な問題の答案を書こう」というアドバイスがありました。

  ①この典型的な問題とは、どのレベルの問題をさすのでしょうか。具体的には初級答練・本試験レベルの答練・過去問の中でも比較的素直な形式の問題が出題されていた昭和時代の問題をさすのでしょうか。

  ②1日1問を書いていくときのやり方としては、まず
      ア該当する範囲の論証集を読み、
      イ実際に書いてみる
      ウ復習時にオウム・キリン・サイの力をつけることを意識して事案の処理方法を確認する
投稿 不孤 | 2008年4月17日 (木) 23時49分
A7
 初心者であれば、平成の始めの方や、昭和30年代のシンプルな事例がよいでしょう。
 書く方法については、おっしゃるようなやり方で結構です。

Q8
司法試験択一まで1ヶ月になりました。
これまでやってきたことを出し切るためにどのようなことをしていけばよいとかんがえますか?
答案練習で時間ぎりぎりになってしまうのですが、本番でどのようなことを意識すれば時間内におわれますか?
私は一人暮らしで食事が不規則になってしまうのですが、先生は受験時代3食ちゃんと自炊されていたのでしょうか?
投稿 受験生 | 2008年4月19日 (土) 01時34分
A8
 1 択一を、毎日、各科目20問づつ解きましょう。
 2 論文は、毎日、2通ずつ書きましょう。残り2週間になったら、答案構成を山のようにやりましょう。
3 答案が時間ぎりぎりになるのは、当然ですが、答案構成の時間を決め、何分立ったら、絶対に書き始めるのか、決めておきましょう。
4 食事は、全部外食か、弁当か、パンでした。

Q9
B社株式を所有するA社がB社の株式を更に取得する場合に、その決議を行うA社取締役会にB社の取締役を兼任しているものが出席し決議に参加することには問題はないでしょうか(既に所有していた株式の数や追加で取得する株式の数は影響するでしょうか?)?また、決議に参加させてはいけないとした場合に、A社の取締役会が定足数を満たさなくなるような時にはどのような方法で会社は意思決定を行うのでしょうか?
投稿 Hiro | 2008年4月19日 (土) 10時19分
A9
 B社の代表取締役でしょうか?平取締役ならば、利益相反取引にはなりません。

Q10
葉玉先生、こんばんは
会社法の条文の趣旨にしばしば「取引の安全」というのがでてくるのですが、取引の安全を図る、つまり取引相手の保護を図るのは単純に取引相手がかわいそうという人情的な理由からなのですか?それとも、保護しないと取引に躊躇するものが出てきて経済の発展に悪影響を及ぼすからそれを阻止するというのが1番の理由なのでしょうか?
投稿 受験生K | 2008年4月19日 (土) 17時15分
A10
会社と取引した善意の相手方が保護されないと、会社と取引をする人がいなくなります。
会社という制度自体についての信頼を保護する必要があるのです。

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2008年4月12日 (土)

監査役全国会議(内部統制)

今週の水曜日に
   第66回監査役全国会議
で講演してきました。

 この監査役全国会議は、監査役協会の主催で、全国から上場会社や非上場会社の監査役が一同に会するという会議でして、会場のパシフィコ横浜大ホールに
    3200人
もの監査役さんが集合されました。

 いやあ、3200人の監査役というのは、壮観です。
 ネクタイ姿の同年代の男性(見た感じほとんど男性でした)が3200人集まる会合というのは、この会議以外に存在するのでしょうか?

 それは、ともかく、テーマが、内部統制だったためか、皆さん、関心が高く、長時間の講演だったにもかかわらず、熱心に聞かれていました。

 まず、午前中に
  経団連の御手洗会長
が「日本的経営から世界へ」と題して、日本流のコーポレートガバナンスについてお話になりました。

 御手洗会長の講演は、経験に裏打ちされたお話で、説得的であると同時に、
   監査役設置会社への熱い思い、
   濫用的買収者に対する燃える思い
   社外取締役やアメリカのコポガバに対する冷めた思い
など、(僭越ながら)会社法の立案時の哲学と共通点が多く、非常に共感しました。
 こういうことを書くと、2ちゃんねるあたりで
   「ハダマが、経団連の手先であることを暴露」
などと書き込まれるかもしれませんが、私自身は、ずっと、会社が、それぞれの判断で、最も適切なガバナンスを構築するのが筋だと考えており、
  アメリカ的だから「善」
  日本独自だから「悪」
という視点でコーポレートガバナンスを語る風潮は、大嫌いです。

 さて、私の出番は、午後一番であり、
   金融庁の企業開示課長の三井さん
   島津製作所の常勤監査役の蛭崎さん
と一緒に
 「会社法と金融商品取引法における内部統制の今後の展開」
について語ってまいりました。

 私が会社法の内部統制について語り、三井さんが金商法の内部統制について語り、最後に、蛭崎さんの司会で、会社法と金商法の関係を議論するという、結構、面白い企画でした。

 三井課長は、法務省時代から存じ上げていますが、頭が切れるのは当然として、優れたバランス感覚と柔らかい物腰の持主であり、金融庁が公表した「11の誤解」は、三井さんならではのヒット作だと思っております。

 私が、今回、強調したのは
   内部統制は、業務の邪魔者でも、コンサルの金儲けの道具でもない。
   規模が大きくなった会社を効率的に運営にするために役に立つ道具である
ということでした。

 内部統制では、業務の従事者を縛ることばかりが強調されるのですが、会社は、暴力団でも、詐欺師集団でもなく、その活動によって、消費者、取引先、役職員等会社を取り巻く人々を幸せにするための存在です。

 ですから、
   会社の効率的な運営を手助けすること≒会社を取り巻く人々を幸せにすること
であり、内部統制も、その一つの道具に過ぎないわけです。

 従業員が少なかったときは、社長の目が行き届いていても、会社の成長とともに、社長の指示が行き届かなくなります。
 また、社長の目の届かないところで、使い込みとか、売上の水増しとか、不正が起きるようになります。
 理想に燃える孤独な社長は、考えます。
 「ああ、俺一人の力だけでは、もう、この会社をハンドリングできなくなった。なんとかしなければ。」
 そういうときに手助けをするのが内部統制なのです。

 良い内部統制システムが構築されれば、大きな会社でも、社長が、末端まで指示どおりに動かすことができるようになります。
 役員等が、役割分担を決め、それぞれの担当部門に潜むリスクについて、率直に語り合い、そのリスクのコントロールに智慧を出し合い、各担当者がそれを実行することができるようになります。
 しかも、個々の取締役や監査役の責任範囲も明確になり、自分の守備範囲をしっかりと守っていれば、不祥事が起きたときにも、責任を限定することもできます。
 内部統制というのは、本来、健全で闊達な経営に役に立つもののはずなのです。

 それが、いつの間にか、内部統制とは
    何億円、何十億円というお金をかけて
    どーでもいいようなことを文書化・IT化すること
という定義にすり替わってしまっているのではないかと思うときがあります。
 しかし、もし、そんな会社があるとすれば
     そんな内部統制システムの構築を許していること自体に
     内部統制上の重要な欠陥がある
というほかありません。

 誤解している人もいますが、4月1日から施行されている金商法には
   内部統制構築義務など存在しません。
単に内部統制の「開示」義務が定められているだけです。

 そもそも、取締役や監査役は、旧商法の時代から
   善管注意義務の内容として、財務報告の虚偽記載を防止するためものを含めて、内部統制システムの構築義務やそれを監査すべき義務を負っている
のであって、会社が、今年の4月1日に備えて、昨年から急に内部統制システムを構築しているとすれば、それは、

  「うちの会社は、今年になるまで、ずっと内部統制構築義務を怠っていました」

と自白しているに等しいのです。

 金商法が内部統制報告制度を採用してから、様々な方面(特に米SOX法崇拝論者)から流言飛語が飛び交ったため、上場会社の多くが
  新しいことをやらなければならないのではないか?
  他の会社並の内部統制を整備しないと、上場廃止になるのではないか?
等と誤解したのは、悲劇的だったと思いますが、金融審議会の議論を見れば、金商法の内部統制報告制度は、米SOX法の過剰すぎる文書化等への批判に配慮しながら形作られたものであることは明らかであり、三井課長のお言葉を借りれば
   金商法の内部統制報告制度は、J-SOX法ではなく
   ルーズSOX法、アンチSOX法
なのです。

 もちろん、今まで内部統制が不十分だった会社が、金商法を機会に
    おっと、まずい
と思って、内部統制を構築するのは良いことだと思いますが、それでも
    すでに昨年の事業報告や監査報告で内部統制について開示がされているはずなのに、ちょっと遅いんじゃないの?
という気持ちはぬぐい切れません。

 会社法の施行と金商法の施行で、企業側の対応に大きな違いがあったのは、ひとえに
    米SOX法の幻影を引きずった旗振役がいたのか、いなかったのか
の違いかもしれません。

 このブログの過去記事を見れば分かるとおり、私は、ずっと、こういうスタンスで金商法の内部統制を捉えていたので、三井課長のパネルディスカッションをやる前は
     三井課長と意見が違って
     ケンカになったらどうしよう
と心配していた(嘘)のですが、結局、
     二人とも、ほぼ同じ問題意識で、同じようなことを話し、会社法の内部統制と金商法の内部統制の考え方にも矛盾がない
ということが、はっきり分かって、安心しました。

 また、監査役の皆様が心配されている
  監査役会が作成する監査報告で、内部統制についての相当性の意見を書いた後に
  監査人(会計監査人)が内部統制監査報告で不適正意見を書いたらどうしよう・・。
  監査役の責任が追及されるのではないか。
等という「期ズレ」の問題については、正直言って
  杞憂
にすぎないと思っています。

 そもそも、今までだって、監査人による金商法監査の監査報告書は、株主総会の日だったわけで、理論的には、計算書類について、監査役の監査報告の内容と監査人の監査報告書の内容が異なることはありえたわけです。

 ただ、上場会社では、監査人と会計監査人は、同一でなければならず、かつ、会社法上、会計監査人の会計監査報告の作成後に、監査役会が監査報告を作成するので、
      同じ人が同じ計算書類について意見を述べるんだから、
      さすがに、会計監査人としての会計監査報告の意見と、監査人としての監査報告書の意見が違うことはないだろう
という信頼のもとに
  監査役は、自分の見解が、監査人の監査報告書と異なるはずがない
と思っていたわけです。

 とすれば、監査役が監査報告を作成するころには、監査人の内部統制監査も、実質的には、終了しており、
   監査法人から、内部統制監査の結果(暫定的なものですが、事実上は、最終的なものと同じ)が、監査役に報告される
のですから、その意見をベースに監査報告を作成すればよいだけで、
    別に期ズレなんか気にする必要はない
のではないでしょうか。

 また、監査役の監査報告で記載しなければならない「相当性」は
   取締役の善管注意義務違反となるような内部統制構築の不備があるかどうか
という観点から判断するものであるのに対し、監査人の内部統制監査における「重要な欠陥」は
  善管注意義務違反になるおそれがあるかどうかにかかわらず、財務報告に量的又は金額的に重要な虚偽記載が生ずる可能性があるか
という視点から判断するものです。

 「重要な欠陥」というのは、いわば
   今後の重要な検討課題
という程度のものですから
   重要な欠陥の存在 ≠ 取締役会の内部統制構築義務違反
ということを忘れてはいけません。

 基準が違うのですから、監査役の監査報告と監査人の内部統制監査報告書の意見が異なることだってありうるのは、当然です。
 大事なことは、監査役が、監査報告の中で
  内部統制監査報告で記載されるであろう「重要な欠陥」について触れ、
  「その重要な欠陥を補うために、取締役会が講じている措置が善管注意義務に照らして相当か」、「重要な欠陥をすぐに是正しないことが、経営判断の原則に照らして相当か」などを具体的に検討して、きちんと説明することだと思います。

 金商法の内部統制については、横文字や専門用語が飛び交ったため、監査役の中には
     コンサルや監査法人の言うことが理解できん。
と思われた方も多いと思います。
 でも、別に、横を縦に直したような内部統制マニュアルに怖じ気づく必要は何もありません。
 監査役が
       役職員が、経営に対する問題点の指摘を含めて、闊達に情報交換できる風通しのよい職場が構築されているかどうか
を判断する力があれば、
   SOX法を振り回して、金商法の内部統制を語る専門家
よりも、ずっと内部統制について評価する能力があるはずです。
 
 今回のパネルディスカッションは
    監査役が感じていた「もやもや」を吹っ飛ばし
  監査役が、監査人との間で情報交換をする中で、内部統制について、自信をもって、自分の意見を監査人にぶつけることができる勇気を与える
ものだったのではないかと思います。

(質問コーナー)
Q1
葉玉先生はじめまして。大学四年生のロースクール受験生です。
検事として活躍されていたということで先生にお聞きしたいのですが、検察官になるためにはどうすればいいのでしょうか。重要なのは司法試験の成績ですかそれともやはり官僚の世界と同じで東大卒とかの人が多いのでしょうか。
私はずっと検事になりたいと思って勉強してきましたが、やはり東大じゃなかったらなれないのではないかと不安になってしまいました。実際検事は修習でも結構人気があるでしょうし。
検事になりたいという思いは誰にも負けないと思っています。今はロースクール入試で精一杯ですが、何か検事になるために出来ること・心がけることがあれば教えてください。アドバイスお願いします。
投稿 あざらし | 2008年4月 6日 (日) 00時20分
A1
検事になるのに、東大かどうかは関係ないんじゃないでしょうか。
新任検事でも、東大卒じゃない人は沢山います。
司法試験の成績も、あまりに悪いとまずいかもしれませんが、むしろ与えられた事件を掘り下げていく意欲とか、粘り強い取調べとかの方が重要でしょう。
 検事になりたいのならば、修習中に「強く希望」した上で、与えられた事件を一生懸命捜査してください。

Q2
ご教授ありがとうございます。
>普通、会社は、訴えないでしょうから
会社(他の社員の多数)としては払い戻したくなく、そんな社員は排除したいと考えた場合を想定しています。
もし出資払戻拒否→強制執行と言う流れになればそれが既に普通でないので、859の訴えもあり得ない事ではありませんよね。
定款に576の事項しか記載していない合名・合資会社でも、582や859によって、面倒ではあっても実質的に払戻を制限する余地があり、それならば624で払戻を強制する意味はどこにあるのかという疑問なんですが・・・何だか堂々巡りになってますね。すみません。
投稿 ひで | 2008年4月 7日 (月) 09時12分
A2
 ひでさんのような使い方をする人だけのために法律があるわけではありません。
特定の使い方をベースにするのではなく、いろいろな使い方があるということを理解するとよいでしょう。

Q3
マスター115と100問の上手な使い方教えてください。
投稿 かつ | 2008年4月 7日 (月) 12時29分
A3
マスター115は、基礎知識の習得と、知識の整理用です。あまり「論点」は掲載されていません。
100問は、会社法上の論点の理解と、択一的知識のチェック用です。

Q4
会社合併に関する質問をさせてください。
一般に、吸収合併の場面で、吸収合併消滅会社の最終計算書類の承認はどのように行えばよいのでしょうか?
当然、消滅会社は既に存在していなので、消滅会社の株主も居ないことになりますが。
存続会社の株主総会(または取締役会)で承認手続きを経るべきなのか、消滅会社の最終計算書類については、特に承認手続きは不要なのか、ご教示ください。
投稿 法律屋 | 2008年4月 8日 (火) 12時00分
A4
承認手続はありません。

Q5
葉玉先生
現在,修習生の者です。会社法とは関係ありませんが,「供述の信用性」について教えていだきたいことがあります。
葉玉先生は検事として「供述の信用性」についてどういう注意則をもって臨まれていましたか(また,裁判官や弁護人としてどう臨むべきでしょうか)。
私はAなりVなりの供述を裏付ける客観的な証拠がない場合や複数人のそれぞれの供述が互いに相容れない場合に,この人の又はどちらの供述を信用してよいものかよく分からないで悩んでいます。供述と矛盾しうるいろいろな可能性を考えて,この可能性は合理的なものかを考えて悩んでしまいます。いろいろな本(司法研修所が出している法曹会の本など)を読んでも,なかなかしっくりくるヒントが得られません。
投稿 ポイント | 2008年4月 8日 (火) 23時57分
A5
 全ての面において、完全に正確な供述は、存在しません。
 嘘を言っている、勘違いしている、記憶が修正された、表現力がない等の理由により、すべての供述には、不正確な点があります。
 大事なことは、なぜ食い違いが起こるのかを考えることです。食い違いが起こる理由が分かれば、どの供述が信用できるかが分かります。
 次に、とことん具体的な事実を聞くことです。罪体に直接関係のない事実でもいいので、犯行に至る経緯や犯行後の状況等について、とことん具体的な事実を聞くと、必ず何らかの裏付けが取れるものがでてきます。それが出てくれば、その人の供述の信用性は高いですね。

Q6
株主総会議事録の作成時期について質問させてください。株主総会議事録の作成時期について、会社法318条、会社法施行規則72条ともに明示しておりません。しかし、会社法318条2項は、株主総会の日から議事録を本店に備え置かないといけないと定め、さらに罰則規定もあります。(976条)このことから考えると、株主総会議事録は株主総会の日から作成されている必要があると考えました。ただ、実務上、議事録を総会の日から作成していることは時間的な関係で困難かと思いますが、どう考えればよいのでしょうか?ご教授ください。
投稿 maru | 2008年4月 9日 (水) 00時13分
A6
 遅滞なく作ればよいです。

Q7
初めまして。
私はやっと会計士補から公認会計士になったものです。
私自身、来年からロースクールを経て弁護士になる予定ですが、
公認会計士持ち弁護士の体験談などが掲載された書籍等があれば
読んでおきたいと考えております。
葉玉先生からみて勉強になると思われる書籍をご紹介してください。
投稿 パン | 2008年4月 9日 (水) 02時13分
A7
すいません。知りません。

Q8
千問の種類株主総会の項についてお尋ねします。
千問104頁のQ142に対するAで、「譲渡制限株式を有する種類株主の持株比率が侵害されるおそれがある場合(204項4項等)」とあります。
204条4項は株主割当の失権の規定ですが、この規定と種類株主の持株比率の低下はどのように関連するでしょうか。
また、ここでいう「持株比率」とは議決権比率のことでしょうか。A種無議決権株式を発行している会社が新たに定款を変更のうえB種無議決権株式を発行する場合は「侵害する場合」に該当しないと考えてよいでしょうか。A種無議決権株式が取得条項により普通株式に転換可能であるかどうかで結論は異なりますか。
投稿 きょん | 2008年4月10日 (木) 11時53分
A8
204条4項は、なんかの誤植っぽいですね。何を引くつもりだったんだろう。
持株比率は、持株比率(種類株主総会における議決権比率)です。無議決権株式は、株主総会の議決権がないだけで、種類株主総会の議決権はあります。ここで、問題にしているのは、当該種類株主総会における議決権比率である持株比率です。
A種とB種の話は、具体的な条項によって、結論が違います。「侵害する」場合もあるでしょう。

Q9
配当限度額についてご教示いただきたく。
期末時点の資本金・準備金の合計額がのれん等調整額を上回っており、期末日後に資本金等を取り崩して資本剰余金に振り替えたことで、減資後の資本金・準備金がのれん等調整額を下回った場合、配当限度額がどのように考えるのか疑問があります。会社計算規則では、のれん等調整額の規制における資本金・準備金は「事業年度末日における」金額がベースになると明記されていますので、減資によって増加した資本剰余金は全額配当可能な剰余金と考えられるのでしょうか。又は、当該規制の主旨からすると、減資後の資本金・準備金の額をベースにのれん等調整額にかかる限度額規制を適用すべきなのでしょうか。
よろしくお願いします。
投稿 へう | 2008年4月10日 (木) 22時20分
A9
 なかなか難しいところですが、減資によって増加した資本剰余金は全額配当可能と読むのが素直だと思います。

Q10
民法の不法行為について質問です。JRの過失により京葉線の全線が一日運休し、その影響で東京ディズニーランドのその日の売り上げが半減した場合、JRは東京ディズニーランドに対して不法行為責任を負うのでしょうか?
投稿 ただし | 2008年4月10日 (木) 22時40分
A10
 具体的な名前が出すぎていて、答えられません。

Q11
現在、取締役会を設置しない会社の設立を、お手伝いしております。
取締役会を設置しない場合、代表取締役の選任と解任は、株主総会で行うことになると思うのですが、その場合、法341条が適用されると考えてよろしいのでしょうか。
法329条の「役員」には代表取締役が含まれておらず、他に取締役会を設置しない会社の代表取締役に関する規定が含まれていないため、質問をさせて頂きました。
大変基本的な質問で、お忙しい中申し訳ありませんが、ご教授頂けるよう、お願い致しま
投稿 駆け出し法律家 | 2008年4月11日 (金) 14時48分
A11
代表取締役の選任・解任とは、何のことを言っているのでしょうか。
代表権の付与・剥奪のことであれば、349条3項だと思いますが。

Q12
譲渡制限株式を、会社の承認を得ずに譲渡した場合の、対会社間の効力についてですが、「対会社間では無効」とすべきなのか、それとも、「会社に対して対抗できない」とすべきなのかを教えてください。
前者は判例であり、後者は法務省の見解であるとのことなのですが、法務省の見解が明らかな誤りであるとの話を聞きました。
2条17号の定義では「取得について承認を要する」とされているため、承認なしでは当然無効である。というのがその論拠のようです。
ここで、未熟な私は非常に悩んでいるのですが、そもそも、「対会社間で有効である」と、「会社に対して対抗できる」の違いがわかりません。
両者が明確に区別されるのであれば、「対会社間で有効であっても会社に対抗できない場合」というのはあるのでしょうか。「対会社間で無効な場合は、当然会社への対抗問題には至らない」というのはわかります。
また、「当事者間では有効だが、対会社間では無効」と、「当事者間では有効だが、会社に対して対抗できない」の違いがわかりません。
投稿 上野 | 2008年4月11日 (金) 21時19分
A12
 理論的で言えば、
「会社に対して対抗できない」というのは、会社が対抗要件を主張せずに、その効力を認めることができるということ、
「対会社間では無効」というのは、会社側から、その取引を有効と認めることができないということ
です。
 「法務省の見解」というのは、存在しないと思いますが、「会社に対して対抗できない」という表現は、誤りではありません。私は、理論的には、対抗できないと考える方が妥当であると思います。
 2条17号は、取得について承認を要すると書いているだけで、承認がない場合の効果については、何も書かれていません。だからこそ、当事者間では有効という論理も出てくるのです。

Q13
監査役に対する取締役会への招集通知もれがあった場合、において監査役が欠席した場合、当該取締役会決議は無効となりますよね。
 それでは、招集通知があったが監査役が欠席した場合、取締役会決議の効力はどうなるのでしょうか?単なる、監査役の任務懈怠の問題にすぎないのでしょうか?ご教授ください。
投稿 maru | 2008年4月11日 (金) 22時45分
A13
 手続は適法です。

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2008年4月 5日 (土)

会計監査人に関する事項

そろそろ事業報告の内容が気になる季節です。

今日は、

3月9日の記事(http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_aeb6.html)で触れた
会計監査人にかんする記載事項

について、回答を訂正するとともに、補足的に解説をしたいと思います。

まずは、問題の記事を再掲しましょう。
「Q8
会社法施行規則126条(会計監査人設置会社の特則)についてです。
弊社は前回の定時株主総会の終結のときをもって会計監査人が任期満了により退任し、同株主総会で新しい会計監査人を選任し現在に至っております。
この場合、当事業年度の事業報告には、新旧両方の会計監査人について記載が求められるのでしょうか? それとも、「新」だけの記載でよいのでしょうか?
(以下略)
投稿 ツェーベーツェー | 2008年3月 4日 (火) 18時48分」
Q8
9号を除き、事業報告作成時点の会計監査人、すなわち、「新」だけだと思います。
会計監査人は、当然再任が原則なので、任期満了というのは、不再任の決議をしたか、辞任されたか、どちらか(たぶん、後者)だと思います。」

この回答は、それなりに悩んで書いたのですが、ある人から

「事業報告は、事業年度に関するものだから、事業年度中に在任していた会計監査人については、新旧両方とも書くべきではないでしょうか」

と言われました。

 それで、さらに色々と考えた上、先ほどのQ8を

「会計監査人に関する事項ついては、当該事業年度に在職した会計監査人はすべて含みます。したがって、新だけでなはなく、旧(定時株主総会で退任した会計監査人)についても、事業報告に記載してください」

と回答を修正します。

 さて、このような疑問が生じる第1の原因は、「事業年度」と「就任退任の時期」がずれるからです。
 たとえば、3月末決算会社ですと、次の3つの時期に別れます。

平成19年4月1日  事業年度開始
   ↓A時点
平成19年6月27日 定時株主総会
   ↓B時点    
平成20年3月末   事業年度末(決算日)
   ↓C時点
平成20年5月    事業報告作成

 会社役員(取締役・監査役等)にせよ、会計監査人にせよ、基本的には、定時株主総会で選任され、また、退任します。
 たとえば、平成19年6月27日の定時株主総会で、それまでの会社役員や会計監査人が退任して、新会社役員や会計監査人が選任されれば、平成20年3月期の事業年度(A時点+B時点)には
  A時点 旧会社役員・旧会計監査人
  B時点 新会社役員・新会計監査人
という新・旧2組が存在することになります。

 このうち、会社役員については、現行の会社法施行規則119条で
 「直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していたものであって、当事業年度の末日までに退任したものを含む。」
という規定があるため、
 A時点の旧会社役員は含まない。
 B時点の新会社役員は、仮に、B時点の途中で辞めても含む(事業年度末以降のC時点で辞めても、当然、含む)。
ということが明確です。

 したがって、現行法では、旧会社役員に対して支払った「報酬等」は、事業報告から除外することになります(ただし、退職金については、「重要な事項」(118条1項)として開示すべきであると言われています。)
 このように「旧会社役員」について、事業報告から除外するのは
  「旧会社役員に関する事項は、退任するときの株主総会(前回の株主総会)で質問する機会があったのだから、すでに会社役員でなくなっている今年の定時株主総会のために、今更、開示する必要はない。」
という理由です。

 なお、3月決算会社では、来年の事業報告から適用される改正会社法施行規則では、規則119条が改正されて、先ほどの限定が取れましたので、一般的には、会社役員に「旧会社役員」も含まれることになりました。
 ただし、新規則121条1号で、会社役員に
「(直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していた者に限る。次号、第三号、第八号及び第九号並びに第百二十八条において同じ。)」
という限定をつけ、開示事項ごとに
  旧会社役員を除くもの(1号、2号、3号、8号、9号、128条)
  旧会社役員を含むものの(それ以外)
という整理をしたので、たとえば、「当該事業年度に係る会社役員の報酬等」(6号)は、旧会社役員を含むものに変わりますが、「1号、2号、3号、8号、9号、128条」については、今年と同じ取扱いです。

 このように会社役員については、旧会社役員が除かれているのですが、会計監査人については、現行規則119条のような限定がされていません。

 したがって、事業報告の対象となる事業年度に在任した会計監査人であれば
   B時点(新会計監査人)のみならず、A時点(旧会計監査人)も事業報告による開示の対象となる
と解するのが素直ですし、今回、私も、そのように回答を変更しました。

 では、なぜ、前回、私は、旧会計監査人については、開示の対象とならないと答えたのでしょうか。
 その理由は
① 旧会社役員と同様、旧会計監査人についても、「前回の定時株主総会で辞任したのだから、今更、今年の定時株主総会で開示する必要はない」という理屈は当てはまる
② 次のような会計監査人に関する事項は、「現時点」(事業報告作成時点)のことを記載するものと考えるのが素直であり、すでに退任している旧会計監査人について、現時点の情報を記載するのは不自然。
  「会計監査人に対して非監査業務の対価を支払っているときは、その非監査業務の内容」(規則126条3号)
  「会計監査人が現に業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者であるときは、当該処分に係る事項」(同5号))
  会計監査人と当該株式会社との間で責任限定契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要(同7号)
③ 会計監査人の職務は、事業年度中にもあるが、メインは、事業年度後の会計監査及び会計監査報告の作成である。会計監査報告を作成しない旧会計監査人に関する事項を開示する必要性は9号に掲げる事項以外あまりない。

というものです。
 以上述べたことを突き詰めて考えていくと、本当は、A時点でもB時点でもなく、C時点(現在)の会計監査人について開示すればいいのではないかとも思いますが、まあ
 「当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額」(2号)
という開示事項があるので、B時点(+C時点)の会計監査人は対象になると考えるべきだろうということで、「新会計監査人だけで足りる」と回答しました。

 それを、今回、熟慮の上、回答を訂正したのは、このブログの昨年3月23日の記事
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/2_fdcf.html
との整合性を保つ方がよいと思ったのが、ひとつです。
「Q5
事業報告の会計監査人に関する記載について質問です。
ある株式会社(大会社・公開会社・有報提出会社・3月決算)の会計監査人Aが2006年7月1日に業務停止の処分を受けて資格喪失により退任したため、当該会社は同日付でいわゆる一時会計監査人Bを選任しました。
質問1:この場合、2006事業年度に関する事業報告に記載する会計監査人(施行規則126条1号)は、1)Bだけ、2)Bだけ、但しAについて注記、3)AとB両方を在任期間毎に記載、等が考えられますが、どれが適切なのでしょうか。2006事業年度に在任した会計監査人を記載すると考えれば3)が妥当に思えますが、実務上2006事業年度の監査業務は2006年7月からスタートし、A会計監査人は2006年事業年度の監査には一切タッチしていなかったとすれば、1)か2)でもよいように思えます(但し業務停止という事情ですから、少なくとも注記は必要と思われますが。)。サミー先生はどのようにお考えでしょうか。
質問2:A会計監査人について、126条5号または6号による記載は必要でしょうか。
質問3:126条8号イの報酬は、A会計監査人に対するものも(もしあれば)記載が必要でしょうか。
投稿 丸坊主 | 2007年3月21日 (水) 16時02分
A5
質問1 A、Bともに記載する必要があります。
質問2 必要です。
質問3 必要です。」

このQ5の会計監査人は、「7月1日に資格喪失」ということなので、実は、今回の質問の対象となっているA時点の旧会計監査人ではなく、定時株主総会の終結後に資格を喪った会計監査人(B時点の会計監査人であって、B時点で会計監査人ではなくなったもの)です(会社役員でも、7月1日に首になれば、開示の対象になります)。

 ただ、3月23日の質問の会計監査人は、事業報告作成時には、会計監査人ではないにもかかわらず、その会計監査人についても事業報告の対象となると回答しているのですから、規則126条3号、5号、7号等の記載事項は、なんとか書けるはずであるという前提で、3月23日の回答は書かれたはずです。

 とすると、今回の質問の対象となっているA時点の旧会計監査人を事業報告の対象としても、なんとか事業報告は作成できるはずであり、そうであるならば、開示を充実させるという観点や、119条で会社役員に付されている限定が、会計監査人にはないことを考慮して

 「旧会計監査人も、事業報告の対象となる」

と回答を訂正しました。

 もっとも、実際の記載にあたっては、規則126条の解釈に工夫が必要で、たとえば、次のような解釈になるのでしょうか。詳しいことは、知り合いに聞いて確認したうえで、ブログのネタにしましょう。

  3号は、旧会計監査人に対して非監査業務の対価を支払っていたときは、その非監査業務の内容
  5号は、旧会計監査人が、A時点で、現に業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者であるときは、当該処分に係る事項)
  7号は、旧会計監査人と当該株式会社との間で責任限定契約を締結して「いた」ときは、当該契約の内容の概要

本日は、会計監査人の記載事項について、細かいお話をしました。
この手の話では
   A時点やB時点では、会社役員・会計監査人ではなかったC時点で会社役員・会計監査人になった者(補欠役員や、一時会計監査人)は、事業報告でどう記載すべきか
という問題がありますが、本日は疲れましたので、次回にお話しします。

(質問コーナー)
Q1
 いかなる「事業」を行うかを「公示」するのが「目的」を公示する意味であるはずです。「当会社は、次の事業を営むことを目的とする。」の答えが「事業」とは、木で鼻をくくったような答えであり、何のための公示であるのか意味をなしません。そのような公示を認めるのであれば、そもそも「目的」を登記事項から外すべきであり、会社法の基本設計が体をなしていないことになります。
  「具体性」は、登記官の審査の対象から外されたとはいえ、登記は、「取引の安全」のための重要な公示制度であり、「目的」は、重要な要素です。ロースクールの「教科書」として用いられるのであれば、極論に走り過ぎないように、お願い致します。
 「事業」を受理するような登記所は、皆無であると思います。
投稿 内藤卓 | 2008年3月29日 (土) 00時35分
A1
 具体性が要件ならば、審査の対象となるはずであり、要件なのに、審査の対象から外す理由はありません。
 要件ではないから、審査の対象にならないのです。
 「商業」「商行為」でもよいというのは、パブコメでも触れられていますし、「事業」でもよいというのは、会社法の成立後に、明示的に議論された上で、採用された見解であり、極論ではありません。
 むしろ、「公示」概念から具体性を求める見解は、会社法の解釈を誤まった方向に導くおそれがあります。

 なぜ「事業」だと公示の要請を充たさないのでしょうか?
 公示というのは、本来、事実をありのまま、公けに示すことです。
 発起人が集まって、どんな事業をやるか決めて、定款に書けというルールのもとで、そのときに、「なんでもやろう」と決めたら、「すべての事業」と書けばよいはずです。
 この場合に、一つ一つ具体的な事業をすべて列記しなければならないというルールは、会社法のどこを見ても書かれていません。商業登記法にも書かれていません。
 しかも、そのように列記しなければならないとすると、登記簿で何頁にもわたって事業が記載され、登記簿を閲覧する人は、かえって見るのが大変で、公示の機能が害されるのではないでしょうか(笑)。
 具体的だから、公示の目的を果たすことができるというのは、根拠なきドグマ以外の何物でもありません。
 日本語として意味が通じる(明確性)のならば、公示の目的を果たすことはできます。
 「事業」とすれば、権利能力の制限をすることができませんから、取引の安全はむしろ高まります。リスクを負うのは、会社であり、公示を見る方ではありません。

Q2
外国会社の登記(933条2項)について質問させてください。
933条2項では、2項3号・4号における公告方法、2項5号・6号・7号における公告方法を登記すると定められています。
 この点、2項3号・4号における公告方法に加えて、2項5号・6号・7号における公告方法を登記する理由をご教授ください。
投稿 maru | 2008年3月29日 (土) 20時06分
A2
 それぞれの公告事項について、公告すべき根拠が違うからです。

Q3
募集新株予約権の割当てについてですが、払込期日までに新株予約権者が全額の払い込みを行わない場合、当該新株予約権者は当該新株予約権を行使できない(会社法246条3項)となっています。
この場合、同法287条の「新株予約権を行使することができなくなったとき」に該当して、当該新株予約権は消滅するのでしょうか?
投稿 dizzy | 2008年3月31日 (月) 10時40分
A3
 新株予約権の行使の余地が全くないならば、消滅します。
 そうでないならば、消滅しません。

Q4
3月9日にQ9・10の質問に答えて頂いたものです。修正版の答えまで出していただきありがとうございました。
合同会社について質問があります。629・633・636条1項で違法配当等が行われた場合において業務執行者は配当等をうけた社員と連帯して金銭を支払う義務があり、2項で総社員の同意があれば一部免除できるとあるのですが、ここで免除できるのは業務執行者の義務のみと考えていいのですか?また、この場合配当等をうけた社員の義務は例外なく免除できないと考えるのですか?
投稿 受験生K | 2008年3月31日 (月) 16時27分
A4
痛いところなのですが、2項で免除できるのは、業務執行社員の義務と考えるべきです。
また、配当を受けた社員の義務については、本来、免除について制限規定がないことからすると、免除できると解するのが素直なのですが、そうすると、違法配当の返還義務を認める趣旨からすると免除できないと解するのでしょう。

Q5
ひでは、定款に576の事項のみを記載する合資会社ひでに、100万円出資したものの、自分の借金の返済にこまって、とりあえず、合資会社ひでから100万円採りたいと思いましたが、社員たる地位就中定款に定めた出資の価額100万円に応じた配当請求権と1人1票の意思決定権を維持したいので退社による持分払戻ではなく、624の出資の払戻を請求しました。
この時会社が859の訴えを起こして認められれば、ひでの所期の目的は破れます。と言う事は結局、出資を払い戻して退社せずに済ませるには会社の理解と協力がなければならないわけです。
であればはじめから出資の払戻をするかどうかを会社の任意とするのと同じではないでしょうか。法律上の原因としては「会社は出資の払戻をすることができる」で十分でしょうから、何故624でわざわざ強制しているのかがわからないんです。
払戻請求者の排除に一定のブレーキをかけるという程度の話なんでしょうか。
投稿 ひで | 2008年4月 2日 (水) 10時08分
A5
普通、会社は、訴えないでしょうから、そうすると、お金の動きに出資の払戻という意味を持たせること自体に意味があります。出資の払戻でなければ、貸付になるでしょうし。

Q6
私はロースクール卒業後、企業内弁護士もしくは企業の法務部で働きたいと思っています。
そういう場合でも、まずはどこかの法律事務所で実務経験を積んだほうが良いのでしょうか?
また、企業内弁護士の現状について教えてください(アバウトで申し訳ありません)。
投稿 下郎 | 2008年4月 2日 (水) 22時00分
A6
 法律事務所に入って企業内弁護士になる方もいれば、その逆もいらっしゃいますね。
 どちらが良いというようなことではないでしょう。

 企業内弁護士の現状を一言で語るのは難しいですが、数は相当増えていると思います。
 在籍されている部署は、法務部が多いのは事実ですが、それに限りませんし、仕事の内容も、会社によって全然違います。
 ただ、多くの会社では、「企業内弁護士」としてではなく、「弁護士資格を持っている社員」として働くことが期待されているのでないかと思います。

Q7
葉玉先生のお薦め又はお好きな映画ベスト3を教えてください
投稿 ポレ | 2008年4月 3日 (木) 10時33分
A7
 ベスト3ですか。そのときの気分によって変わるものの
 「ベニスに死す」
 「禁じられた遊び」
 「カリオストロの城」
かなあ。どれも結構古いですね。
 でも、「ディーバ」も捨てがたい。

Q8
金融機関に勤務しているものです。
会社法における関連当事者の注記は、銀行の単体ベースで記載する必要があります。銀行の住宅ローンについては、子会社の信用保証会社が保証する仕組みになっているのが普通ですが、関連当事者の注記としてその保証を受けている金額を開示する必要はあるのでしょうか。
特段保証料を優遇しているわけではないので、開示不要と判断しているのですがいかがでしょうか。
投稿 TOEFL大好き | 2008年4月 5日 (土) 12時05分
A8
重要性が欠けるので、開示不要でしょう。

Q9
基本書には、100%減資を行なうには全部取得条項付株式を利用すると書かれていますが、100%減資を取得条項付株式により行なう事はできないのでしょうか?
投稿 ただし | 2008年4月 5日 (土) 19時41分
A9
 全員が同意すれば、やれます。

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