「株主の権利の行使に関し」
NHKのインサイダーとか言いたいことがいくつかあるのですが、モリテックスをきっかけに論じようとしていた120条1項の解釈について、早く書けというリクエストが来たので、そちらを書きます。
さて、モリテックスの件について伸ばし伸ばししていたところ、商事法務1823号で、尊敬する中村直人先生が非常にわかりやすい論文を書いてくださいました。
(中村先生の論文は、いつも判例と実務の両面に配慮があり、一番、胸に落ちます。)
この論文は、ぜひ株主総会の実務に携わる方は呼んでいただきたいのですが、私自身の解釈は、もう少し、保守的(君子危うきに近寄らず)という部分がありますので、そのあたりを中心に論じたいと思います。
モリテックス事件は係属中の事件なので、あまり詳しく立ち入りはしませんが、要するに
議決権を行使した株主にクオカードを贈呈する行為を利益供与と認定した
判例です。
このクオカード贈呈は、他の会社でもやっている行為なので、ドキッとしている会社さんもあるでしょう。
この判例は、そうした会社のことに配慮して、なんでも利益供与になるとは論じていないものの、その理論構成は
原則 議決権を行使した株主に利益を供与するのは、株主の権利の行使に関し、利益を供与したこととなる
例外 ①当該利益が株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づき供与され、②額が社会通念上許容される範囲のものであり、③株主全体に供与される総額が会社の財産的基礎に影響を及ぼすものではないときは、違法性が阻却される。
という構成をとっています。ようするに
「他の会社さんは、例外に該当するから、安心していいよ。でも、モリテックスは、例外にあたらないから、原則どおり、利益供与だよ」
と言ったわけです。
私は、その基準自体には文句はないものの、原則例外パターンで説明されると、実務的には、怖くて、議決権行使の促進のためのクオカード贈呈は、できなくなりそうな気がします(個人的には、別にやってほしいとも思いませんが)。
私は、こうした議決権行使者に対する金券の贈呈の趣旨には、
1 会社が、会社提案に賛成してもらう、または、白紙票を会社票にするという目的
(株主の権利の行使に影響を及ぼす目的)
2 定足数を満たす目的
3 単なる社会的儀礼(わざわざ株主総会にきていただいたり、議決権行使書面を送っていただいたり、お手間を取らせました。これは、ほんの気持ちですという感じ)
の3種類があると思います。
このうち1の株主の権利の行使に影響を及ぼす目的が、駄目なのは当然です。
これは「株主の権利の行使に関し」に該当します。
モリテックス判決が、この目的を認定した上で、利益供与を認めたのならば、何の問題もありません(実際、事実認定では、そのように読めます)。
ただ、もしそうならば、「例外」なんて作る必要はなかったように思います。
問題なのは、2の定足数確保目的です。
モリテックス判決の例外要件の①を読むと、定足数確保目的であったとしても、「株主の権利の行使に関し」という要件に該当すると考えた上で、例外的に違法性を阻却するとも読めます。
しかし、私は、この解釈は、利益供与罪の成立範囲を広げすぎるのではないかと懸念するのです。
もちろん、株主総会決議取り消しの訴えの前提となる解釈と、利益供与者の民事責任の解釈と、利益供与罪という刑事罰の解釈は、理論的には、別々でもかまいませんし、実際、裁判所が、民事だけは、こんな感じで解釈するよと割り切ってくれるのならば、それはそれでいいのですが、「権利の行使に関し」という文言は同じで、規制する行為も同じなのに、本当に、民事と刑事で、解釈を区別してくれるとは思えません。
そして、刑事事件の場合に、構成要件に該当したにもかかわらず、法律に明文のない違法性阻却事由で無罪を勝ち取るというのは、相当困難な荒業というほかなく、私が、検事ならともかく、弁護士としては、「その法律構成はやめてほしいなあ」という気持ちになってしまいます。
そうした下心は別として、利益供与禁止規定の立法趣旨から考えれば、会社が、定足数確保の目的のみ有し、株主が、提案に賛成するか反対するかになんら影響を与えるつもりがないのならば、そもそもそれは「株主の権利の行使に関し」という要件を欠くと解釈すべきではないかと思います。
たしかに、表面だけみれば、議決権の行使に関して利益を供与しているように見えますが、本来、利益供与は、株主の権利について
会社に有利になる(たとえば、会社提案への賛成、株主提案への反対又は棄権)
ようにしてもらう場合を想定した規定なのですから、中立的な目的しかない場合には、「株主の権利の行使に関し」という要件に該当しないと解するのが素直なのではないでしょうか。
こう考えるならば、モリテックス判決のように「例外」を置く必要はないように思います。
とはいえ、議決権行使書面には、会社提案に有利に働くような文言が書かれているのが普通であり、どんなに会社が弁解しようとも、プロキシーファイトになったあとに、
「私は、株主権の行使に影響を与えるつもりはありませんでした」
というのは、なかなか難しいです。
また、私の解釈は、決して異端ではないと思っていますが、やはり「議決権の行使」の対価として利益を供与することの怖さは残ります。
ですから、個人的には、議決権行使者だけに何か配るのは、基本的には避けたほうがいいというのが本音です。
すでに実務上、結構、行われているので、大丈夫だろうとタカをくくっていると、怖いのです。もしかしたら、制限速度50キロの道路を55キロで走っているのかもしれません。今、警察に捕まらないからといって、将来、警察に捕まらないという保障はできないからです。
それでも、どうしても、議決権行使者に何かを配りたいのならば、社会的儀礼の趣旨でやるか、自社製品を送って販促目的でやるのがよいのではないでしょうか。そして、株主提案がされたときは、潔く、「今年はやらない」と決断するのが、安全です。
一票でも欲しい会社にとって厳しいことをいうようですが、その「一票でも欲しい」という気持ちが、まさに「株主の権利の行使に関し」ということです。
(質問コーナー)
Q1
新会社法100問(2版)p.136の12行目で、現物出資の不足額てん補責任について、
「取締役が善意『無重過失』であることを立証した場合には、213条の責任を負わないこととされている(213条2項2号)」
と記述があります。
そこで213条2項2号を見ると、「無重過失」ではなく、「注意を怠らなかったこと」を証明した場合に免責されると規定されています。
なぜ、「無過失」ではなく、「無重過失」と解されたのでしょうか?
根拠となる条文や考え方があればぜひお教えください。
(神田先生の教科書は「無過失」と書いており、江頭先生の本には無過失か無重過失かについて言及はなく、条文どおり書かれていました。)
投稿 受験生 | 2008年2月10日 (日) 17時15分
A1
すいません。213条の責任は、無過失です。筆がすべったようです。
Q2
強盗罪についてヘンな質問をした者です。
質問させていただいた場面は「哀れみからの交付」事例とは異なります。補足してもよいですか?
①まず、超基本的なことなのですが、236条の解釈で問題となる「被害者の反抗」とは、何に対するものなのでしょうか。(A)加害者の暴行脅迫行為それ自体に対するもの (B)加害者の財物奪取意思および、その手段としての暴行脅迫行為 に対するもの のどちらかだと思います。私はシンプルに(A)と解すべきだと思います。実務上はどうなのでしょうか。
②私は、上の(A)説を前提に、「強盗罪の実行行為といえるためには、被害者の反抗を抑圧する必要はないが、財産処分に関する自由意思を抑圧しなければならないのではないか」と考えています。以下に、その推論過程を示しますので、おかしいところを突っ込んでいただけますか?
「窃取と強取は、ともに財産に対する罪の実行行為だ」→「明文上でわかる両者の違いは、暴行脅迫を伴うか否かである」→「しかしひったくりが窃盗罪となることからもわかるように、暴行脅迫の有無それ自体が、両者の分岐点となるわけではない」→「かといって、判例に従えば、『被害者の反抗を抑圧した状態』の有無で区別するわけでもない。財産に対する罪の要件なのだから、単なる暴行脅迫との関係を問題としないのは納得できる」→「ならば、暴行脅迫によって、被害者の財産処分に関する意思を抑圧するのが強取。強取以外の方法で、被害者の財産処分に関する意思に反するのが窃取だと区別するのではないか」
投稿 らくだ | 2008年2月10日 (日) 22時33分
A2
強盗罪と窃盗罪は、ともに被害者の意思に反して財物の占有を移転する行為です。
したがって、強盗罪の反抗抑圧は、財物の占有移転の意思を抑圧することです。
Q3
司法試験の勉強を再開するに当たり、もう一度入門講座から聞きなおそうと思っています。そこで質問なのですが、入門講座期の復習はどのようにすればよいとお考えですか。
また、自分が聞きなおす入門講座(通信)の担当講師は「復習はしなくてよいのでとにかく講義を早く消化すること(最長でも3ヶ月)が重要である。復習は論文や択一の問題を解きながら行うのが効果的である」との立場ですが、これについて葉玉先生はどうお考えですか。
検事への任官について伺いたいのですが、弁護士任官の制度で弁護士から検事に任官した場合は任期があるのでしょうか。それとも望めば定年まで勤務できるのでしょうか。
投稿 不孤 | 2008年2月10日 (日) 23時31分
A3
入門講座に限らず、復習と演習は必須です。入門講座のレベルにもよりますが、まったく復習なしで択一はきついかもしれません。むしろ、講義を聴きながら、後で何回も繰り返してみることができるノートを作っていくことが重要です。
わからなくても一回終えること、そして、先に進んでいくことも必須です。
検事に任期はありません。ただ、肩たたきはあります。
Q4
そもそも今回のようなグリーンメーラーによる買収に、濫用目的や企業価値の毀損があるのでしょうか?買った株を高く売りたいのだから、むしろ企業価値を高めたいのではないかと思うのですが・・・。
投稿 会社法で迷子。 | 2008年2月11日 (月) 08時31分
A4
グリーンメーラーは、株を高くして、それを会社に買い取ってもらうため、他の株主が損をするので濫用的です。
Q5
624条2項の規定による定款の定めを何もしていない持分会社は、同条1項の請求に、A応じなければならない・B応じてはならない・C任意のいずれでしょうか。
Aなら582条や859条が骨抜きになるのでは?
Bならそう明示しないのはなぜ?
Cならなぜ「会社は・・・できる」としないのか?
基本的な読み方が判っていないせいならすみません。
投稿 ひで | 2008年2月11日 (月) 20時23分
A5
出資の払い戻しに応じなければなりません。
582条は、出資の目的100万円と定められている以上、100万円払えということです。
その人が、10万円出資の払い戻しをしたら、出資額が90万円になりますから、90万円の範囲で出資はされているので、624条と矛盾するわけではありません。
Q6
早速ですが、本日(2月12日)のダスキン訴訟最高裁判決について質問というか、ご意見を伺いたいです。今帰ってきたばかりで詳細を調査中なのですが、原告の106億円の賠償請求はどれくらいの算定で導かれたのでしょうか?
株式投資をしたことのない素人なので、ちょっとこの金額にはびっくりというか、アメリカであったクリーニング屋の賠償ウン億円とかいう事件を思い出してしまいました・・。
ブログのネタとしてでもいいので、取り上げてくれたらうれしいです。自分でも新聞や最高裁HP等で調べてみます。
投稿 be scrivener | 2008年2月12日 (火) 22時20分
A6
日本の損害賠償制度では、違法行為がたいしたことではなくても、損害額が膨らむことはあるのです。
損害の中身は判決をみてください。
Q7
会社法386条1項につき、質問させてください。
会社法386条1項が、旧商法275条ノ4の改正により、被告たる取締役について「取締役であった者を含む」としました。
このことにより、旧商法274条ノ4前段につき、最判平成15年12月16日民集57巻11号2265項(平成18年重判:民事訴訟法2)の判示は、先例的意義がなくなったといっていいのでしょうか。
同最判は、農協の理事に対する訴えの事例で、農協法39条2項により、商法274条ノ4が準用される事例でした。
判決文では、「退任取締役が前段の規定中の「取締役」に含まれると解するのは文理上困難」としていますが、この解釈は、新会社法下では、会社法386条1項により不可能であると思案しています。
なお、この改正の趣旨は、馴れ合い防止なのかなと考えています。
A7
先例的意義はなくなったと思います。
Q8
「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」(施行規則126条4号)は,
内容を変更することがなくても,毎年,監査役会や取締役会で
決議しなければならないのでしょうか。
もし,決議しなければならないのであれば,
取締役会は,事業報告に関する決議でまとめてできますか。
でも,監査役会はそういう機会がないので面倒だなぁと思っています。
投稿 はる | 2008年2月13日 (水) 23時48分
A8
方針自体は、毎年決議する必要はありません。
存在しているものを書くということです。
Q9
葉玉先生はじめまして。
今日(というかさっき)、名古屋で先生のセミナーを拝聴しました。
どちらかというと中央三井さんのセミナーはつまらないことが多いのですが、今回はとても楽しかったです。
実は、司法書士をしている父親に、「会社法であそぼ。」がおもしろいから見てみろとずっと前から勧められていたのですが、私には敷居が高い気がして今まで遊びに来たことがありませんでした。
今回お話を聞いて、弁護士先生という人たちに対して持っていたイメージが覆りました。今後は敬遠せずにお邪魔しようと思います。
投稿 ちづる | 2008年2月13日 (水) 16時53分
A9
寒いところをお越しいただきありがとうございました。
ブログは、難しい話もありますが、根があまり敷居の高くない人間なので、適当にブログで遊んでください。
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コメント
Q1の質問者です。
お答え頂き、どうもありがとうございました。
投稿: 受験生 | 2008年2月15日 (金) 02時06分
持分会社の出資払戻につきご教授ありがとうございます。
ご教示の例で、払い戻した10万円について582条や859条を適用する余地はないと言う事でしょうか。
そうすると極端な話、出資をした翌日に全額または1円のみを残して払い戻す事にも応じる義務があり、利息損賠除名は問題にならないと言う事でしょうか。
また時期や額を問わず、会社にキャッシュがない場合は、払戻をするには借り入れせざるを得ず、その弁済責任は結局社員個人に来る(580)と言う理解でよろしいか。
投稿: ひで | 2008年2月15日 (金) 09時48分
初めて質問させていただきます。
社外監査役の適格性についてです。
会社法第2条16にある社外監査役の定義において、支配人その他の使用人に、とあります。じつは現在当社の顧問を一年やっていた者を社外監査役にという話があり検討しています。この顧問は実質名ばかりでこの間なにもしてはいません。また顧問契約は結んでいますが、あきらかに雇用契約ではありません。弁護士、会計士などの顧問の場合は社外監査役の適格性はあると読んだことがありますが、今回の顧問(実質のともわない)の場合はどうでしょうか。なお
当社は大会社、非公開会社、監査役4人(うち2人が社外、非常勤)の会社です。私は、今回のケースは会社と使用関係はなく社外の適格性あり、と判断していますが、人により、なにがなんでも会社と関係があれば社外ではない、と言う人もおり、先生のご意見をお尋ねするしだいです。 よろしくお願いします。
投稿: 平野 敦司 | 2008年2月15日 (金) 10時07分
あざーす。
主観的要件の要否や位置付け(構造論)について、おもう所がありましたので、お勉強になりました。
地方の小さなロースクールの一学生で、入学して初めて六法を買った可愛らしい僕ですが、八法がだいぶ見えてきました。
前、純粋未修入学をされようと計画されてる方がいらしましたね。脅す訳じゃないけど、純粋未修は相当覚悟がいりますので頑張りましょう(実際、未修入学者のうち、純粋未修者の数は少なかったりしますしね)。あと、教え方の上手な先生がいるロースクールに行けば、合格に近づくんだろうと思います。葉玉ティーチャーが、お勉強方法について話される時、必ずと言っていい程、『教え方上手な人の必要性』が出てきますよね。まぁ、どこに教え方上手な教授や実務家がいるのかは知りませんが。。。
投稿: しょ | 2008年2月15日 (金) 11時36分
(実は)120条の解説の続きをお待ちしておりました。
私も葉玉先生とおおむね同様の考えを持っていますが、なかなか論文に書く時間がなくて・・ 間もなく活字になるある拙稿の中で、「120条の適用範囲を不当に拡大させないためには、同条1項が禁止する行為は社会的妥当性を欠くものに限定されるというべきである。」と問題提起しておきました。
投稿: 大杉謙一 | 2008年2月15日 (金) 12時13分
強盗罪でつまづいていた者です。ご回答のおかげで、かなり頭が整理できました。
ご回答の内容は
①強盗罪も窃盗罪も、被害者の意思に反して財物の占有を移転する行為である
②強盗罪の「反抗を抑圧」とは、「財物の占有移転の意思を抑圧すること」である
③強盗罪の「反抗を抑圧」は、被害者が反抗する意思を現に有していなくとも可能
と理解しました(「反抗を抑圧」の具体的内容を説明しない教科書等が多く、困っておりました。ありがとうございました!)。
これを踏まえ、「反抗を現実に抑圧することの要否」に関する見解を整理すると、
A)反抗の抑圧に足りる程度の暴行脅迫あれば、現実の抑圧なくとも、強盗未遂罪が成立するほか、財物の占有移転さえ認められれば強盗既遂罪も成立するとの見解
B)反抗の抑圧に足りる程度の暴行脅迫があれば、現実の抑圧なくとも強盗罪の実行着手を認める一方、強盗既遂の要件としては、反抗の現実の抑圧が必要とする見解
C)反抗の現実の抑圧がなければ、強盗罪は未遂罪も既遂罪も成立し得ないとする見解
が考えられます。最判昭和24・2・8は、A)と理解されているようですが、B)を否定しているのでしょうか。C)を否定していることは明らかですが、実務上一般的な解釈は、A)B)いずれでしょうか(A説から「強取」の意義を説明するのは無理があるのでB説が妥当ではないかと思うのですが)。
あと、「憐れみからの交付」という論点は、Ⅰ反抗の現実の抑圧が強盗既遂の要件か否か、Ⅱ要件だとして、憐れみの心情が伴う場合にも抑圧を認めうるか、の二つに分けて考えるべきなのでしょうか?
度々の投稿で申し訳ありません。236条の要件や論点相互の関係を整理できず、理解が安定しないのです。
投稿: らくだ | 2008年2月15日 (金) 13時15分
初めて質問させて頂きます。組織再編における債務承継の仕組み(分割の場合と合併の場合の違い)について、千問の932を読んで以下のように理解したのですが、合ってますでしょうか?
分割における債務の承継は免責的債務引受の一種である。この場合の債権者保護手続は、免責的債務引受に対する債権者の承諾に相当する。従って、不当に個別催告を欠いた場合には、分割会社は引き続き債務を負う(並存的債務引受となる)。759Ⅱ,Ⅲはこの趣旨を明文化したものであり、不法行為債権者に対する個別催告を欠いた場合にも同様に解すべきである。
これに対して、合併における債務の承継は相続に類似する包括承継であり、債権者の承諾の有無を問わず、債務は当然に承継される。従って、不当に個別催告を欠いた場合にも、債務承継の効果に影響はなく、合併無効の訴えをなしうるに留まる。合併無効が認められた場合、遡及効が否定されていることから、旧会社による債務引受を要する(新会社を免責するためには債権者の承諾が必要)。
投稿: moltu | 2008年2月15日 (金) 19時49分
取締役の利益相反取引のうちの間接取引(356条1項3号)には、ある人(X)が兼任取締役(代表取締役ではない)となっている二つの会社(A社とB社)が取引する場合も含まれると考えてもよろしいのでしょうか。Xと、その属する会社(AとB)は法主体としては別個であり、A社とB社は「取締役以外の者」といえ、両社にとって3号の間接取引に当たるようにも思うのですが、いかがでしょうか。この場合はやはり2号の直接取引に当たると考えた方がよろしいのでしょうか。
投稿: ta | 2008年2月16日 (土) 02時22分
葉玉先生、はじめまして。
私は昨年にロースクールに未修生として入学し、今春2年生になります。
この1年で一通り六法(商法は会社法のガバナンスだけなのですが)を修了したので、
旧司法試験にチャレンジしてみたい、という気持ちになり、今は択一の勉強をしています。
しかし、私は論文答練をうけたことがありません。
周りのみんなは、答練を受けたことがないのに、
しかも必ずしも旧試合格に直結しない学習に時間を取られるローの講義を受けつつ、
たった200人の合格者枠に食い込むのは至難の業だ、といいます。
確かに、私はゼミを組んで答案を書くということしかやったことがありません。
合格者以上の能力を持つ人に答案を批評していただいたことはないのです。
予備校の答練を受けずとも、論文を書く訓練は合格に十分な程度に行えるものなのでしょうか。
投稿: miche | 2008年2月16日 (土) 02時52分
はじめまして。いつも楽しく記事を読ませていただいています。今年の新司法試験の受験者で、合格に向けて日々勉強中です。
失念株に関して質問させて下さい。
株主名簿の名義書換が未了の状態で、株主割当による募集株式が発行された場合、株主割当を受ける権利が、譲渡人、譲受人のどちらに帰属するか、という論点があります。
ここで質問なのですが、どちらかの説を採ることによって、結論がどのようなに異なってくるのでしょうか?
株主割当を受ける権利は会社に対する権利なので、譲渡人に帰属しようが、譲受人に帰属しようが、あまり結論に差異はないのでは?と思ってしまいます。譲受人に帰属するとする説も、譲渡人が払込をすれば、結局、譲渡人が株主になるといいますし…。
株式の譲渡の効力に関して、「会社に対しては無効であるが、当事者間では有効」という論証がありますが、私自身この意味に関して理解が不足しているからかもしれません。
基本的な質問、かつ、つたない質問の仕方で恐縮ですが、よろしくお願いします。
お体に気をつけて、これからもブログを更新し続けて下さい。失礼します。
投稿: クローバ | 2008年2月16日 (土) 14時23分
新会社法100問につき質問させていただきます。
問94の解答例の二2(二)に「・・・甲会社が乙会社の株式を有してる場合においても、乙会社は自己の株式の割り当てを受けず・・・」とありますが、この部分は「・・・甲会社が乙会社の株式を有してる場合においても、甲会社は自己の株式の割り当てを受けず・・・」が正しいのではないでしょう?
投稿: TF | 2008年2月16日 (土) 16時31分
葉玉先生、初めまして。
決議取消しの訴えについて質問させてください。
①百選45事件にもあるように、自分自身は招集通知を受け取っている丙が、他の株主である甲に対する招集通知手続の法令違反を根拠に決議取消の訴えを提起することが出来るとする見解が判例・通説だと思います。
②他方、議決権を行使することが出来ない株主は決議取消しの訴えの提訴資格は有しないというのが通説だと思います。
そこで疑問なのですが、議決権を有しない株主は、他の議決権を有する株主への通知を欠くことを理由に決議取消の訴えを提起することが出来るんでしょうか?
これまでは②の話を①の前提として考えていました。しかし、①の論点では「決議取消の訴えは」「株主総会の公正を確保するためのものであるから」(新100問240頁から引用しました)という理由付けは決議取消の訴えについての性質からの論証ですからあらゆる取消事由についても妥当すると言え、またこの理由付けは議決権の有無にかかわらずあらゆる株主に妥当すると思います。そうであるなら、②の論点は(少なくとも決議取消しの訴えに関しては)不要と言えそうです。
しかし、私のもっている基本書では②と①の関係を明確に整理している物がなかった(読み解くことが出来なかった)ので、混乱しています。
どうぞ、よろしくお願いします。
投稿: mino | 2008年2月16日 (土) 20時47分
葉玉先生、こんばんわ。度々の質問に答えていただきありがとうございます。自分なりに考えた結果、司法試験を目指すことにしました。
そこで伺いたいのですが、自分は一度司法試験を中断する前に某予備校の入門・論文・択一の基幹講座を受講していました(しかし、受講していたとはいっても「ただ聞いていただけ」に近い状態です)が、もう一度入門講座から聞きなおした方がよいでしょうか。商法・会社法及び行政法については新たに入門講座を受講する必要があると思っています。
申し訳ございませんが、宜しくお願いいたします。
投稿: 不孤 | 2008年2月17日 (日) 00時43分
葉玉先生こんにちは。
合同会社における超過配当の処理について質問です。
会社法は、623条2項を合同会社では適用しない(630条3項)としていますので、合同会社の会社債権者は、社員に直接超過額を請求できないようにする趣旨といえます。
しかし、630条2項によって、株主に支払いを請求する際、債権者代位権一般の場合と同様、会社が受領拒絶する場合があるので、債権者は自己への支払を請求できるように思います。
そうすると、630条2項の趣旨を没却してしまうのではないでしょうか。
630条2項の場合は、債権者が自己への支払いを請求できないと解釈すべきなのでしょうか。
宜しくお願いします。
投稿: 受験生A | 2008年2月17日 (日) 16時35分
誤記の訂正です。
誤)そうすると、630条2項の趣旨を没却してしまうのではないでしょうか。
正)そうすると、630条3項の趣旨を没却してしまうのではないでしょうか。
投稿: 受験生A | 2008年2月17日 (日) 16時38分
2月2日のQ1の質問をした者です。
お答えいただき、ありがとうございました。
御礼が遅くなり、失礼いたしました。
お忙しいとは思いますが、このブログを頼りにさせていただいておりますので、
これからも更新頑張ってください。
投稿: senchuan | 2008年2月18日 (月) 17時43分
こんにちは。いつも楽しく拝見させて頂いております。
今回は会社法についてではないのですが、裁判員制度のことでお尋ねします。
新聞で19の裁判所で模擬裁判を実施したところ、判決が無罪から懲役14年までバラつきが出たという記事を読みました。
刑事裁判に当たりはずれがあることになるのか?と心配ですが、サミー先生はどうお考えですか?
投稿: 春吉 | 2008年2月18日 (月) 17時54分
利益供与について、とてもわかりやすかったです!
法律家の文章はこういうものなのかあ、と思いました。
先生は昨年、新試験の後、「受け控え百害あって一利ナシ」と
おっしゃっておられました。
大変お恥ずかしいことながら、自分は、未修で昨年択一落ちで
今年も大して実力&択一の点も伸びませんでした。
そういう者の二度目の挑戦について、どのようにお考えですか?
二度目の受け控えは、一度目の受け控えとは意味が違いますか?
最終段階まで基本を詰める猛勉強&先生のオススメの演習は続けます。
でも、どうしても210点を超えなさそうならば、
今年はやめた方がいいのかな、とも薄っすら思う訳です。
アドバイスよろしくお願いします。
投稿: | 2008年2月19日 (火) 10時34分
いつも有意義に拝読しております。
今日は、会社法とはまったく関係のない質問なのですが、条文の読み方についてご指導いただければと思って、書き込みさせていただきます。
刑訴法60条1項3号
「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
警職法2条1項
「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」
という条文の読み方が不明です。
日本語的には「逃亡〔する〕とき」「何らかの犯罪を犯〔す〕と疑うに足りる~」というのが正しい気がするのですが、意味的には「逃亡〔した/している〕とき」「何らかの犯罪を犯〔した/している〕とき」という方がしっくりきます。
会社法の立案に携わった方として、こういった条文の読み方にもお詳しいものと思い、畑違いとは存知ながらぶしつけにも質問させていただきました。
ご教授いただければ幸いです。
投稿: 雪小坊主 | 2008年2月19日 (火) 18時12分
葉玉先生
いつも楽しく記事を拝読しております。
大変基本的な質問で恐縮ですが、資本金・準備金の額の
減少について定めた会社法447条3項、及び448条3項が
実際にどのような場合に用いられるのかが分かりません。
会社法100問や神田先生・江頭先生の基本書を調べたのですが
現実の会社でどういった場合に447条3項・448条3項が
用いられるのか、については記述がございませんでした。
社会人であれば常識に属する事項なのかもしれませんが……。
お忙しいところ恐縮ですが、ご教示頂ければ幸いです。
投稿: 受験生 | 2008年2月20日 (水) 10時33分
いつもご丁寧にご回答いただき、ありがとうございます。
商事法務No.1824(2/15号)を見ての質問です。先生の著による電子化実務対応の件でなく、会社法施行規則ほか改正の件です。(申し訳ありません)
会社法施行規則128条(事業報告の附属明細書)についてです。
弊社(A社)はC社の完全子会社であり、B社も同様にC社の完全子会社で、A社とB社は同一の部類の事業を営んでいます。なお、AB両社の代表取締役が各々相手方の取締役(非常勤)に就任しています。
1.A社の代表取締役がB社の取締役(非常勤)に就任していますが、この件について、「B社における業務執行権限がない場合、A社の事業報告の附属明細書に施行規則128条1号の規定による記載は不要」との認識でよろしいでしょうか?
2.A社とB社間において取引が存在する場合、B社の代表取締役がA社の取締役に就任していることから、施行規則128条2号の「第三者との間の取引であって、当該株式会社と会社役員…(中略)…との利益が相反するものの明細」として、当該取引の明細を記載する必要がありますでしょうか?
3.今回の改正案によると、施行規則128条2号に当たる部分が削除されるようですが、これは同じく今回改正される予定の計算規則140条(関連当事者との取引に関する注記)との関係によるものなのでしょうか?
以上、よろしくお願いいたします。
投稿: ツェーベーツェー | 2008年2月20日 (水) 16時08分
私はロースクール卒業後、芸能・放送関係の分野で活動したいと思っているのです。そのためにロースクールでは、選択科目やインターンなどはどのような点に注意すればよいでしょうか?
またそのような分野に強い法律事務所とかはありますか?
投稿: ハチベエ | 2008年2月20日 (水) 18時55分
はじめまして、質問させてください
発行可能株式総数についての条文である37条と98条についての質問なのですが、募集設立の場合に株式会社設立の時までに発行可能株式総数を決めるのは創立総会のみですか?それとも創立総会と発起人全員のどちらかですか?
基本的な質問ですがよろしくお願いします
投稿: みるきん | 2008年2月21日 (木) 23時44分
葉玉先生はじめまして。
私は高校を一年生を二度経て、この春高校3年生になるクロといいます。
小学校6年生の頃から弁護士になりたいと思い続けて、
とうとう来年の春に大学受験を控えています。
そこで質問なのですが、
高卒でも受験資格のあるロースクールなんてところはあるのでしょうか。
弁護士を目指すことで莫大な学費がかかることは
頭では理解していたつもりですが
いざ目の当たりにすると、とてもじゃありませんが
親に甘える気にはなれずにいます。
今までは大学四年間でしっかりと法学を学んで、ゆくゆくはロースクールへ。
なんて思っていたのですが
もしあと一年、死ぬほど勉強をして入学資格のあるロースクールがあるならばと
考えてしまいました。
本当に無知な質問でお恥ずかしいのですが
もしよろしければ、お返事を頂けたら、本当に嬉しく思います。
投稿: クロ | 2008年2月22日 (金) 02時48分
こんにちは。
質問があります。
本日22日の日経1面の、「働くニホン」という記事の冒頭に紹介されている事例を読んで気になったのですが、従業員に対して株価値下がりによる損失の一部を会社が負担する制度は違法ではないのですか?
他にも、従業員は一割引きで株を買える制度を聞いたことがあります。
このような制度は法律上問題ないのでしょうか(例えば株主平等原則違反や違法配当等)?
投稿: 受験生 | 2008年2月22日 (金) 14時53分
葉玉先生こんにちは。
早速で恐縮ですが、総会で解散決議をして清算手続に入る会社は、新たな契約を締結をすることはできますでしょうか?
たとえば、子会社が解散する場合において、親会社に清算事務局業務(官報公告の手配、債権者への通知、登記申請準備など)を委託し、事務委託料を支払う(一括前払い)というようなことは可能でしょうか?
もろもろの理由で、親会社のスタッフが一切を取り仕切っているというような場合、タダというわけにもいかないようですので・・・。
ご教示いただけましたら幸甚に存じます。
投稿: 必ず清算する人 | 2008年2月22日 (金) 21時20分
葉玉先生、こんにちは。
今年の春に大学を卒業予定の者です。
今年の旧試験で最終合格するつもりなので、
試験を受けるにあたり、
なにか励ましのお言葉をいただけないでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。
投稿: marbury v. madison | 2008年2月22日 (金) 21時55分
葉玉先生、はじめまして
取締役会の定足数について質問があります。
最判昭41・8・26では、「取締役の定足数は現存する全取締役の員数を基礎として算定すべきであって、特別の利害関係を有する取締役の員数を控除して算定すべきではない」旨判示されています。
しかし、369条1項の「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し」と規定されています。
これは、特別の利害関係を有する取締役は定足数から控除されると読めると思うのですが、昭和41年判例との整合性はどのように解すればよろしいでしょうか?
基本書や百選・ネットを読み漁ってみたのですが、私の調査能力が及びませんでした。
もしよろしければ、ご教示いただけましたらと思います。
失礼いたします。
投稿: メガネ | 2008年2月24日 (日) 22時39分
初めて質問させて頂きます。
議決権行使に対する物品提供について
「2 定足数を満たす目的」というものを指摘されておりますが、
この定足数を満たす目的であれば許されるかどうか、という
ことについては、「定足数を満たさないよう流会にする目的」
という反対派の意思も想定されるところです。そうしますと、
形式的には委任状獲得合戦がなくとも、「権利行使に関し」
に該当するという推定が覆るとまではいえず、利益供与に
該当するおそれがあるとも考えられますが、いかがでしょうか。
投稿: Kazu | 2008年2月25日 (月) 16時19分
isologue(イソログ)経由ネタですが
レクシスネクシス・ジャパンの「Business Law Journal」創刊号に
葉玉匡美先生の「買収防衛策の策定の要点」が載ってますね。
詳しくは↓公式サイトで。(目次だけですが)
http://www.businesslaw.jp/contents/
と、勝手に宣伝しちゃいましたが
葉玉先生の最近記事で、改めてどんな内容なのか
説明あるかもしれませんが、一応、このブログ読者の
皆さんに速報(?)という形でお知らせしておきます。
葉玉先生以外の記事でも面白そうな記事が結構ありますね。
投稿: ポップン | 2008年2月25日 (月) 17時55分
取得条項付株式について質問です。
当該株式の一部を会社が別に定める日に取得するとする場合の取得条項として、以下のような定め方は可能でしょうか?
「当会社は、平成20年4月1日以降、毎年取締役会の定める日に
B種優先株式の一部を取得することができるものとし、取得の対象となる株式は
取締役会の決議により適宜定める。」
1.一部を取得する場合の取得対象の株式を取締役会の裁量で定めてよいかという点
2.「会社が別に定める日」としてこのような定めが適法であるかという点
について、それぞれ確信がもてずにおりますので、ご教示いただきたく
お願いいたします。。
投稿: ハヤ | 2008年2月25日 (月) 19時18分
株主提案権について質問です。
305条の議案要領通知を取締役に対して請求した場合、かかる請求は、304条の議案提出を兼ねるのでしょうか(そもそも304条は「株主総会において」議案を提出することができると規定されていますが、これは総会に出席して総会の場で議案を提出しなければならないという意味なでしょうか)。
投稿: P | 2008年2月29日 (金) 23時52分
葉玉先生質問です。
商号変更と新株発行について、教えてください。H20.10に商号変更する企業がありますが、H21.1に株券は電子化されること及び上場証券取引所の規則により、H21.3まで旧商号の株券が流通適格物件として扱われるため、引き換えを行わない予定です。
上記の場合において、H20.10からH20.12までにおいて、旧商号の株券が満欄等により再発行請求があった場合ですが、もとあった状態に戻せば足りるものと考え、旧商号の株券を交付することは、会社法上問題がありますか?新商号の株券を交付する必要がありますか?
投稿: 会社法おたく | 2008年4月12日 (土) 19時52分
事後設立というのは、事業譲渡等に含まれるんでしょうか?
条文上は、事業譲渡等に株式買取請求権が認められていますが、会社法マスター115の本によると、事後設立には株式買取請求権が認められないとなっています。
また、本によって、ここが認められると認められないと分れております。よろしければ、教えていただけますでしょうか?
よろしくお願いします。
投稿: kingpsa | 2008年4月17日 (木) 18時10分