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2008年2月27日 (水)

失念株主に対する配当

ご無沙汰しておりました。
この2週間、ブログを書かねば、と思いながら、本当に「たった1時間の暇もない」というくらい働かざるをえず、午前2時に帰っては、疲れて寝るという繰り返しでした。

さて、久しぶりに午前0時に帰宅したので、何か書こうとしたところ、質問コーナーに質問が溢れており、それだけで気力を使い果たしそうです。

それでも、もうひと踏ん張りがんばります。

先日、商事法務で「電子化3連発」という感じのタイトル(もっと真面目なタイトルだったと思います)で連載をしていて、放送株等の外国人制限銘柄について考える機会がありました。

 若干、マイナーではありますが、株主名簿というものが考えるきっかけには、もってこいの題材なので、本日は
  外国人制限銘柄で、失念株主である外国人に配当をすることができるか
という点について触れたいと思います。

 放送会社は、外国人の持株比率が20%を超えると、放送免許が取り消されてしまいますので、上場株式を発行している一般放送事業者が、総株主通知に基づいて外国人の名義書換をした結果、欠格事由に該当することとなるときは、株主名簿の名義書換を拒むことができることとされています。

 株券の電子化後は、外国人が名義書換を拒否された場合であっても、振替口座簿上の口座には記録が残っていますから、その外国人が株式を失うことはありません。

 しかし、当該外国人は、株主名簿への記載を拒否されているため、原則として、自己が株主であることを発行会社に対して対抗することができません(会社法130条1項)。
 要するに、失念株主ですから、議決権や剰余金の配当など基準日を設定して付与される株主の権利の取得を主張することはできないわけです。

 もちろん、一般的には、放送会社が、失念株主に対し、対抗要件が欠けていることを主張せず、任意に株主と認めることは許されています。しかし、、放送会社が、名義書換を拒否した失念株主である外国人を株主として認めてしまうと、欠格事由に該当してしまうので、実際には、そのような取扱いをすることはできません。

 では、放送会社が、議決権は与えないけれども、剰余金の配当をするということができるのでしょうか。

 これを認めるためには、まず、会社法において、失念株主について、議決権との関係では株主と認めないが、剰余金の配当との関係では株主として認めるということを会社法130条1項が許容しているものと解釈しなければなりません。

こうしたことができるかどうかについて、基本書等には書いてないのですが、一般的には、株主平等の原則を貫徹しながら、そのような行為を行うことは難しいだろうと思います。

 もちろん、会社が、対抗要件の欠缺を主張するかどうかは、会社の裁量に委ねられるますから、合理的理由があれば、議決権については対抗要件の欠缺を主張して、失念株主による議決権行使を拒みつつ、剰余金の配当請求権については対抗要件の欠缺を主張せず、失念株主にこれを認めるということも直こうちに妨げられるものではないと考えられないわけではありません。

 しかし、特定の失念株主にのみ配当を認めるのは、株主平等の原則に反すると考えるのが通説であるため、この失念株主である外国人に対する配当を認めるとすると
 (1)失念株主である外国人と、失念株主である外国人の平等
 (2)失念株主である外国人と、それ以外の失念株主との平等
の両方を考えて配当せねばならず、結局、基準日後に失念株主が次々と配当請求をしてきたら、実務は回りません(特に(2))。

 また、ある事業年度において、失念株主に対して一切権利行使を認めていなかった会社が、別の事業年度には、剰余金の配当についてのみ権利行使を認めるような行為は、取締役会の恣意的な判断が介在する余地があり、また、基準日の名義株主に不測の損害を与えるおそれがあります。特に、株券の電子化後においては、失念株主である外国人に対して配当すれば、配当総額が増加するため、一般株主は
 「失念株主である外国人に配当するくらいなら、剰余金として残しておけ」
と思うでしょう。

 そう考えると、少なくとも株券の電子化後は、失念株主である外国人への配当というのは、基本的には止めた方がよいように思います。

 もう一つ気になるのは、議決権のみ制限して、配当を支払う行為が、放送法第52条の8第2項の趣旨に反すると監督官庁に言われないかという点です。

 放送法第52条の8第2項の名義書換拒否は、「そもそも株主として認めない」という制度であるのに対し、いわゆる間接保有外国人株主の増加によって欠格事由になることを防止するための第52条の8第3項は、「議決権のみを制限する」という制度です。

 このように、放送法が、外国人の議決権制限だけを目的としているのならば、同条2項も、3項と同じように議決権制限にすればよかったのに、あえて、名義書換拒否制度を残したということは、「そもそも株主として認めない」という点に意味があるからなのでしょう。

とすると、一般放送事業者が、名義書換を拒否した外国人に剰余金の配当をして、議決権のみ制限したのと同様の効果を生じさせるのは、52条の8第2項の趣旨から許されるのかという問題を生じさせてしまい、ちょっと怖い感じがします。

このように、あれこれ考えると、失念株主である外国人への配当というのは、理論的にはありえないわけではないものの、実際には、難しいように思います。

(質問コーナー)
Q1
持分会社の出資払戻につきご教授ありがとうございます。
ご教示の例で、払い戻した10万円について582条や859条を適用する余地はないと言う事でしょうか。
そうすると極端な話、出資をした翌日に全額または1円のみを残して払い戻す事にも応じる義務があり、利息損賠除名は問題にならないと言う事でしょうか。
 また、時期や額を問わず、会社にキャッシュがない場合は、払戻をするには借り入れせざるを得ず、その弁済責任は結局社員個人に来る(580)と言う理解でよろしいか。
投稿 ひで | 2008年2月15日 (金) 09時48分
A1
一旦出資している人の払戻を制限したければ、定款で制限すればよいだけのことです。
人的会社ですから、翌日に払い戻しを請求する人は、そもそもいない方がよいのではないでしょうか。なお、出資の減少については、583条2項の責任は生じます。
 後段のご質問は、借り入れせざるえないわけではないです。金銭の調達は、借り入れだけではないので。ただ、開き直って放っておけば、払戻請求をした者は、会社財産を差し押さえて、強制執行するということになるでしょう。

Q2
社外監査役の適格性についてです。
会社法第2条16にある社外監査役の定義において、支配人その他の使用人に、とあります。じつは現在当社の顧問を一年やっていた者を社外監査役にという話があり検討しています。この顧問は実質名ばかりでこの間なにもしてはいません。また顧問契約は結んでいますが、あきらかに雇用契約ではありません。弁護士、会計士などの顧問の場合は社外監査役の適格性はあると読んだことがありますが、今回の顧問(実質のともわない)の場合はどうでしょうか。なお
当社は大会社、非公開会社、監査役4人(うち2人が社外、非常勤)の会社です。私は、今回のケースは会社と使用関係はなく社外の適格性あり、と判断していますが、人により、なにがなんでも会社と関係があれば社外ではない、と言う人もおり、先生のご意見をお尋ねするしだいです。 よろしくお願いします。
投稿 平野 敦司 | 2008年2月15日 (金) 10時07分
A2
 「顧問」が本当に名ばかりならば、社外性の要件はみたすでしょう。

Q3
 強盗罪でつまづいていた者です。ご回答のおかげで、かなり頭が整理できました。
 ご回答の内容は
①強盗罪も窃盗罪も、被害者の意思に反して財物の占有を移転する行為である
②強盗罪の「反抗を抑圧」とは、「財物の占有移転の意思を抑圧すること」である
③強盗罪の「反抗を抑圧」は、被害者が反抗する意思を現に有していなくとも可能
と理解しました(「反抗を抑圧」の具体的内容を説明しない教科書等が多く、困っておりました。ありがとうございました!)。
 これを踏まえ、「反抗を現実に抑圧することの要否」に関する見解を整理すると、
A)反抗の抑圧に足りる程度の暴行脅迫あれば、現実の抑圧なくとも、強盗未遂罪が成立するほか、財物の占有移転さえ認められれば強盗既遂罪も成立するとの見解
B)反抗の抑圧に足りる程度の暴行脅迫があれば、現実の抑圧なくとも強盗罪の実行着手を認める一方、強盗既遂の要件としては、反抗の現実の抑圧が必要とする見解
C)反抗の現実の抑圧がなければ、強盗罪は未遂罪も既遂罪も成立し得ないとする見解
 が考えられます。最判昭和24・2・8は、A)と理解されているようですが、B)を否定しているのでしょうか。C)を否定していることは明らかですが、実務上一般的な解釈は、A)B)いずれでしょうか(A説から「強取」の意義を説明するのは無理があるのでB説が妥当ではないかと思うのですが)。
 あと、「憐れみからの交付」という論点は、Ⅰ反抗の現実の抑圧が強盗既遂の要件か否か、Ⅱ要件だとして、憐れみの心情が伴う場合にも抑圧を認めうるか、の二つに分けて考えるべきなのでしょうか?
 度々の投稿で申し訳ありません。236条の要件や論点相互の関係を整理できず、理解が安定しないのです。
投稿 らくだ | 2008年2月15日 (金) 13時15分
A3
 Aでしょう。理論的にはBもありえますが、財物を交付しているのに、反抗抑圧がない場合という事実認定はほとんどありえません。

Q4
組織再編における債務承継の仕組み(分割の場合と合併の場合の違い)について、千問の932を読んで以下のように理解したのですが、合ってますでしょうか?
分割における債務の承継は免責的債務引受の一種である。この場合の債権者保護手続は、免責的債務引受に対する債権者の承諾に相当する。従って、不当に個別催告を欠いた場合には、分割会社は引き続き債務を負う(並存的債務引受となる)。759Ⅱ,Ⅲはこの趣旨を明文化したものであり、不法行為債権者に対する個別催告を欠いた場合にも同様に解すべきである。
これに対して、合併における債務の承継は相続に類似する包括承継であり、債権者の承諾の有無を問わず、債務は当然に承継される。従って、不当に個別催告を欠いた場合にも、債務承継の効果に影響はなく、合併無効の訴えをなしうるに留まる。合併無効が認められた場合、遡及効が否定されていることから、旧会社による債務引受を要する(新会社を免責するためには債権者の承諾が必要)。
投稿 moltu | 2008年2月15日 (金) 19時49分
A4
合併無効の効果は、843条です。その他は、まあそんな感じでしょうか。

Q5
取締役の利益相反取引のうちの間接取引(356条1項3号)には、ある人(X)が兼任取締役(代表取締役ではない)となっている二つの会社(A社とB社)が取引する場合も含まれると考えてもよろしいのでしょうか。Xと、その属する会社(AとB)は法主体としては別個であり、A社とB社は「取締役以外の者」といえ、両社にとって3号の間接取引に当たるようにも思うのですが、いかがでしょうか。この場合はやはり2号の直接取引に当たると考えた方がよろしいのでしょうか。
投稿 ta | 2008年2月16日 (土) 02時22分
A5
説例の場合、会社の相手方が当該会社の取締役ではないので、直接取引には該当せず、通常は、間接取引にも該当しません。

Q6
私は昨年にロースクールに未修生として入学し、今春2年生になります。
この1年で一通り六法(商法は会社法のガバナンスだけなのですが)を修了したので、
旧司法試験にチャレンジしてみたい、という気持ちになり、今は択一の勉強をしています。
しかし、私は論文答練をうけたことがありません。
周りのみんなは、答練を受けたことがないのに、
しかも必ずしも旧試合格に直結しない学習に時間を取られるローの講義を受けつつ、
たった200人の合格者枠に食い込むのは至難の業だ、といいます。
確かに、私はゼミを組んで答案を書くということしかやったことがありません。
合格者以上の能力を持つ人に答案を批評していただいたことはないのです。
予備校の答練を受けずとも、論文を書く訓練は合格に十分な程度に行えるものなのでしょうか。
投稿 miche | 2008年2月16日 (土) 02時52分
A6
答案を書いたことがないのに合格する確率は、宝くじを1枚買って100万円があたる確立くらいでしょうか。

Q7
失念株に関して質問させて下さい。
株主名簿の名義書換が未了の状態で、株主割当による募集株式が発行された場合、株主割当を受ける権利が、譲渡人、譲受人のどちらに帰属するか、という論点があります。
ここで質問なのですが、どちらかの説を採ることによって、結論がどのようなに異なってくるのでしょうか?
株主割当を受ける権利は会社に対する権利なので、譲渡人に帰属しようが、譲受人に帰属しようが、あまり結論に差異はないのでは?と思ってしまいます。譲受人に帰属するとする説も、譲渡人が払込をすれば、結局、譲渡人が株主になるといいますし…。
株式の譲渡の効力に関して、「会社に対しては無効であるが、当事者間では有効」という論証がありますが、私自身この意味に関して理解が不足しているからかもしれません。
投稿 クローバ | 2008年2月16日 (土) 14時23分
A7
会社法100問を読んでもらいたいのですが、株式の割当を受ける権利は、名義株主である譲渡人しか行使できませんし、払込をすれば、一旦は、譲渡人が株主になります。後は、譲受人がその株式の引き渡しを請求することができるかというだけの問題です。

Q8
新会社法100問につき質問させていただきます。
問94の解答例の二2(二)に「・・・甲会社が乙会社の株式を有してる場合においても、乙会社は自己の株式の割り当てを受けず・・・」とありますが、この部分は「・・・甲会社が乙会社の株式を有してる場合においても、甲会社は自己の株式の割り当てを受けず・・・」が正しいのではないでしょう?
投稿 TF | 2008年2月16日 (土) 16時31分
A8
すいません。そうですね。

Q9
決議取消しの訴えについて質問させてください。
①百選45事件にもあるように、自分自身は招集通知を受け取っている丙が、他の株主である甲に対する招集通知手続の法令違反を根拠に決議取消の訴えを提起することが出来るとする見解が判例・通説だと思います。
②他方、議決権を行使することが出来ない株主は決議取消しの訴えの提訴資格は有しないというのが通説だと思います。
そこで疑問なのですが、議決権を有しない株主は、他の議決権を有する株主への通知を欠くことを理由に決議取消の訴えを提起することが出来るんでしょうか?
これまでは②の話を①の前提として考えていました。しかし、①の論点では「決議取消の訴えは」「株主総会の公正を確保するためのものであるから」(新100問240頁から引用しました)という理由付けは決議取消の訴えについての性質からの論証ですからあらゆる取消事由についても妥当すると言え、またこの理由付けは議決権の有無にかかわらずあらゆる株主に妥当すると思います。そうであるなら、②の論点は(少なくとも決議取消しの訴えに関しては)不要と言えそうです。
しかし、私のもっている基本書では②と①の関係を明確に整理している物がなかった(読み解くことが出来なかった)ので、混乱しています。
投稿 mino | 2008年2月16日 (土) 20時47分
A9
 「議決権を有しない株主」とは、無議決権株式の株主のことを想定していますか?それとも失念株主でしょうか?前者だとすれば、原告適格はあると考えます。

Q10
 葉玉先生、こんばんわ。度々の質問に答えていただきありがとうございます。自分なりに考えた結果、司法試験を目指すことにしました。
 そこで伺いたいのですが、自分は一度司法試験を中断する前に某予備校の入門・論文・択一の基幹講座を受講していました(しかし、受講していたとはいっても「ただ聞いていただけ」に近い状態です)が、もう一度入門講座から聞きなおした方がよいでしょうか。商法・会社法及び行政法については新たに入門講座を受講する必要があると思っています。
投稿 不孤 | 2008年2月17日 (日) 00時43分
A10
 自分が、いつ合格したいのかを考え、そのゴールからさかのぼって、入門講座を聴いている暇があるかどうかを考えましょう。

Q11
合同会社における超過配当の処理について質問です。
会社法は、623条2項を合同会社では適用しない(630条3項)としていますので、合同会社の会社債権者は、社員に直接超過額を請求できないようにする趣旨といえます。
しかし、630条2項によって、株主に支払いを請求する際、債権者代位権一般の場合と同様、会社が受領拒絶する場合があるので、債権者は自己への支払を請求できるように思います。
そうすると、630条2項の趣旨を没却してしまうのではないでしょうか。
630条2項の場合は、債権者が自己への支払いを請求できないと解釈すべきなのでしょうか。
投稿 受験生A | 2008年2月17日 (日) 16時35分
A11
 意味がちょっと分かりません。

Q12
今回は会社法についてではないのですが、裁判員制度のことでお尋ねします。
新聞で19の裁判所で模擬裁判を実施したところ、判決が無罪から懲役14年までバラつきが出たという記事を読みました。
刑事裁判に当たりはずれがあることになるのか?と心配ですが、サミー先生はどうお考えですか?
投稿 春吉 | 2008年2月18日 (月) 17時54分
A12
裁判官による裁判でも、当たり外れはあります。
まあ、裁判員制度は、真実を発見するための制度でもなければ、量刑を安定させるための制度でもないので、真実とは異なる結論になったり、量刑が不統一になるのは、民意を反映させる結果として、仕方ないでしょう。

Q13
利益供与について、とてもわかりやすかったです!
法律家の文章はこういうものなのかあ、と思いました。
先生は昨年、新試験の後、「受け控え百害あって一利ナシ」と
おっしゃっておられました。
大変お恥ずかしいことながら、自分は、未修で昨年択一落ちで今年も大して実力&択一の点も伸びませんでした。
そういう者の二度目の挑戦について、どのようにお考えですか?二度目の受け控えは、一度目の受け控えとは意味が違いますか?
最終段階まで基本を詰める猛勉強&先生のオススメの演習は続けます。でも、どうしても210点を超えなさそうならば、
今年はやめた方がいいのかな、とも薄っすら思う訳です。
アドバイスよろしくお願いします。
投稿 | 2008年2月19日 (火) 10時34分
A13
昨年からの1年で伸びなかったのに、今年受け控えして、来年までの間に実力が伸びる根拠は何でしょうか?「2回受験機会が残っている」というと安心が欲しいのでしょうか?
受け控えなど何の意味もない行為です。大事なのは、今のままで伸びないのならば、どのように自分を変化させるかです。

Q14
今日は、会社法とはまったく関係のない質問なのですが、条文の読み方についてご指導いただければと思って、書き込みさせていただきます。
刑訴法60条1項3号
「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」
警職法2条1項
「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」
という条文の読み方が不明です。
日本語的には「逃亡〔する〕とき」「何らかの犯罪を犯〔す〕と疑うに足りる~」というのが正しい気がするのですが、意味的には「逃亡〔した/している〕とき」「何らかの犯罪を犯〔した/している〕とき」という方がしっくりきます。
会社法の立案に携わった方として、こういった条文の読み方にもお詳しいものと思い、畑違いとは存知ながらぶしつけにも質問させていただきました。
投稿 雪小坊主 | 2008年2月19日 (火) 18時12分
A14
条文の書き方が下手なのでしょう。法律が古いし。

Q15
大変基本的な質問で恐縮ですが、資本金・準備金の額の減少について定めた会社法447条3項、及び448条3項が実際にどのような場合に用いられるのかが分かりません。

会社法100問や神田先生・江頭先生の基本書を調べたのですが現実の会社でどういった場合に447条3項・448条3項が用いられるのか、については記述がございませんでした。
投稿 受験生 | 2008年2月20日 (水) 10時33分
A15
 会社に剰余金があっても、分配可能額がないと、配当できません。資本金や準備金を減らして、剰余金を作れば配当できます。そういう使い方です。

Q16
商事法務No.1824(2/15号)を見ての質問です。先生の著による電子化実務対応の件でなく、会社法施行規則ほか改正の件です。(申し訳ありません)
会社法施行規則128条(事業報告の附属明細書)についてです。
弊社(A社)はC社の完全子会社であり、B社も同様にC社の完全子会社で、A社とB社は同一の部類の事業を営んでいます。なお、AB両社の代表取締役が各々相手方の取締役(非常勤)に就任しています。
1.A社の代表取締役がB社の取締役(非常勤)に就任していますが、この件について、「B社における業務執行権限がない場合、A社の事業報告の附属明細書に施行規則128条1号の規定による記載は不要」との認識でよろしいでしょうか?
2.A社とB社間において取引が存在する場合、B社の代表取締役がA社の取締役に就任していることから、施行規則128条2号の「第三者との間の取引であって、当該株式会社と会社役員…(中略)…との利益が相反するものの明細」として、当該取引の明細を記載する必要がありますでしょうか?
3.今回の改正案によると、施行規則128条2号に当たる部分が削除されるようですが、これは同じく今回改正される予定の計算規則140条(関連当事者との取引に関する注記)との関係によるものなのでしょうか?
投稿 ツェーベーツェー | 2008年2月20日 (水) 16時08分
A16
1・2 A社の代表取締役兼B社の取締役をX、B社の代表取締役兼とA社の取締役をYとします。B社の取引の相手方は、自社の取締役であるXですから、直接取引になります。
 A社の取引の相手方は、自社の取締役でらるYですから、やはり直接取引です。したがって、附属明細書ではなく、関連当事者取引で記載します。B社における業務執行権の有無は関係ないですね。
3 そのとおりです。

Q17
私はロースクール卒業後、芸能・放送関係の分野で活動したいと思っているのです。そのためにロースクールでは、選択科目やインターンなどはどのような点に注意すればよいでしょうか?
またそのような分野に強い法律事務所とかはありますか?
投稿 ハチベエ | 2008年2月20日 (水) 18時55分
A17
 芸能・放送関係の分野で活動したいというのは、行列ができる法律相談所に出演したいということでしょうか?それなら、私の附設中学・高校の1年後輩である本村健太郎先生をご紹介します。
 エンタメ法ということであれば、特に注意点はないです。実地でやりましょう。
 ちなみに、TMI総合法律事務所は、福留選手の代理人を務めた水戸先生を始め、スポーツ・エンタメは強いと思います。

Q18
 発行可能株式総数についての条文である37条と98条についての質問なのですが、募集設立の場合に株式会社設立の時までに発行可能株式総数を決めるのは創立総会のみですか?それとも創立総会と発起人全員のどちらかですか?
基本的な質問ですがよろしくお願いします
投稿 みるきん | 2008年2月21日 (木) 23時44分
A18
 95条参照です。

Q19
私は高校を一年生を二度経て、この春高校3年生になるクロといいます。
小学校6年生の頃から弁護士になりたいと思い続けて、とうとう来年の春に大学受験を控えています。
そこで質問なのですが、高卒でも受験資格のあるロースクールなんてところはあるのでしょうか。
弁護士を目指すことで莫大な学費がかかることは
頭では理解していたつもりですが
いざ目の当たりにすると、とてもじゃありませんが
親に甘える気にはなれずにいます。
今までは大学四年間でしっかりと法学を学んで、ゆくゆくはロースクールへ。
なんて思っていたのですが
もしあと一年、死ぬほど勉強をして入学資格のあるロースクールがあるならばと
考えてしまいました。
本当に無知な質問でお恥ずかしいのですが
もしよろしければ、お返事を頂けたら、本当に嬉しく思います。
投稿 クロ | 2008年2月22日 (金) 02時48分
A19
大学抜きで、いけるロースクールはありません。

Q20
本日22日の日経1面の、「働くニホン」という記事の冒頭に紹介されている事例を読んで気になったのですが、従業員に対して株価値下がりによる損失の一部を会社が負担する制度は違法ではないのですか?
他にも、従業員は一割引きで株を買える制度を聞いたことがあります。
このような制度は法律上問題ないのでしょうか(例えば株主平等原則違反や違法配当等)?
投稿 受験生 | 2008年2月22日 (金) 14時53分
A20
 スキームが分からないので何とも言えません。

Q21
総会で解散決議をして清算手続に入る会社は、新たな契約を締結をすることはできますでしょうか?
たとえば、子会社が解散する場合において、親会社に清算事務局業務(官報公告の手配、債権者への通知、登記申請準備など)を委託し、事務委託料を支払う(一括前払い)というようなことは可能でしょうか?
もろもろの理由で、親会社のスタッフが一切を取り仕切っているというような場合、タダというわけにもいかないようですので・・・。
投稿 必ず清算する人 | 2008年2月22日 (金) 21時20分
A21
清算の目的の範囲内ならば、契約は可能です。

Q22
葉玉先生、こんにちは。
今年の春に大学を卒業予定の者です。
今年の旧試験で最終合格するつもりなので、
試験を受けるにあたり、
なにか励ましのお言葉をいただけないでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。
投稿 marbury v. madison | 2008年2月22日 (金) 21時55分
A22
 司法試験は、沢山勉強した人が合格します。
 勉強量が少ない人が落ちます。
 たった、それだけの試験です。
 あなたが、周りの誰よりも勉強したと思うのならば、合格します。

Q23
取締役会の定足数について質問があります。
最判昭41・8・26では、「取締役の定足数は現存する全取締役の員数を基礎として算定すべきであって、特別の利害関係を有する取締役の員数を控除して算定すべきではない」旨判示されています。
しかし、369条1項の「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し」と規定されています。
これは、特別の利害関係を有する取締役は定足数から控除されると読めると思うのですが、昭和41年判例との整合性はどのように解すればよろしいでしょうか?
投稿 メガネ | 2008年2月24日 (日) 22時39分
A23
 条文に書いているとおりです、特別利害関係人は議決に加わることができないので、出席にはカウントしません。

Q24
議決権行使に対する物品提供について
「2 定足数を満たす目的」というものを指摘されておりますが、この定足数を満たす目的であれば許されるかどうか、ということについては、「定足数を満たさないよう流会にする目的」という反対派の意思も想定されるところです。そうしますと、形式的には委任状獲得合戦がなくとも、「権利行使に関し」に該当するという推定が覆るとまではいえず、利益供与に該当するおそれがあるとも考えられますが、いかがでしょうか。
投稿 Kazu | 2008年2月25日 (月) 16時19分
A24
 争いあるところですが、「定足数を充たさないよう流会する目的」というのは、合理的ではないですね。その意思はあまり、気にしなくていいように思います。

Q25
isologue(イソログ)経由ネタですが
レクシスネクシス・ジャパンの「Business Law Journal」創刊号に
葉玉匡美先生の「買収防衛策の策定の要点」が載ってますね。
詳しくは↓公式サイトで。(目次だけですが)
http://www.businesslaw.jp/contents/
 
と、勝手に宣伝しちゃいましたが
葉玉先生の最近記事で、改めてどんな内容なのか
説明あるかもしれませんが、一応、このブログ読者の
皆さんに速報(?)という形でお知らせしておきます。 
 
葉玉先生以外の記事でも面白そうな記事が結構ありますね。

投稿 ポップン | 2008年2月25日 (月) 17時55分
A25
 結構、興味深い雑誌です。
 私の論文は、かなり痛烈な感じですね。

Q26
取得条項付株式について質問です。
当該株式の一部を会社が別に定める日に取得するとする場合の取得条項として、以下のような定め方は可能でしょうか?
「当会社は、平成20年4月1日以降、毎年取締役会の定める日にB種優先株式の一部を取得することができるものとし、取得の対象となる株式は、取締役会の決議により適宜定める。」
1.一部を取得する場合の取得対象の株式を取締役会の裁量で定めてよいかという点
2.「会社が別に定める日」としてこのような定めが適法であるかという点
について、それぞれ確信がもてずにおりますので、ご教示いただきたく
投稿 ハヤ | 2008年2月25日 (月) 19時18分
A26
危なそうです。

Q28
役員退職慰労金制度の廃止について教えていただけないでしょうか。
私の勤務する会社でも役員退職慰労金制度の制度廃止及びそれに伴う打ち切り支給をしようということになったのですが、ものの本によると役員退職慰労金制度の廃止は取締役会と監査役会の決議が必要でその後株主総会決議となると書いてあったのですが、そうあっさりと書いてあるだけで、なぜそれが必要になるのかさっぱり分からず、おまけに取締役会決議は不要で株主総会決議だけなのではないかというの意見も聞こえてきて、すっかり混乱しています。
まず、株主総会開催の前に取締役会決議をすべき内容は株主総会開催の決議を除くと
(1)役員退職慰労金制度の制度廃止
(2)制度廃止に伴う打ち切り支給
の両方になるのでしょうか、それとも(1)、(2)のいずれかになるのでしょうか。またそれはどの条文等が論拠になるのでしょうか。
また監査役会、株主総会で決議すべきものはどれになるのでしょうか。
本当に素人な質問でごめんなさい。多分当たり前すぎるのか余り書いてないのです。
投稿 わたしも会社法で遊びたい | 2008年2月23日 (土) 20時11
A28
(1)と(2)は、別の議案です。
(1)は、株主総会で報酬等決議を撤回する議案です。
(2)は、新たな「報酬等」の支給議案です。
 根拠は、取締役が361条・監査役が387条でしょう。
 
 (1)は、決議自体に取締役会と監査役会の決議は不要ですが、取締役・監査役の委任契約の内容を不利益に変更するものですから、取締役・監査役の全員の同意が必要でしょう。

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2008年2月14日 (木)

「株主の権利の行使に関し」

NHKのインサイダーとか言いたいことがいくつかあるのですが、モリテックスをきっかけに論じようとしていた120条1項の解釈について、早く書けというリクエストが来たので、そちらを書きます。

さて、モリテックスの件について伸ばし伸ばししていたところ、商事法務1823号で、尊敬する中村直人先生が非常にわかりやすい論文を書いてくださいました。
(中村先生の論文は、いつも判例と実務の両面に配慮があり、一番、胸に落ちます。)

この論文は、ぜひ株主総会の実務に携わる方は呼んでいただきたいのですが、私自身の解釈は、もう少し、保守的(君子危うきに近寄らず)という部分がありますので、そのあたりを中心に論じたいと思います。

モリテックス事件は係属中の事件なので、あまり詳しく立ち入りはしませんが、要するに
 議決権を行使した株主にクオカードを贈呈する行為を利益供与と認定した
判例です。
 このクオカード贈呈は、他の会社でもやっている行為なので、ドキッとしている会社さんもあるでしょう。

この判例は、そうした会社のことに配慮して、なんでも利益供与になるとは論じていないものの、その理論構成は
 原則 議決権を行使した株主に利益を供与するのは、株主の権利の行使に関し、利益を供与したこととなる
  例外 ①当該利益が株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づき供与され、②額が社会通念上許容される範囲のものであり、③株主全体に供与される総額が会社の財産的基礎に影響を及ぼすものではないときは、違法性が阻却される。
という構成をとっています。ようするに
「他の会社さんは、例外に該当するから、安心していいよ。でも、モリテックスは、例外にあたらないから、原則どおり、利益供与だよ」
と言ったわけです。
 私は、その基準自体には文句はないものの、原則例外パターンで説明されると、実務的には、怖くて、議決権行使の促進のためのクオカード贈呈は、できなくなりそうな気がします(個人的には、別にやってほしいとも思いませんが)。

 私は、こうした議決権行使者に対する金券の贈呈の趣旨には、
1 会社が、会社提案に賛成してもらう、または、白紙票を会社票にするという目的
  (株主の権利の行使に影響を及ぼす目的)
2 定足数を満たす目的
3 単なる社会的儀礼(わざわざ株主総会にきていただいたり、議決権行使書面を送っていただいたり、お手間を取らせました。これは、ほんの気持ちですという感じ)
の3種類があると思います。

このうち1の株主の権利の行使に影響を及ぼす目的が、駄目なのは当然です。
これは「株主の権利の行使に関し」に該当します。
モリテックス判決が、この目的を認定した上で、利益供与を認めたのならば、何の問題もありません(実際、事実認定では、そのように読めます)。
 ただ、もしそうならば、「例外」なんて作る必要はなかったように思います。

問題なのは、2の定足数確保目的です。
モリテックス判決の例外要件の①を読むと、定足数確保目的であったとしても、「株主の権利の行使に関し」という要件に該当すると考えた上で、例外的に違法性を阻却するとも読めます。
 しかし、私は、この解釈は、利益供与罪の成立範囲を広げすぎるのではないかと懸念するのです。
 もちろん、株主総会決議取り消しの訴えの前提となる解釈と、利益供与者の民事責任の解釈と、利益供与罪という刑事罰の解釈は、理論的には、別々でもかまいませんし、実際、裁判所が、民事だけは、こんな感じで解釈するよと割り切ってくれるのならば、それはそれでいいのですが、「権利の行使に関し」という文言は同じで、規制する行為も同じなのに、本当に、民事と刑事で、解釈を区別してくれるとは思えません。

そして、刑事事件の場合に、構成要件に該当したにもかかわらず、法律に明文のない違法性阻却事由で無罪を勝ち取るというのは、相当困難な荒業というほかなく、私が、検事ならともかく、弁護士としては、「その法律構成はやめてほしいなあ」という気持ちになってしまいます。

そうした下心は別として、利益供与禁止規定の立法趣旨から考えれば、会社が、定足数確保の目的のみ有し、株主が、提案に賛成するか反対するかになんら影響を与えるつもりがないのならば、そもそもそれは「株主の権利の行使に関し」という要件を欠くと解釈すべきではないかと思います。

たしかに、表面だけみれば、議決権の行使に関して利益を供与しているように見えますが、本来、利益供与は、株主の権利について
 会社に有利になる(たとえば、会社提案への賛成、株主提案への反対又は棄権)
ようにしてもらう場合を想定した規定なのですから、中立的な目的しかない場合には、「株主の権利の行使に関し」という要件に該当しないと解するのが素直なのではないでしょうか。
 こう考えるならば、モリテックス判決のように「例外」を置く必要はないように思います。

 とはいえ、議決権行使書面には、会社提案に有利に働くような文言が書かれているのが普通であり、どんなに会社が弁解しようとも、プロキシーファイトになったあとに、
 「私は、株主権の行使に影響を与えるつもりはありませんでした」
というのは、なかなか難しいです。
 また、私の解釈は、決して異端ではないと思っていますが、やはり「議決権の行使」の対価として利益を供与することの怖さは残ります。

ですから、個人的には、議決権行使者だけに何か配るのは、基本的には避けたほうがいいというのが本音です。
すでに実務上、結構、行われているので、大丈夫だろうとタカをくくっていると、怖いのです。もしかしたら、制限速度50キロの道路を55キロで走っているのかもしれません。今、警察に捕まらないからといって、将来、警察に捕まらないという保障はできないからです。

それでも、どうしても、議決権行使者に何かを配りたいのならば、社会的儀礼の趣旨でやるか、自社製品を送って販促目的でやるのがよいのではないでしょうか。そして、株主提案がされたときは、潔く、「今年はやらない」と決断するのが、安全です。

一票でも欲しい会社にとって厳しいことをいうようですが、その「一票でも欲しい」という気持ちが、まさに「株主の権利の行使に関し」ということです。

(質問コーナー)
Q1
新会社法100問(2版)p.136の12行目で、現物出資の不足額てん補責任について、
「取締役が善意『無重過失』であることを立証した場合には、213条の責任を負わないこととされている(213条2項2号)」
と記述があります。
そこで213条2項2号を見ると、「無重過失」ではなく、「注意を怠らなかったこと」を証明した場合に免責されると規定されています。
なぜ、「無過失」ではなく、「無重過失」と解されたのでしょうか?
根拠となる条文や考え方があればぜひお教えください。
(神田先生の教科書は「無過失」と書いており、江頭先生の本には無過失か無重過失かについて言及はなく、条文どおり書かれていました。)
投稿 受験生 | 2008年2月10日 (日) 17時15分
A1
すいません。213条の責任は、無過失です。筆がすべったようです。

Q2
 強盗罪についてヘンな質問をした者です。
 質問させていただいた場面は「哀れみからの交付」事例とは異なります。補足してもよいですか?
 ①まず、超基本的なことなのですが、236条の解釈で問題となる「被害者の反抗」とは、何に対するものなのでしょうか。(A)加害者の暴行脅迫行為それ自体に対するもの (B)加害者の財物奪取意思および、その手段としての暴行脅迫行為 に対するもの のどちらかだと思います。私はシンプルに(A)と解すべきだと思います。実務上はどうなのでしょうか。
 ②私は、上の(A)説を前提に、「強盗罪の実行行為といえるためには、被害者の反抗を抑圧する必要はないが、財産処分に関する自由意思を抑圧しなければならないのではないか」と考えています。以下に、その推論過程を示しますので、おかしいところを突っ込んでいただけますか?
 「窃取と強取は、ともに財産に対する罪の実行行為だ」→「明文上でわかる両者の違いは、暴行脅迫を伴うか否かである」→「しかしひったくりが窃盗罪となることからもわかるように、暴行脅迫の有無それ自体が、両者の分岐点となるわけではない」→「かといって、判例に従えば、『被害者の反抗を抑圧した状態』の有無で区別するわけでもない。財産に対する罪の要件なのだから、単なる暴行脅迫との関係を問題としないのは納得できる」→「ならば、暴行脅迫によって、被害者の財産処分に関する意思を抑圧するのが強取。強取以外の方法で、被害者の財産処分に関する意思に反するのが窃取だと区別するのではないか」
投稿 らくだ | 2008年2月10日 (日) 22時33分
A2
強盗罪と窃盗罪は、ともに被害者の意思に反して財物の占有を移転する行為です。
したがって、強盗罪の反抗抑圧は、財物の占有移転の意思を抑圧することです。

Q3
 司法試験の勉強を再開するに当たり、もう一度入門講座から聞きなおそうと思っています。そこで質問なのですが、入門講座期の復習はどのようにすればよいとお考えですか。
 また、自分が聞きなおす入門講座(通信)の担当講師は「復習はしなくてよいのでとにかく講義を早く消化すること(最長でも3ヶ月)が重要である。復習は論文や択一の問題を解きながら行うのが効果的である」との立場ですが、これについて葉玉先生はどうお考えですか。
 検事への任官について伺いたいのですが、弁護士任官の制度で弁護士から検事に任官した場合は任期があるのでしょうか。それとも望めば定年まで勤務できるのでしょうか。
 投稿 不孤 | 2008年2月10日 (日) 23時31分
A3
 入門講座に限らず、復習と演習は必須です。入門講座のレベルにもよりますが、まったく復習なしで択一はきついかもしれません。むしろ、講義を聴きながら、後で何回も繰り返してみることができるノートを作っていくことが重要です。
 わからなくても一回終えること、そして、先に進んでいくことも必須です。
 検事に任期はありません。ただ、肩たたきはあります。

Q4
そもそも今回のようなグリーンメーラーによる買収に、濫用目的や企業価値の毀損があるのでしょうか?買った株を高く売りたいのだから、むしろ企業価値を高めたいのではないかと思うのですが・・・。
投稿 会社法で迷子。 | 2008年2月11日 (月) 08時31分
A4
グリーンメーラーは、株を高くして、それを会社に買い取ってもらうため、他の株主が損をするので濫用的です。

Q5
624条2項の規定による定款の定めを何もしていない持分会社は、同条1項の請求に、A応じなければならない・B応じてはならない・C任意のいずれでしょうか。
Aなら582条や859条が骨抜きになるのでは?
Bならそう明示しないのはなぜ?
Cならなぜ「会社は・・・できる」としないのか?
基本的な読み方が判っていないせいならすみません。
投稿 ひで | 2008年2月11日 (月) 20時23分
A5
出資の払い戻しに応じなければなりません。
582条は、出資の目的100万円と定められている以上、100万円払えということです。
その人が、10万円出資の払い戻しをしたら、出資額が90万円になりますから、90万円の範囲で出資はされているので、624条と矛盾するわけではありません。

Q6
早速ですが、本日(2月12日)のダスキン訴訟最高裁判決について質問というか、ご意見を伺いたいです。今帰ってきたばかりで詳細を調査中なのですが、原告の106億円の賠償請求はどれくらいの算定で導かれたのでしょうか?
 株式投資をしたことのない素人なので、ちょっとこの金額にはびっくりというか、アメリカであったクリーニング屋の賠償ウン億円とかいう事件を思い出してしまいました・・。
 ブログのネタとしてでもいいので、取り上げてくれたらうれしいです。自分でも新聞や最高裁HP等で調べてみます。
投稿 be scrivener | 2008年2月12日 (火) 22時20分
A6
日本の損害賠償制度では、違法行為がたいしたことではなくても、損害額が膨らむことはあるのです。
損害の中身は判決をみてください。

Q7
 会社法386条1項につき、質問させてください。
 会社法386条1項が、旧商法275条ノ4の改正により、被告たる取締役について「取締役であった者を含む」としました。
 このことにより、旧商法274条ノ4前段につき、最判平成15年12月16日民集57巻11号2265項(平成18年重判:民事訴訟法2)の判示は、先例的意義がなくなったといっていいのでしょうか。
 同最判は、農協の理事に対する訴えの事例で、農協法39条2項により、商法274条ノ4が準用される事例でした。
判決文では、「退任取締役が前段の規定中の「取締役」に含まれると解するのは文理上困難」としていますが、この解釈は、新会社法下では、会社法386条1項により不可能であると思案しています。
 なお、この改正の趣旨は、馴れ合い防止なのかなと考えています。
A7
 先例的意義はなくなったと思います。

Q8
「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」(施行規則126条4号)は,
内容を変更することがなくても,毎年,監査役会や取締役会で
決議しなければならないのでしょうか。
もし,決議しなければならないのであれば,
取締役会は,事業報告に関する決議でまとめてできますか。
でも,監査役会はそういう機会がないので面倒だなぁと思っています。
投稿 はる | 2008年2月13日 (水) 23時48分
A8
方針自体は、毎年決議する必要はありません。
存在しているものを書くということです。
Q9
葉玉先生はじめまして。
今日(というかさっき)、名古屋で先生のセミナーを拝聴しました。
どちらかというと中央三井さんのセミナーはつまらないことが多いのですが、今回はとても楽しかったです。
実は、司法書士をしている父親に、「会社法であそぼ。」がおもしろいから見てみろとずっと前から勧められていたのですが、私には敷居が高い気がして今まで遊びに来たことがありませんでした。
今回お話を聞いて、弁護士先生という人たちに対して持っていたイメージが覆りました。今後は敬遠せずにお邪魔しようと思います。
投稿 ちづる | 2008年2月13日 (水) 16時53分
A9
寒いところをお越しいただきありがとうございました。
ブログは、難しい話もありますが、根があまり敷居の高くない人間なので、適当にブログで遊んでください。

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2008年2月10日 (日)

サッポロHD特別委員会の意見書

 サッポロの特別委員会の意見書が2月4日、取締役会に提出されました。
 サッポロ-スティールは、買収関係の仕事をしている法律家にとっては、今年最大の関心事であり、もし法廷闘争になれば、昨年のブルドック事件以上に影響力のある決定になるのは、ほぼ確実です。

 私は、どちらの味方でもないのですが、特別委員会の意見書を読んで、気になる点があったので、今日は、そのことについて取り上げます。

 それは、特別委員会の意見の次の部分です。

「当社株券等の大規模買付行為への対応方針」に基づく特別委員会からの意見書」
http://www.sapporoholdings.jp/news/up_img/1209.pdf
「 このように考えると、本対応方針の「当該大規模買付行為が明らかに濫用目的によるものと認められ」という文言は、独立した対応策発動の要件を定めたものではないと解するのが相当である。そして、本対応方針の注記にあげられた4類型は、企業価値の毀損という結果を生じさせる買付行為の典型的な場合を例示したものであるというべきである。そこで、本対応方針においては、対応策発動の要件は、大規模買付行為によって企業価値の毀損の生じる可能性の強い場合であると定めているものと解すべきである。」

簡単に言うと、特別委員会は、意見書において、

 濫用目的かどうかは、対抗策発動とは関係ないから、企業価値の毀損の生じる可能性の強い場合であるかどうかを判断した

と言ったわけです。

 私は、

なぜ、特別委員会が、濫用目的の有無を判断しないということを、あえて明確に意見書に記載したのか?そのような指摘をせず、濫用目的であると言い切ることはできなかったのだろうか?

という点に大変興味をそそられました。

 サッポロの事前警告(http://www.sapporoholdings.jp/news/up_img/1012.pdf)では、

「大規模買付者が大規模買付ルールを遵守した場合には、当社取締役会は、仮に当該大規模買付行為に反対であったとしても、当該買付提案についての反対意見を表明したり、代替案を提示することにより、当社株主の皆様を説得するに留め、原則として当該大規模買付行為に対する対抗措置はとりません。」

と「対抗措置を講じないという原則」を宣言した上で、例外的に対抗措置をとる場合として

「当該大規模買付行為が明らかに濫用目的によるものと認められ、その結果として会社に回復し難い損害をもたらすなど、当社株主全体の利益を著しく損なうと判断される場合には、本対応方針の例外的措置として、当社取締役会は当社株主の皆様の利益を守るために、適切と考える方策を取ることがあります。」

としています。

 この例外部分をどう解釈するかは、結構、微妙ですが
解釈1 ①明らかな濫用目的+②当社株主全体の利益を著しく損なうの2つの要件である
解釈2 「当社株主全体の利益を著しく損なう」という要件のみである
の2つの解釈はありうるところです(どちらの解釈が正しいかは、このブログでは立ち入りません)。

 ところが、独立委員会に対する取締役会からの諮問事項は、
「1. SPJSFが、本買付提案に記載された買付行為を行う場合、当該買付行為は、明らかに濫用目的によるものであり、その結果として当社株主全体の利益を著しく損なうものであるかどうかについて、調査・検討及び評価すること

2. SPJSFによる本買付提案の内容が、当社株主全体の利益に資する適切なものと認められるかどうかについて、調査・検討及び評価すること」
となっており、

  諮問事項の1を見る限り、取締役会は、解釈1を採っているのではないか

と見えてしまいます。

 きっと、特別委員会は、意見書の内容を考えるときに、

スティールに「濫用目的」が認められるのか?

と、相当、お悩みになったのではないかと推測されます。そうでなければ、「明らかに濫用目的が認められるか」という問に素直に答えればよいはずです。

 もしかしたら、特別委員会は、取締役会が解釈1をとることについて
    その解釈では、裁判所で、対抗措置を差し止められるリスクがある
ということを、専門的独立的な見地から察知し、意見書を通じて、取締役会に対し、解釈の変更を迫ったのかもしれません。

 取締役会の諮問事項と特別委員会の意見書に、ややすれ違いがあると、私みたいに憶測する輩が出てくるので、なるべくすれ違いはない方がよいのですが、今回のすれ違いは、今後、他の会社が、自社の事前警告や諮問の内容を決定する上で非常に示唆に富むできごとです。

一般的には、事前警告の中で「手続を遵守した場合には、対抗措置をとりません」と宣言した場合には、
 法律上、買収防衛が許されるような場合であっても、手続を遵守すれば、対抗措置を執らない。
と解釈されてしまう可能性はあります。法律上、買収防衛が許されないときに対抗措置をとることはできないのは当たり前ですから、会社が、あえて「対抗措置はとりません」と表明した以上、そこに法律のレベル以上の何らかの意味があるはずだと考えられるからです。

 ここらあたりは、最終的には、意思解釈の問題で、裁判で決着を付けるしかないものの、私は、事前警告型買収防衛策の最大のリスクは
 「自縛性=自分の言ったことに自分が縛られる」
という点だと思っており、事前警告の内容を考えるときには

将来の裁判において、事前警告の文言を利用されて、揚げ足取りをされないようにする

ことが重要だと考えています。そうすると、本当は、「対抗措置をとらない」というリスキーな文言は、入れたくないのが本音です。

 とはいえ、「対抗措置を採らない」という文言は、今や、上場会社の事前警告のほとんどに入っていて、今更、この文言無しで、事前警告をやるというのは、
   証券取引所や大株主との関係で、なんとなく気まずい
感じになります。

 とすると、大事なのは、
   例外的に対抗措置を発動する場合を、どのように規定するか
です。
 サッポロの特別委員会が、「濫用目的」についての判断を避けたことからも推認されるように、主観的要件は、特別委員会にとっても、裁判所にとっても、短時間かつ限られた資料で認定するのが大変困難な要件です。

まして、「明らかに濫用目的が認められる」という要件のは、あまりにもハードルが高い。

 事前警告において、「原則として対抗措置を講じない」と宣言している以上、もし例外要件を満たさなければ、原則どおり、対抗措置をとることはできません。

 そう宣言しているにもかかわらず、取締役会が、対抗措置をとってしまうと、

事前警告をしていなければ、許される対抗措置であっても、事前警告を定めた株主総会決議に違反する対抗措置として、差し止めの理由になったり、取締役の責任が生じたり

する可能性があります。

ですから、例外要件に、「明らかな濫用目的」を加えるのはリスキーであり、私は、上場会社のクライアント様から事前警告を頼まれたときは、それが独立した要件と見られないように気を付けています。

 つまり、企業価値を害する買収からサッポロを守るという視点からすれば、今回の特別委員会の解釈の方が柔軟に対処することができる点ですぐれています。

もっとも、公表された事前警告や諮問事項がある以上、仮に、裁判になったときに、裁判所が、それらを検討して、例外要件に「明らかな濫用目的」が入ると解釈する可能性は否定できません。

 上場会社の中には、現在、事前警告型買収防衛策の導入を検討中の会社もいらっしゃるとは思います。今回の特別委員会の意見書を読んで、意見書の書きやすい事前警告にするように心がけましょう。

(質問コーナー)
Q1
吃音症であっても立派に弁護士業務をこなしている方は実際におられるのですね。
では、検察官や裁判官の場合は、裁判でしゃべることが多い印象がありますが、吃音をもつ人にとっては、仕事を進めていくのは難しいのでしょうか。
投稿 ぱんだ好き | 2008年2月 2日 (土) 10時05分
A1
「裁判」という場だと、検察官も弁護士もしゃべることが多いですね。
また、検察官になるとしたら、取調べの方がハードルが高いかもしれません。
 裁判官は、判決のときを除けば、それほどしゃべらないし、吃音症でも仕事は進められるように思いますし、判決の読み聞かせは、吃音症でも、特に問題ないです。

Q2
株式分割では基準日の制度があるのに、株式無償割当では事後通知で対応しているようです。
どちらかに統一したほうが、より国民に読み易い法律になる気がしますが何故このような違いを設ける必要があったのでしょうか?
投稿 会社法散歩中 | 2008年2月 2日 (土) 11時47分
A2
株式無償割当ても、基準日を設定することができます。
二つの違いは、株式分割は基準日設定が義務づけられるという点です。
この違いは、上場会社が、基準日設定なしに株式分割をやってしまうと、振替制度がうまく機能しないからです。

Q3
種類株主総会の決議事項に許否権を設定することはできますか?また、ある種類の株主は、他の種類株主総会に出席、質問をする権利はありますか?
投稿 ただし | 2008年2月 2日 (土) 12時30分
A3
種類株主総会の決議に対する拒否権というのは、ないです。
似たような機能を持つ種類株式は、設計することはできますが。
他の種類株主総会への出席権はありません。

Q4
資本減少無効の訴えを残した理由として、①登記 ②大会社の要件との関係、を挙げられています。
そこで、同訴えが株式会社に限られていることに、疑問を感じました。というのは、合同会社は資本が登記事項ですし、大会社の要件は持分会社も同様だと思うからです。
ひょっとすると、無限責任社員がいる会社はそれでも良いということかもしれませんが、大会社である合同会社となると必要性は変わらないように思えるのです。
投稿 遅れても遊ばせて | 2008年2月 2日 (土) 15時15分
A4
歴史的になかったし、資本減少無効の訴えを設けるほどの必要性もないということでしょう。
なお、持分会社は、大会社になりません。

Q5
 「事実認定」と「法律の解釈」の分析、面白く読ませて頂きました。 この点につき、葉玉先生にご意見を伺いたく存じます。
 個人的な実感に過ぎませんが、日本では、事実と条文の意味とを一体として認定することにより、事実認定と併せて実は条文の解釈もしてしまっている判決が少なくないのではないか、と長らく感じておりました。おそらく、このような「実感」は葉玉先生がご指摘される(3)に近いものと考えます。実際(3)のような判断手法は、裁判所にとって、「上告理由の節約」に資し、法律の解釈の誤りを突っ込まれないですむという利点があるのではないかと思います。「あてはめ」と呼ばれる操作をどのように行うのかについては法文化によってかなり異なるものと思いますので、その是非を問題としたいわけではありません。ただ、いずれの判断手法を採るにしても、最終的な「妥当性」というのはどのように決定されるものとお考えでしょうか。葉玉先生の上記のエントリにおいても、「一般常識的には『妥当な場合』」という言葉を用いておられますが、「一般常識的に妥当か否か」はどのように判定されるのでしょうか。そして、果たしてそのような「妥当性」は存在するのでしょうか。
投稿 妙処 | 2008年2月 2日 (土) 15時20分
A5
 妥当性は、裁判官の感覚なのでしょう。裁判は、最終的には、裁判官がまともな価値観をもとに、まともな判決を書いてくれるという信頼を基礎とします。この信頼は、裁判官個人に対する信頼ではありません。個々の裁判官をみると、変な人も混ざっています。しかし、合議システムや三審制、公開主義・当事者主義をはじめとする諸原則などを前提とすれば、総じて、まともな裁判がされるようになっています。
 もちろん、個々の裁判官が、司法の独立を勘違いし、法律の趣旨や一般常識に反する価値観を押しつけることが無くなることはないでしょうが、そうした判決は、上訴審で破棄されると信じています。といいつつ、最近の最高裁は、リップサービスしすぎと思いますが。

Q6
取締役Aが放漫経営により会社に損害を生じさせた後、取締役選任決議が取り消された場合、Aは会社に対して会社法423条1項に基づく責任を負うのでしょうか?また、支払見込みのない債務を負担したことにより第三者に損害を生じさせた後、同じく取締役選任決議が取り消された場合、会社法429条1項に基づく責任を負うのでしょうか??
投稿 ただし | 2008年2月 2日 (土) 17時16分
A6
 なかなかの難問ですが、選任の総会決議が取り消しには、遡及効がありますが、取締役の善管注意義務まで遡及的に消滅するものではないと考えるべきだと思います。423や429を使う理屈は、選任決議の取消しがあっても、取締役の地位は、将来に向かってのみ効力を失うとするか、表見取締役とするか、どちらかでしょうか。

Q7
非公開会社かつ委員会設置会社という機関設計は可能でしょうか。
A7
できます。

Q8
権利株の譲渡と株券発行会社における株券発行前の株式の譲渡について、
条文上、権利株の譲渡については「会社に対抗することができない」(35条、50条2項、63条2項、208条4項)と規定されているのに対し、
株券発行前の株式の譲渡については「会社に対し、その効力を生じない」(128条2項)と規定されています。
“会社に対抗できない=会社に対して効力を生じない”という理解でいたのですが、
これらの意味の違いはどういったものなのでしょうか。
投稿 sohta | 2008年2月 4日 (月) 01時27分
A8
 同じと考える説もありますが、私は、違うと考えます。
 「対抗できない」は、対抗要件がない=会社が効力を認めることができる
 「効力を生じない」は、無効=会社も効力を認めることができない。
 詳しくは、会社法100問を見てください。
 
Q9
こんにちは。前回、株券電子化下における株券喪失登録の定めについての定款変更に関し、質問した者です。重ねて恐縮ですが、ご教示願います。
>もっとも平成21年総会の1回でケリをつけようと思えば、定款変更の
>やり方を工夫するだけで、平成22年1月時点において、株券喪失登録
>に関する規定を削除することもできます。
葉玉先生のご回答に「定款変更のやり方を工夫するだけで」とありますが、そのやり方とは、商号変更などによくみられるような、
 「第○章 (附則)
  第●●条の規定は平成22年1月5日から実施するものとする。なお、本附則は第●●条の変更の効力発生日経過後削除されるものとする。」
的なやり方と考えますがいかがでしょうか?
投稿 ヒゲマン | 2008年2月 4日 (月) 15時35分
A9
 そんな感じです。

Q10
発起設立の場合における、設立時役員の選任時期についてご教示ください。
会社法38条1項は、旧商法170条1項を実質的に変更した条文なのでしょうか?
と申しますのは、会社法38条1項において、「出資の履行が完了した後」と規定されていることを根拠に、一部の法務局では、出資の履行前に、設立時取締役を選任した発起人決定書を添付した設立登記申請を受け付けない取扱いがなされようとしております。しかし、旧商法170条1項では、「払込がないにもかかわらずなされた選任は無効となるが、選任無効の瑕疵は、払込のない株式について払込がなされた時に治癒される」(有斐閣 新版注釈会社法(2)P139)と解釈されているようであり、当初予定どおり発起人が全額払込を行えば、結果として、会社法38条1項違反を問われることはないのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか?
投稿 としお | 2008年2月 4日 (月) 17時00分
A10
哲学をもって、旧商法から変更したのではないと思います。

Q11
ところで株主優待制度と現物配当・平等原則の問題で質問があります。
以前入門編において「財産を株主に配分するような優待制度は現物配当に当たる」とおっしゃっていたと思いますが、財産を配分しない優待制度とはどのようなものをいうのでしょうか?自社製品や割引券といったものでも財産といっていいのですよね?それとも後者はあたらないのでしょうか?
また、株主平等原則については、特に明文で規定のある場合は比例的な扱いが厳格に要求されるということでしたが、株主優待が現物配当にあたるとすれば、つまり剰余金の配当ということになり454条3項の規定がある以上比例的な扱いが要求されることにはならないのでしょうか?それとも剰余金の配当と現物配当は区別して考えるということなのでしょうか?
投稿 くーぽん | 2008年2月 6日 (水) 00時05分
A11
 割引券を配る行為は、通常、財産を配分する行為ではありません。
 もちろん、割引券という紙切れは、会社の財産ですが、その本質である割引部分は、将来の値引き約束に過ぎません。
 それから、株主優待が現物配当に該当するならば、比例的な取扱いが要求されます。

Q12
「発行可能株式総数」に関して、種類株式を発行する際も、別途「当該種類の発行株式総数」を定めるとありますが108条2項、「当該種類の株式の発行可能株式総数」も、会社設立時に規定する発行可能株式総数(37条)の範囲内で定める必要があるのですか??
例えば、A社が会社設立時の発行株式が250株で可能総数が1000株だとすると、
設立後、配当優先株を発行したい場合、かかる優先株の発行可能総数も設立時の発行可能総数の範囲内によるのですか??
例えば、上記A社の場合、現在発行済株式は250株なので、あと750株まで発行することができますが、優先株も250株発行して可能総数を1000株とすると750株よりオーバーしてしまうことはできないという意味でしょうか??
投稿 太郎 | 2008年2月 6日 (水) 23時21分
A12
発行可能株式総数は、すべての種類の株式の発行済株式総数の合計が、それを超えることができないというものです。
 ですから、250株優先株を出せば、普通株は750株しか出せません。

Q13
基本的なことなのかもしれませんが、こちらのブログ内検索や他を調べても見つけることができませんでしたので、条文の解釈に関することを質問させてください。
①会社が自己株式を取得する場合として、155条1号に規定があります。これは直接的には、全部の株式の内容としての取得条項付株式を指していると思います。
種類株式としての取得条項付株式(108条1項6号、2項6号)も会社は当然に取得可能と思いますが、168条以下も「日の決定」などは規定していますが、取得できる旨は書いてありません。
このような場合、108条2項6号イの中に107条2項3号イが含まれているから、会社は種類株式としての取得条項付株式を、155条1項1号により取得できると、解釈するものなのでしょうか?
あるいは、168条以下の当然の前提として取得可能と解釈するべきなのでしょうか?
②上の疑問が沸く前に考えていたことで、こちらがメインの質問です。
とある専門家が次のように言っていました。「会社が取得条項付株式を取得するのは170条括弧書きのいずれか遅い日で、取得対価としての株式を株主が取得する日は(107条2項3号イ)の一定の事由が生じた日。そうでないと、会社の通知などが遅れると株主の方が損をすることになる。」と。
理由は尤もだと思うのですが、170条1項2項を読む限りは、同じ日(いずれか遅い日)になるように思います。なぜなら、170条1項の最初の括弧書きに「次項・・において同じ」とあるからです。
両方の日がずれるのも変ですので、やはり同じ日になるのだと思うのですが、本当はどうなのでしょうか?
投稿 会社法で迷子。 | 2008年2月 7日 (木) 16時51分
A13
①155条1項1号で取得できます。
②同じ日です。

Q14
 基本的な、強盗罪についてのご質問です。
 被害者の反抗を現実に抑圧することの要否という論点で、判例は「抑圧するに足る程度の暴行脅迫があれば既遂たりうる」との見解を採っています。これは(教科書等に根拠を見つけられない憶測なのですが)、「被害者の反抗する意思は、現実に抑圧する必要はないが、それとは別に存在する、被害者の財産処分に関する自由意思は現実に抑圧する必要がある」ということなのでしょうか?
 通説では、反抗の現実の抑圧が必要とされていますが、「暴行脅迫に対して被害者が反抗すること」と、「加害者の暴行脅迫が原因で財産処分に関する自由意思を抑圧されること」とは、別問題のように思えるのです(例:脅す犯人に怒鳴り返すつもりもないが、金を出すつもりもなかった。だがビビって、奪われるがままになってしまった。これなら強盗既遂罪成立ですよね?)。
 強盗罪は、あくまでも財産に対する罪だろうという点からの憶測ですが、このように考えると、判例の反抗抑圧不要説が納得できるのです。ただの勘違いでしょうか・・・?
投稿 らくだ | 2008年2月 7日 (木) 20時53分
A14
 うーん。問題意識が良く分からないのですが、お聞きになりたいのは、「強盗罪の実行の着手があったが、被害者が犯行抑圧されなかった。しかし、被害者は、犯人が可愛そうになって財産を交付した。」という事例ですか?
 ちなみに、被害者が「反抗する意思」を持っているかどうかは、犯罪成立には関係ないと思います。

Q15
更新した旨、メールで通知する機能とかあるのでしょうか??
投稿 いち | 2008年2月 7日 (木) 23時41分
A15
 よく分かりません。
 ココログのヘルプを見てください。
Q16
 現在、自分は31歳の有職司法書士試験受験生です。自分の目標は司法試験に合格して検事に任官し、日本国のために働くことです。司法試験合格の手段として法科大学院進学を考えています。ただ、法科大学院には数百万円をかけて尚且つ三振の危険があるのでリスク軽減のために司法書士試験合格を目指しています。ただ、葉玉先生のこのブログでの回答を見るたびに自分の選択は間違っていたのではないかという思いが出てきました。仕事については法科大学院の学費を稼ぐため及び生活のためにやめることは出来ません。現在の仕事がとても忙しいので勉強時間は一日1時間から2時間取れるかどうかというところです。このような状況の中で自分のように司法書士試験合格を経て司法試験合格から検事への任官を目指すという方法についてどう思われますか。
 葉玉先生は元検事の経歴をお持ちですが、検事に任官するのに年齢によるボーダーラインはあるのでしょうか。以前に44歳の方が任官されたということを聞いたことがあります。
 葉玉先生が大量の仕事を処理するときの秘訣があれば教えてください。
投稿 不孤 | 2008年2月 8日 (金) 21時47分
A16
1 司法書士の人が、検事になりたいと思うのは、よいですが、検事になるために、とりあえず司法書士を目指すのは、やめましょう。虻蜂とらずになります。
2 検事の任官年齢は、絶対的なボーダーラインはありませんが、定年が決まっていることや、若い方が可塑性があることから、一般的には、二十代がほとんどです。
 ただ、やる気と能力があれば、例外はあります。
3 大量の仕事を処理するには、次のどれかです。
 ①極めて長い時間仕事をする
 ②一つ一つの仕事を短時間で終了する。
 どちらにせよ、クオリティーの高低はありますが、長い時間をかけたからといって、クオリティーがあがるわけではありません。
 

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2008年2月 2日 (土)

「事実認定」と「法律の解釈」

 ふと気づいたのですが、今年は、司法試験に合格して20年目になります。
    「私が合格した年に生まれた子が、来年は成人式・・」
と思うと、「歳をとったな」と、ドヨーンとしてしまうわけですが、端から見ると
「目の前に自分の子供が4人いるんだから、もっと早く気づけ!」
と怒られそうです。

 私は、司法試験合格以来、新聞や法律雑誌等で民事事件や刑事事件の記事を見たときに
「どういう判決になるか」
を予想することを趣味にしています。
 趣味というより、「法曹にとって、判決を予測する力は大事だ」と思って、若い頃からやっている癖みたいなものですが、20年この道にいると、事件の概要を見れば
 「こっちが勝つ」
 「うーん、ケースバイケースだなあ。こういう事実があったら、こっちかなあ」
という予想が、そう大きく外れることはありません。
 たまに、裁判の当事者にしか分からない具体的事情を考慮して、従来の法解釈よりも、妥当な結論を優先する判決がでることもありますから、当然、予想が外れることもあります。

 たとえば、最近では、マクドナルド店長の残業代訴訟の「管理監督者」の認定
http://backnumber.dailynews.yahoo.co.jp/?m=m20080128-015&e=mcdonalds
などは、「ケースバイケースだなあ」と予想していたものですし、武富士元会長の長男の課税取消訴訟の控訴審判決における「住所」の認定
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080124-00000061-san-soci
は、正直、ちょっと予想外のものでした。

 私は、武富士事件控訴審は、「租税回避の目的があるんだから、課税されないのはおかしい」という常識的な結論を重視されたのだと思っています。

 ただ、控訴審判決のように「租税回避目的」という主観的要件を「住所」の認定に用いることや、滞在日数を軽視することは、従来の「住所」の解釈と比べると、相当違和感を感じます。

 もちろん、この控訴審判決を機会に、「住所」の判定について、滞在日数という要素を軽視し、主観的要素などを織り込んで、一般的な基準を確立するならば、そういう解釈も悪くありません。
 ただし、その解釈でいけば、武富士事件とは、逆に、1年以上日本で働いている外国人についても、その人の資産の大部分が母国にあり、将来、母国に戻って働くことが予想され、母国に戻ったときは、母国にある自宅で寝泊まりし、主観的にも母国に住所があると考えている場合には、たとえ、日本での滞在日数が母国のそれより多い場合であっても、日本に住所があるとの推定を覆して、「非居住者」として取扱うことを認めるべきですが、たぶん、税務署も、裁判所も、そういう解釈はとってくれないでしょう。

 結局、武富士事件の控訴審は、住所についての一般的な「解釈」を示したものではなく、「住所」についての「事実認定」を工夫して、アドホックな解決を図ったと見るのがよさそうです。

 まあ、高裁は上告されると予測していたでしょうし、最高裁は、原則として事実認定には立ち入れないので、「事実認定」による解決を図ろうとした気持ちも分からないではないですが、従来、住所とは、
  
「個人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する」

という解釈が確立していたはずです(所基通2-1等)から、武富士事件控訴審決定が、租税回避目的という主観的要素を「住所」のあてはめの際に用いたことは、単に事実認定を行っただけではなく、「住所」について新たな解釈を加えたことにほかなりません。

 そもそも、裁判所は、「事実認定」と「法律の解釈」という2つのツールで「妥当な解決」を図る仕事です。
 
 そのため、普通の「事実認定」と普通の「法律の解釈」をしたにもかかわらず、裁判官が、「この結論は妥当ではない」と感じたときには、悩みが生じることでしょう。

 そのとき、裁判官には

(1) 普通の判断をして「妥当とは思えない解決」をする

(2) 「普通の法律の解釈」を変えて、「妥当と思える結論」を得る

(3) 「普通の事実認定」を変えて、「妥当と思える結論」を得る

の3つの選択肢があるのですが、本来、事実認定は、法律の解釈や結論とは無関係に、価値判断を加えず、証拠から淡々と認定すべきものですから、(3)は邪道です。

 裁判官自身が「妥当」とは思えなくても、一般常識的には「妥当」な場合だってあるのですから、謙虚に(1)を選択するのもおかしなことではありません。

 しかし、裁判官が、どうしても「妥当と思える結論」に拘るのならば、(2)の法律の解釈の変更という手段を採るべきです。

 武富士事件控訴審判決は、「あてはめ」を工夫して結論を導いていますが、「あてはめ」は、「法律の解釈」を前提とした評価行為ですから、普通ではない「あてはめ」をすることで「妥当な解決」を図ろうとする行為は、(2)の「法律の解釈」の変更にほかなりません。

 私は、武富士元会長の長男さんの敵でも味方でもないですが、課税関係において、「住所」は極めて重要な概念なので、武富士事件控訴審判決が、「住所」についての従来の解釈を修正し、主観的要素を加味するのならば、その根拠と、きちんとした基準を判決の中で示してもらいたかったと思います。

金額が大きいこともあり、最高裁もいろいろなことを考えて、判決をするでしょうから、最高裁が「住所」について、どんな解釈を示してくれるのか楽しみです。
 
 ちなみに、現在では、税制改正により、非居住無制限納税義務者の範囲が拡大されたため、海外移住による相続税対策は、相当難しくなったわけですが、控訴審判決のような「住所」の解釈ができるのならば、本当に税制改正は必要だったのでしょうか?
 そこらあたりも興味あるところです。

(質問コーナー)
Q1
Q9の質問をした者です。お忙しい中、ご回答誠にありがとうございました。
質問の仕方が悪く、質問の意図が伝わらなかったようですので、再度質問させていただきます。
合併にあたり、端数が発生した場合については会社法234条1項5号に規定があり、金銭による処理が必要となります。しかし、2人の株主のうちの1人にのみ端数が0.75発生している場合には、当該端数0.75は会社法234条1項柱書きの括弧書きにより切り捨て、金銭による処理は不要であるとの理解でよいのでしょうか。
0.6と0.5の端数を合計して1.1になった場合に、1株を売却して0.1を切り捨て、売却代金を6対5で交付するのはわかるのですが、端数が1人にしか発生しておらず、「合計」をしていない場合であっても切り捨ててもよいのか、というのが問題意識です。
投稿 senchan | 2008年1月25日 (金) 15時46分
A1
レアケースのように思いますが、1人しか端数がいなくても、合計は合計でしょう。

Q2
会社法400条4項によりますと、委員会設置会社の会計参与や使用人は監査委員と兼任できる事になるように読めますが、兼任可と理解していいのでしょうか?
またもし兼任可でよい場合、子会社の会計参与や使用人との兼任でさえ禁止されているのに、なぜ許されるのでしょうか?
投稿 会社法散歩中 | 2008年1月28日 (月) 04時36分
A2
監査委員は取締役です。
とすると、
333条3項1号で、会計参与になることはできませんし、415条で、業務執行をすることができないので、使用人にはなれません。

Q3
1人株主の特例有限会社において、当該株主が第三者にその全株式を譲渡する場合、やはり、形式的にせよ株主総会の承認が必要になるのでしょうか?
その場合、自分が売ることを自分しか議決権を持たない総会で承認するということになるので、形式手続の典型例のような気がいたしますが・・・。
投稿 特例有限会社に悩む人 | 2008年1月28日 (月) 11時42分
A3
 まあ、形式を重んじれば、必要でしょうね。

Q4
株券電子化関係でご意見をお聞かせねがいたい質問がございます。
多くの上場会社が株券喪失登録に関する規定を設けていると思われますが、
今回の質問は、その定めを削除する定款変更の時期に関するものです。
これまで、喪失登録の定めの削除については、株券不発行への定款変更
より1年間喪失登録簿を備え置く義務があることなどから、電子化施行日より
1年後に対応するものと考えていました(→平成22年の総会)。
しかし、株券喪失登録に関する規定はもともと無益的記載事項であるから
平成21年総会で単元未満株券の不発行などとともに削除してしまってよい
という考え方もあると耳にしました。
総会担当者としては、平成21年総会の1回でケリをつけられる後者の考え方を
支持したいところですが(定款変更の理由を説明しにくいという点は…ですが)、
先生はどのようにお考えでしょうか。
投稿 ヒゲマン | 2008年1月28日 (月) 14時43分
Q4
平成21年は、まだ株券喪失登録に関する規定は無益的記載事項にはなりません。だから、1年間は残す必要があります。
もっとも平成21年総会の1回でケリをつけようと思えば、定款変更のやり方を工夫するだけで、平成22年1月時点において、株券喪失登録に関する規定を削除することもできます。

Q5
未公開会社であり、有価証券報告書提出会社でない会社で
公告方法として官報によることとしている会社があります。この会社
は計算書類の公告については電磁的方法によることとしています。
今般、定款を変更し、公告方法を官報公告から電子公告に変更する
ことを検討しておりますが、電子公告が実現すれば、現在の計算書類に
関する登記事項は現在のままにしておいてよろしいものでしょうか。
会社法施行規則220条2項には「別に登記することができる」と規定
しており、特に変更する必要はないようにも受け取ったため伺う次第です。
また、電子公告に変更してしまえば、計算書類について電磁的方法による
とする登記事項については削除等してしまうことも可能でしょうか。
投稿 smoky | 2008年1月28日 (月) 17時02分
A5
計算書類の電磁的公示と、電子公告において計算書類のみ別のアドレスで公告することができる制度は別の制度です。
 電子公告に変更すれば、電磁的公示のアドレスは不要です。

Q6
清算会社の弁済禁止期間について教えてください。
例えば、解散日から公告催告日まで2週間ある場合、条文どおりですと、この2週間は弁済禁止期間にあたりませんが、この2週間以内に知れたる全債務を弁済してもいいのでしょうか。
また、弁済禁止期間中に発生する小額債務、例えば清算人の交通費などは裁判所の許可を得ることができませんが、どういう方法で支払えばいいのでしょうか。なにか裏技はあるのでしょうか(笑)
投稿 ちりがみ | 2008年1月28日 (月) 17時25分
A6
解散したら、遅滞なく、公告しなければならないのですが、「2週間」というのは、どういう理由で生じた期間なのでしょうか?

Q7
葉玉先生こんにちは。
商事法務No.1822掲載の「株券の電子化に向けた実務対応(上)」拝読いたしました。
早速ですが、質問させてください。
端株の廃止方法の一つ、株式の分割と単元株式数の設定を同時に行う方法の説明の中で、『取締役会の決議により単元株式数を設定することができるという特例(会社法191条)は、種類株式発行会社には適用されない』と説明されていますが、勉強不足ゆえ、種類株式発行会社には不適用であることをはじめて知りました。こちら根拠条文等はどちらになるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
投稿 一受験生 | 2008年1月29日 (火) 15時10分
A7
 正確にいえば、191条は、形式的には適用されますが、184条2項で発行可能株式総数の増加を取締役会の決議で行うことができず、株主総会の特別決議による定款変更が必要なので、191条を使う意味がないということです。

Q8
はじめまして、現在、大学3年生で今年法科大学院を受験しようと思ってます。
会社法とは全然関係ないんですが、弁護士に必要な能力について質問させてください。
私は将来弁護士になりたいと思っているのですが、しゃべり方に問題があり、吃音症なのです。つまり、時々言葉をうまく発することができず、どもってしまうことがあります。
そのどもり気味なしゃべり方のせいで弁護士をあきらめようとは思いませんが、やはり「弁護」士ですから、その能力として雄弁であることは必要なのかと最近感じています。
葉玉先生は、以前ブログの中で「良い弁護士とは何か」ということについて触れられていますが、その良い弁護士の要件として他に、しっかりと言いたいことを相手に伝えた上で、さらに流暢に言葉を話すといったことが必要でしょうか。
投稿 ぱんだ好き | 2008年1月29日 (火) 19時21分
A8
弁護士の仕事は、しゃべることばかりではありません。それほど多くを喋らずにできる仕事も沢山あります。
実際、私は、吃音症の非常に優秀な弁護士さんを存じ上げています。
ハンディがないとは言えませんが、十分克服可能です。

Q9
授権資本制度の根拠条文についてお尋ねします。
神田先生の『会社法[第9版]』(弘文堂)P118には37条1,2項とあるのですが、
『会社法100問[第2版]』P280には113条参照とあります。
どちらも正しいように思われるのですが、どちらでも構わないんでしょうか?
投稿 大山高原牛乳 | 2008年1月29日 (火) 21時49分
A9
どちらでもいいでしょう。

Q10
新・会社法100問(緑色の冊子)の問87について質問させてください。
解答例の三3(一)において「債権者等は・・・事前に剰余金の配当等の差止めの仮処分を行うことにより・・・」とありますが、この債権者による配当の差止めの根拠条文は何になるのでしょうか?
投稿 nnn | 2008年1月29日 (火) 22時37分
A10
私は、仮の地位を定める仮処分の一種として差止めることができると考えています。

Q11
会社法現代化にあたっての法制審議会の議事録(31回)によれば、株式の全部取得にあたり「正当事由」が明文上必要とされていたが、審理の過程で「正当事由」が削除され種類株式として構成された、ただ明文からは削除されたとしても、解釈上は正当事由が必要だ、との議論がなされているようです。
やはり立法担当者の葉玉先生としましても、全部取得条項付種類株式を定める定款変更決議などにあたり、解釈上は正当事由が必要というご理解でしょうか。
その場合、いかなるケースにて正当事由が認められるのでしょうか。
いかなる場合に正当事由があり、あるいはないのかが判然とせず、決議無効などを考えると当該制度を利用するのに躊躇いたしますので、宜しくご教示下さい。
投稿 redia | 2008年1月30日 (水) 10時08分
A11
 私は、条文を重視しますので、「正当事由」は実体法上の要件ではないと考えます。
 ただし、特別利害関係人である株主が議決権を行使して著しく不当な決議が行われれば、決議取消事由になります。

Q12
220条(株券の提出をすることができない場合)についての質問です。
弊社(A社)の状況をご説明させていただきますと…
1.A社は、株式移転の方法により完全親会社B社を設立して、その完全子会社となった。
2.次にB社は、(資本関係のなかった)C社と共同して株式移転の方法により完全親会社D社を設立して、その完全子会社となった。
3.さらにD社は、B社を吸収合併した。(D社が存続会社)
4.その結果、A社は(C社とともに)D社の完全子会社となった。なお、D社は上場会社です。
先日、A社の旧株主から、A社の旧株券を喪失していたため、1.および2.の株式移転に際して株券の提出をすることができなかった旨の申出がありました。この場合…
ア.A社の旧株主が220条1項の請求をすることができる期間等の定めは、あるのでしょうか?
イ.220条1項の公告をすべき会社は、どの会社なのでしょうか?
ウ.220条2項の「前条第2項の金銭等」とは「当該行為によって当該株券に係る株式の株主が受けることのできる金銭等」だと思いますが、これにはD社の「新株券」も含まれると解してよいのでしょうか?
エ.A社の旧株主にD社の新株券を交付することができるのは、220条1項の公告(3箇月)の後、すぐなのでしょうか? それとも、(221条の文中に、219条3項の規程により無効となった株券を含むとの記載がありますので)公告(3箇月)の後、221条の株券喪失登録を経て、更にその1年後なのでしょうか?
投稿 ツェーベーツェー | 2008年1月30日 (水) 10時23分
A12
ア ありません
イ 争いのあるところではありますが、A社が原則です。ただし、B社=D社もできると解されていると思います。
ウ 含まれます。
エ 220条1項の公告終了後であると考えます。

Q13
優先株式を発行するときに、既存の株式の時価が500円である場合、優先株式を100円で発行することは有利発行に当たるのでしょうか?
投稿 ただし | 2008年1月30日 (水) 16時47分
A13
優先株式の内容次第です。残余財産分配請求権が制限されていれば、十分ありうるでしょう。

Q14
葉玉先生、こんばんは。
新会社法100問(第2版)90問―2の設問1について質問がありメールさせて頂きました。
初歩的な質問ばかりと思いますが、どうぞよろしくお願致します。
「解答例では触れられているけれど、わからない事項について。」
・524Pの1段落目で、
量的側面は簡易性(総資産の20%未満か否か)の判断で行われるので、「重要な事業の一部の譲渡」の「重要」かどうかの判断を質的基準(事業譲渡が、譲渡会社の収益や事業活動に重大な影響を与えるものか)により判断されるべき。とした後の当てはめで、
「本件部門にかかる資産の価額は、P社の総資産の約40%を占めており、その資産の規模及びP社の内部での事業再開も視野に入れていることからすれば、本件譲渡はP社の譲渡後の収益や事業活動に重大な影響を与えるものであると認められ、簡易譲渡にも該当しない。」
 と書かれていますが、量的側面の判断の直接事実として使う「譲渡される事業のP社の総資産の割合」を質的側面の判断の当てはめで使っているのは、この事実が「譲渡会社の収益や事業活動に与える影響の重大さ」を推認する間接事実であるからということでいいのでしょうか?
A14
そうです。

Q15
・以下の質問は、「株主総会決議をする前提として、株主総会の招集の決定が必要な場合であり、株主が招集する場合でないこと(=すなわち、取締役会が「総会の目的である事項」(298Ⅰ②)など事項の決定がなされる(298Ⅳ)場合である」こと)を前提としています。
524Pの3段落目で
「したがって、競業避止義務を排除する特約が締結されない場合には、本件譲渡は株主総会の特別決議が必要な「事業の重要な一部の譲渡」に該当する。」とした上で、P社に対する回答(①P社の株主総会の特別決議を要すること、以下省略)について書かれていますが、この中に「取締役会の承認決議が必要」という話はありません。
これは、「株主総会の特別決議が必要」といえば、招集決定に際し、取締役会の「事業の重要な一部の譲渡」についての承認決議が当然なされるから、書く必要がないということでしょうか?
A15
 どこまで細かく書くかというだけの話です。

Q16
・524Pの(三)「重要な財産の処分」(362Ⅳ①)の判断基準を導く理由付けは、「重要性は、個々の会社によって異なるから」ということでしょうか?
投稿 ロー生T。 | 2008年1月31日 (木) 01時12分
A16
 理由付けは必ずしも要らないのではないでしょうか。

Q17
存続会社も消滅会社も債務超過である会社の合併は 可能でしょうか?
投稿 senchan | 2008年1月31日 (木) 08時56分
A17
可能だと思います

Q18
さて、株主総会の招集手続きに関して、一点お尋ねがあります。
株主総会の招集にあたり定めるべき事項として、会社法施行規則63条4号ロに、書面投票およびインターネット投票で重複して議決権を行使したときの取り扱いがあります。
これについては、毎年、そう変わる取扱いではないので、一度、取締役会でその取扱いを決議してしまうとともに、「この取扱いについては、本取締役会での決議を、以後の定時株主総会において継続適用する」という決議をしてしまうことも可能でしょうか。
施行規則63条3号には「定款に定めがある場合、またはこれらの事項の決定を取締役に委任する旨を決定した場合」とあるのに対し、63条4号には「定款に定めがある場合」としか書いていないので、毎年、決議を行う必要があるのかなと
思いまして、ご質問する次第です。
投稿 会社員 tomo 34 | 2008年1月31日 (木) 10時25分
A18
 最初の取締役会の一回だけで済ますのは、条文上は、無理があります。
 株式取扱規程で定めれば、通常、「定款に定めがある場合」に読み込んでよいと思います。

Q19
取得条項付株式について質問させてください。
事業承継対策の一環で、会社法107条Ⅱ③の取得条項として、「株主である当会社の従業員が、その地位を失った場合」といった内容を定めることは、会社法上問題があるでしょうか。
株主の属性に着目して差別的な取得条項を付することは、株主平等原則や株式の性質に反するのではないかという問題意識です。
個人的には、差別的な取得条項を付することに合理性がある、あるいは株主全員の同意を得ている(110条)等の理由により、このような取得条項が許容される可能性は高いと考えますが、先生のご意見をお聞かせいただければと思います。
投稿 SK8 | 2008年2月 1日 (金) 22時51分
A19
 私も、株式の内容として、そのような定めをすることは株主平等原則に反しないと思いますが、伝統的には、認められないとするのが通説だったと思います。
 登記実務にもからむので、とりあえず断言は避けます。

Q20
いつも多忙の中、このような質問に対応していて大変だと思います。
葉玉先生のご努力には頭が下がります。
本来このような業務は法務省がやるべきだと思うのですが、
役所がこのような質問対応窓口をWEB上に開設しないのは、何故なのでしょうか。
電話で一々応対するより、WEB上で公開した方が、同様の質問に何度も答えなくていいと思うのですが。
何か制度上の制約でもあるのでしょうか、それとも単に面倒だからやってないのでしょうか。
投稿 素朴な疑問です | 2008年2月 1日 (金) 23時37分
A20
 役所がやるには、予算もいるし、失言したら、国会に呼ばれるし、大変なのです。

Q21
私は検事を目指し4月からとあるロースクールに入る予定の者ですが、その矢先、先日の朝日新聞の一面に新司法試験合格者3000人見直しという記事があるのを見ました。まだ3000人に達してもないのに、新司法試験もまだ二回しか実施してないというのに、早くも見直すことになるという無策ぶりになにやら年金問題や医師不足、ゆとり教育と同じ雰囲気を感じ、憤りを覚える今日この頃です。
そもそも3000人が多過ぎることはロースクールが出来る前から危惧し、警鐘を鳴らしていた人がいたらしいにもかかわらず、強行し結果この有様です。道路とかと同じで誰かが甘い汁をすってる人がいるとしか思えません。
なぜこういう結果になったかを検証せずにまた同じメンバーで見直してもまた同じ失敗をしそうでこわいです。多くの人、何より自分の人生のかかっている話なのでこれ以上振り回されるのは勘弁願いたいです。
そこで、質問ですがこのような不思議な制度の責任は一体どこにあるんでしょうか?司法制度改革、華やかなりし時に法務省にいらっしゃった先生は真相をご存知ありませんか?
3回という回数制限を付けたまま合格者を減らしたらロースクールが高学歴ニートの製造工場になりませんか?これからロースクール行く者としては不安がいっぱいです。かといって検事になるには基本的にこのルートしかないわけですし…。
(会社法と関係なく、また、最後グチみたいになって申し訳ありません。)
投稿 2万%合格したいユキ | 2008年2月 2日 (土) 00時52分
A21
 すいません。真相は知りません。ただ、3回制限が、非合理的かつ有害な制度であるということは、同感です。
 ただ、効率的な勉強を、一日12時間、3年間継続して、合格しない人は極めてまれです。責任追及をしたり、不安に思っている暇があったら、勉強した方がよいと思います。

Q19
取得条項付株式について質問させてください。
事業承継対策の一環で、会社法107条Ⅱ③の取得条項として、「株主である当会社の従業員が、その地位を失った場合」といった内容を定めることは、会社法上問題があるでしょうか。
株主の属性に着目して差別的な取得条項を付することは、株主平等原則や株式の性質に反するのではないかという問題意識です。
個人的には、差別的な取得条項を付することに合理性がある、あるいは株主全員の同意を得ている(110条)等の理由により、このような取得条項が許容される可能性は高いと考えますが、先生のご意見をお聞かせいただければと思います。
投稿 SK8 | 2008年2月 1日 (金) 22時51分
A19
 私も、株式の内容として、そのような定めをすることは株主平等原則に反しないと思いますが、伝統的には、認められないとするのが通説だったと思います。
 登記実務にもからむので、とりあえず断言は避けます。

Q20
いつも多忙の中、このような質問に対応していて大変だと思います。
葉玉先生のご努力には頭が下がります。
本来このような業務は法務省がやるべきだと思うのですが、
役所がこのような質問対応窓口をWEB上に開設しないのは、何故なのでしょうか。
電話で一々応対するより、WEB上で公開した方が、同様の質問に何度も答えなくていいと思うのですが。
何か制度上の制約でもあるのでしょうか、それとも単に面倒だからやってないのでしょうか。
投稿 素朴な疑問です | 2008年2月 1日 (金) 23時37分
A20
 役所がやるには、予算もいるし、失言したら、国会に呼ばれるし、大変なのです。

Q21
私は検事を目指し4月からとあるロースクールに入る予定の者ですが、その矢先、先日の朝日新聞の一面に新司法試験合格者3000人見直しという記事があるのを見ました。まだ3000人に達してもないのに、新司法試験もまだ二回しか実施してないというのに、早くも見直すことになるという無策ぶりになにやら年金問題や医師不足、ゆとり教育と同じ雰囲気を感じ、憤りを覚える今日この頃です。
そもそも3000人が多過ぎることはロースクールが出来る前から危惧し、警鐘を鳴らしていた人がいたらしいにもかかわらず、強行し結果この有様です。道路とかと同じで誰かが甘い汁をすってる人がいるとしか思えません。
なぜこういう結果になったかを検証せずにまた同じメンバーで見直してもまた同じ失敗をしそうでこわいです。多くの人、何より自分の人生のかかっている話なのでこれ以上振り回されるのは勘弁願いたいです。
そこで、質問ですがこのような不思議な制度の責任は一体どこにあるんでしょうか?司法制度改革、華やかなりし時に法務省にいらっしゃった先生は真相をご存知ありませんか?
3回という回数制限を付けたまま合格者を減らしたらロースクールが高学歴ニートの製造工場になりませんか?これからロースクール行く者としては不安がいっぱいです。かといって検事になるには基本的にこのルートしかないわけですし…。
(会社法と関係なく、また、最後グチみたいになって申し訳ありません。)
投稿 2万%合格したいユキ | 2008年2月 2日 (土) 00時52分
A21
 すいません。真相は知りません。ただ、3回制限が、非合理的かつ有害な制度であるということは、同感です。
 ただ、効率的な勉強を、一日12時間、3年間継続して、合格しない人は極めてまれです。責任追及をしたり、不安に思っている暇があったら、勉強した方がよいと思います。

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