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2008年1月17日 (木)

120条2項の推定規定

 7日の仕事始めから、怒濤のような仕事が押し寄せてきて、ブログの更新が遅れてしまいました。

 その間、毎日jpに「アルファブロガーに聞く」ということで、私のインタビューが掲載されました。このブログの裏話に類することも、つい喋ってしまいましたので、興味ある方はご覧ください。
http://mainichi.jp/life/electronics/news/20080115mog00m300031000c.html

なお、内藤卓先生のブログで
「最近更新ペースが落ちていますね。「お金を払って来るお客さんに提供するサービスのレベルと、ブログで無料で質問にお答えする部分のレベルを、どう折り合いをつけるか」ということでしょうか。 」
と指摘されてしまいましたが、決して、そういう訳ではありません。民事局時代と比べても、今の方が忙しいというのが原因です。
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/c/56eae484a32bd5c890e84dce1e23b641

また、木村税理士のブログに、アルファブロガーアワードの授賞式のときの動画がアップされました。これは、さらに裏話的なことも口走ってしまいましたので、興味のある方も見ないでください(というと、普通は、見てしまうんですよね)。
http://kimutax.livedoor.biz/archives/50938086.html

さて、昨年のモリテックス判決以来、私は、「株主に対する利益供与」のことが、相当、気になっています。
 私は、検事時代に、旧商法の利益供与事件の捜査に携わり、その際に、かなり法律的な検討を加えたためか、民事上の利益供与について定める会社法120条の解釈について一家言を持っています。

 このモリテックスの東京地裁判決では、モリテックスが、議決権行使書面を提出した株主に対し、500円のQUOカードを交付するという一種の株主優待制度が、会社法120条の利益供与の禁止に違反するかという点が一つの争点となりました。
 そして、結論だけ言えば、裁判所は、当該事例においては、当該株主優待は120条違反だと認定しました。

 この認定自体については、まだ係争中なので、とやかく言うつもりはないのですが、法理論的に気になっているのは、次の3点です。
① モリテックスのような株主優待は、120条2項の「特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたとき」に該当しないのだろうか。
②「株主の権利の行使に関し」というのは、一体、どういう意味なのだろうか。
③ 当該判例は、株主の権利の行使に関するものと認定した上で、「例外」的に違法性が阻却される場合があることを判示しているが、本当にそのような「例外」があるのか。

 このうち、本日は、①の120条2項の適用範囲について、お話しします。

 利益供与の禁止義務違反(120条1項)と利益供与罪(947条1項)は、ともに「株主の権利の行使に関すること」が要件としていますが、前者については、当該要件の存在について推定規定が存在しています。それが、120条2項です。

 総会屋に対して無償で利益を供与した場合に、120条2項が適用されるのは当然ですが、本件のように一定の要件を満たした株主に対してのみ、無償で利益を供与する場合に、120条2項が適用されるかどうかは、これまで明示的に議論されていないように思います。実際、モリテックス事件でも、120条2項については、論点になっていないようです。

 この「特定の株主」という文言は、120条2項のほか、特定の株主からの自己株式の取得を定めた160条にも出てきますが、昔の文献を調べても、「特定の株主」という文言の意義について、明確に解釈が示されていません。

 「葉玉さん」とか「松真さん」とかいうのは、明らかに「特定の株主」なのは分かります。しかし、これが「議決権を行使した株主」「その会社の役職員である株主」「10万株以上保有している株主」だったらどうかは、どうも不明確です。

 株主平等の原則(109条1項)の趣旨からすれば、1株単位で保有株式数に応じて行われる利益供与以外は、すべて「特定の株主に対して・・供与をしたとき」に該当するとの考え方もありえるかもしれませんね。おそらく、160条の「特定の株主」については、保有株式数に応じる取扱いをしない場合を広く含むことになるでしょうから、120条2項の「特定の株主」だって同義であるという人がいても不思議ではありません。

 しかし、120条2項は、総会屋対策の一環として昭和56年商法改正により設けられた旧商法294条ノ2第2項を継承した規定ですから、当時の立法趣旨に鑑みれば、その株主の特殊な属性(たとえば、総会屋であることや創業者であること)に着目した利益供与についてのみ、120条2項が適用されると考えるべきです。

 言い換えれば、120条2項の「特定の株主」は、氏名等により特定された株主や、株主の特殊な属性によって特定された株主のことをいい、一定の客観的要件を充たせば、どの株主に対しても利益が供与されるような株主優待を受ける株主は、含まれないと解すべきでしょう。

 このように解釈すれば、議決権行使型の株主優待制度のように、「どんな株主でも、議決権を行使さえすれば、その利益を享受できる場合」には、「特定の株主」に対する利益供与に該当しないという結論を導くことができます。

 基本的には、この解釈でいいと思っているのですが、ただ、次の2点が気になります。

第1は、 「会社提案に賛成した株主にQUOカード進呈」というモロに利益供与になってしまう事例についても、120条2項が適用されないことになってしまうのではないかということです。この点については、120条2項の推定は働かないものの、「株主の権利の行使に関する」ことの立証は容易なので、特に問題はないと言う理屈で解決することはできそうです。

第2は、無議決権種類株式を発行している会社において、議決権行使型の株主優待制度を実施した場合に、120条2項が適用されないかということです。これは、無議決権種類株式の株主が利益を供与することができないということを考えると、120条2項が適用されるリスクはありうるように思います。

 もちろん、「株式の種類ごとに株主の取扱いを別にするような場合には、120条2項は適用されない」という考えも十分成り立ちうるように思いますが、議決権行使型の利益供与は、「株主の権利の行使に関し」という要件との軋轢が大きいので、保守的に考えれば、種類株式発行会社では、そうした株主優待を辞めるか、無議決権種類株主にも平等に利益を享受できる制度を構築する方が望ましいような気がします。

次回は、その他の利益供与の論点についてお話します。

(質問コーナー)
Q1
早速ですが、100問の20の有利発行の話で、株主の取締役に対する423の検討で、会社自体への損害認定は無理だろうと書かれています。
一方、100問の17におきまして、取締役と通じて著しく不公正な価格出引き受けたものがいた場合の取締役などの責任については423責任を負うとされています。私にはこの場合も有利発行同様会社には損害はないように思えますが、いかがでしょうか。
投稿 アンナ | 2008年1月 6日 (日) 23時27分
A1
 そうですね。引受そのものについては、会社に損害は生じないでしょう。もっとも、引受人に対する責任追及に要した訴訟費用等は、423条責任を負う可能性はあります。

Q2
事業譲渡の意義についてひとつ質問させてください。
判例は、事業譲渡の要件として、①有機的一体として機能する財産の譲渡、②事業活動の承継、③競業避止義務の負担をあげています。
この③の競業避止義務の負担について、百問90-2の解説では、特約で排除できる場合には、③の要件を欠くことになり、事業の譲渡に該当しなくなると解されるとしておられます。
 もし、競業避止義務の負担が会社法467条1項1号・2号及び会社法21条の事業譲渡の不可欠の要件とするのであれば、21条の条文はどのように解釈するべきなのでしょうか?
 すなわち、会社法21条は、「事業を譲渡した会社・・・・は、当事者の別段の意思表示がない限り」と規定しており、条文上は、特約により競業避止義務を全面的に排除した場合でも「事業を譲渡した会社」に該当すると解するのが自然に思えます。(「事業を譲渡した会社」は、特約によれば、20年間どころか今すぐにでも同一の事業を行ってもよい=競業避止義務を負わない→競業避止義務を負わなくても「事業を譲渡した会社」である、と読めるため)
 そうすると、条文解釈としては、競業避止義務を特約により排除した場合であっても事業譲渡に該当する、という解釈の方が素直に思えます。もっとも、競業避止義務をメルクマールとする方が、株主総会決議が必要な事業譲渡か否かの判断にあたっては妥当だと思いますが、そうすると素直な条文解釈を操作しなければいけないように思います。どのように考えたらよいのでしょうか。
 なお、22条23条などは、競業避止義務を特約で排除した場合も適用されると思いますが、これも、競業避止義務を負わない場合には事業譲渡に該当しない、とする説からは、説明が困難ではないかと思います。(昭和40年最高裁判決は、「商法24条以下にいう営業の譲渡と同一意義」としており、会社法21条に限定はしていないと思われます。)
長くなりましたが、競業避止義務を特約で排除した場合には事業譲渡にあたらない、という見解について、会社法21条(及び22条・23条)との関係について解説いただけると幸いです。
投稿 めろ | 2008年1月 7日 (月) 23時17分
A2
 100問は、最高裁判決と同一の立場を採るという前提に、競業避止義務を排除した場合には、事業譲渡に該当しないと考えています。
 おっしゃるように、21条と同義ということを厳密に解釈すれば、本当は、競業避止義務は要件にならないはずです。
 しかし、最高裁があえて、競業避止義務を要件に入れた意味は、基準の明確化と467条1項1号の趣旨(譲渡会社が事業目的を遂行できなくなる)ということにあると思いますので、結論は、100問の解答で良いと考えます。
 ですから、厳密に言うと、会社法468条1項1号と会社法21条の事業の譲渡は異なる意味ではあるけれども、それでも、最高裁が、21条1項の事業の譲渡と「同義」と言っているのは、「単なる財産の移転ではない」という文脈で言っているのだと理解しています。

Q3
募集新株予約権の発行について教えてください。
236条1項2号の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法として確定額によらずに例えば、「当該募集新株予約権の発行後最初の募集株式発行の払込金額の70%とする。」というような定め方をすることは可能でしょうか。
このような定めは払込金額の決定方法であって客観的算定方法とはいえないのでしょうか。
投稿 七色吐息 | 2008年1月 7日 (月) 23時50分
A3
ちょっと工夫を要するものの、そのような定めもできないわけではないと思います。

Q4
はじめまして、会社法で悩んでいます。
法363-2の「取締役は、3箇月に1回以上、自己の職務執行の状況を取締役会に報告」と書かれていますが、当社は非上場(機関:取締役会+監査役)3月31日決算で7、10、1月の下旬に四半期決算の報告の取締役会を開催しています。
4月は決算書類を監査役に提出する取締役会を開催しています。
6月に総会開催の取締役会を開催しています。
今度の4月は決算書類を監査役に提出する取締役会を開催せずに監査役に決算書類を提出しようと思いますが、この4月開催を5月におこなうにと法に抵触するのでしょうか、ご教授お願いします。
当社では、3箇月に1回以上とは、四半期決算を中心に取締役会を開催することと思っております。
投稿 会社ではワタベと呼ばれてます。 | 2008年1月 8日 (火) 17時03分
A4
1月の次が5月になるということですね。あまりよくないような気がします。

Q5
剰余金の配当を行ったときの準備金の積立で質問があります。このとき、準備金が資本金の4分の1まで到達していなければ、配当の10分の1を積み立てることになっているとおもいますが、かりに10分の1がきっかり割り切れないとき端数はどうすればいいのでしょうか?(1円くらい切り捨てようが切り上げようが好きにして!ということでしょうか?)
投稿 アストレイ | 2008年1月 8日 (火) 19時38分
A5
あまり考えたことはないですが、10分の1以上にすべきなので、切り上げが安全ですね。

Q6
組織再編行為における反対株主の買取請求制度での買取価格(=公正な価格)についてご教授いただきたく、よろしくお願いいたします。

「論点解説 新・会社法 千問の道標」(P.682)によると公正な価格は、

(1)「株式買取請求権の効力発生時における時価」、つまり、「反対株主が株式買取請求したときの株価」が基準
(2)これに、組織再編行為が原因で株価が下がったと思われる部分があれば、その部分について補償する(=上乗せして買い取る)
(3)シナジー効果で株価が騰がった場合は、そのシナジーを織り込んだ価格になる

となっています。
旧商法における「決議ナカリセバ」部分がとれた最大の理由は(3)のシナジー分も補償すべきだということにあるのだと思いますが、それだけでしょうか?
(3)は(1)にあるように「反対株主が買取請求したときの株価」にすでに織り込まれており、実質的には買取価格に反映させないことになろうかと思います。
これはこれで、株価の持つ性質からみても妥当な考え方だとは思うのですが、一方で、旧商法下の判例(東京地判S58.2.10)を見ると、公正な価格は「公表前の一定期間の平均株価」となっており、「反対株主が買取請求したときの株価」については何ら考慮されておりません。
「決議ナカリセバ」を単純に「公表前の一定期間の平均株価」としたのは、買取請求期間までの時間差を考慮していないため、①株価の持つ性質(サブプライムローン問題に関係のない会社の株価まで暴落している現在の状況に見られるように外部環境次第で騰がったり下がったりする性質)をまったく考慮していないこと、つまり、組織再編の発表以外の原因で株価が下がった分を買取請求時から除外していないこと、②買取請求時までの間に「公表前の一定期間の平均株価」というプットオプション(売却権利)を買取請求者に与えることになり、一方的な株価上昇による利益のみを享受できることになってしまい、買取請求制度の意義を著しく逸脱した買取請求を助長しかねないことから、これは不適当であるという意図は入ってないでしょうか?
会社法下においても、旧商法下と同様に最低限、「組織再編前の価値」を補償することは同じであると考えから、会社法下でも「決議ナカリセバ」は生きているとすれば、上記判例の考え方を否定しないとつじつまが合わないことになってしまい、このあたりの論理をどのように構築するか悩んでいます。
投稿 悩める実務家 | 2008年1月 9日 (水) 11時29分
A6
 場合によっては、「決議なかりせば」を考慮するときもあるでしょう。
 そういうことをすべて含んで「公正な価格」です。

Q7
剰余金の配当について質問です。
分配可能額をこえる剰余金配当が有効か無効かの議論はいろんな本で見るのですが、会社法454条の株主総会決議を欠いていた場合等手続規制違反の場合の剰余金配当の効力はどのように考えるのでしょうか。
投稿 SON | 2008年1月10日 (木) 02時07分
A7
無効と考えるのが通説だと思います。
個人的には、一律に無効でいいのかという疑問はありますが。

Q8
19年3月期決算の監査のために、特定取締役および特定監査役として選定していた取締役Aと監査役Bを、20年3月期決算の監査のために再度、特定取締役および特定監査役として選定したいと考えております。この場合、事業年度が替わっているので、改めて選定する必要はございますでしょうか。ちなみに、監査役Bは19年6月総会で再選され重任しております。
投稿 株之助 | 2008年1月10日 (木) 22時10分
A8
事業年度ごとに決める必要はないと思います。

Q9
早速ですが、事業譲渡につきましてご教示いただきたい点がございます。
①会社法第469条第3項の通知ですが、譲渡会社・譲受会社いずれも株主が一人である場合(いわゆる兄弟会社)において、当該株主が事業譲渡を了承しているときにも必要となりますでしょうか?制度趣旨からしますと通知は不要に思われるのですがいかがでしょうか?
②会社法第467条第1項但書の場合、債権者保護手続期間中に事業譲渡の効力が生じる内容の事業譲渡契約を締結することは可能でしょうか?債権者保護手続期間が設けられた趣旨からしますと、債権者保護期間経過後に効力が生じる契約を締結せざるを得ないように思われるのですが、いかがでしょうか?
お忙しいと存じますが、よろしくお願い申し上げます。
P.S.アルファブロガー受賞おめでとうございます。投票したブログが受賞すると、こちらもうれしいものですね。
投稿 のぶ | 2008年1月11日 (金) 19時03分
A9
① 法定の通知を条文の根拠なく省略できるのかという点について、私は、慎重に考えるべきだと思います。なお、東京法務局民事行政部第一法人登記部門統括登記官土手敏行さんは、期間の短縮は可能だという見解を述べていらっしゃいます。
 ただ、一人株主が了承しているというのは、通知があるのではないでしょうか?
 それとも、期間の短縮の問題でしょうか?
② 事業譲渡には、債権者保護手続きはありませんが、どういう意味でしょうか。

Q10
連続した組織再編のことで質問させてください。株式移転で親会社を設立した後に、現在の事業の一部を親会社に会社分割で移動させようとした場合、株式移転によって親会社が設立される日に会社分割の効力を発生させる方法はあるのでしょうか?親会社設立前に会社分割の手続きを開始することができるかどうかわからなくて困っています。
投稿 マスタージャパン | 2008年1月11日 (金) 22時16分
A10
それは、難しそうですね。

Q11
取締役会の重要な業務執行権限(362条4項)について立案担当者の見解は、株主総会の権限とすることはできるが、取締役会からその権限を奪うことはできないというものであったと思います。

私は、この見解は、損害賠償責任を負う取締役(会)が権限を有することによって、取締役(会)が責任をもって経営にあたることを可能にすると同時にそれを要求することに意味があると思っています。

一方、ブルドックの最高裁決定では、株主の多数の承認があったことが強調されています。先生もこの決定を支持されています。

しかし、上述の見解(またはその趣旨)からすれば、防衛策の発動を決定する権限は取締役会があくまで負っているはずであり、株主総会にその権限を委ねたとしても、取締役会は自己の責任をもって最終的に決定しなければならないのではないでしょうか?
このような観点からすれば、あくまで株主総会の多数の意思があったかどうかは、取締役会の判断が合理的かどうかを示す一要素にすぎないということになりませんでしょうか?
投稿 AAA | 2008年1月13日 (日) 02時19分
A11
 質問の趣旨が良く分かりませんが、善管注意義務の問題として、ご質問されているのでしょうか?
 おっしゃるように株主総会の決議がある場合でも、取締役会が最終的に決定しなければならないし、それにより、取締役が善管注意義務違反にならないとは言い切れません。
 忠実義務との関係で、善管注意義務違反にならない若しくは過失がないという可能性は高まるでしょうが。

Q12
葉玉先生こんにちは、いつも楽しく拝見してます。不動産鑑定士をめざしている者ですが、会計学と経済学のお勧めの本がありましたら紹介してください。
会社法と関係なくてすみません。
投稿 KATU | 2008年1月14日 (月) 12時59分
A12
よく分かりません。
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(浜辺教授コーナー)*興味のある人だけお読みください。
1 「天下り」に関する論点
【浜辺教授】誰でもがやっている仕事ではなく、特別に重要な領域の仕事をしていた方が、その職務権限と関係のある事業を行うことや、自営業を営むことについては、前の職場の利益(この場合でいえば、国家の利益)にとって損失が生じる懸念があることは、上記の国家公務員法の趣旨や、民間事業者の競業禁止の考え方の底流にある考え方だと思います。
【葉玉】
 なぜ、公務員が辞めて弁護士になると、国家の利益に損失が生じるのか、ぜんぜん分かりません。
【浜辺教授】
次々に、難解な法律を作っては、弁護士転身などという法律家が続々と出てきて、困ることにならないのでしょうか?それとも、そうなっても何らの問題もないというのでしょうか?弁護士への風当たりも強い昨今ですから、これはもう少し他人の目も気にする必要があるように思うわけです。
【葉玉】
 法律の立案プロセスに携わっていただければ、それが自分勝手に作れるものではないことは明らかです。ですから難解な法律を作って、弁護士転身などという法律家を排出するようなシステムにはなっていません。
 また、「法律を作ったから、クライアントが列をなす」ということはありませんし、たった一つの法律だけで、弁護士がずっと飯を食えるはずないのは、浜辺教授ほど弁護士経験が深い方であれば、ご存じのことだと思います。
 さらに、任期付任用で公務員として働いている弁護士の給与は、同期の検事とほぼ同等ですが、弁護士時代の半分以下になることはご存じでしょうか。
 任期付任用公務員は、安月給で2-3年働き、その間、クライアントとの関係は途切れるというリスクを犯しながら、皆さん、自分の経験を深め、能力を高めるということだけで頑張っています。
 検事も同じです。検事の給料は、他の公務員と比べると高いですが、残業手当はつきません。休日出勤手当も抑えられています。残業で午前様になったときのタクシー代も自前のことが多いです。公務員宿舎はかなり値上がりしてしまいましたし、転勤時の引っ越し代も全額でません。正直いって、金銭面では、あまり報われません。国民の利益のためにがんばろうと思っているから、つらい仕事でも頑張っているのです。そういう現実を知っている私から見れば「難解な法律を作っては、弁護士転身」などという有り得ないストーリーを言うこと自体、世間知らずというほかありません。

3 株式会社と有限会社の問題
【浜辺教授】
従前の考え方では、有限責任社員のみの会社で、①②の義務がないけれども、「有限会社」ということであれば、株式会社ほど信用はないことを前提に注意して取引しやすいということで、それほど不都合はなかったのではないかと思います。
【葉玉】
 「有限会社は、株式会社ほど信用はない」というのが、区分立法の悪弊だということは、これまで、お話ししたとおりです。もっと、「中身を見ろ」というために「有限会社」の新設が禁止されたと考えてもいいかもしれません。

4 会社法の「わかりにくさ」に関する問題。
【浜辺教授】「分かりにくくするために、2条で定義していない」などとは、誰も口が裂けても言えないことだと思いますので、本書が述べているのは、一つの推理であり、論評です。
【葉玉】
 口が裂けても言えないから、そう言っているのではありません。違うから違うと言っているだけです。
【浜辺教授】
葉玉先生は、「「金銭等」というのは、会社法上の独自の法概念ではなく、一般的な概念を短くするために使っているだけなので、私の感覚から行っても、2条に置くべきものではないと思います」というのですが、会社法施行規則の定義条項である第2条第2項第34号では「金銭等」の定義があり、場当たり的な説明のように思います。
【葉玉】
施行規則二条二項は、会社法の施行規則という性質上、会社法の定義と同じ定義を使う言葉を列挙すること自体に意味のある規定です。会社法二条とは、まったく役割が異なります。ですから「場当たり的」な説明ではありません。

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コメント

更新ごくろうさまです!

すみません質問の趣旨がわかりにくくなってしまいまして・・・
再度よろしくお願いします。

端的に質問させていただきますと、なぜ、ブルドック事件のような防衛策の発動の場面においては、「株主の多数意見=適法」なのかということです。

先生がご回答くださったように、「株主総会の決議がある場合でも、取締役会が最終的に決定しなければならないし、それにより、取締役が善管注意義務違反にならないとは言い切れ」ないわけです。

そして、このことは、善管注意義務違反だけではなくて、およそ取締役(会)の行為の適法性の有無の判断を取締役(会)は株主総会に完全に委ねてはいけないということをも同時に意味すると思います。

しかし、最高裁は、「特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものである」としています。

これは、なぜなのでしょうか?
そもそも、業務の執行は、その重要度が増せば増すほど、企業価値、株主の利益に影響を及ぼす可能性が高いものです。この最高裁の論理だと極端にいけば、「非常に重要な業務執行については、株主総会の多数意思があれば適法である」ということになってしまうのではないでしょうか?

わたしは、重要度が高い業務であればあるほど、経営のプロの取締役会が最終的に判断すべきであるというのが本筋な気がしますがいかがでしょうか?

投稿: AAA | 2008年1月17日 (木) 02時23分

会社法に四苦八苦しているロースクール生です。
さっそくですが、会社法100問の問61(競業避止義務)について質問をさせてください。
解答例には、株式会社Aは、同社の取締役甲に対して「委任契約上の義務の履行として競業行為の差止めを求めることができる」(第2版では347頁)とされていますが、その根拠条文は何条になりますか?

お忙しい中、基本的な質問で恐縮ですが、どうぞよろしくお願い致します。

投稿: Davis | 2008年1月17日 (木) 09時41分

くだらない質問かもしれませんが。。
よく「価額」と「価格」を使い分けられていることがあります。
両者の用語の意味に何か(日本語や法的に)違いがあるのでしょうか。
こちらでご質問することでなければ、もうしわけございません。

投稿: すみません | 2008年1月18日 (金) 16時23分

初めて投稿させて頂きます。親会社による債務超過子会社の簡易合併について2点ほど質問させて頂きたくお願い致します。
1.会社法施行後は、子会社の簿価債務超過状態を親会社が増資を引き受けることによって解消したとしても簡易合併を行うことができない、というのは本当でしょうか。(以前にも投稿がありましたが改めて確認させてください。)
2.上記1.が本当だとすると、親会社が連結配当規制適用会社(計算規則2条3項72号)となることによって、債務超過子会社の簡易合併を実施することが考えられますが(施行規則195条3項)、ある会社(ここでは親会社)が連結配当規制適用会社となる時点について、立法担当者の解説では連結配当規制の適用を受ける旨決定のうえその旨注記された計算書類の監査を受けた計算書類の取締役会設置会社にあっては取締役会、その余の会社にあっては株主総会の承認決議を経た時点から連結配当規制適用会社となる旨述べられています(商事法務1767号46頁)。そこで、当該決議(=連結配当規制適用会社となる時点)と簡易合併手続の先後関係についてご質問なのですが、当該決議は合併契約の締結前に経ておく必要があるのでしょうか、それとも簡易合併の判断基準時である合併の効力発生日の前日までに経るのであればそれまでに(親会社が連結配当規制適用会社となっていない状態で)当事会社において合併契約の締結や債権者保護手続などの合併手続きを進めていても問題ないのでしょうか。
宜しくお願い致します。

投稿: sophia | 2008年1月18日 (金) 16時47分

もともと不毛な議論だったけれど、もう中傷合戦になっています。やめてください。
やはりブログは論争には不向きですね。

投稿: 傍観者 | 2008年1月18日 (金) 23時48分

前のエントリで質問していたのですが、荒らしにまぎれてしまっていたようです。
再掲しますので、よろしくご教授いただければと存じます。

----------------------------------------------
こんにちは。
監査役と株主の権限について、質問があります。

非公開会社が、大会社でなく、かつ、取締役会を任意設置している場合、
監査役設置が強制されます(327条2項)。したがって、2条9号後段によって、監査役
設置会社になります。
もっとも、非公開ですし、監査役会も会計監査人も設置しないことが可能ですので、
監査権限を会計関連に限定することが出来ます(389条1項)。

このような会社で、株主の差止め請求権(360条)などが、制限されてしまう(360条3項)のは、合理的なのでしょうか?
監査役もそれらを行使できません(389条7項・385条)し、株主の行使も厳格になってしまいます。
非公開会社において、差止め請求権の株式保有要件が緩和されている(360条2項)
のと合致しない規制のようにも感じます。

条文の読み方が間違っているのかもしれないので、その場合はご指摘ください。
よろしくお願い致します。

投稿: 鉄 | 2008年1月19日 (土) 09時48分

決して中傷合戦ではありません。まじめな議論です(浜辺)

葉玉先生

しばらくご無沙汰しておりました。

 とはいっても、先週は2件もの新年会で直接にお会いすることができ、和やかにお話しする機会が持てました。7日以降、怒涛のようなご依頼の仕事の合間を縫ってきているとは思えないような余裕のご様子とお見受けしましたが、どんな時でも多少の息抜きは必要ですね。(なお、2人の間は、決して険悪な雰囲気ではありませんでしたので、その辺、読者の方々には誤解のないように、お知らせしておきます。)

 さて、このブログでの位置づけも、少々というか、かなりマイナーになってきたとはいえ、権威あるブログにおいて、一応コーナーみたいになっておりますので、少しコメントをしたいと思います。あくまでも、こういう議論もあるということで、おつきあいいただければ幸いです。

1 最後まで残ったテーマは、「法曹のキャリアはいかにあるべきか」です。
 まず、他の方の質問にもありました。【葉玉】「なぜ、公務員が辞めて弁護士になると、国家の利益に損失が生じるのか、ぜんぜん分かりません。」という点ですが、この文脈では事業体ないし雇用主としての「国」の利益のことをさしています。
 すなわち、事業体(企業や国家など)は、エリートとなる人材に重要な仕事を割り当てることによって、人材を育て、この蓄積が、良い意味での「官僚組織」を支えております。こうした人材が組織外部に逃げていってしまうことは事業体としては損失になります。例えば、海外留学させた公務員が、帰国した途端に外資系企業に転職してしまった場合、留学費用とかが損失だということが議論されることがありますが、その場合の国の損失は、留学費用もさることながら、その有能な人材が将来、国のために奉仕してくれる仕事をしてくれないということのほうがもっと大きな損失なのだろうと思います。しかし、よく考えてみると、留学よりも、例えば百年に一度の会社法の立法といったような「特別に重要な領域の仕事をしていた方」のほうが、留学にいっていた公務員よりも、もっと国家としては将来に期待する価値は大きかったというべきであり、その価値が失われたという意味において、それは損失だろうと述べているわけです。
 以上が、最初の疑問点に対する一つの回答です。

 そこで、本題のテーマ「法曹のキャリアのあり方」ですが、理想としては、「法曹一元」が理想であり、前にも示唆した通り、「判検交流」ならびに、これに類するような公正らしさを欠くような人事異動・交流は問題あり、というのが、私の立場です。
 この立場から疑問を提起したものであって、いろいろなご意見もあるでしょうが、あくまでも、そういう問題があるということも分かって欲しいというレベルの議論です。

 「法曹一元」については、長い議論がありますが、略して言えば、職業法律家(法曹)は、まず弁護士として少なくとも数年の経験を積み、それを基礎として裁判官とか、それなりの公的な、あるいは権威のある公職について仕事をしていただくのが理想であり、政治家や官僚による重要な立法作業というのも、そういった種類のものに含まれると思います。
 他方、判検交流の問題は有名ですが、これに類する公正らしさの問題とは、判事・検事の方たちは、党派的な立場から独立していることが期待されているのに、その直後に特定のグループ、階層の人たちのための仕事をするといったようなことになるのは、問題視されるだろうということです。その場合、いくら行政側の代理人を務めてから裁判官に戻った立派な御仁が、「理論的に正しい仕事を淡々としているだけで、公正に裁判をしている」と断言しても、多くの国民や弁護士は、そうした言明を信用できないだろうということは、お聞きになったことがあろうかと思います。

 今回、実質内容面に関する会社法の評価においては、本来規制される側の財界から不満なところがほとんどなかったというのは、例えば二重株主代表訴訟なども葬られたことをはじめとして経営者の懐が痛むような話は少なく、むしろ使い勝手が大幅に拡大したところが評価されてのことです(ただ、技術的な部分や、表現の問題など、実務、日常レベルでの疑問などというのは、沢山出てくるわけで、そこら辺は会社法弁護士の仕事ということになります)。
 問題は、一方において得をしている人(例えば、経営者、多数株主)がいる場合、他方において、不利益をこうむる人たち(例えば、少数株主、消費者など)がいることがあり、決してWinWinのような話ばかりで片付けられるわけではないということです(できるだけ、会社法がそうしようとした、という点は理解していますが)。
 そして、残された細かな疑問がどのように解決されていくかについては、もちろん立法担当者の意向通りにはならないとはいえ、一般の多くの人たちは、やはり立法担当者の権威にすがりたいというのが現実で、それが大きく注目されるだろうし、影響力もあるだろうということでしょう。

【葉玉先生】:「法律の立案プロセスに携わっていただければ、それが自分勝手に作れるものではないことは明らかです」とは、その通りで異議ありません。しかし、だからといって、「ですから難解な法律を作って、弁護士転身などという法律家を排出するようなシステムにはなっていません。」という点は、必ずしもそうとは限らず、やや疑問が残ります。
 実際には、そうしたチャンスさえゲットできれば、立法過程の詳細を経験する機会に恵まれるわけです。
 ここで、一流法律事務所出身の弁護士なども、一部その過程に携わることができますが、その人たちが立法に携わることは、まさに留学と同じで、箔がつくステップとして位置づけられています。でも、任期付き公務員弁護士が関与して、弁護士に戻るのはOKでしょう。というのは、最初からそういうお約束になっていて(任期付きだから、当然でもある)、またそういうお約束でもないと、葉玉先生も指摘するように一流法律事務所から若手弁護士が高給をけずって立法に参画してくれることにはならないからで、ここには一種のギブ・アンド・テイクが成立しています。
 つまり、法律の立案プロセスに携わるのは大きな「役得」なのであって、誰もがなれるわけではないが、それをどのように返すのかといえば、任期付き公務員となる弁護士は、一流事務所で学んだ会社法実務を立法に反映させ、法律事務所とのパイプ役を果たす(ただ、これ自体は少し問題あるかもしれませんが)ということであり、他方、法務省・検察官のエリートの人たちは、ある一定レベルまで、立法・行政・司法の分野において、お国のため、あるいは公的な利益(例えば、少数株主や消費者など、直接に依頼をする力のない人たちの利益を含む)を代弁して働くことなんだろう、と思うわけです。

 これについて、葉玉先生も指摘している通り、「任期付任用で公務員として働いている弁護士の給与は、同期の検事とほぼ同等ですが、弁護士時代の半分以下になる」「任期付任用公務員は、安月給で2-3年働き」はその通りですが、ただ、若い弁護士が多いので、それほど「クライアントとの関係は途切れるというリスク」は、まだそれほど大きくはなく、むしろ、そこで箔をつけて、「皆さん、自分の経験を深め、能力を高める」ということで、十分に取り返そうというわけで、けっして「それだけ」の軽いものではありません。ただ、それは先に述べたように、想定範囲内の許されたギブ・アンド・テイクなのです。

 元々、企業法務側代表として送り込まれている弁護士の場合には、報酬をもらって雇われる立場上、一定の党派的な立場の出身で、それが前提です(ただし、弁護士が党派的とか、偏った立場になるとかいうのは悪い意味ではなく、どっちつかずの訳の分からない弁護士よりは、一定の旗幟を鮮明にした弁護士が高く評価される傾向にあり、それが期待される職業でもあるのです)。

 さて、これに対して、検事は同じ前提なのでしょうか。任期付きではないので、そこのところの期待が違うわけで、派遣社員と正規従業員とによって、事業主からの期待が違うというのと同じような、いやそれ以上の差がそこにはあります。
検事であれば、依頼者は国であり、一般国民であったはずですから、当面その立場を維持すべきなのではないでしょうか。検事出身で、元立法担当者は、一定期間は中立的な立場ないし公的な利益を代弁すべき立場を期待されていたのではないでしょうか。検事が、将来の華やかな転身のための道具になるのは好ましいことではなく、伝統的に「ヤメ検」については、いろいろ議論もありました(もちろん、すべてのヤメ検が好ましくないわけではなく、良いのと、好ましくないのがあるのではないでしょうか)。
 もちろん、弁護士が自由であるように、検事も同じ人間として、自由であるべきだということがあるでしょう。「職業選択の自由」という憲法上の要請がありますから、一生を捧げろとは言われません。また、ご家庭の事情など個別的なことを云々するつもりはありません。しかし、公職の場合には、一定期間の制約がされることがあるというのが、前にも触れた国家公務員法103条2項などの背後にある考え方だということです。(なお、同法103条2項は十分に抑制的であって、倫理的にはこれを拡大・類推して考える必要があります)

 公務員時代に、多くの方々がどれだけご苦労されているのかということについては、まったく問題ないわけですが、それは過去の先輩たちも、まったく同じです。
 それと、葉玉先生は、良い方ですから、まったくやましいところはないと信じたいと思います(このブログも本当に有り難うございます。これは感謝しております)。
 ただ、将来、別の人たちが、今回の会社法のように、条文の作り方として、極めて「難解な法律」になっていて、それを作ってから、「すぐさま弁護士転身」などという人たちが出てくる可能性はゼロでしょうか?その辺が、本当に大丈夫なんですか?それが本当に「有り得ないストーリー」なのでしょうか。なぜ国民は安心して、「それはない」といえるのか、説明できますか?また、元立法担当官が弁護士に転職したら、みな葉玉先生のように、こんなブログで無料相談に応じてくれるんでしょうか?これはたまたま葉玉先生だから良かったけれども、そうでない人たちが次々に出てきたら、というのは杞憂でしょうか。

 もっとも、立法担当官から弁護士に転身する場合は、葉玉先生にようにブログ等で奉仕しなければならないなどといったルールができれば別ですが、それは現実には無理でしょう。今回は葉玉先生だから、すばらしいブログで、こんな議論も含めて、いろいろ討議するチャンスがあるからいいようなものの、そうなる保障はないですね。
 そして、昨今の官庁の法令の啓蒙では、さまざまなQ&AをHPで展開することが多くなっているので、まさにこれは公的な仕事としても期待されており、発展させるべきだろうと思います。たまたま、このブログは、その意味での公的な役割を果たしている点で高く評価しますが、常にこういう展開になるわけではないという意味で、社会的な制度になっていないわけです。

 なお、今後、葉玉先生も高い報酬を払うクライアントと、ブログで無料相談してくる人を、これから、どのように扱っていくかが問題として意識されておられるようですが、まさにそこに不公平感が生じないようにするのは、それもまた将来の困難な課題となるように思います。一方において、公職におられたとの立場上、無償で奉仕すべきであるという要請と、他方において、クライアントの要請に応え、裏切ってはならないという要請(クライアントの中には、高額な報酬を払った自分たちへのアドバイスと同じものを軽々に外部にも同じように助言してもらいたくないと考える人たちもおります。妥当性はともかく)を調整する必要があるでしょう。(これがサミーさんのままであれば、個人で勝手にやっていることだということだけで、そういう問題にはなりません)

 もっとも、葉玉先生は、「難解な法律」と自分たちの仕事とは関係ないといいたいのでしょうが、立法担当者は、この「難解な法律」ができるまでの過程に携われ、どろどろを理解したうえで、調整して条文化作業をする仕事をしたわけですね。そこで簡易な条文を作ることもできたし、難解な文章も書けただろう。
 その文章作りに際して、集団的に合議はしていたと思いますが、そこで果たしてどういう議論でそういう表現になったのかが問題です。その合議の内容、結果がまったく問題ないのであればいいのですが、結果として難解な条文になっていたら、どうして難解になってしまったのか、また、その議論の内容はどういうものだったのかが検討の対象になるべきであって、もしも十分に納得のいく説明がされなければ、やはり誰が考えたか分からないけれども、そこに「見えざる力」が働いていた可能性があるのではないかということです(この部分、論評です)。
 昨今の公務員の不祥事やら、無責任さ。たとえば、会社法とは別ですが、建築基準法改正に伴って建築確認審査のあり方のゴタゴタに対して、立法・行政のプロセスが厳しく批判されています。そういった動きを見るにつけ、「官僚性善説」だけでは通用しないわけで、立法担当者が、みんな葉玉先生のような方たちばかりではないことを考えると、法律家のキャリアのあり方として、倫理的な規範、コンセンサスを作っていくべきではないかということなのです。(これを単に人々の勝手やら、自由だけに任せておいていいのだろうか、と思うのです。ただし、別に法規制をしろというのではないですよ。あくまでも倫理的な考え方を整理しようという問題提起です。)
 そして、葉玉先生が述べるとおり、「たった一つの法律だけで、弁護士がずっと飯を食えるはずない」のは、一般論としてはその通りです。しかし、会社法は別格ではないでしょうか?また、法令には、会社法だけではなく、社会的に影響力の大きな法律というのは、いくらでもあると思います。

2 株式会社と有限会社の問題
 この論点に関する議論状況は、まさに「ぞう」さん(2008年1月10日 (木) 09時51分)がうまくコメントされている通りだと思います。コメントありがとうございました。

3 会社法の「わかりにくさ」に関する問題。
 【葉玉】先生から、「口が裂けても言えないから、そう言っているのではありません。違うから違うと言っているだけです」というのは、いや~、そうズバッと何の理由付けなしに、言われると、かえってスッキリします。
 公開会社の定義の仕方を見ても分かるように、会社法は、言葉を記号として捉えて、例えば「金銭等」というのは、会社法として「金銭その他の財産をいう」と概念定義しているわけですから、先生の「感覚」から「2条に置くべきものではないと思います」というだけですと、説明としては分かりにくいですね。
 葉玉先生の仰るとおり、「施行規則二条二項は、会社法の施行規則という性質上、会社法の定義と同じ定義を使う言葉を列挙すること自体に意味のある規定」だというのは、読めば分かりますが、それは会社法二条で定義しない理由にはなっていません。単に会社法2条と会社法施行規則2条の違いを述べたに過ぎないでしょう。
 また、「まったく役割が異なります」といいますが、定義を列挙するという役割は同じです。どうして役割を変えるのか、またもっといえば、似たような定義規定が会社法にあり、会社法施行規則にある、もちろん、違う法令なので、それが存在しているのは、もうできたものを前提としたら、別に論理的には間違いはありません。
 しかし、何故、こういう形に作ったのかというのを問題にしたいわけで、どうも徒に分かりにくく、落とし穴的なものができてしまう原因になっているのではないか、ということが問題なのです。同じ論理でも、ほとんどのひとが引っかかってしまう落とし穴のような論理というのは、いくら間違っていない(その意味で正しい)としても、良いものではありません(そういう意味では正しくないともいえます)。 
 本当に、あのような形しかありえなかったのか、を問うているわけです。
 この点が、まさに第1の論点の背後にある「難解な法律」をめぐる問題の一端でもあります。
                                         以上

投稿: 浜辺陽一郎 | 2008年1月19日 (土) 22時52分

葉玉先生、こんにちは。

自分としては、葉玉先生の意見の方が知識人的であり、浜辺先生の意見の方が、「官僚的だ」との印象を持ってしまうのですが(笑)。

海釣りでも河川での釣りでも、「浮き」は目安です。
「浮き(目安)の動き」を、波や流れの動きを前提として認識しないと、浮きの動きに一喜一憂することになってしまうし、惑わされてしまうと思うのです。

『目安に縛られた意見』ではなく、目安の奥や底にある事業を取り巻く循環や流れを前提とした「浮きの当たり」の動きは、「昭和の村役場」ではなく、今や、「明治の波止場」での動きに近いのです。

そして、自分は、新・会社法100問は、「熱が冷めない内に論述をしておきたいし伝えたい」という「実質」に、意味があると思うのです。
読んで勉強していて、仕事のために調べていて、そう感じることがほんとに多いのです。

PS.
自分は、人間や動物が、自分の二本足で通れない道路は「そもそも不要」であり、必要であるならば最小限に出来るだけ少なくするべきだというのが持論なのですが・・・

「自然環境の回復に要する費用」は、原価に当たるので、その「引き当て」が認められていると思います(大阪地判・昭和57年11月17日)。
日本橋の上空を覆っている首都高の高架を、「循環を止めない」ように配慮しつつ、地下に埋めるための「社会環境の回復に要する費用」も、その「引き当て」についても、「法人について当然認められるべきだ」と思いますし。

投稿: 至誠丸 | 2008年1月20日 (日) 18時34分

はじめまして。
会社のことを勉強しようと思い訪問しました。少しずつ読ませていただきます。宜しくお願いします。

投稿: 星輝 | 2008年1月21日 (月) 13時28分

株式会社が意思表示を行う法的仕組みに関して、自然人のそれと(意思表示)と対比させて論じなさい。っていう、質問に困っていますが教えていただけますでしょうか???

投稿: | 2008年1月21日 (月) 17時16分

会社法第797条2項2号のすべての株主については、条文を読む限り、吸収合併等に反対する旨の通知を存続会社にする必要はないと考えます。
そこで、質問です。
同条2号の株主が、同条5号の株式の数を明らかにして株式買取請求をする場合、事前または同時に反対する旨の通知や意思表示をして買取請求する必要があるのでしょうか。賛成した同条2号の株主は、買取請求をすることはできますか。
また、同条5項の株式の数を明らかにして買取請求する株式の数は、所有する株式全部ではなく一部でも可能でしょうか。
よろしくお願いします。

投稿: | 2008年1月22日 (火) 14時04分

上記会社法第797条2項2号の反対株主に関する質問した者です。
名前を書き忘れてしまいました。
睦と申します。

あわせて質問も一部訂正します。
同条2号の株主が、「同条5号」の株式の数を明らかにして…
は「同条5項」の誤りです。

「賛成した同条2号の株主は、買取請求をすることはできますか。」
という質問は、反対していない同条2号の株主が買取請求をすることができるかという趣旨です。

これらの質問をした動機は、電子公告を見ていますと、多くの会社で「第797条1項の規定に基づき、この合併に反対で、株式買取請求権を行使される株主は…、」と公告しており、同条2項2号の株主についても反対の意思表示をしなければならないのかと疑問に思ったからです。条文からはそうは読めないのですが。

よろしくお願いします。

投稿: 睦 | 2008年1月22日 (火) 16時30分

葉玉先生
いつも楽しく拝見させていただいております。会社法234条の読み方で質問させていただきます。吸収合併に際した端数の発生です。
合併にあたり消滅する会社の株主は、AとB(当方)の2名で、Aが2000株、Bが1270株を持っていました。合併比率は、存続会社:消滅会社=1:0.525でしたので、Aは1050株、Bは666.75株、存続会社の株式が割り当てられることになります。ここで、合併契約に端数について何も書かれていない場合、会社法では端株は廃止されましたので、Bの0.75は切捨てられ、競売などの処分は不要となると考えていますが、正しいでしょうか。1名の株主にしか端数が発生していなくても、端数の“合計数”に1に満たない端数がある場合にあたると思いますし、会社法の条文で「切り捨てる」と書いてある以上、四捨五入して1になる端数を切り捨てることをBが不満に思ったとしても、やむをえないと思いますので、処分は不要との結論になると考えています。
234条に関しては、2007年5月25日及び2007年4月3日でも質問にご回答されていますが、私の場合とは若干違うようなので、質問させていただきました。
お忙しいとは存じますが、ご教授いただけますと幸いです。

投稿: senchuan | 2008年1月22日 (火) 23時08分

葉玉先生、毎回高度な内容を分かりやすく説明してくださり、ありがとうございます。
細かいことで恐縮ですが、質問させてください。
会社法では、「定める」「規定する」「定め」「規定」が使い分けられていますが、
その使い分けの基準を教えていただけないでしょうか。

投稿: smoky | 2008年1月23日 (水) 13時24分

お忙しいところ申し訳ありません。
もしかしたらすでに質問があったのかもしれませんが
確認のため、ご教授願えれば幸いです。

監査役の監査期間についてですが、商法においては計算書類受領した日から
4週間以内と定められていましたが、会社法では事業報告書(施行規則132条)
計算関係書類(計算規則160条)において、○週間経過した日となっております。
これは、各書類を受領した日から最低○週間(実質的には○週間+1日)を確保するようにしたというようなことを聞いた覚えがあります。
そこで、監査役の監査が早く終わってしまい、4週間を経過した日以前に監査報告書を作成し、取締役に通知することはできるのでしょうか?
早く監査が終了し、残りの期間何もせずにじっと待っているのもどうかなと思いましたので、お伺いします。
何卒よろしくお願いいたします。

投稿: あっ!と 法無 | 2008年1月23日 (水) 15時11分

http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20080123-567-OYT1T00510.html
財務省は23日、税や社会保障の負担の大きさを示す国民負担率が、2008年度に前年度より0・1ポイント高い40・1%になるという見通しを発表した。
上昇は5年連続となり、最高を更新する。

>>>>>>>>>>>>>>
財務省による国民負担率調査によれば、次のような数値になるようです。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/hikaku.htm
日本40% アメリカ32% イギリス47% ドイツ51% フランス61%

>>>>>>>>>>>>>>
バカウヨミウリ新聞の世論誘導は、内部統制ルールに係る日本経済新聞と、優劣付け難いレベルにあるようです。

先進国でもっとも国民負担率の低いアメリカがどのような状態であるかは、次の新書が参考になるでしょう。
http://www.iwanami.co.jp/shinkan/index.html

投稿: バカウヨミウリ新聞とあそぼ | 2008年1月24日 (木) 07時58分

法人税率を考える場合、税金を払わなくてもいい(節税対策の実施)赤字法人の問題を考える必要があるでしょう。

>>>>>>>>>>
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g000710j.pdf
31/61ページ(1994年のデータで古いが、先進国間で比較可能)
赤字法人数 日本  50% アメリカ   77% イギリス 41% フランス 44%
法人総数   日本196万社 アメリカ371万社 イギリス65万社 フランス44万社

主要国で比較可能でない2004年データもあります(7-8/95ページ)
www.itdweb.org/smeconference/documents/2007november4.pdf
赤字法人比率 日本67%、アメリカ88%、イタリア42%など

>>>>>>>>>>>>>>>
日本の株式会社数は、経済規模(GDP)を考慮しても、アメリカを除くヨーロッパ各国より著しく多いことが分かります。日本はイギリス、フランスなどに比べて人口やGDP規模で2程度です。
赤字法人の比率も、アメリカをぞ退くヨーロッパ各国より高いことが読み取れます。

会社法を考える場合には、その経済的機能も併せて考えること・・・つまり、
1)出資者有限責任の会社設立を容易にするのはなぜか?その必要があるのか?
2)出資者有限責任の会社の赤字法人数が多いことは、何を意味するのか?赤字法人が多いときに、法人税の実効税率を単純に各国間で比較する意味があるのか?
などの問題も考えてみることをお奨めします。

投稿: 会社法と法人税であそぼ | 2008年1月24日 (木) 09時01分

株式の譲渡制限規定についての質問です。
会社法では株式譲渡の承認機関を代表取締役等にすることが可能となりましたが、会社法139条但書の承認機関を種類株主総会とすることは可能でしょうか。
例えば、種類株式発行会社(A株式・B株式)でA株式を譲渡する際に、B株式の種類株主総会の承認を要するというようにすることです。
株式譲渡制限規定の本来の趣旨からは若干認めずらいと思いますが、いかがでしょうか。
また、拒否権付の種類株式を使えば同様の効果を期待できますが、そちらはいかがでしょうか。

投稿: ご質問 | 2008年1月24日 (木) 12時48分

ものすごくしょーもない質問であり、法令上だけの問題ではなくなりそうですが、企業法務を担うものとしては、実務上、気になるところではあります。
東証一部上場企業であることを前提にお考えいただければ幸いです。
ご回答のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

①監査役と執行部門管理職(例:総務部長、法務部長)が懇親会(つまりは飲み会)を開催することについて、問題はないか。
②①において、会社の費用で処理した場合、問題はないか。
③①において、監査役が懇親会費全てをポケットマネーで支払った場合、問題はないか。
④①において、執行部門管理職が懇親会費全てをポケットマネーで支払った場合、問題はないか。
④上述で問題があるとすれば、「どちらが誘ったか」の観点がポイントになるのか。
⑤本問題を考える際、飲み会の内容(話題)がポイントになるのか。

投稿: 企業法務人 | 2008年1月24日 (木) 17時34分

お世話になっております。
次の2つについて、御教授下さい。

有限責任事業組合の組合員が法人の場合、職務執行者を選定する必要がありますが、この場合、この組合員である法人の代表取締役は、当該LLPの業務をすることはできない(LLPの業務に関する執行権は制限される?)のでしょうか?例えば、組合員の同意で組合契約を変更する場合、通常は職務執行者が同意しますが、これを代表取締役が行った場合、問題があるのでしょうか?

上記とは別に、組合員が全員法人である場合、LLPの重要な財産を組合員に譲渡する場合、利益相反となるかと思いますが、そのときのLLP側の譲渡に関する全員の同意は、当該財産の譲渡を受ける組合員について、特別代理人を選任する必要はあるのでしょうか?

以上、宜しく御願い致します。

投稿: ちりがみ | 2008年1月24日 (木) 17時46分

会社法52条3項、及び33条10項3号について質問です。

33条10項3号では、現物出資財産等が不動産である場合、弁護士等の証明に加え、不動産鑑定士の鑑定評価を要求しています。他方、会社法52条3項において、不足額填補の責任主体が「証明者」となっています。
この場合、52条3項に基づいて、不動産鑑定士に対して不足額の填補を請求でいるのか分かりませんでした。
文言からすると、「証明者」は弁護士等であり、不動産鑑定士はこれにあたらないように思うのですが、どうなのでしょうか。

投稿: 受験生です | 2008年1月24日 (木) 23時50分

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