証券取引等監視委員会
今週の月曜日に、TMI総合法律事務所の会議室に、証券取引等監視委員会(SESC)の方をお迎えし、当事務所の弁護士向けにセミナーをしていただきました。
SESCは、これまでも、市場関係者のところに出向いて、広報および意見交換の機会を設けてきたそうであり、その一環として、当事務所にも来ていただいた次第です。
当日は、SESCの次長、総務課長、課長補佐のお三方から、SESCの組織や今後の活動方針、さらに、問題になりそうな事象、弁護士に期待する役割などについて教えていただきました。
現在のSESCの次長は、裁判官出身で、私が、法務省民事局時代に、内閣法制局の参事官をされていた方です。長時間一緒に仕事をさせていただいたので、その仕事ぶりを良く存じ上げていますが、私が言うのも僭越ですが、私がこれまで出会った中で最も頭の切れる凄い方です(正直言って、いまだに、全く頭があがりません。)
また、総務課長は、「大蔵省出身」、「ハンサム」、「弁舌さわやか」いう三拍子揃った、「これでモテなければ嘘だろう」というナイスガイです(本題とは、関係のないコメントで失礼の段ご容赦ください)。
ちなみに、ご経歴をお聞きしたところ、私が検事時代及び民事局付時代にやっていた様々な仕事について、大蔵省・金融庁・SESC側から、ことごとく関わっていらっしゃったことが分かり、「世間は狭い」と感じた次第です。
SESCの皆様は、守秘義務がありますから、具体的な事件については、一切話されませんでしたが、株価操縦事件やインサイダー取引事件等について調査をする場合の切り口や注視する点などについてかなり突っ込んだお話をされ、会場は大いに盛り上がりました。
私が、特に印象に残ったのは、次の点です(なお、要約がテキトーなので、下の記載を根拠にSESCにクレームを付けるようなことはしないでくださいね。)
① SESCは、人的リソースに限界がある中で、証券市場の公正を実現するため、さらに意欲的に活動範囲を拡大しようとしている。
② SESCは、違法な行為しか摘発することができないものの、「異常な株式の分割」「異常な株式の併合と有利発行」「異常なMSCB」など適切とはいえない行為が頻発していることに鑑み、それらの行為についても、その背後に違法な行為がないか、監視の目を光らせている。
③ 金商法157条1号(有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること)は、要件が抽象的で検事に嫌われているが、会社法等の諸規定を媒介にして活用することができないかと、検討している。
④ 証券取引がクロスボーダー化しているのに伴い、各国の調査機関同士の連携も飛躍的に強化されている。
⑤ SESCが調査している事件が氷山の一角に過ぎないのは明らかであるから、証券市場関係者への啓発と情報交換を通じて、証券市場の公正確保のための協力を求めている。
SESCの皆様のお話は、具体的な経験に裏打ちされたもので、書物では得られない説得力に満ちあふれていました。当事務所の弁護士にとっても、企業のコンプライアンスを考える上で、担当官の生の考えにふれ、質疑応答をすることができたことは、貴重な経験になったものと思います。
私は、いまだ検事の血が半分流れているのか、SESCの皆様の不公正取引抑止にかける情熱に触れ、ワクワクしましたが、他方で、インサイダー取引をはじめ不公正取引の網が広がることにより、白い行為がグレーになることについては、「普通の人々を不幸に巻き込むことにならなければよいが・・・」と心配しています。
なかなか答えの出ない問題ですが、SESCの方も、「定期的な意見交換をしたい」とおっしゃっていましたので、そうした意見交換の場で、問題意識の共有を図ることができたら、SESCにとっても、企業にとっても、良い結果が生まれるように思います。
(質問コーナー)
Q1
端的に質問させていただきますと、なぜ、ブルドック事件のような防衛策の発動の場面においては、「株主の多数意見=適法」なのかということです。
先生がご回答くださったように、「株主総会の決議がある場合でも、取締役会が最終的に決定しなければならないし、それにより、取締役が善管注意義務違反にならないとは言い切れ」ないわけです。
そして、このことは、善管注意義務違反だけではなくて、およそ取締役(会)の行為の適法性の有無の判断を取締役(会)は株主総会に完全に委ねてはいけないということをも同時に意味すると思います。
しかし、最高裁は、「特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものである」としています。
これは、なぜなのでしょうか?
そもそも、業務の執行は、その重要度が増せば増すほど、企業価値、株主の利益に影響を及ぼす可能性が高いものです。この最高裁の論理だと極端にいけば、「非常に重要な業務執行については、株主総会の多数意思があれば適法である」ということになってしまうのではないでしょうか?
わたしは、重要度が高い業務であればあるほど、経営のプロの取締役会が最終的に判断すべきであるというのが本筋な気がしますがいかがでしょうか?
投稿 AAA | 2008年1月17日 (木) 02時23分
A1
「受任者に過ぎない取締役が、委任者である株主の構成に変動を与えることを決めてはいけない。」というルールがある以上、経営のプロかどうかはともかく、取締役会には決めさせることができません。
となると、株主総会における多数決で、「少数派の大株主」を排斥することができるかという難しい問題に直面するが「会社の利益ひいては株主共同の利益」の保護という理屈ならば、その問題は乗り越えられそうだと考えたので、そのように判示したのでしょう。
Q2
さっそくですが、会社法100問の問61(競業避止義務)について質問をさせてください。
解答例には、株式会社Aは、同社の取締役甲に対して「委任契約上の義務の履行として競業行為の差止めを求めることができる」(第2版では347頁)とされていますが、その根拠条文は何条になりますか?
投稿 Davis | 2008年1月17日 (木) 09時41分
A2
契約上の義務なので、意思表示理論から、導かれます。
「そういう約束をしたのだから、守ってよね」というのが根拠です。
Q3
よく「価額」と「価格」を使い分けられていることがあります。
両者の用語の意味に何か(日本語や法的に)違いがあるのでしょうか。
投稿 すみません | 2008年1月18日 (金) 16時23分
A3
それは、昔、何か議論したようなおぼろげな記憶がありますが、忘れました。
あまり気にするほどのことではないでしょう。
Q4
親会社による債務超過子会社の簡易合併について2点ほど質問させて頂きたくお願い致します。
会社法施行後は、子会社の簿価債務超過状態を親会社が増資を引き受けることによって解消したとしても簡易合併を行うことができない、というのは本当でしょうか。(以前にも投稿がありましたが改めて確認させてください。)
A4
本当です。裏技はありますが。
Q5
上記1.が本当だとすると、親会社が連結配当規制適用会社(計算規則2条3項72号)となることによって、債務超過子会社の簡易合併を実施することが考えられますが(施行規則195条3項)、ある会社(ここでは親会社)が連結配当規制適用会社となる時点について、立法担当者の解説では連結配当規制の適用を受ける旨決定のうえその旨注記された計算書類の監査を受けた計算書類の取締役会設置会社にあっては取締役会、その余の会社にあっては株主総会の承認決議を経た時点から連結配当規制適用会社となる旨述べられています(商事法務1767号46頁)。そこで、当該決議(=連結配当規制適用会社となる時点)と簡易合併手続の先後関係についてご質問なのですが、当該決議は合併契約の締結前に経ておく必要があるのでしょうか、それとも簡易合併の判断基準時である合併の効力発生日の前日までに経るのであればそれまでに(親会社が連結配当規制適用会社となっていない状態で)当事会社において合併契約の締結や債権者保護手続などの合併手続きを進めていても問題ないのでしょうか。
投稿 sophia | 2008年1月18日 (金) 16時47分
A5
難しい問題ですが、簡易合併の判断基準時までに要件を満たすかどうかでしょう。
Q6
監査役と株主の権限について、質問があります。
非公開会社が、大会社でなく、かつ、取締役会を任意設置している場合、
監査役設置が強制されます(327条2項)。したがって、2条9号後段によって、監査役
設置会社になります。
もっとも、非公開ですし、監査役会も会計監査人も設置しないことが可能ですので、
監査権限を会計関連に限定することが出来ます(389条1項)。
このような会社で、株主の差止め請求権(360条)などが、制限されてしまう(360条3項)のは、合理的なのでしょうか?
監査役もそれらを行使できません(389条7項・385条)し、株主の行使も厳格になってしまいます。
非公開会社において、差止め請求権の株式保有要件が緩和されている(360条2項)
のと合致しない規制のようにも感じます。
投稿 鉄 | 2008年1月19日 (土) 09時48分
A6
会計監査権限に限定された監査役の会社は、監査役設置会社ではありません。
したがって、株主の差し止め請求権は制限されません。
Q7
株式会社が意思表示を行う法的仕組みに関して、自然人のそれと(意思表示)と対比させて論じなさい。っていう、質問に困っていますが教えていただけますでしょうか???
投稿 | 2008年1月21日 (月) 17時16分
A7
自然人の内心的効果意思 = 株主総会または取締役会の決議
+代表取締役の内心的効果意思
自然人の表示行為 = 代表取締役による表示行為
という感じでしょうね。
Q8
会社法第797条2項2号のすべての株主については、条文を読む限り、吸収合併等に反対する旨の通知を存続会社にする必要はないと考えます。
そこで、質問です。
同条2号の株主が、同条5項の株式の数を明らかにして株式買取請求をする場合、事前または同時に反対する旨の通知や意思表示をして買取請求する必要があるのでしょうか。 賛成した同条2号の株主は、買取請求をすることはできますか。
また、同条5項の株式の数を明らかにして買取請求する株式の数は、所有する株式全部ではなく一部でも可能でしょうか。
投稿 | 2008年1月22日 (火) 14時04分
A8
2号の株主は、反対の意思表示は不要ですし、一部の買取を求めることもできます。
Q9
会社法234条の読み方で質問させていただきます。吸収合併に際した端数の発生です。
合併にあたり消滅する会社の株主は、AとB(当方)の2名で、Aが2000株、Bが1270株を持っていました。合併比率は、存続会社:消滅会社=1:0.525でしたので、Aは1050株、Bは666.75株、存続会社の株式が割り当てられることになります。ここで、合併契約に端数について何も書かれていない場合、会社法では端株は廃止されましたので、Bの0.75は切捨てられ、競売などの処分は不要となると考えていますが、正しいでしょうか。1名の株主にしか端数が発生していなくても、端数の“合計数”に1に満たない端数がある場合にあたると思いますし、会社法の条文で「切り捨てる」と書いてある以上、四捨五入して1になる端数を切り捨てることをBが不満に思ったとしても、やむをえないと思いますので、処分は不要との結論になると考えています。
投稿 senchuan | 2008年1月22日 (火) 23時08分
A9
234条1項5号で端数処理されます。
Q10
会社法では、「定める」「規定する」「定め」「規定」が使い分けられていますが、
その使い分けの基準を教えていただけないでしょうか。
投稿 smoky | 2008年1月23日 (水) 13時24分
A10
「規定する」は、「~条に規定する」という使い方、規定は条文です。
「定める」は、それ以外ですね。
Q11
監査役の監査期間についてですが、商法においては計算書類受領した日から4週間以内と定められていましたが、会社法では事業報告書(施行規則132条)計算関係書類(計算規則160条)において、○週間経過した日となっております。
これは、各書類を受領した日から最低○週間(実質的には○週間+1日)を確保するようにしたというようなことを聞いた覚えがあります。
そこで、監査役の監査が早く終わってしまい、4週間を経過した日以前に監査報告書を作成し、取締役に通知することはできるのでしょうか?
投稿 あっ!と 法無 | 2008年1月23日 (水) 15時11分
A11
監査役がそれで十分と思えば、早くしてもかまいません。
Q12
株式の譲渡制限規定についての質問です。
会社法では株式譲渡の承認機関を代表取締役等にすることが可能となりましたが、会社法139条但書の承認機関を種類株主総会とすることは可能でしょうか。
例えば、種類株式発行会社(A株式・B株式)でA株式を譲渡する際に、B株式の種類株主総会の承認を要するというようにすることです。
株式譲渡制限規定の本来の趣旨からは若干認めずらいと思いますが、いかがでしょうか。
また、拒否権付の種類株式を使えば同様の効果を期待できますが、そちらはいかがでしょうか。
投稿 ご質問 | 2008年1月24日 (木) 12時48分
A12
ファーストインプレッションですが、種類株主総会は、会社の機関の一つであること御及び種類株主層かは、定款で定めた事項について、決議することができることから、、承認機関とすることもできると考えます。
Q13
ものすごくしょーもない質問であり、法令上だけの問題ではなくなりそうですが、企業法務を担うものとしては、実務上、気になるところではあります。
東証一部上場企業であることを前提にお考えいただければ幸いです。
ご回答のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。
①監査役と執行部門管理職(例:総務部長、法務部長)が懇親会(つまりは飲み会)を開催することについて、問題はないか。
②①において、会社の費用で処理した場合、問題はないか。
③①において、監査役が懇親会費全てをポケットマネーで支払った場合、問題はないか。
④①において、執行部門管理職が懇親会費全てをポケットマネーで支払った場合、問題はないか。
④上述で問題があるとすれば、「どちらが誘ったか」の観点がポイントになるのか。
⑤本問題を考える際、飲み会の内容(話題)がポイントになるのか。
投稿 企業法務人 | 2008年1月24日 (木) 17時34分
A13
まあ、懇親会くらいいいんじゃないでしょうか。
社会的儀礼の範囲内であれば、どちらがお金を払ってもいいでしょう。
ただし、贈収賄にならないようにしてください。そういう意味で話題には気をつけましょう。
Q14
有限責任事業組合の組合員が法人の場合、職務執行者を選定する必要がありますが、この場合、この組合員である法人の代表取締役は、当該LLPの業務をすることはできない(LLPの業務に関する執行権は制限される?)のでしょうか?例えば、組合員の同意で組合契約を変更する場合、通常は職務執行者が同意しますが、これを代表取締役が行った場合、問題があるのでしょうか?
上記とは別に、組合員が全員法人である場合、LLPの重要な財産を組合員に譲渡する場合、利益相反となるかと思いますが、そのときのLLP側の譲渡に関する全員の同意は、当該財産の譲渡を受ける組合員について、特別代理人を選任する必要はあるのでしょうか?
投稿 ちりがみ | 2008年1月24日 (木) 17時46分
A14
会社法ではないので、スルーさせてもらいます。経産省に質問することをお勧めします。
Q15
会社法52条3項、及び33条10項3号について質問です。
33条10項3号では、現物出資財産等が不動産である場合、弁護士等の証明に加え、不動産鑑定士の鑑定評価を要求しています。他方、会社法52条3項において、不足額填補の責任主体が「証明者」となっています。
この場合、52条3項に基づいて、不動産鑑定士に対して不足額の填補を請求でいるのか分かりませんでした。
文言からすると、「証明者」は弁護士等であり、不動産鑑定士はこれにあたらないように思うのですが、どうなのでしょうか。
投稿 受験生です | 2008年1月24日 (木) 23時50分
A15
不動産鑑定士は、証明者には含まれません。
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