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2007年12月31日 (月)

辛さを喜びに変える魔法

一年の最後の日、大晦日が今年もやってきました。

 今年は、検事を辞めたり、TMIで働き始めたり、4人目の子供が生まれたり、個人的なニュースはいくつかあったのですが、特に、「アルファブロガーアワード」と「日経弁護士ランキング3位」は、このブログの読者の皆様の支えがあったからこそ、実現できたものであり、改めて、読者の皆さんに感謝の言葉を申し上げます。
 本当にありがとうございました。

 ランキングというものは、物事の一面から評価するものであり、それを絶対視してはならないことは重々承知しております。
 ただ、私が皆様に評価していただいたことを、妻子が大変喜んでくれた、そして、天国の両親も、きっと涙で顔がくしゃくしゃになるほど喜んでくれている。
 そう思うだけで、これからも、皆様の期待を裏切らないようにがんばろうという意欲が沸いてきますから、そうした評価も大事にしていきたいと思います。

 こうして振り返ると、今年は、どれも良いニュースであり
   「何はともあれ、幸せな一年であった」
 と締めくくれる喜びをかみ締めています。
 
 そして、今、気づいたのですが
 「良いニュース」というのは、自分だけの力では生まれてこないんですね。
 
 TMIで充実した仕事ができたのは、クライアントの皆様と事務所のみんなが支えてくれたからです。
 4人目の子供がすくすく育っているのは、大事に育ててくれている妻と、赤ちゃんをかわいがってくれている子供たちのおかげです。

 良いニュースは、すべて、人の支えによって生まれてくるんだなあ、と実感します。

 振り返れば、人生の中には、とても辛い年もありました。
   親と離れ離れに暮らしていた幼少時代。
  大失恋した大学時代。 
  司法試験のために一人でこもっていた受験時代。
  母親、そして、父親と死別した年。
  両親が経営していた、そして、子供時代からの思い出がつまった会社を売却したとき。
 
 つらい思い出は、人の支えを失ったり、人との関係を絶ったときに生まれてくるようです。

 喜びは人ともにあり、悲しみは孤独の中にある。
 だから、幸せなときは、人に感謝する。
 悲しいときは、自分が人に支えられて生きていることを思い出す。

 すごくシンプルで当たり前のことですが、日々の生活の中では、自分のことで精一杯で、人との関係を見失いがちになってしまいます。
 どんなときでも、「人があるからこそ、自分がある」ということを忘れなければ、悲しみを喜びに変えることもできるのではないでしょうか。

 一年の終わり、そして、もうすぐ一年の始まりですから、受験に苦労している皆さんは、自分がなぜ勉強に専念することができるのか、を思い出してみてはどうでしょう。
 親御さんをはじめ家族の支えがあるから、勉強することができるのではないでしょうか。一人で勉強しているのではなく、家族と一緒に勉強している。
 だから、きっと家族は、皆さんの合格を皆さん以上に喜んでくれるはずです。
 自分ひとりのためだけにする勉強は、どこかで気持ちが折れてしまいそうになるときがあります。目の前の教科書や問題集だけを見ていると、投げ捨てたくなります。
 そんなときは、皆さんを支えてくれている家族のために、家族の笑顔のために勉強するんだと思えば、頑張る力が出てきます。

 辛い仕事をしている皆さん。
 仕事の困難さや小うるさい上司のことばかり考えていると、心のこもらない仕事になりませんか。そんなときは、仕事の向こうにあるお客様のことを考えるのはどうでしょう。山積みの資料の向こうに、自分の仕事を喜んでくれるお客様の笑顔があると思うと、「大変だけど、喜んでもらえるような仕事をしよう」という気力がわいてきます。

 無機質な勉強や仕事の向こうにある「人と人とのつながり」が、辛さを喜びに変える魔法です。
 そして、その魔法を忘れることなく、来年も、人に喜ばれる仕事(家事・育児を含む)をしようと決意した大晦日でした。
 それでは、来年も、よろしくお願い申し上げます。
(質問コーナー)
Q1
前回のA11について → たしかに「論争」の横から出した質問ですが、正面から答えてもらっていません。29条について、立案担当者は、定款で別段の定めができると会社法が書いていない場合には、定款自治は認められないという趣旨である旨の説明をされていたと思います。これって、「立案担当者の狭い常識の中で」しか判断していないのではないでしょうか。会社法で定めていないどのような事態が生ずるか分からないのですから。
A1
2 9条の解釈について、誤解があるのではないでしょうか。 
 これは、以前、このブログで、かなり議論されたところですから、詳しくは、そちらを見ていただきたいのですが、①会社法に規定されている事項については、強行法規性を確保し、かつ、法的安定を図るために、「定款で別段の定め」をすることを文言上許している場合に限り、これを認め、②会社法に規定されていない事項については、定款自治を広く認めるという方針を採っています。
 そして、①のルールを採っていることから、種類株式の内容等について、幅広い内容を法定化する必要があったということもできます。

Q2 
前回のA6について
→ 他人の質問へのお答えですが、茶化した言い方は不愉快です。大変評判の悪い条文です。私は、条文の方式で規定しようと思ったが、できないので、仕方なく省令のような書き振りになったと理解していました。しかし、そうではなくて、省令で全部ひっくり返すことを最初から予定しつつ条文を作ったのであれば、法務省の「奢り」以外の何物でもありませんし、省令の適法性に疑いが生ずると思います。そのうえ、資本金の機能を形式的にのみ残すことを目的として、このような条文にしたのであれば、「ペテン」以外の何物でもありません。
投稿 会社法の任意法規性 | 2007年12月30日 (日) 03時34分
A2
 茶化していると感じられたのならば、申し訳ありませんでした。しかし、茶化しているわけではありません。一事業年度内に何度でも配当してよいというルールや臨時決算の制度等のもとで、分配可能額をできるだけ論理的にすっきりと規定するためには、従来の計算方法ではなかなか難しく、現在の計算省令のようになったのですが、その経緯からすれば、もはや会社法の分配可能額の規定そのものを改正したほうがよいと思うので、そのような回答をしたものです。
 ただ、その場合、「資本金」が法律上の意味をなくしてしまう可能性があるので、資本金を重視する方達は反対するだろうなと思います。

Q3
私自身は、基本的には葉玉先生のお立場に近いのですが、どうしても「安易な法人化を促進ないし許容する法制はいかがなものか」のような政治的批判に応える必要があるのであれば(個人的にはあまり賛同したくないことですが)、最低資本金規制よりも、むしろ最低「純資産額」規制を強化するほうが効果的では、という気がします。
もっとも、法人会計と家計がごっちゃになりがちな小規模同族会社(もちろん、すべての小規模同族会社がそうだと決めつける訳ではありません)に目を向ければ、事実上、現行の配当規制ですら責任財産の保全にほとんど役立っていない、という悲しい現実?はありますけど。
投稿 W.M. | 2007年12月30日 (日) 17時05分
A3
 最低純資産規制もひとつのアイデアであろうと思います。問題なのは、簿価「純資産」が含み益や含み損をすぐに反映するようなものではないことと、最低純資産を割ってしまったときに、その会社をどうするか、という点だと思います。

Q4
会社法100問の76「取締役の報酬」で,監査役の報酬について,退職慰労金支給規程に従って支給するという決議について,「具体的な金額等を取締役会にゆだねている」という理由で,387条1項に違反するものと解されています。
しかし,①会社法施行規則84条2項では,同82条2項(取締役の報酬等に関する議案))とまったく同じく,一定の基準に従い退職慰労金の額を第三者に一任する決議を有効とすることを前提とする規定が存在します。
また,②取締役の報酬に関する記述で挙げられている最判昭和39年12月11日・百選68の事案は,そもそも(常任)監査役の退職慰労金に関する事案で,一定の場合に取締役会の決定に一任することも許されるものとしています。
上記二つの事実からすると,監査役の退職慰労金に関する100問の記述は,会社法と抵触しない限りは最高裁の判例を前提とする,というコンセプトに明らかに反しているように思われるのですが,いかがでしょうか?
現在の会社法及び最高裁の立場からすると,本問の決議も有効と解される可能性が高い,と考えてよろしいでしょうか?
投稿 旧司受験生 | 2007年12月30日 (日) 22時09分
A4
現在では、387条2項がありますから、役会への一任は駄目だと思います。

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コメント

あけましておめでとうございます。
今年も更新を楽しみにしております。


さて,昨日の記事で

A4
現在では、387条2項がありますから、役会への一任は駄目だと思います。

というお答えをいただいたのですが,387条2項は,会社法への移行に伴って実質的に改正されたところはないと認識しています。会社法前段階での改正によって,判例の射程が制限されることになったということでしょうか?
判例百選等の解説には,そのあたりのことが詳しく解説されていません。
いつ,何が,どう変わったから,現在では役会への一任が駄目と解されるのか,説明していただけるとありがたいです。


新年早々厚かましいお願いで申し訳ありません。
今年もよい一年になりますよう,お祈りいたします。

投稿: 旧司受験生 | 2008年1月 1日 (火) 02時25分

明けましておめでとうございます。
大晦日のおことば、心に染み入るものがありました・・
私も恋人とお客様の幸せを考えて頑張ります。
人の為に過度に自分をいつわると2007年の文字「偽」・・になりそうなので(笑)、人と人のハザマでも、自分の理性と立ち居振舞いをわきまえて生きる「人間」でありたいです。
今年も多忙を極める葉玉さんでしょうが、陰ながら師匠として応援させていただきます。
では、今日も初売り頑張ります!私信めいて申し訳ありませんでしたm(__)m

投稿: be scrivener | 2008年1月 1日 (火) 08時02分

明けましておめでとうございます!!
私は新司法試験受験生です。
長年,彼女と付き合っていましたが,遠距離で勉強に忙しくあまり会えませんでした。
そんな中,彼女に浮気され,元旦に別れました(;;)
自分から別れようと言いましたが,やっぱり淋しいです。
けれど,先生のブログを拝見して,気持ちが少し安らぎました。
友人や家族みんなが私を支えてくれることを思い出せたので。
今は辛いけど,猛勉強して新司法試験に絶対に受かるぞー!!
どうもありがとうございます(^^)

投稿: 受験生 | 2008年1月 1日 (火) 13時43分

葉玉範士、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします<(_ _)>

一年に一回ぐらいは着物を着なくっちゃイカンだろうと・・・今日(元旦)は、着物を着てみたら・・・
内側からちゃんと着ないと、カタチにならないことを思い知りました(笑)

会社法は、「定款上の約束」に手が届くのはもちろんですけれど・・・
会社債権者と会社間の「契約上の約束」にやっと手が届くのであって、「製品保証書上の約束」を担うのは・・・ちょっとムリなのかもしれませんね。
同心円の内側と外側の制度付けは、ゴッチャに出来ないことなど・・・着物を着てみて、資金格納時の「受領」という「衿を正す必要性」などを、改めで実感した次第です(笑)

自分は・・・「塞翁が馬」というコトワザの必要性は感じるものの、あまりスキではナイのです。
命を掛けて会いたいヒトもいたし、死んでもイイからやりたいことがあるコトもあるのです。
そして・・・「命がけ」や「死んでもイイから」を支えるのが、「ヒトとヒトのつながり」かもしれません。

投稿: 至誠丸 | 2008年1月 1日 (火) 14時55分

あけましておめでとうございます。

僭越ながら初めてコメントさせて頂きます。
『つながり』の始まりは日経ビジネスオンラインの勉強法から拝読させて頂き、先日はアルファブロガーにおいて会社法であそぼへ清き一票を投じさせて頂きました。

本日26歳になった小生は葉玉さんのご尊父と同じ業界に勤務しており、特殊な商慣行のために誰の利益のために頑張っているのか分からなくなっております。人に喜ばれる仕事をしたく他業界も模索していますが、これといった資格がない事からも目的が定まらないために、人生設計ができず悩んでおりました。
『辛さを喜びに変える魔法』とは人とのつながりを意識することで為せるとのことで、秋霜烈日といわれる検察で仕事をされてきた葉玉さんだからこその重みを感じます。自分で辛い仕事を良い仕事に変える努力をしつつ、会社法であそぼを通して次のステップへの自己啓発をしたいと思います。

会社法とは違う書き込みとなってしまいましたが、2008年も応援させて頂きたいと思います。

投稿: いちさらりまーん | 2008年1月 2日 (水) 18時07分

明けましておめでとうございます。
会社法初学者の者です。先生のブログは特に周りの絵が気に入っており楽しく読ませて頂いております。今日は初質問させて頂きます。
葉玉先生の「会社法100問」第二版の3番の問題における63ページの1において、閲覧「謄写」権(442条)とあるのですが、株式会社においても合同会社(625条)のように閲覧請求権のみならず謄写権もあるのでしょうか。
あるとしたら、条文上の根拠をご教示ください。
442条3項2号には「謄本の交付の請求」とありますが、これが根拠でしょうか。
だとしたら、謄写請求とされなかった理由をご教示ください。

投稿: 麻耶 | 2008年1月 3日 (木) 03時31分

葉玉先生、あけましておめでとうございます!昨年の「三つの誕生日」のエントリー以来、久しぶりに先生のブログを読んで涙しました。このブログは大好きですが、正直内容的にレベルが高すぎて、付いていけない部分が多いです。ですから、今年は葉玉先生の「子育て奮闘記」や「教育論」、「日本再生への提言」から、「六本木ナイト事情」にいたるまで、幅広い投稿を期待しております。サービス精神旺盛な先生がみな大好きですので、よろしくお願いします!

投稿: マチャミ星人 | 2008年1月 3日 (木) 14時11分

葉玉さん、明けましておめでとうございます
僕は葉玉さんの出身地である久留米市に住んでいる者です。
葉玉さんのブログを拝見して、非常に興味を覚えました。
将来必ず葉玉さんを訪ねていきます。
その時までしっかり勉強を怠りませんので、一言「よく、来てくれました」と言ってください。
お願いします。
これからも素晴らしい、素敵なブログを提供してください。
葉玉さんご家族にとって、幸せな一年でありますように(^^♪

投稿: y.o | 2008年1月 3日 (木) 21時36分

http://www.toyokeizai.net/online/tk/column6/index.php?kiji_no=2
日本の最高税率は国際的にも高い水準であることがわかる。
(筆者は新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人統括代表社員。)

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/p11-12.pdf
財務省の統計では、形式的な数値から離れた実効税率では、日本はアメリカなどを下回ることが記述されています。

自分の都合のよい数値だけを引用する監査法人のやり方には相当な警戒が必要なようです。

次のような書籍を読み、日本の望ましい税制を考えて見ましょう。
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/5/0237700.html
「脱格差社会」への戦略 岩波書店
・・・・・・企業を優遇した90年代以降の税制改正にもかかわらず、日本企業の海外流出は最も進んだとの指摘は、非常に重要です。経団連と日本経済新聞のうそまみれ世論誘導はなんとかしていただきたいものです。

投稿: ワーキングプアのみなさん、あけましておめでとうございます | 2008年1月 4日 (金) 12時41分

あけましておめでとうございます。休みの暇に興じてアルファブロガーの方々のブログをじっくり読ませていただきます。

投稿: 建築パース | 2008年1月 4日 (金) 15時27分

あけましておめでとうございます。
書籍などで知っていた先生のブログがあると友人から聞き、
会社法を始めてからずっとずっと疑問に思っていたことがあり、
質問できないかと思い、お邪魔させていただきました。
とても興味深く、勉強になるブログだと思いました。

新年早々質問などおこがましいですが、
すごくつまらない質問だとは思いますが、
お答えしていただければ幸いです。

質問というのは、公開会社の定義(2条5号)についてです。
授業で、「公開会社というのは、すべての株式について譲渡制限がないか、
一部の種類の株式についてだけ譲渡制限がある株式会社のことをいう」
と教わったのですが、2条5号をみると、
「その発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社のこと」とあり、
どうしても、一部の株式について譲渡制限を設ければ「公開会社ではない株式会社」になるように思ってしまうのです。
そもそも一部だけ設けるとは種類株式であると思うし、それは定款によって定められたものではないのか・・・
とか思う始末で、頭が混乱してしまいます。

これは、私の文言の読み方がおかしいのでしょうか。
どう読めば、「一部の種類の株式についてだけ譲渡制限がある株式会社」を、
公開会社というように考えられるのでしょうか。

ぜひ、教えてもらいたいです。
よろしくお願いします。

それでは、長文失礼いたしました。

投稿: kyo.m | 2008年1月 4日 (金) 15時27分

会社法は、女の子に超優しい男性(誰?)がつくりました。
会社法のおかげで、大金や力や信用のないふつうの女の子でも
優れたアイデアさえあればプチ起業できるようになったのです。
この点、浜辺教授による「権力者」「財界」寄りの立法との批判は的外れだと思いますです。

投稿: スイーツ会社法 | 2008年1月 5日 (土) 02時05分

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