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2007年11月11日 (日)

大杉教授にチャレンジ(閲覧拒否編)

「アルファブロガーアワード2007」
https://www.sixapart.jp/inquiry/alphablogger/alpha_vote.html
にアクセスしていただき、清き一票をこの「会社法であそぼ。」に投票していただければ幸いです。

 さて、中央大学の大杉教授のブログで、会社法の悪口?が書かれていました。
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50412572.html

 こういう建設的な悪口はどんどん指摘していただいた方が、私も反論できるので、楽しいです。ということで、今日は、大杉教授にチャレンジしたいと思います。

 なお、私が見る限り、そこで指摘されている悪口は、どちらも立法論なので、私も立法論を織り交ぜてお話しいたします。

1 全体について
 大杉教授は、会社法がいろいろな制度を「横並び」させたために「落とし穴」があったとおっしゃっています。

 私も、会社法の立案過程に携わっていたものとして、「平仄を取る=横並び」ことが重視されていたのは重々承知しておりますが、少なくとも、ブログでご指摘の点については、「落とし穴」に落ちたのではなく、担当者が、色々なこと(悪事も含め(笑))を考えた上で、故意に平仄を取ったものと思っています。

2 株主名簿の閲覧の拒絶事由
 大杉教授は、株主名簿の閲覧拒否事由について
  会社法現代化要綱の第2部第4の5(5)では、会社法125条3項の1・4・5号に相当する拒絶事由を明文化することを提言していたにもかかわらず、結局、帳簿閲覧権の拒絶事由(433条2項)と横並びにしたため
 「二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
 三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。」
という2号3号を定めた点を問題にしています(特に3号)

 もっとも、大杉教授も、さすがに2号を名簿閲覧請求権の拒否事由としたことについては、明示的に批判していません。
 議論になるのは、競業者による名簿閲覧(3号)であり、これについては、
  合理性がないので、帳簿閲覧の拒絶理由よりも狭く解すべきである
と結論づけています。
 実は、この問題は、このブログで最近ikさんが問題提起されていましたし、MHMセミナーで某先生も言っていたそうですので、最近、ホットな話題なのかもしれません。

 しかし、私は、ikさんにお答えしたとおり(10月20日A4)、競業者による株主名簿への閲覧拒絶は合理性があるものと考えています。

 競業者への「会計帳簿」の閲覧を拒否することができるのは、原価がばれるからだけではありません。資金調達先、資金拠出先、仕入れ先、販売先等が競業者にばれるのも大変な打撃になる可能性があるからです。
 そして、株主名簿の閲覧も、そうした情報が漏洩する可能性がある点では、会計帳簿と同様です。
 取引先がその会社にどの程度出資をしているかは、その会社との関係の深さを示すバロメーターです。

 たとえば、松真自動車販売が、葉玉自動車の製造する車の販売代理店になったときに、葉玉自動車に30億円の出資をして株式を取得したにもかかわらず、3年後に突然、その株式を売却したとすれば、松真自動車と葉玉自動車との関係に亀裂が入ったと推認することができるでしょう。
 また、競業者が葉玉自動車の株主名簿を閲覧したところ、その競業者の親密取引先が葉玉自動車の株主であることを見つければ、競業者は、「その親密取引先が葉玉自動車に商品を納入しているに違いない」と思い、親密取引先を責め立てて葉玉自動車との取引をやめさせるかもしれません。
 さらに、M&Aが水面下で進行しているときには、TOB等が行われる前に、買収者による買い増し等が行われたりしますから、株主名簿が競業者に丸見えになってしまった場合には、M&Aの動きを事前に察知される可能性もあります。

 このように、株主名簿は、会社にとって、単なる名簿ではなく、会社の事業に関連する情報の宝庫であり、だからこそ、どの会社でも、競業者に株主名簿を見せたくないのが普通なのではないでしょうか。

 株主名簿を閲覧したい競業者は、「おれは、単にプロキシーファイトをしたいだけだ」と思うかも知れませんが、プロキシーファイト以外にその情報が使われる一般的な可能性がある限り、拒絶事由になるのは、やむをえないように思います。

また、株主名簿への閲覧の場合については「狭く」解釈するといっても、全く同じ文言で、同趣旨のものをどのように「狭く」するのか、今ひとつ分かりません。目的外使用は、1号で拒絶理由になっているので、競業者は議決権や提案権の行使に関する調査目的の場合でも閲覧できないというのが3号の趣旨です。

とすると、閲覧目的を付加することによって狭く解するのは難しいでしょうから、競業の範囲を狭く考えるのでしょうか?それとも、名簿の部分閲覧を認めるのでしょうか?

どちらにしても、それなりにハードルが高いように思います。

 私は、プロキシーファイトが行われること自体は悪いことではないと思います。しかし、プロキシーファイトの準備として株主名簿の閲覧を広く認めるという方法論については、あまり賛成できません。

 むしろ、私は、立法論としては、
  株主のプライバシー保護の見地から、個々の株主の同意なき限り、当該株主の情報を他の株主に開示することができない
と改正すべきだと思っています。

 株主名簿の閲覧権は、プロキシーファイト時の委任状勧誘のために必要だと言われますが、本当に、そうなのでしょうか。

 プロキシーファイトをしたいならば、株主提案をして議決権行使書面に議案を載せてもらえばよいのであって、委任状の郵送だけが、プロキシーファイトのための唯一の方法ではありません。

 「勧誘書面を郵送した方が長い説得文が書ける」のかもしれませんが、普通の株主は、あまり詳しすぎるものは見てくれません。また、提案者のホームページを見てもらったり、マスコミを通じてアピールしたりする方法もあるのですから、株主の氏名・住所が分からなければ、何もできないというわけではないでしょう。

 委任状勧誘する株主としては、「株主に直接電話したい」「株主に直接会って説得したい」という気持ちもあるかもしれませんが、株主名簿をもとに電話番号を調べて直電したり、突然、住所地に会いにいくことが、電話される側・訪問される側の株主に負担や不愉快を生じさせる可能性も高いことは認識しておく必要があります(現にプロキシーファイト時には、よく会社に「なんで俺の住所を教えたんだ」というお叱りの電話がかかってきます)。

 結局、私は、プロキシーファイトをしようとする株主が、他の株主の氏名や住所や持ち株数を知りたいという利益と、他の株主の「他人に知られたくない」という利益を見比べてみたとき、個人情報保護を重視する現代社会では、後者を優先する人の方が圧倒的に多いので、後者の利益を重視した閲覧制度にすべきであると思うのです。
 
 また、株主が、株主名簿を閲覧して得た情報の管理について法的責任を負っていないのも問題だと思います。情報は一度責任のない者に渡ってしまえば、その後は、管理不可能になってしまうからです。この開示後の情報管理の点においては、株主名簿に限らず、各種閲覧請求権には不備があるように思います。

 まあ、プロキシーファイトをしたい人が、プロの株主に対し委任状勧誘をすること自体はさほど問題はないので、たとえば、「議決権比率1%以上の株主の情報は見せるけど、それ未満の株主の情報は見せない」とかいう線引きの仕方もあるかもしれませんが、いずれにせよ、もう少し個人情報に配慮した閲覧制度にしてもらいたいものです。

 こうした立法論に対しては、
 「会社ばかりに、委任状勧誘活動を許すのは不公平だ。」
という批判もあるでしょう。ただ、そうした不公平感は、閲覧請求権の拡大という形ではなく
  経営陣の委任状勧誘活動の制限
という形で実現する方が筋がいいように思います。

 今日は、このほか、「新株発行における引受担保責任」について反論しようと思ったのですが、眠くなったので、それは次回に。

(質問コーナー)
Q1
取得条項付新株予約権の取得の仕方についてご質問です。
会社法274条によって一部の新株予約権を取得する場合ですが、
この時に、特定の新株予約権者のみから取得することは可能でしょうか。
例えば、同じ内容の新株予約権者としてAさんとBさんがいた場合、
両者ともに取得事由に該当した際に、Aさんのみから新株予約権を取得
すると決定することです。
もし可能であれば、274条4項の公告には、Aさんの氏名を記載するのでしょうか。
投稿 | 2007年11月 5日 (月) 16時00分
A1
新株予約権の内容として、一部取得することになっていれば一部取得も可能です。公告は、そのとおりです。

Q2
11月5日のA9に関連して質問させてください。
過去、何度か会計監査限定監査役について質問させていただきました。
2006年11月10日のブログでは、定款規定そのものが無効ということで結論を出されていましたが、1年経過して、見解をご変更されたということでしょうか?
投稿 としお | 2007年11月 5日 (月) 16時10分
A2
失礼しました。すっかり忘れていました。
11月10日の記事を読んで、なるほどそうだと思いますので、11月5日A9は、撤回させていただきます。本文も修正します。

Q3
勉強仲間で話した結果、択一の練習会に加えて、我々で論証集の暗記をしようと考えております。
具体的には、各自(現在4名)が毎日論証を10個暗記してきて、30分くらいで各人5分ずつ暗唱し、正誤を確認するというものです。
このような勉強法については先生はいかが思われますか。
改善すべき点があればお教えいただけないでしょうか。
何度も申し訳ございませんが、ご教示いただければ幸甚です。
投稿 夜間ロー生 | 2007年11月 6日 (火) 15時57分
A3
初期の勉強としては、そういう勉強でもよいと思います。
もっとも、そのうち、丸暗記よりも、答案練習時に短くしたり、長くしたりする訓練が必要になると思います。

Q4
何を食べれば3時間も大きな声でしゃべることができるのですか?
ちなみに私は通常3時間のうち1時間は睡眠に充ててますが、昨日は一睡もできませんでした(笑)。
投稿 ホー | 2007年11月 7日 (水) 08時19分
A4
雑食が一番です。

Q5
株式移転に際して、株式移転計画に補欠監査役を定めている会社の事例を見かけましたが、「設立時補欠監査役」ともいうべきものを定めることは可能なのでしょうか。
補欠役員に関する329条2項は、あくまで設立後の役員選任決議に際しての補欠選任に関する規定ではないかと思いますし、773条の株式移転計画の記載事項としても定められるのは設立時役員であって設立時補欠役員は含まれないように思われます。
それとも、そもそも「設立時補欠監査役」などというものではなく、設立の効力発生によって監査役となる者の補欠(設立時監査役の補欠ではなく)を選任したと考えればよいのでしょうか。
投稿 赤兎馬 | 2007年11月 7日 (水) 14時10分
A5
 補欠監査役の選任は、条件付きの監査役の選任です。だから、ご質問の趣旨である「設立時補欠監査役」というのが
  株式移転の効力発生前に、設立時監査役が死亡した場合に備え、条件付きで設立時監査役を選任したもの
であるならば、条件付きでもできそうですね。
 しかし、株式移転計画で、(設立時ではなく)設立後に就任する監査役を選任することができるかという問題だとすると、なかなか微妙ですね。
 実質的には認めても弊害がないようにも思えますが、条文上は、認める根拠には乏しいように思います。まあ、法務局が受けてくれるならば、私はあえて反対しませんが。

Q6
上場会社の場合、来年の秋頃「特別口座に関する公告」を行いますが、セミナーの中で「本件にかかる公告に対応できるのは1社ぐらいしかないかな・・」とおしゃっていたのですが、実際そんな感触なのでしょうか?恐らく大手通信会社のことかと思うのですが、私の会社では違うところを利用しているものですから。。。
投稿 公告担当者 | 2007年11月 7日 (水) 18時12分
A6
半分冗談でいっただけで、どの調査機関でも大丈夫だとは思います。

Q7
株主提案権について質問させていただきます。
株主総会の招集に際し、取締役会非設置会社では総会の目的である事項を必ずしも定めなくともよいわけですが(298条1項2号、309条5項)、この場合、総会における議案提出権については総会目的事項に限られる規定(304条)の適用は排除されると考えてよいのでしょうか?
また、目的事項を明示した場合には適用されるので、目的以外の事項についてはやはり議案提出権はないと解すべきなのでしょうか?
このように解すると、取締役会非設置会社において総会決議事項に制限がないにもかかわらず、株主は総会で提案を提出できなくなるので妥当でないと思うのですが。
投稿 やまび | 2007年11月 7日 (水) 23時07分
A7
議題(目的である事項)が提出できなければ、議案は提出できません。
非取締役会設置会社において、総会決議事項に制限がないのは、株主総会と取締役との権限分配の話に過ぎず、議題提出権とは関係ありません。

Q8
旧司法試験口述のアドバイスをいただいたゆりです。
運良く最終合格できました。ありがとうございました。
投稿 ゆり | 2007年11月 8日 (木) 19時25分

去年商法C、その前は「去年商法G」だった者です。
無事、最終合格することが出来ました。ちなみに今年の論文は商法Aでした。
こちらでも何度か質問をさせていただき、そのたびに丁寧なご回答を頂きました。
本当にありがとうございました。
投稿 去年商法C | 2007年11月 9日 (金) 01時18分
A8
おふた方とも、おめでとうございます。
旧司法試験という難関をクリアしたことは、将来、大きな自信になるでしょう。
ただ、二回試験も最近壁として認識されつつありますので、修習はがんばってくださいね。

Q9
いわゆる中間決算は、臨時決算と見なされるのでしょうか?中間決算においては、会計士から「金商法上の監査証明」は受けていても、「会社法上の監査証明」は受けていない会社が一般的だと思います。分配可能額の計算をしていて疑問に思い、質問させて頂くしだいです。
A9
中間決算と臨時決算は別ものです。
臨時決算をすれば、期中損益等を分配可能額に取り込めますが、普通に中間決算をしただけでは取り込めません。

Q10
組織再編(株式移転)に伴って新株予約権が承継された場合に、再編前は会計上費用計上の必要がなかった新株予約権も会社法施行後の付与決議と見なされて、新設親会社において会計上費用計上が求められるのでしょうか?
投稿 百個桃 | 2007年11月 9日 (金) 14時46分
A10
 新株予約権に係る義務が、新設親会社に承継されただけだと、費用計上はされないと思います。

Q11
親会社株式は分割の対象資産になりうるのでしょうか?事業に用いられている資産とは考えにくいかなあと思ったりもするのですが。
投稿 マルチミネラル | 2007年11月10日 (土) 02時28分
A11
理論的に不可能というわけではないでしょう。

Q12
459条の剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めについて質問がございます。たとえば、設立したばかりの会社ですと、最終事業年度は到来していませんし、会計監査人の監査も受けていませんが、ほかの要件を満たしていれば、取締役会の決議で配当できるのでしょうか?
投稿 ガイア | 2007年11月10日 (土) 10時18分
A12
その時点では、役会決議で配当はできません。

Q13
株式会社が解散及び清算人を選任した後は、解散した日現在の財産目録等を作成し、株主総会にて承認を受けなくてはならないと定められています。(会492)
この財産目録等について、
①会492の株主総会を、解散及び清算人選任決議を行なった後の議案として同日付けで承認することは可能でしょうか。
②監査役設置会社においても監査役の報告は不要ということでよろしかったでしょうか。
①については、解散、清算人選任決議後、その場でせっせと清算人が財産目録等を作成することもできなくはないので可能と思いますが、招集通知に財産目録等を添付する必要があるかどうかや、議案の記載方法がわかりません。できるとしても、解散予定会社は大会社数社を株主とする資産保有会社ですので、コンプライアンス上の観点からはすべきではないのでしょうか?
投稿 seiquro | 2007年11月10日 (土) 13時19分
A13
①できるでしょう。
②財産目録については、総会承認前の監査報告は不要です。

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コメント

先生、こんにちは。
知人がベンチャー企業(非上場会社)の経営をしております。
すでに締結した契約内容に関するものなので、先生のご回答を伝えるつもりはなく、単なる私個人の疑問として質問させていただきます。

知人の会社とベンチャーキャピタル(VC)との投資契約書を見せてもらったところ、株式買取条項が定められていました。「公開の見通しが立たないと合理的に判断した場合」にVCが株式買取請求権を行使できるというもので、買取価額は行使時におけるある算定方式(詳細は思い出せません)によって客観的に定まるというような文面でした。
会社法によると自己株式の取得は155条各号に定められていますが、このケースではどの号にあたると考えるべきでしょうか。
契約書からすると、取得請求権付株式ではないので4号ではないようです。
3号のケースかとも思いますが、取得価額は条件成就時に客観的に決定されるものであり、取得価額の決定(157条)の主導権があるわけでもなく、VCの形成権の行使によって買取価額が決まり買取請求される性質のもので財源規制にも服さないのではないかと思います。

それと、この契約以降すべてのVCが「株主平等原則」を主張したので、すべてのVCとの契約に新たに株式買取条項を定めたそうです。この場面で「株主平等原則」の適用があるのでしょうか。仮にそのような事態を回避するためには、株式買取条項を定めるよりも取得請求権付株式とした方がよかったのでしょうか。
いろいろ考えていたら混乱してまいりましたので、ご回答できればよろしくお願いします。

投稿: めぐみ | 2007年11月11日 (日) 17時35分

新株予約権について質問させてください。

不公正発行について、裁判所はライブドア事件では主要目的ルールで解決し、ブルドックソース事件では主要目的ルールを使わずに解決されています(最高裁)。
これはどのように理解したらよいのですか?

神田説のように新株予約権には主要目的ルールの適用がないと考えたうえで、ライブドア事件のように資金調達目的がありそうな設計の予約権であれば主要目的ルールの適用を認めて判断すると考えたらよいですか?

回答お願いします。

投稿: ただ | 2007年11月11日 (日) 18時32分

きちんと反論しておかないと,それで回答したこととして処理されるようですので(笑),10月20日のQ4には反論しておきます。
株主が,こっちの会社の方がいいですよと営業かけられて,乗り換える,その結果,株価が暴落するってのは,そういう風にはいえません。競業でなくても同じことは出来ます。競業だけ,そういう風にしないといけない理由には全くなリません。
なお,本記事の設例についても,親密取引先を責め立てて,云々とありますが,これは株主名簿から判明するということよりも,もともと知っていることの方が圧倒的に多いはずです。たまさか判明するケースがあることもあるとおっしゃる可能性はありますが,そんなあるかないかよくわからないケースのために,法制審議会でもかかってなかった拒絶事由を担当官は入れたんでしょうか?また,責め立てて取引拒絶させること自体の当否を問えばそれこそいいんではないですか。(委任状勧誘に使わせなくていいというけれど,そんなに株主名簿閲覧謄写請求権を制約する論理をいう前に,拒絶事由の合理性を説明してください。)

また,委任状勧誘には不要とも見えます。しかしそうでもありません。こういう目的こそ,仲間である株主に株主名簿を見せる主たる理由です。これは,全く独自の見解で,そういうことをいうなら,株主名簿閲覧謄写請求権を廃止すればよかったのです。
さらにいうと,絶対に株主名簿を見ないとまずいケースがあります。少数株主が招集許可を得た場合に,総会を招集するときです。これは,どうするんですか。

プライバシー保護のために一律制限する,という議論は,それならわかりますが,それこそ条文はそうはなってませんよね。プライバシー保護を重視したんです,とおっしゃるなら,競業者ではない債権者にどうしてみせるんですか?

競業者に仕入先情報が流れて困る,というのも,債権者で,かつ,非上場会社だったら,まだわかるんです(非上場でも株主になってたら,総会などでみんな顔見知りだったりするので,誰が株をもっているか,誰が取引先か結構知っているケースもあります。)。しかし,上場会社の株主で,ある程度の株数をもっている人が,プロキシーファイトしようとなったときに,別の意味で困ることはあるんでしょうが,株主名簿の閲覧謄写拒否事由において実現しようとする会社の利益を害する,ということにはならないと思います。

純理論的に割り切れない,ということでしたが,会計帳簿の拒否事由については,一応の議論の積み重ねはあったはずです。また,純理論的に割り切れないといっても,(釈迦に説法でしょうが)立法趣旨や立法事実はあるはずです。そこがまったくわかりません,と申していました。あれだけ伺って,すっきり出てこないところを見ると,やはりあまりないんだろうと想定しています。
この点は,立法のミスとおっしゃった某先生や,大杉先生はじめ,多数の研究者のご見解が今後出てくるでしょうし,立法の見直しの話も既に出始めているという「噂」も伺います。
故意に担当者が仕込んだ的記載については仮に「立法のミス」ではなく,それが事実だとすれば,これはパブリックコメント制度への重大な挑戦ではないか,という議論があると思います。国民のみなさんは,補足説明を見て,3号は想定していなかった。2号については大杉先生も明示的に反論してないとおっしゃいますが,会社や株主共同の利益に弊害が生じるというなら従来の濫用そのものであって,想像できる内容だからいいんだと思います。3号は現在このように議論が出るとおり,それは当然入れるだろうね,という内容ではありません。政策的にどちらか,と決めるのであれば,まさに法制審議会に明示的にかけ,パブリックコメントにかけ,国会で議論してもらうべき性質のものでしょう。会社法は,短期間に大量の立法を強いられたのですから法務省令に委任したことなどについての批判について,そのまま与するつもりもありませんが,法案立案で,要綱に基本的には挙げておきながら,一部除外していたものを,こっそり意図的に挿入した,ということになると,大いに問題になるんではないでしょうか。

投稿: ik | 2007年11月12日 (月) 01時46分

楽しくブログ見させていただいています。大変勉強になります。
でも、いざ自分が質問したいと思っても何処に打てばいいのかいまいちよくわからず、訳のわからないところに打ってしまったので再度打ちたいと思います。

株式の譲渡承認手続についてです。

「譲渡を承認しないなら会社or指定買取人が買取って」と譲渡承認請求者より請求があり会社が買取人を指定したとします。その買取人が株式を買取る旨の通知を承認請求者にしなかった場合のその後がいまいちよく理解できません。

「その場合には会社が買い取らなければならず、譲渡を承認するか否かの通知の日から40日以内に会社自身が買取る旨の通知をしなかった場合に承認みなしとなる。」と私は考えるのですが・・・実際には買取人決定には取締役会設置会社であれば取締役会によって決まりますが、譲渡を承認するか否かの通知の日から10日以内に買取人が買取る旨の通知をしなかった場合、会社自身が買取る旨を決めることは残り30日以内に特別決議を開催する必要があるため物理的にぎりぎりの日程になるのではないかと思うのですが。40日という日程を考えれば特別決議をすることも念頭にいれてのことだと思うのですがこんなことできるのでしょうか?つまらない質問で申し訳ありませんが、ビシビシ鞭で鍛えていただけたらと。

投稿: おさる | 2007年11月12日 (月) 01時57分

1,創立総会の場合、発起人以外の引受人は303条304条のような請求・提案はできないのでしょうか?

2,73条4項では創立総会で決議できる事項について、67条1項2号の目的である事項・定款変更に関する事項・設立廃止に関する事項としていますが、67条1項2号の目的である事項を定める際に、うっかり設立時役員等の選任に関する事項を定め忘れた場合、当該創立総会では設立時役員等を選任できず、別途創立総会を開催しなければならないのでしょうか?

投稿: 勉強中 | 2007年11月12日 (月) 14時54分

先生、お世話様です。

629条(持分会社の利益配当に関する責任)の条文について質問をさせてください。

629条2項において、前項の義務は総社員の同意があれば、利益額を限度として、免除する事ができると謳っていますが、

これは、業務執行社員のみが対象となるのであって、利益の配当を受けた社員は。免除の対象とならないとの解釈で宜しいのでしょうか?

投稿: Tです。 | 2007年11月13日 (火) 15時32分

いつも楽しく拝見しております。
株式交換についてご教示ください。


1.反対株主の株式買取請求対象株式の所在

(1)買取請求がなされた株式は、効力発生日時点で当該反対株主の所有のままなのでしょうか?

買取(=自己株式の取得)の効力は代金支払時に発生(会社法117条5項)するところ、株式交換の効力発生日後に代金を支払う場合が考えられます。
「株式交換完全子会社株式は効力発生日に株式交換完全親会社が取得する」と理解していましたが、この関係はどう考えればよろしいですか?

(2)効力発生日後に代金を支払った場合には、いったん自己株式とした後で完全親会社へ移転させる、と考えてよろしいのでしょうか?

この場合、改めて自己株式の処分の手続をとることになるのでしょうか?


2.買取請求への代金支払時について

代金の支払は効力発生日前にしてもかまいませんか?
(効力発生日から60日以内に支払う:会社法117条1項とされていたので、
 念のための確認です)


3.買取代金の利息について

協議が整った場合、請求時から支払までの利息を支払う必要があるのでしょうか?


以上、ご多忙中恐れ入りますが、よろしくお願い申し上げます。


※江頭先生の株式会社法746ページを参考にしています。

投稿: msm | 2007年11月13日 (火) 19時22分

先生、度々すみません。
第三者割当による募集株式の発行についてなのですが、

種類株式発行会社の場合において、募集株式の種類が譲渡制限株式の場合は、譲渡制限株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議を要しますが、

これは、例えば、剰余金の配当につき優先株、劣後株の2種類の株式を発行している種類株式発行会社がその発行している株式全部に譲渡制限を付している場合は、株主総会の特別決議(199条2項)のほかに当該優先株、劣後株の種類株主総会の特別決議を要するとの解釈で宜しいのでしょうか?

投稿: Tです。 | 2007年11月14日 (水) 11時36分

楽しくブログを拝見させていただいております。大変勉強になります。

千問の道標Q75に関連する質問なのですが、複数の種類の株式が発行されている場合において、当該複数の株式について、同じ内容の譲渡制限等を付する変更を行うときには、各種類株式についてそれぞれ同一条件の108条1項4号の譲渡制限等を付するとあるのですが、これらと同様の手続によって当該複数の株式について、同じ内容の全部取得条項を付する変更を行うことができるのでしょうか。
初学者のつまらない質問ですが、ご教示賜りますようよろしくお願いします。

投稿: ゆうじ | 2007年11月14日 (水) 17時32分

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