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2007年11月23日 (金)

インサイダー取引

 皆様のおかげで「アルファブロガーアワード2007」の中間発表では、このブログが上位20位に名を連ねています。ありがとうございます。

 ただ、肝心な時期に更新をサボっていたので、きっと今頃はかなりランクを落としていることでしょう。
 ご面倒でしょうが
https://www.sixapart.jp/inquiry/alphablogger/alpha_vote.html
にアクセスしていただき、清き一票をこの「会社法であそぼ。」に投票していただければ幸いです。

さて、今日は、インサイダー取引規制についてお話しします。

先日、日本経団連の金融制度委員会資本市場部会に行って、インサイダー取引規制の課題とあり方についてお話ししてきました。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2007/1122/06.html

 話の中身は、上記日本経団連タイムスに結構詳しく載っていますが、要するに
 「うっかりインサイダーをなくすためにどうしたらよいか。」
という点について、立法論と現行法の枠内での対処法をお話したわけです。

 私は、ご承知のように今年の3月までは、検事としてインサイダー取引を捜査する側でした。
 検事は、目の前にある事実(もしくは、証拠上、ありそうな事実)に、法律を当てはめてみながら、犯罪が成立するかどうかを検討するのが仕事です。

 世間の人は、「検事は、有罪にするのが仕事」と思っている人がいるかもしれませんが、検事は、不起訴処分にする権限をもっているので、無実とか、証拠が薄いとか、思えば不起訴にするだけです。
 証拠がないのに
  「どんな事件でも、起訴して有罪にしてやる」
などという嗜好をもった検事は、見たことありません(どんな事件でも不起訴にしてしまう検事はいましたが・・・)。

 インサイダー取引も、そこにインサイダー取引があるから、捜査するだけです。
 私自身も、捜査してみて、「この要件には該当しそうにないなあ」とか「この適用除外規定にあたってしまいそうだなあ」とか、あてはめに悩むことはありましたが、法律自体を変えようという発想は、ありませんでした。

 そのため、経団連さんから、「インサイダー取引規制の課題について話して欲しい」と頼まれたときも、最初、若干戸惑いました。
 しかし、弁護士になった後、いろいろな会社さんからインサイダー取引についてのご相談を受ける中で感じたものを、立法的に解決するとすれば、どうなるかを考えるのも一興だろうと思い、冒頭の講演をお引き受けした次第です。

 インサイダー取引というと
  「金儲けのためにズルいことをしている」
というイメージがありますが、実は、構成要件として、「図利目的」や「利益を得た」ことが要求されているわけではありません。

 「重要事実を知っている人が、その事実の公表前に株式を売買」すれば、それでインサイダー取引は一丁上がり。

 投資家に被害がなくても、行為者が取引で損をしていても、会社法のルールに従って会社の計算で自己株式を市場から取得しただけでも、適用除外になるような場合を除き、インサイダー取引になります。

 インサイダー取引は、一種の形式犯なんですよね。
 (だから、立証も比較的簡単です)

 ところが、会社の役職員の多くは、インサイダー取引というのは、「金儲けのためにズルいことをする」というイメージがあるため、自分がインサイダー取引をしているという意識がないこともあります。

 たとえば、
① 合併の準備を担当している人が、従業員持株会でキャンペーンがあることを聞いて、拠出金を増やした。
② 小さな不採算子会社を解散するということを同僚から聞いたことがある人が、定年退職するにあたりストックオプションを行使した上、市場で株式を売却した。
③ 画期的新製品の販売計画を策定している担当者が、自社の株式がサブプライム問題の影響で大幅に下落しているのを見て、「このままでは、やばい」と思って、急いで保有している株式を売った。
などもインサイダー取引違反です。

 ①の場合は、行為者は、自分で株式を買っているという気持ちはなかったかもしれない。でも、検事にとっては、そんなの関係ねえ。
 ②の場合は、行為者は、株式を売るときに、「重要事実を知っている」ことすら忘れていたかも知れません。でも、検事にとっては、そんなの関係ねえ。
 ③の場合は、画期的新製品の販売計画は、株価の上昇原因であり、他方、本人がやったことは株式の売却なので、重要事実を知っていることと株式の売買には因果関係がない。でも、検事にとっては、そんなの関係ねえ(ちょっとくどくてすいません)。

 インサイダー取引というのは、そういうものなのです。
 インサイダー取引の法律的な意味での「故意」は、「公表前に、株式を売買した」という事実の認識認容ですから、本人が、インサイダー取引だと思わなかったとしても、それは、単なる法律の錯誤です。
 また、重要事実を知っている人が、「これは重要だとは思わなかった」と弁解しても、それは、いわゆる刑法理論でいうところの意味の認識の問題であり、裁判で、その弁解が通るとは思えません。

 こうしたインサイダー取引の形式犯的性格が、沢山の
 「うっかりインサイダー」
を生んでいると思われます。

 課徴金制度ができる前は、検察庁が
    「うちは忙しいから、重要な事件じゃないとやらない」
という姿勢だったためか、こうした「うっかりインサイダー」で摘発されるということは、なかったと思います。

 しかし、課徴金制度ができた後は、腰の重い検察庁抜きで、証券取引等監視委員会だけで事件処理できるので、「うっかりインサイダー」でも摘発される可能性が高まりました。
 課徴金制度は、軽微事案に対応することに主眼があるのですから、監視委員会が、「うっかりインサイダー」だろうが、「ちゃっかりインサイダー」だろうが、摘発に動くのは当然だと思うものの、摘発される側が調査によって被る打撃は、結構、深刻です。

 売買をした行為者が調査への対応に忙殺されるのは当然のこと、場合によっては、上司、同僚、家族まで調査の対象となり、精神的には相当追い詰められます。
 また、会社にとっても、従業員がインサイダー取引で摘発されれば、報道や監視委員会の公表等を通じて、レピュテーションが低下することは避けられません。
 調査への対応のための事務負担も重く、弁護士費用もかさむでしょう。

 上場企業のサラリーマンは、例外なく、インサイダー取引に陥る危険があります。
 普通のサラリーマンが普通の生活を営んでいる中で、うっかりインサイダーを起こすことほど悲惨なことはありません。

 摘発する側も、「うっかりインサイダー」を重点的に摘発しようとは思っていないだろうし、余計なものを調査すると限りあるパワーが分散することになるので、そういうものは省きたいところでしょうが、外形的に見れば、「うっかり」か「ちゃっかり」か、「どっさり」かを区別することはできないので、端緒をつかめば、調査を進めざるを得ないというのが実態です。
 また、バスケット条項など、インサイダー取引の適用範囲に関する不明確な要件についても、抑止効果という点では規制当局にとってプラスかもしれませんが、刑事事件として立件するには、怖すぎて使えない。

 本来、摘発側にとっても、摘発される側にとっても、適法範囲を明確化して、うっかりインサイダーを防止するというのは、共通の目標のはずです。

 そういう観点から、経団連では、「うっかりインサイダー」が起こりやすい領域を具体的に掲げて、適用範囲を明確化した方がよいという提言をしてきました。

 とはいえ、指摘した点が法律に取り入れられる可能性はさほど高いわけではないので、とりあえず、各企業は、独自の努力で「うっかりインサイダー」を防止する必要があります。

 一定規模以上の上場企業は、インサイダー取引防止規程を置いているのが通常ですが、私が見る限り、この規程は十分に機能していません。

 その原因は、次のようなところにあるように思います。

 ① 防止規程は、「積極的に自己の利益を図るためにインサイダー取引をしようとしている人」を念頭に置いていることが多く、「うっかりインサイダー」防止という観点からは実態にそぐわないこと

 ② 会社で働いている人たちは、インサイダー取引に関する知識もなければ、関心もないのが普通であるのに、そうした規程は、すべての役職員がインサイダー取引について関心があることを前提に作られていること。
 たとえば、「重要事実を知ったら、インサイダー情報管理者に知らせること」と規程に書いても、役職員は、何が重要事実なのか、何を報告すべきか、判断するのが難しく、また、報告しようという意欲もわきません。

 ③ インサイダーに該当する人たちの気持ちへの配慮に乏しいこと。
 たとえば、インサイダーに該当している間は、持株会にも入れないし、ストックオプションの行使によって取得した株式も売れません。だから、インサイダーの人達は、常に不満を抱えており、その不満の解消策を用意しなければ、インサイダーであることを積極的に報告する気持ちにもなりません。

 このような現行防止規程の弱点を踏まえ、私は、上場企業のためにインサイダー防止プログラムを作るときは 、
  「役職員は、法律の素人であり、インサイダーになんか関心がない」
ということを前提に、「うっかりインサイダー」を防止することを目標にします。

 役職員が「受け身」であることを前提にすれば、インサイダー情報管理者の方が、積極的に役職員から情報収集を行い、専門家と連絡を取り合いながら、役職員に注意喚起をしていかなければならなくなりますから、当該管理者の負担は増えます。

 しかし、そうした積極的な管理者がいなければ、「うっかりインサイダー」を防止することはできません。
 そして、売買を禁止された役職員の不満のはけ口(代替措置)をきちんと設けてあげなければ、あたかも管理者が「悪者」か、「嫌われ者の風紀係」のようになってしまい、制度として長続きしませんから、代替措置も非常に重要です。

 私は、コンプライアンスに関する問題のなかで、多くの上場企業が潜在的なリスクを抱えているのが、インサイダー取引の問題だと思います。

 摘発されるまでは、その「怖さ」が自覚できない会社も多いかもしれませんが、金融審議会の状況を見ていると、来年、課徴金の増額を含め、インサイダー取引の改正がありそうな雰囲気でもあるし、これから、もっと意識を高めなければならない領域であろうと思います。

(質問コーナー)
Q1
株主が委任状勧誘なり,少数株主権を募るなりして,ある権利を実現する手段的な権利であるから認められ,それによって経営者の監視につながっている権利である,などと重要なものという位置づけがあるなら,たいした合理性もないのに委任状勧誘などさせなくてよい,ということにはならないのではないでしょうか,という趣旨です。
(中略)
閲覧謄写請求権の重要性に気がついていただきたいのです。
拒絶事由を一切規定できない,というのではなく,そういう場合にまで制約してはいけないので,百歩譲っても限定解釈ないとおされる,としないとバランスが悪いと思う,という趣旨です。
これは立法論ではありません。解釈論で解決すべき問題であろうと思っています。

A1
私も、名簿閲覧をさせる理由については、ikさんと同じ考えですし、重要性も認識しています。
ただ、名簿閲覧をさせる理由をいくら強調しても、現に閲覧拒否事由として競業者がかかげられている以上、その趣旨を考える必要があります。
 ikさんは、「その趣旨が理解できない」「たいした合理性もない」とおっしゃるのですが、それでは、単に「その拒絶事由が嫌いだ」と言っているに過ぎないように感じます。
 「この拒絶事由は、こんな場面では合理性がある、しかし、その拒絶事由の趣旨からすると、こんな場面では合理性がない」という解釈ならば、限定解釈として成り立ちうると思いますが、拒絶事由としての競業者を全否定するだけでは、単なる立法論です(もしくは、憲法違反として無効主張をするということもできるかもしれません)。
 限定解釈をするのならば、規範とその根拠を提示するべきだと思います。
 規範が示せないとすれば、後は信義則か権利濫用でいくしかないでしょう。

Q2
 私は,株主名簿の閲覧制限の理由としてプライバシーを挙げられたので,それならどうして競業者でない債権者に見せるのですか,と伺ったのです。
A2
 文脈を追っていただければ、私がプライバシーが主たる理由だとは言っていないことは分かっていただけると思います。株主名簿の閲覧について競業者が拒絶事由としてあげられているのは、会社の秘密保護という点において会計帳簿の閲覧と変わりないという点が主たる理由であることは、以前に書いたとおりです。

Q3
会社法がそう判断しているというほかない,というのは言い過ぎだと思います(私が会社法です,といわれてしまえば,ははあーお代官様,としかいいようがありませんけどね。)。
なぜ違わないのか,の説明については,合点がいきません。
会計帳簿と株主名簿には無視できない性質の違いがあるにもかかわらずそれを見落として規律をあわせているようにしか,現時点では思えません。
A3
 当然のことながら、私は、会社法ではありません。ただし、法律家ですので、実定法の文言を重視します。会社法という一つの法律の中で、会計帳簿閲覧と株主名簿閲覧の拒絶事由として、同じ文言が使われていれば、同じ意味と解釈するのが通常の解釈だと思います。
 私は、会社法に限らず、どのような不合理な条文であろうとも、「合点がいかないから、無視していい」とは思いません。たとえば、私が最初に商法を勉強した昭和56年商法時代に「資本は額面総額以上でなければならない」というルールがあり、これなどは何の合理性もない制度で、全く合点がいかなかったですが、だからといって、解釈でそれを乗り越えようなどとは思いませんでした。
 また、ikさんは、「性質の違いがあるにもかかわらず、見落として規律をあわせているに過ぎない」とか、ミスとか、言われますが、あらゆる法律において、そういう理由付けで、条文を実質的に無力化する解釈というのは、あまり聞いたことがありません
 ミスを訂正するということであれば、まさに立法論です。

Q4
> 完全子会社となる会社の株主が株式買取請求権を行使した後に、株式交換の効力発生日が到来した場合、その効力発生日に、株式が、まず完全子会社に移転し、完全子会社の自己株式として、株式交換の対価の割当てが行われます。

先生のご説明ですと、効力発生日後に代金を支払う場合、すでに自己株式取得の効力が発生しているので、会社法117条5項は無意味な規定と思えるのですが…。
117条5項にいう「株式買取請求に係る株式の買取り」の効力とは何を指すのでしょうか?
投稿 msm | 2007年11月15日 (木) 10時24分
A4
 前提に誤解があるような気がします。株式交換における株式買取請求権の話ということですよね。その場合の条文は、785条5項等です。

Q5
株式移転時に株式移転完全子会社が発行していた新株予約権の内容として「組織再編行為に伴う新株予約権の交付に関する事項」が定められていなかった場合でも、①再編時に完全子会社発行の新株予約予約権の代わりとして新設親会社発行の新株予約権として付与(承継)することは可能でしょうか?②この場合でも、新設親会社において、会計上費用計上は引き続き求められないということでよろしいでしょうか?③従前の新株予約権が税制適格ストックオプションだった場合に、承継されたストックオプションも税制適格として扱ってよろしいでしょうか?(国税庁マターと言われそうですが)
投稿 百個桃 | 2007年11月15日 (木) 16時39分
A5
①「代わり」の意味が分かりませんが、親会社は、新株予約権を発行することは可能です。
② その新株予約権の性質によります。
③ 税については、真面目に調べないと軽々に言えませんので、勘弁してください。

Q6
知識の共有法について、ご教示いただけますでしょうか。
以前、先生が検察におられたときのエピソードして、ダンボール箱何百箱分の押収資料を担当を分けて内容を確認するということを紹介されていました。 その際、各担当者が読み取った・理解した内容をどのような方法で、記録し、他のに伝え・共有されていたのでしょうか。 お仕事の性質上、かなり精度の高いものであったはずです。
これをお聞きするのは、現在三人のチームで仕事をしているのですが、収集した資料・知識・判断過程の効果的な方法がなかなかみつからずにいることからです。
投稿 むぎゅ | 2007年11月16日 (金) 12時19分
A6
 検察の物読み表は、それほど精度が高いものではなく、単に担当者が証拠を探すときの手がかりに過ぎません。ある担当者が読み取った内容を記録しても、別の担当者の問題意識と違うので、必ずしも皆の役に立つわけではありません。
 三人のチームで仕事をしているとのことですが、おそらく三人には役割分担があるはずです(三人とも全く同じ仕事をするのでは意味がありませんから)。
 このような場合、知識の共有のための記録は、ごく限られた本当に重要な情報についてのみ行えばよく、後は、各担当者が資料の目次とごく簡単なメモを作れば十分でしょう。
 共有しなければならない知識など、実際にはそれほどなく、各担当者が自己の仕事をする上で必要な情報は、自ら収集しなければ役に立たないと思います。

Q7
組織再編行為についての質問です。
吸収合併の承認のための株主総会の基準日以降、株主総会前に、消滅会社の株式を取得した株主は、株式買取請求権を行使できるのでしょうか。785条2項1号ロからは、当該株主は株主総会で議決権を行使できないので、買取請求権を行使できるようにも読めるのですが・・・。
投稿 反対株主 | 2007年11月16日 (金) 18時29分
A7
 できません。「議決権を行使できない」というのは、総会時(というか、総会基準日)の株主のうちで、議決権を行使できないという意味です。
 今度、T&AマスターのSammy's Cafeで書いてますので、参考にしてください。

Q8
319条1項で取締役の提案する株主総会の目的事項は、取締役会設置会社の場合、取締役会における決定が必要なのでしょうか。298条1項の適用はないけれども、362条4項の「その他重要な業務執行の決定」にあたるとして、必要ということでしょうか。ご教示願います。
投稿 企業戦士 | 2007年11月16日 (金) 20時43分
A8
 319条1項の提案は、基本的には、取締役会の決議は不要です。
 提案そのものは、「業務執行の決定」には含まれません(だからこそ、298条5項を362条4項とは別に規定しています)

Q9
あの、ここで聞いて良いかわからないのですが、葉玉先生が一番初めに会社法を勉強した時は、どのような教科書(ページ数、著書等)を使用し、どのように学習していたのでしょうか。
早く全体像を把握したいので、良い本を教えて頂ければと思っております。
投稿 初学者 | 2007年11月17日 (土) 00時46分
A9
私が始めに勉強したときは「会社法」ではなく、「商法」ですね。LECの本で、最初に勉強しましたね。
 なお、全体像を把握したいのならば、良い先生に全体像を語ってもらうこと、薄い本を読むことです。

Q10
あのような質問をしましたのは、いわゆる「100%減資」をする際、(1)普通株式のみを発行している株式会社であれば、まず「当て馬株式」を設ける旨の定款変更をし、普通株式に全部取得条項をつける手続きをとるものと理解していますが、(2)複数の種類株式を発行している会社の場合、「当て馬株式」を設ける旨の定款変更をせずとも、発行済みの全ての種類株式それぞれにつき同じ内容の全部取得条項をつけることが可能なのか、と疑問に思ったためです。
果たして、複数の種類株式を発行している会社においてこのような方法をとることが可能なのでしょうか、ご教示くださいますよう、よろしくお願いします。
A10
複数の種類株式を発行していれば、発行済みの全ての種類株式について同じ内容の全部取得条項をつけることはできます。

Q11
単元未満株式売渡請求権(194条1項)を定款で定めた株式会社が、単元未満株式売渡請求を受けたにもかかわらず、売渡す自己株式がない場合はどうなるのでしょうか。
投稿 | 2007年11月18日 (日) 21時28分
A11
売り渡せないときは、会社は、売り渡す義務を負いません。

Q12
持分会社における種類の変更についてなのですが、
会社法639条の合資会社社員の退社による定款のみなし変更は、旧商法においては存在しなかった規定ですか?
旧商法においては、持分会社の種類変更については、常に定款変更に係る総社員の同意を要していましたが、会社法においては、639条のおかげで、一部の持分会社の種類変更においては、(合資会社における有限責任社員全員の退社又は無限責任社員全員の退社)定款変更に係る総社員の同意を要さず、種類変更が出来るようになったと解して宜しいのでしょうか?
投稿 Tです。 | 2007年11月19日 (月) 11時30分
A12
そうですね。

Q13
純粋未修者として、法科大学院で勉強している中年男性です。
勉強の進め方について質問させて頂きます。
以前、コメントで、
『知識の習得は、論文の演習で間違ったポイントや分析不足の点をノートに書き写して、それを繰り返してチェックしたりすること等にやってやるのです。』
また、『基本書を使うなら、「何度も通読して、3時間で1科目分を読めるようになる」というのが目標であり、演習時に問題となった点を検索する作業は、せいぜい5分以内にしておきましょう。』
とございました。
この趣旨は、ヴェテラン受験生ノート(通称ヴェテノート)を作成する意味でしょうか?
その場合、どの程度の内容を記載することイメージされていますでしょうか?
例えば、間違った内容だけ記載するので体系的には並ばないでいい、PCで編集していく、要件効果は択一六法で代替していく、規範と間違って覚えている箇所のみ記載などなど。
先生の勉強方針を自分にあてはめながら理解しているのは、
(1)択一問題を解くことを通じて、基礎学力の定着を図る。
   →基本的な問題として、肢別問題集や法学検定3級問題集などをやってます。
    その次に、過去問をやっていこうと考えてます。
(2)論文問題を解くことにより、書く作法と論文構成、未知の問題を減らしていく。
   →基本論点がイメージ出来るように、授業の基礎論点を理解しながら、春休みに、会社法では葉玉先生の100問や、Wセミナーの論文基本問題100(または辰巳のえんしゅう本)を解いていこうと考えてます。
先生のお考えやイメージしているものと違う点があれば、ぜひともご指摘頂ければと思います。今後ともよろしくお願い致します。
投稿 純粋未修無謀挑戦者J | 2007年11月20日 (火) 15時00分
A13
ヴェテノートというのは、初耳です。
それはともかく、ノート作りは、個性が強くでるので、好きなように作るのが一番です。
自分が何度も繰り返し勉強することを前提に、知識を定着させやすいノートは何かという視点で、作ってみてください。
勉強法は、それでご質問のとおりでいいんじゃないでしょうか。

Q14
社外役員として選任されなかった監査役or取締役がのちに社外役員になれるのでしょうか。どんな手続きをすればよいのでしょうか。施行規則第2条3項5号に社外役員の要件がありますが、イは理解できますがロのいずれかの要件に該当することという(1)(2)(3)が理解できません。例えば(2)の427条第1項の社外監査役であることとは、責任限定契約を締結すればよろしいのでしょうか。
投稿 kiki | 2007年11月20日 (火) 17時55分
A14
社外役員候補者として選ばれなかった監査役・取締役でも、社外役員になることはできます。責任限定契約等を締結すれば社外役員になります。

Q15
会計参与について質問させてください。
会社法377条1項は、会計参与に対し、書類作成に関する事項について取締役と意見が異なるときの意見陳述権を規定しています。他方、374条1項を見ると、書類作成は「取締役と共同して」行なうと規定されています。共同作成された書類につき意見が異なるという場合がイメージし難いのですが、これは、意見が異なったままで妥協的に共同作成されたような場合を想定していると考えてよいのでしょうか? 
投稿 すきっ腹 | 2007年11月20日 (火) 18時40分
A15
意見が異なるのは、共同で作成できない場合に問題となります。
共同で作成できないから、臨時総会などで意見を陳述してよいという規定です。

Q16
上場会社の場合、物理的には基準日公告から最短6週間程度で臨時株主総会は開催できると思います。基準日公告が出る前後で経営陣が出そうとしている議案がわかり、その対案として株主提案を提出しようとしても8週間前はすでに過ぎてしまっています。会社側は8週間前を楯にその株主提案をその総会に上程することを拒否できると考えるべきなのでしょうか。
投稿 デラシネの法務 | 2007年11月21日 (水) 01時34分
A16
8週間は、「議題」提案権又は「議案」要領の記載請求権ですね。会社が決めた「議題」について株主が対案を総会で出すことは、304条で可能です。

Q17
会社法108条2項1号では、発行可能種類株式総数及び
「当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容」
を定めなければならないとあり、
同3項では、
「前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
とあります。
2項と3項を素直に読めば、
”定款への定めは、前項(2項)だけでいいのだが、前項のうちの全部又は一部についての決定については、その株式の内容として、実際にその株式を発行するとなったときに、(取締役会等での)決定ができると定めてもいいよ”」と解釈するのではないかと思うのです。

この場合、2項1号の「当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容」の記載から解釈するに、配当財産が金銭の場合でも具体的金額まで定める必要はないと思うのですが、学者さんの本その他一般に出回っている書籍では、
”配当財産が金銭の場合は、本当は定款上に具体的金額まで記載しなければならないのだが、実際に発行するまでには、社会情勢の変化等で適正価格が変動するだろうから、そのときまで決定を猶予している」といったニュアンスで書かれています。

また、会社法基本通達(平成18年3月31日第782号)では、P14~P16において、実際に発行する決議をし、同時に具体的な金額を決定した場合は、それまで、「1株当たり300円を限度として先に配当する」という定めをしていた場合は、「1株当たり300円を先に配当する」というように、確定額として登記を変更しなければならないとされています。

そもそも、優先配当株式だからといっても会社に剰余金がなければ無配の場合もあるわけですし、「1株当たり300円を先に配当する」と定めても、あわせて、
「300円に達しない場合であっても、その不足額は翌期以降填補しない」と
定めれば、結局250円の場合でも何ら問題ないわけです。

さらに、実際に発行する際に確定額である300円と定めてしまったら、その額が
その株式の内容として確定するので、
同じ(だと思っていた)株式を追加で優先額250円で発行しようというときは、
実は同じ株式ではなく、違う株式となり、定款変更が必要となるのだと思います。

長い前置きになってしまいましたが、
条文上は、配当財産が金銭の場合、具体的な金額まで定めなさいと書かれていない(と解釈できる)ので、
①最終的には、発行するときまでに具体的金額を定める必要があるというのは本当に正しいのでしょうか?
②正しい場合、大変不躾なお願いですが、私のヘリツクを覆すその理由をお教え下さい。
投稿 よっパー | 2007年11月21日 (水) 22時22分
A17
 いくつかの論点がごっちゃになっているような気がしますので、①の質問については答えにくいです。
 まず、108条2項では、「配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容」を「定款」で定めなければなりません。
 ですから、2項だけなれば、発行時までに決めるのではなく、定款変更時に決める必要があります。
 他方、108条3項は、2項の例外規定です。これは、定款変更時には、「要綱」のみを定め、発行時までに具体的な内容を定めることもできるという規定です。

Q18
刑事畑の実務家です。新会社法を勉強したくて、このサイトを見つけました。恥ずかしながら商事実務については全くの無知なものでご教示をお願いします。

先のブルドッグソース事件では、当該事例での最高裁の判断基準が示されましたが、仮にその余の条件は同一であるとして、当該新株予約権の内容だけが、非適格者の議決権行使のみを制限する趣旨のものであった場合に、会社法あるいは取引所ルールでは、どのような問題が生じていたのでしょうか?そもそもそのような内容の新株予約権は発行できるのでしょうか?仮に発行可能として、相当性の問題として、オプション評価理論による適正価額を保証することを前提にした上で、普通決議で足りると解釈する余地はありますでしょうか?

投稿 rove | 2007年11月21日 (水) 22時55分
A18
 新株予約権は、株式の交付を求めることができる権利にすぎないので、議決権行使のみを制限することを、新株予約権で実現するのは困難です。
 議決権だけを制限するというアプローチは正しいと思いますが、そのためには、種類株式を用いる必要があります。

Q19
以前から司法試験大幅合格による競争についていくらかコメントがありますが、
11月19日の公認会計士試験の合格発表についてご覧になったでしょうか?
4000人程度の合格だそうで、合格率も倍になったようです。
やはりこういった点では会計士も弁護士のように競争が激化するでしょうか?
この合格者増は賛否両論あるようですが、競争の進展で「勉強のしていない会計士」が淘汰されて望ましいでしょうか?
競争が激化して新規合格者の教育が十分になされず望ましくない事象でしょうか?
どういったようにお考えになられるのかお聞きしたいです。
投稿 ミツ | 2007年11月22日 (木) 01時13分
A19
人が増えれば、競争は激化するでしょうし、必ずしも望ましい結果にはならないかもしれませんね。弁護士も会計士も。

Q20
  会計士受験生だったTHです。先日合格発表があり、ようやく合格できました。受験回数は4回になってしまいました。
  今年の会社法の勉強には先生の会社法100問を使用させていただきました。論証が予備校の論証集よりも長いのではじめは大変でしたが、徐々に定着してきましたし、先生の思考順序が明瞭に示されていて分かりやすかったです。さらに、先生のブログで会社法100問の解説までしてくださったので更に理解が深まったと考えています。本試験でも会社法100問の例題によく似た問題が出題されていたので本番でもその威力を十分に発揮できたと思います。今年一年間の成績も去年までとは別人のように飛躍的に伸び、予備校の公開模試でも今年は全国上位を維持することができました。会社法100問は一年間の酷使により今ではヨレヨレになってしまいました。
  しかし、合格するまでに犠牲にしたものは計り知れないものでした。受験期間は5年に渡り、21歳で勉強を始めたのですが今では26歳になってしまいました。失ったものはもう戻ってきませんが、後にこの5年を振り返ったとき「それでもやってよかった」と思えるように、これからの一日一日を大切に生きて行きたいと思います。本当にありがとうございました。
投稿 TH | 2007年11月22日 (木) 23時57分
A20
合格おめでとうございます。
私は42歳で弁護士1年生ですから、26歳で会計士というのは、若い。
この5年間で払った犠牲は0ではないかもしれませんが、THさんが22歳で会計士に合格していたとしても、26歳までの間にいろいろな犠牲を払ったことでしょう。
 年を重ねるごとに、何かを犠牲にし、何かを得ている。
 受験生として年を重ねたか、会計士として年を重ねたかは関係ありません。
 プロになったのに、勉強を忘れ、何十年も同じところに佇んでいる人も多いのですから、THさんは、この5年間でずっと先に進んだかもしれません。

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2007年11月15日 (木)

チャレンジ第2弾(引受担保責任編)

 前回の「大杉教授へのチャレンジ」に対し、早速、大杉先生が回答してくれました。
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50419612.html
これを見る限り、大杉先生の目指すところと、私の目指すところは、実はそれほど離れていないことが分かりました。

 問題は、現行法の解釈として
   1 閲覧理由の正当性を総合的に判断すること
   2 裁判所が閲覧の方法を制限すること
が可能かどうかということに尽きるように思います。

 私は、大杉説の結論は実質的には正当だと思いますが、アメリカのように裁判所による裁量的な解決をやりやすい法制ならば、ともかく、日本の実体法の解釈として、条文から離れ過ぎているような印象を持ちます。
 どちらかというと、大杉説は、「和解」で実現するようなことかな、という感覚です。

 もっとも、1については、「閲覧拒否権の濫用」という構成を取ることで、閲覧の可否に実質的な要素を考慮する余地はあると思われます。
 逆に、2については、「見せるか、見せないか」という2者択一から離れてしまうので、解釈としては苦しそうです。あえて言えば、たとえば、裁判所が「一部認容」として、1%以上の株主に関してのみ閲覧を認めるという構成くらいは取ることができるのかなあ。特定の株主についてのみ閲覧請求をすることができると考えるならば、一部認容はあるかもしれませんが、閲覧を認めるラインの設定について実体法的な根拠がないため、そこまで解釈で認める自信がありません。非訟的要素が入ってしまいますね。

 もう少し考えてみたい論点でありますが、今回は、もう一つのチャレンジが残っていますので、閲覧請求についてはこの辺にしておきましょう(ikさんの反論に対して、質問コーナーで、いろいろ回答していますので、それも参考にしてください)

 今日のお題は、「新株発行における引受担保責任の廃止」の当否です。

 改正前商法280条の13は、新株発行による変更登記があったのに引き受けられていない株式がある場合には、取締役がこれを引き受けたものとみなすと定められていましたが、会社法は、これを廃止しました。

 これについて、大杉先生は、「新株発行時の引受担保責任は、見せ金による仮装払込(赤字継続会社が上場廃止を免れるため)を抑止する機能を持っていたため、こちらを廃止したことは立法論として不当である」との江頭先生の主張に賛同されています。

 江頭先生・大杉先生という大御所に反抗するのは本意ではありませんが、私は、この引受担保責任の廃止は、立法論的には、当然の措置であると考えます。

 改正前商法280条の13は、登記したことに対する表示責任と言われていました。資本金や発行済み株式総数が増えたように登記したのだから、その登記内容と同一の実体を作るために、取締役に株式の引受け及び払込みをさせる義務を負わせるという趣旨です。

 しかし、このような責任の取らせ方は、現実に払込みをした金額を資本金のベースとする会社法では実現することが困難です。

 すなわち、改正前商法では、取締役に引受担保責任を負わせさえすれば、払込がなくても、株式が発行され、かつ、「発行価額」は増えるので、発行済株式総数も、資本金も増えるという解釈が成り立ちました。だからこそ、引受担保責任を負わせるだけで、登記と実体を一致させることができたのです。

 他方、会社法では、引受担保責任を負わせても、払込をしてくれない限り、株式も発行されないし、資本金も増えません。すなわち、その引受担保責任は、登記と実体を一致させる効果をもたらしません。だとすると、なんのために引受担保責任を負わせるのか、よく分からなくなります。
 少なくとも、払込をしていない時点では、虚偽の登記になっているのですから、取締役は、真実の姿(元の姿)に変更登記をしなければならないはずであり、その変更登記をしてしまうと、引受担保責任を負わせる正当性は、いよいよ無くなってしまいます。

 また、「引受担保責任を廃止したことにより、見せ金による仮装払込を抑止する機能が弱まった」という批判もあたらないと思います。

 まず、会社法で、引受人が取締役と通謀して見せ金による仮装払込をした上で、取締役が資本金の増額と発行可能株式総数の増加の変更登記をした場合に、どのような法的効果が生ずるかを検討しましょう。

 ①引受人は、株式を引き受ける権利を失い、株式は発行されない。
 ②資本金は増えない。
 ③虚偽の変更登記をしているので、登記をした取締役及びその共謀者である引受人については、公正証書原本等不実記載罪が成立する。
 ④取締役が、仮装払込によって、会社に株式発行費用等について損害を生じさせたとすれば、会社に対して損害賠償責任を負う。
 ⑤取締役は、仮装払込を真実と信じて、株式を購入した株主や損害を被った債権者等に対して損害賠償責任を負う。

 このような法的効果には、「見せ金による仮装払込」を抑止する機能はないのでしょうか?
 仮に引受担保責任を存続させたとしても、「見せ金」だと分からなければ、その責任を追求することはできません。
 逆に「見せ金」だと発覚すれば、登記をもとに戻さざるを得ませんし、上記の刑事責任や損害賠償責任を追及すれば、株主や債権者の保護を図ることができます。

 抑止効果という側面から検討すれば、取締役が
  「刑事責任や損害賠償責任が生ずるのは気にしないが、引受担保責任が生ずるのは気にする」
という心理状態で仮装払込を行うとは思えませんので、引受担保責任の廃止により仮装払込による抑止効果が弱まったとは考えにくいでしょう。
 あえて言えば、引受担保責任の場合には、取締役が会社に対して支払わなければならない金額が明確ですが、損害賠償責任の場合には損害の立証が必要という点で、前者の方が責任追及をしやすい面はあります(前者を無過失責任と構成すれば、その点でも債権者に有利ですが、原則過失責任としている会社法の立場からは離れることになります)。

 逆に、前者は取締役は株式を取得することができる点及び責任の範囲が限定される点で、損害賠償責任よりも取締役には有利です。取締役は、株価が上昇している場合には、株式を市場売却することにより、利益を得ることすら可能です。とすると、引受担保責任があったとしても、どの程度抑止力が強まるのか、必ずしも明らかではないと思います。

 さらに、取締役に引受相当額の払い込みをさせる義務を負わせたとしても、赤字会社が倒産回避のために仮装払込をしたような状況で、取締役がどれだけの資金を実際に会社に払い込めるのか、疑問です。
 仮に、取締役に、払込をすることにより会社の自己資本が充実し、債権者が救うことができるほどの資力があるとすれば、債権者が直接取締役に対して損害賠償責任を追及することを認めるだけで救われるはずです。

 以上のように理論的にも、実際上も、株式引受担保責任は、会社法では無用の長物であり、これを廃止したのは、当然であると考えます。

 大杉先生は、お忙しい方なので、すぐにご回答をしていただくのは難しいと思いますが、いつか、今回のチャレンジにもご回答いただけると信じております。

(質問コーナー)
Q1
知人の会社とベンチャーキャピタル(VC)との投資契約書を見せてもらったところ、株式買取条項が定められていました。「公開の見通しが立たないと合理的に判断した場合」にVCが株式買取請求権を行使できるというもので、買取価額は行使時におけるある算定方式(詳細は思い出せません)によって客観的に定まるというような文面でした。
会社法によると自己株式の取得は155条各号に定められていますが、このケースではどの号にあたると考えるべきでしょうか。
契約書からすると、取得請求権付株式ではないので4号ではないようです。
3号のケースかとも思いますが、取得価額は条件成就時に客観的に決定されるものであり、取得価額の決定(157条)の主導権があるわけでもなく、VCの形成権の行使によって買取価額が決まり買取請求される性質のもので財源規制にも服さないのではないかと思います。
 それと、この契約以降すべてのVCが「株主平等原則」を主張したので、すべてのVCとの契約に新たに株式買取条項を定めたそうです。この場面で「株主平等原則」の適用があるのでしょうか。仮にそのような事態を回避するためには、株式買取条項を定めるよりも取得請求権付株式とした方がよかったのでしょうか。
いろいろ考えていたら混乱してまいりましたので、ご回答できればよろしくお願いします。
投稿 めぐみ | 2007年11月11日 (日) 17時35分
A1
 特定の株主から株式取得を行う(160条)ということではないでしょうか。
 この場合も、原則として株主に平等に売却機会が与えられます。
 そのような事態を回避するために、その株主との関係だけは取得条項付株式にするということも考えられるでしょう。

Q2
不公正発行について、裁判所はライブドア事件では主要目的ルールで解決し、ブルドックソース事件では主要目的ルールを使わずに解決されています(最高裁)。
これはどのように理解したらよいのですか?
神田説のように新株予約権には主要目的ルールの適用がないと考えたうえで、ライブドア事件のように資金調達目的がありそうな設計の予約権であれば主要目的ルールの適用を認めて判断すると考えたらよいですか?
投稿 ただ | 2007年11月11日 (日) 18時32分
A2
株式無償割当てで、資金調達目的はありえません。
また、主要目的ルールは、取締役会決議で発動する場面では適用されますが、株主総会決議で発動する場合は適用されないと考えるべきでしょう。

Q3
10月20日のQ4には反論しておきます。
株主が,こっちの会社の方がいいですよと営業かけられて,乗り換える,その結果,株価が暴落するってのは,そういう風にはいえません。競業でなくても同じことは出来ます。競業だけ,そういう風にしないといけない理由には全くなリません。
A3
 株式投資は、同じセクターに投資することが多いので、競業者の方が乗り換えられる可能性が高いでしょう。

Q4
本記事の設例についても,親密取引先を責め立てて,云々とありますが,これは株主名簿から判明するということよりも,もともと知っていることの方が圧倒的に多いはずです。たまさか判明するケースがあることもあるとおっしゃる可能性はありますが,そんなあるかないかよくわからないケースのために,法制審議会でもかかってなかった拒絶事由を担当官は入れたんでしょうか?また,責め立てて取引拒絶させること自体の当否を問えばそれこそいいんではないですか。(委任状勧誘に使わせなくていいというけれど,そんなに株主名簿閲覧謄写請求権を制約する論理をいう前に,拒絶事由の合理性を説明してください。)
A4
 私が言うと怒られそうですが、法制審議会で明示的に議論されたかどうかは、法解釈においては、必ずしも重要な問題ではありません。
 拒絶事由というのは、情報の濫用(責め立てて取引拒絶されるような場合など)を予防するためのものですから、情報の濫用行為自体の当否を問うこととは、次元が異なります。情報の濫用行為自体を確実に差し止めすることができるならばともかく、そうでない以上、情報を取得させないことが重要です。なお、閲覧請求権を制約する論理が、まさに拒絶事由の合理性だと思うので、ikさんが、その二つを区別する意図がよく分かりません。

Q5
委任状勧誘には不要とも見えます。しかしそうでもありません。こういう目的こそ,仲間である株主に株主名簿を見せる主たる理由です。これは,全く独自の見解で,そういうことをいうなら,株主名簿閲覧謄写請求権を廃止すればよかったのです。
A5
 私が、前回、
「プロキシーファイト時の委任状勧誘のために必要だと言われますが、本当に、そうなのでしょうか」
と述べた部分は、立法論を述べている部分なので、当然、独自の見解です。この部分は、現行法の正当性を基礎づけるために述べているわけではありません。
 また、立法論として、株主名簿閲覧請求権の廃止は、議論に値すると思いますが、一気に廃止するのは極端すぎるので、拒絶事由というところでバランスをとるのが、妥当でしょう。

Q6
絶対に株主名簿を見ないとまずいケースがあります。少数株主が招集許可を得た場合に,総会を招集するときです。これは,どうするんですか。
A6
実は、その問題は、拒絶事由が定められている以上、必ず生じる問題です。
もしikさんの言うように株主が総会招集をする場面があるから、拒絶事由にすべきではないということになれば、一切、拒絶事由を規定することはできなくなってしまいます。
総会招集ができないという問題は、「拒絶事由として何が妥当か」という問題とは、次元の異なる問題なので。
立法論的は、株主による総会招集の場合には、株主名簿を全部閲覧可能にするということはありうるかもしれません。

Q7
 プライバシー保護のために一律制限する,という議論は,それならわかりますが,それこそ条文はそうはなってませんよね。プライバシー保護を重視したんです,とおっしゃるなら,競業者ではない債権者にどうしてみせるんですか?
 競業者に仕入先情報が流れて困る,というのも,債権者で,かつ,非上場会社だったら,まだわかるんです(非上場でも株主になってたら,総会などでみんな顔見知りだったりするので,誰が株をもっているか,誰が取引先か結構知っているケースもあります。)。しかし,上場会社の株主で,ある程度の株数をもっている人が,プロキシーファイトしようとなったときに,別の意味で困ることはあるんでしょうが,株主名簿の閲覧謄写拒否事由において実現しようとする会社の利益を害する,ということにはならないと思います。
A7
 競業者ではない債権者に見せるのは、会計帳簿と同じです。
 結局は、株主名簿の閲覧と会計帳簿の閲覧の場合と、どれほどの違いがあるか、という問題に過ぎず、会社法は、その二つは、「あまり違わない」と判断しているというほかありません。なぜ違わないのかは、今まで述べてきたとおりです。

Q8
純理論的に割り切れない,ということでしたが,会計帳簿の拒否事由については,一応の議論の積み重ねはあったはずです。また,純理論的に割り切れないといっても,(釈迦に説法でしょうが)立法趣旨や立法事実はあるはずです。そこがまったくわかりません,と申していました。あれだけ伺って,すっきり出てこないところを見ると,やはりあまりないんだろうと想定しています。
この点は,立法のミスとおっしゃった某先生や,大杉先生はじめ,多数の研究者のご見解が今後出てくるでしょうし,立法の見直しの話も既に出始めているという「噂」も伺います。
故意に担当者が仕込んだ的記載については仮に「立法のミス」ではなく,それが事実だとすれば,これはパブリックコメント制度への重大な挑戦ではないか,という議論があると思います。
(中略)法案立案で,要綱に基本的には挙げておきながら,一部除外していたものを,こっそり意図的に挿入した,ということになると,大いに問題になるんではないでしょうか。

A8
 パブコメは、中間試案に対しては行われますが、法案に対しては行われません。立案担当者が、パブコメに挑戦する意図は全くないと思います。
 また、私は、会社法において、法制審議会の要項に反する部分は、参議院で修正された3点くらいだと思っており、この部分が要項に「反する」とは思っていません。
 そして、ikさんが立法趣旨や立法事実がまったく分からないのは、閲覧請求権の趣旨のみに拘り、閲覧拒否の必要性に心を傾けないからではないでしょうか。法律の解釈は常にバランスが重要ですので、ikさんが、閲覧拒否側の立場に立って、立法趣旨を一生懸命考えれば、自ずと分かってくるでしょう。
 なお、「要綱」の基本的な位置づけを確認しておきたいと思います。要綱は、法務大臣の諮問機関が法務大臣に答申するものですよね。ですから、内閣法制局、他省庁、与党、野党、国会が、要項に拘束されることはありませんし、拘束される意思もありません。そのため、他省庁、与野党、衆参両院における調整プロセスで、要綱を実現した法案の内容が変更されたり、要項の内容を実現するために、要綱に書いていないことを付け足したりすることはありえます。
 特に会社法は、要綱の成立後に、郵政民営化や敵対的買収への危惧感という様々な政治的荒波が生じ、その中で成立したものですから、要項に書かれていないことが盛り込まれたとしても、不思議ではありません。
 ikさんは、パブコメや要項に囚われすぎているのではないでしょうか。
 国会審議を経て成立した条文の解釈は、当該条文の文言という制約の中で行うしかなく、それを超えるものは、立法論に過ぎません。
 そういう観点から、私も、前回の記事では、解釈論と立法論を分けて論じています。

Q9
 株式の譲渡承認手続についてです。
 「譲渡を承認しないなら会社or指定買取人が買取って」と譲渡承認請求者より請求があり会社が買取人を指定したとします。その買取人が株式を買取る旨の通知を承認請求者にしなかった場合のその後がいまいちよく理解できません。
 「その場合には会社が買い取らなければならず、譲渡を承認するか否かの通知の日から40日以内に会社自身が買取る旨の通知をしなかった場合に承認みなしとなる。」と私は考えるのですが・・・
 実際には買取人決定には取締役会設置会社であれば取締役会によって決まりますが、譲渡を承認するか否かの通知の日から10日以内に買取人が買取る旨の通知をしなかった場合、会社自身が買取る旨を決めることは残り30日以内に特別決議を開催する必要があるため物理的にぎりぎりの日程になるのではないかと思うのですが。
 40日という日程を考えれば特別決議をすることも念頭にいれてのことだと思ことうのですがこんなことできるのでしょうか?
投稿 おさる | 2007年11月12日 (月) 01時57分
A9
 すいません。質問の意図がよく分かりません。日程的には可能ですよね?

Q10
1,創立総会の場合、発起人以外の引受人は303条304条のような請求・提案はできないのでしょうか?
2,73条4項では創立総会で決議できる事項について、67条1項2号の目的である事項・定款変更に関する事項・設立廃止に関する事項としていますが、67条1項2号の目的である事項を定める際に、うっかり設立時役員等の選任に関する事項を定め忘れた場合、当該創立総会では設立時役員等を選任できず、別途創立総会を開催しなければならないのでしょうか?
投稿 勉強中 | 2007年11月12日 (月) 14時54分
A10
1 あまり考えたこともなかった問題ですが、条文上は、できなさそうですね。議題となっている事項について提案できてもよさそうですが、解釈で導けるかどうか、よく分かりません。
2 議題にし忘れたら、決議はできません。ただ、創立総会の招集手続きの省略を用いて、カバーできる場合もあるでしょう。

Q11
629条(持分会社の利益配当に関する責任)の条文について質問をさせてください。
629条2項において、前項の義務は総社員の同意があれば、利益額を限度として、免除する事ができると謳っていますが、
これは、業務執行社員のみが対象となるのであって、利益の配当を受けた社員は。免除の対象とならないとの解釈で宜しいのでしょうか?
投稿 Tです。 | 2007年11月13日 (火) 15時32分
A11
 利益の配当を受けた社員の返還義務が629条1項に基づくものかどうかという解釈問題ですが、もし629条1項に基づくものであれば、629条2項が適用されますし、そうでなければ、業務執行組合員の判断で返還義務を免除することができますから、いずれにせよ、免除できます。

Q12
1.反対株主の株式買取請求対象株式の所在
(1)買取請求がなされた株式は、効力発生日時点で当該反対株主の所有のままなのでしょうか?
 買取(=自己株式の取得)の効力は代金支払時に発生(会社法117条5項)するところ、株式交換の効力発生日後に代金を支払う場合が考えられます。
「株式交換完全子会社株式は効力発生日に株式交換完全親会社が取得する」と理解していましたが、この関係はどう考えればよろしいですか?
(2)効力発生日後に代金を支払った場合には、いったん自己株式とした後で完全親会社へ移転させる、と考えてよろしいのでしょうか?
この場合、改めて自己株式の処分の手続をとることになるのでしょうか?

A12
 完全子会社となる会社の株主が株式買取請求権を行使した後に、株式交換の効力発生日が到来した場合、その効力発生日に、株式が、まず完全子会社に移転し、完全子会社の自己株式として、株式交換の対価の割当てが行われます。

Q13
2.買取請求への代金支払時について
代金の支払は効力発生日前にしてもかまいませんか?
(効力発生日から60日以内に支払う:会社法117条1項とされていたので、念のための確認です)
A13
 効力発生日前に代金を支払うことは可能です。

Q14
3.買取代金の利息について
協議が整った場合、請求時から支払までの利息を支払う必要があるのでしょうか?
投稿 msm | 2007年11月13日 (火) 19時22分

A14
 請求により売買契約が成立していますが、金額が確定するまでは、具体的な代金支払義務は生じず、また、株式の交付と同時履行の関係に立つので遅延損害金も発生しないと考えるべきだと思います。

Q15
第三者割当による募集株式の発行についてなのですが、
種類株式発行会社の場合において、募集株式の種類が譲渡制限株式の場合は、譲渡制限株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議を要しますが、
これは、例えば、剰余金の配当につき優先株、劣後株の2種類の株式を発行している種類株式発行会社がその発行している株式全部に譲渡制限を付している場合は、株主総会の特別決議(199条2項)のほかに当該優先株、劣後株の種類株主総会の特別決議を要するとの解釈で宜しいのでしょうか?
投稿 Tです。 | 2007年11月14日 (水) 11時36分
A15
どちらの株式を発行するのでしょうか? たとえば、 優先株の引受人を募集するときは、199条4項により、当該優先株についての種類株主総会の決議は必要ですが、同項は劣後株についての種類株主総会まで要求するものではありません。

Q16
千問の道標Q75に関連する質問なのですが、複数の種類の株式が発行されている場合において、当該複数の株式について、同じ内容の譲渡制限等を付する変更を行うときには、各種類株式についてそれぞれ同一条件の108条1項4号の譲渡制限等を付するとあるのですが、これらと同様の手続によって当該複数の株式について、同じ内容の全部取得条項を付する変更を行うことができるのでしょうか。
投稿 ゆうじ | 2007年11月14日 (水) 17時32分
A16
問題意識がよく分からないのですが、同じ内容の全部取得条項を複数の種類株式につけることはできます。

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2007年11月11日 (日)

大杉教授にチャレンジ(閲覧拒否編)

「アルファブロガーアワード2007」
https://www.sixapart.jp/inquiry/alphablogger/alpha_vote.html
にアクセスしていただき、清き一票をこの「会社法であそぼ。」に投票していただければ幸いです。

 さて、中央大学の大杉教授のブログで、会社法の悪口?が書かれていました。
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50412572.html

 こういう建設的な悪口はどんどん指摘していただいた方が、私も反論できるので、楽しいです。ということで、今日は、大杉教授にチャレンジしたいと思います。

 なお、私が見る限り、そこで指摘されている悪口は、どちらも立法論なので、私も立法論を織り交ぜてお話しいたします。

1 全体について
 大杉教授は、会社法がいろいろな制度を「横並び」させたために「落とし穴」があったとおっしゃっています。

 私も、会社法の立案過程に携わっていたものとして、「平仄を取る=横並び」ことが重視されていたのは重々承知しておりますが、少なくとも、ブログでご指摘の点については、「落とし穴」に落ちたのではなく、担当者が、色々なこと(悪事も含め(笑))を考えた上で、故意に平仄を取ったものと思っています。

2 株主名簿の閲覧の拒絶事由
 大杉教授は、株主名簿の閲覧拒否事由について
  会社法現代化要綱の第2部第4の5(5)では、会社法125条3項の1・4・5号に相当する拒絶事由を明文化することを提言していたにもかかわらず、結局、帳簿閲覧権の拒絶事由(433条2項)と横並びにしたため
 「二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
 三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。」
という2号3号を定めた点を問題にしています(特に3号)

 もっとも、大杉教授も、さすがに2号を名簿閲覧請求権の拒否事由としたことについては、明示的に批判していません。
 議論になるのは、競業者による名簿閲覧(3号)であり、これについては、
  合理性がないので、帳簿閲覧の拒絶理由よりも狭く解すべきである
と結論づけています。
 実は、この問題は、このブログで最近ikさんが問題提起されていましたし、MHMセミナーで某先生も言っていたそうですので、最近、ホットな話題なのかもしれません。

 しかし、私は、ikさんにお答えしたとおり(10月20日A4)、競業者による株主名簿への閲覧拒絶は合理性があるものと考えています。

 競業者への「会計帳簿」の閲覧を拒否することができるのは、原価がばれるからだけではありません。資金調達先、資金拠出先、仕入れ先、販売先等が競業者にばれるのも大変な打撃になる可能性があるからです。
 そして、株主名簿の閲覧も、そうした情報が漏洩する可能性がある点では、会計帳簿と同様です。
 取引先がその会社にどの程度出資をしているかは、その会社との関係の深さを示すバロメーターです。

 たとえば、松真自動車販売が、葉玉自動車の製造する車の販売代理店になったときに、葉玉自動車に30億円の出資をして株式を取得したにもかかわらず、3年後に突然、その株式を売却したとすれば、松真自動車と葉玉自動車との関係に亀裂が入ったと推認することができるでしょう。
 また、競業者が葉玉自動車の株主名簿を閲覧したところ、その競業者の親密取引先が葉玉自動車の株主であることを見つければ、競業者は、「その親密取引先が葉玉自動車に商品を納入しているに違いない」と思い、親密取引先を責め立てて葉玉自動車との取引をやめさせるかもしれません。
 さらに、M&Aが水面下で進行しているときには、TOB等が行われる前に、買収者による買い増し等が行われたりしますから、株主名簿が競業者に丸見えになってしまった場合には、M&Aの動きを事前に察知される可能性もあります。

 このように、株主名簿は、会社にとって、単なる名簿ではなく、会社の事業に関連する情報の宝庫であり、だからこそ、どの会社でも、競業者に株主名簿を見せたくないのが普通なのではないでしょうか。

 株主名簿を閲覧したい競業者は、「おれは、単にプロキシーファイトをしたいだけだ」と思うかも知れませんが、プロキシーファイト以外にその情報が使われる一般的な可能性がある限り、拒絶事由になるのは、やむをえないように思います。

また、株主名簿への閲覧の場合については「狭く」解釈するといっても、全く同じ文言で、同趣旨のものをどのように「狭く」するのか、今ひとつ分かりません。目的外使用は、1号で拒絶理由になっているので、競業者は議決権や提案権の行使に関する調査目的の場合でも閲覧できないというのが3号の趣旨です。

とすると、閲覧目的を付加することによって狭く解するのは難しいでしょうから、競業の範囲を狭く考えるのでしょうか?それとも、名簿の部分閲覧を認めるのでしょうか?

どちらにしても、それなりにハードルが高いように思います。

 私は、プロキシーファイトが行われること自体は悪いことではないと思います。しかし、プロキシーファイトの準備として株主名簿の閲覧を広く認めるという方法論については、あまり賛成できません。

 むしろ、私は、立法論としては、
  株主のプライバシー保護の見地から、個々の株主の同意なき限り、当該株主の情報を他の株主に開示することができない
と改正すべきだと思っています。

 株主名簿の閲覧権は、プロキシーファイト時の委任状勧誘のために必要だと言われますが、本当に、そうなのでしょうか。

 プロキシーファイトをしたいならば、株主提案をして議決権行使書面に議案を載せてもらえばよいのであって、委任状の郵送だけが、プロキシーファイトのための唯一の方法ではありません。

 「勧誘書面を郵送した方が長い説得文が書ける」のかもしれませんが、普通の株主は、あまり詳しすぎるものは見てくれません。また、提案者のホームページを見てもらったり、マスコミを通じてアピールしたりする方法もあるのですから、株主の氏名・住所が分からなければ、何もできないというわけではないでしょう。

 委任状勧誘する株主としては、「株主に直接電話したい」「株主に直接会って説得したい」という気持ちもあるかもしれませんが、株主名簿をもとに電話番号を調べて直電したり、突然、住所地に会いにいくことが、電話される側・訪問される側の株主に負担や不愉快を生じさせる可能性も高いことは認識しておく必要があります(現にプロキシーファイト時には、よく会社に「なんで俺の住所を教えたんだ」というお叱りの電話がかかってきます)。

 結局、私は、プロキシーファイトをしようとする株主が、他の株主の氏名や住所や持ち株数を知りたいという利益と、他の株主の「他人に知られたくない」という利益を見比べてみたとき、個人情報保護を重視する現代社会では、後者を優先する人の方が圧倒的に多いので、後者の利益を重視した閲覧制度にすべきであると思うのです。
 
 また、株主が、株主名簿を閲覧して得た情報の管理について法的責任を負っていないのも問題だと思います。情報は一度責任のない者に渡ってしまえば、その後は、管理不可能になってしまうからです。この開示後の情報管理の点においては、株主名簿に限らず、各種閲覧請求権には不備があるように思います。

 まあ、プロキシーファイトをしたい人が、プロの株主に対し委任状勧誘をすること自体はさほど問題はないので、たとえば、「議決権比率1%以上の株主の情報は見せるけど、それ未満の株主の情報は見せない」とかいう線引きの仕方もあるかもしれませんが、いずれにせよ、もう少し個人情報に配慮した閲覧制度にしてもらいたいものです。

 こうした立法論に対しては、
 「会社ばかりに、委任状勧誘活動を許すのは不公平だ。」
という批判もあるでしょう。ただ、そうした不公平感は、閲覧請求権の拡大という形ではなく
  経営陣の委任状勧誘活動の制限
という形で実現する方が筋がいいように思います。

 今日は、このほか、「新株発行における引受担保責任」について反論しようと思ったのですが、眠くなったので、それは次回に。

(質問コーナー)
Q1
取得条項付新株予約権の取得の仕方についてご質問です。
会社法274条によって一部の新株予約権を取得する場合ですが、
この時に、特定の新株予約権者のみから取得することは可能でしょうか。
例えば、同じ内容の新株予約権者としてAさんとBさんがいた場合、
両者ともに取得事由に該当した際に、Aさんのみから新株予約権を取得
すると決定することです。
もし可能であれば、274条4項の公告には、Aさんの氏名を記載するのでしょうか。
投稿 | 2007年11月 5日 (月) 16時00分
A1
新株予約権の内容として、一部取得することになっていれば一部取得も可能です。公告は、そのとおりです。

Q2
11月5日のA9に関連して質問させてください。
過去、何度か会計監査限定監査役について質問させていただきました。
2006年11月10日のブログでは、定款規定そのものが無効ということで結論を出されていましたが、1年経過して、見解をご変更されたということでしょうか?
投稿 としお | 2007年11月 5日 (月) 16時10分
A2
失礼しました。すっかり忘れていました。
11月10日の記事を読んで、なるほどそうだと思いますので、11月5日A9は、撤回させていただきます。本文も修正します。

Q3
勉強仲間で話した結果、択一の練習会に加えて、我々で論証集の暗記をしようと考えております。
具体的には、各自(現在4名)が毎日論証を10個暗記してきて、30分くらいで各人5分ずつ暗唱し、正誤を確認するというものです。
このような勉強法については先生はいかが思われますか。
改善すべき点があればお教えいただけないでしょうか。
何度も申し訳ございませんが、ご教示いただければ幸甚です。
投稿 夜間ロー生 | 2007年11月 6日 (火) 15時57分
A3
初期の勉強としては、そういう勉強でもよいと思います。
もっとも、そのうち、丸暗記よりも、答案練習時に短くしたり、長くしたりする訓練が必要になると思います。

Q4
何を食べれば3時間も大きな声でしゃべることができるのですか?
ちなみに私は通常3時間のうち1時間は睡眠に充ててますが、昨日は一睡もできませんでした(笑)。
投稿 ホー | 2007年11月 7日 (水) 08時19分
A4
雑食が一番です。

Q5
株式移転に際して、株式移転計画に補欠監査役を定めている会社の事例を見かけましたが、「設立時補欠監査役」ともいうべきものを定めることは可能なのでしょうか。
補欠役員に関する329条2項は、あくまで設立後の役員選任決議に際しての補欠選任に関する規定ではないかと思いますし、773条の株式移転計画の記載事項としても定められるのは設立時役員であって設立時補欠役員は含まれないように思われます。
それとも、そもそも「設立時補欠監査役」などというものではなく、設立の効力発生によって監査役となる者の補欠(設立時監査役の補欠ではなく)を選任したと考えればよいのでしょうか。
投稿 赤兎馬 | 2007年11月 7日 (水) 14時10分
A5
 補欠監査役の選任は、条件付きの監査役の選任です。だから、ご質問の趣旨である「設立時補欠監査役」というのが
  株式移転の効力発生前に、設立時監査役が死亡した場合に備え、条件付きで設立時監査役を選任したもの
であるならば、条件付きでもできそうですね。
 しかし、株式移転計画で、(設立時ではなく)設立後に就任する監査役を選任することができるかという問題だとすると、なかなか微妙ですね。
 実質的には認めても弊害がないようにも思えますが、条文上は、認める根拠には乏しいように思います。まあ、法務局が受けてくれるならば、私はあえて反対しませんが。

Q6
上場会社の場合、来年の秋頃「特別口座に関する公告」を行いますが、セミナーの中で「本件にかかる公告に対応できるのは1社ぐらいしかないかな・・」とおしゃっていたのですが、実際そんな感触なのでしょうか?恐らく大手通信会社のことかと思うのですが、私の会社では違うところを利用しているものですから。。。
投稿 公告担当者 | 2007年11月 7日 (水) 18時12分
A6
半分冗談でいっただけで、どの調査機関でも大丈夫だとは思います。

Q7
株主提案権について質問させていただきます。
株主総会の招集に際し、取締役会非設置会社では総会の目的である事項を必ずしも定めなくともよいわけですが(298条1項2号、309条5項)、この場合、総会における議案提出権については総会目的事項に限られる規定(304条)の適用は排除されると考えてよいのでしょうか?
また、目的事項を明示した場合には適用されるので、目的以外の事項についてはやはり議案提出権はないと解すべきなのでしょうか?
このように解すると、取締役会非設置会社において総会決議事項に制限がないにもかかわらず、株主は総会で提案を提出できなくなるので妥当でないと思うのですが。
投稿 やまび | 2007年11月 7日 (水) 23時07分
A7
議題(目的である事項)が提出できなければ、議案は提出できません。
非取締役会設置会社において、総会決議事項に制限がないのは、株主総会と取締役との権限分配の話に過ぎず、議題提出権とは関係ありません。

Q8
旧司法試験口述のアドバイスをいただいたゆりです。
運良く最終合格できました。ありがとうございました。
投稿 ゆり | 2007年11月 8日 (木) 19時25分

去年商法C、その前は「去年商法G」だった者です。
無事、最終合格することが出来ました。ちなみに今年の論文は商法Aでした。
こちらでも何度か質問をさせていただき、そのたびに丁寧なご回答を頂きました。
本当にありがとうございました。
投稿 去年商法C | 2007年11月 9日 (金) 01時18分
A8
おふた方とも、おめでとうございます。
旧司法試験という難関をクリアしたことは、将来、大きな自信になるでしょう。
ただ、二回試験も最近壁として認識されつつありますので、修習はがんばってくださいね。

Q9
いわゆる中間決算は、臨時決算と見なされるのでしょうか?中間決算においては、会計士から「金商法上の監査証明」は受けていても、「会社法上の監査証明」は受けていない会社が一般的だと思います。分配可能額の計算をしていて疑問に思い、質問させて頂くしだいです。
A9
中間決算と臨時決算は別ものです。
臨時決算をすれば、期中損益等を分配可能額に取り込めますが、普通に中間決算をしただけでは取り込めません。

Q10
組織再編(株式移転)に伴って新株予約権が承継された場合に、再編前は会計上費用計上の必要がなかった新株予約権も会社法施行後の付与決議と見なされて、新設親会社において会計上費用計上が求められるのでしょうか?
投稿 百個桃 | 2007年11月 9日 (金) 14時46分
A10
 新株予約権に係る義務が、新設親会社に承継されただけだと、費用計上はされないと思います。

Q11
親会社株式は分割の対象資産になりうるのでしょうか?事業に用いられている資産とは考えにくいかなあと思ったりもするのですが。
投稿 マルチミネラル | 2007年11月10日 (土) 02時28分
A11
理論的に不可能というわけではないでしょう。

Q12
459条の剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めについて質問がございます。たとえば、設立したばかりの会社ですと、最終事業年度は到来していませんし、会計監査人の監査も受けていませんが、ほかの要件を満たしていれば、取締役会の決議で配当できるのでしょうか?
投稿 ガイア | 2007年11月10日 (土) 10時18分
A12
その時点では、役会決議で配当はできません。

Q13
株式会社が解散及び清算人を選任した後は、解散した日現在の財産目録等を作成し、株主総会にて承認を受けなくてはならないと定められています。(会492)
この財産目録等について、
①会492の株主総会を、解散及び清算人選任決議を行なった後の議案として同日付けで承認することは可能でしょうか。
②監査役設置会社においても監査役の報告は不要ということでよろしかったでしょうか。
①については、解散、清算人選任決議後、その場でせっせと清算人が財産目録等を作成することもできなくはないので可能と思いますが、招集通知に財産目録等を添付する必要があるかどうかや、議案の記載方法がわかりません。できるとしても、解散予定会社は大会社数社を株主とする資産保有会社ですので、コンプライアンス上の観点からはすべきではないのでしょうか?
投稿 seiquro | 2007年11月10日 (土) 13時19分
A13
①できるでしょう。
②財産目録については、総会承認前の監査報告は不要です。

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2007年11月 5日 (月)

食品に関する虚偽表示

 今日は、読者の皆様にお願いがございます。

 この度、この「会社法であそぼ。」は、isologueの磯崎さんのご推薦により、栄えある「アルファブロガーアワード2007」にノミネートされました。

 つきましては、お手数ですが
https://www.sixapart.jp/inquiry/alphablogger/alpha_vote.html
にアクセスしていただき、清き一票をこの「会社法であそぼ。」に投票していただければ幸いです。

 アワードを取ると豪華賞品がもらえるという話は聞いたことはありませんが、たまに、このような企画で盛り上がった方が楽しいですし、もしアワードが採れたら、書くネタが1回分増えるので、うれしいです。よろしくお願いします。

 さて、今日は、会社法とは直接関係ありませんが、食品の虚偽表示について考えてみます。

 以前、赤福の危機管理について、「亀田家に隠れてよかったね」という趣旨のことを書いたところ、その後、赤福さんが、危機管理で一番やってはいけない
  「不祥事の小出し」
をやってしまったために、ずるずると報道が長引き、絶対絶命のピンチに追いつめられています。

 赤福さんは、謝るときに弱そうな女性は出さないし、会長はマスコミと世論を怒らせるようなことを言ってしまうし、一番良くないパターンを地でいってしまいました。
 赤福さんの担当者が、危機管理の記事
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_83a6.html
を読んで、実践していたら良かったのに・・・と思っていますが、まあ、過ぎたことは仕方がないので、ここまで来れば、なるようにしかなりません。
 
 それにしても、最近、こうした「消費期限の表示」「産地の表示」など虚偽表示を巡る企業リスクが高まっていますよね。

 私は、「消費期限の表示」も「産地の表示」も、その商品の値決めに大きな影響を与えるので、虚偽表示は、詐欺的な行為で、絶対に許されないという考えの持ち主です。

 虚偽表示をやってしまった企業は、全く弁明はできず、マスコミから叩かれ、徹底的な謝罪を強制され、営業停止と返品受付けで致命的な打撃を受けるという現実を目にすれば、何百年の伝統ある企業を即死に追いやるリスクの高い行為であることに、そろそろ全国の企業が気づくべきだろうと思っています。

 そうは言っても、私の実家が食品の製造卸業を営んでいたこともあり
   食品業界を取り巻く厳しさ
については、よく知っているつもりです。そして、なぜ食品業界で虚偽表示が頻出しているのかも、それなりに分かります。

 はっきり言って、食品業界は、ぜんぜん儲かりません。スーパーの寡占化が進んでいる現在の流通環境では、メーカーも卸も、驚くほど薄利の商売をしています。

 食品メーカーが、自社製品について、大手スーパーで販売スペースを確保するためには、一定以上の販売量と売上げを確保しなければならず
  「安全でおいしいが、知名度がなく、値段が高い食品」
は生き残れません。誰でも、スーパーに行って同種の食料品を見比べると、知名度や値段で選んでしまいますから、当然です。

 ところが、安全度やおいしさは、数値化できません。そのため、結局は、製造も卸も、ブランド化と価格競争で勝負しなければならなくなっているのですが、食品は、製造が容易で、参入障壁が低いため、外国産の製品も含めて、どんどん安い商品が市場に流入し、本当に厳しい価格競争が長年続いています。

 そういう市場環境の中で、食品業者は、常に「虚偽表示の誘惑」にさらされているのです。

 一連の報道を見ても分かるとおり、食品の虚偽表示というのは、ほとんどが内部告発から発覚しています。
 それは、裏を返せば、消費者が、消費期限の途過や産地偽装を見破るのは、極めて難しいということを意味します。

 消費者は、ソニーのウォークマンの偽物は見破ることができても、比内地鶏や魚沼産コシヒカリの偽物は見破ることができません。3日前に消費期限が切れていることを見破ることもできません。

 「虚偽表示をしても、絶対に消費者には分からないはずだ」という感覚を持っている業者に、薄利の苦しい商売を強いれば、自ずと虚偽表示への誘惑が強まるは仕方ありません。

 大昔は、同業者間の組合の力が強く、まがい物を作る業者は、すぐに同業者にばれてしまい、商売ができなくなっていました。それが各業者の自制要素として働いていました。
 しかし、今や、自由競争のもと、そのようなプロ同士の監視が働きにくくなっています。

 かといって、役所が、途方もない種類の食料品の虚偽表示をもれなくチェックしていくことも不可能です。

 そのため、目先の売上げや目先の資金繰りのために、虚偽表示の誘惑に負ける業者が後を絶ちません。

 赤福やミートホープ等が大きく報道されたことにより、食品業者は、虚偽表示を大きなリスクとして捉えたはずなのですが、日々の厳しい商売の中で、虚偽表示を訂正するだけの余裕がない企業も多いのです。

 もちろん、消費者側に立って「どんなに経営が苦しくても、虚偽表示だけはやっていけない」と言うのは簡単ですが、そんな当たり前のことをやることすら、苦しい企業が沢山あるのも現実です。

 私は、真っ当な商品を作り、正直に表示をしている食品メーカーが多数あることも知っています。
 しかし、一部の業者が虚偽表示で売上げを伸ばすと、健全な業者の商品が小売店の棚から撤去されてしまうため、健全な業者まで虚偽表示をせざるをえなくなるという悪循環が生じているのではないかという危惧感も持っています。

 消費者、小売店、卸売、メーカー、政府の誰が悪いか、という原因追及をしても仕方がないのですが、少なくとも、食品の競争力を価格だけで計測しようとする風潮が、食品の安全性を損なっているのは、間違いないと思っています。

 「表示」についての信頼性が揺らいでいる今日、もし、現在のような食品に関する各種表示制度を継続するのならば、第三者によって、表示の真正性のチェックする等、規制を強化するしかないでしょう。
 また、消費者も「チェックを得ていないような食料品は、安くても買わない」というような風潮を作ってくれれば、虚偽表示は徐々に減っていくでしょう。

 現状で、そのような動きが起こるとは、全然思えませんが、現在の「虚偽表示」を巡る悪循環をどこかで断ち切らなければ、表示制度そのものが機能不全に陥るように思います。

 それから、表示のあり方についても、もう少し改良すべき点があるように思います。

 たとえば、消費期限というと、「それを過ぎると、食べられない」というイメージがあります。
 しかし、実際には、必ずしもそうではありません。

 消費期限とは、「製造者により定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日」をいいます。

 腐敗等により安全性を欠くこととなるおそれが、ほんのわずかでもあれば、消費期限切れにしなければならないので、実際には、ほとんど安全だけど、マージンをとって、消費期限を短めに設定していることが多いのが現実です。

 しかも、製造者は、販売者や一般消費者が通常取るであろう保存方法を前提に消費期限を設定しますから、より安全な保存方法を採れば、消費期限切れであっても、安全性が確保できる場合も多いはずです。

 つまり、「消費期限」は、人の健康という面から安全サイドに設定されている期限なのです。
 逆に言うと、「消費期限切れの食品は、すべて廃棄する」という今の社会は、
   実際には、何の傷みもない食料を大量に廃棄している
という非常にもったいない社会であるということもできます。

 食品衛生法やJAS法の目的からすれば、そうした安全サイドに重きをおいた表示をするのは仕方がないことではあるものの、この「もったいなさ」については、もう少し何らかの配慮をすることはできないものなのでしょうか。

 「消費者への分かりやすさ」を度外視すれば
   現在の消費期限 通常の保存方法で保存した場合の安全期限
のほかに
   第2消費期限 特に安全な保存方法で保存した場合の安全期限
   第3消費期限 食べるのを絶対止めた方がいい期限
という3段階くらいに分けてくれると、「もったいなさ」が少し緩和されるのではないかと思うのは私だけでしょうか。

 私は、消費期限切れのものを良く食べているので、特に、第3消費期限をぜひ知りたいところです。今のところ、臭ってみたり、ちょっとだけ食べてみて、食用可能性を探っていますが、いつも食品よりも、スリルを味わっている感が強いです。

(質問コーナー)
Q1
私は、択一合格経験のない旧司法試験受験生ですが、以前から論文は書くべきという先生のご意見に従い、まずは書いてみました(答案をほとんど書いたことがないので)
そこで質問なのですが、読んでもらう方は何人か確保できました。
自分では、ここの論点に気づかなかったところがあっても、そこは留意して(時間の関係上書き直すなどせず)次の問題に進むのが効率的という感じでよろしいのですよね?
それと、答案としてどんなにつたない状態からでも他人によんでもらったほうがよいのですよね?
初歩的な質問でもうしわけありませんが、よろしくお願いします。
投稿 ジョー | 2007年10月27日 (土) 03時28分
A1
基本的には、そのとおりです。
あえて言えば、復習のときに、そこに出てきた条文を確認し、その条文番号を暗記しましょう。

Q2
私はロースクールの未修者コースに通っており、現在一年生ですが、未修者で集まり勉強会をすることになりました。
知識量が圧倒的に少ないので、まずは択一の問題を解いて行こうと思うのですが、皆でただ解いていくだけでいいのか不安です。
どのように実施すれば高い学習効果が期待できると思われますか。
投稿 夜間ロー生 | 2007年10月28日 (日) 17時40分
A2

未習一年生が何人集まって議論しても、正しい議論になることはありません。
したがって、高い学習効果を得るためには、①長々と何が正解かについて議論しないこと、②ならべく早いペースで1科目を終わらせること、③互いに脱落しないように励ましあうことの3点に気をつけてください。
 それだけやれば、択一をみんなで集まって解いて、答え合わせをするだけでも、問題ありません。

Q3
単元株式についてご質問です。
会社法188条1項において、「一定の数の株式」とありますが、この一定の株として、0.2株等の小数を定めることは可能でしょうか?
投稿 よっち | 2007年10月30日 (火) 17時20分
A3
できません。

Q4
NOVA問題について質問がございます。
①NOVAが会社更生法の適用
会社更生法というのは、会社の建て直しを目的をしていると思っているのですが、建て直しは難しいと思うのですが、今後の予測できる動きはどういうものでしょうか?破産との違いもよくわかりません
②講師の給料未払いと受講者の受講料返還について
会社更生法適用後、受講者の将来の受講料の返還と講師の給料はどちらが優先されるのでしょうか?講師の給料は先取特権によって優先されると思われるのですが?
投稿 よっしー | 2007年10月30日 (火) 18時25分
A4
①具体的事件についての見通しなどについては、お答えできません。
②は、給料優先です。

Q5
企業価値評価について教えてください。
実務上、
合併など企業価値を評価する場合には証券会社や公認会計士などの外部の専門家に依頼するのですか?それとも、弁護士自ら評価するのですか?
また、その評価方法において
退社持分の算定に関しては判例をみましたが、合併などに関しては判例が見当たりません。
ということは、実務上合併などの場合にはその評価方法に争点はなく、DCF法というように一律に決まった評価方法が通説的にあるってことですか?
投稿 ただの | 2007年10月30日 (火) 21時54分
A5
合併などにあたって、弁護士が、企業価値評価をやることはないのではほとんどないと思います。
 株式買取請求権を行使した場合の価格算定などにおいては、裁判官が、当事者の提出した鑑定書を見ながら、適当に決めます。
 鑑定書は、企業の規模等に応じて、純資産方式、類似業種比準方式、配当還元方式、DCF、市場価格等をベースに株式の価値を算出しており、特に一律のルールがあるわけではありません。

Q6
株式の分割に際し、184条2項によって発行可能株式総数を分割の割合に従って増加する定款変更ができる一方、113条3項の発行可能株式総数の4倍規制が及ぶのであれば、大規模な株式分割はこの規制によってできない、と解してよろしいのでしょうか?
(たとえば、発行可能株式100万株、発行済み50万株であれば、8倍を超える株式分割はできない、と解していいのでしょうか?)
投稿 やまび | 2007年10月31日 (水) 01時15分
A6
条文を形式的に読むと、そのように読めますが、1個の取締役会で、3回の株式分割決議を行い、効力発生「時」を1秒ごとにずらすと、3秒で、4×4×4=64倍になるので、解釈上は、特に分割の倍数に制限はないと解されています。

Q7
いつもこのブログを興味深く拝見させていただいております。
ところで、今年は新会社法100問の新版がでるのでしょうか?教えてください。
投稿 ロースクール2年生 | 2007年10月31日 (水) 10時31分
A7
第3版の要望があるのは知っていますが、次の改訂の気力が沸いてきません。
ですから、少なくとも今年はでません。

Q8
少々悩む事があり、理不尽ですし、何とかならないのかと、アチコチ検索の結果こちらのページにたどり着きました。他に見当たらずこちらから失礼します。
もし、何か方策があればお教えいただくと嬉しいです。
先日、公布された会社法の、条文の、全部取得条項付種類株式という事についてです。
7年前に、友人中心に知り合いなどが10数人参加し、映像編集スタジオ会社を立ち上げました。資本金総額3億という結構な会社でした。が、当初の予想と違い経営が苦しく、機材リース費なども多額な為、最多出資者が代表取締役になりましたが、債務が膨らみ、減資(1株300万が~何分の一?)し、社長が資産家な為、何とか経営は続いています。現在、経費のかなりな部分を占めていたリース代が終了し、周りの映像需要も増えている事から、皆今後を楽しみにしていたところ、経営者側(と役員1名)から、 間近な株主総会で、全部取得条項付種類株式に、変更し、多数の株主を切り捨てるというような話がありました。株主の多くは、”夢に参加”を買ったような人達で、今まで経営を支えてきた代表取締役に感謝し、彼の苦労を理解し、何も干渉せず、見守って来た人です。減資にも誰も反対せず、これからも問題も無いと思いますし、夢を持っているだけです。それを切り捨てるとは、あまりの対応と思います。あまりの事に、何か今まで通りの株主として存続させる手段は無いものかと考えています。何か株主を保護する方法はありますか?株主は圧倒的多数で反対ですが、出資比率的的には、逆の状態です。
取得に反対する株主には取得価格の決定請求権を認め、少数株主の保護も図られている。とありますが、債務が多いので、評価はゼロだと伝えられています。株主も別に買取を要求するのではなく、初志の立場を守りたいだけだそうです。
会社はまだ厳しい状況下にはあるらしく利益を予想される見込みではないと言われますが、経費の半分以上が無くなってかなり楽になるのは事実と思いますし、会社整理などの予定はありません。反対人達の株主出資額(減資前)は2億くらいで、債務も同等ぐらいという話です。代表取締役は、(別会社より)会社に融資し、貸付利子として年約300万円の利子も計算されているそうです。
何かアドバイスがあればよろしくお願いいたします。
投稿 株主のお友達 | 2007年10月31日 (水) 16時54分
A8
残念ながら、具体的な案件についての法律相談はお受けすることができません。
弁護士会の法律相談などを利用されることをお勧めいたします。

Q9
コメントするのは初めてなのですが、会社法第370条の解釈についてです。
会社法第370条に沿って、
「取締役全員が賛成すれば取締役会決議省略可。ただし監査役の異議のあった場合はこの限りでない」
と定款に定めている会社がございます。
ちなみに、
「取締役会招集に際して取締役及び監査役に通知する」
「取締役及び監査役全員の同意があれば招集手続き省略可」
の定めもあります。
ところがこの会社の監査役は、会計監査権限しか持たない旨、これも定款に定めてあります。
会計監査権限のない監査役については、異議を述べる権限がないということでよいかと思いますが、
それでは上記の定款の定めは、監査役に関する記述の部分はすべて無効なのでしょうか。
(監査役に関する以外の部分は有効で問題ないと思いますが)
それとも、法律の定めを加重しているので、定款自治の限りで無効とはならないのでしょうか。
投稿 うめKITTY | 2007年11月 1日 (木) 10時31分
A9
会計監査権限に限定された監査役のいる会社は、監査役設置会社ではありません。
したがって、370条の監査役の同意は不要です。

定款の定めについては、会計監査権限に限定された監査役が出席しなければならない取締役会以外については無効です(11月10日に修正)。

Q10
脱時空勉強術、ブログでの過去のコメント、昨夜、徹夜してほぼ全て読んでしまいました。
感想は、「葉玉先生は仏教徒?」と思えるほど仏説を俗世に引き直して語られている印象を受けました。
とても科学的で論理的で、無常そのもの。
こういった葉玉先生の思想背景は、生まれ付いての性格なのでしょうか?
それとも何かしら自己啓発関係の書物を読み漁って身に付けた後天的なものなのでしょうか?
出家僧以外でこんなに智慧を感じたのは初めてで、とてもとても気になってしまいました。
投稿 福岡在住の仏教徒 | 2007年11月 1日 (木) 22時29分
A10
「仏教徒」「イスラム教徒」「キリスト教徒」の3つから選べと言われれば、「仏教徒」に分類されるのは明らかです。ただ、結婚式は、教会でやりましたし、お念仏を唱えろと言われてもできないので、ごく一般的な仏教徒です。
 自己啓発関係の書物も読んだことはあると思いますが、どんな本を読んだか忘れてしまう程度しか読んでいません。でも、一番、思想的な書物は、「幻魔対戦」だったりするかもしれません。
 私に思想背景と呼べるものがあれば、実体験で起きた数々の修羅場を乗り越えた経験なのでしょう。
 「智慧」という尊いお言葉をいただくほどのことは書いていないと思いますが、「楽しめて、少し役に立った」という程度に社会貢献できればいいなと思いながら、書いています。
 今後ともご愛読していただければ幸いです。

Q11
資本金の減少や準備金の減少などで、「1項。株式会社は・・できる。この場合以下の各号の事項を決めなければならない」「2項。前項各号は総会決議」という条文の流れがありますが、この意味について質問です。
例えば2項が総会特別決議だったら、それは「・・・」をするか否かの決定も総会特別決議なのでしょうか。それとも、「株式会社は・・できる」というのだから、「・・・」をするか否かは役会決議ででき、ただその場合に総会特別決議で決めなければならない事項がある、ということでしょうか?
昨日までは当然前者と信じて疑わなかったのです。
しかし452条に「前目に定めるもの・・を除く」剰余金の処分が総会決議とされているにかかわらず、前目の内容を見るとこちらも総会決議なので、後者のように分けて考えないと除外の意味がない(除外しても前目でどうせ総会決議なのだから)、と感じてしまったのです。
投稿 ギルド | 2007年11月 2日 (金) 09時56分
A11
452条は、「前目に掲げているもの以外の剰余金の処分について、どのような決議で決めればいいのか」という観点から規定されたものに過ぎませんから、特に悩むようなことはありません。
 法律的には、前目では、法定準備金等なので、決議すべき細目も法律で定まっているのに対し、452条は、任意準備金に過ぎないので、決議すべき細目を省令で定めているという点に意味があります。

Q12
会社法467条事後設立なのですが、
会社法は、取得する財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額の、当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額に対する割合が、5分の1を超えない場合には、特別決議を要しないものとする。
これは、事後設立の目的物の帳簿価額が、法務省令で定めた、当該株式会社の純資産額の5分の1以下の場合は、特別決議を要しないと言う事ですよね?
すなわち、純資産額2000万円の会社が事後設立で、帳簿価額400万円の土地を譲り受けた場合は、特別決議を必要としないですよね?
投稿 Tです。 | 2007年11月 2日 (金) 23時39分
A12
そうです。

Q13
取締役会設置会社で書面投票を認める会社は、株主総会招集通知に議案について詳細に記載することになっていると思うのですが(299Ⅳ、298Ⅰ⑤、規則63③イ、73Ⅰ①)、総会当日に会社側で議案を修正した場合、その議案は招集通知に記載されていないわけですから、法令違反として招集手続の瑕疵になったりしないのでしょうか?
通知に記載された議題以外の議題を決議してはならないという309Ⅴのような規定がない以上、当該議案について決議すること自体は許されると思うのですが、よくわかりません。総会当日の株主提案の場合も同様にその議案は通知に記載されていないので同じように問題になるように思われます。
感覚的には、総会直前に取締役候補者が死亡したような場合に会社側で議案を修正できないのはおかしい気がするので、取消事由にはならないと思うのですが、その法的根拠がよくわかりません。御教授ください。
投稿 しらとり | 2007年11月 3日 (土) 10時30分
A13
議決権行使書面・株主総会参考書類は、その作成時において提出が予定されている議案のについて作成されるので、総会時に緊急動議がされた議案等については、当然、その対象になりません。
ですから、招集通知等に、当該議案等について記載がなくても、手続は適法です。

Q14
何度も質問させていただいたmaruというものです。
 この度司法書士試験に合格する事ができました。
先生のご指導のおかげだと認識しております。
今後は実務家として疑問点があれば、また先生の
お知恵を拝借するかもしれません。
投稿 maru | 2007年11月 3日 (土) 22時13分
A14
 おめでとうございます。
 司法書士になっても、毎日が勉強だと思いますので、ご遠慮無く、ご質問ください。

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