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2007年10月20日 (土)

危機管理

 最初にちょっと広告を。

 以前、株券電子化セミナーの募集を行いましたが、多数のご応募をいただきありがとうございました。
 以前、ご応募いただけなかった方で、もし参加を希望される方は、次の5回は、まだ10-20名くらいは、定員に余裕がございます。
【東京会場】
場所:TMI総合法律事務所内 大会議室(Room 8)
① 10月30日(火) 09:30~12:00
② 11月2日(金)  09:30~12:00
③ 11月13日(火) 09:30~12:00
④ 11月14日(水) 09:30~12:00
【大阪会場】
場所:梅田スカイビル スペース36
http://www.skybldg.co.jp/use/access.html
⑤ 11月16日(金)  13:30-17:00

 参加ご希望の方は
   会社名
   お役職
   氏名
   参加を希望する日

        seminar@tmi.gr.jp
にメールしてください。
 先着順ですので、定員になり次第、締め切らせていただきます。

 次に、本題です。

 最近、クライアント様とミーティングする度に
  「エリカ様と時津風親方の危機管理手法の比較」を読みたいのですが。
と頼まれ、やや狼狽しています。

 たいして面白くなさそうなので、ボツにしただけだったのですが、読みたいと言われて書かなければ男が廃るので「ちゃんと書いてみるか」と思っていたところ、そのうち
  赤福とか、亀田家とか
とか、次々に危機管理を問われる事態が生じてしまったので、もう一度、ネタを練り直すことにしました。
 今日は、危機管理のうち、レビュテーションリスクの管理についてお話しようと思います。

 危機管理には、いくつかのプロセスがありますが、中身は「火の用心」とよく似ています。
1 危機が起こりにくくする(予防)
   =用もないのに火を使わない。火を使うときには、細心の注意を払う。
2 予想されない危機が起こる余地を減らす(限定)
   =火の元を限定する。第三者から放火されにくい環境を作る
3 危機が起きたことに、すぐ気づく(察知)
   =火の元から離れない。火災警報器を設置する。
4 危機が起きたときには、すぐに沈静化させる(沈静化)
   =消化器は手元に置く。いつでも消化できるように訓練しておく。
5 危機が拡大しないようにする(拡散防止)
   =燃えやすい物は、火の周りにおかない。
    一旦、火が上がったら、燃え移りそうなところは、事前に壊してしまう

この危機管理プロセスは、あらゆるリスクに共通ですが、最近一番怖いレピュテーションリスク(特にマスコミで叩かれること)についても、マスコミの特徴を把握した上で、このプロセスで対応すれば、それなりに乗り切れるものです(経験談)。

 亀田家のように放火して自分が火だるまになるという感じのパフォーマンスをされると、レピュテーションリスクの「予防」や「限定」など不可能ですが、そうでなければ、社会的評価を下げる不祥事が生じないように行動するように気をつけているのが普通でしょう。
 ただ、レピュテーションリスクで怖いのは、マスコミの取り上げる「不祥事」は、リーガルリスクとは異なる観点で、判断されるということです。

 たとえば、法律家らしく、違法性という観点から、最近の不祥事の深刻さを測れば
前時津風親方>>> 赤福 >> 亀田家 > 朝青龍 >>> エリカ様
ですよね。
 前時津風親方の問題は、人が死んでいるので、とてつもなく大きい問題。赤福は法律違反、亀田家は試合中の犯則、朝青龍は職務懈怠で、いずれもルールに違反している。
 それに対し、エリカ様はマナーが悪かったというだけなので、それほど悪くない。
 私はエリカ様が好きなので、ひいき目が入っているのは間違いないものの、リーガルリスクは0に近い。

 それにもかかわらず、マスコミの取り上げ方は
  朝青龍 > 前時津風親方 = > エリカ様 > 亀田家 >>> 赤福
でした(ただし亀田家は、ランキング急上昇中です)。

 もし、エリカ様が出演者挨拶で「別に・・」と言った直後に、私のところにやって来て
  「さっきの発言はまずかった?何かフォローしなきゃいけない?」
と相談したたとすれば(妄想モード)、私は
  「リーガルリスクは0だから、何もしなくていいです」
と答えるのではなく、その発言がマスコミ的にどの程度大きく取り上げられるかを分析して、リスクへの対応を助言したと思います。

 その際、一番、気にしなければならないのは
  テレビ
です。テレビで視聴率が採れると、他のテレビ局、雑誌、新聞に飛び火して、あっという間に大火事になります。
 したがって、不祥事のリスクの大きさは、テレビに取り上げられる情報の特徴である
    ① 「いい絵」になるか
    ② 情報が新鮮か
        ③ 続きがあるか
        ④ 視聴者の理性ではなく、感情を揺さぶるか
        ⑤ 他に視聴率の採れそうな、情報が報道されているか
という5つの観点から判断することになります。

 エリカ様の発言の場合
  ①「別に・・」というすごく「いい絵」がある
  ②新鮮
  ③「エリカ様」「沢尻会」など一連の女王様キャラで何回か連続してネタが組める
  ④エリカ様の態度は、女の子の礼儀にうるさい奥様方の感情を逆なでにする
  ⑤最近CM露出が著しいエリカ様のネタであり、かつ、朝青龍問題が飽きられてきたので他に報道すべきネタがない
ということだったので、非常にリスクの高い発言だと判断せざるをえません。

 仮に、「別に・・」という映像がなかったとしたら、せいぜい週刊誌が取り上げるくらいで、テレビとしては報道しづらいので、リスクは少ないと判断すると思いますが
   あの映像は、非常に感情を揺さぶる
ので、非常に危険でした。
 とすると、エリカ様としては、「別に・・」と言った後、すぐにリスクを察知すべきでしたし、芸能人のネタは、和田アキ子さん等のご意見番がコメントする前に消火しておかないと、そのコメントがまた報道されて、火の手が広がることになるので、できれば、舞台を降りてすぐに、関係者に謝罪し、ブログで謝罪していれば、あそこまで大きな問題にはならなかったと思います。

 もっとも、エリカ様は、リスクの察知はやや遅かったものの、消火にあたっては、最も効果的な「女の涙」を使って、きちんと消火しました。

 テレビは、「いい絵」に対する渇望があると同時に
  記者が「弱い者いじめ」をしているように見えてはならない
という大きな制約があります。

 亀田戦の実況中継に対して批判が集中したように、映像を通じた取材は諸刃の剣です。
 だから、テレビ局の取材において
   朝青龍や亀田家のように、強そうに見える人に対しては、強気の取材攻勢をかけることができますが、
  女性や子供に対して強気の質問をして、泣かしてしまうようなことをすると、それ以上の追求は自分の首を絞める
ことになりかねません。
 しかも、「女の涙」は、非常に「いい絵」になりますから、それが繰り返し報道され、テレビ局の「弱い者いじめ」が印象づけられることになります。

 そういう意味で「女の涙」は、最大の消火方法なのです。アパグループにしても、渋谷の温泉の爆発にしても、女性社長の涙が出た会見が報道された後、テレビの取材が急に弱気になったのは、そういう理由ではないかと思います。

 逆に、前時津風親方のように、マスコミの取材に対してふてぶてしい態度をとり続けると、それがバッシングに最適な「いい絵」となり、その映像を何度も流して、徹底的に叩くことができます。

 「ふてぶてしい顔」「大きい身体」「おじさん」「外人」等の要素を持った責任者については、マスコミがどれだけ叩いても、視聴者は哀れみを感じないので、その責任者の存在自体がリスクです。

 そのような責任者がリスクを回避するためには、か弱そうな若い女性か、身体の弱そうなお婆さんを副責任者にして、カメラの前で、その女性と一緒に土下座して謝るのがベストです(半分冗談です)。

 結局、マスコミ対策としては
 ① バッシングに都合のいい「いい絵」を取られないようにする
 ②「いい絵」を取られてしまったら、「女の涙」のような消火効果の高い「いい絵」を取らせる
というのが最大のポイントです。

 また、テレビは、情報の新鮮さが重要なので、不祥事があったら一気に発表し、ひたすら謝った方が得策です。
 不祥事を小出しにすれば、連続ドラマのように、毎日のように報道されます。
 テレビに出るような不祥事を起こしてしまったら、最初の記者会見で、関連する不祥事から社長の愛人の話まで全てぶちまけて、土下座し、それから、しばらく「いい絵」を取らせないようにするのがベストです(半分冗談です)。

 テレビは、追加で目新しい情報が出てこないと報道しづらいので、最初の会見から数日後には、もうそのことを話題にすることができなくなります。

 さらに、テレビは、一定の時間帯にニュースを詰め込まなければならないので、視聴率の採れるニュースがあるときに、不祥事を発表すれば、取扱いが小さくなります。
 エリカ様はニュース渇望期の被害者ですが、逆に、赤福は
   亀田家のおかげで、大分、助かった
のではないでしょうか。

 もっとも、発表時期を選ぶのは常套手段ではあるものの、早期発表しないとそれ自体がバッシングの原因になるので、要注意ですね。

 テレビ局は、自由に報道しているように見えますが、実は、視聴率、映像、時間という制約を持っています。
 危機管理をお手伝いする弁護士としては、そのテレビ局の制約を利用して、早期に消火して、ボヤで済むようにしなければなりません。
 他にも語りたいことは沢山ありますが、やはり会社法とは何の関係もない記事になりましたので、今日は、このくらいにしときます。

(質問コーナー)
Q1
コンサルとして内部統制評価報告書制度対応プロジェクトに関わらせて頂いている者です。
金商法の内部統制評価報告書制度が小さな不正を防止できるにすぎない「もったいない」ものであることについては激しく同意致します。日々文書化の徒労を会社さんと嘆いています。
しかし、以下の点については気になりましたのでコメントさせて頂きました。
■「Q&A」は、監査人の無茶苦茶をとめるためのものなんだろうか?
■実施基準通りやれば、お金が節約できるのだろうか?
■ところでほとんどの会社で内部統制はきちんと出来ているのだろうか?
■会社法の内部統制は、多くの会社で「対応」できているのだろうか?
実際は書籍、他社の文例を参考に、事業報告に載る文字を繕っているだけの会社さんが多い。裏付けとなる仕組みがあるかというと、、、。記述内容は会社法や規則の不備では無いけれど、意味があるかって言ってひどいもんなんですよねえ(--;)。今後、これを根拠に責任を問われる場面があったら背筋が寒い会社は多そうです。
法務省に苦情がないのは、さすがに、招集通知に1、2頁書く技量だけはどの会社にもあったというに過ぎないのでしょう。
投稿 千年 | 2007年10月13日 (土) 14時17分
A1
 私も、ご指摘の点は、そのとおりであると思います。
 会社法の内部統制は、立ち居振る舞いをひとつひとつ指示することはしないので、そのようなことを気にしない会社さんは、事業報告や監査報告を適当にごまかすだけというところもあるでしょう。
 しかし、まあ、そういう会社さんは、問題が生じたときには取締役に責任を採っていただくことになり、逆に、問題が生じないならば、それはそれでよいと思うのです。
 金商法の内部統制のように立ち居振る舞いが規制される(ようにみえる)と、独自の適切な内部統制をしている会社さんは、「なんでこんなことをしなければならないのか?」という気になるのでしょうし、自ずと無駄な作業が生まれがちになります。
 会社法の内部統制のように放任主義よりも、金商法の内部統制の方が立派に見える人もいるかもしれませんが、一長一短です。

Q2
2007年3月4日「種類株式と株主割当(2)」の記事で、会社法202Ⅰの「株主」に種類株主を含めていいのかについて、若干、調整しなければならない気がします。という下りで終わっていますが、結局はどう落ち着いたのでしょうか?
仮に、特定の種類株主への株式の割当も、202条で規律されるとすると、同年2月1日「募集株式の発行(1)」の3「株主以外の者に対して」C.株主の一人である松真さんに600株全部を割当てて発行することは、「株主に対する発行」ではなく、「株主以外の者に対する発行」である。という記述は、
1種類の株式のみ発行の場合は、妥当。
数種の株式を発行している場合に、その内の特定の種類株主にのみ発行する場合は、妥当しない。
という理解になるのでしょうか。
投稿 新司受験生T。 | 2007年10月13日 (土) 14時37分
A2
調整しようとしたのですが、結論は留保されたまま、みんなすっかり忘れてしまっていました。

Q3
三角合併に関しての質問です。
三角株式交換のメリットとして、行政庁から受けている許認可等を取り直さなければならない、登記・登録している財産について名義変更が必要とありますが、その手続き等は時間・お金はそれほど莫大になるのでしょうか?
投稿 学生 | 2007年10月13日 (土) 21時22分
A3
許認可は、出るかでないか分からないので、時価・お金がどれほどかかるか分かりません。
出ないと大変ですね。
登記は、不動産が多いか少ないかによって違うでしょうが、安くはないです。

Q4
株主名簿閲覧の拒否事由について
確かに,法務省の方は,会社法の解説で,プライバシーに配慮,という説明を一応しておられます。
その意味では,今回のご回答は,その線にしたがったものといえます。
しかし,仮にプライバシーに配慮するのであれば,
① なぜ競業者に限定して拒絶事由とするのか
② 競業者以外の者が閲覧した場合に広く開示を認めている。
という2点において理解できません。
少なくとも,プライバシー保護を絶対的理由として,競業者のみを厳しく規制する根拠にはなりません。
②についていえば,株主名簿は原則として閲覧・謄写するものとされ,一定の弊害のある場合だけを拒絶可能としています。会社法は,むしろ株主名簿を見せることに意義があると考えていると読まざるを得ません。
そうだとすると,競業の場合に特段の弊害がある,ということになるはずです。
しかし,会計帳簿と異なり,そのような弊害は思い当たらないのです。
ですから,今回のご説明は,理解に苦しむところです。
投稿 ik | 2007年10月14日 (日) 04時24分
A4
ikさんの理論も分からないわけではありませんが、拒否事由というのは、純理論的に割り切れるものではないように思います。
ikさんは、「株主名簿を見せることに意義があると考えていると読まざるを得ない」とおっしゃいますが、競業者は、明文による閲覧拒否事由ですから、
「競業者には見せないと考えていると読まざるをえない」
のです。
 また、こうも考えられるのではないでしょうか。
 会社にとって、株主は、自己の事業に賛同し、出資してくれる「お客様」です。
 数ある同業者の中で、自社を選び、貴重なお金を会社の資金としてくれた「お客様」です。
 例えば、コンピューターソフト会社の株式会社葉玉システムに100億円出資していただいている株主の松真さんの名前と住所をikソフトに閲覧されてしまうと、ikソフトが松真さんに「ソフトウェア会社に投資されるのならば、ikソフトの方が成長力があります。葉玉システム株を売って、その資金をikソフトにご出資ください」と営業をかけるかもしれません。
 それで、本当に松真さんが、ikソフトに乗り換えたら、葉玉ソフトは、安定株主を失い、株価が暴落するかもしれません。
 これは、立派な弊害であるように思います。

なお、法制審議会の件は、私は、議事録を見ていないので、私の勘違いかもしれません。
すいませんでした。

Q5
『私のような第三者的な立場から見ると、そうした無茶な注文をつける監査人は、勉強不足であり、褒められたものではないと思うものの、その人だけが悪いというわけでもないように思います。』
公認会計士になるために
こんなに勉強して受験して、また実務についてからも日々勉強して
なお勉強不足とはいささか配慮にかける発言です。
厳重注意!
投稿 会計士受験生 | 2007年10月14日 (日) 16時03分
A5
私は、勉強した監査人さんを責めているのではなく、無茶な監査人さんを責めているのですので、そんなにおかしな発言じゃないですが。
 まあ、私は、性格的に「配慮に欠けやすい」性格ですし、最近、配慮に欠けたエリカ様や亀様がバッシングに合っているので、気をつけます。

Q6
取締役の対会社責任について質問です。
「会社法マスター115講座」P153によると、「利益相反取引該当事実が主張立証された場合、反証が可能」とありますが、取締役の側としては、具体的にいかなる事実を主張立証することになるのでしょうか。
また、423条3項で任務懈怠が推定される結果、取締役の側としては、反証では足りないのではないでしょうか。
投稿 受験生です | 2007年10月14日 (日) 22時18分
A6
利益相反取引について、損害を回避するに足る十分な調査と説明と対策をやったことを主張立証することになるのでしょう。
なお、推定は、反証で覆ります。

Q7
> 私の感覚では、今の内部統制報告制度は、担当者の小さな不正会計の
>予防には役立つが、本当に防止しなければならない会社ぐるみの(場合に
>よっては、取引先ぐるみ、監査人ぐるみの)不正会計は防止できないと
>思います。
「全ては防止できない」ならまだしも、「防止できない」と断言するのは問題です。
このような発言は私的なブログとはいえ、慎んでいただきたいと思います。
絶対的な制度など存在しないことは先生もご存知のはずなのに、
立法者側の立場にいた方の発言としては大変残念です。
私の実務経験上、内部統制報告制度によって、小さな不正会計だけでなく、
会社ぐるみの不正会計に対してもそれなりの抑止力になると考えます。
会計実務をご存知ないのかもしれませんが、会社ぐるみの不正会計を
行うにしても、経営者による担当者レベルの会計実務への介入が必要です。
形式的であれ、内部統制を強化することは、ある程度の抑止力になるはずです。
A7
会社ぐるみというのは、経営者も、担当者も、場合によっては、監査人も、不正会計をしって、それを隠蔽することです。
私が、刑事事件の捜査を通してみてきた不正会計は、そのようなものであり、それで、不正会計を防ぐのは、無理だと思いました。
帳簿・帳票・証票類に矛盾があればまだしも、それが、すべて組織的に矛盾無く作成されていたら、そのような不正会計を内部統制で防げるのでしょうか?

Q8
内部統制構築の責任は、第一義的に経営者にあるにもかかわらず、
それを誤解させるような文脈になっていることが気になります。
(他にも監査制度や二重責任の原則を理解していないコメントもありますが)
先生のおっしゃる通り、内部統制は経営のツールであるはずです。
ただ、それを文書化できないのは、制度が悪いという理由だけでなく
経営者の無責任であり、無能だからという理由のほうが大きいと思います。
これを機に、無益な会社を淘汰できれば良いのではないでしょうか。
愚痴が多いのは物事の本質を理解できない愚か者ばかりです。
投稿 元実務家 | 2007年10月16日 (火) 19時40分
A8
Q&Aに記載されている「必ずフローチャートを作れ」とか、「監査人の使っている内部統制ツールを使え」とか、「同一のIT基盤を使え」とか、「3か月システム改訂をやるな」とかいう人こそ、「第一義的に経営者に責任がある」ことや「二重責任の原則」を分かっていないのではないでしょうか。
 私は、世の中の上場会社の経営者に無能な人が一人もいないとは言いませんし、実際に内部統制なんて存在しないような会社があるのも否定しません。
 しかし、文書化できない経営者が「無能」というのは間違いです。経営能力を文書化力で計測する考え方は、この世の中に存在するのでしょうか?
 世界の優良企業の中で、文書化を完璧にやっている会社が何社あるのでしょうか?
 文書化だけが仕事ではない、不正会計防止だけが仕事ではないというバランス感覚を忘れると、それ自体、内部統制システムとしては欠陥を抱えることになります。
 なお、「無益な会社を淘汰できればよい」というのは、非常に怖い考え方で、全く賛成できません。

Q9
いつもお世話になっております。100問の22、総会決議ない有利発行について質問させてください。
1.譲渡制限ある場合に212Ⅰ①で(既存)株主の損害てん補可とありますが、通謀の要件がありますので必ずしもあてはまらないのではないですか?
2.公開会社では譲渡制限の有無に関わらず、429で損害賠償に加え、要件満たせば212条でてん補が可能だと思いますが、なぜ譲渡制限ない場合に429のみ、制限ある場合212Ⅰ①のみを挙げているのですか?
3.質問2の私の考えが正しければ、議決制限ない場合もある場合も株主のの保護の要請は全く同じです。(正しくなくても、100問の答案では結論として両者とも株主の利益を軽視しているので以下の議論は当てはまりますが)
とすれば取得者の利益の検討で決することになると思います。
譲渡制限ある株式の場合は転々流通予定されていないので、『有効でも140条指定買取の利益は無効にした場合の840条の利益と大差なく、譲受人保護の必要性低い』という非公開会社と同じ論法が成り立ちそうで、無効という結論が妥当にも思えますが、如何でしょうか?
投稿 論文落ち商法B | 2007年10月16日 (火) 22時52分
A9
1 通謀がなければ、あたりませんが、著しく不公正な払込価額で引受契約をして、通謀がない場合は希だと思います。

2 特に深い意味はありません。流れですね。

3 非公開会社と同じ論法が成り立つ部分もありますが、それ以外の理由付けを見ていただければ分かるとおり、結論としては、有効とした方が条文上は素直でしょう。とくに、提訴期間が公開会社と非公開会社で区別されている点を無効説は説明しにくいように思います。

Q10
 債務超過の子会社清算で、債権者として以下のような状況に直面しております。(かなり長いのですが、ご容赦ください)宜しくお願いいたします。
(以下、略)
投稿 Anshi | 2007年10月18日 (木) 15時33分
A10
 長文をいただいて申し訳ありませんが、具体的なケースの相談は、コンフリクトの可能性もあるため、お答えすることができません。

Q11
1個の新株予約権の一部行使はできますか。
A11
新株予約権の内容によっては、一部行使をすることができると思います。

Q12
いつも楽しく拝見しております。私はロースクール受験生です。
 率直に質問しますが(相談に近いですが…)、会社法の「計算」のところがさっぱりわかりません。会計知識がまったくないため、具体的にイメージできないからだと思います。
 それで、何か理解を助けるいい方法はないでしょうか?
 私としては会計の入門程度の勉強を先行させるべきだと思いますが、あまり時間を割けられず、頭を抱えています。
投稿 OFD | 2007年10月20日 (土) 01時59分
A12
 本で、会計の勉強をしても、具体的なイメージはつかめないかもしれませんね。
 いい先生にならえば、そんなに難しい話じゃないんですが。
 まあ、分からないならば、とりあえず無視したらどうでしょうか。

Q13
譲渡価額を取得価額とする契約は公序良俗に反せず有効であるとしながらも、株価が高額になったからといって事後的に契約は無効だ、というのは法律行為についての規定である公序良俗違反の用法としては誤りですよね?
また、株価の変動は契約時に当然に予定されているから、たとえ譲渡時に株価が高額になっていたとしても従業員株主は信義則によっても履行拒絶しえないですよね(できると教わったのですが…)?
A13
 公序良俗は、ケースバイケースですね。
 たぶん、契約後に株価が高くなったことを問題にしているのではなくて、株価がどんなに高騰しても、買取価格が一定であるというところを、公序良俗としているのでしょう。

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コメント

いつも心を込めて拝読しています。メディア広報戦略には、相当長いあいだ、この国は無頓着だったと思うのですが、情報や印象を軽視する「外交ボンクラ体質」、はこの国においては、1940年代から変わらないのでしょうか。それから67年たっても、受け皿は、一部のカリスマ弁護士しか居ない、というのも、心もとない気がするのは、私だけでしょうか。

投稿: くまぜみ001 | 2007年10月21日 (日) 02時04分

葉玉師匠、こんにちは。

テレビ局でも新聞社でも、メディアの言動を決定するモノとして、視聴率や占有率が重大要素であるという師匠の意見には、大納得です!

某亀田家(実在)を押していたテレビ局は、ガンダム・シリーズ(空想)というドル箱を持っています。
企画する段階から、どうしても「視聴率が捕れている番組」に、引っ張られてしまうようです。、実在に対して予算を使って番組を制作するときと、空想について予算を使って番組を制作するときとのカネの使い方とは、(予算の組み方や使い方が)違っているのが当然なのに、同じように使ってしまう傾向にあるようです。
格闘技もアニメも好きな(SF系や動物系の番組なんて大好きな)自分としては、「馴養」する本質を間違わないように、「人気番組をかじった者」として、バランス良く番組を制作して欲しいと思いました。

「脇」と「脅」について、解字をしてみると・・・構成する要素も、画数までも見事に同じですが・・・しかし、位置付けを間違ってしまうと、とんでも無いことになってしまいますが(笑)
亀田家は、脇を固めすぎていて、絞めて使ってない~・・・ように、「格闘技をかじった者」として感じました。
(武道や番組制作の、「お尻かじり虫風のコメント」をしてみました・笑)

投稿: 至誠丸 | 2007年10月21日 (日) 08時21分

勤務中に時々拝見しているのですが、

できれば「上司・同僚に覗かれても差支えない」デザインに
変えていただけませんか(笑)。

現在のデザインは、説明を要するので・・。

投稿: 社会人兼ロー生 | 2007年10月22日 (月) 09時24分

エリカ様事件の分析,非常に興味深く読みました。

投稿: berubiru | 2007年10月22日 (月) 19時32分

>Q4
>会計士受験生さん

会計士さんを使う企業の担当者から言わせてもらえば、、、会計士として雇っているのだから、勉強してきた勉強している関係なく、対応できない会計士は使えない会計士なんです。。。
因みに今日会った会計士は「会計知識の前置きはシッカリ喋る方でしたが、監査業務の内情・実務を知らない方でビックリしました・・・。勘弁してください(^^メ)」

こんな話じゃないかもしれませんが、参考までに。

投稿: AufHeben | 2007年10月23日 (火) 01時03分

サミー 様

もしかしたら聞いてはいけない事情かもしれませんが、
株券電子化セミナーの「午前」と「午後」で開催時間に一時間の差があるのは、
何故なのでしょうか?

投稿: AB | 2007年10月23日 (火) 18時31分

>AufHebenさん
すいません、先日は愚痴のつもりで発言しました。
ここまで話が広がるとは思いもよらず・・・
軽率でした。
まさに危機管理能力ですね。

投稿: 会計士受験生 | 2007年10月23日 (火) 23時31分

はじめまして、最近このようなブログがあることを知り勉強させて頂いてます

種類株式について質問があります

①まず初歩的な質問で申し訳ないのですがある種類株式の一部のみに新たに内容を付け加えることはできないのでしょうか?

②①ができるとすればさらに質問があります
既存発行株式全部に全部取得条項を付す場合についてです

2年ほど前の記事ですが(2005年12月9日)
「全部取得条項,議決権行使条項等は,108条1項にしか掲げられていないため,定款を変更して既存の株式にそれらの条項を付したい会社は,まず,既存の株式とは違う種類の株式(ちょっとだけ配当優先株とか,いわば当て馬みたいな株式です。)を定款で定めて,その後に,全部取得条項,議決権行使条項等を付すための定款変更をしなければならないのですが,その当て馬株式自体は発行する必要はないという点で,重要な意味を持ちます(発行するとコストがかかりますので)。」
とありました

もし①が認められるならば当て馬株式を定款に定めなくても普通株式の既存発行分だけに全部取得条項を付せばいいと思うのですが何故ダメなのでしょうか?

上にあるように当て馬株式自体を発行する必要がないならば、未発行のものが普通株式かちょっとだけ配当優先株式かの違いだけで、いいような気がするのですが…逆に言えばもしダメならば当て馬株式を実際に発行しないならば発行済み株式全てに全部取得条項が付されてしまいこれもダメになってしまう気がするのですが…


投稿: かいけいし受験生 | 2007年10月24日 (水) 00時13分

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