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2007年9月28日 (金)

株式併合+有利発行=?

 最近、モック社の株式併合及び新株予約権の有利発行のことが、
  磯崎先生のブログ(http://www.tez.com/blog/archives/000996.html)や
  大杉先生のブログ(http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50335104.html)や
  山口先生のブログ(
       http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2007/09/post_5ea7.html
などで取り上げられています。

 モック社の行為の評価は、様々あると思いますが、こうしたブログを読んでいると、なんとなく
 「会社法のせいで、こういうことができるようになった」
という雰囲気があるような気もするので、今日は、少しだけ、言い訳をさせてもらいます。

 株式併合や有利発行で問題が生ずるのは
  株式併合によって、少数株主が多数排除される場合(特に端数の代金が安価な場合)
  引受人に大幅に有利な発行をすることによって、既存株主が大きな経済的損害を被る場合
でしょう。

 では、これらが会社法になってはじめて生じた問題なのかというと、
  会社法は、株式併合・有利発行の要件を緩めたわけではない
ので、これらの問題の本質的な部分は、会社法に非があるわけではなく、もともと存在していた問題です(ここまでが言い訳部分です)。

 もちろん、会社法が
   株式併合をした場合に授権枠が拡大する
というルールを取ったために、そのような行為が行われるときに、少数株主の損害が拡大する可能性があるという批判もあるでしょうが、そもそも、そのような少数株主に財産的損害を与える行為を適法に行うことはできないとすれば、株式併合による授権枠拡大というルールが採用されたとしても、損害が拡大するということはないはずです。

 すなわち、会社法上、一つの規定を形式的に適用すればできそうだからといって、他の規定を含めて検討したときに実際に出来るかどうかは別問題であり、会社法全体として、それらの行為ができるのか、できないのかを検討するのが出発点だと思います。

 たとえば、会社が、少数株主に大きな財産的損害を与えるような「株式併合+有利発行」を行おうとしても
 (1) 特別利害関係人による著しく不公正な決議として、併合決議は取り消される
 (2) 新株予約権の割当てが、著しく不公正な方法によるものとして差し止められる
 (3) 取締役や引受人等の責任(対会社・対第三者)が生ずる
という制度によって、少数株主に損害が生じないような手当ては既にされています。

 モック社の件は事実関係を知らないので、こうした保護制度の適用があるのかどうかは分かりませんが、一般論としていえば

 (1) 引受人と大株主が同一人であるような場合はもちろん、引受人である法人の出資者が既存の大株主であるというような場合には、その大株主は特別利害関係人に該当するでしょうから、そのような場合に、端数処理代金が不当に安くなるようなスキームで株式併合決議を行えば、著しく不公正なものとして取り消されるでしょう。

 (2) 「著しく不公正な方法」は、通常、経営者の支配権維持目的との関係で論じられことが多いのですが、払込価額の点についても、通常の有利発行の枠を超えて、「著しく不公正な払込価額」であるような場合には、差し止めの対象とされるでしょう。
 なお、新株予約権の発行差し止めがされない場合に、新株予約権の行使に基づく株式発行の差し止めができるか等の論点が

 (3) また、著しく不公正な払込価額であるような場合には、引受人(新株予約権者)に385条の責任が生じますし、また、通謀した取締役も、第三者に対する損害賠償責任を負うでしょう。

 モック社も、当然、これらの株主保護制度については検討を加えた上で、今回のスキームを実施しているのでしょうから、今後、モック社が、どのような正当化根拠を主張するのか、一法律家としては興味津々です。現在の公表資料から読み取る限り、正当化根拠がまだよく分からないので、今後の展開に注目したいと思います。

 以上の問題点の中で、個人的に、一番興味があるのは、新株予約権の有利発行が行われてしまった場合の
  引受人の責任(285条)
です。

 この責任(285条)は、新株予約権を行使した新株予約権者が、取締役と通じて著しく不公正な払込金額で新株予約権を引き受けたときに、当該払込金額と当該新株予約権の公正な価額との差額に相当する金額を支払わなければならないというものです。

 この285条責任と有利発行決議との関係については、若干の論点があり、「有利発行決議をもらったら285条の責任は原則として生じない」と書いている本もあります。

しかし
 有利発行(238条1項3号)は「払込金額が当該者に特に有利な金額」であるのに対し、
 引受人の責任(285条)は「著しく不公正な払込金額」
であり、それぞれ要件が違いますから、株主総会で有利発行の特別決議を得たとしても、「著しく不公正な払込金額」である場合には、引受人は285条の責任を負うと考えるべきだと思います(千問Q293参照)。
 まあ、有利発行決議で285条責任を負わなくなるという論者も、例外的に負う場合があることを認めているので、結論としては、あまり変わらないのかもしれませんが。

 それから、本来、有利発行は、4倍規制のある授権枠の中で行う(=既存株主の経済的価値の低下に歯止めがある)のが普通ですが、併合で授権枠を広げた上で、大量の有利発行をするという行為を行うわけですから、このような有利発行目的の授権枠の拡大が「著しく不公正」という要件との関係で、どのように評価されるのか、というのが2番目の注目ポイント。

 さらに、株式併合により1株以上残っている株主は、引受人に対する代表訴訟を提起することができますが、端数のみになった人は、代表訴訟を提起することができません。
 また、端数調整の場面では、株式買取請求権の行使時の株式価格決定のような手続きもないことから、端数のみになった人が、どのような対応策を取ることができるかというのが、3番目の注目ポイント。

 スクイーズアウトでよく用いる全部取得条項付種類株式の取得の場合なら、価格決定の申し立て等があるので、その分、適法性は高いのですが、株式併合でスクイーズアウトすると、株価下落時には、少数株主にとって不利なので、まずは、決議取消事由のところで厳格に考えるのが筋ですが、株式の発行までされてしまうと
 ①株主として直接損害を被ったとして、取締役に対する損害賠償を請求することができるか
 ②大株主や引受人の背後による実質受益者に対しても不法行為に基づく損害賠償等を請求することができるか
などが一般的には問題になります。

 最後に、税金の面。たとえば、本件のように引受人が外国法人である場合には、有利発行による受贈益は課税されるのでしょうか?
 もし、受贈益について課税が生じた後に、285条で責任追及されて支払ったら、一体、どうなるんでしょうか?引受人自体に別に収益源があれば、そこで損金算入という手もあるのでしょうが、そうした収益がなければ、国が受贈益分の税金を取り得になるのでしょうか?やや傍流ですが、興味があるので、知っている人がいたら教えてください。

 以上のように、一般論として考えても、会社法上の色々な論点が満載なので、会社法に興味がある方は、モック社関連の今後の動向には要注目だと思います。

(質問コーナー)
Q1
新・議決権制限プランの効果について質問です。このプランの目的は、買収者が過半数をはるかに超える株式(残余権)の取得を促進させることにあるのでしょうか?会社支配権の移転の際に、買収者にできるだけ多くの株式(残余権)を取得させる仕組みは、支配権移転の効率性を高める機能があることはよく知られています。ただ、昨年度、ご紹介されたプランと異なり、このプランでは、新株予約権無償割当てプランと異なり、買収者の足を止める効果は弱くなってはいませんか?ご紹介の新・議決権制限プランでは、議決権行使条件である株主総会決議で議決権を行使することが認められるように思われるからです。公開買付けの最低取得株式数を高く設定する誘因を与えること自体、望ましいと思いますが。
投稿 K@頭 | 2007年9月21日 (金) 23時21分
A1
「買収者の足止め効果」の意味次第ですが、買収者を絶対に多数派にさせないという力は弱まっています。というより、弱めています。
 上場企業である以上、一定の株式数以上を買い集めた場合には、防衛策を解除できるようにするべきであるという議論があるからです。
 もっとも、足止め効果を強くしようと思えば、議決権行使条項付株式の数を増やせば、いくらでも強くなります。

Q2
買収者の議決権行使を株主総会の決議を条件として制限することは、アメリカの州法における反敵対的企業買収法ではよく見られるようです(曖昧で申し訳ありません)。ただし、反敵対的企業買収法では、買収者以外の株主のみが議決権を行使できたように記憶しております。
投稿 K@頭 | 2007年9月21日 (金) 23時24分
A2
 買収者が既に普通株式を取得している以上、その議決権を完全に無くすことは難しいです(工夫次第で不可能ではないと思っていますが)。
 しかし、新議決権制限プランは、議決権行使条項付株式については、買収者以外の株主のみが議決権を行使できるという仕組みなので、当該株式の比率が高まるほど、アメリカ的になっていきますね。

Q3
 会社法107条2項3号により、例えば対価を全て新株予約権にした場合、会社は「一定の事由」の生じた日以降、自己株のみを持ち、株主=自社という状態になりこれがしばらく続くのでしょうか?
投稿 素朴君 | 2007年9月22日 (土) 12時52分
A3
「しばらく続く」という意味次第ですが、定時株主総会を開催しなければならないので、どこかで新株を発行しなければなりません。

Q4
間もなく施行となる「金融商品取引法」は、会社法に負けず劣らず複雑怪奇で非常に苦労しております。
先生のお知り合いに「金商法であそぼ。」を始めて下さる方はいらっしゃらないでしょうか?
投稿 hiro | 2007年9月22日 (土) 13時09分
A4
会社法ですら、他の人が引き受けてくれなくて苦しんでいるところですから、いわんや金商法をや、ですね。
まあ、私で分かることならば、答えます。

Q5
今年ロースクールを受験するのですが,第一志望校の受験まで約2ヶ月に迫っています。
そこで,この2ヶ月は,どのようにして備えるのが良いのでしょうか?
投稿 現役受験生 | 2007年9月22日 (土) 13時09分
A5
 すいません。私はロースクールの受験をしたことがないし、試験問題も見たことがないので適切なアドバイスはできません。
 ただ、試験一般に言えることですが、直前2か月は、①演習の量を増やす、②同時期に3科目以上勉強し、3週間で全科目勉強するというスケジュールを立てることが必要です。

Q6
会社法や勉強法に関する質問ではないのですが、世間をにぎわせている弁護士懲戒請求事件についてはどうお考えになられていますか?
投稿 大学生 | 2007年9月24日 (月) 07時16分
A6
事実関係を知らないので、あまり考えはありません。
興味はあります。「発言者が弁護士でなかったらどうだろう?」「懲戒の対応に追われるというのが損害ならば、訴訟の被告として準備に追われるというのも損害になるのだろうか」とか、和解になじまなさそうな事件なので、判決が楽しみです。

Q7
株式移転の際の株券提供公告についてご教示ください(長文になりますが、ご容赦ください)。
(問題提起)
1.株券提供公告について、効力発生日の前日を提出期限とした場合、瑕疵ある手続きになると解されていますが(会社法219条1項。本ブログ2006年5月21日А1)、これは株式移転の場合でも同様でしょうか?
 例えば、①10月2日を効力発生日とすべく株券提供公告を行ったが、公告文面が「10月1日までにご提出ください」となっていた場合、10月2日に設立登記を申請すると、瑕疵ある手続きとなるのでしょうか?
A7
 10月2日が予定日だったら、公告内容は間違っており、瑕疵はあります。
 「効力発生日まで」という表現を使わずに、あえて「10月1日まで」とするのならば、少なくとも10月1日が予定日で、その旨公告していたが、何らかの都合で10月2日にしか登記申請ができなかったという場合なら適法ということなのでしょう。公告自体には瑕疵はないですから。

Q8
 ③当初10月1日の効力発生を予定して前記文面の公告をした会社が、効力発生日を10月10日に変更したいと考えた場合、提出期限を「10月10日まで」とした株券提供公告を再度実施しなければならないのでしょうか?
A8
 公告義務は果たしていますから、公告のやり直しは必ずしも要件ではないでしょう。

Q9
株式移転の場合、1ヶ月以上の株券提出期間が確保されている限り、提出期限以後の日を効力発生日とすることが可能である(しても瑕疵は生じない)と考えますが、いかがでしょうか?
A9
条文から離れすぎる解釈のように思います。

Q10
なお、法務省HP(http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/k11-1-09-03.pdfのp25)で公表されている公告文例は、このような場合を想定してか、「効力発生日までに当社にご提出ください」となっていますが、株主は効力発生日を把握できるとは限らず、この記載では提出期限がいつまでなのかが明確とはならないため、実務で行われているように、提出期限は日付で明記すべきであると考えています。
投稿 water | 2007年9月24日 (月) 14時42分
A10
「効力発生日(10月2日を予定しております)」だったら、いいのではないでしょうか。

Q11
先生のゼミ生の勉強方法について質問させてください。
質問への回答で、基本書は使用していませんというものがありました。
これは、葉玉先生のゼミ生は、ゼミ中に基本書を用いなかったという意味で、独自で学習する際には、基本書や百選は使用しているのでしょうか?
それともゼミ外の自分達で勉強する時間も含めて、論文、択一の問題集とそれに付属する解説を読むのみなのでしょうか。
もしくはその両者でもなく、中間的なものなのでしょうか。
宜しくお願いします。
民訴の過去問では、一行問題まで含めて演習をしていましたか?
投稿 | 2007年9月24日 (月) 15時22分
A11

Q12
葉玉先生、いつも興味深く拝見させてもらっています。
教えていただきたいのですが、
①募集株式の発行の際に、募集事項で、引受人を指定することはできるのでしょうか。
②また、そもそも第三者割当とは、募集事項で「○○(←株主以外の人、又は株主の一部の人)を引受人とする」と定めた場合をさすのでしょうか。
③さらに、割当自由の原則によって結果的に特定の人にだけ引き受けさせることが可能だと思うのですが、その場合は「第三者割当」の問題にはならないという理解で正しいのでしょうか。
質問の趣旨は、先生の記事の
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/1_90e5.html
にて、「c 株主の一人である松真さんに600株を割当てて発行するのは、「株主に対する発行」ではなく、「株主以外の者に対する発行」である」
という記述を読みまして、「そもそも第三者割当で引受人を決める場合、どういう手続でやるんだろう?」と思ったのが発端です。
投稿 GG | 2007年9月24日 (月) 16時05分
A12

Q10
三角合併を用いてグループ再編する場合において、
A社:親会社
B社:存続受け皿会社、A社の100%子会社
C社:消滅会社、A社が株式70%保有、第三者Dが株式30%保有
B社がC社株主に交付する合併対価はA社株式を予定
合併対価としてのA社株式取得原資のためにA社はB社の増資を引受ける。
 このようなケースの場合、B社はC社の株主Dに対してA社株式を交付することは勿論として、C社の株主としてのA社に対しても必ずA社株式を交付しなければならないのでしょうか?
 B社からA社に対して合併対価としてのA社株式交付手続を省略することは許されないでしょうか。
 A社としては、増資してB社に払込んだ額の一部が、自社株で戻ってくることになります。もし、B社からA社に対するA社株式交付の省略が許されるのであれば、増資額がその分だけ低く抑えられます。よって、最終的なA社の財産額に差異は生じないように思うのですがいかがでしょうか。(A社としては金庫株が発生しない分、便宜であるようにも思います。)
会社法上、上記のような取扱が認められるか否かが読めなかった為、質問させていただきました。
投稿 MK | 2007年9月24日 (月) 22時04分
A10
A者のみに、交付しないということはできないでしょう。

Q11
 ということは、取締役と会計参与の意見が一致せず会計参与が377条の意見陳述をする場合とは以下のようになるのでしょうか?
①臨時総会で会計参与が377条にもとづき意見陳述をする。
②取締役または会計参与が交代する
③交代した取締役と会計参与が計算書類を作成する
④定時総会で承認する
投稿 maru | 2007年9月25日 (火) 02時33分
A11
そうですね。

Q12
以下の「流れ」を、「株式発行のファスナー」と、自分は勝手に名付けでいますが・・・
募集→(公示)
(承諾)←申込
割当→(引受)
(X)←払込
交付→(名義)

(X)について、葉玉先生ならば、「ファスナーの歯」として、どんなイメージをお持ちなのかを、一回、是非聞いてみたいと、ずーと思っていました。
 論点毎に、「流れに混ぜる(調合など)」ような感じで認識したり、「循環に嵌め込む(嵌入など)」ような感じで認識したりと・・・
ピッタリくる「言葉」がなかなか見つからないので、(目を上下させたり左右させたりと)煮詰まっております。
投稿 至誠丸 | 2007年9月25日 (火) 12時03分
A12
「受領」です。

Q13
取締役会非設置会社において、会社法200条により募集株式の募集事項の決定を取締役に委任した後に、この会社が取締役会設置会社となった場合、当該委任に基づいて、取締役会による募集事項の決定は可能でしょうか?
投稿 困っております | 2007年9月26日 (水) 19時44分
A13
そりゃ、無理でしょう。
取締役会設置会社になったんですから。

Q14
買収防衛策の発動を仮に取締役会決議で行った場合、相手が濫用的等でない限り、さしどめられると思います。
差止められると、取締役は面子以外に何か経済的リスクを負うのでしょうか?
面子以外の敗訴した取締役のワーストシナリオは何でしょうか?(解任されるというのは抜きにして、賠償とかあるのでしょうか?)
また、ブルドックのように、仮に特別決議で発動が容認された場合、その後株価がTOB価格まで届かなかった場合、取締役は恥をかくとか解任されるとか以外に何か株主代表みたいな訴訟リスクを負うのでしょうか。
投稿 katsu | 2007年9月27日 (木) 01時42分
A14
ぜったい防衛策の発動が違法とされるのに、あえて発動すれば、会社に訴訟関連費用や資金調達費用という損害が生じることになるので、その賠償を求められる可能性はあります。
 株主総会で発動が容認された場合は、通常は、取締役の責任は問われないでしょう。

Q15
当社は、最近吸収分割を行いました。それに伴い、税務において、みなし事業年度の申告をすることになりました。
今、3月決算の会社ですが、8月を境に、期が変わることになります。
そうした場合、臨時株主総会を開催し、本決算と同様の処置をする必要がありますか?
根拠はないのですが、第○期に一回は、総会の決議が必要なのかぁと考えているのですが、それに関する根拠法を見出せないでいます。
投稿 HIME | 2007年9月27日 (木) 09時09分
A15
 みなし事業年度については、国税庁のQ&Aを見てください。

Q16
遅ればせながら、ご子息ご誕生おめでとうございます!

投稿 小林・佐藤・田中 | 2007年9月27日 (木) 11時15分
A16
ありがとうございます。
この3つの名字を見てドキッとしてしまうのが元民事局付の悲しい性ですね(笑)。
今度、事務所に遊びに来てください。

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2007年9月21日 (金)

新・議決権制限プラン

 東京証券取引所がいわゆる「種類株式市場」を開設し、その第1号として、「おーい、お茶」で有名な伊藤園さんが優先株を上場しました。

 実は、この種類株式の設計には、私も一枚噛んでおり、TMIの同僚である高原先生、宮下先生、上田先生と一緒に
 「こうしちゃうと、ああなっちゃうから、まずくないですか」
みたいな話をしながら、株式の内容を練り上げました。
 その思考過程を関係者以外の人とも共有した方が、今後の種類株式市場の発展にも役に立つだろうと思い、今度、連名で、商事法務に論文を発表することになりました。
 もうすぐ出るので、興味ある方はご覧ください。

 さて、伊藤園さんの種類株式は、買収防衛策とは全く関係のない普通の無議決権株式ですが、買収防衛策マニアの私は、この種類株式の設計を考えているうち、新たな買収防衛策を考えつきました。
 題して
   「新・議決権制限プラン」。

 昔、私は、商事法務に
  「総議決権の20%以上の数を保有する株主は、議決権を行使することができない。」
という議決権行使条項付株式を設計し、普通株式を、その議決権行使条項付株式に転換すれば買収防衛できます、という論文を発表したことがあります。その防衛策が「議決権制限プラン」です。

 ただし、この議決権制限プランには、重大な欠陥がありました。それは、種類株式は上場できないため、上場会社が採用することができなかったということです(笑)。
 私は、この論文の執筆当時から、議決権制限プランが現行の上場規則では実現不可能であるということを知っていたのですが

買収者の「議決権比率」のみを下げる議決権制限プランの方が、買収者の「持株比率」を下げる新株予約権を用いたライツプランよりも、発動時の関係当事者への権利関係や市場への影響は小さく、発動要件も重い(株主総会の特別決議が必要)。
 ちまたでは、取締役会決議で発動し、買収者へ財産的損害を与えるような新株予約権無償割当てが当然に適法であるかのように思われているが、本当にそうなのか。
 上場規則において、議決権制限プランを採用することができないということの意味を、新株予約権を用いたライツプランを設計する上でもよく考えた方がよいのではないか?

という問題意識から、あえて比較の対象として議決権制限プランを提唱してみたわけです。

 しかし、そういう私の思いとは裏腹に、世間では、導入しやすいという点で
 「取締役会決議発動」「買収者に新株予約権の行使・譲渡を認めない(財産的損害が生じてもかまわない)」
という新株予約権無償割当型ライツプランを事前警告するという防衛策が一般化してしまいました。

 私は、「裁判で戦えない防衛策を事前警告してどうするんだろう」と思って、知人の弁護士に聞いてみました。すると、知人は
「ライツプランは、発動しちゃだめなんだ。
 それが存在することによって、時間かせぎになり、交渉の道具として使えるのだ。」
と言いました。私は
    「要するに、ライツプランというのは、法律問題ではないんだな。適法じゃない新株予約権の無償割当てだろうと、威嚇効果があれば十分なんだ。」
と悟ったわけですが、他方で、
「威嚇に動じない買収者が、事前警告の手続きを無視して、買収を進めてきたときには、どうするんだろう。時間稼ぎもできないし、裁判所に差し止められたら、二の矢が打てないけど、それでいいのかあ」
とも思っていました。

 そのときは、私は、検事だったので、それ以上深く考えなかったわけですが、弁護士になって、新株予約権無償割当て型ライツプランの相談を受ける度、そのプランの持つ限界に頭を悩まされることになりました。

 私は、後輩検事からは「腹黒い」と言われることが多いものの、基本的には、わりと正直なので、買収防衛策の相談を受けたときには
「事前警告は、法的効果はありません。」
「取締役会発動型の新株予約権無償割当ては、おそらく差し止められますから、あまり役に立ちません。」
「発動時に株主総会の特別決議を取れば、差し止められないと思いますが、普通決議は微妙です。」
と申し上げるのですが、その話を聞いた方の中には
「これだけ一般化している取締役会発動型のライツプランが差し止められることはないのではないか」
という思いを持った方も沢山いらっしゃったのではないかではないかと思います。

 しかし、ブルドック事件の決定が出て、案の定
   濫用的買収者以外の者に対しては、取締役会の決議では発動できない。
   防衛策の発動は、基本的には、株主総会の意思に基づかなければならない
という裁判所のメッセージが打ち出されました。

  このメッセージは、既存の防衛策に重大な変更を迫るものなので、私は、ブルドック事件の決定を受けて、新しい買収防衛策を考えようと思い、
 (1)議決権行使条項付株式の買収防衛策(新・議決権制限プラン)
 (2)プロキシーファイト・プラン
の2つを考えてみました。

今日、お話しする(1)の新・議決権制限プランは、

「株主が、総議決権の20%を超える議決権を行使する旨の意思表示をするときは、当該株主は議決権を行使することができない。ただし、株主総会の普通決議により、当該株主の議決権の行使を認めることを承認した場合には、この限りでない。」
という議決権行使条項が付いた種類株式を、買収が開始される前に、普通株式の株主に対して無償割当てをしておく
というプランです。要するに、普通株式と議決権行使条件付株式を同時に流通させてしまうプランです。
 
 なお、議決権制限株式については、会社法115条で
 「発行済み株式総数の2分の1以上の数になっちゃいけません」
という制限があり、この解釈については、いろいろ争いがあるものの、ここでは
    普通株式 100株1単元
    種類株式 1株1単元
とした上で
    普通株式100株につき、種類株式3株を株主無償割当てをする
というプランにして、会社法115条の問題を回避しておきましょう(ついでに、配当と残余財産分配請求権を普通株式の100倍にしておくと、普通株式1単元と種類株式1単元がほぼ同内容になります)。

仮に、この会社が、普通株式1万単元、種類株式3万単元の株式を発行していたとしましょう。
 
 この状況で、買収者が株式を買い進めていった場合、次のような議決権比率になります。

(1)買収者が普通株式1万単元を取得した場合(総議決権の25%取得)
<買収者の議決権比率> 1万÷(1万普通株式+3万種類株式)=25%

(2)買収者が普通株式1万単元と議決権行使条項付株式1万単元を取得した場合(総議決権の50%取得)
種類株主の議決権=3万(種類株式の総単元数)-1万(買収者の種類株式の単元数)=2万
<買収者の議決権比率> 1万÷(1万普通株式+2万種類株式)=33%
(3)買収者が普通株式1万株と種類株式2万株を取得した(全総議決権の75%取得)
<買収者の議決権比率> 1万÷(1万普通株式+1万種類株式)=50%
       *この段階を少しだけ超えたところで、買収者は、株主総会決議で過半数を取ることができるようになるため、20%を超える部分の議決権行使をすることができるようになります。

 ちなみに、買収者が種類株式を買い進めていった場合、20%(8000単元)を超える議決権行使の意思表示をしなければ、議決権は失われないので、たとえば、買収者が、普通株式0、種類株式2万単元を購入した場合には、8000単元までの議決権行使(不統一行使ですが)はできます。

 以上をみても分かるとおり、新・議決権制限プランは、買収者の議決権を完全に制限することを目的とするのではなく、会社の支配権を握る過半数の議決権を取るためのハードルを高くする防衛策です。

 上の例ですと、買収者としては、過半数の議決権を取るためには、①75%超の株式を取得するか、②プロキシーファイトで他の株主を説得して過半数の賛成を得るか、しなければなりません。

 もちろん、ハードルの高さは、①普通株式1単元に対して、種類株式をどの程度発行するか、②議決権行使を認めるための株主総会決議を普通決議にするのか、特別決議にするのか等によって、ある程度自由に設定することができます。

 この新・議決権制限プランは、新株予約権無償割当てと比較して次のような特徴があります。
1 種類株式の設定のための定款変更時に株主総会の特別決議を得ることや、株主総会決議による解除条件が定められていること等から適法性が高い。
2 買収者に財産的損害を与えない(買収者から種類株式を買った人は、議決権の制限がされないので、買収者が種類株式を売るときに、普通に市場で売ることができる)。
3 一般株主に課税問題が生じない。
4 会社が、適正対価を支払う必要がないので、会社の企業価値を毀損することはないし、グリーンメイラーに得をさせることもない。
5 事前にルールが明確にされているから、株主に不測の損害を被らせるおそれがない。
6 TOBの期間がいつかにかかわらず、防衛策として機能する(新株予約権無償割当は、TOBの開始時期によっては、発動が間に合わない可能性がある。)
7 持株比率が増減しないので、市場に悪影響を与えない(新株予約権の無償割当てでは、権利落ちによって株価が大きく変動するため、差し止められるかどうか不明のときに、株価の混乱をもたらす)。

 このように新・議決権制限プランは、事前に株主総会の特別決議を得ることができる会社にとっては、低コストで実効的な防衛をすることができる防衛策です。
 しかも、買収者・一般株主・市場の安定の面においても、新株予約権の無償割当てライツプランより問題が少ない。

 もちろん、新・議決権制限プランと新株予約権の無償割当てライツプランは、二者択一というわけではありませんから、株主総会の特別決議を取ることができない会社が、濫用的買収者に対して、新株予約権の無償割当てによるライツプランを発動することが禁止されるわけではありませんし、新・議決権制限プランと新株予約権の無償割当ての併用もできないわけではありません(意味はないと思いますが)。
 また、敵対的買収が始まった後に、株主総会の特別決議を取るよりも、敵対的買収の気配がないときに特別決議を取る方がハードルは低いでしょうから、ブルドックのように敵対的買収後に特別決議で発動する新株予約権無償割当て型ライツプランよりは、導入は容易だと思います。

 なお、差別的行使条項を付した議決権行使条項付株式が、株主平等原則との関係で発行できるかという論点があるようです。
 しかし、新・議決権制限プランよりも、株主を不平等に扱う(=議決権比率だけでなく、持株比率自体を減少させる)新株予約権の無償割当てライツプランが、ブルドック事件で適法とされたのですから、株主総会の特別決議で導入し、誰にも財産的損害を与えることがない新・議決権制限プランが、株主平等原則に反するとは思えません。

 もっとも、この新・議決権制限プランは、種類株式を事前に発行することになるため、種類株式自体が非上場だと、一般株主に事実上の負担を生じさせるおそれがあります。
 ですから、法的には、種類株式の上場非上場は関係ありませんが、事実上は、このような種類株式が上場されることが導入の前提になるでしょう。

 今のところ、種類株式市場で、新議決権制限プラン用種類株式が取引できるかどうか不透明です。また、新議決権制限プランは、アメリカのライツプランとは違うので、「とにかくアメリカと違うのは、グローバルスタンダードではない」というアメリカかぶれの人又はそれに準ずる人には、理解していただけでないでしょう。さらに、そもそも買収防衛策が嫌いな人は、新議決権制限プランにも反対でしょう。
 
 私自身は、買収防衛策の導入について、賛成派でも反対派でもないので、こうした種類株式の上場が認められるのならば、会社の自治で採用するかどうか決めればいいという考えです。

 上場が認められないならば、この新・議決権制限プランは、事実上、お蔵入りすることになりますが、それはそれで、よし。買収防衛策の選択肢が一つ減るだけで、それで現状から悪くなるわけではありません(ただし、適法適切な防衛策を設計するハードルはそれなりに高くなります)。
 その場合には、買収防衛策を導入したいと思う会社は、プロキシーファイトプランをやることになるでしょう。

 ただ、正直なところ、プロキシーファイトプランは、一部、新株予約権の無償割当てを使うので、持株比率を減少させるというスキームの持つ不自由さ(たとえば、差し止めリスク、授権枠による限界、財産的損害を与えないスキームを作ることの難しさ)や、発動による悪影響(市場の混乱等)を避けることはできません。
 「特別決議を取ることができる」という前提の下ならば、新議決権制限プランの方が合理的なんですが。

(質問コーナー)
Q1
会社法千問Q530について質問させてください。
Q530の②は、377条(株主総会における意見の陳述)
をさしているのだと思います。
 ここでいう意見を陳述する株主総会とは、定時総会のことを言うのでしょうか?
 仮に定時総会を指すならば、 意見を一致させるため交代した取締役又は会計参与が作成した計算書類をこの定時総会中に承認することは無理ですよね?
 ということは 改めて 株主総会を招集しなおさないといけないのでしょうか?そうだとすると、定時総会以外で計算書類を承認するということになってしまいませんか?
(計算書類は 定時総会だけで承認するという僕の理解がそもそも間違っているのかもしれません)
 もしくは、377条における意見を陳述する株主総会とは、定時総会をささないのでしょうか?
投稿 maru | 2007年9月13日 (木) 11時21分
A1
 377条の株主総会は定時株主総会に限定されません。

Q2
私は現在大学3年生で、来年ロースクールの既習者コースを受験しようと思っています。今年の4月からつい最近まで予備校の入門講座を受けていましたが、これから何を始めればいいか悩んでいます。
葉玉さんのブログをいろいろ読ませていただいたのですが、インプットだけではなく演習などのアウトプットも取り入れて勉強するということはとても参考になりました。確かに、半年間講義を受けて法律の知識をインプットしたつもりでしたが、思い返してみると、知識があまり頭に残っていない気がします。
そこで、これから勉強するにあたってどのようにアウトプットを意識した勉強を行っていけばいいでしょうか。会社法の内容とはあまり関係のない質問ですが、よろしければ回答をお願い致します。
投稿 ずん | 2007年9月13日 (木) 13時14分
A2
 まずは、択一の肢別本と、旧試験の簡単な問題を各科目15問ずつくらい解きましょう。
 アウトプットを意識した勉強は、まずアウトプットしてみて自分の限界を感じた後にしか実感できません。

Q3
検事さんの世界でも、「物読み」の巧拙=DBへの記録の仕方でユーザーの成果が変わってくるのでしょうか。
投稿 ラッシャー木村 | 2007年9月13日 (木) 22時15分
A3
 物読みの巧拙が決定的に重要な場合もありますが、ほとんどの事件はそれほど違いはありません。

Q4
「毎日1通は、旧司法試験の論文を書かせる」
ということですが、過去問は昭和/平成何年度まで遡るのが最も効率がよいと考えますか?
あまりに遡りすぎると繰り返しの回数が減ってしまい、直近すぎても演習量が不足するような気がし、迷ってしまいます。
それとも、購入した過去問集に乗ってるものをとりあえず潰していき、出来るようになったものをはずしていって繰り返しの回数を増やすというアプローチの方がいいでしょうか?
また、新試験は事例問題なので、事例問題を入手できるだけやるという方法も考えています。
投稿 受験生 | 2007年9月14日 (金) 12時55分
A4
論文は、繰り返しを重視する必要はありません。いろいろな問題を解くことで、パターンが見えてきます。解答例が手に入るのならば昭和24年までさかのぼって良いと思います。
 ただし、会社法は、古い問題は、使えないものが多いですが。

Q5
一般社団法人についてご相談申し上げます。
一般社団・財団法人法48条1項但書の規定に基づき、定款に次のような定めを置くことは可能でしょうか。
(1)社員総会の普通決議により、優先社員(仮称)を個別に指名する。その指名は指名された者が社員である限り有効とする。
(2)優先社員でない社員(以下「一般社員」という。)は、各1個の議決権を有する。 
(3)優先社員は、各、一般社員の有する議決権の総数を優先社員の人数で除した数(1個に満たない端数を生じたときは切り上げる。)の議決権を有する。

これは、
(1)優先社員に新優先社員指名を含む普通決議案件に関する実権を独占させる。もっとも、優先社員が分裂したときは互いの多数工作の帰趨に委ねる。
(2)定款変更、解散などの特別特殊決議案件については常に一定の一般社員の支持を要する。
と言う効果を狙ったものです。
株式会社では種類株式の発行によって対応可能かと思いますが、一般社団法人の社員の地位は一身専属かと思うので上記のような方法を考えました。
投稿 ひで | 2007年9月14日 (金) 14時11分
A5
細かに検討したわけではないですが、そういう定めはできそうですね。
実質的に48条2項に反しないならば、良いのではないでしょうか。

Q6
簡易な事業の全部の譲受けについて質問をさせてください。
会社法468条2項は、「対価」として交付する財産の帳簿価額が譲受会社の純資産額の1/5を超えないときは、譲受会社において株主総会の決議が不要である旨規定しています。
この「対価」ですが、実務上は、事業譲渡により承継する資産の額から負債の額を控除した額とする場合が多いと思います。
このように資産から負債を控除して対価を定めた場合でも、その対価の額が譲受会社の純資産額の1/5を超えなければ、468条2項の要件を充たすといえるのでしょうか?
これで要件を充たすとすれば、資産に見合う負債を承継すれば、常に株主総会の承認が不要となるため、それでよいのかな、というのが問題意識です。
投稿 water | 2007年9月14日 (金) 16時07分

A6
対価の定め方はどうであれ、対価の額が純資産額の5分の1を超えなければ、簡易事情譲受に該当すると思います。

Q7
記事中に、実践したことの1つとして、
「2 徹底して択一の問題を解かせる。」が挙げられています。
その際に使用した択一問題の種類について、教えていただけないでしょうか。
(新旧司法試験過去問だけでしょうか?予備校作成択一問題集・他資格択一問題集なども用いたのでしょうか?)
投稿 悩める未習2年生 | 2007年9月14日 (金) 19時47分
A7
 まずは、司法試験過去問ですね。ただ、行政法・会社法などは司法試験の過去問がなかったので、公務員試験や司法書士試験の過去問をさせました。

Q8
試験後、再び働き出している(奨学金がなくなったので家族を養うため)純粋未修だった社会人受験生です。
主観的にはギリギリで一振りしてしまいました。試験後も朝4時に起きて3時間くらいは勉強しているのですが、平日はそれ以上は時間確保が難しい状況です。
そのような中で、2回目に向け、択一集中方式にわらをもすがる思いです。今年の試験を受けた感想として直感的に、最短の勉強方法だと感じるからです。
上3法以外の商法・訴訟法・行政法、選択法はどのような勉強方法が考えられるでしょうか。特に、行政法について先生が指導された勉強方法をお教えいただけないでしょうか。
投稿 社会人受験生 | 2007年9月14日 (金) 21時18分
A8
上3法も、それ以外も勉強方法自体は同じです(択一がないものは、択一の勉強はいりませんが)。
行政法は、教えようとしたときに特捜部に行ってしまったので教えられませんでした。
行政法は、範囲が広いこと及び行政上の常識がないと各概念を具体的に把握しづらいというのが、受験生泣かせですね。
 良い先生に巡り会うのが一番で、勉強の範囲を絞り込むのが二番かな。まともに全部こなそうとすると時間ばかり食ってしまいます。

Q9
演習ということですが、具体的に何をするのですか??
討論とかさせるということですか??
投稿 よいこ | 2007年9月15日 (土) 00時16分
A9
 択一と論文の問題を沢山解くということです。

Q10
3年純粋未修生、かつロースクールの成績が非常に悪い者ですが、無謀にも来年受験しようと考えています。
今日から、先生の方法を実践するつもりです。そこで、一日一問論文をどのようにとかせていたのか(時間、教材名、採点方法、議論の有無、書く量、など)できるだけ具体的に教えていただけないでしょうか。
投稿 崖っぷちロー生 | 2007年9月15日 (土) 02時35分
A10
ロースクールの成績と司法試験の成績は必ずしも一致しません。
また、以前、記事にしたように受け控えは、全く意味のない行為であり、どんどん受験してください。
 論文は、旧試験の過去問、1問1時間、教材は市販の問題集、採点方法はチームでお互いに採点し、適当に点数を決める。議論は手短に。書く量は1問あたりデキル限り長くです。

Q11
先生がお忙しいのは分かってお願いして恐縮ですが、また去年と同じように学校別の分析をしていただけないでしょうか。とくに去年との経年比較(東大はなぜ低調なのか、一橋を「王者」から転落したのか安定感があるのか、慶応の合格率をどう考えるのか、関西の大学群をどう考えるかなどなど)、既習・未習との比較など分析していただければ、これから入ってくるロー生にも有益だと思います。
投稿 とーめん | 2007年9月15日 (土) 03時24分
A11
 比較の視点は、昨年お話ししたとおりなので、今年は、特にやる意義が見いだせなくてやってません。
 東大が低調なのは、勉強していないからです。私の持論ですが、ロースクールで最先端のことをやる意味は、基本が何かをより明確にするためという以外にはないと思います。法律の世界の最先端は、5年で陳腐化します。ローで最先端を勉強しても、実務に出る頃には、その最先端法技術は、そのままでは何の役にも立ちません。最先端を知っている人より、基本的な問題をきっちり理解している人の方がよっぽど実務家向きかつ最先端方技術を開発できる素質があると思います。
 一橋は、安定感がありますね。下手に最先端にいかないところと、アットホームなところがいいのでしょうか?
 慶応の合格率は高いです。漏洩問題があったので、なかなか評価が難しいですが。できれば、憲法だけでも各大学ごとの平均点を出してくれると、因果関係があるのかどうか、判断しやすいですが。
 関西の私大は、正直いって、やや低調ですね。どう考えるかと言われても、「もっと勉強しろ」としか言いようがないです。
 既習と未習は、合格率に差がありますが、前回書いたよゆに、未習の人は、間違った勉強をしているから、合格率が良くないだけです。私は、20年間にわたり、断続的に受験指導していますが、法学部を卒業したからと言って、法律知識があると思うのは大きな間違いです。法学部卒程度の知識では、なんの役にも立たないし、未習の人が、1年間、正しいやり方で勉強すれば、間違ったやり方をしている既習の人を、あっと言う間に追い越せます。

Q12
お忙しいところぜひお願いが…。
ぶっちゃけたところ、就職活動の方法がわかりません!
法曹に知り合いがいるわけでもなく、また私のいるローは俗に言う下位ローでして、合格者も片手で数えられてしまいます。
周りの先生方に相談したところ、「まぁ、こまったらうちにおいで」というありがたいお言葉はいただけるのですが、具体的な就職活動方法が全くわからず困っております…。
普通の世の中なら、ヤフーなりで検索かければ色々見つかるのですが…、下位ローには説明会などのチラシもないのです(泣)
ありがたいお言葉をいただいた先生のところにお世話になるにしても、色々な事務所をみてみたいというのが、正直な本音です。
ぜひ、法曹会の就職活動のいろはなども、お話いただければ幸いです。
投稿 びあ | 2007年9月15日 (土) 13時35分
A12
 最近は、法律事務所もホームページがありますから、ホームページで、説明会や募集状況をチェックしましょう。
 地方によっても違いますが、修習中に弁護士と知り合い、その人に紹介してもらうというパターンもあります。

Q13
そんなこと旧司受験生はみんなやってるよ。。。
投稿 はぁ | 2007年9月15日 (土) 23時48分
A13
 旧司受験生でも、毎日1問書いている人は、少数派でしょう。
 まあ、旧司受験生の方が、勉強の仕方は詳しいと思いますが。

Q14
 ロースクールは、実務家になるための教育をするところである。
 司法試験は、ロースクールの教育成果を判定するものである。
 したがって、司法試験の出題・採点はロースクールの成績上位者を選抜できるものでなければならない(そうでない司法試験の出題・採点は、間違っている)。
 ではないでしょうか。
 司法試験は良問を出しているという前提が誤っているように思います。
投稿 三段論法 | 2007年9月17日 (月) 00時14分
A14
 司法試験の出題・採点を、ロースクールの成績上位者を選抜できるものにするためには、まず、学習指導要綱と教科書制度を整備して、ロースクールにおける教育の自由を制限する必要があるでしょうね。
 そして、司法試験は、その学習指導要綱の中から出題することにする。
 やや滑稽な構想ですが。
 各ロースクールによって、多様な教育が行われている現状では、三段論法さんのいうことは無理です。東大ローで学んだ人が、期末試験だけは、慶応ローで受けるというようなことをやってみれば、「ローの成績上位者ってなんだろう」ということが少し分かるかもしれません。

Q15
法学部以外の学部出身者であっても、法律を勉強してきてる(旧試組含む)人は沢山居る訳で(こーゆー人ばかりのような…)。ロースクールに入学して初めて六法を開いた『本当の純粋未修者』の合格者は、私の知る限り極めて少ないです。仮に、葉玉先生のゼミ生が上記純粋未修者ならば、やはり凄いです。未修の合格率を見て、法律を学んだ事のない人がロースクール入学自体を控える結果となれば、なんか悲しい。
投稿 夜更けに | 2007年9月17日 (月) 02時58分
A15
ゼミ生の中では、法学部卒はごく少数派でした。

Q16
投資信託及び投資法人に関する法律では株式会社の定款にあたるものとして規約が存在しており、同法第67条において規約において記載しなければならない項目があります。
同法第67条第14項において成立時の一般事務受託者等について記載するよう求められていますが、一部の法人において、投資主総会の賛同を経て削除している事例があるようです。
同法第67条からいれば上記項目の削除は違法ですが、投資主が賛同して削除したのだから投資主を罰することも難しいように思われますが、先生のご見解をお教え下さい。
なお、この事例は会社法第27条に定める定款の記載項目を株主総会で賛成可決されて削除された事例と同様のようにも思われます。
投稿 ファンファン | 2007年9月17日 (月) 14時24分
A16
他省庁所管なので、ちょっと微妙な問題ですね。
弁護士だから意見を言ってもよいかもしれませんが、今回は差し控えておきます。

Q17
略式合併と債務超過会社についてお尋ねいたします。

9月1日のQ40=A40で、「債務超過会社は増資しても消滅会社として簡易合併はできない」という見解が紹介されています。それ自体はよくわかるのですが、当該債務超過消滅会社が特別支配会社である場合の略式合併もできないのでしょうか。

会社法796条第1項は、消滅会社が特別支配会社である場合は存続会社において総会決議不要としていますが、同条第3項ただし書のような除外理由がありません。消滅会社が特別支配会社であれば、単純に796条1項のみが適用されて略式合併可とはならないのでしょうか。(796条2項により「やめることの請求」が来るかも知れない点は格別としてください)
そうではないとすると、796条1項本文で「適用しない」と断定し、同条3項本文で「適用しない」と断定していて相互の関連が付けられていないのはなぜでしょうか。同条1項は「795条1項から3項を適用しない」、3項も「795条1項から3項を適用しない」となっているので、「796条1項で795条を適用しないことになるが、796条3項も重畳的に適用されるので3項ただし書によって795条が復活して適用される」というのは立たない気がするのですが。
796条1項と3項の置き方からみて、「簡易合併の要件を満たす場合のみさらに一定の要件を備えれば略式合併ができる」とも読みにくいのではないでしょうか。
投稿 キュアアクア | 2007年9月18日 (火) 12時22分
A17
略式合併はできます。

Q18
「基本的な事項について具体的なイメージを持たせること及び法律の論理がどのように展開されるかを理解させる」とあります。
このときゼミでは、基本書や判例をどのように用いて理解を深めていき、ストックしていきましたか。
次に、「徹底して択一の問題」をとかせたとあります。憲民刑は旧試験の過去問がありますが、その他の科目ではどのような問題集を用いましたか。
最後に、新試験は事例問題であり、これに対応するには、判例を検討することが必要だと思いますがいかがでしょうか。
仮に必要だとすると、どのようにして判例を利用してまとめていきましたか。
投稿 ろーくん | 2007年9月18日 (火) 15時31分
A18
基本書は使っていません。論文の過去問をやっただけです。
択一は、上の方で回答しているので参照してください。
「判例の検討」は、どういうやり方をするかによります。
旧試験だって事例問題は沢山出ていますし、判例を見たから新司法試験を解けるようになるわけではありません。
私の経験からいえば、判例を一から丁寧に読むよりは、まず基本的な問題を沢山解いて事例分析手法を身につけることが先決でしょう。

Q19
はじめまして。三角合併における親会社株式取得方法について質問です。先生がビジネス法務2007年9月号で提案されていた「新株予約権方式」について、実際の手続を考えてみました。

1 親会社が子会社に対して新株予約権を割り当て
2 子会社が親会社に対する払込として新株予約権を割り当て(246条2項)
3 子会社が新株予約権を行使して親会社株式を取得
→このときの行使価額はいくらでしょうか? 以下の方法のどれを使うのでしょうか?
① 行使時に第三者から現金を調達、
② 払込価額を行使時の時価としておき、行使価額を1円とする、又は
③ 親会社が子会社新株予約権を行使して現金を払い、それを子会社が親会社に対して支払う

また、株式の現物出資として新株予約権を用いるというスキームについては特に論じられていないようですが、いずれにせよ新株予約権の評価が必要になるなら、こちらの方がシンプルではないでしょうか?

今までの議論をみる限り、三角合併を行う場合の資金調達は避けられないという印象です。
投稿 初心者です! | 2007年9月18日 (火) 17時50分
A19
 新株予約権方式の行使価額は、1円でも設計できるでしょう。
 親会社株式の現物出資として、子会社の新株予約権を用いるのは、検査役の調査が必要になる可能性があることと、有利発行規制にひっかかる可能性が高まることから、新株予約権方式の方がすぐれていると思います。

Q20
非公開会社の1/3の株主です。
会計帳簿の閲覧を請求したところ「源泉徴収簿は住所等個人情報が記されているから個人情報保護法に抵触するので見せられない」
といわれました。閲覧はできないものでしょうか。
(請求者は今回はじめての請求で、433条の2の一から五までには核当しません)
投稿 素人です | 2007年9月19日 (水) 14時02分
A20
 源泉徴収簿が会計帳簿に該当するかどうかは、ちょっと答えを差し控えます。
 ただし、個人情報法保護法は、法律上の閲覧請求権がある場合には、適用されませんから、それ自体は理由になりません。

Q21
会社法432条2項で、会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を10年間保存しなければならない旨の規定がされていますが、この「会計帳簿及びその事業に関する重要な資料」に、連結計算書類を作成するための帳票類(連結精算表、子会社パッケージ等)は含まれるのでしょうか。
もし含まれるのであれば、連結作業に関するデータ類はすべて10年間保持しなくてはならないのでしょうか。
解釈論であるとは思いますが、葉玉先生の考えを教えていただきたいと思います。
投稿 ぶん | 2007年9月19日 (水) 16時40分
A22
 およそ会計に関する帳簿及び資料は、会計帳簿と言われています。保守的な意見かもしれませんが、連結計算書類を作成するための帳票類も対象となると解するんでしょうね。
 
Q22
ところで、最近というか、先生が公務員から民間に移った時からブログの更新の頻度が落ちたような感じがするのは気のせいでしょうか?
気のせいならすみません・・・。
それと、ピンチヒッターのサミーさん(二代目サミーさん?)はお元気でしょうか。
先生には失礼になるかもしれませんが、あの質問者と同じ目線で一緒に考えてくれているような優しい語り口が懐かしく思えます。
また、登場する機会はあったりするのでしょうか?
投稿 目力無双 | 2007年9月20日 (木) 01時16分
A22
 ブログの更新頻度が落ちているのは、私の生活パターンが乱れているからです。
 サミーさんは、元気です。サミーさんも、9月に子供が生まれて幸せそうです。
 登場を希望される方がいらっしゃる以上、きっといつか復活してくれるでしょう。

Q23
えっと、「未習」ではなく「未修」です。
投稿 氏名黙秘 | 2007年9月20日 (木) 15時46分
A23
ありがとうございます。
「未だ修めず」というのは、きっと習ったことはあるけど、修めていないという人も含むという趣旨なんでしょうか?

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2007年9月14日 (金)

未習者を侮るなかれ

 新司法試験の合格発表がありました。喜びと落胆が入り乱れた日でした。

 本日は、主として、ロースクールの未習者の教育についてお話をしたいと思います。
 途中、「自慢」が入っていますが、今日は、私の教え子達の栄誉を讃える日なので勘弁してください。

 私は、昨年、数ヶ月間、早稲田ロースクールの未習3年生11人を対象にゼミをしていました。これは、約20年前に葉玉ゼミにいた有名弁護士が早稲田のチューターをやっていて、その有名弁護士から
 「未習で何をやっていいかもわからないロー生がいます。飲み会だけでいいですから、ぜひ勉強の仕方を教えてやってください。かわいいロー生が沢山いますから」
と騙されて飲み会にいったのがきっかけでした。

 彼らのほとんどは、法学部ではない学部を卒業したいわゆる「純粋未習者」であり、いざゼミを初めてみたものの
 「おまえら、2年間何を勉強してきたの?」
という途方にくれる状況でした。

 そこで、私は、新司法試験の受験まで1年を切っているという絶望的な時間の欠如の中で、どうやって新司法試験に合格させるかを考えた結果
 1 授業では、基本的な事項について具体的なイメージを持たせること及び法律の論理がどのように展開されるかを理解させることの2点に絞って行う。
 2 徹底して択一の問題を解かせる。
 3 毎日1通は、旧司法試験の論文を書かせる。
 4 チームを作らせて、チームが一丸となって勉強するように指導する。
 5 一緒に飯を食いながら、励ます。
ということしかないだろうと思い、それを実践しました。
 途中、私が、特捜部に異動になったため、ゼミは中断しましたが、その後も、彼らは、チーム一丸となって勉強してくれました。

 そして、彼らは

   受験者 11名 択一合格者 9名 論文合格者 8名

という素晴らしい結果を残してくれました。

 これを合格率で表すと
   受験者の択一合格率 81.8%
   受験者の論文合格率 72.7%
   択一合格者の論文合格率 88.9%
となり、この数字が、どれほど高いかということは、各ロースクールの合格率と比べていただければ分かると思います。

例えば、
 受験者の択一合格率こそ、千葉大(84.80%)、京都大(84.21%)、一橋大  (84.16%) 、慶應大(83.20%)に負けたものの
 受験者の論文合格率が最も高かった千葉大64.5%
 択一合格者の論文合格率が最も高かった名古屋大 82.0%
をはるかに凌駕しています。

 ちなみにゼミ生の母校である早稲田大ローは
  未習者合格率 50.5%
  既習者合格率 64.7%
  全体合格率 51.6%
ですし、わが母校東大ローは
  未習者合格率  48.1%
  既習者合格率 62.2%
  全体合格率 58.6%
です(はっきり言って、失望を禁じ得ない数字です。東大ローは入学するのが一番難しいので、「実力を伸ばせない又は低下させるローランキング」上位に入ってしましました)。

 報道を見ていると、未習者の全体合格率が約32%であったことから、新司法試験は、未習者にとって高い壁であるようなイメージを持っている人がいあるかもしれません。
 しかし、未習者の合格率が低いのは、単に「勉強の仕方が悪い」からに過ぎず、「勉強している期間が短いから」ではありません。
 現に千葉大や慶応大は未習者でも、非常に高い合格率を誇っています。
 
 適切な指導と本人の努力さえあれば、未習者であるということは、何の不利にもならないということを理解すべきです。

 私は、以前、未習者の一番の問題と感じていた「演習不足」について記事にしたことがありました。
 今回の葉玉ゼミの好成績は、
  「未習者であっても、そして、3年の夏という遅い時期からであっても、死ぬ気で演習をやれば高い合格率を得ることができる」
という証拠だと思います。

 正直なところ、私は、今回のゼミ生に対しては、教えた期間が短かったこともあり、十分な量の知識を提供することができず、非常に不安に思っていましたし、実際、私が果たした役割は小さいと思っています。

 ただ、ゼミ生が、私の言葉を信じてくれたこと、そして、その言葉に従って努力を怠らなかったことが、高い合格率の原因であったことは間違いありません。

 最近は、漏洩問題が騒がれたせいか、答案練習会に対する逆風が吹いているように思います。そのような逆風は、合格を目指すものにとっては、くそ食らえです。
 
 司法試験は、実務家になる素養のある人間を選別するための最良の問題を出しています。
 ロースクールは、実務家になるための勉強をするところであり、だからこそ、その卒業資格が司法試験の受験要件になっています。
 とすると、ロースクールは、司法試験に合格するための教育(=実務家になるための教育)をすべき機関のはずです。

 この簡単な3段論法が分からない官僚やロースクールがいるとすれば、それは、受験生にとって大変不幸なことです。

 しかし、不幸を悲しんでも、誰も何もしてくれません。

 「受験生は、受験勉強をする」

口にするのも恥ずかしいこの当たり前のことを、きちんと実行できる人が、未習者か、既習者かにかかわらず、来年笑顔で合格発表を迎えることができるでしょう。

 私のゼミ生も、合格できなかった者がまだ3人いますから、心の底から喜べるのは、この3人が来年合格したときだと思っています。

 その3人に伝えたいのは
   他のゼミ生が合格したということは、勉強のやり方自体は間違っていないということだ。
   道ができているのだから、寄り道せずに、まっすぐに全速力で進めば、必ず合格できる。
ということです。

 今年、合格できなかった皆さんも、一刻も早く正しい道を見つけて、走り出してください。

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2007年9月12日 (水)

証拠の見つけ方

前回、ご案内した「株券の電子化セミナー」は、おかげさまで沢山のメールを
いただきました。
 開催地については、東京のほか、全国いろいろなところからのご応募があり
ました。
 大阪は、人数がかなり集まりましたので、できる限り、開催の方向で検討し
たいと思います。
 また、名古屋は、ここ数日、驚異的な伸びを示しており、「名古屋もやった
方がいいのかなあ」という気持ちもありますので、事務所と相談してみます。
 福岡、新潟、札幌、広島などをご希望の方もいらっしゃったのですが、現状
では、人数的に難しそうです。

 いずれにせよ、9月15日まで募集しておりますので、「参加を検討してみよ
うかな」とお考えの上場企業の担当者の方は、引き続き
    seminar@tmi.gr.jp
にメールを送っていただければ幸いです。

 さて、4人目の子供が生まれてから、授乳、おむつ換え、沐浴、だっこ、お
兄ちゃんとお姉ちゃんの朝ご飯の世話、幼稚園・習い事・塾への送り迎え等に
追われています。
 特に生まれたばかりの赤ちゃんは、夜中に起きて、授乳やおむつ換えをしな
ければなりませんから、慢性的に寝不足です。
 既に4回目の経験ではあるものの、いつも、「ママさんの仕事は、パパさん
が考えている以上に重労働だなあ」と感じます。

 かといって、純粋に主夫化することはできず、クライアント様と電話会議を
したり、メールを返信したり、契約書やレジュメを作ったり、仕事も山のよう
にやってきますから、脱時空勉強術的にいえば、10分ルールで仕事をこなさ
ないと回りません。

 今日は、寝不足で、会社法ネタをやる気力が沸いてきませんので、ラッシャ
ー木村さんからのご質問に便乗し、検事ネタでしのぎたいと思います。
 検事の仕事は、理屈の世界じゃないので気楽に書けます(笑)。

 質問は、次のとおりです。

「時空勉強術の冒頭の「どうやって段ボール1万箱の証拠の中からこんな証拠
を見つけてきたんですか」についても、それにつながる秘術をぜひ伺いたく存
じます。「犯人の欲を考え、いろんな人になりきって考えれば、こんな証拠が
あるはずだ」と当たりをつけて探したにしても、1万箱から拾い出すには必殺
の技があったものと思います。お教えいただけませんでしょうか。」

 ラッシャーさんが書かれているように「いろいろな人になりきって考える」
ことが、必殺技です。
 それ以外には、特にありませんが、その必殺技を少し詳しくお話しします。

 質問にある段ボール1万箱というのは、検事時代、最大の押収数を記録した
某利益供与事件のときの証拠の数です。
 ある高層ビルをまるごと捜索し、その中にある書類がほとんど丸ごと検察庁
に引っ越しましたので、検察庁内でも置き場所に困り、主任検事が上司から怒
られたという噂もあるほどの量でした。

 捜査では、証拠品を押収するとみんなで手分けして、その証拠品を検討し、
どんな内容のものかをメモして、データベース化します。これを「物読み」と
言います。普通は、比較的大きな事件でも一人10箱程度の分担で済むのです
が、1万箱となると一人100箱以上の物読みをすることになります。

 しかも、物読みは、あくまでも、証拠を精査する準備段階の大ざっぱな地図
作りですから、個々の検事は、その物読みデータベース等を眺めながら、自分
の担当に関係しそうな証拠を見つけ出し、さらに細かく検討を加えていかなけ
ればなりません。

 このように膨大な作業の中で「役に立つ客観的証拠」を見つけ出すためには
、まず「どんな証拠を見つけなければならないのか」ということを明確に意識
する必要があります。

 自分で証拠集めをするときには、誰かが「こんなに良い証拠がありますよ」
と教えてくれることもなければ、客観的証拠の中に「私が利益供与しました」
「私が収賄しました」と直接事実が書かれていることも、まずありません。

 同じ証拠の山を見ても、探す人が何を求めるかによって、手に入るものが違
うのです。

 では、どんな証拠を探すのが良いのでしょうか。

 いろいろな考え方はありますが、私は
  「人の心を動かす証拠」
が良い証拠だと思っています。

 刑事訴訟法の勉強をしていますと、「警察官や検察官は、とにかく客観的証
拠を一生懸命集めればいいのであって、被疑者の取調なんかは、被疑者の言う
ことをそのまま調書化しておけばいいんだ」などという脳天気な感じで証拠収
集を語る人がいます。

 しかし、実際に物読みをした人は分かると思いますが、事件についての予備
知識もなく、単に証拠を見ているだけでは、何が大事な証拠で、何が関係のな
いものなのかを区別することなど絶対にできません。

 また、客観的証拠に書かれていることは、あくまでも間接事実であり、その
間接事実が直接事実との関係でどのような意味を持つのかは、その証拠を被疑
者・参考人に示して説明を受けなければ分からないのが普通です。

 たとえば、葉玉検事に100万円の贈賄をした被疑者の手帳に「9/12 
はだま100」と書かれていても、それが決め手にはなりません。「葉玉さん
ではなく、肌間さんかもしれない」「100万円じゃなく、ゴルフのスコアが100なのかもしれ
ない」などいろいろな可能性があるわけですから、書いた人に意味を尋ねなけ
ればなりません。

 このように客観的証拠は、物の存在そのものに意味があるのではなく、人間
が行った行為の足跡を示している点に意味があり、しかも、その客観的証拠の
持つ真実の意味は、最終的には、人間の供述によってしか得られないというの
が現実なのです。

 こうした現実認識をもとに、私は
 「被疑者・参考人の取調べや被告人質問・証人尋問の場面を想定し、どんな
証拠が被疑者や参考人の心を動かすか」
ということを考えながら、証拠を探していました。

「人の心を動かす証拠」とは
①その人の行動の足跡をあらわすものであり、かつ、
②その人が、それを「自分の足跡だ」と明確に意識できるもの
です。

 法律家になりたてのころは、客観的に確実だと思われる証拠が出てくると、
それに寄りかかってしまいがちです。たとえば、覚せい剤使用罪において、被
疑者の尿から覚せい剤が検出されていれば、手続きに違法がない限り、通常、
有罪になります。
 そうすると新米検事は、つい「お前の尿から覚せい剤が出ているんだから、
認めた方がよい」ということをいいがちになります。

 しかし、どんなに検事が堅い証拠だと思っていても、被疑者が「そんなもの
大した証拠じゃない」と思えば、被疑者は、真実を喋りません。

 昔だと「キムチを食べた」という弁解がはやりましたし、私が知っている最
も面白かった弁解は
 「検事さん。そういえば、昨日、ある女とSMプレイをして、その女のオシッ
コを飲んだんです。あの女は、昔、シャブで捕まったことがあるから、きっと
あの女のオシッコに覚せい剤が入っていたのだと思います」
というものでした。

 まあ、客観的には、キムチもオシッコも、1トン以上飲み食いしないと、自
分の尿から覚せい剤として検出されることはないので、大した弁解ではないの
ですが、被疑者がそういう弁解をするということは、その被疑者にとって、「
覚せい剤が尿から検出された」のは「人の心を動かす証拠」ではなかったとい
うことなのでしょう。

 他方、検事が、
   裁判になったら、この程度の証拠じゃどうしようもない
と思っていても、真実を知っている被疑者は
 「この証拠が発見されてしまったのでは、もう逃げられない」
と思うような証拠もあります。
 たとえば、犯行現場の防犯カメラに被疑者が写っているときに、画像だけ見
たら、被疑者と明確に識別できないような場合でも、被疑者は、自分だと分か
っているので、「防犯カメラに写っていたのか」と思って観念してしまうよう
なこともあります。

 このように「人の心を動かす証拠」は、客観的証拠により供述証拠を生み出
し、その供述証拠をもとに、さらに裏付けとなる客観的証拠を探し出すという
良い循環を生みます。

 だから「人の心を動かす証拠」は、貴重なのです。

この「人の心を動かす証拠」を探すためには
 ① その人が、毎日、どのような生活をしているのか
 ② その人の属する組織のルールでは、どのような行動を取ることになって
いるか。
 ③ その人が、どういう性格なのか(几帳面なのか、大ざっぱなのか等)、
職業柄、どういう性向を持っているのか。
 ④ その人は、他人とのコミュニケーションを、どのような方法で取ってい
たのか
 ⑤その人は、犯行と、どのような関わり合いをしたのか
という5点について、事前に参考人らの取調べによって頭にたたき込み、その
人になりきって、その人の一日の行動を、順次たどっていき、どんな足跡が残
るかを想像するのが一番の近道です。

 特に、経済事犯においては、その人自身が作成した文書やメモ類が「人の心
を動かす証拠」になりやすいので、スケジュール帳の表紙の裏の走り書きから
、ゴミ箱の中の公告の裏紙まで、丹念に手書きのものを拾い読みしていきます
し、最近ならば、数年分のメールチェックは欠かせません。

 人間の行動範囲というのは、思いの外狭いため、ターゲットなる人を特定し
、その人の行動パターンが読めるようになれば、1万箱の証拠も、10箱分く
らいに絞り込むことができます。

 こうして証拠の範囲を絞り込んだ後、
  「意味がすぐに分からない書き込みほど、大きな意味がある」
という視点で証拠を精査していきます。

 他人が見ても「意味がすぐに分からない」ことを書いているということは、
当事者は、そのことについて、前提事実が頭に入っていることを意味します。

 皆さんも、あるテーマについて、メールのやり取りを頻繁にしていると、最
後の方のメールは、最初のやり取りが前提となっているため、説明が簡素化さ
れたり、自然と隠語が入ったりするのではないでしょうか。

 それと同じように、第三者が見て「意味がすぐに分からない書き込み」は、
当事者が一つのテーマについて色々とやり取りをした延長として書かれたもの
であることが多く、その意味を探ることで、裏にある真実に近づくことができ
るのです。

 弁護士にとっても、証拠の収集は、大事な仕事の一つです。
 弁護士に捜索・差押の権限はありませんが、検事だって、初動捜査の段階で
は、皆、任意捜査なのですから、弁護士と大した違いはありません。

 味方に証拠の提出を求めるとき、敵から出された証拠を調査するとき、敵に
証拠の提出を求めるとき。それぞれのフェーズで微妙にやることは違いますが
、証拠の探し方や読み取り方には、違いはありません。

 「人の心を動かす証拠」を発見できるかどうかが、勝負の分かれ目だと思っ
ています。

(質問コーナー)
Q1
 会社法マスター115講座 P171b にある図表72について質問させてください。
 図表72では 連結計算書類を召集通知へ添付するかどうかにつき 必要 と
なっております。
しかし、444条6項からすると 取締役会設置会社では必要 という記載が正し
いのではないでしょうか?
 同じ図表では 計算書類を召集通知へ添付するかどうかにつき 取締役会設
置会社では必要 と記載されていることから 疑問に思ったしだいです。
投稿 maru | 2007年9月 1日 (土) 19時35分
A1

そのとおりです。

Q2
会社法マスター115講座P194 の記載について質問させてください。

P194 1 清算と清算手続の部分で 「新設合併・新設分割の無効の訴えの認
容判決が確定した場合には、その会社の財産は消滅会社・分割会社に帰属する
ことになる(843)」
と記載されています。
 しかし843条の何項のどの部分を読めばそのような解釈ができるのか ちょ
っと理解できません。
 この点につきご教授ください。
投稿 maru | 2007年9月 1日 (土) 19時36分
A2
 新設合併をした会社は消滅会社、新設分割をした会社は分割会社ですから、
1項で債務が帰属し、2項で権利が帰属します。

Q3
責任限定契約は、社内取締役は対象外ですが、取締役会の議決で限定免責でき
るとのことですが、
1、取締役会の議決をはかるのは、損害が発生した後ですか??
すなわち、
賠償責任の裁判が確定したあとで、議決をはかるということですか??
A3
 責任の発生後ですが、裁判の確定前でもかまいません

Q4
 仮に会社に損害が発生して、それが契機にクーデターが起き、代表取締役が
解任される場合、かかる代表取締役の限定責任に賛成する役員など存在しない
とおもうのですが、その場合、解任された代表取締役は、多額の賠償義務を負
い破産するしかなくなる事態も想定できますが、それでは酷すぎませんか??
経営の萎縮になるのではと思うのですが??
投稿 三郎 | 2007年9月 2日 (日) 14時44分
A4
 経営者に限らず、他人に損害を与えた人は、損害賠償責任を負い、それによ
り破産の危機に瀕することはあります。債務者が債権者を説得して免除を勝ち
取ることができないなら仕方ありません。

Q5
清算会社は、通常の株式会社と同様に株式の発行やらといろいろできるようで
すが、
会社法は、清算に、どのくらいの期間を要すると考えて制定されたのでしょう
か??
清算中にこんなことまでするか??という規定もただ見られますが。

投稿 三郎 | 2007年9月 2日 (日) 16時01分
A5
清算期間は、会社の規模、財産の種類、清算人の能力によって全く異なります

清算中にこんなことをまでするか?という規定を用いて、うまく清算したりす
るのが上手な清算人です。

Q6
2006年1月27日の記事読ませていただきました。

>4 組織再編時・単元未満株主の株式買取請求権
>→代金支払いは有効。
> 法定責任なし。

と書かれておられますが、公開買付→簡易株式交換のスキームで再編する場合
、買取価格は公開買付価格が目安になると思いますが、(みなし配当の関係で
)株主が公開買付価格未満で簡易株式交換直前に一部を市場売却することで、
買取価格にその分を付加させることは可能でしょうか?
109条の株主平等や公正な価格とはいえない気がしますが。
投稿 とーしか | 2007年9月 3日 (月) 15時47分
A6
すいません。意味がよく分かりません。

Q7
会社法施行より前に解散した株式会社の監査役の任期の「伸長」について教え
てください。定款には監査役の任期は「4年以内に終了する事業年度のうち最
終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となっている場合、以前、整
備法108条が適用され、定款によって任期が定まります、と教えていただき
ました。この場合に、次回の任期満了の前に、臨時株主総会で、監査役の任期
を、例えば「10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株
主総会の終結の時まで」と、任期を伸長することは可能でしょうか。と申しま
すのは、会社法480条2項では336条を適用しないとなっているので、3
36条2項の伸長規定は不適用かと考えたり、又は、元々整備法108条によ
るので会社法480条も会社法336条も適用の余地がないので、やはり「1
0年」伸長なんて不可能なのか、と考えたりして解らなくなってしまいました

投稿 はりこのトラ | 2007年9月 4日 (火) 13時10分
A7
法定の期限がないので、定款で自由に定めてください。

Q8
私は現在大学4年生で今年ローの受験を控えています。
将来は渉外弁護士になりたいと思っているのですが、旧試験を受け続けるか、
それともローに進学するかで迷っています。

そこで質問なのですが、旧試験と新試験が併用されている期間において、TMI
のような渉外案件を主に取り扱う事務所は今後どちらの合格者を優先的に採用
していく傾向にあるのでしょうか。
また、葉玉先生個人としてはどちらの合格者を採用したいと思いますか。
投稿 amicus curiae | 2007年9月 4日 (火) 21時31分
A8
 旧試験組も新試験組も両方採用していますね。確か、新試験・旧試験併せて
30人くらい採用していると思いますが、人物本位なので、優先というのは、あ
まり考えていないのではないでしょうか。
 私は、やる気とある程度の能力さえあれば、後は事務所で有能な弁護士に育
てることができると確信していますので、新試験か旧試験かはどうでもよいと
思います。

Q9
会社法356条(競業及び利益相反取引の制限)について、質問をさせてくだ
さい。
例えば親会社の取締役が子会社の代表取締役を兼任している場合、完全親子会
社間の取引については、利害相反の可能性がないので上記取引には該当せず、
親会社の株主総会(取締役会)の承認を必要しないと一般に解釈されています
。(明文規定はないようですが…それともあるのでしょうか?)
では、親会社がそれぞれ100%の株式を所有している子会社AB間の取引で
、子会社Aの代表取締役が子会社Bの取締役を兼任している場合、Bの株主総
会(取締役会)の承認は必要となるのでしょうか?
投稿 ツェーベーツェー | 2007年9月 7日 (金) 10時22分
A9
完全親子会社間の取引について、取締役会の承認を要しないという明文規定は
ありません。
兄弟会社間の取引は、取締役会の承認が必要でしょう。。

Q10
会社法356条1項1号の競業取引の制限について教えてください。

当社(取締役会設置会社)の代表取締役Aは数年前から子会社(完全子会社で
はない)の取締役を兼務しています。子会社においてAには代表権はなく、月
1回の取締役会に出席しているだけです。また当社と子会社は同じ事業を行っ
ています。

①この場合、当社取締役会でAの競業取引の承認をとる必要があるのでしょう
か?
②とる必要があるにもかかわらず、とっていなかった場合、誰にどのような責
任が生じるのでしょうか?

どうかよろしくお願いします。

投稿 株之助 | 2007年9月 7日 (金) 23時40分
A10
① Aさんが子会社で取引をしていないのならば、貴社の取締役会の承認は不
要ですが、Aさんが、貴社の営業秘密又はそれに準ずるような情報を利用して
、子会社の取締役会で発言し、その議決権を行使しているような場合には、忠
実義務違反の問題は生じます。
② 仮に競業避止義務違反の行為を行った場合には、Aさんは貴社に対し、損
害賠償責任を負います。その場合、その損学額は子会社が得た利益の額と推定
されます。
 また、Aさんの競業避止義務違反を知りながら、放置していた取締役・監査
役も会社に対し損害賠償責任を負います。

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2007年9月 1日 (土)

株券電子化セミナーご招待

 もうすぐ4人子供が生まれます(追記:9月2日に無事男の子が生まれました。なお、橋本弁護士を目指しているわけではありません)。
 そのため、9月前半は、熊本で「子守り」という重大な仕事に従事しなければならず、在宅勤務状態になりそうです。

 そのあおりもあって、8月下旬は、異常にスケジュールが立て込み、若干疲れました。
 特にセミナーが多くて、色々なセミナー会場で、しかも、テーマも日替わりで(株券の電子化・買収防衛策・IRの意義・インサイダー・M&A・電子記録債権)と講演してきましたので、レジュメ作りを含めて、目が回りそうな8月下旬でございました。
 脱時空勉強術も11回になり、あと1回で最終回です。
(http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070824/133098/#bottom)
 今回のネタは、以前ブログで書いたエラーキングの話も紹介しました。

 さて、セミナーをやっていて、一番、気になったのが
  「株券の電子化」
です。証券会社さんが、テレビコマーシャルで
  「はやめにホフリに預けましょう」
という感じで告知されていますが、約1年4か月後(予想)に上場株式の株券は、すべて電子化される(振替株式になる)ため、株主だけではなく、発行会社も、入念な準備が必要となります。

 特に10月決算会社さんは、来年1月の定時株主総会で定款変更をしなければ、間に合わない場合もあり、うっかりすると、臨時総会を開かなければならないということになりかねません。

 私は、平成13年に法務省民事局にやってきてから、CPの電子化、一般社債・国債の電子化、株券の電子化、会社法制定時の社振法の整備と、ずっと電子化に関わってきましたから、元担当者として、なんとか株券の電子化が、何の問題もなく、施行されることを心から祈っております。

 ただ、3回ほど、発行会社向けの株券の電子化セミナーをして分かったのですが、発行会社としてやることも多い上、
  上場株式を担保にとっている会社
も多く、担保権者として(又は担保設定者として)やらなければならないことも大変多いということが分かりました。

 株券の電子化は、やるべきことが決まっている部分も多いのですが、まだ検討中の部分もあるので、現段階で完全な対応方法をお示しすることはできませんが、現状を理解し、今後のスケジュールを知るだけでもリスクをかなり回避することができます。

 それで、私のセミナーでは、細かい法律論よりも、発行会社・株主・担保権者等それぞれの立場として、これから、いつ、何をしなければならないのか、ということを中心にお話しました。、おかげさまで、受講者の皆さんからも、やるべき仕事とスケジュールが見えたということで大変ご好評をいただきました。

 これまで私のセミナーに参加していただいたのは、上場会社約200社の総務・財務・企画の担当者の方です。ただ、個人的には、なるべく早く、全ての上場会社の皆様に株券の電子化に必要な事務の概要を知っていただき、その対応をはじめていただきたいというのが本音です。

 そこで、私は、10月ころに、「上場会社の担当者」の皆様を対象に、無料で
  「株券の電子化への対応」
と題したセミナーを開催しようと思っています。

 このセミナーは、できるだけ早く上場会社の皆さんが株券の電子化に関する問題意識を共有し、その対応策を取ることが、スムーズな施行に不可欠であるという思いから企画するものです。
 もちろん、非上場会社も、一般株主もすべてに関わり合いのある出来事ですが、話す内容が立場によってかなり変わってくるので、今回は、上場会社の担当者さんを対象にさせていただきたいと思います。

 有料で株券の電子化セミナーに出席していただいた方には、大変申し訳ないのですが、他の会社よりも、かなり早めにスケジュール感を把握することができたということで勘弁してください。

 私の思いつきによる企画なので、日付や会場(東京のどこか)など細かいことは、決まっていません。あまり大きな会場だと、会場費だけでも相当な金額になるかもしれませんし、有料の株券の電子化セミナーをやりにくくなるので「弁護士として無料でいいのかなあ」という気もしますが、社会的に必要なことは、とりあえず積極的にやるというのが私のポリシーなので、ここは太っ腹にいきます。
 大阪・名古屋・福岡・札幌などでの開催希望が多ければ、それも考えますが、いよいよ手出しが多くなって、子供が増える私としては、個人的につらいところです(笑。たぶん、事務所が費用を出してくれると思いますが)。

 とりあえず、大ざっぱな参加人数を把握したいので、もし
  「場合によっては、参加してみようかな」
と思われる上場企業の担当者の方がいらっしゃれば
    貴社名
    役職
    お名前
    メールアドレス
    開催希望地 

    seminar@tmi.gr.jp
に送っていただけませんでしょうか。
 9月15日までに集まった人数を集計して、開催日時・場所を決め、送っていただいたアドレスに、案内メールを送信いたします。
 その案内メールに対し、参加希望のメールを返信していただいた方に、招待メールをお送りいたします。

 株券の電子化については、まだ施行まで1年以上あるためか、担当者の皆様も、まだ本格的に対応方法について検討していないというのが実情だと思いますが、ふるってご参加ください。

(質問コーナー)
Q1
【Q78】について
発行可能種類株式総数と発行可能株式総数の関係について特に規律を設けなかったのはその必要性を感じなかったからでしょうか
A1
相互に自由とする必要があるからです。

Q2
【Q95】について
株式会社が分配可能額を超えて取得請求権付株式を取得した場合に当該取得行為は無効となると説明されていますが、これは取得行為全部が無効なのですか。
また、この場合の業務執行者等に462条の適用が外されているのはどのような理由からですか。
A2
「取得行為全部」の意味がわかりませんが、区別できるなら、最後の超えた分が武功です。
後段の質問については、461条の場合のように有効として同時履行の抗弁を消すのは株主に酷だからです(会社法100問を参照してください)

Q3
【Q97】について
この質問文中「A種類の株式を対価とする取得条項付株式を対価とする取得請求権付株式の株主」とあります。この場合の株主が持っている株式とは、株主が会社に対して取得請求権を行使した場合に会社が、株主に取得条項付株式(会社が強制取得時にはA種類株式を対価として交付)が交付される特質を持つものという理解でよいでしょうか。文言の係り方が複雑で質問自体の意味が正しく理解できないので確認させてください。
A3
そうです。

Q4
【Q99】について
解説中で新株予約権に関する113条4項が参照条文として挙げられているのはどういった趣旨からですか。
A4
新株予約権も発行可能株式総数に関連するからです。

Q5
【Q125】について
100パーセント減資のため①乃至④まで挙げられていますが、①の手続
の代わりに107条1項3号及び110条の手続もすることは可能ですか
A5
「①の代わりに」というのは、よく分かりません。別の種類の株式がないと、全部取得条項がつけられませんが?
もっとも、取得条項付株式で全部を取得することはできます。

Q6
【Q134】について
組織再編の場合の株式買取請求が効力発生後に解約された場合売買契約の効力発生後の解約に準じて原状回復をおこなうべきと解説されています。そしてこの場合存続会社等が合併等の対価を原則交付すべきとし、できない場合、金銭による原状回復とされています。しかし、原状回復の原則は現物返還であり、本件では消滅会社等の旧株式が理論的には返還されるのではないでしょうか。
A6
消滅している旧株式は、返せません。解除とパラレルだと、填補賠償になりますね。

Q7
【Q136】について
質問文では欠損が生じた場合とありますが、分配可能額を超えた場合ではないでしょうか。それとも分配可能額を超えた場合とは欠損が生じた場合と同義なのでしょうか。
A7
欠損と分配可能額がないことは違います。ただ、欠損が生じれば、常に分配可能額はありません。

Q8
【Q143】について
325条は318条4項にどのように準用されるのでしょうか。
325条後段をみますと「「株主は」とあるのは・・・第318条第4項及び第319条3項を除く」において同じと読み替えるものとするとあります
この読替規定は適用されない結果「株主は」とあるのは単に「種類株主は」と読み替えると言うことでしょうか。
さらに、318条4項をみますと「株主及び債権者は」となっており「株主は」という読替規定は条文の文言に忠実に解しますと適用されずその結果準用されないと言うことでしょうか。
A8
「株主は」という文言について、種類株主に限るという限定がつかないだけで、準用はされます。

Q9
【Q146】について
株主平等の原則は結局のところ、判例が憲法14条で用いるところの合理的差別は許されると同じ発想でありいわば株主合理的取扱いの原則と言い換えられないでしょうか。
また、比例的取り扱いと解すべきという見解に対する反論として308条1項、454条3項等が個別的に設けられていることを説明できないとあることから比例的取り扱いを必ずしも義務づけるものではないと結論づけていますが、注意的規定であり当然のことを特に規定したと再反論が容易に予想されないでしょうか。
このような疑義をなくすために平等原則というのではなく解説でも何度も強調されている合理的取り扱いの原則と明文化した方がよかったのではないでしょうか。
A9
 注意的規定というのは、法的効力がないということですから、そんな無駄な規定はありません。そのような反論は、牧歌的な時代にのみ許されるものです。
 また、109条1項が比例原則を定めているとすれば、たとえば、株主総会の座席について、株式数が多い株主ほど、前の座席を確保しなければならないいうことが導かれるのでしょうか。平等原則は、比例原則の場合もあれば、株式の数に応じない単なる機会平等を導く場合もあり、109条1項=比例原則というものではありません。

Q10
【Q151】について
図表2-4についてお願いします。法304条や314条は濫用防止規定のところが網掛けになっていますが、各同条但書が濫用防止規定としていないということでしょうか
A10
 但書をいれてもよろしいのではないでしょうか。単なる整理の問題です。

Q11
【Q158】について
株券発行会社だけ名義書換請求権、譲渡承認請求権の制限が189条2項6号、施行規則35条2項等により不可とされたのはなぜでしょうか
A11
35条1項4号、5号はありますが?

Q12
【Q161】について
単元株式数を増加する場合ではなく減少又は廃止させる場合には466条の株主総会決議は必ず必要なのでしょうか。不要な場合がある場合は条文上の根拠をお願いします。
A12
減少・廃止は、原則として役会でできます(195条1項)

Q13
【Q165】について
施行規則67条は相互保有株主の範囲を組合その他これに準ずる事業体である株主も含まれるとありますが、これらが含まれる根拠は同条1項の「当該株式会社の株主である会社等の議決権」の「会社等」にあたるからでよろしいでしょうか。
A13
そうです(2条3項2号)。

Q14
【Q169】について
303条の趣旨とは何かという質問に対する明確な回答がなされていないように思われます。私見ではいわゆるモノ言う株主の促進を促しひいては株主総会の活性化を志向していると考えますが、同条の趣旨についてはどのように考えられたのか正解をお願いします
A14
別にモノ言う株主を促進するつもりはないです。
株主は、会議体のメンバーとして本来議案を提出できるのが原則です。しかし、濫用のおそれがあるので、これを制限した規定です。

Q15
【Q183】について
図表2-7についてお願いします。新株予約権を既存のものに譲渡制限を付すための手続きとしては新株予約権者の全員の同意が必要という条文上の根拠が見つけられないのですが何条にありますでしょうか。                                                 自社
また、社債を既存のものに譲渡制限を付すために社債権者集会の特別決議として724条2項1号が挙げられていますが、同号が示す706条1項各号に関する行為に該当するのでしょうか。
706条1項各号はそれぞれ例示列挙なのですか。
A15
新株予約権は、単なる債権者なので、株主という他人が多数決でその内容を変更することはできません。
706条は、社債管理者に関する規定であり、社債権者集会の決議事項は、716条です。

Q16
【Q186】について
失念株主の配当に関してですが民法575条1項を類推適用されるとありますが、類推しなくても配当が株主の地位に対して与えられるものであることから、当事者間においても取得者が株主名簿の名義書換をして対会社対抗要件を備えない限り名義株主に配当財産は帰属すると解することはできませんか。
かえって民法の規定を類推すると判例法理では代金既払いか否かで結論が変わりうるのであり、対会社対抗要件という説明が機能しなくなりませんか。
A16
575条は任意規定ですから、意思表示によって変更できます。当事者の意思が分からないときに575条の類推になるのです。

Q17
【Q200】について
判例は民法93条但し書きの類推適用とするが「民法93条を類推適用し」とあるのはこれと同義でしょうか?
A17
同じです。

Q18
【Q204】について
譲渡担保設定時点では実質的な財産流出がないということであるが、契約次第ではないのでしょうか。譲渡担保設定一般が凡て施行規則27条1号になるということなのでしょうか。また、設定時点では「取得」がそもそもないといえないのでしょうか。
A18
当然、契約で会社が対価を払っているのならば、27条1号は適用ありません。
譲渡担保も、対外的には株式の保有者が移転していますから、取得です。

Q19
【Q220】について
民法422条の類推適用についてですが類推の基底はどこにあるのでしょうか。会社に違法に取得された株主の株式が、債権(民法462条1項の連帯債権)の物又は目的物といえる又は似ているのでしょうか。
A19
422条は、売主(目的物の引渡債務者)が買主(債権者)に対して、目的物の全額を損害賠償として支払ったら、一旦、買主に移転した目的物の所有権が、売主に移転するという規定です。株主(自己株式の引渡債務者)が買主(会社)に、自己株式の価格の全額を支払った場合と、そっくりです。

Q20
【Q223】について
子会社の定義ですが、「議決権の過半数を有する株式会社その他の」とあるところから読点がないので、今まで議決権の過半数あれば子会社と考えていたのですがこれは誤りと言うことでしょうか。あくまで解説の通り会社法が採用した基準は形式基準に加えて実質支配基準ではなく、実質支配基準のみということで宜しいでしょうか。
A20
施行規則3条を見てください。議決権の過半数をとっていても、子会社でない場合はあります。

Q21
【Q241】について
株券発行会社の株式の質入れの対抗要件につき、株主名簿に記載することは登録質の保護を受けるか否かの意味しか持たないのでしょうか。
A21
会社法上は、そうです。

Q22
【Q246】について
特例登録質権者の質権に登録質権としての効力を認めなかった主な理由は何でしょうか。
A22
株主の同意がないからです。

Q23
【Q272】について
図表2-10についていくつかお願いします
公開会社・取締役設置会社・募集・原則部分の取締役会の決議
202条3項3号は第三者割当通常発行の場合ですから201条ではないでしょうか。
次に公開会社・取締役設置会社・募集・例外部分の取締役会の決定とありますが200条1項は201条により公開会社には適用されないのではないでしょうか。
A23
確かに、202条3項3号は、201条の誤りです。
201条は、200条の除外規定を置いていませんので、適用されます。ただし、通常は、199条3項の場合だけですが。

Q24
【Q291】について
図表2-11で授権枠が変化なしまたは拡大とありますが、授権枠総枠の変更はなされていないのでもともとあった授権枠部分への復活ないしは回復というのが適切ではないでしょうか。
A24
授権枠という言葉の定義次第ですね。

Q25
【Q293】について
212条1項1号は120条の利益供与に含まれないのでしょうか。仮に含まれる場合これらの責任の関係はどのようなものでしょうか。212条の方が優先的に適用されますか
A25
優先というか、120条の要件に該当すれば、当然、120条は適用されます。

Q26
【Q306】について
株主が旧株券を紛失した場合公示催告手続きにより除権判決を得ることができとありますがこれは旧株券はもはや会社法233条にいう「株券」に該当しなくなったためという理解が前提でしょうか。
投稿 会社法使い見習いLv2 | 2007年8月25日 (土) 22時45分
A26
そうです。無効株券は、株券喪失登録手続ができませんし。

Q27
税務・会計に詳しい法律家を目指しています。
葉玉先生の某予備校での講演会を同時中継で聞きに行きました。(7月末)
私は、旧司法試験受験生で現在論文試験の結果待ちですが、最終合格したら、
そのときからさっそく税務・会計の勉強をしたいと思っています。
しかし、ロースクール生ではないので、租税法の講義を受講することもできず、
何からどのように学んでいったらいいかが、わかりません。
地方在住のため、大学の聴講生とかの方法も厳しい状況です。
 通信教育のパンフレットも取り寄せてみましたが、まず簿記を学んだほうが
いいものか、いっそ(科目免除で)公認会計士の勉強に取り掛かるのがいい方法かわかりません。
投稿 ゴーヤーマン | 2007年8月26日 (日) 14時01分
A27
 私は、修習生時代に、税理士試験の予備校にいって、簿記・会計・相続税・所得税・法人税だけ受講しました。

Q28
 事業譲渡に関してですが、契約書に「競業避止義務」の約束があれば、事業譲渡で、なければ「重要な財産の処分」にあたると判断していいのですか???
 
 条文上の根拠がなくて、古い判例が、上記判断基準として根付いているのですか??

 学説のなかには、競業避止の有無で事業譲渡と重要な財産の処分かを振り分けるのは不当だという見解が会社法制定以前からありましたが、なぜ、立法上解決されなかったのでしょうか??
投稿 ニート三郎 | 2007年8月27日 (月) 01時22分
A28
 解釈によりますから、それぞれのリスクでやるべき部分です。
 私は、100問に書いたとおり、競業避止義務が生じないなら、重要な財産の処分であると思います。

Q29
取得条項付種類株式についてご教授ください。
種類株式発行会社であるA社は、定款において、「払込金額の90%~110%の範囲で発行に先立って取締役会で定める額の金銭と引換えに、取締役会で決議した日をもって、当該種類株式を取得することができる」、と規定しており、取締役会決議において当該金額を100万円と規定していたとします(株式分割等の場合に金額を調整する規定はありません)。
A社が当該種類株式について、現行1株を100株とする株式分割を行ったとすると、1株あたりの価値が1/100になるため、当該種類株式の引換価格を1万円に変更しなければ、分割後の1株当たりの価値が急騰することになります。したがって、当該金額を1万円に変更したいのですが、どのような手続きで変更を行えばよいのでしょうか?
①「100万円」との確定金額は取締役会決議で決定したものであるため、単に取締役会決議を行えばよいのでしょうか?この場合、定款には「発行に先立って取締役会決議で定める」との文言に反するようにも思えます。
②①の懸念を排除するため、「発行に先立って」の部分の規定を定款から削除する定款変更を行ったのちに、取締役会決議を取ればよいのでしょうか?この場合、定款変更は、株式の内容の変更でかつ種類株式に損害を及ぼすおそれがあるため(定款文言上は取締役会決議でいかなる金額に変更することもできるようになる)、種類株主総会も必要となるのでしょうか?
③それとも、定款自体を変更して、定款に1株について1万円と規定してしまえばよいのでしょうか?この場合、株式の内容の変更ですが、定款変更の効力発生を株式分割を条件とすれば、株式の価値に実質的変更がないため、ある種類株主の損害を与えるおそれはなく、種類株主総会は不要となるのでしょうか?
投稿 | 2007年8月28日 (火) 14時22分
Q29
判断の材料が不足しているのですが、すでに発行済みの種類株式という話なんですよね?
とすると、いまさら「払込金額」は変更しようがないのではないでしょうか?
通常、取得条項自体を実態にあったものに定款変更し、種類株主総会を経る必要があるでしょう。

Q30
払込が会社法上違法な行為で罰則もあることからすると私法上も無効ではないかというのがそもそも【Q44】の問題意識だと思われます。しかし、本書の解説中ではこの前提をとっていないのであればともかく、この前提をとっているのあれば有効だと解する法的根拠が必要だと思います。
A30
罰則があるから、私法上も無効であるという考え方は、誤りです。民法の詐欺を考えてみてください。

Q31
【321】について
図表3-1に関連して209条と199条1項4号についてお願いします。
199条1項4号では募集株式の事項として期日又は期間を定めなければならないとありますが、これは両方定めることは可能ですか。仮に不可能でも両方定めた場合、株主となる時期を定めた209条の適用に際し、期日又は期間のどちらが優先するのでしょうか。
A31
期間外に期日を定めるということでしょうか?むしろ、それは、その期日を含めて、期間そのものでしょう。

Q32
【336】について
事後的に新株予約権の発行手続きの瑕疵を争う方法として、新株予約券発行の無効の訴え、不存在確認の訴えが挙げられていますが、株主総会決議で行われた場合に会社法830条、831条による争い方は挙げられていません。
新法の下では仮に提起された場合にはこれらは不適法となるのでしょうか。
A32
830条、831条の要件を満たせば、訴えを提起することもできないわけではないですが、それだけでは、その決議に基づいて発行された新株予約権が無効になることはありません。そのため、訴えの利益がないとされる可能性はありますね。

Q33
【337】について
無記名新株予約権付社債、記名新株予約権付社債、証券不発行新株予約権付社債についても上記と同様の取り扱いがされるとあります。
この「上記」とは3の証券不発行新株予約権と同様という意味でしょうか。それとも上記社債がない場合の1ないし3の各予約権に対応してという意味でしょうか。おそらく後者だと思うのですが念のためお願いします。
A33
後者です。

Q34
【346】について
したがって以降で①記名式の新株予約権証券が発行されている新株予約権については株式会社に対抗できないとありますが、第三者にも対抗できないのではないでしょうか(257条1項)
またその他の新株予約権は株式会社を含めた第三者に対抗することができないとありますが、無記名式は第三者には対抗できるのではないでしょうか。(257条3項)
投稿 会社法使い見習いLv2 | 2007年8月28日 (火) 23時40分
A34
まあ、そうでしょうが、無記名式で譲渡制限ってどうやって会社は管理するんでしょうね。

Q35
会社法施行規則132条について質問があります。
4項で特定取締役を定めなかった場合、事業報告及び附属明細書の作成に関する職務を行った取締役及び執行役が特定取締役となっています。
当社では、経理担当取締役が存在せず経理部長がこの職務を行っていますが、経理担当でない取締役の中から必ず特定取締役を選任しなければならないのでしょうか?
投稿 経理担当者 | 2007年8月29日 (水) 16時39分
A35
事業報告及び附属明細書は、必ず取締役が作っています。たとえ、経理部長がいないとしても、経理部長は、取締役の誰かの使用人として作っているだけです。ですから、経理部長の上司である取締役(少なくとも代表取締役)は、職務を行った取締役です。

Q36
譲渡制限付普通株式と譲渡制限付配当優先株式を発行しています。で、このたび、新たに譲渡制限付普通株式を発行することになりました。
この場合、会社法199条4項に定める「当該」種類株主総会の決議を要することとされていますが、この当該種類株主総会とは、譲渡制限付普通株主を対象とした種類株主総会を指すと理解してよいのでしょうか?
譲渡制限付配当優先株主を対象とした種類株主総会は不要であると理解していますが、問題がありますか?
投稿 株式担当者 | 2007年8月29日 (水) 23時26分
A36
譲渡制限付普通株主の種類株主総会だけです。
譲渡制限付配当優先株主については、通常不要です(株主割当の場合は、必要)

Q37
葉匤先生,脱時空勉強術を楽しく読ませていただいている法科大学院生です。
第11回の記述について質問させてください。
3頁目の,「困壁を喜んで上っていく者は・・・」の中の,悩める皇帝が,窮地を楽しむことができるのはなぜでしょうか?その理由が読み取れませんでした。
私は法科大学院に通いつつ現行司法試験も受け,今結果待ちです。二足のわらじを履いてみて,窮地を楽しまなければやってられない,ということはよく分かったのですが,実際どうやったら楽しめるのかまだ模索しています。「楽しむ」の意義を間違って捉えてるのではないかとも思ったりします。
是非参考にしたいので,どういう意図で書かれたのか,どういう理由で書かれたのか,ご教示いただけたらと思います。
投稿 ゆり | 2007年8月30日 (木) 10時25分
A37
 悩める皇帝が窮地を楽しむことができるのは、彼がマゾだからです。
 もしくは、ピンチこそ、自分の殻をやぶるチャンスだということがわかっているからです。
 私も、自分が進化したと感じるのは、いつも修羅場の後です。

Q38
第一問:取締役の任期を1年としたときに、あらたにできるようになることは、剰余金の配当以外に何があるでしょうか。(簡易合併などもあるらしいのですが条文で探せていません。)
A38
自己株式の取得、任意準備金の処分等459条に書かれていることですね。
委員会設置会社になれる。
それ以外は、あったかなあ?

Q39
第二問:特定取締役だけを選定し特定監査役を選定しない(あるいはその逆)ことはありうるのでしょうか。
投稿 TORI | 2007年8月31日 (金) 18時14分
A39
 できます。

Q40
お忙しいところ申し訳ありませんが、質問させていただきます。
「債務超過を解消した場合においても、簡易合併が事実上できない。」
とのレポートが税理士法人から発表されており、私はよく理解できるのですが、
http://www.esnet-tax.or.jp/pdf/070717/newsletter_gogai.pdf
実務においては、債務超過会社の100%子会社を合併期日までに増資することを条件に簡易合併が行われています。
投稿 なかむら | 2007年8月31日 (金) 19時14分
A40
 たしかに、そうなりそうですね。増資がよくないのかなあ。

Q41
見せ金と設立の効力について質問です。

ある問題を解いていたら,発起人Aが見せ金による払い込みをしたとき,見せ金を無効とすると設立が無効になるかについて,
「『設立に際して出資される財産の最低額』(27条4号)の財産が確保されていてば設立無効とはならない。」
とあるのですが,発起人の払い込みが無効である以上,25条2項に違反し,27条4号に関係なく無効になるのではないのでしょうか?
投稿 たまご | 2007年9月 1日 (土) 01時12分
A41
発起人の一人の払込が無効なら、設立も無効事由が生じます。

Q42
当期たまたま多額の外貨を売上の回収として受け取り、外貨のまま外貨預金に受け入れました。 弊社は3月決算法人なのですが、8月31日付で臨時決算を行い10月中の決議により、その外貨全額を配当することになりました。

そこで例えば、外貨の保有高が100ドルで8/31の円ドルレートが100円、よって8/31現在の帳簿価額が10,000円、臨時決算の結果の分配可能額が11,000円であるときに、10月の株主総会で配当財産を外貨100ドル、その帳簿価額10,000円(454条1項一号)その他必要な決議をした場合、効力発生日の実際の換算レートが120円となった(つまり、円換算では12,000円の分配となり分配可能額を超過)とすると、違法配当になるのでしょうか。

千問のQ693及びそれで触れられている会計基準を参照すると、「現物配当」の場合には、効力発生日に帳簿上換算換えを行って、今回の場合2,000円の利益を計上し、時価である12,000円の配当として扱えば問題にならないと考えられます。

弁護士複数に相談したところ、外貨は現物ではないから、上記のような取扱はできず違法配当となると回答をもらいました。

しかし、「現物」について上記のような取扱をするのはその”時価”が変動することに着目しと考えれば、外貨も現物として取り扱ってもいいように思います。 更に、454条1項一号が配当財産の”時価”とは言わずに”簿価”としていること、効力発生日の時価を効力発生日に知ることは多くの現物の場合不可能であることを考えると、客観的に”時価”はいくらなのかを会社法は気にしていないと考えることもできるように思います。
投稿 むぎゅ | 2007年8月17日 (金) 09時23分

A42
 現物配当と考えても、配当時に時価評価し直して簿価になりますので、12000円の分配となり、分配可能額を超過します。

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