乱用的買収者概念の要否
株主総会の集中日が近づき、私も、何かと忙しくしています。
それにもかかわらず、弁護士としての日常業務の他に、雑誌原稿の締め切りが重なり、しかも、
脱時空勉強術第3回 暗記を確実にする2×4法
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070613/127289/
を書いたりしたので、ちょっとオーバーワーク気味です。
そのため、先週はブログが1回しか更新できず、すいませんでした。
ところで、以前、ご紹介したビジネスブレイクスルー大学院大学で
「会社法施行1年を迎えて~実務の到達点と今後の課題」
という私の講座が、なんと
無料
で公開されました(http://cls.ohmae.ac.jp/)。
簡単な登録をすれば、誰でも見ることができます。
内容は、会社法の改正点をかいつまんで説明した上で、内部統制と合併等対価の柔軟化については、それなりに詳しく説明したものです。
また、第4回の講義では、皆さんが、あまり意識したことがないであろう「今後の立法課題」について、現在の認識と立法上の問題点について触れていますので、結構、おもしろいと思います。
4回の講座で合計1時間くらいです。
この無料講座は、「買収防衛策の設計とその死角~違法な買収防衛策とは何か~」という3時間の講座の後に、収録したため、若干、声がかすれ気味ですし、1時間の中に、いろんなものを凝縮しているので、ギャグを言う余裕がなかったのが残念ですが、無料にしては、情報量が多いので、見ても損はないと思います(会社法に詳しい人は、第4回だけでもいいかも)。
「買収防衛策の設計とその死角」の方は有料です。学生さんにはきついかもしれませんが、一般の企業法務セミナー並の受講料です。
「買収防衛策の弱点をあからさまに説明していいのかなあ」
などと躊躇していたにもかかわらず、アシスタントの田中未花さんの美しさに気をとられ、ついつい、しゃべってはいけない弱点までしゃべってしまったという噂があるセミナーです。
買収防衛策を作っている人と、買収防衛策を破りたい人に見ていただいて、
「その作戦で来たら、俺はこうやって逆襲する」
等という議論のきっかけになれたら、幸いです。
防衛策と言えば、ブルドックの総会は、新株予約権の無償割当てが圧倒的多数で可決されました。
いよいよ興味深い司法判断が下されることになりそうです。
総会のあった日曜日に、私のところにマスコミが数社コメントを求めにきたのですが、記者の皆さんは、ほとんど全員
「株主の8割が賛成したことは、司法判断に影響を与えますか」
という質問をしてきました。
私は
「8割も防衛に賛成したことは、裁判に有利に働くはずです」というコメントが欲しいんだろうなあ
と思いましたが、法律家として
特別決議を取ったことには、法的意味はあるけど
それを超えて、何割とっても、あまり法的には意味がない
と思っているので、率直に、そう答えました。
なんとなく、記者さんは、少し残念そうな感じでした。
ただ、景気づけで理屈のない話はできないんですよね。
証拠も知らないのに、具体的事件に対する裁判の予測などできないので、私は、いつも、いろいろな前提条件をつけて、一般論としてコメントしているのですが、新聞等に載るときは、どうしても紙面の都合で端的な表現になりがちです。
それが嫌だから、マスコミの取材には一切応じないというのも見識だと思います。
しかし、私は、国民の皆さんがこうした紛争をきっかけに、敵対的買収について理解を深めることは、いろいろな意味でプラスになるので、私も微力ながら、その理解を助けるお手伝いをしたいと考えていますし、ある行為にプラスとマイナスの両面があるときは、他人に迷惑をかけるようなマイナスでない限り、その行為を行うというのが私のポリシーなので、マスコミの取材には極力応じることにしています。
とはいえ、取材の中で困るのは、記者さんの質問に対する回答が、すべて裁判の勝ち負けに結びつけて考えられることです。
たとえば、私が
特別決議を取れば、一部の株主の持株比率が減少するとしても、必ずしも株主平等の原則に違反しないと思います。
と答えると、記者さんは
ということは、裁判所は、スティールを乱用的な買収者と認めるということですか
等と聞いてきます。
このブログをお読みの方は、このすれ違いにお気づきになると思うのですが
Xの主張する法律上の見解が正しい
ということと
Yの主張する事実上の主張が間違い
ということは、次元の異なる話です。
私は、以前の記事でも書きましたが
株主総会導入型の防衛策においては、
買収者が、乱用的買収者かどうかを争点にしない方がいいのではないか
と考えています。
大事なのは、会社法では
株主総会の特別決議により、実質的なスクイーズアウトが可能になっている
ということだと思うのです。
いくつかの会社が、全部取得条項付種類株式等の制度を用いて、少数株主を実質的にスクイーズアウトしましたが、この場合には
スクイーズアウトは、少数株主が乱用的買収者でなければ、違法となる
という意見の人はいませんでした。
少数株主の性質が正当化根拠になるのではなく、株主総会の特別決議自体が正当化根拠となるのです(不公正決議とされる余地はありますが)
買収者に適正な対価を与えた上で、持株比率を低下させるライツプランは、実質的には「一部スクイーズアウト」です。
買収者は、単独では大株主なので、通常のスクイーズアウトとは異なる点もありますが、多数決により、少数派株主の持株比率を下げるという点では共通します。
ですから、私は、買収者が、乱用的買収者かどうかは、実は、あまり本質的な問題ではなく、少数派株主の持株比率を下げることを正当化することができる多数決の要件は何かという方が重要だと思うのです。
もちろん、株主総会の決議取消原因である「著しく不当」かどうかを判断する上で、
「僕は、乱用的買収者じゃないのに、持株比率を下げるような決議をされたから、その決議は著しく不当だ」
と主張をすることは、理論的にはありうると思いますが、株式の有利発行、全部取得条項付種類株式の取得、株式の併合など総会の特別決議でできることを見る限り、
乱用的買収者じゃないかぎり、総会の特別決議でも持株比率を下げることができない
というルールは、会社法にはないのではないか、と思っています。
買収防衛策について書いていたら、思わず長くなりました。
睡眠時間確保のため、「株式譲渡自由の原則」は今回はお休みします。
(質問コーナー)
Q1
資本金の変更登記はあるが払込みがまったくない場合(増資額の全額が見せ金)であっても、次の「1、発行の実態が存在しない場合」には該当しないということになるのですね。2、の手続に従うことになり、払込がされたことになるわけではないが資本金減少の手続がされないかぎり資本金は1000万円のままということになるのですね。
<私の理解>
1、募集株式の発行の実態が存在しない場合--->無効の一般原則のほか新株発行等不存在確認の訴えの制度により処理---->資本金はずっーと300万円のまま。
2、募集株式の発行に法的瑕疵がある場合(上記1、の場合を除く)--->新株発行無効の訴えの制度により処理--->訴えが認められて無効となる場合を除けば新株発行は有効(提訴期間の経過により新株発行の有効が確定する場合を含め)---->資本金は1000万円(無効判決が確定した場合を含め)。資本金減少の手続がなされた場合のみ資本金は300万円に変更できる。
投稿 3MK | 2007年6月18日 (月) 10時20分
A1
3MKさんは、払込み・株式発行・資本金の関係が繋がりすぎているように思います。
まずは、その三者を切り離して考えた方がよいでしょう。
払込みが全くなくても、あったように見せかけて、株券を発行してしまえば、「不存在」ということができるかどうか微妙になります
それから、「見せ金」という言葉をどのような意味で使っているかによりますが、払込みが全くなければ、資本金は増えません。
したがって、本来、資本金減少の手続きを経なくても、そのままです。
ただし、資本金は、計算書類によって開示され、登記事項でもあります。
そのように開示された情報について、「あれは、間違いでした」と言って訂正していいかといえば、そうではなく、資本金が増加したような外形が生じた場合には、債権者保護手続きの規定を類推適用しなければならないと考えるべきでしょう。
Q2
新・会社法100問の、67問について質問があります。
第一段落を、
「会社は、出資者である株主や社員が出資した財産を運用して、その得た利益を株主や社員に分配するコトを目的とするという意味で、営利性を持っているし、その範囲において営利法人であり、その範囲における権利能力を持っている。」という風に、書き換え可能でしょうか?
そして、67問目は、この一文について、読者がイキイキと覚えられて、しかも、使いこなすコトが出来るように挿入されたような印象を受けます。
投稿 至誠丸 | 2007年6月18日 (月) 13時27分
A2
「その範囲における権利能力」というのは、ちょっとおかしいかもしれませんね。
権利能力は、事業の目的の範囲で限定されるものであり、利益分配という目的で限定されるものではありません。
Q3
会社法389条3項の報告が、解釈上、常に総会で報告しなければならないように読めるので、そうすると、先生のご回答と合わせると、会計監査限定監査役の会社は、少なくとも定時株主総会については報告の省略はできないということになるのでしょうか?(定時株主総会では、計算書類承認の件が必ずあるので、その議案について調査・報告が必要になると思われます。)
319条・320条による総会の省略は、会計監査限定の監査役にしている小さい会社にとって特に使い勝手がいい制度ですが、決議事項の省略はできても、389条3項があるが故に報告の省略はできないなら、結局、決議事項もあわせて現に総会を開催したほうが早いということになるのではないかと思うのですが・・・。
投稿 スケジューラー | 2007年6月18日 (月) 16時58分
A3
そうなんですよ。
会計監査限定監査役も少しは働いてもらわなければということでしょう。
Q4
会社法113条4項は,種類株式を発行している会社の場合にはどのように考えればよいのでしょうか。
投稿 ポケット | 2007年6月18日 (月) 20時45分
A4
すいませんが、「どのように考えれば・・」という質問の意味がよくわかりません。条文どおりだと思いますが。
Q5
直近のブログで、株式譲渡自由の原則が取り上げられており、「株式譲渡が株主の唯一の投下資本回収手段」「株主にとって、株式の譲渡が唯一の投下資本回収手段だから」という表現があります。
しかし、配当(減資+配当)や清算による残余財産分配も投下資本の回収として機能するはずで、あまり「唯一」「唯一」というのは、言いすぎなような気がするのですが、如何でしょうか。
「自分ひとりで出来る」投下資本の回収か、とも思いましたが、株式譲渡は買受人が必要ですし、「取締役会or取締役の意思決定」の必要ない投下資本の回収かとも思いましたが、解散・清算は、株主の意思で実行可能ですので、どちらも厳しそうです。
投稿 ぞう | 2007年6月18日 (月) 21時52分
A5
そうですね。会社の意思決定に左右されず、株主が投下資本を回収することができる唯一の手段という意味です。
Q6
葉玉先生、先日はご回答ありがとうございました。
(1)前回1点ご回答いただけなかったのですが、司法試験平成14年第1問の事例で、株主Xは、受けた損害について取締役に429条の責任を追及することはできるでしょうか。
あと、司法試験平成7年第1問の100問解答について質問です。
(2)いささか論点主義的な質問で恐縮ですが、本問で財産引受契約が成立後の会社に帰属するかを検討するに当たり、解答では、いわゆる同一性説の論証がありません。
これは、財産引受については明文(28条2号)で認められているので、論証の必要はないということでしょうか。
(3)また、もしそうだとすれば、同一性説の論証はいかなる場合に必要となるのでしょうか。
(例えば、会社の設立中に発起人が行った「会社の設立を直接の目的とする行為」や「会社の設立のために必要な行為」について、それらの効果が成立後の会社に帰属するかが問題となる場合には、論証すべきという理解でいいでしょうか。)
投稿 去年商法C(去年の「去年商法G」) | 2007年6月19日 (火) 02時12分
A6
(1)合併比率の算定の前提に虚偽があった場合等には、理論的には可能でしょうが、違法行為の認定が難しそうですね。本来、株式買取請求権で解決すべきところです。
(2)財産引受は、明文がありますから、単なる説明である同一性説を論じる必要はないように思います。書いてもよいですが。
(3)そうです。
Q7
葉玉先生 睡眠時間どれくらいなんですか?
投稿 かつ | 2007年6月20日 (水) 12時27分
A7
6時間くらいです。たまに3時まで仕事やブログをしていると、減りますが、そのときは昼寝してます。
Q8
会社法508条による清算結了会社に対する帳簿閲覧請求の可否について質問があります。
会社存続中の閲覧請求権に関する会社法433条に相当する規定が清算結了後にはないことからすれば、会社法は清算結了会社に対する閲覧請求を一切否定する趣旨なのでしょうか?それとも清算結了後の資料保存義務を定めた508条を根拠に閲覧請求することは可能でしょうか?
この点について、会社法成立前の判例(最判H16・10・4)は、旧商法429条に基づく閲覧請求を否定していますが、この判断は会社法成立後においても変わらないのでしょうか?
A8
閲覧請求はできないと考えるべきでしょう。ただし、訴訟において文書提出命令の対象になる場合はあります。
Q9
ロー卒業生です。
大手渉外事務所に対する就職活動について質問させてください。
先生が勤められているTMIや外資系を含めて大手渉外事務所は、ロー卒業生を採用するにあたって、どの点を見ているのでしょうか。たとえば、東大の若手(現役ストレートで受かった人など)が主として採用ターゲットであるという噂をよく聞きますが、これは本当でしょうか(統計的にそうだとかなど)。これに対して、年齢が高くなったり(30歳前後など)、非東大ローであったりする場合には、就職するのはより難しくなってくるのでしょうか。
できれば、採用の建前ではなく、本音を聞かせてください。
投稿 OCM | 2007年6月20日 (水) 23時29分
A9
私もTMIに入ったばかりで、詳しいことはわかりません。7月から始まる事務所説明 会では、私のスピーチも予定されているので、それまでに調べておきます。
私は、事務所説明会であろうとなんだろうと、いつも本音でしゃべりますので、聞きたいことがあれば、今のうちに質問しておいてください。
私が、今のところ唯一わかるのは、TMIは、東大もいますが、東大以外がすごく多いですね。他の大手渉外事務所よりも、東大以外大学、特に私大の比率は高いと思います。その証拠にTMIのパートナーの経歴をご覧ください(http://www.tmi.gr.jp/staff/index.html#partner)。
個人的には、いろいろな大学出資者がいる方が梁山泊みたいで好きです。
Q10
合併契約等を締結する際、取締役会決議が必要であるとの直接的な規定が会社法、会社法施行規則、会社計算規則に見当たりませんが、
代表取締役が取締役会決議を経ないまま、合併契約の締結について他社と合意し株主総会に合併の議案を提出し、株主総会決議により承認を受けることは合法なのでしょうか?
投稿 たかお | 2007年6月20日 (水) 23時45分
A10
取締役会設置会社では、業務執行の意思決定は取締役会で行うのが原則ですから、委任なきかぎり、代表取締役が合併契約を締結することはできません。
Q11
清算株式会社は、かつて取締役会設置会社であっても、監査役会設置会社又は定款の定めがない限り、清算人会設置会社とはなりませんが、これはなぜなのでしょうか?
取締役は原則として清算人になることからすると、取締役会が清算人会になってもおかしくないように思うのですが。
投稿 リアル初心者 | 2007年6月21日 (木) 01時54分
A11
清算人会設置会社にすると、清算人を3人以上置かなければいけないとか、面倒くさいからです。
Q12
NB onlineから来ました。大変楽しみにしています。
勉強は嫌いではないですが、机に向かって何時間も、というのは苦手でした。
脱時空勉強術は、昨今の日本人の勉強術に対しての発想の転換だと感じます。
兎角競争社会は「ダークサイド」を助長しているように感じますが(これを私は、陰陽道でいう、「妖怪に取り憑かれている」と解釈してます)、何事も「楽しさ」がないと、長続きはしないのだと、最近では思うようになっています。
今は個人事業主ですが、今年中には株式会社設立を目指しています。
ま、何にも無いところから始めているので、大変ですが気楽です。
これから、ちょくちょくお邪魔させていただきます!
投稿 Ogawa | 2007年6月21日 (木) 08時50分
A12
ありがとうございます。最近は、会社法の話ばかりしていて、ブログがマンネリ化しているようなので、Ogawaさんのように脱時空勉強術経由で訪れる方がいっらしゃると刺激があってうれしいかぎりです。
Q13
いわゆる3月決算の会社で、期末配当の基準日を3月末とする定款の定めのある会社が、100%子会社を吸収合併(4月1日効力発生)したのですが、当該子会社が親会社株式を保有しておりましたので、自己株式を取得することとなりました。今回親会社において剰余金の配当を行おうと思っております。3月末日時点では子会社が株主となっておりますが、剰余金配当の効力発生時には自己株式となっていますので、当然に配当できない(会453)と考えてよいと思うのですが、いかがでしょうか。
投稿 博多っ子 | 2007年6月21日 (木) 11時07分
A13
配当できません。
Q14
会社法も施行から1年がすぎて、会社法に関する書籍は、学者の基本書も含めて、だいたい出揃ったと思います。
実は、監査役から、監査役が就任に際して、読んで置くべき本を推薦してほしいと言われておりまして、候補となる本をご教示いただけましたら幸いです。
ちなみに、「会社法マスター115講座」は、大変に重宝しておりますので、これに加えて、内部統制関係、会計監査関係の本なども含めて推薦しようかと考えています。
お忙しいところ、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
PS:「会社法マスター115講座」に事業報告の記載があると助かります。第2版での検討をお願いいたします。
投稿 anton | 2007年6月22日 (金) 10時26分
A14
法制審の委員で、私も大変お世話になった諸石光熈弁護士の「危機管理役員手控帖(日本監査役協会)」はおもしろくてためになります。
Q15
100問の失念株について質問させてください。
・・・株主の割り当てを受ける権利は、新株予約権と異なり、『制度上、株主しか行使することが出来ない』・・・との100問の記載の『 』部分は、204条4項で「株主」が「申し込みをしない時・・・は権利を失う」という部分を指しているのでしょうか?
もし違えば、その制度がどこに記載されているのか教えてください。
宜しくお願い致します。
投稿 択一通りました | 2007年6月22日 (金) 15時04分
A15
そのとおりです。
Q16
発起設立の場合に、設立時の取締役についての報酬決定に関する規定が見つかりませんが、これは、発起人が定款で定めることを前提としているのでしょうか。
(361条1項は、会社成立後を前提としているようですが。)
この場合には、発起人=株主=設立時役員の関係がおおむね成り立つので、お手盛りの危険が少ないから、という理解でよろしいでしょうか。
投稿 紫 | 2007年6月22日 (金) 22時34分
A16
発起人が定款で定めることも可能でしょう。
Q16
この度、新株予約権についてご質問したいことがあり、はじめてコメントさせていただきます。
すべて非公開の譲渡制限会社の前提です。
基本的な質問だと思いますが、よろしくお願いいたします。
会社法施行前では、ストックオプションを発行する場合、株主総会の特別決議で「枠」を設定しておき、その枠の中で取締役会決議に基づきストックオプションを発行でき、各取締役会決議ごとに「第1回新株予約権」、「第2回新株予約権」といった具合に、それぞれの内容を定めていく形が一般的だったと思います。
しかし、会社法では、株主総会特別決議で「新株予約権の割当日」を決定する必要がありますので、従前と同じように「枠」を決めておいて、取締役会決議で複数回に分けて割当てしていく、というのはできないと思うのですが、いかがでしょうか?
A16
一定の募集事項については、総会で取締役会に委任することはできます。
割当は、取締役会が決定します(243条2項)。
Q17
登記については、「予約権の発行」を登記すると規定されていますので、非公開会社であれば、上記株主総会ごとに「割当て・申込」があった分だけを登記すればよいと思うのですが、正しいでしょうか?
例えば、株主総会で「200個の新株予約権を発行する」決議をしたが、取締役役会による割当・割当者の申込みが100個分しかなされなかったときは、100個の新株予約権が発行されるので、その登記をする。
そのとき、発行されなかった100個については、割当日までに割当てるべき人が決まらなければ、「枠」としては残らないので、そのまま消滅する(「消滅」という表現はふさわしくないかもしれませんが)。
この場合、新株予約権の登記は、100個の新株予約権として登記される、と思うのですが、考え方は正しいでしょうか?
投稿 トライアゲイン | 2007年6月23日 (土) 17時25分
A17
質問の前提が違っちゃいましたけど、概ねそうです。
Q18
葉玉先生、取締役の報酬につきお教えください。
事業報告における取締役等に対する報酬等の総額の開示(会社法施行規則119条2号、121条4号)に関しての質問です。従来、商法施行規則に基づき附属明細書で役員報酬の額を開示していました。取締役xxx円、監査役xxx円、そして摘要欄に「平成XX年X月X日の株主総会に基づき取締役は年xxx円以内、監査役は年xxx円以内」と記載していました。このような記載により容易に限度枠を超過していないことの確認を行うことができるような仕組みとなっておりました。
会社法施行規則では総額の記載をしますが、事業年度中の株主総会以前に退任した者は記載対象とされておりません。従って株主総会から授権された支給枠との間に食い違いの生ずる可能性があるように思われます。ということは、支給限度枠の追加的な記載は誤解を招くので記載しないことが適切な扱いとなるのでしょうか?
「1年につきXXX円以内という支給限度枠の定め」は、従来、事業年度開始日~事業年度末日の支給額についての定めとされていたと思いますが、会社法令の施行により定時総会から次の定時総会までの支給額の定めということに変容したのでしょうか?
投稿 3MK | 2007年6月25日 (月) 16時41分
A18
支給限度枠の定めは、各会社が総会で決めることですから、会社法の施行により、変容するようなものではないと思います。
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葉玉先生
こんにちは。以前、ブログ上でケアレスミスについて質問し、二回にも渡る指導をしていただいたものです。コメント一発目で書きたいためタイミングを見計らっては逃していましたが、やっとタイミングがあったので、一つ報告をしたいことがあり、書いています。
本年度、私は、択一に合格することができました。ケアレスミスに悩み苦しめられた刑法は、ケアレスミスどころかノーミスの20点でした。
本当に、葉玉先生には感謝をいくらしても足りないくらいです。本当に、ありがとうございます。一度も模試で合格推定点を超えず、絶望的状況のなかで、わらにもすがる思いで初めてこのブログに先生に質問したのですが、本当にあの時書き込んでいなかったら今年の論文のチャンスはなかったと思っています。
葉玉先生の、昨年の論文前の記事をとっておいてあるので、それを参考に、現在論文向けの勉強をしております。
ただ、私は、今年が論文初受験であるので、正直不安でいっぱいです。模試も受ける予定でいますが、当日の過ごし方(休憩時間の過ごしかたや、試験時間中の2時間での注意、心構え)といった、当日の立ち振る舞いについて、時間・コンディション管理のプロとしてアドバイスをいただけないでしょうか?
不安が漠然としたものであるので、質問も抽象的になってしまってすいません。
最近は忙しくてこのブログもゆっくり読めていませんが、論文後の楽しみとしてとっておきたいと思います。今日の記事は読んだのですが、やはり、はやく弁護士になりたいなと思いました。
いつもありがとうございます。よろしくお願いします。
投稿: hk | 2007年6月26日 (火) 01時43分
葉玉先生、回答をありがとうございました。
さらに疑問が沸いたので質問させてください。
清算株式会社は、かつて取締役会設置会社であっても、監査役会設置会社又は定款の定めがない限り、清算人会設置会社とはならない理由は、
「清算人会設置会社にすると、清算人を3人以上置かなければいけないとか、面倒くさいから」
という先生のお答えでしたが、それでは、監査役会設置会社が清算人会の設置が義務付けられる理由はなぜなんでしょうか?面倒であることには変わりがないわけですから、なにがしら理由があると思うのですが…
度々ですみません。よろしくお願いします。
投稿: リアル初心者 | 2007年6月26日 (火) 03時22分
葉玉先生、Q1見せ金における資本金とQ18取締役の報酬のご回答ありがとうございました。自分でももう一度よく考えてみます。
投稿: 3MK | 2007年6月26日 (火) 09時03分
葉玉師匠、お忙しい中コメントありがとうございました。
なるほど・・・営利法人としての目的は、利益を上げてかつ分配するという「ポンプ的な目的」であり、定款所定の目的は、定款に設定しつつも「目的達成に必要となる範囲に開く」という「パラソル的な目的」である・・・と理解しなければならないとすると・・・
100問の67の第一段落については、
「会社は、出資者である株主や社員が出資した財産を運用して、その得た利益を株主や社員に分配するコトを目的とするという意味で、(そのポンプ的目的の範囲において)営利法人であり、会社は、定款所定の目的の達成に必要となる(そのパラソル的目的の)範囲内においてて権利能力を持っている。」
と、書き換え可能でしょうか?
また、コメントいただけるとありがたいです。
PS.
ビジネス・ブレイクスルー大学院大学の講義を、受けさせていただきました。
内部統制についてちょうど考え込んでいた(特にモニタリングについて)ので、非常に参考になりました♪
しかし・・・こんなに良い講義を、無料で公開してしまってイイのでしようか?
葉玉師匠の講義は、非常に昔に受けただけですが、相変わらず分かりやすくて・・・確かに、今回はギャグは入ってませんでしたが・・・(笑)
投稿: 至誠丸 | 2007年6月26日 (火) 12時12分
葉玉先生
いつもありがとうございます!
株式交換時の株式交換完全子会社に対する反対株主の株式買取請求(会社法第785条第5項)について質問させてください。
反対株主が、事前「通知」と総会における「反対」を行い、適法に株式買取請求権を行使した場合、効力発生日に株式譲渡の効力が生じます(会社法第786条第5項)。
この効力発生の効果は、当該反対株主の株式交換完全子会社に対する債権(価格は協議又は裁判所の決定)、と株主たる地位の移転(自己株取得)であると考えられます。
【質問1】
かかる株主たる地位は株式交換完全子会社に移転したと同時に、株式交換完全親会社株式に変わると理解して問題ありませんでしょうか。
「新・会社法 千問の道標」682頁 Q917の回答では、「当該請求をした完全子会社の株主が有する株式は、その効力発生日に完全子会社を経て完全親会社に移転することとなる。」という表現がありましたので、「完全親会社に移転する」の意味がわからず、少し混乱した次第であります。株式交換の場合は、上のような理解でよいのですよね。
【質問2】
協議不成立で、申立てもなく、買取請求が撤回された場合は、株式交換完全子会社は、原状回復として、当該反対株主請求をした者に株式交換完全親会社株式(株式交換完全子会社株式に代えて交付された株式)を返せばよいのですよね。
これも、「新・会社法 千問の道標」682頁 Q917の回答で、「通常は、株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うこととなるものと解される」とあり、「株式の代金相当額の金銭を返還する」の意味がわからず、混乱しまくった次第であります。
すいませんが、宜しくお願いいたします。
投稿: ぞう | 2007年6月26日 (火) 17時21分
葉玉先生,こんにちは。
僕は今大学4年生で,今年ロースクールを受験します。
適性試験も終わり,とりあえず目標ラインはクリアできました。
そして,そろそろ自分の志望校を絞っていこうかと思っています。
今のところ,一橋・京都を目標に設定していますが,両校とも人気が非常に高く,現在通っている大学よりも,予備校が予想する難易度は数段上です。
一方,僕はいろいろな事情で,浪人は避けたいという気持ちが大きく,なかなか絞ることができません。
どのロースクールを受けても確実に合格できる保証はないとわかっていても,やはりネームバリューや過去の志望者数を見ると,ひるんでしまいます。
そこで,受験するロースクールを選ぶにあたって,どのような視点から選択すればいいのでしょうか?
よろしくお願いします。
投稿: いなかっぺ | 2007年6月26日 (火) 23時11分
先程の株式交換時の株式交換完全子会社に対する反対株主の株式買取請求(会社法第785条第5項)についての質問の補足です。
「新・会社法 千問の道標」682頁 Q917の回答で、会社法では、株式交換・株式移転の完全子会社における株式買取請求の対象となる株式に対しては、完全親会社の株式が割り当てられないことを明らかにするという記載があり、会社法第786条第5項が引用されているのですが、どこをどう読めば、このように読めるのかわかりません。
効力発生日に、完全子会社の自己株式の取得と、その完全子会社の自己株式に対する完全親会社株式の割当が、同時に生じると考えた方が合理的ですし、条文的にもそのようにしか読めないように思うのですが・・・
会社法第768条第1項第2号の「株式交換完全子会社の株主」には、株式交換完全子会社は含まれないからという説明は、条文解釈上一応合理的ですが、その場合、なぜ、株式交換完全子会社が保有している自己株式が何の対価もなく株式交換完全親会社に移転するのか、不明です。
投稿: ぞう | 2007年6月27日 (水) 10時25分
すいません。まとまりきらないまま質問して、申し訳ないです。
株式交換時の株式交換完全子会社に対する反対株主の株式買取請求(会社法第785条第5項)についての質問の補足の補足です。
先程、「会社法第768条第1項第2号の「株式交換完全子会社の株主」には、株式交換完全子会社は含まれないからという説明は、条文解釈上一応合理的ですが、」と書いてしまいましたが、
会社法第749条第1項第3号や会社法第753条第1項第7号で、
「吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社を除く。)」
や
「新設合併消滅株式会社の株主(新設合併消滅株式会社を除く。)」
と記載されていることからすると、
会社法第768条第1項第3号に
「株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親株式会社を除く。)」
とあり、
「株式交換完全子会社の株主(株式交換完全子会社及び株式交換完全親株式会社を除く。)」
となっていないことからすると、
株式交換完全子会社の保有する自己株式に株式交換完全親株式会社の株式が割り当てられると解釈する方が素直だと考えます。
投稿: ぞう | 2007年6月27日 (水) 10時54分
いつも楽しく記事を読ませていただいております。
さっそく質問です。
会社法により、現物配当が許され(454条3項)、さらには456条のような規定も設けられ、株主間で不平等が生じないように法は手当てをしています。
すなわち、454条3項で株主平等原則が規定されていますが、現物配当の場合は別の規定により手当が既になされているという理解でよろしいのでしょうか?
また以前あった、株主優待制度は平等原則に反さないか、という論点(程度が軽微で、合理的必要性があれば許されるという…)は、会社法になり消滅したのでしょうか?なぜなら、株主優待制度は現物配当にあたり、456条等で処理されると思われるからです。
お忙しいと思いますが、回答をお願いいたします。
投稿: かず | 2007年6月28日 (木) 13時03分
葉玉先生、大好きです。
これからもお体に気をつけて、ブログ続けてください。
ブログも日経の連載もとても楽しみにしています。
投稿: YUKIKO | 2007年6月28日 (木) 21時56分
葉玉先生
いつも拝見しております。
ロースクール在学中の者です。
お忙しいところ恐縮ですが、質問させてください。
100問第1版 P227 審司法試験プレテストの問題について
3)議長は、現場株主の修正動議について、会社側議案に賛成多数を得ただけで、動議を否決したものと宣言してよいか。
見解:会社側議案への賛成多数は、修正動議の否決と解してよい。
理由:一般的には、株主が提案する剰余金の配当に関する議案は、会社側提案と矛盾する場合と、会社側提案を前提としつつ剰余金の配当の積上げを提案する場合がある。前者であれば会社側の提案の可決は、当然修正動議の否決になり、後者であれば会社側提案の可決の後に、株主提案の採決を採らなければならない。
とあります。しかし、前者と後者の区別が今ひとつ理解できません。
具体的に「会社側提案を前提としつつ剰余金の配当の積上げを提案する場合」とはいかなる場合でしょうか。
周囲の人間で議論を重ねていますが、今ひとつわかりません。
何とぞ宜しくお願いいたします。
投稿: フジ | 2007年6月30日 (土) 22時05分
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投稿: MAXWELLJOY21 | 2012年4月 5日 (木) 18時13分