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2007年6月29日 (金)

ブルドック東京地裁決定

スチール vs ブルドックの東京地裁決定がありました。

前回、乱用的買収者概念の要否(http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_22e4.html)の記事の中でも、大変興味深いという話をしましたが、決定の内容を見ると、今後の買収防衛策の議論に欠かすことができない「素晴らしい決定」が出たと思います。

 何が素晴らしいかというと、法律論を玉虫色にして事実認定や保全の必要性等で誤魔化すようなことをせず、正面からしっかりとした法律論を展開している点です。

 その法律論の中身については、今後賛否両論が出るとは思いますし、誰が何をいうか、なんとなく予想もつきますが、新株予約権無償割当て型買収防衛策という新しい分野の問題について、裁判所が、今回の決定のように様々な論点について丁寧に解釈を示してくれると、議論が深まり、実務にも大変有益です。

 裁判所が、新しい分野で法律解釈を示すことは、端から見るほど簡単なことではないと分かっているだけに、まずその点において、今回の決定を下した裁判官三名に心から敬意を表します。

  次に、決定の内容について、私なりの解説を加えたいと思います。
 決定が出た日に書いているような解説なので短慮の部分が多いと思いますが、書くことによって自分なりに整理したいこともあるので、思い切って書かせていただきます。

 今回の決定は一言で言えば
 権限分配論を前提とするこれまでの裁判例を踏まえ、かつ、取締役会や総会の普通決議で買収防衛策を導入した会社に、なるべく影響を及ぼさないような注意深い表現をとりながら、株主総会決定型の防衛策の適法性の指針を示したバランスの取れた決定
だということができるでしょう。

以下、論点ごとに見てみます。

1 新株予約権の無償割当てについても、それが株主の地位に実質的変動を及ぼす場合には、247条類推適用が認められる。
 【解説】
 「株主の地位に実質的変動を及ぼす」という要件を前提に、新株予約権無償割当てに247条類推適用を認めることを正面から示した初めての裁判例だと思います。
 千問の道標にも書きましたが、私もこの見解に賛成です。

2 新株予約権無償割当てが、株主平等の原則に違反するか
(1)新株予約権の差別的行使条件・取得条項は、第三者割当ての場合には直ちに株主平等原則に違反するということはできないが、無償割当ての場合には、株主平等の原則の趣旨が及ぶ。
 【解説】
 従来、新株予約権の差別的行使条件等は株主平等の原則に反しないということは言われていましたが、「新株予約権の無償割当ての場合には、株主平等の原則の趣旨が及ぶ」ということを明確に言ったのは、この裁判例が初めてだと思います。
 新株予約権の無償割当てが、株主の保有株式数に応じて行われるものであり、新株予約権の内容によって、取り扱いの不平等が生ずることを考えれば、株主平等の原則の「趣旨」が及ぶことは当然であると思います。

(2) 株主平等の原則には、例外的な取り扱いを認められており、差別的な行使条件・条件であっても、その例外に該当し許容される場合がある
 差別的行使条件・取得条項のために特定の株主が持株比率の低下という不利益を受けるとしても、『少なくとも』
 ①株主総会の特別決議に基づき当該新株予約権無償割当てが行われた場合であって、
 ②当該株主の有する株式の数に応じて適正な対価が交付され、株主としての経済的利益が平等に確保されているとき
には、当該新株予約権無償割当ては、株主平等原則や会社法278条2項の規定に違反するものではない
(理由)
①会社法では、持株比率の維持の利益は、株式の経済的価値の平等より劣後すること
②会社法では、現金合併等により、経済的利益が確保される限り、株主総会の特別決議によって、少数株主の地位を強制的に失わせることを許容していること
③会社法は、譲渡制限株式の買取りや特定の株主からの自己株式取得等、支配株主等一部の株主のみが利益を受けるおそれがあり、株主平等の原則の上から株主の利害に関わる事項も株主総会の特別決議の下に許容していること
【解説】
  「特別決議+適正対価」なら、株主平等の原則の例外として、許容されるということを示した初めての判断です。
 「少なくとも」というところがミソで、「特別決議じゃなかったらどうか」「適正対価じゃなかったらどうか」という議論を留保しつつ、少なくとも本件は、株主平等の原則に違反しないと言っているのだと思います。
 理由部分については、前回の記事や大杉先生と議論になった防衛策と総会決議(http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_31d8.html)を参考にしてください。
 私も、「少なくとも」、今回の結論と理由には賛成です。

 留保部分をどう考えるかは、今後、防衛策を導入した会社が検討すべきポイントです。
 発動条件を軽くして、今回の決定よりも発動のバーを下げてくる会社が出てくれば、その度に裁判となり、どこかの会社が、バーを下げすぎて裁判でコケる(差し止められる)
ということになれば、そこで、発動のための最低限の要件がはっきりします。
 このような防衛策のリンボーダンスが始まるのか、それとも、今回の決定(抗告審で維持されることが前提ですが)に沿って、かなり厳格な要件のもと発動して適法性を確保する傾向が強まるのか、注目です。

3 新株予約権無償割当てが著しく不公正な方法により行われる場合に該当するか
(1)取締役会が、現経営陣の経営支配権を維持・確保することを主要な目的として、新株予約権の発行をした場合には、原則として不公正な発行として差止請求が認められるが、敵対的買収者による経営支配権の取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情を会社が主張、疎明した場合には、例外的に、手段の相当性が認められる限り、株主構成を変更すること自体を主要な目的とする新株予約権であっても差し止められない。

【解説】
 この部分は、ライブドアvsニッポン放送事件の決定等を踏まえたものです。
 「会社が主張、疎明」「手段の相当性が認められる限り」というあたりが、会社としては悩ましいのですが、妥当な解釈だと思います。

(2)本件新株予約権無償割当ての実施は、株主総会の権限に基づきされているから、(1)の法理は、本件について妥当しない。
【解説】
 本決定の中でも、非常に重要な部分だと思います。
 以前の記事で述べたとおり、(1)の法理は、権限分配論をベースにしたもので、取締役会決議による発動の場合にしか適用されないというのは、まさにそのとおりだと思います。
 前回の記事で「乱用的買収者じゃないかぎり、総会の特別決議でも持株比率を下げることができないというルールは、会社法にはないのではないか」と述べたのも、この決定と同趣旨です。

 なお、私がこの部分について、実質的スクイーズアウトが可能となった点を正当化理由としてあげたところ、いとう Diary(http://blog.livedoor.jp/assam_uva/archives/50856641.html)で「
特に全部取得条項付種類株式を使えばスクイーズアウトをすることができるということを錦の御旗に掲げる理屈に問題があるということは、たとえば昨年の私法学会の報告で藤田先生が指摘されていたところだ(藤田友敬「組織再編」商事法務1775号55頁、56-58頁)。」
とのご批判をいただきました。

 ただ、前回の記事や大杉先生との議論を見ていただければわかるとおり、私も、

「なんでもできるわけではなく、不公正発行又は不公正決議になる場合がある」ことは前提としております。
 私が主張しているのは、

株主総会決議で発動する場合に「乱用的買収者しか駄目」というのでは狭すぎる

という点ですので、その点をご理解いただければ幸いです。

 話を本決定に戻しますと、この(1)から(3)までの部分については、

取締役会の決議のみで買収防衛策を導入し、取締役会の決議のみで発動しようと計画している会社

については、ちょっとショックかもしれません。そういう会社は、防衛策の再チェックが必要不可欠です。

(4)誰を経営者として、どのような事業構成の方針で会社を経営させるかは、株主総会における資本多数決によって決すべき事柄であるから、定款に定められた株主総会の権限行使として特別決議に基づき実施された本件新株予約権無償割当てについて、その目的が経営支配権の取得を防止することにあることをもって、直ちに株主総会がその権限を濫用したということはできない。
【解説】
 結論は妥当だと思いますが、株主総会の普通決議で防衛策を発動しようと考えている会社にとっては、なかなか悩ましい部分です。
 株主平等の原則のところでは入っていた「少なくとも」という文言がここには無い、と言う細かいことはともかく
 「資本多数決によって決すべき事柄であるから」=「定款に定められた株主総会の権限行使として特別決議に基づき実施」
なのか、
 「資本多数決によって決すべき事柄であるから」⊇「定款に定められた株主総会の権限行使として特別決議に基づき実施」
なのか、気になります。

(5)株主総会としては、買収者による経営支配権の取得が企業価値を損なうおそれがあると判断する場合には、株主全体の利益保護の観点から相当な対抗手段を採ることが許容され、その対抗手段の必要性の判断については、原則として、株主総会に委ねられるべきであり、当該株主総会の判断が明らかに合理性を欠く場合に限って、対抗手段の必要性が否定される。
【解説】
 大変、興味深い部分です。
 以前から、買収により「企業価値を損なうおそれがあるのかどうか」(=対抗手段の必要性があるかどうか)を裁判所が判断するのは、保全手続では難しいという指摘がされていました。
 本決定では、対抗手段の必要性については、株主総会の判断を尊重することを原則としつつ(=適法)、その判断が明らかに合理性を欠く場合に限って、必要性が否定される(=違法)というルールでバランスを採っています。
 結論は、非常に良い線だと思いますが、この規範を、理論的にどう位置づけるかは、少し考えたいところです。
 なお、ここで裁判所は、「特定の買収者による経営支配権の取得を妨げるという目的に必要な範囲を超えて、当該買収者又はその他の株主の利益を損なうことは許されない。」とも判示しており、これが、株主総会の決議をもってしても、経済的打撃を与える防衛策を許さない趣旨かどうかは、今後の議論を呼びそうですが、その基準としては、次の(8)で示されています。

(8)対抗手段の相当性については、株主総会が当該対抗手段を採るに至った経営、当該対抗手段が既存株主に与える不利益の有無及び程度、当該対抗手段が当該買収に及ぼす阻害効果等を総合的に考慮して判断すべきである。
【解説】
 株主総会の決議によっても許されない防衛策を判断するための基準を示したものです。
 おおむね、私が、以前、http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_38aa.htmlでイメージしていたものに近いので、親近感があります。
 この表現は、今後論文を書くときには、定番になりそうな予感がします。

 以上、スチールvsブルドックの東京地裁決定をざっと眺めて、事実認定にかかわらない法律論の部分を抜き書きして、解説してみました。
 個人的には、自分の考えていた線とほぼ同じなので、この決定が高裁でどうなるか、一層、興味が沸いてきました。

 なお、決定の内容は、適当に要約しながら、書いたので、不正確な部分があるかもしれません。
 また、解説も、流し読みして脊髄反射的に書いたものですので、あとで「おい、違うぞ」と怒られるかもしれませんが、速報版ということでご容赦ください。

 最後に、全然関係ありませんが、日経ビジネスオンラインで
 脱時空勉強術 第4回 効率的勉強のための情報3分法
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070622/128159/
がアップされたので、勉強法に興味があるかたはできれば、こちらも覗いてみてください。

東京地裁の決定がinterestingすぎて、すっかり時間をつかってしまったので、本日は、入門編・質問コーナーはお休みさせていただきます。

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2007年6月26日 (火)

乱用的買収者概念の要否

株主総会の集中日が近づき、私も、何かと忙しくしています。

それにもかかわらず、弁護士としての日常業務の他に、雑誌原稿の締め切りが重なり、しかも、
 脱時空勉強術第3回 暗記を確実にする2×4法
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070613/127289/
を書いたりしたので、ちょっとオーバーワーク気味です。
そのため、先週はブログが1回しか更新できず、すいませんでした。

ところで、以前、ご紹介したビジネスブレイクスルー大学院大学で

 「会社法施行1年を迎えて~実務の到達点と今後の課題」

という私の講座が、なんと
    無料
で公開されました(http://cls.ohmae.ac.jp/)。
 簡単な登録をすれば、誰でも見ることができます。

 内容は、会社法の改正点をかいつまんで説明した上で、内部統制と合併等対価の柔軟化については、それなりに詳しく説明したものです。
 また、第4回の講義では、皆さんが、あまり意識したことがないであろう「今後の立法課題」について、現在の認識と立法上の問題点について触れていますので、結構、おもしろいと思います。
 4回の講座で合計1時間くらいです。
 
 この無料講座は、「買収防衛策の設計とその死角~違法な買収防衛策とは何か~」という3時間の講座の後に、収録したため、若干、声がかすれ気味ですし、1時間の中に、いろんなものを凝縮しているので、ギャグを言う余裕がなかったのが残念ですが、無料にしては、情報量が多いので、見ても損はないと思います(会社法に詳しい人は、第4回だけでもいいかも)。

 「買収防衛策の設計とその死角」の方は有料です。学生さんにはきついかもしれませんが、一般の企業法務セミナー並の受講料です。

 「買収防衛策の弱点をあからさまに説明していいのかなあ」
などと躊躇していたにもかかわらず、アシスタントの田中未花さんの美しさに気をとられ、ついつい、しゃべってはいけない弱点までしゃべってしまったという噂があるセミナーです。
 買収防衛策を作っている人と、買収防衛策を破りたい人に見ていただいて、
  「その作戦で来たら、俺はこうやって逆襲する」
等という議論のきっかけになれたら、幸いです。

 防衛策と言えば、ブルドックの総会は、新株予約権の無償割当てが圧倒的多数で可決されました。
 いよいよ興味深い司法判断が下されることになりそうです。

 総会のあった日曜日に、私のところにマスコミが数社コメントを求めにきたのですが、記者の皆さんは、ほとんど全員
      「株主の8割が賛成したことは、司法判断に影響を与えますか」
という質問をしてきました。

 私は
        「8割も防衛に賛成したことは、裁判に有利に働くはずです」というコメントが欲しいんだろうなあ
      と思いましたが、法律家として
      特別決議を取ったことには、法的意味はあるけど
         それを超えて、何割とっても、あまり法的には意味がない
と思っているので、率直に、そう答えました。

 なんとなく、記者さんは、少し残念そうな感じでした。
 ただ、景気づけで理屈のない話はできないんですよね。

 証拠も知らないのに、具体的事件に対する裁判の予測などできないので、私は、いつも、いろいろな前提条件をつけて、一般論としてコメントしているのですが、新聞等に載るときは、どうしても紙面の都合で端的な表現になりがちです。

 それが嫌だから、マスコミの取材には一切応じないというのも見識だと思います。

 しかし、私は、国民の皆さんがこうした紛争をきっかけに、敵対的買収について理解を深めることは、いろいろな意味でプラスになるので、私も微力ながら、その理解を助けるお手伝いをしたいと考えていますし、ある行為にプラスとマイナスの両面があるときは、他人に迷惑をかけるようなマイナスでない限り、その行為を行うというのが私のポリシーなので、マスコミの取材には極力応じることにしています。

 とはいえ、取材の中で困るのは、記者さんの質問に対する回答が、すべて裁判の勝ち負けに結びつけて考えられることです。

 たとえば、私が
  特別決議を取れば、一部の株主の持株比率が減少するとしても、必ずしも株主平等の原則に違反しないと思います。
と答えると、記者さんは
    ということは、裁判所は、スティールを乱用的な買収者と認めるということですか
等と聞いてきます。

 このブログをお読みの方は、このすれ違いにお気づきになると思うのですが
   Xの主張する法律上の見解が正しい
ということと
      Yの主張する事実上の主張が間違い
ということは、次元の異なる話です。

 私は、以前の記事でも書きましたが
   株主総会導入型の防衛策においては、
   買収者が、乱用的買収者かどうかを争点にしない方がいいのではないか
と考えています。

 大事なのは、会社法では
   株主総会の特別決議により、実質的なスクイーズアウトが可能になっている
ということだと思うのです。
 
 いくつかの会社が、全部取得条項付種類株式等の制度を用いて、少数株主を実質的にスクイーズアウトしましたが、この場合には
  スクイーズアウトは、少数株主が乱用的買収者でなければ、違法となる
という意見の人はいませんでした。

 少数株主の性質が正当化根拠になるのではなく、株主総会の特別決議自体が正当化根拠となるのです(不公正決議とされる余地はありますが)

 買収者に適正な対価を与えた上で、持株比率を低下させるライツプランは、実質的には「一部スクイーズアウト」です。
 買収者は、単独では大株主なので、通常のスクイーズアウトとは異なる点もありますが、多数決により、少数派株主の持株比率を下げるという点では共通します。

 ですから、私は、買収者が、乱用的買収者かどうかは、実は、あまり本質的な問題ではなく、少数派株主の持株比率を下げることを正当化することができる多数決の要件は何かという方が重要だと思うのです。

 もちろん、株主総会の決議取消原因である「著しく不当」かどうかを判断する上で、
  「僕は、乱用的買収者じゃないのに、持株比率を下げるような決議をされたから、その決議は著しく不当だ」
と主張をすることは、理論的にはありうると思いますが、株式の有利発行、全部取得条項付種類株式の取得、株式の併合など総会の特別決議でできることを見る限り、
   乱用的買収者じゃないかぎり、総会の特別決議でも持株比率を下げることができない
というルールは、会社法にはないのではないか、と思っています。

 買収防衛策について書いていたら、思わず長くなりました。
 睡眠時間確保のため、「株式譲渡自由の原則」は今回はお休みします。
 

(質問コーナー)
Q1
 資本金の変更登記はあるが払込みがまったくない場合(増資額の全額が見せ金)であっても、次の「1、発行の実態が存在しない場合」には該当しないということになるのですね。2、の手続に従うことになり、払込がされたことになるわけではないが資本金減少の手続がされないかぎり資本金は1000万円のままということになるのですね。
<私の理解>
1、募集株式の発行の実態が存在しない場合--->無効の一般原則のほか新株発行等不存在確認の訴えの制度により処理---->資本金はずっーと300万円のまま。

2、募集株式の発行に法的瑕疵がある場合(上記1、の場合を除く)--->新株発行無効の訴えの制度により処理--->訴えが認められて無効となる場合を除けば新株発行は有効(提訴期間の経過により新株発行の有効が確定する場合を含め)---->資本金は1000万円(無効判決が確定した場合を含め)。資本金減少の手続がなされた場合のみ資本金は300万円に変更できる。
投稿 3MK | 2007年6月18日 (月) 10時20分
A1
3MKさんは、払込み・株式発行・資本金の関係が繋がりすぎているように思います。
まずは、その三者を切り離して考えた方がよいでしょう。
払込みが全くなくても、あったように見せかけて、株券を発行してしまえば、「不存在」ということができるかどうか微妙になります

それから、「見せ金」という言葉をどのような意味で使っているかによりますが、払込みが全くなければ、資本金は増えません。
したがって、本来、資本金減少の手続きを経なくても、そのままです。
ただし、資本金は、計算書類によって開示され、登記事項でもあります。
そのように開示された情報について、「あれは、間違いでした」と言って訂正していいかといえば、そうではなく、資本金が増加したような外形が生じた場合には、債権者保護手続きの規定を類推適用しなければならないと考えるべきでしょう。

Q2
新・会社法100問の、67問について質問があります。
第一段落を、
「会社は、出資者である株主や社員が出資した財産を運用して、その得た利益を株主や社員に分配するコトを目的とするという意味で、営利性を持っているし、その範囲において営利法人であり、その範囲における権利能力を持っている。」という風に、書き換え可能でしょうか?
そして、67問目は、この一文について、読者がイキイキと覚えられて、しかも、使いこなすコトが出来るように挿入されたような印象を受けます。
投稿 至誠丸 | 2007年6月18日 (月) 13時27分
A2
「その範囲における権利能力」というのは、ちょっとおかしいかもしれませんね。
権利能力は、事業の目的の範囲で限定されるものであり、利益分配という目的で限定されるものではありません。

Q3
会社法389条3項の報告が、解釈上、常に総会で報告しなければならないように読めるので、そうすると、先生のご回答と合わせると、会計監査限定監査役の会社は、少なくとも定時株主総会については報告の省略はできないということになるのでしょうか?(定時株主総会では、計算書類承認の件が必ずあるので、その議案について調査・報告が必要になると思われます。)

319条・320条による総会の省略は、会計監査限定の監査役にしている小さい会社にとって特に使い勝手がいい制度ですが、決議事項の省略はできても、389条3項があるが故に報告の省略はできないなら、結局、決議事項もあわせて現に総会を開催したほうが早いということになるのではないかと思うのですが・・・。
投稿 スケジューラー | 2007年6月18日 (月) 16時58分
A3
そうなんですよ。
会計監査限定監査役も少しは働いてもらわなければということでしょう。

Q4
会社法113条4項は,種類株式を発行している会社の場合にはどのように考えればよいのでしょうか。
投稿 ポケット | 2007年6月18日 (月) 20時45分
A4
すいませんが、「どのように考えれば・・」という質問の意味がよくわかりません。条文どおりだと思いますが。

Q5
直近のブログで、株式譲渡自由の原則が取り上げられており、「株式譲渡が株主の唯一の投下資本回収手段」「株主にとって、株式の譲渡が唯一の投下資本回収手段だから」という表現があります。
しかし、配当(減資+配当)や清算による残余財産分配も投下資本の回収として機能するはずで、あまり「唯一」「唯一」というのは、言いすぎなような気がするのですが、如何でしょうか。
「自分ひとりで出来る」投下資本の回収か、とも思いましたが、株式譲渡は買受人が必要ですし、「取締役会or取締役の意思決定」の必要ない投下資本の回収かとも思いましたが、解散・清算は、株主の意思で実行可能ですので、どちらも厳しそうです。
投稿 ぞう | 2007年6月18日 (月) 21時52分
A5
そうですね。会社の意思決定に左右されず、株主が投下資本を回収することができる唯一の手段という意味です。

Q6
葉玉先生、先日はご回答ありがとうございました。
(1)前回1点ご回答いただけなかったのですが、司法試験平成14年第1問の事例で、株主Xは、受けた損害について取締役に429条の責任を追及することはできるでしょうか。

あと、司法試験平成7年第1問の100問解答について質問です。
(2)いささか論点主義的な質問で恐縮ですが、本問で財産引受契約が成立後の会社に帰属するかを検討するに当たり、解答では、いわゆる同一性説の論証がありません。
これは、財産引受については明文(28条2号)で認められているので、論証の必要はないということでしょうか。

(3)また、もしそうだとすれば、同一性説の論証はいかなる場合に必要となるのでしょうか。
(例えば、会社の設立中に発起人が行った「会社の設立を直接の目的とする行為」や「会社の設立のために必要な行為」について、それらの効果が成立後の会社に帰属するかが問題となる場合には、論証すべきという理解でいいでしょうか。)

投稿 去年商法C(去年の「去年商法G」) | 2007年6月19日 (火) 02時12分
A6
(1)合併比率の算定の前提に虚偽があった場合等には、理論的には可能でしょうが、違法行為の認定が難しそうですね。本来、株式買取請求権で解決すべきところです。
(2)財産引受は、明文がありますから、単なる説明である同一性説を論じる必要はないように思います。書いてもよいですが。
(3)そうです。

Q7
葉玉先生 睡眠時間どれくらいなんですか?
投稿 かつ | 2007年6月20日 (水) 12時27分
A7
6時間くらいです。たまに3時まで仕事やブログをしていると、減りますが、そのときは昼寝してます。

Q8
会社法508条による清算結了会社に対する帳簿閲覧請求の可否について質問があります。
会社存続中の閲覧請求権に関する会社法433条に相当する規定が清算結了後にはないことからすれば、会社法は清算結了会社に対する閲覧請求を一切否定する趣旨なのでしょうか?それとも清算結了後の資料保存義務を定めた508条を根拠に閲覧請求することは可能でしょうか?
この点について、会社法成立前の判例(最判H16・10・4)は、旧商法429条に基づく閲覧請求を否定していますが、この判断は会社法成立後においても変わらないのでしょうか?
A8
閲覧請求はできないと考えるべきでしょう。ただし、訴訟において文書提出命令の対象になる場合はあります。

Q9
ロー卒業生です。
大手渉外事務所に対する就職活動について質問させてください。
先生が勤められているTMIや外資系を含めて大手渉外事務所は、ロー卒業生を採用するにあたって、どの点を見ているのでしょうか。たとえば、東大の若手(現役ストレートで受かった人など)が主として採用ターゲットであるという噂をよく聞きますが、これは本当でしょうか(統計的にそうだとかなど)。これに対して、年齢が高くなったり(30歳前後など)、非東大ローであったりする場合には、就職するのはより難しくなってくるのでしょうか。
できれば、採用の建前ではなく、本音を聞かせてください。
投稿 OCM | 2007年6月20日 (水) 23時29分
A9
 私もTMIに入ったばかりで、詳しいことはわかりません。7月から始まる事務所説明 会では、私のスピーチも予定されているので、それまでに調べておきます。
 私は、事務所説明会であろうとなんだろうと、いつも本音でしゃべりますので、聞きたいことがあれば、今のうちに質問しておいてください。
 私が、今のところ唯一わかるのは、TMIは、東大もいますが、東大以外がすごく多いですね。他の大手渉外事務所よりも、東大以外大学、特に私大の比率は高いと思います。その証拠にTMIのパートナーの経歴をご覧ください(http://www.tmi.gr.jp/staff/index.html#partner)。
 個人的には、いろいろな大学出資者がいる方が梁山泊みたいで好きです。

Q10
 合併契約等を締結する際、取締役会決議が必要であるとの直接的な規定が会社法、会社法施行規則、会社計算規則に見当たりませんが、
代表取締役が取締役会決議を経ないまま、合併契約の締結について他社と合意し株主総会に合併の議案を提出し、株主総会決議により承認を受けることは合法なのでしょうか?
投稿 たかお | 2007年6月20日 (水) 23時45分
A10
取締役会設置会社では、業務執行の意思決定は取締役会で行うのが原則ですから、委任なきかぎり、代表取締役が合併契約を締結することはできません。

Q11
清算株式会社は、かつて取締役会設置会社であっても、監査役会設置会社又は定款の定めがない限り、清算人会設置会社とはなりませんが、これはなぜなのでしょうか?
取締役は原則として清算人になることからすると、取締役会が清算人会になってもおかしくないように思うのですが。
投稿 リアル初心者 | 2007年6月21日 (木) 01時54分
A11
清算人会設置会社にすると、清算人を3人以上置かなければいけないとか、面倒くさいからです。

Q12

NB onlineから来ました。大変楽しみにしています。
勉強は嫌いではないですが、机に向かって何時間も、というのは苦手でした。
脱時空勉強術は、昨今の日本人の勉強術に対しての発想の転換だと感じます。

兎角競争社会は「ダークサイド」を助長しているように感じますが(これを私は、陰陽道でいう、「妖怪に取り憑かれている」と解釈してます)、何事も「楽しさ」がないと、長続きはしないのだと、最近では思うようになっています。

今は個人事業主ですが、今年中には株式会社設立を目指しています。

ま、何にも無いところから始めているので、大変ですが気楽です。
これから、ちょくちょくお邪魔させていただきます!

投稿 Ogawa | 2007年6月21日 (木) 08時50分
A12
ありがとうございます。最近は、会社法の話ばかりしていて、ブログがマンネリ化しているようなので、Ogawaさんのように脱時空勉強術経由で訪れる方がいっらしゃると刺激があってうれしいかぎりです。

Q13
いわゆる3月決算の会社で、期末配当の基準日を3月末とする定款の定めのある会社が、100%子会社を吸収合併(4月1日効力発生)したのですが、当該子会社が親会社株式を保有しておりましたので、自己株式を取得することとなりました。今回親会社において剰余金の配当を行おうと思っております。3月末日時点では子会社が株主となっておりますが、剰余金配当の効力発生時には自己株式となっていますので、当然に配当できない(会453)と考えてよいと思うのですが、いかがでしょうか。
投稿 博多っ子 | 2007年6月21日 (木) 11時07分
A13
配当できません。

Q14
会社法も施行から1年がすぎて、会社法に関する書籍は、学者の基本書も含めて、だいたい出揃ったと思います。
実は、監査役から、監査役が就任に際して、読んで置くべき本を推薦してほしいと言われておりまして、候補となる本をご教示いただけましたら幸いです。
ちなみに、「会社法マスター115講座」は、大変に重宝しておりますので、これに加えて、内部統制関係、会計監査関係の本なども含めて推薦しようかと考えています。
お忙しいところ、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
PS:「会社法マスター115講座」に事業報告の記載があると助かります。第2版での検討をお願いいたします。
投稿 anton | 2007年6月22日 (金) 10時26分
A14
法制審の委員で、私も大変お世話になった諸石光熈弁護士の「危機管理役員手控帖(日本監査役協会)」はおもしろくてためになります。

Q15
100問の失念株について質問させてください。
・・・株主の割り当てを受ける権利は、新株予約権と異なり、『制度上、株主しか行使することが出来ない』・・・との100問の記載の『 』部分は、204条4項で「株主」が「申し込みをしない時・・・は権利を失う」という部分を指しているのでしょうか?
もし違えば、その制度がどこに記載されているのか教えてください。
宜しくお願い致します。
投稿 択一通りました | 2007年6月22日 (金) 15時04分
A15
そのとおりです。

Q16
発起設立の場合に、設立時の取締役についての報酬決定に関する規定が見つかりませんが、これは、発起人が定款で定めることを前提としているのでしょうか。
(361条1項は、会社成立後を前提としているようですが。)

この場合には、発起人=株主=設立時役員の関係がおおむね成り立つので、お手盛りの危険が少ないから、という理解でよろしいでしょうか。
投稿 紫 | 2007年6月22日 (金) 22時34分
A16
発起人が定款で定めることも可能でしょう。

Q16
この度、新株予約権についてご質問したいことがあり、はじめてコメントさせていただきます。
すべて非公開の譲渡制限会社の前提です。
基本的な質問だと思いますが、よろしくお願いいたします。
会社法施行前では、ストックオプションを発行する場合、株主総会の特別決議で「枠」を設定しておき、その枠の中で取締役会決議に基づきストックオプションを発行でき、各取締役会決議ごとに「第1回新株予約権」、「第2回新株予約権」といった具合に、それぞれの内容を定めていく形が一般的だったと思います。
しかし、会社法では、株主総会特別決議で「新株予約権の割当日」を決定する必要がありますので、従前と同じように「枠」を決めておいて、取締役会決議で複数回に分けて割当てしていく、というのはできないと思うのですが、いかがでしょうか?
A16
一定の募集事項については、総会で取締役会に委任することはできます。
割当は、取締役会が決定します(243条2項)。

Q17
登記については、「予約権の発行」を登記すると規定されていますので、非公開会社であれば、上記株主総会ごとに「割当て・申込」があった分だけを登記すればよいと思うのですが、正しいでしょうか?
例えば、株主総会で「200個の新株予約権を発行する」決議をしたが、取締役役会による割当・割当者の申込みが100個分しかなされなかったときは、100個の新株予約権が発行されるので、その登記をする。
そのとき、発行されなかった100個については、割当日までに割当てるべき人が決まらなければ、「枠」としては残らないので、そのまま消滅する(「消滅」という表現はふさわしくないかもしれませんが)。
この場合、新株予約権の登記は、100個の新株予約権として登記される、と思うのですが、考え方は正しいでしょうか?
投稿 トライアゲイン | 2007年6月23日 (土) 17時25分
A17
質問の前提が違っちゃいましたけど、概ねそうです。

Q18
葉玉先生、取締役の報酬につきお教えください。
 事業報告における取締役等に対する報酬等の総額の開示(会社法施行規則119条2号、121条4号)に関しての質問です。従来、商法施行規則に基づき附属明細書で役員報酬の額を開示していました。取締役xxx円、監査役xxx円、そして摘要欄に「平成XX年X月X日の株主総会に基づき取締役は年xxx円以内、監査役は年xxx円以内」と記載していました。このような記載により容易に限度枠を超過していないことの確認を行うことができるような仕組みとなっておりました。
 会社法施行規則では総額の記載をしますが、事業年度中の株主総会以前に退任した者は記載対象とされておりません。従って株主総会から授権された支給枠との間に食い違いの生ずる可能性があるように思われます。ということは、支給限度枠の追加的な記載は誤解を招くので記載しないことが適切な扱いとなるのでしょうか?
 「1年につきXXX円以内という支給限度枠の定め」は、従来、事業年度開始日~事業年度末日の支給額についての定めとされていたと思いますが、会社法令の施行により定時総会から次の定時総会までの支給額の定めということに変容したのでしょうか?
投稿 3MK | 2007年6月25日 (月) 16時41分
A18
 支給限度枠の定めは、各会社が総会で決めることですから、会社法の施行により、変容するようなものではないと思います。

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2007年6月18日 (月)

【入門】株式譲渡自由の原則(3)

ちょっと古いニュースですが、先週木曜日、日経ビジネスオンラインに
脱時空勉強術 第2回
「10分で十分」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070606/126639/
が掲載されました。
今、一番楽しみながら書いている連載なので、一度ご覧いただけたら幸いです。
(でも、毎週すぐ締め切りが来てしまうのがつらい。)

それでは、入門編「株式譲渡自由の原則」の続きに行きましょう。
前回は、株式譲渡自由の原則が採用されている理由について
① 間接有限責任
 →払戻しの禁止
 →株式譲渡が株主の唯一の投下資本回収手段
という必要性

②  所有と経営の分離→株主の変動は、通常、会社運営に影響を与えない
という許容性
の2点から説明しました。

今日は、株式譲渡の自由に対する制限について、簡単に触れます。

会社は、株主が出資してお金儲けをするために設立するものなので、株主の投下資本回収手段を確保するというのは、ある意味、会社の生命線です。

他方、会社にとって、株式の譲渡は、議決権等を行使する人の交代を意味します。

 先ほど、株式譲渡自由の原則が採用されている理由の一つとして「株主の変動は、通常、会社運営に影響を与えない」ということをあげましたが、逆に言えば、株式の譲渡が、会社運営に影響を及ぼすような場合等には、譲渡が制限される場合があるのです。

具体的には、大きく分けて2分類。
1 法律による譲渡制限 = 利害関係者の保護のための強制的な制限
2 定款による譲渡制限 = 会社の自治による制限
があります。

まず、法律による制限には
(1) 株券発行前の譲渡の制限
(2)自己株式の処分における手続的制約
(3)自己株式の取得における制約
(3)子会社による親会社株式の取得制限
の4つがあります。
これらは、会社が、自己の利益を守るために、自主的に譲渡を制限したものではなく、
利害関係者の利益を保護するために、法律上、当然に、譲渡に一定の制約を課しているものです。 

例えば、
(1)株券発行前の譲渡の制限は、株券が発行される前に株式の譲渡を認めると、1つの権利に第三者対抗要件が複数存在することになり権利関係が錯綜するので、そうした錯綜を防止するため(会社や株式の取得者のため)。
 
(2) 自己株式の処分における手続き的制約は、業務執行者が不公正な自己株式の処分をしないようにするため(=株主のため)

(3) 自己株式の取得における制約は、資本維持のため(=債権者のため)

(4) 子会社による親会社株式の取得制限は、資本の空洞化を防止するため(=債権者のため)
に、それぞれ株式の譲渡を制限しており、それぞれ守るべき利害関係者がいます。

他方、定款による譲渡制限は
  会社にとって好ましくない者の参入を防止するため
多数派株主が定款で譲渡を制限したものです。
これは、自治的な制限であり、制限を設けるかどうかは、会社が決めることです。

このように株式譲渡自由の原則には、様々な理由から、5つほどの例外が設けられていますが、今日は、もう3時で眠いので、詳しくは次回に。

(質問コーナー)
Q1
株主総会決議及び報告の省略(法319①及び法320)を行おうとする会社が、株主総会の招集の決定を取締役会で決議する際、株主総会開催の日時及び場所をどのように取り扱えばよろしいのでしょうか?(法298①Ⅰ)
投稿 悩むヒト@淀川区 | 2007年6月13日 (水) 00時26分
A1
意味がわかりません。決議を省略するのなら、総会は開催しないんですよね?

Q2
旧商法43条が、商法25条と会社法14条と両方規定されたのは、なぜですか?おそらく、会社法は、会社の使用人(部長、課長、係長)を想定し、商法は、会社以外の使用人(番頭、手代、主任)を想定していると思うのですが、それでよろしいですか?
投稿 悩めるロー生 | 2007年6月13日 (水) 01時59分
A2
会社以外の商人の使用人についての規定が商法です。
ただし、会社以外の使用人にだって、部長・次長をつけたっていいんですけど。
Q3
会社法上、個別注記表はなぜ独立の財務書類(計算書類)となされたのですか?
注記事項は会計処理の基礎的前提をあきらかにし企業間または期間比較に役立つので開示の必要性はあると思います。
しかし、黒字倒産などの経営にとって重要な情報であるキャッシュフロー計算書をさしおいてまで独立の財務書類とする必要性はないように思えます。
むしろ、キャッシュフロー計算書は金融商品取引法で開示が要求されているので
計算書類に含めても何ら問題はないように思えます。
キャッシュフロー計算書が計算書類に含められず、個別注記表が独立の財務書類として計算書類に含められた理由を教えてください。
投稿 ToTAN | 2007年6月13日 (水) 08時06分
A3
個別注記表にしたのは、単に整理がしやすいからですね。
キャッシュフロー計算書が計算書類に含められなかったのは、中小企業ではあまり作っていないからでしょうね。

Q4
新会社法100問第二版112ページの記述について質問させてください。本文中下から四行目から
「② 無効説では、払込取扱銀行に対する預金債権は、会社財産に含まれない
  こととなり、会社債権者が、債権者代位権の行使により払込取扱銀行等に対  して返還請求権を行使することができず、発起人や設立時取締役が引受・払  込担保責任を負わない会社法のもとでは、かえって発起人や引受人を利する  結果になりかねない」
とあります。しかし、会社債権者が、債権者代位権の行使により払込取扱銀行等に対して返還請求権を行使することができないことが、どのように発起人や引受人を利する結果になるのかがイメージできません。どうぞ、よろしくお願いします。
投稿 TH | 2007年6月13日 (水) 14時47分
A4
払込が無効ということになると、払込取扱銀行に預金されている口座が発起人や引受人のものになり、かつ、債権者からその口座について追求されることもないので、発起人らにとって得ですよね。

Q5
計算書類の承認方法についての質問です。
個別注記表については、このような表題の独立した書面を作成しなくても、BSや株主資本等変動計算書等に脚注の形で記載しても差し支えない、とされています(経団連のひな型や多くの書籍でその旨説明がされており、その根拠として会社計算規則第89条第3項があげられていたりします)。
仮に、「個別注記表」という独立した書類を作成していない場合、取締役会や株主総会で承認の対象となる計算書類議事録上、どのように記載すべきでしょうか?
「個別注記表」なるものは作成していないので、承認の対象となる計算書類はBS、PL及び株主資本等変動計算書、としたいところですが、とはいえ、脚注の形で記載することで法律の要請は満たしているため、やはり「個別注記表」という用語(実際にはこの表題の書面は作成していない為、形式的な意味合いをこめて「用語」と記載しました)も承認の対象となった計算書類に追加しておくべきでしょうか。
「株主資本等変動計算書(個別注記を含む)」というような記載をする方法もあるかな、とは思いましたが、いまいち格好がわるく(格好の問題ではありませんが・・・)違和感を覚えました。
独立した書類として「個別注記表」を作成すれば頭を悩ませる問題ではありませんが、疑問に思いましたので、ご見解・ご意見を頂戴できれば幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
投稿 ぷあぷあ | 2007年6月13日 (水) 18時14分
A5
個別注記表という表題の書面がなくても、法律上は、個別注記表を作成しているのです。
したがって、個別注記表を承認の対象としている以上、その旨記載し、かつ、個別注記表という表題の文書がないことが読めばわかるようにしたらいいのではないでしょうか。

Q6
自分が知りたいのは、
弁護士等の法曹が、会社法以外について熟知しているのにも関らず、会社法についてスラスラ答えることができるほど身に付けた方法です。
会社法の立案担当者でなくても、見につけることができたはずです。
自分は会社法で得点するためにこのブログを見ています。
投稿 焼きそば風雲伝 | 2007年6月13日 (水) 20時19分
A6
法曹だからといって、会社法以外の法律に熟知しているわけでもなければ、会社法についてスラスラ答えられるわけでもないと思います。
スラスラ答えているのは、ごく少数で、大部分は、わずかの勉強とこれまでの経験から、なんとか答えをひねり出しているのが現実でしょう。
それでも、スラスラ答えているように見えるのは、法曹が、丸暗記を重視せず、法律的思考力で答える技術を身につけているからだと思います。

Q7
株主優待制度について、平等原則との関係がよく問題となりますが、
配当手続との関係で、違法とはならないのでしょうか?
現物配当が可能である以上、株式に応じて商品券・割引券を配るなどの優待制度は、実質的に配当に当たるように思います(それらの優待券行使により会社財産は目減りする)。
そして、もしそれが実質的に配当にあたるとすれば、配当手続を採ってない手続違反となるように思います。
会社法100問(初版)129Pには、「財産を株主に配分する場合には・・・手続的規制を離れて脱法的に行うことは許されない」とありますが、実質的配当とならない適法な優待制度と、実質的配当となる手続規制違反の優待制度の違いは、どこにあるのでしょうか?(仮に1円でも配当ならば手続を踏む必要があるため、財産の大きさでは区別できないし、会社財産を結果的に配分する行為であればやはりそれは配当といえ、会社側の意図でも区別できないように思います。)
多くの会社で優待制度が実施されてると思いますが、これらが株式の存在を前提に、実質的に会社の財産を配分する結果となる以上(実質的現物配当)、手続規制違反となるように思えてならないのです。
なお、最判S45.11.24(10万円の中元が平等原則に反し無効とされた事例)について、判例は言及していないようですが、平等原則違反以外に、配当手続違反ともなると理解しておいていいのでしょうか?
投稿 才谷屋 | 2007年6月14日 (木) 00時36分
A8
優待制度のうちで、現物を配るのは、現物配当の手続き違反になる可能性は高いでしょう。
他方、割引券は、配当にはなりにくいでしょう。

Q9
 6月12日のQ5に関連して質問させていただきます。備置書類の計算書類に記名押印の会社法の義務規定のないことは先生のおっしゃられたとおりだと思います。ただ実務的に押印すべきかどうかは別問題かと思います。
 代表者の承認を得て備置した書類であることを証するため、また閲覧者への格好付けのためにも押印している企業は多いのではないでしょうか。
 葉玉先生は、新会社法のもとにおいてその実務に変化が生じると考えおられるのでしょうか。
 類似の問題に株主総会議事録の取締役の記名押印をどうするか言う問題があります。旧商法同様に取締役全員が押印するのか、作成取締役だけが記名押印するか、作成取締役の氏名のみを記載するか悩ましげなところです。
 会社法の規定に従えば、作成取締役の氏名のみでもよいかと思いますが、株墾の月例会に出席している者の話によれば、作成取締役の記名押印でいくところが多いのではないと言う話も聞きます。葉玉先生はどのようにお考えでしょうか。
投稿 デラシネの法務 | 2007年6月14日 (木) 01時37分
A9
会社法では義務でなくても、定款や内規で義務化しているところもあり、一概にいえません。私は、無意味なものは省くほうが好きなので、簡略化すればいいと思いますが。

Q10
新会社法100問第二版の119ページについて質問させてください。119ページの4行目から
「代表取締役が、自分及び他の発起人の借入金の返済に充てる目的で、株式会社の金銭を取得した行為は、利益相反取引(356条1項2号)に該当し、」
とありますが、本問のように代表取締役が会社のお金を私的に使ってしまったケースが利益相反取引とすると、他にも代表取締役が自己のギャンブル資金のために会社のお金を使ったりするのも利益相反取引になるのでしょうか。また、平の取締役が会社のお金を私的に使ってしまった場合も同じなのでしょうか、教えてください。
投稿 TH | 2007年6月14日 (木) 09時57分
A10
代表取締役が会社からお金をこっそり持ち出すだけだと、形式的には、不法行為です(刑事的には業務上横領です)。ただ、通常は、貸付金にするでしょうから、利益相反取引です。取締役も同じです。

Q11
会社法440条で分からないことがありましたので、質問させていただきます。
会社法440条においては、
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
と、あります。
19年3月期に負債が200億を超えた場合、通常6月の株主総会において決算が確定し、大会社になると私は考えているのですが、その後会社が公告をする場合は会計監査人の監査がなされていない損益計算書も公告の対象になるでしょうか。
よろしくおねがいします。
投稿 遊び人 | 2007年6月14日 (木) 13時20分
A11
大会社になったあとに作成した計算書類ならば、監査は必要ですが、大会社になる前に作成したものですから、監査は不要です。

Q12
会社法389条3項によれば、会計監査限定監査役は必ず株主総会に出席し一定の報告しなければならない(と理解しております)と規定しています。
320条による「株主総会への報告を省略」を利用しようとする場合、事業報告の内容の報告といった典型的な報告事項だけではなく、389条3項のような監査役から報告すべき事項も含めて、全株主に通知し、総会への報告不要との同意を取る必要があるのでしょうか??
投稿 スケジューラー | 2007年6月14日 (木) 14時38分
a11
以前も回答しましたが、その場合、報告の省略はできないと思います。

Q12
会社法第389条第3項の「会計に関する議案」には、「計算書類承認の件」も含まれますでしょうか。
投稿 牛乳一気飲み | 2007年6月14日 (木) 16時51分
A12
含まれます。

Q13
178条関連の質問なんですが・・・
会社は自己株式を消却することができる、とされてます。一方、旧商法では市場の株式も消却可能であったと授業中に講師が言っていたのですが、そんなこと可能なのでしょうか?
投稿 ksuke | 2007年6月14日 (木) 22時38分
A13
問題の意味がわかりません。
「市場の株式」とは何でしょうか。
株主が保有している株式ということであれば、旧商法では、株券番号で特定して、その株券に係る株式を消却することができました。

Q14
新・会社法100問第二版の62「利益相反取引」(P354~)について質問させてください。
P354の下3行目から小問1の取引が直接取引に該当するか否かについての記述が始まりますが、ここで「自己又は第三者のために」が「名義で」という意味なのか「計算において」という意味なのかを検討する実益は何なのでしょうか?
わざわざ「自己又は第三者のために」の意義を持ち出さなくても、ここは、B自身がA会社と取引をしていないことをもって直接取引に該当しないと結論付けてはダメなのでしょうか?
投稿 初学者兼独学者 | 2007年6月15日 (金) 03時40分
A14
実益はありません。勉強用に書いているだけです。

Q15
見せ金と新株発行等不存在確認の訴えについてお教えください。
 「見せ金」は、会社法829条の「新株発行等の不存在の確認の訴え」をすることができるとされる「株式の発行手続きが全く取られておらず、株式が発行されたとは認められないような場合」に該当しますか?有効な払い込みがされていないので該当すると考えますが、このような理解でよろしいでしょうか?
A16
 不存在にはならないと思います。

Q17
 上の質問をしましたが、本当に知りたいことは「見せ金」のあった会社の資本金(会社法上の資本金)がいくらかです。増資前は300万円、増資後は1000万円とします。
上の質問の回答が「該当する」でよければ、資本金はもとから300万円であり、減額処理ではなく訂正処理することになるわけですね。
 「該当しない」のであれば、新株発行無効の訴えで請求が認められ、かつ資本金減少の手続がされるまでは、1000万円。
投稿 3MK | 2007年6月15日 (金) 11時30分
A18
株式発行の有効・無効・不存在と、払込みの有無は、別問題です。
株式発行無効の訴えが提訴期間を経過したからといって、払込がされたことになるわけではありません。

Q19
449条但し書きにより定時株主総会において欠損金の範囲内で資本準備金の減少を決定する場合は、債権者保護手続きは不要かと思いますが、その場合でも債権者異議申し出を求める公告が出されることがあるのは何故でしょうか?
投稿 Hiro | 2007年6月15日 (金) 21時36分
A19
異議を述べることができる場合のみ、公告義務があります。

Q20
新会社法100問第二版の136ページ上から13行目以下に
「当該責任は、他の株式引受人との間の公平を確保するために、現物出資財産の価額の調査を慎重に行うべきことを要求する趣旨の規定であるところ、相場のない現物出資財産の場合、その価額は必ずしも明確ではないので、合理的理由により発起人が財産の価額を見誤ったという場合にまで、その責任を負わせる必要はないからである。」
とあります。この一文は212条2項の趣旨として述べられたものだと思われますが、ここで「発起人が」とされている点は、「株主が」ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
 
投稿 TH | 2007年6月16日 (土) 14時22分
A20
誤植ですね。

Q21
代表取締役の選定方法が変更された場合、選定方法の変更の時ではなく、変更された選定方法により新たな代表取締役が選定された時に、これまでの代表取締役は退任すると「商事法務」で書かれておられますが、辞任届けなどが必要ないことから、実質新しい選定はすなわち前の代表取締役の解任と考えられます。そうであるなら、この新しい代表取締役の選任議事には、前の代表取締役は加われないことになるのでしょうか?
投稿 サル頭 | 2007年6月16日 (土) 22時04分
A21
解任ではありません。

Q22
純粋持株会社と事業持株会社で、親子会社間の問題点って異なってくるものなのでしょうか?
投稿 石頭 | 2007年6月16日 (土) 22時49分
A22
違いません

Q23
連結計算書類を作成する際に使用した子会社の数字(子会社からデータとして提供を受けました)が、子会社の取締役会において承認を得られていないものだと判明した場合、連結計算書類として要件を満たしていない、ということになるのでしょうか?その場合、どのような効果が生じるのでしょうか?
投稿 Hiro | 2007年6月16日 (土) 23時51分
A23
連結計算書類の子会社データについて、子会社の取締役会の承認という手続きはないです。

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2007年6月12日 (火)

妬みと後悔

今日は、本来、株式譲渡自由の原則の続きを書こうと思ったのですが、受験生さんから気になる人生相談を受けたので、私なりのアドバイスをしたいと思います。
もっとも、私のアドバイスは、大抵の場合、歯に絹きせぬ辛らつなものが多く、受験生さんは
  「聞かなきゃよかった」
と思うかもしれません。
ただ、もう書き始めてしまったので、我慢して聞いてください。
「私は、去年三年生のときに択一に受かったのですが、今年は一点たりず落ちてしまいました。去年、大学一年の時から一緒に勉強していた友人が三年生で最終合格しました。私は友人が在学中に予備校でバイトしながら、割と自由な時間を楽しんでいるのを見ながら、とても辛い気持ちを押さえて「今年は俺の番だ」と必死にがんばってきました。
それなのに今年は論文を受けることさえできない。今のところロースクールに行こうと思っているのですが、大学に入ったときからほとんど遊びもせずがんばってきたのに、今後友人が修習にいき実務家となってもいまだ自分はただの受験生…そのようなふうに考えると、自分の今までの日々はなんだったのかと虚しくなってしまいます。
頭では、「自分が法律家としてやっていきたいことがあるなら、がんばればいい」とわかっているのですが、気持ちがついてきません。
こんなときどう気持ちを切り替えたらいいのでしょうか。
投稿 受験生 | 2007年6月 9日 (土) 07時30分」
受験生さんの質問は、簡単にいえば
「友達は結構遊びながら合格した。自分は遊ばずに勉強したのに合格しなかった。だから、やる気がでない。どうやったら気持ちが切り替えられるか」
ということですね。

受験生さんの悩みの原因は、2つあります。

1つ目の原因は、受験生さんが、友達と自分を比べていることです。

友達は、遊んでいたのに、大学3年で合格したのは分かりました。優秀なご友人ですね。

ところで、友人が優秀であることと、受験生さんが不合格になったことの間に、何か因果関係があるのでしょうか?
無いですよね。

友人が合格しようと、不合格になろうと、それは友人の問題であって、あなたの人生とは何の関係もありません。

今のあなたが、友人と比較して落ち込んでいるのは、友人に対する妬みの裏返しです。
妬みは、毒です。妬みが強いと、ダークサイドに引き込まれます。
だから、まず、友人と自分を比較するのを止めることが先決です。

あなたは、友人と24時間一緒にいたわけではないでしょう。友人に自由な時間があるようにみえたからと言って、あなたより勉強時間が短かったとは限りません。
日経ビジネスオンラインで脱時空勉強術を連載しているから言うのではありませんが、時間の隙間をうまく使えば、多忙な人の方が、暇な人よりも長く勉強することは可能です。
また、単位時間あたりの勉強の能率も、人によって段違いです。
友人には、あなたにはない能力があり、その能力を最大限に生かした勉強をした。
それだけのことです。

だからといって、妬むのは意味がありません。妬んでも、その能力があなたのものになるわけではない。浅田真央がトリプルアクセルが飛べるからといって、あなたは飛べるわけではない。そんなことで妬みもしないでしょう。
真央ちゃんがトリプルアクセルを決めたときに、「おーっ」と言いながら拍手するように、友達が合格したときも、素直に感嘆して拍手しましょう。

能力は人それぞれ。
あなたにも、友人にない能力があり、あなたに合った勉強法があるはず。それを見つけるのが先決です
友人と自分を比較することを、きっぱりと止めれば、心の重さは3分の1くらいになります。

受験生さんの悩みの2つ目の原因は、
「大学時代、遊んでいない」という後悔です。

あなたは、「大学時代、遊んでいれば、もっと楽しかったはずだ」と思っているでしょう。
そう思うのなら、今からでも遅くない。
合コンに行きましょう。クラブで踊ってみましょう。
きっと、そこには、遊びが楽しめない自分がいます。

私の大学時代は、まさに「バブルでゴー」の世界。
田舎から出てきたばかりの頃は、塾高出身の慶応ボーイの行動が、やけにまぶしく感じられ
ホットドッグプレス片手に、とても言えない恥ずかしい遊びも沢山やりました。
しかし、やってみると大して面白くは無いです。
所詮田舎者ですから、垢抜けなくて、ちょっと恥ずかしいし。
人間はすぐ刺激になれるので、遊びが日常になると、ちっとも遊びじゃなくなるのです。

遊んだことを後悔する気持ちもありますが、遊ばなかったら、妄想が膨らんでもっと後悔したかもしれない。自分にはよくわかりませんが、どっちもどちかな。

受験生さんは、遊ばなかったことを後悔しています。

でも、「後悔、先にたたず」なので、いまさら大学生に戻ることはできません。

ついでにいうと「後悔、役に立たず」なので、後悔しても未来のあなたには何のプラスももたらしません。

しかし、未来は、自分で決められます。

受験生さんが1年くらい棒に振ってもいいのなら、この際、やりたい遊びをやるのもいいんじゃないでしょうか。このまま妄想ばかり膨らんで、歳をとって、爆発するより、若い頃の失敗の方が傷が浅いかもしれません。

でも、受験生さんは、今からどんなに遊ぼうとしても、勉強のことが気になって、心の底から「遊んでよかった」と思うことはないでしょう。
それどころか、何をして遊べばいいのか分からず、すぐ手持ち無沙汰になってしまうかもしれません。

実際、あなたが、大学時代、本当にやりたい遊びがあったのならば、4年間も、その衝動を抑えられるものじゃありません。たぶん、本当に遊びたいわけではないのに
「友人が遊んでいたのに、自分は遊ばなかった」
という妬みのために、遊びたい気持ちになっているだけではありませんか。

そもそも、あなたが、大学時代遊ばなかったのは、勉強のために遊びを犠牲にしたのではありません。
あなたが、勉強と遊びを両立させる能力がなかったから遊べなかったのです。
これは受験生さんだけではありません。
司法試験受験生の多くは、勉強と遊びを両立させる能力などないのです。

だから、私は、よく
  勉強を2番目に優先させよう。でも、1番のことにも我慢してもらおう。
と言います。

 あなたが、1番大事なのは、遊びですか?
 本当にそうなら、遊びましょう。

 でも、普通、1番は遊びではないです。家族であったり、恋人であったり。
 心の底から1番大切だと思えるのは、遊びよりも、もっと暖かいものだと思います。

 もしそうならば、勉強が遊びに優先します。息抜きはいいですが、勉強には劣後します。
 あなただけが、そうしているのではありません。
 合格する受験生は、皆、遊びたいけど、我慢して、我慢して勉強しているのです。
 (だから、合格して司法研修所に入ったとたん、いきなり修習生同士で結婚したりする人が多いのです:-) おっと、失言。)
 
 受験生さんは、たまたま近くにいた合格者の友人を見て、いろいろな思いがこみ上げてきたのでしょう。
 その思いは、感情に起因するものですから、理屈で押しのけるのは難しい。

 しかし、その思いが、妬みや後悔が原因だと分かれば、そして、そんなダークな感情に支配されている自分が情けないなと思えば、感情を少しコントロールすることができるようになるのではないでしょうか。

(質問コーナー)
Q1
こんにちは。会社法500条について質問させてください。
第1項(及び前提となる第499条)の文言からすると、①解散後②第499条の公告・催告をする前においては、(裁判所の許可がなくとも)債務の弁済をすることは可能であると読むのが素直な気がします。
法の趣旨からすればこのような債務の弁済は認められるべきではないと考えますので、第1項にいう「前条第1項の期間内」は、期間の終わりのみを定めていると読むか、又はこのような債務の弁済をした場合、第499条における公告・催告を「遅滞なく」しなかったという点が問題となるか、のいずれかになると考えますが如何でしょうか。
よろしくお願い致します。
投稿 sk8 | 2007年6月10日 (日) 12時09分
A1
「遅滞なく」、というのは、「正当な理由が無いかぎり、すぐに」という意味なので、公告前に弁済するというようなことは、想定していないのだとおもいます。
公告懈怠をして、その間に弁済するというのは、許されないでしょう。
Q2
司法試験平成14年第1問に関する100問の解答について質問です。
解答では、本問の合併について、360条の違法行為差止請求が出来る(ことを前提に、仮処分ができる)とあります。
しかし、360条は、「目的の範囲外の行為」又は「法令・定款に違反する行為」が要件となっているところ、831条1項3号で株主総会決議が取り消し可能な場合も、この要件に当てはまるのでしょうか。
また、本問の合併は、株式会社に著しい回復することができない)損害が生ずるおそれがあるとき」といえるのか、よく分かりません。
あと、本問で、取締役に429条の責任を追求することは出来ますでしょうか。
投稿 去年商法C | 2007年6月10日 (日) 18時38分
A2
取消事由がある場合には、法令違反の行為があると考えてよいでしょう(形成訴訟との関係については問題が残りますが)。
合併すると、法人格が消滅しますから、会社に著しい損害は生ずるでしょう。

Q3
H13商法改正以前に規定されていた旧商法280条の19による新株引受権(旧ストックオプション)の取扱いにつきご質問いたします。
当時、発行された新株引受権については、H13商法改正による新株予約権導入後も、商法附則等により、なお従前の取扱いとされてきており、会社法施行後も、整備法等に特段の規定が置かれていなかったことから、引続き従前の取扱いが可能であると解釈しております。
 実は、上記のような新株引受権を有する株式会社を消滅会社とする吸収合併を予定(2社とも株式譲渡制限付会社/合併対価は現金のみ)しているのですが、この消滅会社が有する新株引受権に対し、会社法749条1項4号、5号の取扱いにより金銭交付をすることは可能でしょうか?
 749条1項4号、5号の条文上は、「新株予約権者」となっておりますので、旧商法280条の19による新株引受権者が含まれるかどうか気になったしだいです。
現在の新株予約権と同様、ストックオプション目的で発行されている以上、同様な取扱いとしても問題ないかと考えますが、言及した文献等がなかったため、判断できません。
 もし、上記の取扱いが不可の場合、このようなケースにおける消滅会社の新株引受権者への対応はどのようにしたらよろしいですか?
投稿 ばば | 2007年6月11日 (月) 16時08分
A3
新株引受権者は、新株予約権者ではないので、749条1項4号等の適用はないと考えるべきでしょう。
消滅会社の新株引受権の処理は、平成13年以前の処理によるしかないです。
裏技はあると思いますが。

Q4
株主総会参考書類の退任役員に対する退職慰労金贈呈の件で、
退任取締役は取締役会に、退任監査役は監査役の協議にと表現
が違いますが、なぜでしょうか。
投稿 jimmy.p | 2007年6月12日 (火) 16時58分
A4
387条2項があるためです。
Q5
従来、定時総会の備置書面として、計算書類を袋とじにし、代表取締役の署名と押印をしたものを備置していました。今回、改めて、その根拠条文はなんだろうと思い調べてみたのですが、調べ方が悪いのか見当たりません。もしかしたら、今まで不要な署名をもらっていたのかなとも思っております。ご教示いただければ幸いです。
投稿 anton | 2007年6月12日 (火) 12時44分
A5
計算書類に、署名・捺印は不要です。

Q6
択一に専念するのではなく、、論文と択一の両方を同時並行したほうがよいのでしょうか。勉強方法はどうすればよいのか見当がつきません。大変ぶしつけなお願いで恐縮ですが、差し支えなければ、ざっくりとカリキュラムを立てていただけないでしょうか。もちろん日経の連載も参考とさせていただきます。よろしくお願いします。
投稿 もも | 2007年6月12日 (火) 20時45分
A6
カリキュラムは、その人の能力によって違います。
ももさんの力がわからないので、カリキュラムを立てようがありません。
一般的に言えば、択一に専念するよりも、論文も1日1通くらい書いた方が良いのではないでしょうか。
論文を書くことによって、択一も得意になります。

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2007年6月 8日 (金)

【入門】株式譲渡自由の原則(2)

 新司法試験の択一試験(足きり)の発表がありました。
「去年あれほど言ったのに、東大は、あいかわらず択一が強くないなあ。受け控えも結構いるし」とか
「早稲田は知り合いが多いから、もう10歩くらい、がんばってほしい」とか
「九大、大丈夫か。福大はがんばってるけど、ちょっと受け控えが多いな」
等と、自分に係わり合いのある大学について、いろいろ感想はありますが、大事なのは最終合格の分析なので、論文発表後に詳しく分析します。

次に、ポップンさんに紹介していただきましたが、昨日から、日経ビジネスオンラインというところで、勉強術の連載を始めることになりました。題して
「葉玉匡美の脱時空勉強術」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070524/125480/
 毎週木曜日に更新で、全12回の予定です。
 
 このブログでも、司法試験の勉強の仕方についてお話したことがありますが、今回は、ビジネスマン向けという依頼があったので、忙しいビジネスマンの顔を思い浮かべながら、書いてます。
 
 司法試験に特化したノウハウは紹介しませんが、どんな勉強もやり方は同じですから、受験生にも役に立つでしょう。無料登録をすれば、誰でも見られるはずなので、興味ある人は覗いてください。
 ちなみに、この連載、読者がコメントを書く欄があるのが特徴です。
 私がグータラ人間だと書いたら、何人かの人が「グータラ」観について語っていて、これが結構、面白い。
 私は、グータラで、面倒くさがりで、あまり人の言うことを聴きたくない人間ですが、いろいろな仕事が身の上に降りかかってきて、24時間ダラーッとしていられるような環境にありません。
 そこで、仕事を無視して文句を言われても、気にもとめずに自分勝手にダラーッとできるい人は、強いグータラなんですが、小心者の私は、そういうことができませんし、第一、文句を言われたら、ゆっくりした気分になれません。
 だから、私のグータラ感は、「やらなきゃいけないことを早めにこなして、他人に干渉されない時間を作るグータラ」。多忙グータラです。
 そういう人向けの連載なので、キッチリしたのが好きな人と、強いグータラの人には向かない勉強術かもしれません。

 さて、話題を変えて、株式譲渡自由の原則の続きをお話しましょう。
 
 前回は、株式譲渡自由の原則は
   譲渡禁止特約を許さない
という点で、民法の債権譲渡自由の原則よりも譲渡性が強化されていて
   譲渡制限株式ですら、株式会社の承認なく、有効に譲渡することができる
   (会社に譲渡を対抗することができないだけ)
というお話をしました。
   
 なぜ、そのように譲渡性が強化されているか、一言でいえば
   株主にとって、株式の譲渡が唯一の投下資本回収手段だから
ということになります。

 株主が、会社に出資したり、株式を購入したりするのは、究極的には、
   お金儲け
をするためです。
 例えば、裁判官の松真さん(仮名)が裁判所を退職し、退職金700万円を出資して、300万円を出資した湯水さんと一緒に、株式会社正直法務を設立したとしましょう(株式を1000株発行)。湯水さんは代表取締役として働き、松真さんは,単に株主としてだけ、会社にかかわっています。

 株主である松真さんは、通常は、1年に1回か2回、交付される
  配当
を楽しみにするでしょうが、湯水さんが常軌を逸するほど商売がうまいか、よほど手を汚すような商売をしない限り、短期間に配当だけで、松真さんに700万円相当額の元をとらせるのは難しいでしょう。

 もちろん、長年配当が続けば、松真さんは、700万円を超える配当を受け取ることができるでしょうが、1年あたりの配当額が、仮に出資額の5%(35万円)だとしても、松真さんは、「配当は、俺のタバコ代だな」という程度にしか考えないのでしょうか。

 松真さんとしては、退職金700万を元手にして、「10年後には、子供が私立の医学部に行くだろうから、そのときに入学金と授業料をまかなえるくらいのお金に換金できればいいな」などと夢を膨らませているでしょう。

つまり、株主は、通常、配当を受け取るだけではなく、いつか株式を手放して、お金に換えることを予定しているのです。このように投資により取得した株式をお金に換えることを、
 「投下資本の回収」
と呼んでいます。

この投下資本の回収手段は、理論的には、①持分の払戻しと、②株式の譲渡の2種類の方法があります。

1 持分の払戻し
1つ目は、退社による持分の払戻し。
たとえば、松真さんが700株を「消滅」させて株主ではなくなる代わりに、会社からお金をもらう方法ですが、この持分の払戻しは
  株式会社では、禁止
されています(ちなみに、持分会社では許されています)。

 通常、退社というのは、会社の「一部解散」というイメージで捉えられています。
 つまり、社員が全員社員でなくなるのが「解散」で、社員の一部が社員でなくなるのが、「退社」だから、一部解散。
 それで、解散時に社員に残余財産を分配するのと同じように、社員が退社するときに、その持分相当分の会社財産を分配するべきだという発想になり、それを「持分の払戻し」と呼んでいるのです。ですから、持分の払戻しは、いわば、共有物の分割みたいなものです。

 このように退社を「一部解散」というイメージで捉えてみると、
「なぜ、株式会社では、株式を消滅させて払戻しをするのを禁止するのか」
という理由が分かります。

 本来、会社が解散するときには、債権者が会社財産からまず支払いを受け、その残りの財産を社員で分配するのが原則です(このことを、社員は債権者に劣後するといいます)。このルールは、株式会社でも持分会社でも同じです(664条を見てください)。

 このように、会社を解散するときは、債権者への支払いが先なのだから、社員が退社する場合(つまり一部解散する場合)には
  「債権者との間の清算がまだ済んでいないから、お金はまだ返せないよ。」
というのが本筋なのです。

 しかし、会社が存続している限り、自分の出資したお金が戻ってこないとなると、出資をする方はたまったものではありません。

そこで、持分会社では
  債権者が、退社した社員に対して、退社前の責任を追及することができる(612条)
というルールを採用するかわりに、持分の払戻しを認めています(なお、合同会社のことを話すと話が複雑になるので、後日、詳しくお話します)。

これに対して、株式会社は、出資者のリスクを限定するために
  株主は、間接有限責任しか負わない
ということにしていますから、持分の払戻し後の株主の責任を追及させるわけにはいきません。

 それで、株式会社では、持分の払戻しは、原則どおり、禁止されているのです。

 ちなみに、株式の消却は、社員の地位を消滅させるので、退社に分類されます。しかし、会社法では、自己株式の消却しか認められていないので、株主が消却によって財産を受け取ることはなく、持分の払戻しに相当するものはありません。

2 株式の譲渡
 1で述べたように、株式会社では、持分の払戻しが禁止されているため、株主が投下資本を回収するためには、
   株式を他人に売って換金する
とことになります。
 たとえば、松真さんのお子さんが医学部に進学したとき、入学金が1000万円必要になったとしましょう。松真さんは、これまで貰った配当を全てタバコの煙に変えてしまっていたので、お金がぜんぜんありません。では、どうするか。松真さんは、湯水さんのところにいき
  「出資金1000万円で始めた正直法務も、10年で純資産が2000万円に増えた。湯水さん、俺の株式を1400万円で買ってもらえないだろうか」
と頼みにいけばいいのです。

 湯水さんは、松真さんの株式を買う義務はありませんし、値段は必ずしも、純資産ベースで決める必要はなく、税金の問題を抜きにすれば、交渉次第でいくらに決めても構いません。
 
 しかし、代表取締役の湯水さんが
 「ここで松真さんからの頼みを断ったりすると、松真さんは、ヤメ検弁護士の法曹川さんのところに株式の買取りを頼みにいきそうだな。法曹川さんが株主になると、僕が経営に失敗したとき「死ね!」とか言いそうだし、ここは松真さんの言い値で買っておくか・・・」
等と考えて、松真さんと株式の売買契約を結ぶかもしれません。
 もしそうなれば、一件落着。
 松真さんは、700万円で取得した株式を1400万で売って無事投下資本回収を完了したことになります。

 この例からもわかるとおり、
  株式の譲渡は、株主にとって唯一の投下資本回収手段
であり、もし、株式の譲渡ができなくなってしまうと、松真さんは、せっかく退職金をはたいて出資した株式を現金に換える方法がなくなってしまいます。
 だからこそ、会社法は、株式譲渡自由の原則を採用する必要があるのです(必要性)。

 しかも、株式会社では、所有と経営が分離していて、株主が必ずしも経営にタッチしていません。また、定款の変更等重要な事項も「多数決」で決めることになっていて、株主全員の同意が必要な事項は、ごく例外的なものにすぎません。

 先ほどの例でも、松真さんは、出資しているだけで、経営にはタッチしていませんでしたから、松真さんが株主でなくなっても、正直法務の経営には、何の影響もありません。
 すなわち、所有と経営の分離は、株式譲渡自由の原則を認める前提となっているのです(許容性)。
 
 この必要性と許容性を双方考慮にいれて、会社法の株式譲渡自由の原則ができあがっているのです。
 
  最後に2点だけ、注意点を。
(1) 株式譲渡自由の原則は、株主が、株式会社の承認なく、会社が株式を買い取ってくれることを保障しているわけではありません。 
 松真さんが、いくら投下資本を回収しようとしても、湯水さん、法曹川さんなど他の人が誰も買ってくれなかったら、投下資本を回収することはできません。
 初心者の中には、出資したお金が必ず回収できると勘違いする人がいますので、念のため説明しました。最悪の場合、会社が解散するまで、回収できない可能性もあるのです。

(2) 株式の交付を受けることができる権利である新株予約権にも譲渡自由の原則があります(254条)。しかし、新株予約権者は債権者であって株主ではないので、同原則は、株式譲渡自由の原則とは趣旨が異なりますし、譲渡制限についてのルールも違います。
 また、社債には、127条や254条のような規定はなく、譲渡禁止特約を付すことができます。
 このように会社法上の権利であっても、権利の性質によって譲渡性が異なることは、意識しておいてください。

次回は、株式譲渡自由の原則の例外についてお話します。

(質問コーナー)
Q1
「譲渡禁止特約に違反する債権譲渡の効力については、民法でも学説が分かれていますが、悪意の債務者との関係では譲渡は無効であると考えるのが判例通説です。」とありますが、
「悪意の第三者」または「悪意の譲受人」の誤りではないでしょうか
投稿 | 2007年6月 6日 (水) 19時47分
A1
おっしゃるとおり。ケアレスミスです。訂正しました。
ありがとうございます。

Q2
反対株主の株式買取請求における公告について質問させてください。
 785条4項および797条4項は 通知を公告に代えることができる例外要件を定めています。そして各条1号は 公開会社では会社の承認なく株式の譲渡ができるので、株主名簿に記載されたものに通知するよりも公告で株主名簿に記載されていない現在の株主に公告したほうが適切な場合があることを趣旨とすると理解しています。
 まだ各条2号は すでに株主総会の召集通知で株主に通知しているので再度通知する必要性が少ないことを趣旨とすると理解しています。
 この趣旨は新設合併等の手続きにも当てはまると考えますが、
806条4項は無条件に通知を公告に代えることができると定めています。
 この理由を教えてくだされば幸いです。
投稿 maru | 2007年6月 7日 (木) 00時08分
A2
承認決議を経ていますから。

Q3
弁護士の仕事について質問です。
学校の弁護士の先生が「弁護士の仕事は当事者のかわりにするケンカする喧嘩屋だよ」よくおっしゃられます。
そういう部分もあるのでしょうか?
投稿 yosh | 2007年6月 7日 (木) 13時35分
A3
喧嘩の定義によりますが、喧嘩したり、なだめたり、すかしたり、一緒に泣いたり、笑ったりする仕事です。

Q4
葉玉先生、会社法施行規則24条についてご教授ください。
当社の株主が所有する譲渡制限株式について、差押債権者が譲渡命令の申立(民事執行法161条)を行ったため、裁判所の譲渡命令が発令されそうです。
この裁判所の発令する「譲渡命令」は会社法施行規則24条1項2号にいうところの「確定判決と同一の効力を有するもの」と理解してよろしいでしょうか?
実務的な質問で恐縮ですがよろしくお願いいたします。
投稿 hi | 2007年6月 7日 (木) 21時02分

A4
譲渡命令そのものは、確定判決と同一の効力を有するものには、該当しないと思います。
ただ、設問の前提となっている事実関係や裁判所の命令の内容によっては、名義書換えに応じなければならない場合もあると思いますので、弁護士に相談されたほうがよいでしょう。

Q5
非公開会社(公開会社でない株式会社)で法務を担当している者ですが、
株式交換の株式交換完全親会社について質問させていただきます。
株式交換完全親会社は株式交換契約を締結する必要がありますが(767条)、
この契約は株式交換の効力発生日までに締結すればよいのでしょうか(吸収
合併契約等の内容の事前開示(794条)は締結前の契約でも可と考えてよろ
しいでしょうか)。
また、株式交換に関する取締役会決議が行われる前(総会召集や契約締結
等について何ら決議していない状態)で事前開示(794条)を行うことは可能
でしょうか(代表取締役の権限で開示)。
不躾かつ不自然な取り扱いについての質問ではありますが、よろしくご教授
ください。
投稿 OGT | 2007年6月 8日 (金) 00時42分
A5
株式交換契約前に事前開示をすることはできません。

Q6
種類株主総会について疑問に思ったことがあって質問です。
1 全部取得条項の付加する定款変更(111Ⅱ) の例なんですが知ってるのは100%減資だけなんですが、そのほかでどんな利用方法があるんですか??
2 それと、その場合で株主総会の決議があっても111条でこういった規定がなされているので種類株主は自己の不利益になるような場合には種類株主総会の決議で賛成しなければいい、という解釈であってますよね??
投稿 ksuke | 2007年6月 8日 (金) 00時49分
A6
1 全部取得条項は、少数株主の追い出しや取得条項付株式への転換のため等に使われます。
2 そのとおりです。

Q7
葉玉先生、ライツプラン事前警告型について、
財産権を侵害しないライツプランといってもなかなか難しい新株予約権の設計だと思います。
先生も「政治的な道具」とおっしゃっています。確かに米国の事例を見てても、ライツプランの償却や取り消しのプロクシーファイトが繰り広げられます。
しかし、普通決議のみで導入したライツプランで、差別的な予約権の付与が「不公正発行」として差止められることがある程度想定できれば、買収者側も「やれるものならやってみろ」ぐらいの形でドンドンTOBを仕掛ける可能性も考えられ、政治的道具の役割を果たさず、単なるお飾りと化さないか心配なのですが?
なぜ、ストラテジックでシナジーの見込める買収者(買収者側の弁護士)は、イケイケにならず、躊躇するのでしょう?(楽天とか)
ある弁護士には発動しない前提で導入するんです、といってましたが、絶対に発射しない核ミサイルだと解れば、抑止力としてすこし疑問を感じてしまいます。
投稿 katsu | 2007年6月 8日 (金) 02時23分
A7
買収者にも世間体があります。
株主総会でルールを決めたのに、そのルールを守らないと悪評が立ちます。
それが、買収者の商売に悪影響を及ぼすかもしれないし、TOBをかけたときに株主が売却を拒む理由になるかもしれない。
それが政治的な道具としての事前警告です。

Q8
定義規定の書き方についての質問です。
以前からすごく気になっていたのですが,定義規定(2条)の書き方には,2種類あります。一つは,「この法律において『破産手続』とは,XXX」という書き方です(破産法,独禁法など)。もう一つは,「一 会社 XXX」という書き方です(会社法,民事再生法,租税法など)。後者のほうが文字数が少なく簡明だと思うので,あえて前者の書き方をする理由が分からないし,新しい会社法が後者だったので,最近の法律は後者で書かれていると思っていました。しかし,一番新しいはずの新信託法は前者で書かれているので,なぜ使い分けるのかがよく分からなくなりました。初学者の私からすれば,どちらかに統一したほうがよいように思えるのですが,立法技術の慣習上,どのような理由によって使い分けているのでしょうか。
瑣末な質問で恐縮ですが,毎日条文を読んでいる学習者としてはとても気になるところです。
投稿 tom | 2007年6月 8日 (金) 17時58分
A8
趣味です。
が、一般的には定義すべき後が少なければ前者、多ければ後者かな。

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2007年6月 5日 (火)

【入門】株式譲渡自由の原則(1)

 金曜日は、ビジネスブレイクスルー大学院大学(http://www.ohmae.ac.jp/cls/)でセミナーの収録をしてきました。 

 ここは、日本で唯一文部科学省が認可した、インターネットによる経営大学院で、学長は大前研一さんです。これだけでも、ユニークな学校だということが分かると思いますが、ビジネスブレイクスルーでは、弁護士や企業法務に従事している方等を対象に企業法務セミナーをインターネットで開催していて、その名も「サイバー・ロースクール」(ちなみに、法科大学院ではありません)。
 申し込みをすれば、誰でもセミナーを受講できるので、興味のある方は覗いてみてください(企業法務担当者用なので、ロースクールの学生には、ちょっと受講料が厳しいかもしれませんが・・・)。ただし、今日、私が収録した買収防衛策についてのセミナーは、まだリリース前なので、ホームページを見ても載っていません。載ったら、お知らせします。

今日は、最初に、前回の答えの間違い直しから始めます。
前回のA14で、会社計算規則163条3号が「・・・監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。」という要件が定められていることから、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社には、163条の適用がないというお答えをしました。
この点は、ある人と意見交換をして、それなりに考えた上で結論付けたのですが、私の回答を見た某立案担当者(現民間人)が
「3号だけを見ると、どちらとも読めるが、163条2号かっこ書や5号が存在するということは、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社にも、163条の適用があることを前提にしなければ、説明しにくい」という趣旨のメールをくれました。
 そう言われてみれば、そのように思いますし、監査役会も監査委員会もない会社では、監査役会や監査委員会の監査報告そのものが存在しないことから、163条3号の「監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でない」という要件を充たすと考えることもできます。

3号は、ややミスリーディングかもしれませんが、実質としては、総会承認なく、確定させても特に問題はないので、前回のA14を訂正し
 監査役会・監査委員会のない会計監査人設置会社でも、規則163条のすべての要件を充たす場合はある

と考えます。

次に、久々の入門編「株式譲渡自由の原則」について解説いたします。

  25問「株式譲渡自由の原則とその制限について論ぜよ。」

 株式会社に出資した人は、出資と引き換えに、「株式」という権利をもらい、株主になります。お金を出したのだから、代わりに財産的な価値のある権利をもらうのは、当然のことです。
 株式譲渡自由の原則は、読んで字のごとく、株主は、株式を自由に譲渡することができるという原則です。会社法127条は、この原則を「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」と端的に規定しています。
 
 自分がお金を出してもらった権利を自由に譲渡できることは当たり前すぎて、このままでは「へえーっ、そんなものですか」で終わってしまいますので、一つ、皆さんに問題を出します。
  民法466条は「債権は、譲り渡すことができる。」と規定して債権譲渡自由の原則が採用されているのに、なぜ民法の特別法である会社法は、あえて127条で株式譲渡自由の原則を置いたのでしょうか?

 いろいろな答えが考えられると思います。

 例えば、「株式は債権ではなく、民法466条1項が適用されないから」という答えもあるかもしれません。しかし、つい最近まで民法は株式が債権であることを前提とした規定を置いていましたし、契約により発生する会社に対する権利である株式が債権としての性質を持つことは否定できないように思います。

 私は、会社法127条は、民法466条2項(譲渡禁止特約)の適用除外を定めたものだと考えています。

 譲渡禁止特約に違反する債権譲渡の効力については、民法でも学説が分かれていますが、悪意の譲受人との関係では譲渡は無効であると考えるのが判例通説です。

 会社法127条が、この規定の適用を排除すると、どういうことになるかというと
  会社と株主が、株式の譲渡を禁止する特約を結んだとしても、株主が、その譲渡禁止特約に違反して株式を譲渡してしまえば、譲受人がその特約について、知っていても(悪意)でも、知らなくても(善意)でも、譲渡は有効になってしまう
ということになるのです。

 正義感の強い人は、「悪意の人を何で保護するのよ!」と怒り出すかもしれません。

 しかし、このルールの良いところは、譲受人が「悪意」でも有効とするところなのです。
譲受人の善意や悪意という分かりにくい部分で、譲渡が有効かどうかを決めるルールは、争いのタネを残します。つまり、会社側に、「お前は悪意だったんだろう」という株式譲渡の効力を争うネタを与えてしまうことになるのです。
 本当は、善意なのに、悪意だと言いがかりをつけられて、譲渡の効力を争われるとすれば、株式を買う気がなくなる人もいるのではないでしょうか。
 
 逆に、悪意者でも保護するルールにしておけば、株式を買おうとしている人は、会社と株主との間でどんな約束があるかを気にせずに、株式を買うことができます。
 株主は、悪意の人に売っても譲渡が有効になるので、出資したお金(投下資本)を回収しやすくなります。

 このように株式譲渡自由の原則では、株主の投下資本回収手段を確保するために、譲受人の善悪を問わず、譲渡を有効とすることにその本質があるのです。
 
 このように説明すると、会社法を勉強しはじめたばかりの人は
  「でも、株式も、定款で譲渡制限ができるから、結局、債権譲渡自由の原則とあまりかわらないんじゃないですか」
という質問をしたくなるでしょう。

 確かに、株式には、定款で、譲渡に株式会社の承認を要するという条項を置くことができますが、株式の譲渡制限と、債権の譲渡禁止特約は、次の2つの点で大きく違います。

①   株式の譲渡制限は、譲渡自体は制限していない。
譲渡制限株式の譲渡を、株式会社が承認しないときには、会社又は指定買取人がその株式を買わなければいけません。
 つまり、いったん買い手がつきさえすれば、少なくとも、買い手か、会社か、指定買取人が買ってくれるわけで、譲渡自体が制限されるわけではありません。
 つまり、譲渡制限株式というより、譲渡『先』制限株式という方が実態を表しています。
 これに対し、債権の譲渡禁止特約は、悪意の第三者に対する譲渡は、譲渡自体が制限されます。

②  譲受人の善意悪意に譲渡の効力が左右されない。
 株主は、株式会社の承認を得ずに、譲渡制限株式を譲渡することができます。その際、譲受人が、譲渡制限について善意でも、悪意でも、譲渡自体は有効です。
 しかも、譲受人は、善意・悪意を問わず、会社に対して、
   譲渡を承認して自己を株主と認めてください
という請求することができ、もし会社がそれを断るのならば、会社か指定買取人が譲受人から譲渡制限株式を買い取らなければなりません。
 これに対し、譲渡禁止特約付の債権は、悪意の譲受人には譲渡することができませんし、悪意者が債務者に何かを要求することもできません。

以上の2点を見てもわかるとおり、実は、株式の譲渡制限という制度は、株式譲渡自由の原則の狙い(=民法の譲渡禁止特約を排除し、譲受人の善悪を問わず、譲渡を有効にする)を何も損なうことなく、譲受人が会社に株主として参加することだけを防止する制度なのです。

 しかも、譲渡制限は、定款の記載事項であり、株券の記載事項であり、登記事項でもありますから、株式を譲り受けようとする人は、その株式が譲渡制限株式であるかどうかを、すぐに調査することができます。これは、債権譲渡禁止特約が、債務者から話を聞かない限り、存在するかどうかはっきり分からないのと大きな違いです。

こうして見ると、譲渡制限株式は、一旦、買い手を見つければ、必ず誰かには譲渡できるように工夫されています。

 では、なぜ、株式に、これほどの自由譲渡性が認められているのか。
 それは、次回、お話しましょう。
 
(質問コーナー)
Q1
100パーセント子会社においても796条1項但書きの適用が除外されないのはなぜでしょうか。ご教示ください。
投稿 再編マン | 2007年6月 1日 (金) 08時20分
A1
特殊な一場合だけを捉えて、例外を認めるかどうかは、立法政策の問題です。
Q2
現在株主からの閲覧請求への対応を検討している者です。法定書類の備置・閲覧・保存に関して教えて下さい。
①株主名簿や議事録等は、「本店に」「支店に」等と備え置く場所まで規定されていますが、会計帳簿には同様の規定がありません。432条の保存場所は、本店、支店、倉庫等々、会社が任意に決められると解釈して良いでしょうか?
A2
そのとおりです。
Q3
②計算書類(等)には、備置本店5年、支店3年(442条ⅠⅡ)と保存10年(435条Ⅳ)があり、「備置」と「保存」の両方があります。基本的な質問で恐縮なのですが、そもそも「備置」と「保存」の違いは何でしょうか?
A3
備え置くのは、いつでも見せられるようにするために備え置くのです。
保存は、単に保存です。
Q4
③各書類に関して、株主は「株式会社の営業時間はいつでも閲覧等を請求できる」旨の規定がありますが、その請求先は、備え置くこととされている場所(本店または支店)に限ると解釈して良いでしょうか?またその場合、保存場所の規定が無い会計帳簿の請求先は、どこになると考えれば良いでしょうか?(旧商法293条ノ6Ⅰでは「本店において」請求可能となっていましたが、この限定が無くなっています。)
よろしくお願いいたします。
投稿 YKK | 2007年6月 1日 (金) 17時27分

A4
請求の一般原則によることになります。代表者宛に請求してください。

Q5
433条のように「総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主」といった規定の株主は1人に限られるのでしょうか?例えば、1/100の議決権を持っている株主3人が集まって請求すれば、会社は会計帳簿を閲覧させなければならないのでしょうか?
投稿 リアル初心者 | 2007年6月 2日 (土) 11時06分
A5
あわせ技で大丈夫です。

Q6
ロースクールの未修1年生です。
法学部卒ですが、未修に入りました。
勉強法について質問です。
私は、基本書と判例百選を読み込んでいくという勉強スタイルをとってきました。
それは学部時代からの習慣です。
でも、百選を読むのがとても時間がかかるし、解説も玉石混交で1年次のうちから百選を読み込むのは逆に基礎が固まらないうちは有害かなとも感じてきました。
そこで、事案と判旨だけ読んで、解説は読まずにという方法を取ろうと思うのですが、どうでしょうか?
基本を徹底的に作り上げることを重視するなら、そもそも百選なんて読まない方がいいのでしょうか?
投稿 ポン | 2007年6月 2日 (土) 23時11分
A6
百選というツールを使うかどうかは、どちらでもいいことです。
百選に載っている判例の事例の概要と判例の内容を知っておけばいいのです。

Q7
 論点でよくある、株券不発行会社が正当な理由なく名義書換を怠った場合、それにより当該株式譲受人と第三者との関係についてです。
 条文を素直に解釈すると、130条1項より、株式譲受人は第三者に対抗することはできません。
 ただ、江頭先生は、対抗できるとして、その理由を中少会社の株主名簿の記載はあまり信頼に値しない、としています。
 また判例は、指名債権の二重譲渡における優劣関係を決する基準によるべきとしています。
投稿 ももんにょ | 2007年6月 3日 (日) 19時53分
A7
130条1項という条文があるのですから、130条1項でしょう。

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