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2007年5月31日 (木)

防衛策における方向感と距離感

 今週月曜日に、三角合併と買収防衛策についてマスコミ向けのセミナーをやりました。
 
 三角合併というイメージしにくい制度の導入。
 「三角合併が外資による敵対的買収を促進する」という幻想の一般化。
  それに対抗するために、多くの企業が「新株予約権の無償割当て」等という分かりにくい制度を組み込んで買収防衛策を導入するという現実。
 
 虚実いりみだれ、二重三重に難解な展開になっている上、買収というニュース性の高い話題に関連する題材であるため、マスコミの関心も高く、セミナーには、70名以上のマスコミの方に参加していただきました。

 当日は、日経金融新聞のインタビューに載ったような内容を、具体的事例を交えつつ、お話ししたところ、さすが記者さんだけあって、ビシバシ答えにくい質問が飛んできます。質問されるのは好きなので、難問であればあるほど快感なわけですが、それでも、現在進行形の買収の展開予想は怖くて語れません。

 マスコミの方は、職業柄、買収者や会社の行動について
  全て白黒つけてほしい
  =適法か違法か、どんな裁判がでるかを明らかにしてもらいたい
のでしょうが、判例も実例もないような買収攻防戦について、事実も十分分からないのに、白黒つけることなどできません。
 特に現在進行形の話は、当事者が今後どう行動するかによって、結論が変わってくるので、現時点で白黒がつくことはありえません。
 
 ただ、たくさんの買収事例や防衛策を研究し、当事者の行動や裁判所の判断ロジックを検討していると、「こっちが、こういう行動を取れば、相手はこう動くだろう」とか、「ここまでいくと、裁判所が許してくれないだろう。」という方向感や距離感は養われるような感じがします。
 
 虚虚実実で流動的なM&Aの攻防戦において、法律家に求められているのは、この方向感や距離感であり、
 ある時点で絶対確実な事実だけをもとに従来の判例にあてはめるような保守的過ぎるアドバイスも
 事実や従来の判例を離れて、政策提言に近いような先進的過ぎるアドバイスも
当事者にとっては、無益、場合によっては有害であるような気がします。

 例えば、私が大杉先生とブログで議論した「新株予約権無償割当て方買収防衛策について総会決議が必要か」という話も
  権限分配論をベースとした従来の判例と
  会社法の立法過程で議論された買収防衛策の道具としての新株予約権の機能(いわば、立法趣旨)
を、どのように調和させて、法解釈していくかという話で、方向感と距離感が問われる問題です。

「新株発行は資金調達目的で発行するものであり、資金調達目的もないのに、買収阻止目的で新株発行やそれに類する新株予約権の発行を使ってはならない」という感覚が従来の一般的な考え方でしょう。

しかし、会社法の成立前にニッポン放送vsライブドアの一連の裁判が起こったため、会社法の審議プロセスにおいて、
    「会社法で、敵対的買収を防衛することが可能か」
という事項が最大の関心事になり、これに対し、政府サイドが「可能」と回答していたからこそ、会社法が成立したという側面があることも解釈をする上で大事な要素です。

 従来の権限分配論的考え方が、「資金調達の便宜のために新株発行の権限を株主総会から取締役会に移した」という商法改正の趣旨を受けて形成されたのと同じように、会社法では、買収防衛策として新株予約権を使うことを織り込んだ解釈が必要だと思うのです。
 
 現に金融商品取引法では、新株予約権の無償割当てを買収防衛策として用いることができることを前提に、TOB中に新株予約権の無償割当て等が行われた場合には、TOB価格の引き下げができるという規定が盛り込まれました。
 従来の「資金調達目的がなければ・・・」という見解に拘るとすると、この金融商品取引法の規定についても、うまく説明することができません。

 他方、会社法全体の構造は、権限分配論を全く捨て去ったわけではなく、会社の構造が異なるアメリカの議論をそのまま輸入することもできません。
 従来の考え方と、新しい考え方を、どこかで折り合いをつけなければならない。
 この折り合いのつけ方を考える上で、重要なのが、法律家としての「方向感や距離感」なのだと思います。

 また、最近、私が特に関心があるのは、買収防衛策の実効性です。

 仮に適法な防衛策だとしても、抜け穴があって、いとも簡単に破られてしまうのでは、法的には、なんのために導入したのかよく分かりません。実際、現在導入されている買収防衛策の中には、法的には、防衛効果に乏しいものも見受けられます。

 ただ、弁護士としては
  「法的に無意味」だから、導入しても意味がありません
とアドバイスするのが正解かどうかは、微妙です。

会社が、その防衛策を、法的な道具ではなく、買収者との交渉を行うための
   政治的な道具
と割り切って導入するのならば、それはそれで、役に立ちます。

 ですから、クライアントに、法的に無意味であることを明らかにしたうえで、その実際の効能を説明するのも「方向感や距離感」のあるアドバイスのように思うのです。

 ただ、その場合には、
  その防衛策は、法的に役に立たないことをクライアントに十分理解していただく必要があるでしょうし
  その防衛策が、政治的な機能すら果たせなくなったときに、どのような二の矢を打つかを考えておく
というのも重要です。

 そういう考え方からすると、事前警告型防衛策は、コストが安く、政治的効果を得られるという意味で優れた買収防衛策だとも思うのですが、もし、その導入によって、経営者が
  「うちは絶対大丈夫」
と誤信すると、かえって危険な状態に陥ることになることについては、結構、懸念しています。

 しかも、事前警告であまり具体的な防衛策を掲げてしまうと
    会社が、事前警告の内容に『自縛』されてしまい
    現実の買収の場面で、他の防衛策を使いづらくなる
というデメリットがあることも意識する必要があります。

 弁護士がクライアントから
「隣の会社が事前警告型防衛策を導入したから、うちも何かやりたいんですけど」
という相談を受けたとき、隣の会社の事前警告をカット&ペーストして提案するのは、法律家としての方向感と距離感に欠けるわけで、その会社に最適の防衛策を設計した上で、その防衛策の使い方と、使用上の注意点をセットにして提案するのが本道でしょう。

 新米弁護士の私が、こうした方向感と距離感について語るのは、おこがましい感じもしますし、法律家ごとに方向感と距離感が違うのは当然ですが、買収防衛策を導入する企業が増加しているにもかかわらず、それぞれの買収防衛策の実効性と適法性に関するリスクについての議論が表面に出てこないことを踏まえ、本日は、買収防衛策における方向感と距離感を話題にさせていただきました。
 
 なお、今回のセミナーのテーマであった三角合併や外資脅威論等についてもっと詳しく知りたいという方や、最近の買収に関連する動きを知りたい方は、淵邊善彦先生が、ダイヤモンド社から
   クロスボーダーM&Aの実際と対処法(ダイヤモンド社)
という本を出されているので、読んでみると、大変参考になると思います。

 ダイヤモンド社だけに一般のビジネスマンが読んでも分かる本にしあがっていますし、海外の会社と日本の会社とのM&Aについて、IN-OUT,OUT-INの双方を具体的事例を交えつつ、専門的な視点から分析されていて、私も面白く読ませていただきました。まずは、書店でパラパラめくって見てください。
 
 ちなみに、この本がベストセラーになった暁には
   きっと淵邊先生は一杯くらいおごってくれるに違いない
というのが、私の方向感と距離感です。

 次回は、買収にも関連する「株式譲渡自由の原則」について、入門編をお送りしたいと思います。
(質問コーナー)
Q1
5/25 Q15の会社関係書類の電子化についてです。
一旦書面で作成した取締役会議事録を、スキャナで読み取り電磁的記録として保存する場合、電子署名が必要とのご回答ですが、探したのですが、その条文を見つけられません。
「議事録が電磁的記録をもって『作成』されている場合」は電子署名が必要(会社法369条3項)とありますが、本件は「スキャナにより読み取ってできた電磁的記録をもって調整するファイルにより『保存』」(会社法施行規則233条1項)する場合であり、「作成だったと」とは区別されているような気もします。また、電子署名が必要というなら、だれの電子署名が必要なのか――押印者全員の電子署名が必要ということであれば、当時の役員が一人でも退任していれば古い議事録の電子化は無理でしょうし、最近のものであっても保存のためだけに役員全員から電子署名をもらうのはやや難しい気がします。
電子化に関する法令が複数にわたるせいか条文を見つけられず、質問させていただいた次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿 しん | 2007年5月25日 (金) 14時06分
A1
失礼しました。質問を勘違いしていました。
E文書法に基づく保存のことですね。私の記憶によれば、会社法関係は、E文書については電子署名は不要だったと思います。そして、その場合、原本である議事録の保存は不要になります。手元にE文書法関係の資料がないので、ちょっと調べて見ます。

Q2
100問の13問目に関して質問です。
113ページに『(発起設立では)いわゆる見せ金をすることは格別、預け合いをすることは通常考えられない』とありますが、その理由が分かりません。お忙しいところ済みませんが、宜しくお願いいたします。
投稿 択一結果待ち | 2007年5月25日 (金) 15時58分
A2
発起設立の場合は、払込取扱口座から設立前に引き出して設立費用として使用することができます。とすると、わざわざ設立までずっと口座に入れっぱなしにせずに、すぐに引き出して、発起人の借入金を返済するのが普通でしょう。金利も嵩むし。

Q3
代表と業務執行の違いについて、漠然とながらイメージを持つことができたような気がします。
Q9についてですが、前段の質問が残ってしまいました。
引き続きお願いします。
株主総会決議の招集は、「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為」(349条4項)には該当しないのでしょうか?
これに該当するとなると、代表執行役に株主総会の招集権限があることになりそうです(420条3項で349条4項を準用しているため)が、その理解で正しいのでしょうか?
投稿 旧司法試験受験生X | 2007年5月25日 (金) 18時41分
A4
「法律行為」の意味をよく理解されていないようです。一定の法律効果を内容とする意思に、その意思どおりの法律効果を生じさせるのが法律行為であり、代表の対象となるものです。
招集は、事実行為であり、会社の意思決定のための内部手続ですので、業務に関する行為に該当しません。

Q5
回答に、『「大多数の株主の利益となることが明らか」「一般人の通常の感情に照らして大多数が同意するであろう」という立証は不可能でしょう。』とありました。しかしながら、書面等によって株主に、「買収防衛策について同意するつもりでいましたか?」というように、改めてその意思を確認することによって立証可能ではないでしょうか。確かに、この手続きをとることは、書面によって、株主総会の特別決議を経ることと同様なので、後に株主総会を開いて特別決議を経て改めて防衛策を導入すればよいとも思われます。しかし、すでに防衛策が発動すべき事由が生じている場合は、過去のおいて発動すべき防衛策は有効とする利益があります。また、上記の立証を行い特別決議を経たのと同様な結果と認められる場合にまで、裁判所は差し止めるのでしょうか。
投稿 ケーリッヒ | 2007年5月25日 (金) 21時07分
A5
事後的な確認は、法律上は、何の意味もないと思います。
実質的にも、株主構成は、刻々と変化しますし、株主総会参考書類による情報開示も、質問権の行使も、株主提案も何もできないような状態で、アンケート調査を決議に変えることは不当でしょう。

Q6
新・会社法100問の68頁において、「物的分割において承継会社又は新設会社に承継されない債務の債権者は、債権者保護手続の対象となっていない」が、「会社分割の無効の訴えの提訴権を有するので(当該債権者も「承諾をしなかった債権者」に該当する)、当該訴えによってその権利保護を図ればよいという見解がある。」という記述がありますが、
他方千問の道標723頁においては、「『吸収分割について承認しなかった債権者』は、吸収分割無効の訴えの提訴権者とされている(828条2項9号)が、当該債権者については、債権者保護手続において異議を述べることができる者であることが前提とされている」ので、剰余金の配当等がなされる場合を除き、「吸収分割無効の訴えの提訴権を有しない。」とされています。
この二つの記述の整合性を図ろうとすると、百問において、債権者保護手続の対象とはなっていない債権者が、会社分割無効の訴えの提訴権者となるとされているのは、あくまで紹介されている「見解」の内容であって、執筆者は千問にあるとおり、そもそも提訴権者足り得ない、という見解をとっている、という解釈になるかと思いますが、実際はどうなのでしょうか?
仮に、当該債権者が会社分割の訴えの提訴権者足りえないという見解を両者通じて採用しておられるとしても、百問の記述は一見してわかりにくく、不親切な印象を受けます。
投稿 百問疑問 | 2007年5月25日 (金) 21時49分
A6
提訴権はないと考えています。
100問は、本の性質上、問題点については、反対説をできる限り紹介するようにしています。
わかりにくいとすれば、申し訳ありませんが、反対説を勉強するという意味で我慢してください。

Q7
総会が終われば、総会議事録と言うことになりますが、そこで質問させていただきます。
 会社法施行規則第72条第3項4号により、「株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称」が議事録の必要的記載事項になっております。
 「株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人」には、株主総会終結のときをもって選任された新任者も含まれるのでしょうか。
 個人的には株主総会開催中に取締役等であったものが対象者であるべきだと思っております。なぜなら、株主総会開催時には新任者は取締役等ではないわけですから。
 先日、横浜地方法務局に新任会計監査人について就任承諾書の議事録援用が可能かどうか問い合わせたら、出席した役員等のところに、新任会計監査人の氏名が書いてあれば、援用を認めるという回答でした。知り合いの司法書士も監査役についても同様の指摘(出席した役員等に新任監査役の氏名を記載しなければ、援用を認めない。)を受け、違和感をもたれそうです。
投稿 デラシネの法務 | 2007年5月26日 (土) 12時03分
A7
株主総会の終結をもって選任の効力が生じているのならば、総会時には、取締役として参加していないので、議事録に記載する必要はないと思います。
就任承諾書の議事録援用というのは、議事録を就任承諾として使えるかという問題です。どうも「就任承諾書」という題名の書面を議事録で代用しているというイメージの人がいるのですが、そうではなく、議事録が就任の承諾を称する書面という実質を要するかが問題なのです。その総会で選ばれた役員の承諾の意思が議事録で確認できれば、それでよいのでしょうし、確認できなければ駄目だというだけのことだと思います。

Q8
委員会設置会社の取締役の任期について質問させてください。
  株式会社の取締役の任期は その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしたときは、当該定款の変更の効力が生じた時に満了します。(332条4項3号)
 しかし、委員会設置会社の取締役について 当該規定は適用されません。(同条同項同号括弧書)
 このように、委員会設置会社の取締役について 当該規定は適用されないのはなぜですか?
投稿 maru | 2007年5月26日 (土) 18時43分
A8
委員会設置会社は、そういうものだからです。

Q9
すいません、5/25のQ4ですが、346条5項は「任期を準用しない」規定では無く、資格についての規定ではないでしょうか?「一時役員・一時会計監査人」は「役員・会計監査人」の一形態と考え、選任方法を除く他の権利義務等は同じであると考えるべきでは?そうでないと、会計監査人でいえば、9節=会計監査人396-399も同じ理屈で適用できなくなります。準用規定の有無によるアンバランスは感じますが・・・。実務の大勢でも、各監査法人側はそのように認識されていると存じます。ちなみにそのようにしないと、暫定でお願いした会計監査人を変更するときに、346①の解任要件にもあたらず、任期もないので、ややこしくなります。
投稿 T/A | 2007年5月26日 (土) 23時36分
A9
違います。一時役員、一時会計監査人は、欠員の間、その職務を行うものであり、任期はありません。任期があるほうが処理が大変です。
396条―398条は会計監査人の権限の規定ですから、会計監査人の職務を行う者には適用されます。
一時会計監査人を変更するのならば、会計監査人を選任するか、辞任してもらってください。

Q10
葉玉先生、本日は競業取引及び利益相反取引の制限(356条1項)について教えてください。
取締役が取締役会の承諾を得ずに、自己の為に競業取引を行った場合、当該競業取引自体は有効である(千問№448)と解するのに対し、取締役会の承諾なく取締役が行った利益相反取引は無効(但し相対的無効)と解釈されております(千問№453)。
どちらも同じ条文で同じように規定されており、どちらも第三者の承認が効力発生要件と解するのが素直な解釈であると思われるところ、あえて異なる結論を採用する理由につき教えてください。
私は、①利益相反の方は最高裁の判例があること、②利益相反は会社内部の身内同士の話であるのに対し、競業取引の場合は会社と関係ない第三者の利益も考慮する必要がある点、等を考慮されたのではないかと推測しておりますが、このように理解しておけばよいでしょうか?
A10
そうです。

Q11
千問№448では、「自己の為に」競業取引を行った場合は有効、と解釈しておりますが、「第三者の為に」競業取引を行った場合については触れられておりません。「第三者の為に」行った場合は、(第三者の利益も考慮する必要があるので)無効と解釈するのでしょうか?
A11
第三者のために競業取引をしている場合も取引は有効です。

Q12
買収防衛策の導入決議に関する先生のお考えを確認させて頂きたいのですが、当該決議は会社法で定める株主総会決議事項ではないので、当該決議を株主総会決議事項とすることができる旨を定款に定め、当該定款に基づく株主総会決議にしないと法的根拠に乏しい株主総会決議となるではないかを思うのですが、先生はどのようにお考えでしょうか。買収防衛策の導入決議を株主総会決議事項とすることができる旨の定款変更を行うことなく、買収防衛策の導入決議を株主総会決議事項としても法的に問題ないのでしょうか。ご教示のほど宜しくお願いいたします。
投稿 企業法務担当者 | 2007年5月27日 (日) 21時52分
A12
導入決議の意味次第ですが、事前警告ならば法的意味はないので、定款に定めても定めなくても、どうでもよいと思います。
新株予約権の無償割当であっても、実質的に有利発行に該当するようなものならば、株主総会の決議事項なので、定款の定めなく、決議することができます。
 問題は、有利発行に該当しないような新株予約権の無償割当てです。この場合、株主総会の決議だけでやろうとするならば、定款の変更が必要でしょう。
しかし、今の防衛策は、取締役会の決議で新株予約権の無償割当てをすることを前提に、株主総会の意思を確認することで「不公正性を払拭する」ということを目指しているものです。
295条2項は、所有と経営の分離の観点から、株主総会が、取締役会の権限に関する事項を勝手に決議してはいけないという趣旨の規定であり、取締役会が最終決定権を有することを前提にその判断の前提となる手続の中で株主総会の意思確認をすることまで禁止するものではないと思います。

Q13
昨日のQ6の回答①について,さらに質問をお許し下さい。①甲会社(代表取締役A,取締役BC),乙会社(代表取締役A,取締役BC)の状況で,甲会社を債務者として,乙会社所有不動産に根抵当権を設定する場合には,担保提供者の乙会社が取締役以外の第三者である根抵当権者との間で取引(設定契約)をしており,それにより保証されるのは甲会社の債務に過ぎず,取締役ABCのいずれの者の債務でもないため,会社法356条1項3号の間接取引には当たらない。また,間接取引が認められているため,計算説を採る必要がなく,乙会社の代表取締役Aが「乙会社の名義で,甲会社の計算において」当該行為を行っていることを考慮する必要はないということなのでしょうか。小生,旧ブログの記事で(2006.1.6)直接取引と名義説との関係は理解しているつもりなのですが,間接取引と名義説との関係が今ひとつ理解できていません。宜しくお願い致します。
投稿 猫太郎 | 2007年5月28日 (月) 07時51分
A13
間接取引は、取締役以外の者との間において取引をする場合ですから、この部分は、会社の相手方がどのような名義で行為したのかが重要です。
しかし、それ以外の要件「株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。」の部分は、実質判断です。
設問の例では、甲会社の債務の担保をするだけでは、通常「取締役」との利益相反がないので、利益相反取引にはならないでしょう。
ただ、甲会社の100%株主が代表取締役Aであったりするならば、取締役との利益相反が認められる場合はあるかもしれません。

Q14
会計監査人設置会社においては、一定の要件を満たせば株主総会における計算書類の承認が不要になるとされており(会社法439条)、会社計算規則163条にその要件が掲げられています。
その要件の1つとして、同条3号では「・・・監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。」という要件が定められていますが、この要件は、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社(具体的には「取締役会・監査役・会計監査人」が設置された会社)には関係がなく、結局、そのような会社では、同条1号、2号、4号、5号の要件さえ満たせば株主総会における計算書類の承認が不要となる、という理解でよろしいのでしょうか。
投稿 ガバナンス | 2007年5月28日 (月) 14時36分
A14
3号も充たさなければなりませんが、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社は、必ず3号の要件を満たすので、総会の承認は不要になります。

Q15
会社法442条の計算書類等の備置開始の「起算点」について、ご教示ください。
「非公開・非大会社・会計監査人設置会社」が、会社法320条の規定により、定時総会を行う場合、上記「起算点」は、「報告すべき事項を通知した時」と解してよろしいのでしょうか?
会社法442条が、「第319条第1項の場合にあっては、同項の提案があった日」しかカバーしておらず、決議事項が全く存在しない定時総会を、会社法320条の規定で行う場合を想定していないのは、ちょっとしたチョンボなのでしょうか??
投稿 としお | 2007年5月28日 (月) 14時39分
A15
うーん、どうするんでしょうねえ。
ちょっと調整マター

Q16

会計監査人の報酬について、同じ報酬でも株主総会決議による会計参与や監査人と異なり、会計監査人の報酬は監査役の関与の下取締役により決定されます。このように異なる理由について、ある教科書に「会計監査人は会社の機関ではないから、機関である会計参与や監査役と同様の規制を設ける理由がない」と書かれてありました。しかし326条の表題からも会計監査人は機関と認識されている以上、上記説明では納得できません。
個人的には、会計参与や監査役は取締役と相互補完的な役割を果たすのに対して、会計監査人は監査役と一部重複する権利を有し、役割分担する関係にあるという点で異なることが、報酬決定手続の違いに現れているように思うのです。この点で、上記教科書の説明及び自説の妥当性につき、葉玉先生のご意見をお聞かせください。
よろしくお願い致します。

投稿 favre4ever | 2007年5月30日 (水) 09時35分
A16
そもそも、機関であるかどうかと報酬を誰が決めるかなんて、論理的な関係はないと思います。旧法下の委員会設置会社を見てください。

報酬契約は本来は業務執行行為であることを前提に
 取締役はお手盛り防止から総会決議
 監査役は独立性確保から総会決議
になっています。
 会計監査人も独立性確保が必要ですから、監査役の同意が必要としています。
 なぜ、総会決議ではないかというと、
監査の主役は、監査役であり、会計監査人は、その補助的立場だから、監査役が同意すれば、十分だという点と
監査法人への報酬を総会マターにしたくないという実務家の気持ち
でしょう。

Q17
ロースクールに通っている者です。進路についてご相談させてください。

先生が会社法の立法担当者であったように、私は立法作業に興味を持っているのですが、立法作業に携わるには、法曹三者のうちどのようなルートがあるのでしょうか。裁判官・検事・弁護士からそれぞれルートがあるとは思うのですが、それぞれのルートのメリット等を教えてください。

投稿 C.D. | 2007年5月31日 (木) 09時42分
A17
 立案作業に携わろうなんて、本当に奇特な方です・・・。
 確実な方法はありませんが、法曹三者の中では、検事が一番立法作業にかかわる可能性が高いような気がします。
 検事で普通に5年くらい刑事事件の捜査公判をやった後、刑事局や民事局等に入るパターンがあります。
 裁判官だと、3年目くらいで民事局にきたりしていますが、これは、時期によっても大分違いますね。
 弁護士だと、任期付認容がありますので、応募している役所に申し込むと、人柄能力をみて採用されることがあります。
 あと、法曹三者になったあと名を売って、立候補し国会議員になれば、本当の立法作業ができます(笑)
Q18

いつもこのブログを拝見し、実務の参考にさせていただいております。
確認させていただきたい点がありますので、コメントさせていただきます。
「千問の道標」498ページに記載のQ672等に関連して、会社法における会計監査人は設置していないが、有価証券報告書を提出している会社の場合であっても、EDINET開示によって決算公告を省略できると解してよろしいでしょうか。
(条文を読む限り省略可能と解しましたが、念のためにご教授ください。)
よろしくお願いいたします。
投稿 京女卒業生 | 2007年5月31日 (木) 14時06分

A18
有報提出会社は、決算公告を省略できます。

Q19
吸収合併の消滅会社の取締役が、新たに存続会社の取締役に選任されない場合は、当該取締役は合併効力発生日に自動的に退任になりますよね。合併の効力発生日後に、会社(存続会社)が、「あ、あの取締役に退職慰労金を払わなきゃ(そういえば払ってなかった)」と気づいたとします。この時点から、この人に退職慰労金を支払うには、どうすればよいでしょうか? つまり、退職慰労金贈呈の株主総会決議は、本来ならば消滅会社の株主総会で行うべきだと思いますが、もう消滅会社は存在しません。存続会社の株主総会で退職慰労金贈呈の決議を行って支払うことが可能でしょうか? 他に妙案があれば、ご教示願います。

投稿 合併役員 | 2007年5月31日 (木) 20時22分

A19
 難問ですが、包括承継を根拠に、存続会社の総会で報酬決議で出すのでしょうね。

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コメント

100パーセント子会社においても796条1項但書きの適用が除外されないのはなぜでしょうか。ご教示ください。

投稿: 再編マン | 2007年6月 1日 (金) 08時20分

現在株主からの閲覧請求への対応を検討している者です。法定書類の備置・閲覧・保存に関して教えて下さい。
①株主名簿や議事録等は、「本店に」「支店に」等と備え置く場所まで規定されていますが、会計帳簿には同様の規定がありません。432条の保存場所は、本店、支店、倉庫等々、会社が任意に決められると解釈して良いでしょうか?
②計算書類(等)には、備置本店5年、支店3年(442条ⅠⅡ)と保存10年(435条Ⅳ)があり、「備置」と「保存」の両方があります。基本的な質問で恐縮なのですが、そもそも「備置」と「保存」の違いは何でしょうか?
③各書類に関して、株主は「株式会社の営業時間はいつでも閲覧等を請求できる」旨の規定がありますが、その請求先は、備え置くこととされている場所(本店または支店)に限ると解釈して良いでしょうか?またその場合、保存場所の規定が無い会計帳簿の請求先は、どこになると考えれば良いでしょうか?(旧商法293条ノ6Ⅰでは「本店において」請求可能となっていましたが、この限定が無くなっています。)
よろしくお願いいたします。

投稿: YKK | 2007年6月 1日 (金) 17時27分

葉玉先生、こんにちは。

FAQかもしれませんが、教えてください。

433条のように「総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主」といった規定の株主は1人に限られるのでしょうか?例えば、1/100の議決権を持っている株主3人が集まって請求すれば、会社は会計帳簿を閲覧させなければならないのでしょうか?

よろしくお願いします。

投稿: リアル初心者 | 2007年6月 2日 (土) 11時06分

Q9の件、ご回答ありがとうございました。もう一度各種のケースをあたってみたいと思います。

投稿: T/A | 2007年6月 2日 (土) 12時11分

 反対株主の株式買取請求における公告について質問させてください。
 785条4項および797条4項は 通知を公告に代えることができる例外要件を定めています。そして各条1号は 公開会社では会社の承認なく株式の譲渡ができるので、株主名簿に記載されたものに通知するよりも公告で株主名簿に記載されていない現在の株主に公告したほうが適切な場合があることを趣旨とすると理解しています。
 まだ各条2号は すでに株主総会の召集通知で株主に通知しているので再度通知する必要性が少ないことを趣旨とすると理解しています。
 この趣旨は新設合併等の手続きにも当てはまると考えますが、
806条4項は無条件に通知を公告に代えることができると定めています。
 この理由を教えてくだされば幸いです。

投稿: maru | 2007年6月 2日 (土) 16時49分

ロースクールの未修1年生です。
法学部卒ですが、未修に入りました。
勉強法について質問です。
私は、基本書と判例百選を読み込んでいくという勉強スタイルをとってきました。
それは学部時代からの習慣です。
でも、百選を読むのがとても時間がかかるし、解説も玉石混交で1年次のうちから百選を読み込むのは逆に基礎が固まらないうちは有害かなとも感じてきました。
そこで、事案と判旨だけ読んで、解説は読まずにという方法を取ろうと思うのですが、どうでしょうか?
基本を徹底的に作り上げることを重視するなら、そもそも百選なんて読まない方がいいのでしょうか?

投稿: ポン | 2007年6月 2日 (土) 23時11分

 葉玉先生、こんにちは。先日、新司法試験を受けてきたものです。玉砕覚悟の実力でしたので、今週の択一の結果がはらはらです。
 株式譲渡について質問です(もしかしたらずっと前の日記にあるかもしれませんが・・・そのときは申し訳ございません)。

 論点でよくある、株券不発行会社が正当な理由なく名義書換を怠った場合、それにより当該株式譲受人と第三者との関係についてです。
 条文を素直に解釈すると、130条1項より、株式譲受人は第三者に対抗することはできません。
 ただ、江頭先生は、対抗できるとして、その理由を中少会社の株主名簿の記載はあまり信頼に値しない、としています。
 また判例は、指名債権の二重譲渡における優劣関係を決する基準によるべきとしています。

 どのように考えるのがよいでしょうか。私見は、130条をストレートに解釈して、対抗できないと考えます。ただ、江頭先生の指摘も気になるところですし、判例の解釈は株式譲受人の保護になりえますが、とてもややこしくなるし・・・

 先生はどのようにお考えでしょうか。教えて下さい。
 長文を読んでくださいまして、ありがとうございました。

投稿: ももんにょ | 2007年6月 3日 (日) 19時53分

葉玉先生、初めまして。
私は、現在会計士の勉強をしているものです。

直接試験の勉強とは関係ないことなのですが、ホームページ等でいろいろ
検索しても分からなかったので質問させて頂きます。

最近の会社でよくCEOとかCOOとかいう役職がありますが単にCEOと言う
場合は代表権は含まれていないことになるのでしょうか?

それとも会社の内部規定によって変わってくるのですか?

又、この役職は株式会社のみ使えるものなのでしょうか?

ご教授の程宜しくお願い申し上げます。

投稿: ヴィンス | 2007年6月 7日 (木) 12時10分

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