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2007年5月31日 (木)

防衛策における方向感と距離感

 今週月曜日に、三角合併と買収防衛策についてマスコミ向けのセミナーをやりました。
 
 三角合併というイメージしにくい制度の導入。
 「三角合併が外資による敵対的買収を促進する」という幻想の一般化。
  それに対抗するために、多くの企業が「新株予約権の無償割当て」等という分かりにくい制度を組み込んで買収防衛策を導入するという現実。
 
 虚実いりみだれ、二重三重に難解な展開になっている上、買収というニュース性の高い話題に関連する題材であるため、マスコミの関心も高く、セミナーには、70名以上のマスコミの方に参加していただきました。

 当日は、日経金融新聞のインタビューに載ったような内容を、具体的事例を交えつつ、お話ししたところ、さすが記者さんだけあって、ビシバシ答えにくい質問が飛んできます。質問されるのは好きなので、難問であればあるほど快感なわけですが、それでも、現在進行形の買収の展開予想は怖くて語れません。

 マスコミの方は、職業柄、買収者や会社の行動について
  全て白黒つけてほしい
  =適法か違法か、どんな裁判がでるかを明らかにしてもらいたい
のでしょうが、判例も実例もないような買収攻防戦について、事実も十分分からないのに、白黒つけることなどできません。
 特に現在進行形の話は、当事者が今後どう行動するかによって、結論が変わってくるので、現時点で白黒がつくことはありえません。
 
 ただ、たくさんの買収事例や防衛策を研究し、当事者の行動や裁判所の判断ロジックを検討していると、「こっちが、こういう行動を取れば、相手はこう動くだろう」とか、「ここまでいくと、裁判所が許してくれないだろう。」という方向感や距離感は養われるような感じがします。
 
 虚虚実実で流動的なM&Aの攻防戦において、法律家に求められているのは、この方向感や距離感であり、
 ある時点で絶対確実な事実だけをもとに従来の判例にあてはめるような保守的過ぎるアドバイスも
 事実や従来の判例を離れて、政策提言に近いような先進的過ぎるアドバイスも
当事者にとっては、無益、場合によっては有害であるような気がします。

 例えば、私が大杉先生とブログで議論した「新株予約権無償割当て方買収防衛策について総会決議が必要か」という話も
  権限分配論をベースとした従来の判例と
  会社法の立法過程で議論された買収防衛策の道具としての新株予約権の機能(いわば、立法趣旨)
を、どのように調和させて、法解釈していくかという話で、方向感と距離感が問われる問題です。

「新株発行は資金調達目的で発行するものであり、資金調達目的もないのに、買収阻止目的で新株発行やそれに類する新株予約権の発行を使ってはならない」という感覚が従来の一般的な考え方でしょう。

しかし、会社法の成立前にニッポン放送vsライブドアの一連の裁判が起こったため、会社法の審議プロセスにおいて、
    「会社法で、敵対的買収を防衛することが可能か」
という事項が最大の関心事になり、これに対し、政府サイドが「可能」と回答していたからこそ、会社法が成立したという側面があることも解釈をする上で大事な要素です。

 従来の権限分配論的考え方が、「資金調達の便宜のために新株発行の権限を株主総会から取締役会に移した」という商法改正の趣旨を受けて形成されたのと同じように、会社法では、買収防衛策として新株予約権を使うことを織り込んだ解釈が必要だと思うのです。
 
 現に金融商品取引法では、新株予約権の無償割当てを買収防衛策として用いることができることを前提に、TOB中に新株予約権の無償割当て等が行われた場合には、TOB価格の引き下げができるという規定が盛り込まれました。
 従来の「資金調達目的がなければ・・・」という見解に拘るとすると、この金融商品取引法の規定についても、うまく説明することができません。

 他方、会社法全体の構造は、権限分配論を全く捨て去ったわけではなく、会社の構造が異なるアメリカの議論をそのまま輸入することもできません。
 従来の考え方と、新しい考え方を、どこかで折り合いをつけなければならない。
 この折り合いのつけ方を考える上で、重要なのが、法律家としての「方向感や距離感」なのだと思います。

 また、最近、私が特に関心があるのは、買収防衛策の実効性です。

 仮に適法な防衛策だとしても、抜け穴があって、いとも簡単に破られてしまうのでは、法的には、なんのために導入したのかよく分かりません。実際、現在導入されている買収防衛策の中には、法的には、防衛効果に乏しいものも見受けられます。

 ただ、弁護士としては
  「法的に無意味」だから、導入しても意味がありません
とアドバイスするのが正解かどうかは、微妙です。

会社が、その防衛策を、法的な道具ではなく、買収者との交渉を行うための
   政治的な道具
と割り切って導入するのならば、それはそれで、役に立ちます。

 ですから、クライアントに、法的に無意味であることを明らかにしたうえで、その実際の効能を説明するのも「方向感や距離感」のあるアドバイスのように思うのです。

 ただ、その場合には、
  その防衛策は、法的に役に立たないことをクライアントに十分理解していただく必要があるでしょうし
  その防衛策が、政治的な機能すら果たせなくなったときに、どのような二の矢を打つかを考えておく
というのも重要です。

 そういう考え方からすると、事前警告型防衛策は、コストが安く、政治的効果を得られるという意味で優れた買収防衛策だとも思うのですが、もし、その導入によって、経営者が
  「うちは絶対大丈夫」
と誤信すると、かえって危険な状態に陥ることになることについては、結構、懸念しています。

 しかも、事前警告であまり具体的な防衛策を掲げてしまうと
    会社が、事前警告の内容に『自縛』されてしまい
    現実の買収の場面で、他の防衛策を使いづらくなる
というデメリットがあることも意識する必要があります。

 弁護士がクライアントから
「隣の会社が事前警告型防衛策を導入したから、うちも何かやりたいんですけど」
という相談を受けたとき、隣の会社の事前警告をカット&ペーストして提案するのは、法律家としての方向感と距離感に欠けるわけで、その会社に最適の防衛策を設計した上で、その防衛策の使い方と、使用上の注意点をセットにして提案するのが本道でしょう。

 新米弁護士の私が、こうした方向感と距離感について語るのは、おこがましい感じもしますし、法律家ごとに方向感と距離感が違うのは当然ですが、買収防衛策を導入する企業が増加しているにもかかわらず、それぞれの買収防衛策の実効性と適法性に関するリスクについての議論が表面に出てこないことを踏まえ、本日は、買収防衛策における方向感と距離感を話題にさせていただきました。
 
 なお、今回のセミナーのテーマであった三角合併や外資脅威論等についてもっと詳しく知りたいという方や、最近の買収に関連する動きを知りたい方は、淵邊善彦先生が、ダイヤモンド社から
   クロスボーダーM&Aの実際と対処法(ダイヤモンド社)
という本を出されているので、読んでみると、大変参考になると思います。

 ダイヤモンド社だけに一般のビジネスマンが読んでも分かる本にしあがっていますし、海外の会社と日本の会社とのM&Aについて、IN-OUT,OUT-INの双方を具体的事例を交えつつ、専門的な視点から分析されていて、私も面白く読ませていただきました。まずは、書店でパラパラめくって見てください。
 
 ちなみに、この本がベストセラーになった暁には
   きっと淵邊先生は一杯くらいおごってくれるに違いない
というのが、私の方向感と距離感です。

 次回は、買収にも関連する「株式譲渡自由の原則」について、入門編をお送りしたいと思います。
(質問コーナー)
Q1
5/25 Q15の会社関係書類の電子化についてです。
一旦書面で作成した取締役会議事録を、スキャナで読み取り電磁的記録として保存する場合、電子署名が必要とのご回答ですが、探したのですが、その条文を見つけられません。
「議事録が電磁的記録をもって『作成』されている場合」は電子署名が必要(会社法369条3項)とありますが、本件は「スキャナにより読み取ってできた電磁的記録をもって調整するファイルにより『保存』」(会社法施行規則233条1項)する場合であり、「作成だったと」とは区別されているような気もします。また、電子署名が必要というなら、だれの電子署名が必要なのか――押印者全員の電子署名が必要ということであれば、当時の役員が一人でも退任していれば古い議事録の電子化は無理でしょうし、最近のものであっても保存のためだけに役員全員から電子署名をもらうのはやや難しい気がします。
電子化に関する法令が複数にわたるせいか条文を見つけられず、質問させていただいた次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿 しん | 2007年5月25日 (金) 14時06分
A1
失礼しました。質問を勘違いしていました。
E文書法に基づく保存のことですね。私の記憶によれば、会社法関係は、E文書については電子署名は不要だったと思います。そして、その場合、原本である議事録の保存は不要になります。手元にE文書法関係の資料がないので、ちょっと調べて見ます。

Q2
100問の13問目に関して質問です。
113ページに『(発起設立では)いわゆる見せ金をすることは格別、預け合いをすることは通常考えられない』とありますが、その理由が分かりません。お忙しいところ済みませんが、宜しくお願いいたします。
投稿 択一結果待ち | 2007年5月25日 (金) 15時58分
A2
発起設立の場合は、払込取扱口座から設立前に引き出して設立費用として使用することができます。とすると、わざわざ設立までずっと口座に入れっぱなしにせずに、すぐに引き出して、発起人の借入金を返済するのが普通でしょう。金利も嵩むし。

Q3
代表と業務執行の違いについて、漠然とながらイメージを持つことができたような気がします。
Q9についてですが、前段の質問が残ってしまいました。
引き続きお願いします。
株主総会決議の招集は、「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為」(349条4項)には該当しないのでしょうか?
これに該当するとなると、代表執行役に株主総会の招集権限があることになりそうです(420条3項で349条4項を準用しているため)が、その理解で正しいのでしょうか?
投稿 旧司法試験受験生X | 2007年5月25日 (金) 18時41分
A4
「法律行為」の意味をよく理解されていないようです。一定の法律効果を内容とする意思に、その意思どおりの法律効果を生じさせるのが法律行為であり、代表の対象となるものです。
招集は、事実行為であり、会社の意思決定のための内部手続ですので、業務に関する行為に該当しません。

Q5
回答に、『「大多数の株主の利益となることが明らか」「一般人の通常の感情に照らして大多数が同意するであろう」という立証は不可能でしょう。』とありました。しかしながら、書面等によって株主に、「買収防衛策について同意するつもりでいましたか?」というように、改めてその意思を確認することによって立証可能ではないでしょうか。確かに、この手続きをとることは、書面によって、株主総会の特別決議を経ることと同様なので、後に株主総会を開いて特別決議を経て改めて防衛策を導入すればよいとも思われます。しかし、すでに防衛策が発動すべき事由が生じている場合は、過去のおいて発動すべき防衛策は有効とする利益があります。また、上記の立証を行い特別決議を経たのと同様な結果と認められる場合にまで、裁判所は差し止めるのでしょうか。
投稿 ケーリッヒ | 2007年5月25日 (金) 21時07分
A5
事後的な確認は、法律上は、何の意味もないと思います。
実質的にも、株主構成は、刻々と変化しますし、株主総会参考書類による情報開示も、質問権の行使も、株主提案も何もできないような状態で、アンケート調査を決議に変えることは不当でしょう。

Q6
新・会社法100問の68頁において、「物的分割において承継会社又は新設会社に承継されない債務の債権者は、債権者保護手続の対象となっていない」が、「会社分割の無効の訴えの提訴権を有するので(当該債権者も「承諾をしなかった債権者」に該当する)、当該訴えによってその権利保護を図ればよいという見解がある。」という記述がありますが、
他方千問の道標723頁においては、「『吸収分割について承認しなかった債権者』は、吸収分割無効の訴えの提訴権者とされている(828条2項9号)が、当該債権者については、債権者保護手続において異議を述べることができる者であることが前提とされている」ので、剰余金の配当等がなされる場合を除き、「吸収分割無効の訴えの提訴権を有しない。」とされています。
この二つの記述の整合性を図ろうとすると、百問において、債権者保護手続の対象とはなっていない債権者が、会社分割無効の訴えの提訴権者となるとされているのは、あくまで紹介されている「見解」の内容であって、執筆者は千問にあるとおり、そもそも提訴権者足り得ない、という見解をとっている、という解釈になるかと思いますが、実際はどうなのでしょうか?
仮に、当該債権者が会社分割の訴えの提訴権者足りえないという見解を両者通じて採用しておられるとしても、百問の記述は一見してわかりにくく、不親切な印象を受けます。
投稿 百問疑問 | 2007年5月25日 (金) 21時49分
A6
提訴権はないと考えています。
100問は、本の性質上、問題点については、反対説をできる限り紹介するようにしています。
わかりにくいとすれば、申し訳ありませんが、反対説を勉強するという意味で我慢してください。

Q7
総会が終われば、総会議事録と言うことになりますが、そこで質問させていただきます。
 会社法施行規則第72条第3項4号により、「株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称」が議事録の必要的記載事項になっております。
 「株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人」には、株主総会終結のときをもって選任された新任者も含まれるのでしょうか。
 個人的には株主総会開催中に取締役等であったものが対象者であるべきだと思っております。なぜなら、株主総会開催時には新任者は取締役等ではないわけですから。
 先日、横浜地方法務局に新任会計監査人について就任承諾書の議事録援用が可能かどうか問い合わせたら、出席した役員等のところに、新任会計監査人の氏名が書いてあれば、援用を認めるという回答でした。知り合いの司法書士も監査役についても同様の指摘(出席した役員等に新任監査役の氏名を記載しなければ、援用を認めない。)を受け、違和感をもたれそうです。
投稿 デラシネの法務 | 2007年5月26日 (土) 12時03分
A7
株主総会の終結をもって選任の効力が生じているのならば、総会時には、取締役として参加していないので、議事録に記載する必要はないと思います。
就任承諾書の議事録援用というのは、議事録を就任承諾として使えるかという問題です。どうも「就任承諾書」という題名の書面を議事録で代用しているというイメージの人がいるのですが、そうではなく、議事録が就任の承諾を称する書面という実質を要するかが問題なのです。その総会で選ばれた役員の承諾の意思が議事録で確認できれば、それでよいのでしょうし、確認できなければ駄目だというだけのことだと思います。

Q8
委員会設置会社の取締役の任期について質問させてください。
  株式会社の取締役の任期は その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしたときは、当該定款の変更の効力が生じた時に満了します。(332条4項3号)
 しかし、委員会設置会社の取締役について 当該規定は適用されません。(同条同項同号括弧書)
 このように、委員会設置会社の取締役について 当該規定は適用されないのはなぜですか?
投稿 maru | 2007年5月26日 (土) 18時43分
A8
委員会設置会社は、そういうものだからです。

Q9
すいません、5/25のQ4ですが、346条5項は「任期を準用しない」規定では無く、資格についての規定ではないでしょうか?「一時役員・一時会計監査人」は「役員・会計監査人」の一形態と考え、選任方法を除く他の権利義務等は同じであると考えるべきでは?そうでないと、会計監査人でいえば、9節=会計監査人396-399も同じ理屈で適用できなくなります。準用規定の有無によるアンバランスは感じますが・・・。実務の大勢でも、各監査法人側はそのように認識されていると存じます。ちなみにそのようにしないと、暫定でお願いした会計監査人を変更するときに、346①の解任要件にもあたらず、任期もないので、ややこしくなります。
投稿 T/A | 2007年5月26日 (土) 23時36分
A9
違います。一時役員、一時会計監査人は、欠員の間、その職務を行うものであり、任期はありません。任期があるほうが処理が大変です。
396条―398条は会計監査人の権限の規定ですから、会計監査人の職務を行う者には適用されます。
一時会計監査人を変更するのならば、会計監査人を選任するか、辞任してもらってください。

Q10
葉玉先生、本日は競業取引及び利益相反取引の制限(356条1項)について教えてください。
取締役が取締役会の承諾を得ずに、自己の為に競業取引を行った場合、当該競業取引自体は有効である(千問№448)と解するのに対し、取締役会の承諾なく取締役が行った利益相反取引は無効(但し相対的無効)と解釈されております(千問№453)。
どちらも同じ条文で同じように規定されており、どちらも第三者の承認が効力発生要件と解するのが素直な解釈であると思われるところ、あえて異なる結論を採用する理由につき教えてください。
私は、①利益相反の方は最高裁の判例があること、②利益相反は会社内部の身内同士の話であるのに対し、競業取引の場合は会社と関係ない第三者の利益も考慮する必要がある点、等を考慮されたのではないかと推測しておりますが、このように理解しておけばよいでしょうか?
A10
そうです。

Q11
千問№448では、「自己の為に」競業取引を行った場合は有効、と解釈しておりますが、「第三者の為に」競業取引を行った場合については触れられておりません。「第三者の為に」行った場合は、(第三者の利益も考慮する必要があるので)無効と解釈するのでしょうか?
A11
第三者のために競業取引をしている場合も取引は有効です。

Q12
買収防衛策の導入決議に関する先生のお考えを確認させて頂きたいのですが、当該決議は会社法で定める株主総会決議事項ではないので、当該決議を株主総会決議事項とすることができる旨を定款に定め、当該定款に基づく株主総会決議にしないと法的根拠に乏しい株主総会決議となるではないかを思うのですが、先生はどのようにお考えでしょうか。買収防衛策の導入決議を株主総会決議事項とすることができる旨の定款変更を行うことなく、買収防衛策の導入決議を株主総会決議事項としても法的に問題ないのでしょうか。ご教示のほど宜しくお願いいたします。
投稿 企業法務担当者 | 2007年5月27日 (日) 21時52分
A12
導入決議の意味次第ですが、事前警告ならば法的意味はないので、定款に定めても定めなくても、どうでもよいと思います。
新株予約権の無償割当であっても、実質的に有利発行に該当するようなものならば、株主総会の決議事項なので、定款の定めなく、決議することができます。
 問題は、有利発行に該当しないような新株予約権の無償割当てです。この場合、株主総会の決議だけでやろうとするならば、定款の変更が必要でしょう。
しかし、今の防衛策は、取締役会の決議で新株予約権の無償割当てをすることを前提に、株主総会の意思を確認することで「不公正性を払拭する」ということを目指しているものです。
295条2項は、所有と経営の分離の観点から、株主総会が、取締役会の権限に関する事項を勝手に決議してはいけないという趣旨の規定であり、取締役会が最終決定権を有することを前提にその判断の前提となる手続の中で株主総会の意思確認をすることまで禁止するものではないと思います。

Q13
昨日のQ6の回答①について,さらに質問をお許し下さい。①甲会社(代表取締役A,取締役BC),乙会社(代表取締役A,取締役BC)の状況で,甲会社を債務者として,乙会社所有不動産に根抵当権を設定する場合には,担保提供者の乙会社が取締役以外の第三者である根抵当権者との間で取引(設定契約)をしており,それにより保証されるのは甲会社の債務に過ぎず,取締役ABCのいずれの者の債務でもないため,会社法356条1項3号の間接取引には当たらない。また,間接取引が認められているため,計算説を採る必要がなく,乙会社の代表取締役Aが「乙会社の名義で,甲会社の計算において」当該行為を行っていることを考慮する必要はないということなのでしょうか。小生,旧ブログの記事で(2006.1.6)直接取引と名義説との関係は理解しているつもりなのですが,間接取引と名義説との関係が今ひとつ理解できていません。宜しくお願い致します。
投稿 猫太郎 | 2007年5月28日 (月) 07時51分
A13
間接取引は、取締役以外の者との間において取引をする場合ですから、この部分は、会社の相手方がどのような名義で行為したのかが重要です。
しかし、それ以外の要件「株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。」の部分は、実質判断です。
設問の例では、甲会社の債務の担保をするだけでは、通常「取締役」との利益相反がないので、利益相反取引にはならないでしょう。
ただ、甲会社の100%株主が代表取締役Aであったりするならば、取締役との利益相反が認められる場合はあるかもしれません。

Q14
会計監査人設置会社においては、一定の要件を満たせば株主総会における計算書類の承認が不要になるとされており(会社法439条)、会社計算規則163条にその要件が掲げられています。
その要件の1つとして、同条3号では「・・・監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。」という要件が定められていますが、この要件は、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社(具体的には「取締役会・監査役・会計監査人」が設置された会社)には関係がなく、結局、そのような会社では、同条1号、2号、4号、5号の要件さえ満たせば株主総会における計算書類の承認が不要となる、という理解でよろしいのでしょうか。
投稿 ガバナンス | 2007年5月28日 (月) 14時36分
A14
3号も充たさなければなりませんが、監査役会や監査委員会のない会計監査人設置会社は、必ず3号の要件を満たすので、総会の承認は不要になります。

Q15
会社法442条の計算書類等の備置開始の「起算点」について、ご教示ください。
「非公開・非大会社・会計監査人設置会社」が、会社法320条の規定により、定時総会を行う場合、上記「起算点」は、「報告すべき事項を通知した時」と解してよろしいのでしょうか?
会社法442条が、「第319条第1項の場合にあっては、同項の提案があった日」しかカバーしておらず、決議事項が全く存在しない定時総会を、会社法320条の規定で行う場合を想定していないのは、ちょっとしたチョンボなのでしょうか??
投稿 としお | 2007年5月28日 (月) 14時39分
A15
うーん、どうするんでしょうねえ。
ちょっと調整マター

Q16

会計監査人の報酬について、同じ報酬でも株主総会決議による会計参与や監査人と異なり、会計監査人の報酬は監査役の関与の下取締役により決定されます。このように異なる理由について、ある教科書に「会計監査人は会社の機関ではないから、機関である会計参与や監査役と同様の規制を設ける理由がない」と書かれてありました。しかし326条の表題からも会計監査人は機関と認識されている以上、上記説明では納得できません。
個人的には、会計参与や監査役は取締役と相互補完的な役割を果たすのに対して、会計監査人は監査役と一部重複する権利を有し、役割分担する関係にあるという点で異なることが、報酬決定手続の違いに現れているように思うのです。この点で、上記教科書の説明及び自説の妥当性につき、葉玉先生のご意見をお聞かせください。
よろしくお願い致します。

投稿 favre4ever | 2007年5月30日 (水) 09時35分
A16
そもそも、機関であるかどうかと報酬を誰が決めるかなんて、論理的な関係はないと思います。旧法下の委員会設置会社を見てください。

報酬契約は本来は業務執行行為であることを前提に
 取締役はお手盛り防止から総会決議
 監査役は独立性確保から総会決議
になっています。
 会計監査人も独立性確保が必要ですから、監査役の同意が必要としています。
 なぜ、総会決議ではないかというと、
監査の主役は、監査役であり、会計監査人は、その補助的立場だから、監査役が同意すれば、十分だという点と
監査法人への報酬を総会マターにしたくないという実務家の気持ち
でしょう。

Q17
ロースクールに通っている者です。進路についてご相談させてください。

先生が会社法の立法担当者であったように、私は立法作業に興味を持っているのですが、立法作業に携わるには、法曹三者のうちどのようなルートがあるのでしょうか。裁判官・検事・弁護士からそれぞれルートがあるとは思うのですが、それぞれのルートのメリット等を教えてください。

投稿 C.D. | 2007年5月31日 (木) 09時42分
A17
 立案作業に携わろうなんて、本当に奇特な方です・・・。
 確実な方法はありませんが、法曹三者の中では、検事が一番立法作業にかかわる可能性が高いような気がします。
 検事で普通に5年くらい刑事事件の捜査公判をやった後、刑事局や民事局等に入るパターンがあります。
 裁判官だと、3年目くらいで民事局にきたりしていますが、これは、時期によっても大分違いますね。
 弁護士だと、任期付認容がありますので、応募している役所に申し込むと、人柄能力をみて採用されることがあります。
 あと、法曹三者になったあと名を売って、立候補し国会議員になれば、本当の立法作業ができます(笑)
Q18

いつもこのブログを拝見し、実務の参考にさせていただいております。
確認させていただきたい点がありますので、コメントさせていただきます。
「千問の道標」498ページに記載のQ672等に関連して、会社法における会計監査人は設置していないが、有価証券報告書を提出している会社の場合であっても、EDINET開示によって決算公告を省略できると解してよろしいでしょうか。
(条文を読む限り省略可能と解しましたが、念のためにご教授ください。)
よろしくお願いいたします。
投稿 京女卒業生 | 2007年5月31日 (木) 14時06分

A18
有報提出会社は、決算公告を省略できます。

Q19
吸収合併の消滅会社の取締役が、新たに存続会社の取締役に選任されない場合は、当該取締役は合併効力発生日に自動的に退任になりますよね。合併の効力発生日後に、会社(存続会社)が、「あ、あの取締役に退職慰労金を払わなきゃ(そういえば払ってなかった)」と気づいたとします。この時点から、この人に退職慰労金を支払うには、どうすればよいでしょうか? つまり、退職慰労金贈呈の株主総会決議は、本来ならば消滅会社の株主総会で行うべきだと思いますが、もう消滅会社は存在しません。存続会社の株主総会で退職慰労金贈呈の決議を行って支払うことが可能でしょうか? 他に妙案があれば、ご教示願います。

投稿 合併役員 | 2007年5月31日 (木) 20時22分

A19
 難問ですが、包括承継を根拠に、存続会社の総会で報酬決議で出すのでしょうね。

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2007年5月25日 (金)

TMIを選んだ理由

今週は、論文、意見書、各種講演会のレジュメなどの締め切りが重なって、ブログの更新がおろそかになってしまいました(まだ若干宿題が残っています)。

ちなみに、最近、私は、日経新聞に2回登場しました。

1回目は、買収防衛策について、大杉先生のコメントとともに私のコメントが登場。
ブログの議論が、紙面に反映していて、これはこれで面白い展開です。

2回目は、ヤメ検弁護士特集。
検事総長や検事長経験者が大きく取り上げられる中、私は
  ブログ著名人
というくくりで、落合弁護士とともに分類されていました。
 このブログがなければ、そうそうたるメンバーの中に私の名前が載ることはなかったと思うと、「ブログ著名人」という分類はなかなか適切かも(笑)。

さて、そろそろ法律の話題を書きたいところですが、ちょっと書き疲れているので、今日は、私がTMI総合法律事務所に入った理由について書きたいと思います。

あぴゃさんから、次の質問をいただきました。
「私は修習生で招来は企業法務をやりたいと考えているのですが,どこに就職しようか迷っています。葉玉先生がTMIに就職を決められた理由は何なのでしょうか。いろいろな所からお声がかかっていたのではないかと想像しますが。差し支えない範囲で結構ですので,葉玉先生ならではの事務所観についてお話しいただければ幸いです。」

弁護士は、何百人という大事務所に所属していても、最後は自分の責任で仕事をするもの。
だからこそ、自分がやりたいことがやれる事務所で働きたい。
というのが、私の「事務所観」です。

 私は、検事を辞めようとおもったとき、最初、妻子のいる熊本で弁護士をしようかなと思っていました。
 しかし、私は実家が商売人であったため、子供の頃から企業法務や税務に大変関心がありましたし、民事局時代の友人が働いている、いわゆる4大事務所を回り、彼らが企業法務の世界で充実した仕事をしているのを見て
   自分がやりたいのは、やっぱりこの分野かな
と思い、家族と相談して、東京で企業法務をやることに決めました。

 東京には星の数ほど法律事務所があり、また、最初から独立するのも選択肢だと思っていましたが
  1人の事務所では、1人でやれることしかやれない。
  100人以上の事務所なら、1人でやれることだけではなく、他の弁護士と協力して、ほとんどのケースに対応することができる。
と考え、まず弁護士100人以上の事務所という基準で候補を絞りました。(なお、100人以上の事務所であれば、人数的な制約でできないケースは稀なので、100人か200人かというところにはあまりこだわりはありませんでした)。
 
 次に、各事務所が現在行っている仕事の内容や、事務所の体制、自分が入ったときにやりたいことができるかどうか等を聞いてまわったのですが、結論から言えば
  各事務所にそれぞれの特色があり、それぞれに魅力的である。
  どこに入っても自分がやりたいと思えば、やれるし、やる気がなければやれない。
  どの事務所にも友人やLEC時代の生徒がいて、暖かく迎えてくれる。
ということが分かりました。
 スタンドプレーがやりやすい事務所もあれば、組織がしっかりしている事務所もある。
 最大を目指すところもあれば、最強をめざすところもある。
 それは、どちらが正しいとか、優れているとかいう問題ではなく、それぞれの個性であり、自分は「どの事務所に入っても、やりたいことがやれそうだ」という感触はもっていました。

 また、条件も、各事務所ごとに違いはあるものの、トータルで考えれば、そう違いはありませんでしたし、何より私くらいの年になれば、自分で稼いで何ぼの世界ですから、条件にはそれほどこだわりはありませんでした。

 こうなると、結婚相手選びと同じで
   この人はすごく良い人だし、欠点もあまりないのだけど、本当にこの人と結婚していいのだろうか。
という決め手のない迷い道に入り込みます。
 各事務所の先生方に、熱心に誘っていただくたび、心が動きます。

 そんな中で、TMI総合法律事務所を選んだのは
  ・田中克郎先生を中心として事務所全体の結束が固く、派閥がないこと
  ・事務所全体のパフォーマンスをあげることを目標にしていて、縄張り意識がほとんどなく、内部でクライアントのためにベストな弁護士を紹介しあえる体制が整っていたこと
  ・ここ数年でめざましく成長しているとともに、事務所の体制を改善していくことに積極的で、改革のスピードも速いこと
  ・事務所内の雰囲気が明るく、働きやすい環境であったこと
  ・他の弁護士に事務所の評判を聞いても、良い評判しか聞かなかったこと
  ・多彩な経歴の弁護士が集まっていたこと
  ・MLBやシモンズ&シモンズという外国の法律事務所と提携したり、中国に事務所を開設したり、グローバルアライアンスに力を入れていること
  ・知財・エンターテーメントの分野で圧倒的な力を持ち、マスコミにも強いこと
  ・多くの有名ブランドの顧問をしていて、妻や義姉が魅了されたこと
  ・六本木ヒルズは、まわりにおいしいレストランが多いこと
などが理由です。

 もちろん、他の事務所にも、これらの要素のいくつかは備わっていますし、逆に、他の事務所にあってTMIにないものもありますが、きっと私の小指の
  赤い糸
がTMIに結びついていたのでしょう。

 TMIには、同時期に、民事局の同僚で、民事8部の裁判官であった高山弁護士も加入しましたし、あさひ事務所から移籍してこられた先生も多数いっらっしゃいます。
 私とは違う経験をしてきた裁判官や弁護士が、他の事務所に行こうと思えば行けたにもかかわらず、TMIを選んだのは、きっとTMIにしかない魅力があったからだと思います。

あぴゃさんも、いろいろな事務所を回って、働きやすい事務所を選べばよいと思いますが、今回、事務所周りをしてみて、最後はやっぱり「赤い糸」と言うほかないご縁が決める部分があると実感しましたので、気合で決めるのも一つではないでしょうか。

次に、慶応ロー生さんから、TMIのサマー・アソシエート(サマーインターン)についてご質問をいただきました。

TMIのサマーアソシエート(http://www.tmi.gr.jp/recruit/index_shihou.html)の担当の先生にお伺いしたところ、まだ具体的なプログラムを発表する段階ではないのですが
1 事務所で取り扱っているケース等に関する調査や契約書などの作成等を通じて、TMIの弁護士と一緒に案件の処理を考えていただく。
2 TMIの弁護士・弁理士・パラリーガル等が開催している各種研究会(税務訴訟や独占禁止法などいろいろありますが、時期によっては開催されない場合があります)へ参加していただく。
3 サマーアソシエート向けのセミナー
などを企画しているそうです。

 もちろん、同じ事務所内ですから私と会う機会は、いくらでもあると思いますし、いつでも部屋に顔を出してください。きっと懇親会もあるでしょう。
  TMIは、コーポレート、ファイナンス、訴訟、商標、特許、エンターテーメント、外国法事務所など企業法務に関わることなら、なんでもやっていますから、いろいろな分野に顔を出してみると面白いですよ。
 詳細が決まりましたら、このブログでも再度ご紹介いたしますが、ふるってのご参加をお待ちしております。

(質問コーナー)
Q1
234条の読み方について質問がございます。
株主がA、B、Cのみで、持ち株数がそれぞれ200株、80株、40株の株式会社が株式無償割当をする際、
1)割り当てる株式数を「既存株50株あたり新株1株」と定めた場合、単純計算で割り当てられる株式は、A4.0株、B1.6株、C0.8株ですから、端数については234条で処理されることになる思います。
 このときは、「1.0株」を競売し、その売却代金をBとCが6:8の割合で分け、結果、割り当てられる株式はA4株、B1株になる(BとCの端数の合計のうち「0.4株」部分については捨てられる)ということでよろしいでしょうか。
2)同じく、割り当てる株式数を「既存株200株あたり新株1株」と定めた場合、単純計算で割り当てられる株式は、A1.0株、B0.4株、C0.2株ですが、
 このときは、端数の合計である「0.6株」の全部が切り捨てられ、競売される株式はなく(BとCに支払われる額はなく)、結果、割り当てられる株式はAに1株のみということでよろしいでしょうか。
1問1答などに端数は金銭処理するようにしたという趣旨が書いてありましたし、
234条だけを読むと上記のように処理されると思うのですが、
234条が167条3項(「・・・一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。この場合においては・・・(金銭交付)」という書き方をしていないので、
売却の対象とならなかった部分(切り捨て部分)についてはそのまま割当てられるようにも読め、悩んでしまいました。
投稿 WLS3 | 2007年5月20日 (日) 00時26分
A1
設問の事例では、そのとおりです。
ただ、実際には、端数の合計数は、もっと大きな数になり、合計数の端数の割合は小さくなるので、ほとんどが金銭処理されることになると思います。

Q2
「解散事由の定め」の廃止に係る決議要件について確認させて下さい。
原則、株主総会の特別決議で、
確認株式会社と特例有限会社以外の株式会社について例外がないという認識でよいですか?
投稿 焼きそば風雲伝 | 2007年5月20日 (日) 01時23分
A2
特例有限会社ではなく、確認有限会社でしょうか?

Q3
当ブログの記事、防衛策と総会決議についてですが、「財産的損害を与えるような買収防衛策は、特別決議を得なければ、裁判所が差し止める可能性は高い」とありますが、私は、特別決議を得るということは、大多数の株主の利益に適う行動を会社がするということに他ならないのだと思います。そうだとすれば、たとえ特別決議を得ていない買収防衛策であっても大多数の株主の利益となることが明らか、又は一般人の通常の感情に照らして、大多数が同意するであろう場合は、差し止められ可能性は低いと思うのですが、いかがでしょうか?
投稿 ケーリッヒ | 2007年5月20日 (日) 18時43分
A3
考え方はいろいろでしょうが、「大多数の株主の利益となることが明らか」「一般人の通常の感情に照らして大多数が同意するであろう」という立証は不可能でしょう。
また、普通に有利発行をするとすれば、株主総会の特別決議を経ていないと、どんなに大多数が同意するであろう場合でも、差し止められます。

Q4
一時役員、一時会計監査人の任期について教えてください。
一時役員の任期については特に条文が見当たりませんし(見落としていたらスミマセン)一時会計監査人については、346条5項において会計監査人の任期を定めた338条を準用していません。
 両者については任期という考え自体がなく、株主総会で役員、会計監査人が選任されたり、会社の機関設計が変更されるなどということがなければ、条文上は当然にその職を何年も続けることになるということでしょうか?
投稿 五里夢中 | 2007年5月20日 (日) 23時55分
A4
そのとおりです。
選任懈怠にはなるでしょうが。

Q5
会社法345条における、監査役の意見陳述権についてご教示ください。
会社設立時から清算結了時まで、会社法319条・320条の規定により、株主総会を1度も「招集」しない会社においては、監査役の意見陳述権が発生する余地はないと解してよろしいでしょうか?
投稿 としお | 2007年5月21日 (月) 13時58分
A5
そうでしょうね。そんな会社で意見を陳述してもしかたがないですしね。
株主宛に手紙でも書いたらどうでしょうか(笑)。

Q6
会356条取引の質問です。
① 甲会社(代表取締役A,取締役BC),乙会社(代表取締役A,取締役BC)の状況で,甲会社を債務者として,乙会社所有不動産に根抵当権を設定する場合には,乙会社では,会社法356条取引となるが,これは甲会社と乙会社間の利益相反であるため,乙会社の取締役ABCは特別利害関係人とならず取締役の全員が取締役会において議決権を行使できると解して宜しいのでしょうか。
② 甲会社(代表取締役B,取締役A),乙会社(代表取締役A)の状況で,乙会社の不動産を甲会社に売り渡す場合,甲会社では会社法356条取引となるが,乙会社では会社法356条取引とならないと解して宜しいのでしょうか。
 以上2問ご指導下さい。
投稿 猫太郎 | 2007年5月21日 (月) 16時00分
A6
① 甲会社が債務者であれば、必ずしも利益相反取引にはならないのではないでしょうか。
② そうです。

Q7
会社法には、行為の主体として「取締役」という言葉がしばしば登場しますが、取締役会設置会社であり、代表取締役の選定されている会社においても、この「取締役」なる文言は、代表取締役を指すのではなく、取締役各人を指称するという理解は正しいのでしょうか?
例えば、株主総会の招集権者は、「取締役」とされています(会社法296条3項)。取締役会を設置していない会社では、各取締役が業務執行権限を有しますので、「取締役」が招集するのでしょうが、取締役会設置会社では、業務に関する一切の行為をする権限を有する代表取締役が存在します。
その場合は、いわゆる平取締役は、296条3項にいう「取締役」に該当しない(つまり、招集権者ではない)ということになるのか、それとも平取締役も「取締役」に該当し、株主総会を招集することが(法的に)可能なのか、というのがわかりません。
ものすごく基本的なことだと思いますが、ご指導いただけると幸いです。
投稿 旧司法試験受験生X | 2007年5月21日 (月) 20時52分
A7
平取締役も取締役ですから、招集通知を発することができます。

Q8
 利益相反取引に関する取締役会の承認について教えてください。
X社の取締役Aは、Y財団法人の理事を兼職しております。
但し、Y財団法人の寄附行為には、代表理事の定めがあり、代表権はBに限定されております。
この度、X社とY財団法人が取引を行うことになったため、X社の取締役会において、取締役Aの利益相反取引の承認決議が必要と考えているのですが、AのY財団法人の理事としての代表権は寄附行為により制限されており、AがY財団法人を代表することはありませんので、利益相反取引には該当しないのでしょうか?
それとも、民法の解説書に、寄附行為により理事の代表権を制限することはできても、代表権を剥奪することはできないと述べられておりますので、形式的な代表権はあるものとして、利益相反取引の承認決議を行っておく方が無難なのでしょうか?
投稿 hi | 2007年5月22日 (火) 16時04分
A8
AがYを代表して法律行為を行わないのならば、利益相反取引にはならないでしょう。

Q9
株主総会決議の招集は、「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為」(349条4項)には該当しないのでしょうか?
これに該当するとなると、代表執行役に株主総会の招集権限があることになりそうです(420条3項で349条4項を準用しているため)。
あと、ちょっと別の質問ですが、
「業務の執行」と会社の「代表」の区別が現実問題としてよくわかりません。「業務の執行」に該当して会社の「代表」行為に該当しない行為の具体例としてはどのようなものがあるのでしょうか?
今までは漠然と株主総会の招集とかかな?と思ってたのですが、それは「業務の執行」には当たらないということですので、体内的な業務執行のイメージがわきません。業務執行の「決定」ならイメージがわくのですが。。。
投稿 旧司法試験受験生X | 2007年5月22日 (火) 21時33分
A9
代表は、法律行為の効果を会社に帰属させる権限です。代理権と同じようなものです。
業務執行は、法律効果を発生させるか、させないかにかかわらず、会社の業務(会社の事業に関する事務)を行うことです。

Q10
 擬似発起人の規定(103条2項)は 募集設立の場合にのみ適用され発起設立の場合に適用されないのはなぜですか?
投稿 maru | 2007年5月22日 (火) 22時02分
A10
 募集しませんから。

Q11
財源規制について質問させてください。
 株式会社が 合併、会社分割、株式交換、株式移転および事業譲渡等において反対株主の買取請求に応じてその株式を買い取る場合(469条、785条、797条、806条)については財源規制が課されていません。(461条1項)
 これはなぜですか?
投稿 maru | 2007年5月22日 (火) 22時06分
A11
ファンダメンタルチェンジですから。

Q12
社外取締役の定義についてご教示下さい。
会社法2条15号では、社外取締役の要件として「過去に当該株式会社・・・の業務執行取締役・・・となったことがない」ことが挙げられています。
現在、A株式会社は、過去にB株式会社の業務執行取締役であったC氏を社外取締役として選任しようと考えているのですが、このB社は、数年前にA社に吸収合併され(それまではA社とは資本関係がなかった会社です。)消滅した会社です。
この場合、C氏は、過去に「当該株式会社」の業務執行取締役となったことがあり、したがって社外取締役として選任することはできない、ということになるのでしょうか?
投稿 ガバナンス | 2007年5月23日 (水) 16時34分
A12
消滅会社の業務執行取締役でも社外になれます。

Q13
取得条項付新株予約権の新株予約権の取得する一部の決定方法について教えてください。
会社法274条2項本文には、取得条項に基づき新株予約権を取得する場合には、取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議で定める旨規定されており、同項但書には「新株予約権の内容として別段の定めがある場合は、この限りではない」旨規定されております。
この点、①新株予約権の内容として、「取得する一部は抽選により代表取締役が決定する。」と掲げられている場合には、当該一部を代表取締役が決定できるという理解でよろしいでしょうか。
また、②要項上、誰かの裁量や行為の入る余地のない一義的な決定方法が定められている場合(例えば、予め取得する一部の数は定めておき、特定の日の新株予約権簿上の新株予約権者においてその保有する新株予約権の数に応じて按分して決めるなど)には、これが別段の定めにあたるとして、特段、取締役会や代表取締役などの一定の機関や人による決定は不要との理解でよろしいでしょうか。
投稿 赤目 | 2007年5月23日 (水) 19時35分
A13
① できます。
② 一義的に決まるなら、不用でしょう。

Q14
1 先生があそこで発言していたことぐらい受け控えという重い選択を決断する過程で
本人は何度も真剣に考えたはずです。
2 それと、以前、前職を辞めた理由に家族のことを持ち出しておられましたが、
それが一番大きな理由なら東京の事務所じゃなくて九州の事務所に行くべきじゃないの?って思ってました。
この後、家族を東京に呼ぶのかもしれませんが。先生は、家族や受験生など他の誰かのため、ということをおっしゃってますが、自己犠牲の精神はあんまりもちあわせてないんじゃないか、と思いました。
そこが先生の言葉に薄っぺらさを感じる理由です。本人の本音や発言や行動はどうあれ、先生には法律以上の世話を期待してはいけないんでしょうね(苦笑)。
投稿 a | 2007年5月23日 (水) 20時05分
A14
1 もちろん、誰にでも、真剣に考えた上で、最悪の結論を選ぶ自由はあります。
 しかし、真剣に考えたからといって、客観的に最悪のものが、最悪でなくなることはありません。
 病気や出産等の理由で受け控えざるをえなかったのなら仕方がありませんが、実力が足りないからという理由であるとすれば、それは、その人にとっては最悪の判断です。
 そういう受け控えの受験生は、時間が均質に流れるものと思い込んでいるのです。
 来年の試験日に健康であるという保障はありません。
 もしかしたら、近親者が亡くなって受験どころではなくなるかもしれません。私の両親は、死ぬ1年前は、いずれも元気で、死ぬことなどこれっぽちも予想していませんでした。
 また、試験日までに受験できるだけの実力を身につけられなかった人が、来年の試験日の自分の実力を予想することもできません。
 時は均質ではなく、どう流れるか分からないから、現在、目の前にある障壁から逃げないことが大事なのです。
2 おっしゃるとおり、私は、自己犠牲の精神を持ち合わせていません。
 家族のためにやることを自己犠牲などと考えていたら、長続きしませんし、家族も苦しくなります。
 家族のために行動するのが、自分の喜びだから、行動するのです。
 受験生に対するアドバイスも同じです。自分が教えるのが好きだから教える。受験生のために役にたつと思うから、アドバイスをする。それは、すべて自分の喜びのためです。
 いわば「趣味」です。
 私のアドバイスは、多くの受験生に有益であるという自信がありますが、聞きたくない人は聞かなくても良いし、聞いて従わないならば、それはそれで良いと思います。
 受験に限らず、自己の行動は、すべて自己責任です。

Q15
会社関係書類の電子化についてお教えください。
取締役会議事録を電磁的記録をもって作成する場合には、電子署名が必要(会社法369条3項)であり、これを本店に備え置くことになります。
一方、既に書面で作成した取締役会議事録をスキャナで読取ったもの(電磁的記録)を、原本備置きに代え保存する場合は、電子署名は必要ないのでしょうか。
この場合、極端な話、書面は捨ててしまってもいいのでしょうか。(極端ですみません。)
投稿 しん | 2007年5月24日 (木) 13時32分
A15
電磁的記録にしちゃえば、電子署名が必要でしょうね。

Q16
 120条4項で、利益供与に関与した取締役に支払い義務が生じたとしても、さらに利益額を超えて株式会社に損害が生じた場合、取締役は、別途、当該株式会社に対し、任務懈怠責任(423条1項)を負う、らしいのですが、この場合は120条1項違反というのが任務懈怠にあたるのでしょうか。それとも、善管注意義務違反が任務懈怠にあたるのでしょうか。
 120条1項の主語が「株式会社」となっているので、120条1項ではないと私としては思っているのですが、では、善管注意義務違反ということになると、利益供与は970条で犯罪とされているため、利益供与は犯罪行為となる行為であるから、善管注意義務に違反する、という考え方になるのでしょうか。「善管注意義務違反」にあたるための、あてはめ方がよく分からないので、ご教授ください。よろしくお願い致します。
投稿 ゆぷらぁ | 2007年5月24日 (木) 23時19分
A16
善管注意義務・忠実義務違反でしょう。
善管注意義務は、便利な概念ですから、あてはめ方といわれても難しいですね。
裁判所が責任を負わせたいときのマジックワードです。

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2007年5月19日 (土)

安倍首相、TMIを見学?

昨日、今日と、TMIは
  ウィンザーホテル洞爺
に事務所旅行でした。
 ウィンザーホテルは、今度、サミットの舞台となるのですが、たまたま、同じ日に
  安倍首相
が下見に来て宿泊するということで、びっくり。
 もし、廊下で安倍総理に会ったら
  よう、安倍君!電子記録債権法をよろしく頼むよ。
と声をかけようと思ったのですが(要つっこみ)、安倍首相が到着したころ、私は、事務所の皆さんと、二次会、三次会又は四次会の真っ最中でぜんぜん気がつきませんでした。
 一次会は、参加人数約350名が着席してのフレンチディナー。
 TMIは、エンターテイメント・ロイヤーが多いことで知られていますが、ステージの上で繰り広げられる先生方やスタッフのパフォーマンスは、皆、プロ級ですし、本当に美男美女ばかり。
 エンターテイメント・ロイヤーとは、エンターテイメント法を得意とするロイヤーではなく、エンターテナーになれるロイヤーのことだと、考えを改めた次第です。
 
 ちなみに、安倍首相は、TMIの躍進振りに大変関心を抱かれているらしく
   TMIの朝食会をSP付で見にこられ
ました。朝食会の会場では、黄色い歓声はあがらなかったものの、ちょっとワクワクした朝ごはんになった模様。
 口さがない人は、朝食会の会場を下見に来ただけだと言うのですが、私は、きっとTMIを見に来たに違いないと確信しております。
 
さて、今日は、間違い直しなどいくつかの話題を複合してお伝えします。

1 間違い直し
まず、間違い直しからです。

「種類株式発行会社において、特定の種類株式に108条1項4号の譲渡制限を付す場合において、株券提供公告が必要か」という質問について、私は、当初、219条1項1号の文言が「107条1項1号に掲げる事項」となっていることから、
    株券提供公告は不要
と回答しました。

実は、これを回答するとき、私なりに悩みまして
  株券に譲渡制限の定めを記載するために、株券を回収する必要があるんだけどなあ
と思いながら、かといって、条文には108条1項4号の文言がないため、株券提供公告が必要というのもはばかられ,
結局
   条文至上主義者としては、文言に従おう
と思って、不要と答えたのです。

しかし、答えた後も後味の悪さがあり、また、昔、この問題はなんか考えたような気もするし、もやもやしていたところ、都内某所からメールが届き
    株券提供公告を必要とすべきじゃないか。
との指摘を受けたのを機に再考してみました。

実質論としては、「株券提供公告が必要である」ということは疑いをいれないわけですから、あとは、条文で読めるのか、読めないのかだけが問題となります。

そこで、条文の文言を振り返ると、「107条1項1号に掲げる事項」を文字通りに読み替えてみると
  「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること」
という文言になります。
 つまり、その文言そのものについては
   「全部の株式の内容として」という部分が含まれていない
のです。
 さらに、種類株式の内容について定めるべき事項を定めた108条2項4号を見ると、種類株式についても107条2項1号と同じ定款規定がおかれることとなることから、「前条第2項第1号に定める事項」(=当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨)と規定しています
 
 以上の文言の使い方からすれば、種類株式について譲渡制限を付す場合であっても、「107条1項1号に掲げる事項」を定款に定めたものとして、219条1項1号が適用され、株券提供公告が必要であると解することも可能だと思うようになりました。

 それで、ブログの答えの方も、実質的に正しい結論である
   株券提供公告は必要である
という結論に変更させていただいたのです。

 なお、219条1項1号後段の括弧書きは、以上を前提に、種類株式については、当該定款変更を行う種類株式についてのみ株券提供公告を行えば足りる旨を規定したものと考えるべきでしょう。

 以上の点は、それなりに調整しているので、きっと実務的にもこれで回るのではないかと思います。

2 大杉先生との議論(買収防衛策と総会決議について)

大杉先生のブログが更新され、私と大杉先生の意見が、実は、限りなく近いということが分かってきました。

このスピードで議論が進むのは、議論の当事者である私も大変楽しく、ブログの良さが発揮された感じです。

ブログをはじめたのも、いろいろな本を書いてきたのも
  従来の解釈が会社法のもとで本当に維持できるのか
ということを問題提起したいというのが動機のひとつであり、学者や実務家の先生方との間で、こうした「かみ合った」議論をすることができるのは、一法律家として知的興奮を覚えます。

大杉先生との議論は、さらに深めさせていただきたいと思っており、特に、大杉先生が、武井先生の三色の信号機論をベースにM&Aの攻めと守りについて、論じられているところなどは、私なりに以前から関心があるところです。
http://app.blog.livedoor.jp/leonhardt/tb.cgi/50084294

 私は、買収防衛策が
   株主が買収者のプランと経営者のプランを見比べて、選択する機会を与える効果があること

   買収者の提示したTOB価格を吊り上げる効果があること
を否定するものではないのですが、
    その目的だけで、買収防衛策を正当化できるのか?
    その目的以外の目的で、買収防衛策を発動してはいけないのか?
ということを考えはじめると、ある種の違和感を感じます。

 ちょっとバタくさいような違和感です。

 その違和感を自分なりに分析すると
   会社の自治をベースとした会社法の議論のはずなのに
  発想は、金商法的だよなあ。
  アメリカの議論からもう少し離れて、非上場公開会社(場合によっては、非公開会社)等も含めた論理的枠組みはないだろうか?
というあたりに根ざしているようです。

 ここから先は話が長くなるので、今は、漠然とした問題意識の指摘のみにとどめておきます。

3 新司法試験と受け控え

 最後に司法試験ネタ。

 新司法試験を現に受験している人は、ここ数日、毎日、「ああーっ、また間違った。」と本試験でのミスに相当悩んでいることでしょう。

 その一方で、ロースクールを卒業したにもかかわらず、今年、受験しなかった
  「受け控え」
の人は、そういう苦しみとは無縁の生活をしています。

ニュースを見る限り、相当受け控えの人がいるようですが、ここで、私が
   受け控えの人は、苦しまなくて良かったね。
と言おうとしているのでは「ない」ことは、私のブログをよく読んでいる皆さまなら分かることでしょう。

はっきり言って、今年、受け控えをしたのは
   最悪の選択
です。
 
 私は、ロースクール生をたくさん知っていますから、ロースクール卒業生の中に
  新司法試験に合格するだけの力を身につけていない人が山のようにいる
ということは知っているつもりです。

 しかし、力のあるなしにかかわらず、
  受験すれば、合格する可能性はあり
  受験しなければ、合格しない
というのは、絶対に否定できない真実です。

 特に、これから年々合格率は下がるのですから
  受け控えをすればするほど、あなたの合格は遠のく。
というのも、また紛れもない事実です。

 「合格できる自信がつくまで、受験しない」

という人は、一生、受験しないことになるでしょう。
 なぜなら、どんな実力者であっても、合格できる自信なんて、生まれてこないからです。
 嘘だと思うのなら、最高裁裁判官にでも、検事総長にでも、弁護士会の会長にでも
  「今、司法試験を受けて、合格する自信がありますか?」
と聞いてみればよろしいと思います(笑)。

 たくさんの科目について択一と論文を短期間に集中して解く難しさは、何年勉強しても、完全に克服することはできません。
 三振が怖いのはわかります。
 あなたに実力がないのも分かります。

 でも、私は、そんな弱気な受け控えに対しては

  ロースクール卒業まで2年も3年もあったのに
  択一に合格する実力すら全く身につけられなかった貴方が
  どうやって来年までに実力をつけるのですか?

と言ってやりたくなります。

 3年間、まじめにロースクールに行き卒業できたのに、実力がつかなかった人こそ
   新司法試験を実際に受けてみて、自分のロースクールでの勉強が、どの程度役にたったか
  もしくは、どれほど役にたたなかったか
を思い知るべきです。

 そして、ボロボロに傷ついて、自分が
   いつまでに、何をやれば、新司法試験に合格できるのか
を真剣に考えるべきです。

 また、本試験を受験すれば
   本番直前の勉強スケジュールの立て方
   本試験だけが持つ独特の雰囲気
   それらの中でのみ発揮される驚異的集中力
   合格発表までの不安を抱えながらの勉強法
を経験することができます。
 この経験が、「これからの勉強」に、どれだけ重要なことか。

 択一と論文を同時に実施する新司法試験で最大の難問は
   一年間のスケジュールの組み立て方とその遂行
であり、受け控えた人は、それを身をもって知る大切な機会を失ったのだから、本当にこれから1年間は相当苦しい戦いになるでしょう。

  受け控え 百害あって一理なし

変な川柳みたいになりましたが、今年、受け控えをした人は
   自分が大きな過ちを犯した
ということを認識して、その過ちを挽回するためにどのような方策を取るべきか、今から真剣に考えないと、

  永遠に受け控えてしまう

ことになりかねませんので、くれぐれもご注意ください。

(質問コーナー)
Q1
>Q8
>創立総会において、定款変更をし、発行する株式の全てに譲渡制限の規定を
>設ける場合(会73条②)ですが、決議に反対した株式引受人に引き受けを取
>消す旨の規定が見つからないのですが、この場合には、取消す事ができない
>のでしょうか?
>投稿 こおさく | 2007年5月11日 (金) 12時04分
>A8
>できません。
できない理由が思い浮かばないのですが、何かヒントをいただけないでしょうか。創立総会である事がポイントのような気がするのですが。
投稿 こおさく | 2007年5月14日 (月) 09時49分
A1
ちょんぼみたいなものです。

Q2
会社法52条2項を引用します。「前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(28条1号の財産を給付した者及び同条2号の財産の譲渡人を除く。第2号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の責任を負わない」。この引用した条文の括弧書きについてお尋ねします。
①括弧書きは、発起人だけの括弧書きで、設立時取締役には、括弧書きはないという読み方でよろしいでしょうか。
②もしそうだとすると、発起人が財産引受けの譲渡人である場合は、常に不足額のてん補責任を負うのに、設立時取締役が財産引受けの譲渡人である場合は、そうならないことのアンバランスは、どう説明するのでしょうか。
以上、宜しくお願い致します。
投稿 ロゴス | 2007年5月14日 (月) 11時50分
A2
① かっこ書は、設立時取締役にはありません。
② 財産引受についての規制は、現物出資規制の潜脱防止のための制度です。発起人は、設立中の会社の機関として活動し、その地位は、設立後の会社の代表取締役・業務執行取締役のようなものです。財産引受けの譲渡人が発起人であるというのは、いわば取締役の利益相反取引と同様の関係にあり、利益相反取引で直接利益をえた取締役が無過失責任を負うのと同様、この場面では発起人は無過失責任を負います。
 これにたいし、設立時取締役は、設立中の会社の業務執行を行いません。現物出資や財産引受け等を調査するだけです。設立後の会社でいえば、監査役のようなものであり、監査役が会社との取引で利益を得たからといって無過失責任を負わされることがないのと同様、この場面で設立時取締役は、監督義務違反として過失責任を問われるだけです。

Q3
葉玉先生、5/14のQ16に関しまして、長々と質問を書いてしまい、その意図が明確でなかったかもしれず、大変申し訳ございません。
整理いたしますと・・・
A社(自社)には、親会社B社と子会社C社があるとします。
つまり、“B社→A社(自社)→C社”という支配関係です。
会社法施行規則に基づき、取締役選任議案に関する総会参考書類に「自社A社の親会社・親会社の子会社(自社A社を除く。)での業務執行者状況を書け」という場合、親会社B社での業務執行者状況はもちろんですが、自社の子会社C社(親会社B社にとっても子会社(子A社の子))での業務執行者状況についても書く必要があるのでしょうか?
投稿 東京ジャーニー | 2007年5月14日 (月) 13時24分
A3
子会社C社についての業務執行状況は、書くべきでしょう。

Q4
会社法の下では、①無配、②資本部の計数変動なし、③圧縮積立金等の税法上の積立金の積立て又は取崩しはあり、という場合において、
③は、当期末のBSに反映させ、株主資本変動等計算書に記載して、取締役会の承認を得るというのが会計基準のようですから、株主総会に諮るべき剰余金の処分は無いものと思われます。
資料版商事法務を見てみると、剰余金処分の議案を出していない会社が、ごくわずかですが、あるようです。一方で、配当は見送る旨と剰余金の処分はない旨を記載して、剰余金処分の議案としている会社も見られます。
後者は、これを承認してもらう意味があるのか疑問ですが、配当減資がないのに否決されても困るだけだと思います。
そこで、会社法で要求されているのは、配当を行う、資本の部の計数を変動を行うというように、会社が積極的な提案をする場合に限られると考え、冒頭の事例では、株主総会には剰余金処分の議案の提出は不要と考えても問題はないでしょうか?

投稿 実務者はつらいよ | 2007年5月14日 (月) 14時04分
A4
やることがないのですから、剰余金の処分の議案提出は不要でしょう。

Q5
買収防衛策の導入に関する株主総会決議に法的根拠を持たせるために、当該決議を株主決議にする旨の定款の一部変更を行い(当然ながらこれは株主総会の特別決議になりますが)、その定款規定に則って、大規模買付ルールを遵守しない買収者または企業価値を損なうような買収者に対しては特別委員会の勧告に従って取締役会の判断により新株予約権の無償割当をすることができる旨の事前警告型買収防衛策を、株主総会の普通決議により導入する会社が見受けられます。
このようにして導入された事前警告型買収防衛策の有効性については、どのようにお考えでしょうか。
投稿 企業法務担当者 | 2007年5月15日 (火) 00時49分
A5
記事にも書きましたが、事前警告自体には法的意味はありません。
新株予約権の無償割り当てが、有利発行規制に抵触しないならば、普通決議で導入しても不公正発行にも当たらない場合があると思います。

Q6
買収防衛策の議論をする際に、もう一つ認識しておく必要があるように思っています。私自身、指針が出されたときに、「企業価値」という基準が提示され、「企業価値」を高める買収は良い買収であり、それを下げる買収は悪い買収と理解していました。しかし、その後の証券市場での様々な買収主体の主張を見ると、「企業価値」そのものの定義が様々あることを知りました。買収提案する側もされる側も、一様に「企業価値」という単語を使っていますが、そこには主体となる当事者の意識、気持ちが反映され「企業価値」が一義的に捉えられないような気がします。
この「企業価値」の定義をかっちりしたものにすることで、買収防衛策の適法性もある程度明確になるように思います。
しかし、一方で、あまりにガチガチに規制するのはいかがなものかという考えもあると思います。特に「企業価値」≒「株主価値」という会社法理論から導かれる考え方と、「企業価値」≠「株主価値」、「企業価値」≒「ステークホルダー価値」といったどちらかというと経営実務的な考え方とがあり、そのどちらも正しそうである以上、明確にしておく必要はないという考えもありえると思います。
私自身企業経営者に近い、助言、補助的立場に居る者の場合、後者の方がすっきりします。特に法人諸説のどれに従おうとも企業の社会的存在、社会的責任は認めければならない以上、「企業価値」≒「ステークホルダー価値」という方が親和的です。そう考えると、投資家にはどの企業の株式を購入する権利もありますし、購入したどの企業の株主からのイグジットも用意されている証券市場ではあまり会社法理論に固執するよりも一般人(刑法理論上のではない)の感覚から捉える方がスムーズかなと思います。
投稿 法務次長・課長 | 2007年5月15日 (火) 04時57分
A6
企業価値は、定義することができません。企業価値を表題にかかげた某委員会でも、企業価値が何かということについて明確にされませんでした。
企業価値は、法的な言葉でもありません。法的には、企業価値という抽象的な文言は何の意味もなく、どのような法的利益(主として、財産権)が害されるか、が重要です。
仮に「企業価値≒ステークホルダー価値」だとすれば、企業価値を害する買収は、経営者の意思に反する買収だけではなく、経営者の意思に基づく友好的買収ではあるが、ステークホルダーの利益を害する買収も、乱用的買収として防衛策を発動する必要があると思います。
私は、ステークホルダーの利益と捕らえるよりも、「ステークホルダーの利益を保護することにより得られる会社自身の利益(例えば、信用や契約関係の維持等)」と捉える方が法的にはすっきり説明できると思っています。つまり、会社を取り巻く様々な人が保有する利益ではなく、「会社という法人の保有する利益」が企業価値と捉るのです。
 そうすると、企業価値と株主共同の利益の違いも明確になります。

Q7
取締役会は、貯金ロボットの内部構造としての「駆動力配分ユニット」であり、(主として定款で)設定された会社の恒常性(事業活動の循環)の「方向を決定する」ために存在するし、だからこそ、各取締役は文字通り「ユニットとして一体」である。
そして、取締役会は、駆動力配分ユニットであると同時に、貯金ロボットについての「開いている主観」または「主観の窓」としても機能する。
だからこそ、恒常性の範囲内の取引で在っても、会社と取締役個人の利益が相反するものであれば、会社と相手との関係が直接的である場合だけではなく、会社と相手との関係が間接的であっても、取締役会の決議を求めて、取締役全員に責任を持たせる。
そして、会社の恒常性の核となる「事業の部類に属する取引」を、会社の恒常的活動を離れて行ってしまえば、当然に取締役会の決議が不可欠になるし、取締役全員に責任を持たせる・・・と理解しました。
自分のこれらの理解は、「少なくとも的を外しては居ないもの」でしょうか?
投稿 至誠丸 | 2007年5月15日 (火) 17時38分
A7
的を射ています

Q8
葉玉先生、本日は種類株式発行会社がある種類の株主に損害を及ぼすおそれのある単元株式の設定を行った場合の当該種類株主の保護について教えてください。
例えばA種・B種の株式を発行している会社が、A種は1単元=1株、B種は1単元=1000株と定款変更した場合(188条・466条)、B種類株主総会の決議は必要でしょうか?
必要だとすれば条文上の根拠は322条1項1号ロの「株式の内容の変更」に単元株式の設定が該当するからでしょうか?不要だとするとB種株主の保護はどのように図られるのでしょうか?

投稿 NK | 2007年5月15日 (火) 22時17分
A8
単元株式数は、株式の内容のひとつですので、設問の定款変更は、株式の内容の変更として種類株主総会が必要です。

Q9
①組織再編で事前開示書類として要求されている「計算書類『等』」の内訳は,会社法施行規則第2条の定義規定にいう「計算書類等」,すなわち事業報告+貸借対照表+損益計算書+株主資本等変動計算書+個別注記表+監査報告書(会計監査人,監査役会)を指すと考えてよいのでしょうか。
②会社法施行規則第63条で,招集通知に記載する議案の概要について,「議案が確定していない場合にあっては、その旨」との定めがありますが,これは招集通知に,議題(目的事項)と併せて,「議案は未確定」と書くことでよいのでしょうか。(例えば,--決議事項 「取締役選任の件」(議案は未確定)--など?)
投稿 akiko | 2007年5月16日 (水) 00時13分
A9
①  そうです。
②  いいでしょう。

Q10
大会社の適用時期について質問させてください。
 会社法マスター115講座P14によると
 最終事業年度の末日時点で大会社の要件に該当していれば当該事業年度に係る定時株主総会の終結の時から大会社となることとなり(パターンA)、その逆の場合には、当該定時株主総会の終結の時から大会社ではなくなるということになる。(パターンB)  ということですよね。
 ここから理解すると大会社への以降時期は 定時総会で貸借対照表につき承認決議をした時ではなく 定時総会終結の時だということですよね。
  そうだとすると以下のような事例は決議の効力が認められないということになるのでしょうか?
●事例 
   事業年度は毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期と する。
  定時総会は事業年度の末日の翌日から3ヶ月以内に開催するものとする。
  平成18年9月1日に資本金は6億円に変更した。
 しかし 平成19年2月1日に資本金は4億5000万円に変更した。
 このとき 平成19年6月26日の定時総会で 第1号議案として貸借対照表につき承認決議をした。
 その後、第5号議案で会計監査人設置会社の定めを廃止した。
 定時総会は終結した。
  なお、各決議には期限条件は付されていない。
上記の大会社への以降時期への理解をあてはめると、第5号議案の承認時では まだ定時総会は終結していないので今だ大会社であり会計監査人設置会社の定めは廃止できない。
 よって 第5号議案は条件(定時株主総会の終結にあわせる)をつけない限り 決議の効力は認められない?ということになりませんか?
 
投稿 maru | 2007年5月16日 (水) 02時31分
A10
会社法マスター115の当該記述は、言葉のあやですね。最終事業年度は、承認時に変わりますので、総会の終結時に大会社になるわけではありません。

Q10
委員会設置会社の取締役は、支配人、使用人の兼任が禁止され(331条3項)、さらに、監査委員となる場合には、その子会社も含めて
執行役、業務執行取締役等の兼任が禁止されています(400条4項)。
これは、監査役の兼任禁止の規定(335条2項)を意識しているものと思うのですが、監査委員の場合には、子会社の業務執行取締役ではない、
普通の取締役の兼任が認められているのはなぜでしょうか?
投稿 あしぼん | 2007年5月16日 (水) 23時00分
A10
監査委員は、自社の取締役です。いわば、その部分は、どうせ自己監査になっています。ですから、j子会社の取締役であることについて、うだうだいっても仕方がないからです。

Q11
私は会計士受験生なのですが、答案の作成の方法で少し疑問があるので質問させてください。場違いな質問でしたら申し訳ありません。
「○○と●●について××の点で比較をしなさい」
という、問題が出たとします。
その場合、○○と●●の本質的な共通点をまず書くように、予備校では指導を受けるのですが、私は××の点に焦点を絞って、共通点と相違点を書いてしまいます。
やはり比較の問題でしたら、本質的な共通点相違点をしっかり書かないと、採点される試験委員から良い評価はもらえないのでしょうか?
また、本質的共通点を書くとして、ある講師は「その本質的なところを重点的に書かないと、『分かってないな』と判断される」といい、またある講師は「本質的なところはさらりと書けばよい」といいます。
どちらが採点者の印象がよいのでしょうか?
もちろん、問題によりけりなのかもしれませんが。。。
投稿 初心者 | 2007年5月17日 (木) 22時27分
A11
××の点で比較せよ、といわれたら、××の点を書けばいいでしょう。
ただ、その前提となる共通項を書いた方が違いが明確になるから書いているのではないでしょうか。

Q12
非公開会社で種類株式発行会社ではない会社の話です。
株主をAグループとBグループに分けて、Bグループの株主が有している株式のみを全部取得条項付にするということは、可能なのでしょうか?
「株主全員の同意があれば可能」という見解を聞いたことがありました。
(既存の一種の株式の一部を別の種類の株式に変更する、ということなどできるのでしょうか。。。)
*例えば下記のような定め方です。
以下の株主が保有する普通株式を全部取得条項付種類株式へ変更する
株主B1 ●●株
株主B2 ●●株
投稿 BQP | 2007年5月17日 (木) 23時28分
A12
株主全員の同意があれば可能です。

Q13
会社法343条1項の監査役による監査役選任の議案の同意に関して、監査役が1名で、その監査役自身が株主総会で辞任し、同じ総会で次の監査役が1名選任される場合、これまでの監査役に次の監査役選任の議案を同意してもらう必要はありますでしょうか。
また同様に、344条1項1号の会計監査人選任の議案を提出する場合、その総会で辞任する監査役に同意を得る必要がありますでしょうか。
さらにそもそも議案の提出というのはいつの時点をいうのでしょうか。株主総会の召集通知(議案が書いてある)を出す時点か、総会を開始した時点か、いつをいうのでしょうか。

投稿 ねこねこ法務っちゃん | 2007年5月18日 (金) 15時06分
A13
議案を提出するときに監査役の同意が必要です。
監査役が総会の途中で辞任しても、欠員になり、なお権利義務を有するので、次の監査役の選任議案が提出されるときには、辞任監査役の同意が必要になります。
会計監査人も同様です。
ちなみに、議案の提出は、総会の日に議案が提出されたときだと思います。

Q14
1.新株予約権が行使された際に新株予約権者に対して新株を発行して交付するのか、それとも自己株を交付するのかを新株予約権発行時に決めていない場合、実際の新株予約権の行使にあたって、いかなる機関が新株発行と自己株交付のどちら(またはその両方)にするかを決めることになるのでしょうか。取締役会決議が必要ですか、それとも、代表取締役限りで決定することができますか。
また、新株予約権者は、新株予約権を行使した日に、新株予約権の目的である株式の株主となる(282条)とされていることとの関係で、当該決定は、新株予約権が行使された日の当日に行う必要があるのでしょうか。
2.いわゆる人的分割として「剰余金の配当」を行う場合の会社法445条4項(準備金の計上)の適用の有無の件、どうなりましたでしょうか(以前どなたかが質問された際、回答を保留されていたように記憶しています。)。
投稿 休日出勤者 | 2007年5月19日 (土) 15時55分
A14
1 原則は、取締役会決議ですが、代表取締役に委任することはできます。
時期は、効力が生ずる前に決めておくことも可能でしょう。
2 すいません。
忘れていました。人的分割として剰余金の配当を行う場合も、準備金を計上する必要があります。

Q15
いまさらですが、発起人の設立手続の決定方法について、お尋ねしたいと思います。
 発起設立の場合、設立時役員の選任について、会社法40条1項において、
「発起人の議決権の過半数をもって決定する」とあります。
 これは、役員は株主が決定するので、発起設立では、発起人が株主の全員であるゆえに、株主としてその選任を行っているゆえに、「議決権の過半数」で決定する、と認識しています。
 
 一方、設立中の会社に関する決定(本店の所在場所、支配人の選任等)は、「発起人組合」として決定するために、その決定は、「発起人の(頭数の)過半数」で決定すると認識しています。
確か、旧法下もこのような取扱いであったと思います。
「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」(平成18年3月31日民商第782号通達)には、以下のような記述があります。
『(9)設立時取締役及び発起人の権限の見直し
 設立時の会社における業務執行の決定は、原則として発起人が行うとされ、定款に別段の定めがない場合には、設立時取締役は、設立時代表取締役又は設立時委員の選定その他会社法に規定のある事項に限り、業務執行の決定を行うとされた。
 したがって、会社の成立前は、定款記載の最小行政区画内における本店の所在場所の決定、支店所在場所の決定、支配人の選任、株主名簿管理人の決定等は、定款に別段の定めがない限り、発起人の議決権の過半数によることとなる。』
 この記述の「発起人の『議決権の』過半数」という部分が疑問です。
会社法になって、この部分の決定方法が変わったということも読み取れません。
 「論点解説新・会社法 千問の道標」のQ16をみても、民法670条に従い、「発起人の過半数」で決定するとあり、それはやはり「発起人の頭数の過半数」と解するのが普通であると認識しているし、確信もしています。
 しかし、発起人の議決権で数えると過半数以下だが、頭数では過半数の一致がある発起人会の議決がある場合に困ります。 
 千問Q16の「発起人の過半数」というのは、「発起人の頭数の過半数」と解してよいのでしょうか?
 よろしくお願いいたします。
投稿 シュートエレファント | 2007年5月19日 (土) 16時49分
A15

頭数の過半数です。通達の該当部分は、ちょっとしたチョンボでしょう。

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2007年5月14日 (月)

買収防衛策と総会決議(2)

今日は、母の日。旧司法試験の択一試験の日。
 択一が終わったからといって、ほっとせずに、次に向かって進みましょう。
 毎年同じようなことをいいますが
  択一が終わった瞬間から、論文の勉強を始めた奴が勝つ
というのが原則です。
 遊ぶのも、ボーッとゆっくりするのも合格後にいくらでもできますから、今は勉強しましょう。

 さて、前回の買収防衛策の記事について、中央大学の大杉先生が
    「葉玉説に、チャレンジ!」
http://app.blog.livedoor.jp/leonhardt/tb.cgi/50134673
というタイトルで、チャレンジされてきました(笑)。
 学識経験から言えば、本来なら、私が大杉先生にチャレンジすべき立場にあるものの、チャレンジされた以上、受けて立つのがこの世の定め。
 ブログで会社法論争というのも、時代の流れとして面白くもあり、ちょっと反論してみましょう。

 大杉先生が、私の考え方に異議を唱えられているのは、
  「買収者に財産的損害を与えるような買収防衛策の行使には慎重であるべきだ」
  「総会承認があれば防衛策の行使が全て正当化されるわけではない」
ということの論拠として、私が
   有利発行規制
を持ち出した点です。

 大杉先生の葉玉説批判の論拠を要約すると
(1) 新株予約権は、公正価格の算定が困難なので、有利発行規制が使いにくい。
(2) 買収者に行使・譲渡を制限した新株予約権を抱え込ませる「予約権抱え込み型」の防衛策が損害を生じさせるか否かは、それほど明確ではなく、有利発行という判断枠組みが使いにくい。むしろ、それも勘案した上で、「不公正発行に当たるか否か」「取締役会に裁量の逸脱が見られるか否か」を論じる判断枠組みの方が相応しい。
(3)総会特別決議さえ取れば、買収者に損害を与えるような態様の防衛策の使用もOKと主張する人が出てくるのではないか。特別決議をとっても、不公正発行の問題は残ると考えるべき。
(4)株主の承認は不公正発行であることを否定するか、疑問である。現行の法制度を前提にすると、総会承認があったか否かで結論を2分するよりも、その総会決議が合理性・説得力を持つものであったか否かを個別に見た上で、裁判所による差止め判断の一要素とするほうが、落ち着きが良い。

 こうして大杉先生の論拠を並べてみると、実は
  大杉先生と私の考え方は、それほど違いがない
と思えます。

 以上の論拠のうち、大前提として議論しなければならないのは、(3)です。
 私は
    有利発行で特別決議を得たとしても、不公正発行として差し止めの対象となることは理論的にありうる
と考えていますし、条文構造上も、その考え方は正しいはずです。
 ですから、(3)は批判に対する反論というより、私と大杉先生は同じ考え方ですよ、と表明させていただきます。

 次に、(4)についても、株主の承認があっても、理論的には、不公正発行となる場合はありうると考えています。この点でも、私は大杉先生と同じ考え方です。

 もっとも、新株予約権の発行差止請求権のもととなっている、株式発行差し止め請求権は、米法を参考に制定されたもので、株主総会が有していた新株発行権限を、授権枠の範囲内で、取締役会に移譲した反面で、取締役会による新株発行権限の濫用を防止することを主目的とした権利です。
 ですから、今回話題になっている「株主総会の意思に基づく発行」は、差し止め請求権が、本来規制としようとしていた領域ではないというのも事実であり、その場合に裁判所が「著しく不公正」と認定するのは、なかなか難しいように思います。
 この点は、これまであまり論じられていない領域なので、もうちょっと研究が必要でしょう(もっとも、差し止めにならないとしても、少数株主の財産権を著しく害するような有利発行が行われた場合には、その決議に賛成した株主に対する損害賠償の問題が生ずると思います)

 結局、私の主張は
   買収者に財産的損害を与えるような場合には、特別決議を取らないと法令違反で差し止められる可能性が高い
というものであり
  特別決議を取れば、どんな悪いことをやって財産的損害を与えてもよい
という主張ではありませんから、大杉先生の考え方と矛盾するようなものではないということが明らかになったと思います。

 さらに言えば、買収者に与える財産的損害が比較的軽微な場合であったとしても、その程度は、「不公正発行になるかどうか」という判断の中で重視される要素であると考えていますから、この点でも、大杉先生の考え方と共通しています。

では、どこが違うのかということを明らかにするために、私の思考プロセスを明らかにすると
1 買収者に経済的損害が生じ、買収者以外の株主に「特に有利」と認められれば、特別決議がなければ、差し止められる。
2 1以外の場合であっても、不公正発行で差し止められることもあるが、株主総会の決議があれば、不公正と認められない場合がある。
3 2の決議が普通決議で足りるかどうかは、新株予約権の内容次第である。
ということになります。

 この考え方と大杉先生の考え方の一番の違いは
      有利発行規制が適用される場合「も」ある
ということであり、逆に、大杉先生にお伺いしたいのは
  有利発行規制は一切適用されないと考える必要があるのか?
ということです。

 大杉先生のおっしゃるように、新株予約権の価値の算定は、なかなか難しく、それを利用して、本来なら相当高価な新株予約権を、無条件取得条項などをつけて、価値を0にし、有利発行手続きを免れるようとするなど、アコギな手法が使われることもあるくらいです。
 裁判所も、差し止めの仮処分の際に、有利発行に触れずに差し止めることが多いのも事実です。

 しかし、これは、有利発行規制が全く使い物にならないということを意味するものではありません。
 裁判所が差し止めの根拠として有利発行を使わないのは、不公正発行という枠組みを使った方が決定書を書きやすいからであり、有利発行を排斥しているわけではありません。逆に有利発行であることが明らかで、特別決議がないような場合には、きっと有利発行で決定書を書くこともあるはずです。
 特にこれまでに判例で問題となった株式発行や新株予約権発行は、ほとんど全てが第三者が払込みをする通常の募集手続に関するものですが、現在の買収防衛策のように株主に無償交付する事案であれば、買収者に経済的損害が生ずることが明らかな場合も出てくる可能性があります。
 
 買収防衛策で用いられる新株予約権の内容が非常に幅広いことを考えると、私は、有利発行規制と不公正発行の二本立てで判断するのが、ケースごとに適切な判断が可能になると思っています。
 不公正発行は、基準が不明確であるという難点があるので、有利発行規制で、明確に違法なラインを引けるものなら、引いておいた方がよいのではないでしょうか。

 また、これは、(2)の批判とも関連するのですが、「予約権抱え込み型」の防衛策が損害を生じさせるか否かは、それほど明確ではないというのは、そのとおりであり、買収者が一時的に権利行使も、譲渡もできないからといって、それだけで財産的損害が生じたとは言い難い場合もあるでしょう。
 しかし、買収者が、行使も、譲渡もできず、すぐに行使期間が経過して消滅してしまうような内容の新株予約権のように、買収者に財産的損害が生ずることが明らかな場合もあります。
 有利発行規制が強行法規として存在することを前提とすれば、そのような場合には、買収者が、会社の定めた手続きを守ったかどうかという手続き論や不公正発行かどうかという以前に、特別決議がない限り、違法とされる可能性が高いと思います。
 有利発行規制が使いにくいからといって、その論理を排除する根拠がない以上は、それを排除することはできず、むしろ、使えるときには、きちんと使うべきであるというのが私の考えです。

 大杉先生の批判になるべくお答えしようとしたものの、ブログの性質上、議論がすれ違ったり、反論になっていない部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 私は、いまだ判例で適法な買収防衛策が明らかになっていない現状において、買収防衛策の限界論を論じる以上、できる限り、会社法の条文や、従来の判例の考え方と矛盾・衝突を生じない防衛策を考えたいのです。

 授権資本制と有利発行規制の裏には、新株発行において
    株主の持株比率維持の利益は保護しない。
    しかし、株主の有する株式の経済的価値は保護する。
という考え方がある以上、まずは
  株式の経済的価値を毀損しない防衛策
を前提にしなければ、有利発行規制という論拠を取るか、不公正発行という論拠を取るかは別として、裁判所から肘鉄を食らわされるような気がします。

 法的リスクの少ない買収防衛策を考えるためには、「株式の経済的価値の保護」という問題をクリアした上で、これまで不公正かどうかの判断基準であった
   資金調達の目的
がなくても、どのような要件があれば、不公正とならないのかを考える必要があり、私は、差し止め請求権の立法過程等を勘案すれば
   株主の意思
が株式発行の公正さを高める要素となりうると考えます。

 株主の意思以外にその要素となりうるとすれば
   買収者が株主共同の利益を害する現実的な虞がある
というような「正当防衛」的な事情でしょう。
 これは、ニッポン放送の一連の裁判でも意識されているところで、これはこれで論ずる意味があるのですが、どうも、最近の風潮を見ていると、防衛策が適法かどうかが、こうした正当防衛的な事情があるかどうかという議論だけに収縮しているような傾向にあるように思います。
 しかし、仮処分の現場で、正当防衛的な事情を主張・立証することは、困難であり、実務的には、その要素についてどれだけ理論的に詰めていっても、実は、あまり役に立たないのではないかという予感がします。

「資金調達目的も、正当防衛的な事情もないにもかかわらず、なお不公正と言われない新株予約権の発行は、どのようなものか。」
というテーマを突き詰めて考えていくと
   株主が、株主の利益を守るために、持株比率の基準を決めたのだから、私的自治の観点から、裁判所は、それが著しく不合理でない限り、尊重すべきである
という論理に行き着くのではないかと思うのです。
 
 最終的には、買収者の悪質性等との総合判断によるのでしょうが、まずは、株主の意思がどの程度まであれば足りるかということに重点を置いた議論を行う方が、実務的には意味があるように思い、前回の記事を書いた次第です。

(質問コーナー)
Q1
株式移転と同時に株主名簿管理人を置く場合の手続について教えてください。
完全親会社の定款に株主名簿管理人を置く旨を規定し、かつ株式移転計画に完全親会社の株主名簿管理人を○○信託銀行とすると定めました。
これから○○信託銀行との契約が必要になりますが、この契約締結をするのは移転計画で定められた設立時取締役の中から選定された代表取締役(取締役会設置会社とする予定です)と考えてよろしいでしょうか?
投稿 トキオ | 2007年5月10日 (木) 14時54分
A1
 通常の設立であれば、発起人代表に当たる者は、株式移転の場合は、誰になるのか、という問題ですね。
 結構、難しい問題ですが、その代表取締役予定者が、株式移転の手続の執行権限を有しているならば、契約締結権もあると認めてよいのではないでしょうか。

Q2
組織再編の債権者保護手続で公告する「計算書類に関する事項」(会社法789条2項3号、施行規則188条)について教えてください。
「最終事業年度に係る貸借対照表」(例えばH18.3期B/S)を電磁的方法(会社法440条3項)で開示していた会社が、臨時総会で定款変更をして電子公告を導入し、かつ、従前の電磁的方法開示のアドレスとは異なるアドレスを電子公告の掲載アドレスに設定したとします。
この場合、会社法440条3項に基づき、従前のアドレスに、引き続き(=5年経過するまで)、H18.3期のB/Sを掲載するという措置をとり続けますが、登記(実務)上は、電子公告の新アドレスが登記されるとともに、従前のアドレスの登記は抹消されることになります(もっとも履歴事項全部証明書を見れば、従前のアドレスは分かります。)。
 当該会社が会社法789条の債権者保護手続の公告をする場合、「計算書類に関する事項」として公告すべき事項は、会社法施行規則188条各号のどれになりますでしょうか。
「最終事業年度に係る貸借対照表」について電子公告をしているわけではないので、1号ハには該当せず、2号により従前のアドレスを公告すればよいと考えていますが、よろしいでしょうか(従前のアドレスの登記は抹消されているとはいえ、履歴事項全部証明書を見れば記載されていますし、実際に当該従前のアドレスには「最終事業年度に係る貸借対照表」が掲載されているので、問題ないと考えていますが、いかがでしょうか。)。

投稿 企業法務をやっている人 | 2007年5月10日 (木) 22時17分
A2
  2号だと思います。

Q3
千問Q323について質問させてください。
 新株予約権の発行においては 株式についての201条2項に
該当する規定は設けられていないので、ブックビルディング方式によることはできない、との内容がQ323に書かれています。
 では、なぜ新株予約権に関して 201条2項に該当する条文は
定められなかったのでしょうか?立法時の様子を教えていただけると嬉しいです。
投稿 maru | 2007年5月11日 (金) 01時47分
A3
 特に要望がなかったからです。

Q4
会社法808条1項2号について質問させてください。
 808条1項2号括弧書によれば、新設分割設立会社が持分会社である場合には、新設分割株式会社の新株予約権の新株予約権者は新設分割株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することはできません。 
 なぜ、新設分割設立会社が持分会社である場合に新株予約権の買取請求が認められないのでしょうか?理由を教えて下さい。
投稿 maru | 2007年5月11日 (金) 01時49分
A4
 新設分割によって、新株予約権が消滅することも、承継されることもないからです。

Q5
競業避止義務について、非常に基本的な事柄で恐縮なのですが、質問させて頂きたく、コメントを書いております。
P社 ―― 取締役A

S社 ―― 代表取締役A

P社の取締役Aか、ライバル関係にあり、かつ競業関係にあるS社の代表取締役に就任する場合、就任は「取引」ではないが、P社の取締役会の承認が必要とする見解が多いと思います。

では、この「就任は『取引』ではないが、承認が必要」という見解に立った場合、S社の取締役会の承認も必要なのでしょうか?
もちろん、実際にはAが代表取締役に就任するに際して取締役会の承認が為されている以上、実際上の問題は無いと思います。

ただ、理論的に考えた場合、P社の取締役AがS社の(代表)取締役に就任すると、S社から見ても企業秘密の漏洩の危険がある以上、365条1項1号の趣旨に当たるのかな、と思い、質問させて頂きました。
投稿 受験生 | 2007年5月11日 (金) 09時41分
A5
 取締役に就任するだけでは、取引に該当しません。
 AがP社のために取引をしようとするときに、S社の取締役会の承認が必要です。
 という以外、答えようがありません。

Q6
先生、いつも拝見させていただいております。
先生がお役人を辞められたら聞いてみたかったのですが
なぜ未だに会社の設立には公証人の認証が必要なのでしょうか?
後日の争いを避けるためなどの趣旨は存じておりますが
発起人一人で設立しスピードが必要な実務(特に遠方)では
どうしてもこの定款認証が足をひっぱります。
先生は、この制度はどう思われていたのでしょうか?

また、上記の認証による遅滞と手数料等を避けるため
持分会社を設立し、同日組織変更で株式会社を設立することも
一つの方法として考えておりますが、何か法的に問題がありますでしょうか?
投稿 カイラー | 2007年5月11日 (金) 09時47分
A6
スピードだけが、大切な要素ではありません。歴史の生んだ知恵として、公証人の認証制度があるのです。私も、公証人の仕事のやり方に不満がないわけではありませんが、それは、どこの役所に対してもいえることなので、公証人に限った問題ではありません。

なお、持分会社を設立して、同日組織変更というのは、持分会社の設立の意思がないのに、持分会社を設立したとして、公正証書原本等不実記載罪に該当するおそれがあります。

Q7
会社法361条(取締役の報酬等)の内容についてなのですが、第1項末尾の定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。とありますが、設立1期目の場合に取締役の報酬等を決定する場合は定款で定めなかった場合、設立後遅滞なく臨時株主総会を開催して決定するということでしょうか。報酬等の決定は定時株主総会で決定しないといけないと私は考えておりましたので、設立1期目においては定款において定めるという選択肢しかないのかな~とも考えるのですがいかがでしょうか。
投稿 実務家 | 2007年5月11日 (金) 10時57分
A7
報酬等の決定は、定時株主総会以外でも可能です。
そうでないと、臨時株主総会で選任した役員の報酬が出せない場合が生じてしまいます。

Q8
創立総会において、定款変更をし、発行する株式の全てに譲渡制限の規定を設ける場合(会73条②)ですが、決議に反対した株式引受人に引き受けを取消す旨の規定が見つからないのですが、この場合には、取消す事ができないのでしょうか?
投稿 こおさく | 2007年5月11日 (金) 12時04分
A8
できません。

Q9
681条(社債原簿の記載事項)について教えてください。

681条6号には,社債原簿に記載すべき事項として,「社債券を発行したときは、社債券の番号、発行の日、社債券が記名式か、又は無記名式かの別及び無記名式の社債券の数」と規定されています。

ここでいう「社債券の番号、発行の日」の「発行の日」というのは,「社債券の発行の日」か「社債の発行の日」のどちらでしょうか。

旧商法317条5号には,「債券発行の年月日」と規定されていましたので,会社法でもそのように読めばいいのかとも思えます。
しかし,そもそも,旧商法306条1項では,「社債全額の払い込みがなくては社債券を発行できない」と規定されており,このような規制があれば,社債券に社債券発行の日を記載することは意味があったと思います。

一方,会社法では,696条などで,「社債の全額払い込みがなくても社債券を発行できる」としており,社債券に社債券の発行の日を記載してもあまり意味がないような気がします。

社債券に記載すべき「発行の日」としては,社債券の発行の日を記載する意義は乏しく,むしろ,社債発行の日(社債は有因証券)を記載すべきかとも思われます。
条文上はどちらとも読めますので,社債部分の立案に携わった葉玉先生に御教示いただければと存じます。
よろしくお願いします。
投稿 修行中 | 2007年5月11日 (金) 13時35分
A9
 社債券を発行した場合の規定ですから、社債券の発行の日です。

Q10
W株式会社が07年6月末決算にもとづく計算書類を作成し、同年9月の総会で承認された。
同社は、翌08年1月、同計算書類に基づいて計算した分配可能額の範囲内で、取締役会決議により、自己株式の取得や剰余金の分配を行った。
ところが08年2月、経理が数字の入力を1桁誤っていたために前年決算の売掛金、その他利益剰余金などの額が18億円過大に計上されていたこと、これを修正した計算書類に基づいて計算すると分配可能額がなかったことが発覚した。

この場合、取締役らは、461条違反で462条の責任を負うことになるのでしょうか、それとも08年6月決算において特別損失を計上することにより465条の責任を負うことになるのでしょうか。

剰余金、分配可能額を「確定した計算書類の記載」ベースで計算するのか、「(粉飾やミスを直した)実際の値」ベースで計算するのかがよくわからず、混乱してしまいました。
投稿 WLS3 | 2007年5月11日 (金) 15時07分
A10
客観的に分配可能額がなかった以上、461条違反です。

Q11
葉玉先生、弊社は非公開会社なのですが、定時株主総会招集のための取締役会の議案について御教示いただけないでしょうか。取締役会の議案で「定時株主総会招集及び議案決定の件」として、総会議案の1つである「役員賞与支給の件」について、いきなり役員報酬額総額を提案することは不適法であり、事前の取締役会において、報酬額、報酬総額の決定について代表取締役に一任することを決議しておく必要があるのではないか、という意見が社内から出たのですがいかがでしょうか。代表取締役一任という措置を取ること自体が法定されているわけでなく、わざわざ別の議案で代表取締役一任という形式を取る必要はないようにも思い、御相談する次第です。
また、役員賞与として取締役分と監査役分とを区別して付議することが適切でしょうか。あわせて御教示いただけましたら幸いです。
投稿 SMOKY | 2007年5月11日 (金) 15時48分
A11
ちょっと事態を飲み込んでいないような気がするのですが、最終的に、取締役会で何を決めたか、だけが大事だと思います。ただ、どういう根拠をもとに、代表取締役に報酬額等を一任しようとしているのかは、気になります。
 役員賞与は、取締役分と監査役分を区別すべきでしょう。

Q12
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定についてです。
定款及び登記簿に
「当会社は、商法第266-12の規定により、取締役会の決議をもって、同条1-5の行為に関する取締役(取締役であった者を含む)の責任を法令の限度において免除することができる。」
というような責任免除規定がありました。
その会社は、小会社&閉鎖会社だったので、会社法の下では、責任免除規定を置けません。
当該規定は、会社法施行日前の行為についての責任を免除するためには必要なので、定款に残しておく必要があります。
では、その会社が取締役会を廃止してしまったら、この規定はどうなるのでしょうか?
単に「取締役会」の所を「取締役の過半数の同意」と変更すれば良いのでしょうか。
整備法には「なお従前の例による」とだけしか規定されていません。
これだけをみると、商法時代には「取締役の過半数の同意」で良いとは言っていないので、取締役会の廃止と共にこの規定も廃止になると考えることもできます。
私は、後者ではないかと考えています。
A12
 取締役会を廃止したら、その定めは無効でしょう。

Q13
株券提出公告についてです。
A種類株式とB種類株式を発行している会社が、A種類株式についてのみ譲渡制限の規定を設定した場合、株券提出公告は必要でしょうか?
というのは、会社法219では、1項で会社法107-1-1に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更をする場合には、株券提出公告が必要と規定しています。108-1-4の場合について規定していません。
括弧書きで、「種類株式発行会社にあっては、当該事項についての定めを設ける種類の株式」とされていますが、これは、例えば、A種類株式が譲渡制限株式でB種類株式が譲渡制限のない株式であった場合に、B種類株式をA種類株式にする(1種類になるので種類株式ではないですが)場合には、B種類株式についてだけ株券提出公告を要すると考えることもできると思います。
立法趣旨は、譲渡制限の定めは、株券の記載事項ですし、重要な事項なので、譲渡制限を設定する場合には、株券提出公告をして、株券に記載しなさいということだと思うので、108-1-4の場合についても株券提出公告を要すると思うのですが、それだったら、条文に明記しておくべきかと。
投稿 パラリーギャル | 2007年5月11日 (金) 16時46分
A13
108条1項4号の場合も、株券提供公告は必要です。(注)5月14日に訂正しました。

Q14
会社法346条4項の「監査役は・・・選任しなければならない」とは,監査役が二人以上ある場合には全員の一致が必要ですか,それとも過半数でよいのですか。また,監査役会設置会社及び委員会設置会社においては,全員の同意ではなく決議(会393Ⅰ,412Ⅰ)でよろしいのでしょうか。その結論に至る条文の根拠も教えていただきたくよろしくお願いいたします。
投稿 ポケット | 2007年5月12日 (土) 08時36分
A14
 手元に資料がないので正確ではないかもしれませんが、監査役は、独立の権限があるので、一人でも選任できたような気がします。

Q15
買収防衛策と決議要件についてですが、
まず、定款規定で「買収防衛策の総会決議」規定を盛り込まない建て付けが
会社法上果たして有効なのでしょうか? 先生方の中には、これでも有効だと仰る方がかなりいるようですね。私は、むしろ、そちらのほうが問題に感じます。
これがOKなのであれば、たとえば、会社側はとりあえず「普通決議」で行こうと思っていたけど、総会当日に議決権を数えたら、たまたま賛成が67%あったので、「賛成2/3をもって可決されました」、だから特別決議だろう、なんていい加減なやり方だって通ってしまうような気がします。
投稿 T/A | 2007年5月12日 (土) 12時11分
A15
 難しい問題ですね。決議要件まで事前に決めた方が望ましいでしょうが、それがないから、不公正さが増すとまではいえないかもしれませんね。結果的に、どの程度の株主が賛成したかという点が重要であるのも事実ですから。

Q16
株主総会の取締役選任議案に関して参考書類に記載が求められる、会社法施行規則74条3項の「候補者が当該株式会社の親会社・親会社の子会社(当該株式会社を除く。)の業務執行者であるときの、親会社・親会社の子会社における地位・担当」に関してですが、本規定が記載を求める“親会社の子会社の業務執行者状況”というのは、①「当該株式会社の兄弟会社での業務執行者状況」のみを指すのでしょうか? それとも、当該株式会社の子会社も親会社の子会社(親会社の孫会社)に該当するので、 ②「当該株式会社の子会社での業務執行者状況」も含むのでしょうか? 条文中、 「(当該株式会社および当該株式会社の子会社を除く。)」とせずに、 「(当該株式会社を除く)」としたことからすれば、②も含めて記載すべきか?と思っているのですが、いかかでしょうか。
A16
自社は含まれません。

Q17
有利発行の点ですが、仮に新株予約権の無償割当てが有利発行と評価されるとした場合、現在多くの企業で導入されている、
①株主総会で導入(事前警告)
②発動要件に合致すれば取締役会決議で新株予約権を無償割当て
というスキームは、原則として②の際に株主総会特別決議(法238条2項、1項)を欠いているため、②が違法になる(①において特別決議がなされており、かつその決議が②の発行の委任(法239条1項)であると解釈でき、かつ②の発行が①から1年以内の場合には例外的に適法になる)という理解でよろしいでしょうか。
投稿 paripasu | 2007年5月13日 (日) 20時17分
A17
 事前警告は、法的には意味があまりないので、普通決議でもいいのではないでしょうか。
 問題は、発動時にどうか、ということであり、現在企業が導入している買収防衛策でも、新株予約権の内容によっては、適法になる場合はあると思います。

Q18
財産引受の定義は、なぜ発起人が、主語になっているのでしょうか?
「財産引受とは、発起人が、会社のために、
成立後に財産を譲り受ける旨の約束をすることをいう(28条2号)。」
(新会社法100問、p124)

条文の文言を読む限りでは、
「会社が、」譲り受ける場面を想定しているように読めます。
が、新会社法100問でもそうですし、予備校のテキスト上でも、
「発起人が、」の表現で定義されております。 ご教授ください。
A18
 会社が譲り受ける場面ですが、設立中に契約が行われるので、会社の代表取締役が存在しません。ですから、発起人が、設立中の会社の代表者として、契約をするのです。

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2007年5月10日 (木)

防衛策と総会決議

一昨日の日経金融新聞に「買収防衛策に死角あり」という見出しで、登場してしまいました。

実は、私は、まだ実物を見ていないのですが、写真付で、結構、大きな取り扱いだったようで、あちこちからメールを頂くなど、想像以上に大きな反響でびっくりしています。

三角合併、買収防衛策、全部取得条項付種類株式など、最近のトピックについて、報道や専門誌などであまり触れられていないようなところをお話し、簡潔にうまくまとめていただいたので、日経金融新聞にアクセスできる方は、読んでいただければ、それなりに参考になると思います。

この記事の中で、一番反響を呼んだのは、

 財産的損害を与えるような買収防衛策は、特別決議を得なければ、裁判所が差し止める可能性が高い。

 財産的損害を与えない買収防衛策ならば、普通決議でも適法と判断される場合がある。

という部分です。

 現在、日本の会社が採用している買収防衛策は、事前警告型と呼ばれるものですが、事前警告自体は、政治的なもので、法的意味はあまりないと思っています。

 法的に検討すべきなのは、その事前警告の中身である新株予約権を用いた買収防衛策が適法かどうかです。

 こうした買収防衛策が会社法上、適法かという問題については、古くから議論がされているものの、

     平成13年の新株予約権制度の導入時から、一定の株式数以上の株主が新株予約権を行使することができないような条件を付すことができることは認められていたこと

     法務省も、商法時代から、買収防衛指針等で一定の防衛策を採用するができることを明らかにしていること

     会社法の成立過程でも、買収防衛策を取ることができることを議論した上で会社法が成立したこと

等から、新株予約権を用いた買収防衛策が適法となる場合があることは、すでに所与の前提になっていると思われます。

 私が、日経金融新聞にお話したのは、こうした買収防衛策が

株主総会の普通決議

で導入・発動することになっている企業が多いので

普通決議さえ得れば、どんな買収防衛策でも、適法になるなどと思うのは危険である

ということです。

 買収防衛指針が、「株主の意思を尊重しろ」と言っている一方で、企業側としては、

「特別決議を採るのは大変だ」

という思いがあり、その妥協点として、「普通決議」で防衛策を導入・発動するという線がメジャーになっているような気がします。

で、会社法は

   普通決議があれば、買収者に損をさせてもよい

とは、一言も言っていませんから、本当に普通決議で導入できるかを真剣に検討しなければ、足元を救われかねません。

 買収防衛策の多くは、買収者を不利益に取り扱う新株予約権を株主無償割当てで行う方式を採用していますが

  買収者が、絶対に行使できない、譲渡もできないような新株予約権

を「株主に平等に割り当てた」などと主張しても、裁判所は

  そんなのは、割り当てていないのと同じ

と判断し

第三者(買収者以外の者)に対する有利発行

と認定し

  株主総会の特別決議

がなければ、法令違反で差し止める可能性が高いでしょう。

 このこと自体は、いくら

  アメリカでは、こういう判例があって、取締役会だけでライツプランが発動できるんだ

と主張しても、なかなか裁判所が言うことを聞いてくれない領域だと思うのです。

 「特に」有利とはいえない程度の経済的損害であれば、特別決議は不要とする余地はありますが、その程度の不利益を買収者に与えるだけで、買収防衛の効果を得られるのかという実効性の問題は残ります。

他方、買収者に経済的損害を与えない新株予約権の発行であれば、本来、取締役会で決議することができる領域になり、買収者側が

「自分には経済的損害はないが、著しく不公正である」

ということを主張しなければならなくなります。

 この領域では、これまで、いわゆる主要目的ルールが適用され、おおざっぱに言えば

   もっぱら経営権の維持のための発行は、著しく不公正。

   資金調達目的が並存しているならば、適法

という仕切りがされていました。

しかし、この主要目的ルールは、取締役会のみで株式や新株予約権を発行する場合に用いられてきたルールであり、現在、考案されている買収防衛策のように

   取締役会に実質的な決定権はなく

株主総会で発動の有無を決める

ような場合には、

経営者が自己保身のために発行したということはできない

=経営権の維持のためということはできない

のが通常ですし、いわゆる権限分配論からも

   会社の支配のあり方を株主総会で決める

のは極めてまっとうな結論ですから、

資金調達の目的がなくても、「著しく不公正」とはいえない

という結論が導かれるように思います。

 特に、上場会社においては、特定の株主の持株割合が大きくなりすぎることは、上場廃止につながったり、少数株主の利益を害するような行為につながるおそれがある(締め出しとか)ので、株主の意思として

   うちの会社は、最大20%の持株比率しか認めないようにしよう

というルールを定めることは、少数株主保護という観点からも合理性があると思います。

 問題は、その際の株主総会の決議が

普通決議なのか、特別決議なのか、それ以外なのか

です。

 私は、買収防衛指針のころから、この問題について、ずっと考えているのですが、結論から言えば

   新株予約権の内容によって、決議要件は違う

というのが一番正しいのではないかと思っています。

 というのも、新株予約権の設計が非常に柔軟にできるため、買収者に与える不利益の内容が新株予約権の内容によって、大きく異なるからです。

 参考になるのは、譲渡制限株式や議決権制限株式等に関する決議要件でしょう。

 例えば、既発行の普通株式を譲渡制限株式にするには特殊決議が必要ですが、ライツプランは、買収者の保有株式そのものに制限をかけるわけではないので、特殊決議が必要な場面は想定しにくいように思います(新株予約権に譲渡制限がかけられている場合については、有利発行との関係で論ずべきでしょう)。

 「譲渡制限株式は、会社にとって望ましくない者を排除するための制度だから、買収防衛策も同様に特殊決議にすべきだ」という議論もありうるのかもしれませんが、

譲渡制限株式化は、既存の株主に対し、株式譲渡という唯一の投下資本回収手段に制限をかけるため、特殊決議としているのに対し

買収者に経済的損害を与えない買収防衛策は、投下資本回収手段を確保しているので、特殊決議を求めることはできないと思います。

他方、既存株式を議決権制限株式化するのと同じ効果を与えるような場合には、特別決議が必要と考えるべきでしょう。

しかし、特定の者が、基準日までに、新株予約権の行使条件を満たさないため、新株予約権を行使することができず、結果的に、その基準日に係る議決権を行使することができないことは、新株予約権においては一般的にありうる事態ですから、そのことだけをもって、議決権制限株式化したということはできません。

また、議決権制限株式が、普通株式よりも財産的価値が劣ることを考えると、買収者が、新株予約権を行使して普通株式を取得できることが確実な場合や新株予約権の譲渡によって普通株式の譲渡と同様の経済的価値を取得することができるような場合には、当該買収防衛策によって、議決権制限株式化したというのには躊躇を覚えます。

さらに、議決権制限株式は、これを廃止するときも株主総会の特別決議が必要ですが、買収防衛策では必ずしも特別決議が要求されるわけではないですから、廃止も普通決議でできるような防衛策ならば、導入も普通決議で行うのもあながち不合理ともいえません。

ですから、買収者の議決権の取得時期が遅れるだけの場合、買収者が普通株式又はそれと同等の経済的価値を得るような場合等買収者の不利益が通常の新株予約権の発行時にも起こりうる程度の軽微なものであるような場合には、特別決議までは必要なく、普通決議でも足りるように思います(そこまでいけば、普通決議さえなくてもいいという議論もあるかもしれませんが、差別的行使条件をつける以上、株主の意思の確認は必要であるように思います。)。

この他にも新株予約権の内容次第で普通決議で足りるものもあるだろうと思いますが、ポイントは、

              種類株式制度等で同様のことをやる場合と比べて、どの程度、買収者の負担が軽減しているスキームなのか

              買収者が被る不利益の程度とその不利益を与える理由の合理性

              買収者の投下資本回収手段の多様性

あたりではないでしょうか。

若干、端折りながら、説明したので、分かりにくいところがあったかもしれませんし、実際の裁判所の動向がどうなるかは、神のみぞ知るところです。

また、私が、実際に買収防衛策として新株予約権の無償割当てをするとすれば、もう少しきめ細かい工夫をするだろうとも思います。

ただ、

「株主総会の決議要件がどのようなものならば、著しく不公正と判断されないのか」

という論点は、これまで正面から論じられていないところなので、問題提起の意味をこめて、今回記事にしてみました。

反論をお待ちしております。

(質問コーナー)

Q1

組織再編について教えて下さい。今、やはり三角合併が話題ですが、米国で実施可能な逆三角合併は会社法上実施することは可能でしょうか。

逆三角合併とは買収親会社、買収子会社と被買収会社の間の取引で、買収子会社が被買収会社に吸収合併される形態の取引をイメージしています。

投稿 くろすけ | 20075 6 () 1511

A1

買収子会社が、被買収会社に吸収合併される場合、買収親会社に被買収会社の株式を交付することはできますが、それだけでは被買収会社の株主を追い出すことができません。

そのため、さらに被買収会社の株主を追い出すために、全部取得条項付株式等を用いたスキームを用意する必要があります。

ということで、逆三角合併を直接行うことはできませんが、工夫次第では同様のことはできると思います。

Q2

葉玉師匠、毎度すみません。

石臼に馴染みがないとすると・・・鉄アレイには馴染みがありますか?

個人で行っていた事業を「会社にした」ならば、鉄アレイをしっかり持ちつつも、全身から無駄なチカラを抜いたジョギングが出来なければならないのに・・・

経営の意思を、株主と取締役が「片方の重り」において重ねてはいますが、株主の所有と経営の「意思」が鉄アレイの形になっている鉄アレイなのですから、株主の利益に反する使い方(利益相反取引)は出来ないはずです。

そして、自前の鉄アレイを持ってのジョギング(競合取引)をしまっては行けないはずなのです。

またへんな例えですが・・・利益相反取引と競合取引の「感じ」について、適切な比喩でしょうか?

投稿 至誠丸 | 20075 7 () 0833

A2

うーん。まあ、そんなところでしょうか。

Q3

会社法2012項について質問させてください。

 2012項で定める 「適当な払込金額の決定の方法」と19912号で定める「算定方法」とは どのような違いがあるのですか?

 僕の勝手に思い描くイメージだと2022項のほうがより抽象的でよいというものですが・・・

投稿 maru | 20075 7 () 1740

A3

201条2項は、適当に決めていいというわけではなく、株式市場で一般に用いられる価格の決定方法を用いてもいいという意味です。具体的には、ブックビルディングなどがあげられます。

Q4

会社法79522号に「吸収分割会社に対して交付する金銭等」旨の表現が

あります。

これは、吸収分割を現金で実施した場合、「吸収分割継承会社における株主総会決議が必要である」と解釈すべきかと思いますが、何故、「現金」の場合に限って「総会決議不要」の要件が適用にならないのでしょうか?

また、金額による基準も見当たらないようですが?

解釈のあり方を教えてください。よろしくお願いします。

稿 omiomi | 20075 8 () 0501

A4

79522号は、実質的に、簿価債務超過の財産を引き受けることになるような場合を意味しています。また、「金銭等」は、現金に限られているわけではありません。

Q5

こら、葉玉、お前言葉使いには気をつけろ!!

われわれ国民の大事な権利を守るべき検察の仕事を「趣味でやっていた」(4・3当ブログコメント)とはどういうことだ?

われわれ国民の税金もらいながら趣味やってたのか?

(略)

「自分の家庭を犠牲にしてまで・・」とコメントしてるが、大体他の代議士や検察官といった、その職務が我々国民に重大な影響を与える立場の人間が、全然家庭を犠牲にせずにその職務たる国民への奉仕ができるとでも思ってたのか?

投稿 ひかり | 20075 8 () 1255

A5

そうです。趣味でやっていました。

ただし、給料分以上に働いていたので、国民にはご迷惑はおかけしていないつもりです。

ちなみに、私は、公務員に対し、「国民の税金をもらいながら・・」というフレーズを使うのは嫌いです。

たとえば、私は、ソニー好きですが、仮に、ソニーの人が「私は趣味でVAIOの新製品を作りました」といっても、その人に向かって、「私の大切なお金をもらっていながら、趣味で作ったなんていいやがって。」なんて、言わないです。

まして、私がソニーの経営者であれば、従業員がいい仕事をして、そう言ったとすれば、想像力豊かに仕事をしていることの証として褒めてあげます。

経営者として大事なのは、その人が給料以上の働きをしたかであり、公務員だからといって、民間と違う見方をする必要はありません。

ひかりさんが、日本国の経営者の一人として、私の仕事ぶりをみて、私が頂いた給料に見合うだけの仕事をしていないということであれば、甘んじて批判を甘受いたします。

しかし、しっかり仕事をしている人間に対して、その仕事観のみを捉えて、罵声を浴びせるとすれば、それは、いい経営者とはいえないでしょう。

 マスコミの公務員たたきのせいかもしれませんが、世の中には、公務員も国民である、公務員も私たちの仲間であるという認識が薄いような気がします。

 公務員に対し、正すべきことは正し、褒めるべきところは褒める風潮が生まれなければ、公務員の質は低下し、結局は、国民の受けるサービスは低下していくでしょう。

私は、いろいろなお役所の人と仕事をしましたが、実際に、そのような動きが起こっていることを肌で感じました。

最後に、この世の中に、家庭を犠牲にしてまで、やるべき仕事はありません。

「家庭を犠牲にして、仕事に没頭できるはずはない。

いい仕事のためには、家庭を大事にしなければならない。

というのが私の人生観です。

Q6

『千問』P556Q754「確認株式会社の解散事由の変更の要否」における、

定款変更の方法は、確認株式会社限定の話でしょうか?

マミカナ本p.188の最後に表掲載以外に特則がないとありますが、

千問の記載と矛盾しているのではないですか?

投稿 焼きそば風雲伝 | 20075 8 () 2354

A6

すいません。いま、出先なので、どちらの本もありません。

Q7

答案において、一つのカッコ内で複数の条文を指摘する際のことについてですが、

・条文を挙げる順番には何か決まったルールはあるのでしょうか?

 民法の条文と会社法の条文を挙げる時には民法の条文からとか、

 重要なものから挙げていくとか、

 数字の少ないものから挙げていくとか。  

・条文番号を区切る時に、「・」と「、」の使い分けはどういう基準でなされているのでしょうか?

投稿 初学者兼独学者 | 20075 9 () 0838

A7

 どうやってもいいです。条文番号が小さい順にしてもいいと思いますし、準用条文を先に書いて、その後に準用先を書くとかでもいいでhそう。

Q8

5 1日に役員の任期の起算点について質問した者です。

予選等選任決議の効力発生時期を遅らせることは、会社法ではできず、もし、任期の起算点にこだわるのであれば、その日に株主総会を開催しなければなりませんか。

たとえば、5月31日開催の株主総会で、6月1日に選任の効力が生ずる取締役は選任できず、6月1日を任期の起算点とするためには再度、6月1日に株主総会を開催しなければなりませんか。

投稿 司法書士 北海道 | 20075 9 () 1738

A8

6月1日に選任の効力を生ずる取締役は選任できます。

しかし、起算点は、531日からです。

Q9

株主総会における議決権行使期限に関する質問ですが、「株主総会の日時の直前の営業時間の終了時」が基本と理解していますが、そもそも

1.会社が営業時間を定めていないとなると就業時間なのですか?

  はたまた裁量労働で、時間の定めが無い場合はどうなるのです

  か?就業時間で考えると金融機関などは営業時間と就業時間は

  異なるでしょうから他社とレベルが揃ってない気もします。

2.行使書面もしくは招集通知に記載するのは何時何分まで書くので

  しょうか?それもどうかということで、5時半を6時にすること

  を取締役会で決めた場合も「2週間を経過した時以後」を求めら

  れるのですか?

3.上場会社は議決権を株主名簿管理人(金融機関)に集計してもら

  ってるのが、実態かと思いますが、管理人の営業時間15時を行

  使期限と考えるのはどうですか?

以上よろしくお願いします。

投稿 しろうと | 20075 9 () 2239

A9

1 営業時間は、常識的に判断してください。

2 「2週間を経過した時以後」は、時間単位で考えずに、1日余裕を見るほうが法的リスクを避けられます。

3 管理人の営業時間は、管理人の総会でだけ問題になる概念でしょう。

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2007年5月 4日 (金)

ケアレスミスをなくせ(2)

 前回、ケアレスミスの原因は、
  ①読解・知識・論理展開・解答が、不確かである。
  ②不確かな部分を、限られた時間内で、解答しなければならない。
  ③見直しをする時間がない。
  ④集中力がない。
  ⑤やる気がない。
の5つであるとお話しました。
 今日は、この5つを克服するためのテクニックについてお話します。

1 読解・知識・論理展開・解答を確実にする。
 読解を確実にするためには、次のことを実践しましょう。
① 問題文で、二度以上でてきた言葉に○をつける。二度以上出てくる言葉は、その文章のキーワードである。
② 複雑な文章は、主語と述語だけを取り出して、要するにその文章が何をいおうとしているかを要約してみる。
  ③ 問題文の最後にある、「問い」の部分にアンダーラインを引き、何を問われているかを確認する。
  ④ 5つの選択肢が、相互に、どこに違いがあるのかによって、グルーピングしてみる。
  ⑤ 問題文を必ず2度以上読む

 知識を確実にするためには、
  ① 反復して定着させる。
  ② 時間を決めて、短時間で知識が出てくるように訓練する。
ことが必要です。

 論理展開を確実にするためには、
  ① 接続詞及び語尾に波線を引く
  ② 自分で択一の問題を作ってみる。
という方法がいいでしょう。

 解答を確実にするためには
① 試験ごとに、解く順番を変えない
② マークしないまま、次の問題にいくようなことをしない。答えがわからなくても、必ずマークして次に進む。
③ 正解の自信がまったく無いものは×、あやふやなものは△をつけて、先に進む。
 ④ 10問ごとに、問題番号とマークしている問題番号がずれていないか、確認する。
 ⑤ 問題を解いているときに、「どの部分で、その肢を間違いと判断したのか」がわかるように印をつける。
⑥ 試験時間の最後の15分間は、△、×の順に見直しをする。
⑦ 最後の3分間は、問題の語尾、解答した肢、マークが整合的かどうかをチェックする時間にする。
 ということが効果的です。

 以上の方法論は、一朝一夕にできるようになるようなことではありませんから、演習をやっているときに、繰り返し実行し、無意識に、以上のことをやっているような自分を作り上げなければなりません。

2 不確かな部分を、限られた時間内で、解答しなければならない。
 すでに1で述べたとおり、時間を限定して知識が確実にでるかどうかをチェックすることが重要ですが、そのほか私は次のことを実践していました。
① 択一・論文の演習をするときに、時間を区切り、できていなくても、そこでやめる。そして、一問に何分かかっているかを常に把握する。
② 教科書を読むときに、自分が1分間に何ページ読めるか、定期的に計る。
③ 試験時間中、5問解くごとに、ラップをとり、時間配分を常に意識する。

3 見直しをする時間がない。
 1・2で述べたことを実践すれば、見直しをする時間は必ずできます。

4 集中力がない。
 集中力は、性格の問題ではありません。
 集中力は、自分が試験で集中できる環境を作って、はじめて生まれてくるものです。
① 毎日、試験時間と同じ時間帯に一番集中できるような起床・食事時間などを設定する。
② 睡眠時間は、1時間半を単位として、1日に最低4単位とる。昼寝をする。
③ 必ず3度、食事をする。ダイエットをしない。食べ過ぎない。
④ 炭水化物をきちんと採る。
⑤ 勉強を、この世で二番目に優先させる。ただし、一番目にもある程度我慢してもらう。勉強よりも大事なことが2つ以上あると、勉強に集中できない。
⑥ 心配事をなくす。もしくは、心配事を心配しないようにする。

 ⑤ やる気がない。
  健全な人は、試験中にやる気が無い人なんかいないと思うかもしれませんが、途中で試験会場から去る人、投げやりになる人は、沢山、存在します。
 完全主義者は、途中で、何問かわからない問題にであうと、ぶち切れてしまって、いい加減にマークするようになりますし、普通の人でも、「もう来年でもいいや」「この問題は捨ててもいいや」「答えを探すのが、面倒くさい」という気持ちが必ずわいてきます。
 私の口癖は
   試験中は、正解なんかわからない。
   正解らしき答えがわかるだけだ。
です。
 どんなに自信がある答えでも、必ず不安は残りますし
 どんなに自信がなくても、マークさえしていれば、正解のときもあります。
 試験中にできることは、少しでも正解に近づくことであり、正解と確信することではありません。
 問題の難易度にかかわらず、常に、正解に近づく努力(=肢を切る根拠を見つける努力)を怠らないことが必要不可欠です。
 
以上、限られたスペースで、早足にノウハウを披露しましたが
集中力とやる気の部分は、今からでも、改善できるでしょう。

この時期になると、何をやるにしても「時間が無い」と焦るのが普通です。
しかし、十分な準備をしないまま、時間を無くしてしまったのは、あなたのせいですから、いまさらそんなことで不安がっても意味はありません。
ドラえもんがいない限り、過去には帰れません。
今から試験が終わるまで、何時間あるかを把握し、
その時間内で自分ができることが何かを冷静に見つめましょう。
そして、その限られた時間のなかで、少しでも自分を高めていく努力をする。
そういう姿勢がある限り、ケアレスミスを恐れる必要は何もありません。

(質問)
Q1
私も、商事法務no.1778の先生の論文「代表取締役の就任・退任」についての質問です。論文(及び別表)を読みながら思ったのですが、先生は、いわゆる代表権回復説(新版注釈会社法(14)199頁等)を支持されていると考えてよろしいのですか?
投稿 駿佑 | 2007年5月 2日 (水) 23時53分
A1
会社法では、有限会社法との一体化等の理由により、従来の商法の学説は、いずれも成立しなくなっていると思っています。ですから、代表権回復説ではありません。

Q2
私は初学者です。
変な質問を許してください。
『①人の行為が法律によって拘束されるのか、
それとも、
②法律の中に人がいるのか』
が最近とても気になります。
教えてください。
私の理解に基づけば
①によると…ある行為を行う場合に適当な法律があればそれに従う。
        なければ、他の法律に該当又は関係しない限り何をしてもよい。
一方
②によると…法律に定めの無い行為はできない。
細かな定義で説明が異なるかもしれませんが、
先生のお力で意をくんで教えてください。
投稿 TOTAN | 2007年5月 3日 (木) 01時14分
A2
初学者らしい、哲学的な質問です。
答えは、どのような法律によるか、どのレベルでものを考えるかによります。

例えば、罪刑法定主義のように、「法律がなければ刑罰が課せられない」という意味で、「法律がない限り、何をしてもよい」というルールは存在します。
しかし、「法律がない」という意味には
 無法地帯である
という場合と
 憲法に基づく法秩序はあるが、具体的な法律はない
という意味があります。
 前者ならば、人は何をしても法律上の制裁はありませんが、逆に、他の人から私的制裁を加えられる可能性がありますから、そういう状態で「何をしてもいい」といえるかどうかは、微妙です。
 後者ならば、法秩序は、他人の権利をその人の許可なく侵害したのならば、何らかの救済が認められるようになっているはずです。
 ですから、結局、「何をやってもいい」ということにはなりません。刑罰が課されなくても、民事的・行政的な制裁が加えられるかもしれません。

Q3
本日は業務を執行する社員と持分会社との関係について教えてください。
株式会社と役員等との関係は委任に関する規定に従う(330条)のに対し、業務を執行する社員と持分会社との関係は「委任関係ではない」(ある書籍)、「委任に関する規定に相当する規定、修正する規定(が置かれている)」(千問No783)と表現されています。
この点につき、なぜ持分会社の場合、株式会社と異なり、委任に関する規定に従うと規定しなかったのでしょうか?
かなり前ですが、株式会社と役員等の関係は、委任の規定+αで規律されているとの記事がありましたが、持分会社と業務執行社員の関係も委任の規定に会社法独自の+αの規律でも構わないのではないかと思いましたので。
投稿 NK | 2007年5月 3日 (木) 23
A3
委任の規定に従うというのは、雇用や請負などの形態を許さない。委任の規定を契約で変更することを許さないなどという意味です。所有と経営が一致している持分会社で、そのような私的自治の制限をする必要はないから、そのような規定がないのです。

Q4

①会社法120条の「連帯して」、会社法430条の「連帯債務者とする」というのは、同じ意味と考えていいのでしょうか?

②また、両者の「連帯」という意味は、民法432条以下にいう「連帯債務」の意味で用いられているのでしょうか?それとも、いわゆる不真正連帯債務の意味で用いられているのでしょうか?
明文で「連帯」という言葉が用いられている以上、民法上の連帯債務のことを意味するのかとも思われますが、判例(最判昭和57・3・4)は民法719条の「連帯して」という文言を、いわゆる不真正連帯債務をあらわしたものと解していますので、後者の解釈も無きにしも非ずだと思われます。
さらに、その責任の実質を考えると、負担部分を観念する連帯債務よりは、不真正連帯債務のほうがなじみやすいとも思われます。

旧司法試験受験生として、次回の記事も(というか毎回ですが)楽しみにしております。択一前のこの時期に、カツを入れてやってください。

投稿 G/W | 2007年5月 4日 (金) 05時56分

A4

基本的には同じ意味です。

不真正連帯は、解釈上の概念ですから、どう解釈してもよいと思います。

私も不真正だと思います。

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2007年5月 2日 (水)

ケアレスミスをなくせ(1)

世の中は、黄金週間です。

でも、TMIの周りを見渡すと、皆さん、株主総会の準備のために、夜遅くまで頑張っていて、7月までは気が抜けない感じです。

そういう殺気だった中で、この私めはと申しますと、(大変、申し訳ないことに)検察官時代に予約していた家族旅行のために長期休暇を取らせていただいております。

本当なら、検事時代、2月末から有給消化モードに入り、40日間まるまる休んで、家族旅行をするはずだったのに
そんな私の気配を察知してか、特捜部は、これから休もうとしたその瞬間に、事件を配点し、有給をあまり消化させてくれませんでした。
特捜部は、鬼検事の集まりだと評されることがありますが、それは被疑者に対して鬼なのではなく、検事に対して鬼なのです・・。

同じ給料で沢山の仕事をさせたんですから、税金を効率的に使用できて国家的にはハッピーだったかもしれませんが、家族的にはアンハッピー。
私は、家族から非難の的となり、その償いとして、今、妻子の僕として尽くしているところです。

それにしても、私にとって、黄金週間は、黄金があっという間に無くなる週間。
子供3人連れの旅はお金がかかります。

子供の数が2人だとホテルは一部屋ですむのに、3人だと家族5人で2部屋取らなければならないとか。
飛行機の無料航空券を取ろうとするとき、各便とも、最初は4席しか無料航空券用の座席を用意していないので、無料航空券で旅行しずらいとか。
タクシーに乗ろうとすると、車1台に一緒に乗せてくれないとか。

しかも、昼間は、ドロドロに疲れるまで遊ばされるのに、夜は夜で、妻子の寝顔を見ながら、職場から抱えてきた仕事をこっそりパチパチ打たなければならないのがつらいです。

今も、5月15日に開催される商事法務の講演会に向けて、株主総会のために少しでも役に立つような資料を打っています。

私は、民事局時代から、いつも講演会を聞きにきていただく方の顔を思い浮かべて、「その方にどんな情報が必要とされるか」を想像しながら、講演の内容を考えるのですが、
今回は、講演会の時期が、総会準備が終わったころなので、テーマの選択が難しい。
参加者は、ひとり2問、質問することができるのですが、
このブログの読者の皆さんからの質問もおりまぜながら話したいので、ネタがありましたらぜひ書き込んでください。

それはともかく、苦しみながらも、黄金週間に家族旅行ができるのは、幸せの絶頂といってもよいことは十分わかっています。

 受験生は、今頃、試験直前で、机でガリゴリ勉強していることを思うと、申し訳ないというよりも

  「ゴールデンウィークに遊びたいなら、早く合格してみろ!」

と、石を投げられそうな言葉を叫びたい気持ちになります(笑)。
 
 それを聞いて
   葉玉め。いつか見ていろ。
   俺は検事になって、いつかお前を捕まえてやる。
というくらい気合いの入った受験生用に、今日は、勉強ネタをやりましょう。

hkさんから、次のような質問をいただきました。

「私が抱えている悩みとは、択一でケアレスミスが異常に多く、演習をそれなりに重ねてまいりましたが、ミスが減らないという問題です。
 偉そうに言えることではないですが、私は、小学生時代の算数の頃からケアレスが多いの自覚しており、直せないでいるので、本当にどうしたらよいものかわかりません。書いてみると改めて答えようのないバカみたいな凡ミスですが、一般論としてでもいいので、なにかしらアドバイスをいただけたらなと思います。」

 
 偉そうに言えることではないですが、会計参与の任期でケアレスミスが発覚したばかりの私に、ケアレスミスの無くし方を聞くとは、hkさんは、とてつもない度量の持ち主です。

 つい昨日も、温泉の脱衣場に娘のヘアピンを忘れてきて取りにいかされるわ、
 デジカメの充電器を東京のマンションに忘れてきて、大昔の大型デジカメを抱えて旅をせざるをえなくなるわ。
 毎日、ケアレスミスはつきません。

 勉強においても、昔、「AがBを殴って鞄を盗み、『鞄』を川に捨てた」という問題で
「Aが、『B』を川に捨てた」と勘違いして、殺人罪の是非を大々的に論じたのは、この私です。

 ケアレスミスを1日1回に抑えることができれば、私にとっては、生涯残る大偉業となるでしょう。
                                              
 しかし、「MR.ケアレス」の私でも、択一試験は結構得意で、模試から本番まで十数回受けて、いつも9割は取れていました。
 ですから、ケアレスミスをしやすい性格かどうか(粗忽かどうか)と、択一の得手不得手には、相当因果関係はありません。

 ケアレスミスを減らす具体的方法は、いろいろありますが、最初に一番大事なことを申し上げますと
   
   ケアレスミスは、絶対になくならない。
   しかし、ケアレスミスをしても合格するだけの実力をつければ、ケアレスミスは減る。

ということです。

 テストにおけるケアレスミスを分析すると
   ①問題読解時のケアレスミス(問題の読み違い)
   ②知識のケアレスミス(記憶していた情報なのに、別の記憶の箱を開けて、別の情報を取り出した。)
   ③論理のケアレスミス(例えば、「Aでなく、かつ、Bであるものを2つ選べ」という問題であることがわかっているのに、「Aでない、又は、Bであるもの」を選んだ)
   ④解答のケアレスミス(マークミスなど)
の4段階があります。

 人間は、自分を馬鹿だと認めたくないという本能があるため

    問題文を読んでも答えが思い浮かばないときだけ、「自分に実力が無い」と思い
    ①から④までのケアレスミスは、「ケアレスミスだから、注意すれば、次は解けるはず」と思う

のですが、実際には、

    そのようなケアレスミスをするのは、あなたが、勉強不足で、単に実力が無いだけ。
    「ケアレスミス」を自分への言い訳にしているだけ

なのです。

 例えば、うちの5年生の子供が、「2+5=8、6+7=15」と解答したのを「ケアレスミスしちゃった」と言うのですが
 そういうのは、計算力が不足しているだけで、ケアレスミスではないのです。

 ケアレスミスは、次の5つの原因が重なって起こります。
  ①読解・知識・論理展開・解答が、不確かである。
  ②不確かな部分を、限られた時間内で、解答しなければならない。
  ③見直しをする時間がない。
  ④集中力がない。
  ⑤やる気がない。

 この5の原因さえわかっていれば、まず日常の努力として
  ①読解・知識・論理展開・解答が確実にできるような力をつける
  ②短時間で解答できるようになる
  ③見直しをする時間を作れるように、時間を管理して解く
ということができるようになれば(=実力がつけば)、確実にケアレスミスは減り、さらに
  ④試験時間において集中できる状況を作り出す
  ⑤試験時間においてやる気を出す状況を作り出す
という2つのことができれば、ケアレスミスで悩むようなことはなくなります。

 (ちょっと長くなったので、次回に続きます。)

(質問コーナー)
Q1
当方、非公開・中会社で実務を担当しております。
当社は従来普通株式のみ発行しておりましたが、事業承継との関係からか、オーナー社長の持株の一部とその他の株式の全部を無議決権配当優先株式に変更することとなりました。
変更のために株主全員の同意をとることは困難が予想されるため、発行済の全株式に転換請求権を付与し、転換請求の対価として無議決権配当優先株を交付する、というスキームを考えています。(総会後、各株主に個別に転換してもらうよう交渉します)
そこで、お尋ねしたいのですが、6月の定時総会で定款変更として(1)種類株式を発行できることとする(2)全株式(=普通株式)に転換請求権を付与する、という内容の議決をとらねばならないと思いますが、これらを同時に一つの議案として決議してよいのでしょうか?それとも、(1)の議決を行った後、メンバー同一とはいえ種類株主総会(普通株主)にて(2)を決議する、という手順を踏むべきなのでしょうか?
ご教示いただければ幸いです。
投稿 ヒデ | 2007年4月25日 (水) 18時17分
A1
転換請求権を付与するだけであれば、種類株主総会は、不要ではないでしょうか?

Q2
事業全部の譲受に伴い自己株式を取得する際には財源規制が課せられないのはなぜなのでしょうか?私の使用している参考書には、「債権者の同意なしには債務の移転はなされないため、実質上債権者保護が図られているから」とあるのですが、譲受会社の債権者の保護が問題である以上、正しい理由とは思えないのです。
A2
すいません。前提は、正しいのでしょうか?
事業全部の譲受けに伴う自己株式の取得に財源規制が課せられないという根拠を教えていただけますでしょうか。

Q3
公開会社において、譲渡制限株式の取得者が会社に譲渡承認請求をするに際して、株券不発行会社においては取得者が譲渡した人等と共同して請求することとされていますが、株券発行会社では原則として株券の提示により行うことと理解しています。そこで、株券発行会社が株券の長期不発行の状態であるとき、株券が手許にない状態でも、株券の提示なしに取得者が譲渡した人と共同して承認請求はできるのでしょうか?
投稿 michu | 2007年4月28日 (土) 09時39分
A3
それは、解釈問題ですね。会社が、信義則上、拒めない場合はありうるでしょう。

Q4
 会社施規130条3項,会社計算規151条3項,同156条3項に「会議」とありますが,「会議」とは,「監査役会」とは異なるものですか。
上記1の各条項における「情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法」によるときは,監査役「全員」が情報の送受信により「同時に」意見の交換をすることができるものでなければならないのですか。
投稿 田舎の弁護士 | 2007年4月28日 (土) 10時19分

A4
 監査役会は、機関としての呼称、会議は、実際に監査役会のメンバーが集まって開く会議のことだと思います。
 監査役全員が同時に意見の交換をすることができる必要があります。
 ただし、会議体なので、欠席する監査役がいる場合はあるでしょう。

Q5
会社法32条1項1号で「発起人が割当てを受ける」という表現があります。他方25条1項2項・34条1項等では、発起人が(は)・・「引き受け」・・という表現になっています。これは、32条1項1号は発起人全員の同意で定めようとすることなので「割当て」と表現したもので、発起人の場合には「引き受け」と「割当て」とは実質差異がないと理解してよいのでしょうか。条文上「引き受け」と書かれている部分は「割当てを受け」と解釈してよいのでしょうか。
投稿 三社祭 | 2007年4月29日 (日) 13時38分
A5
 会社が割当てを行い、割り当てられた人が引き受けているので、主体が違うだけです

Q6
千問Q390では、「任期の起算点を株主総会のコントロールが及ぶ「選任時」とすることとしたものである。なお、株主総会の決議で、選任決議の効力発生時期を遅らせることとしたとしても、任期の起算点については、選任決議の日と解すべきである.」とありますが、株主総会の決議で、選任決議の効力発生時期を遅らせることにした場合は、選任の効力発生時期が株主総会の意思による「選任時」になるとおもいますがいかがでしょうか。
なお、会社社員の任期の計算は、特別の事情(予選)がない限り就任日の翌日から起算すべきである。(昭和38.12.10民事甲3190局長認可)の通達等が
あり、旧法当時は予選が認められてたと思います。
投稿 司法書士 北海道 | 2007年5月 1日 (火) 12時02分
A6
選任の効力発生日ではなく、文言どおり、選任した日です。
ここは、予選の話を含めて、会社法で論理的に整理したところですね。

Q7
いやはや・・・特別取締役制度は、会社という意思決定機関についての、日本の伝統的な「石臼」の機関構造について、実に見事に再現しているように思いました。
つまり、株主の「所有(の意思と能力)」が「下の石」であり、取締役の「経営(の意思と能力)」が「上の石」であり・・・特別取締役は、脱穀する麦や米を入れる穴が、「中心とはちょっとずれ」の位置にあるのと、ちょうど一緒だと思うのです。
自分の身近の(小規模な)会社でも、監査役の地位にあるヒトや相談役(と言われるヒト)が、実質的には「特別取締役の役割」を担っていたり、それに伴う社外取締役(第三者性や社外性)の役割を担っています。

ここで、質問があります。
競合取引は、みんなで石臼を回す役目を持つ取締役のその一部が、あたかも別途単独の石臼になってしまった現象と考えてよろしいでしょうか?
そして、利益相反取引とは、取締役が会社の利益に反して石臼を回す決定をしたり、石臼の相手になったりする行為であると考えてよろしいですか?

法律的な素養のない「職人気質のヒト」に対して説明するには、「変な例え」であっても、この手の具体的なイメージを使用しないと、実務上納得してもらえないことが多いのです。
変な比喩になってしまいましたが、コメントいただけると非常にありがたいです。

投稿 至誠丸 | 2007年5月 1日 (火) 14時30分
A7
すいません。私は、あまり石臼になじみがなので、適切な比喩かどうかの判断がつきません。

Q8
100問の183ページの
<283>承認を得ずに譲渡制限株式を譲渡した場合の効力
に関する記述で。解答では、
「譲渡制限株式について承認を得ずに行われた譲渡も当事者間『では』有効
であり、」
「その効果は名義書換ができないこと『により』、会社に対抗することができ
ない『にとどまる』」
となっており、確かに条文の文言からは素直だと思われるのですが、
『』の部分から前半部分では会社に対しては無効、つまり、
相対的無効説(譲渡承認=会社との関係で有効であるための条件)を
述べているように読め、一方で、後半部分では会社との関係では有効、
つまり有効説(譲渡承認=名義書換の拒否権の放棄にすぎない)を述べて
いるように読めてしまい、論理が矛盾してしまっているような印象を受けた
のですが、特に問題はないのでしょうか?もしくは、従来のこのような学説の
対立に関する問題(百選[18事件]、[20事件]など)は会社法においては
何らかの形で解決されたということなのでしょうか?
投稿 84 | 2007年5月 1日 (火) 16時01分
A8
 個人的な感触としては、この問題は、会社法以前に、取得者からの承認請求を認めた時点で、決着がついているように思います。
 100問の表現については、何の問題もないと思います。

Q9
当社は3月決算会社なのですが、前々期の2月に辞任した役員の退職慰労金議案を昨年の定時総会に上程し、承認され7月に支払ったのですが、
これに関することは、事業報告のどこに記載すればよろしいのでしょうか?

いろいろな文献等見ていますと、定時総会で退任した役員の退職慰労金は記載不要とあると思いますが、当社の場合も同様に記載不要となるのでしょうか?
役員の状況の部分に記載しようと思っていたのですが・・・

どうかご教示よろしくお願いいたします。

投稿 なべ貞夫 | 2007年5月 1日 (火) 21時11分
A9
規則118条1号でしょう。

Q10
毎度お世話になります。事業報告に記載する役員について詳しく解説いただき有難うございました。さらに質問させてください。
会社役員については、施行規則119条2号で以下の通り定められている。
①直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任したものであって、
②当該事業年度の末日までに退任したものを含む。
ここで、事業報告に実際に記載する内容の基準時ですが、19年5月初に役員の変化があった場合に、事業年度末(19年3月末)現在の役員一覧を記載し、(注)として5月初の役員の変化を記載するのか、それとも事業報告記載時点(5月中旬)での役員一覧を記載し、(注)として5月初の退任役員に触れるのでしょうか。
施行規則119条2号ではそこの基準が不明です。商事法務No.1789(p28)では、当事業年度末における会社役員が記載対象とありますが、そうすると先生の解説にある現時点(事業報告記載時点)を基準時とすることを基本とするという考えと相違するように思えます。18年度事業報告の役員記載形態として、18年度末時点が基準なのか、最新時点(事業報告記載時点)が基準なのか悩んでおります。

投稿 きんた | 2007年5月 1日 (火) 23時15分
A10
商事法務1789号が手元にないのですが、その記事以降に生じた様々な事態を整合的に解決するためには、事業年度終了後に辞任した役員についても、記載すべきであると思います。

Q11
旬刊商事法務no.1778について質問がございます。同誌の葉玉先生の論文において、直接選定方式で選定された代表取締役はその職を辞することができないという趣旨の記述があると思われますが、なぜ辞任できないのでしょうか?取締役も代表取締役も株主から信任を得ている点では変わらないのに、取締役が辞任できることと比較して考察しましたらこのような疑問が湧いて参りました。

投稿 ケーリッヒ | 2007年5月 2日 (水) 01時44分
A11
取締役を辞任して、代表取締役でもなくなるというのは、できます。
代表取締役は辞任するが、取締役としては居残るというワガママができないということです。

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