会社役員の基準時
月日は百代の過客というか、光陰矢のごとしというか。
先週
「頻度をあげますね。」
などと気軽に書いたわりには、もう火曜日になってしまいました・・・・。
狼少年になりそうですが、今週からは、なんとか週2回のペースに復活させます。
絶対とは、いいきれないのが、怖いけど。
念のため、今日は、2回分、書いときます。
とはいっても、質問コーナーが35問もあるので、独立させただけです。
今日は、2つほど、お知らせがあります。
まず、5月15日に、商事法務で、セミナーをやることになりました。
題名は
直前対策緊急セミナー
Q&A本年株主総会の争点と実務の着地点
という若干大げさなものですが、趣旨は
総会関係で悩んでいる方の質問を事前に2問ずつ、お聞きして
それに答えましょう。
というものです。時間が許せば、質問の周辺領域で注意すべき点についてもお話したいと思っています。
自分の悩みを解決するだけではなく、他社の悩みを聞くのも大変参考になると思い、こういう企画にしてみましたが、いかがなものでしょう?
定員が40名ということなので、総会対策で悩んでいる人や、恋で悩んでいる人は、お早めに申し込みください。
詳しくは、http://www.shojihomu.co.jp/school.htmlへ。
2番目のお知らせは
このブログでも実名で質問していただきました中央大学の大杉教授が、ブログを開設されました。
http://blog.livedoor.jp/leonhardt
商法関係の貴重な情報源がまたひとつ増えました。
大杉先生、期待しています。
さて、これからは本題。
今日は、入門を復活させようと思ったのですが、総会前ということもあり、銀行屋は荒野の藤袴 さんからの質問
「4/3のQ15の”事業報告における役員に関する記載において、事業年度末後定時総会までに辞任・退任した役員を除外することについて”ですが、立法論としてなぜそういう風になったかをぜひお教えください。」
について、少し詳しく説明したいと思います。
4月3日のQ15を見てもらえばわかるのですが、私は
「事業年度末後定時総会までに辞任した役員を除外するのは、条文上、仕方がない」
という趣旨の回答をしました。
しかし、銀行屋は荒野の藤袴 さんからの質問を見て
もしかして、質問と回答の間に重大なすれ違いがあったのではないか
と思うようになってしまいました。
それは、
私は、昨年(平成18年)6月の定時株主総会までに辞めた会社役員について回答したつもりなのですが、
質問者のラッシャー木村さんは、今年(平成19年)6月の定時株主総会までに辞めた会社役員について質問していたのではないか
ということです。
質問を誤解していたかどうかは、いまだに判然としないものの、誤解のないように、事業報告の基準時について、例をあげながら、説明してみます。
事業報告は、株主等に対して、株式会社の状況に関する重要な事項等を報告するためのものですが、事業報告で報告すべき事項は、時が経つにつれ、刻々と変化していくものなので、「どの時点の事実を事業報告に記載するのか」という基準時を決める必要があります。
この基準時については、施行規則120条1号から3号のように条文に明記されているものと、そうでないものがありますが、明記されていないものについては、現時点(事業報告記載時点)を基準時とすることを基本としつつ、開示事項の性質に応じて、もっとも適切な時点を解釈によって導く必要があります。
もっとも、今回の質問にあった会社役員については、事業年度の途中の日である定時株主総会の日に選任・退任することが通常であるという特殊性に鑑みて、施行規則119条2号かっこ書で
① 直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していたものであって、
② 当該事業年度の末日までに退任したものを含む。
という基準時が定められています。
3月決算の会社で、今年(平成19年)の総会を例にとって、この要件を検討してみますと
「直前の定時株主総会」は、平成18年6月の定時株主総会のこと
「当該事業年度の末日」は、平成19年3月末のこと
ですから、
① 平成18年6月の定時株主総会の翌日以降に在任していたものであって、
② 平成19年3月末までに退任したものを含む。
という意味になりますね。
この条文の①の部分をとらえて、私は
平成18年6月の定時株主総会までに辞任退任した会社役員は含まれない
と回答したのです。
なぜ、昨年(平成18年)の定時株主総会の日までに退任した会社役員を除いているかというと、それらの会社役員に関する質問や責任追及は、昨年の定時株主総会でやっているはずだからです。
これに対し、質問が、もし
今年(平成19年)の定時株主総会までに辞任・退任した会社役員について、今年の事業報告に記載しなくていいのはなぜか。
という質問だとしたら、回答は
それは、勘違いであり、
当該会社役員については、今年の事業報告に記載する必要がある
ということになります。
私が、質問者がもしかしたら勘違いしているのではないかと思ったのは、先ほどの②の部分「平成19年3月末までに退任したものを含む。」を反対解釈して
平成19年3月末までに退任したものは含むが、
平成19年4月1日以降に退任したものは含まれない
と考える人がいるのではないかと、ふと思ったからです。
しかし、このような反対解釈は、間違いであり、条文の②の部分は
事業年度の末日までに、すでに辞任している会社役員について、どのように取り扱うのか、不明確になるといけないので、注意的に規定した
ものに過ぎません。
実質的にも、今年の3月末までフルに活動していた会社役員に関する事項は、今年の事業報告で書く以外に書く機会はないわけで、今年の総会が始まる前に辞めたからといって、書かなくていいということにはなりません。
最初に質問してくれましたラッシャー木村さんが勘違いをしていたかどうかはよくわかりませんが(もし勘違いしていていなかったとすれば、失礼しました)、万一、事業報告を作成している人が、私の答えを勘違いしていると怖いので、補足してみました。
事業報告の基準時の問題は、結構、難しいところなので、もうすぐ出る
T&Aマスター4月30日号
のサミーズカフェで、事業報告に書くべき主要な事項について、検討を加えてみました。
関心のある方は、カフェに行って、マスターのサミーさんに聞いてみてください。
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