会計参与の任期
会計参与の任期の問題について、いくつかのコメントをいただきました。
この点について、私は、立案時からいままで
「委員会になったからといって、会計参与の任期が終了するはずがない」
と思い込んでいたので、脊髄反射的に、そのように答えたのですが、
皆様の書き込みをみてよくよく条文を見直してみると
確かに、条文を見る限り、皆様のおっしゃるとおりだ・・・・
とやや愕然としてしまいました。
私は、条文至上主義者で、自分の思いとは違うものでも、条文を読んで、もっとも素直な解釈だと思えば、それに従いますので、今回の会計参与の任期については、先日の答えを改め
会計参与の任期は、委員会の設置・廃止・譲渡制限の廃止の定款の変更の場合も終了する。
と回答したいと思います。
登記の基本通達でそうなっているなら、なおさらです。
会社法マスター115をどこかで修正する必要がありますね。
私のつたない記憶によれば、立案時に仲間内で議論していたときは、次のような意見が強かったような気がします。
取締役の任期について332条4項が、
①委員会の設置・廃止を終了事由としているのは、取締役の権限に重要な変更が加えられるからであり、
②譲渡制限の廃止を終了事由としているのは、公開会社になる以上、非公開会社で株主構成をコントロールしていた取締役を一新し、新しい株主のもとで選任しなおすべきだから
という点にある。
これに対し、会計参与は
①委員会の設置・廃止により、権限に変更は生じず
②非公開会社の株主構成をコントロールしていたわけではないので、公開会社になったからといって選びなおす必要はない。
この点からすると
それらの定款変更で、会計参与の任期を終了させる必要はない。
以上の理屈は、筋が通っていると思うのですが、334条は
『第三百三十二条』の規定は、会計参与の任期について準用する。
と書かれていて
『第三百三十二条第一項から第三項まで』の規定は、会計参与の任期について準用する。
とされていないので、第4項も準用されると読むのが素直なんですよね。
立案担当者(急に他人モードになりますが)は、きっと、334条2項で
『前項において準用する第三百三十二条の規定にかかわらず、』
と書いたので
332条4項が適用除外されているから、大丈夫。
という頭があったんだと思いますが、よく考えると、332条1項から3項までの準用については、
それらの規定が準用された上で、さらに任期の終了事由を増やす
という使い方をしているのですから、
4項も同じように考える
しかないようにも思います。
このように『条文の文言に間違いはないが、考えていたのとやや違う結論になってしまった」というような気がするものの、(それを素直に告白すると怒られそうな気もするので)
きっと立案担当者は、何らかの理由で、最終的に、会計参与の任期に334条4項が準用されると考えていたに違いない・・・
とも思うのです。
では、なぜ委員会の設置・廃止や譲渡制限の定めの廃止で、会計参与の任期が終了してしまうのでしょうか。
さあ、一体、なぜでしょう。
それは、きっと
会計参与は、取締役又は執行役と共同して、計算書類を作成するので、定款変更という特別な事情で、取締役又は執行役の任期が終了したときには、会計参与も、もう一度、選任しなおしたほうがいい
という政策判断があるからだと思います。
この説明が説得的かどうかは、ともかく、
会計参与の任期に、332条4項は、準用される
ので、そう考えることにしておきましょう。
(質問コーナー)
Q1
株懇のひな形もそうですが、多くの会社は、定款で定時株主総会の議決権の基準日を単に3月31日とだけ定めている(時間は特に定めていない)と思います。そうすると、3月31日の午前0時に株主名簿に記載された株主ということになるのでしょうか。
実務的な感覚からすると、「3月31日の最終の株主名簿に記載された株主」ではないかと思っていたのですが、仮にそうしたいのであれば、定款にそう定めるか、あるいは、時点はちょっとズレますが定款で基準日を4月1日と定めるしかないのでしょうか。
投稿 勉強中 | 2007年4月25日 (水) 11時32分
A1
その問題は、昔、相当議論したのですが、結局は、定款の趣旨で判断するしかないということだという結論にいたりました。
少なくとも3月31日については、どの会社も、3月31日の最終の株主名簿という趣旨ですから、現在の取り扱いで問題ないと思います。
Q2
株主総会招集通知に記載する議題名についてでございます。会計監査人選任議案の議題名の記載事例を見てみると、「会計監査人1名選任の件」とし員数を明示しているものもあれば、「会計監査人選任の件」として員数を明示していないものもあります。(取締役、監査役の選任議案の事例では、員数を明示していないものは見たことがございません。)
取締役選任議案に関するものではありますが、判決例(東京高判平3.3.6金商874-23)は、「~、原則として員数を明らかにすべきであり、員数の明示は『会議の目的たる事項』に含まれると解するのが相当である。~」とされております。招集通知に記載する会計監査人選任の議題名についても、員数を明示すべきでしょうか?
どうかよろしくご教示くださいますようお願い申し上げます。
投稿 一目山人 | 2007年4月24日 (火) 19時51分
A2
明示した方がベターだと思いますが、明示しないから違法というわけではないと思います。
ただ、明示していないと、株主から、別の監査法人と一緒に共同監査しろ、という提案があっても、断れないでしょうね。
Q3
株式の相互持合いでお互いに議決権を行使できないA社とB社の関係において、B社の基準日(3/31)以降株主総会(6/30)までに、A社におけるB社の持株比率が25%未満になる措置をとった場合に、A社はB社総会での議決権が行使できるようになるという考え方はよろしいでしょうか?
あるいは、B社の基準日と同日において、A社におけるB社の持株比率が25%以上であるから、A社はB社総会での議決権を行使できないことになるのでしょうか?
因みにA社定款において、
「基準日後株主が行使することができる権利が株主総会における議決権である場合において、第1項の株主の権利を害しないときは、当該基準日後に株式を取得した者の全部または一部を当該株主総会において権利を行使する株主と定めることができる。」
とあります。
A社がB社の株主であることはB社基準日の株主名簿で明確ですが、A社がB社総会で議決権を行使できる株式かどうかについては、A社株主名簿でB社の持分比率によって決まってくることから、その比率がB社の基準日で判断されるのか、またはB社の総会日で判断されるのかというのが質問の主旨です。
投稿 KIRABO | 2007年4月25日 (水) 10時22分
A3
基準日を定めた場合、原則は、B社基準日ですが、施行規則67条3項1号2号、4項の例外があります。
Q4
当方、非公開・中会社で実務を担当しております。
当社は従来普通株式のみ発行しておりましたが、事業承継との関係からか、オーナー社長の持株の一部とその他の株式の全部を無議決権配当優先株式に変更することとなりました。
変更のために株主全員の同意をとることは困難が予想されるため、発行済の全株式に転換請求権を付与し、転換請求の対価として無議決権配当優先株を交付する、というスキームを考えています。(総会後、各株主に個別に転換してもらうよう交渉します)
そこで、お尋ねしたいのですが、6月の定時総会で定款変更として(1)種類株式を発行できることとする(2)全株式(=普通株式)に転換請求権を付与する、という内容の議決をとらねばならないと思いますが、これらを同時に一つの議案として決議してよいのでしょうか?それとも、(1)の議決を行った後、メンバー同一とはいえ種類株主総会(普通株主)にて(2)を決議する、という手順を踏むべきなのでしょうか?
ご教示いただければ幸いです。
投稿 ヒデ | 2007年4月25日 (水) 18時17分
Q4
質問1 以下のような場合には、会社法および施行規則上、ある会社の親会社が2社あることになるのでしょうか。(X社、A社、B社はいずれも株式会社)
1)X社の議決権をA社が60%、B社が40%、それぞれ有している場合において、X社の取締役3名がA社従業員1名、B社従業員2名であるとき
2)X社の議決権をA社が60%、B社が40%、それぞれ有している場合において、A社とB社が同一内容の議決権行使をする旨の株主間契約を締結しているとき
A4
親会社は、論理的には2社以上あることもありえます。
Q5
質問2 会計限定監査役設置会社において、以下の疑問があるのですが、文言上は肯定せざるをえないような気がします。いかがでしょうか。
1)取締役は、この監査役にも事業報告を提出しなければならないのでしょうか(施行規則129条2項、法436条1項3項、438条1項1号)
2)この監査役が提出すべき事業報告にかかる監査報告にも、通常と同様(受領後4週間等)の監査期間保証があり、取締役から早く出すように求めることは(事実上はともかくとして法律上は)できないのでしょうか(施行規則132条1項)。
投稿 WLS3 | 2007年4月25日 (水) 22時17分
A5
そうです。
Q6
連結配当規制についてご意見をお聞かせください。
会社法施行後、連結配当規制を任意で導入できるようになっています。調査ベースではありますが、3社のみの導入にとどまっていると思います。
この背景には、特段導入のメリットがないからという点が大きいと思います。ちなみに会社によっては、連結配当規制を入れないことを毎年意思決定していくルールもあるようで結構やっかいです。
もし、クライアントから連結配当規制の導入の可否について相談があった場合にはメリットデメリットをどのように説明されるでしょうか。また、連結配当規制に意義についてご私見で結構ですのでコメントいただけると幸甚です。
投稿 くろすけ | 2007年4月26日 (木) 13時01分
A6
メリット 連結重視の経営なら、子会社が赤字を打って連結債務超過のときなんかに配当をするなんて、もってのほか。そういう甘えた考えをしていると、本体もすぐ資本の欠損が生じるよ。連結配当規制を導入すれば、経営者としての識見を評価されるよ。
デメリット 株主から、なんで配当が少ないんだ、と怒られちゃうね。
Q7
日本では決算を会社法ベースと証取法ベースの2種類で作成し、求められている注記の量に差が設けられております。2種類の書類を作るのはかなり大変です。また規制業種は、各業種の業法に基づき当局宛に報告書を出しています。
そもそも、何パターンも似たようでありながら、違うものを作らせるこの状況は改善しないのでしょうか・。。
投稿 まるまる | 2007年4月26日 (木) 13時06分
A7
その問題は、昔から言われている問題であり、昔と比べると、相当近づいています。
もう、ひとがんばりです。
規制業種の問題は、根が深いですね。各業種ごとに関心領域が違いますし。
Q8
会社法第399条第3項について、お教え下さい。
委員会設置会社の場合、会計監査人の報酬等を定める場合には、監査委員会の同意を得ることになっていますが、同意を求める主体である「取締役」について、会社法第399条には、第396条や第397条のような「取締役」の読み替え規定がありません。
一方、委員会設置会社の取締役が上記の会計監査人の報酬等を定める行為は業務の執行にあたり、第415条の規定と矛盾するように思われます。この点はどのように考えれば良いのでしょうか。
投稿 スタッフS | 2007年4月26日 (木) 17時50分
A8
まず業務の執行と、業務執行の意思決定は、別のものです。
委員会設置会社以外の取締役会設置会社の取締役のことを考えていただくと、取締役は意思決定に参画しますが、当然には、業務執行権はありません。
Q9
剰余金の配当に際して、会社計算規則45条1項1号の「剰余金の配当をする日」とは効力発生日をいうのですか、それとも決議日をいうのですか。減資決議と剰余金配当決議を同時に行い、減資の効力発生後に剰余金配当をする場合に、減資前の資本金なら基準資本額に満たないので利益準備金計上を要するが、減資後の資本金なら基準資本金額以上となり利益剰余金計上を要さない、という場合、いずれかにより、処理方法が異なってくるものですから。
投稿 ik | 2007年4月27日 (金) 01時08分
A9
効力発生日です。
Q10
千問Q58の図表1-4について質問させてください。
図表1-4の三段目に 上記の方法による選定がされない場合
とあります。この場合 かつ非取締役会設置会社において
設立時取締役全員が設立時代表取締役となることについては
理解できます。
ただ 上記の方法による選定がされない場合 かつ取締役会設置会社においても 設立時取締役全員が設立時代表取締役となるのでしょうか?取締役会設置会社は設立時代表取締役の選定について選定強制規定を置く会社となるので 設立時代表取締役を選定しないということはそもそもありえないと考えるのですが・・
つまり図表1-4は 上記の方法による選定がされない場合かつ
取締役会設置会社という組み合わせを 空欄に斜線をひくという
方法で表現するのが適切なのではないでしょうか?
投稿 maru | 2007年4月27日 (金) 05時26分
A10
選定しなければ、登記ができないから普通はそうなのでしょうが、万一、選定してないのに、設立されてしまったら、どうしましょうという話なんでしょう。
Q11
会社法370条について質問がございます。
会社法370条により書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすることができる対象事項は、会社法に定める取締役会の決議事項であれば、特別取締役による決議の場合を除いて、特に制限はありませんか。
法370条の文理や千問の道標P369は、「取締役会決議の省略を行い、当該決議に基づき不当な経営が行われた場合には、取締役・監査役は、十分な吟味をせずに提案に同意をし、または異議を述べなかったという点において任務懈怠責任を問われる可能性はある。」として、決議の省略による損害を会社法423条の問題としていることから、370条の対象事項は会社法に定める取締役会の決議事項であれば足りるということかと考えましたが、いかがでしょうか。
投稿 ひろゆき | 2007年4月27日 (金) 11時07分
A11
特に制限はありません。
Q12
立法時の考え方を教えてください。
度重なる商法改正そして会社法の施行により、種類株の発行が増加したり合併対価が柔軟化されているなか、企業の注記として潜在株式調整後1株当たり当期純利益の注記が求められていないのはなぜでしょうか。もちろん求められると面倒が増えてこまるのですが。。
投資家等のステークスホルダーから見れば、単純な1株当たり当期純利益より潜在株式調整後1株当たり当期純利益の方が重要ですよね。。
投稿 まっくろくろすけ | 2007年4月27日 (金) 11時33分
A12
投機的観点、投資的観点、オーナー的観点など株主の立場によって、何を重要と考えるかは、違うでしょう。会社法は、いわゆる「投資家」だけをターゲットに開示事項を定めているわけではありません。
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