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2007年2月27日 (火)

役会による自己株式取得

本日は、「定款授権による取締役会決議による自己株式取得」について、質問を頂きましたので、その点についてお話しします。
質問内容
「旧商法では、定款授権に基づく取締役会決議により取得できる自己株式の取得限度額が、「最終の貸借対照表」を基準として計算されることから、決算確定前になされた取締役会決議に基づき、決算確定後に自己株式を取得することはできないとされていました(郡谷大輔「自己株式の取得方法の見直し等に関する商法等の改正の解釈・運用上の論点」商事法務1674号8頁)。
この解釈は、会社法でも妥当するのでしょうか。
投稿 N | 2007年2月26日 (月) 09時54分」

株式会社は、自己株式を取得する場合、原則として、株主総会の決議が必要です(156条)。

しかし、これには、いつくか例外があり、
1 子会社からの株式取得(164条)
2 市場からの取得で定款による授権がある場合(165条)
3 459条の会計監査人設置会社において定款の授権がある場合
については、取締役会の決議で、自己株式を取得することができます。

 このうち、2については、Nさんのおっしゃるように、旧商法においては、決算確定前の取締役会決議で、決算確定後の自己株式を取得することはできないこととされていました。

しかし、会社法においては、剰余金の配当が何回でもできるようになったことに対応するため、「分配可能額」(461条)という新たな枠が設けられ、
  剰余金の配当の効力発生日の時点で、分配可能額を超えてはならない。
というルールがあるだけで
  剰余金の配当の「決議の時点」における分配可能額を超えていないことは要求されていない
ですし、
  剰余金の配当の決議を、いつしなければならないのか
という点にも何も制限が設けられていません。

 したがって、例えば、
    分配可能額がマイナスの時点で「次の決算確定後に分配可能額がプラスになること」を条件に、「決算確定後の日を効力発生日とする」剰余金の配当決議を行うこと
も可能です。

 これを前提にして、質問の自己株式の取得について考えると、会社法のもとでは、
   自己株式の取得決議の日については、何も制限されていないこと
   自己株式の所得についても効力発生日において分配可能額を超えていなければ適法であること
   剰余金の配当と自己株式の取得とで区別して考える理由がないこと
から、旧商法と異なり
   決算確定前の取締役会の決議によって、決算確定後に自己株式の取得をすることができる
と考えてよいと思います。

(質問コーナー)
Q1
 神田先生「会社法」(8版)77頁に、以下の記述があります。
 「会社が定款を変更して、株式譲渡制限の定めまたは上記(ア)〔引用注:取締役・監査役の選解任について内容の異なる数種の株式〕の定款の定めを廃止した場合には、(イ)の総会〔引用注:種類株主総会〕により選任された取締役の任期は、その定款変更の効力が生じた時に満了する(332条4項3号)。」
 私には、332条4項3号から選解任種類株式の匂いを感じ取ることができません。どう読めば良いのでしょうか。
A1
 332条4項3号は、取締役等選任条項の廃止は含んでいません。

Q2
 同じく神田先生96頁図表6です。名義書換がない場合、譲受人は会社に対し株主であることを主張できません(130条)。その例外として、“権利行使に株券提出が必要な場合”との記述があります。これは、具体的にどのような状況を想定しているのでしょうか。
投稿 あと3ヶ月 | 2007年2月24日 (土) 15時05分
A2
 それは、神田先生に聞いて貰わないと・・。

Q3
459条1項本文括弧書きの「取締役の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの」がどのような文法構造になっているのかよく分かりません。

教科書には、取締役の任期が1年を超えないことを意味するとされますが、どうやったらそう読めるのかが分からないのです(解釈としてでなく,日本語として分からないだけです)。

「事業年度のうち最終のもの」は事業年度の末日の変更(決算日の変更)を行ったときに1年間で事業年度が2つ設定される事態がありうることに対応したためと立法担当者の方は説明しており、その点は理解できました。
投稿 条文が読めない子 | 2007年2月24日 (土) 15時31分
A3
 正確には、任期の終了が、1年というより、次の総会の終結より後にならなければよいです。
 例えば、3月末が決算期の会社において、6月15日の総会で選任された取締役の任期が1年と1日だったとします。
 すると、「取締役の任期の末日」は、翌年6月16日になります。

 これに対し、「選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」は、翌年3月末日に終了する(6月15日からは、1年以内です)事業年度のことです。

そして、」定時株主総会の終結の日後の日であるもの」とは、翌年6月の定時株主総会の終結の日(例えば、翌年6月18日に開催されたとします)の後の日(6月19日)になります。

 とすると、任期が6月16日までだとしても、6月19日よりも前なので1年を超えることはあります。
 普通は、「定時株主総会の終結の日まで」が任期ですが。

Q3
初心者です。会社法は、「その他」と「その他の」で、それぞれ並列、例示を示すような書き方をしているのでしょうか。
投稿 デーブ | 2007年2月25日 (日) 20時08分
A3
そうです。現代の法律は、すべて、そのように整理されています。法制執務を読んでください。

Q4
商業登記の登記の事由で 組織変更により設立と記載するので
組織変更って設立の一種なんだと思い込んでいました。
設立の一種でないならば定めた効力発生日に組織変更の効力が生じるのにも納得できます。
 それでは、特例有限会社から株式会社への商号変更による設立も設立ではないと理解して良いのでしょうか?
 また特例有限会社から株式会社への商号変更による設立では、組織変更と異なり 効力発生日をあらかじめ定めることができず、登記申請日が効力発生日となります。
 このように、組織変更と特例有限会社から株式会社への商号変更とはなぜパラレルに考えることができないのでしょうか?
 
 さらに 組織変更では 設立とともに解散登記も経由同時申請しなければならないと認識しています。それでは、組織変更によっても法人格には何も変更がないことと、解散登記をすることとをどのように整合的に説明すれば良いのでしょうか?
投稿 maru | 2007年2月26日 (月) 00時12分
A4
 登記で「設立の登記」「解散の登記」をするからといって、設立の効果や、解散の効果が生ずるわけではありません。
 もともと、登記独特の言い回しですから、実体法の効果とは、直接の関係はなく、整合性を取るべきものでもありません。

Q5
会社法382条の①不正な行為と②法令若しくは定款に違反する事実と③著しく不当な事実の違いをご教授下さい。また、不正な行為については将来の行為についても含まれていますが、法令定款違反・不当な事実は過去のみでしょうか?
①②③の違いを認識していれば、このような疑問も生じないと思いますが。
よろしくお願いいたします。
投稿 監査役初心者 | 2007年2月26日 (月) 10時14分
A5
「不正」は、内規を含む広い概念です。条文上、「取締役が」不正の「行為をし」となっていることに注意が必用です。

「法令若しくは定款に違反する事実」は、文字通りの意味。
「著しく不当な事実」は、法令・定款に違反しないが、著しく不当な場合です。
こちらは、「事実がある」となっていますから、取締役が行為をする場合には限られません。

将来の行為は、「するおそれがある」場合なので、含まれます。

Q6
取締役会の決議要件の加重に関し、「決議要件が加重される事項を、定款とは別に定めることができるか?(定款には『別途定める』旨を記載する。)」という点です。

 会社法では、取締役会の決議要件につき定款をもって過重することが認められており(会社法第369条第1項かっこ書)、実際、たとえば、合弁会社において、代表取締役の選定、募集株式の発行等につき取締役の全員一致を要件とすることがあります。
 この場合、定款に「代表取締役の選定については取締役の全員一致が要件」という風に決議要件が加重される事項が個々的に明示されている必要があるのでしょうか?それとも、定款には「取締役の全員一致をもって別途定める事項については取締役の全員一致が要件」という風に決議要件が加重される事項がある旨だけを規定し、個々的な事項については定款とは別に定めることも可能なのでしょうか?

 会社法第369条1項には「これを上回る割合を定款で定めた場合」と書いてあるため、「割合」について定款で定めなければならないのは分かるのですが、決議要件が加重される事項まで定款で定める必要があるのかどうかとなると、なんともいやはや・・・。
投稿 うにょん。 | 2007年2月26日 (月) 18時41分
A6
定款で定めるべき事項について、下位の内規に再委任することは、原則として許されないでしょう。

Q7
譲渡制限株式取得の承認主体について、以下のうち可能なものはありますか?
1.会社の使用人
2.支配人
3.(取締役会設置会社の)取締役
3-2.(非取締役会設置会社の)取締役
3-3.取締役A(個人)
3-4.取締役AとB
3-5.取締役AかB
3-6.取締役過半数
3-7.総取締役
4.代表取締役A(個人)
5.監査役
6.株主A
7.総株主
8.株主数の過半数や2/3
9.株主総会として、定款で、承認決議の要件だけを加重(2/3や総株主)
会社法139条1項は、承認主体について、
解釈や判例・実務に任せ(上記のような)多様な設定を可能にする趣旨で定められたのですか?
それとも単に「機関」等の文言を失念しただけですか?
投稿 庶民 | 2007年2月27日 (火) 20時15分
A7
 「機関」とすると、会計監査人を承認機関に定められることになりますので、そのような文言をいれるのはおかしいです。
 「株式会社」と規定した場合、法人の意思決定方法として可能なものであれば、可能です。しかし、法人の代理による決定は許されないので、1や2はダメでしょう。
 また、監査役は、その職責と矛盾する権限を定款で与えることはできないので、ダメでしょう。

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2007年2月23日 (金)

種類株式と株主割当て

今日は、株主割当(正確に言うと、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)についてお話しします。

株主割当について、次の質問を頂きました。

「募集株式の発行を株主割当で行う場合の設例を訂正したということですが、
最初のように、「配当優先株主が相対的に損をする」ということをなぜ直
されたのでしょうか?
たとえば配当優先株式の株価が500円、普通株式は400円だったとし、
松真さんが配当優先株4株、湯水さんが普通株8株もっていたとします。
ここで、1株に対し1株の割合で100円で配当優先株を発行した場合、
         松真さん        湯水さん 
当初      2000円       3200円
発行後   2000円+400円  3200円+800円

となります。すると、当初湯水さんは、松真さんの1.6倍の価値の株式を
有していたのが、発行後は1.67倍になり、普通株主の湯水さんが相対的
に得をしていることになります。
上記の考えはどこかおかしいでしょうか?
投稿 流れ星 | 2007年2月20日 (火) 17時24分」

 私も、最初、記事を書いたとき、脊髄反射的に、流れ星さんと同じような計算をして、うっかり間違ってしまいました。

 流れ星さんの事例は、
  松真さんにも、湯水さんにも、配当優先株を発行
ということになっていますが、202条1項1号を見ると
 
 「株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨」

と規定しています。
 ポイントは、カッコ書の部分であり、種類株式発行会社にあっては
  松新さんには配当優先株式の、湯水さんには普通株式の
割当てを受ける権利を与えるのが、202条の株主割当なのです。

 とすると、流れ星さんの事例をベースに説明すると、もし
   松真さんには、本来「500円」の優先配当株式を「400円」で
   湯水さんには、400円の普通株式を400円で
割当てを受ける権利を与えた場合(配当優先株式について著しく有利な発行がされた場合)、配当優先株式を保有している松真さんだけが得をします。

 普通、有利発行をする場合には、201条1項・199条3項で、株主総会の特別決議になるのですが、202条が適用されると、それらの条文が適用除外されるので、公開会社だと、取締役会決議で決められます(202条3項)。

 しかし、それでは、普通株主である湯水さんが損をするので、種類株主総会の決議を必要としましょうというのが、322条の趣旨だという説明をしたわけです。

 では、株主割り当てで、種類株主に不利にならないようにするためには、どうすればよいかというと
   松真さんには、本来「500円」の優先配当株式を「500円」で
   湯水さんには、本来「400円」の普通株式を「400円」で
割当を受ける権利を与えれば、通常は、どちらにも不利益はありません。
 
 ただ、この場合、払込価格が500円と400円で異なっているので、199条5項の「募集ごとに均等」と言えるかどうかが問題になります。

 私は、2種類の株式の引受人を同時に募集する場合には、種類によって価値が違う以上、種類ごとに払込価額が異なるのは、当然なので、当該種類株式の引受人間において均等であれば、199条5項には違反しないと思います。

 「種類ごとに適正な払込価額であれば、通常、不利益はない」という以上の考え方に対しては
  「322条1項は、株式の分割が行われた場合でも、種類株主に不利益が生ずる場合を想定している。例えば、1株あたり50円の配当優先株式が2倍になると、普通株主の配当が減る可能性がある。種類ごとに適正な払込価額であったとしても、配当優先部分が2倍になる等の不利益が生ずる可能性があるのではないか」
という批判が考えられます。

 しかし、322条1項は、明文上
   第三者に対する募集株式の発行については、原則として適用されない
ということになっているのは
   発行可能種類株式総数の範囲で、募集株式が発行されるのは、原則として、他の種類株主は覚悟しておきなさい。
という趣旨です。
 つまり、配当優先株式の発行可能種類株式総数が1000株で、現在300株しか発行されないのなら、後700株について、募集株式の発行がされるのは、予想すべきことなのです。

 それにもかかわらず、なぜ株式分割や無償割当については、322条1項が適用されるかというと、それらの行為が「無償」だからです。
 配当優先株式を、普通株式よりも高い適正な価格で募集してくれるのならば、他の種類株主は、あきらめるべきだと言えますが、既存の配当優先株主が、残りの配当優先株式の枠を
   ただ食い
するためには、種類株主総会が必要だという整理がされているのです。
 
 株主割り当ては、「無償」ではありませんが、特定の種類株主にのみ「有利」に発行される可能性がある点で、株式分割や無償割当と共通点があります。
 ですから、上述のように「払込価額が適正」かという点が重視されるべきであり、それが適正ならば、例え、配当優先部分が増えるような場合であっても、通常、種類株主総会は不要であると思います。

(質問コーナー)
Q1
親会社であるA、子会社であるB・Cがある場合、3社合併せずに、Aには3社の販売管理部門を担当。Bには仕入れ業務のみ担当。Cには製造部門のみ担当。のようなことは法律的に可能なのでしょうか?
私見では、合併でもしなければ、別の法人間で上記のように役割を明確に分けることは無理だと思うのですが。ご教授願います。
投稿 のりのり | 2007年2月20日 (火) 13時16分
A1
「担当」という意味が分かりません。
Bで仕入れして、Aで売りたいなら、まずBからAへの売却が必要です。
それで、良ければ、役割分担は可能です。

Q2
事業譲渡についてのご質問です。
株式会社A(以下「A社」)が、株式会社B(以下「B社」)の株式の全て取得し、今後、B社の事業を受け継ぎたいと考えております。
この場合、会社法第467条第1項第3号にあたるのでしょうか?
手法は株式譲渡ですが、A社はB社の事業の全部の譲受けを行っていると評価されるのでしょうか?
なお、A社とB社に資本関係は全くありません。
投稿 M&A | 2007年2月20日 (火) 15時29分
A2
株式の譲り受けは、事業譲渡には該当しません。

Q3
 事業報告記載事項の一つである「会計監査人の不再任・解任の方針」について、ご教示下さい。
 これが事業報告による開示事項とされた趣旨は、「会計監査人は任期1年とされながらも、事実上自動再任ともいえる仕組みになっておりは株主(総会)によるチェックが効きにくい。そこで、事業報告に当該方針を記載することにより、株主の判断にさらすことが有益。」などとされています。
 ということは、定時株主総会において、会計監査人選任議案が上程されるケースにおいては、当該事業年度に係る事業報告については、当該方針を特に記載する必要はない(というか、記載以前の問題として、当該方針を定める必要があるかどうか、ですが)と思えるのですが、そのような理解で宜しいでしょうか。(既にそういう実例が現れています。)
投稿 加齢なる一族 | 2007年2月20日 (火) 23時30分
A3
会計監査人設置会社であれば、これから、会計監査人選任議案が上程される場合でも、業報告に記載する必要があります。
夫婦でも、結婚するときに夫婦財産契約を結ぶようなものです。

Q4
組織変更の効力発生日について質問させてください。
 組織変更による設立は、なぜ、「組織変更がその効力を
発生する日」(744条1項9号)に生ずるのですか?
 設立の一種ならば、設立登記をした日となるのが自然だと
思うのですが・・・・
投稿 maru | 2007年2月21日 (水) 00時05分
A4
 組織変更は、設立ではありません。法人格には何も変更がありません。

Q5
今回のブログとは関係ないのですが、「会社法であそぼう」の過去のブログを見ていて興味を持ったので書き込ませていただきました ^-^

http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50082455.html

↑↑↑のブログなのですが、買収防衛策を考える上でよい文献があれば紹介していただけたらと思います。
投稿 | 2007年2月21日 (水) 00時14分
A5
まとまった文献というのは、分かりませんが、昨年の商事法務を見ると、たくさん論文が載っていますので、それが参考になると思います。

Q6
相続人が譲渡制限株式を会社の承認なしに
名義書換できる(134条4項)のはなぜでしょうか?
閉鎖会社においては、株主として相応しくない相続人を
排除したいニーズがあると思うのです。
もちろん174条の規定がありますが、これも、
自分の息子には必ず相続させたいと思う株主のもとでは
174条のような定款を定めることができないのではないか
と思ってしまいます。
それとも、単に、
公開会社->株主個性なし->当然取得できる
持分会社->株主個性あり->死亡は退社事由->取得できない
の、バランスをとってるに過ぎないのでしょうか?
投稿 | 2007年2月21日 (水) 10時07分
A6
相続は、包括承継であり、「譲渡」ではないからです。
何でも会社の自由にできるわけではありません。

Q7
会社法100問第二版のp564の肢1147について質問です。
「全部取得条項を付す場合には、株主総会の決議でよい」とありますが、
会社法110条には「発行する全株の内容として・・・当該事項について定款の変更をしようとする場合には、株主全員の同意を得なければならない」とあるので、なぜ株主総会の決議でよいのかがわかりません。
投稿 とんかつ | 2007年2月21日 (水) 17時10分
A7
取得条項と、全部取得条項は、全然、別のものです。
取得条項を付す場合には、全員の同意が必要です。

Q8
こんばんは、会社法240条2項・3項・4項について教えて頂けますでしょうか。
2項もしくは3項に従えば、新株予約権割当日の2週間前までに株主への通知もしくは法定公告をする必要があると思いますが、2週間後以降に割当日が到来し予約権の公正価値や権利行使価格などが確定したら、さらにその時点で株主への通知もしくは法定公告は必要でしょうか?
4項により割当日の2週間前に臨時報告書を提出した場合は、割当日を迎え割当内容が確定した段階で臨報の訂正報告書の提出が必要になると思いますが、株主への通知や法定公告については臨報でいうところの訂正報告書に当たるようなものが無いと思うので、不要かなと思ってはいるのですが。
投稿 キャン タマボーイズ | 2007年2月22日 (木) 01時01分
A8
質問の意味が今ひとつ分かりません。
2週間前までに、募集事項を既に通知しているんですよね。
行使価格又はその算定方法は、新株予約権の内容ですから、少なくとも算定方法は通知しているのでは?

Q9
会社法331条の読み方について質問させて下さい。
旧商法の規定に基づき禁固以上の刑に処せられた者がいる場合、取締役の欠格事由としては、331条1項のうち3号と4号のどちらが適用となるのでしょうか?
条文を素直に読めば4号を適用せざるを得ないと思うのですが、どうなのでしょうか。
投稿 ちょこら | 2007年2月22日 (木) 10時40分
A9
整備法94条により、3号です。

Q10
ニレコ事件を新会社法で行うことを考えた場合の問題点についてリサーチしました。
(中略)
一言、評価をいただけたらと思います。
投稿 すずめ | 2007年2月22日 (木) 10時41分
A10
具体的な事件との関係で、何か書くと、友達をなくすので、コメントは差し控えさせていただきます。また、チュジュウ事件とか言われるし。

Q11
相続人への株式売渡請求について、既出のこととは思いますが、再度ご教示願いすま。
相続により株式を取得した「者」が、固有に株式を有していた場合、売渡請求の株主総会決議で、その固有の株式による議決権の行使ができるのでしょうか?
投稿 法務部員1 | 2007年2月22日 (木) 23時41分
A11
「固有に」という意味が分かりませんが、175条2項の話でしょうか。
もともと持っていた株式についても議決権を行使することはできません。
Q12
人的吸収分割において下記の解答(2007年2月19日本文)は大変よくわかりましたが、一点その中で「別途所定の手続きを行って減少させる必要がある」とのことですが、これは資本金や資本準備金を減少させるなら資本金の額減少ないし資本準備金の額減少の手続き(債権者保護手続き+総会決議等)を別途会社法447条以下に従い行う必要がある、ということになりますでしょうか?
A12
そうです。計算詳解を見てください。

(間違い直し)
2月14日の
Q9
1000問P682「Q917 3」についてお伺いいたします。
吸収合併存続会社株主が、会社法798条3項の規定に基づいて、価格決定の申立てがなく効力発生日から60日が経過したことにより、株式買取請求を撤回した場合であっても、当該撤回により、存続会社の株主に留まることはできないという意味でしょうか?
に対し、消滅会社の株主のことと勘違いして
A9
 そうです。
と答えてしまいましたが、質問は
  存続会社の株主
についての話でした。
 存続会社の株主は、代金支払い時に株式買取請求の効力が生じますから、撤回をすれば、存続会社の株主に止まることはできます。
 謹んで訂正いたします。

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2007年2月20日 (火)

【入門】募集株式の発行(4)

 これまで、3回にわたり、第三者に対する募集株式の発行が行われる場合に既存株主の利益や種類株主の利益を守るために
    どのような手続きが用意されているのか
ということについて、お話ししてきました。
 さて、今日は、会社が、そのような手続を無視する等して違法な募集株式の発行が行われる場合に
    どのように救済がなされるのか
という点についてお話しします。

(なお、募集株式の発行(3)で、株主に割り当てを受ける権利を与える募集株式の発行で種類株主総会が必要な理由について、うっかり間違った設例をしてしまったので、訂正しました。興味のある方はもう一度該当箇所を見ておいてください。)

1 救済の分類
 どんな問題にせよ、当事者の救済のことを考えるときには
   「どの時点で」「どんな」救済をしようとしているのか
ということを頭に浮かべる必要があります。

 こういうとき、法律家は、ある違法行為が行われる前なのか、後なのかに応じて
  事前の救済=差し止め・・・・・・・「たんま!」
  事後の救済=行為の無効・取消・・・「無しね!」
     and/or 損害賠償・担保・・・「金をくれ!」
という基本的な救済手段を思い浮かべなければいけません。
 いわゆる「困ったときの、たま無し金」です。

この「たま無し金」を募集株式の発行について言えば
 事前=差し止め=株主の株式発行差し止め請求権(210条)
 事後=①行為の無効=株式発行無効の訴え(828条1項2号)
          株式発行不存在確認の訴え(829条)
    ②損害賠償・担保責任
         =業務執行者・引受人に対する担保責任(212条・213条)
になります。
 これらの条文さえ出てくれば、後は、それぞれの趣旨と要件・効果を述べるだけでOKです。

2 株式発行差し止め請求権
 株主による差し止め請求権というと
  違法行為差し止め請求権(360条)
を思い浮かべる人が多いと思いますが、同請求権は
  「会社に」損害が生じそうな場合に、株主が会社のために行使する権利
であるのに対し、
  株式発行差し止め請求権は、「株主に」損害が生ずるおそれがある場合に行使する権利
です。

 株式の発行というと、募集株式の発行のほかに、新株予約権の行使に伴う株式発行や合併等の対価としての株式発行、株主無償割当てもありますし、「発行」ではありませんが、株式の分割により株式の数が増加する場合もあります。

 これらの株式の発行の中で、差し止め請求権が明文で規定されているのは、
  募集株式の発行差し止め請求権と略式合併等の差し止め請求権(784条2項等)だけ
です。
 ただ、それ以外の場合に一切差し止めが認められないかというと、そうでもなく、いろいろな法律構成でこれを認めるべきではないかと考えられています。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50499174
 まあ、適用要件をどう考えるのか、なかなか難しいところではありますが。

 他方、募集株式の発行差し止め請求権は、適用される要件は明確であり
  ① 法令又は定款違反
  ② 著しく不公正な方法
により株主が不利益を受けるおそれがあれば、差し止めができます。
 
 ①は、法定の手続に違反する場合等です。
 実務的には、「有利発行であるにもかかわらず、特別決議を得ていない」という主張で用いられるのがほとんどです。
 その他、「発行可能株式総数を超える」とか、「非公開会社会社なのに、株主総会の決議を経ていない」とかいうのも、①になります。

 ②は、形式的には法律の手続きに則っているものの、著しく不公正な方法による場合です。実務的には、「経営者が自己保身の目的で株式を発行する」ような場合に主張される要件です。

 これらの要件が充たされれば、裁判所は、会社に対して、株式の発行の差し止めを命じます。
 ただ、本案で、差し止め請求をしていると時間がかかるので、まず、株主は、差し止めの仮処分を求めるのが常識です。
 しかも、差し止めの仮処分が出てしまうと、本案についての裁判を行うまでもなく、会社側が株式の発行を中止してしまうのがほとんどなので、この株式発行の差し止め請求権は、まず99%は仮処分段階で決着がつきます。

 逆に、差し止めの仮処分が出たにもかかわらず、会社が、株式の発行を強行すれば、その株式発行の無効事由となります(判例)。
 初心者は、「差し止めを無視したのだから、当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、「違法行為差し止め請求権」については、差し止めを無視して、取締役が行為を行っても、その行為は有効であり、差し止めには法的な効力がほとんどないので、それと比べると「株式発行差し止めの仮処分」は、なかなか強力な武器だということができます。

3 株式発行無効の訴え
 「差し止めは無視したら、無効」と言ったばかりで恐縮ですが、差し止めを無視して株式を発行しても、「とりあえずは有効」です。
 というのも、株式の発行が行われると、
 ①発行された株式について議決権が与えられ、株主総会が行われる場合がある
 ②株式が譲渡されて転々流通することがある
など利害関係者が沢山出てくるため、もし、これを当然に無効とすると
 ①議決権のない者が議決権を行使したことになり、総会の決議取消事由となる。
 ②無効な株式が譲渡されたことになるので、株式譲渡契約が全て債務不履行になる
という混乱が生ずることになるので、会社法は
  無効事由があったとしても、株式が一旦発行されたら、とりあえず有効
とした上で
  株式発行無効の訴えの認容判決が確定したら、将来的に無効になる
という制度を採用しているのです。

 この株式発行無効の訴えのように
   有効な行為を、判決により無効にする
というような訴訟を「形成訴訟」といいます。

 この形成訴訟のポイントは2つあり、一つめは
  形成訴訟には、提訴期間が設けられているため、提訴期間内に提訴が行われないと有効のまま法律関係が確定する
ということです。
 なぜそうするかというと、
   株式を無効にすると、いろんな人が迷惑するから、文句を言う人がすぐに出てこない場合には、法律関係をさっさと確定させたい
からです(法律関係の早期安定)。

 もちろん、提訴期間内に提訴されちゃえば、法律関係が早期に確定することはないですが、そのような場合でも
   判決を将来効にして、法律関係が混乱しないようにする
という制度設計になっています(将来効)。
 これが2つ目のポイント。

 このように見てみると、株式発行無効の訴えというのは、株主の保護の制度というより
   株主の無効主張を制限して、会社その他の利害関係人の保護を図る制度
という方がふさわしいことが分かるでしょう。

 そのような制度趣旨も踏まえ、株式発行の無効事由については、大変、制限的に解釈されています。

 株式発行差し止め請求権の差止め事由と違って、株式発行無効の訴えにおける無効事由については、明文がありません。

 そこで、無効事由を解釈によって導くことになっているのですが、判例通説は、
 ① 差し止めの仮処分を無視した場合
 ② 差し止めの機会を保障するための手続きである通知・公告を怠り、かつ、差し止め事由がある場合
等極めて限られた事由だけを無効事由としています。
 これは、一旦、株式が発行された以上、それを無効にすることは、法律関係を混乱させるという価値観に基づくものです。
 そのため、公開会社において、株主総会の決議を経ずに、有利発行をした場合等は、無効事由にはならないと考えるのが判例・通説です。
 差し止め事由があるにもかかわらず、差し止めをしないまま、放置した株主が悪い、という厳しい考え方が根底にあるわけです。

 もっとも、会社法の下では、非公開会社の株式発行無効の訴えの提訴期間が1年に延長されたことから
   非公開会社において株主総会の決議を経ずに株式が発行されたことは、無効事由となる
と考えるべきでしょう。
 それが無効事由になるということを前提に、その主張させるために、わざわざ1年間に提訴期間を延長したのですから。

4 株式発行不存在確認の訴え
 3で述べたように株式発行無効の訴えは、提訴期間により株主の主張を制限するところに本質がありました。
 しかし、実務においては
   「株主が全然知らない間に、株式が発行されたことになっている。」
ということも、よくあることで、提訴期間の制限が、株主に可哀想な結果をもたらす場合もあります。
 そこで、株式の発行手続きが全く取られておらず、株式が発行されたとは認められないような場合には
   株式発行不存在確認の訴え
をすることができます。
 この訴えは、確認の訴えであり
   提訴期間に制限がない
というメリットがある一方で
   「不存在」の場合にしか、訴えは認められない
という点では、株式発行無効の訴えよりも、制限されています。

 なお、民事訴訟の一般原則によっても、「確認の訴え」が認められる場合があるにもかかわらず、あえて明文でこの訴訟類型を認めているのは
  ①確認の訴えの利益があることを明文化する
  ②判決効の第三者に対する拡張を認める
という2つの目的があるからです。

5 損害賠償・担保責任
 以上のように、一旦、発行された株式を無効にするというのは、なかなか難しいので、既存の株主の救済は、多くの場合、「金」で解決する必要があります。
 
 金で解決する方法には
  ①会社に金を入れてもらい、低下した株式の価値を復活させる間接的な方法
  ②株主が金をもらい、損害を回復する直接的方法
の2種類があります。

 「不公正な価額で引き受けた引受人に対し、差額を会社に支払わせる」
 「価値の低い現物出資財産を給付した引受人に、差額を会社に支払わせる」
という212条の担保責任は、①の考え方です。
 また、取締役の213条責任も①ですね。

 これに対し、株主が、有利発行によって株式の価値が低下したこと等を理由として、429条1項に基づき業務執行者等に対し損害賠償を求めるというのが②です。
 もっとも、このような損害賠償が可能かどうかについては、難しい問題があるので、この問題で触れる必要はないかも知れません。

6 まとめ
 4回にわたって、募集株式の発行について説明してきました。この問題は、解釈論が沢山あるため、これまでも何度も試験に出てきたところですし、敵対的買収に対する防衛等、最近の実務でもホットな話題でもありますから、基本的な要件・効果がすらすらと出てくるように訓練し、かつ、事例でも適切な当てはめができるようにしておいてください。

(質問コーナー)

Q1
前回のQ15について確認させてください。
>全員の同意があるのに、通知はないという事態がどんな場合か想定できません。
>遅くとも同意をとる直前に内容は知らせていますよね。
>同意は、当然のことながら、内容を理解していることが前提です。

ということは,知らせるべき事項の一部を欠く通知しかされなかった場合に,株主全員が同意していても,適法なものとはならないという理解でよろしいでしょうか?
投稿 たつきち | 2007年2月16日 (金) 23時03分
A1
同意が錯誤に基づくものであれば、駄目でしょう。

Q2
早速ですが、種類株式発行会社において、ある種類の既発行株式の一部を別の種類株式に変更する場合、例えば、普通株式から無議決権配当優先株式への変更をする場合、株主全員の同意が必要でしょうか?旧商法時代は、明文の規定はありませんでしたが、全員の同意が必要という実務上の運用だったと思いますが、会社法上はいかがでしょうか?
投稿 法務部員1 | 2007年2月17日 (土) 20時52分
A2
 全員の同意が必要です。

Q3
最近、分配可能額を超えた違法な自己株式取得の事例が出たようです。
http://www.nos.co.jp/ir/pdf/r070216.pdf
このケースでは、上記ニュースリリースを見ると、違法な自己株式取得について無効説を前提として処理するようです。もちろん現時点で最高裁の判断があるわけでもないですし、有効説、無効説どちらを取っても解釈論としては成り立つと思うのですが、サミーさんはこの件について何かご意見・ご感想とかを持っていらっしゃるのでしょうか? もしよろしければ教えてください。
投稿 ymchn | 2007年2月18日 (日) 00時44分
A3
まあ、いろんな考え方があるということでしょう。
皆、オウンリスクで頑張っているのです。

Q4
社債権者集会の召集について質問させてください。
ある種類の社債の総額の10分の1以上にあたる社債を有する
社債権者は召集の請求をすることができます。(718条1項)
 ここで なぜ 「ある種類の社債の総額の10分の1以上」
という 株主総会召集請求権(297条 総株主の議決権の
100分の3以上)に比べて厳しい要件を718条で定めているのですか? 
 そもそも、社債権者集会の決議は出席した議決権者の議決権の2分の1を超える議決権を有するものの同意でたります。
(724条1項)そして、これは議決権の要件を軽減することで
社債権者の権限を強化する趣旨だと理解しています。
この流れからいくと、社債権者集会の召集についても
もうすこし緩やかな要件で定めた方がいいのでは と考えてしまいます。
投稿 maru | 2007年2月18日 (日) 01時14分
A4
 社債権者は、所詮、債権者です。
 社債権者集会の決議事項を考えれば、株主総会の招集請求の要件と比べるのは、意味がないと思います。

Q5
組織再編行為と情報開示のうち事後の開示について
分割会社・承継会社・新設分割により設立された会社で
事後の開示をされた書面につき、株主・債権者・その他利害関係人が閲覧・交付請求等をすることができます。
 ここで「その他利害関係人」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか?
 また、株主・債権者に加えて「その他利害関係人」まで
広く閲覧・交付請求等をすることができると定めたのは何故ですか?ご教授ください。
投稿 maru | 2007年2月18日 (日) 01時16分
A5
 分割により承継された財産の担保権者等利害関係を有する人は、見せた方がよいからです。

Q6
 株主総会における書面投票および電子投票について教えてください。
①株主の数が1000人未満であれば、株主総会の電子投票を認めて書面投票を認めない(=298条1項3号を定めずに4号のみ定める)ことも可能と理解しています。その場合、会社には全株主に対して参考書類を交付する義務がある(302条1項・2項)が、299条3項の承諾をした株主以外の株主に対しては、302条4項の請求がない限り、議決権行使書面(に記載すべき事項の電磁的方法による)提供の義務がないように読め、結論にやや違和感を覚えるのですが、当方の理解に何か誤りがあるのでしょうか?

②株主総会の書面投票も電子投票も認めており、全株主に書面で招集通知・参考書類・議決権行使書面を送付している会社に対して、299条3項の承諾をしていない株主から302条4項の請求がなされた場合、会社にはなお議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の義務が発生するのでしょうか。

投稿 まいたけごはん | 2007年2月18日 (日) 10時46分
A6
① 誤りはありません。電子投票に興味のない人に、教える必要のない事項を教えないだけのことです。
② 面倒くさいのは分かりますが、法文上は、必要と考えた方が素直ですね。

Q7
 会社法817条1項と同法933条1項1号括弧書との関係についてお聞きします。
 817条1項では,日本における代表者のうち一人以上は日本に住所を有する者でなければならないと規定しているので,外国に住所を有する者でも日本における代表者となりうることを前提としていると思います。他方,933条1項1号括弧書では,「日本における代表者(日本に住所を有する者に限る。以下この節において同じ)」と規定しているので,外国会社の登記を定める第3節においては,「日本における代表者」とは日本に住所を有する者に限られ,例えば日本における代表者として登記されるのも日本に住所を有する者のみということになると解釈するのでしょうか?
 それとも,933条1項1号括弧書は登記の管轄についてのこのだけに限定して読むべきで,管轄以外のことについては,外国に住所を有する者も「日本における代表者」に含まれ,例えば外国に住所を有する日本における代表者も登記事項となると解釈するのでしょうか?
投稿 パケット | 2007年2月18日 (日) 12時10分
A7
 外国に住所を有する日本における代表者は、登記事項ではないと思います。

Q8
100問の第62問です。小問1で、名義説を展開して356条1項2号に当たらないとしています。
もし計算説をとって、自分に経済効果が帰属すると考えれば「自己または第三者のため」に当たるのだと思うのですが、そうだとしてもそもそも同条は「取締役が」「株式会社と」取引しようとする場合の規定なので、どのみち同条には該当しないように思えるのですが・・。
何故2号を検討しなければならいのでしょうか?
投稿 マーキュリー | 2007年2月18日 (日) 16時38分
A8
 株式会社と取引をしないのだから、2号ではないというのでも良いと思います。
 ただ、3号は、2号で拾いきれないものを拾う規定なので、「2号ではない」ということは、論じる必要があると思います。

Q9
親子会社間で、親会社が子会社を吸収合併することがありますが、メリットは何でしょうか?考えられるのは、子会社の管理部門の整理等の無駄をなくすことが考えられますが、これは親子のままでは無理なのでしょうか?
敢えて合併するメリット(税金や労務関係等)がありましたら、教えて下さい。今度、グループ会社の再編を行うについて、意見を求められそうなので・・・
投稿 のりのり | 2007年2月18日 (日) 21時21分
A9
法律論ではないので、お答えしづらいです。

Q10
「取締役会の決議の省略」(会社法370)「取締役会への報告の省略」(同372)「監査役会への報告の省略」(同395)についてお尋ねします。
いずれも議事録作成が義務付けられており、いわば「みなし取締役会(監査役会)」とでもいうべきものかと理解しておりますが、事業報告における社外役員の活動状況にいう取締役会/監査役会への出席状況(施行規則124④)との関係がよく判りません。
「みなし取締役会(監査役会)」もここでいう「取締役会(監査役会)」にカウントすべきでしょうか? (全株懇ひな型などでは、「○回中△回出席」などと書くべし」とされていますが、ここでの回数に算入すべきか、という趣旨です。)
確かに、議事録にする以上「取締役会(監査役会)」には違いないのでしょうが、他方で「出席」という概念には入って来ないように思います。
また、もしこれを算入すべしとなると、多忙な社外役員の立場からすると、現に開催される取締役会(監査役会)は少な目にして貰って、「みなし」を多用して貰うと出席率が向上する、という誠に奇妙な”メリット感”が出てしまい、実質的にもおかしいように思います。
というように考えますと、このような「みなし取締役会(監査役会)」は、事業報告での開示においては、回数に算入すべきではなく、必要があればその旨特記する(例:「○回中△回出席。なお、このほかに、当期中において×回『報告の省略』がありました。」などと)のが妥当ではないかと思うのですが、サミーさんのお考えをご教示頂ければ幸いです。
投稿 ETC | 2007年2月18日 (日) 22時53分
A10
ETCさんの言うとおりでしょう。

Q11
同回答において「監査役会で監査報告の内容を決議する必要がありますから、現に監査役会を開催してください。」とありますが、
①監査役会の監査報告は、監査委員会のそれと異なり、「決議」の必要はないのではないでしょうか(施行規則156条3項vs.同157条2項)。「決議」だったら、過半数とか全員一致とかの「決議要件」が必要になってしまいますが。
②施行規則156条3項に「会議を開催する方法又は・・・」とありますから、監査報告作成にあたっては、「現に監査役会を開催」する必要はない、ということになりませんか。
実はここが元のQの根底にある疑問です。「監査役会が監査報告を作成」する(因みに、サミーさんが仰るように、監査役会「で」ではなく、監査役会「が」の筈です)以上、現に監査役会を開催しなければ作成できない筈なのに、なぜ施行規則は、わざわざ「必ずしも現に会議を開催しなくてもよい」と読めるような条項を入れたのが理解できないのです。結局整合的に理解するためには、
1)現に監査役会を開催して監査報告を作成するのが原則だが、
2)その監査役会に欠席した監査役がいる場合、これを”救済”するために(旧商法下では、欠席監査役は署名押印できず、その旨を注記していましたね)、敢えて入れた条項が施行規則156条3項であると、理解せざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
投稿 ぽっぽー | 2007年2月18日 (日) 23時39分
A12
①監査役会の決議要件は、393条にあるとおりです。
②情報の送受信により同時に意見の交換をすることができる方法も監査役会の開催方法の一つと考えているのでしょう。

Q13
会社法100問第2版のP.102、№105についてです。

誤:
募集株式の引受人が株式会社に対して金銭債権を有している場合は、
株式会社は、当該金銭債務について引受人に対する出資履行請求権を
自働債権として、相殺により消滅させることができる。
とあり、
正:
募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と、株式会社に対する債権とを
相殺することができないが(208条3項)、株式会社による相殺は禁止されていない。
とあります。
誤では、「会社からの相殺」が記述されているように思えます。
とすれば、正の後段の「株式会社による相殺は禁止されていない」に
あたり、正しい記述のように思えます。
どの点が誤りなのかがよくわからないので、
よろしければ簡単に指摘していただけるとありがたいです。
投稿 受験生 | 2007年2月19日 (月) 12時23分
A13
 以前も訂正したのですが、「誤」の部分が、実は誤りではなかったという誤植です。

Q14
「つまみ食い問題」とはどういうことでしょうか?
聞きたかったのは、連結計算書類作成会社の事業報告において、会社の現況に関する事項(施行規則120条)に掲げる事項の一部を企業集団について記載し、一部を単体についてのみ記載することは可能かということです。
同条2項で「前項各号に掲げる事項については、・・・企業集団の現況に関する事項とすることができる。」とありますが、これは、企業集団についての記載にする場合は、「前項各号に掲げる事項」の全部を企業集団についての記載にしなければならないと読めますし、そうでないようにも読める気がします。全体として統一するべきとは思っているのですが、確認させていただければと。。。
投稿 んーー | 2007年2月19日 (月) 13時17分
A14
 つまみ食い問題というのは、会社が、自分に都合のいいように、企業集団の現況に関する事項と、単体の事項をつまみ食いして、自分の実体を良く見せることです。
 120条は、そういう会社側の恣意的なつまみ食いを認める趣旨ではないので、あまり答えたくないということです。

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2007年2月16日 (金)

9日の間違い直し

2月9日に、貯まった質問にまとめて脊髄反射的に答えてしまったら、案の定、ミスってしまいました。
<間違い 1>
まず、Q17。
事業報告の記載の仕方についてご教示ください。
3月決算の会社が平成19年3月期の定時株主総会に提供する事業報告中の
役員の報酬等の総額について
①平成18年6月の定時株主総会において任期満了により退任した取締役に
  対する退職慰労金は記載すべき役員の報酬等の総額に含まれますか?
②平成19年6月の定時株主総会において任期満了により退任予定の取締役
  に対する退職慰労金は記載すべき役員の報酬等の総額に含まれますか?
投稿 四苦八苦 | 2007年2月 8日 (木) 00時41分

これに対し、私は
A17
① 会社役員の報酬等の総額には含まれませんが、重要な事項として開示すべきです。
② 引当金の有無にもよりますが、原則、開示する必要はありません。

と答えたのですが、実は、これは、いろんなところと調整した結果を、すっかり忘れていたから出てしまった答えであり、本当は
A17
① 不要です。
② 原則必要ですが、詳しくは、会社法の権威である澤口先生や石井祐介先生達が協力して作成された経団連のひな型の20頁を見てください。
と答えるべきでした。

 この退職慰労金問題は、「事業年度ごと」に切り分けるのが難しいため、仲間内でも説が分かれていたのですが、どこかで結論を出さないと実務に支障が出るため、いろいろ大人の調整をしたところです。
 頭がパニックしていたため、昔、有力だった説を最初の答えとしてしまいましたが、実務上は、新しい答えを参照してください。

<間違い 2>
次は、Q18。

吸収分割について教えてください。
人的分割型の会社分割をする際に、分割型新設分割の場合は会社計算規則81条2項により分割会社の資本金の減少が必要のようですが、分割型吸収分割の場合は分割会社の資本金の減少はしなくてよいのでしょうか?
投稿 会社法苦戦中 | 2007年2月 8日 (木) 01時03分

という答えに対し
A18
 分割会社の資本金を減少する必要はありません。

と答えましたが、よく質問を読み、また、いろんな場合を想定すると
A18
分割型吸収分割の場合で、計算規則64条2項に規定する場合に該当するのであれば、
同条5項にあるとおり、別途所定の手続を行い分割会社の資本金等を減少させる必要があります。
 なお、ご質問にある分割型新設分割については、80条本文と81条1項ただし書を見れば分かるとおり、分割型新設分割に常に81条の処理の適用があるわけではなく、81条によらないのであれば、同条2項の分割会社側での資本金の減少は必要ではありません。

と答えるべきでした。

 組織再編の計算は、いろんな場合があるので、正直言って、考えるのも、答えるのも、大変、面倒くさいです(笑)。できれば、計算詳解等で研究してください。

(質問コーナー)
Q1
798条3項で撤回した株主が会社に留まることで何か不都合はでるのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月14日 (水) 08時55分
A1
効力が生じているから、留まりようがないと思います。

Q2
昨年8月に資本金の額を100万円に減少した当該会社は、負債の額も200億年未満です。本年3月31日に解散する時点では法477条4項により監査役を設置しますが、翌日4月1日に株主総会を開催して法492条の貸借対照表等の承認を受けて、法2条の大会社でないものとなり、同時に監査役を廃止するというわけにはいかないでしょうか。
投稿 監査役置きたくないんですけど | 2007年2月14日 (水) 11時44分
A2
475条に該当する時点において大会社ならば、監査役を置かなければいけません。

Q3
以下のケースで、どの時点の株主名簿記載の株主をもって、権利を行使させるべき株主と扱うべきかを記載してみました。これで正しいでしょうか?ただし、基準日について、定款に定めなく、基準日の公告も行なわないこととします。
①株主総会の議決権行使権者
 →株主総会開催日
②剰余金の配当請求権者(効力発生日にかかわらず)
 →剰余金の配当決議を承認した株主総会開催日
③吸収合併手続における、消滅会社の株主に割当する金銭等を受ける権利者
 →合併の効力発生日の前日
投稿 seiquro | 2007年2月14日 (水) 12時08分
A3
① そうです。
② 剰余金の配当の効力発生日の株主です。
③ 効力発生日の最初の時点の株主です。前日の最後の時点という意味なら正しいです。

Q4
 公開会社で株券発行会社(現に発行している)が,株主総会において,株券発行の定めの廃止及び株式譲渡制限に関する規定の設定をする定款変更決議(効力発生日は同じ日とし,公告期間経過後の日付とする)をし,その後公告及び通知をし,効力発生日が到来する場合,会社法218条の公告及び通知(効力発生日の2週間前)をすれば足り,同法219条の公告及び通知(効力発生日の1ヶ月前)は不要と考えますがいかがでしょうか。言い換えると,会社法219条1項の「株券発行会社」の判断基準時は,定款変更決議時でしょうか,それとも効力発生時でしょうか。
投稿 ポケット | 2007年2月14日 (水) 15時53分
A4
 譲渡制限を株券に書く必要がないので、おしゃるとおり、株券提供に実質的な意味がないのは間違いないですね。
 ただ、登記手続と絡むので、調整が必要です。

Q5
会社法第790条第2項についてのご質問です。
「消滅株式会社等は、変更後の効力発生日を公告しなければならない」とありますが、なぜ存続会社等には公告義務がないのでしょうか?
理由があれば教えてください。
投稿 教えてください | 2007年2月14日 (水) 18時29分
A5
 存続会社は、法人格が消滅するわけではありませんし、どちらか公告すれば、十分でしょう。

Q6
454条1項1号括弧書について質問させてください。
 配当財産は金銭に限られず、金銭以外の財産を配当財産として剰余金の配当をすることもできる(454条4項)が、当該株式会社の株式、社債及び新株予約権を配当財産として剰余金の配当をすることはできません。(454条1項1号括弧書)
 この点につき 株式については株式の無償割当、新株予約権については新株予約権の無償割当という別制度があるため剰余金の配当とすることができないと理解しています。
 それでは、社債について剰余金の配当をすることができないのはなぜですか?
投稿 maru | 2007年2月15日 (木) 00時08分
A6
 社債を交付すると、負債になるので、剰余金の配当になじまないからです。

Q7
 新株予約権買取請求について質問させてください。
 吸収型組織再編行為における存続会社等の新株予約権者には、
消滅会社等の新株予約権者と異なり、新株予約権買取請求が
認められる場合が認められていません。
 存続会社等と消滅会社等で どうしてこの様な違いがでるのでしょうか?
 また 株式買取請求は存続会社等・消滅会社等で共に
認められるのに なぜ新株予約権買取請求は消滅会社等でのみ
認められるのでしょうか?
 具体的な利害の違いにつき教えていただけると嬉しいです。
投稿 maru | 2007年2月15日 (木) 00時10分
A7
 存続会社の新株予約権者は、存続会社の株式をもらうことが内容となっているから、合併により影響を受けません。
 消滅会社の新株予約権者は、消滅会社の株式がもらえなくなるから問題なのです。

Q8
新株予約権について教えて頂けないでしょうか。
行使の条件として、取締役、従業員であることなどが
規定されており、さらに取得できる事由として
取締役の退任、従業員の退職などがあげられています。
この場合実際に、新株予約権を持っている従業員が退職した時には、①会社法287条により当然に新株予約権は消滅したと考えるのか、②会社が取得できる事由に該当したとして自己新株予約権として取得し、会社の判断で消却することができるかなど、どのように考えることができるでしょうか。

また、もし②の考え方でも差し支えない場合、
その自己新株予約権を行使期間満了まで保有しておき
まとめて消却するとしても問題ないでしょうか。
投稿 tuka | 2007年2月15日 (木) 17時18分
A8
頻出問題ですが、新株予約権の行使条件の定め方によって、どちらもありえます。
自己新株予約権の消却時期については、特に制限はありません。

Q9
計算規則129条2項では、非公開会社で非会計監査人設置会社は個別注記表で関連当事者の注記が不要であり、非公開会社で会計監査人設置会社は、同注記が必要と解釈しますが、誤っているのでしょか?
投稿 ぴーなっつ | 2007年2月15日 (木) 18時38分
A9
そのとおりです。

Q10
新設分割について質問させてください。
新設分割計画書を株主総会で承認後、分割の効力が生じる日までに、その内容を任意に変更することはできるのでしょうか。
その場合の手続としては、変更のたびに、株主総会決議及び債権者保護手続(異議申述公告・個別催告や労働承継法上の通知等)が必要になるのでしょうか?
A10
変更をすることはできますが、株主総会決議等は、やり直しする必要があるでしょう。
言い換えれば、変更はできず、やり直さなければならないと言ってもいいかもしれません。

千問の道標Q959(P715~716)では、事前開示書面に、新設分割計画の内容等を記載し、これらの事項に変更が生じた場合はアップデートしなければならないというのは、最終事業年度が次の年度になったときの計算書類等の内容等のことです。

Q11
>例えば、松真さんが配当優先株式、湯水さんが普通株式を持っ
>ているときに、取締役会で、配当優先株式を著しく安い払込価
>格で割当を受ける権利を与えると、普通株式よりも高い価値の
>ある配当優先株式の一株あたりの価値が減り、現在、配当優
>先株式を持っている松真さんだけが、相対的に損をします。

上記部分の意味は、
配当優先株式を 配当優先株主(松真さん)及び普通株主(湯水さん)に株主割当する際に、松真さんが損をすることがある。
だから、優先株主の種類株式総会が必要ということですよね?
投稿 maru | 2007年2月16日 (金) 01時40分
A11
そうです。

Q12
 会社法135条2項4号に「新設分割により他の会社から親会社株式を承継する場合」は親会社株式の取得ができるとありますが、どう考えても、この「他の会社」は新設分割会社だと思います。
 一方で763条5号カッコ書により分割会社の自己株式の取得は不可ともいわれています(江頭799頁)。
 では、135条は共同分割(Aが80%出資、Bが20%出資)でBがA株式を保有していた場合のことでしょうか。
投稿 司法書士k | 2007年2月16日 (金) 11時24分
A12
 そういう場合もありうるでしょうね。
 また、A社(親)の子会社B社が、新設分割を行い、C社(孫会社)を設立し、その際、B社の保有していたA社株式を承継する場合等もあります。

Q13
1000問P92及び100問2版P172について確認させてください。
108条2項3号ロの議決権行使条項が、「一定の割合以上の株式を保有する株主のみ議決権を行使できなくなる」旨の定めの場合、実際に当該種類の株主の中で、一定の割合以上の株式を保有する株主が出現したときには、当該種類の株主のすべてが議決権制限株式の株主となる。そして、株式の数に着目し合理的であれば、当該種類株式を保有する者の中で、一定の割合以上の株式を保有する株主のみの議決権が制限される。という理解で宜しいのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月16日 (金) 12時32分
A13
そうです。

Q14
2006/11/10付け「会計監査限定監査役」の記事において、サミー先生は、小監査役に対し役会への出席を義務付けるような定款の定めは無効であると結論づけておられます。

一方、葉玉先生が書かれた、2006/2/17付けの記事におけるQ9の回答
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50601695.html
を見ますと、小監査役であっても任意に役会に出席した場合には、役会議事録への署名義務が有るとされています。

署名義務「有り」とすると、まさにサミー先生が問題提起されていた小監査役に対する任務懈怠責任追及という場面が想定されるため、たとえ任意の出席であったとしても役会議事録への署名義務は無いとする方が、理論的整合性がとれると思われるのですが、どのように考えるべきなのでしょうか?
投稿 ここあ | 2007年2月16日 (金) 18時37分
A14
出席義務がないことと、任意に出席したときに署名義務があることは、何ら矛盾がないと思います。

Q15
 新株発行時の株主に対する通知・公告(法201③④)について、ご教示下さい。
 千問201頁では、この点について、昭和41年の民事局長回答を引用しつつ、「株主全員の同意があれば不要であるものと解される」と書かれています。
 他方、江頭先生の基本書676頁注2では、2週間の期間は株主全員の同意があれば「短縮」できる、と書かれています。
 『実務相談 株式会社法4』245頁では、「新株発行事項の公示を全く省略するということは、・・・許されないものと考えますが、・・・2週間という期間の短縮については、全株主の同意があれば許されるものと考えます。」と書かれています。
 商業登記先例判例百選129頁においては、昭和41年の民事局長回答について、神作教授が、「本先例は、株主全員の同意書があれば変更登記を受理してよいと述べているが、その射程は公告・通知が全くなされていない場合には及ばないと解されているようである。」「株主が形式的に同意しているにすぎず公示事項を実質的に知らない場合には、株主に予想外の不利益が発生するおそれがある。」「本回答は、公告・通知自体はなされている場合に限定して適用されている限りにおいて、妥当なものであると考える。」書かれています。
 新版注釈会社法(7)142頁では、「総株主が同意する場合には、この期間を短縮することができる。公示を不要とすることの同意まで有効となるのであろうか。」と、問題提起だけがされています。
 千問の記述は、上記のような議論があることを前提に、全株主の同意があれば、通知期間の短縮のみならず、通知自体の省略まで許されるとの解釈論を、意識的に採用したものと考えてよろしいでしょうか。
 それとも、全株主に募集事項を通知した上で、全員から「2週間を置かず、すぐに発行してもよい」 との同意を得れば、その日を払込期日としてよい (すなわち、通知をした上で、払込期日までの期間はゼロとしてもよい) という趣旨を述べようとしたものにすぎないのでしょうか?
投稿 Y | 2007年2月16日 (金) 20時12分
A12
全員の同意があるのに、通知はないという事態がどんな場合か想定できません。
遅くとも同意をとる直前に内容は知らせていますよね。
同意は、当然のことながら、内容を理解していることが前提です。

Q13
事業報告の記載について確認させてください。
連結計算書類作成会社の事業報告で、株式会社の現況に関する事項(施行規則120条)については、企業集団の現況に関する事項とすることが「できる。」(同条2項)とされています。これは、企業集団の現況として記載することとした場合は、第1項の項目すべてについて企業集団の内容として記載することが必要なのでしょうか。
規定の文言からみると、特に制限されていないように思えるのですが、一部の項目について単体の状況とすることは可能なのでしょうか。(例えば、借入金の状況についてグループ会社で同一の借入先がある場合は、合算して記載しなければならないのでしょうか。)
投稿 んーー | 2007年2月16日 (金) 20時17分
A13
つまみ食い問題は、あまり触れたくありません。
分かりやすく記載しましょう。

Q14
施行規則124条7号について、以前、「当該会社の親会社の子会社」には『その会社の子会社も含まれる。』という応答がありました(12月28日のA4)。しかし、昨年12月の施行規則等の改正で、施行規則第2条3項18号と第77条7号に「(当該株式会社に親会社がない場合にあっては、当該株式会社)」との文言が追加されたことで、特定関係事業者や会計監査人の選任議案に関しては、親会社がない場合は「当該会社の子会社」について考慮しなければならない旨が明確にされましたが、124条7号にはこの文言が追加されませんでした。ということは、社外役員が報酬を受けているか否かの判断の対象には、当該会社の子会社は入らないと考えるべきではないでしょうか。直近の改正で規定の整合が取られなかったことを、解釈で「当該会社の子会社」と考えるとすることは問題ではないかと思います。
投稿 あーー | 2007年2月16日 (金) 20時42分
A14
直近の改正でチョンボがあっただけです。
深読みすべきではありません。

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2007年2月14日 (水)

【入門】募集株式の発行(3)

 前回は、募集株式の発行を行う場合に、既存の株主の
 ①議決権比率の維持の利益
 ②株式の経済的価値
の2点がどのように保護されているかについてお話ししました。

 今日は、募集株式の発行と種類株主の保護について説明します。

1 種類株主の保護
 初学者の中には、「種類株式」と聞いただけで
   難しい。よく分からん。どうせ試験には出ない。
と考え、思考停止に陥ってしまう人がいます。
 しかし、種類株式は、株式の内容について特別の約束がされているだけで、普通株式と本質的な違いはありません。

 株式の内容は、会社と株主との間の権利義務を定めたものであり、契約自由の原則の下では、本来、どんなものを定めても良いはずです。
 しかし、株式の場合には、株主平等の原則や「権利内容を定型化することで株式を安心して取得することができるようにしたい」という要請から、契約自由の原則が修正されていて
  ① 定款で内容を定める(明確化)。
  ② 株式の内容を登記する(公示)。
  ② 107条1項・108条1項に掲げられた条項以外の種類を認めない(定型化)。
というルールが採用されています。
 これが、種類株式制度の第1のポイントです。

2 種類株式と単元株式数
 ちなみに、「単元株式数」も、定款で定めることにより株式の内容になりますが、これは、108条1項に掲げられた条項ではないので
  単元株式数だけが違う種類株式
というものを設計することはできません。

 単元株式数は、108条1項に掲げられた条項のどれかを定めたときに、オプションとして付加できるもの、いわば
  「グリコのおまけ」
  「チョコエッグのフィギュア」
なのです。

 「おまけ」や「フィギュア」だけでは買えないため、マニアの人たちが
  グリコやチョコエッグを大人買いしてお菓子は食べない
というようなことがあるように
   単元株式数だけを変えて、複数議決権株式を作りたい
という要望があるような場合には
   残余財産分配など、どうでもいいようなところを、チョコっとだけ変えた種類株式を定めた上で、その種類の株式に単元株式数を定める
ということも行われているという噂があります・・・。
 まあ、おまけ目的でチョコを捨てると非難されるように、単元株式数目的でチョコっと変えた種類株式を作ると、裁判所が怒りだす心配はありますが。

 話は脱線しましたが、
   「株式の内容」については、定款で定めなければならない
というルールはすべての条項について共通するものの、「株式の内容」の中には
  ①その条項だけで種類株式になるもの
  ②その条項だけでは種類株式にならないもの
  (単元株式数・種類株主総会を不要とする定め)
の2種類があるということを覚えておいてください。

3 種類株主総会
  種類株式は、株式の内容の一部を変えただけのものですから
   その変えた部分だけが普通株式と違うだけで、それ以外の部分は普通株式と同じ
です。

 ですから、例えば、配当優先株式(例えば、1株あたり50円の配当を優先的に行う)と普通株式の2種類の株式があるからといって、別々に株主総会を開くわけではなく、
   配当優先株の株主も、普通株式の株主も、入り乱れて「株主総会」を開催する
ことになります。
 株主総会というのは、株式の種類とは関係なく、全ての株主が集まる総会なのです(もちろん、議決権制限株式の株主は、議決権がない場合には出席はできませんが)。

 これに対し、種類株主総会は、ある特定の種類株式の株主だけが集まるものである上、株主総会のように、毎年、開催されるようなものではありません。実務的には

  種類株主総会を開くくらいなら、何もしない方がましだ。

と思われるくらい滅多に開かれないものです。
 
 例えば、株主総会で、配当優先株主の優先額を1株50円から1株30円にする定款の変更決議があったとしましょう。
 配当優先株主も、株主総会に参加して、その議案に反対しましたが、普通株式の株主の方が多数派だったので、配当優先株式に不利な決議が多数決で通ってしまったのです。

 しかし、このような種類株主を無視したような決議が何の制限もなく行われてしまうと、誰も、種類株式を取得しなくなってしまいます。
 これは、定款の変更だけでなく、株式の分割のように取締役会の決議で行われるような行為でも同様ですし、配当優先株主の方が多数派のときに、普通株主に不利な定款変更をやるような場合には、普通株主を保護する必要がある場合もあります。

 そこで、会社が322条1項に掲げられている行為を行う場合、ある種類の株式(普通株式も含む)の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合には、「種類株主総会」の決議を得ない限り、その効力を生じないものとして、歯止めをかけているのです。
 逆に言うと、種類株主総会を開くということは

 あなたたちに不利なことをしていますよ。

と公言しているようなもので、会社が種類株主総会を開きたくないのは、当然ですね。

これが、第2のポイント。

4 募集株式の発行と種類株主総会
 それでは、募集株式の発行が行われる場合に、種類株主は、どのように保護されるのでしょうか。

 322条1項の中で、募集株式の発行に関するものとしては、
 1号 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)
  イ 株式の種類の追加
  ロ 株式の内容の変更
  ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
 4号 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
ですね。
 
 この322条1項については、
   限定列挙説 各号に掲げる行為以外の行為については、損害を及ぼすおそれがある場合でも、種類株主総会は不要
   例示列挙説 各号に掲げる行為以外の行為でも、種類株主総会を要する場合がある。
という説の争いがあります。
 私達も当初、ある理由から例示列挙説を採っていましたが、その後、議論して
   条文の文言を見る限り、どうひっくり返っても、例示列挙というのは無理だろう。
   種類株主総会の範囲を明確化するために明示したのに、わざわざ例示列挙説に立つ必要はないだろう
ということから、その後は、限定列挙説で書くようにしたというイワク付のところです。

 限定列挙説に立った場合、募集株式の発行について、株式の種類の追加等の定款変更を伴って募集株式を発行する場合(1号)と株主に割当を受ける権利を与えて募集する場合(4号)以外には、種類株主総会は、不要となります。

 つまり、発行可能株式総数・発行可能種類株式総数の範囲内で、通常の募集をやる場合には、種類株主総会はいらないのです。

 確かに、配当優先株式を追加で1000株募集するときには、普通株主は、その分、配当が減るので「損害を及ぼすおそれ」はありますが、
  定款で定められた発行可能種類株式総数の範囲内の発行については、普通株式も不利益を覚悟しておくべきである
という価値観から322条1項各号には、通常の募集株式の発行は、列挙されていません。

 他方、株主に割当を受ける権利を与える場合については、募集株式の発行であっても、不利益を受ける種類株式の種類株主総会が必要です。

 一見、「株主に割当を受ける権利を与える方が、株主平等なんだから、種類株主総会なんかいらないんじゃないの?」という気持ちになりそうですが、実は、その「株主平等」がくせ者です。

 株主に割当を受ける権利を与える場合、株主平等であることを考慮して、公開会社が有利発行を行う場合でも、役会決議で行うことができるなど、募集手続きが軽くなっています。

 しかし、種類株式は、本来、種類株主を特別扱いをするために設計される場合もあるので、「株主平等」だからといって、手続きを軽くされては困るのです。

 例えば、松真さんが配当優先株式、湯水さんが普通株式を持っているときに、取締役会で、配当優先株式を著しく安い価格で割当を受ける権利を与えると、普通株式よりも高い価値のある配当優先株式を安く引き受けることができ、現在、普通株式をもっている湯水さんだけが、相対的に損をします。
 つまり、「平等に扱うべきでない種類株主について、全株主を平等に扱ってしまうことの不都合」を回避する必要があるのです。

 そこで、202条で募集手続きについて特例が置かれている株主に割当を受ける権利を与える場合に限っては、募集株式の引受人の募集の場合も、損害を受けるおそれのある種類株式の種類株主総会が必要であるという整理がされているのです。

 種類株主総会については、以上説明したほか、322条の特則的な規定である111条の存在を理解しておけば、とりあえず十分なので、今日の記事をきっかけに勉強してくださいね。

(質問コーナー)
Q1
新株引受権付社債について質問いたします。
平成12年発行の新株引受権付社債があります。
今般、その「新株の引受権を行使することができる期間」を延長する変更をしたいのです。
①変更できますか?
②決議は「株主総会」なのか「取締役会」なのか「種類株主総会」なのか???
③決議以外に何かしら手続は必要ですか?
投稿 しずおか | 2007年2月 9日 (金) 16時52分
A1
 私の記憶に間違いがなければ、なお従前の例により、旧商法どおりだったと思います。

Q2
 非取締役会設置会社における191条の意義について質問させてください。
 株式会社は191条の要件に当てはまる場合、株主総会の決議によらないで単元株式数の増加または設定をすることができます。
 そして取締役会設置会社では 株式分割も取締役会の権限なので 株式分割及び191条による定款変更ともに取締役会の決議でなされます。
 つまり株式分割と191条の定款変更はともに取締役会によってなされます。この場合、株式分割と単元株式数ともに取締役会の決議でなされるから費用の節約になるし 楽に決めることができます。そうだとすれば取締役会設置会社における191条の意義は非常に分かりやすいです。
 ところが、非取締役会設置会社では、株式分割は株主総会の権限です。そこで 株式分割は株主総会の決議でなされるが、191条による定款変更は取締役によってなされることになります。
 この場合わざわざ費用をかけて株主総会を開いたのだから株式分割と単元株式数ともに株主総会で決定してしまえばいいわけで、191条という特則の意義が見えてきません。
 そういうわけで非取締役会設置会社における191条の意義についてご教授ください。
投稿 maru | 2007年2月10日 (土) 00時02分
A2
 特則に実益がない場合があってもよいのではないでしょうか?
 非取締役会設置会社だけ、適用除外する必要はないように思います。

Q3
委員会設置会社の委員会が業務執行の決定を執行役に委任できない場合について(416条4項但書)質問させてください。
 委員会設置会社では、譲渡制限株式の取得について承認をするか否かの決定について執行役に委任することをできません(1号)
 しかし、委員会設置会社でない株式会社では 代表取締役に
譲渡制限株式の取得について承認をするか否かの決定をさせることもできます。(139条1項但書による定款の定めによる)
 委員会設置会社と委員会設置会社でない会社とでこのような違いが生じる理由についてご教授ください。
 また、法が416条4項但書各号に定めるものに何か基準があればそれについてもご教授くだされば幸いです。
投稿 maru | 2007年2月10日 (土) 00時04分
A3
 株主総会で選んだわけでもない執行役が、株主構成を判断するのは僭越だからなんでしょうね。
 416条4項ただし書各号の選別基準は特にありません。政策です。

Q4
分配可能額の計算についてでございます。ある3月決算会社が、昨年、経過規定により、旧商法の利益処分案を承認し、利益処分によって役員賞与金を支払ったものとします。この会社が、本年2月現在の分配可能額を計算する場合、当該役員賞与金の支払額は、最終事業年度の剰余金から控除されるのでしょうか?されないのでしょうか?(昨年3月期が最終事業年度であり、臨時決算や決算期変更もないと仮定します。)
投稿 こころん | 2007年2月10日 (土) 00時50分
A4
分配可能額からは控除する必要はないと思われます。

Q5
 株式会社の解散に際しての株式譲渡制限規定の変更の要否について質問致します。
 取締役会設置会社であって,譲渡制限株式についての譲渡承認機関を「取締役会」として定款に規定し,かつ登記している株式会社が解散して清算会社となった場合,取締役会が存在しないことになりますので,それに伴って譲渡制限株式の譲渡承認機関(株式譲渡制限規定)を変更する定款変更をしたり,その旨の登記をしなければならないのでしょうか?
 上記は,清算会社においても株式譲渡制限規定が有効であるという前提での話ですが,それとは逆に,清算会社においては株式譲渡制限規定の効力が停止されるのでしょうか?
投稿 hige | 2007年2月10日 (土) 19時27分
A5
 譲渡制限をかける以上、譲渡承認機関を変更する必要があるし、登記も必要です。

Q6
剰余金の分配可能価額について質問させてください。
期中に再評価した事業用土地を売却し、土地再評価差額金取崩額を計上しています。会計上損益計算書に計上されることなくその他利益剰余金が直接増加となります。446条・計規178条に剰余金の額に加算すべき項目としてあげられていないので、「現段階で」分配可能価額算定する上で土地再評価差額金取崩額を考慮しないという理解でよろしいでしょうか。
投稿 初心者 | 2007年2月11日 (日) 14時06分
A6
 そうなるでしょう。

Q7
3月決算の当社は、負債基準(2Ⅰ⑥ロ)にて大会社と判定され、会計監査を受けておりますが(328Ⅱ)、2月現在、負債が100億円まで減額しています。
資本金は3億円で、会計監査人設置の定款規定(326Ⅱ)はありません。
さて、このままの場合、2007年6月に承認される(予定である)2007年3月期の決算書をもって大会社ではなくなり、2007年度より会計監査も不要となる(おまけで6月の総会まではついてくる(338Ⅰ))との認識でよいのでしょうか?
また、6月の総会では、現在の監査法人を解任し(339)、その後、会計監査人につき消滅登記(909)を行うとの認識でよいのでしょうか?
投稿 ITロマンス | 2007年2月11日 (日) 20時14分
A7
 会計監査人設置の定款はあるはずです(多分、経過措置で、みなされているはず)。
 したがって、大会社ではなくなっても、定款を変更して、会計監査人を置く旨の定めを廃止しなければ、会計監査を受ける必要があります。

Q8
監査役(会)の監査報告の記載についてアドバイスをお願いいたします。
当社(3月決算)は、当期中に、会計監査人が金融庁の行政処分により欠格事由に該当したため退任となり、一時会計監査人を選任し今日に至っております。
このような状況下、監査報告で会計監査人に言及する際は、全て「一時会計監査人」と表記しなければならないものでしょうか。それとも「会計監査人」でいいのでしょうか。あるいは、文脈により使い分けすべきなのでしょうか。
昨年9月に公表された監査役協会の指針によれば、「監査の結果」のところでは「一時会計監査人」と表記すべしとしていますが、「監査の方法」のところでは「会計監査人」のままになっており、しかもその点につき何ら注釈を付しておりません。
そもそも論で言えば、会計監査人と一時会計監査人はその職務(権利義務)において何らの差異はない訳ですから(因みに、会計監査人不在で、一時会計監査人が就任しているに過ぎない会社でも、やっぱり「会計監査人設置会社」ですよね)、一時会計監査人も概念として包含されるという意味で単に「会計監査人」と表記すれば十分であるとも思えるのです。
監査役協会の指針を強いて善解すれば、上記のような考えに立ちつつも、「監査の結果」のところでは、”肩書”としての表記ですから、「一時会計監査人」とせざるを得ないでしょう、ということかとも思われます。
投稿 black out | 2007年2月12日 (月) 22時39分
A8
 会計監査人と表記してもよいと思います。

Q9
1000問P682「Q917 3」についてお伺いいたします。
吸収合併存続会社株主が、会社法798条3項の規定に基づいて、価格決定の申立てがなく効力発生日から60日が経過したことにより、株式買取請求を撤回した場合であっても、当該撤回により、存続会社の株主に留まることはできないという意味でしょうか?
A9
 そうです。

Q10
事業報告とその附属明細書における、役員の兼務状況の記載についてです。
事業報告の記載事項は、施行規則121条3号及び7号に、同附属明細書は施行規則128条1号に規定されておりますが、この違いはあるのでしょうか?
条文だけ見ると、附属明細書に記載すべきものは、事業報告で既に記載しなければならないように思えます。
投稿 tanukick | 2007年2月13日 (火) 20時38分
A10
附属明細書は、「明細」です。

Q11
委員会設置会社において、会計監査人の設置が義務付けられている理由を教えてください。
本には、執行役へ権限委譲した正当化根拠のひとつだからとありますが、どういう意味ですか?
投稿 プリン | 2007年2月13日 (火) 21時20分
A11
 法制審議会で、「委員会設置会社には、必ずしも会計監査人の設置はいらないのではないか」という提案がありましたが、反対意見が強かったからです。
 会計監査人がいることも、執行役の適正な活動を確保するための正当化根拠だからということです。

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2007年2月 9日 (金)

質問が貯まりました。

 総会が近づいてきたせいか、沢山の質問が来ています。

出張中であるため、調整しなければならない問題で未調整の問題もあるのですが、貯まると嫌なので、とりあえず答えます。

(質問コーナー)

Q1
非取締役会設置会社における 取締役および株主総会の
権限について質問させてください。
 取締役会設置会社で取締役の権限であるものは、非取締役会設置会社では取締役または株主総会の権限になります。
 では非取締役会設置会社において、 取締役の権限になるか 株主総会の権限になるかを区別する基準はあるのでしょうか?
 例えば、単元株式数の減少または廃止の旨の定款変更は取締役の権限とされ、株式の分割、株式の無償割当は株主総会の権限とされています。
 しかし、このように権限を振り分けた趣旨がわかりません。
一般的な区別基準と上記具体例を分ける基準についてご教授ください。
投稿 maru | 2007年2月 6日 (火) 03時18分
A1
 一般的な基準はありません。個々の規定ごとに伝統と理論によって振り分けられたものです。

Q2
会社法33条8項と会社法97条における期間の違いについて質問させてください。
 33条8項では 確定後1週間以内に限り意思表示を取り消すことができ、97条では 確定後2週間以内に限り意思表示を取り消すことができます。
 ではこのような期間の違いはなぜ生じるのでしょうか?
投稿 maru | 2007年2月 6日 (火) 03時19分
A2
 政策的な判断としかいいようがないですね。

Q3
会社法386条について質問させてください。
 監査役設置会社が取締役に対して訴えを提起する場合の、
「取締役」に取締役であった者 まで含むのはなぜですか?
投稿 maru | 2007年2月 6日 (火) 03時20分
A3
 馴れ合いがあるといけないからです。

Q4
199条4項についてお伺いいたします。
①譲渡制限付のA・Bの二種類の種類株式を発行している会社で、B種類株式の募集に関する事項の決定には原則どおりB種類株式を有する株主による種類株主総会を行うこととし、そして、「A種類株式の募集に関する事項の決定については、A種類株主の承認を要しない」と定款で定めることは可能ですよね?
②また、322条2項の種類株主総会の決議を要しない旨は、株式の内容となりますが、199条4項の種類株主総会の決議を要しない旨は、株式の内容とされていないのは何故でしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月 6日 (火) 08時16分
A4
① できます。
② 199条4項が株式の内容となるかどうかは、解釈に委ねられています。

Q5
サミー先生、246条3項と287条の関係についてご教授下さい。
246条3項は、払込期日までの全額払込みがない場合、新株予約権者は当該新株予約権を行使することができないと規定していますが、
本規定は新株予約権者の行使の主張を禁止した規定であり、会社側から行使を認める余地は残されていると読むことは可能でしょうか。

仮に、この解釈が成り立つのならば、246条3項の要件の充足は、必ずしも287条の要件を充足することにはならず、
千問の道標p.235の図表3-1にあります「払込期日が経過した時点で、新株予約権は消滅する」とは言い切れなくなると思うのですが、いかがでしょう。

また、この解釈が成り立たないとした場合、何故246条3項は行使期間の経過をもって新株予約権の消滅事由とせずに、行使できないとの文言にしたのでしょうか。この点に関してもご教授頂ければ幸いです。
投稿 nari | 2007年2月 6日 (火) 12時42分
A5
 会社側から、行使を認めることはできません。
 287条は、行使機関の経過よりも広い場合を規定しています。同条を前提とすれば、行使できないといえば、消滅を規定することができますから、今の書き方が最も効率的です。

Q6
 代表執行役の人数は、何人でも構わないのでしょうか。他の条文には「一人」(106条等)「一人又は二人以上の」(326条1項等)とあったりしますが、420条1項は何も語ってくれません。よろしくお願いいたします。
投稿 探偵 | 2007年2月 6日 (火) 22時29分
A6
 何人でも結構です。

Q7
会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(法務省令第87号)についてお伺い致します。
会社法施行規則2条3項18号で当該株式会社に親会社が存しない場合に対応するため、特定関係事業者の定義を修正されました。
また会社法施行規則77条で会計監査人選任議案に係る株主総会参考書類に関し、当該候補者につき開示を要する非監査・証明業務に係る報酬等の範囲を明確化されています。
しかし、ほぼ同様の規定の仕方をされていると思われる、会社法施行規則124条7号については何ら手当てがされていないようです。
これななぜなのでしょうか。よろしくお願い致します。
投稿 別所沼公園 | 2007年2月 6日 (火) 23時43分
A7
 大人の事情です。大した理由はありません。

Q8
先日、「関連当事者との取引」と「事業報告の附属明細書」について質問したひがしです。
12月21日に「関連当事者の取引の注記と,事業報告の付属明細書は,記載事項がダブる場合であっても,双方に記載する必要があります。」とのご回答をいただいて以来、気になって夜も眠れない日々をすごしておりましたが(嘘)、1月30日の「会社役員や支配株主との直接取引は附属明細書に記載する必要がない」との記事を拝見し、少し安心しました。
私の安眠のために、さらに一点質問させて下さい。
会社役員・支配株主との間接取引は「関連当事者との取引」に記載する必要はない、ということでよろしいでしょうか。会計基準とのからみを考えるとまた眠れなくなりそうです。
投稿 ひがし | 2007年2月 7日 (水) 00時46分
A8
それは、会計基準どおりです。

Q9
非公開会社の株主割当てについてについて、お伺いいたします。
旧法の下では、譲渡制限会社は、原則として新株引受権を有していましたが(旧280条ノ5ノ2)、現行法では、公開会社であろうと非公開会社であろうと、募集株式を募集する場合に、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる(株主割当て)、となりました(204条)。
この点につき、神田先生の基本書によると、「規律の実質に変更はない」と記述されています。
旧法の下では、新株引受権を排除する場合には、株主総会の特別決議が必要、すなわち、新株引受権をもらうためには、3分の1以上新株引受権がほしい人がいればよかったのですが、現行法では、株主割当てを実施するには、3分の2以上必要です。
つまり、株主割当てをするのに必要な人数が、3分の1以上から3分の2以上に増えてしまったことになるので、旧法よりも要件が厳しくなったように思えるのですが。
投稿 かんかん | 2007年2月 7日 (水) 13時58分
A9
 旧商法では、非公開会社でも、取締役会で募集を決めていたのに対し、会社法の非公開会社では、株主総会で募集事項を決議します。そこに、大きな違いがあり、それを考えると実質は同じだろうということです。

Q10
補欠役員の選任に関して、会社法施行規則96条には総会で決議すべき事項について定められていますが、この中の「社外役員として選任する場合、その旨」について、社外役員の補欠者として選任する場合には、同74条4項または76条4項に規定されている「社外役員の選任に関する事項」についても選任議案の内容として記載すべきなのでしょうか?
A10
 補欠役員の選任も、条件付き役員の選任なので、記載は必要です。

Q11
事業報告における「新株予約権等の状況」に関して、会社法施行規則123条では、1号で「役員の保有状況」、2号で「当事業年度中に使用人等に対して発行した新株予約権等」について記載する旨規定されています。
なお、それぞれについて、保有する「新株予約権の内容の概要」について記載するとされていますが、この「概要」については「期末時点での状況」として記載しなくてはならないのでしょうか?
具体的には、新株予約権の内容として「当初決議した新株予約権の数」などがありますが、「期末の状況」に限られると、発行決議時の内容は記載できないかと思われます。但し、当該内容は現状までの推移を確認する上で、新株予約権の内容として開示することに意味があるものと考えられるので、期末の状況に限定すべき内容ではない、と思うのですが、いかがでしょうか?
投稿 naga | 2007年2月 7日 (水) 14時13分
A11
ちょっと質問の意味がよく分かりませんが、「概要」は「期末時点の状況」ではないと思います。

Q12
4月1日から翌年3月31日を事業年度とする株式会社が、平成18年8月に資本金の額を10億円から100万円に減少し、平成19年3月31日に解散した場合、この清算株式会社には会社法477条4項の適用があるのでしょうか。
投稿 監査役置きたくないんですけど | 2007年2月 7日 (水) 14時20分
A12
当該会社は、大会社ですので、477条4項は適用されます。

Q13
第439条により取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社の場合、計算書類を定時株主総会に報告することが可能なケースがありますが、その場合に第320条の規定により報告を省略するとした場合には、計算書類の備置の開始日はいつからになるのでしょうか?
「定時株主総会の日から2週間前の日」からなのかとも考えましたが、定時株主総会を省略した場合には、定時株主総会の日自体ががなくなってしまうので、それも無理なのかなとか考えているうちにこんがらがってしまいました。
よろしくお願いいたします。
投稿 NM | 2007年2月 7日 (水) 16時15分
A13
 難問ですね。第319条に準じて、全員に報告した日と解するのが妥当ではないでしょうか。

Q14
剰余金配当責任についてご教授ください。
分配可能額が500円なのに、株主に600円の分配をしたとします。

1、業務執行者が支払うべき(462条1項)は、600円でしょうか。
2、悪意の株主が求償に応すべき(463条1項)は、600円でしょうか。

条文からはそのように読めます。そうすると、会社としては改めて剰余金の分配をする必要が出てくるように思います。差額の100円のみにしなかったのは、なぜなのでしょうか。
投稿 泣きそうです。 | 2007年2月 7日 (水) 19時50分
A14
 1 600円です
 2 取締役が600円を弁済しているなら、悪意の株主は600円の求償に応ずべきです。
 差額の100円にしなかったのは、分配可能額を超えたら、無効であり、不当利得になると考えていた旧法の名残です。

Q15
 株式と社債の割当て決定機関についてご教示下さい。
 前提として、社債の募集事項の決定については、676条が、「会社は、・・・を定めなければならない。」と定めているものの、具体的な決定機関については明示していないので、一般規定に戻り、取締役会設置会社であれば、362条2項1号に基づき取締役会が決定する(4項5号以外は取締役に委任可)ということになろうかと思います。
 そうすると、社債の割当ての決定については、678条1項が、「会社は、・・・を定めなければならない。」と定めているので、これも一般規定に戻り、取締役会設置会社の場合は、362条2項1号に基づき取締役会が決定する(取締役に委任可)ということになるでしょうか?
 もし、上記のように解釈するとすれば、株式の割当ての決定についても、204条が「株式会社は、・・・定めなければならない。」と規定している以上、取締役会設置会社の場合は、取締役会が決定する(取締役に委任可)ということになる、と考えたのですが、いかがでしょうか?その場合、同条2項については、譲渡制限株式の募集の場合、取締役会設置会社においては、取締役会が割当てを決定する(定款に定めがない限り取締役に委任不可)、と解釈することになるのではないかと考えました。
 「千問」の197頁、図表2-10の中では、公開会社・取締役会設置会社では割当ての決定は原則として代表取締役等が行うと書かれているのに対し、江頭先生の基本書674頁では、割当ての決定機関につき、「取締役会決議(代表取締役・執行役に委任可)」と書かれていることから、上記の疑問が生じました。
投稿 Y | 2007年2月 7日 (水) 20時18分
A15
 図表2-10は、調子にのって書き過ぎてますね。割り当ても業務執行の決定の一つですから、役会決議だが、代取等に委任ができるという江頭先生の本が正しいです。

Q16
会計監査報告の通知期限につきお尋ねいたします。
2006年11月24日のQ1で、「会社法では、取締役が計算書類を会計監査人に提出してから、4週間を経過した日までに監査報告を監査役に通知とありますが、これは、取締役が会計監査人と交渉して3週間で監査役に通知してくれとお願いできますでしょうか。監査役が同意したら可能でしょうか。」という問に対して、

>A1
>会計監査人が承諾すれば,できます。
>監査役が同意しても,会計監査人が拒否すれば,駄目です。

とお答えになっていますが、千問の道標461頁上段では「通知期限を短縮することはできないが、通知期限前に会計監査人が通知すれば、その時点で監査を受けたことになる」とあります。この関係はどう理解すればよいでしょうか。

また、法文上、単体計算書類の通知期限は短縮できないが、連結計算書類の通知期限は特定取締役・特定監査役・会計監査人の合意により通知期限を早くすることができるという違いがありますが、この違いを置かれた意図は何でしょうか。
投稿 CCC | 2007年2月 7日 (水) 20時19分
A16
 同じことを言っているように思います。会計監査人が任意に通知期限前に監査を終了することを妨げるものではないということを言っているだけです。
 連結は、しょせん連結で、参考資料ですから。

Q17
とても初歩的ですが、会社の目的に関する質問をさせてください。
会社法の施行に伴い、会社の目的は具体性を考慮する必要がなくなり、抽象的なものであってもなにがしかの外延が画されていればよいとのことですが、例えば「・・・・登記」という目的は違法性があるでしょうか。
投稿 Steelhead | 2007年2月 7日 (水) 23時35分
A17
 登記することを事業にするのでしょうか?
 事業内容の意味が不明ですが・・・。
 それとも、司法書士法違反の目的なのでしょうか?

A17
事業報告の記載の仕方についてご教示ください。
3月決算の会社が平成19年3月期の定時株主総会に提供する事業報告中の
役員の報酬等の総額について
①平成18年6月の定時株主総会において任期満了により退任した取締役に
  対する退職慰労金は記載すべき役員の報酬等の総額に含まれますか?
②平成19年6月の定時株主総会において任期満了により退任予定の取締役
  に対する退職慰労金は記載すべき役員の報酬等の総額に含まれますか?
投稿 四苦八苦 | 2007年2月 8日 (木) 00時41分
A17
① 不要です。
② 引当金の有無にもよりますが、開示する必要があります。経団連のひな型をみてください。

Q18
吸収分割について教えてください。
人的分割型の会社分割をする際に、分割型新設分割の場合は会社計算規則81条2項により分割会社の資本金の減少が必要のようですが、分割型吸収分割の場合は分割会社の資本金の減少はしなくてよいのでしょうか?
投稿 会社法苦戦中 | 2007年2月 8日 (木) 01時03分
A18
 分割会社の資本金を減少しなければならないときと、減少してはならないときがあります。

Q19
法律は、要件と効果があるだけで,それを説明をするために、「○○の原則」と呼んでいるだけだという説明は明快で分かりやすかったです。そうすると,例えば,株式譲渡自由の原則を説明している127条や,株主平等原則を説明している109条1項もまた,要件・効果を規定している条文という理解でよろしいでしょうか。これらの条文の場合,どのように要件・効果を切り分けていくのかを示していただけたら,サミー先生のおっしゃる意味がより理解できると思います。
投稿 とみん | 2007年2月 8日 (木) 16時01分
A19
株式譲渡自由の原則
 要件:株主であること、譲渡の対象が株式であること
 効果:民法の譲渡制限特約は無効である。

株主平等の原則
 要件:行為の主体が株式会社であること、株主に対し何らかの行為が行われること、その行為が、株主の有する株式の内容及び数に応じて、平等でないこと
 効果:その行為は無効。

Q20
【質問】
Q1 特定の株主から自己株を取得する際も,法319条に従い総会決議を省略することができるのでしょうか。
Q2 省略できるとした場合,法160条2項の通知は,いつまでに発すればよいのでしょうか。
投稿 駆け出し法律家 | 2007年2月 8日 (木) 17時59分
A20
Q1 できるでしょう。
Q2 全員同意しているのだから、通知の瑕疵を問題にする余地はなさそういですが、リスクを考えるのなら、同意の日の2週間前なんでしょうね。施行規則28条3号を類推して1週間前でもいいかも。

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2007年2月 6日 (火)

【入門】募集株式の発行(2)

 募集株式の発行が、既存の株主にどのような影響を与えるかについては、既に「設立と新株発行」の問題で説明しました。
 http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13272409

1 概観
 株主は、原則として、①議決権、②配当請求権、③残余財産分配請求権等を有しており、これらの権利は、いずれも法的な利益として保護に値するものです。
 他方、既存の株主の持株比率を絶対的に維持しなければならない(=新株発行に、全株主の同意を要求する)とすると、株主が多数いる株式会社では、新株発行により資金調達等を行うことが極めて難しくなってしまいます。
 
 出資者が、持株比率を絶対的に維持したいと思うのならば、「持分会社」を作ればいいのですから、株式会社は
  自分の意思によらずに、持株比率が変更されるのは、ある程度仕方がない。
  それよりも、株式の発行による資金調達がやりやすい方がよい。
と考えている出資者のための制度設計がされています(つまり、株主全員の同意は不要)。

 とはいえ、持株比率の変更は、会社の支配権(議決権比率)や株主の財産権(株式の経済的価値)に影響を与えますから、会社法では、次のような整理をして、会社と既存株主との間の利益調整を図っています。

  非公開会社 ・議決権比率維持の利益を保護する
          =募集事項を株主総会の決議で決定する。
             但し、持分会社のように全員の同意は不要
        ・一株の経済的価値は保護する
            =募集事項を株主総会の決議で決定する。

  公開会社  ・議決権比率維持の利益は原則として保護しない。
            例外 発行可能株式総数による歯止めがある。
               不公正な株式発行は差し止めの対象となる。
         ・一株の経済的価値は保護する。
            =有利発行の場合には、募集事項を株主総会の決議で決定する

2 議決権比率維持の利益
 なぜ、公開会社では、議決権比率維持の利益は、保護されないのでしょうか。

  公開会社(2条5号)というのは、簡単に言えば、
    譲渡制限の付いていない株式を発行する株式会社
のことです。

 東京証券取引所等に上場していなくても、譲渡制限が付いていない株式を発行していれば、「公開会社」ですし、一部の株式に譲渡制限が付いていたとしても、他の株式に譲渡制限が付いていなければ、「公開会社」になります。

 この定義から分かるとおり、公開会社では、株式の譲渡によって
 ・氏素性が分からないような人が、突然、株主として会社の運営に参加する(株主総会で議決権を行使する等)ようになったり、
 ・去年まで少数派株主だった人が、今年は多数派株主になったり
ということがありえます。

 既発行の株式を「譲渡」することと、新しく株式を「発行」することは、別のことではありますが、
 ・既存の株主以外の人が株主となったり
 ・少数派株主が、多数派株主になったり
することがあるという点は同じです。

 ですから、「公開会社」においては、募集事項の決定について株主の判断を仰ぐほどの必要はないだろうという判断のもと、原則として
  取締役会
が募集事項を決定することとなっているのです。

 もっとも、株式の「譲渡」では、自己の議決権比率が下がることはありませんが、募集株式の「発行」がされると、既存株主の議決権比率は下がります。

 そのため、取締役が、オーナー(大株主)に反旗を翻して、募集株式の発行を行って多数派株主に成り上がろうとしたり、議決権比率を下げて少数株主権を行使できないようにしたりして、募集株式の発行は何かと悪用されることが多いのです。

 まあ、多数派を少数派に転落させる募集株式の発行が、常に違法というわけではありませんが、取締役が、自己の保身のために、募集事項の決定権を濫用することは許されないので、そのような
  「著しく不公正」
な募集株式の発行が行われそうなときは、株主による株式発行の差し止めが認められています。

3 一株の経済的価値の保護
ところで、民商法の世界には、「個人の財産を、その人の意思によらずに、奪ってはいけない」という基本ルールがあります(財産権の保護)。

 株式会社が、募集株式の発行を行う場合には、既存の株主の株式自体を奪うわけではないものの、現在の株価よりも、著しく安い価格で株式を発行すると、一株あたりの経済的価値が下落してしまい、実質的には財産を毀損することになってしまいます。

 そこで、公開会社であっても、特に有利な金額で募集する場合には、株主総会で、その払込金額で募集する理由を説明し、株主総会の決議で募集事項を決めなければならないこととされています(199条3項・201条1項)。

一通りの説明は、以上のとおりなのですが、実際には、払込金額がどの程度になったら、「特に有利な金額」になるのか、その判断は容易ではありません。

「特に有利」かどうかの判断は
 ①現在の株価をどう評価するか
 ②どの程度、ディスカウントすると「特に」有利な金額となるか
という2段階の検討が必要であり、そのいずれにも確定的な基準はありません。

 株価の算定方法の一つとして「純資産方式」があります。
 これは、単純に言えば
  「純資産1000万円の株式会社が1000株発行しているとすれば、1株あたり、1万円である」
というようなに、会社財産を株式の数で山分けするという発想の評価方式です。
 この他にも、
 ・資産や利益を他の会社と見比べてみて評価する方法(類似業種比準方式)
 ・配当から逆算して評価する方法(配当還元方式)
 ・収益から逆算して評価する方法(収益還元方式)
 ・将来の現金をどの程度生み出すかから逆算する方法(DCF方式)
等様々な評価方式がありますし、上場株式であれば、
   市場価格
が、株価算定の大きな指標になります。

 もともと、199条3項が「有利」ではなく、「特に有利」と規定してるのは、上場株式の場合、募集事項の決定時から、払込期日までの間に株価が下落する可能性があるため、ある程度、ディスカウントして払込金額を決めておかないと、引受人が、払込期日にお金を払い込まない可能性があるからです。

 例えば、払込金額1000円で引き受けた人は、時価が900円の時には払い込んでくれません。市場から900円で買ってくる方が得ですからね。
 だから、会社法は、「特に」という文言をくっつけて
  「払込金額を決めるときに時価1000円であったとしても、払込金額を100円引きの900円にするくらいなら、わざわざ株主総会の決議を開かなくてもいいですよ」
と言っているわけです。

この「特に有利」の基準を、どの程度と考えるのかは、解釈に委ねられているのですが、100問にも記載したとおり、裁判所は、発行決議前3か月の平均株価の10%引きというのを一応の基準にしているようです。

本当言うと、株価の変動率が大きい株式ならば、30%引きでもおかしくないし、逆に変動率が小さいならば、10%でもディスカウントし過ぎだと思いますが、規範としての明確性を考えると10%という基準を採るのは、それなりに合理的です。

 また、株価は毎日変動する(1日で10%以上変動することも希ではありません)ので、発行決議時の株価ではなく、3か月の平均株価とするのも合理的です。

 ところが、平均株価の期間を3か月に固定すると、都合の悪い場合があるためか、最近の証券発行実務の世界では
  6か月以内で任意に設定した期間の平均株価の10%引きならよい
という解釈も一般的になってきました。

 その解釈が悪いというわけではありませんが、巷の発行手続を見ていると、会社が、株主総会の決議をせずに第三者に株式を割り当てるために、恣意的に平均株価の算定期間を設定しているんじゃないかと疑われることもないわけではありません。

 いずれにせよ、明文に基準のない世界の話なので、裁判所も杓子定規に3か月とは判断してはいませんが、もし、裁判所から発行手続の公正さを疑われたら、いくら6か月以内で適当な期間を定めていたとしても、「特に有利」だと認定されてしまうリスクはあるでしょうね。

 他方、非上場株式は、相場の変動がない世界ですから、「10%引き」という基準は、あまり合理的ではありません。

 例えば、純資産方式(簿価純資産で評価すると、不動産や有価証券等相場の変動があるような財産について、含み損や含み益が評価されないので、実質純資産で評価するとします)の場合、資産の評価の誤差をある程度見込んでディスカウントすることはできるかもしれませんが、それを超えて払込金額をディスカウントする場合には、何らかの合理的理由がない限り「特に有利」なものと認定されるのではないでしょうか。

 また、非上場株式について、株価の評価方式がいろいろあるからといって、取締役が、自分勝手に、募集ごとに評価方式を変えて、株主総会の決議を回避するのは、許されませんし、DCF方式(将来の収益をどう予測するかによって、株価が左右されるため恣意的な評価を行いやすい)で「特に有利」かどうかを判断する場合には、評価の基礎となるデータの信頼性を詳細に検証しなければならないでしょう。

 まあ、非上場株式の多くは、非公開会社ですし、非公開会社ならば「特に有利」かどうかにかかわらず、株主総会の決議が必要なので、これまで、非公開会社における「特に有利」の判断基準は、あまり深く論じられてきていなかったように思います。

 しかし、最近は、公開会社が、新株予約権を用いた買収防衛策を導入したりすることがあるため、市場価格のない新株予約権について、どの程度の払込金額を「特に有利」とするかの判断が求められる場合も多いのです。
  特に新株予約権は、権利内容を工夫することにより、その価格を左右しやすいため、株式よりも恣意的な「総会決議外し」がされやすく、この分野は、もっと研究が進んで欲しいところですね。

 初心者の皆さんは
   公開会社でも、株式の経済的価値を保護するために、「特に有利な」株式発行については、総会決議が要求されていること
   「特に有利」かどうかは、一般には、3か月(又は6か月)の平均株価の10%引きが基準となっていること
くらいを覚えておけば、とりあえずOKですが、発行差し止めの仮処分という修羅場では、
 ① 払込金額が特に有利かどうか
   →役会で発行決議をしている場合がほとんどなので、特に有利だと、総会決議の欠缺という違法が生じる
 ② 主たる目的が取締役等の保身にあるか
   →もし、そうならば、著しく不公正な発行になる
という点が主たる争点になることが多いというのも、知っておいて損はありません。

(質問コーナー)
Q1
社外役員(候補者)に係る事業報告と総会参考書類の記載事項に関する質問です。
似たような規定を並べて見てみると、何とも趣旨を理解し難い微妙な差異があります。

例えば、
①親族関係の開示:事業報告では「その事実」とあり、「重要でないものを除く」とある一方、参考書類では、「その旨」とあり、「重要性」による限定はありません。全株懇は、前者は具体的事実を書く必要がある一方、「重要性」基準で絞り込むことが可能、後者は抽象的・包括的な記載で足りる一方、「重要性」基準による絞込みは不可、と解説しています。
②兼務状況の開示:事業報告では「代表者その他これに類する者」とあり、参考書類では「代表者」とだけあります。前者の方が範囲が広そうです。

このような微妙な差異を設けた趣旨・狙いはなんでしょうか。そして、そういった差異にきめ細かく対応した厳密な書き分けが必要なのでしょうか。所詮最後は、株主の判断に委ねる、ということでしょうか。
投稿 ぽっぽー | 2007年2月 2日 (金) 00時53分
A1
差違は、歴史的な経緯等から設けられたもので、理屈で説明できるようなものではありません。
「書き分け」の意味は分かりませんが、最低限の開示をしようとするのではなく、各規定の趣旨に沿って、株主に誠意をもって開示すればいいのだと思います。

Q2
問33の失念株主の問題ですが、
甲社株主AがBに株式を譲渡したがBが名義書換を行わず、Aに甲社から株式に割り当てを受ける権利(新株引受権)が渡された場合の話です。
判例からいくと、Bは何もAに追求することはできません。しかし、不当利得を論拠としてこれに反論する場合、なぜ「不当利得は売買契約の当事者でない場合の規定から適用しない」と判断できるのですか?(通説はこっちをとっていると聞きますが)
また、「AはBに新株引受権分のプレミアムを付加した価格で株式を譲渡した」と捉えれば、やはりAは不当利得を得たと考えられるため、BはAにプレミアム(新株引受権相当分の金額)を請求できるのではないでしょうか?(株式そのものは請求できないとしても)
公認会計士試験受験者のため、民法をして勉強していないのでここがよくわかりません。
投稿 あっきん | 2007年2月 2日 (金) 01時24分
A2
 問題意識が、今ひとつ、よく分かりませんが、不当利得というのは、法律上の原因がない当事者間の利益調整の問題です。
 有効な売買契約が存在する当事者間の利益調整は、普通、不当利得ではやりません。
 目的物に、果実・従物・従たる権利がある場合でも、当事者の意思によって、それを決めるのが原則です。

Q3
決議の省略の場合、株主総会参考書類の交付は不要であると思うのですが、そうすると、100%子会社の社外取締役を書面決議で選任する場合に、会社の提案の内容や同意書、議事録に、施行規則74条4項の「社外候補者である旨」等の記載はなくてもよいということになるのでしょうか。
つまり、どこにも社外取締役である旨の明示がなくても、書面決議の場合には取締役として選任の決議をしてしまうだけで「社外取締役」としてしまうことができるのでしょうか。
投稿 カフェイン中毒 | 2007年2月 2日 (金) 10時22分
A3                                                   
 社外取締役は、社外として選任するから、社外になるのではありません。
 客観的に社外取締役に該当するかどうかで決まります。
 決議の省略のときには、株主総会参考書類は不要です。

Q4
株式会社同士の合併の際、合併の効力発生日をもって消滅会社は解散するため、消滅会社の監査役は、存続会社の監査役として新たに選任されない限り、合併の効力発生日をもってその任を終えるものと理解しています。
さて、ここからが質問ですが、例えば、決算期が3月の消滅会社が4月1日に合併する場合、その前日(3月末日)までの会計年度の決算については、消滅会社の監査役による監査と監査報告は不要なのでしょうか? あるいは、存続会社の監査役が代わりに消滅会社分の決算の監査も行うのでしょうか? また、仮に監査報告を行う場合は、存続会社の株主総会で行うのでしょうか?             
投稿 やむ | 2007年2月 2日 (金) 11時53分
A4
消滅すれば監査は不要です、というか、できません。

Q5
【入門】募集株式の発行(1)は大変勉強になります。ところで,会社法の基本書にはよく「割当自由の原則」があるとされていますが,根拠条文が分かりません。204条1項がその旨を規定しているとは思えるのですが,正面から定めた規定とは読め無いのです。一般に,「○○の原則」とされるような会社法の原則は,127条の株式譲渡自由の原則のように明文規定があるものなのでしょうか。明文規定を設ける場合とそうでない場合とでは,立法技術上の配慮があるのでしょうか。
投稿 とみん | 2007年2月 2日 (金) 16時56分
A5
 204条には、何の制限もされていないので、割当ては、誰に対してしてもかまいません。
 「原則を正面から定める」という意味がよく分かりません。法律は、要件と効果があるだけです。それを、説明をするために、「○○の原則」と呼んでいるだけです。

Q6
本日の記事の件ですが、「募集手続は202条等の手続に従ったのに、結果的に、株主の一部にしか「発行」されなかった」場合には、株主以外の者に対する発行という整理になるのでしょうか。
投稿 DAN | 2007年2月 2日 (金) 18時30分
A6
 「株主以外の者に対する発行」に整理するかどうかは、単に便宜的な分類に過ぎませんので、質問の場合をどちらに整理するかについて「正解」というものはありません。DANさんは、どちらで整理する方が書きやすいですか?法律効果を考えれば、おのずと答えがでるはずです。

Q7
株券発行会社が、自己株式の消却について取締役会で可決した後、取締役が当該株券をシュレッタにかけるのを忘れて、会議室の机の上に放置したままにしていたところ、泥棒に入られ、当該株券が盗まれ、それを何も知らない第三者が買受けた場合、第三者の運命は、どうなるのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月 3日 (土) 10時55分
A7
 消却の効力が生じていれば、その株券は、無効で、善意取得の余地はありません。
 しかし、会社に損害賠償を請求することはできるかもしれません。

Q8
民法では「仮理事」という言葉が使われ、証券取引法では(金融商品取引法になっても)「仮取締役」などといった言葉が使われています。他方、新しい「一般社団法人・・・法」では、旧商法・会社法と同様、「一時○○の職務を行うべき者」といった言葉が使われています。また、商業登記の実務では「仮○○」といった言葉が使われているようです。
とまぁ、とても付き合いきれないなぁ、所詮どうでもいいということでしょうか。
A8
そのとおりです。

Q9
サミーさんのご回答で「正式名称は『一時会計監査人の職務を行う者』」とありますが、正確には「一時会計監査人の職務を行うべき者」かと思います。ご確認を頂きたく存じます。
投稿 ぷろめてうす | 2007年2月 3日 (土) 10時59分
A9
失礼しました。そのとおりです。

Q10
米国の州会社法では,労務出資は禁止されていないと聞きます。また,民法上の組合も労務出資はOKです(民法667条2項)。一方,なぜ,日本の会社法は,労務出資は駄目なのでしょうか。基本書を読んでも,当然のこととしてあまり丁寧な説明がされていないので,よく分からなくて困っています。初心者の質問で恐縮ですが,教えていただけたらと思います。
投稿 会社法初心者 | 2007年2月 4日 (日) 08時30分
A10
労務は、将来の給付なので、株式の発行時点において、未給付とみられるから、また、金銭的評価がしにくいので、資本金を確定できないからです。

Q11
100問2版P498What's Misssing1030についてお伺いいたします。
465条を「配当を受けた財産の帳簿価額ではなく、欠損額である」としてますが、446条6号イの配当財産の帳簿価額の場合もあるのではないでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2007年2月 4日 (日) 16時47分
A11
○×問題ですから、配当財産の帳簿価額になる場合「も」あるからと言って、帳簿価額であるという選択肢が正解にはなりません。

Q12
サミー先生、本日は株券提出公告(219条)について教えてください。
219条1項は、各号の行為を株券発行会社がする場合、公告かつ各別の通知をする日と、各号の行為の効力発生日までに一箇月の期間があることのみを要求しており、株券の実際の提出期限はこの一箇月の期間内であれば適法と読めますが、実際に株券を提出する日は一ヶ月の期間内のいずれの日でも会社が任意に定めても構わないのでしょうか?極端な話ですが、公告時に「明日までに株券を提出してください。」と定めても問題はないのでしょうか?
投稿 NK | 2007年2月 4日 (日) 18時48分
A12
株券の提出期限は、「効力を生ずる日まで」ですから、勝手に短くすることはできません。

Q13
先日,株式の引受は契約か?という質問をした者ですが,ご回答ありがとうございます。ところで,出資の不履行による失権は,契約の終了原因ではなく、債権の消滅原因とすると,出資の不履行後も契約関係は残るということでしょうか。観念的な質問で恐縮ですが,ご教授ください。
投稿 とむ | 2007年2月 5日 (月) 13時33分
A13
「契約」は要件であり、効果が重要です。
 契約上の付随的義務が残る場合はありうるでしょう。

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2007年2月 1日 (木)

【入門】募集株式の発行(1)

今日は、第21問「第三者に対する新株の発行」です。

問題文:「株式会社が株主以外の者に対して募集株式の発行を行う場合、会社法上どのような問題があるか。」

1 「問題」って何でしょう。
「会社法上どのような問題があるか」という抽象的な質問の仕方は、初心者が苦手にする問いかけの一つです。
「問題」という言葉自体が、微妙な響きがあって
 問「サミーさんにどのような問題があるか」
 答「女好きだという問題がある。」
 問「松真さんにどのような問題があるか」
 答「締め切り日を過ぎないと原稿を書き始めないという問題がある。」
 問「湯水さんにどのような問題があるか」
 答「夜、何をしているか分からないという問題がある」
という例で分かるように、一般に「問題」というと「悪いところ」「改善すべきところ」という意味で使われます。

 他方、法律の世界で「○○法上どのような問題があるか」と聞いてきたときには、若干、意味合いが違っていて、
 ① その行為を行うと、関係者の間で、どのような法律関係(権利・義務)が形成されるか。
 ② 関係者は、どのような場合に、どのような不利益を受けるおそれがあるか(=法律上の問題点が生ずるのか)。
ということを尋ねた上で
 ③ その不利益を受ける関係者を保護するために、どのような法的制度があるか。
  また、その不利益を回避するために、どのような解釈を採るべきか
というところまでを答えさせようとしていると考えるのが普通でしょう。

 したがって、第21問に対して解答するときは、「株式会社が株主以外の者に対して募集株式の発行を行う場合」について上記①から③までの事柄を淡々と書いていくことになります。

2 募集株式の発行
 次に「募集株式の発行」という意味についてお話しします。

 募集株式は、199条で定義されていて
「株式会社が、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときに、当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式」
のことを言います。
 この複雑な定義のために会社法は嫌われているのですが、同じ文章の構造で、「花嫁募集局付」を定義してみると
  「花嫁募集局付」とは、「民事局が、民事局付の花嫁を募集しようとしているときに、その募集に応じて、申込みをした花嫁に対して割り当てられる民事局付のことをいう」
というと、少しイメージがわきますでしょうか?
 
 例えば、民事局が湯水さんの花嫁を募集しているときの、湯水さんが「花嫁募集局付」ということになります。

 なぜ、持って回った言い方をするかというと
  湯水局付(株式)が花嫁(引受人)を募集しているのではなく、民事局(株式会社)が花嫁(引受人)を募集しているので、「花嫁を募集している民事局付」とは定義できないし
  民事局(株式会社)によって募集されているのは、湯水局付(株式)ではなく、花嫁(引受人)であるから、「募集されている民事局付」とも定義できない
という日本語の難しさが原因です。

 脱線したため、余計、分からなくなった、という声が聞こえそうになるので、ここら辺でやめますが、要するに、「募集株式」というのは、「株式の引受人を募集するときに、引受人に割り当てられる株式」のことです。

 したがって、「募集株式の発行」という問題文は
 ・設立時に株式が発行される場合
 ・新株予約権の行使によって株式が発行される場合
 ・合併等によって株式が発行される場合
については説明しなくてもよいということ、さらに
 ・募集株式の処分(=自己株式の処分)
についても説明しなくても良いということを言っていることになります。

 ちなみに、募集株式の「発行」と「処分」の募集手続は同じです(というよりも、一つの募集手続で、1万株を発行し、5000株を自己株式の処分するというような場合が多い)。
 また、株主にとっては、「発行」された株式も「処分」によって取得した株式も、中身は全く同じですから、引受人が
 「僕は、新品の株式が良いので、中古品(自己株式)は嫌です」
というワガママを言うことはできません。
 
 しかし、募集株式の「発行」と「処分」は、会社側にとっては
  発行=発行済株式総数・資本金が増加する=登記が必要=登録免許税が必要
  処分=発行済株式総数・資本金が増加しない=登記が不要=登録免許税がいらない
大きな違いがあります。
 登録免許税は、資本金の額が高くなると、高くなるので、登記の手間や税金のことを考えると、一般的には、自己株式の処分の方が会社にとっては得ですが、自己株式を保有していない場合や、何らかの理由で資本金を増加させたい場合には、募集株式の「発行」を行います。

3 「株主以外の者に対して」
 第21問は、「株主以外の者に対して」募集株式を発行する場合のことを尋ねています。
 逆に、「株主に対して」募集株式を発行する場合(いわゆる株主割当て)のことは尋ねていません。
 初心者は、この「株主以外の者に対して」という言葉の意味を勘違いしやすいので、その意味を確認しておきましょう。

 例えば、株式会社正直法務の株主が松真さん(500株)と湯水さん(500株)である場合に、600株の募集株式の発行を行うとしましょう。
  a.サミーさんに600株を割当てて、発行する=株主以外の者に対する発行
  b.松真さんに300株、湯水さん300株分の株式の割当てを受ける権利を与えた上で、両者の権利行使を受けて、600株を発行する=株主に対する発行
ということは誰でも分かりますが、

  c 株主の一人である松真さんに600株を割当てて発行するのは、「株主に対する発行」ではなく、「株主以外の者に対する発行」である

と理解するのが法律家の常識です。
 日常用語としては、「松真さんは、株主なんだから、株主に対する発行だろう」というのは、ごもっともな指摘ですが、伝統的に
 「株主が保有している株式の数に応じて、割当てがされない場合」
は、「株主に対する発行」ではないと整理されています。

 もっとも、このようにザクッと説明するときは、株主以外の者に対する発行かどうかは、「株主平等かどうか」で区別すると言えば足りるのですが、実際の会社法の条文は、もう少し微妙な違いが設けられています。

 例えば、「募集手続」という面から見ると
 会社が、株主に対して、
  株式の割当てを受ける権利を与える=202条・203条・204条4項の手続
  与えない=199条~201条・203条・204条1項~3項の手続
という違いをもたらします。
 具体的には
 「松真さんに300株、湯水さん300株分の株式の割当てを受ける権利を与えたが、湯水さんは、銀座でお金を使いすぎていたので、その権利を行使せず、結局、松真さんだけが300株を引き受けた」
という場合のように、募集手続は202条等の手続に従ったのに、結果的に、株主の一部にしか「発行」されなかったということもありうるわけです。

 これに対し、俗に「第三者に対する有利発行」と呼ばれる199条3項は、
   「募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には」
と規定していて、「第三者に割り当てた場合」に限定していません。
 言い換えれば、株主に割当てを受ける権利(202条)を与えずに、募集手続を行った場合には、結果として、株主に平等に割り当てたとしても、199条3項が適用される可能性がないとはいえないのです。
 もちろん、
  「募集事項は、募集ごとに、均等に定めなければならない。」(199条5項)
ので、株主に平等に割当てがされた場合には、通常、「特に有利な金額」(199条3項)には該当しないでしょう。
 しかし、取締役会設置会社において、株主に平等に割当てをしたが、199条5項に違反して、こっそり特定の株主に有利な条件を定めていたような場合に、株主が「199条3項に該当するから、株主総会の特別決議が必要だった(201条1項)」と主張することは許されるものと思います。

 さらに、株式の発行差し止め請求権(210条)や新株発行の無効の訴え(834条1項2号)等は、募集手続がどうか、割当てがどうか等で区別されていませんから、どんな場合でも、適用される余地があります。
 もちろん、これも、株主に平等に割当てがされれば、通常、「株主が不利益を受けるおそれがあるとき」(210条)に該当しないので、差し止めはされないと思いますが、具体的な事情によっては、差し止めの対象になる可能性もないわけではありません。

 このような細かい話を初心者を絶望させるつもりはないのですが、私の経験からすると、初心者の皆さんは
  第三者に対する新株発行かどうか
というザックリした理解をしただけで、条文をあまり見ずに、各種制度を分かったような気持ちになる傾向が強いため、せめて
  会社による募集事項の決定
   →引受けの申込み
   →会社による割当て(引受人の決定)
   →引受人による払込み
   →株式の発行
という基本的な手続きを抑えた上で
  募集事項そのものが不平等なのか。
  株主に株式の割当てを受ける権利を与えたのか、与えていないのか。
  株主に平等に割当てられたのか。
  結果的に株主に平等に発行されたのか。
というのはそれぞれ意味が違うんだということを漠然と意識しておいてもらいたいのです。
 そうした意識が、複雑な募集手続の条文を読むときの理解を助けることになると思います。

(質問コーナー)
Q1
会社法第483条第1項ただし書において「その他清算株式会社を代表する者」とありますが、この者は具体的にどのような者を指しているのでしょうか。
投稿 きゅーちゃん | 2007年1月30日 (火) 09時57分
A1
 代表清算人の職務代行者等です。

Q2
事業報告における「会計監査人に関する事項」の記載(会規126条)について、当該内容には「一時会計監査人」に関する内容も含むのでしょうか?
会社法346条5項では、「一時会計監査人」については会計監査人の規定を準用する旨定められており、このことからも、「会計監査人」と「一時会計監査人」は区分されていますが、会規126条にはそのような準用規定が存在しないため、記載対象となるのは、あくまで「会計監査人」に関する内容に限定されるのでは、と考えております。
となると、事業年度中に会計監査人が欠格事由に該当し退任した場合、会規126条により記載対象とされるのは「会計監査人」であって、「一時会計監査人」に関する内容は「原則として」記載不要と思いますが、この考え方で正しいでしょうか?
投稿 naga | 2007年1月30日 (火) 11時12分
A2
 会計規則126条の趣旨から考えれば、会計監査人の職務を行っている以上、一時会計監査人についての情報も提供すべきではないでしょうか。
 「一時会計監査人については書かない」という解釈を採ることを否定するわけではありませんが、常識的に不当な結論になる解釈は、裁判所が採用しないような気がします。

Q3
法442の計算書類の備置は、監査役の監査報告と監査役会監査報告の両方を対象としているとのことですが、この時の備置義務者について、同規定では、「株式会社は、次の各号に掲げる・・・備え置かなければならない。」とあり、この「株式会社」とは、具体的に誰を指しているのでしょうか?
仮に代表取締役(乃至は担当取締役)とすると、備置書類との関係で矛盾が生じる気がします。即ち、計算規則160①では監査役会は監査役会監査報告のみを特定取締役に提出するのであり、各監査役の監査報告は提出対象となっておりません。つまり、代表取締役は、法定備置書類である監査役の監査報告を受取っていないことになると思います。
また、単に誰ということではなく、会社として備置しなさいということであれば、それはそれで少々疑問ではあります。監査役会監査報告は取締役が備置し、各監査役の監査報告は、監査役会(もしくは各監査役?)が備置するというのも不思議な感じがします。
 また、法394①で監査役会設置会社は議事録を本店に備え置かなければならないとありますが、この備置義務者についても、ご教示頂けると助かります。
投稿 山田 みどり | 2007年1月30日 (火) 15時44分

A4
 備置義務は、直接には株式会社が負っていますが、過料の対象となるのは、備置をしなかった業務執行者(代表取締役等)です。
 ご指摘のように、監査役会設置会社において、監査役が監査役監査報告を特定取締役に提出する手続きは設けられていませんが、計算規則160条等は、監査手続における手順と期日を定めているだけであり、誰が備置義務を負うかという点とは無関係です。
 会社法は、何もかも、手取り足取り手順を書き下しているわけではないので、会社が、それぞれ、備置義務を負っている者が監査役監査報告を所持している者に監査報告の提出を求める方法を決めればよいのです。
 監査役会議事録についても同様です。

Q5
 取締役会規定ですが、定時取締役会と臨時取締役会を規定しています。
定時取締役会は毎月10日の午前10時と規定した場合、定時取締役会について招集の手続きは必要でしょうか?§368 2項で全員の同意がある場合招集手続きの省略は可能ですが、規定に盛り込むことが全員の同意と考えることは可能でしょうか?
A5
 一般には、事前に包括的に、招集手続の省略の合意をすることはできないと思います。
 もっとも、毎月10日の午前10時という定め方をした規定について、「各取締役が、自己の在職中の毎月10日の午前10時に開催される取締役会について招集手続を省略することができることを同意した」という事実認定ができるようならば、省略は可能かもしれません。

Q6
 退職慰労金規定ですが、使用人兼務役員の退職金を算定の基礎となる報酬に、使用人給与分を含めることは可能でしょうか?本来は役員報酬のみを総会で決議すればいいと思いますが、使用人分を算定の基礎に含め、その合計額の承認を得るということは可能でしょうか?
役員の報酬と使用人はやはり別立てがいいのでしょうか?
A6
 株主総会で役員分の最高限度額を定めることも可能ですから、使用人分を上乗せして合計額を承諾することもできるでしょう。ただ、その旨開示する方が望ましいでしょう。

Q7
 取締役から監査役になり、退職した役員は、その退職慰労金の決議は、取締役分は取締役会において監査役分は監査役の協議において決めると言うのはいかがでしょうか?
 一般的には取締役⇒監査役で退任の場合、慰労金規程にのっとって、監査役の協議でそのすべての合計額を決定する用に感じますがいかがでしょう?もしくは、取締役退任時に一度慰労金をもらい、監査役退任時に再度慰労金をもらうのはどうでしょうか(渡り鳥みたいですが・・(笑))
投稿 あっ!と法 無 | 2007年1月30日 (火) 16時31分
A7
 387条2項は、監査役の報酬等について規定していますから、総会で取締役としての退職金と監査役としての退職金が分けられれば、ご質問ようなことも可能かもしれません。
 取締役を止めたときに退職金、監査役を辞めたときに再度退職金というのは、会社法としては明確です。もっとも、濫用的なものだと、所得税の観点からは、微妙な問題はありますが。
 そうでない場合、一般の退職慰労金支給規定を見る限り、退職金が、そんな風に明確に分けられるものなのかどうか、怖いところですね。

Q8
一時役員(346)の名称についてです。
「一時会計監査人(346条4項)」の名称は「仮会計監査人」ですね?
登記される場合(911条3項20号)も「仮会計監査人」ですよね?
選任される場面の雰囲気は違いますが、100問 p.431で「仮代表取締役」とありましたので…
職務代行者と欠員による一時役員とを区別して呼ぶのであれば、
それも併せて教えて下さい。
投稿 法学ベイビー | 2007年1月30日 (火) 18時52分
A8
 正式名称は、「一時会計監査人の職務を行う者」であって、「一時会計監査人」も「仮会計監査人」も、会社法上の用語ではありません。逆に言えば、通称なので、どちらで読んでも構いません。
 職務代行者と一時役員は、全然別の制度なので、区別して呼ばなければいけませんが、一般に前者は職務代行者と呼んでいます。

Q9
会社法437条では計算書類等について「提供」、438条では「提出」または「提供」と、取り扱いが異なっていますが、438条の場合は招集手続きの要否により取り扱いが変わるからでしょうか。437条ですと招集通知の発送が前提ですが、438条はそうじゃないですよね?
投稿 空海 | 2007年1月30日 (火) 23時11分
A9
 437条の「提供」の意味と、438条の「提供」の意味は違います。
 前者は、招集通知の際に省令で定める方法で提供することをいい、後者は電磁的方法により提供することを意味しています。

Q10
 会社法では、株主に提供すべき(招集通知に添付すべき)は「謄本」である必要はなくなった(「内容」の「通知」で足りる)ものと理解しております。
 そうだとすると、会社法下の招集通知(の添付書類)においては、頁欄外に「謄本」と書く必要はなく、また「謄本」らしく、改行の位置などレイアウトも原本と同様にする必要もない、要するに、「内容」さえ「原本」と全く同一であれば、体裁などはどうでもよい、ということになりそうなのですが、そのような理解で宜しいのでしょうか。
投稿 ぽ | 2007年1月31日 (水) 00時30分
A10
 内容が同じならば結構です。
 なお、「謄本」というと「コピー機で採ったようなもの」=「レイアウトも同じ」というイメージがありますが、法的には、レイアウトが同じである必要はありません。

Q11
100問2版P488の非取締役会設置会社の157条の取得価格等の決定について確認させてください。

100問2版の記載では「授権に基づき取締役が自己株式を取得することを決定」と記載されてますが、授権をせずに295条に基づいて157条1項各号の事項を株主総会で決定することは可能ですよね?
投稿 南斗六星 | 2007年1月31日 (水) 15時14分
A11
 そうですね。295条1項によるという方法も可能でしょう。

Q12
 会社法初心者なのでいまいちピンとこないのですが基本的に、取締役会を設置しない会社においては、株式の消却などあることの決定機関について個別の規定が存在しなければ、取締役の決定・株主総会の決定のうち、いずれの方法で決議をしてもかまわないのでしょうか?
投稿 ユダ | 2007年1月31日 (水) 20時50分
A12
 質問がラフですから、答えもラフにいきますが、そのとおりです。

Q13
「ストック・オプション等に関する会計基準」と会社法の考え方についての質問です。

会計基準によれば、会社がストックオプションを付与すると、株式報酬費用を認識し新株予約権を計上する処理が行われます。その後ストックオプションが行使されると、付与時に計上した新株予約権と払い込まれた行使価額の合計を資本金に振り替えます。

以上の処理を考えると、結果的には、資本金の金額のなかに金銭の払い込み等の無い労務出資的な部分が入り込むような気がします。これは労務出資の禁止に反しないのでしょうか?
投稿 間黒男 | 2007年1月31日 (水) 22時38分
A13
 反しません。
 労務出資が禁止されているのは、将来に給付され、かつ、価額が不確定な「労務」自体を出資することを認めると、株式の発行時点で、資本金に組入れなければならない額を確定することができないからです。
 逆に、具体化した労働契約に基づく賃金支払請求権を現物出資することが禁止されているわけではないし、ストックオプションについても、株式の発行時に、資本金に組み入れるべき額が確定できる以上、労務出資の禁止に反するものではありません。

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