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2007年2月 1日 (木)

【入門】募集株式の発行(1)

今日は、第21問「第三者に対する新株の発行」です。

問題文:「株式会社が株主以外の者に対して募集株式の発行を行う場合、会社法上どのような問題があるか。」

1 「問題」って何でしょう。
「会社法上どのような問題があるか」という抽象的な質問の仕方は、初心者が苦手にする問いかけの一つです。
「問題」という言葉自体が、微妙な響きがあって
 問「サミーさんにどのような問題があるか」
 答「女好きだという問題がある。」
 問「松真さんにどのような問題があるか」
 答「締め切り日を過ぎないと原稿を書き始めないという問題がある。」
 問「湯水さんにどのような問題があるか」
 答「夜、何をしているか分からないという問題がある」
という例で分かるように、一般に「問題」というと「悪いところ」「改善すべきところ」という意味で使われます。

 他方、法律の世界で「○○法上どのような問題があるか」と聞いてきたときには、若干、意味合いが違っていて、
 ① その行為を行うと、関係者の間で、どのような法律関係(権利・義務)が形成されるか。
 ② 関係者は、どのような場合に、どのような不利益を受けるおそれがあるか(=法律上の問題点が生ずるのか)。
ということを尋ねた上で
 ③ その不利益を受ける関係者を保護するために、どのような法的制度があるか。
  また、その不利益を回避するために、どのような解釈を採るべきか
というところまでを答えさせようとしていると考えるのが普通でしょう。

 したがって、第21問に対して解答するときは、「株式会社が株主以外の者に対して募集株式の発行を行う場合」について上記①から③までの事柄を淡々と書いていくことになります。

2 募集株式の発行
 次に「募集株式の発行」という意味についてお話しします。

 募集株式は、199条で定義されていて
「株式会社が、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときに、当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式」
のことを言います。
 この複雑な定義のために会社法は嫌われているのですが、同じ文章の構造で、「花嫁募集局付」を定義してみると
  「花嫁募集局付」とは、「民事局が、民事局付の花嫁を募集しようとしているときに、その募集に応じて、申込みをした花嫁に対して割り当てられる民事局付のことをいう」
というと、少しイメージがわきますでしょうか?
 
 例えば、民事局が湯水さんの花嫁を募集しているときの、湯水さんが「花嫁募集局付」ということになります。

 なぜ、持って回った言い方をするかというと
  湯水局付(株式)が花嫁(引受人)を募集しているのではなく、民事局(株式会社)が花嫁(引受人)を募集しているので、「花嫁を募集している民事局付」とは定義できないし
  民事局(株式会社)によって募集されているのは、湯水局付(株式)ではなく、花嫁(引受人)であるから、「募集されている民事局付」とも定義できない
という日本語の難しさが原因です。

 脱線したため、余計、分からなくなった、という声が聞こえそうになるので、ここら辺でやめますが、要するに、「募集株式」というのは、「株式の引受人を募集するときに、引受人に割り当てられる株式」のことです。

 したがって、「募集株式の発行」という問題文は
 ・設立時に株式が発行される場合
 ・新株予約権の行使によって株式が発行される場合
 ・合併等によって株式が発行される場合
については説明しなくてもよいということ、さらに
 ・募集株式の処分(=自己株式の処分)
についても説明しなくても良いということを言っていることになります。

 ちなみに、募集株式の「発行」と「処分」の募集手続は同じです(というよりも、一つの募集手続で、1万株を発行し、5000株を自己株式の処分するというような場合が多い)。
 また、株主にとっては、「発行」された株式も「処分」によって取得した株式も、中身は全く同じですから、引受人が
 「僕は、新品の株式が良いので、中古品(自己株式)は嫌です」
というワガママを言うことはできません。
 
 しかし、募集株式の「発行」と「処分」は、会社側にとっては
  発行=発行済株式総数・資本金が増加する=登記が必要=登録免許税が必要
  処分=発行済株式総数・資本金が増加しない=登記が不要=登録免許税がいらない
大きな違いがあります。
 登録免許税は、資本金の額が高くなると、高くなるので、登記の手間や税金のことを考えると、一般的には、自己株式の処分の方が会社にとっては得ですが、自己株式を保有していない場合や、何らかの理由で資本金を増加させたい場合には、募集株式の「発行」を行います。

3 「株主以外の者に対して」
 第21問は、「株主以外の者に対して」募集株式を発行する場合のことを尋ねています。
 逆に、「株主に対して」募集株式を発行する場合(いわゆる株主割当て)のことは尋ねていません。
 初心者は、この「株主以外の者に対して」という言葉の意味を勘違いしやすいので、その意味を確認しておきましょう。

 例えば、株式会社正直法務の株主が松真さん(500株)と湯水さん(500株)である場合に、600株の募集株式の発行を行うとしましょう。
  a.サミーさんに600株を割当てて、発行する=株主以外の者に対する発行
  b.松真さんに300株、湯水さん300株分の株式の割当てを受ける権利を与えた上で、両者の権利行使を受けて、600株を発行する=株主に対する発行
ということは誰でも分かりますが、

  c 株主の一人である松真さんに600株を割当てて発行するのは、「株主に対する発行」ではなく、「株主以外の者に対する発行」である

と理解するのが法律家の常識です。
 日常用語としては、「松真さんは、株主なんだから、株主に対する発行だろう」というのは、ごもっともな指摘ですが、伝統的に
 「株主が保有している株式の数に応じて、割当てがされない場合」
は、「株主に対する発行」ではないと整理されています。

 もっとも、このようにザクッと説明するときは、株主以外の者に対する発行かどうかは、「株主平等かどうか」で区別すると言えば足りるのですが、実際の会社法の条文は、もう少し微妙な違いが設けられています。

 例えば、「募集手続」という面から見ると
 会社が、株主に対して、
  株式の割当てを受ける権利を与える=202条・203条・204条4項の手続
  与えない=199条~201条・203条・204条1項~3項の手続
という違いをもたらします。
 具体的には
 「松真さんに300株、湯水さん300株分の株式の割当てを受ける権利を与えたが、湯水さんは、銀座でお金を使いすぎていたので、その権利を行使せず、結局、松真さんだけが300株を引き受けた」
という場合のように、募集手続は202条等の手続に従ったのに、結果的に、株主の一部にしか「発行」されなかったということもありうるわけです。

 これに対し、俗に「第三者に対する有利発行」と呼ばれる199条3項は、
   「募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には」
と規定していて、「第三者に割り当てた場合」に限定していません。
 言い換えれば、株主に割当てを受ける権利(202条)を与えずに、募集手続を行った場合には、結果として、株主に平等に割り当てたとしても、199条3項が適用される可能性がないとはいえないのです。
 もちろん、
  「募集事項は、募集ごとに、均等に定めなければならない。」(199条5項)
ので、株主に平等に割当てがされた場合には、通常、「特に有利な金額」(199条3項)には該当しないでしょう。
 しかし、取締役会設置会社において、株主に平等に割当てをしたが、199条5項に違反して、こっそり特定の株主に有利な条件を定めていたような場合に、株主が「199条3項に該当するから、株主総会の特別決議が必要だった(201条1項)」と主張することは許されるものと思います。

 さらに、株式の発行差し止め請求権(210条)や新株発行の無効の訴え(834条1項2号)等は、募集手続がどうか、割当てがどうか等で区別されていませんから、どんな場合でも、適用される余地があります。
 もちろん、これも、株主に平等に割当てがされれば、通常、「株主が不利益を受けるおそれがあるとき」(210条)に該当しないので、差し止めはされないと思いますが、具体的な事情によっては、差し止めの対象になる可能性もないわけではありません。

 このような細かい話を初心者を絶望させるつもりはないのですが、私の経験からすると、初心者の皆さんは
  第三者に対する新株発行かどうか
というザックリした理解をしただけで、条文をあまり見ずに、各種制度を分かったような気持ちになる傾向が強いため、せめて
  会社による募集事項の決定
   →引受けの申込み
   →会社による割当て(引受人の決定)
   →引受人による払込み
   →株式の発行
という基本的な手続きを抑えた上で
  募集事項そのものが不平等なのか。
  株主に株式の割当てを受ける権利を与えたのか、与えていないのか。
  株主に平等に割当てられたのか。
  結果的に株主に平等に発行されたのか。
というのはそれぞれ意味が違うんだということを漠然と意識しておいてもらいたいのです。
 そうした意識が、複雑な募集手続の条文を読むときの理解を助けることになると思います。

(質問コーナー)
Q1
会社法第483条第1項ただし書において「その他清算株式会社を代表する者」とありますが、この者は具体的にどのような者を指しているのでしょうか。
投稿 きゅーちゃん | 2007年1月30日 (火) 09時57分
A1
 代表清算人の職務代行者等です。

Q2
事業報告における「会計監査人に関する事項」の記載(会規126条)について、当該内容には「一時会計監査人」に関する内容も含むのでしょうか?
会社法346条5項では、「一時会計監査人」については会計監査人の規定を準用する旨定められており、このことからも、「会計監査人」と「一時会計監査人」は区分されていますが、会規126条にはそのような準用規定が存在しないため、記載対象となるのは、あくまで「会計監査人」に関する内容に限定されるのでは、と考えております。
となると、事業年度中に会計監査人が欠格事由に該当し退任した場合、会規126条により記載対象とされるのは「会計監査人」であって、「一時会計監査人」に関する内容は「原則として」記載不要と思いますが、この考え方で正しいでしょうか?
投稿 naga | 2007年1月30日 (火) 11時12分
A2
 会計規則126条の趣旨から考えれば、会計監査人の職務を行っている以上、一時会計監査人についての情報も提供すべきではないでしょうか。
 「一時会計監査人については書かない」という解釈を採ることを否定するわけではありませんが、常識的に不当な結論になる解釈は、裁判所が採用しないような気がします。

Q3
法442の計算書類の備置は、監査役の監査報告と監査役会監査報告の両方を対象としているとのことですが、この時の備置義務者について、同規定では、「株式会社は、次の各号に掲げる・・・備え置かなければならない。」とあり、この「株式会社」とは、具体的に誰を指しているのでしょうか?
仮に代表取締役(乃至は担当取締役)とすると、備置書類との関係で矛盾が生じる気がします。即ち、計算規則160①では監査役会は監査役会監査報告のみを特定取締役に提出するのであり、各監査役の監査報告は提出対象となっておりません。つまり、代表取締役は、法定備置書類である監査役の監査報告を受取っていないことになると思います。
また、単に誰ということではなく、会社として備置しなさいということであれば、それはそれで少々疑問ではあります。監査役会監査報告は取締役が備置し、各監査役の監査報告は、監査役会(もしくは各監査役?)が備置するというのも不思議な感じがします。
 また、法394①で監査役会設置会社は議事録を本店に備え置かなければならないとありますが、この備置義務者についても、ご教示頂けると助かります。
投稿 山田 みどり | 2007年1月30日 (火) 15時44分

A4
 備置義務は、直接には株式会社が負っていますが、過料の対象となるのは、備置をしなかった業務執行者(代表取締役等)です。
 ご指摘のように、監査役会設置会社において、監査役が監査役監査報告を特定取締役に提出する手続きは設けられていませんが、計算規則160条等は、監査手続における手順と期日を定めているだけであり、誰が備置義務を負うかという点とは無関係です。
 会社法は、何もかも、手取り足取り手順を書き下しているわけではないので、会社が、それぞれ、備置義務を負っている者が監査役監査報告を所持している者に監査報告の提出を求める方法を決めればよいのです。
 監査役会議事録についても同様です。

Q5
 取締役会規定ですが、定時取締役会と臨時取締役会を規定しています。
定時取締役会は毎月10日の午前10時と規定した場合、定時取締役会について招集の手続きは必要でしょうか?§368 2項で全員の同意がある場合招集手続きの省略は可能ですが、規定に盛り込むことが全員の同意と考えることは可能でしょうか?
A5
 一般には、事前に包括的に、招集手続の省略の合意をすることはできないと思います。
 もっとも、毎月10日の午前10時という定め方をした規定について、「各取締役が、自己の在職中の毎月10日の午前10時に開催される取締役会について招集手続を省略することができることを同意した」という事実認定ができるようならば、省略は可能かもしれません。

Q6
 退職慰労金規定ですが、使用人兼務役員の退職金を算定の基礎となる報酬に、使用人給与分を含めることは可能でしょうか?本来は役員報酬のみを総会で決議すればいいと思いますが、使用人分を算定の基礎に含め、その合計額の承認を得るということは可能でしょうか?
役員の報酬と使用人はやはり別立てがいいのでしょうか?
A6
 株主総会で役員分の最高限度額を定めることも可能ですから、使用人分を上乗せして合計額を承諾することもできるでしょう。ただ、その旨開示する方が望ましいでしょう。

Q7
 取締役から監査役になり、退職した役員は、その退職慰労金の決議は、取締役分は取締役会において監査役分は監査役の協議において決めると言うのはいかがでしょうか?
 一般的には取締役⇒監査役で退任の場合、慰労金規程にのっとって、監査役の協議でそのすべての合計額を決定する用に感じますがいかがでしょう?もしくは、取締役退任時に一度慰労金をもらい、監査役退任時に再度慰労金をもらうのはどうでしょうか(渡り鳥みたいですが・・(笑))
投稿 あっ!と法 無 | 2007年1月30日 (火) 16時31分
A7
 387条2項は、監査役の報酬等について規定していますから、総会で取締役としての退職金と監査役としての退職金が分けられれば、ご質問ようなことも可能かもしれません。
 取締役を止めたときに退職金、監査役を辞めたときに再度退職金というのは、会社法としては明確です。もっとも、濫用的なものだと、所得税の観点からは、微妙な問題はありますが。
 そうでない場合、一般の退職慰労金支給規定を見る限り、退職金が、そんな風に明確に分けられるものなのかどうか、怖いところですね。

Q8
一時役員(346)の名称についてです。
「一時会計監査人(346条4項)」の名称は「仮会計監査人」ですね?
登記される場合(911条3項20号)も「仮会計監査人」ですよね?
選任される場面の雰囲気は違いますが、100問 p.431で「仮代表取締役」とありましたので…
職務代行者と欠員による一時役員とを区別して呼ぶのであれば、
それも併せて教えて下さい。
投稿 法学ベイビー | 2007年1月30日 (火) 18時52分
A8
 正式名称は、「一時会計監査人の職務を行う者」であって、「一時会計監査人」も「仮会計監査人」も、会社法上の用語ではありません。逆に言えば、通称なので、どちらで読んでも構いません。
 職務代行者と一時役員は、全然別の制度なので、区別して呼ばなければいけませんが、一般に前者は職務代行者と呼んでいます。

Q9
会社法437条では計算書類等について「提供」、438条では「提出」または「提供」と、取り扱いが異なっていますが、438条の場合は招集手続きの要否により取り扱いが変わるからでしょうか。437条ですと招集通知の発送が前提ですが、438条はそうじゃないですよね?
投稿 空海 | 2007年1月30日 (火) 23時11分
A9
 437条の「提供」の意味と、438条の「提供」の意味は違います。
 前者は、招集通知の際に省令で定める方法で提供することをいい、後者は電磁的方法により提供することを意味しています。

Q10
 会社法では、株主に提供すべき(招集通知に添付すべき)は「謄本」である必要はなくなった(「内容」の「通知」で足りる)ものと理解しております。
 そうだとすると、会社法下の招集通知(の添付書類)においては、頁欄外に「謄本」と書く必要はなく、また「謄本」らしく、改行の位置などレイアウトも原本と同様にする必要もない、要するに、「内容」さえ「原本」と全く同一であれば、体裁などはどうでもよい、ということになりそうなのですが、そのような理解で宜しいのでしょうか。
投稿 ぽ | 2007年1月31日 (水) 00時30分
A10
 内容が同じならば結構です。
 なお、「謄本」というと「コピー機で採ったようなもの」=「レイアウトも同じ」というイメージがありますが、法的には、レイアウトが同じである必要はありません。

Q11
100問2版P488の非取締役会設置会社の157条の取得価格等の決定について確認させてください。

100問2版の記載では「授権に基づき取締役が自己株式を取得することを決定」と記載されてますが、授権をせずに295条に基づいて157条1項各号の事項を株主総会で決定することは可能ですよね?
投稿 南斗六星 | 2007年1月31日 (水) 15時14分
A11
 そうですね。295条1項によるという方法も可能でしょう。

Q12
 会社法初心者なのでいまいちピンとこないのですが基本的に、取締役会を設置しない会社においては、株式の消却などあることの決定機関について個別の規定が存在しなければ、取締役の決定・株主総会の決定のうち、いずれの方法で決議をしてもかまわないのでしょうか?
投稿 ユダ | 2007年1月31日 (水) 20時50分
A12
 質問がラフですから、答えもラフにいきますが、そのとおりです。

Q13
「ストック・オプション等に関する会計基準」と会社法の考え方についての質問です。

会計基準によれば、会社がストックオプションを付与すると、株式報酬費用を認識し新株予約権を計上する処理が行われます。その後ストックオプションが行使されると、付与時に計上した新株予約権と払い込まれた行使価額の合計を資本金に振り替えます。

以上の処理を考えると、結果的には、資本金の金額のなかに金銭の払い込み等の無い労務出資的な部分が入り込むような気がします。これは労務出資の禁止に反しないのでしょうか?
投稿 間黒男 | 2007年1月31日 (水) 22時38分
A13
 反しません。
 労務出資が禁止されているのは、将来に給付され、かつ、価額が不確定な「労務」自体を出資することを認めると、株式の発行時点で、資本金に組入れなければならない額を確定することができないからです。
 逆に、具体化した労働契約に基づく賃金支払請求権を現物出資することが禁止されているわけではないし、ストックオプションについても、株式の発行時に、資本金に組み入れるべき額が確定できる以上、労務出資の禁止に反するものではありません。

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コメント

社外役員(候補者)に係る事業報告と総会参考書類の記載事項に関する質問です。

似たような規定を並べて見てみると、何とも趣旨を理解し難い微妙な差異があります。

例えば、
①親族関係の開示:事業報告では「その事実」とあり、「重要でないものを除く」とある一方、参考書類では、「その旨」とあり、「重要性」による限定はありません。全株懇は、前者は具体的事実を書く必要がある一方、「重要性」基準で絞り込むことが可能、後者は抽象的・包括的な記載で足りる一方、「重要性」基準による絞込みは不可、と解説しています。
②兼務状況の開示:事業報告では「代表者その他これに類する者」とあり、参考書類では「代表者」とだけあります。前者の方が範囲が広そうです。

このような微妙な差異を設けた趣旨・狙いはなんでしょうか。そして、そういった差異にきめ細かく対応した厳密な書き分けが必要なのでしょうか。所詮最後は、株主の判断に委ねる、ということでしょうか。

瑣末ですが、これも結構、実務を悩ますネタなんです!!

投稿: ぽっぽー | 2007年2月 2日 (金) 00時53分

はじめまして、いつもブログ拝見させていただいてます。
会社法100問を使いながら勉強しているのですが、わからないところがあるんで教えてください。

問33の失念株主の問題ですが、

甲社株主AがBに株式を譲渡したがBが名義書換を行わず、Aに甲社から株式に割り当てを受ける権利(新株引受権)が渡された場合の話です。

判例からいくと、Bは何もAに追求することはできません。しかし、不当利得を論拠としてこれに反論する場合、なぜ「不当利得は売買契約の当事者でない場合の規定から適用しない」と判断できるのですか?(通説はこっちをとっていると聞きますが)

また、「AはBに新株引受権分のプレミアムを付加した価格で株式を譲渡した」と捉えれば、やはりAは不当利得を得たと考えられるため、BはAにプレミアム(新株引受権相当分の金額)を請求できるのではないでしょうか?(株式そのものは請求できないとしても)

公認会計士試験受験者のため、民法をして勉強していないのでここがよくわかりません。

よろしくお願いします。

投稿: あっきん | 2007年2月 2日 (金) 01時24分

サミー様
お忙しいところ質問にお答え頂きありがとうございました。
些細なことについてまた質問をさせて頂くと思いますが
何卒よろしくお願いします。

投稿: あっ!と法 無 | 2007年2月 2日 (金) 08時35分

はじめまして。ブログ参考にさせていただいています。
既出かもしれませんが、319条の株主総会決議の省略について質問させてください。

書面決議の場合、株主総会参考書類の交付は不要であると思うのですが、そうすると、100%子会社の社外取締役を書面決議で選任する場合に、会社の提案の内容や同意書、議事録に、施行規則74条4項の「社外候補者である旨」等の記載はなくてもよいということになるのでしょうか。
つまり、どこにも社外取締役である旨の明示がなくても、書面決議の場合には取締役として選任の決議をしてしまうだけで「社外取締役」としてしまうことができるのでしょうか。
それとも、株主総会参考書類の交付が不要だったとしても、社外取締役である旨は会社の提案の内容として記載しておかなければならないのでしょうか。

株主総会参考書類には諸々の記載が義務付けられていますが、書面決議の場合にどこまで書かなければいけないのか、または株主総会参考書類に記載が義務付けられているような内容でもそもそも交付が不要だから全く書かなくてよいのか、書いた方がベターだとは思うのですが、法的にどうなのかご教示いただければと思います。
よろしくお願い致します。

投稿: カフェイン中毒 | 2007年2月 2日 (金) 10時22分

サミー先生
会社法785条3項の通知について質問させてください。
「効力発生日の20日前までに」通知しなければならないとありますが、これは、通知する日と効力発生日の間に20日間の期間がなくても問題ないと理解してよろしいでしょうか。「効力発生日の20日前までに」とあるので、たとえば、2月28日を効力発生日だとすると、2月8日に通知してよいでしょうか。

投稿: すずき | 2007年2月 2日 (金) 10時41分

サミー先生、こんにちは。ひとつ教えてください。
株式会社同士の合併の際、合併の効力発生日をもって消滅会社は解散するため、消滅会社の監査役は、存続会社の監査役として新たに選任されない限り、合併の効力発生日をもってその任を終えるものと理解しています。
さて、ここからが質問ですが、例えば、決算期が3月の消滅会社が4月1日に合併する場合、その前日(3月末日)までの会計年度の決算については、消滅会社の監査役による監査と監査報告は不要なのでしょうか? あるいは、存続会社の監査役が代わりに消滅会社分の決算の監査も行うのでしょうか? また、仮に監査報告を行う場合は、存続会社の株主総会で行うのでしょうか?
ご多忙のところ恐縮ですが、よろしくご教示願います。

(昨日、上記と同じ質問を投稿したのですが、間違って、最新ではない記事のコメント欄に書いてしまったようです。改めて、よろしくお願いします。)

投稿: やむ | 2007年2月 2日 (金) 11時53分

サミー先生、こんにちは。
Q2のご回答、ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。

投稿: naga | 2007年2月 2日 (金) 12時17分

サミー先生

【入門】募集株式の発行(1)は大変勉強になります。ところで,会社法の基本書にはよく「割当自由の原則」があるとされていますが,根拠条文が分かりません。204条1項がその旨を規定しているとは思えるのですが,正面から定めた規定とは読めないのです。一般に,「○○の原則」とされるような会社法の原則は,127条の株式譲渡自由の原則のように明文規定があるものなのでしょうか。明文規定を設ける場合とそうでない場合とでは,立法技術上の配慮があるのでしょうか。

投稿: とみん | 2007年2月 2日 (金) 16時56分

本日の記事の件ですが、「募集手続は202条等の手続に従ったのに、結果的に、株主の一部にしか「発行」されなかった」場合には、株主以外の者に対する発行という整理になるのでしょうか。

投稿: DAN | 2007年2月 2日 (金) 18時30分

サミー先生、こんにちは!

忙しいところ、二度に渡って質問に答えてくださり、
ありがとうございました!
用語について、特に意識して、使っていきたいと思います。
便宜上、登記については、「仮会計監査人」は登記されるようですね。
これからは記事のほかに、
100問や他の方の質問とその回答を検討していきたいと思います。

投稿: 法学ベイビー | 2007年2月 3日 (土) 00時49分

Q11のご解答有難うございました。

投稿: 南斗六星 | 2007年2月 3日 (土) 10時52分

事例は全く違いますが、100問2版P239を読んで疑問を感じたので質問します。

株券発行会社が、自己株式の消却について取締役会で可決した後、取締役が当該株券をシュレッタにかけるのを忘れて、会議室の机の上に放置したままにしていたところ、泥棒に入られ、当該株券が盗まれ、それを何も知らない第三者が買受けた場合、第三者の運命は、どうなるのでしょうか?

投稿: 南斗六星 | 2007年2月 3日 (土) 10時55分

前の方の書込みに関して・・・

民法では「仮理事」という言葉が使われ、証券取引法では(金融商品取引法になっても)「仮取締役」などといった言葉が使われています。他方、新しい「一般社団法人・・・法」では、旧商法・会社法と同様、「一時○○の職務を行うべき者」といった言葉が使われています。また、商業登記の実務では「仮○○」といった言葉が使われているようです。

とまぁ、とても付き合いきれないなぁ、所詮どうでもいいということでしょうか。

「一時会計監査人の職務を行うべき者」について言えば、数年前の瑞穂監査法人事件の頃は、「仮会計監査人」という言葉が主流であったのが、昨あ年の中央青山監査法人事件では、一気に「一時会計監査人」が主流になりました(学者の先生方の書かれるものも含めて)。誰かがはやらせたとしか思えない状況です。とはいえ、”通称”である以上、そのときどきのはやりに敢えて逆らう理由はない、というところが最終的な落としどころでしょうね。

ちなみに、私は、中央青山事件の初期に、「仮会計監査人」という言葉を使ったら、ある高名な弁護士から「そういう言葉があるんですか? 『一時会計監査人
』でしょ!」とご指導を頂いてしまいました。

蛇足ながら、サミーさんのご回答で「正式名称は『一時会計監査人の職務を行う者』」とありますが、正確には「一時会計監査人の職務を行うべき者」かと思います。ご確認を頂きたく存じます。


投稿: ぷろめてうす | 2007年2月 3日 (土) 10時59分

続きですが。

このような用語上の混乱は、法文の定め方に問題があります。「一時○○」という「通称」が一気にはやるのも、法令上そういう言葉が現に存在するからです(一連の続き文字として、そういう文字列が存在する、というのが正確な言い方でしょうか)。私の周囲にも、「一時○○」というのは正確な法令上の用語であると信じて疑わない人が結構います。法令上「一時」という言葉がどこに掛かるのか、なんて細かい話は、法文を精読する人にしか通用しません(法律専門家が、常に、どんな法文でも精読しているとは限りません)。

法文としては、せめて「○○の職務を一時行うべき者」というように、「一時」の位置を変えて頂くと多少はマシなんでしょうが。「○○の職務を一時的に行うべき者」なら更にベターですが、こういう文脈で「●●的」というように「的」を使用するのは、法務省・法制局の用語集(用語作法)には存在しないのかもしれませんね。

投稿: ぷろめてうす(続) | 2007年2月 3日 (土) 11時28分

サミー先生。私はロー生ですが,教えてください。

米国の州会社法では,労務出資は禁止されていないと聞きます。また,民法上の組合も労務出資はOKです(民法667条2項)。一方,なぜ,日本の会社法は,労務出資は駄目なのでしょうか。基本書を読んでも,当然のこととしてあまり丁寧な説明がされていないので,よく分からなくて困っています。初心者の質問で恐縮ですが,教えていただけたらと思います。

投稿: 会社法初心者 | 2007年2月 4日 (日) 08時30分

100問2版P498What's Misssing1030についてお伺いいたします。

465条を「配当を受けた財産の帳簿価額ではなく、欠損額である」としてますが、446条6号イの配当財産の帳簿価額の場合もあるのではないでしょうか?

投稿: 南斗六星 | 2007年2月 4日 (日) 16時47分

サミー先生、本日は株券提出公告(219条)について教えてください。
219条1項は、各号の行為を株券発行会社がする場合、公告かつ各別の通知をする日と、各号の行為の効力発生日までに一箇月の期間があることのみを要求しており、株券の実際の提出期限はこの一箇月の期間内であれば適法と読めますが、実際に株券を提出する日は一ヶ月の期間内のいずれの日でも会社が任意に定めても構わないのでしょうか?極端な話ですが、公告時に「明日までに株券を提出してください。」と定めても問題はないのでしょうか?
以上の点宜しくお願いいたします。(条文等見落としていたら申し訳ありません)
追伸 先日取締役が1人の会社で当該取締役が死亡した場合の従業員の代理権の帰趨について質問させていただきましたが、商行為の委任による代理権の消滅事由につき商法上の明文(商法506条)がありましたね。失念していました。

投稿: NK | 2007年2月 4日 (日) 18時48分

サミー先生

先日,株式の引受は契約か?という質問をした者ですが,ご回答ありがとうございます。ところで,出資の不履行による失権は,契約の終了原因ではなく、債権の消滅原因とすると,出資の不履行後も契約関係は残るということでしょうか。観念的な質問で恐縮ですが,ご教授ください。

投稿: とむ | 2007年2月 5日 (月) 13時33分

サミー先生へ。
今度質問させていただく時にはラフではなく要点だけを絞って質問します。
でもほんとありがとうございました。

投稿: ユダ | 2007年2月 5日 (月) 19時32分

《非取締役会設置会社》
取締役が一名しかいない場合、結局自分一人で決めるということなので
ある取締役の一致というのは、どうなるのでしょうか。
「書面」で一致しましたと、作成する必要がないだけで、決議自体は必要
なのか?それとも、一致するに決まってるから、そういった決議自体不要で
議事録等も存在しないのか?
どういった解釈なんでしょうか。商業登記時の、添付書面について、悩んで
いますので、返答して頂ければ幸いです。

投稿: ころまるタクシー | 2007年2月13日 (火) 15時38分

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