附属明細書の記載事項
最近、公私ともに忙しくて、ブログを書く時間が逼迫しております。
そうした事情もあり、1/25のQ&A12で、「取締役会に参加している取締役が、特別利害関係取締役に説明を求めることはできない」と間違って回答していまいました。
取締役会に参加している取締役が、特別利害関係取締役に説明を求めることは
「できます」。
これは100問にもそう書いていたと思います。
グッジョブさんのコメントを見て「そんなことは書いてないだろう」と思ったら、実際に、そう回答していて、びっくりしてしまいました。
頭と指先の間のコラボレーションが出来ていないのは、かなり危機的です・・・。
それから、これは、間違ったわけではなく、本日、いろいろ仲間内で調整した結果、以前、回答した答えと正反対の結論にまとまってしまったことをお知らせいたします。
事業報告の附属明細書の記載事項(施行規則128条)に
「第三者との間の取引であって、当該株式会社と会社役員又は支配株主(当該株式会社の親会社又は当該株式会社の総株主の議決権(会社役員(執行役を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案の全部につき株主総会において議決権を行使することができない株式に係る議決権を除く。)の過半数を有する株主(当該株式会社の親会社を除く。)をいう。)との利益が相反するものの明細」
という事項があるのですが、この「第三者との取引」に
会社と取締役との直接取引が含まれるか。
という論点があります。
これについて、以前、私は
「第三者」は株式会社以外の者だから、取締役も除外されていないと考えるのが普通だろう。だから、直接取引も含まれると解釈した方がいい。
と答えました。
しかし、本日、この点について、調整した結果
旧商法施行規則との対比からすれば、「第三者」は、株式会社・会社役員・支配株主以外の者と解釈するべきである。したがって、会社役員や支配株主との直接取引は、附属明細書に記載する必要はない。
ということになりました。
実は、この点は、関連当事者との取引に関する注記との役割分担をどう考えるかという点に関連しています。会計基準の考え方が計算規則の作成時に予測していたものとやや変化したこともあり、施行規則・計算規則の解釈において、その変化にどう対応すべきかという点で、いろいろと揺れていたのです。
しかし、とある事情により、担当者間で意見を統一する必要があり、上記のとおりの解釈を採ろうということにまとまりました。解釈はいろいろですし、別に仲間内の話でまとまったからと言って、皆さんが気にする必要はないのですが、念のため、訂正しておきます。
(質問コーナー)
Q1
千問のQ694に「剰余金の配当の原資」のご説明がありまして、その他資本剰余金とその他利益剰余金のどちらを減少させるかは、株式会社が適宜定めるとされております。
それで、質問なのですが、「その他利益剰余金」がマイナスの場合でも、「その他利益剰余金」をさらに減少させて、剰余金の配当の原資とすることができるでしょうか?というものです。もちろん分配可能額の範囲内で配当する場合です。また、逆のケース(「その他資本剰余金」がマイナスの場合に、「その他資本剰余金」をさらに減少させて、剰余金の配当の原資とすること)はいかがでしょうか。
投稿 こころん | 2007年1月25日 (木) 23時39分
A1
剰余金の配当で、そういうことは、できないと思います。
Q2
前回のQ13、質問が悪く、お許し下さい。
取締役会を置かない会社(設立後は株主総会で代表取締役を選定する会社)では、成立後は、株式数に応じて取締役も代表取締役も定めるわけですし、このような会社は、葉玉先生が10月の商事法務で執筆されたように、代表権の付与という構成を取らず、取締役と代表取締役の地位が一体であるとみているわけですが、なぜ、設立段階では、設立時取締役は発起人の議決権基準になり、設立時代表取締役は発起人の頭数基準になるのか(成立後と違う整理をしたのか)が、どうしても分からないのです。
担当者の皆さんで御検討になった末での結論なら、なぜ成立後と異なる結論にされたのかが知りたいです。もちろん、立法に100%はないと思いますので、未解決の問題であれば、そうと分かることが重要だと思います。
投稿 すみません | 2007年1月26日 (金) 00時15分
A2
まず、誤解を解くところから始めると、「会社法では、分化・未分化という考え方は採らない=取締役会設置会社も、非取締役会設置会社も、取締役と代表取締役との地位の関係は同じである」という点を理解していただきたいと思います。
次に、非取締役会設置会社は、成立後は、定款、株主総会又は定款の定めによる取締役の互選で代表取締役を定めることができるのに、なぜ成立前だと、発起人の頭数基準なのかということですが、旧商法時代に明文のなかった世界を、明文で、できる限り明らかにしていく過程で、設立時代表取締役の選定機関を非取締役会設置会社についてだけ、議決権基準にするほどの材料がなかったということだと思います。発起設立のときに議決権基準にするなら、募集設立のときも同じようにしなければならないですし。
Q3
定款変更に伴う任期満了(332)の場合、権利義務の承継(346)は生じるのですか?
欠員ではなく、全員いないのだから、全員選び直すというのはわかりますが、
定款変更決議と選任決議までの間に日数がある場合は、権利義務が生じていると解して良いですか?
投稿 法学ベイビー | 2007年1月26日 (金) 00時54分
A3
任期満了の場合には、満了の事由を問わず、346条は適用されます。
Q4
会社法442条1項2号で、臨時計算書類の備置き期間が「臨時計算書類を作成した日から5年間 」と定められておりますが、この「作成した日」とは、株主総会(あるいは取締役会)の承認を受けた日ではなく、実際に作成が終わった日という意味である、という理解でよろしいでしょうか?
投稿 こころん | 2007年1月26日 (金) 00時56分
A4
文字通り、作成した日です。
Q5
「社外役員」の要件の判定について、「千門の道標」Q397では、「当該取締役がB社の業務執行取締役であった時点においてB社がA社の子会社でなかったならば、現時点で子会社であるとしても、社外性は認められる」と説明されています。
これを株式移転の場合に当てはめて考えると、設立される完全親会社の社外取締役を選任する場合、「子会社となる会社」の業務執行取締役であったものが完全親会社の成立と同時に退任すれば、完全親会社における社外役員としての要件を満たすことになると思われますが、この理解で正しいでしょうか?
投稿 | 2007年1月26日 (金) 08時59分
A5
違う問題を同じ基準で解決しようとしている感じではありますね。
また、同時だったら、その時点では、子会社の業務執行取締役ということになるから、社外じゃないですよね。
まあ、株式移転前に辞めれば、社外性を認めてもよいように思いますが。
Q6
398条2項は、「定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない」とします。
ここに出てくる2つの「定時株主総会」は、同一の総会を指しているのでしょうか。そうだとすれば、会計監査人は、総会には出席義務がないものの、呼び出されたらすぐに出席可能であるという状態で総会会場の近くで待機しておく必要があるということでしょうか。
A6
次の定時株主総会は、一年後になってしまいますから、同一の定時株主総会と考えないとおかしいと思います。
総会会場の近くで待機しておくか、総会期日を続行するかですかね。
Q7
65条1項は、「設立時株主」を「50条1項又は102条2項の規定により株式会社の株主となる者」と定義しています。
「設立時株主」が「株主」になる瞬間は、両条を読めば分かります。では、発起人や一般人が「設立時株主」になる瞬間というのは、いつなのでしょうか。ともに出資の履行時でしょうか。
投稿 探偵 | 2007年1月26日 (金) 09時00分
A7
各種の設立手続を行うべき時期は、明文で明らかなので、設立時株主となる時期をあえて決める必要はないように思いますが・・・。
何条との関係で問題となるのでしょうか?
Q8
ここ最近盛り上がっていた、決算スケジュールにおける監査報告の提出についてのレスを見ていて、一つ気付いた点があるので質問させてください。
計算規則の規定では、監査役が監査報告を提出すべき期間として、先ずは最低でも4週間の期間を与えるものと読めます。しかし、4週間を下回る期間を、予め取締役と監査役の法的合意により決めることはできないが、事実行為として監査役が4週間より前に提出することは構わないですよね?
だとすれば、取締役が監査役に対して次のような催促をすることは有効なのでしょうか。
「○月○日までに監査報告をいただければ、有難いんですが…。」
「○月○日に総会を開催したいんで、早めに監査報告をいただけないでしょうか」
また、複数の取締役がいる会社で、監査報告を受けるべき特定取締役が決まっていない場合には、いずれか1人の取締役に対して通知すれば足りるのでしょうか?
投稿 ここあ | 2007年1月26日 (金) 11時15分
A8
監査役に、短くしてほしいと頼むのは自由です。
監査報告を受けるべき特定取締役が決まっていない場合、事業報告及びその附属明細書の作成に関する職務を行った取締役が特定取締役になります。その特定取締役が複数いるならば、そのうちの1人に通知すれば足ります。
Q9
普通株式のみを発行している会社が、発行済の普通株式の一部(例えば、10%について、無議決権株式とする)を種類株式に変更することは、会社法上可能となるのでしょうか。
投稿 ネロ | 2007年1月26日 (金) 14時58分
A9
解釈上、可能であると考えています。
Q10
サミー様、清算株式会社の代表者について教えてください。
会社法第483条第1項ただし書において、「代表清算人その他清算株式会社を代表する者」とありますが、前者の「代表清算人」と後者の「その他清算株式会社を代表する者」とで何らかの違いがあるのでしょうか。同条第3項では、代表清算人の選定方法について、「定款の定めに基づく清算人の互選」とありますが、定款においてこのような規定のない清算株式会社が清算人の互選により代表清算人を定めた場合であっても、かかる選定は法的効力を有さないのでしょうか。それとも、同条第1項の「その他清算株式会社を代表する者」を選定したとして、有効に効力を生じるのでしょうか。また、かかる選定が仮に有効である場合、代表清算人として登記することに問題はありませんでしょうか。
宜しくお願いいたします。
投稿 きゅーちゃん | 2007年1月26日 (金) 16時50分
A10
定款の定めがなければ、互選はできません。ですから、登記もできません。
(すいませんが、最初の「違いがあるのでしょうか」という質問の意味が分かりません)。
Q11
先生に、株主資本等変動計算書についてお伺いさせてください。
財務諸表等規則99条において、
「株主資本等変動計算書は、様式第四号により記載するものとする。」
とあり、様式は各項目が横並びになるもののみ認められていると思うのですが、
これは招集通知と併せて株主に提供するものについても適用されるのでしょうか?
それとも、各項目を縦に並べる様式も認められるのでしょうか?
招集通知状のサイズが縦長なため、検討しております。
投稿 マルコ | 2007年1月26日 (金) 17時39分
A11
会社法・計算規則には、特に様式は定められていないので、どんな様式でもいいです。
Q12
サミー先生こんにちは。会社法の本質とは関係ないのですが、教えてください。
会社法の条文には様々なところに「使用人」ということばが出てきますが、「使用人」には昨今よく利用する「派遣社員」は含むのでしょうか?私は、一般には使用人は雇用関係があるものであり(例:民法308条。また法律用語辞典なども雇用関係がある者とされているようです)、「派遣社員」は使用人には含まれないが、896条・975条にいう「従業者」には含まれる、と解しますがいかがでしょうか?
投稿 悩めるパパ | 2007年1月27日 (土) 17時02分
A12
「派遣社員」というのは法律用語ではないので、なんとも答えようがありません。
おっしゃるように雇用関係がなければ使用人ではないという解釈もありうると思いますが、派遣社員に独自的な判断権がなく(委任ではない)、業務執行者の指揮系統に入っているような場合には、使用人になる場合もありうるのではないでしょうか。
Q13
株主総会で社外取締役として選任された者を、その後の取締役会で役付取締役(会長)に選定しても「社外性」は保たれるのでしょうか?
会長は取締役「会の長」として職務の執行だけを行い、業務の執行はしないと整理すれば社外性は保たれると思うのですがいかがでしょうか?
A13
役付かどうかは、関係ありません。業務執行をしているかどうかです。
会長は、他社・同業者との会合等に顔を出したりしているのが普通ではないでしょうか。通常、社外というのは、苦しいと思いますが。
Q14
「常勤の社外取締役」というのはあり得ますでしょうか?
投稿 一目 | 2007年1月27日 (土) 20時24分
A14
理論的にはありうるでしょうが、常勤で、何をするんでしょう?
Q15
会社の事業目的は定款で定める事項なので、その内容を変えるとなると株主総会で定款変更の決議が必要となるところです。
急に新規事業を立ち上げることになった場合、その新規事業が定款に事業目的として記載されていない場合は臨時総会を招集して定款変更するしかないのでしょうか?次の定時総会で「後付」で定款変更するのは問題がありますでしょうか?
投稿 東人 | 2007年1月27日 (土) 20時51分
A15
その行為を行う時点で、目的の範囲内でなければいけませんから、後付は無理です。
もっとも、判例を前提とすれば、あまり神経質にならなくてもいいかもしれませんが。
Q16
株主、役員すべて東京在住のもので株式会社を設立するよていですが、その会社の本店を青森に置くことになっております。ここで質問なのですが、処理をスムーズに行うため、東京で定款作成から役員選任等すべてのことを終わらせてから、青森に出向き現地の公証人に定款認証をしてもらい、その足で法務局にて登記をしようかとおもっていますが、公証人の認証が手続きの最後になるのは何か問題になるのでしょうか?条文上、なんの問題も無いように思えますが、ご指導おねがいいたします。
投稿 法務1年目 | 2007年1月28日 (日) 22時38分
A16
認証を前提とする設立手続きもありますので、「なんの問題も無い」というのは言い過ぎだと思いますが、発起設立で変態設立事項もないような場合等には、そういうことも可能だと思います。
Q17
このようなブログの存在を知って感動しています。
受験生だけでなく、実務家の方も会社法を学び続け、立法担当者を交えて思考を高めあう。素晴しいブログだと思いました。
僕は受験生なんで主として入門編を読ませてもらっています、御多忙なのは承知ですが、出来れば100問を週に1問こなす位のペースでやって頂けないでしょうか?
投稿 ロースクール2年生 | 2007年1月29日 (月) 00時21分
A17
100問を週に1問こなすためには、最低100週必要だということですね・・。
気が遠くなりそうですが、まずは三つ星30問からがんばります。
Q18
日割配当と四半期配当に関して、お教えください。
会社法では日割配当が禁止されましたが、旧商法下の新株予約権は、日割配当を行わない場合は発行決議において配当起算日を定める必要がありました(旧商法第280条の20第2項第11号)。
当社は、旧商法下の新株予約権について、日割配当を回避するため、「新株予約権の行使により発行された株式に対する最初の利益配当金または中間配当金は、行使が4/1~9/30までになされたときは4/1に、10/1~翌年3/31までになされたときは10/1に、それぞれ新株が発行されたものとみなして支払う」と定めておりました。
当社は今般、四半期配当の実施を考えているのですが、この規定との関係が気になっております。この規定が適用されると、たとえば7/1に行使があった場合、6/30を基準日とする第1四半期の配当についても支払うことになります。
この規定は日割配当の回避が目的であり、日割配当が禁止された今、この規定自体を不適用とすることは可能でしょうか。基準日株主でない者に配当を支払うことはできないのではないかと考えます。
それとも、この規定に従い、配当を支払う必要がありますでしょうか。
投稿 しん | 2007年1月29日 (月) 13時08分
A18
会社で決めた条項の解釈なので、会社と新株予約権者との間で、どういう趣旨だったかを確認していただく以外、なんともいいようがありません。
Q19
相殺禁止(208条3項)についての質問です。同項は,「出資の履行をする『債務』と株式会社に対する債権とを相殺することができない」と規定しています。この『債務』という言葉が引っかかります。
債務というからには,債権の発生原因である契約,事務管理,不当利得,不法行為のいずれかがなければならないと思いますが,申込み+割当てが「契約」という理解なのでしょうか。これを前提とすると,この契約により,「出資の履行をする債務」(208条3項)と「出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利」(4項・5項)が発生するという理解でよろしいでしょうか。また,割り当てる株式数が申込株式数よりも少ない場合には,民法の議論では,割当てが新たな「申込み」となり,「承諾」がない感じです。さらに,出資の不履行(208条5項)が契約の終了原因となるという理解でよろしいのでしょうか。
投稿 とむ | 2007年1月29日 (月) 15時41分
A19
株式の引受は、申込みと割当てによる契約によって行われます。
出資の不履行による失権は、契約の終了原因ではなく、債権の消滅原因でしょうね。
Q20
監査役制度に関する質問です。
書面による監査役会決議が許容されないことと、監査報告は現に監査役会(会議)を開催して作成することを必ずしも要しないことととの整合性がどうしても理解できません。
(監査役会の)監査報告の作成は監査役会の職務とされているのは法上明らかです。他方、取締役会とは異なり、監査役会の場合は書面による(持ち回り)決議が不可なのも法上明らかです。とすれば、監査役会の監査報告は現に監査役会(会議・・・TV会議やTEL会議を含む)を開催して作成しなければならない筈です。(現に旧法下ではそのように理解されていた筈です。)
この謎を解く鍵は、監査役会監査報告は、監査委員会監査報告と異なり、「決議」ではなく、「審議」により作成するということにあるのでしょうか?
期末に近づき、まもなく監査報告を作成する時期になります。是非ともご教授願えればと思います。
投稿 ぽっぽー | 2007年1月29日 (月) 23時21分
A20
監査役会で監査報告の内容を決議する必要がありますから、現に監査役会を開催してください。
ただ、その時点で、監査報告という書面が完成していなくても、後で書面を持ち回って作成してもいいでしょうという話ですね。
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