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2007年1月30日 (火)

附属明細書の記載事項

最近、公私ともに忙しくて、ブログを書く時間が逼迫しております。

そうした事情もあり、1/25のQ&A12で、「取締役会に参加している取締役が、特別利害関係取締役に説明を求めることはできない」と間違って回答していまいました。

取締役会に参加している取締役が、特別利害関係取締役に説明を求めることは
  「できます」。
これは100問にもそう書いていたと思います。
グッジョブさんのコメントを見て「そんなことは書いてないだろう」と思ったら、実際に、そう回答していて、びっくりしてしまいました。
 頭と指先の間のコラボレーションが出来ていないのは、かなり危機的です・・・。

それから、これは、間違ったわけではなく、本日、いろいろ仲間内で調整した結果、以前、回答した答えと正反対の結論にまとまってしまったことをお知らせいたします。

事業報告の附属明細書の記載事項(施行規則128条)に
 「第三者との間の取引であって、当該株式会社と会社役員又は支配株主(当該株式会社の親会社又は当該株式会社の総株主の議決権(会社役員(執行役を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案の全部につき株主総会において議決権を行使することができない株式に係る議決権を除く。)の過半数を有する株主(当該株式会社の親会社を除く。)をいう。)との利益が相反するものの明細」
という事項があるのですが、この「第三者との取引」に
  会社と取締役との直接取引が含まれるか。
という論点があります。

 これについて、以前、私は
  「第三者」は株式会社以外の者だから、取締役も除外されていないと考えるのが普通だろう。だから、直接取引も含まれると解釈した方がいい。
と答えました。
 
 しかし、本日、この点について、調整した結果
  旧商法施行規則との対比からすれば、「第三者」は、株式会社・会社役員・支配株主以外の者と解釈するべきである。したがって、会社役員や支配株主との直接取引は、附属明細書に記載する必要はない。
ということになりました。

 実は、この点は、関連当事者との取引に関する注記との役割分担をどう考えるかという点に関連しています。会計基準の考え方が計算規則の作成時に予測していたものとやや変化したこともあり、施行規則・計算規則の解釈において、その変化にどう対応すべきかという点で、いろいろと揺れていたのです。

 しかし、とある事情により、担当者間で意見を統一する必要があり、上記のとおりの解釈を採ろうということにまとまりました。解釈はいろいろですし、別に仲間内の話でまとまったからと言って、皆さんが気にする必要はないのですが、念のため、訂正しておきます。

(質問コーナー)
Q1
千問のQ694に「剰余金の配当の原資」のご説明がありまして、その他資本剰余金とその他利益剰余金のどちらを減少させるかは、株式会社が適宜定めるとされております。
それで、質問なのですが、「その他利益剰余金」がマイナスの場合でも、「その他利益剰余金」をさらに減少させて、剰余金の配当の原資とすることができるでしょうか?というものです。もちろん分配可能額の範囲内で配当する場合です。また、逆のケース(「その他資本剰余金」がマイナスの場合に、「その他資本剰余金」をさらに減少させて、剰余金の配当の原資とすること)はいかがでしょうか。
投稿 こころん | 2007年1月25日 (木) 23時39分
A1
剰余金の配当で、そういうことは、できないと思います。

Q2
前回のQ13、質問が悪く、お許し下さい。
取締役会を置かない会社(設立後は株主総会で代表取締役を選定する会社)では、成立後は、株式数に応じて取締役も代表取締役も定めるわけですし、このような会社は、葉玉先生が10月の商事法務で執筆されたように、代表権の付与という構成を取らず、取締役と代表取締役の地位が一体であるとみているわけですが、なぜ、設立段階では、設立時取締役は発起人の議決権基準になり、設立時代表取締役は発起人の頭数基準になるのか(成立後と違う整理をしたのか)が、どうしても分からないのです。
担当者の皆さんで御検討になった末での結論なら、なぜ成立後と異なる結論にされたのかが知りたいです。もちろん、立法に100%はないと思いますので、未解決の問題であれば、そうと分かることが重要だと思います。
投稿 すみません | 2007年1月26日 (金) 00時15分
A2
 まず、誤解を解くところから始めると、「会社法では、分化・未分化という考え方は採らない=取締役会設置会社も、非取締役会設置会社も、取締役と代表取締役との地位の関係は同じである」という点を理解していただきたいと思います。
 次に、非取締役会設置会社は、成立後は、定款、株主総会又は定款の定めによる取締役の互選で代表取締役を定めることができるのに、なぜ成立前だと、発起人の頭数基準なのかということですが、旧商法時代に明文のなかった世界を、明文で、できる限り明らかにしていく過程で、設立時代表取締役の選定機関を非取締役会設置会社についてだけ、議決権基準にするほどの材料がなかったということだと思います。発起設立のときに議決権基準にするなら、募集設立のときも同じようにしなければならないですし。

Q3
定款変更に伴う任期満了(332)の場合、権利義務の承継(346)は生じるのですか?
欠員ではなく、全員いないのだから、全員選び直すというのはわかりますが、
定款変更決議と選任決議までの間に日数がある場合は、権利義務が生じていると解して良いですか?
投稿 法学ベイビー | 2007年1月26日 (金) 00時54分
A3
任期満了の場合には、満了の事由を問わず、346条は適用されます。

Q4
会社法442条1項2号で、臨時計算書類の備置き期間が「臨時計算書類を作成した日から5年間 」と定められておりますが、この「作成した日」とは、株主総会(あるいは取締役会)の承認を受けた日ではなく、実際に作成が終わった日という意味である、という理解でよろしいでしょうか?
投稿 こころん | 2007年1月26日 (金) 00時56分
A4
文字通り、作成した日です。

Q5
「社外役員」の要件の判定について、「千門の道標」Q397では、「当該取締役がB社の業務執行取締役であった時点においてB社がA社の子会社でなかったならば、現時点で子会社であるとしても、社外性は認められる」と説明されています。
これを株式移転の場合に当てはめて考えると、設立される完全親会社の社外取締役を選任する場合、「子会社となる会社」の業務執行取締役であったものが完全親会社の成立と同時に退任すれば、完全親会社における社外役員としての要件を満たすことになると思われますが、この理解で正しいでしょうか?
投稿 | 2007年1月26日 (金) 08時59分
A5
違う問題を同じ基準で解決しようとしている感じではありますね。
また、同時だったら、その時点では、子会社の業務執行取締役ということになるから、社外じゃないですよね。
まあ、株式移転前に辞めれば、社外性を認めてもよいように思いますが。

Q6
 398条2項は、「定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない」とします。
 ここに出てくる2つの「定時株主総会」は、同一の総会を指しているのでしょうか。そうだとすれば、会計監査人は、総会には出席義務がないものの、呼び出されたらすぐに出席可能であるという状態で総会会場の近くで待機しておく必要があるということでしょうか。
A6
 次の定時株主総会は、一年後になってしまいますから、同一の定時株主総会と考えないとおかしいと思います。
 総会会場の近くで待機しておくか、総会期日を続行するかですかね。

Q7
 65条1項は、「設立時株主」を「50条1項又は102条2項の規定により株式会社の株主となる者」と定義しています。
 「設立時株主」が「株主」になる瞬間は、両条を読めば分かります。では、発起人や一般人が「設立時株主」になる瞬間というのは、いつなのでしょうか。ともに出資の履行時でしょうか。
投稿 探偵 | 2007年1月26日 (金) 09時00分
A7
 各種の設立手続を行うべき時期は、明文で明らかなので、設立時株主となる時期をあえて決める必要はないように思いますが・・・。
 何条との関係で問題となるのでしょうか?

Q8
ここ最近盛り上がっていた、決算スケジュールにおける監査報告の提出についてのレスを見ていて、一つ気付いた点があるので質問させてください。
計算規則の規定では、監査役が監査報告を提出すべき期間として、先ずは最低でも4週間の期間を与えるものと読めます。しかし、4週間を下回る期間を、予め取締役と監査役の法的合意により決めることはできないが、事実行為として監査役が4週間より前に提出することは構わないですよね?
だとすれば、取締役が監査役に対して次のような催促をすることは有効なのでしょうか。
「○月○日までに監査報告をいただければ、有難いんですが…。」
「○月○日に総会を開催したいんで、早めに監査報告をいただけないでしょうか」
また、複数の取締役がいる会社で、監査報告を受けるべき特定取締役が決まっていない場合には、いずれか1人の取締役に対して通知すれば足りるのでしょうか?
投稿 ここあ | 2007年1月26日 (金) 11時15分
A8
 監査役に、短くしてほしいと頼むのは自由です。
 監査報告を受けるべき特定取締役が決まっていない場合、事業報告及びその附属明細書の作成に関する職務を行った取締役が特定取締役になります。その特定取締役が複数いるならば、そのうちの1人に通知すれば足ります。

Q9
普通株式のみを発行している会社が、発行済の普通株式の一部(例えば、10%について、無議決権株式とする)を種類株式に変更することは、会社法上可能となるのでしょうか。
投稿 ネロ | 2007年1月26日 (金) 14時58分
A9
解釈上、可能であると考えています。

Q10
サミー様、清算株式会社の代表者について教えてください。
会社法第483条第1項ただし書において、「代表清算人その他清算株式会社を代表する者」とありますが、前者の「代表清算人」と後者の「その他清算株式会社を代表する者」とで何らかの違いがあるのでしょうか。同条第3項では、代表清算人の選定方法について、「定款の定めに基づく清算人の互選」とありますが、定款においてこのような規定のない清算株式会社が清算人の互選により代表清算人を定めた場合であっても、かかる選定は法的効力を有さないのでしょうか。それとも、同条第1項の「その他清算株式会社を代表する者」を選定したとして、有効に効力を生じるのでしょうか。また、かかる選定が仮に有効である場合、代表清算人として登記することに問題はありませんでしょうか。
宜しくお願いいたします。
投稿 きゅーちゃん | 2007年1月26日 (金) 16時50分
A10
定款の定めがなければ、互選はできません。ですから、登記もできません。
(すいませんが、最初の「違いがあるのでしょうか」という質問の意味が分かりません)。

Q11
先生に、株主資本等変動計算書についてお伺いさせてください。
財務諸表等規則99条において、
「株主資本等変動計算書は、様式第四号により記載するものとする。」
とあり、様式は各項目が横並びになるもののみ認められていると思うのですが、
これは招集通知と併せて株主に提供するものについても適用されるのでしょうか?
それとも、各項目を縦に並べる様式も認められるのでしょうか?
 招集通知状のサイズが縦長なため、検討しております。
投稿 マルコ | 2007年1月26日 (金) 17時39分
A11
 会社法・計算規則には、特に様式は定められていないので、どんな様式でもいいです。

Q12
サミー先生こんにちは。会社法の本質とは関係ないのですが、教えてください。
会社法の条文には様々なところに「使用人」ということばが出てきますが、「使用人」には昨今よく利用する「派遣社員」は含むのでしょうか?私は、一般には使用人は雇用関係があるものであり(例:民法308条。また法律用語辞典なども雇用関係がある者とされているようです)、「派遣社員」は使用人には含まれないが、896条・975条にいう「従業者」には含まれる、と解しますがいかがでしょうか?
投稿 悩めるパパ | 2007年1月27日 (土) 17時02分
A12
 「派遣社員」というのは法律用語ではないので、なんとも答えようがありません。
 おっしゃるように雇用関係がなければ使用人ではないという解釈もありうると思いますが、派遣社員に独自的な判断権がなく(委任ではない)、業務執行者の指揮系統に入っているような場合には、使用人になる場合もありうるのではないでしょうか。
 
Q13
株主総会で社外取締役として選任された者を、その後の取締役会で役付取締役(会長)に選定しても「社外性」は保たれるのでしょうか?
会長は取締役「会の長」として職務の執行だけを行い、業務の執行はしないと整理すれば社外性は保たれると思うのですがいかがでしょうか?
A13
役付かどうかは、関係ありません。業務執行をしているかどうかです。
会長は、他社・同業者との会合等に顔を出したりしているのが普通ではないでしょうか。通常、社外というのは、苦しいと思いますが。

Q14
「常勤の社外取締役」というのはあり得ますでしょうか?
投稿 一目 | 2007年1月27日 (土) 20時24分
A14
理論的にはありうるでしょうが、常勤で、何をするんでしょう?

Q15
会社の事業目的は定款で定める事項なので、その内容を変えるとなると株主総会で定款変更の決議が必要となるところです。
急に新規事業を立ち上げることになった場合、その新規事業が定款に事業目的として記載されていない場合は臨時総会を招集して定款変更するしかないのでしょうか?次の定時総会で「後付」で定款変更するのは問題がありますでしょうか?
投稿 東人 | 2007年1月27日 (土) 20時51分
A15
その行為を行う時点で、目的の範囲内でなければいけませんから、後付は無理です。
もっとも、判例を前提とすれば、あまり神経質にならなくてもいいかもしれませんが。

Q16
株主、役員すべて東京在住のもので株式会社を設立するよていですが、その会社の本店を青森に置くことになっております。ここで質問なのですが、処理をスムーズに行うため、東京で定款作成から役員選任等すべてのことを終わらせてから、青森に出向き現地の公証人に定款認証をしてもらい、その足で法務局にて登記をしようかとおもっていますが、公証人の認証が手続きの最後になるのは何か問題になるのでしょうか?条文上、なんの問題も無いように思えますが、ご指導おねがいいたします。
投稿 法務1年目 | 2007年1月28日 (日) 22時38分
A16
 認証を前提とする設立手続きもありますので、「なんの問題も無い」というのは言い過ぎだと思いますが、発起設立で変態設立事項もないような場合等には、そういうことも可能だと思います。

Q17
このようなブログの存在を知って感動しています。
受験生だけでなく、実務家の方も会社法を学び続け、立法担当者を交えて思考を高めあう。素晴しいブログだと思いました。
僕は受験生なんで主として入門編を読ませてもらっています、御多忙なのは承知ですが、出来れば100問を週に1問こなす位のペースでやって頂けないでしょうか?
投稿 ロースクール2年生 | 2007年1月29日 (月) 00時21分
A17
100問を週に1問こなすためには、最低100週必要だということですね・・。
気が遠くなりそうですが、まずは三つ星30問からがんばります。

Q18
日割配当と四半期配当に関して、お教えください。
会社法では日割配当が禁止されましたが、旧商法下の新株予約権は、日割配当を行わない場合は発行決議において配当起算日を定める必要がありました(旧商法第280条の20第2項第11号)。
当社は、旧商法下の新株予約権について、日割配当を回避するため、「新株予約権の行使により発行された株式に対する最初の利益配当金または中間配当金は、行使が4/1~9/30までになされたときは4/1に、10/1~翌年3/31までになされたときは10/1に、それぞれ新株が発行されたものとみなして支払う」と定めておりました。
当社は今般、四半期配当の実施を考えているのですが、この規定との関係が気になっております。この規定が適用されると、たとえば7/1に行使があった場合、6/30を基準日とする第1四半期の配当についても支払うことになります。
この規定は日割配当の回避が目的であり、日割配当が禁止された今、この規定自体を不適用とすることは可能でしょうか。基準日株主でない者に配当を支払うことはできないのではないかと考えます。
それとも、この規定に従い、配当を支払う必要がありますでしょうか。
投稿 しん | 2007年1月29日 (月) 13時08分
A18
 会社で決めた条項の解釈なので、会社と新株予約権者との間で、どういう趣旨だったかを確認していただく以外、なんともいいようがありません。

Q19
相殺禁止(208条3項)についての質問です。同項は,「出資の履行をする『債務』と株式会社に対する債権とを相殺することができない」と規定しています。この『債務』という言葉が引っかかります。
債務というからには,債権の発生原因である契約,事務管理,不当利得,不法行為のいずれかがなければならないと思いますが,申込み+割当てが「契約」という理解なのでしょうか。これを前提とすると,この契約により,「出資の履行をする債務」(208条3項)と「出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利」(4項・5項)が発生するという理解でよろしいでしょうか。また,割り当てる株式数が申込株式数よりも少ない場合には,民法の議論では,割当てが新たな「申込み」となり,「承諾」がない感じです。さらに,出資の不履行(208条5項)が契約の終了原因となるという理解でよろしいのでしょうか。
投稿 とむ | 2007年1月29日 (月) 15時41分
A19
株式の引受は、申込みと割当てによる契約によって行われます。
出資の不履行による失権は、契約の終了原因ではなく、債権の消滅原因でしょうね。

Q20
監査役制度に関する質問です。
書面による監査役会決議が許容されないことと、監査報告は現に監査役会(会議)を開催して作成することを必ずしも要しないことととの整合性がどうしても理解できません。
(監査役会の)監査報告の作成は監査役会の職務とされているのは法上明らかです。他方、取締役会とは異なり、監査役会の場合は書面による(持ち回り)決議が不可なのも法上明らかです。とすれば、監査役会の監査報告は現に監査役会(会議・・・TV会議やTEL会議を含む)を開催して作成しなければならない筈です。(現に旧法下ではそのように理解されていた筈です。)
この謎を解く鍵は、監査役会監査報告は、監査委員会監査報告と異なり、「決議」ではなく、「審議」により作成するということにあるのでしょうか?
期末に近づき、まもなく監査報告を作成する時期になります。是非ともご教授願えればと思います。
投稿 ぽっぽー | 2007年1月29日 (月) 23時21分
A20
 監査役会で監査報告の内容を決議する必要がありますから、現に監査役会を開催してください。
ただ、その時点で、監査報告という書面が完成していなくても、後で書面を持ち回って作成してもいいでしょうという話ですね。

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2007年1月25日 (木)

【入門】発起人の権限(4)

 前回は、発起人の権限と設立費用の関係についてお話ししましたが、一点だけ、設立費用について、補足します。

 会社法の本を読んでいると、たまに
「発起人が設立前に支出した費用を第三者に支払った場合は、発起人は、定款に記載されている費用の限度で、検査役の調査や裁判所の監督・創立総会の承認を経たことを条件として、会社に求償することができる」
という記述があります。

 この記述には、不正確な点がいくつか紛れていますが、どこか、分かりますか?

 まず、変態設立事項について、「創立総会の承認」というものはありません。
 発起人は、検査役の報告内容を、創立総会に提出しなければいけませんが、それは報告事項であり、「承認」は不要です。もっとも、創立総会が変態設立事項について定款変更をすることはできます。

 次に、変態設立事項の記載がある場合、検査役の調査が必要であり、裁判所が、不当であると認める場合には、変更命令が発せられますが、変態設立事項の効力が認められるかどうかは、「定款への記載の有無」だけが要件であり、検査役の調査(それに続く裁判所への報告等を含め)は、要件となっていません。
 変態設立事項の記載がある場合、33条10項の例外要件を充たさない限り、検査役の報告に関する書面を添付しなければ、設立の登記ができませんから、事実上、「定款に記載はあるが、検査役の調査を受けていない」という場面は極めて希ですが、条文の正確な理解のために、検査役の調査は要件ではないということは認識しておいた方がいいと思います。

 余談めいた話は、そのくらいにして、今日は、
  開業準備行為
についてお話ししましょう。

③ 財産引受け
 前三回で、何度もお話ししたように、財産引受けというのは、発起人が、設立前に、設立後の会社のために財産を購入することです。
 発起人が、設立のために必要な財産(定款を印刷するための用紙等)を購入するのは、財産引受には含まれず、設立事務で使う財産以外の財産の購入が財産引受になります。
 
 当然のことですが、財産を「売却」することは、財産引受にはなりません。
 設立前に、商品を売ったりすると事業をしたことになってしまい、「会社の成立前に当該会社の名義を使用して事業をした者は、会社の設立の登録免許税の額に相当する過料に処する。」(979条1項)ということになるので、注意してください。

 さて、定款に記載の「ある」財産引受が、設立後の会社に効果が帰属する(=会社が財産を取得する代わりに、代金の支払い義務も負う)ということは争いはありません。
 また、定款に記載の「ない」財産引受は、設立後の会社に効果が帰属しないという点も争いがありません。

 争いがあるのは、後者の場合(定款に記載のない場合)に
 設立後の会社が「追認」することができるか。
ということです。

 この問題については、理屈で説明するパターンと、28条の趣旨から説明するパターンの2種類の説明の仕方があります。

 理屈で説明する場合は

 ・追認否定説 設立中の会社は、設立を目的としているから、その実質的権利能力は、原則として、設立準備行為にのみ及ぶから、例外である28条2号の要件を充たさない以上、当該財産引受は、実質的権利能力の範囲外の行為となり、絶対的無効である。

 ・追認肯定説 設立中の会社の実質的権利能力は、開業準備行為にも及んでいるから、28条2号の要件を充たさない場合でも、効果帰属の余地はある。

という対立であると説明します。
 
 難しいことを言っているようですが、自然人に置き換えて説明すると、
 追認否定説 「死人であるサミーさん=権利能力なし」を本人として、無権代理人が行為を行った場合、その行為は、追認しようがない
 追認肯定説 「生きているサミーさん=権利能力あり」を本人として、無権代理人が行為を行った場合、追認することができる。
と言っているような話で、大した理屈ではありません。
 
 しかし、この理屈による説明は、「設立中の会社の実質的権利能力」という明文のない世界において、お互いにマニアックに論争しているだけですから、どちらの説に立つにせよ、会社法28条2号の趣旨から実質的権利能力の範囲を説き起こさざるを得ません。

 とすると、実質的権利能力の範囲などという理屈っぽい話は止めて、
 28条2号の趣旨
 =円滑な開業のために発起人に財産引受を認めているが、財産の価額を不当に高く評価する等して会社の健全な設立を害することがないように、原資定款への記載を要求している。
という立法趣旨を実現するためには、追認を認める方がいいのか、認めない方がいいのか、という点から論じれば十分であると思います。

 この点について、追認肯定説は、
   会社は、追認する義務はないので、有利と思えば追認すればいいし、不利なら追認しなければいい。
   例えば、財産引受契約後に、財産が値上がりしている場合には、新たに契約を結び直すよりも、追認して、昔の価格で締結した契約を選択する方が得でしょ。
と主張しています。さらに、追認肯定説は、旧商法時代は、財産引受の規定(特に検査役の選任・裁判所の変更命令)の趣旨を没却しないように、
  「事後設立の規定を類推適用すべきである」
というフォローをしていました。私も、司法試験受験時代は、追認肯定説を採っていましたので、肯定説の言い分も分からないわけではありません。

 しかし、会社法では、事後設立は、変態設立事項ではなくなり、検査役の検査等は不要になりました(総会決議は必要です)から、財産引受の手続と事後設立の手続に大きな差が生じてしまいました。

 それにもかかわらず、「有利な場合にのみ追認すればよい」という考えを取ってしまうとどうなるでしょう。
 例えば、松真さんが90%、湯水さんが10%の株式を引き受ける予定で、二人が発起人となって会社を設立するとしましょう。
 松真さんが、自分の持っている中古のHなDVDを1本3万円で、会社に買わせようと考えたとき、松真さんは
  財産引受を定款に記載するためには、発起人全員の同意が必要だけど、湯水さんは、こんな値段じゃ納得しないだろうなあ。
  しかも、検査役に検査されて、裁判所に報告されると、裁判所の変更命令が出される可能性もあるな。今の民事8部の裁判官は、昔、一緒に仕事をしていた後輩だから、俺が、HなDVDを3万円で売りつけたと分かると恥ずかしいし。
  定款に書かずに、設立後に代表取締役になってから、追認した方がいいな。
と考えるかもしれません。そのことを解答例では
  「当初から追認を予定して法定の手続を無視した財産引受をすることを誘発するおそれがある」
と表現しています。

 また、財産引受契約の相手方が第三者の場合である場合、追認肯定説に立つと、発起人が、定款に記載のない財産引受をもちかけ
  「必ず追認するから心配しなくていいよ」
とか言いそうですが、追認否定説だと、そういう話もできませんから、その意味でも追認否定説の方が、定款に記載のない財産引受契約の締結の抑止につながります。
 
 そうした点からすれば、追認否定説の方が、
  発起人は、設立事務の担当者であり、業務の決定を行う立場にはないから、財産引受という業務に密接に関連する行為は、法定の要件を充たしたときだけ認められる特別な行為である
という28条の趣旨に合致すると思うので、解答例も判例と同様、追認否定説を採っています。

④ 財産引受以外の開業準備行為

 次に財産引受以外の開業準備行為です。事務所の賃貸や事業資金の借入等が、これにあたります。

 さて、28条は、この財産引受以外の開業準備行為については、何も触れていませんから、当該行為には、28条は適用されません。

 28条の適用がないものとしては、
  ① 設立を直接の目的とする行為(28条4号かっこ書)
がありましたが、こちらは、
  発起人が定款に記載されていなくても当然に「できる」行為
ということで、28条が適用されません。

 これに対し、今回の④財産引受以外の開業準備行為は
  発起人が、定款に記載しても、そもそも行うことが「できない」行為
ということで、28条が適用されないという違いがあります。

 ①も④も、「28条の適用がない」という点では同じなのに、なぜ結論が正反対かというと
  発起人は、設立事務の担当者であり、設立事務はできるが、開業準備行為はできない
という「書かれざる原則」があるからです。
 そのため、28条という条文は
  設立に関する行為(28条1号3号4号)については、定款に記載がない限り、無効になるという「制限規定」として働き
  開業準備行為(28条2号)については、定款に記載があった場合には、有効になるという権限の「拡張規定」として働く
という2面性を持っていることになります。

 こうした考え方に対して
 財産引受以外の開業準備行為についても、28条2号を類推適用して、定款に記載があった場合には、有効にするべきである(28条2号類推適用説)
が存在します。

 この考え方は、開業準備をより円滑にできるようにしようという価値観に基づくものだと思いますが、発起人は、設立事務の担当者に過ぎないのですから、法律が認めた以上の開業準備行為を行わせるのは妥当ではありません。

 発起人は、経営の専門家として選任された者ではないのですから、定款に記載すれば、何でもできると考えるのは、会社の設立の健全性を害するおそれがあります(特に、28条2号類推適用説と③の追認肯定説が結びつくと、危険はもっと高まります)。

 こうした観点から、解答例は、28条2号類推適用説を否定して、財産引受以外の開業準備行為は、常に、無効であるという結論をとっています。

<最後に>
 4回にわたって、発起人の権限について説明してきましたが、私の考え方を一言でまとめれば
  28条を「発起人の権限」を定めた規定と考えれば、各論を含めて一貫して説明できるし、結論も妥当なところに落ち着く
ということです。
 判例実務と学説との対立が根深いところで、判例が目の敵のようにされるところではあるものの、私は、判例実務の方がよっぱど優れた見解だと思うのですが、いかがなものでしょうか。

(質問コーナー)
Q1
決算スケジュールで4週間または1週間を経過した日が土曜日の場合は・・・とい質問に対し、先生は「休みは、関係ないです。休みでも受け取ってください。」とご回答されておりますが、そうは言うものの、世の中の活動が休みであれば、現実不可能だと思います。本当に休みは関係ないのでしょうか。かなり納得いかないです。この場合は月曜日にあたる日ではないのでしょうか。必ずご回答願います。
投稿 ケンチャンの質問にさらに質問 | 2007年1月23日 (火) 21時11分
A1
 既に回答したとおりです。
 他の方もお答えになっていますが、起算日の調節や提出日を話し合うことで、対処可能な問題です。

Q2
 会社法789条3項括弧書きに(吸収分割をする場合における・・・)とありますが、どうして「吸収分割」の場合だけに限定されているのでしょうか?
吸収合併における吸収合併消滅株式会社の場合も、存続会社に不法行為によって生じた債務が承継され債務者が変わるわけですから、消滅会社の債権者への催告の重要性は変わらないと思うのですが。
A2
 まず、前提の確認ですが、789条3項は、債権者保護手続を二重公告によって簡略化できるという規定であり、債権者保護手続を不要にするものではありません。したがって、リスクが高いものだけについて簡略化を認めないという発想があります。
 合併の場合は、法人格が一つになってしまうのに対し、吸収分割の場合は、資産の一部しか移転せず、債務の切り離しに利用されるおそれがあるので、リスクの高い後者についてだけは、簡略化を認めていないのです。
 
Q3
会社法789条1項2号に、「債務の履行を請求することができない吸収分割株式会社の債権者」とありますが、具体例としてはどのような債権者の事を指すのでしょうか?
吸収分割は業務に関する権利義務が承継されるわけですから、承継された債務の債権者は基本的に吸収分割後吸収分割株式会社に対して履行を請求できないのではないのかなと思うのですが。
A3
承継会社に承継される債務の債権者です(承継後も分割会社が保証するような場合は除きます)。

Q4
会社法309条3項1号の特殊決議は、種類株式発行会社が同内容の定款変更をする場合には適用されないようなのですがなぜでしょうか?
問題集の解説などには、特別決議(309条2項前段11号)が適用されているのですが理由が記載されておらず分りません。
種類株式発行会社とそうでない会社とで、なにか大きな違いがあるのでしょうか?
投稿 虹色魂 | 2007年1月23日 (火) 22時31分
A4
種類株式発行会社では、複数の種類株式に一つ一つ譲渡制限を設けることができますが、「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける」ことはできません。

Q5
取締役会設置会社の業務執行取締役について
363条1項二号の取締役を選定する取締役会では、「どの程度」の決議内容が必要でしょうか。例えば、●●氏を専務取締役に任じる、としただけで担当業務の範囲を定めない場合、会社の全般的な業務を執行する権限(例えば、事務所の賃貸契約や取引に付随する機密保持契約の締結権限)があるのでしょうか。また、「常務取締役」でも結論は同じですか。
A5
専務・常務が何をするかは、各会社で決めることです。
通常は、分掌規程があって、その規定の範囲の権限があるはずです。
そういうものがないならば、決議の趣旨から推認するしかありません。

Q6
取締役会で平取締役をある事業部門の「分掌」(社内では担当取締役といってます。)とした場合、取締役会決議を経るべきものを除けば、その事業部門の全ての業務を執行できると考えて問題ありませんか。
A6
それも、各会社が決めることです。

Q7
従業員である部長課長等に一定の物品調達権限、契約締結権限等を与えているのですが、これは法的にはどのように論理付ければよいでしょうか。
投稿 新任取締役 | 2007年1月24日 (水) 00時10分
A7
 通常は、使用人に代理権を与えていると解釈するのだと思います。

Q8
私の会社で、定款の見直しをすることになりました。
閉鎖会社で、株式の譲渡制限については定款にすでに規定されているのですが、株式の質入や信託についても制限をかけたいのです。
(以前、オーナーの変更があり、旧オーナー側の株主がまだいるため、
旧オーナー側の株主から株式が拡散することを可能な限り防止したいのです。)

①会社法では、質権の設定自体は直接制限できないようなのですが、
定款で規定すれば、制限は可能なのでしょうか?

②定款での定めで制限ができないとしても、定款上の定めで、質権設定を
しにくくする方策はないでしょうか?
投稿 法務部員 | 2007年1月24日 (水) 11時07分
A8
 信託は、譲渡なので、譲渡制限がかかると考えていいでしょう。
 質入を制限するのは、なかなか難しいですね。定款で定めても、効力はないと思います
 実行時には、譲渡制限がきくので、拡散のおそれはないですが。
 質入を制限するために、会社と株主で契約を結ぶことは考えられると思います。

Q9
自己株式の消却について質問させて頂きたくお願いします。
企業会計基準委員会・企業会計基準第1 号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(最終改正平成18 年8 月11 日)には、以下の記述があります。
「45. 従来、本会計基準では、資本剰余金又は利益剰余金のいずれから減額するかは、会社の意思決定に委ねることとし、消却した場合に減額するその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したときに会計処理することとしていた。しかしながら、会社計算規則において優先的にその他資本剰余金から減額することが規定された(会社計算規則第47 条第3項)ため、平成18 年改正の本会計基準では、これに合わせることとした。また、自己株式を消却したことにより、会計期間末におけるその他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、その他資本剰余金を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額することとした(第12 項及び第42 項参照)。」
そこで、質問です。
上記会計基準によれば、その他資本剰余金がない場合、自己株式消却は繰越利益剰余金を減額することで会計処理するということになると思いますが、消却分に対応する繰越利益剰余金がない場合、自己株式消却の際に繰越利益剰余金をマイナス(負の値)にし、その後の定時株主総会において剰余金の項目間の計数を変更(別途積立金の取崩し)することにより繰越利益剰余金のマイナスを消す、という対応は法的に許されますでしょうか?
投稿 あつし | 2007年1月24日 (水) 14時44分
A9
 会社が、独自に、その他利益剰余金を、繰越利益剰余金と別途積立金に分けて計上している場合に、繰越利益剰余金をマイナスにしていいかどうかは、その会社が決めたルールにしたがって行うことです。

Q10
以前このブログで、会社法には「普通株式」という定義はなく、「普通株式」も「種類株式」だというお話がありました。
私もまさにそのとおりだと思いますが、多くの会社は「普通株式」の内容を定款で定めていません。
私としては、定めた方が良いと思うのですが、ちょっと恥ずかしいです。
大人の世界ではどうなっているのでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2007年1月24日 (水) 16時46分
A10
 特別の定めがないものを「普通株式」と呼んでいるので、その内容を定款で定めることはしていないのです。もし何かを定めても、会社法で定めた内容を確認したものにすぎないので、その定め自体に独自の効力はありません。

Q11
内部統制の関係でおたずねします。
監査役の職務を補助する使用人である、監査役室の長が出張をする場合、その出張命令をするのは会社の取締役ではなく監査役である必要があるでしょうか。
取締役が出張命令や出張旅費に関する承認行為を行うとしても、実際上は監査役の意思に反して否認することはないということであれば、特に問題視する必要はないと見てもよいでしょうか。
投稿 smoky | 2007年1月24日 (水) 17時15分
A11
監査役が、大阪支店の支店長であるA取締役の不正行為について秘密裏に調査しようとしているときに、A取締役の出張命令や出張旅費に関する承認行為が必要であるとすると、まずそうですね。

Q12
取締役会において、特別利害関係を有する取締役は「議決に加わることができない」とされており、100問の256頁に「当該決議につき議決権を有しないばかりでなく、当該決議に至る審理に加わることもできないと解される。」とありますが、当該議案の内容の説明者になることは問題ないでしょうか?

例えば、取締役・会社間の自己取引の承認議案などにおいては、当該取引の当事者である取締役(=特別利害関係人)が最も当該取引内容に詳しいはずですし、説明もできないとなれば、それこそ十分な審理・決議ができないと思われます…。
投稿 グッジョブ | 2007年1月24日 (水) 17時29分
A12
取締役会に参加している取締役が、特別利害関係取締役に説明を求めることはできます(1月30日訂正)

Q13
本日のQ4の発起人の議決権基準と頭数基準につき、ご丁寧な説明をありがとうございました。
先生は、募集設立のお話をされていましたが、取締役会を置かない会社(設立後は株主総会で代表取締役を選定する会社)の発起設立の場合には、発起人が設立時代表取締役を選定するのは、設立時取締役と設立時代表取締役の地位が一体ですので、共に株式引受人(出資者)としての立場ととらえ、発起人の議決権基準でよろしいでしょうか(1000問では、この場合も頭数基準にみえますが)。
以前は、会社設立前の登記に絡む事項では、取締役会の議事録を付けていた(発起人の頭数基準が適用になる場面はなかった)のですが、会社法では、発起人の権限が増えてしまい、困惑しています。
投稿 教えて下さい2 | 2007年1月25日 (木) 00時08分
A13
 「設立時取締役と設立時代表取締役の地位が一体」の意味がよく分かりませんが、代表取締役を定めないのならば、発起人の議決権の過半数で設立時取締役を選ぶだけですよね。
 それを超えて、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定するのならば、それは頭数基準です。

Q14
累積投票について質問させてください。
会社法347条(種類株主総会における取締役の選任)では、会社法342条(累積投票による取締役の選任)の規定を読み替えていないのですが、種類株主総会においては、累積投票による取締役の選任をすることができないものと考えてよいでしょうか。
理由も簡単で結構ですので教えてください。お願いします。
投稿 H.K. | 2007年1月25日 (木) 02時01分
A14
 種類株主総会では、累積投票請求権はありません。

Q15
2006年12月22日改正後会社計算規則第59条第2項第3号の読み方についてです。

①完全子会社同士(兄弟会社間)の無対価吸収合併ではイとロのいずれが適用になるのでしょうか(あるいはそれ以外?)。
②完全子会社同士(子孫会社間)の無対価吸収合併ではイとロのいずれが適用になるのでしょうか(あるいはそれ以外?)。
③①と②でロが適用になるとすると、合併契約書において、会社計算規則59条を適用する旨の記載をすることを要するのでしょうか。

特にイの読み方が分かりませんでした。1項で2項を見ろと言っておきながら、2項で1項を見ろと言っているので、たらいまわしにされているような気がしてしまいます。
2項の1号と2号を満たしていれば、(1項を満たしていることになり、)自動的に2項3号イを満たしていることになるのでしょうか。
投稿 まいたけごはん | 2007年1月25日 (木) 10時18分
A15
 2項3号イの「すべき場合」は、1項とは関係ありません。会計基準で、1項の規定に従って計算すべき場合を意味します。したがって、1項と2項でたらい回しにしているわけではありません。
 会計基準どおりの処理をしてください。

Q16
会計監査人設置会社で且つ監査役会設置会社における計算書類の監査に関して質問させてください。

①株主に対して行う提供計算書類の提供に関しては、監査役「会」の監査報告で足りますが(会社法437条、436条、会社計算規則161条1項3号ホ)、
②計算書類の備置(会社法442条)に関しては、「各」監査役の監査報告が必要である、と聞きました。

②を裏付ける根拠条文、及び、①と②で取扱いが異なる根拠をご教示くださると幸いです。本店に来社すれば、より詳細な情報を得られるようにするためでしょうか?

投稿 ヒゲマン | 2007年1月25日 (木) 11時11分
A16
 監査役会設置会社は、監査役が監査報告を作り、監査役会も監査報告を作成します。442条は、単に「監査報告」と規定していますから、双方が対象になります。
 これに対し、437条は、法務省令に方法を委任し、規則161条1項3号ホにおいて、監査役会設置会社においては監査役会の監査報告でけを提供すればいいと規定されています。
 なぜ違うかといえば、株主に提供する場合に、似たようなものをいくつも提供しても意味がないから監査役会のものだけで十分だし。逆に、閲覧においては、監査役会の監査報告の検証のために、監査役の監査報告を見たいという人もいるからです。

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2007年1月23日 (火)

【入門】発起人の権限(3)

 前回は、発起人の行為を分類した上で、その分類は28条と、次のように関連しているという話をしました。
 A 設立準備行為 ①設立を直接の目的の行為・・・・・28条4号かっこ書
         ②設立のために必要な行為・・・・・28条4号
 B 開業準備行為 ③財産引受・・・・・・・・・・・・28条2号
         ④財産引受以外の開業準備行為・・・条文なし

 そして、
 判例・100問 28条=発起人の権限の範囲(会社に効果帰属する範囲)
         →発起人がその権限の範囲で自ら費用を支出した場合は、求償可能
 学説の多く  28条4号≠発起人の権限の範囲
         →発起人の権限の範囲について独自の理論で解釈を示す
という意見の対立があるところだというところまで、お話ししたと思います。

 今日は、上記①と②の行為について、順次、発起人の権限が及ぶかどうかを検討していきたいと思います(開業準備行為③④は次回に回します)。

① 設立を直接の目的とする行為

 ①の行為は、定款認証の手数料、定款に係る印紙税など設立に必要不可欠な費用であり、設立前に支払をしなければ、設立手続きが進まないので、普通、設立時に未払いということは考えられないものです。
 あえて言えば、払込取扱銀行の手数料・報酬は、払込取扱銀行がボーッとしていれば、未払いということも理論的には考えられますが、まあ、普通はない。
 
ですから、従来から「発起人の権限の範囲か?」ということは、あまり論じられてきませんでした。

 言い換えれば、①の行為にかかる費用については、発起人が払った上で、それを会社に求償するしかないのが普通なので、
 「定款に記載がなくても、発起人の会社に対する求償権を制限されないものは何か」ということだけが、関心事だったわけです。

 ところが、会社法になって、発起設立では、払込金を、設立前に、払込取扱銀行から下ろしてきて、それを設立費用の支払に充てることができるようになりました。

 そのため、旧商法のように「発起人の求償権の制限」の問題だけではなく、
   「発起人が、払込金(設立中の会社が実質的に所有する金銭)から設立費用を支払うことができるのは、どの範囲か?」
という問題が生ずることになったのです。設立中の会社が実質的に所有する金銭は、設立後には、当然に、会社の財産となるものですから、後者の問題は、まさに「発起人の権限」の問題として把握されるべきものです。

 この問題について触れられた基本書はあまり見たことがないのですが、私は、28条と発起人の権限をリンクさせて考えるべきであるという立場なので、

  ①の行為は、28条4号かっこ書で、定款の記載にかかわらず、「その効力」(28条)を生ずる=発起人の権限の範囲内になる

と考えていますし、②の行為についてどのような見解に立つ人も、この範囲内では、発起人の権限を認めるのではないかと思うのです。
 もちろん、未払い設立費用について、会社に一切効果帰属を認めないという後記A説に立つ論者の立場を理論的に突き詰めていけば
    発起人には、設立中の会社の実質的な所有に属する金銭の処分権はない
    =払込金から、登録免許税等を払うこともできない。
という結論を取ることになるのかもしれませんが、そのような考えは、発起設立について、払込保管証明制度を廃止し、払込金を設立費用に支出することができるようにした改正の趣旨に反するでしょう。

 ですから、おそらく①の行為については、そんなに大きな論点は存在しないのではないかと思います。

② 設立のために必要な行為
 
 これまで、盛んに論じられてきたのは、「②の行為が発起人の権限の範囲に属するか」という点です。

 何度もいいますが、私は、28条4号は、発起人の権限の範囲をも定めたものだと考えていますので、「定款に記載のある範囲では、会社に効果が帰属する」という判例と同じ見解に立っています。

 これに対し、学会では、この判例の見解では、不都合な場合があるから、今では
  「誰一人、この見解に立つものはいない」
と言われています。

 ここまで言われながら、判例の見解を支持する私は、変わり者のように思われるかもしれませんが、決して、変人と思われるために、判例を指示しているわけではありません。
 学説が「不都合」と指摘する点が、全く不都合ではないから、判例を指示しているのです。

 この不都合な点というのは、
  発起人が設立のために必要な行為を複数行った場合において、それらの行為によって生ずる債務の総額が定款に記載された費用を上回るときに、どの行為が会社に帰属し、どれが帰属しないかを判断することができない
という点であるといわれています。

 この問題意識は、もともと、定款において、財産引受と設立費用の記載の仕方に違いがあるところに起因しています。つまり、

 財産引受(28条2号)
 =定款に、財産の内容及び価額・譲渡人の氏名を記載する
 (例えば、東京都千代田区霞が関1-1-1の土地333平米・10億円・譲渡人法務太郎)
 →この場合、財産が特定されているから、有効なものと、無効なものは定款を見れば、すぐ分かる。

 設立費用(28条4号)
=定款に、株式会社の負担する設立に関する費用(28条4号)の総額を記載することもできる
 (例えば、総額1000万円以内)
→ 費用の内容が特定されていないから、どの費用が有効で、どの費用が無効になるかが、定款を見ても、分からない。

という考え方ですね。

 しかし、私は、この問題意識が、いまいち、分かりません。
 
 まず、発起人の権限の話を外れて、普通の代理の事例を想定してみます。

 例えば、株式会社正直法務が、松真さんに「1000万円の範囲内で、Hな本を買付けしてきてくれ」と頼んだとしましょう。
 そのとき、松真さんが、最初に、人妻管理出版で700万円分、Hな本の購入契約をし、その後、ロリロリ文庫で500万円分の購入契約をしてきたら、人妻管理出版の契約は有効であり、ロリロリ文庫の契約は、無権代理(越権代理)になるだけです。
 契約が代理権の範囲内で行われたかどうかを、「契約時に判断する」という点は争いないはずであり、私の知る限り、代理の議論の中で
  授権行為において、具体的な財産が特定されていないから、どの契約が有効になるか、無効になるか、分からなくなる
という話は聞いたことはありませんし、「対象が特定されていないから、発起人の権限を認めない」という学説の考え方は
  財産を特定しない限り、代金総額を限定する方法等で、代理権を授与することは認めない。
と言っているのと同じで、どうにも理解できないのです。

 もちろん、設立費用の総額によって、発起人の権限が制限されるとすると、契約の相手方は、契約をする時点で
   設立費用の余力があるかどうか
を調査しなければならないという負担を負うことになります。
 しかし、相手方は、その調査が面倒くさければ、発起人個人と契約をするか、発起人に個人保証をしてもらえば、十分であり、相手方の保護を考える必要はありません。

 しかも、この「財産が特定できない」という問題は、実は、財産引受の場合でも生ずるのです。
 財産引受は、不動産等の特定物だけが対象になるわけではなく、種類物も対象になります。
 そうすると、
  発起人が、複数の契約によって、定款記載の数量よりも多い種類物を購入した場合、どの契約が有効になるか。
という問題はやはり生ずるのです。
 その場合、譲渡人が特定されているので、最初の契約から順番に数量を足していって、定款記載の数量を超えた時点の契約が無効になると考えるのでしょうが、この考え方は、設立費用について、先ほど説明した考え方と同じであり、こういうことを考え始めると、学説が、なぜ財産引受と設立費用を区別するのか、その理由がいよいよ分からなくなるのです。

 ちなみに、学説は
 A説 ②の行為は、一切、会社に効果帰属しない。
 B説 ②の行為は、全部、会社に効果帰属する。
 C説 ②の行為は、会社にも帰属するし、発起人にも帰属する。
という3説に分かれていますが、
 A説は、会社が最終的に設立費用を負担しなければならないことが明かな場合でも、設立後に、発起人が一回自腹を切ってから、会社に求償するというルートを取らなければならなくなり、不合理です。
 しかも、①で述べたように、会社法では、発起人の権限は、設立後の問題だけではなく、設立前の払込金の使用にも関わっているので、設立前に、払込金を設立費用に一切使ってはいけないという結論は、改正の趣旨に明らかに反します。

 B説・C説は、逆に、設立費用として定款に記載した額を超えても、会社に効果帰属すると考えるわけですから、何のために28条4号で変態設立事項にしたのか、その趣旨が分からなくなります。また、財産引受については、定款の記載の有無で効力を決するのに、なぜ設立費用は、そうではないのか、そこに合理的な区別がつくとは思いません。

 普通に考えれば、
 会社が最終的に負担すべき設立費用ならば、会社が義務を負い、
 会社が最終的に負担すべき設立費用でなければ、会社は義務を負わない
というのが、もっとも合理的な結論だと思うのです。

 また、学説は、どの見解も
  28条4号≠発起人の権限
と考えているわけですが、なぜ28条という同じ条文の中で、4号だけ「その効力を生じない」の解釈が異なるのか、合理的な説明がつくのでしょうか?

 現物出資(1号)、財産引受(2号)、発起人の報酬(3号)については、定款に記載があれば、その効力を生ずることは争いがないはずです。

 普段は、あまり語られない話ですが、現物出資も、財産引受も、発起人の報酬も、すべて契約によるものですから、28条の「その効力を生ずる」というのは、これらの契約が会社に効果帰属するということを意味しており、発起人の権限の範囲を画するものということができます。
 それなのに、なぜ4号だけ、「発起人の権限を定めたものではない」と解釈することができるのでしょうか?

 また、学説の中には、設立費用(4号)は、もっぱら発起人と会社との関係を定めたものであるとする見解(A説)があります。

 確かに、旧商法の立案担当者の気持ちとしては
   変態設立事項は、会社と発起人との間の契約について、濫用されるおそれがあるから、それを定款で制限する
という考えがあったのでしょう。旧商法において、財産引受や事後設立が変態設立事項とされる趣旨を「現物出資の潜脱防止」と説明していたのは、まさにその名残りなのだもと思うのです(なお会社法では事後設立は変態設立事項ではなくなりました)

 ところが、「財産引受」の規定は、
  発起人以外の者との間の契約
にも適用されますし、旧商法は、
  発起人等とは全然関係のない、会社設立後の代表取締役と第三者との契約
である事後設立ですら、変態設立事項にしていたのですから
   変態設立事項=発起人と会社との契約
という構図は、実は、旧商法時代から崩れていたといわざるをえません。
 財産引受や事後設立を採り入れた以上、変態設立事項は、「発起人の権限の範囲」を定めた規定と解釈するしかなくなったのではないかと思うのです。

 事後設立が変態設立事項から除外された会社法においても、財産引受契約に、発起人以外の第三者との間の契約も含まれる点は同じですから
  28条=発起人と会社との関係を規律したもの
と解釈するのは困難であり、やはり
  28条=発起人の権限の範囲を規律したもの
と考えるのが妥当だと思います。

 なぜ、判例の見解が、学説として廃れてしまったのか、学説史的には面白いかもしれませんが、処理の合理性という点からも、条文構造の観点からも、28条4号の設立費用については、判例の見解が妥当でしょう。

次回は、開業準備行為についてお話しします。

(質問コーナー)
Q1
先日,取締役の特別利害関係について質問した者です。宜しくお願いいたします。
改正会社計算規則58条及び59条の適用範囲について,まだあまり文献がないため困っておりますが,次のような理解でよろしいでしょうか。
1 取得の場合 → パーチェス法 → 会計規58Ⅱ①(ただし,逆取得の場合には会計規58Ⅱ⑤)
2 持分の結合の場合 → 持分プーリング法 → 会計規59
3 共同支配企業の形成の場合 → 持分プーリング法に準じる方法 → 会計規58Ⅱ⑤
4 共通支配下の取引等の場合
 ①一般の共通支配下間 → 会計規58Ⅱ②(ただし,対価の全部が存続会社の株式であるか又は無対価の場合には,任意的に会計規59)
 ②親子会社間 → 会計規58Ⅱ③
 ③子孫会社間 → 会計規58Ⅱ④
投稿 yasuko | 2007年1月22日 (月) 18時09分
A1
 会計基準との関連をあまり言いたくはないですが、まあ、そうですね。

Q2
サミー先生、ご回答願います。決算スケジュールの件ですが、会計規158、160条では、4週間を経過した日であるとか、1週間を経過した日とありますが、その経過した日が土曜日にあたる場合は、翌週の月曜(土日に会社、会計事務所が休みとすると)になるのでしょうか。またはこの場合、会計士さん、監査役会は、金曜日までに提出義務が発生するのでしょうか。
すいません、悩んでおります。何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿 ケンチャンの質問 | 2007年1月22日 (月) 22時08分
A2
 休みは、関係ないです。休みでも受け取ってください。

Q3
 前回のQ8に関連してですが、ということは、持分会社相手の親子関係の判断については、無限責任、出資額に関しては考慮せず、議決権数等で判断するということで宜しいでしょうか? つまり、株式会社相手の判断基準と同じであると。
投稿 サミーさん頑張れ! | 2007年1月22日 (月) 22時51分
A3
 施行規則第3条と第4条以外に判断基準はありません。

Q4
立案された皆さんは、発起人の頭数基準説をとっているようですが、なぜ、取締役会設置会社の設立時取締役の選任は明文で発起人の議決権の過半数で決める(会社法40条)としながら、取締役会を置かない会社については、明文はないですが、発起人が設立時代表取締役を直接選定することも解釈上認められ、その場合には、同様に役員の選任なのにもかかわらず、なぜ、発起人の頭数で決すると考えるのでしょうか。
 議決権基準か頭数基準かは、事柄の実質に応じて決めるべきで、単に規定がないところは常に頭数によるとするのは疑問にも感じるのですが。。。
立案に際してどのようにお考えだったか、教えて頂けると幸いです。
投稿 教えて下さい | 2007年1月22日 (月) 23時25分
A4
 発起人は、設立事務の責任者であると同時に、出資者でもあります。
 つまり、発起人による決定には、設立事務の責任者としての決定と、出資者としての決定の両者があり、前者は、取締役が複数いる場合と同じ取扱い(頭数の過半数)をするのが妥当であり、後者は、株主総会や創立総会と同じ取扱い(議決権の過半数)をするのが妥当です。
 事柄の性質に応じて決めるべきというのは、おっしゃるとおりですが、事柄の性質に応じて検討したところ(例えば、募集設立の時に、創立総会が決定に関与できるような事項は、出資者として決定に関与する事項と考えるべき)、今の条文に落ち着いたのです。
 なお、「頭数の過半数」の規定を置かずに、「議決権の過半数」だけ規定を置くのは、旧商法時代からの名残です。
 また、設立時代表取締役の選定は、役員の選任ではありません。代表権の付与行為です。設立においては、定款に定めを置かない限り、創立総会に代表権の付与権限はありませんから、代表権の付与は、出資者としての決定ではありません。とすると、原則どおり、設立事務の一つとして、発起人の頭数の過半数で決めるべきだという考えです。

Q5
会社法の条文に使用されている用語の違いについて教えてください。
かなり前(2006年3月18日)のQ4で会社法438条の提出と提供についての解説
が為されていますが、その解説では「提供」は電磁的方法で情報を提供する場合の概念とされています。そういたしますと、437条は「提供」となっていますので、計算書類や事業報告の株主への提供は電磁的方法に依らなければならないということになるのでしょうか?また、会社法301条1項では、株主総会参考書類や議決権行使書について「交付」とされていますが、上記の解説からすると「提出」ではないのでしょうか?301条2項では、「電磁的方法により提供」となっており、単純に「提供」とはなっていませんが、提出、提供、交付はどのように使い分けされているのでしょうか?
投稿 四苦八苦 | 2007年1月23日 (火) 00時55分
A5
 「提供」という文言は、一般には、情報の提供のことを意味しますので、それだけで、「電磁的方法による提供」を意味するわけではありません。
 437条は、招集通知に際して、計算書類等に関する情報を提供する手段を法務省令で定めるための規定ですから、同条の提供は、「電磁的方法」に限りません。
 438条は、「提出し、又は提供し」と対として使われているので、「提供」は、電磁的方法であることが特定できます。
 301条1項の「交付」は、用例に従っているだけです。

Q6
だいぶ前の記事なのですが
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50316846.html
「上の図で,親会社の取締役等が子会社の会計監査人になれるように○がついていますが,子会社の会計監査人の欠格事由になりますので,その点を訂正いたします。」とあるのですが
ここでいう取締役等は執行役も含むのでしょうか?
取締役の欄と執行役の欄の○が×になるということですか?
投稿 兼任禁止の図 | 2007年1月23日 (火) 12時35分
A6
 執行役も、×です。

Q7
Q&A4について、便乗させてください。
商業登記の通達(H18.3.31-782)には、次のように書かれています。
1の(9)設立時取締役及び発起人の権限の見直し
会社の成立前は、定款記載の最小行政区画内における本店の所在場所の決定、支店の所在場所の決定、支配人の選任、株主名簿管理人の決定等は、定款に別段の定めがない限り、発起人の議決権の過半数によることとなる。
これは、変更になったと考えて良いのでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2007年1月23日 (火) 13時11分
A7
まあ、昨日のQ&A4を読んで、そういうことを聞かないのが、大人の世界です。

Q8
1/22のQ&Aの7に関連して質問させていただきます。「非取締役会設置会社においては、自己取引・利益相反取引の承認は株主総会で行うことになると思いますが、定款により議長となる者が当該決議において特別利害関係人に該当する場合、議長を交代する必要がありますでしょうか?」との質問に、「議長の交代は不要だと思います。」とご回答いただきましたが、特別利害関係人が“取締役会”において、議決に加わることはもちろん議長になることについても否定的な判例がありますが、株主総会の場合は違うのでしょうか?
投稿 悩める株式課員 | 2007年1月23日 (火) 14時02分
A8
100問にも記載があると思いますが、取締役会における特別利害関係人は、取締役会の議事に加わることもできないと解するのが通説です。ですから、株主総会とは違います。

Q9
 会社計算規則159条には、会計監査人は会計監査報告の内容の通知に際し、独立性に関する事項、業務の継続方針、「会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制」(以下、まとめて「品質管理体制等」という)を通知しなければならないとしています。
 ただし、すべての監査役が既に当該事項を知っている場合は、この限りではないとも書かれています。
 また「品質管理体制等」に関する通知を受けた監査役は、その内容を確認し、「消極的な保証」のレベルの保証をすべきとの某大学教授の意見を読みました。
 当社では監査役が期初に監査法人から監査計画・監査方針の説明を受ける際、上記の「品質管理体制等」に関する説明も同時に受けています。
 この場合、下記の考え方で問題ないでしょうか?
①期初の説明で「すべての監査役が既に当該事項を知っている」ことになるので、期末に会計監査報告の内容の通知を受ける際、改めて「品質管理体制等」に関する通知を受ける必要はない。
②ただし、監査役は会計監査報告の内容の通知を受ける際、「品質管理体制等」が実際どのように運用されたかを会計監査人へ質問すること等により、その内容を再確認することが望ましい。
③「品質管理体制等」に関する通知を基に、監査役が会計監査人の「品質管理体制等」を「保証」する必要はないが、会計監査人の監査の方法を相当であると判断するための参考事項として、監査役(会)の監査報告に記載することが求められている。
投稿 迷える仔羊 | 2007年1月23日 (火) 14時33分
A9
 監査役は、会計監査人の監査の方法又は結果が相当かどうかを判断しなければいけませんので、②は、「望ましい」という訓示よりは強いでしょう。
 ③は、「保証」の意味がよく分かりません。

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2007年1月22日 (月)

【入門】発起人の権限(2)

 前回は、発起人が、設立にあたり、どんなことをやっているのかを概観した上で、その行為が
 ① 発起人の権限の「範囲内」の行為であれば、設立後の会社に効果が帰属する(=財産は会社のものになるし、債務も会社が負担する。)
 ② 発起人の権限の「範囲外」の行為であれば、設立後の会社に効果が帰属しない
ということを説明しました。

 今回は、まず、設立後の会社に効果を帰属させるための、発起人の権限以外の要件を説明します。

2 効果帰属要件
 取引をする相手側の立場に立ってみると、発起人の権限の有無だけで、誰に契約の効果が帰属するのかを決められると、困る場合があります。

 たとえば、サミーさんは、松真さんが、「元裁判官で立派な家に住んでいるから、きっと信用できる人だろう」と思って、松真さんにHな本を100冊を売ったとしましょう。
 ところが、月末に、松真さんに、その本の代金30万円を請求したところ、松真さんは
  あれは、俺が買ったのではなくて、株式会社正直法務の開業準備のために買ったんだよ。定款には、財産引受として「Hな本30万円」という記載もあるから、会社に請求してくれよ。
と言って支払いを拒みました。
 サミーさんは、松真さん個人を信頼したのですから、いまさら見も知らぬ株式会社正直法務に請求をしろと言われても困ります。

 こういう問題が生じないようにするため、法律の世界では、
  契約をする人(代表者・代理人)が、第三者(会社・本人)にその契約の効力を帰属させようというときには、顕名(けんめい)をしなければならない
というルールになっています。

 顕名というと難しそうですが、会社ならば
  「株式会社正直法務 代表取締役 湯水金使」
という名義を使って契約する等、誰に効果が帰属するのかを明らかにして契約をしろというだけのことです。

 もっとも、発起人が設立準備をしているときは、まだ効果帰属主体である会社が存在していないので
 ①「株式会社正直法務 発起人代表 湯水金使」等の名義を使ったり
 ② 発起人の個人名義で契約するならば、契約内容において設立後の会社に効果帰属することを明らかにする
などの方策を用います。

 逆に、発起人が、個人名義で契約をしている場合には、顕名がない限り、発起人に効果が帰属します。
 発起人が、内心で「会社のためにやっている」と思っても駄目であり、この場合は、発起人が、個人で財産を取得し、代金も自分で払わなければいけません。
 もちろん、その財産は、会社のために買ったものなのでしょうから、通常は、発起人が購入した後に、
  ①設立前に、会社との間で売買契約(財産引受等)を締結する
  ②設立後に代表取締役と売買契約を締結するか(もっとも、財産の額が一定以上になると事後設立と呼ばれ、株主総会の決議が必要になります)する
ということになるでしょう。

 以上の①発起人の権限、②顕名に加え、③発起人の意思表示が有効であることが、発起人の行為を会社に効果帰属させるための3要件です。基本的には、民法の代理と同じだということが分かりますね。

3 発起人の行為の分類
(1)設立準備行為と開業準備行為
 解答例にもあるとおり、発起人の権限の範囲を検討するときには
 A 設立準備行為 ①設立を直接の目的とする行為
         ②設立のために必要な行為
 B 開業準備行為 ③財産引受
         ④財産引受以外の開業準備行為
の4つに分けて考えます。

 極めて、ラフな話をすると
 A 発起人は、会社の設立をする人ですから、設立準備行為は、原則できますが、
 B 開業準備行為については、どんな商品を仕入れるか等は、経営の専門家である取締役が決めればよいので、会社を設立する人に過ぎない発起人が決めるのは、余計なお世話だから、原則できない。ただし、③財産引受は、会社法が例外的に認めている。
ということになるでしょう。

 しかし、仮に「発起人の権限が設立準備行為に無制限に及ぶ」という学説に立つと
   発起人が費用を支払った場合には、定款に記載された設立費用を超えて、求償することはできないから、それ以上に会社の財産が減少しないが、発起人が費用を払っていない場合には、会社が、その未払い債務を債権者に支払わなければならなくなるから、設立の健全性を維持するという28条の趣旨が没却される
等という問題が生じることになります。

それで、
  設立準備行為であっても、発起人の権限が及ばない領域がある(=会社に効果帰属しない場合がある)と考えるべきではないか?
ということ等が論点となるのです。

(2)「設立を直接の目的とする行為」と「設立のために必要な行為」
 では、Aの設立準備行為を、なぜ、①設立を直接の目的とする行為と、②設立のために必要な行為に分けるのでしょうか。

 ①は、定款の作成行為、認証の申請、払込取扱委託契約の締結、検査役の選任、登記の申請等、会社法で、設立手続の一つとして規定している行為です。これらの行為は、どんな株式会社でも、必ず行わなければなりません。

 これに対し、②は、①以外の設立準備行為であり、設立のための事務員の雇用契約、設立準備のための事務所の賃貸契約等です。

 ②も、設立に役立つ行為ですが、会社法が義務づけている行為ではありません。事務員がいなくても設立はできますし、事務所を借りなくても、設立できます。つまり、①の行為がどんな株式会社にとっても必要不可欠な行為であるのに対し、②の行為は、必要不可欠ではないが、設立に役立つ行為です。

 ①と②の区別がつかない人は、28条4号かっこ書・会社法施行規則5条を見てください。
 そこに列挙されている設立費用の根拠となる契約が、①の行為です。すなわち、当該条文には、定款認証の手数料、定款に係る印紙税、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料及び報酬、検査役の報酬、株式会社の設立の登記の登録免許税が書かれていますが、それらの設立費用の発生原因となる法律行為を考えれば、先ほど、①の行為として列挙した行為になります。

 この28条4号かっこ書は、直接には、
   発起人が費用を支払った場合に、定款に記載がなくても、求償することができる設立費用
を規定しています。設立を直接の目的とする行為に係る費用は、どんな会社でも必ず必要な費用ですし、その費用が法定されていたり(認証手数料・印紙税・登録免許税)、過大になる可能性が低い(検査役の報酬、払込取扱銀行の手数料等)ので、定款に記載しなくても、求償ができることにしているわけです。

 ところが、求償の制限にとどまらず、こうした設立を直接の目的とする行為については、
     発起人の権限が及び、仮に費用が未払いだった場合には、会社にその費用の支払い債務が帰属する
と解するのが通説です。
 つまり、①の行為については
   求償可能な範囲=発起人の権限の範囲
であることは、ほぼ争いがありません。

 これに対し、②の行為は、先ほど述べたように、会社ごとに、いろいろなバリエーションがあり、費用も一律ではありません。たとえば、設立事務所を借りるにしても、六本木ヒルズを借りるのと、多摩センターで借りるのでは、家賃が違うでしょう。
 そのため、②の行為については、
   定款に記載した設立費用の範囲内で求償可能である
という点については争いはないものの
  X説 ②の行為はすべて発起人の権限の範囲内である=会社に効果帰属する。
  Y説 求償可能な範囲(28条4号)=発起人の権限の範囲=会社に効果が帰属する
  Z説 ②の行為は、発起人の権限の範囲外である=会社に効果帰属しない
という争いが生じるわけです。

 学説では、X説が多数説ですが、判例と100問は、Y説を採っています。

 このように、発起人の権限の範囲を考えるときに、同じ設立準備行為であっても、①の行為については権限が及ぶことについて争いはないが、②の行為については争いがあるから、①の行為と②の行為を分類しているのです。

(3)開業準備行為の分類
 Bの開業準備行為についても、③財産引受と④財産引受以外の開業準備行為の2つに分類されます。
 ③財産引受は、既に説明したとおり、財産の購入契約であり、それに対し、④それ以外の開業準備行為は、店舗の賃借契約の締結や、事業資金の借入契約等がこれに該当します。

 この③と④も、③財産引受については、定款に記載した場合に発起人の権限が及ぶことについて争いが無いのに対して、④については
  P説 財産引受の規定を類推適用する
  Q説 発起人の権限が及ばない
という学説上の争いがありますから(Q説が通説・100問説です)、やはり分けて論じる方が無難です。

 それで、100問でも、開業準備行為についても、③と④を区別して、解答しています。

 こうして見ると
 A 設立準備行為 ①設立を直接の目的の行為・・・・・28条4号かっこ書
         ②設立のために必要な行為・・・・・28条4号
 B 開業準備行為 ③財産引受・・・・・・・・・・・・28条2号
         ④財産引受以外の開業準備行為・・・条文なし
というように、①~④と条文は対応関係にありますから、
  発起人の権限と28条をリンクさせて考えるのが自然
だと思うのですが
  そういう見解(=判例・100問の見解)は、学会の中では「不合理な見解」とされ
なぜかマイナーな説になっています。
 私は、ちっとも不合理じゃないと思うのですが、そこらへんは、また次回にお話ししましょう。

(質問コーナー)
Q1
会社法461条には「効力を生ずる日」って書いてありますが,これは違法配当が有効だということでしょうか?

もともと,違法配当は「無効」のはずですが,なぜ会社法条文はあえて「効力」があることを前提とした文言になったのですか?
投稿 貳 | 2007年1月17日 (水) 23時30分
A1
 違法配当は、有効です。その理由は、商事法務に掲載された葉玉論文か、このブログの過去の記事を参照してください。

Q2
ところで、質問があります。
「監査役の会社に対する責任」です。
商法では、「会社に対し連帯して」責任を負うと言うことでしたが(商法277条)、
この条数に相当するとされる会社法423条1項では、「連帯して」という文言がなくなりました。

①この商法の「連帯して」というのは、どういう意味だったのでしょうか?
②そして、会社法では実際に、監査役の任務懈怠により会社に損害を被らせた場合、取締役や当該会社の他の監査役は、「連帯して」責任を負うのでしょうか。
投稿 マルコ | 2007年1月17日 (水) 23時41分
A2
430条で連帯債務になっています。

Q3
株式交換が行われる場合の新株予約権の処理についての質問です。
新株予約権を発行する場合に236条1項8号ニでは、株式交換が行われた場合に、完全親会社となる会社の新株予約権を交付することができる旨を内容とすることが定められています。
一方、773条1項9号では、768条1項4号では、株式交換完全子会社の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代わる株式交換完全親会社の新株予約権を交付するときには各号に掲げる事由を株式交換契約に定める、と規定しています。
①これは、236条1項8号ニで新株予約権の内容として完全親会社となる会社の新株予約権を交付することができる旨を定めていなくても、773条1項9号で、完全親会社となる会社の新株予約権を交付することができるということなのでしょうか?
②そうすると236条1項8号ニで、わざわざ新株予約権の内容にそのような内容を盛り込むことは、新株予約権を取得しようとする人に対して、買取請求権(787Ⅰ③)を認めることになるだけで、会社側にとってはあまりメリットのある規定ではないのでしょうか?
投稿 Popeye | 2007年1月18日 (木) 01時31分
A3
① できます。
② 新株予約権者にメリットがあれば、新株予約権者は安心するので、高く発行できます。

Q4
 会社法では、発起人の権限の見直しがされていますが、権限及び決定の方法に関する総則規定が置かれていませんね。
 決定の方法に関して、登記実務は、会社法第40条第1項と同様に「議決権の過半数」説に立っていますが、学説では、従来どおり組合法理により「頭数の過半数」説のようです(江頭73頁ほか)。
 この段階で意思不統一のようでは、株式会社の設立に至らないので、あまり問題になることはないのかもしれませんが、条文の手当てが必要だったのでは、と思います。
投稿 内藤卓 | 2007年1月18日 (木) 10時30分
A4
 「発起人の議決権の過半数」による決定は、発起人が株式引受人として行動する場合、つまり、設立時役員の選任・解任に関する行為のときに限られます。
 発起人が、設立事務の責任者として活動する場合には、発起人の頭数の過半数です(組合法理という説明はおかしいと思いますが)。
 内藤さんが「意思不統一」とおっしゃている根拠は分かっていますが、すでにその点については、意思統一ができていると思います。

Q5
基本的な質問で申し訳ありませんが、監査役の設置について教えてください。
取締役会設置会社は、非公開会社でも会計参与を置いた場合を除き監査役を置かなければなりません。
そして、この監査役の権限を会計に関するものに限定する定款の定めを置いた場合なのですが、この会社は「監査役設置会社」にはならないが、「監査役を置かなければならない」という義務は果たしているということでよろしいのでしょうか?
条文上は、単に「監査役」となっているため、とりあえず監査役を置けば義務を果たしているとも読めるのですが、「監査役設置会社」の定義との関係で若干疑問に思ったので、回答よろしくお願いします。
投稿 飛来骨 | 2007年1月19日 (金) 15時04分
A5
会計監査限定監査役も、監査役ですので、義務は果たしています。

Q6
非取締役会設置会社において株主総会を招集する場合、議案については誰が決めることになるのでしょうか?
代表取締役がいる場合、当該代表取締役1人の判断で決定しても良いのでしょうか? もし、全取締役の協議で決める必要や、取締役会議事録に代わるような記録を残す必要があるでしょうか?
投稿 悩める株式課員 | 2007年1月19日 (金) 17時42分
A6
取締役が二人以上いる場合には、業務執行の決定又はそれに準する決定として、取締役の過半数で決するべきでしょう。記録は不要です。

Q7
非取締役会設置会社においては、自己取引・利益相反取引の承認は株主総会で行うことになると思いますが、定款により議長となる者が当該決議において特別利害関係人に該当する場合、議長を交代する必要がありますでしょうか?
投稿 悩める株式課員 | 2007年1月19日 (金) 17時44分
A7
議長の交代は不要だと思います。

Q8
親子関係について教えて下さい。
A株式会社とB合資会社がある場合。B合資会社の無限責任社員がA株式会社の代表取締役、有限責任社員の責任限度額の半額がA株式会社である場合、B合資会社はA株式会社の子会社となりますか?
会社法になって、株式会社以外でも親子会社の定義が当てはまると思いますが、無限責任社員がいる為、見分け方がよく分かりません。
投稿 サミーさん頑張れ! | 2007年1月20日 (土) 02時08分
A8
議決権の数等が分からないので、なんとも言いようがありません。

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2007年1月17日 (水)

【入門】発起人の権限(1)

 先日のアンケートで、このブログの検索の話が出ましたが、実は、私は、よく
http://krungtheep.exblog.jp/i10
というブログを参照しています。
 mashi_japanさんという方が管理されているようなのですが、ライブドア時代を含めて、記事が分類されているので便利です。
 困ったときは、参考にされるといいと思います。
 なお、mashi_japanさんへの連絡方法が分からないので、無承諾でご紹介いたしましたが、もし紹介するのがまずいということであれば、コメント欄にその旨書いていただければ、この紹介部分は削除いたします。

 今日は、第15問「発起人の権限」です。

 問題文
「株式会社の発起人の行為によって生じる権利義務のうち、どのような範囲のものが、設立の登記とともに、当該会社に帰属することになるのか。」

 発起人の権限については、典型的な論点であるにもかかわらず、初心者が理解できない分野の代表格です。

 私なりに、なぜ初心者が理解できないのか、その理由を考えてみますと
 ① 発起人が、実際に、どんなことをやっているか、よく分からない。
 ② 発起人の権限の話と、変態設立事項(設立費用や財産引受)の関係が分からない。
 ③ 発起人の権限と設立中の会社の話の関係がよく分からない。
という三重苦に苦しんでいるのではないかと思います。

 そこで、まず、①から③までを簡単に説明してから、解答例の解説に映っていきたいと思います。

1 発起人は、どんなことをやっているか。
(1) 発起人というのは、要するに、会社を設立しようとしている人です。
 ですから、会社の設立をするための事務は、基本的には、全部、発起人がやります。

 以前、お話ししたとおり、会社の設立のためには、最低限、①定款の作成、②社員の確定、③機関の具備、④設立の登記という4つの手続きをする必要があります。
                    
 いつものよう例を挙げて説明しましょう。
 松真さんと湯水さんは、本屋を開くため、株式会社正直法務を設立することにしました。その時には、次のような設立手続きを行います。

 ① 定款の作成
 発起人の松真さんと湯水さんは、二人で話し合って、定款の内容を決め、パソコンとプリンタと紙を買ってきて、定款の内容を入力して、印刷しました。
 そして、松真さんと湯水さんは、その定款を、街角にある公証人役場に持って行き、「認証」してもらいました。「認証」というのは、公証人に、定款の必要的記載事項が書いてあるか、発起人全員の意思に基づいて作られたものか等を確認してもらうことを言います。
 公証人は、公務員ですが、私達と違って定収はなく、手数料収入で生活しています。この認証の手数料は、現在、5万円です。
 (注)この時点までで
      ・誰がどんな名義でパソコンなどを買ってきたのか。
      ・パソコン・プリンタ・紙は、誰のものか。
      ・認証手数料は、誰が支払うのか。その精算はどのように行われるか。
    等の問題が生じています。

② 社員の確定
   松真さんと湯水さんは、定款で設立時出資額を100万円に決めていたので、1株1万円(一人50万円で50株ずつ)を引き受けることにしました(発起設立)。
   そこで、湯水さんは、ホーム銀行に「湯水金使(ゆみずかねし)」名義で普通預金口座を開設し、そこに50万円を入金し、松真さんも、その口座に50万円を振り込み送金しました(この場合、ホーム銀行が「払込取扱銀行」になります。)
   (注)
     発起設立をするときは、「普通預金」口座でよいので、通常、手数料等はかかりません。また、ホーム銀行に、「この口座は払込み用ですよ」と知らせる必要もないので、ホーム銀行は、何も知らない間に、払込取扱銀行になっている場合もあります。
     これに対し、募集設立をするときは、ホーム銀行に払込保管証明書を発行してもらわないと、設立の登記ができませんので、払込の前に、湯水さんは、ホーム銀行との間で、株式払込取扱委託契約を締結し、湯水金使名義の「別段預金」口座を開設します。
     そして、松真さんと湯水さんが、この別段預金口座に50万円ずつ振込をすると、ホーム銀行が「払込保管証明書」を発行してくれるので、それを持って、法務局に、設立の登記を申請することになります。この場合、ホーム銀行に、払込保管証明書の発行手数料等を支払う必要があります。手数料は、銀行や払込金の額によって違いますが、普通、数千円から数万円です。

③ 機関の具備
   正直法務は、定款で特に機関を定めなかったので、発起人の二人で話し合って、湯水さんを設立時取締役(設立の時に取締役になる人)に選任しました。取締役会がないので、湯水さんは、自動的に設立時代表取締役にもなります。
 (注)
  機関の具備には、普通、お金はかかりません。

④ 設立の登記
   設立時代表取締役の湯水さんは、司法書士に頼んで、設立の登記をしてもらいました。
   (注)
   このとき、法務局に支払う「登録免許税」と司法書士に支払う手数料が必要です。
 
 以上のように①から④までの手続が最低限必要な行為です。

⑤ さらに、松真さんと湯水さんは、実際には、設立後すぐに商売が始められるように
a 商品を仕入れておく。
b 本店にする事務所を借りる。
c 「正直法務ブックセンター 2月1日堂々オープン! 従業員募集中(私達とちへどをはきながら一緒に働いてみませんか?)」と広告をうつ。
等の行為(開業準備行為)も一緒にやるのが普通です。

2  変態設立事項との関係
 松真さん達が、①から⑤の行為をやるときには、何かとお金がかかります。
 では、このお金は、誰が支払うのでしょうか。

(a) 設立前にお金を支払わなければならないときは、株式会社正直法務がまだ生まれていない以上、松真さん達が、個人のお金で支払うのが普通です。例えるなら、妊娠したママが、生まれてくる子供のために、ベビー服やベビーベッドを買ってあげるのと同じですね。
 
 もっとも、ママが、子供が生まれた後に
  洋服代とベッド代を支払え。
等ということは、通常ありませんが、発起人である松真さん達が、正直法務の設立後に
  「設立のために使ったお金を、立て替え払いしているので、その分のお金を下さい。」
と請求することはできます(発起人の会社に対する求償権)。
 そうでないと
  「松真さんが定款の認証手数料を払い、湯水さんが登記費用を払う」
というような役割分担をしたときに、不公平が生じるおそれがあります。

 しかし、無制限に発起人が立て替え払いをしたお金を会社に請求できることとすると、過大な費用を支払ってしまうような発起人があらわれかねません。

 例えば、松真さんが、設立のコンサルタントをしたサミーさんに、10億円のコンサルタント料を支払ったからといって、それを全額会社に請求することができるとすると、会社が、設立当初から、松真さんに10億円の立替金の支払債務を負担することになり、生まれ立てで瀕死の状態になってしまいます。

 そこで、会社法は、「株式会社の負担する設立に関する費用」については、定款に記載しない限り、その効力を生じないこととして(28条4号)、発起人の会社に対する求償権を制限して、会社に過剰な負担が生じないように配慮しているのです。

 このように会社の財産が設立時から毀損されないようにするため、28条は、設立費用の他にも、財産引受(2号)や発起人の報酬(3号)も、定款の記載がない限り、効力を生じないこととしています。
 財産引受というのは、発起人が、設立前に会社の事業で使う物を購入する契約を結ぶことをいいます(要するに、売買契約の一種です)。発起人の報酬は、発起人が設立事務をしてくれた事に対する会社からのお礼です。そして、このような28条各号の列挙事由は、一般に「変態設立事項」と呼ばれています。
 なお、私も、たまに
  この変態!
と言われることはありますが、「変態」には
 (1)形や状態が変わること。また、その変わった形や状態。
 (2)「変態性欲」の略。また、その傾向のある人。
等の意味があり(goo辞書より)、変態設立事項の変態は(1)、「この変態!」は(2)を意味するので、誤解をしないようにしてください。

(b) さて、設立前に、設立費用等を支払う方法は、もう一つあります。
 これは、発起設立だけで許されている方法なのですが、払込取扱銀行(ホーム銀行)の発起人名義の口座から現金を下ろしてきて、それで設立費用を支払うことができます。

 募集設立の場合には、設立の登記をしない限り、発起人の別段預金口座から現金を下ろすことはできませんから、発起人が、設立前に必要な費用を立て替え払いするしかありませんが、発起設立は、発起人名義の普通預金口座に払込金を預金しているので、それを下ろして、設立費用に充てることができるのです。
 この場合、設立費用に充てた現金は、口座の名義こそ、発起人である「湯水金使」になっていますが、松真さんが払込みをしたお金もその口座に入金されていることからも分かるように、実質的には、会社の財産となるべきお金です。
 ですから、湯水さんが、払込金から設立費用を支払った場合には、(a)と違って、設立後に、会社に対して求償することはできません。

 (b)の場面では、あまり問題が生じないような感じがしますが、実は、湯水さんが、
   定款で定めた設立費用の額を超えて、払込金から設立費用を支払った場合にどうなるのか?
という問題が、会社法の世界では存在します(旧商法では、発起設立でも払込保管証明が必要だったので、この問題は生じませんでした)。これを、どう考えるかについては、(c)とも関連しますので、(c)で検討しましょう。

(c)  (a)(b)は「設立前」にお金を支払う話でしたが、「設立後」にお金を支払わなければならない場合は、どうなるんでしょうか。
 設立前は、会社が存在しない以上、発起人が払うしかなかったわけですが、設立後は、会社という法人格が存在するので
  発起人が支払うべきなのか、会社が支払うべきなのか。
という問題が生じます。

 法的に言い替えれば、発起人が行った行為が、発起人に効果帰属するか、それとも、会社に帰属するかということです。

 ある人の行為(契約等)の効果を、会社に帰属させるためには、代表権又は代理権が必要です。

 ご承知のように、会社の代表者は、代表取締役又は代表執行役ですし、発起人は、会社から代理権を授与されたわけでもありませんから
  発起人の行為が、会社に帰属するなんていうことはないんじゃないの?
という感じもします。
 
 しかし、28条2号の財産引受は、
  「発起人が、株式会社の成立後に(成立を条件に)、会社が財産を譲り受けることを約束すること」
を意味し、同号は、定款にその財産の価額や譲渡人の氏名等を記載すれば、「効力」を生ずることを前提にした規定ですから
  発起人は、28条2号の要件を充たす限り、会社が財産を譲り受ける契約を締結する権限(=成立後に会社に効果帰属させるための代表権のようなもの)を持っている。
ということができます。
 例えば、前記⑤のaで述べたように、正直法務が、設立後に、すぐに本屋を開けるように、湯水さんが法務関係の本を、松真さんは客寄せのためのHな本を、出版社から仕入れる契約を結び、代金の支払いは、設立後の2月末に支払う約束をしたとしましょう。
 このように発起人が、設立後に、会社の財産にするものを購入する契約が財産引受です。

 同じことを実現するために、松真さんが、まず個人でHな本を購入し、代金も自分で支払い、正直法務の設立後に、そのHな本を正直法務に購入してもらうという方法もあります。
 しかし、松真さんが、Hな本を個人で購入したことが奥さんに知られた場合のリスクはあまりにも高いですし、会社の事業で使う商品なのに、一旦、個人のお金を出したくないというのが、松真さんの気持ちでしょう。

 これに対し、松真さんが、発起人として、会社の成立を条件に、会社がHな本を購入する契約(本の所有権は会社に帰属し、代金の支払い義務も会社が負担する契約)を結べば、松真さんの家庭に荒波は生じません。

 そこで、会社法は、開業を円滑に行うことができるようにするため、「設立の責任者」に過ぎない発起人に、「事業の準備」をする権限を特別に与えているのです。

 しかし、先ほど申し上げたように、発起人が、不要な物を買ったり、高い買い物をしたりすると、設立の健全性を保つことができないので、会社法は、財産引受を定款の変態設立事項とすることで
  定款に記載した場合だけ、発起人の権限を認める
ということにしています。

 詳しくは、各論で述べますが、ここでは
  28条2号(財産引受の規定)は、発起人の権限を定めた規定であることについては、争いはない
ということを覚えておいていただきたいと思います。
 ちなみに、発起人の報酬(28条3号)も、発起人が会社に対して報酬を請求することができる範囲を制限するものですが、報酬請求権は、会社と発起人との間の報酬契約によって生ずるものですから
  28条3号(発起人の報酬)も、会社との間の報酬契約を締結する発起人の権限を定めた規定である
ということができます。
 そして、問題になるのが
  28条4号(設立費用)の規定が、発起人の権限を定めた規定と言えるか?
ということであり、これが第15問の主たる論点の一つなのです。

3 設立中の会社
 設立中の会社というのは、定款の作成等によって会社の実体は形成されたが、登記未了であるため、法人格を取得していない段階におけるその「実体」のことをいいます。
 
 この設立中の会社は、一般に「権利能力なき社団」の一つと言われます。
 私は、その考え方に反対するわけではないものの、同窓会などの普通の権利能力なき社団では、社団財産の帰属形態は「社員の持分のない総有である」とするのが判例・通説なので、「設立中の会社について「持分がない」と言い切って良いのだろうか?」という疑問はもっております。ただ、その話は、深入りすると危険なので、ここでは、「権利能力なき社団」だということを覚えておきましょう。

 この「設立中の会社」という概念は、会社法には規定がないのですが、払込金や発起人が会社設立のために取得した財産等が、会社の設立によって、当然に会社に帰属することとなることを説明するために分かりやすいので、「設立中の会社」の存在を認めるのが通説になっています。

 例えば、
 「松真さんが、設立前に、パソコン・プリンタ・紙を買ってきて、定款を作成しましたが、そのパソコンや印刷物は、誰のものなのでしょうか」
という問いに対して、
「設立前には、株式会社正直法務は存在しないので、その時点では、会社のものではない」
と答えざるをえません。
 しかし、「お金を出した松真さんの単独所有だ」とか、「発起人2人の通常の共有だ」とか考えると、会社が設立した後に、
  松真さんが、会社に売却しない限り、印刷物等の所有権が移転しない
ということになり、大変、面倒くさいです。
 また、募集設立の場合において、財産の購入時には存在しなかった引受人も、共有の主体になるのだろうか、という疑問も生じます。

 そこで、
① 設立手続中には、「設立中の会社」という権利能力なき社団が存在しており、発起人は、その実質的代表者となる。
② 発起人が、その権限の範囲内で行った行為は、設立中の会社に実質的に帰属する。だから、発起人が設立のために購入した財産は、設立中の会社のものになる。
③ 会社の設立によって、設立中の会社は、同一性を保ったまま、法人格を取得するから、発起人が、特に売買等をしなくても、設立中の会社に実質的に帰属していた財産は、会社の財産となる。
という説明がされているのです。

 ①から③までには、それぞれ理論を超えたレトリックが存在するのですが、これはこれで分かりやすいので、私もよく説明として利用します。

 しかし、このメジャーな説明を理論的に推し進める人がいて、会社の権利能力や代表者の代表権の範囲と同じ議論を設立中の会社に持ち込み
(a) 設立中の会社の実質的権利能力の範囲は、何か。
(b) 発起人の権限は、何か。
等が論じられることがあります。
 
 私は、個人的には、もともとレトリックの入った説明をどんなに論理的に説明しようとしてもしょうがないし、どうせやるなら、徹底的に、通常の「権利能力なき社団」との違いに踏み込んで検討してもらいたいと思っていますが、初心者の皆さんにそれを言っても困るだけでしょう。

 そこで、大事なことだけお話しすると
・ 設立中の会社は、発起人の行為が、設立後の会社に帰属することの分かりやすい説明に過ぎないので、そういうものと思って解答する。
・ 設立中の会社の実質的権利能力の論点は、条文から、かけ離れた議論であるし、特殊な説に立たない限り、結論に影響を与えないので、あえて論ずる必要は少ない。
・ 実際の問題において、発起人の行為が成立後の会社に帰属するかどうかは、発起人の権限がその行為に及んでいるかどうか(28条の解釈を含む。)ということを論ずれば足りる。
ということを覚えておきましょう。

次回は、各論に入ります。

(質問コーナー)
Q1
またまた質問させてください。下記の事例は可能でしょうか?
①定款に107条の定めをしたが、実際には普通株式のみ発行
②定款に108条の定めを2種類したが、実際には普通株式のみ発行
③定款に2種類の種類株を定め、実際には1種類の種類株と普通株式の発行
④例えば、役員選解任の種類株式だけ必要な場合、1つダミー株と役員選解任の定めを定款にしますが、今までの普通株式はそのままで、役員選解任のみ発行することは可能でしょうか?それとも、この普通株式に何かしらの変更を加える必要があるのでしょうか(例えば、他の種類株式に変更する等)?
宜しくお願い致します。
投稿 サミーさん頑張れ! | 2007/01/16 1:28:52
A1
「普通株式」というのは、会社法にはない概念ですが、とりあえず、特別な定めが何もない株式ということでお答えします。
普通株式と種類株式については、次の記事を参考にしてください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50329193

①できません。
②③この場合、種類株式の一つとして、普通株式が確保されているんでしょうか?普通株式を入れて、合計3種類ならできますし、合計2種類ならできません。
④取締役等選解任権付株式を1種類だけ発行するという意味が分かりません。当該制度を誤解しているのではないでしょうか?

Q2
サミー先生、Q14とQ15のご回答有難うございます。
従業員の日常業務は代理権に基づくとのご回答でしたので、この従業員の代理権は会社(本人)の授権に基づくので、業務執行者の死亡により消滅しないとの法律構成だと思います。私は消滅すると考えていたのですが、それは従業員の代理権は、株主総会により代表権の委任を受けた業務執行者の授権に基づくもの、と考えていたからです。つまり、本人が当該会社で、業務執行者が代理人、従業員が復代理人との立場になるので、業務執行者による従業員への授権行為は、(授権行為を委任類似の無名契約ととらえると)民法653条1号の類推適用により消滅する、と解釈されるのではないかと考えていたのです。
従業員の代理権を会社からの直接の授権ととらえると、業務執行者の代表権(こちらも会社からの直接の授権)と並列的に従業員の代理権がある形になり、実態(従業員と業務執行者には上下関係がある点)とそぐわない気がするのですが、この点は如何でしょうか?
投稿 NK | 2007/01/16 3:20:56
A2
従業員への授権契約は、会社との間で締結されたものであり、業務執行者は法的効果の帰属主体ではありません。このような場面で、民法653条1項が類推適用されると、代表者が死ぬと、会社の締結した委任契約の全てが影響を受けてしまいますので、それはないでしょう。

Q4
Q20に関連してですが、322条1項1号括弧書きで111条1項又は2項に該当するものを除外しているのは、「当該括弧書きの行為は、立法技術上の観点(株主全員の同意を決議とは整理していないので、111条1項の行為を322条及び324条で規定できなかった等)から別の条文(111条1項又は2項)で決議が必要な旨を規定しているから重ねて規定する必要はないため」と理解しているのですが、これで宜しいでしょうか?
投稿 NK | 2007/01/16 3:22:19
A4
そんなところでしょう。

Q5
① 自己新株予約権の処分について、会社法上の差し止めの制度はありません。
 しかし、違法な処分をしようとする場合には、何らかの法的根拠により差し止められる可能性はあります。
とのご回答ですが、違法な処分とはどのようなものになりますでしょうか。
例えば、取得した新株予約権を、会社が好きな会社に割り当てた場合(買収防衛において、ホワイトナイトへの割当といった場面が想定されます)、
あり得るとすれば、取締役の善管注意義務違反、当該予約権の行使に対する新株発行無効(判例の流れを見るに、厳しいと思いますが・・・)くらいでしょうか?
何か思い当たる根拠があれば、イメージでも結構ですので、教えて頂ければ幸いです。
投稿 かおるん | 2007/01/16 11:25:40
A5
 差止めについては、簡単に語ることができない難問です。

Q6
 取締役の一人に募集株式を割り当てることが予定されており,取締役会において募集事項を決定する場合についてです。
 旧商法下では,当該取締役は特別利害関係人ということで,新株発行事項を決定する取締役会決議には参加できないという理解をしておりました。
 これに対し会社法下では,募集事項の決定と割当先の決定とが明示的に別個の決定事項とされたということで,当該取締役を必ずしも募集事項の決定から排除する必要はなく(又は排除してはならず),「割当先の決定」について議案を分けた上で,その利益相反の承認(又は会社法204条2項の決議)に参加できないことになるのではないか,という問題意識を持っております。

投稿 yasuko | 2007/01/16 12:33:14
A6
理論的には、おっしゃることは分かるのですが、第三者への有利発行の場合を考えれば分かるとおり、募集事項の決定を行う場合に、取締役が絶対に特別利害関係人にならないとは言い切れないように思います。

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2007年1月16日 (火)

回答ありがとうございました。

 アンケートへのご回答ありがとうございました。
 こうしたアンケートを通じて、読者の顔が見えてくると、大変励みになります。

 ところで、アンケートの中で「携帯で見たい」という意見がありましたが、携帯で見れるようにするためには、どうしたらいいのでしょうか?
 簡単にできることなら、対応したいと思いますが、いまいち分かりません。

 また、ブログの検索の要望もありましたが、ココログには検索機能があるんでしょうか?
 私は、gooやASKのブログ検索をよく使いますが。

 いずれにせよ、入門編を楽しみにされている方がいる以上、これからも入門編は続けていきましょう。
 といいつつ、今日は、ボスの送別会でたらふく飲んでしまったため、質問コーナーのみにさせていただきます・・・。

(質問コーナー)
Q1
事業報告や総会参考書類の記載に関する会社法施行規則の規定について、以下の質問をお許し下さい。
①特定関係事業について:
「主要な取引先である者」というのがありますが、これは当該株式会社(甲)から見て「主要な」取引先(乙)に限定される、つまり、乙から見て甲が「主要な」取引先であっても、甲から見て乙が「主要な」取引先でなければ、乙は甲の「主要な取引先」には該当しない、という理解で宜しいでしょうか。
②社外役員(候補者)の親族関係の開示について:
「配偶者、三親等以内の親族」まではいいのですが、「その他これに準ずる者」とはなんでしょう? 内縁(およびその親族)くらいしか想像できないのですが?
投稿 great family | 2007/01/12 0:09:05
A1
①そのとおりです。甲社から見て、乙社が主要かどうかであり、乙社から見て主要かどうかは関係ありません。そうでないと、会社は、すべての取引先のPL等を検討して、自分が主要かどうかを判断しなければならなくなってしまいます。

②内縁等です。愛人が含まれるかどうかは、争いがあります(笑)。

Q2
取締役会において、棄権票が出た場合の扱いについて質問させてください。
取締役が4名(ABCD)の取締役会設置会社において、代表取締役選定の決議を行うため、取締役会を開催し、ABCの3名が出席(Dは欠席)しました。
そして、同決議の採決の際、ABは「賛成」、Cは「棄権」しました。
この場合、棄権票を「反対票」と解するか、「退席」と同様ノーカウントとするかで、決議の成否に違いがでると思います。
具体的には、①「反対票」とした場合、定足数算定の基礎=4名・定足数=3名であるため、ABC(3名)が出席しAB(2名)が賛成すれば、決議は有効に成立すると考えます。
一方、②「退席」と同視した場合、定足数算定の基礎=4名・定足数=3名という点は①と同じですが、AB(2名)しか出席していないこととなるため、定足数を充たさず、決議は成立しないと思います。
①(反対票)と②(退席)のどちらの考え方によるべきでしょうか?
お手数ですが、ご教示ください。
投稿 water | 2007/01/12 10:01:58
A2
「棄権」というのは、会社法にない制度なので、単なる事実認定の問題でしょう。
一般的に言えば、棄権者も、決議に出席をしている以上、定足数には算定されるでしょう。
 また、決議成立の要件は、賛成が過半数あるかどうかですから、棄権は、「賛成」でない以上、反対と同様の取扱いになると解するのではないでしょうか。

Q3
自己新株予約権について、2点、質問させてください。
①自己新株予約権については、その処分に関し、新株予約権の発行とは取扱っていないと認識しています。
そうすると、自己新株予約権の処分については、差し止め請求はない、という理解で正しいのでしょうか。
そうなると、会社としては、取締役の善管注意義務はあるとしても、自己新株予約権を、好きに割り当てられる(不公正発行とか、有利発行とかの議論は無い)ことになるのでしょうか(あり得るとすれば、予約権の行使に伴う新株発行について、発行無効の訴えがあるかどうか、になりますか?)。

②新株予約権に取得条項を付した場合、一度取得して自己新株予約権になってしまうと、取得条項は当然に消えてしまうのでしょうか。
それとも、設計次第で、取得条項を消さない、ということも可能なのでしょうか。

お手数ですが、教えてください。よろしくお願い致します!
投稿 かおるん | 2007/01/12 10:13:50
A3
① 自己新株予約権の処分について、会社法上の差し止めの制度はありません。
 しかし、違法な処分をしようとする場合には、何らかの法的根拠により差し止められる可能性はあります。

② 一度、取得されたからといって、取得条項が当然に消えるわけではありません。設計次第です。

Q4
① 合併の事前開示書類なのですが、施行規則191条1項3号や5号にあげてある重要な財産の処分云々とありますが、具体的にどのようなものが考えられるのでしょうか?
② また、合併の効力発生日を7月1日とした場合で事業年度末日が6月30日の場合は、施行規則191条1項5号イの2つめの括弧書にある、「備置開始日から効力発生日までの間に最終事業年度が存する場合」にあたりますが、その場合、その後に発生する重大な財産の処分はありえない(間が1日もない)ので、記載不要と考えて宜しいのでしょうか?
以上、宜しく御願い致します。
投稿 山下昇 | 2007/01/12 10:42:39
A4
① 最終の貸借対照表の確定後に、メインの工場を売却したとか、そういうことでしょう。
② その事例では、合併の効力発生日である7月1日の時点では、前日の6月30日
の時点の貸借対照表は、作成されてもいないし、承認もされていないので、その日は、最終事業年度の末日ではないと思いますが?

Q5
書物を読むと、合併や株式交換等は組織法上の行為であり、営業譲渡は取引法上の行為とあります。
そもそも組織法や取引法といったものは何なのでしょうか?
また、そこからくる違いを教えてください。
投稿 | 2007/01/12 10:47:18
A5
 「組織法」というのは、合併や会社分割等を巡る法律関係において、民法的な考え方(取引法)と違うことを結論を出したいときに、もっともらしく言い繕うための概念です。
 したがって、「そこからくる違い」というのは、論理的に導かれるものではなく、単に「民法とかとは違うよ」と言っているに過ぎません。

Q6
2007年1月11日Q3、Q4でご回答いただきました件につきまして、A社の議決権が消された場合ではなく、A社がB社の株をまったく所有していない場合でも、A社の取締役がB社の50%を超える株を所有していたら、会社法施行規則第3条3項二号か三号でA社はB社の親会社になる場合もありうるのでしょうか?
会社法施行規則第3条3項二号イ(1)の株所有がなくても、(2)か(3)で親会社になるというのがどうももやもやしております。
投稿 KIRABO | 2007/01/12 11:03:52
A6
 条文に書かれているとおりですが、ご質問の「A社がB社の株をまったく所有してない」というのが、
① A社名義でB社の株式を保有していないという意味だとすれば、A社の計算で保有している場合には、二号又は三号に該当する場合がありますし
② A社の計算で保有していないという意味だとしても、三号に該当する場合はあります。

Q7
 上記で質問している親会社子会社関係に関連して、A社B社の株主構成と取締役構成がほぼ同じであり、かつ株主と取締役がほぼ同じ場合で、施行規則第3条3項三号がどちらの会社からみても成立してしまうような時は、どちらが親会社になるのかを決める基準はありますでしょうか?

同族会社3社の議決権行使と親子関係を法及び施行規則で整理しているのですが、各々の持株比率だけでない基準が加わったことにより、複雑奇妙な関係と制約が生じてきて、もやもやと霧が晴れません。
投稿 KIRABO | 2007/01/12 15:51:52
A8
 三号が基準ですので、それより詳しい基準はありません。どちらの会社が、どちらの会社に影響を与えているかという事実認定の問題だと思いますが。

Q8
1/11 Q6の剰余金の配当決議の件、説明が悪く申し訳ありません。
3月末決算・5月の取締役会で計算書類を承認する会社が、4月の取締役会で配当を決議(配当支払は6月末)した場合、「最終事業年度の計算書類」とは、配当決議時点(4月)では前々事業年度の計算書類を指し、配当支払時点(6月)では前事業年度のそれを指します。
仮に、前々事業年度が無限定適正意見、前事業年度が不適正意見だった場合、4月の配当決議時点では会社法460条2項の要件を充足しますが、6月末の支払時点では充足しないことになります。この場合、当該決議に基づいて、配当を支払ってもよいのでしょうか。(なお、支払時点で分配可能額は足りているものとします。)
投稿 しん | 2007/01/12 16:47:44
A8
 そういう事例であれば、「決議時」に要件を充足しているかどうかで決するべきだと思います。

Q9
1株ダミー株で、発行済株式すべてが取得条項付株式である場合、取得条項付株式をすべて普通株式に戻す場合は、株主総会の特別決議で取得条項を廃止する旨の定款変更決議をすればよいと思います。
次に、発行済株式の一部を取得請求権付株式に変更する場合は、総株主の同意が必要だと思います。
では、発行済株式の一部のみを普通株式に戻すには、特別決議のみで可能でしょうか?もし、可能であるならば、その普通株式を特別決議により、取得請求権付株式にすることは可能でしょうか?
投稿 サミーさん頑張れ! | 2007/01/12 18:45:25
A9
 同一種類の「一部のみ」の株式の内容の変更は、株主平等の原則の観点から、総株主の同意が必要になると思います。

Q10
サミー先生、会社法施行規則124条7号のことで少々お尋ねします。
会社に社外役員が複数名いて、それぞれが会社法施行規則124条7号に基づき記載すべき報酬を受けている場合、その複数名分の報酬をまとめて総額記載してもよいのでしょうか?
(124条6号の場合は、まとめて総額記載できると思いますが、7号も同じに考えてよいか、念の為のお尋ねです。)
投稿 こころん | 2007/01/12 20:45:42
A10
 7号も、複数名分の報酬を総額記載することはできます。

Q11
以前のQ&Aで,会計監査人や取締役会設置会社の取締役も,会社法では「株主総会以外の機関」として整理されているとの説明がありましたし,実際に,会社法326条のタイトルや節(第2節)の名前も,それらが機関であることを前提としていることを確認しました。
 しかし,専門学校で配布されているテキスト(愛知学院大学 南川和範教授が執筆したそうです)には,「取締役会設置会社の取締役は機関じゃない」ってわざわざ書いてあります。
 これは,取締役会設置会社の取締役は,形式的には,機関という種類に属するが,実質としての機関ではなく,取締役会設置会社の取締役は実質的意味の機関ではないということなのでしょうか?
投稿 T○○ | 2007/01/12 23:44:56
A11
 「機関」という概念は、法的には、なんの効果もなく、論ずること自体、あまり意味のある話ではありません。
 「機関」をどのような定義にするかによって、「機関」かどうかは変わりますので、そのテキストが間違いとはいいませんが、会社法の法文上は、取締役は、取締役会設置会社かどうかに関わりなく、「機関」に分類されています。

Q12
組織再編に関する質問です。

 会社法785条2項1号イによれば、「反対株主」とは、株主総会に先立って反対する旨を通知し、かつ、当該株主総会において反対「した」株主、となっています。

 「した」という部分からすれば、株主が反対株主となるのは、当該株主総会の後のように思えます。そうすると、反対株主が785条1項に基づく買取請求権を行使できるのは、株主総会の後ということになります。

① まず、この解釈は妥当なのでしょうか。それとも、総会前から買い取り請求権は行使できるけれども、総会で反対しなかった場合には、買取請求は遡及的に無効(結果として反対株主にならないから請求は失当)となると解するべきなのでしょうか。

 総会後に初めて行使できるようになると解すると、千問の道標のQ892に、「総会決議の翌日を効力発生日とすることも可能となる。」という部分と、785条5項の間に問 題が生じるように思われます。
 つまり、このようにしてしまうと、反対株主が買い取り請求権を行使できる期間が非常に限定されてしまい、785条5項が、買取請求について20日前の日から効力発生日の間に行使することを定めたことを没却するものとならないのでしょうか。

② 785条5項は、反対株主の買取請求権の行使期間を、ある程度悩む時間を保障したものだと解するのは誤りでしょうか。つまり、785条5項は、行使期間を保障する趣旨は全くなく、単に行使可能期間を定めたに過ぎず、1日しか(前日に総会を行った場合、実際には1日未満)行使できなくても株式数を通知するだけで容易だから問題はない、と解するのでしょうか。
投稿 びあ | 2007/01/13 20:38:29
A12
 「反対した」の時点を、買取請求権の「行使時」と捉えると総会後にしか行使できませんが、「効力発生時」と捉えると、意思表示は、反対する前に行うことも可能です。
 このように、反対前に、反対することを条件に買取請求権を行使できるので、行使期間は20日間が確保されます。

Q13
会社と商行為に関する要件事実についてなのですが。
これまで、会社であることの摘示のみで、
商事法定利率の適用が認められたと思うのですが。
商法52条がなくなり、会社法5条ができたことで、
これからは、

1.「事業としてする行為、その事業のためにする行為」であることの摘示が必要なのでしょうか。
2.必要だとすると、たとえば、どのように摘示すればよいのでしょうか。
3.上に「これからは」と書きましたが、会社法施行後の法律行為についてということになるのでしょうか。
投稿 ちいた | 2007/01/13 22:30:19
A13
 理論的には、要件事実として、事業としてする行為又はその事業のためにする行為が必要なのでしょうが、実際には、訴状に記載された事実を見れば、通常、事業としてする行為であったということは明らかになっていると思います。

Q14
サミー先生、本日は取締役が1人の会社において、当該取締役が死亡した場合の諸問題について教えてください。
1 取締役が死亡した場合、従業員は日常業務(売買契約など)を法律上行えなくなるのか?行えなくなるとした場合、日常業務が法律上有効となるような法律構成はないか?
2 新たに取締役を選任するため臨時株主総会を開催しようとしても、取締役が不在の場合の株主総会は、会社法は想定していないと思われるので(297条、298条参照)、この場合、346条又は351条の規定により、一時役員(代表取締役)の職務を行うべき者を選任した上でないと株主総会は開催できないのか?
実務上の辻褄合わせ(冗談です)や予防策は色々考えられると思いますが、最悪のケースを想定した場合に法律上はどうなるのだろう、とふと思いましたので、以上の点宜しくお願いいたします。
投稿 NK | 2007/01/14 1:31:26
A14
1 従業員が、対外的な日常業務(売買契約)を行っている根拠が何かということにかかっていると思いますが、従業員限りで決定される売買は、代理権に基づいて行われているのではないでしょうか。とすると、会社の業務執行者が不存在になったとしても、従業員の代理権が当然に消滅するわけではなく、日常業務は行えると思います。
2 仮取締役を選定してください。

Q15
サミー先生、追加の質問ですが、種類株式発行会社(現に2種類以上発行)かつ取締役会設置会社が株式分割を行った場合、株式分割比率内で、① 発行可能株式総数を変更する場合(184条2項)と、② 単元株式数を増加変更する場合(191条)で、決議機関に差異を設けた理由を教えてください。
つまり、①②のどちらの場合も定款変更の特則であるのに、①については、種類株式発行会社では特則が認められず(=株主総会決議)、②については、特則が認められています(=取締役会決議)。
①②とも分割比率内であるならば、取締役会の権限とする政策選択も可能だと思うのですが、あえて①②で差異を設けたのは何故でしょうか?
投稿 NK | 2007/01/14 2:11:29
A15
 ①は、旧商法時代から存在する規制ですが、②は新しく会社法で作った制度なので、②の方が柔軟だというのが一番大きな理由でしょう。

Q16
社長兼なんでもの者ですが、有限会社の財務諸表にも新様式が適用されるのでしょうか。附則の読み方がよく分からないし、税理士にも頼んでないので、理解不能です。
PS
1月末に決算を税務署に提出するまえにわかるとありがたいです。
投稿 有限会社 | 2007/01/14 15:06:34

A16
 有限会社も、会社計算規則に従って、財務諸表を作成しなければなりません。
 税理士に頼まなくても、会社法対応の会計ソフトとかを使っていれば、特に困らないと思います。

Q17
初歩的な質問ですが、実は、株主総会の記載事項のうち、出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称で、特に、取締役の氏名を記載するときに悩んでおります。
たとえば、総会で即時就任承諾をした取締役でも、任期満了取締役の後任として選任された場合は記載の必要はなく、増員の場合は記載する必要がある。ただし、議事録の記載方法によって弾力的にできるのでしょうか?
迷った状態で、いつも議事録を作成しているため、よろしくお願いいたします。
投稿 法務部員1 | 2007/01/15 0:54:51
A17
 就任承諾の時期や、総会の決議の効力発生時を、調整すれば、どうとでもなる問題だと思います。

Q18
「新・会社法100問」のWhat's Missing257についてです。
条文を見ると189条2項各号には「剰余金の配当請求権」は含まれていませんが、本問ではなぜ定款により制限できない権利として扱われているのでしょうか。何かしらの解釈で導かれているものなのでしょうか。
投稿 yasuchan | 2007/01/15 4:20:10
A18
施行規則35条8号を見てください。

Q19
サミー先生  2006年12月19日のA3で事業報告の附属明細書記載事項についてご回答戴いた「決算です」です。ご回答、どうもありがとうございました。今回はその追加質問として2点につきご回答戴けたら幸甚です。
(1)2006年12月21日付けの「ひがし」さんの質問に対し、サミー先生は「直接取引については関連当事者注記に記載し、間接取引については事業報告の附属明細書に記載するという理解は間違い。両方に記載するものも生じる」旨ご回答されておりました。しかし、過去ログ2006年9月5日のA7では「関連当事者注記は直接取引、事業報告の附属明細書は間接取引をたいしょうとしているので、基本的に重なり合わない」との記載もあります。これらの整合性はどのように理解すればよろしいでしょうか。
(2)当社と当社の100%子会社との間の取引については、完全親子間取引なので利害の対立はなく利益相反取引には該当しないと思っておりました(日本監査役協会の質問コーナーでもそのように回答しているようです)。他方、12月19日のご回答(A3)では、「直接取引である以上、利益相反取引に該当すると考えたほうがリスクは少ない」とご回答戴いております。これは見解の分かれるところなのでしょうか。その場合、通説や判例といったものはあるのでしょうか。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿 決算です | 2007/01/15 13:38:53
A19
(1) 関連当事者注記に関しては、法務省外との調整もあったため、時間の流れの中で解釈に揺れが生じています。現状では、重なりあう場面があると考えています。
(2) 観念論の世界では、親会社の財産が、不当に廉価で子会社に流出したとしても、100%子会社が保有している以上、親会社に損害はないと考えることもできるかもしれません。しかし、税や分配可能額のことを考えると、そういう考えが現代で通用するかどうかは、微妙であり、100%子会社だから、利益相反取引にならないという考え方は、リスクがあると思います。

Q20
322条1項1号かっこ書きの解釈についてお尋ねします。
 たとえば、甲種株式および乙種株式を発行している種類株式発行会社が
甲種類株式に111条1項2項の定めを付す旨の定款変更を行おうとする場合
、それが乙種株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときについてですが、
千問の道標の図表2-2を参照しますと、111条1項2項の場合にも322条1項の乙種類株主総会を要すものとされています。
 しかし、322条1項1号かっこ書きを字面どおり読めば、たとえ乙種株式の
種類株主に損害をおよぼすおそれがあっても、このような場合には乙種
株主総会の開催を要さないと解するのが素直なように思えます。当方の理解は
やはり誤りでしょうか。誤りならば、同条同項かっこ書きは何を除外すると考え
ればよいでしょうか。
上記につき、ご教示いただきたくお願い申し上げます。
投稿 アイモイレインロウ。 | 2007/01/15 15:56:45
A20
乙種株式の種類株主総会が不要という解釈をしてしまうと、例えば、甲種について、取得条項を付す場合には、乙種株式の種類株主総会は不要なのに、その定めを廃止する場合には必要になる等バランスを欠いた規定になってしまいます。
322条1項1号かっこ書で抜いているのは、111条1項2項が適用される種類株式については、322条1項1号が適用されないことを明らかにしたものであり、111条1項2項が適用されない種類株式にについては、322条1項1号は適用されると解すべきだと思います。

Q21
今回のテーマとは関係ないのですが、「株主総会期間短縮同意書」について教えて下さい。
商法では、条文に明記されていませんでしたが、「株主総会期間短縮同意書」を
提出すれば、商法第232条の法定機関を短縮して、株主総会が開催できました

会社法になってからは、この取扱いはどのようになったのでしょうか。
投稿 babochan | 2007/01/15 22:40:35
A21
会社法300条になったと考えるべきでしょう。

Q22
共通支配下&無対価の場合の旧59,旧61から新59の変更点がよくわからないのと,新旧はいまのことろ官報にしか掲載されていないのでしょうか。
今月会社内で会計整理を決定するのですごく焦っています。
投稿 akiko | 2007/01/15 23:03:39
A22
計算規則の解説は、細川・小松ペアが、商事法務やT&Aマスター等に書いていますので参考にしてください。

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2007年1月11日 (木)

ちょっとアンケート

 ようやく正月気分が抜けて、仕事が本格化してきました。
 ただ、うちのチームリーダーの人事異動などもあり、若干、バタバタしております。

 ブログもボチボチなれてきましたが、実務家の皆さんの中には,今年初めて会社法に基づく計算書類や事業報告等を作る方も多いでしょうから、もうしばらくすると、実務的な質問が増えてきそうですね。
 そうなる前に、今回の会社計算規則の改正について、簡単に書こうかなあと思いつつも今回の改正はハッキリ言って、すごくマニアックで
  「俺には関係ないよ」
という人がほとんどなので、やる気がおこりません。

 入門編も、予想に反して、非常に手間のかかる作業だということに今頃になって気付き、こちらも毎週のようにくじけそうになります。
 初期の構想としては
  初心者=入門編
  上級者・実務家=質問コーナー
という棲み分けをすれば、ブログの守備範囲が広がるだろうという浅はかな考えだったのですが、実際、入門編を書いてみると
  ここは、基本書には書いてないけど、すこし詳しく説明したほうがいいよなあ。
などと欲が出てきてしまいます。
 質問コーナーもあるので、2~3日に一回更新のペースを守るようにはしていますが、これが、なかなか進まない。

 会社法を表面的になぞるようなものならば、スイスイ書けますが、それでは、世の中にあまたある素人向け概説書と変わらないし、難しいことを難しく書くと単なる論文になるので
   分かりやすいけど、すごく深い。
という線を狙っています。
 とはいえ、初心者というのは
  知らない用語が沢山出てくると挫けるのに
  知らない用語を詳しく説明すると、文章が長いこと自体に挫ける
というセンシティブな存在ですし、講演会や大学の講義などと違って、読者の顔が見えないので、当初の狙いが実現しているのかどうかも、よく分からないのです。
 「我こそは、初心者」と思われる方は、よろしければ、入門編について
 ① 分かりやすいか?
 ② 長さは適当か?
 ③ このまま続けた方がいいのか?何か別企画の方がいいのか。
等という点について、率直な、ご意見をいただければ、助かります。

(質問コーナー)
Q1
①171条1項の全部取得条項付種類株式の取得に関する株主総会において、全部取得条項付種類株式を保有する株主に議決権はあるのでしょうか?
②反対株主の裁判所への申し立て制度(172条)はありますが、仮に、全部取得条項付株式をある株主が全部取得して、その議決権が50%超であるならば(そんな発行をするかどうかはおいといて)株主提案権(303条)を利用し、その株式に配当可能利益の全てを割り当て、決議することが可能ではないでしょうか?(間違いなく普通株主が裁判所に申し立てすると思いますが)。
また、コールオプション付であり、劣後関係にあると考えるならば、前者のようなケースでも裁判所の裁定は全部取得条項付株式は普通株式に対し劣後であることを前提として価格決定するのでしょうか?
投稿 アブソルート | 2007/01/09 21:37:05
A1
①全部取得条項付種類株式を保有する株主も,取得についての議決権はあります。
②配当可能利益の全てを取得の対価として交付することも可能です。
③全部取得条項付株式が普通株式と比べ,劣後関係にあるわけではありません。

Q2
社外役員(取締役、監査役)の活動状況に関し、例えば、弁護士とか法学者である社外役員の方について「取締役会(または監査役会)において、コンプライアンス(または法令順守)の観点から発言しました。」などと記載した場合において、当該会社で当期中に違法事案(例えば、談合など)が現に発生したときは、当該社外役員の注意義務違反が問われ(認定され)易くなると考えられるのですが、如何でしょうか。これは、個人の能力・資質の問題ではなく、事実(個人の活動)に係る問題ですし、大和銀行事件大阪地裁判決(一人の監査役につき注意義務違反を認定。但し、因果関係につき証明なしとして責任は否定)の論旨に照らしても、理屈上はそういうことになると思うのですが。
投稿 ぐすたふまら | 2007/01/09 22:57:31
A2
社外役員の善管注意義務違反の認定において,事業報告にどのように記載されたかは,何の関係もないし,質問にある記載により,善管注意義務が認定されやすくなるほど,裁判における事実認定は,甘いものではありません。大事なのは,議事録や証言等で,その社外役員が,どのような言動をしたかということを明らかにすることです。

Q3
会社法施行規則第3条3項二号イ(2)で定義される「自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権」につきまして、

A社がB社の株式を30%所有、A社の取締役3人が合計でがB社の株式を30%所有している場合において、これらの取締役が所有している議決権は上記で定義される議決権に当たるという理解でよろしいでしょうか?

言い換えますと、法人等の所有だけでなく自然人が所有する議決権もここには含まれるという理解でよろしいでしょうか?
投稿 KIRABO | 2007/01/10 10:23:45
A3
そのとおりです。「者」は,自然人を含みます。

Q4
会社法施行規則第3条3項二号イ(2)で定義される「自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権」につきまして、

A社がB社の株式を15%所有、A社の取締役3人が合計でがB社の株式を85%所有している場合において、かつB社がA社の株式を30%所有しているため、上記の15%の議決権は消されている場合において、これらの取締役が所有している議決権が50%を超えていることをもって、A社はB社の親会社となるのでしょうか?

千問の道標Q224において、A社の議決権が消されても施行規則3条の実質支配要件に該当する場合が多い云々の記述がありますが、上記のようにA社の取締役が所有する株式だけで50%を超えることでもって、親子関係の判断基準が適用されますでしょうか?
投稿 KIRABO | 2007/01/10 19:15:46
A4
事実認定の問題が絡みますが,会社法施行規則第3条3項二号か三号で親会社になる場合もありうると思われます。

Q4
427条1項で、
「定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と
 最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする」
とあります。
これは、場合によっては「最低責任限度額以上の責任を負う」、
という意味でしょうか?
とすれば、責任限定契約を結ぶ意義・利点がよくわからなく、困っております。

また、手続の流れとしては、
 1) 定款で額を定める(定款で定めた額)。
 2) 1)以下の金額で責任限定契約を結ぶ(の範囲内で株式会社が定めた額)。
 3) 実際に問題が生じ最低限度額が判明した段階で、2)と比較する(高い額)。
 4) 3)の結果の「高い額」を限度として、取締役会等が責任限度額を決定する。
 5) 本来の賠償予定額から4)を控除した額が免除される。
   (つまり、4)の額は必ず賠償しなければならない)
という理解でよろしいのでしょうか?
投稿 会計士受験生 | 2007/01/10 21:09:46
A4
 最低責任限度額というのは,法律で定められた額です。
 定款でそれ以上の額を定めた場合,役員が,法律上の最低責任限度額以上の責任を負う場合もあります。
 責任限定契約を結ばなければ,一切,限定されないのですから,定款で定めた額に限定する意味はあります。

 手続きの流れについては, 取締役会による一部免除(426条)と混同があるように思います。
 責任限定契約を結んだ場合,損害賠償責任の発生時に,当然に責任が限定されるので,3)4)5)の手続きはありません。

Q5
預合いについて基本的な質問をさせてください。
会社法入門を読ませていただき、預合いの禁止の趣旨
について一応の理解をしました。
ただ、預合いをすることは、銀行にとってどんなメリットと
なるかが分かりません。
 発起人にとっては資金なしに会社の設立ができるメリットがあるわけですが、銀行にとってはその協力をしてなにかメリットがあるのですか?
投稿 maru | 2007/01/10 23:04:55
A5
 発起人等に貸付をすれば,銀行は,リスクもなしに,利息が取れますし,その会社は,顧客になってくれます。

Q6
剰余金の配当を取締役会権限とする定款の定めの効力発生要件についてお教えください。
配当を取締役会権限とする旨の定款の定めは、一定の要件を充足する場合に限り、その効力を有します(会社法460条2項)が、当該要件は、どの時点で(取締役会の決議時点or効力発生時点)で満たす必要があるのでしょうか。
この要件は、最終事業年度に係る計算書類の会計監査報告が無限定適正意見であること(会社計算規則183条)など、「最終事業年度に係る計算書類」(=直近に承認された計算書類)に関するものであり、時点によっては、該当する計算書類が異なる場合があります。
この要件は、効力発生時点で満たす必要があると考えてよいでしょうか。
投稿 しん | 2007/01/11 11:35:14
A6
 質問の趣旨がよくわからないのですが,「時点によっては,該当する計算書類が異なる」というのは,どういう場面を想定されているのでしょうか?

Q8
人的分割についての質問です。
吸収分割株式会社が吸収分割の対価として吸収分割承継株式会社の株式の交付を受け、その株式の全てを株主に配当する(758条8号ロ)ということは可能でしょうか?この剰余金の配当については財源規制が適用されない(792条)ので、吸収分割株式会社に残る債権者を害しないのだろうかと悩んでいます。
投稿 リー | 2007/01/11 12:05:04
A8
設問のような人的分割も可能です。
その場合,吸収分割株式会社の債権者には,債権者保護手続き(789条1項2号)が必要ですので,債権者を害することはありません。

Q9
非常にざっくりとした質問で申し訳ないんですけど
会社法の解釈についておうかがいする「役所の窓口」といいますと
どこになるのでしょう?
法務局では,登記に関すること以外は断言できない,とのことでしたので
それももっともだと思いまして,できればアドバイス頂けると幸いです
投稿 純 | 2007/01/11 14:49:07
A9
 法律の解釈権は,裁判所にありますから,会社法の解釈について,断言できるのは,裁判所だけです。
 登記のように行政処分を伴うものについては,第一次的判断権が行政庁にあるので,法務局で解釈をしていますが,行政処分と無関係な部分については,本来,法務省が判断するようなことではありません。
 したがって,会社法の解釈を示すような正式な「役所の窓口」のようなものはありませんし,そのための窓口担当者のような人もいません。
 ですから,本来なら,弁護士に相談されるのが一番だと思います。
 もっとも,行政サービスの一環として,法務省民事局の職員が,通常の業務に支障をきたさない限りにおいて,会社法に関する基本的な質問にはお答えしています。その答えには,法的な権威はありませんが,参考情報程度の意味はあるかもしれません。

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2007年1月 9日 (火)

【入門】預合いと蛸配当(3)

2 蛸配当の禁止の趣旨
 蛸配当の禁止の趣旨は、「資本維持の原則」の説明で述べたとおり、
  「出資の払戻しの禁止」という株式会社の基本ルールを剰余金の配当によって潜脱することを防止する
という点にあります。
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13094420
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13151832

 こうした観点から、蛸配当は
  会社財産を危うくする罪(963条5項2号)
という罰則で禁止されています。

 また、民事責任については、462条に

 ① 株主は、会社に対し、受領した配当相当額の金銭を返還しなければならない
   (趣旨)本来、受け取ることのできない利益を受け取ったから。
       →利益を受けているから、無過失責任。

 ② 配当に関与した業務執行者は、株主と連帯して、会社に対し、①の額の金銭を返還しなければならない(462条)
   (趣旨)株主に返還請求するのは手間がかかるので、違法な業務を行った業務執行者に任務懈怠に基づく責任を負ってもらう。
       →業務執行者は、利益を得たわけではないので、この責任は「過失責任」(462条2項)。

ということが規定されています。

 まあ、この責任の趣旨を論ずる前提として、「違法配当は有効か」という論点もありますが、そこは、葉玉さんも論文を書いていますし、ブログでも何度も記事になっていますので、興味のある方はそちらをごらんください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50094786
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50705214
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11883913

 学説は、無効説が多いですね(従来は、自己株式の取得は、相対的無説説が通説だったと思いますが、会社法では、無効説が通説になったのでしょうか?)。

 ただ、会社法の文理も有効であることを前提としていますし、無効にすると、現物配当や自己株式の取得のとき事後処理に困る(無効説からは事後処理についての明確な言及がありません)という難点があります。
 実務は、有効説で処理するのが安全でしょう。

 もっとも、金銭配当の場合には、有効説だろうと、無効説だろうと、結論に大した違いはないので、「蛸配当」がテーマとなっている本問の解答例では、違法配当の効力については論じていません(あえて言えば、現物配当の蛸配当ということも、ありえますが・・)

 さて、蛸配当については、罰則と会社に対する責任のほかに、あと3つほど覚えるべき制度があります。

 1つ目は、業務執行者の善意株主に対する求償権の制限(463条1項)です。

 462条により、株主と業務執行者は、連帯債務を負担していますが、利益を得たのは株主なので、業務執行者には、負担割合はありません。
 したがって、業務執行者は、本来、株主に対して、自己が会社に弁済した金額について、全額求償することができるはずです。
 しかし、違法配当を実行した業務執行者自体が、善意の株主に対して求償をするのは、禁反言の原則に反するということで、求償権が制限されています(ちなみに、この条文は、債権者保護とは無関係なので、解答例には記載していません。)

 2つ目は、債権者による訴訟担当です(463条2項)。
 会社は、462条に基づき株主に対する返還請求権を行使することができますが、自ら違法配当を行った代表者が株主に返還請求訴訟を起こすことは期待できません。
 このような場合、債権者が、会社の債権について債権者代位権を行使するのが普通ですが、通常の債権者代位権では、
  会社が無資力であること
という要件が必要です。
 しかし、分配可能額による配当制限は、
    会社が無資力になりにくくするために、一定のバッファを確保することを目的に設けられた制度
なのですから、無資力にならない限り、債権者は、株主に対する返還請求権を代位することができないとすると、配当制限をした意味がありません。
 そこで、463条2項において、会社が無資力でなくても、債権者代位権を認めるとい民法423条の特則が置かれているのです。

3つ目は、業務執行者の債権者に対する責任(429条1項)です。
 蛸配当によって損害を受けるのは、債権者です。
 債権者としては、463条2項に基づき株主から会社に金銭を返還させれば、損害は回復するはずですが、株主が多数であるため、実際には、その返還が困難な場合もあります。
 また、債権者が、会社の業務執行者に対する債権(462条)を代位行使する(これは、民法423条に基づくもの)ことも可能ですが、それが迂遠な解決になる場合もあります。
 そのような場合には債権者が、業務執行者に対して、直接、損害賠償責任(429条1項)を追求することも考えられます。
 この場合、「債権者は、間接損害について損害賠償を求めることができるか」という論点がありますが、この論点は、別の問題で勉強することにして、ここで学んで欲しいのは、蛸配当では
 429条2項の責任の追求は難しい。
ということです。
 以前もお話したとおり、蛸配当は、粉飾決算を伴うのが普通ですから、429条2項1号ロの計算書類の虚偽記載があるのが普通でしょう。
 そして、429条2項は、1項と比べると、①任務懈怠の立証が不要である、②軽過失でも責任を追及できる、③無過失の立証責任が取締役にあるという点で、有利です。
 しかし、429条2項は、虚偽記載を信頼した第三者を保護するための規定なので、債権者が計算書類を信頼して取引をする等の事情がない限り、適用されません。
 したがって、蛸配当のように会社と株主との間の関係で行われる行為については、残念ながら429条2項は適用されないのです。
 初心者が陥りやすい間違いなので、429条2項の適用場面については、頭の片隅にいれておいてください。

3 まとめ
 以上のように、本問は「預合いと蛸配当」を聞いているものの、少し裏を覗いてみると、
   「資本充実の原則と資本維持の原則」
を聞いているということもできます。
 最初に申し上げたように、「債権者の保護」という共通点と、その保護の仕方の違いを論ずることができれば、それなりの点数にはなるでしょう。
 受験生の皆さんは、預合いの効力や蛸配当の効力について立案担当者が過激な見解を展開しているため(「お前が言うな」という言われそう・・・)、そこに目を奪われがちですが、各制度の内容と趣旨を淡々と論ずることを忘れないことが一番大切です。

(質問コーナー)
Q1
 会社法施行規則124条7号の「当該会社の親会社の子会社」には、「当該会社の子会社」も含まれるというご説明ですが、これに関連してお尋ねします。
 「当該会社の親会社の子会社」には、文理的には「当該会社」も含まれるのではないかと思われます。もし、そうだとしますと、会社法施行規則124条7号の「当該報酬等の総額」として記載すべきものには、同条6号の(当該会社から受けた)「報酬等の総額」も含めるべきであるということになりますが、この理解で正しいでしょうか?(何かこんがらがってきました。)
投稿 みひろ | 2006/12/29 0:49:29
A1
 文理的には、おっしゃるとおりが、他の規定と整合的に解釈すれば、当該会社は含まれないものと解釈すべきです。

Q2
 会社法309条4項の決議が必要な事項が議題とされている株主総会の招集通知は,108条1項3号の定款の定めにより株主総会のすべての事項について議決権を有しないとされた種類株式を有する株主に対しても発することが必要だと思うのですが,この結論を導き出す会社法の読み方を教えてください(結論が違う場合にはその理由を教えてください)。
 以下2つに分けてお答え下さい。
1 298条2項括弧書の「株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主」とは,(a)今回招集される具体的な株主総会において議題とされている事項の全部につき議決権を行使できない株主を指すのですか。それとも(b)抽象的におよそ株主総会で決議することができる事項の全部について議決権を行使することができない株主を指すのですか
2 (a)の場合は表記結論を導き出せるのでいいのですが,もし(b)と考えるのが正しい場合,表記結論をどのように導き出すのでしょうか(298条2項括弧書の「全部」の解釈がまず問題となりそうですが)。
A2
 招集通知は、議決権を有しない株主には、発しません(298条2項かっこ書は、299条も同じとしています)。309条4項の決議が必要な事項が議題とされている場合について、特に除外規定はないので、同じ取扱いだと解すべきでしょう。

Q3
 1月4日Q11で、質問の表現を誤ってしまいました。インターネットで開示したい貸借対照表は設立後の定時総会で承認されたものです。その貸借対照表を(官報による決算公告の代わりに)インターネットで、5年間開示するためのウェブアドレスを、会社設立前に決定して、設立登記と同時に登記したいのですが、その場合の、ウェブアドレスを決定する機関は、設立準備中なので、(非取締役会設置会社ですが、取締役の決定によるではなく)発起人の決定のよるものでしょうか。との質問でした。繰り返しで申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
投稿 はりこのとら | 2007/01/07 23:58:50
A3
 そういう意味であれば、公告方法の決定も、設立事務の一つなので、発起人が決めることができると思います。

Q4
 取得条項付株式(107条1項3号)について、質問させてください。
 A株式会社が、全部の株式を取得条項付株式とし、後に一定の事由が生じ、所定の手続にしたがってA社が全株式を取得するとします。この時、A社株主への対価として金銭を交付する場合(同条2項3号ト)、一時的にせよ株主がA社だけとなるように思います。
 かかる状況には違和感がありますし、神田先生も、「〔会社は〕発行済の議決権のある株式のすべてを取得することはできないと解される」とされています(神田「会社法〔8版〕」88頁注3)。
 私の理解はどこが誤っているのでしょうか。
投稿 探偵 | 2007/01/08 11:02:48
A4
 会社法においては、株主がA社だけになる自体を禁止しているわけではありません。
 ただし、そのままでは定時株主総会が開催できませんので、新株発行をする必要があります。

Q5
法として「分配可能額」を定めているのですから、その範囲であれば「問題ない」ことは理解いたします。ただ、株主としては「資本の払い戻し」なのか「利益の分配」なのかが重要であり、株主にそれを十分周知させる法体系になっていないのでは、とお恐れながらご指摘申し上げたいのです。 「業績も良くないのに配当していただいてありがたい」と思っていたら、実は1株あたりの純資産を目減りさせ、会社のオーナー経営者が自己の保有する株式を売却することなくキャッシュを得る手法だった。こんなことなら、配当議案に否を投じたらに、と今回のかかる上場会社の大半の株主が思っているのでは? 
投稿 T/A | 2007/01/08 12:15:29
A5
 その他資本剰余金を配当原資にしても、その他利益剰余金を配当原資にしても、1株あたりの純資産額を目減りさせるのは同じです。どちらを配当原資にするかは、会計的には意味がありますが、それ以上の経済的意味はありません。
 「資本の払戻し」か「利益の分配」かに興味をもつ株主が、どれだけいるかは、分かりませんが、その他利益剰余金とその他資本剰余金の金額は開示されていますし、もし気になるならば、株主総会で質問権を行使してみたらいいと思います。

Q6
連投で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
(1) 募集新株引受人が、払込みにつき会社に対する債権と相殺することは許されませんが(208条3項)、逆に会社から相殺を認めることは可能なのでしょうか。208条3項は「引受人は」と限定されていますが、246条2項と比較すると、できないように思います。
(2) 仮に、(1)につき、会社からの相殺もできないとします。この場合においても、募集新株引受人が会社に対する債権を現物出資(199条1項3号)することは、可能かと思います(207条9項5号参照)。そうすると、混同(民法520条)しますので、相殺禁止の趣旨が没却されてしまうように思います。それでも構わないのでしょうか。

投稿 探偵 | 2007/01/08 17:39:21
A6
 会社からの相殺は可能です。

Q7
サミー先生、Q6(株主総会の決議の省略について)のご回答有難うございます。
要するに319条3項が、「書面」と規定し、「書面の写し」の「閲覧又は謄写」を認めていないのは、株主が多数存在する場合(同意書が何万通もある場合)を想定した会社側の便宜を考慮した規定、とのご回答だと思います。とすると、なぜ319条3項において、債権者を除外したのでしょうか?結論としては、319条の書面等については、債権者は閲覧等の請求権がない、でよいのでしょうか?それとも318条4項の類推適用等の法律構成により、債権者に319条の書面等の閲覧等の請求権が認められるのでしょうか?
以上の点、宜しくお願いいたします。誤解している部分がありましたら申し訳ありません。
投稿 NK | 2007/01/08 23:03:54
A7                                          
 決議の省略の時も、議事録が作成されるので、債権者は、議事録を閲覧すれば十分です。
 同意書面の閲覧は、手間がかかるし、場合によっては各株主のプライバシーにもかかわるので、多数存在する債権者に認める必要はないと判断したものだと思います。

Q8
事業報告の記載事項についての質問です。
監査役に関し、「財務・会計の相当の知見がある者である場合はその旨を記載せよ」との条項が、施行規則にあります。これに関し、もしある監査役についてその旨を記載した場合、万が一のこと(不正会計)が起こったときには、その監査役はそうではない監査役より注意義務のレベルが上がる、つまり責任を問われ(認定され)易くなるのではないか、との意見をときどき聞きます。立案担当者の方々はどのようにお考えでしょうか。
投稿 ぐすたふまら | 2007/01/09 0:39:57
A8
 注意義務が、個々人の能力によって、レベルが変わるという考え方は、根拠もありませんし、不合理だと思います。

Q9
特例有限会社については、株式会社と異なり、「監査役の氏名及び住所」が登記事項となっております(整備法43条1項)。この点について、なぜ、有限会社法では株式会社と異なり、監査役の住所まで登記事項となっていたのでしょうか?
色々考えたのですが、積極的な理由が思いつかないので教えてください。
投稿 NK | 2007/01/09 1:30:15
A9
 有限会社法は、取り残された法律だったので、従来からの取扱いがずっと続いていたのでしょう。

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2007年1月 8日 (月)

【入門】預合いと蛸配当(2)

 前回は、預合いと蛸配当の意義についてお話しましたので、次に、預合いと蛸配当に対する会社法上の制度の内容とその趣旨についてお話します。

1 預合いの禁止の趣旨
 資本充実の原則の記事(http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13029793)で、詳しくお話しましたが、預合いは、設立や新株発行という
    会社に払込金が流入してくる場面
で問題となる事象であり、預合いによって、既存の債権者の債権が、直接、害される(回収不能になる)ことはありません。

 しかし、資本充実の原則の背後には、
  ① 株主になれば,会社財産に対する一定の支配力を持つことになり,その点では,債権者よりも有利な立場に立つのだから,現実に財産を拠出していない引受人には,株主としての権利を行使させるべきではない。
  ② 払込みが行われた場合、資本金(又は資本準備金)の額が増加し、債権者に対し
  「一旦は会社に資本金(又は資本準備金)の額に相当する財産が現実に拠出された」
ことを公示(公告・登記)することになるので、資本金等に対する信頼を保護する必要がある。
という価値観があります。

 預合いは、この①②の価値観からは、
 ① 預合いをした引受人は、自分の資金を拠出せずに払込みを行っているのだから、リスクを十分に負担したことにはならない。
 ② 預合いによる払込みにより資本金の額は増加するが、会社の払込取扱銀行に対する払込金の返還請求権は、借財が返済されるまで行使することができないので、「現実に拠出された」という信頼を害するおそれがある。
という点で問題があるので、
   預合い罪
という罰則により禁止されています。

 また、募集設立において、預合いが行われた場合、払込取扱銀行等には、
   保管証明責任(64条2項)
が生じますが、この保管証明責任も、債権者の保護のために役に立ちます。
 この保管証明責任は、本来
   発起人による払込金の持ち逃げ防止
という「発起人以外の引受人」を保護するための制度です。
 しかし、その制度が存在することにより、会社の債権者が、会社の払込取扱銀行等に対する払込金の返還請求権を代位行使するときに、「返還に対する制限」を対抗されないというメリットを受けるのも事実ですから、その点を指摘する必要はあります。

 もっとも、保管証明責任は、債権者保護自体を目的とする制度ではないため、発起人による持ち逃げ防止を考える必要がない
   発起設立や新株発行の場面
では、保管証明責任の制度はありません。

 そこで、そのような場面で、債権者を保護するための法律構成として、解答例では、
  民法94条2項
を適用しています。
 なお、「預合いによる払込みが有効」(後述)であるということと、「預合いには、虚偽表示が含まれており、その虚偽表示部分は原則として無効である」ということは、別の次元の問題であるというこを、解答例を見て理解してください。
 
<預合いによる払込みの効果>
 さて、預合いによる払込みの効果については、旧法における通説では、「無効」と解されていましたが、会社法の立案担当者である私達は、「有効」と説明しています。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50055555

 旧法では、
  資本金が株式の発行価額をベースに決定されていたこと
  発起人等に引受担保責任が課せられていたこと
から、預合いによる払込みを無効としても、特に問題が生ずることはありませんでした。
 また、先ほど述べた①の価値観、すなわち
  預合いをしたような引受人をに株主としての権利を行使させるべきではない
という価値観から、払込みを無効としたいという側面もあったと思います。

 そして、会社法でも、①の価値観を強調すれば、預合いによる払込みを無効とする考え方(無効説)も、成り立たないわけではないかもしれません。

 しかし、旧商法と異なり、資本金を払込価額をベースに算定し、かつ、引受担保責任を廃止した会社法で、預合いによる払込みを無効とすることは、
   払い込まれた金銭は、会社財産を構成しない。
   払込金は、引受人に返還しなければならない。
   資本金・資本準備金は増加しない
という、債権者にとって厳しい結論を導くことになってしまいます。
 
 「預合いによる払込みという禁止行為をやったのに、なぜ有効なんだ」
という素朴な疑問があることは理解できますし
 「有効説」の方が「無効説」よりも、債権者の保護に厚い
というのは、素朴な目から見ると、一見、奇妙な結論ですが、それは、あくまでも素朴な考え方であり、専門的な考え方ではありません。

 会社法の諸制度についてよく考えてみると、有効説の方が実際に債権者の保護に役立つというのは、極めて当たり前のことなのです。
 払込みというのは
   引受人の個人資産を、会社財産にした上、払戻を禁止する行為
なのですから、会社財産を増やすためには、払込みが多ければ多いほどいいのす(旧法における保管証明責任の考え方は、まさに、そういう考え方です。)

 第2版では、預合いによる払込みが有効であるという理由を詳しく書いていますが、要するに、
  「預合いから債権者を守るためには、有効説しか選択肢はない。」
わけで、正直なところ、私は
  「無効説にたって、どうやって債権者保護をはかればよいのか?」
という点については、想像することもできません(だから、そういう質問をしないでください。)。

 無効説から有効説に対する批判があるとすれば、前述の①の視点から
  払込みを有効とすると、預合いによる払込みをした引受人が株主としての権利を行使することになる。
という点でしょう。

 しかし、その引受人は、払込取扱銀行から借財をして払込みに当てているのですから、リスクを負担して、株主になったわけで、①の視点を強調しすぎるのは、おかしいと思います。
 また、見せ金と異なり、預合いをした引受人は、払込金を自己の借財の返済のために利用していません(利用しようにも、引き出すことができないので、利用できません)。言い換えれば、自己の借財は、自ら返す意思を有しており、会社の資産である払込金を、会社の資産のまま保有する意思を有しているのです。

 以上のように、引受人側から見ると、預合いによる払込みは、払込みの意思の面でも、払込みの事実の面でも、払込みの要件を充たしていますし、会社側から見ても、払込金の返還制限が、保管証明責任等により、無効とされることからすれば、通常の払込みと区別する合理的理由はありません。

 ということで、どこから、どう考えても、預合いによる払込みは「有効」と考えるのが合理的であると思えて仕方ありません。
 実は、私には、無効説の根拠が分からないので、「有効説以外ありえない」と言い切るのには、一抹の不安がありますし
   無効説から、説得的な反論をしてもらいたい。
という期待も持っているのですが、今のところ、私には有効説しか考えられないので、本日もそれをベースに説明しました。

 次回は、蛸配当について説明します。
(続く)

(質問コーナー)
Q1
「蛸配当」の話題ですが、最近の事例で資本剰余金による配当を行った上場会社がありました。
食べてもタコの生命維持に影響ないという点で、「足」は「配当原資」である(≒資本剰余金)と考えた場合(少し無理がありますか?)、今の会社法では「この配当は『足』を食うことによって実施していますよ」、という説明をせずとも良いのが「剰余金配当」の議案の建てつけですよね。
たしかに、B/Sを良く見れば判らないことはないですが、「規範法」たる会社法としてどうでしょう。もちろん、会社の開示姿勢の問題でもあるわけですが・・・。弁護士に聞けば、100人が100人とも「開示の必要なし」と答えると思います。
投稿 T/A | 2007/01/04 23:26:10
A1
 その他資本剰余金を配当減資にすることは、別に蛸足を食っているわけではありません。
 その他資本剰余金は、資本金の減少(債権者保護手続が必要)や自己株式の処分によって生ずるものであり、債権者の保護を図る必要はないからです。
 入門を最初から見てもらえばわかるとおり、資本金にせよ、資本剰余金にせよ、それ自体は、財産ではなく、単なる数字です。株主が食べていいものと、悪いもの(分配可能額を超えるもの)が区別されている以上、それがその他利益剰余金か、その他資本剰余金かを気にする意味はありません。

Q2
「説明責任」について再度質問させてください。
「取締役の株主に対する説明責任」についての質問です。
取締役が規則に従った情報開示をしたにもかかわらず、「説明責任」違反を理由として、株主総会決議が取り消されるという場面は想定できますか?具体例をご教示いただけますと幸いです。
投稿 ろびぞう | 2007/01/04 23:50:43
A2
 規則による開示の問題と、説明責任の問題は、全然、別の問題です。
 したがって、設問の「規則に従った情報開示をしたにもかかわらず」という部分は、何の意味もありません。
 また、前回もお答えしたとおり、「説明責任」は多義的に用いられる言葉ですから、「説明責任違反」という言葉も、法的にあまり意味のある言葉ではありません。
 ただ、例えば、質問に対し、虚偽の説明をして、決議を得た場合には、決議取消事由が生ずる場合もあるでしょう。

Q3
債務超過の疑いのある子会社の解散・清算手続についてご教示下さい。
旧商法下では、当該子会社が債務超過の疑いがある場合、特別
清算開始決定との絡みで、旧商法419条により代表清算人が裁判所
に対して清算貸借対照表を提出する際に親会社の期限付き債権放棄
書を提出することによって裁判所に特別清算開始決定を出さないでもらう
といったテクニックがあったかと思います。会社法では旧商法で定められていた
届出義務がなくなったため、債務超過の疑いがありつつも、特別清算を避け
通常清算を進めるにはどのような方法を取ることが可能でしょうか。
投稿 SMOKY | 2007/01/05 17:34:46
A3
 親会社の期限付債権放棄書だけで、債務超過にならないのならば、会社法でも債務超過にはならないでしょう。それは、テクニックではなく、債務超過の疑いがあるか、ないかという認定の問題ですよね。
 逆に、「債務超過の疑いがあること」(510条2号)の特別清算の要件なので、その要件を充たすならば、特別清算を避けることはできないでしょう。
 大事なのは、「疑い」をなくすことができるかどうかで、「疑いがありつつ、避ける」ことはできません。

Q4
普通株式の一部「転換」についてのご回答ありがとうございます。
私は、たとえ株主の全員の同意があっても、
取得請求権付株式又は取得条項付株式を使わないと普通株式の一部「転換」はできないと考えておりました。
「伝統的な解釈」
(可能であれば、記載箇所を教えていただけますでしょうか?)
の根拠は不明ですが、
一部の普通株式だけを転換することが可能な理由は、
実質的には
それによって害される(可能性がある)株主
の全員の同意があれば可能
という理解でよいような気がするのですが、
形式的な理由(条文上の根拠)がないように感じます。
会社法の立案過程で、
明文の根拠を置かなかった理由はあるのでしょうか?
投稿 初心者 | 2007/01/05 22:35:18
A4
伝統的な解釈に、形式的な理由はないです。
会社法が、明文の根拠を置かなかったのは、きちんとした理屈がつかないからです。
それでも、あえて、伝統を否定するほどのことはないだろうというのが、今の実務の立場だと思います。

Q5
A9についてです。
違法行為差止めの訴えの効力が会社に及ばないという解答でしたが、
民訴115条1項2号の適用がないということでしょうか?
責任追及等の訴えの判決の効力は、同条により及ぶと聞いたことがありますが…
投稿 法学ベイビー | 2007/01/06 1:17:13
A5
株主の取締役に対する違法行為差し止め訴訟は、株主の権利を行使する訴訟なので、訴訟担当ではありません。
したがって、民訴115条1項2号を適用する余地はありません。
責任追及等の訴えは、会社の権利を行使する訴訟であり、株主は、訴訟担当ですから、民訴115条1項2号が適用されます。

Q6
本日は株主総会の決議の省略(319条)について教えてください。
会社法が319条について、意図的に318条と異なる規定の仕方をしているのは、319条が比較的小規模の会社を想定しているから、との理解でよいでしょうか?
具体的には、318条と異なり、① 「支店」での備置義務が規定されていない、② 「債権者」の閲覧等の請求権が規定されていない、③ 「書面の写し」の閲覧ではなく、「書面」の閲覧請求権が規定されている、点は小規模会社を想定するが故の違いである、との理解でよいでしょうか?
議事録に関して別件ですが、会社法で書類等の備置義務が規定されている株主総会議事録等は、登記申請の際、添付書面になることがありますが、登記申請されている間、会社に書類等が備置されていない場合(後日原本還付をするにしても)は、違法になるのでしょうか?(実務ではいつも正副2通作成しております。)
投稿 NK | 2007/01/06 9:10:03
A6
会社が小規模かどうかは、あまり気にしていないのではないと思います。
議事録は写しを簡単に取れるが、同意書面は沢山ある場合があるから、写しを取るのは大変だ、という違いです。
なお、登記申請の添付書面の適法性と、備置は、全く別次元の問題です。

Q7
 基本的なことなのですが、株式分割について1点お聞かせください。
 分割会社となりうるのが株式会社及び合同会社に限られているのは(757条、762条)、なぜなのでしょうか。無限責任社員がいると、何かまずいのでしょうか。
投稿 探偵 | 2007/01/07 11:49:10
A7
 株式分割ではなく、会社分割ですね。
 合同会社しか分割ができないのは、大人の事情です。特に理論的理由はありません。

Q8
1株ダミー株を置いて、残りの株式をすべて全部取得条項付株式にして、会社が株主総会の決議を経て行使した場合を考えます。この時、株式に価格がある場合(例:50万円)、会社が取得する時に配当可能制限(461条4項)が生じるのでしょうか?
100%減資のケースでは、株式の価格は0円なので、会社は対価として何も交付する必要は無く、配当可能制限は生じないと思います。
また、461条の柱書の括弧内を見ると、対価から当該株式会社の株式を除くとなっています。
そこで、株式に価格がある場合でも、対価を株式(例:取得条項付株式)にすれば、単なる株式の交換(普通株式→取得条項付株式)と考えられるので、配当可能制限の考慮をする必要はないと考えてよいのでしょうか?
投稿 サミーさん頑張れ! | 2007/01/07 17:25:51

A8
結論としては、対価が株式ならば分配可能額の制限を受けることはありません。

 なお、質問に基本的な誤解があります。
 まず、株主総会決議を経て「行使した」とありますが、「取得した」ということですね。
 また、「100%減資のケースでは、株式の価格は0円という記述がありますが、100%減資でも、取得する株式も、対価として交付する株式も、その価格が0円になるとは限りません。

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2007年1月 4日 (木)

【入門】預合いと蛸配当(1)

 あけましておめでとうございます。
 正月は家族でスキーに行ったので、ブログをさぼらせて頂きました。
 休み中、一番驚いたのは、はじめてスキーに行った3歳の子供が、数時間の練習だけで、ボーゲンで曲がったり、止まったりできるようになったことです。
 3歳ですから、理屈は何も分かりません。
 「足をハの字にして」と言っても、カタカナを読めませんので、「ハ」の字が分かりません。
 ですから、親やスキー教室の先生が、手で子供のスキー板を押さえて、足をハの字にして、ゆっくり滑らせては、方向転換したり、止めたりするとの繰り返し。
 ところが、数時間、そのようなことをくりかえすうち、「曲がって」と言うと重心をかけて曲がり、「止まって」というと板を広げて止まるようになりました。
 
 実践することの威力を、まざまざと見せ付けられた思いです。

 法律の勉強も、理屈よりも、まず実践。
 初心者が「会社法は難しい」と感じる原因の一つは
  会社の運営と何も関係のない人生を送ってきたので、何を規律しているのかピンとこない                                           
ということが多いような気がします。
 学生さんも、難しい本を読む前に、会社を設立してみたり(キッザニアみたいに模擬でもいいです)、手形をきってみる。
 こうした実際の動きを体感することで、会社の動きが見え、会社法の条文や理論が頭に入りやすくなります。
 私は、「判例を詳しく研究するよりも、そういうことこそ、ロースクールでやってほしいな。」と思います。

 さて、今日は、第13問「預合いと蛸配当」。
 「預合いと蛸配当とは何かを説き、これらを抑制する必要とそのための法律規定を説明しなさい。」
という問題です。

 「預合い」は、仮装払込みの一種であり、「蛸配当」は違法配当の一種ですから、一見、あまり関係なさそうです。
 ところが、前者は、株主が会社に資金を注入する場合の問題(株主→会社)、後者は、会社から資金を流出させる場合の問題(会社→株主)で、ともに
   債権者の保護
という点では共通しています。
 ですから、「預合い」と「蛸配当」について、
  ①それぞれ債権者のどのような利益を侵害し、
  ②その利益を守るために会社法がどのような制度を用意しているか
ということを説明することができれば、及第点です。

1 預合いと蛸配当の意義
(1)預合い
 「預合い」という文言は、965条にありますが、法律用語としては、無茶苦茶あいまいな言葉であり、こんな言葉を、定義もすることなく、しかも、罰則で使うというのは、現代の立法では、100%ありえません。
 一般人に聞いても、意味が分からない人の方が多いと思いますし、私も、勉強したてのころは「あずけあい」と読むことができず
  『よごう』って何だ??
と思っていました。
 しかし、旧商法で「預合」という言葉が用いられ、事件ごとに微妙に表現を変えた裁判例が積み重なってしまったため(しかも、それらに判事された定義は、条文には使えそうにないくらい曖昧なものです)、今更、会社法で定義規定を置くのは難しく、仕方が無いので、そのまま「預合い」という文言が会社法に継承されてしまいました。
 こうした経緯から分かるとおり、「預合い」の意義は、理屈ではなく、「気合い」で決まるものであり、解答例では、とりあえず
  「株式会社の設立時又は成立後になされる株式の発行に際して、発起人又は取締役等が、株式の発行にかなる払込みを取扱う銀行等から借財し、借入金を会社の預金に振り替えることにより払込みに当て、借財を弁済するまでは、その預金を引き出さないことを約束すること等の方法により、株式の発行に係る払込みを仮装する手段のことをいう」
と定義しています。

 長い定義ですが、要するに、発起人等が、払込みをするための資金を払込取扱銀行から借りるときに、「個人の借入金を返済するまでは、会社の預金を引き出しません」と約束することですね。

 この定義を聞くと
   「そもそも、発起人は、財産引受け以外は、会社財産の処分権がないので、64条2項がなくても、会社の預金について発起人がした約束は無効ではないだろうか。」
と疑問に思う人もいるでしょう。
 しかし、設立前は、会社に法人格がないため、払込金は、発起人名義の口座に払い込まれますから、「発起人名義口座からの引き出しの制限は、当該発起人が決めることができる」という考え方もありえます。
 また、代表取締役は、会社の預金の引き出し制限約束をする権限を有していますから、新株発行の時に、代表取締役が預合いをすると、「権限論」で引き出し制限約束を無効にすることはできませんから、設立時と、新株発行時の取扱いを統一的に説明することができる理論構成の方がきれいです。
 ですから、「預合い」の定義を聞いたときに頭に浮かぶ素直な疑問は後回しにして、ここでは、とりあえず「預合い」の定義を暗記してください。

 なお、この預合いの定義については、
① 発起人が、払込取扱銀行以外の者から借財した場合は、預合いに当たるか。
② 発起人が、払い込みをしていないのに、銀行が払い込んだように仮装した場合は、預合いにあたるか。
等いくつかの問題があります。
 個人的には
① 預「合い」という以上、発起人が資金を借りた相手と、預けた相手が同じでなければ、罪刑法定主義に反するおそれがあるので、原則として、発起人が払込取扱銀行以外から借財した場合は、預合いには当たらないと解するべきである。ただし、払込取扱銀行が迂回融資したような場合には、預合いに当たる。
② 罪刑法定主義の見地からすれば、借入れも、払込みもしていない場合は、「預合い」に該当しないと解するべきである。ただし、現代の銀行実務において、貸付けも、払込みも、現金の交付ではなく、預金口座への記帳等によって行われているこうとを考慮すると、現金の動きがない場合であっても、事実認定として、借入れや払込みがあるものと認められ、「預合い」と評価される場合もある。
と考えています。
 まあ、一行問題で、そこまで踏み込んだ説明をする必要はないので、解答例では省いていますが、この2つの問題は、事前に頭を整理しておくべき問題でしょう。

(2)蛸配当
 「蛸配当」という言葉は法律用語ではありません。
 昭和28年の出題とはいえ、法律用語ではない俗語の意味を説明させるのは、いかがなものかと思います。
 特に、現物配当が可能になった会社法においては、受験生が
  「蛸配当とは、会社が蛸を現物配当することをいう」
と解答したとしても、×をつけるわけにはいかないからです(嘘)。

 それはともかく、俗語であろうとも、まともに解答する以上、もっともらしく定義する必要があります。その場合、
  「蛸配当とは、蛸が食べ物がないときに、食べてはいけない自分の手足を食べるように、株主が配当してはいけない財産を配当することをいう。」
と俗っぽく定義するより
  「剰余金の配当により株主に交付する金銭等の帳簿価額が分配可能額を超える場合における当該剰余金の配当をいう。」
と法律的に定義した方が、後に法律論を展開しやすいと思います。

 なお、蛸配当は、違法配当の一種ですが、違法配当の中には、例えば、
  「株主総会の決議が必要なのに、その決議をせずに、配当を行った」
という単純な手続違反の違法配当もあるので、
   分配可能額を超える配当
であることを明確にする定義を書くべきでしょう。

 <次回に続く>

(質問コーナー)
Q1
 私は今、民事訴訟法の「法人の内部紛争における当事者適格」という論点についての論文を書いています。この論点では取締役選任決議取消訴訟などにおいて法人のみが被告適格を有するのか、または直接の利害関係人(当該決議によって選任された取締役)も当事者となれるのかが問題となります。
 しかし新会社法834条17号では株主総会等の決議取り消しの訴えの被告は「当該株式会社」と規定されており、この論点は立法解決されたようにも感じられます。従来は被告適格につき旧商法に明文がなかったために論争が起きていたという理解は正しいのでしょうか。また明文に規定がなされた今でもその解釈や、「当該株式会社」の範囲をめぐっての議論がなされる実益はあるのでしょうか。
 直接会社法に関係する論点ではないのですが、サミーさんのご意見をお聞きしたく質問してみました。宜しくお願いします。
投稿 あんじー | 2006/12/29 0:50:41
A1
 被告適格は、会社に関していえば、立法的に解決されました。
 ですから、議論の実益はないでしょう。

Q2
T&A MasterのNo.192に掲載された記事「種類株式の活用と評価」においては「種類株式自体を相続しなくても、株主全員の同意があれば、相続した普通株式の一部だけを種類株式にすることもできます」とあるのですが、①会社法の条文上の根拠がわかりません。②実質論としては株主全員の同意が必要なことは理解できるものの、具体的な手続きもイメージがわきません。③発行済みの普通株式の一部だけを別の種類に転換することが可能なのでしょうか?
投稿 初心者 | 2006/12/29 22:11:23
A2
 伝統的にできると解釈されているんですよね。それで、それを否定する必要は無いので、今もできるとお答えしているところです。なぜ、できるんでしょうね?極めてラフに言えば、全員の同意があるから、どの株主の利益も害されないということでしょうが、厳密に論証しだすと、なかなか難しい問題があるのです。こういうのが、大人の事情というものでしょう。
 発行済みの普通株式の一部を別の種類に転換することもできます。

Q3
公開会社における募集事項の決定は、原則として取締役会の決議によるとされています(199条1項2項、201条1項)。このような会社法で取締役会決議事項とされているものを、定款によって、株主総会が決すると定めることができるのですか?
某書籍(学者執筆ではありません)には、定めることができると明記してました。
確かに、株主総会が、会社所有者により構成されている事を考えると、そのように定めることができるように思えます。また条文上の295条2項の「定款で定めた事項」との文言からも、できるように思います。
しかし、201条1項は、定款変更の限界を画しているとも考えられます。条文解釈としては、295条2項の「定款で定めた事項」とは、会社法上「別段の定め」を置くことが許された事項に限られると考えるわけです。このような考えは、間違ってますか?
御教示のほど、宜しくお願い致します。
投稿 かなり苦学生 | 2006/12/31 5:29:38
A3
 定款で定めれば、募集事項の決定を株主総会で定めることができます。
 295条2項が根拠です。201条1項が、295条2項を制限する根拠にはなりません。

Q4
会計監査人とか取締役会設置会社の取締役が機関でなくてただの人っていうのの法的根拠って何でしょうか?条文のどこみてもわからないのですが。
投稿 貳 | 2006/12/31 20:47:52
A4
 それは、昔の考え方です。会社法では、「株主総会以外の機関」の中にすべて整理しています。

Q5
12/28のQ2に関連して、①取締役会非設置会社で取締役1名の場合には、348条2項の反対解釈として、(法令または)定款に別段の定めがある場合を除き、当該1人の取締役が株式会社の全ての業務の決定をすることができるということでよろしいのですよね。また、②取締役会非設置会社で取締役が複数存在する場合、348条3項には362条4項には規定されている重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財等が掲げられていないのですが、取締役会設置会社で各取締役に委任することができない事項についても、取締役会非設置会社では各取締役に委任することができるという考え方でよろしいのでしょうか。
投稿 ハニャ? | 2007/01/01 21:15:12
A5
①1人のときは、1人で決定します。
②委任できます。

Q6
吸収合併の決議要件(消滅会社)について質問があります。
以下の理解でよいのでしょうか?
吸収合併消滅株式会社(公開会社とする)の株主総会の決議要件について
①発行株式が1種類で、対価が譲渡制限株式のとき
  特殊決議
②発行株式が2種類
  甲種類株式(譲渡制限なし)→対価が譲渡制限株式
  乙種類株式(譲渡制限なし)→対価が譲渡制限株式
 のとき
  「全体総会の特別決議」
    +「甲種類株主総会の特殊決議」+「乙種類株主総会の特殊決議」
③発行株式が2種類
  甲種類株式(譲渡制限あり)→対価が譲渡制限株式
  乙種類株式(譲渡制限なし)→対価が譲渡制限株式
のとき
 「全体総会の特別決議」+「乙種類株主総会の特殊決議」
④発行株式が2種類
  甲種類株式(譲渡制限あり)→対価が譲渡制限株式
  乙種類株式(譲渡制限なし)→対価が譲渡制限なしの株式
  「全体総会の特別決議」のみ
投稿 XYZ | 2007/01/02 23:54:57
A6
 そうです。

Q7
 取締役会設置会社における取締役の権限はかなり制限されてる(というか取締役会に大幅に権限委譲されてる)から機関じゃないとかんがえてもいいのでしょうか?取締役会が存在するからこそ取締役というポストもある、というように。
 それに対して監査役は、監査役会設置会社においても独立の権限は保持されてるから単独の機関としても存在意義があるということになるのでしょうか?
投稿 貳 | 2007/01/03 0:28:18
A7
 取締役会設置会社の取締役も、機関と整理されています。
 取締役会が存在するから、取締役があるのではありません。条文構造上、取締役は、株式会社の必置機関です。

Q8
最近、経営者の「説明責任(アカウンタビリティ)」という言葉を耳にするのですが、この議論は法解釈論的にはどう位置付ければよい議論なのでしょうか?
たとえば、「説明責任」に違反すると、役員等の損害賠償責任を生じさせたり、あるいは、株主総会決議の取消事由になったり…ということはあるのでしょうか?
私の理解では、結局は、「善管注意義務」の議論に解消されるように思うのですが、このような理解でよろしいのでしょうか?
また、施行規則ではかなり「情報開示」が進んでいるように思いますが、このような規則を遵守してもなお「説明責任」が問われる場面というのは想定できますか?
投稿 ろびぞう | 2007/01/03 3:40:12
A8
 説明責任は、誰に対するどんな場面の説明責任なのかによって、法的意味が全く違います。
 施行規則を遵守しても、「説明責任」が問われる場合は山ほどあるでしょう。

Q9
 未熟なロー生ですが,違法行為差止請求権(360条)についてご教授ください。
 一問一答(Q219)によれば,違法行為差止請求について濫訴防止規定(例えば,847条1項但書き)がないのは,「個々の株主が有する実体法上の差止請求権の行使」であるから、その訴えの提起を制限することは、裁判を受ける権利(憲法32条)の保障の点から妥当でないから,とされています。
 そうすると,株主による違法行為差止の訴えの判決効は,会社にも及ぶのでしょうか。株主を「法定訴訟担当」と見ると,判決効が会社にも及ぶのは分かるのですが(民訴115条1項2号),株主が有する固有の権利と捉えると,どのようになるのでしょうか。
投稿 イロハ | 2007/01/03 17:05:00
A9
 取締役に対する違法行為差し止めの訴えの判決の効力は、会社には及びません。
 
Q10
事業譲渡について債権者保護手続がないので、債権者をどう保護すればよいのか、自分で考えた以下の事例で教えてください。
資産:50、負債:40の会社が資産50部分のみの事業譲渡を行った場合で、譲受人が譲渡人の商号を利用しないとき。
考えられる債権者の保護は、詐害行為取消権(民423条),です。しかし、詐害行為時に債務者の無資力が必要であると判例はしています(大判大正15年11月13日)。上の事例では,詐害行為時=事業譲渡時には資産+10の超過なので、詐害行為取消権を行使できないことになり、債権者は口をくわえたまま事業譲渡が行われるのを見るしかないのか。そうすると、おかしな感じがします。
投稿 たけし | 2007/01/03 19:02:58
A10
当該行為により債務超過になるならば、詐害行為です。

Q11
 発起設立で、公告方法は官報掲載を採用するときの株式会社が、設立当初に、貸借対照表をインターネットで開示することとする場合、ウェブページのアドレスを決定するのは発起人でしょうか。また、発起人が複数のときは、その過半数の一致で決定できるのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2007/01/03 22:00:44
A11
 成立時の貸借対照表は、公告義務がありません。そのため、それは、公告ではなく、成立後の会社の業務執行者が行う単なる情報開示なのではないでしょうか?いずれにせよ、発起人ではないですね。

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