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2006年12月 2日 (土)

事業の価値と株主の保護

 今日は、閑話休題っぽいネタで
  事業の価値と株主の保護
についてお話ししたいと思います。

 会社が、事業の現物出資をして株式を発行したり、事業を承継させる会社分割や合併を行うときに、しばしば論じられるのは、その事業が「債務超過」又は「実質債務超過」であっても、受け入れた会社が株式を発行することができるか、という問題です。

 昔から、「債務超過の会社を吸収合併することができるか」という論点はあり、この点については、旧商法のもとでも「無対価ならばできる」というのが通説でした。
 この通説は、「存続会社の株式が発行されないならば」という意味で「無対価」という言葉が使っていたので、対価が柔軟化された会社法では、無対価でなくても、「存続会社の株式以外の財産」を対価とするような合併ならば許されるというのは、誰もが認めるところだろうと思っています。

 これに対し、実質債務超過の事業を受け入れて、「株式を発行することができるか」という点については、現在も意見の対立があるところです。

 株式発行否定説は、
   株主になるためには、出資によって、リスクを負うことが必要であり、実質債務超過の事業を譲渡するような場合には、譲渡人がかえって、負担が軽くなるのだから、リスクを負担することにはならない
ということを根拠にしているようです。

 これに対し、
   事業の価値を決めるのは、当事者なのだから、実質債務超過というあいまいな概念を用いて、株式の発行を禁止するのは法律関係を不安定にする。株主の保護や債権者の保護がきちんと図られるのならば、株式の発行自体を禁止する必要はない。
というのが私達の考えです。
 実質債務超過という言葉の意味のあいまいさについては、以前、葉玉さんが記事にしていますので、そちらを参考にしてください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50521126

 実際、事業を構成する財産(物、債権、債務等)の値段が「客観的」にいくらなのかを決めるのは、非常に難しい。
 「物」の値付けが難しいのは、上のリンクの記事を見て貰えればわかりますが、特許やノウハウ等も価値評価をすることが大変難しい財産の一つです。
 例えば、一般的には全く使えないような知的財産であるが、ある特定の会社が使ったら、100億円の利益を得ることができるような場合、流通性がないから価値はゼロなのか、それとも、その会社にとっては100億円の利益が得られるから、価値も100億円なのか? 一般的な価値がゼロだから、その知的財産を出資することはできないというのでは、怒る人もいるでしょう。

 難しいのは、権利の評価だけではありません。義務だって評価は難しい。1000万円の債務を負っていれば、マイナス1000万円かもしれませんが、事業譲渡が問題になる場面では、話はそんなに単純ではありません。
 大手企業に商品を納入する義務は、それだけを見ればマイナスですが、その後に継続して商品を納入することができる期待があれば、その期待に価値が生まれます。

 極端な話、例えば、長澤まさみさんが、ドラマの疲れを癒すために、ある会社に電話でマッサージを依頼したとしましょう。
 その場合、私は、その会社が
  「長澤さんの体をマッサージしなければならない義務」
を10万円で売ってくれるのならば、喜んで買います。
 一般的には
 「金を払って、債務を引き受けるのはおかしい。」
と考えるのでしょうが、実際には、債務に値段がつくことだってあるのです。

 このような個々の財産の評価の難しさが分かっているので、事業の価値を評価するときには、純資産を見るだけではなく、配当還元法であるとか、ディスカウントキャッシュフロー法であるとか、いろいろな評価方式を使って評価します。

 しかし、評価方式ごとに、何倍もの開きのある価格が算定されるのが一般的であり、そのこと一つをとっても、いかに「客観的な価値」というものが幻想なのかを思い知らせてくれます。

 こうしたことを考えると、株式発行否定説は、客観的評価のあいまいさや、その評価を適法性の要件とすることの危険性、さらには、一般人にとってはマイナス財産としてしか評価できないが、当事者には極めて高い経済的価値があるものの存在を、見逃していると言わざるを得ないと思います。

 このように事業の価値の相対性を前提にすれば、

一般人が「実質的債務超過」と評価する事業を承継するような場合でも、承継会社が、その事業にプラスの価値があると判断し、株主や債権者が、十分な情報をもとに、承継会社の判断に賛成するのならば、

株式の発行自体を禁止する必要はありません。

 むしろ、大事なのは、株式の発行の可否ではなく
  株主や債権者に十分な情報を与えること
  反対した株主や異議を述べた債権者を保護すること
の2点なのです。

 たとえば、株主の保護の制度としては
  事業の現物出資による新株発行においては、現物出資財産の価額てん補責任
  会社分割や合併においては、反対株主の株式買取請求権
等が考えられ、これらの制度をきちんと機能させていくことが、事業の承継や組織再編に関する諸制度の法的安定性を高めるための要になると思います。

 例えば、最近、MBO(マネージングバイアウト)による非上場化が流行していますが、MBOが行われるときは、通常、株主に
  ① 経営者が出資したSPCによる公開買付に応じる。
  ② 公開買付後に会社とSPCとの株式交換等が行われる場合に、反対せずに、対価を受け取る。
  ③ 株式交換等反対して株式買取請求権を行使する。
という3回の対価の受け取りの機会が与えられます。
 
 経営者側としては、①と②と③の価格は、安ければ安い方が良いため、株主側に
   ①の公開買付にに応じないと、②や③では、もっと安い値段を提示されるかもしれない
という恐怖感があると、非常に安い公開買付価格で、公開買付への応募を事実上強制されるような事態が生じることになりかねません。

 しかし、①から③のうち、③だけは、会社と株主の協議が整わなければ、裁判所が
  「公正な価格」
を決めてくれるという特徴があります。
 ここでいう「公正な価格」は、株式交換等の当事会社が決めた対価に不満な株主を救うために一般的な価格を保障する趣旨で決定される価格ですから、今日の前半で述べたような相対的な価格ではなく
  一般的な価格
ということになります。

 もちろん、既に述べたとおり、一般的な評価方式を用いても、その価格はバラバラになりますが、その欠点を、裁判所の良識によって補うために、わざわざ非訟事件にしているわけですから、裁判所には、諸般の事情を考慮して、適切な価格を決めてもらう必要があります。

 「裁判所は、公開買付価格や株式交換の対価の額に惑わされずに、真に「公正な価格」で買取を認めてくれる」

という信頼が生まれてくれば、株主は
  公開買付価格が安いときは、株式買取請求権を行使すればよい
という安心を得ることができます。

 そうなれば、公開買付をする側も
  公開買付価格が安いと、公開買付自体が失敗する可能性がある
と考えて、適正な値付けをするようになるでしょう。

 株式買取請求権という最後の砦がしっかりと機能することにより、良い循環が生まれるのです。

 これまで行われてきたMBOにおける公開買付価格が妥当かどうかは、私には分かりませんが、制度の健全性を保つために、株式買取請求における「公正な価格」の持つ重要性がこれから高まっていくように思います。

(質問コーナー)
Q1
 略式組織再編・簡易組織再編についてご教示ください。
 非公開会社の完全親子会社間において、無対価で、吸収型再編を行うのですが、この場合、会社法条文上の「交付する」に該当しないため、当然に、略式組織再編・簡易組織再編が選択可能でしょうか?
 また、その場合、会社法796条3項1号の合計額は、必然的に「ゼロ」となり、ゼロを除することができなくなることは、どのように理解したらよろしいのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/30 9:35:53

A1
 796条3項1号の合計額がゼロならば、簡易合併をすることはできます。
 ゼロで除することはできませんが、ゼロを除するとゼロです。
 ちなみに、2号が0ならば、その問題は生じますが、その場合は、簡易合併はできません。

Q2
 A社100%出資による完全子会社(以下、「B社」)の設立に際して、『A社株の一部を現物出資することの可否』についてご教授下さい。

①会社法135条1項(親会社株式の取得の禁止)は、「子会社は、親会社株式を取得してはならない」と規定しており、仮に、当該現物出資を許容すると、B社(子会社)が、A社株式(親会社株式)を取得する状況が作出されるたため、当該現物出資は「不可」と考えますが、いかがでしょうか。

②この点、会社法135条1項5号・施行規則23条4号(子会社による親会社株式の取得の例外的許容事項)の「親会社株式を無償で取得する場合」にあたり、当該現物出資は「可能」という解釈は成り立つのでしょうか。

③「発起人が割当を受ける設立時株式の数」を、「発起人による(現物)出資」に対する(有償)対価とみてよいか否かが問題となっている気がしています。
以上、宜しくお願い申し上げます。

投稿 現代のファイロ・ヴァンス | 2006/11/30 10:25:52
A2
 A社が自己株式を処分するためには募集手続が必要です。ですから、無償は無理ですし、B社を設立する場面ですから、A社の募集手続にB社が応募することができず、135条を持ち出すまでもなく、無理でしょう。

Q3
議決権の不統一行使について質問させてください。

株主はその有する株式を統一しないで行使することができます。
(313条1項)
ところが、取締役会設置会社では 株主は株主総会の3日前までに理由を通知しないと 議決権の不統一行使をすることができません。(313条2項)
この様に、取締役会の設置の有無で差が出る理由について教えてください。
 また募集設立では 将来、会社が取締役会設置会社になるかどうかを問わず、設立時株主は創立総会の3日前までに理由を通知しないと 議決権の不統一行使をすることができません。(77条1項)この様に募集設立で 将来、会社が取締役会設置会社になるかどうかを問わず 理由の通知を要求する理由について教えてください。

投稿 maru | 2006/11/30 14:06:48
A3
伝統です。

Q4
 会社更生法第224条第6項に「第182条の3第3項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合」とあり、同法第182条の3第3項では、「株式交換(更生会社が株式交換完全親会社となるものに限る。)」と規定されています。
 しかし、千問の道標671頁の解説にあるとおり、「株式交換は、完全子会社となる会社の行為であり・・・会社法上「株式交換をする株式会社」(234条1項7号等)とは、完全子会社のみを指す。」のはずですから、会社更生法の規定は、会社法と矛盾しているように思いますが、いかがでしょうか。

投稿 内藤卓 | 2006/11/30 16:53:05
A4
法律ごとの概念の相対性ということで勘弁してください。

Q5
欠損填補のための資本金・準備金の額の減少について教えてください。
定時総会でいわゆる欠損填補のための資本金の額の減少(会社法309条2項9号イロ)を行う際に、単に分配可能額のマイナスを消すだけでなく、表示上の欠損(その他利益剰余金のマイナス)をも消すためには、会社法309条2項9号イロの普通決議とは別に、会社法452条による剰余金の計数変動(会社計算規則50条1項1号により増加するその他資本剰余金をその他利益剰余金に振り替える処理)の株主総会決議が必要ということになるのでしょうか。
他方、欠損填補のための利益準備金の額の減少の場合は、会社計算規則52条1項1号により、直接、その他利益剰余金の額を増加させることができるので、資本金・資本準備金の額の減少の場合とは異なり、会社法448条の株主総会決議のみによって、表示上の欠損も消すことができるという理解でよいでしょうか。
投稿 法務スタッフ | 2006/11/30 19:30:07
A5
資本金を減少しても、その他資本剰余金が増加するだけですので、その他利益剰余金を増加させたければ、452条の決議が必要でしょう。利益準備金を減少すれば、その他利益剰余金が増加するので、別途452条の決議は不要です。

Q6
権利株の譲渡についてご教授ください。
発起人については、出資履行前の権利株の譲渡について成立後の会社に対抗できないとする規定が35条に設けられており、出資履行後についても50条2項に設けられています。
ところが、設立時募集株式の引受人については、履行前の権利株の譲渡について63条2項に規定がある他、出資履行後、会社成立前の権利株の譲渡については規定が見当たりません。
これは、何か理由があるのでしょうか?

投稿 しーぽん | 2006/12/01 2:03:58
A6
それは、確か、ずーっと昔にご指摘がありましたが、特に理由はありません。
でも、会社に対抗することはできないと解すべきでしょう。

Q7
1. 平成8年成立の非公開会社(いわゆる閉鎖会社)
2. 定款には、3月決算、6月定時総会の定めがあり、種類株式を発行する定めがない
3. 旧特例法上の小会社であったが、平成18年2月増資により資本金が1億円を超えた(大会社には該当しない)

以上の様な株式会社において、平成16年定時総会で就任した監査役Aは、会社法施行と同時に任期が満了します。これを防ぐために、

4. 平成18年4月臨時総会において、監査役の範囲を限定する旨の定めを会社法施行と同時に設定する旨の条件付決議

をしました。この場合には、監査役Aの任期について整備法95条が適用されますが、同条にいう「従前の例」とは、旧特例法26条3項でしょうか。それとも、旧商法273条1項でしょうか。

監査役の監査の範囲が拡大しなくなった以上、後者の4年の任期を維持するのが自然だと思われます。が、経過措置本の100ページには「施行時に在任する監査役については、次に掲げる行為等が行われない限り、(1)で述べた現行商法の任期に関する規律が適用される((1)⑤および⑥を除く)」とあり、(1)④のケースが除外されていないのが引っかかっています。
投稿 シーン | 2006/12/01 2:39:19
A7
 なお従前の例による以上、旧特例法26条3項も適用になると解するほかないでしょう。

Q8
新株予約権の目的とされた株式に取得条項を付す旨の定款変更がされた場合には、当該新株予約権者は新株予約権買取請求できないのは、なぜですか?

組織再編についての実務書で何か良いものを知っていたら、教えてください。
もちろん、千問、100問は、既に購入済ですので、それら以外でお願いします(笑)

投稿 パラリーギャル | 2006/12/01 9:05:11
A8
新株予約権買取請求の範囲は、もっぱら政策的な判断というしかないです。
組織再編についての実務書は、まだあまり出ていないと思いますが、郡谷・和久編著の計算詳解が一番よくまとまっています。

Q9
4月5日のQ&A3で葉玉先生は以下のようにご回答されております。

「477条6項で第4章第2節の規定が適用除外されているので、取締役会を置く旨の定款の定めは、清算株式会社では効力を失います。
 清算株式会社が、取締役会設置会社として継続したい場合には、継続決議の際に、取締役会を置く旨の定款の定めをしなければいけません。」

一方、相澤先生・松本先生の清算株式会社の機関設計(登記情報12月号)で
「取締役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社が継続をした場合には、特に定款変更を要することなく取締役会を置くべきこととなる。」
と書かれています。

後者に変更になったと考えてよろしいでしょうか?
A9
 そのとおりです。葉玉さんが答えを書いたころは、主として登記との関係で、保守的な見解を採っていました。
 その後、各方面とすりあわせの結果、「継続時の定款変更は不要」ということで話がまとまりました。ただし、登記は必要です。

Q10
111条2項について教えてください。
株式の内容として譲渡制限のみを規定している非公開会社が、新たに剰余金の配当(108条1項1号)と譲渡制限(108条1項4号)の事項を規定した異なる内容の株式を発行しようとする場合には、『ある種類株式の内容として第108条第1項第4号…に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合』(111条2項)に該当するのでしょうか?
よろしくお願いします。

投稿 リー | 2006/12/01 16:11:59
A10
該当しません。

Q11
会社法第8条1項の「不正の目的」について、教えて下さい。他の会社であると誤認される商号を使用するのは、とりもなおさずそのまま「不正な目的」だと思います。つまり、条文の「不正な目的をもって」は、当然のことへの説明語に思われます。登記簿で公示されている以上、他の会社の商号は知ってしかるべきなので、不正ではない「他の会社であると誤認される商号の使用」がありうるのでしょうか、と疑問に思いました。古い資料ですが、昭和57年4月8日の、参議院会議録の、「96国会、法務委員会第7号」の政府委員のかたの説明にも「不正の目的とは、ある名称を自己の商号として使用することにより、世人をして、自己の営業を他人の営業と誤認させようとする意図をいうと理解されてる」とありました。もしかすると、不正の目的とは、この「意図」の有無で決するのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/12/01 18:06:28
A11
登記されている商号を使用したからといって、不正の目的が必ずあるわけではありません。不正の目的は、意図です。

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コメント

サミーさん

今回のマッサージの債務のたとえ話は、分かりやすいだけでなく、「喜んで買います」というあたりが「親切だがスケベなオヤジ」な感じで素敵です。

今後ともこの調子でお願いいたします。

投稿: むだ話 | 2006年12月 2日 (土) 19時09分

MBO(マネージングバイアウト)というのは、
通常、マネジメントバイアウトと言われるものですな。

投稿: しーぽん | 2006年12月 3日 (日) 01時13分

法226条1項の株券喪失登録が、株券廃止会社の場合にだけ、自らの抹消申請でできないのか、どうかお教えくださいませ。
ずっと考えているのですが、わかりません。
廃止会社の場合に定款変更と同時に無効になる(218条2項)ことと何か関係がありますか?

投稿: しーぽん | 2006年12月 3日 (日) 01時19分

ブログがリニューアルされてから,初めて質問いたします。宜しくお願します。株式会社と代表清算人との委任関係についてなのですが,
①まず会社法においては,当該関係は,「会社と代表取締役との関係」と同様の規律がされています(会349①ないし③と483①ないし③,会362③と489③)。したがって,清算人の地位と代表清算人の地位とが分離している会社(定款の定めに基づく互選又は清算人会決議により代表清算人が選定される会社)では,清算人としての就任承諾とは別に「代表清算人としての就任承諾」が必要であると理解しています。
②ところが商業登記法では,「代表清算人としての就任承諾」というものは前提とされてはおらず,清算人としての就任承諾を証明することにより,代表権の有無にかかわらず,清算人の登記が可能であると規定されているように思われます(商登73②)。
③どっこい平成18年3月31日付民商第782号民事局長通達では,代表清算人の選定方法にかかわらず,「代表清算人としての就任承諾」が必要であるとされています(同通達第2部第5の2(2)イ(ァ)d)。
以上の3つを整合的に説明するのはなかなか難しいと考えておりますが,私の理解は間違っていますでしょうか。

投稿: yasuko | 2006年12月 3日 (日) 16時32分

もうひとつ,清算株式会社についてなのですが,
①取締役会を置く旨の定款の定めの効力は,清算の開始によっても有効に存続する(相澤哲・松本真「清算株式会社の機関設計」月間登記情報541号28頁)。
②会社の解散によっても,株式の譲渡制限に関する定めの効力は停止しない(相澤哲・郡谷大輔「新会社法の解説(11)」旬刊商事法務1747号17号)。

という2つの考えを前提とすると,取締役会を株式譲渡承認機関とする旨の定款の定めがある会社が解散した場合においては,
①解散登記と併せて当該定めの登記を変更または廃止する必要はなく,この場合,取締役会設置会社である旨のみが登記官の職権により抹消される。
②当該清算株式会社の株式を譲渡しようとする株主は,「株主総会」の承認を得なければならない。
という結論でよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

投稿: yasuko | 2006年12月 3日 (日) 17時02分

サミー先生、いつもブログを更新していただき有難うございます。
本日は、募集株式の発行につき、教えてください。以前ご回答いただいた部分もあるのですが、知識の整理のため、再度、確認の意味もこめまして、質問させてください。
1 第二編第二章第八節第二款「募集株式の割当て」の款自体は、全ての募集株式を発行する株式会社に適用がある、との理解で良いか?
2 204条1項前段の「株式会社」とは、募集株式が譲渡制限株式でない全ての株式会社を射程範囲とする、との理解で良いか?
3 204条1項後段の「株式会社」とは、株主総会が募集事項の決定機関である株主割当の場合を除く、募集株式が譲渡制限株式でない全ての株式会社を射程範囲とする、との理解でよいか?
4 募集事項の決定決議とは異なる日に割当ての決定をしたとすると、決定決議とは別に別途割当てのための決議をしなければならない、との理解で良いか?例えば、株主総会を再度開催する必要がある、との理解で良いか?
5 非公開会社が譲渡制限株式を第三者割当てで募集した場合、割当ての取締役会決議が必要との規範は妥当か?
6 204条2項本文は、募集株式が譲渡制限株式である場合で、かつ、第三者割当ての場合を射程範囲とする(株主割当の場合は適用されない。)、との理解で良いか?
以上の点、ご教授ください。宜しくお願いいたします。
追伸 私の頭が悪いと言うことは別にして、「募集株式の割当て」の款は、読みづらい気がします。原因は第一款の募集事項の決定等が、公開会社か否か、株主割当の場合か否か、について書き分けているのに、第二款は書き分けられていない点にあるのではないかと思います。もう一つは「株式会社」の多義性にあると思います。

投稿: NK | 2006年12月 3日 (日) 21時27分

サミー先生、回答願います。会計規153条より、計算書類は作成した取締役が各監査役に提出すると読み取れますが、事業報告の場合、これに該当する条文が見当たりません。計算書類と同じ理解でよろしいでしょうか。

投稿: RICHA | 2006年12月 3日 (日) 23時35分

特定監査役についてですが、小会社に複数の監査役がいる場合、特定監査役はどうやって決めるのでしょうか。(機関および方法)

投稿: ABC | 2006年12月 3日 (日) 23時39分

計算書類と定時株主総会招集について、ご指導願います。
計算書類、株主資本等変動計算書の注記で、●年●月●日の定時株主総会において、次のとおり決議を予定しております。と記載するような事例を見受けますが、計算書類を作成した後で、株主総会招集のための取締役会を開催し、総会日付が正式に決定すると思いますが、計算書類の作成、監査、承認の段階では、あくまでも株主総会予定日を記載するという理解でしょうか。場合によっては、監査を受けた時に記載してある日付を変更することはあって良いという理解でしょうか。

投稿: すねお | 2006年12月 3日 (日) 23時48分

サミー先生、別件ですがもう1問確認のため、質問させてください。
種類株式発行会社(取締役会設置会社)が株式分割をする場合に、184条が適用されるのは、株式ごとの分割割合が種類株式ごとに共通である場合のみである、との理解で宜しいでしょうか?すなわち、種類株式発行会社において、株式分割は種類株主総会決議が必要であるのが原則である(322条1項2号)ところ、株式ごとの分割割合が種類株式ごとに共通である場合は、損害を及ぼす恐れがないため、322条1項2号の特則として取締役会に権限を認めた184条がある、との理解で宜しいでしょうか?

投稿: NK | 2006年12月 4日 (月) 00時38分

 サミー様、質問宜しくお願いします。

① 公開会社でない取締役会設置会社以外の株式会社において、取締役選解任権付株式を発行している場合に、種類株主総会の決議によって代表取締役を定めることができるか?

② 公開会社でない取締役会設置会社において、取締役選解任権付株式を発行している場合に、定款の定めに基づき、種類株主総会の決議によって代表取締役を定めることができるか?

投稿: iインカーン | 2006年12月 4日 (月) 02時51分

100問2版P237「417」についてお伺いいたします。

株券発行会社で、株式取得者が名義書換を請求する場合は、当該株券発行会社から貰う場合以外、常に株券の提示は必要ではないのですか?

「正」の「名義株主と取得者との共同請求も可能」とは、株券を提示しなくても名義書換が可能ということでしょうか?

投稿: 南斗六星 | 2006年12月 4日 (月) 08時11分

ご回答ありがとうございました。
Q&A9の「ただし、登記は必要。」の意味を教えてください。
解散の登記と同時に株式譲渡の承認機関を取締役会から別の機関に変更する登記が必要で、継続の登記をするときは、同時に株式譲渡の承認機関を取締役会とする変更登記が必要ということでよろしいでしょうか?

投稿: パラリーギャル | 2006年12月 4日 (月) 09時25分

 普通株式のみを発行している会社(取締役会設置会社)が、株主総会で①定款を変更(種類株式)し、②発行済の普通株式の全部を全部取得条項付株式とし、③全部取得条項付株式を取得することとしました。
 そのため、効力発生時には、株主が存在しないこととなりますが、効力発生日の翌日に募集株式の発行決議をしたいのですが、株主総会を開催することが出来ませんので、取締役会で決議をしたいと考えていますが、可能でしょうか?

投稿: 橋爪伸由 | 2006年12月 4日 (月) 10時11分

本日のQ9に関連したことなのですが、法人が解散して清算を開始した場合に、
株式の譲渡制限の承認機関を取締役会にしている会社においては、譲渡承認機関を他の機関に変更登記する必要は無しという考え方でよろしいのでしょうか。関連質問として、法人が清算開始した場合は出資の譲渡は認められないのでしょうか、従前は法人清算開始後は出資の移動は認めないというような記述をどこかで見ました。会社法において法人清算開始後に出資の譲渡は問題なしとした場合、当初の質問との関連なのですが、その譲渡の承認機関はどこになってしまうのか、またその場合、譲渡承認機関はあらためて登記して公示する必要があるのか、ということです。余談ですが、解散していない法人の場合は株式の譲渡制限を取締役会にしている場合、取締役会を廃止すると同時に株式の譲渡承認機関の変更もしなければならない登記実務になっております。ですから清算開始した場合の適用除外条文規定が気になるところなのです。先生、どうか御教示下さい。

投稿: 無資格実務家 | 2006年12月 4日 (月) 10時22分

サミーさん こんにちは

会計監査限定監査役と事業報告の監査についてお教え下さい。

 監査役の権限が会計監査に限定されている場合においても、会社法436条の規定では「事業報告」の監査まで必要としています。その一方、会社法389条~施行規則129条では監査報告書の中に「事業報告の監査権限がない」旨を記載するとなっています。
 一見すると矛盾しているように思われるのですが、このような規定の置き方は、何か意図があってのことなのでしょうか?

 また、同様の場合において、(1)取締役が事業報告を監査役に提出しなかった、(2)監査役が事業報告の受領を拒否した、という事例では、実質的に監査権限がないにもかかわらず、手続上の瑕疵や任務懈怠といった問題が当然に発生するのでしょうか?

投稿: チョビ | 2006年12月 4日 (月) 15時28分

こんにちは。久々の投稿になりますが宜しくお願いします。

自己株式の取得の件ですが、公開大会社で役員の任期が1年以内の定時総会までの場合には、株主との合意により自己株式を取得する際に、取得事項を取締役会で定める旨を定款で定めることができます(会社法459条1項1号、160条1項)。

この場合に、定款で「取締役会に関連する事項については取締役会において定める取締役会規則による」という定めをして取締役会規則で自己株式の取得事項を定める規定を置いて、自己株の取得が可能でしょうか?

取締役会規則は、取締役会の決議がなければ変更できないので、この規則に定めがあればOKの様な気もするのですが・・・・
ご教示願えますでしょうか。

投稿: Eisuke | 2006年12月 4日 (月) 16時24分

こんばんは、いつも拝見させていただいております。
さっそく質問なのですが、株式会社が(非公開、取締役会、監査役設置会社)株主総会により解散すると、その日で事業年度(例えば4/1~3/31の場合)は終わり、その翌日から清算事務年度となりますが、
①事業年度途中(2006/8/31)で解散決議をした場合は、2006/9/1より清算事務年度となるので、解散後初めての定時総会は2007/8/31以降になるのでしょうか?
②事業年度末日(2006/3/31)から定時総会(2006/6/30予定)までの間に、臨時総会(2006/4/30)により解散決議を行った場合は、事業年度は
【1】2005/4/1~2006/3/31(事業年度)
【2】2006/4/1~2007/4/30(事業年度)
【3】2007/5/1~2007/4/30(清算事務年度)
となりますが、【1】に関する定時総会は避けられず、解散後最初の定時総会は①と違い2006/6/30にしなくてはならないのでしょうか?
以上、宜しく御願い致します。

投稿: ハシモト | 2006年12月 4日 (月) 18時18分

サミー先生、いつもブログの更新、お疲れ様です。

早速ですが、『新・会社法100問』第44問「権限委譲」について質問させて頂きます。

100問の解答例では、機関の権限委譲の問題について、「明文の例外が認められているかどうかによって決せられる」という立場を採用しています。

そして、(1)事業の全部又は重要な一部の譲渡の決定、(2)取締役の報酬の決定、(3)代表取締役又は代表執行役の選定については、その観点ですっきりと説明されています。

しかし、代表取締役の選定・代表執行役の選定の部分では、そのような例外規定があるか否かという議論が曖昧になっています。

解答例では295条2項と、295条3項の反対解釈によって結論を導いていますが、このような解釈を(4)で用いるのであれば、上記(1)~(3)でも同じ解釈を用いるべぎてはないのでしょうか?

また、前田先生や江頭先生の基本書でも100問のような説明はされていません。

100問の解答例をどのように理解すれば良いのか、お忙しいところ大変恐縮ですが、ご教授頂ければ幸いに存じます。

投稿: 悩める受験生 | 2006年12月 4日 (月) 20時05分

117条2項の価格の決定の申立てができる株主とは

(本日のお話、コーヒーを吹き出してしまいました。)

さて、失礼ながら、数段上の橋爪先生のご質問に便乗して、質問させていただきます。

橋爪様のスキームで、既存の普通株式全部を、全部取得条項付種類株式とする決議後、③の全部取得条項付株式を取得する旨の決議において、その取得対価としては、当該会社の株式を割り当てるものとし(171条1項1号イ)、1株の発行価額を相当な高額に設定のうえ、1株に満たない端数株主には、一部株式を売却して、その売却金をもって交付するものとした、とします。


普通株式を、全部取得条項付種類株式とする定款変更に反対する株主が、株式買取請求権を行使し、価格の決定の申立て(117条2項)をしようとするとき、その申立時において、効力発生日、取得日の到来によって、端数しか持たないこととなってしまった反対株主については、株主ではないとして、その申立を否定されませんでしょうか?

価格の決定の申立ては、条文からは、買取請求をした反対株主に認められたものと考えられますし、その後の効力発生日、取得日の到来によって、反対株主が、端数しか持たなくなったとしても、これを否定する理由はないように思います。また、これを認めないと、多数株主によって、容易に、少数株主の株式買取請求権を排除できることになります。

よろしくお願いします。

投稿: 瀬戸際の法務担当 | 2006年12月 4日 (月) 20時35分

サミー様 
私の質問の仕方が悪かったので、再度、略式組織再編の可否について質問させてください。
吸収分割会社が、吸収分割承継会社の特別支配会社である場合において、無対価で、吸収分割を行うのですが、両社とも公開会社でない場合には、会社法796条1項但書の「交付する」に該当しなくなるため、略式組織再編は当然に可能と考えてよろしいでしょうか?

投稿: としお | 2006年12月 4日 (月) 23時07分

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投稿: StaceyPittman | 2012年6月 5日 (火) 16時29分

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