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2006年12月28日 (木)

年末の質問コーナー

本日は、御用納めでした。会社法グループにとって、激動の1年が終わって、ややホッとしています。
今日は、質問が溜まっているので、質問コーナーのみにしますが、登記がらみ等調整の必要な問題は故意に飛ばしています。

最近の質問は、実務に直接影響を与えそうなマニアックなものが多いので、調整しないと答えられないものが多く、慎重に検討しています。
悪しからずご了承ください。
明日から家族旅行に行くので、もしかしたらインターネットに接続できないかもしれませんが、もし接続できるのならば、年内に「設立と新株発行」の残りを掲載したいと思います。

(質問コーナー)
Q1
会社計算規則37条による資本金等増加限度額の計算について教えてください。
株式引受人の募集に関しまして下記1と2では,同じ額の払込みがされ,同額の帳簿価額の自己株式の処分がされるにもかかわらず,資本金等増加限度額は1の方が多くなります。
下記1のように自己株式の処分と株式発行に手続を分けた場合の方が,2のように新株式の発行と自己株式の処分を組み合わせるケースよりも,結果として資本金等増加限度額が多くなるように規定したのはなぜでしょうか?
1 払込額500万円,自己株式処分割合100%(自己株式の帳簿価額1000万円)とする募集を行い,後日,払込額2000万円,新株式発行割合100%とする募集をした場合,資本金等増加限度額は合計で2000万円となります。
2 払込額2500万円,自己株式処分割合20%(自己株式の帳簿価額1000万円),株式発行割合80%とする募集を実施した場合,資本金増加限度額は1500万円になります。
投稿 yok | 2006/12/26 20:44:40
A1
私が作ったわけではないので理由は分かりませんが、いろいろあった方が当事者が工夫できるからでしょう。

Q2
取締役会非設置会社で、株主総会決議が必要な業務執行決定事項の範囲についてお教え下さい。
取締役会設置会社では、取締役会が取締役に委任できない事項というのが決まっています。これに対して非設置会社では、株主総会はあらゆる決議をできるという規定と、法令で株主総会決議事項になっているものを下部機関に委任できないという規定がありますが、法令で株主総会決議事項でないものについて取締役に委任してよいかどうかについては特にルールがないと考えてよいでしょうか。
投稿 すか吉 | 2006/12/27 10:59:13
A2
348条2項に掲げる事項等は取締役に委任することができません。

Q3
組織再編における株主通知・公告(会社法785条・797条)について教えてください。
785条4項2号・797条4項2号では、「株主総会の決議によって吸収合併契約等の承認を受けた場合」、公告をもって株主への通知に代えることができる旨が規定されています。
「承認を受けた」と過去形で書かれていますが、これは、公告をする時点で、すでに株主総会決議がなされていることが必要という趣旨でしょうか。それとも、公告の時点で株主総会決議がなされていなくても、最終的に効力発生日の前日までに株主総会決議がなされれば、785条4項・797条4項の公告としての効力を有することになるのでしょうか。
投稿 年末も会社法 | 2006/12/27 11:40:27
A3
 これから承認を受ける場合も含まれると解するべでしょう。

Q4
 会社法施行規則124条7号の「社外役員の報酬等」に関する開示事項について、当該規定では「親会社またはその子会社から役員としての報酬等を受けているときは、その報酬等の総額」について開示する、とされています。
 この開示対象となる会社の範囲に「当該会社の子会社」が含まれていないことについて、当該規定は、あくまで当該会社の親会社またはその子会社(当該会社の兄弟会社)の「役員」(同2条3項3号)としての報酬等について開示するものであり、そもそも子会社から役員としての報酬等を受けている場合は、社外役員の要件に反することになるため除かれていると理解していますが、この理解で間違いないでしょうか?
投稿 naga | 2006/12/27 16:53:58
A4
 親会社の孫会社も、子会社ですから、通常は、親会社の子会社には、その会社の子会社も含まれます。

Q5
有利発行について質問させてください。
100問の20問では、前段においては総会決議がなくても、本来不要である株主への公示がある事例、後段においては公示も総会決議もない事例が問われており、前段は無効にならず後段は無効という結論になっております。
ということは、公示の有無が有利発行の効力に決定的意味を持つように思えます。
ところが21問の160ページから161ページにかけて、総会決議がなかった場合でも無効にならないと結論づけています。ここは本来公示など不要で総会決議が必要な場面ですから、『総会決議がなかった場合』というのは公示もなかったと解すべきと思いますが、そうすると20問との整合性がありません。
つまり20問後段と21問指摘箇所は同じ事例を想定しているのに結論が違うように思えるのです。
何かを見落とし、落とし穴にはまっているのかもしれませんが、しばらく考えても分かりませんでしたので、私の考えの間違いを御指摘下さい。
よろしくお願いいたします。
投稿 アンナ | 2006/12/27 20:44:34
Q5
総会決議がなかったからといって公示がなかったとは言えません。
一番問題になるのは、有利発行であるにもかかわらず、有利発行ではないものとして、役会決議+通知又は公告という手続きで募集が行われる場合であり、これは、総会決議はないが、公示はある場合です。

Q6
 有限会社の監査役は,株式会社の監査役とは異なって任意的機関だから,設置するしないも自由で解任に当たっても特に特別決議を要求する理由はないという風に考えてみましたが正しいでしょうか? また,株式会社にせよ有限会社にせよ,累積投票で選ばれた取締役が普通決議で解任することができるとすると,少数者の意思を反映するための累積投票制度が骨抜きになるから,特別決議を要求するのだと考えてみましたが,正しいでしょうか?
投稿 帝王 | 2006/12/28 0:36:27
A6
 株式会社の監査役も、任意的機関です。ですから、説明としては成功していないように思います。

Q7
本日は企業再編時の債権者保護につき以下の理解でよいかご教授ください。
1 債権とは、特定人が特定人に対して特定の給付を請求できる権利であることから、①債権者(「特定人が」)、②債務者(「特定人に対して」)、③債権の内容(「特定の給付を請求できる権利」)に変更がない限り、債権者は、会社の経営判断等に異議を述べる権利がないのが原則である。
2 しかし、例外的に、799条1項各号の場合だけは、①~③に変更はないが、対価の適正を判断する機会を与えるため、異議権を認めた。
3 企業再編時においては、あまり債権者の保護手続を考慮していないようにも思えるが、剰余金の配当制限(461条以下)や、役員等の第三者に対する損害賠償責任(429条)、詐害行為取消権(民法424条)等の他の諸制度により債権者の保護は図られうるので会社の企業再編に広く異議権を認めなくとも構わない。
以上の様な理解で企業再編時の債権者保護を整理してみたのですが、間違いはないでしょうか?実務家の先生に聞くような質問ではないのかもしれませんが、宜しくお願いいたします。(根本的には会社法における債権者保護って何だ?という疑問があります。)
投稿 NK | 2006/12/28 2:25:18
A7
 「経営判断」に対する異議権という考え方はあまりしないと思います。
 異議は、「対価の適正」だけを判断するのではありません。
 「企業再編時においては、あまり債権者の保護手続を考慮していないように思える」とありますが、意味が不明です。多くの場合、債権者保護手続きが用意されています。

Q8
420条1項の代表執行役についてお伺いいたします。
当初執行役が一人しかいなく、当該執行役が代表執行役とみなされていたときに、後日、もう一人執行役を増員した場合には、改めて代表執行役を選定し直さなければならないと考えて宜しいのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/12/28 10:01:17
A8
代表執行役関係は、現在検討中ですので、確答はさけますあ、既に代表執行役に選定されている者がいる場合には、執行役が複数になったからといって、代表執行役を選定し直す必要はないと思います。

Q9
募集株式の総数引受契約の後,払込期日までの間に,当該会社が株式分割することは(不法行為かどうかは別にして)できると思いますが,引き受けるほうが分割相当分の株を取得するには,再度契約しなければならないのでしょうか?
投稿 サル頭 | 2006/12/28 15:34:54
A9
引受人が株主になる前に株式分割が行われたとすれば、引受人は、分割相当分の株式を取得することはできません。

Q10
各取締役が担当事業分野をもついわゆる担当役員制を採用する場合、この誰がどの分野を担当するかという担当分けについては取締役会で決議する必要がありますでしょうか?あるいは代表取締役(社長)が決定してもよいのでしょうか?業務執行をする限り、会社法363条1項2号の業務執行取締役として取締役会で選定する必要があるということになるのでしょうか?
投稿 あつし | 2006/12/28 15:49:02
A10
「担当」が業務執行権を与える趣旨ならば、取締役会で選定する必要があります。
使用人兼務取締役の使用人としての担当を決めるのならば、「重要な使用人の選任又は解任」に該当しない限り、役会決議はいりません。

Q11
「一時会計監査人」「一時取締役」「一時監査役」といった用語に関する疑問です。「一時会計監査人」についてみてみると、会社法346条4項は「一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない」と規定しており、旧商法特例法6条の4における文言と同様です。従来はこの条文にもとづき選任される者を「仮会計監査人」と称するのが一般的だったと思います。条文中の「一時」と「会計監査人の職務・・・」の間は一拍おいて読むと思っていたので、「一時会計監査人」と称するのには違和感を感じますが、現在各社のリリースを見ると、「一時会計監査人」という用語が一般的になっているようです。江頭先生の「株式会社法」では、「一時会計監査人」の用語が使用されており、前田先生の「会社法入門」では、「仮会計監査人」の用語が使用されています。このあたり何か議論があったのでしょうか?
投稿 あつし | 2006/12/28 16:12:08
A11
一時会計監査人にせよ、仮会計監査人にせよ、通称なので、どちらを使っても良いです。
正式名称は、「一時会計監査人の職務を行う者」です。

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コメント

サミー先生。
年末もブログの更新ありがとうございます。勉強になります。
さて、本日のA4で、会社法施行規則124条7号の「当該会社の親会社の子会社」には、「当該会社の子会社」も含まれるというご説明ですが、これに関連してお尋ねします。
「当該会社の親会社の子会社」には、文理的には「当該会社」も含まれるのではないかと思われます。もし、そうだとしますと、会社法施行規則124条7号の「当該報酬等の総額」として記載すべきものには、同条6号の(当該会社から受けた)「報酬等の総額」も含めるべきであるということになりますが、この理解で正しいでしょうか?(何かこんがらがってきました。)

投稿: みひろ | 2006年12月29日 (金) 00時49分

サミーさん、こんにちは。

 私は今、民事訴訟法の「法人の内部紛争における当事者適格」という論点についての論文を書いています。この論点では取締役選任決議取消訴訟などにおいて法人のみが被告適格を有するのか、または直接の利害関係人(当該決議によって選任された取締役)も当事者となれるのかが問題となります。
 しかし新会社法834条17号では株主総会等の決議取り消しの訴えの被告は「当該株式会社」と規定されており、この論点は立法解決されたようにも感じられます。従来は被告適格につき旧商法に明文がなかったために論争が起きていたという理解は正しいのでしょうか。また明文に規定がなされた今でもその解釈や、「当該株式会社」の範囲をめぐっての議論がなされる実益はあるのでしょうか。
 直接会社法に関係する論点ではないのですが、サミーさんのご意見をお聞きしたく質問してみました。宜しくお願いします。

投稿: あんじー | 2006年12月29日 (金) 00時50分

 サミーさんこんにちは。さっそく質問に入ります。
 会社法309条4項の決議が必要な事項が議題とされている株主総会の招集通知は,108条1項3号の定款の定めにより株主総会のすべての事項について議決権を有しないとされた種類株式を有する株主に対しても発することが必要だと思うのですが,この結論を導き出す会社法の読み方を教えてください(結論が違う場合にはその理由を教えてください)。以下2つに分けてお答え下さい。
1 298条2項括弧書の「株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主」とは,(a)今回招集される具体的な株主総会において議題とされている事項の全部につき議決権を行使できない株主を指すのですか。それとも(b)抽象的におよそ株主総会で決議することができる事項の全部について議決権を行使することができない株主を指すのですか
2 (a)の場合は表記結論を導き出せるのでいいのですが,もし(b)と考えるのが正しい場合,表記結論をどのように導き出すのでしょうか(298条2項括弧書の「全部」の解釈がまず問題となりそうですが)。

投稿: ポケット | 2006年12月29日 (金) 09時54分

大変お忙しい方と推察しますが、その中で毎度非常に役立つ記事・QAをありがとうございます。
また、その中ですばらしく工夫された入門編も始めていただき一層感謝しております。
昨日、私が講師となり、職場で、役員を中心とした株式会社法の入門編勉強会を行いましたが、会社とは何か、株式会社はどんな会社か、取締役とは何か、の説明に、株式会社正直法務の例等、当ブログ記事を使わせていただきました。
報告するとともに御礼申し上げます。

投稿: S.N. | 2006年12月29日 (金) 12時36分

Q8のご解答有難うございました。答えづらい質問ばっかりしてどうもすみません。
委員会はヤメます。

100問2版を今年中に制覇!頑張ります!でも、その前にビール飲もっと

投稿: 南斗六星 | 2006年12月29日 (金) 18時22分

T&A MasterのNo.192に掲載された記事「種類株式の活用と評価」においては「種類株式自体を相続しなくても、株主全員の同意があれば、相続した普通株式の一部だけを種類株式にすることもできます」とあるのですが、①会社法の条文上の根拠がわかりません。②実質論としては株主全員の同意が必要なことは理解できるものの、具体的な手続きもイメージがわきません。③発行済みの普通株式の一部だけを別の種類に転換することが可能なのでしょうか?
ご教示のほどお願い申し上げます。

投稿: 初心者 | 2006年12月29日 (金) 22時11分

サミー先生、おはようございます。早速ですが、質問です。
公開会社における募集事項の決定は、原則として取締役会の決議によるとされています(199条1項2項、201条1項)。このような会社法で取締役会決議事項とされているものを、定款によって、株主総会が決すると定めることができるのですか?
某書籍(学者執筆ではありません)には、定めることができると明記してました。
確かに、株主総会が、会社所有者により構成されている事を考えると、そのように定めることができるように思えます。また条文上の295条2項の「定款で定めた事項」との文言からも、できるように思います。
しかし、201条1項は、定款変更の限界を画しているとも考えられます。条文解釈としては、295条2項の「定款で定めた事項」とは、会社法上「別段の定め」を置くことが許された事項に限られると考えるわけです。このような考えは、間違ってますか?
御教示のほど、宜しくお願い致します。

投稿: かなり苦学生 | 2006年12月31日 (日) 05時29分

A4に、「親会社の孫会社も子会社です」とありますが、これの根拠となる会社法上の条文は存在しますか。
旧商法上は第211条ノ2第3項に次の規定がありましたが、これに相当するような条文です。
 「他ノ株式会社ノ総株主ノ議決権ノ過半数ヲ親会社及子会社又ハ子会社ガ有スルトキハ本法ノ適用ニ付テハ其ノ株式会社モ亦其ノ親会社ノ子会社ト看做ス他ノ有限会社ノ総社員ノ議決権ノ過半数ヲ親会社及子会社又ハ子会社ガ有スルトキ亦同ジ」

投稿: 迷う人 | 2007年1月11日 (木) 14時56分

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