« 【入門】債権者保護の態様(2) | トップページ | 払込金額以上の払込み »

2006年11月24日 (金)

ロースクールの3年間

 先週,昔からの友人である某ロースクール未習1年生から
 自分は,初心者だから,会社法100問は難しい。
と言われました。
 私は,「初心者が,会社法100問を読んでも分かるように」という思いから,サミー版会社法入門を連載しているので,
 まあ,入門でも読みながらボチボチ勉強してよ。
と答えたものの,よく考えてみると,
 ロースクールに入って,もう8か月にもなるのに,「初心者」とか言って甘えていていいんだろうか。
と疑問に思うようになりました。

 そもそも,会社法100問に載っているのは,実務で問題になる複雑怪奇な問題ではないのですから,
 司法試験や公認会計士試験の過去問(=基本的な論点)くらい全部勉強するのは当たり前
であり,それすら勉強せずに,司法試験に合格しようというのは,虫が良すぎます。
 100問の問題を1年生で全部やるのは大変でしょうが,3年生になって全部やるのも,やはり大変なので
 100問中3つ星の30問は1年生で
 残り70問は2年生で
やっておけば,3年生は,その復習に当てることができます。

 旧司法試験のように一行問題が出る試験ならば,典型的な論点について「そこそこ論点を拾ったコンパクトな答案」を複数覚えておけば,たまたま本試験で類似問題が出たときに,そのまま吐き出して,偶然合格することもあるでしょうが,新司法試験について,そんな勉強で乗り切るのはムリです。

 もちろん,試験は,相対評価ですから
  他の受験生は,自分よりもっと会社法を勉強していないはず。
  他の受験生は,自分より,実力が低いはず。
と思いこんで,会社法の勉強時間を削るという博打的な受験方法もあります(^_^)

 しかし,あなたが,確実に合格したいのならば,
   新司法試験の論文の問題は関連する条文や論点をもれなく拾う訓練を十分に積んでおかなければ,太刀打ちできない
ということを肝に銘じておくべきです。会社法100問の解答例くらいでネをあげるのでは,新司法試験の問題を確実に解くことはできません。

 また,ロースクールの1年生の皆さんが
  私は,まだ初心者だから・・。
  あと2年あるから・・
という思いがあるとすれば,それは甘え以外の何ものでもありません。

 本気で,ロースクール卒業後にすぐに,確実に,司法試験に合格したいのならば,ロースクール1年の間に
 ① 試験科目を一通り勉強する。
 ② 択一の問題を解いてみる。
 ③ 論文の基本的な問題を書いてみる。
ということが必要不可欠だと思います。
 なぜなら
  択一を解き,論文を書いてみて,はじめて,何を勉強すればいよいかが分かる
からです。
 演習をやる前に聞いた授業は,
  分かったつもりになっても,30%も吸収できていない。
と思います。試しに,授業の直後に,関連する択一の問題を解いてみれば,私の言っている意味が分かります。
 演習後に,2度目,3度目の授業を聞くことによって,役に立つ形で知識を吸収することができるようになるのです。
 
 2年生になったら,受験科目については,少なくとも1か月に1科目ずつ,2回目のINPUTと,択一・論文の演習をやりましょう。
 なお,INPUTは,読み物的な入門書を除けば,1年生から3年生まで同じ本を使うことが大切です。なぜなら,ごく一部の天才以外の人は,何回も読まないと,中身を理解することができないからです。

 そして,2年生の12月までには
  本試験で足きりになるかならない程度の択一の実力と,論文を書いてみて,3回に1回くらいは,合格点を取ることができる力
を身に付ける必要があるでしょう。

 その後,2年生の1月から3年生の5月までは,本試験を受けるつもりで,計画を立て,択一と論文を8科目同時に勉強することの難しさを経験してください。
 そして,3年生の5月に公開された新司法試験を解いてみて,自分の弱点を知り,最後の1年の計画を立てれば,完璧な合格ペースですね。
 
 このように,3年で新司法試験に合格するためには,
  「最後の1年の勉強で確実に合格できるような自分」
を2年間で作り上げる必要があります。

 この点,ロースクールの未習生用のカリキュラムは,一般的にいえば,方針を間違っています。
 もしロースクールのカリキュラムのように2年生になって受験科目を一通り終わり,演習もまともにしないまま,3年生に突入することになると,3年生の春のあなたは
 1年生の最初にやった憲法や民法総則は,頭の片隅にすら残っておらず
 新司法試験の択一問題をやってみても,悲惨な点数しかとれず
 論文の問題を解こうとしても,何を書いて良いのか分からず,知っていることを大きな字で羅列して,せいぜい3頁くらいの答案しか書けない
という状態になっているのは確実です。
 そんな状態で,3年生を迎えて,1年後に,確実に新司法試験に合格するという魔法はありません。

 今日の記事を読んで,絶望的な気分になる2年生や3年生もいるでしょう。
 まあ,上に述べたようなペースで勉強してきた人は,全体の1割もいないでしょうから,あとは,
  いつ自覚するか。
の勝負ですね。

(質問コーナー)
Q1
会社法では、取締役が計算書類を会計監査人に提出してから、4週間を経過した日までに監査報告を監査役に通知とありますが、これは、取締役が会計監査人と交渉して3週間で監査役に通知してくれとお願いできますでしょうか。
監査役が同意したら可能でしょうか。会計監査人は4週間をやはり主張して拒むことは当然できるのでしょうか。
投稿 会社法はつらい | 2006/11/24 0:04:24
A1
会計監査人が承諾すれば,できます。
監査役が同意しても,会計監査人が拒否すれば,駄目です。

Q2
当社は小会社で監査役は会計監査権限に限定しおります。この場合、監査役は会社法上、取締役会に参加する義務はないと理解しておりますがいかがでしょうか。または、少なくとも、計算書類、事業報告の承認を決議をする取締役は、会社法上、出席義務があるのでしょうか。
投稿 会社法漬け | 2006/11/24 0:09:15
A2
 取締役会への出席義務はありません。
 
Q3
施行規則上、取締役が計算書類、事業報告を監査役に提出する際、各監査役全員に提出義務があると読めますが、これについて特定取締役が代表者1名の特定監査役に提出すると、会社法違反となるのでしょうか。
なぜ、会計士→監査役→取締役と監査報告を通知するときのみ、それぞれ、特定取締役、特定監査役のとりまとめが許されるのか分かりません。
投稿 会社法初級 | 2006/11/24 0:15:27
A3
 「特定監査役」制度はないですが,一人の監査役に渡して,他の監査役に回してもらうのは,違法ではありません。ただし,他の監査役に届かないとまずいですね。

Q4
サミーさん、8月1日のA4について、もう少し教えてください。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50931763.html
この場合、A種優先株式が新たに発行されることで、B種優先株主に損害を及ぼすおそれはあるとは思うのですが、322条の規定によれば、第三者割当の方法で募集株式を発行するとき、種類株主総会の承認を要するとはされていないようです。その理解が正しければ、この場合(株主割当でなく)第三者割当であれば、A種優先株式の発行に際してB種優先株主の種類株主総会の承認は要しないという理解でよろしいでしょうか。
数か月間、気になり続けています;ぜひご教示ください。
投稿 マメ | 2006/11/24 12:21:54
A4
8月1日のA4がやや舌足らずだったかもしれませんね。B種優先株式の発行可能種類株式総数の範囲で,第三者割当てならば,322条には該当しませんので,種類株主総会の承認は要しません。ただし,例示列挙説に立ち,必要と考える見解もあるので,注意が必要です。

Q5
会社法施行規則第3条3項2号ロ(4)の「(1)から(3)までに掲げる者であった者」について教えて下さい。過去に役員であった者は、例え数年前に自己の役員を退任していても、又は10数年前に退任していても、この条項に該当するのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/11/24 14:44:59
A5
 時期的制限はないので,該当します

|

« 【入門】債権者保護の態様(2) | トップページ | 払込金額以上の払込み »

コメント

いつも拝見しています。最近の入門会社法はとても勉強になります。
こちらのブログはかなり専門的なことも話題になっており、ローの先生曰く、質問をみれば研究者の方々は「あー、○○先生が質問されてるな」とか、わかったりするそうです。しかし、一受験生としてはやはり基礎が大事だと思うので、今後とも入門編をよろしくお願い致します。

さて、上記のサミーさんのご意見には賛成です。
ただ、ご存知とは思いますが、ロースクールでは判例を一審から最高裁まで
全部読ませることが多いです。論点云々より、まずは、判例をポンと渡されてウンウンうなって読むのです。旧試験経験者だと大体どの辺りが論点の判例かわかったりしますが、そうでない者は目の前の判例に圧倒されているのが実情でしょう。特に、多くのロースクールで使われていると思われる「ケースブック会社法」(弘文堂)は、コンパクトな書籍という利点がある反面、マニアックな判例(特に下級審)が多く、そこまで気合を入れて読むべきか疑問です。むしろ、判例百選で基本となる最高裁判例(及び下級審でも重要なもの)を学ぶのが大事だと思うのですが。。その点、新刊の「百問」に判例百選のリィファレンスが掲載されたのは
重宝です。
というわけで、会社法の判例の勉強法を御指南頂ければ幸いです。

投稿: 都内未収ロー2年 | 2006年11月25日 (土) 01時02分

>ロースクールに入って,もう8か月にもなるのに,「初心者」とか言って甘えていていいんだろうか。
と疑問に思うようになりました。

全くおっしゃるとおり!(溜飲が下がる思いです。) この程度の学生を法科大学院に入学させる大学側の責任とさえ言えると思います。
最近の新聞報道で、「新試験は難し過ぎる」という嘆きを法科大学院関係者が漏らしている、というものがありましたが、これも同じです。余りにも発想レベルが低過ぎます。こんなことでは、将来の法曹の質のレベルがとても心配になってきます。

投稿: low school? | 2006年11月26日 (日) 12時37分

>このように,3年で新司法試験に合格するためには,
>「最後の1年の勉強で確実に合格できるような自分」
>を2年間で作り上げる必要があります。

おっしゃることは分かりますが、実際は未習コース1年次から山のような予習課題を出され、法律の勉強を始めて1ヶ月やそこらの人間に時には我妻民法や50頁以上ある大法廷判決の判例原文や30頁以上ある調査官解説まで読まされ、その中でこのような試験対策向けの勉強をするのは事実上不可能です。

個人的には現在の新司法試験の水準であれば、多様なバックグランドをもった法曹・リベラルアーツなどという法科大学員の理念は捨て去り、未習コースを廃止して、法学部卒業を受験要件とする既習者コースのみに制度を統一していくのが将来的な方向性として妥当だと思います。

投稿: 法科大学院未習コース3年生 | 2006年11月26日 (日) 17時08分

それにしても、今の法科大学院生は牧歌的ですね。

私は、合格者500名時代の旧試験にチャレンジし続けたのち、挫折・転進した経験を持つ者です。合格者が1,000名、1,500名と増えるたびに、「時代の変化」を羨んだものです。

今はチャンスが拡大しているのですから、もっと合目的的に、かつ貪欲に取り組んで欲しいと切に願わずにはいられません。

投稿: 元受験生 | 2006年11月26日 (日) 23時29分

おっしゃることはたしかに正論です。
しかし、それをやると進級できない可能性がありますね。
授業、課題と新司法試験の勉強がかけ離れているローも多いでしょうから。

投稿: あ | 2006年12月12日 (火) 00時45分

会計監査報告の通知期限につきお尋ねいたします。
2006年11月24日のQ1で、「会社法では、取締役が計算書類を会計監査人に提出してから、4週間を経過した日までに監査報告を監査役に通知とありますが、これは、取締役が会計監査人と交渉して3週間で監査役に通知してくれとお願いできますでしょうか。監査役が同意したら可能でしょうか。」という問に対して、

>A1
>会計監査人が承諾すれば,できます。
>監査役が同意しても,会計監査人が拒否すれば,駄目です。

とお答えになっていますが、千問の道標461頁上段では「通知期限を短縮することはできないが、通知期限前に会計監査人が通知すれば、その時点で監査を受けたことになる」とあります。この関係はどう理解すればよいでしょうか。

また、法文上、単体計算書類の通知期限は短縮できないが、連結計算書類の通知期限は特定取締役・特定監査役・会計監査人の合意により通知期限を早くすることができるという違いがありますが、この違いを置かれた意図は何でしょうか。


投稿: CCC | 2007年2月 7日 (水) 20時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/188743/12810507

この記事へのトラックバック一覧です: ロースクールの3年間:

« 【入門】債権者保護の態様(2) | トップページ | 払込金額以上の払込み »