【入門】会社法が定めていること
会社法100問の具体的問題を検討する前に,
「会社法が,どんなことを定めているいるのか」
ということをお話ししたいと思います。
出口が分かっていると,今後の理解が早くなりますから。
1 会社法は,何を定めているのか。
会社法というくらいですから,会社に関する法律だというのは,小学生でも分かります。
しかし,会社に関連することが,全部,会社法に書かれているかというと,そうではありません。
会社と従業員との関係は「労働基準法」「労働組合法」,上場株式等に投資する人の保護は「証券取引法(金融商品取引法)」,税金のことは「法人税法」などなど,会社に関連することで,会社法に定められていないことは沢山あります。
では,会社法が何を定めているかというと,一言でいえば,
①会社
②社員(従業員ではなく,株主等の出資者のことです)
③債権者
という三者の関係を,どう調整するかを定めている
ということになります。
会社法を囓ったことがある人は,「もっと色々なことを定めているだろう」と思うかも知れませんが,
「会社とは,何か」
「人は,何のために会社を作るか」
ということを理解すれば,会社法は,上記の三者間の利益調整のための法律に過ぎないということを分かっていただけるものと思います。
2 会社とは,何か。
では,会社とは,なんでしょう。
「会社とは,何か」という話になると,普通,
会社とは「営利社団法人」である
という難しい話をすることが多いのですが,この話は長くて難しい割には,具体的な条文の解釈にあまり役に立たないので,ここでは省略します。
そうした抽象的な話よりも,まずは
人は,何のために,会社を作るのか?
ということを理解し,
会社は「貯金箱ロボット」だ
というイメージを持つ方が大切です。
ここでは,典型的なモデルである民法上の組合と,株式会社の違いを例にとりながら,「貯金箱ロボット」の意味をお話ししましょう。
(実際には,有限責任事業組合のような「会社的組合」や,持分会社のような「組合的会社」が存在しますが,そうした中性的な魅力を持つ存在は,もっと大人になってから学ぶことととして,若いうちは,女らしい女や,男らしい男がどんなものかを学ぶ方がよいでしょう)。
さて,会社は,何のために作るのでしょう。
私の目の前に学生さんがいれば,「商売をするためです」という答えが返ってきそうです。
でも,人が商売をするのに,わざわざ会社を作る必要はありません。
個人でやってもいいですし,何人かで共同事業をやるときは,組合契約を結んで,組合として活動することも可能です。
組合には,いろいろ法的な制約もありますが,工夫次第で解決可能なものも多く,大規模な共同事業を,組合でやることだって不可能ではありません(適切な例ではありませんが,売上げ百億円・パートナー数十人という法律事務所だって組合です)。
それなのに,なぜ商売をするときに,会社を作ることが多いのでしょう。
例えば,ここに,法務省民事局で会社法を担当していた
松真珠夫(まつしん・たまお)さん
湯水金使(ゆみず・かねし)さん
という二人の男が,民事局を辞めて,共同で,会社法関連の出版事業をやることになったとしましょう。
この二人が,組合を作って出版事業を営むとすると,
組合には,法人格がない
ので,契約も,銀行口座も,不動産の登記等も,
すべて個人名義
で行い,契約等の効果も,すべて松真さんと湯水さんに直接帰属し
組合財産は,共有
になります。
もちろん,例えば,「珠金出版事業組合」等という組合名をつけて活動してもいいのですが,その組合名は,法的には
松真さんと湯水さんの二人のことを別名で表しているだけ
で,組合としての活動の効果が,その二人に直接帰属するという点は変わりません。
一言で言えば,民法上の組合で事業を行うということは
事業用の財産を,個人財産から,法的に区別しない
ということを意味し,そのために,たとえば,次のようなことが起こってしまいます。
(1)湯水さんが,銀座で,個人的にクラブ活動をして,湯水のようにお金を使い,飲み代を支払えなくなったときは,そのクラブが,湯水さん達が出版事業で使っている銀行口座を差し押さえてしまうことがある。
(2)松真さんが不幸にもお亡くなりになってしまったりすると,遺産分割が終了するまで,組合財産は処分できなくなり,銀行口座も支払停止になってしまうことがある。
(3)湯水さんと松真さんがケンカして足並みがそろわなくなると,組合財産が処分できなくなるおそれがある(組合の業務執行は,組合員の過半数で決するのが原則であるから,二人の意見があわないと現状維持になる。しかも,不動産が,組合員全員名義で登記されていると,組合員全員が登記の申請に協力しくれない限り,処分するのが難しくなる。)
(4)組合の事業で失敗すると,組合の債権者が,松真さんのマイホームや,湯水さんがサイドビジネスで稼いだお金を溜め込んでいる銀行預金等を差押えることもある(「組合」の債権者と言っても,それは松真さんや湯水さん個人の債権者なので,個人財産を差し押さえることができます)。
要するに,個人と組合との間には,法的な区別がないので,
①個人に生じたことが直接組合に影響を与える
②組合に生じたことが直接個人に影響を与える
のが当然であり,組合というのは,仲の良い者同士が,信頼関係がある期間だけ,共同事業をするには,手軽で,使い勝手がいいものの,信頼関係が維持できなくなると,いきなり事業が頓挫する可能性もあるのです。
こうした不都合を解消するために,
「会社」という貯金箱(法人格)
を作り,事業用の財産を,この貯金箱に入れて
個人財産と明確に区別する
という方法を取ることができるようにするのが,会社法の役割です。
この貯金箱に入れられた財産(会社財産)は,入れられた瞬間から,個人の財産ではなくなります。
たとえば,松真さんと湯水さんが
「株式会社 正直法務」
という会社を作り,松真さんが,マイホームを正直法務に出資したとすれば,そのマイホームは,松真さんの物ではなくなってしまいます。
世の中の株式会社を見渡せば,個人財産と会社財産を「公私混同」している会社も沢山ありますが,法的にいえば,
①松真さんが,「株式会社 正直法務」の業務執行者でなければ,その家の使用・収益・処分をすることはできない
②松真さんが,業務執行者だとしても,その権限は,自分の個人的な利益のためではなく,会社の利益のために行使しなければならないので,会社財産を好き勝手に使うことはできない(たとえば,自分でその家に住む行為は,利益相反行為になります)
ということであり,個人財産と会社財産は明確に区別されているのです。
その代わり,松真さんや湯水さんが,優秀な人物を正直法務の業務執行者に選んでおけば,松真さん達が何の指示もしなくても,会社が自律的に商売を行い,会社財産をどんどん増やしてくれます(逆に,無能な人物を選ぶと,会社財産はどんどん減っていきます)。
つまり,会社というのは,
① 個人財産と会社財産(事業用財産)を切り離し(貯金箱機能)
② 業務執行者が会社財産を運用する(ロボット機能)
という二つの機能を持つ道具なのです。
具体例で説明しましょう。
松真さんと湯水さんが,組合ではなく,正直法務という株式会社で,出版事業を行うことにすれば,次のようなメリットがあります。
(1)湯水さんの飲み代のために,会社財産が差し押さえられることはありません。
クラブのママさんは,湯水さんの持っている株式を差し押さえることはできますが,会社財産自体を差し押さえられないので,湯水さんの放蕩のために,会社の事業に支障を来すことはなくなります。
(2)松真さんがお亡くなりになっても,会社の財産は,会社のものですから,相続の対象になることはありません。
松真さんの株式は相続財産になりますが,株式の遺産分割でどんなに揉めても,会社の業務執行者は,会社財産を使用・収益・処分することができますから,事業がストップすることはありません。
(3)松真さんと湯水さんが仲間割れしても,通常は,会社財産の処分に支障はありません。
会社は,貯金箱ロボットなので,松真さん達が揉めていても,会社の業務執行者が,自律的な判断のもとで,会社財産を運用することができるからです。
(4)万一,正直法務が経営に失敗しても,正直法務の債権者は,松真さんや湯水さんの個人財産を差し押さえたりすることはできません(株主の間接有限責任)。なお,会社のうち,合名会社と合資会社の社員は,会社の債権者に対して直接責任を負っていますから,この点は当てはまりません(合名会社と合資会社は,昔々,ドイツの制度を輸入しようとして,,商法の立案担当者が,ドイツでは組合的なものに対し,うっかり法人格を与えてしまったという苦い歴史によって誕生したため,組合的な要素が強いのです)が,「個人の債権者が,会社財産を差し押さえることはできない」という点では,株式会社と共通します。
以上のように,会社を作る意味は
会社という法人格のある存在を作って,個人財産と会社財産を区別すること
にあるということを心に刻んでいただければ,会社法が何を定めているのかということも分かります。
3 会社・社員・債権者
さて,会社法は,会社という貯金箱ロボットを作るための法律ですから
① どういう手続きをすれば,会社が法人格を取得するか。
② 誰が,会社財産を運用するか(会社の業務執行をするか)
ということを規律するためにあると言っても過言ではありません。
そして,組合であれば
松真さん・湯水さん----------債権者
という直接の法律関係があるので,民法で十分ですが,会社を作ってしまうと
松真さん・湯水さん-----株式会社 正直法務---------債権者
という三者間の法律関係が生まれますので,会社法は,さらに
③ その三者の法律関係は,どのようなものか。
ということも規定しているのです。
なお,松真さん・湯水さんのように「会社を作った人」のことを
「社員」
といいます。
社員の定義については,「出資者」といった方がより正確なのですが,「社員とは,会社を作った人である」というイメージは,それなりに本質をついているので,まずは,そのイメージを固めてください。
イメージは,固まりましたか。
それでは,次に,会社法が(1)会社と社員,(2)会社と債権者,(3)債権者と社員について,どんなことを規定しているのかを説明します。
(1)会社と社員
会社は,社員の意思によって生まれるものですから,
会社のことは,社員が決める
のが原則です。
そして,社員が沢山いると,どんなことを決めたのかが不明確になることが多いので,会社法では,大事なことは書面(電子ファイルでもいいです)で決めなければならないことになっています(この社員が決めた基本的規則を書いた書面のことを「定款」といいます。)
また,会社は,社員の利益のために作ったものですから,社員は
会社を解散して,法人格を消滅させ,会社財産を社員の個人財産に戻す
こともできます。
このように,社員は,会社の生殺与奪権を持っていますから,会社と社員の力関係は,基本的には
会社<社員
なのです。
ただし,会社は,社員から独立した法人格を持っている「貯金箱ロボット」ですから,
会社が存続している間は,社員が,自分勝手に,会社財産を個人財産に戻してはいけない。
というルールは存在します。
会社財産を,社員に戻すためには,配当,払戻し,残余財産の分配等会社法で定められた方法による必要があり(この方法については,後日,詳しく説明します),会社法の定めたルールに違反して,社員に会社財産を戻すことはできません。
(2)会社と債権者の関係
会社は,貯金箱ロボットなので
会社自身が,他の人と契約をしたり,他の人に対して不法行為をしたり
独自の活動を行います。
会社が行う契約や不法行為等によって,会社に対して債権を持つ者が生まれますが(債権者),この債権者が,会社の財産に対して強制執行することができるのは,当然のことであり,両者の力関係は
会社<債権者
ですね。
この両者の関係は,民法が適用される部分が多いのですが,
① 会社が契約をするときに,取引の相手方をどのように保護するか(取引の保護)。
② 会社が不行行為により第三者に損害を与えた場合に,被害者をどのように保護するか(被害者の保護)
③ 会社から資産が流出して債権者が害される場合に,どのような方策を採ることができるのか(一般債権者の保護)。
という3点については,会社法は,特別に規定を置いていますので,この部分は,後日,たくさん勉強してもらうことになります。
なお,この3点は,しばしば「債権者保護」と一括りにされることもありますが,それぞれ視点が異なるので,会社法の学習においては,区別しておいた方がよいでしょう。
(3)社員と債権者の関係
会社の債権者は,本来,債務者である会社にしか請求することができないのが原則です。
その代わり,会社が解散したときには,会社財産は,①まず債権者が分配を受けて,②残った財産(残余財産)を社員で分けることになっています。もし,個人で事業をしていたら,その人は,事業関係の債権者に支払をしなければならないわけですから,会社を使って事業をした場合でも,「社員は,会社財産について,債権者に劣後する地位にある」のは,当然です。
つまり,力関係は
社員<債権者
ということができます。
しかし,会社が解散される前に,社員が,配当や払戻しにより,会社財産を自分のものにしてしまうと,社員が債権者に勝つことになりかねません。
そこで,会社法は
① 合名会社・合資会社では,社員が,会社の債権者に対し,会社に代わって支払わなければならないという直接責任を認める,
② 合同会社・株式会社では,配当や払戻を制限する
という制度を採ることにより
社員<債権者
という関係を維持しているのです。
4 今日のまとめ
今日は,初回なので,張り切りすぎて,長くなってしまいました。楽をしようとして,かえって大変な企画を立ち上げてしまい大変後悔しています・・・。
願わくば,初回が不評で,即,打ち切りというのが理想的な展開なのですが,いかがでしたでしょうか。
それでは,最後に,今日のまとめをして,終わりにします。
1 会社法は,会社・社員・債権者の三者間の関係を調整する法律である。
力関係は,「会社<社員<債権者」が基本。
2 会社は,組合と違って,法人格が認められ,事業用の財産を,個人財産と法的に区別して管理することができることに存在意義がある。
3 会社は,社員の意思に基づいて設立される。
4 会社に関する重要事項について社員が決めた書面のことを「定款」と呼んでいる。
会社財産の処分は,業務執行者が行い,社員には処分権はない。
5 社員が,会社財産を個人財産に戻すための方法には,配当,払戻し,残余財産の分配等があるが,これらは,会社法で定められた手続きを取らなければ,行うことができない。
6 会社債権者の保護を考えるときは,①取引の相手方の保護,②被害者の保護,③一般債権者の保護の3点を考えなければならない。
7 社員は,会社財産について,会社債権者に劣後する地位にある。合名会社・合資会社では社員の直接責任によって,合同会社・株式会社では配当・払戻しの制限によって,それを実現している。
以上のポイントは,直接,答案に書くようなことではありませんが,今後の会社法の説明をする上で,頭にたたき込んでおいてもらいたい基本中の基本なので,次回までに復習しておいてくださいね。
(質問コーナー)
Q1
会計監査人が再任されたものとみなされるという規定(338条2項)
について質問させてください。
このような再任されたものとみなす、という規定は役員の任期に関する規定の中には見当たりません。なぜ、このような規定(338条2項)は 会計監査人にだけ存在するのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/03 0:14:38
A1
正式な理由には,会計監査人の独立性の維持のためです。
ただ,意地悪な人は,監査法人の経営の安定のためということもあります。
Q2
取締役の責任免除制度について質問させてください。
取締役の責任の一部免除として 425条 426条 427条というような
三つの制度が存在します。このうち 426条(定款+取締役会の決議)についてのみ、監査役設置会社もしくは委員会設置会社以外では採用不可という制限があります。なぜ 426条にのみこの様な制限が存在するのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/03 0:22:38
A2
会社の実質的所有者の集まりである株主総会が免除することは,監査役がいないからと言って,これを認めないものとする必要はありません。
社外取締役の責任限定契約は,任務懈怠責任が生ずる前に締結するものなので,濫用のおそれが少ないから,監査役がいなくても,結ばせていいでしょう。社外取締役を採用しやすくなりますし。
これに対し,426条は,取締役に任務懈怠責任が生じた後に,取締役会だけで免除しようとするものなので,監査役等の監視なしに免除させると濫用されるおそれがあるから,監査役も監査委員もいないような会社には使わせないということです。
Q3
サミー様、事業年度について質問させてください。
一事業年度の長さについて、1年またはそれ未満は許され、1年超は許されないと一般に解されていると思いますが、条文上の根拠などあるのでしょうか?
投稿 WLS2F | 2006/11/03 0:47:39
A3
計算規則91条2項をご覧下さい。
Q4
債務超過会社において、全部取得条項付種類株式を利用して、全株式を一旦自己株式化し、その自己株式を高く引き受けてもらい処分することで、増減資することなく債務超過のみならず欠損まで解消し登記コストも抑える(登録免許税は種類株式関係のみで)ことができること、以前のブログで教わりました。
お父さんお母さんのみが株主の街の小企業が債務超過に陥っている場合、株主が無償で会社に全株式を譲渡することに何の抵抗もありません。わざわざ定款で種類株式の定めをしてその登記をし手順踏んで自己株式化しなくても、普通株式のまま任意に会社へ株式を無償譲渡して、その自己株式をお父さんに債務超過・欠損解消できる金額で引き受けてもらう(お父さんは大抵それぐらいの額の会社に対する貸付金を持っていますのでそれを現物出資してもらいます。)ことで、何の登記もなしに債務超過解消の目的を達成できると思うのですが、巷の本等をいくら探してもこのようなことに触れているものはありませんでした。何か致命的な誤りをしているのでしょうか。ご指摘いただければ幸いです。
投稿 カキクリ | 2006/11/03 9:51:31
A4
別に致命的な誤りはないと思います。
Q5
今日は株主総会などにおける決議事項について拒否権を発動できる株式(以下「黄金株」108条1項8号)について教えてください。
1 「黄金株」に株式買取請求権が認められていないのはなぜか?
2 「黄金株」の定款規定を廃止する際の株主総会の決議をも拒否することができるのか?
3 「黄金株」の定款規定を廃止した場合、株式買取請求権が認められていない法制の下では「黄金株」の所有者の保護はいかに図られるのか?
4 「黄金株」に譲渡制限がついている場合に、売買価格の決定の申立て(144条2項)があった場合、「黄金株」の価格についてはどう考えるべきか?(もちろん裁判所に決定権があるのですが、立案担当者の間ではどう考えられていたのかと思いましたので)
(拒否権を発動しない場合は剰余金の配当では他の株式と変わらず、通常の株式と同様の算定方法で算定されてもおかしくはないと思いますが、その潜在的パワーに着目すれば、問2の回答にもよりますが、株主総会の特別決議分の株式と同様の価値を秘めていますので通常とは違う算定方法が考えられるのではないか、と考えました。)
5 「黄金株」を相続する際の相続税の価格算定はどうなるか?(管轄が違いますので良かったら教えてください。)
以上の質問は、相続税対策として事業承継問題を考える際に疑問に思いました。宜しくお願いいたします。
投稿 NK | 2006/11/03 9:59:53
A5
1 拒否権付株式を定める定款変更の際に,株式買取請求権がないことをおっしゃっているのでしょうか?そうだとすれば,議決権に関することに過ぎないから,通常,他の株主には買取請求権まで認める必要はなく,損害が生じたような場合には,議案を出した取締役の任務懈怠責任や多数派株主に対する不法行為責任でも追及すればよいよいということでしょう。
2 最初に,そのように定めれば,拒否権はあるのでしょうね。
3 拒否権条項を廃止するためには,種類株主総会が必要なので,その限りでは保護されています。
4 株式の価格の決定方法は,普通株ですら,難しく,黄金株でも,同じように難しいというしかありません。
5 相続税のことは分かりません。
Q6
誤植・加筆修正に関する情報をこのブログにて公開していただけないでしょうか?
二刷、三刷と新しい刷が出る毎に、
「第○刷での変更点 ①…、②…」と、新刷ごとに公開すれば前回の返本騒動や買い控えといった問題も概ね解消されるかと思います。
(千問共々、カテゴリー欄に「修正」カテゴリーを新設していただけたら最高です!)
ご検討お願いします。
投稿 noa | 2006/11/03 11:01:27
A6
申し訳ありませんが,そのようなことを以前,葉玉さんがやろうとしたところ,回収騒ぎになってしまったので,私の独断ではできません。ダイヤモンド社にお任せすることにしたいと思います。
Q7
使用人兼務でない代表取締役なら当該株式会社の支配人になれるのですか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/03 13:02:36
A7
支配人は,使用人です。
代表取締役が使用人を兼務することはできないので,支配人になることもできないという意味です。
Q8
株主権の不統一行使についてお尋ねします。
会社法313条に、株主総会における議決権の不統一行使を認める規定がありますが、例えば、株主総会が開催されない吸収合併の場合の796条4項の反対の通知をする権利や、797条1項の株式買取請求権について、株主は不統一行使ができるでしょうか。
(名義上は1人の株主で、複数の他人のために株式を保有している株主を想定しています。)
投稿 みひろ | 2006/11/03 21:26:33
A8
どちらもできると思います。ただ,株式買取請求権は,不統一行使というより,一部の株式についての行使ということでしょうね。
Q9
なぜ、全部取得条項付種類株式を発行するには、種類株式発行会社でなければいけないのですか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/05 12:07:57
A9
それほど,立派な理由があるわけではありません。
しかし,私達には,それ以外選択肢がなかったという悲しい思い出の一つです。
Q10
監査役会の職務として、「監査役の中から常勤の監査役
を選定し解職する」とありますが、株主総会で監査役が選任される時から、
常勤、非常勤の区別を想定して人物を個々に選んでいるのに、監査役会が
常勤をはずして非常勤の監査役にするという意味がわかりません。監査役自体
を解任するのは、株主総会の役目ですし、具体的にどういう状況を想定した条文
なのでしょうか。ご教示ください。
A10
株主総会で監査役が選任されるときから,常勤・非常勤の区別を想定して人物を個々に選んでいようとも,それは,事実上,そうしているというだけで,監査役会は,それに拘束されません。株主総会は,定款で定めない限り,常勤監査役を選定する権限はありません。
監査役の解任と,常勤監査役の解職は,全然違いますので,「どういう状況を想定した条文なのでしょうか」と言われても,常勤監査役の解職を想定した条文というしかありません。
「株主総会が,代表取締役になってもらうことを想定して,取締役を選任しているのに,取締役会が代表取締役に選定しないのはおかしい」とか,「取締役会が代表取締役を解職するのはおかしい」とか,言わないのと,同じことです。
Q11
自己株式の取得の効力について教えてください。
株主総会の承認決議を経ずに、自己株式の取得を実行した場合、原則として無効
であるという見解を前提として、株主総会の承認決議を欠いていることに加えて
、分配可能額が存在しないにもかかわらず、自己株式の取得を実行した場合、当
該自己株式の取得の効力はどうなるのでしょうか?
財源規制に違反した自己株式の取得も有効であるというの会社法の立場というこ
とですが、この見解に立つと、上記のような場合、自己株式の取得の効力はどう
なるのでしょうか
A11
財源規制に違反したことは,取得の効力に影響を与えません。
株主総会の承認決議を得ることなく,取得したことについては,民法93条ただし書を類推適用し,相手方が悪意又は有過失である場合を除き,有効となると思います。
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コメント
サミーさん
入門講義,ありがとうございました。
貯金箱ロボットのたとえは,とても分かりやすかったです。今日の講義は,基本中の基本ということなので,しっかり復習して,頭に叩き込んでおきます。
初心者用講義に,とってもとっても期待していますので,これからもよろしくお願いします。
投稿: 会社法苦手な学生 | 2006年11月 5日 (日) 23時25分
サミーさん、はじめまして。時機を失してしまいましたが、葉玉さん、今までありがとうございました。
施行規則27条4号により自己株式を取得できる場合には、他社のSOの行使の対価として自己株式の交付を受ける場合、取得条項付SOの取得の対価として自己株式の交付を受ける場合のほか、他社の取得請求権付株式の対価として自己株式の交付を受ける場合も含まれますか。契約によるコールオプションの場合どうでしょうか。施行規則2条3項14号の定義には含まれるのではないかと思いますがいかがでしょう。
次にこの場合、分配可能額規制を受けないように思いますがいかがでしょうか。
投稿: ik | 2006年11月 6日 (月) 00時07分
会計参与について質問させてください。
会計参与では 監査役と異なり、331条2項が準用されていません。
つまり 公開会社であっても 定款で会計参与を株主に限ることができます。なぜ このようなことが可能なのかその理由をお教えください。
投稿: maru | 2006年11月 6日 (月) 00時24分
株式と社債と新株予約権の違いについて質問させてください。
株式は記名式での発行しか認められません。
これに対して、社債と新株予約権は 記名式および無記名式での
発行がみとめられています。このような違いはどうして生ずるのでしょうか?
また 記名式と無形名式のメリット ディメリットについても教えて頂けると嬉しいです。
投稿: maru | 2006年11月 6日 (月) 00時28分
入門講座とてもわかりやすかったです。
今までのブログの内容はほんと難しすぎてボーっと眺めてただけでした(笑)
これからも続けていただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
投稿: 会社法初学者 | 2006年11月 6日 (月) 00時33分
サミー先生へ
1、この企画、★★★★★ですっ(最高評価)!
2、市販の教科書には記述それ自体は「わかりやすい」ものもあるのですが、「教科書」という性質から、「設立」は「設立」として、「取締役の責任」なら「取締役の責任」として、それぞれ個別に記述があり、辞書的に調べるという用途があることを考えるとそれはそれで仕方ないものかなとも思います。
しかし、実際には、会社というもののがどのようにして形成され、事業を営み、どういう場合に出資者から責任を追及され、会社が破産するとどうなる、というのは一連の流れの中で一体として起こってくるはずなのに、教科書ではそれぞれ分断して記述がなされているため、学生にはなかなか『生きたイメージ』がつかみにくいのではないかと思っています。
(英文法を個別に習っただけでいきなり長文に当たると、文章は個別の文法事項の複雑な組み合わせで出来ているので、読解がうまくできないイメージと言えば良いでしょうか)
投稿: 会社法命 | 2006年11月 6日 (月) 02時38分
3、今回の企画は、その点で、具体的な人物や会社を設定し、それらがどのような場合にどういう法的規律の下に置かれるのか、ということを物語風に具体的に展開して下さるような気がするので、とても期待しています。
この企画は全国の会社法が苦手な法科大学院生にとって、まさに救いの女神といった存在になるのではないでしょうか。
4、大学・大学院では「時間がない、時間がない」という言葉が日々飛び交っており、会社法の講義時間の不足から、先生方も思う存分講義をすることができないといった状態が一般化していると思います。
サミー先生も日々激務の中にいらっしゃり、お忙しいとは思いますが、サミー先生が会社法についてお持ちのノウハウを、論稿がコンパクトであるかどうか、ということにはあまりこだわらずに、思う存分展開して頂きたいと私は思っています。
投稿: 会社法命 | 2006年11月 6日 (月) 02時46分
サミーさま
はじめまして。入門編、楽しく拝見しました。
日々受験勉強をしていると、とかく知識の仕入れ→忘却に苦悩しながら勉強を進めがちになってしまいそうですが、会社法の本質をみることによって、その仕入れた知識が生きてきて記憶の定着につながります。
楽しみにしております。大変とは思いますが、よろしくお願いします(*^ ^*)。
投稿: ひよこ | 2006年11月 6日 (月) 05時04分
Q7のご解答ありがとう御座いました。おかげでスッキリしました。
Q10のご解答ありがとう御座いました。モヤットです。
でも決められたものですから、そういうものなんだと思うことにします。
投稿: 南斗六星 | 2006年11月 6日 (月) 08時31分
すみません、上記Q10ではなくQ9でした。
投稿: 南斗六星 | 2006年11月 6日 (月) 08時33分
サミー先生
新企画は、残念ながら、初回から大好評です(笑)
骨を折ってくださり、本当にありがとうございます。
早く会社法を駆使する立場になりたいとおもっていますので、
これからもよろしくお願いいたします。
投稿: さば缶 | 2006年11月 6日 (月) 11時48分
サミー先生、新企画を今後も続けてください…(涙)
投稿: 初学者 | 2006年11月 6日 (月) 12時04分
定款自治の範囲について、ご教示ください。
監査役の権限が会計監査に限定されている非公開小会社が、会社法370条の定款の定めとして、「監査役が異議を述べたときを除く」と定めた定款規定が、無効であると解するのであれば、会社法368条の取締役会の招集通知を、当該監査役に発すべきとする定款の任意規定も、無効と解されてしまうのでしょうか?
当該監査役でも取締役会への出席が必要となる場合があるため、取締役会議事録への署名等の義務に係る会社法369条3項が、会計監査権限のみを有する監査役を除外していないことされています(千問P366)が、実務上は、取締役会の議案ごとに、当該監査役が出席すべき、施行規則107条・108条の議案かどうかを吟味したうえで、取締役会招集通知を発送しなければならないとすることは、酷な気がしていますが、いかがでしょうか?
それとも、「それが面倒なら、監査役の監査権限を会計監査に限定しなければいいじゃん」ということになってしまうのでしょうか?
投稿: としお | 2006年11月 6日 (月) 14時30分
サミーさん
今回の記事、とても分かりやすかったです!
次回以降も続けて欲しいです☆
投稿: こはく | 2006年11月 6日 (月) 15時28分
会社でもこのブログを見ていますが、ブログの両端の絵がファンタジー(?)なので、横から覗き込んだ同僚や上司に誤解されてしまい、「何遊んでるんだ!」と横槍を入れられてしまいます。もっと、ビジネスっぽいデザインになりませんでしょうか?(苦笑)
投稿: まるこ | 2006年11月 6日 (月) 21時38分
まるこ様:
「お気に入り」表示機能などをonにして、画面の左側に「お気に入り」などを表示させると、両端の絵は表示されなくなるようですよ。
私は普段「お気に入り」を画面左に表示させているので、逆にこのブログの両端に絵が入っていることは、最近まで知りませんでした(笑)。
投稿: お母さん、絵が消えた! | 2006年11月 6日 (月) 22時50分
ブラウザの幅を調節すれば、みえなくなりますね。
ただ、このブログをみることを、会社で与えられた業務・職務とできるのかは
別問題ですが(笑)
投稿: お父さん、絵が消えるね! | 2006年11月 7日 (火) 04時35分
役員の責任限定についてご教授ください。
例えば、責任限度額が3000万円の役員について、
①3000万円で責任限定契約を結んでいる場合、1月に4000万円の賠償問題がおき、2月に1000万円の賠償問題がおきたら、その取締役はトータル4000万円の賠償責任を負う(つまり通算で3000万円ではない)という理解でよいでしょうか?
②限定契約を締結していない場合で、同様の事例の場合、その取締役が免除決議を得られるのは1月にかかる1000万円という理解でよいでしょうか?(反対の解釈としては、トータルとして考えると、2月の1000万円は3000万円を超えている部分だから全額免除できるということでしょうか?)
よろしくお願いします。
投稿: ぴろゆき | 2006年11月 7日 (火) 14時31分
サミーさんになって初めて質問させていただきます。
これからもよろしくお願いします。
社外取締役に関して質問させてください。
定義は第2条第15号に書かれておりますが、ある会社では、文字通り社外において主たる業務に従事している人(例えば他社の代表取締役)を、同社の取締役に迎え数年が経過しました。また、登記はしておりませんでした。
①確認ですが、この様な場合でも、同条同号に合致すれば、つまり取締役になってから業務執行を行っていなければ、今からでもいつでも、同社の社外取締役としての登記は可能と考えてよろしいですか?
②また、社外取締役の登記は911条3項21~23号の場合のみ義務づけられますが、それ以外の場合に、当該取締役が社外取締役であると言うことを確認するには総会招集通知の、役員の状況の注記くらいでしょうか?
投稿: ネットくん | 2006年11月 7日 (火) 18時14分
サミーさんになって初めて質問させていただきます。
これからもよろしくお願いします。
社外取締役に関して質問させてください。
定義は第2条第15号に書かれておりますが、ある会社では、文字通り社外において主たる業務に従事している人(例えば他社の代表取締役)を、同社の取締役に迎え数年が経過しました。また、登記はしておりませんでした。
①確認ですが、この様な場合でも、同条同号に合致すれば、つまり取締役になってから業務執行を行っていなければ、今からでもいつでも、同社の社外取締役としての登記は可能と考えてよろしいですか?
②また、社外取締役の登記は911条3項21~23号の場合のみ義務づけられますが、それ以外の場合に、当該取締役が社外取締役であると言うことを確認するには総会招集通知の、役員の状況の注記くらいでしょうか?
投稿: ネットくん | 2006年11月 7日 (火) 18時14分
はじめまして。
旧商法下(新株予約権登場前)で発行された転換社債についての質問なのですが、現在はどの法律が適用されることになるのでしょうか。
平成13年法律第128号の商法改正附則第7条によれば、平成13年改正前商法が適用されているように読めます。
改正が重なり適用関係が分からなくなってしまいましたので、ご教授いただければ幸いです。
投稿: ひろぽん | 2006年11月 7日 (火) 18時44分
サミー様、会社法施行日より前に解散している清算株式会社の、監査役の任期について教えて下さい。会社法480条2項では、任期の定めははないものと思います。そして、整備法108条では、なお従前の例による、となっています。会社法施行日より前の解散株式会社の監査役で、定款にその任期が「4年以内に終了するの事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」規定されている場合は、会社法施行後も、定款どおりの任期となるのでしょうか。または、そのような定款にもかかわらず、任期はなくなったのでしょうか。
投稿: はりこのトラ | 2006年11月 7日 (火) 20時52分
はじめまして
会社法の勉強しているものです。
大変勉強になるサイトです。
そこで質問ですが、会社法で株主=社員としている根拠条文を探しています。
おしえていただけないでしょうか。
この質問内容は、会社法でないときは、別の法律でもよいので教えてください。
よろしくお願いいたします。
投稿: たかし | 2012年6月 5日 (火) 11時23分