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2006年11月30日 (木)

【入門】設立手続の異同(2)

 設立手続の続きです。

 入門の最初の頃に、会社法は、結局、
     「会社と社員と債権者の関係を規律しているんだ」
という話をしました。

 設立手続も、単に会社を作ればいいというわけではなく、社員や債権者の権利が害されることのないように、いくつかの配慮がされています。
 解答例を作成する上でも、本文で、社員の保護や、債権者の保護のための制度について、どの程度、説明するかを考える必要があります。

1 社員の保護

 社員の保護というと抽象的ですが、具体的には

 (1)社員間の平等
 (2)出資した財産の持ち逃げ防止

という2つの要請があります。

(1)社員間の平等
① 引受条件の均等

 社員間の平等というと、「株主平等の原則=株式の内容及び保有数に応じた平等」(109条1項)が思い浮かぶかもしれません。でも、株式会社の設立手続きを開始したときは、まだ
  誰が、何株保有するかが、決まっていない
のですから、例えば、「各発起人がどれだけの株式を取得するか」を、株主平等の原則を前提とした多数決原理で決めることができません。

 また、株式会社の設立行為は、合同行為ですから、多数決ではなく、発起人(意思表示をする者)が、同一の内容の意思表示を行うことによって、成立するのが原則です。

 ですから、発起人が原始定款を作成する場合や、各発起人が引き受ける株式の数等を決定する場合等は
  発起人全員の同意
によって定めることとされています。

 このように、各発起人は、他の発起人の引受条件(例えば、1株いくらで引き受けるか等)等も理解した上で、自分の引受条件も決定しているので
   発起人の引受条件については「均等でなければならない」というルールはありません。

 もっとも、発起人が
  「募集設立=発起人以外の者が設立時発行株式を引き受けるための手続」
きを行う場合には
   募集に応募した引受人間の平等
に配慮する必要があります。
 なぜなら、引受人は、発起人が決定した募集条件(引受条件)を見て申し込むだけで、他の引受人の引受条件を知った上で申込みをするわけではないからです。
 そこで、会社法58条3項は
  募集ごとに募集条件は均等でなければならない
と定めることにより、引受人間の平等を図っています(ただし、募集時期が異なれば、募集条件が変わるのはやむをえないので、募集が異なれば、募集条件が異なってもかまいません)。

② 現物出資財産の価額てん補責任
 発起人が現物出資をする場合において、現物出資財産の実際の価額が、定款で定められた価額よりも著しく低額であった場合には、現物出資をした発起人は、他の引受人よりも
  実質的には、少ない負担で、多くの株式を得ることができ、株主平等原則のもと、多くの権利を得る
ことができます。

 そこで、そのような場合には、引受人間の平等を実現するため
  発起人と設立時取締役(会社の設立の時に取締役に就任する人のことです)
が会社に対し、不足額を支払わなければならないこととされています(52条1項・103条1項)。
 このように、発起人や設立時取締役に担保責任を負わせれば、発起人・設立時取締役は
  目を皿のようにして、現物出資の価額が適当かどうかを調査する
でしょうし、発起人や設立時取締役が不足額を支払ったときは
  自腹を切ったのだから、きっと、現物出資をした発起人に不足額の支払いを求める(求償する)
でしょう。
 
 これに対し、持分会社には、募集設立ががありませんから、①の「引受条件の均等」ということは要求されません。その点では、株式会社の発起設立と同じです。

 また、持分会社には、「株主平等の原則」がありませんので
  出資額が大きいからといって、必ずしも、他の社員よりも多くの権利を得ることができるわけではありません
から、②のような現物出資財産の価額てん補責任を負わせる必要がありません。

 以上のように「社員間の平等」という視点から設立手続を見るときには、①と②のような違いがあるのですが、①の引受条件の均等性については、株式会社と持分会社の違いというより、発起設立と募集設立の違いといった方が正しいので、解答例には書かず、②の現物出資財産の価額てん補責任についてのみ記載しています。

(2)出資した財産の持ち逃げ防止

 社員が会社に出資した財産を、誰かが持ち逃げすると、出資した社員は途方にくれるでしょうし、会社の立ち上げに支障を来すこともあります。
 中には、最初から持ち逃げすしようと考えて会社を設立するような詐欺師もいます。

 もっとも、
  株式会社の発起設立や
  持分会社の設立
は、設立手続きを行っている人と、出資者が一致しているので、発起人や社員は、
  自分で、他の発起人や社員が持ち逃げしないように監視し、それを防止する方策を採る
ことができます。ですから、法律上、持ち逃げ防止策が強制されることはありません。

 これに対し、株式会社の募集設立は、募集によって設立時株式を引き受けた人は、自ら、監視したり、持ち逃げ防止策を採ったりすることができません。

 そこで、会社法は、募集設立に限って、払込金保管証明制度を採用しています。

 すなわち、株式会社の出資金は、発起人の定めた払込取扱機関(金融機関)に払い込まなければなりませんが、
 ① 払込取扱機関が発行する払込及び保管を証明する書面を添付しない限り、設立の登記ができない
 ② 設立の登記が済むまで、払込取扱機関は、払込金を、発起人や会社に返還しない。
とすることにより、発起人等が持ち逃げすることを防止しているのです。

 なお、この払込金保管証明制度も、株式会社と持分会社の違いというより
  発起設立と募集設立の違い
と考えた方がよいので、第6問の解答例には記載していません。

2 債権者の保護

 設立手続においては、原則として、会社の債権者は存在しません。なぜなら、会社が設立されていないからであり、言われてみれば、当然な話です。

 したがって、基本的には、設立手続きについては、会社債権者の保護(=一般債権者の保護)を考える必要がありません。
 あえて、一般債権者の保護のための制度をあげよと言えば、「設立の登記」において、資本金の額等を正確に登記しなければならないことなど「開示」に関する制度があげられるでしょう。

 ただし、以前にもお話ししたとおり、「債権者の保護」は多義的であり、例えば、発起人が、設立後の会社のために、取引をした場合に、その取引の相手が保護されるかどうかというのも、「債権者の保護 」の一種といえるかもしれません。
 これは、後日、お話しする「発起人の権限」の問題ですが、この問題については、「株式会社と持分会社の比較」という視点で対比するのは難しい(設立中の持分会社の議論は、あまりされていないのです)ので、第6問の解答例には記載していません。

 また、従来の議論からすれば、設立と言えば
  「資本充実の原則=債権者の保護」
というワンパターンの説明がされることがあったわけですが、株式会社や合同会社において、出資額の全部の履行が要請されるのは
  間接有限責任の実現のため
であって、「資本充実の原則」のためではありません。
 ここらあたりは、非常に重要なところではありますが、詳しい説明は、第8問の解説で行うこととして、今日は、これで終わりにします。

(質問コーナー)
Q1
 委員会設置会社に関する規定について、御教授下さい。

 委員会設置会社については、商法特例法の委員会等設置会社と基本的には同じ制度設計となっていると認識していますが、419条3項は、なぜ、「第357条の規定は、委員会設置会社については、適用しない。」としているのでしょうか?
 たしか、商法特例法には、419条3項に対応する規定がないと思います。
A1
 委員会設置会社の取締役は、監査役や監査役会に報告することはできませんし、株主に報告するのも非現実的です。
 Q2
100問2版P102の「105」についてお伺いいたします。
誤と正との違いはあるのでしょうか?
正誤の双方とも株式会社からの相殺はできるといっているように読めるのですが
投稿 南斗六星 | 2006/11/28 8:08:05
A2
すいません。語尾をいじっていたら、間違ったようです。「誤」の欄を訂正して、「できない」とする必要がありますね。

Q3
例えば、会社法676条(募集社債に関する事項の決定)、678条(募集社債の割当て)には、「会社は・・・定めなければならない」と規定されていますが、そのような事項につき株主総会にて定めなければならない旨が別途定められていない場合は、取締役会設置会社であれば、基本的に取締役会において定めると理解すればよいのでしょうか?
取締役会規程において、取締役会の決議事項として、「募集社債の発行等の際の募集事項の決定および募集社債の割当て」を定めておくかどうか検討しております。
投稿 悩める株式課員 | 2006/11/28 10:26:07
A3
頻出論点の一つですが、業務執行決定権を持つ機関が決めます。取締役会設置会社であれば、原則は取締役会ですね。

Q4
設立時監査役について質問させてください。
設立時監査役はなぜ52条1項の不足額填補責任を負わないのでしょうか?
 千問Q60には、設立時取締役と設立時監査役は 法的責任及び注意義務に差がないとあります。このことから考えると、
52条1項になぜ 設立時監査役の名前が挙がっていないのだろう
と考えてしまいます。
投稿 maru | 2006/11/28 15:05:49
A4
伝統でしょうね。

Q5
57条2項について質問させてください。
発起人が設立時発行株式を引き受けるものの募集をする旨を定めようとする場合 なぜ発起人全員の同意が必要なのでしょうか?裏返しに聞くならば なぜ発起人の過半数の同意ではいけないのでしょうか?57条2項が全員の同意を必要としている理由について教えてください。
投稿 maru | 2006/11/28 15:06:47
A5
発起人に、自己の持ち株比率の変動について拒否権を持たせるためです。

Q6
11月10日の質問コーナーQ7での「非公開会社かつ取会設置会社で、株主割当による募集株式の発行を株主総会で決議した場合、割当の決議を取締役会でしなければならないか」に関連する質問です。
サミー様は「株主総会で、割当てを受ける株式の数まで定めているのに、それを取締役会で勝手に割当を受ける者や割当を受ける数を定めるということは、ありえないことであり、・・・・・」との理由で取締役会決議は不要と御回答されておりますが、これは第三者割当の場合も同様と考えてよろしいのでしょうか。
ご回答をよろしくお願いいたします。
投稿 kurikuri | 2006/11/28 17:18:47
A6
取締役会設置会社では、取締役会が割当をし、株主総会は原則としてその権限がありません。
ご質問は、定款で株主総会に割り当て権を認めた場合でしょうか?もし、そうならば、当然、取締役会で変更することはできません。

Q7
株式会社を清算するにあたって行う第1回清算株主総会では、財産目録と貸借
対照表だけでなく、監査役の監査報告書も承認対象として必要でしょうか。監査
報告書は清算結了総会の際にあればよいでしょうか。
投稿 DAN | 2006/11/28 18:31:26
A7
494条1項の貸借対照表でなければ、監査の対象にはならず、監査報告書も承認の対象にならないと思います。

Q8
会社法第111条について、下記御教示下さい。

(1)111条1項に、同条2項2号・3号に該当する規定がないのはなぜでしょうか。
ある種類株式に取得条項を付す定款規定の設定・変更をする場合、当該種類株式が対価となる取得請求権付株式及び取得条項付株式については、定款で排除されていない限り、322条1項の種類株主総会決議が必要になるという事例が多いと思います。
よって、111条1項に規定を置かなくとも、322条1項で種類株主の保護は十分ということでしょうか。

(2)111条2項で全部取得条項を付す定款規定の設定をする場合について規定されているのはなぜでしょうか。(322条1項と決議要件が同じため。)
「損害を及ぼすおそれ」という抽象的な概念に種類株主総会決議の要否をかからせることなく、「常に」種類株主総会決議が必要であるという明文の規定をおいたことに、この規定の意義があるのでしょうか。
投稿 ビギナー司法書士受験生 | 2006/11/28 21:25:44
A8
(1)種類株主全員の同意は、保護しすぎということでしょうね。
(2)損害を及ぼすかどうかにかかわりなく、必要だという意味で特則です。

Q9
11月28日の質問コーナーQ1に関連する質問です。
ご回答によると、簡易合併においては反対の意思表示は必要ないということです。
① そうすると、会社法796条4項の「法務省令で定める数の株主が・・・吸収合併に反対する旨を存続会社に通知したときは・・・株主総会の決議によって吸収合併契約の承認を受けなければならない」とは、反対の意思の通知ではなく、買取請求のあった株式を集計して、法務省令で定める数に達した場合に、通常の合併手続へ移行するということでしょうか。
② また、会社法796条4項では、通知又は公告から2週間以内の反対の通知(買取請求?)を集計しますが、会社法797条5項では、買取請求は「効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで」にするとされていますので、通知又は公告(効力発生日の20日前まで)から2週間を経過した後、効力発生日の前日までにされる買取請求は、簡易合併の可否には影響しないということでしょうか。
よろしくご教示願います。
投稿 DE | 2006/11/29 9:15:30
A9
買い取り請求と、797条4項の反対通知は、別の制度です。もちろん、反対通知とともに買取請求をすることもできます。

Q10
100問2版P134の5種類株主の保護について
1.「株式の種類の追加や株主に割当て権を与える場合以外…種類株主総会の特別決議…」と記載されていますが、322条1項1号で株式の種類の追加について規定されていますが、同項4号は、株主に割当て権を与える場合に限ってます。何故、与える場合以外についても種類株主総会の決議が必要なのでしょうか?もしかして例示列挙説なのかなと思ったのですが、4号と書いてますので…

2.例で示されている配当優先株式を募集する場合、当該株式を創設するときには、その株式に劣後する種類の株主総会で承認を得ており、また、配当優先株式についての発行可能種類株式総数を増加する場合にも同様に、その株式に劣後する株主の承認は得ているので、発行可能種類株式総数の範囲内での優先株式の募集については、劣後株の株主は覚悟しているはずであるから、募集について劣後する株主による種類株主総会の決議は必要ないように思えるのですが…
投稿 南斗六星 | 2006/11/29 13:41:04
A10
初版のときには、私たちの間でも例示列挙説にしようという話をしていた名残りで、不正確な記述になっていますね。会社法の解説にも例示列挙説を採っていたのですが、その後、「条文を読む限り、例示列挙説を採るのは難しいのではないか」という意見が強くなり、千問では、限定列挙説にかわったのです。
 1については、「以外の」を取り、2については、「募集」を「追加」に変更すれば、限定列挙説になります。

Q11
合同会社の設立において社員が確定する時期は、定款を作成したとき(「100問(第2版)」80頁)としますと、定款に社員として記載された者は、定款作成後であれば出資未履行でも、社員として、会社の資本金や本店の所在場所を定めたりすることができると考えてもよいでしょうか。
と申しますのも、578条の規定に「社員になろうとする者」とあり「社員」とはなっていないことから、出資未履行の間は「社員」ではないということなのかな、と気になっています。
ぜひご教示ください。どうぞ宜しくお願いいたします。
投稿 マメ | 2006/11/29 17:34:37
A11
設立前は、社員は存在しないので、「社員になろうとする者」になっているだけです。
出資未履行の場合でも、本店の所在場所等を定めることはできると思います。

Q12
会社法の初心者です。会社による差止請求について教えてください。
百問(2版)347頁によると,「会社」が取締役の競業行為を差し止めることができるとしています。ただし,一般に差止請求権が認められるのは,実体法に明文規定がある場合です(会社法360条,不正競争防止法3条,特許法100条など)。そこで,百問(2版)347頁は,差止請求権を認める根拠として,委任契約上の義務の履行という契約の解釈を用いています。第一の疑問は,明文規定なく契約の解釈によって,差止請求権が認めてよいかという点です(差止請求権一般についてよく分かりません。この際,入門編で詳しくご教授お願いできたらとも思います)。

次に,監査役設置会社の場合,会社に差止請求権を認める実益はどの程度あるかがよく分かりません。監査役には差止請求権があり(385条),監査役設置会社の場合,会社が差止請求する場合の代表者は監査役です。会社が差止請求の主体になる場合には,「著しい損害が生じるおそれ」という要件が不要になる点に違いがあるという理解でよろしいでしょうか。
投稿 あお | 2006/11/29 18:10:22
A12
契約による差し止め請求権は、認められるでしょう。ただ、差し止め請求権の内容も契約によって定まりますが。
100問で契約による差し止めという話を出したのは、取締役の違法行為差し止め請求権は、非常に重要な権利であるにもかかわらず、それ自体には、実効性がないので、もう少し議論を深める必要があると思ったからです。

Q13
基本的な質問で恐縮です。792条、812条の準用条文をどのように読んで人的分割とするのでしょうか?
投稿 東洋 | 2006/11/27 23:15:26
A13
質問の意味がわかりにくいのですが、758条8号ロのような場合を人的分割と呼んでいます。

Q14
商法559条の運送取扱人と商法569条の運送人は同一人物になることもあるとの理解でよろしいでしょうか?

投稿 東洋 | 2006/11/27 23:18:57
A14
考えたこともない問題ですが、565条があるので、自ら運送をするときは、運送人と同一の権利義務を有します。
 それ以外に何か問題になるような場合もあるのでしょうか?

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2006年11月28日 (火)

【入門】設立手続の異同

本日は、第6問
 「株式会社と持分会社の設立手続の異同について説明せよ。」
を解説します。

1 問題文の分析

 「株式会社と持分会社の・・異同について説明せよ。」
 という問題文ですから
  株式会社では・・・・であるのに対し、持分会社は・・・である。
と制度の違いを列挙した上で
  なぜ、そのような違い(異同)があるのか
を説明することが求められています。

 ですから、「設立手続」という言葉を
 ① 定款の作成
 ② 出資者の確定
 ③ 機関等の具備
 ④ 設立の登記
と読み替えて、株式会社と持分会社の制度の違いとその理由を解答すれば、答案は完成です。

2 設立の4要素
 初心者にとって難しいのは、設立手続を①から④に読み替える部分でしょう。
 設立というのは、会社を作ることです。
 これまでお話してきたとおり、会社は、出資者の意思によって作り上げる貯金箱ロボットですから、次の理由により、①から③の要素は会社の設立に必要不可欠です。
 ① 定款の作成 
  ←出資者の意思の発現である会社の根本規則だから。
 ② 出資者の確定
  ・・・出資者が誰かが決まらないと、会社が得た利益等の配分先も特定できず、会社を設立する意味がないから。
 ③ 機関等の具備
  ・・・貯金箱ロボットの操縦者=業務執行者等を決めなければ、会社は動けないから。

 一般に、この①から③の3要素が揃って
  会社の実体
が形成されると考えられています。

 この会社の実体に加え、設立には
 ④設立の登記
が必要とされています。これは、法人格があるのかないのかを、誰が見ても分かるようにするためです。登記ならば、法務局やインターネットで誰でも見ることができるので、法人格の有無は一目瞭然ですよね。

 ①から③の実体要件に、④の形式的要件を加えた4要素が、会社の設立に必要な共通の要素です。

3 株式会社と持分会社の基本的な違い
 では、この設立手続の4要素について、株式会社と持分会社に違いが設けられているのはなぜでしょうか。

 これは、これまで何度も説明してきたとおり

 株式会社は、所有と経営を分離し、株主の地位を無個性化しているのに対し
 持分会社は、所有と経営が一致し、社員の地位が個性的である

という違いがあるからです。

 この違いが、株式会社と持分会社の具体的な設立手続きに、どのような違いを生じさせているかは、解答例を見ていただければ分かりますが、その骨格は、次の通りです。

<株式会社の設立手続の特徴>
① 定款の作成
  相違点1 株主全員ではなく、発起人のみが原始定款を作成
     ← 株主が無個性であるため、株式会社では、設立前に、定款を変更することなく、株式引受人を募集することができます(募集設立)。そのため、(1)原始定款を作成し、設立事務を行う株式引受人と(2)設立事務を行わない株式引受人を区別する必要があり、(1)の株式引受人を「発起人」と呼んでいます。

  相違点2  公証人の認証が必要
     ← 株主が無個性であるため、株主構成の変動が頻繁に起こる可能性があるからです。

② 出資者の確定
  相違点1 募集設立が存在すること
     ←株主が無個性であるため、出資者を発起人の権限で増やしてもよいからです。

  相違点2 出資の履行を完了しなければ、株主となることができない。
     ←株主を資力の点で無個性化するため、間接有限責任=無責任化を実現する必要があるからです。

   相違点3 発起人等に価額てん補責任がある
     ←株主を無個性化する以上、株主を出資額に応じて平等に取り扱うことのが合理的であり、株主間の実質的不平等を解消する必要があるからです。

③ 機関等の具備
   相違点 取締役等の機関の選任・選定手続きが必要
    ←所有と経営が分離しており、株主を確定しても、業務執行者等は確定しないからです。
④ 設立の登記
   手続きに特別な違いはない(もっとも、登記事項は異なる)

今日は、第6問の解答例について、全体像を把握していただきましたが、解答にあたって注意すべき点などは、次回にお話ししましょう。

(質問コーナー)
Q1
簡易合併において、存続会社の反対株主の意思表示は、公告または通知の日から2週間以内に存続会社に通知するとされております(会社法796条4項)が、
①通知は到達主義が適用されるのか。
②反対株主は、反対の通知をする日に株主名簿上に記載または記録されている株主であれば行使できるのでしょうか。
③ 同簡易合併の反対株主の買取請求において、反対の意思表示を存続会社に通知した株主のみが、買取請求を行使できるのでしょうか。
投稿 ろっき~ | 2006/11/25 10:40:33
A1
① 例外規定がないので、到達主義でしょう。
② そのとおりです。
③ 反対の意思表示は、必要ありません。

Q2
株式相互保有規制について質問させて下さい。お互いの株式を25%づつ持ち合っている5社の非公開会社の株式会社があります。このまま議決権相互保有規制を適用すると議決権を行使する者が誰もいなくなるので、会社法規則67条1が適用され、すべての会社の議決権が復活すると考えてよろしいのでしょうか。
投稿 うさぎ | 2006/11/25 17:59:47
A2
限界事例ですね。25%になる順番で議決権の行使の可否が決まりそうな気もしますが、条文を形式的に適用すればよいのではないでしょうか。

Q3
343条1項で同意が必要なものは ①監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することです。
一方344条1項で同意が必要なものは①会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること②会計監査人の解任を株主総会の目的とすること③会計監査人を再任しないことを目的とすること です。
 つまり343条1項では①選任についてだけ同意が必要です。344条1項では①選任に加えて②解任③再任に対して同意が必要です。
 この様に343条1項と344条1項では同意の範囲が違いますよね?結論として、私が意味したい「同意の範囲」とは 343条1項=① 344条1項=①②③というような幅 を指します。そして なぜ この範囲(幅)に違いが出るかが知りたいのです。
投稿 maru | 2006/11/25 20:58:59
A3
 監査役の解任に監査役の同意が必要だとすると、解任ができないおそれがあるからです。
 なお、監査役には不再任はありません。
Q4
サミー先生、本日は「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項 以下、特別利害取締役)についてご教授ください。
1 「特別利害取締役」にも取会の招集通知を発しなければ違法か?(「特別利害取締役」にも出席権はあるのか?)違法だとすると、「特別利害取締役」1人が招集手続の省略(368条2項)に同意しなかった場合、招集手続は省略できないのか?
2 「臨席を求めることはできる」(100問第1版258頁)とあるが、「臨席」した「特別利害取締役」にも議事録への署名義務(369条3項)があるのか?(「臨席」と「出席」は違う概念か?)
3 競業取引又は利益相反取引をする取締役(365条)、及び、取締役等による責任の免除の決議(426条)をする場合の当該責任を負う取締役、は「特別利害取締役」か?
以上の点ご教授ください。宜しくお願いいたします。
投稿 NK | 2006/11/26 1:52:09
A4
1 特別利害関係人は、取締役会の議事に参加することもできないという通説的理解からすると、招集通知を送る義務はないと思います。
 招集手続きの省略についても、その趣旨からすれば、出席権のない取締役の同意は不要であるとも解釈できますが、手続の省略は特例的な取扱いなので、形式的な要件を充たさない以上、省略はできないと考えるのが安全のように思います。
2 特別利害関係人は、議事に参加したわけではなく、また、取締役会を終始見ていたとも限らない(影響力排除の観点からすると、監視しているような状態にはしないのが普通)ことからすると、議事録の署名義務はないと思います。
3 すべて特別利害関係人だと思います。

Q5
A社(既存の会社)が12月31日を効力発生日とする新設分割を行い、新設分割設立会社Bを設立します。そして同日(12/31)B社の株主総会を開催し、同日(12/31)を効力発生日とする新設分割決議を行い、新設分割設立会社C社を設立しようと考えています。株式買取請求の通知は吸収型と異なり総会前の事前通知は必要とされていないので問題ないと思っていますが、書類備置開始は本来、総会の2週間前から行う必要があるかと存じます(803Ⅱ)。設立されたばかりのB社は、事前の書類備置き後、最短でも設立後2週間以上経過してからでないと新設分割の決議を行い、その効力を発生させることはできないのでしょうか?ちなみに分割手続において新設分割会社(B社)の債権者保護手続は不要のケースを想定しています。
投稿 | 2006/11/26 15:00:30
A5
同日に玉突きで新設分割するのは、無理だと思います。

Q6
合同会社の設立について伺いたいことがあります。
578条本文では、
合同会社設立時、社員になろうとする者は、定款作成後設立登記までに、
全額の払い込みもしくは全部の給付をしなければならない
とされています。
そこで、ある「社員になろうとする者」が、払い込みもしくは給付をしなかったとき、
当該会社の設立はどのような形でなされることになるのでしょうか?
A6
 払込未了の社員がいる場合には、設立をすることはできません。
 株式会社と異なり、人的信頼関係に基づいた会社なので、失権手続きもありません。
 全社員が払込をするように、がんばってください。ということです。

Q7
株主総会の議決権の行使期限に関する質問ですが、
①書面投票制度を採用する場合、議決権行使書には「行使期限」の記載が必要とされていますが(会社法施行規則66条1項4号)、「特定の時」を定めない場合、つまり、同69条により「総会前日の会社の営業時間まで」とみなされる場合において、「時刻」までの記載が必要とされるのでしょうか?
「特定の時」を定めない場合であっても、行使期限を記載する旨の規定があるので、「○月○日まで」の記載は必要と思いますが、時刻については前述の69条により明文化されていることもあり、特段の記載は不要では、と思われるのですが、いかがでしょうか?
②書面投票制度において「特定の時」を定めた場合、その日と招集通知の発送日との間には「中2週間以上」あることが必要とされていますが、特定の時を「総会前日の営業時間より後ろに」設定した場合、具体的には、営業の終了時刻が17時である場合に、議決権の行使期限を「総会前日の21時まで」と定めると、「特定の時」を定めたとみなされ、結果として「招集通知の発送から総会前日まで中2週間以上」必要となるのでしょうか?
特定の時を定めたとしても、それが法定期限(株主総会の前日の営業時間)以降である場合には、原則どおり株主総会の日から期間計算をすることで足りるのでは、と思うのですが、いかがでしょうか?
投稿 naga | 2006/11/27 13:35:23
A7
①時刻の記載は必要ありません。
②この問題はセンシティブな部分があるので、あまり答えたくないところです。条文どおりやるのが安全でしょう。

Q8
組織再編の株式買取請求についてご質問させて下さい。
合併や株式移転の際の反対株主の株式買取請求は、その反対株主が所持する株式の一部買取ということも認められるのでしょうか。条文を素直に読むと、買取の際に、株式買取請求に係る株式の数を明らかにするとあるので、一部買取もできるように読めますが、制度の趣旨からすると一部買取というのは認められないように思います。
投稿 サブマリン | 2006/11/27 14:17:14
A8
反対株主が、保有株式の一部のみを買取請求をすることもできます。

Q9
この欄にて、質問してよいか悩みましたが、
論点解説・新会社法、269ページ・図表4-3 株式会社の機関構成において、
④にあたる機関構成がないのは、誤植でしょうか。
機関構成について考えたところ、12ではなく、11通りしか考えつかなかったので、質問させていただきました。
投稿 ki | 2006/11/27 16:35:15
A9
すいません。たしかに、④を飛ばしてますね。

Q10
取締役会決議を経ないでなされた代表取締役の行為は,民法93条が類推適用されます(百問331頁)。他方,利益相反取引は,相対的無効です。これらは法令違反行為であり,第三者を保護する要請がある点では同じですが,なぜ,法律構成が異なるのでしょうか。両者の違いは,過失のある第三者の保護の点にあると思いますが,どのような衡量が背後にあるのでしょうか?
投稿 初心者 | 2006/11/27 22:27:09
A10
100問第2版論点<234>をご覧ください。

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2006年11月24日 (金)

払込金額以上の払込み

最近,問い合わせがあった
  払込金額以上の払込み
についてお話ししたいと思います。

 募集株式の引受人の募集を行う場合には,「払込金額」又は「その算定方法」を定めなければいけません。

 では,取締役会で,払込金額を1900万円と定めたところ,引受人から2000万円の払込みがあったとしたら,資本金はいくらになるのでしょうか。
 また,約束以上に払い込まれた100万円は,一体,どう評価されるのでしょうか。

 旧商法では、実際の出資額である払込金額が発行価額以上となることを許容しつつ、資本金として計上すべき額は発行価額を基準に定めるとの取扱い(いわゆるプレミアム発行)が行われていました。
 ですから,会社法になっても,プレミアム発行気分で,「払込価額」を超える払い込みをしている会社が,何社かあります。

しかし,会社法では、旧商法の取扱いを改め
  払込金額は,確定額であり
  払込金額を確定額として定めることができない場合には「算定方法」による
ことになっています。つまり,「算定方法」ではなく「払込金額」を定めた場合には
  払込金額と出資額は常に一致する
という取扱いにしているのです。

以上を前提に,先ほどの例について検討してみましょう。

(1)まず,募集事項で1900万円を「払込金額」として定めた場合には,1900万円が出資額となり,残り100万円の超過部分は贈与等として評価されることになるでしょう。

 なお,登記をするときに,払込みを証する書面として「2000万円」の払込みの証明を持ってきたとしても,1900万円以上の払込みがあったことは証明できますので,資本金を1900万円とする登記の申請をすることは可能です。
 しかし,資本金等増加額は1900万円なので,資本金を2000万円とする登記をすることはできません。
 
(2)他方,募集事項で「1900万円以上で,現に払込があった額」という算定方法の定めた場合には,2000万円が出資額になります。

 もっとも,募集事項が「払込金額 1900万円」と記載されていても,入札等によって募集を行う場合には、「1900万円以上で入札により決定される最高の払込金額として現に払込がされた額」という意思が読み取れますので,その場合は,「算定方法」を定めたものと解することはできるでしょうね。
 また,入札の方法によらない場合であっても,募集事項の意思解釈により,「1900万円以上で,現に払込があった額」と解釈することができるならば,資本金を2000万円にすることはできます。

 このように意思解釈の問題で,救済することができる場面があるものの,「プレミアム発行」を行う場合には,「算定方法」を定めなければならないということを頭に入れて,疑義が生じない形で募集事項を定めるようにするのがプロだと思います。

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ロースクールの3年間

 先週,昔からの友人である某ロースクール未習1年生から
 自分は,初心者だから,会社法100問は難しい。
と言われました。
 私は,「初心者が,会社法100問を読んでも分かるように」という思いから,サミー版会社法入門を連載しているので,
 まあ,入門でも読みながらボチボチ勉強してよ。
と答えたものの,よく考えてみると,
 ロースクールに入って,もう8か月にもなるのに,「初心者」とか言って甘えていていいんだろうか。
と疑問に思うようになりました。

 そもそも,会社法100問に載っているのは,実務で問題になる複雑怪奇な問題ではないのですから,
 司法試験や公認会計士試験の過去問(=基本的な論点)くらい全部勉強するのは当たり前
であり,それすら勉強せずに,司法試験に合格しようというのは,虫が良すぎます。
 100問の問題を1年生で全部やるのは大変でしょうが,3年生になって全部やるのも,やはり大変なので
 100問中3つ星の30問は1年生で
 残り70問は2年生で
やっておけば,3年生は,その復習に当てることができます。

 旧司法試験のように一行問題が出る試験ならば,典型的な論点について「そこそこ論点を拾ったコンパクトな答案」を複数覚えておけば,たまたま本試験で類似問題が出たときに,そのまま吐き出して,偶然合格することもあるでしょうが,新司法試験について,そんな勉強で乗り切るのはムリです。

 もちろん,試験は,相対評価ですから
  他の受験生は,自分よりもっと会社法を勉強していないはず。
  他の受験生は,自分より,実力が低いはず。
と思いこんで,会社法の勉強時間を削るという博打的な受験方法もあります(^_^)

 しかし,あなたが,確実に合格したいのならば,
   新司法試験の論文の問題は関連する条文や論点をもれなく拾う訓練を十分に積んでおかなければ,太刀打ちできない
ということを肝に銘じておくべきです。会社法100問の解答例くらいでネをあげるのでは,新司法試験の問題を確実に解くことはできません。

 また,ロースクールの1年生の皆さんが
  私は,まだ初心者だから・・。
  あと2年あるから・・
という思いがあるとすれば,それは甘え以外の何ものでもありません。

 本気で,ロースクール卒業後にすぐに,確実に,司法試験に合格したいのならば,ロースクール1年の間に
 ① 試験科目を一通り勉強する。
 ② 択一の問題を解いてみる。
 ③ 論文の基本的な問題を書いてみる。
ということが必要不可欠だと思います。
 なぜなら
  択一を解き,論文を書いてみて,はじめて,何を勉強すればいよいかが分かる
からです。
 演習をやる前に聞いた授業は,
  分かったつもりになっても,30%も吸収できていない。
と思います。試しに,授業の直後に,関連する択一の問題を解いてみれば,私の言っている意味が分かります。
 演習後に,2度目,3度目の授業を聞くことによって,役に立つ形で知識を吸収することができるようになるのです。
 
 2年生になったら,受験科目については,少なくとも1か月に1科目ずつ,2回目のINPUTと,択一・論文の演習をやりましょう。
 なお,INPUTは,読み物的な入門書を除けば,1年生から3年生まで同じ本を使うことが大切です。なぜなら,ごく一部の天才以外の人は,何回も読まないと,中身を理解することができないからです。

 そして,2年生の12月までには
  本試験で足きりになるかならない程度の択一の実力と,論文を書いてみて,3回に1回くらいは,合格点を取ることができる力
を身に付ける必要があるでしょう。

 その後,2年生の1月から3年生の5月までは,本試験を受けるつもりで,計画を立て,択一と論文を8科目同時に勉強することの難しさを経験してください。
 そして,3年生の5月に公開された新司法試験を解いてみて,自分の弱点を知り,最後の1年の計画を立てれば,完璧な合格ペースですね。
 
 このように,3年で新司法試験に合格するためには,
  「最後の1年の勉強で確実に合格できるような自分」
を2年間で作り上げる必要があります。

 この点,ロースクールの未習生用のカリキュラムは,一般的にいえば,方針を間違っています。
 もしロースクールのカリキュラムのように2年生になって受験科目を一通り終わり,演習もまともにしないまま,3年生に突入することになると,3年生の春のあなたは
 1年生の最初にやった憲法や民法総則は,頭の片隅にすら残っておらず
 新司法試験の択一問題をやってみても,悲惨な点数しかとれず
 論文の問題を解こうとしても,何を書いて良いのか分からず,知っていることを大きな字で羅列して,せいぜい3頁くらいの答案しか書けない
という状態になっているのは確実です。
 そんな状態で,3年生を迎えて,1年後に,確実に新司法試験に合格するという魔法はありません。

 今日の記事を読んで,絶望的な気分になる2年生や3年生もいるでしょう。
 まあ,上に述べたようなペースで勉強してきた人は,全体の1割もいないでしょうから,あとは,
  いつ自覚するか。
の勝負ですね。

(質問コーナー)
Q1
会社法では、取締役が計算書類を会計監査人に提出してから、4週間を経過した日までに監査報告を監査役に通知とありますが、これは、取締役が会計監査人と交渉して3週間で監査役に通知してくれとお願いできますでしょうか。
監査役が同意したら可能でしょうか。会計監査人は4週間をやはり主張して拒むことは当然できるのでしょうか。
投稿 会社法はつらい | 2006/11/24 0:04:24
A1
会計監査人が承諾すれば,できます。
監査役が同意しても,会計監査人が拒否すれば,駄目です。

Q2
当社は小会社で監査役は会計監査権限に限定しおります。この場合、監査役は会社法上、取締役会に参加する義務はないと理解しておりますがいかがでしょうか。または、少なくとも、計算書類、事業報告の承認を決議をする取締役は、会社法上、出席義務があるのでしょうか。
投稿 会社法漬け | 2006/11/24 0:09:15
A2
 取締役会への出席義務はありません。
 
Q3
施行規則上、取締役が計算書類、事業報告を監査役に提出する際、各監査役全員に提出義務があると読めますが、これについて特定取締役が代表者1名の特定監査役に提出すると、会社法違反となるのでしょうか。
なぜ、会計士→監査役→取締役と監査報告を通知するときのみ、それぞれ、特定取締役、特定監査役のとりまとめが許されるのか分かりません。
投稿 会社法初級 | 2006/11/24 0:15:27
A3
 「特定監査役」制度はないですが,一人の監査役に渡して,他の監査役に回してもらうのは,違法ではありません。ただし,他の監査役に届かないとまずいですね。

Q4
サミーさん、8月1日のA4について、もう少し教えてください。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50931763.html
この場合、A種優先株式が新たに発行されることで、B種優先株主に損害を及ぼすおそれはあるとは思うのですが、322条の規定によれば、第三者割当の方法で募集株式を発行するとき、種類株主総会の承認を要するとはされていないようです。その理解が正しければ、この場合(株主割当でなく)第三者割当であれば、A種優先株式の発行に際してB種優先株主の種類株主総会の承認は要しないという理解でよろしいでしょうか。
数か月間、気になり続けています;ぜひご教示ください。
投稿 マメ | 2006/11/24 12:21:54
A4
8月1日のA4がやや舌足らずだったかもしれませんね。B種優先株式の発行可能種類株式総数の範囲で,第三者割当てならば,322条には該当しませんので,種類株主総会の承認は要しません。ただし,例示列挙説に立ち,必要と考える見解もあるので,注意が必要です。

Q5
会社法施行規則第3条3項2号ロ(4)の「(1)から(3)までに掲げる者であった者」について教えて下さい。過去に役員であった者は、例え数年前に自己の役員を退任していても、又は10数年前に退任していても、この条項に該当するのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/11/24 14:44:59
A5
 時期的制限はないので,該当します

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2006年11月22日 (水)

【入門】債権者保護の態様(2)

 前回は、各種の会社の債権者保護について 
 合名会社・合資会社→社員に対する直接責任の追及
 株式会社・合同会社→間接有限責任→払戻の制限と財源規制
という制度を説明しました。

1 会社財産の流出防止
a 財源規制の続き(株式会社と合同会社の違い)
 本日は、財源規制の説明の続きから、説明しましょう。
 さて、財源規制は、株式会社と合同会社に共通の制度ですが、株式会社と合同会社との間では、財源規制に何か差異があるのでしょうか。

 実は,合同会社の財源規制は,
  準備金の計上義務がない(435条4項参照)
という点で,株式会社よりも簡素化されています。

 初心者に「準備金」を説明するのは,大変であり、まして、「準備金の計上義務がない」ということを説明するのは、もっと大変なのですが、ここは、がんばって、順番に説明してみましょう。
(1)準備金とは何か。
 会社法は、株式会社・合同会社において「出資の払戻しを制限する」という原則を実現するために
 原則として出資額の全額を「資本金」として計上し
資本金を基準にして払戻を禁止しています(「分配可能額の計算に資本金なんか使ってねえだろう!」等という上級者的なツッコミはしないようにしてください)。
 そして,この「資本金」は,前回述べたとおり、債権者のためのバッファとしての機能を果たすので,株式会社や合同会社では,資本金の額を「登記」により公示しなければならないこととされています。

 ところで,社員にとっては,資本金の額が少なければ少ないほど,払戻や配当に対する拘束が弱くなるので
  出資額の中で、資本金として計上しなくてもよい部分
があると便利です。
 また,登録免許税が資本金の額によって定められること、外形標準課税が資本金を基準としていること(改正されますが)、資本金の額によって国税庁か税務署かの管轄が変わること等の理由から
  資本金をあまり増やしたくない
というニーズも,世の中にはあるようです。

 そうした会社のワガママに対して,会社法が毅然としてNOと言えればよかったのですが,旧商法の時代から,一定限度
   出資金の資本金への不計上
というワガママが認めれています。
 すなわち、
  株式会社については,出資額のうち2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる(445条2項)。
ことになっているのです。

 もっとも、株式会社については,
  「資本金として計上しなかった部分を、自由に配当させるのはまずい」
という考えもあるので
  出資金相当額のうち、資本金に計上しなかった部分を「資本準備金」に計上する義務を課し(445条3項)、その資本準備金の額についても,剰余金の額・分配可能額には含めないことにして(446条)、配当制限をかけているのです。

 例えば,松真さんが,正直法務に,1億円を出資したときに,資本金として5000万円を計上すれば,残り5000万円が「資本準備金」に計上され,資本金のみならず、資本準備金を財源としても、配当することはできません。

 ここで、初心者は
 「結局,資本準備金に計上されて配当できないなら,何のために,資本金に計上しないことにしたのか,分からないじゃねえか。」
と思うでしょう。

 実は,資本金と資本準備金は
  会社が経営に失敗して,出資財産を目減りさせてしまった場合(このような場合を「欠損が生じる」と言います)
に違いが生じるのです。

 例えば,松真さんが正直法務に1億円出資して,資本金を1億円にしたとしましょう。その後,正直法務が,事業に失敗して,会社の純資産が8000万円になったとしたら、
   純資産8000万円<資本金1億円
なので,松真さんに配当をすることができません。

 しかし,正直法務が、株主総会で,資本金を、1億円から5000万円に減少させれば
  純資産8000万円>資本金5000万円
なので、差額の3000万円を配当することができます(正確には,もっと緻密な計算が必要ですが,説明のために簡略化しています)。

 ただ、正直法務が自由に資本金を減少することができることとすると、配当を制限する機能を果たすことができませんので、資本金を減少する場合には、必ず
  債権者保護手続
 (=資本金の減少に対して異議を述べた債権者に対し、会社が弁済等をしなければならないという手続)
をしなければいけない(449条)こととされているのです。これを、株式会社では、「資本不変の原則」と呼んでいます。

 これに対し、松真さんが1億円出資したときに、正直法務が
  5000万円を資本金、残り5000万円を資本準備金
にしていたとしたら、定時株主総会で、欠損が生じた分だけ、資本準備金を減少する決議をする場合には
   債権者保護手続きは採る必要はありません(449条1項ただし書)

 先ほどの例でいえば
  純資産8000万円-(資本金5000万円+資本準備金5000万円)
  =マイナス2000万円
の「欠損」が生じているので
 資本準備金5000万円を2000万円分減額して、3000万円にする
ための定時株主総会の決議をする場合(このような行為を「欠損のてん補」と言います)には、債権者保護手続がいらないのです。

 もちろん、ここで資本準備金を3000万円にしても
  純資産-(資本金+資本準備金)=0
なので、すぐに配当ができるわけではありません。
 しかし、次の事業年度に、利益がでれば、その利益の分だけ配当することができる状態になるので、こうした欠損のてん補は、株主にメリットのある行為であるということができます(逆に、欠損をてん補しないと、次の事業年度に2000万円の利益がでても配当をすることができません)。

 このように資本準備金は、資本金と同様、分配可能額には含まれませんが、欠損が生じたときに、債権者保護手続を経ずに、減額することができるという機能(弱い拘束力)を果たすことで、資本金とは別の機能を果たしています。
(2)合同会社に準備金の計上義務がない理由
 ところが、合同会社には、資本準備金というものがありません。
 これは、何を意味するかというと、合同会社では、出資額のうち、資本金に計上しなかった金額は、
  「その他資本剰余金」
  (→株主に配当することができるもの)
として計上されるということです。
 しかも、合同会社では
  「出資金のうち2分の1以上を資本金に計上しなければならない」というルールもない(実は、資本金の計上義務もない)
ので、資本金を0円にしておけば、出資金の全部を「その他資本剰余金」にして配当制限を一切かけないこともできるのです。

 このように合同会社において、出資時から資本金を0円とすることで、出資金の払戻制限を事実上回避することもできるようになっているのは、
① 登記によって公示されるのは、資本金の額だけだから、債権者の期待を保護するためには、資本金の額についてのみ財源規制をすれば足りる
② 合同会社の債権者は、業務執行社員の経営能力等の人的信頼関係を基礎として取引に入ることも多いので,出資額全額に財源規制をかける必要は少ない
からです。
 
 以上、前回・今回と財源規制について説明しましたが、これを一言でまとめれば

 株式会社と合同会社は、間接有限責任制を採る代わりに、財源規制が施されているが、株式会社と合同会社の特質の違いから、合同会社には、準備金の計上義務が課せられておらず、財源規制が簡素化されている

ということになります。

b 純資産額規制
 株式会社では,aで述べた財源規制のほか
 純資産額が300万円を下回るときには,配当をすることができない(458条等)
という純資産額規制が採用されています。

 これは,会社法の制定時において,株式会社については,債権者の保護のために,最低資本金制度で実現されていた程度(株式会社は,有限会社と一体化したので,旧有限会社並のバッファ)は設けておいた方が望ましいという観点から,政策的に採用された規制です。

 他方,会社法で新たに創設された合同会社には,従前との継続性の観点から純資産額規制を課す必要はありませんし,合同会社の債権者は,業務執行社員の経営能力等の人的信頼関係を基礎として取引に入ることも多いので,実際にも,純資産額規制までかける必要はありませんので,合同会社には,純資産額規制はありません。

2 会社財産の状況の適切な開示
 1では、会社財産の流出対策について説明しましたが、会社法は、その対策を実効化するため、債権者が、会社財産を把握するための諸制度を用意しています。
(1)計算書類の作成・閲覧
 個人対個人の世界では
  債権者が、債務者がどの程度の資産を持っているのか
  債務者が、勝手に財産を他人に流出させていないのか
を正確に知ることはできません。
 これに対し、会社法では、債権者が、社員への会社財産の流出に対し対応策を講ずるためには、会社財産の状況を把握する必要があることを踏まえ、会社に
   計算書類(貸借対照表等)の作成義務
を課しています。
 この計算書類の作成義務は、株式会社(435条)、合同会社、合名会社、合資会社(617条)の、いずれにも課せられた義務です。

 この計算書類は、第一次的には
  株主・社員
が会社財産の状況を把握するために作成するものですが
 ① 株式会社・合同会社では、債権者が計算書類の閲覧等を求めることができるものとされており(442条、625条)
 ② 合名会社・合資会社でも、会社が訴訟の当事者にとなった場合には、裁判所が、計算書類の提出を命ずることができる(619条)
ので、債権者が、会社財産の状況を把握する場合に利用することも可能です。

 ここで、①と②のような違いが設けられているのは、なぜかというと

① 株式会社・合同会社は、社員への払戻が制限され、財源規制が課されているので、債権者が、会社から社員への財産流出を監視する必要が強いので、いつでも計算書類を閲覧することができるようにしているのに対し

② 合名会社・合資会社は、社員への直接責任の追求が認められ、債権者が、随時、計算書類の内容の変動を監視する必要性は低いので、閲覧等請求権は認めるべきではなく、訴訟において、必要に応じて、裁判所が提出を命ずれば足りるからです。

(2)計算書類の公告
 さらに、計算書類については、株式会社と合同会社の間で
① 株式会社は、貸借対照表(大会社では、貸借対照表及び損益計算書)の公告義務がある(440条)が
② 合同会社には、公告義務がない
という違いがあります。

 「公告」を「広告」と間違って書く人が沢山いるのですが、「公告」は、コマーシャルではなく、会社に関する事項を社員や債権者等に知らせるための方法のことを言います。

 公告方法は、官報、時事に関する日刊新聞紙、電子公告のどれかを定款で定めることができ、何も定めなければ、官報が公告方法になります。
 いずれの方法を採るにせよ
    公告は、社員・債権者だけではなく、誰でも見ることができる
という点に、閲覧請求とは異なる大きな特徴があります。
   
 現状では、ほとんどの会社が官報を公告方法とし、上場会社は日経新聞を公告方法にするのが普通です(ただし、つい最近、コストの観点から、上場会社で電子公告を採用するところが増えています)。

 では、なぜ
① 株式会社は、公告によって、一般人に対し、会社の財産状況を明らかにすべきであるが
② 合同会社は、公告をしてまで、一般人に対し、会社の財産状況を明らかにする必要はない
という政策的判断をしているのでしょうか。

それは
① 株式会社は、株主構成や経営者が変動する可能性があることを予定した会社であるため、株式会社自体に対する信用を高める必要があり、そのためには、現に株主・債権者である者だけではなく、これから株主・債権者になろうとする者にも、その会社財産の状況を明らかにして、取引の安全を図る方が望ましいが
② 合同会社は、業務執行社員の経営手腕等人的信頼関係を基礎として取引に入る債権者が多いことが予想されるから、債権者に計算書類の閲覧請求権を認めれば十分であり、コストをかけてまで、あえて一般人に向かって公告をする必要性に乏しいからです。

3 まとめ
 前回・今回でお話ししたことを頭にいれて、第3問の解答例を見てください。
  まず、一の総論で、債権者の保護制度は
 ①会社財産の状況の適切な開示
 ②会社財産の流出防止
という2つの視点で整備されていることを明らかにした上で
二 株式会社
 ① 計算書類の閲覧請求権+公告
 ② 払戻の制限・財源規制+純資産額規制
三 合同会社
 ① 計算書類の閲覧請求権(公告なし)
 ② 払戻の制限・財源規制(準備金計上義務なし)(純資産額規制なし)

 ① (計算書類の閲覧請求権なし)(公告なし)
 ② 社員の直接責任
という各論についてそれぞれの趣旨を説明しています。
 これだけ書ければ、とりあえずの解答は、できあがりです。
 なお、旧商法時代は、合同会社がなかったので
  間接有限責任 対 直接無限責任
という視点だけで制度を説明することができたのですが、会社法でその視点しか持っていないと
  株式会社と合同会社の違いを説明できない
という事態に陥ります。
 ですから
 株式会社=株主・役員の構成が変動が予定され、会社自体に対する債権者の信頼を保護する必要性が高い
 持分会社=社員構成の変動が少ないことが予定され、債権者と社員との間に人的信頼関係がある
という会社の性質の違いも踏まえて、論述する必要があるでしょう。

 なお、解答例では、五として
 組織再編と債権者保護
について詳しく論じています。
 この問題の解答としては必須ではなく、加点事由だと思いますが、実は、最近、実務上、もっとも深刻で解決しなければならないのは、組織再編を利用した一種の詐害行為です。
 ですから、初心者は、五を飛ばして勉強してかまいませんが、一通り、会社法を勉強した人は、この部分をよく読んで、組織再編の当事会社の債権者が、それぞれどんな保護を受けられるのかをマスターしておいてください。
 特に<13.1><15>は、会社法の穴だと言われているところをふさぐ解釈論ですので、上級者の皆さんには、一度は考えて欲しいところですね。

(質問コーナー)
Q1
一つの吸収分割株式会社が効力発生日を同日とする複数の吸収分割を行う場合で、各々の吸収分割毎の承継資産額は分割会社の総資産額の5分の1以下だが、各吸収分割により承継される資産の合計額でみると5分の1を超える場合の簡易分割の判定方法についてお教えください。
会社法784条3項では、複数の分割を同時に行う場合の資産合算は定められていないので、それぞれの分割ごとに簡易分割に該当するかどうかを判定すればよいと考えてよろしいでしょうか。
投稿 M.M. | 2006/11/20 19:16:44
A1
形式論理では,簡易分割に該当しますが,同時にやるのは潜脱的な使用法といわれる可能性があるので,株主総会の決議を得る方がリスクがないでしょう。

Q2
会計監査人の監査について教えて下さい。
3月末決算の会社(資本金2億円)が、決算の貸借対照表で初めて負債が
200億円を超えた場合に、6月の株主総会で決算を承認されて大会社に
なって、監査法人と契約して監査を受けることにして、翌年3月の決算で
再び負債が200億円を割り込んだ場合、この決算にかかわる株主総会
では大会社でなくなると分かっていても、会計監査人の決算監査は受け
なければならないのですか。また、上記の例のように、1年ごとに大会社
になったり、はずれたりするような場合、調整措置のようなものはないの
でしょうか。よろしくご教授ください。了
投稿 迷える社会人 | 2006/11/21 9:29:30
A2
大会社であるうちは,会計監査人の監査を受けなければいけません。
調整措置はありません。

Q3
発起人、設立時取締役または設立時監査役の責任を追及するため、株主は責任追及等の訴え(847条)を提起することができますが、公開会社の場合で、設立直後に何らかの問題が発覚したときでも、最低設立から6ヶ月経たないと責任追及等の訴えを提起できないのでしょうか?
総会屋等の権利の濫用を防止するという保有期間の趣旨からすると、設立時の株主であれば、6ヶ月待たなくても良いような気がします。
条文にそぐわないので、やはりダメでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2006/11/21 9:34:34
A3
条文の要件を充たさないので,駄目でしょう。
代表訴訟は,しょせん損害賠償ですからね。急いでも,あまり仕方がないようにも思います。

Q4
 合資会社の有限責任社員が死亡した場合
 旧商法161条では、合資会社の有限責任社員が死亡した場合、その相続人が社員となると定められていましたが、会社法608条1項では、この規定を定款で定めることが出来るとされています。
 従来から存在する合資会社の場合、このような定款の規定はなく、また、整備法でも旧商法の期待があるものと看做す規定もありませんが、このような合資会社の有限責任社員が死亡した場合、どのような手続により、誰が入社するのでしょうか。
投稿 橋爪伸由 | 2006/11/21 10:26:31
A4
 定款に別段の定めがなければ,有限責任社員は,退社します。退社員としての権利義務は,相続人が承継します。
 誰も,入社はしません。

Q5
親会社・子会社について教えてください。例えば、A株式会社(代表取締役甲)とB株式会社(代表取締役乙)は、お互いに相手の株式は全く所有していないときは、親会社とか子会社ということはない、と考えて良いのでしょうか。また、この場合、甲は、A社の株式の過半数を所有し、B社の株式の全部を所有してB社の平取締役をも兼任するような場合でも、A社・B社は互いに親会社・子会社という関係にはならないのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/11/21 20:15:49
A5
A社名義の株式がなくても
1 自己の計算において所有している議決権
2 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
3 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
があれば,B社の親会社になる場合はあります。
 甲がB社の株式をもっている場合も,上の要件に当たれば,A社が親会社になる場合はあります。

Q6
 監査役の選任に関する監査役の同意(343条)と会計監査人の選任に関する監査役の同意(344条)について質問させてください。
 監査役がある場合において、取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには 監査役の同意を得なければいけません。(343条1項)
 また、監査役がある場合において、取締役が会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出するには 監査役の同意を得なければいけません。(344条1項1号)
 ところが、344条は 会計監査人の解任を総会の目的にすること(344条1項2号)及び会計監査人を再任しないことを株主総会の目的とすること(344条1項3号)にも 監査役の同意が必要と定めています。
 この様に、343条1項と344条1項で 監査役の同意の範囲が異なる理由についてご教授ください。
投稿 maru | 2006/11/21 23:06:43
A6
 すいません。質問の意味がよくわかりません。「同意の範囲」とは,何を意味しているのでしょうか。

Q7
 新株発行無効の訴え(828条1項2号)について質問させてください。
 この場合 公開会社では 提訴権者は効力が生じた日から6ヶ月以内に 訴えを提起しないといけません。(828条1項2号)
 ところが 非公開会社では 提訴権者は効力が生じた日から1年以内に訴えを提起すればよいとされています。(828条1項2号括弧書)
 この違いはなぜ生じるのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/21 23:07:56
A7
 非公開会社の株主総会決議は無効事由になるからです。詳しくは、会社法100問をご覧ください。

Q8
早速ですが、457頁のWhat's Missing935の「正」に、「会計監査権限しか有しない監査役も、監査役である以上、取締役に報告する義務を負う(382条)。」とありますが、本当でしょうか。会社法第389条第7項によると、382条の適用は排除されているように読めますので、ご確認頂ければ幸いです。
投稿 ぞう | 2006/11/21 23:31:44
A8
おっと。おっしゃるとおりです。訂正します。
一問一答は、目を皿のようにして間違いや誤植を探したのですが、まだ残っていたとは、残念

Q9
決算スケジュールについてご質問させてください。
会計監査人が監査報告を取締役等に通知する期限は、旧法では4週間以内、会社法では4週間を経過した日となっていますが、そうしますと、4/20に計算書類を提出しますと、旧法では5/18、新法では5/19となり1日違ってくるのでしょうか。つまり、新法の経過した日は、中4週間の間隔があるという理解でよろしでしょうか。
投稿 会社法漬け | 2006/11/21 23:52:50
A9
そのとおりです。旧法よりも、1日伸びました。

Q10
特定監査役および特定取締役の選定のメリット、デメリットを教えてください。また、それぞれの選任機関はあるのでしょうか。お願いします。
投稿 会社法はつらい | 2006/11/21 23:56:32
A10
監査役や取締役が複数いる場合には、特定監査役・特定取締役を選定した方が、監査手続の事務担当者同士で手続きを進められて、スムーズということでしょうね。
特定取締役の選任は、特にルールはありません。
特定監査役は、監査役会設置会社では、監査役会です。

Q11
What's Missing は、「(誤った見解を述べている人の)理解が足りないのは、どこですか?」的に受け取ればよいでしょうか。
What's Wrong の方がより直接的でしたね。
投稿 ぞうさんのしっぽ | 2006/11/22 0:32:46
A11
「間違い探し」というのは、英米の問題集等には、あまりないらしく、タイトルをどうするかは、かなり議論しました。
 「What's Wrong」説が有力だったのですが、幼少のころから、ずっと米国で学園生活を送ってきた帰国子女の方が、「What's Missing」と言い出したため、ドメスティックな私などは何もいえなくなり、ある偉い方が
 「It's coolだね。ああ、久保田の「Missing」が歌いたくなった。カラオケに行こう」
ということで、What's Missingに決まりました。

Q12
「転換社債型新株予約権付社債」について質問させてください。
新・会社法で取締役1名の会社を設立します。
しかし、友人2人も将来この会社に参加する予定で50万円ずつ
拠出してもらい、正社員になったときに株式に転換して資本金にする
予定です。
いろいろと調べた結果、「転換社債型新株予約権付社債」に
するのがよさそうなのですが、適当な契約書の雛形が見つかりません。
行使期間を1年くらいに設定し、転換の条件に「正社員になったとき」
というようなことを検討しておりますがどのようなことを記載すれば契約書
として成立するのでしょうか?
投稿 しゅんたろう | 2006/11/22 1:24:34

A12
236条、238条、676条をお読みください。
難しければ、契約書は弁護士さんに頼んだほうがいいと思います

Q13
100問2版P66(二)(4)についてお伺い致します。

会社分割における承継会社が、①分割会社の債務を承継しない場合、かつ、②分割会社に対価を交付しない場合においても、承継会社の債権者保護手続は799条1項2号により要する、と考えて宜しいのでしょうか?
P66・P67を読んでいて、もしかしたら要しないのかな、と疑問に感じたので…
投稿 南斗六星 | 2006/11/22 9:11:59
A13
条文上必要である場合には、当然、必要です。
非常に特殊な場合を念頭において、一般的な手続きを不要とすることはできません。

Q14
取締役会設置会社における「業務執行取締役」についてご質問させてください。
前々回A9で「取締役が業務執行をした瞬間に、業務執行取締役になってしまいます。」とありますが、その者と取締役会で業務を執行する取締役として選定された者との違い何でしょうか。
前者は取締役会で選定されていないため、363条2項の報告義務はないのでしょうか?
投稿 たあ | 2006/11/22 10:54:43
A14
業務担当取締役ではない、業務執行取締役には、報告義務はありません。

Q15
旧人的分割は、物的分割時に剰余金の配当を行うことで同様の効果を乗じさせることとなりますが、この剰余金の配当においては、準備金の積立て(計規45)は、要するのでしょうか。除外規定を発見できません。宜しくお願い申し上げます。
投稿 真野禎太 | 2006/11/22 15:42:52
A15
会社法の計算詳解457頁をご覧ください。

Q16
11/21のQ6・A6(100%子会社B社から親会社A社への無対価吸収分割)に関連して3つ質問させて下さい。(1)この場合分割承継会社であるA社の計上すべき株主資本について適用される会社計算規則の条項は、第67条に従って第64条となるという理解で間違いないでしょうか。分割型吸収分割ではない為同規則第65条、第66条は適用されず、また対価が株式でない為第64条も直接は適用されませんが、共通支配下なので第63条の時価評価も適切ではないということで、第67条に従うと思ったのですが。(2)分割会社B社の株主資本については分割のみによっては変動しない(必要なら減資等の手続を別にとる)ということになるのでしょうか。(3)この分割を商法時代の実務に従い分割型吸収分割で行おうとした場合、A社は株式を最低1株B社に交付し、それを現物配当として効力発生日にB社から受領し、自己株式として消却する(またはそのまま保有する)という手続をとることになるのでしょうか。
投稿 T.S. | 2006/11/22 18:25:35

A16
無対価については、もう少しお待ちください。

Q17
 こんにちは。毎日このブログを楽しく読ませていただいています。
 第二版を読んでいて、誤植と思われるものを発見しました。
 P68(三)の三行目と(四)の五行目にある「承諾をしなかった債権者」は、828条2項の文言からして、「承認をしなかった債権者」ではないでしょうか?
投稿 鉄牛 | 2006/11/22 22:22:36
A17
 条文通りだと、そうですね。ありがとう、ございます。

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2006年11月21日 (火)

【入門】債権者保護の態様(1)

 新・会社法100問[第2版]が書店に並び始めました。
 著者の一人なので,冷静に見ることはできませんが,実務家,ロースクール生,司法試験・公認会計士・司法書士・行政書士を目指す人などなど,会社法を身につけようとする人にとって、本当に役に立つツールになっていると思います。
 読者の能力に応じて,いろいろな使い方ができるように工夫されているので,ぜひ使ってみてください。

 さて,本日から,新・会社法100問[第2版]の3つ星問題を解きながら,会社法の基本を説明していこうと思います。

 本日は,第3問(62頁)
 「各種の会社における債権者保護の態様について述べよ。」
です。

1 問題の分析
 こうした一行問題について答える場合には,問題文の一語一語を自分で読み替えながら,自分が書こうとする論文の全体像を把握することが重要です。
 
 例えば,「各種の会社」という言葉を
  株式会社・合同会社・合資会社・合名会社
と読み替え,「債権者保護の態様」という言葉を
  一般債権者の保護(=会社からの財産流出対策)
と読み替えるのです。
 もっとも,「債権者保護」という言葉は,初回にもお話ししたとおり,多義的であり,「取引の安全」とか
「被害者の保護(会社の業務執行者の行為によって損害を被った者の保護)」とか
いう意味で用いられることもありますから,その点も意識する必要はあります(http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12567483)。

 そうしたことを理解した上で,各種の会社ごとに,一般債権者の保護(+取引の安全・被害者の保護)の制度として、どのようなものが存在するかをリストアップして,それを順次,説明していくというのが、解答の基本的な枠組みです。

2 民法の一般債権者の保護制度との関係
 「一般債権者の保護」というのは,どんなことを言うのでしょうか。

 例えば,松真さんが,サミーさんから,会社法100問100冊を32万円で買って,引渡しを受けたとしましょう。
 サミーさんは,松真さんに32万円の支払を請求する権利(債権)を持っている債権者ですが、一般債権者の保護のための制度というのは,こうした場面で
 「サミーさんが,確実に,松真さんから32万円の支払いが受けられるようにする制度」
のことを言います。

 では、どんな場面で一般債権者の保護のための制度が必要だと思いますか。
 松真さんが債権相当額の財産をもっているのならば、サミーさんは,松真さんの個人財産に対し、強制執行をすることができますので、特別な保護は必要ありません。
 逆に,松真さんが最初から借金まみれで、金を返す能力がなかった場合には,サミーさんは,「見る目が無かった」とあきらめるか、警察に「詐欺だ」と相談しにいくかしかありません(先取特権を行使する余地はありますが)。
 ですから,「一般債権者の保護」として,特別な制度を設けなければならないのは
  本来,松真さんの個人財産に対して強制執行すれば,満足を得ることができるはずなのに,
  松真さんが,個人財産を他人に流出してしまう等して、債権者が満足を得ることができない場合
ということになります。
 具体的に、民法で「一般債権者の保護制度」と言えば
  詐害行為取消権・債権者代位権
がこれに当たります。

 会社が債務者である場合にも,債権者がこれらの権利を行使することができるのは,当然ですが、それにもかかわらず,会社法が「一般債権者の保護」のために特別な規定を置いているのは,なぜかと言えば、それは、会社法には
  社員は,会社財産について,債権者に劣後する地位にある
という特別なルールがあるので、そのルールを潜脱するような会社の行為を防止するためです。

 すなわち,会社が解散して,会社財産を分配するときには,まず債権者が配分を受け,その後、残余財産を社員で分配するというルールを守るのが嫌になって、会社が、解散する前に、社員に対し財産を流出させ、社員を債権者よりも事実上優先させてしまうようなことを防止したいのです。

 例えば、正直法務という会社の財産が
  現金50万円・債務50万円(つまり、資産-負債=純資産が0円)
の場合において、債権者は、現金50万円を取り立てれば、自己の債権50万円の満足を得ることができますが、正直法務が、その現金50万円を社員の松真さんに配当したり、払い戻しをしたりしてしまうと、正直法務の財産は
  現金0円・債務50万円
になって、債務の取立ができなくなってしまいます。
 こうした「会社から社員への財産の流出」という会社特有の問題への対処が、会社法では求められているのです。

3 会社財産の流出対策
(1)合名会社・合資会社
 それでは、会社法は、どんな一般債権者の保護制度を設けているのでしょうか。

 まず、前回の社員と債権者の関係を思い出してください。
  合名会社の社員や合資会社の無限責任社員は
   会社の債権者に対して,直接無限責任を負っています
から,会社から社員に財産が流出しても,債権者は,無限責任社員に債権の全額について直接追及することができます。

 先ほどの事例で、正直法務が合名会社だとすれば、無限責任社員の松真さんに50万円が払い戻さされても、債権者は、松新さんから50万円を取り立てることができるのです。

 このように、債権者は、会社財産で満足を得られない場合には,必ず無限責任社員から債権全額の支払いを受けることができるのですから,この「直接無限責任」は,究極の会社財産の流出対応策ということができます。
 逆に、会社財産が社員に流出しても,社員から取り戻せる以上、会社財産が社員に流出すること自体を事前に止めるための特別な制度は不要であるということになります。

 なお、「合資会社において,無資力者を無限責任社員にした上で、有限責任社員に会社財産をどんどん流出させることについて会社法上の歯止めがないのは、まずいのではないか」と心配する人がいるかもしれませんが
  会社が、有限責任社員に対して、その人に配分されるべき利益額を超えて配当をすれば、債権者は、その超過額を含めて、有限責任社員に直接責任を追及することができます(623条・580条2項)
ので、ご心配には及びません。

(2)株式会社・合同会社
a 財源規制
 これに対し,株式会社の株主と合同会社の社員は,「間接有限責任=無責任」ですから,会社財産が株主・社員に対して流出してしまった場合、合名会社や合資会社と同じような方策を採ることはできません。

 例えば,正直法務の財産が現金0円・負債0円である場合に、サミーさんが、正直法務に、会社法100問100冊を32万円で売ったところ,正直法務は,すぐに、これをインターネット・オークションに出品して35万円で売却したとしましょう。
 正直法務は、最初無一文だったとしても、商売をすることにより手に入れた35万円でサミーさんに32万円を返済すれば、サミーさんは、何の不満もありません。
 ところが、正直法務が、その35万円を株主である松真さんに配当したとしたら、サミーさんが,正直法務に対し,強制執行をしようとしても,
  「無い袖はふれない」
ので、満足を得ることができません。
 そこで,サミーさんは,実際に35万円を受け取った松真さんに
  「あなたの会社の債務なんだから,うちの債権32万円をあなたに払ってもらいたい」
と請求することになるのでしょうが,もし,会社法が特別な制度を設けなければ,松真さんは
  「いやいや,株主は間接有限責任ですから」
と言って、支払いを拒否するでしょう。

 そこで,こうした事態を避けるために,株式会社と合同会社では
  会社財産が社員に流出することを制限する
という制度を設けているのです。
 
 さて、ここで問題となるのは,「どの程度まで制限するか」ということです。

 この点,「株式会社は,一切,株主に財産を流出させてはならない」というルールであれば,非常に分かりやすいのですが,払戻しも、配当もできないような会社に出資する人はいないので,ある程度は,会社から株主への財産流出を認める必要があります。

 他方,「会社が,債務超過(会社の資産から負債を引いた数がマイナスであること)になるような場合は,社員に配当してはいけない」というルールも考えられますが,これでは
  詐害行為取消権の場合と同レベル
の保護しか与えないということになってしまい,会社法で特別な制度を設ける意味がありません。
 
 そこで,会社法は,詐害行為取消権の場合より少しレベルを上げて,株式会社や合同会社では
  社員である間は,社員の出資額については払い戻しをしてはならない(払戻の制限)。
  会社が事業等を行うことにより,出資額以上に純資産(=資産-負債)が増えた場合には,その増えた分(剰余金)に限って,配当してもよい。
というルールを原則としています。

 簡単に言えば,松真さんが,正直法務に,100万円を出資した場合に、正直法務がその100万円を元手に事業をして,それを120万円に増やしたときには,20万円の配当ができるが,出資額100万円については松真さんに払戻しをすることはできない、ということです。

 本来,一般債権者の保護という点からは,詐害行為取消権のように「債務超過の場合=プラス・マイナス0のレベルを下回った場合」に配当を禁止すればよいはずなのに,なぜ株式会社や合同会社では、出資額を基準に財産の流出を制限しているのでしょうか。

 「東インド会社時代から、株式会社は、そのようなルールだった」という歴史的な理由もあるでしょうし、形式的な理由として
 株式会社や合同会社は,間接有限責任のもと,会社財産の独立性が強く求められるから,一旦,出資財産が,会社財産になった以上,会社が解散して,その独立性が失われない限り,これを社員に返還すべきではない。
ということもあげられるでしょう。

 より実質的な理由としては,
  詐害行為取消権は,実質的に債務超過になるかどうかで要件が判断されるのに対し,社員への財産の流出の制限は、計算書類上の数字によって判断されるから,ある程度の余裕(バッファ)を残しておかないと,実質的に債務超過になるような財産流出が行われる可能性が高くなる
ということにあります。

 分かりにくいでしょうから、この実質的理由をもう少し掘り下げます。
 計算書類には,
① 決算期(例えば,毎年3月31日)において,資産と負債がどの程度をあるかを表示する「貸借対照表」(BS)や
②1事業年度にどの程度の費用で,どの程度の収益を上げたかを表示する「損益計算書」(PL)
があります。これらの計算書類は,できるだけ,現在の会社の財産状態や収益力を表すように工夫されていますが,それを完全に反映させることはできません。
 たとえば,正直法務が,会社法100問の[初版]を2800円で購入したときは,その購入価格が「簿価」として資産に計上されますが,[第2版]が出ると,[初版]を2800円のまま売るのが難しくなり,[初版]の時価は下がってしまうでしょう。
 しかし,会計帳簿の簿価を,刻々と変わっていく時価に応じて書き直していくのは,手間がかかりすぎて,事実上,ムリなので,会社の資産の中には,実際には,簿価ほどの価値がない「含み損」を抱えたものが含まれています。

 また,計算書類を作るのは手間がかかるため,計算書類は、1年に1回だけ作ることになっていますから,事業年度(1年間)の途中で大きな損失が生じたとしても、実際にそれが計算書類に反映されるのは、次の決算のときという「時間のズレ」が生じます。

 他方,会社が、払戻や配当等会社財産を社員に流出させる行為をする場合に,一々,「実質的な債務超過になるかどうか」を確認しなければならないとするのは,判断の難しさや手間を考えると現実的ではなく
  計算書類上の数字をベースにして,社員への流出を許す範囲を定める
必要があります。

 そこで,
   計算書類上,算定される純資産額がプラスでも,実質的には,含み損や当期損失によって債務超過に陥っている場合に備えて,出資相当額についてはバッファとして払戻をし制限すべきである
という政策判断が,株式会社と合同会社では採用されているのです。

 さらに,出資の払戻(=社員の地位を失う代わりに,出資した財産の返還を受ける)を制限しても,配当(=社員の地位はそのままで,会社から財産の交付を受ける)が自由にされるのでは,払戻を制限した意味がなくなるので、株式会社や合同会社では、
  純資産額が出資額を割り込んだ場合には、配当を制限する
という原則も、採用されています(株式会社では、「資本維持の原則」と呼ばれています)。

 以上のように,株式会社や合同会社で採用されている払戻・配当の制限のことを,一般に,
 財源規制
と呼んでいます。
 「財源」という言葉は,会計的な言葉なので,今日は,詳しくは説明しませんが
 配当をするときに,出資金を減らして配当してはならず,剰余金を減らして配当しなければならない(剰余金がなければ,配当できない)
という程度の意味だと覚えておけば十分でしょう。

 本日は、財源規制の基本を話したところで、かなり長くなったので、次回に続くことにしましょう。

(質問コーナー)
Q1
民法の法人の部分の改正はいつからでしょうか?
投稿 東洋 | 2006/11/18 18:27:29
A1
まだ全然決まっていません。

Q2
 取得条項付株式と取得条項付新株予約権の違いについて質問させてください。
 取得条項付株式を発行する場合、定款の定めが必要です。(107条2項)
 これにたいして、取得条項付新株予約権を発行する場合、定款の定めは必要ありません。すなわち、新株予約権の内容として株主総会の決議により募集事項で定めることでたります。(236条1項7号、238条1項1号、2項)
 この違いは なぜ生じるのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/18 22:04:18
A2
取得条項だけではなく、新株予約権の内容そのものが、定款で決める必要はありません。
新株予約権は、単なる債権だからです。

Q3
246条2項について質問させてください。
民法上は相殺につき相手方の承諾は不要です。
ところが、246条2項では 相殺について会社の承諾を必要としています。これは なぜなのでしょうか?
 また 承諾が必要な場合まで 相殺と呼んでも良いのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/18 22:06:28
A3
 相殺を認めると、現物出資ではなく、金銭出資としていたはずのものが、現物出資と同じことになってしまうからです。

Q4
今更なのですが、社外役員の責任限定契約での質問です。
その契約をするための定款の記載ですが、たとえば「社外役員は1000万円以上は最低でも払わなければならない」といったような内容の定款の記載をするならば、法定最低責任限度額以上の額ならば、社外役員毎に責任額を変えて契約していいんでしょうか?そうでなければ、報酬が高い社外役員と、報酬がゼロ(もしくはそれに近い)役員では、ちょっと責任に落差ができてしまう気がしまして。
投稿 M.N | 2006/11/18 23:21:24
Q5
表現がややこなれていませんが、そういう契約もできます。

Q5
会社法100問を購入したのですが、葉玉先生が書かれた勉強法について質問があります。サイの力のところで、本試験で応用が効くような論証能力の身につけ方が書かれていますが、②のところの「問題となる文言」と「争点」の違いがわかりません。会社法に直接は関係ないのですが、おねがいします。
投稿 blue | 2006/11/19 19:56:10
A5
「文言」というのは、条文の文言です。
その「文言」について、解釈に違いがあるから論点になるわけですが、どうして、そのような解釈の違いが生じるのかが「争点」です。

Q6
A株式会社が、B株式会社の100%親会社である場合に、Bを分割会社、Aを承継会社として、吸収分割を行います。
これを、無対価で行うことは可能でしょうか。
投稿 moremi | 2006/11/20 9:15:18

A6
 可能です。ただし、資本金は増えません。

Q7
募集株式発行時の資本増加限度額の計算についてなのですが、募集株式がすべて自己株式だった場合には、必ず資本金は増加しないのでしょうか。資本増加限度額の計算方法の計算式であてはめると、必ずしもそうならないのではないかと思うのです。理論ではわかっているつもりなのですが、確実に理解できません。どうか御教示下さい。
投稿 柴里達徳 | 2006/11/20 9:18:09
A7
 自己株式の処分では、資本金は増えません。

Q8
前回のA9に「業務執行取締役の定義を見てもわかるとおり、取締役が業務執行をした瞬間に、業務執行取締役になってしまいます。取締役の業務は、取締役会に参加して決議に参加することです。」とありますが、これでは社外取締役が取締役会の決議に参加できなくなってしまいます。例示するのであれば、「取締役会以外の場でライン決裁などに参加すること」の方がよろしいのではないですか?
投稿 通りすがり | 2006/11/20 13:30:21
A8
 質問に引きずられて、うっかり、取締役の「業務」と書いてしまいましたが、取締役の「職務」と言った方がよかったですね。
 ただ、業務執行の「意思決定」は、業務執行ではないので、意思決定に参加するだけでは、社外性は失われません。

(前回の解答の補足)
前回のQ12
議決権行使書面を利用する場合、参考書面の発送、招集通知発送期間などいろいろな規制が出てきますが、非公開会社であり株主の200程度の会社である場合、実務では議決権行使書面ではなく委任状を送っているようですが、この場合は「委任状」なので、会社法301条等の適用はないと考えていいのでしょうか?また会社の作成した議決権行使書面に準ずる形式で作成された「委任状」は会社法でも適法なのでしょうか?
投稿 英坂 | 2006/11/17 11:22:53
A12
委任状勧誘府令にしたがったものならば、301条は適用されませんが、そうでなければ、301条が適用されます。
会社法における「委任状」は、特に様式はありません。

*以上の回答をしたところ、友人から、この答えでは、「委任状勧誘府令に従った委任状を送っていれば、298条1項3号の決議をしていても、301条の適用がない。」あるいは「委任状勧誘府令に従っていない委任状を送ることは、298条1項3号の決議をしたことになる。」というように読めて、ミスリーディングではないかという指摘がありました。
 私は、質問の「株主200程度」というところを見落としていて、「委任状を送れば、株主総会参考書類や議決権行使書面を交付しなくてもよいか」という質問だと勘違いしていましたが、よく読むと、もともと、書面による議決権行使を義務づけられていない会社のことだったということに気がつきました。
 そうすると、この質問の趣旨は
 「委任状を送ることを決めても、298条1項3号の決議をしていることにはならないので、301条の適用とかはないですよね?」
ということでしょうから、答えは
 「委任状を送ることを決めただけでは、書面による議決権行使をすることを決めたことにはなりません」
ということになります。
 

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2006年11月18日 (土)

自己株式の取得等についての質問

本日は、質問コーナーが長くなったので、独立して一つの記事にしました。

(質問コーナー)
Q1
305条1項について御願い致します。
非取締役会設置会社においても、招集通知に自己が審議してもらいたい議案を記載することを請求することができると思いますが、非取締役会設置会社では、309条5項で招集通知に記載されていない事項も決議できると思われますので、招集通知に記載してもらう意味があるとしたら、314条の取締役が説明することを拒むことができない場合として規定されている施行規則71条1号イに該当させ、取締役に説明拒否をさせないため、と考えてよろしいのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/16 11:26:14
A1
 309条5項は,「議題」になっていないことを決議することができないという意味であり,取締役会設置会社でも,「議案」は,総会当日に出して,決議することができます。
 305条1項は,総会当日,議案を出しても,他の株主が理解できなかったり,書面投票をしてもらえなかったりするので,その議案を事前に他の株主に知ってもらうために,招集通知に記載してもらうための権利です。

Q2
サミーさん、本日のエントリーの最後の設例である「松真さんが有限責任社員、湯水さんが無限責任社員である合資会社」に関連して教えて下さい。
死亡したのが、湯水さんであったとします。定款に定めがなければ、607条により湯水さんは退社となる。この場合、610条により定款がみなし変更となり、合同会社になってしまうのでしょうか?
仮に、債権者がこの合資会社について湯水さんの信用力で与信・取引を行っていた場合、個人事業であれば、相続で継承されるはずが、持分会社であったが故に、相続人に万一の場合でも請求することが出来ない。この解釈でよいのでしょうか?
投稿 売れない経営コンサルタント | 2006/11/16 12:24:34
A2
無限責任社員の湯水さんが死亡すれば,それで退社します(607条1項3号)。
退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負いますから(612条),無限責任社員の相続人は,その範囲で債務を承継します。

Q3
796条1項但書について質問させてください。
なぜ、この様な場合(796条1項但書の要件に当てはまる場合)に
簡易組織再編 略式組織再編が認められないのでしょうか?
 796条1項但書のような要件を設定した趣旨についてご教授ください。
投稿 maru | 2006/11/16 16:53:44
A3
 非公開会社が,譲渡制限株式を発行する場合には,株主総会決議が必要であることとの平仄です。

Q4
784条1項但書について質問させてください。
なぜこの様な場合(784条1項但書の要件に当てはまる場合)に、略式組織再編が認められないのでしょうか?
 784条1項但書のような要件を設定した趣旨についてご教授ください。
 特に、「種類株式発行会社でないときは」という要件について詳しく教えていただけると幸いです。
投稿 maru | 2006/11/16 16:54:46
A4
 公開会社で、種類株式発行会社でないということは、全株式が譲渡自由であり、かつ、種類株主総会による保護が受けられないということです。
 このように譲渡自由株式の株主が、譲渡制限株式を交付される以上、株主総会でその利益を保護する必要であるので、例外になっています。

Q5
昨日の質問Q9②定款の定めによる(みなし)会計監査限定監査役に関しての補足なのですが、みなしの場合は、例えば次の(他の)定款変更自由が生じた際でも、当該事項は改めて記載する必要もなく、永遠に続くということですか?
と言うことは、336条4項43号の「廃止」は定款の文面上には無いものを廃止と言うことになるのでしょうか?きっとそうなるのでしょうが、分かり難いだろうなと思いまして・・。
投稿 ネットくん | 2006/11/16 17:36:07
A5
みなし定款変更は、その時点で定款変更をしたのと同じ効果を生じさせます。
したがって、その時点で書面としての定款にも記載する必要があります。
逆に、その後に会計監査限定の定めを廃止することも、当然できます。

Q6
新司法試験の勉強をしているロー生です。株主総会決議の取消し・不存在について質問させてください。
取締役会決議を経ないで取締役が株主総会を招集した場合には,298条4項違反となります。これは,招集手続に法令違反があるとして「取消事由」にあたるのでしょうか(831条1項1号)。あるいは,取締役会決議がない場合には,法律上の株主総会がないとして,「不存在事由」にあたるのでしょうか。
条文上の文言からは「取消事由」とするほうが素直に読めますが,最判昭60・12・20(百選39)は,敷金返還請求の事案で,「招集権者による株主総会の招集手続を欠く場合であっても」,全員出席総会の場合には,「決議は有効に成立する」と述べていて,「不存在事由」と考えているように思えます(しかも,取消事由ならば取消訴訟の利用強制があるので,敷金返還請求では争えないはずですし)。
というわけで,「取消事由」になるか,「不存在事由」になるのか,基本がよく分かっていません。両者の違いは出訴期間制限などで大きな違いになるので,ご教授お願いください!!
投稿 aaa | 2006/11/16 18:04:12
A6
取消事由です。

Q7
「非公開会社かつ取会設置会社で、株主割当による募集株式の発行を株主総会で決議した場合、割当の決議を取締役会でしなければならない。」との規範について、取会の決議は不要であるとのご回答でしたが、実は紹介した規範は登記実務で採用されていると思われるものです。平成18年3月31日付法務省民商第782号民事局長通達第2部第2-3-(2)-ウー(ア)(20ページ)には、「募集事項等の決定機関(募集株式が譲渡制限株式である場合には、その割当ての決定機関を含む。)に応じ、株主総会、・・・取締役会の議事録」を「添付しなければならない」と書かれています。私は千問の見解より登記実務の見解の方が以下の理由により妥当だと考えますが、如何でしょうか?
(理由) 204条には200条3項のような募集事項の決定決議の有効期間が定められておらず、決議と申し込みの期日の間には時間差があることを許容している。時間差があるということは、経済環境の変化に応じ、会社の資金需要にも変化があることが当然予想される。そこで、会社法は、資金需要の変化に即応するため、募集事項の決定決議で決められた募集株式の数よりも割当ての際に減少する権限を認めた(204条1項)。もっとも取会設置会社では、資金需要の変化を適切に判断できる機関は、取会であるので、取会に割当て決議の決定権限を認めた(204条2項)。又、「一見無意味と思われる手続も会社法で省略規定がない限り、省略することは許されない(葉玉先生の同趣旨のお言葉)」事からすると、株主割当の場合でも、取会の割当て決議は省略できない。
 従って、「非公開会社かつ取会設置会社で、株主割当による募集株式の発行を株主総会で決議した場合、割当の決議を取締役会でしなければならない。」との規範は妥当だと考えますが、如何でしょうか?
投稿 NK | 2006/11/16 22:39:41
A7
本当に、それが登記実務なのでしょうか?
当該通達は、「割当ての決定機関」がある場合の規定であり、株主に割当を受ける権利を与える場合には、割当て決議なるものはないので、決定機関が存在しません(もしくは、割当を受ける権利を与えた期間が割当の決定機関であり、募集事項等の決定機関と同じです)。
 そもそも割当を受ける権利は、形成権であって、請求権ではありません。形成権を行使した時点で、引受人としての地位を取得するにもかかわらず、その後に、取締役会決議をするのは、全く意味がありません。
 また、株主総会で、割当てを受ける株式の数まで定めているのに、それを取締役会で勝手に割当を受ける者や割当を受ける数を定めるということは、ありえないことであり、そこで「特定の株主に割当をしなかったらどうするのか」という問題を生じます。
 NKさんのおっしゃっている見解は、全く取りえないと思います。
 ですから、そんな実務が登記実務ではあるとは、考えられません。
 まあ、取締役会議事録を提出しても、無効で、意味のない文書を参考まで出したと考えれば、害悪になるわけではありませんが、およそ提出を強制するような文書ではありません。

Q8
 会社法第310条で「議決権の代理行使」が認められていますが、「書面による議決権行使(298条2項本文、1項3号)」、「電磁的記録による議決権行使(298条1項4号)」を代理行使することは認められるのでしょうか?
投稿 youback | 2006/11/17 1:33:45
A8
 書面による議決権行使を代理行使することはできません。
 そもそも、当該制度は、代理人を見つけるのが難しい人もいるから、書面で株主が直接行使できるようにしたものです。
 実際上も、代理権の有無を確認することが困難なので、無理です。

Q9
1. 業務執行取締役の権限について
私の抱く取締役のイメージが「釣りばか日誌」や「島耕作」なのでそれにひきずられているのかもしれませんが、「業務執行取締役」でない取締役は「業務執行」をすることはできないのでしょうか。
またできないとして、そこでいう「業務執行」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。
さらに、「業務執行取締役」になると、社外取締役の欠格事由や3ヶ月に一度の報告義務以外に、どのような効果が付与されるのでしょうか(どんなことができるようになるのでしょうか)。
気になって夜も眠れないので、よろしければ教えて下さい。
2. サミーさんの名前の由来について
サミーさん、素敵なお名前ですね。
もしよろしければ、名前の由来など教えて下さい。
投稿 特命希望 | 2006/11/17 8:05:26
A9
1 業務執行取締役の定義を見てもわかるとおり、取締役が業務執行をした瞬間に、業務執行取締役になってしまいます。
 取締役の業務は、取締役会に参加して決議に参加することです。
2 「サミー」というのは、葉玉さんが独断で残していった名前なので、正確な由来はわかりません。葉玉さんがT&Aマスターに書いているサミーズ・カフェから来ているのは間違いないと思います。

Q10
16日付記事でご指摘のように、従来の教科書の説明を微修正するだけでは足りず、説明の仕方を変えたり、あるいは、従来の概念にこだわることをやめるべき場合が、新会社法には少なくないように思います。今後ともご教示下さい。

さて、質問です。有利発行について募集事項の決定を取締役に委任する総会決議を行う場合(200条)には、委任の枠内で募集事項を決定し新株発行を実際に行うときには株主への発行事項の公示は不要と考えて宜しいのでしょうか。仮にそうであれば、募集事項はたしかに委任の枠内であるが不公正発行に該当するという新株発行については、公示がなされなかったこととあわせて新株発行の無効事由となるという解釈は可能でしょうか。

 裏返しの質問ですが、特定の株主から会社が自己株式を取得しようとするとき(160条)、総会決議では枠は定められても具体的な取得価格が決定されるわけではないようですが(同条1項、156条1項)、この理解で正しいでしょうか。そうであっても、総会議案として、「市場価格を超えないものとする」と定めることは可能(161条)ということでしょうか。仮にそうであれば、157条により、具体的な取得価格は取締役会によって決定され、8月にAさんから買い取るときと10月にBさんから買い取るときには別の価格で買い取ることも、取締役会を別に行えば可能ということになりそうですが、この理解で宜しいでしょうか。市場価格を越えないという限定がなく、かつAさんからは著しく高額で、Bさんからは時価で買い取ったという場合には、120条などによって対処するという解釈は可能でしょうか。(なお、あまりに基礎的な質問で恐縮ですが、売主追加請求権を行使した株主も当初の売主と同様に決議に参加できないと考えて良いのでしょうか)
投稿 大杉謙一@関西人 | 2006/11/17 8:51:55
A10
 大杉先生に励ましていただけるとは、大変光栄です。
 法制審議会で決められたことを含めて、従来的な説明に無理がある場合が少なからずあるので、私達は、できるだけ全ての制度を、整合的に説明しようと努力しております。
 これからもご支援いただければ幸いです。
 さて、ご質問の件ですが、確かに、有利発行で取締役に委任する総会決議を行う場合には、株主に対する通知・公告は不要です。
 次に、取締役が、委任の枠内であるが、不公正発行をした場合の効力ですが、これは、なかなか難問です。
 200条の委任による取締役の決定は、201条の取締役会の決定と比べ、株主総会で「募集株式の数の上限及び払込金額の下限」を定められている分だけ、決定できる範囲が限定されています。
 一つの考え方は、「株主総会で、そのような事項が決定されているのだから、株主が差し止めをしたければ、その時点で差し止め請求すればよい、だから、差し止めもされないまま、発行されれば、無効事由にはならない」というものでしょう。
 大杉先生が、不公正発行を例に挙げられているのは、
 「経営者の保身のために親密先に割当てをすることなどは、株主総会の委任の決議で決められていないから、そうした事実が分からないと差し止めができない。よって、そのような場合には、無効事由になるべきだ」という問題意識ではないかとも思われます。
 そういう意味で、そうした解釈も可能であるとも思いますが、気になるのは、201条3項の通知も、募集事項しか通知されず、不公正発行には無力である点は200条の委任決議と同じです。
 とすろと、201条3項の募集事項の通知を行ったが、不公正発行がされた場合には、無効事由にならないのと同じように、200条の委任の範囲内で、不公正発行がされた場合も無効事由にならないと考えるのではないでしょうか。
 株主としては、株主総会において、割当先などについて質問権を行使することにより、決議に反対し、あるいは、委任の範囲を限定する等するという防衛策を採るべきであると思います。

 次に、特定の株主から会社が自己株式を取得しようとするときの総会決議ですが(160条)、おしゃるとおり、総会決議では取得価格は決定する必要はありません。

 しかし、総会で「株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額」のほか、「市場価格を超えないものとする」旨を定めることにより、特定の株主から自己株式を取得する議案において、他の株主による売主追加議案請求権を与えないことはできます(161条)。
 その場合、取締役会が、具体的な取得価格を決定しますが、取締役会を別個に行えば(157条3項)、8月にAさんから買い取るときと10月にBさんから買い取るときには別の価格で買い取ることも、それぞれの時点で、市場価格を超えないのならば、可能でしょう。
 最後の質問の「市場価格を越えないという限定がなく、かつAさんからは著しく高額で、Bさんからは時価で買い取ったという場合」ですが、これは、
1 時期が同じであれば、形式的に取締役会決議を分けたとしても、157条3項に違反する
2時期が異なる場合には、時価より著しく高額であったとしてもやむをえない場合がある(一定数の自己株式を取得することが必須の場合に、その数を確保するために時価より高額で引き受けざるを得ない場合もある)が、合理性がない場合には、120条や109条1項等によって対処する
というアプローチが妥当だと思います。

 なお、売主追加請求権を行使した株主も当初の売主と同様に決議に参加することはできません。

Q11
千問Q426について
非取締役会設置会社で代表取締役が死亡しても、349条1項ただし書の適用があり、他の取締役に代表権が付与されない、と記載されていますが、商事法務1778「代表取締役の就任・退任」では、取締役たる代表取締役の死亡及び他の取締役について代表権付与の登記が必要と書かれています。
これは変更になったと考えて宜しいのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/17 9:54:05
A11
 千問Q426は、取締役の互選で代表取締役を選定している場合を念頭に置いていたので、各自代表にはならないと断定的に書いてしまいました。
 定款や株主総会で代表取締役を選定した場合には、代表取締役の死亡によって、各自代表になりますので、商事法務1778は、その場合を付け足したものと考えてください。

Q12
議決権行使書面を利用する場合、参考書面の発送、招集通知発送期間などいろいろな規制が出てきますが、非公開会社であり株主の200程度の会社である場合、実務では議決権行使書面ではなく委任状を送っているようですが、この場合は「委任状」なので、会社法301条等の適用はないと考えていいのでしょうか?また会社の作成した議決権行使書面に準ずる形式で作成された「委任状」は会社法でも適法なのでしょうか?宜しく御願い致します。
投稿 英坂 | 2006/11/17 11:22:53
A12
委任状勧誘府令にしたがったものならば、301条は適用されませんが、そうでなければ、301条が適用されます。
会社法における「委任状」は、特に様式はありません。

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2006年11月16日 (木)

【入門】社員の責任

 入門編の最初に,「会社法というのは,会社,社員,債権者という三者の関係を,どう調整するかを定めている」というお話をしました。
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12567483
 そして,第二回目では,会社の「基本的事項」を,①社員の多数決で決定する株式会社と②社員の全員の同意で決める持分会社という2種類の会社があることを説明し
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12602609
 第三回目では,会社の「経営=業務執行」を,①株式会社では社員が行う必要はないが,②持分会社では,社員が行う必要があるという説明をしました。
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12677428
 2回目と3回目は,いずれも「会社と社員の関係」についてのルールを説明したものです。

 本日は,少し毛色を変えて,「社員と債権者の関係」について,お話ししたいと思います。

1 会社の債権者と社員の関係
 会社は,社員とは違う法人格を持つ貯金箱ロボット(法人)ですから,法律に何の規定もなければ,会社の債権者が,社員に対して,支払を請求することはできません。

 また,会社の債権者は、会社と取引をしたのですから、まずは、会社に対して請求をしなければならないのは、当然です。
 では,債権者が会社に請求したが、会社財産だけでは,全部の弁済することができなかった場合に,社員が,会社に代わって,債権者に支払わなければならないのでしょうか。
 これが、債権者と社員の関係を考える出発点になります。

 結論からいえば,会社の種類によって答えが異なり
 (1)株式会社 支払わなくても良い(間接有限責任)
 (2)持分会社のうち
  ①合同会社 支払わなくても良い(間接有限責任)
  ②合資会社 無限責任社員は支払う義務を負い(直接無限責任),有限責任社員は、出資未履行分について支払う義務を負う(直接有限責任)
  ③合名会社 支払う義務を負う(直接無限責任)
ということになります。

 本日の講義の目標は,この
  無限責任と有限責任
  直接有限責任と間接有限責任
という意味を理解していただくことです。

2 無限責任と有限責任
 無限責任というのは,社員が,会社の債務について,限度額なく,弁済する責任を負うことをいいます(580条1項)。
 これに対し,有限責任とは,社員が,その出資額を限度として,責任を負うことをいいます(580条2項,104条)。
 
 私的自治の原則により,社員が,有限責任を負うか,無限責任を負うかは,社員になるときに,その意思によって決めます。
 持分会社の定款は,社員の全員の同意により作成しますが,その中で,各社員が有限責任社員か,無限責任社員かを定めなければならないこととされているのは,そういう趣旨です(576条1項5号)。
 
 社員の気持ちとしては,「無限責任なんか,嫌だ」と思うのが普通でしょうし,とりあえず有限責任とした上で,銀行からお金を借りるとき等に個別に連帯保証契約を締結すれば,会社の運営にも支障がないので,無限責任社員を選択する人は、大変少ないのが実情です。

 ただ,世の中には,
 「この会社は,俺の命。だから,会社の債務は,全部,俺が払うぜ」
という男気のある(別に女性でもいいですが)社員もいますし,会社の債権者としても
 「保証が要式行為になって,包括根保証も禁止されたから,いちいち社員と連帯保証をするのは面倒だ。無限責任だと楽だなあ。」
と考える場合もあるでしょう。
 そういうことを考えると,持分会社では,社員が,「無限責任を負いたい」と言っているのに、それを禁止する必要もないので,定款で無限責任社員になるか、有限責任社員になるかを自由に定めることができることになっています。

 これに対し,株式会社では,株主が無限責任を負うことは、禁止されています。
 104条は,一般には
  株主の責任を限定した規定である
と理解されており,それ自体は間違いではありませんが,「特に責任を認める規定を置かない限り,株主が会社の債権者に対して責任を負うことはない」のですから,104条の趣旨は
  株主が,定款等で無限責任を負う意思表示をすることを禁止している
という文脈で捉えるべきだと思います。

 それでは,なぜ,株式会社では,株主に有限責任を義務付けるのでしょうか。それは
  株主の地位の無個性化
を実現するためです。
 株主が無限責任を負うことを認めれば,債権者は,その「無限責任株主」の資産を当てにして取引をすることが増えるでしょうし,他の株主も「無限責任株主」が会社の信用上必要不可欠であると期待するでしょう。
 また,株式を購入しようとする人が,うっかり「無限責任株式」なんて買ってしまったら,大変なことになりますから,有限責任株式と明確に区別できるようにしてもらわないと困ります。

 そういうことを考えると,無限責任株主の氏名等を「定款」で定めなければならないとか,「登記」しなければならないとか,重い手続きを用意せざるをえなくなってしまいますし,「無限責任株主」が,自己の「無限責任株式」を無資力者に譲渡するようなことがあっては困るので,譲渡にも制限を設けなければならなくなります。
 このように、どんな制度を組み立てるにせよ,「無限責任株主」を認めるために整備しなければならないような制度は,
  株主の地位を無個性化することにより,株主構成の変動を容認することで,社会に散在する少額資本を結集する
という株式会社の目的に全くそぐわないものです。

 そこで,会社法は,104条で
  株主には,どんな場合でも,有限責任しか負わせちゃいけないんだよ。
  債権者も,他の株主も,株主の財産なんか当てにするんじゃない。
ということをハッキリさせて
  株式を購入しようと考えている方は,安心してご購入ください。
と語りかけているのです。

3 直接有限責任と間接有限責任
 直接有限責任とは,会社の債権者が,社員に対して,直接,未履行出資分を限度として,その責任を追及することができる責任のことを言います。
 平たく言えば,債権者が,社員を被告として訴えることができるということです。

 間接有限責任とは,会社の債権者が,社員に対して,直接責任を負わず,会社に対する出資義務を負うに留まることを言います。

 さて,最初に,正直に言っておくと,私は、旧商法において,直接責任か,間接責任かというのは,あまり合理的な区分ではなかったと思っています。

 たとえば,旧商法では,株式引受人(株主になる約束をした人のことです)が出資未履行のまま株式会社が設立された場合,その引受人は、出資義務を負ったまま株主になっていました。
 つまり、実際に「間接有限責任を負う株主」が存在していたのです。
 しかし、株式会社の債権者は,株式会社が無資力になれば,民法423条により,その株主に対する出資義務履行請求権を代位行使することができますから,「間接」というのは,有名無実でした。
 つまり,間接有限責任といっても,債権者代位権を利用すれば,債権者が,株主に対して自己に出資金を支払うよう直接請求することができ,しかも,債権者は,取立をした出資金を会社に返還する義務を,自己の会社に対する債権で相殺することができるので,結局は,直接責任を認めたのと同じ状態になっていたのです(直接責任の要件(580条参照)と,債権者代位の要件は,微妙に違いますが,かなり似ています)。

 それにもかかわらず,「合名会社・合資会社の社員の責任は直接責任で,株式会社の社員の責任は間接責任だ」という区分けがされていたのは,
  合名会社・合資会社は,組合の延長みたいなものなので,債権者が組合員に直接請求できるように,社員に直接請求することができるのが妥当
という判断があったからでしょうが、どう理屈をつけても、あまり意味のある区別ではなかったと思います(というか,本来,組合として規定すればよかった合名会社や合資会社を、うっかり法人にしたことに起因するものなのでしょう)。

 しかし,会社法を作るにあたって,愚痴を言っても仕方がないし,合名会社・合資会社の直接責任を今更変えるわけにもいかないので、会社法は
  間接有限責任
の発想を変えて
  社員になろうとする者が出資義務を履行しなければ,社員になることができない
というルールを採用して
  社員(株主)の無責任化
を図ることにしています。

 つまり,旧商法は、間接有限責任という名の下に,下手に
  社員になったにもかかわらず,出資義務が残存している
という状況を作ってしまっていたために,債権者代位権の行使によって,直接責任と同じような状態になってしまっていたので,会社法は
  社員になった時点では,出資義務は残っていない。だから,債権者が債権者代位権を行使しようと思っても,行使することができない。
ということにしてしまったのです。

 具体的には,
①株式会社では,36条3項,63条3項,208条5項等
②合同会社では,578条,604条3項等
が,間接有限責任(=無責任)を実現するための規定です。

 読者の皆さんの中には,
 「出資が未履行でも,社員にしてあげてもいいじゃないか。
 債権者代位権を行使されたとしても,出資していないんだから,仕方がないんだし・・」
と思う人がいるかもしれません。

 しかし,出資義務を負った社員の地位というのは,社員の地位を譲渡するときに,譲受人との関係を複雑にしてしまいます。
 
 たとえ話をしましょう。
 「合資会社 正直法務」の有限責任社員である松真さんが,お金に苦しんでいて、100万円の出資義務を怠っているとしましょう。それで,松真さんは,業務執行社員である湯水さんの同意の下,その持分をサミーさんに譲渡することにしました。
 さて,この場合,持分を譲り受けたサミーさんは,100万円の出資義務を引き継ぐのでしょうか?

 この点について,私は,合資会社の持分(社員と会社との間の権利義務の集合体であり、一種の契約上の地位)の譲渡により,会社に対する権利のみならず,その義務も引き継がれると考えています。
 なぜなら、
① 586条2項は、持分の全部を譲渡をした社員が、登記後2年以内に債権者に対する責任が消滅することを定めていますが、もし譲渡人が持分の譲渡後も出資義務を負い続けるのだとしたら、2年で債権者に対する責任を消滅させる理由がない。
② 合資会社の定款には,譲受人の氏名と出資の価額が書かれているのに、譲受人が出資義務を負わないのは、不自然だし、譲受人が出資の払戻を請求する場合の法律関係が複雑になる。
③ 持分の譲渡とは,持分を同一性を保ったまま,譲受人に移転させる行為であることを考えると、その義務も引き継ぐというのが合理的である。
からです。

 また,旧商法で,出資義務を負ったままの株主が,その株式を譲渡した場合に,譲受人との関係をどのような処理をすべきだったのか,正直言って,あまり自身を持って答えられないのですが,どんな結論を採るにしても,かなり都合の悪い結果しかもたらしません。

 たとえば,「出資義務を負った株主の地位」を引き継ぐという結論を採ると
  株式を取得するときは、きちんと出資を履行したのかどうかを確認しない限り,株式を取得できない
ということになるでしょうし,逆に「譲受人は,出資義務を引き継がない」とすると
  「出資もされていない株式を消却した場合でも譲受人に金銭を支払っていいのか」
  「出資もしていない株式について利益配当をしていいいのか」
という問題が生じます。

 以上のように,どういう結論を採るにせよ「出資義務を負った株主の地位」というものが存在する限り,安心して株式を譲り受けることはできず、
  株主の地位を無個性化する
という要請とも整合的ではありません。

 そういう意味で,間接有限責任の趣旨を徹底するためには,
  出資義務を果たさない限り,株主になることはできない
というルールを採ることにより
  株主になった以上,会社の債権者に対して一切責任を負わない。
という状態を作りだす必要があったのです。

 これに対し、合同会社の社員が「間接有限責任」とされているのは、やや趣きが違います。
 立法論としては,合同会社の持分の譲渡は自由ではありませんし,その地位を無個性化する必要もないので,合資会社の有限責任社員と同様,「直接有限責任」とすることもできたと思います。

 ただ,伝統のある合資会社と異なり,会社法で新たに作られた会社類型である「合同会社」は,実際のニーズに合わせた設計をすることが可能であり、間接有限責任の方がニーズにマッチしていたのです。

 すなわち、合同会社は,すべての社員が有限責任である点で,株式会社に類似しているわけですが,このような形態を選ぶ社員は
 「合同会社に生じたリスクが、社員に及ばないようにしてもらいたい」
と考えているのが普通です。
 そのような社員は,会社債権者から直接請求される可能性があるということ自体を嫌いますから,「合同会社の社員は,債権者から直接請求されることはない」という安心感を与えた方が,合同会社という制度を使ってもらいやすいわけです。
 また、合同会社は、合名会社や合資会社のような家族的な経営というより、複数の株式会社が出資する合弁企業や、資産の証券化の受け皿として用いられることが予想されていたことから、業務執行社員の同意のもとで,持分が譲渡される場合も、十分ありうることを前提に制度設計をした方がよいとも考えられました。

 そこで,合同会社の社員や持分の譲受人に安心感を与えるために,合同会社の社員について,間接有限責任化=無責任化を実現しているのです。

 研究者の中には、合同会社の社員が間接有限責任だという点を捉えて、「合名会社や合資会社と同じ持分会社にしたのはおかしい」という人もいます。
 しかし、同じ「間接有限責任」でも、株式会社の「株式」と合同会社の「持分」の性質の違いに応じて、その趣旨が異なっていますから、そうした見方は、旧商法における「社員の責任による会社の分類」に囚われすぎて本質を見失っているように思います。
4 まとめ
 以上、社員と債権者の関係について説明してきましたが、最後に、ちょっとした注意点を指摘して終わりにします。

 株式会社では、株主の間接有限責任が強制されますから
  株式会社の株主は、間接有限責任である。
という表現は気にならないのですが、持分会社については
 合名会社の社員の責任は、直接無限責任である。
という表現は、間違いではないものの、論理的には、若干、気になるところがあります。

 なぜなら、会社法では、
  社員の全員が直接無限責任社員である持分会社が、合名会社である
という論理を採っているからです。
 何を言っているかさっぱり分からないと思いますが、例えば、松真さんが有限責任社員、湯水さんが無限責任社員である合資会社があるとしましょう。
 このとき松真さんが死んでしまったら、この会社は、どうなるでしょうか。
 答えは、当然に「合資会社」が「合名会社」になるのです(639条1項)。
 旧商法では、組織変更の手続きを採らない限り、合資会社が合名会社になることはなかったので、無限責任社員しかいない合資会社も存在したのですが、会社法は、合名会社・合資会社・合同会社を同質の「持分会社」という概念で括くることで
 無限責任社員だけの持分会社が、合名会社
 無限責任社員と有限責任社員がいる持分会社が、合資会社
 有限責任社員だけの持分会社が、合同会社
と整理しています。
 つまり、社員がどのような責任を負っているかということを先に決めて、それにより、を会社の種類が決まるという構造です。

ですから、結果的には
 合名会社の社員は、無限責任社員である。
という命題は正しいのですが、論理的には
 無限責任社員だけしかいないから、合名会社なんだ
ということを理解して置いていただきたいと思うのです。

 今日は、ギャグもなく、理屈っぽい話ばかりでしたが、次回は、債権者と社員の関係について、もう少し掘り下げてみることにします。

(質問コーナー)
Q1
サミーさん、会社内部の者(株主以外)の定款閲覧権について教えてください。
1.取締役、監査役その他の役員には定款閲覧権がありそうにも思うのですが、会社法上の明文の規定はどうにも見当たりません。これは、定款の性質上認められると考えればよいのでしょうか。
2.また、労働法でいうところの被用者(従業員)、会社法なら支配人・使用人および会社法のターゲット外の一般従業員には、定款閲覧権が無いという理解で良いのでしょうか。
3.そもそも、定款は「会社の憲法」などと表現されますが、憲法のように広く公開する必要はなく、会社法31条の定めがあることを考えるとむしろ原則非公開、と考えて良いものなのでしょうか。
4.会社法31条2項との関係(被用者は賃金債権者?)、会社法348条3項4号および362条4項6号との関係(定款適合確保の体制維持のために従業員へ定款を公開すべき?)、会社法911条および915条との関係(登記で公開するのだから少なくとも従業員へ定款を公開しても同じ?)、ならびに公証人法との関係(同法では利害関係人への公開を認めているのだから会社の定款も同じ?)といったあたりも併せて教えていただけると、とても嬉しく思います。
投稿 迷い人 | 2006/11/14 2:36:21
A1
1 取締役は、業務執行又はその意思決定に携わるものとして、当然、定款を見ることができると考えられているのだと思います。
2 被用者等は、債権者として定款の閲覧権があります。
3 公開・非公開と2者択一的な考えをするのよくありません。「どの範囲に公開するか」という程度の問題として開示規定を見てください。
4 それぞれの規定で、開示される範囲や要件が違いますので、「関係」を説明するのは困難です。

Q2
会社法第399条に会計監査人の報酬の決定については、監査役の「同意」を得なければならないとあります。
この「同意」というのは、例えば第436条で計算書類等は取締役会の「承認」を受けなければならない、という「承認」とは、何がどう違うのでしょうか。
基本的なことで恐縮ですが、宜しくご教示下さい。
投稿 いまさらシロー | 2006/11/14 18:45:39
A2
用例に従っただけで、言葉の意味は、ほぼ同じです。

Q3
会社法128条1項但書について ご教授ください。
なぜ 自己株式の処分による株式の譲渡については 株券を交付しなくても その効力を生じるのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/14 18:55:07
A3
自己株式の処分は、株式の発行と同じ募集手続で行われます。株式の発行は、株券を発行しなくても、その効力を生じますから、自己株式の処分も、株券の交付なしに効力を生じさせなければ、株式の発行を受けた引受人と、自己株式の処分で株式を取得する引受人との間で差が生じてしまうからです。

Q4
千問Q539における兼任禁止について質問させてください。
千問p397上部における「親会社は 子会社の取締役の選任決議の際に 通常 その監査役が子会社の取締役への就任を承諾することを知りうる立場にあり」とは具体的にどの様な場合をさすのでしょうか?
 また、p396下部によると 子会社の取締役が親会社の監査役に選任された場合でも 当然には子会社の取締役の職を辞任することにはならないのですよね。これは、子会社は親会社の監査役の選任決議の際に 通常 その取締役が親会社の監査役への就任を承諾することを知りうる立場にないから、その取締役が辞任の意思表示をしたとみなすことができないのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/14 18:56:16
A4
・子会社の取締役の選任は、親会社が株主として参加する株主総会で行われますから、親会社は、当然、子会社の取締役として誰が選ばれるかを知っています。
・質問後段の部分は、そんな感じです。

Q5
今日は募集株式の発行について教えてください。
「非公開会社かつ取会設置会社で、株主割当による募集株式の発行を株主総会で決議した場合、割当の決議を取締役会でしなければならない。」。この規範が正しいことを前提にした場合の条文操作等について間違いがないか確認させてください。
1 株主割当の場合、202条3項4号・309条2項5号により、株主総会特別決議が必要。
2 募集株式が譲渡制限株式であるので、原則として、取会で割当の決議をしなければならない(204条2項括弧書き)。
本件のように株主総会で株主割当の決定をしたのにも関わらず、別途取会の割当決議が必要であるのは、株主全員が申し込むとは限らないし、株主割当であっても204条1項2項が適用され、株主総会で決議した募集事項の数よりも取会で減少できる権限があるので、別途取会決議が必要。
以上のような理解で宜しいでしょうか?
投稿 NK | 2006/11/14 22:32:33
A5
 株主が、割当を受ける権利を行使した場合には、取締役会の決議をするまでもなく、当然に割当の効果が生じます。204条1項から3項までの適用はありません。
 ですから、4はおかしいです(千問Q280)。

Q6
サミー様、お忙しいところ恐縮ですが、過去の質問に対する解答につきまして
ご教示ください。
10月15日のQ3と11月2日のQ6につきまして、私には、同じ内容の質問で答えが違うように思えてしかたないのですが、両問の違いについてご教示願えない
でしょうか?
所謂「内部統制システム」に関する取締役会決議は、増資直後の事業年度末日
に係る定時株主総会の直後の取締役会で決議すればよいのでしょうか、それと
も、増資直後(定時株主総会前)の取締役会で決議するべきなのでしょうか。
投稿 四苦八苦 | 2006/11/14 22:44:01
A6
 正確に言えば、11月2日のQ6の方が正しいです。
 10月15日のQ3で、株主総会の直後の取締役会で決議することは、一瞬、義務違反の状態が生ずるが、すぐに決議しているので、取締役の任務懈怠とまでは言えないだろうから、事実上、問題ないという趣旨です。

Q7
 持分会社(合名、合資)について質問があります。
 株式会社の場合は、清算人の登記がされると、代表取締役の登記は抹消されますが、持分会社(合名、合資)の場合は清算人の登記がされても無限責任社員の登記は抹消されません。
 そうすると、清算持分会社の代表権は清算人だけでなく無限責任社員にもあると考えてよいのでしょうか?
 具体的には、清算持分会社の無限責任社員と第三者との間で締結された契約は有効になるのでしょうか?
 また、この場合、代表者印の扱いはどうなっているのでしょうか?無限責任社員の印鑑と清算人の印鑑が両方とも並存して登録されているのでしょうか?
 法定清算人で無限責任社員=清算人の場合で答えていただけると幸いです。
 (要するに、代表者の肩書きが無限責任になってるということで清算人と同一人なのですが.....)
 具体的には仕事で『清算合資会社から自然人への所有権移転の不動産登記申請で、合資会社の側の印鑑証明書の代表者の肩書きが「無限責任社員」になっている。登記簿には同一人が無限責任社員と清算人として登記されている。』という事例で登記申請がとおるのかというが問題になったのです。この点は法務局に問い合わせて、大丈夫ということで解決したのですが、どうも理屈では納得できないのです。清算人の登記がされているのに、無限責任社員の印鑑が生きていることに違和感があるのですが?
投稿 novaexpress | 2006/11/15 0:41:46
A7
 質問の問題意識がよくわかりません。無限責任社員=清算人という前提ならば、何も問題が出てこないのではないでしょうか?
 ちなみに、無限責任社員であることと、業務執行権や代表権があるかないかは、全く関係ありません。
 清算持分会社の無限責任社員と第三者との間で締結された契約は、無限責任社員が清算人ならば、有効です。
 代表者の肩書きが重要なのではなく、その契約をした人が、清算人かどうかが重要です。
 
Q8
株主総会議事録への署名または記名押印について、ご教示ください。
商業登記規則61条4項1号に該当する場合を除き、作成者の署名または記名押印を要さないとされていますが、そうはいっても、従来からの慣行と議事録の真正担保のために、定款で署名義務者を定める会社は、実務上、多数存在しています。
株主総会議事録への署名または記名押印義務は、「会社法が、文言上、定款で別段の定めができることを明示していない」場合であるため、当該定款規定は無効であり、かつ、取締役の忠実義務違反も問われることはないため、任意的記載事項として当該定款規定を設定した会社は、会社法上は、ムダな努力をしたことになってしまうのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/15 12:22:57
A8
318条は、議事録の署名の要否について、何もルールを定めていません。
ですから、会社法に規定されない事項として、定款で署名義務を課すことはできると思います。

Q9
定款の定めによる監査範囲の限定(389条)に関して教えてください。
①第1項括弧書き内の「及び」の意味なのですが、「かつ」と言う意味でしょうか?つまり、監査役会と会計監査人の両方を設置していない会社が、定款で監査役の監査範囲を会計に限定することが出来るのでしょうか?それとも「または」の意で、そのどちらかを設置していれば定款で限定できないということでしょうか?
②旧商法時代からの会計監査限定の監査役は、会社法上も(大会社になったり公開会社にならない限り)会計監査限定の監査役とみなされていると思いますが、この限定に関する定款の変更はいつまで猶予されるのでしょうか?
投稿 ネットくん | 2006/11/15 13:47:20
A9
①監査役会も、会計監査人も設置していない会社が、定めることができます。
②意味がわかりません。定款に会計監査限定の定めがあるものとみなされていますから、ずっと続きます。

Q10
会社法100問の67頁には、利益の配当のところで、「合同会社は間接責任を維持するため、利益額を超えて配当を行なった場合でも、配当を受けた社員に対する支払請求権(623条1項)について、民法の債権者代位権の特則として会社債権者が配当を受けた社員に対して金銭を支払うことを請求することができる(630条2項)ようにしているだけで、社員の直接責任が生ずることとしていない」とありますが、これは、会社債権者は、社員に対して直接自己に支払うように請求できるという規定なのでしょうか。それとも、会社債権者が社員に対して、当該社員が会社に支払うよう請求できるという規定なのでしょうか。
私は、最初は前者だと考えたのですが、テキストに「間接責任を維持するため」とありますので、後者の意味なのでしょうか。
投稿 なつ | 2006/11/15 17:39:14
A10
 今日の記事に関係するところですね。
 なつさんのいうように、623条1項は、会社債権者が、社員に対して、直接自己に支払うように請求することができるようにするための規定です。
 ただ、100問の記述は、直接請求をすることはできるものの、623条1項は、社員の直接責任を認めているのではなく、間接責任(無責任)を前提にして、違法配当の場合に生ずる社員の特別な請求権の代位行使を認めているだけだということを言っているのです。

Q11
役員(特に取締役)の責任免除・軽減に関してです。私の理解では、
①免除は総株主の同意。
②軽減は、
a)株主総会決議による事後の軽減
b)定款に規定+取締役会決議による軽減
c)定款に規定+責任限定契約による事前の軽減
と言う体型だと思うのですが、この内、社外取締役を特に明示したのは②c)だけですので、それ以外の取締役(業務執行取締役)の責任免除・軽減は、免除は①、軽減は②のa)とb)のみと言うことなんですが、それで宜しいですか?
投稿 ネットくん | 2006/11/15 18:45:03
A11
そうですね。

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2006年11月14日 (火)

【入門】所有と経営の関係

 今日は、「所有と経営の関係」について、お話しします。

1 出資とは、何か
 第一回で、社員というのは、「会社を作った人である」と説明しました。
 これは、会社は、
    社員の意思表示によって生まれ、成り立つものである
ということをイメージしてもらうために使った言葉です。

 ただ、会社は、公益法人と違って、社員が、お金儲けをするために作るものですから、会社の社員になるためには、単に定款を作るだけではダメで、
  お金儲けの元手(現金等の経済的利益)を会社に出さなければならない
ことになっています。
 社員が、会社に対して、経済的利益を移転させる行為を「出資」といいます。

 「出資」は、通常は、お金や土地・建物のような
  「財産」
がほとんどですが、合名会社や合資会社では、「会社の業務執行社員として働くことにより、会社に経済的利益を与える」という労務出資等も認められています。

 では、なぜ、社員になるために、出資をしなければならないのでしょうか?

 例えば、松真さんと湯水さんが会社を作ったものの、松真さんは、金も出さず、働きもせず、もっぱら、湯水さんが、資金を出して、昼は営業、夜は出版のための原稿書きに徹して、くたくたになりながら、商売をしていたとしましょう。

 この「何も出さない、何もしない」松真さんが、会社に利益が出たときに限って、会社にやってきて
   俺も、定款に社員と書かれているんだから、配当をくれよ。
と言ったら、どうでしょう。
 湯水さんは、あまりの虫の良さに
   ブチ切れ
ますよね。それとも、愛があれば乗り越えられるのでしょうか?
 いやいや、松真さんが、絶対君主ならば、いざしらず、資本主義社会においては、
  金も出さない、働きもしないような奴は、何の利益も得られない
というのが会社法のしきりです。
 つまり、出資は、会社から利益の配分を受けるための「賭け金」であり
  リスク・テイクしなければ、リターンはない
というルールが採用されているのです。
 
 このように、社員は、会社に出資することにより、会社が得た利益の分配を得ることができるという特徴を持っているので、一般的には
 「社員」=「出資者」
という定義が用いられます。
 ですから、皆さんも、社員の定義を聞かれたときは「出資者のことです」と答えて欲しいのですが、単に金を出すだけではなく、会社への加入の意思表示をすることも、社員の重要な要素であることも忘れないでください。

2 所有と経営
 社員が、出資した財産は、会社という貯金箱に入り、社員の財産ではなくなってしまいますから、社員は、その財産を処分することはできなくなります。
 何度もいいますが、会社財産を処分する権限は、社員ではなく、業務執行者が持っているのです。

 しかし、社員は、出資財産に対する権利を失う代わりに、
  会社に対する権利(定款を作ったり、誰を会社の業務執行者にするか決めたりする権利)
を得ます。
 この会社に対する権利のことを、通常、「社員権」と呼びます。
 この「社員権」については、いろいろ難しい話はあるのですが、その話も会社法の具体的な条文の解釈にはあまり影響しないので、ここではパス。

 この社員権は、所有権ではありません。会社は、観念的な存在であり、「物」ではなく、所有権の客体にはなりませんから。
 しかし、会社法の制度を説明をするときには、社員権が会社の組織等を自由に決定できる権限であることを捉えて、
  「社員は、会社の実質的所有者である」
  「株主は、株式会社の実質的所有者である」
等と説明することはあります。
 ただし、勘違いしてはいけないのは、社員には、会社財産を直接処分する権限がないので、社員だというだけでは、会社財産を運用して商売をする権限はないのです。

 商売(会社の行う商売のことを、会社法では「事業」といいます。)をやるのは、あくまでも、貯金箱ロボットの操縦者である「業務執行者」です。
 業務執行者は
   どんな従業員を雇うか。
   何を仕入れ、何を売るか。
   資金繰りのために、どこからお金を借りてくるか
などなど、日々、いろいろなことを決めながら、事業を営み、会社財産を殖やしていく責任を負っています。
 日常用語でいえば、業務執行者は、会社の経営者ということができるでしょう。
 
 ところで、この「経営」という言葉は、法律用語ではありません。
 一般社会では、「どんな定款変更をするのか」、「誰を取締役にするか」ということも、経営の一貫として捉えられていますが、会社法で「経営」という言葉を使う場合には、会社の基本的な枠組みを決めることは、必ずしも含まれておらず、「会社の業務を執行すること」という意味で使われている場合が多いのです。
 そこで、このブログでも、経営というのは、業務執行という意味で使うことにしましょう。

3 所有と経営の関係
 では、株式会社と持分会社では、「所有」と「経営」は、どのように関係しているでしょうか。

(1) 株式会社
 株式会社の業務執行権を誰が持っているかということを規定した条文は、次のように、実に複雑です。

 原則 取締役(348条)
 例外 取締役会設置会社では、代表取締役(363条1号)及び業務担当取締役(同条2号)
 例外の例外 取締役会設置会社のうち、委員会設置会社では、執行役(418条2号)

 この複雑怪奇さの原因は、後日説明することとして、今は、

  株主(株式会社の社員)には、業務執行権がない=所有と経営が分離している

ということだけを確認しておきましょう。
 つまり、株主が、業務執行をしたいのならば、株主であるというだけではダメで、株主総会で
  取締役に選任されなければならない(329条1項)
ということです(なお、代表取締役(362条2項3号)・執行役(402条2項)になりたければ、「取締役会」で選ばなければなりません)。
 また、取締役の全員が株主ではない、つまり、出資をした人が全く業務執行をすることができないという事態も許容されています。

 このように、株主に業務執行権が認められていないのは、
  株主が変わっても、会社の経営に影響を与えないようにすることにより、株主を無個性化する
ことにあります。
 無個性化というのは、「誰が株主になってもよい」ということです。

 いつもの具体例で説明しましょう。
 公務員の松真さんと湯水さんが、会社の経営をするためには、公務員をやめなければいけません。
 そこで、二人が
 「もし商売が失敗したときのことを考えると、公務員をやめるというのはリスキーだな」
と思うのならば、株式会社を設立し、会社を経営してくれそうな民間人のサミーさんに頼んで、取締役になってもらえばいいのです。
 「株主に業務執行権がない」と言うと、ネガティブな響きがありますが
    株主は、業務執行をしなくてもよい。
    出資さえしておけば、後は、配当が来るのを待つだけ。
というと「株主って、楽そうだな。」と思うでしょ?
 株主の無個性化は
  経営することができない人(経営能力がない人)でも株式会社に出資をすることができるようにする
という効果を持っています(経営能力がないというのは、やれば経営できるかもしれないが、様々な事情で経営することができない人も含みます)。
 難しい言葉で言えば
 「社会に散在する少額資本を結集するためには、株式会社の社員の地位を無個性化する必要がある」
ということになるでしょう。

 また、株主の無個性化は
  株式の譲渡を自由にする
ためにも重要です。
 例えば、松真さんと湯水さんが100万円ずつ出資して、株式会社正直法務を設立し、公務員を辞めて、取締役として一生懸命働いていたところ、株式会社ワクワク・ブックスが
  正直法務を100%子会社にしたいので、その株式をそれぞれ1億円で売ってください。
  そして、これからも松真さんと湯水さんのお二人に経営をお願いしたい。
と申し入れてきたらどうしますか。

 もし、会社法で
  株主が業務執行をしなければならない
というルールがあると、松真さんと湯水さんは、株を売りたくても売れません。
 会社にとっても、株主が株式を譲渡すると、経営に支障を来すというのならば、株式の譲渡を制限せざるをえないということになるでしょう。
 しかし、株式会社では、株主の地位が無個性化されており、株式の譲渡により、誰が株主となっても、基本的には経営に影響を与えることはないので、株式譲渡の自由(127条)を認めても、不都合は生じにくくなっています。

 このように、所有と経営を分離し、株主の地位を無個性化することは、①出資を容易にしたり、②株式譲渡の自由を認めやすくするために役立つので、「事業がうまくいったときには、社員を増やして、会社の規模をどんどん大きくしていきたいというオープンな会社」である株式会社の基本的なルールとして採用されているのです。

(2) これに対し、持分会社は、590条で
   社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
と規定されています。
 言い換えれば、持分会社では、
  所有と経営が一致
しています。
 持分会社は、「家族や仲間同士でずっと運営していきたいクローズドな会社」「組合的会社」として作られた会社なので、組合と同じように、社員が自ら業務執行をすべきであるというルールが採用されているのです。

 たとえば、先ほどの事例で、もし松真さんと湯水さんが持分会社を作っていたとしたら、ワクワクブックスが、松真さん達の持分を買い上げて、100%子会社にした後に、松真さん達に業務執行をさせようと思っても、それは不可能です。ワクワク・ブックス自身が業務執行社員となりますから、松真さん達を職務執行者にするという裏技はあるものの、その場合でも、法的には、業務執行は、ワクワクブックスが行っていることになります。

 不便と言えば不便なわけですが、持分会社というのは、クローズドな会社であることに存在意義があるのですから、その不便さこそが、持分会社の持ち味なのです。

4 所有と経営の分離の程度
 以上のように、会社法は
   株式会社=所有と経営が分離している会社
   持分会社=所有と経営が一致している会社
という分類をしていますが、「所有と経営の分離」というのは、法律用語ではないため、その意味を正確に理解しておく必要があります。

 たとえば、
   株主も取締役になれば、業務執行をすることができるし
   社員も、定款で業務執行をしない旨定めれば業務執行をすることができない
ので、実態としては
 事実上、所有と経営が一致している株式会社
もあれば、
 99%出資している社員が業務執行をすることができない持分会社
も存在するのです。

 「所有と経営の分離」というのは、「業務執行者が株主である必要はない」という制度の話であって、実態がどうかは、別次元なのです。そこのところを理解してもらうために、会社法100問では、
 「所有と経営の制度的分離」
という言葉を使っています。

 また、所有と経営を分離するかどうかは、理論的に導かれるものではなく、政策的に決められるものです。
 たとえば、株式会社も、大昔は、
  「取締役を株主から選ばなければならない」
というルールがあり、所有と経営が一致していました。

 逆に、持分会社は、現在
  「業務執行者は、必ず社員でなければならない」
というルールを採用していますが、これは、持分会社が、組合の延長線で考えられた制度であるがゆえに、伝統的に設けられているルールに過ぎず、立法論としては、社員でない者を業務執行者として定めることも不可能ではないと思います。

 しかし、立法論をつべこべいっても仕方がないので、初学者の皆さんとしては、会社法は
  株式会社の業務執行者は、必ずしも株主である必要はない。
  持分会社の業務執行者は、必ず社員でなければならない。
という制度を採用しているということを踏まえた上で、なぜ、そのような制度を採っているのかについて、3で説明した理由を理解することが第一歩でしょう。

 所有と経営の分離について、もう少し深く知りたい方は次の記事を参考にしてください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50055547
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50875623

(質問コーナー)
Q1
利益相反取引について一点質問がありますのでご教授ください。
親子会社間の取引に取締役会の承認が必要か否かについて、稲葉ほか編著「実務相談株式会社法3〔新訂版〕」(商事法務研究会)240頁以下では、「甲・乙両会社が、親子会社の関係にあり、かつ、甲社が乙社の全株をもっているときは、両会社間に利害の対立は全くないですから、いずれの取締役会の承認を要しない」とし、「一部の株式を親会社以外の者がもっている場合には、甲・乙両社間にまったく利害の対立がないとはいえない」として、両会社の取締役会の承認を要すると説明がなされています。
会社法においても上記の解釈をとって問題ありませんでしょうか。
投稿 華金 | 2006/11/10 17:06:29
A1
条文の文言に形式的には反するので、全く問題ないと言い切るのは躊躇を覚えますが、そのように解釈することも可能でしょう。

Q2
葉玉先生の旬刊商事法務NO1778の代表取締役の論文を読みたくて、
分売で注文し、それが今日届き読んでおりました。
その論文の中のP11の表について疑問があるので、質問したく思い、書き込ませていただいてます。
前提が、取締役A、代表取締役B(株主総会決議により選定)です。
その前提において、
株主総会でBを解職する決議なし→直接or間接選定方式でAを代表取締役に選定、という事実が新たに生じた。

この場合に、「退任する代表取締役」の欄において、
BはAの選定の効力発生日に退任、とあるのですが、
次の「就任・継続する代表取締役」の欄では、
A→選定の効力発生日に就任。就任登記必要。
B→代表取締役たる地位を失わない。重任登記不要。

とあります。
退任なのに、代表取締役の地位を失わない、とはどういうことなのでしょう?
この場合、Bの解職の決議がなされていないのですから、そもそもBは退任しないと思うのですが・・・
投稿 ユーノス | 2006/11/10 19:11:11
A2
今、手元に商事法務がないので、正確なことはいえませんが、その事例では、Bの解職決議がない場合には、Bは退任しません。

Q3
今日は非公開会社が譲渡制限規定を廃止し、公開会社になった場合の役員(取締役・会計参与・監査役)の任期についてご教授ください。
332条4項3号によれば、「その発行する株式の「全部」の内容として・・株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」の場合、任期満了すると規定されています。この点に関し、「全部」の文言を反対解釈して、「一部」の公開の場合は任期満了しないのでしょうか?それとも「株式の全部の内容」の文言に着目し、一部公開にする場合でも公開会社になるので(2条5号参照)、任期満了するのでしょうか?後者の解釈を妥当と考えますが如何でしょうか?(後者の解釈を当然と考えておりましたが、ある書籍にこの点につき疑義がある旨の見解を示唆されている著者の方がいらしたので質問させて頂きました。)もし前者の解釈をとられる場合は理由も教えていただければと思います。また、万が一、取締役の任期の解釈と監査役の任期の解釈で異なる見解を取られる場合はその理由も教えてください。(同じような規定の仕方で、同じ趣旨と思われるので、同じような解釈を取られるとは思いますが、念のため。)
投稿 NK | 2006/11/11 2:32:38
A3
非公開会社が一部の株式について譲渡制限を廃止する場合も、任期は満了します。

Q4
会社法585条1項の解釈についてお教えください。
合名会社合資会社において、出資は必ずしも設立段階または成立後の入社時に履行されなくともよく、履行の時期・程度は自由に定めることができますよね。
 それでは 582条1項の 「その出資をすることを怠ったときは」とは、上記の自由に定めた履行の時期・程度を基準として怠ったと
解釈するのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/11 20:07:30
A4
会社が定めた履行時期に履行しなかったときのことを規定しています。

Q5
株主割当てについてお伺いいたします。
会社法202条1項2号の「申込期日」と199条1項4号の「払込期日」とを同じ日として定めることは可能でしょうか?
同じく株主割当てで、202条1項各号の事項を定める決議日と同項2号の「申込期日」とを同じ日とすることはできますか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/11 23:57:02
A5
申込期日と払込期日を同じ日とすることはできると思います。
決議日と申込期日は、202条4項の通知との関係をどう考えるかですね・・。ちょっと保留します。

Q6
会社法の下で,持分会社にも資本制度が採用されていることが前提とされている条文がありますが(資本金の減少についての620条以下),持分会社の資本の減少とか資本の増加は,いつの時点で生じたと考えるべきなのでしょうか?有限会社法のときのように,変更登記をした時点で生じるのでしょうか?
A6
効力発生日と定めた日です。
登記は基準になりません。

Q7
会社法199条5項では「募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。 」とされていますが,株主に新株引受権が与えられる場合に,その一部を内容の異なる株式を発行した場合,その発行価額を他よりも高額に設定してもよいのでしょうか?
A7
問題の意味がわかりません。株主に株式の割当を受ける権利を与えるのならば、内容の異なる株式を発行するということはないはずですが。

Q8
新株予約權証書が発行される場合,株式の申込をなす者は,申込を新株予約權証書によるか,株式申込証によるかを選択することができるのでしょうか?
投稿 冥王星の帝王 | 2006/11/11 23:59:38
A8
新株予約権の行使の場面のことを質問されているのでしょうか。
証券発行新株予約権を行使するときは、証券を株式会社に提出しなければいけません。
株式申込証なるものは、会社法には存在しません。

Q9
サミー先生、「株式会社」の内容について教えてください。色々な箇所で「株式会社は、・・・○○しなければならない」と規定されていますが、この場合の「株式会社」とは、株主総会、取締役会、代表権のある取締役、又は、代表権のある執行役のみを内容とし、監査役や各委員会、代表権のない取締役、従業員等は含まれない、との理解で宜しいでしょうか?
投稿 NK | 2006/11/12 23:55:39
A9
 条文の内容によります。たとえば、107条2項だと、定款変更ができるのは、株主総会だけですし、115条だと、措置の内容によって、決定機関・執行機関が異なります。

Q10
会計監査限定監査役(「小監査役」)についてご教示ありがとうございました。
ただ、「そもそも、小監査役に、何のために取締役会に出席させようとするのか、意味がわかりません。」というのが理解に苦しんでいます。
以前にもお書きしましたが、千問P366の「監査役の監査の範囲を会計に関する事項に限定した会社の監査役であっても、自らの権限の範囲内において、報告聴取徴収権や子会社調査権等を有しており(389条)、当該権利行使のために取締役会への出席が必要となる場合もありうる。」との関係です。
書面取締役会制度への異議申述権や、取締役会への招集通知発送について、何度か質問させていただき、その度にご教示いただき、大変にありがたかったのですが、その根本的な問題意識としては、「小監査役の権限が拡大する場合もありうる」ためだと認識していたからです。取締役会の招集通知を受領できなければ、取締役会への出席の機会そのものがなくなってしまい、結果として、小監査役の権限を奪ってしまうことになるため、それを防止するために、会社自治権の範囲としての任意的定款規定(無効と解されてしまいましたが)で、小監査役の権限を補完しようと考えたのです。
千問P366の当該記述は、ご見解変更ということになるのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/13 10:08:01
A10
 千問も、小監査役に取締役会への出席権まで認めたものではありません。報告徴収権を行使する場合に、取締役会が小監査役を任意に呼んで、小監査役がその場で徴収する場合もあるということを書いているだけです。
 したがって、見解を変更しているわけではありません。

Q11
ストックオプション(取得条項付新株予約権)と287条の関係で悩める仔羊をお救いください。
「新株予約権の行使の条件」
 発行時において当社の取締役および従業員であった者は、行使時においても当社の役員または従業員であることを要する。
「会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件」
 前号に規定する条件に該当しなくなったため新株予約権を行使できなくなった場合は、当社は当該新株予約権を無償で取得することができる。
 上記の新株予約権において、新株予約権者が退職した場合、ただちに287条が適用されてしまうのでしょうか?私見としては、287条は未来永劫行使する可能性が消滅した場合(例えば、行使期間の経過)に適用されると考えており、本件の場合は、退職者が復職する可能性が残っていますし、会社が自己新株予約権を取得後第三者に譲渡すれば行使は可能ですし、287条は適用されないのではないかと思うのですが。
ものの本には、ストックオプションで退職者が出た場合に287条が適用される旨が書かれていることが多いのですけど、そちらが正しいのでしょうか。だとすると、本件新株予約権の取得条項は無効ということになりますか?これが正しいとすると、自己新株予約権についても、行使できない以上取得後即消滅するとなるべきで、矛盾する様な気がしてならないのですが。
投稿 みなと | 2006/11/13 17:19:55
A11
 頻出の質問ですが、そのような条項では、287条が適用されるとは限りません。
 取得後、自己新株予約権を従業員に交付すれば、行使できるようになるような条項の場合には、287条は適用されません。

Q12
 事業譲渡に関する467条第2項(469条第3項の通知の内容を含む)の「株式に関
する事項」とは、単に自己株式を取得することを説明すればよろしいのでしょうか?
 155条10号では、事業を譲り受ける場合には自己株式を取得できることとなっていますが、この規定との関連でしょうか?
投稿 橋爪伸由
A12
 自己株式の種類・数等株式に関する事項を説明してください。

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2006年11月10日 (金)

会計監査限定監査役

 昨日,入門第3回を一生懸命書いて,夜にアップしようと思ったら,うっかり,その原稿に別の文書を上書きしてしまい,消え去りました。
 私は,そのまま気が遠くなり・・・・起きたら朝でした(嘘です)。
 いずれにせよ,同じものを,すぐに書き直す気になれなかったので,今日は,気分転換に
   会計監査限定監査役(長いので「小監査役」といいます)に対する通知
についてお話ししましょう。

 酔っぱらいさんから,次のような質問をいただきました。
「前回のA4について。出席権が認められないことと定款の定めが無効であることの関係が全然分かりません。出席権と通知の定めは無関係だと思います。決議に瑕疵を生じることは定款の定めを無効とする理由にはならないと思います。
」                                                         

前回のQ4は,
 「小監査役に取締役会の招集通知をしなければならないという定めを置くことができるか」
という問題でしたが,取締役会の招集通知は,取締役会に出席する人のための通知なので,出席権のない人には,取締役会の招集通知を発する義務はありません。

 それにもかかわらず,定款で,取締役会に出席することもできない小監査役に対する通知を義務づける定めを置くということは
  「定款で,法律の定める招集手続きよりも重い手続を課してよいのか」
という問題になると思います。

 定款で,どのような事項を定めることができるのかということについては,以前の記事で47thさんと議論をさせていただきましたが,私達は,会社法に規定している事項については,会社法が,文言上,定款で別段の定めができることを明示しているかどうかということで判断しています。

 そして,取締役会の招集手続を定めた,368条は,定款で別段の定めをすることを許容していません。

したがって,設問に対する答えは,
 定款で,368条に定められた者以外への招集通知を義務づけることはできない
ということになります。

 では,
   なぜ,そのような定めをすることができないのか
というと,そのような定めを有効だとすると,その通知をせずに取締役会を開催すると手続に瑕疵が生じ,決議が無効となるおそれがあるため
  取締役会の開催を法定の手続きよりも,困難にしてしまう
ことになるからです。
   ちょっとくらい面倒くさくなってもいいじゃないか。
と思うかも知れませんが,例外を一つ許せば,どこまでが限界か,不明確になります。
 「取締役会を開催する場合には,株主全員に通知しなければならない」という定めや
 「港区のサミーさんに内容証明郵便で通知しなければならない」という定めなど,
そのような定めに違反した取締役会の決議が有効かどうかをいちいち考え始めると,きりがありません。
 そもそも,小監査役に,何のために取締役会に出席させようとするのか,意味がわかりません。まして,出席権のない小監査役に,招集通知を送って,何の意味があるのかもよく分かりません。

 そういうことを考えていくと,条文に書いてない以上,そのような定めは無効と解するのが妥当であり,どうしてもやりたければ,法律の外の世界で,通知すれば十分だと思います。
 
 ただし,小監査役に対する取締役会の招集通知をしたり,取締役会に出席させたりする場合には,一つ気になることがあります。

 それは,そのようなことをやれば,当該監査役が,事実上,業務執行の監査権限を有するものと見られ,会社が倒産したりしたときは,第三者に対する任務懈怠責任等を追及されるおそれがあるということです。

 会社法389条が,非公開会社に会計監査権限の定めを認めているのは
   うちの嫁さんを監査役にして,給料を払いたいけれども,会社が潰れたときに,嫁さんにまで責任を負わせるのは忍びない。
というニーズに応えるためです。

 旧商法では,監査役の設置が義務づけられていましたから,監査役の権限を業務監査にも広げる改正を行うときに,監査役を奥さん,子供,親戚にしている中小企業から大変な反対があり,小会社の監査役については,会計監査権限しか有しないという政治的な決断がされました。

 会社法の制定のときも
  監査役が任意設置になったので,監査役は,常に,業務監査権限を持つことにして,それが嫌なら監査役を置かないという方が合理的ではないか?
という話も持ち上がったのですが,結局は
  既に監査役として給料を貰っている人もいるんだから,現状維持じゃなきゃ困る。
という大きな声があったので,非公開会社については,定款で小監査役にしてもいいという政治的な決断が下されました。

 もちろん,小監査役も,仕事を全くしないわけではなく(きっと,そうだと願っています。),会計監査を行う職務は負っています。

 ただ,小監査役には,381条から386までの規定が適用されないため,取締役会への出席権もなく,会社を代表して訴訟をすることも,違法行為の差し止めもできず,不正行為を見つけたときの報告義務すら課されていないので,小監査役は,定時総会前の会計監査以外には,ほとんどやることがないのです。
 というよりも,やることがないようにして,責任を負わないように配慮しているのです。
 
 それにもかかわらず,定款で,取締役会に出席権・出席義務を定めたり,招集通知を送ることを定めれば,
  その定めは,何のために小監査役を取締役会に出席させるのか
という疑問が生じ,それは,とりもなおさず
  小監査役という名目にはなっているが,実質は業務監査権限があるんだろう
ということになると思います。
 それでは,せっかく会社法が,責任軽減のために置いた小監査役の制度が無になってしまいますよね。

 また,389条の定めを廃止するときには,小監査役の任期が終了しますが(336条4項3号),これは,小監査役の責任が重くなることに配慮したものです。
 ですから,もし,定款で,小監査役に法定の権限以上のものを与えることを認めるとするならば,
  その定款の変更時に任期満了にしないとまずい
はずですが,そのような規定はなく,むしろ監査役の任期は,定款をもってしても短縮することはできませんから,任期との関係でも,小監査役の権限を強化する定めを有効とするのはムリが生じます。
                                          
 以上のような観点から,招集通知の受領権を含め,小監査役の権限を増やすような定款の定めは無効であるというのが結論です。
 くどい感じの説明になってしまいましたが,酔っぱらいさん,分かっていただけたでしょうか。

(追伸1)
 酔っぱらいさんから「前回のA5について。お答えにならないのは自由ですが、政治的な問題という意味が全然分かりません。政治的な問題だといって裁判所が解釈を控えることができるでしょうか。」というコメントをいただきました。

 私が政治的な問題といったのは,この部分は,議員立法によるものなので,私達が,うかつに解釈を披露すると,発案者と違う解釈を喧伝する可能性があり,国会と法務省の関係という政治的な問題に発展するおそれがあるということです。
 政治的な問題だといって,裁判所が解釈を控えることはできませんが,その代わり,国会から当該裁判所に問い合わせがいくこともありません。
 それに対し,行政は,議員立法については,その意思を最大限に尊重しなければならないので,裁判所とは,立場が全く違うということをご理解いただきたいと思います。
 ちなみに,裁判所も,裁判を起こさない限り,解釈を示してくれませんので,電話やメールで,とりあえずの解釈を答えてくれる行政の方が親切といえば親切です。

(質問コーナー)
前回のQ1の補足
施行規則27条4号により自己株式を取得できる場合には、他社のSOの行使の対価として自己株式の交付を受ける場合、取得条項付SOの取得の対価として自己株式の交付を受ける場合のほか、他社の取得請求権付株式の対価として自己株式の交付を受ける場合も含まれますか。契約によるコールオプションの場合どうでしょうか。施行規則2条3項14号の定義には含まれるのではないかと思いますがいかがでしょう。
次にこの場合、分配可能額規制を受けないように思いますがいかがでしょうか。
投稿 ik | 2006/11/06 0:07:35

この問いに対して,私が
「取得請求権を行使した場合に対価としてA種株式の交付を受けることができるB種取得請求権付株式ならば,「新株予約権等」に該当しそうですね。
新株予約権以外で,契約によって株式の交付を受けることができるコールオプションが可能ならば,「新株予約権等」に該当すると思います。」
と答えたところ,仲間から
 「ikさんは,取得請求権を行使した対価として,自己株式を受けることができるかということを聞きたいのではないんでしょうか」
と指摘を受けました。
 私は,「新株予約権等」に該当するかという質問だと思って答えていたのですが,もし,ikさんのご質問が
「会社が,取得請求権を行使したり,コールオプションを行使して,自己株式を取得することができるか」
ということであれば,答えはNOです。
 27条4号は「当該他の法人等が当該新株予約権等の定めに基づき取得することと引き換えに」とあり,これは,当該新株予約権等に取得条項が付されている場合のことを意味します。
 ちなみに,昨日の私の答えは,「株式を対価とする取得条項付株式やコールオプションも新株予約権等に該当するから,それに取得条項が付されていて,その取得の対価として自己株式を取得することはできる」という意味ですので,誤解が無いようお願いします。

A1
11/8のA4に関連して、会社法355条の取締役の忠実義務について、ご教示ください。
定款の定めが無効と解された場合、定款規定を無視して、会社法370条の取締役会の決議の省略において会計監査権限限定の監査役に異議を述べさせる機会を与えなかったり、取締役会の招集通知を行わなくとも、取締役が忠実義務違反を負うことはないのでしょうか?
もしあるとするならば、事実上、会社内部においては、定款規定は効力が生じることになると思うのですが、いかがでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/08 10:39:09
A1
 定款の定めが無効ならば,その無効な定めに取締役が拘束されることはありませんので,忠実義務違反にはなりません。
もっとも,定款の定めが無効かどうかは,明らかではない場合もあるので
 「憲法違反の法律に行政は従う義務があるか」
という論点と同じく,
 定款の定めに重大かつ明白な瑕疵がある場合には,取締役は,その定めに従う義務がないが,そうでない場合には,従う義務がある
という考え方もありうるかもしれません。
 もっとも,裁判で無効とされた定款に従わなかった取締役の責任を追及するのは,困難でしょうから,あまり実益がないような気がします。

Q2                   
【入門】株式会社と持分会社の
3 株式会社とは、何か。の
7段落目最後の行の
「もし、その会社が公開会社ならば、取締役会という業務執行者の集まりにおける多数決で決めることができます(199条3項)。」
という文章において199条3項が引用される理由がよくわからないのですが、
「・・・多数決で決めることができます(201条1項。ただし199条3項を除く。)。」ではまずいですかね?
投稿 やっぱり会社法初心者 | 2006/11/08 12:32:55
A2
すいません。もちろん,それで結構です。当初,「199条3項以外の場合」と書いていたのですが,ちょっとした拍子に消してしまっていました。

Q3
補欠の役員の選任決議について質問させてください。
役員の改選が全くない定時総会で,329条2項の補欠役員の選任決議をすることはできますか?
既に選任されている補欠役員の選任の効力は,原則としてその定時総会までなので,役員の改選が全くない定時総会でも当然に補欠役員の選任決議をすることができるものと考えていました。ところが,何気なく条文を(文字通り)眺めていると,2項の「前項の決議をする場合には」という文言が目に入り,1項の役員の選任決議の際に限られるようにも読めました。
2項の「前項の決議をする場合には」とは何を意味するのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
投稿 たつきち | 2006/11/08 12:36:27
A3
「前項の決議をする場合」という文言は,役員も選任していないのに,補欠役員を選任することはできないということを表したもので,既に役員の選任決議をした場合も含まれています。したがって,役員の選任決議をしない総会で,補欠役員を選任することも可能です。

Q4
前回のQ6で社外取締役に関してのご回答ありがとうございます。
問題意識としては、
①社外取締役としての登記は、911条3項21~23号の場合のみ義務づけられるので、それ以外の場合には、社外取締役としての登記はすぐには必要ないのでしょうか?
②仮に、登記は必ず必要だったとしても、当該取締役は業務執行をしていないので、いわゆる非常勤取締役となり、任務懈怠とはならないのではないか?
ということです。
社外取締役の定義は分かるにしても、社外取締役の業務(任務)がはっきりせず、頭が少し混乱しています。
よろしくお願いします。
投稿 ネットくん | 2006/11/08 12:38:57
A4
義務づけられている場合以外には,社外取締役の登記は不要です。
ちなみに,社外取締役には,職務はあっても,業務執行はできません(したら,社外ではなくなります)。
社外取締役の職務は,取締役会における議論・議決や不正行為を見つけた場合の報告等,会社法で「取締役」がやらなければならないことです。

Q5
469条3項及び4項について質問させてください。
469条3項は 事業譲渡等をしようとする株式会社は 株主に対して通知しなければならない 旨の原則を定めています。
 これに対して 469条4項は 通知を公告をもって代えれる例外を定めています。具体的にあげるならば 4項1号では 事業譲渡等をする株式会社が公開会社である場合 4項2号では 事業譲渡等をする株式会社が第467条第1項の株式会社の決議によって事業譲渡等にかかる契約の承認をうけた場合 を要件にしています。
 この様な例外(469条4項)の趣旨(なぜ原則に対して例外となりうるか等)をご教授ください。
投稿 maru | 2006/11/08 16:09:32
A5
1号は,公開会社では,会社の承諾なく,株式の譲渡ができるので,株主名簿に記載されたものに通知するよりも,公告で,株主名簿に記載されていない現在の株式の保有者に公告した方が適切な場合があるからです。
2号は,すでに株主総会の招集通知で,株主に通知しているので,再度,通知をする必要性が少ないからです。

Q6
828条2項の提訴権者について質問させてください。
828条2項6号から12号までに 組織変更・組織再編行為関係の訴訟事件における提訴権者が あげられています。そして6号から11号までをみると 承認をしなかった債権者があがっています。
ところが12号をみると 承認をしなかった債権者があがっていません。
 なぜ 12号にだけ 承認をしなかった債権者があがっていないのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/08 16:12:16
A6
 ごめんなさい。ただ,謝るのみです。

Q7
監査役を1名しか置かない場合でも、そのものを社外監査役として選任できるが、そのものは常勤でなければならない。という認識でおりますが、まちがいないでしょうか?間違いなければ、会社(非公開、中会社)の監査役が税理士である場合、月1度程度の会社へ出社で常勤として認められるのでしょうか?宜しく御願い致します。
投稿 がるれお | 2006/11/08 16:43:05
A7
 監査役は,常勤でなくてもよいです(監査役会で選定した常勤監査役以外は)。

Q8
 株主総会の招集権者(296条3項)について質問させてください。
 最高裁判例を見ると、株主総会決議の取消事由として、代表取締役以外の取締役が招集した点に招集手続に瑕疵があり、適法な招集手続を経ていない株主総会は法律上の株主総会ではない、というのをよく見受けます(最判昭45・8・20、最判昭60・12・20など)。これらの判例について、旧法下での招集権者は「代表取締役」であったが(これも明文がないのでよく分かりません)、新法では、296条3項が単に「取締役」と規定しているように、代表取締役以外の取締役も招集権者ということでよろしいのでしょうか。
 試験上、代表取締役でない取締役が取締役会決議(298条4項)を経て株主総会を招集した場合に、今でも株主総会決議の瑕疵として争えるのか、という点が疑問なので、質問させていただいた次第です。
投稿 ふみん | 2006/11/08 18:12:57
A8
 株主総会の招集は,業務執行ではないので,代表取締役以外の取締役でも招集できます。

Q9
先日は会計監査人の機関性についてお教えいただきありがとうございました。
さて,その件で追加質問ですが,今日江頭先生の教科書を読んでいたら,以下のような記述に出くわしました。
「会計監査人の会社法上の地位 会計監査人と会社との関係は,会計参与の場合に類似するが,計算書類の作成権限を有する会計参与と異なり,『役員』には含まれない。したがって,会社の『機関』とも解されていない」(江頭・株式会社法541頁)
この記述によると,会社法326条の規定にもかかわらず,江頭先生は実質的な機関概念に照らして,会社法上も会計監査人は機関でないという説をお取りになっているということでしょうか。
投稿 T.I.ネットワーク | 2006/11/08 18:29:02
A9
 江頭先生がどうお考えかはわかりませんが,「役員」と「機関」は,違います。
 たとえば,執行役は,役員ではありませんが,機関です。
 同じように,会計監査人も「株主総会以外の機関の設置」の節に置かれていることから明らかなように,会社法では「機関」といて取り扱っています。
 その理由は,会社法100問をご覧下さい。

Q10
会社法施行規則22条において,「法第133条2項に規定する法務省令で定める場合」を定めていますが,
同条2項は,「前項の規定にかかわわず,株式会社が株券発行会社である場合には,法第133条2項に規定する法務省令で定める場合は,次に掲げる場合とする。」と規定しており,株券発行会社である場合には,同条1項の適用は排除されているように思えます。
しかるに,同条1項9号においては,株券喪失登録者について規定がなされています。
株券喪失登録ができるのは,株券発行会社のみである(会社法221条)ことを考えると,規則22条1項9号は,どのような場合を規定しているのか疑問に思い,質問させて頂く次第です。
投稿 正宗 | 2006/11/08 19:22:45
A10
 22条1項9号は,株券発行会社の間に株券喪失登録をした者がいる場合に,1年を経過しないうちに,株券廃止会社に移行してしまった場合を想定しています。その場合,株券廃止会社になった後でも1年を経過したら,単独で名義書換を請求することができます。

Q11
1.書面決議について(取締役会の決議の省略のことですよね?)
①メールの同意文書を保存する場合,電磁的記録を保存するか,メールを
 プリントアウトしその紙を保存するかのどちらかを行えばOKということで
 しょうか?今までも類似の質問があったのですが,明確に理解できません
 でしたのでお願いします。
Q11
 メールで同意したのならメールです。
 ただ,メールをプリントアウトした文書で意思表示をしたという場合には,プリントアウトです。

Q12
②複数の提案があった場合で,その中の一部につき取締役もしくは監査役の
 同意が得られなかった場合,同意しなかった役員名や理由を明示する
 必要はあるのでしょうか?また,当該提案があったこと自体を議事録に
 記載する必要はないのでしょうか?
A12
理由は不要です。
決議の省略ができない場合だから,議事録自体作成する必要がありません。

Q13
③ 代表取締役の選定議案を書面決議で行う場合,選定だけなら出席役員の
 記名押印は不要だが,就任登記も考えているなら記名押印はしないと
 いけない,という結論でよいでしょうか?
A13
 取締役会設置会社は,代表取締役の就任承諾が必要なので,その取締役会決議の議事録をもって就任承諾としたければ,記名押印が必要です。

Q14
事業報告における「会社役員の状況」で、会社法施行規則121条6号にある「当事業年度中に辞任した会社役員」について、ここにある「辞任」については「前回の定時株主総会で辞任した」役員も対象とされているのでしょうか?
前提として、同119条2号で「前回の定時株主総会の翌日~期末までの役員」が開示対象となる旨規定されていますので、「前回の定時総会で辞任した」役員の場合には開示対象外と考えていますが、いかがでしょうか?
投稿 naga | 2006/11/09 10:50:30
A14
前回の定時総会で辞任した役員は,含まれません。

Q15
持分会社を作ってみたいと思っています。
法590条3項の「持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。」の「常務」とはなんでしょうか。ほとんど使わない言葉なので、しっくりきません。
日常業務、でしょうか。
投稿 Junior Comptroller | 2006/11/09 15:34:40
A15
日常業務のことです。

Q16
こんにちは。定款の変更について、前々から疑問だったことを質問させてください。
まず、設立時に、株式会社の場合、公証人の認証をうけて定款を確定しますよね。その後、会社を運営していく過程で定款の変更をした場合、実際問題として、定款の書いてある紙に赤線でもひいて書き直すのでしょうか?大幅な変更をした場合、真っ赤っかですね。それとも一から作り直していいんでしょうか?
変な質問ですみません。よろしくお願いします。
投稿 ひよこ | 2006/11/09 16:42:20
A16
定款には,「書面」という意味と「ルール」という意味の二つがあります。
定款の変更とは,「ルール」の変更なので,そのルールが変わった場合に定款という「書面」を一から作り直すことは,何も問題ありません。

Q17
株主への利益供与の責任についてご教示ください。
①近々、会社が、その株主Aと不動産の賃貸借契約を結ぶ予定です。その賃借料(賃貸料)の設定には気をつけたほうがいいでしょうか?
賃貸料(賃貸料)が近隣相場に比べて不当に高い(安い)場合、株主への利益供与として取締役が責任を問われることはあるでしょうか?
②会社が、その株主Aの配偶者が代表取締役を務めるB株式会社と上記のような不当に高い(安い)賃貸借料で契約する場合でも、株主への利益供与として取締役が責任を問われることはあるでしょうか?
③また、このような株主への利益供与の問題を考える際には、その株主の議決権比率は無関係でしょうか?(たとえば、上場企業で、その1単元の株式しか持たない株主の場合でも留意する必要があるのでしょうか?)
投稿 コイヘルペス | 2006/11/09 22:19:30
A17
①細心の注意を払うべきです。不当に安い場合には,株主の権利に行使し,利益を供与したものと推定されます。
② 株主に直接利益を供与しなくても,利益供与の責任を問われることはあります。
③ 議決権比率は全く関係ありません。
 
Q18
合同会社について質問します。よろしくお願いいたします。
合同会社で既存社員から社員以外の者への持分一部譲渡による加入の場合に、一部譲受人が社員として加入する時期は法604条2項により定款変更をした時だと思います。
同3項は、「新たに社員となろうとする者はが定款変更をしたときに出資に係る払込又は給付を履行していないときは完了した時に、合同会社の社員となる」と規定していますが、この規定は持分譲渡による加入の場合にも適用がありますか。
例えば11月10日譲渡契約及び定款変更、11月13日譲渡金の支払いの場合に適用がなければ10日に社員となり、適用があると13日に社員になると思いますので。
投稿 keipyon | 2006/11/10 11:44:40
A18
譲渡人に譲渡金を渡したかどうかは,社員になる時期とは関係ありません。設立で言えば,11月10日に社員となります。

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2006年11月 8日 (水)

【入門】株式会社と持分会社

 入門の第2回目は、「株式会社と持分会社の基本的な違い」について、お話しします。

1 定款とは何か。
 前回、会社というのは、人が事業をやろうとするときに作る「貯金箱ロボット」(法人)だというお話しをしました。

 このロボットは、神様や国が無理矢理作り出すものではなく、普通の人が、自分のために、その意思によって作るものです。

 ですから、会社を設立する手続きは、会社を作りたい人が「どういう会社を作りたいのか」という意思を明らかにすること、つまり、会社の設計図である「定款」を作ることから出発します。
 会社法の26条1項、575条1項を見ていただけると、「定款を作らなければならない」という条文が、株式会社と持分会社のそれぞれ一番最初あたりに規定されているのは、そのためです(条文は、テキトーに並べているのではなく、法律を作った人が、なるべく分かりやすくなるように、すごく考えながら並べているので、「どうして、こういう順番に並べられているのか」という意味を考えながら条文を読むだけでも、力がつきます)。

 先ほどの2つの条文を見ても分かるとおり、株式会社であれ、持分会社であれ、最初に作る定款(会社法の文言にはありませんが「原始定款」と呼ばれています)は、社員になろうとする人(「発起人」も社員になろうとする人の一種です)の全員一致によって決められます。
 契約が当事者の意思表示の一致によって成立するのと同じように、原始定款も、社員となろうとする者の全員の意思の一致が必要だとされているのです。

 なお契約は、口約束でも成立しますが、定款は、書面で作成しなければ効力を生じないというのは前回説明しました。共同事業をするときは、書面にしておかないと、どんな内容の合意があったのかが不明確になるからでしたよね。

2 なぜ2種類の会社があるのか。
 さて、今、見てもらったとおり、会社法は、
  「株式会社」と「持分会社」
という2つの会社の設計図を用意しています。
 なぜ、会社法は、2種類の会社を用意しているのでしょうか?
 もし皆さんが、会社法の立案担当者ならば、会社法で、どんな会社を用意しようと考えますか?

 会社法を作るにあたっては、「実際に、会社を作ろうとする人が、どんな会社を欲しがっているのだろうか?」というニーズを把握したり、「他の国には、どんな会社があるのだろうか?」という調査をして、誰もが使いやすいような会社の形態を考えなければなりません。

 もちろん、人それぞれにニーズは違いますし、世界の制度を見ても、国が違えば、会社の形態もぜんぜん違います。日本の会社法は、各国の制度をごちゃまぜにしつつ、日本の特殊事情を加味して改正を重ねてきたので、特殊だという人もいますが、ヨーロッパという同質の社会ですら、各国の制度がばらばらなので、最近、EUで「ヨーロッパ会社」というEU共通の会社形態を作ることができるようにしたくらいですし、アメリカも州ごとにバラバラです。会社は、現代社会の日常生活に密着した存在であり、地域が違えば、必要とされる制度も違うので、会社法の中身が違うのは当たり前です。

 それでも、「どんな会社が必要とされるか」という点について、それなりに共通の感覚というものは存在していて、ざっくり言えば、少なくとも
(1) 家族や仲間同士でずっと運営していきたいクローズドな会社(組合型)
(2) 事業がうまくいったときには、社員を増やして、会社の規模をどんどん大きくしていきたいというオープンな会社(株式会社型)
の2種類の会社は用意するのが、普通のようです。

 分類について言えば、この他にも
(1) 社員が、自分で会社を経営したい会社
(2) 社員が、自分では、会社経営にタッチしたくない会社
という分類や
(1) 社員が、会社の責任を肩代わりしてもよいと思っている会社
(2) 社員が、会社の責任を肩代わりしたくない会社
という分類もあります。

 しかし、そうした分類を組み合わせて、一つ一つ「何とか会社」と名前をつけていくと、無限に会社の名前が増えていく(例えば、上の3種類の分類を組み合わせると、2×2×2=8通りの会社の名前ができてしまいます)ので、会社法は、クローズドか、オープンかという最初の視点をもとに「持分会社(=組合型)」と「株式会社(=株式会社型)」という2種類の会社を用意しています。
 そして、その2種類の会社について、それぞれに相応しい「社員と経営の関係」や「社員の責任」を定めているのです。

3 組合型の会社とは、どんなものか。
 では、どんな制度を用意すれば、組合型の会社になるのでしょうか?

 例えば、松真さんと湯水さんの2人が、意気投合して、出版業を営む会社を作ることになったとしましょう。

 松真さん湯水さんが、どんなときに組合型の会社を作りたくなるかというと、次のような場合が考えられます。
 ① 松真さんと湯水さんは、それぞれ1億円ずつ出資して、それによって会社内のパワーバランスが保たれているので、どちらかが追加出資して影響力を強めることをできないようにしたい
 ② 松真さんの方が多額の出資をしているが、湯水さんは、技術者として会社に多大な貢献をするので、利益が出たときの配当の割合は、出資額にかかわらず、折半にし、その割合を絶対に変えたくない
 ③ 松真さんと湯水さんは、ほとんど愛に近い感情を持っているため、松真さんが別の男性を社員にしようとすると、湯水さんが嫉妬して、会社の経営に支障を来す。

その他にも様々な理由で、組合型にしたい場合があると思いますが、そのようなニーズを実現するためには
 すべての社員の同意がない限り、会社の基本的なルールや社員の地位を変更することができない
という制度を作ればよいでしょう。

 そこで、持分会社では、637条で、定款の変更をするためには、原則として「総社員の同意」が必要であると規定しているのです。

3 株式会社とは、何か。
 2で述べた持分会社の組合的な規律は、各社員の既得利益を保護するという点では優れていますが、逆に言えば、一人でも天の邪鬼がいると、会社の基本的な事項が全く変更できないという「硬直性」を持っているということでもあります。

 例えば、松真さんと湯水さんと法曹川さんという3人が、なけなしの退職金から100万円ずつ出資して、会社法関係の出版業を営む会社「正直法務」を設立したとしましょう。

 3人は、お互いに「松真社長!」「法曹川副社長!」「湯水専務」と肩書きをつけてみたものの、従業員を雇うお金がないので、三人で細々と商売をしていましたが、ある日、会計関係の大手出版社の「ワクワク・ブックス」が、法律分野に進出するためのノウハウを手にいれるため、正直法務に対して
 「お宅に3000万円出資させてもらえないか。」
と申し入れてきました。

 法曹川さんと湯水さんは、明日をも知れぬ赤字会社である正直法務の将来を憂いていたので喜んだのですが、松本さんだけは
「俺は、いつまでも社長と呼ばれたいから、ワクワクの傘下になんか入らないぞ!」
といって反対しました。
 
 こんなとき、正直法務が持分会社だと、社員の一人である松本さんが反対している限り、新しい社員を追加することができませんが、それでは、正直法務は、松本さんのワガママのために潰れてしまいます。法曹川さん達としては、松本さんに
 「社長と呼ばれたいなら、飲み屋にでもいけ!」
と言いたいところです。

 そこで、会社の基本的なルールや社員の加入などを、「全員一致」ではなく、
 「多数決」で変えられる会社
が欲しいというニーズが出てきます。そのニーズに答えるのが
   株式会社
なのです。

 先ほど説明したように、株式会社でも、原始定款は、発起人の全員の同意のもとで作成しなければなりませんが、その原始定款は、設立後は、株主の集まりである株主総会の多数決(ただし、特別決議)で変えることができます(466条、309条2項11号。なお、設立前でも、創立総会の決議で変えられます)。
 また、株式会社の社員を増やす手続きである「株式の引受人の募集」も、株主総会の決議で決めるのが原則であり(199条2項、309条2項5号)、もし、その会社が公開会社ならば、取締役会という業務執行者の集まりにおける多数決で決めることができます(有利発行(199条3項)以外の事項に限ります。201条1項)。

 ですから、先ほどの例でも、正直法務が株式会社である場合には、株主総会又は取締役会の多数決で、ワクワク・ブックスを新たな株主として迎え入れることができるということになります。

 このように、株式会社には、株主構成を含め、会社の内外の変化に対し柔軟に対応することができるという特徴がありますが、例えば、株主構成を自由に変更するためには
(1) 株主の構成が変わっても、継続的な経営ができるように、所有と経営を分離する(所有と経営の分離)→株主の経営能力に頼らず、株主を無個性化する。
(2)株主が会社債権者に対して責任を負わない(間接有限責任)ことにして、資力という点においても、株主を無個性化する
という制度を採る方がよいわけで、そうした株式会社の各種制度との関連も、今後、勉強していくことにしましょう。

4 株式会社と持分会社の定款の違い
 最後に、株式会社と持分会社の定款の中身を比べてみて、上で述べたことが、どう影響しているかを見てみましょう。

  株式会社の定款には、少なくとも
 ① 目的=どんな事業をやりたくて、会社を作るのか。
 ② 商号=会社の名前
 ③ 本店の所在地=どの区市町村に本店を置くつもりか。
 ④ 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額=最初の会社財産の額は、いくらにするか。
 ⑤ 発起人の氏名又は名称及び住所
ということを定めなければいけないことになっています(27条)。

 これに対し、持分会社の定款(576条)では、株式会社の①から③までは同じですが、④⑤がない代わりに
 ⑥ 社員の氏名又は名称及び住所 
 ⑦ 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
 ⑧ 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準 社員がそれぞれ、どんなものを、いくら出資したか
ということを定めなければなりません。

 そこで、株式会社と持分会社と比べてみると、次のような違いがあります。

(1) 株式会社は、発起人以外の社員(株主)の氏名等は、定款に書かないが、持分会社は、すべての社員の氏名等を書かなければならない。
→ 株式会社は、株主を増やすのに定款変更はいらないが、持分会社では社員を増やすために定款変更が必要であり、総社員の同意がないと社員は増やせない。

(2) 株式会社は、株主の責任については書かないが、持分会社は書かなければならない。
→株主は、間接有限責任のものしかいないが、持分会社の社員には、有限責任社員と無限責任社員がいる

(3) 株式会社は、設立時に、各株主がいくら出資するかではなく、合計額又は最低額を書くが、持分会社は、社員ごとに書かなければならない。また、株式会社は、設立後に出資された額が増えても、定款を変更する必要はないが、持分会社は、設立後に出資が増やす場合には、定款に書かなければならない。
→株式会社のうち公開会社では、「株式の引受人の募集」は取締役会で決められるから、出資額が増加したときに定款の変更(株主総会の決議が必要)をしなければならないとするとまずいが、持分会社では、むしろ社員の全員が同意して出資額の変更しなければならないこととしている。

5 まとめ
 以上のように、株式会社と持分会社の定款の内容を比較するだけでも、それぞれの会社が、どんなものを目指そうとしているかがわかると思います。
 最後に本日のポイントは
1 持分会社は、組合的規律で運営される会社である。
2 持分会社では、原則として、定款の変更や社員の変更に総社員の同意が必要である。
3 株式会社は、定款の変更や株式の引受人の募集を株主総会の決議で行うのが原則である。ただし、公開会社では、株式の引受人の募集を取締役会の決議で行うことができる。
4 株式会社と持分会社の定款の記載事項が異なるのは、社員の構成を自由に変えられるようにするのか、硬直化させようとするのかという違いによるところが大きい。

 なお、法人の設立について、もう少し勉強したい方は、以前のブログの記事を参考にしてください。
 http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI67/pub_minji67.html

(質問コーナー)
Q1
施行規則27条4号により自己株式を取得できる場合には、他社のSOの行使の対価として自己株式の交付を受ける場合、取得条項付SOの取得の対価として自己株式の交付を受ける場合のほか、他社の取得請求権付株式の対価として自己株式の交付を受ける場合も含まれますか。契約によるコールオプションの場合どうでしょうか。施行規則2条3項14号の定義には含まれるのではないかと思いますがいかがでしょう。
次にこの場合、分配可能額規制を受けないように思いますがいかがでしょうか。
投稿 ik | 2006/11/06 0:07:35
A1
取得請求権を行使した場合に対価としてA種株式の交付を受けることができるB種取得請求権付株式ならば,「新株予約権等」に該当しそうですね。
新株予約権以外で,契約によって株式の交付を受けることができるコールオプションが可能ならば,「新株予約権等」に該当すると思います。

Q2
会計参与について質問させてください。
会計参与では 監査役と異なり、331条2項が準用されていません。
つまり 公開会社であっても 定款で会計参与を株主に限ることができます。なぜ このようなことが可能なのかその理由をお教えください。
投稿 maru | 2006/11/06 0:24:23
A2
会計監査人との並びです。会計参与と会計監査人は,職業専門家ですから,株主かどうかは,法的には関心の外にあります。

Q3
株式と社債と新株予約権の違いについて質問させてください。
株式は記名式での発行しか認められません。
これに対して、社債と新株予約権は 記名式および無記名式での
発行がみとめられています。このような違いはどうして生ずるのでしょうか?
また 記名式と無形名式のメリット ディメリットについても教えて頂けると嬉しいです。
投稿 maru | 2006/11/06 0:28:52
A3
 株式は,株主名を書かなくてよくなったので,厳密に言えば,記名式ではありません。かといって,無記名式でもなく,券面発行株式です。
 ちなみに,昔は,記名株式も無記名株式もありましたが,無記名株式は,あまり使われなかったので廃止されました。世界的には,無記名株式が主流のところもありますので,廃止する必要はなかったと思いますが,まあ,そういう時代でした。
 記名式と無記名式のメリット・デメリットは,権利移転方式の違いということでしょうから,1000問の表でも見てください。そのうち入門編でやりましょう。

Q4
定款自治の範囲について、ご教示ください。
監査役の権限が会計監査に限定されている非公開小会社が、会社法370条の定款の定めとして、「監査役が異議を述べたときを除く」と定めた定款規定が、無効であると解するのであれば、会社法368条の取締役会の招集通知を、当該監査役に発すべきとする定款の任意規定も、無効と解されてしまうのでしょうか?
当該監査役でも取締役会への出席が必要となる場合があるため、取締役会議事録への署名等の義務に係る会社法369条3項が、会計監査権限のみを有する監査役を除外していないことされています(千問P366)が、実務上は、取締役会の議案ごとに、当該監査役が出席すべき、施行規則107条・108条の議案かどうかを吟味したうえで、取締役会招集通知を発送しなければならないとすることは、酷な気がしていますが、いかがでしょうか?
それとも、「それが面倒なら、監査役の監査権限を会計監査に限定しなければいいじゃん」ということになってしまうのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/06 14:30:17
A4
定款でも,会計監査限定監査役に取締役会の出席権を認められませんから,通知を強制する定めは無効でしょう。
ちなみに,取締役会が任意に当該監査役を取締役会に出席させることは何も問題はありませんし,定めは無効でも,任意の通知を禁止するものではありませんから,通知をすればよいと思います。
 定めが無効とは,監査役への通知を忘れたからと言って,取締役会の招集手続きに瑕疵が生ずるわけではないという意味です。

Q5
役員の責任限定についてご教授ください。
例えば、責任限度額が3000万円の役員について、
①3000万円で責任限定契約を結んでいる場合、1月に4000万円の賠償問題がおき、2月に1000万円の賠償問題がおきたら、その取締役はトータル4000万円の賠償責任を負う(つまり通算で3000万円ではない)という理解でよいでしょうか?
②限定契約を締結していない場合で、同様の事例の場合、その取締役が免除決議を得られるのは1月にかかる1000万円という理解でよいでしょうか?(反対の解釈としては、トータルとして考えると、2月の1000万円は3000万円を超えている部分だから全額免除できるということでしょうか?)
投稿 ぴろゆき | 2006/11/07 14:31:01
A5
 難問です。これは,政治的な問題なので,答えは控えさせていただきます。

Q6
社外取締役に関して質問させてください。
定義は第2条第15号に書かれておりますが、ある会社では、文字通り社外において主たる業務に従事している人(例えば他社の代表取締役)を、同社の取締役に迎え数年が経過しました。また、登記はしておりませんでした。
①確認ですが、この様な場合でも、同条同号に合致すれば、つまり取締役になってから業務執行を行っていなければ、今からでもいつでも、同社の社外取締役としての登記は可能と考えてよろしいですか?
②また、社外取締役の登記は911条3項21~23号の場合のみ義務づけられますが、それ以外の場合に、当該取締役が社外取締役であると言うことを確認するには総会招集通知の、役員の状況の注記くらいでしょうか?
投稿 ネットくん | 2006/11/07 18:14:31
A6
① 問題意識がわかりませんが,2条15号に合致し,社外取締役が登記できる場合であれば,登記はできるでしょう。ただし,すでに懈怠ですが。
② 取締役の選任議案における株主総会参考書類には,社外取締役候補者であることは記載されます。

Q7
会社法施行日より前に解散している清算株式会社の、監査役の任期について教えて下さい。会社法480条2項では、任期の定めははないものと思います。そして、整備法108条では、なお従前の例による、となっています。会社法施行日より前の解散株式会社の監査役で、定款にその任期が「4年以内に終了するの事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」規定されている場合は、会社法施行後も、定款どおりの任期となるのでしょうか。または、そのような定款にもかかわらず、任期はなくなったのでしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/11/07 20:52:07
A7
整備法108条が適用され,定款によって任期が定まります。

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2006年11月 5日 (日)

【入門】会社法が定めていること

 会社法100問の具体的問題を検討する前に,
  「会社法が,どんなことを定めているいるのか」
ということをお話ししたいと思います。
 出口が分かっていると,今後の理解が早くなりますから。

1 会社法は,何を定めているのか。
 会社法というくらいですから,会社に関する法律だというのは,小学生でも分かります。
 しかし,会社に関連することが,全部,会社法に書かれているかというと,そうではありません。
 会社と従業員との関係は「労働基準法」「労働組合法」,上場株式等に投資する人の保護は「証券取引法(金融商品取引法)」,税金のことは「法人税法」などなど,会社に関連することで,会社法に定められていないことは沢山あります。

 では,会社法が何を定めているかというと,一言でいえば,                      
   ①会社
   ②社員(従業員ではなく,株主等の出資者のことです)
   ③債権者
 という三者の関係を,どう調整するかを定めている
ということになります。

 会社法を囓ったことがある人は,「もっと色々なことを定めているだろう」と思うかも知れませんが,
 「会社とは,何か」
 「人は,何のために会社を作るか」
ということを理解すれば,会社法は,上記の三者間の利益調整のための法律に過ぎないということを分かっていただけるものと思います。

2 会社とは,何か。
 では,会社とは,なんでしょう。

 「会社とは,何か」という話になると,普通,
  会社とは「営利社団法人」である
という難しい話をすることが多いのですが,この話は長くて難しい割には,具体的な条文の解釈にあまり役に立たないので,ここでは省略します。

 そうした抽象的な話よりも,まずは
    人は,何のために,会社を作るのか?
ということを理解し,
     会社は「貯金箱ロボット」だ
というイメージを持つ方が大切です。

 ここでは,典型的なモデルである民法上の組合と,株式会社の違いを例にとりながら,「貯金箱ロボット」の意味をお話ししましょう。
 (実際には,有限責任事業組合のような「会社的組合」や,持分会社のような「組合的会社」が存在しますが,そうした中性的な魅力を持つ存在は,もっと大人になってから学ぶことととして,若いうちは,女らしい女や,男らしい男がどんなものかを学ぶ方がよいでしょう)。

 さて,会社は,何のために作るのでしょう。
 私の目の前に学生さんがいれば,「商売をするためです」という答えが返ってきそうです。

 でも,人が商売をするのに,わざわざ会社を作る必要はありません。

 個人でやってもいいですし,何人かで共同事業をやるときは,組合契約を結んで,組合として活動することも可能です。
 組合には,いろいろ法的な制約もありますが,工夫次第で解決可能なものも多く,大規模な共同事業を,組合でやることだって不可能ではありません(適切な例ではありませんが,売上げ百億円・パートナー数十人という法律事務所だって組合です)。

 それなのに,なぜ商売をするときに,会社を作ることが多いのでしょう。

 例えば,ここに,法務省民事局で会社法を担当していた
   松真珠夫(まつしん・たまお)さん
   湯水金使(ゆみず・かねし)さん
という二人の男が,民事局を辞めて,共同で,会社法関連の出版事業をやることになったとしましょう。

 この二人が,組合を作って出版事業を営むとすると,
  組合には,法人格がない
ので,契約も,銀行口座も,不動産の登記等も,
  すべて個人名義
で行い,契約等の効果も,すべて松真さんと湯水さんに直接帰属し
  組合財産は,共有
になります。
 もちろん,例えば,「珠金出版事業組合」等という組合名をつけて活動してもいいのですが,その組合名は,法的には
  松真さんと湯水さんの二人のことを別名で表しているだけ
で,組合としての活動の効果が,その二人に直接帰属するという点は変わりません。

 一言で言えば,民法上の組合で事業を行うということは
  事業用の財産を,個人財産から,法的に区別しない
ということを意味し,そのために,たとえば,次のようなことが起こってしまいます。

(1)湯水さんが,銀座で,個人的にクラブ活動をして,湯水のようにお金を使い,飲み代を支払えなくなったときは,そのクラブが,湯水さん達が出版事業で使っている銀行口座を差し押さえてしまうことがある。

(2)松真さんが不幸にもお亡くなりになってしまったりすると,遺産分割が終了するまで,組合財産は処分できなくなり,銀行口座も支払停止になってしまうことがある。

(3)湯水さんと松真さんがケンカして足並みがそろわなくなると,組合財産が処分できなくなるおそれがある(組合の業務執行は,組合員の過半数で決するのが原則であるから,二人の意見があわないと現状維持になる。しかも,不動産が,組合員全員名義で登記されていると,組合員全員が登記の申請に協力しくれない限り,処分するのが難しくなる。)

(4)組合の事業で失敗すると,組合の債権者が,松真さんのマイホームや,湯水さんがサイドビジネスで稼いだお金を溜め込んでいる銀行預金等を差押えることもある(「組合」の債権者と言っても,それは松真さんや湯水さん個人の債権者なので,個人財産を差し押さえることができます)。

 要するに,個人と組合との間には,法的な区別がないので,
①個人に生じたことが直接組合に影響を与える
②組合に生じたことが直接個人に影響を与える
のが当然であり,組合というのは,仲の良い者同士が,信頼関係がある期間だけ,共同事業をするには,手軽で,使い勝手がいいものの,信頼関係が維持できなくなると,いきなり事業が頓挫する可能性もあるのです。

 こうした不都合を解消するために,
  「会社」という貯金箱(法人格)
を作り,事業用の財産を,この貯金箱に入れて
  個人財産と明確に区別する
という方法を取ることができるようにするのが,会社法の役割です。

 この貯金箱に入れられた財産(会社財産)は,入れられた瞬間から,個人の財産ではなくなります。
 たとえば,松真さんと湯水さんが
  「株式会社 正直法務」
という会社を作り,松真さんが,マイホームを正直法務に出資したとすれば,そのマイホームは,松真さんの物ではなくなってしまいます。

 世の中の株式会社を見渡せば,個人財産と会社財産を「公私混同」している会社も沢山ありますが,法的にいえば,
①松真さんが,「株式会社 正直法務」の業務執行者でなければ,その家の使用・収益・処分をすることはできない
②松真さんが,業務執行者だとしても,その権限は,自分の個人的な利益のためではなく,会社の利益のために行使しなければならないので,会社財産を好き勝手に使うことはできない(たとえば,自分でその家に住む行為は,利益相反行為になります)
ということであり,個人財産と会社財産は明確に区別されているのです。

 その代わり,松真さんや湯水さんが,優秀な人物を正直法務の業務執行者に選んでおけば,松真さん達が何の指示もしなくても,会社が自律的に商売を行い,会社財産をどんどん増やしてくれます(逆に,無能な人物を選ぶと,会社財産はどんどん減っていきます)。

 つまり,会社というのは,
 ① 個人財産と会社財産(事業用財産)を切り離し(貯金箱機能)
 ② 業務執行者が会社財産を運用する(ロボット機能)
という二つの機能を持つ道具なのです。

 具体例で説明しましょう。
 松真さんと湯水さんが,組合ではなく,正直法務という株式会社で,出版事業を行うことにすれば,次のようなメリットがあります。
(1)湯水さんの飲み代のために,会社財産が差し押さえられることはありません。
 クラブのママさんは,湯水さんの持っている株式を差し押さえることはできますが,会社財産自体を差し押さえられないので,湯水さんの放蕩のために,会社の事業に支障を来すことはなくなります。

(2)松真さんがお亡くなりになっても,会社の財産は,会社のものですから,相続の対象になることはありません。
 松真さんの株式は相続財産になりますが,株式の遺産分割でどんなに揉めても,会社の業務執行者は,会社財産を使用・収益・処分することができますから,事業がストップすることはありません。

(3)松真さんと湯水さんが仲間割れしても,通常は,会社財産の処分に支障はありません。
 会社は,貯金箱ロボットなので,松真さん達が揉めていても,会社の業務執行者が,自律的な判断のもとで,会社財産を運用することができるからです。

(4)万一,正直法務が経営に失敗しても,正直法務の債権者は,松真さんや湯水さんの個人財産を差し押さえたりすることはできません(株主の間接有限責任)。なお,会社のうち,合名会社と合資会社の社員は,会社の債権者に対して直接責任を負っていますから,この点は当てはまりません(合名会社と合資会社は,昔々,ドイツの制度を輸入しようとして,,商法の立案担当者が,ドイツでは組合的なものに対し,うっかり法人格を与えてしまったという苦い歴史によって誕生したため,組合的な要素が強いのです)が,「個人の債権者が,会社財産を差し押さえることはできない」という点では,株式会社と共通します。

 以上のように,会社を作る意味は
  会社という法人格のある存在を作って,個人財産と会社財産を区別すること
にあるということを心に刻んでいただければ,会社法が何を定めているのかということも分かります。

3 会社・社員・債権者
 さて,会社法は,会社という貯金箱ロボットを作るための法律ですから
 ① どういう手続きをすれば,会社が法人格を取得するか。
 ② 誰が,会社財産を運用するか(会社の業務執行をするか)
ということを規律するためにあると言っても過言ではありません。

 そして,組合であれば
   松真さん・湯水さん----------債権者
という直接の法律関係があるので,民法で十分ですが,会社を作ってしまうと
  松真さん・湯水さん-----株式会社 正直法務---------債権者
という三者間の法律関係が生まれますので,会社法は,さらに
 ③ その三者の法律関係は,どのようなものか。
ということも規定しているのです。

 なお,松真さん・湯水さんのように「会社を作った人」のことを
   「社員」
といいます。
 社員の定義については,「出資者」といった方がより正確なのですが,「社員とは,会社を作った人である」というイメージは,それなりに本質をついているので,まずは,そのイメージを固めてください。

 イメージは,固まりましたか。
 それでは,次に,会社法が(1)会社と社員,(2)会社と債権者,(3)債権者と社員について,どんなことを規定しているのかを説明します。

(1)会社と社員

 会社は,社員の意思によって生まれるものですから,
  会社のことは,社員が決める
のが原則です。
 そして,社員が沢山いると,どんなことを決めたのかが不明確になることが多いので,会社法では,大事なことは書面(電子ファイルでもいいです)で決めなければならないことになっています(この社員が決めた基本的規則を書いた書面のことを「定款」といいます。)
 また,会社は,社員の利益のために作ったものですから,社員は
  会社を解散して,法人格を消滅させ,会社財産を社員の個人財産に戻す
こともできます。
 このように,社員は,会社の生殺与奪権を持っていますから,会社と社員の力関係は,基本的には
   会社<社員
なのです。
 ただし,会社は,社員から独立した法人格を持っている「貯金箱ロボット」ですから,
   会社が存続している間は,社員が,自分勝手に,会社財産を個人財産に戻してはいけない。
というルールは存在します。
 会社財産を,社員に戻すためには,配当,払戻し,残余財産の分配等会社法で定められた方法による必要があり(この方法については,後日,詳しく説明します),会社法の定めたルールに違反して,社員に会社財産を戻すことはできません。

(2)会社と債権者の関係
 会社は,貯金箱ロボットなので
   会社自身が,他の人と契約をしたり,他の人に対して不法行為をしたり
独自の活動を行います。
 会社が行う契約や不法行為等によって,会社に対して債権を持つ者が生まれますが(債権者),この債権者が,会社の財産に対して強制執行することができるのは,当然のことであり,両者の力関係は
   会社<債権者
ですね。

 この両者の関係は,民法が適用される部分が多いのですが,
 ① 会社が契約をするときに,取引の相手方をどのように保護するか(取引の保護)。
 ② 会社が不行行為により第三者に損害を与えた場合に,被害者をどのように保護するか(被害者の保護)
 ③ 会社から資産が流出して債権者が害される場合に,どのような方策を採ることができるのか(一般債権者の保護)。                   
という3点については,会社法は,特別に規定を置いていますので,この部分は,後日,たくさん勉強してもらうことになります。
 なお,この3点は,しばしば「債権者保護」と一括りにされることもありますが,それぞれ視点が異なるので,会社法の学習においては,区別しておいた方がよいでしょう。

(3)社員と債権者の関係

 会社の債権者は,本来,債務者である会社にしか請求することができないのが原則です。

 その代わり,会社が解散したときには,会社財産は,①まず債権者が分配を受けて,②残った財産(残余財産)を社員で分けることになっています。もし,個人で事業をしていたら,その人は,事業関係の債権者に支払をしなければならないわけですから,会社を使って事業をした場合でも,「社員は,会社財産について,債権者に劣後する地位にある」のは,当然です。
 つまり,力関係は
  社員<債権者
ということができます。
 しかし,会社が解散される前に,社員が,配当や払戻しにより,会社財産を自分のものにしてしまうと,社員が債権者に勝つことになりかねません。
 そこで,会社法は
 ① 合名会社・合資会社では,社員が,会社の債権者に対し,会社に代わって支払わなければならないという直接責任を認める,
 ② 合同会社・株式会社では,配当や払戻を制限する
という制度を採ることにより
  社員<債権者
という関係を維持しているのです。

4 今日のまとめ
 今日は,初回なので,張り切りすぎて,長くなってしまいました。楽をしようとして,かえって大変な企画を立ち上げてしまい大変後悔しています・・・。
 願わくば,初回が不評で,即,打ち切りというのが理想的な展開なのですが,いかがでしたでしょうか。
 
 それでは,最後に,今日のまとめをして,終わりにします。
1 会社法は,会社・社員・債権者の三者間の関係を調整する法律である。
力関係は,「会社<社員<債権者」が基本。
2 会社は,組合と違って,法人格が認められ,事業用の財産を,個人財産と法的に区別して管理することができることに存在意義がある。
3 会社は,社員の意思に基づいて設立される。
4 会社に関する重要事項について社員が決めた書面のことを「定款」と呼んでいる。
 会社財産の処分は,業務執行者が行い,社員には処分権はない。
5 社員が,会社財産を個人財産に戻すための方法には,配当,払戻し,残余財産の分配等があるが,これらは,会社法で定められた手続きを取らなければ,行うことができない。
6 会社債権者の保護を考えるときは,①取引の相手方の保護,②被害者の保護,③一般債権者の保護の3点を考えなければならない。
7 社員は,会社財産について,会社債権者に劣後する地位にある。合名会社・合資会社では社員の直接責任によって,合同会社・株式会社では配当・払戻しの制限によって,それを実現している。

以上のポイントは,直接,答案に書くようなことではありませんが,今後の会社法の説明をする上で,頭にたたき込んでおいてもらいたい基本中の基本なので,次回までに復習しておいてくださいね。

(質問コーナー)
Q1
会計監査人が再任されたものとみなされるという規定(338条2項)
について質問させてください。
このような再任されたものとみなす、という規定は役員の任期に関する規定の中には見当たりません。なぜ、このような規定(338条2項)は 会計監査人にだけ存在するのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/03 0:14:38
A1
 正式な理由には,会計監査人の独立性の維持のためです。
 ただ,意地悪な人は,監査法人の経営の安定のためということもあります。
Q2
 取締役の責任免除制度について質問させてください。
 取締役の責任の一部免除として 425条 426条 427条というような
三つの制度が存在します。このうち 426条(定款+取締役会の決議)についてのみ、監査役設置会社もしくは委員会設置会社以外では採用不可という制限があります。なぜ 426条にのみこの様な制限が存在するのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/03 0:22:38
A2
 会社の実質的所有者の集まりである株主総会が免除することは,監査役がいないからと言って,これを認めないものとする必要はありません。
 社外取締役の責任限定契約は,任務懈怠責任が生ずる前に締結するものなので,濫用のおそれが少ないから,監査役がいなくても,結ばせていいでしょう。社外取締役を採用しやすくなりますし。
 これに対し,426条は,取締役に任務懈怠責任が生じた後に,取締役会だけで免除しようとするものなので,監査役等の監視なしに免除させると濫用されるおそれがあるから,監査役も監査委員もいないような会社には使わせないということです。

Q3
サミー様、事業年度について質問させてください。
一事業年度の長さについて、1年またはそれ未満は許され、1年超は許されないと一般に解されていると思いますが、条文上の根拠などあるのでしょうか?
投稿 WLS2F | 2006/11/03 0:47:39
A3
計算規則91条2項をご覧下さい。

Q4
 債務超過会社において、全部取得条項付種類株式を利用して、全株式を一旦自己株式化し、その自己株式を高く引き受けてもらい処分することで、増減資することなく債務超過のみならず欠損まで解消し登記コストも抑える(登録免許税は種類株式関係のみで)ことができること、以前のブログで教わりました。
 お父さんお母さんのみが株主の街の小企業が債務超過に陥っている場合、株主が無償で会社に全株式を譲渡することに何の抵抗もありません。わざわざ定款で種類株式の定めをしてその登記をし手順踏んで自己株式化しなくても、普通株式のまま任意に会社へ株式を無償譲渡して、その自己株式をお父さんに債務超過・欠損解消できる金額で引き受けてもらう(お父さんは大抵それぐらいの額の会社に対する貸付金を持っていますのでそれを現物出資してもらいます。)ことで、何の登記もなしに債務超過解消の目的を達成できると思うのですが、巷の本等をいくら探してもこのようなことに触れているものはありませんでした。何か致命的な誤りをしているのでしょうか。ご指摘いただければ幸いです。
投稿 カキクリ | 2006/11/03 9:51:31
A4
 別に致命的な誤りはないと思います。

Q5
今日は株主総会などにおける決議事項について拒否権を発動できる株式(以下「黄金株」108条1項8号)について教えてください。
1 「黄金株」に株式買取請求権が認められていないのはなぜか?
2 「黄金株」の定款規定を廃止する際の株主総会の決議をも拒否することができるのか?
3 「黄金株」の定款規定を廃止した場合、株式買取請求権が認められていない法制の下では「黄金株」の所有者の保護はいかに図られるのか?
4 「黄金株」に譲渡制限がついている場合に、売買価格の決定の申立て(144条2項)があった場合、「黄金株」の価格についてはどう考えるべきか?(もちろん裁判所に決定権があるのですが、立案担当者の間ではどう考えられていたのかと思いましたので)
  (拒否権を発動しない場合は剰余金の配当では他の株式と変わらず、通常の株式と同様の算定方法で算定されてもおかしくはないと思いますが、その潜在的パワーに着目すれば、問2の回答にもよりますが、株主総会の特別決議分の株式と同様の価値を秘めていますので通常とは違う算定方法が考えられるのではないか、と考えました。)
5 「黄金株」を相続する際の相続税の価格算定はどうなるか?(管轄が違いますので良かったら教えてください。)
以上の質問は、相続税対策として事業承継問題を考える際に疑問に思いました。宜しくお願いいたします。
投稿 NK | 2006/11/03 9:59:53
A5
1 拒否権付株式を定める定款変更の際に,株式買取請求権がないことをおっしゃっているのでしょうか?そうだとすれば,議決権に関することに過ぎないから,通常,他の株主には買取請求権まで認める必要はなく,損害が生じたような場合には,議案を出した取締役の任務懈怠責任や多数派株主に対する不法行為責任でも追及すればよいよいということでしょう。
2 最初に,そのように定めれば,拒否権はあるのでしょうね。
3 拒否権条項を廃止するためには,種類株主総会が必要なので,その限りでは保護されています。
4 株式の価格の決定方法は,普通株ですら,難しく,黄金株でも,同じように難しいというしかありません。
5 相続税のことは分かりません。

Q6
誤植・加筆修正に関する情報をこのブログにて公開していただけないでしょうか?
二刷、三刷と新しい刷が出る毎に、
「第○刷での変更点 ①…、②…」と、新刷ごとに公開すれば前回の返本騒動や買い控えといった問題も概ね解消されるかと思います。
(千問共々、カテゴリー欄に「修正」カテゴリーを新設していただけたら最高です!)
ご検討お願いします。
投稿 noa | 2006/11/03 11:01:27
A6
申し訳ありませんが,そのようなことを以前,葉玉さんがやろうとしたところ,回収騒ぎになってしまったので,私の独断ではできません。ダイヤモンド社にお任せすることにしたいと思います。

Q7
使用人兼務でない代表取締役なら当該株式会社の支配人になれるのですか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/03 13:02:36
A7
支配人は,使用人です。
代表取締役が使用人を兼務することはできないので,支配人になることもできないという意味です。

Q8
株主権の不統一行使についてお尋ねします。
会社法313条に、株主総会における議決権の不統一行使を認める規定がありますが、例えば、株主総会が開催されない吸収合併の場合の796条4項の反対の通知をする権利や、797条1項の株式買取請求権について、株主は不統一行使ができるでしょうか。
(名義上は1人の株主で、複数の他人のために株式を保有している株主を想定しています。)
投稿 みひろ | 2006/11/03 21:26:33
A8
 どちらもできると思います。ただ,株式買取請求権は,不統一行使というより,一部の株式についての行使ということでしょうね。

Q9
なぜ、全部取得条項付種類株式を発行するには、種類株式発行会社でなければいけないのですか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/05 12:07:57
A9
それほど,立派な理由があるわけではありません。
しかし,私達には,それ以外選択肢がなかったという悲しい思い出の一つです。

Q10
監査役会の職務として、「監査役の中から常勤の監査役
を選定し解職する」とありますが、株主総会で監査役が選任される時から、
常勤、非常勤の区別を想定して人物を個々に選んでいるのに、監査役会が
常勤をはずして非常勤の監査役にするという意味がわかりません。監査役自体
を解任するのは、株主総会の役目ですし、具体的にどういう状況を想定した条文
なのでしょうか。ご教示ください。
A10
 株主総会で監査役が選任されるときから,常勤・非常勤の区別を想定して人物を個々に選んでいようとも,それは,事実上,そうしているというだけで,監査役会は,それに拘束されません。株主総会は,定款で定めない限り,常勤監査役を選定する権限はありません。
 監査役の解任と,常勤監査役の解職は,全然違いますので,「どういう状況を想定した条文なのでしょうか」と言われても,常勤監査役の解職を想定した条文というしかありません。
 「株主総会が,代表取締役になってもらうことを想定して,取締役を選任しているのに,取締役会が代表取締役に選定しないのはおかしい」とか,「取締役会が代表取締役を解職するのはおかしい」とか,言わないのと,同じことです。

Q11
自己株式の取得の効力について教えてください。

株主総会の承認決議を経ずに、自己株式の取得を実行した場合、原則として無効
であるという見解を前提として、株主総会の承認決議を欠いていることに加えて
、分配可能額が存在しないにもかかわらず、自己株式の取得を実行した場合、当
該自己株式の取得の効力はどうなるのでしょうか?

財源規制に違反した自己株式の取得も有効であるというの会社法の立場というこ
とですが、この見解に立つと、上記のような場合、自己株式の取得の効力はどう
なるのでしょうか
A11
財源規制に違反したことは,取得の効力に影響を与えません。
株主総会の承認決議を得ることなく,取得したことについては,民法93条ただし書を類推適用し,相手方が悪意又は有過失である場合を除き,有効となると思います。

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2006年11月 2日 (木)

100問2版の配本日&新企画発表

 新会社法100問[第2版]の配本日が11月16日に決まりました。

 ですから,早い本屋さんで
 17日金曜日
遅くとも18日土曜日か,19日日曜日には,書店の店頭に並ぶはずです(書店さんが取り扱ってくれるのならば・・)。

 今回のカバーデザインは,初版に似ていますが,色が「緑色」から,なんと
 「オレンジ色」
になりました。
 私は,法律の本で,「オレンジ色」のカバーは見たことがないので,きっと,かなり目立つと思います。恐るべし,ダイヤモンド社。

 もっとも,
 「オレンジのまま使うのは恥ずかしい」
という読者もいるかと思い,カバーを外すと,本の表紙自体は
 濃紺色の落ち着いたデザイン
になっていますので,その日の気分に応じて,カバーを外したり,つけたりしてください(^_^;

 さて,会社法100問[第2版]出版を記念いたしまして,これから,このブログでは,1週間に1~2回くらいの割合で,初学者用の
 「会社法入門講座」
を始めたいと思います。

 最近,このブログは,皆さんの会社法スキルがアップしたせいか,記事も質問も,かなり難しいものが多いため,会社法で「あそぼ。」ではなく,多くの人にとって
 あ~っ(ぜんぜん分からない。)
 そーっ(としておいてくれ。)
 ボーッ(としちゃうよ。)
という状況になっていますので,会社法の知識が0の人でも分かるような記事を書くことで,新規顧客を獲得するのが目的です。

 新規顧客が来ても,無料奉仕のブログなので,あまり意味はないのですが,私自身,難しいことばかり書くと,頭が飽和状態になるので,心が和むような易しいものを書きたいというのが,本音です。

 もちろん,「会社法入門講座」の合間には,これまでのように,会社法の最先端や,マニアックな話も記事にしていきますし,質問コーナーは,毎回続けていきます(私の知力の許す限り)。

 「会社法入門講座」は,具体的には
 会社法100問[第2版]の「3つ星」問題のポイントを易しい言葉で解説していく
という予定です。
 ただ,まだ[第2版]の発売前なので,最初の数回は,会社法の基礎の基礎をお話ししますので,初学者の皆さんは,請うご期待!というところです。
 
 なお,本日は,ここまで書いたら疲れましたので,3連休中に,第1回を始めさせてください。
 すいません,尻すぼみな展開で・・・。

(質問コーナー)
Q1
会社法第332条4項3号および会社法第336条4項4号で、非公開会社が、公開会社になる時に、役員の任期満了になる旨の規定があります。たとえば、株主総会が11月1日で譲渡制限廃止に関する定款変更の効力発生日を12月1日した場合、総会での議案は、役員を補欠選任する議案として差し支えないのでしょうか?補欠選任は、役員が欠けた場合なので、全員任期満了である場合には、役員そのものを選任しなおさなければならないと考えているのですが如何でしょうか?
また、この規定については、役員の任期を伸長した会社には、よいのですが、通常の2年、4年の会社では、必要なのでしょうか?
投稿 ひろし | 2006/10/31 23:48:58
A1
 すいません。質問の意味がよくわかりません。
前段は、「11月1日の株主総会で譲渡制限廃止をしたが、12月1日に監査役が任期満了するのに備えて、予め、監査役を選任してよいか?」
という意味なのでしょうか。
もし、そうだとすると可能だと思います。
それは、たぶん、いわゆる補欠監査役ではないでしょう(12月1日以前に監査役が辞任しても、就任するわけではないからです)。
後段は、問題意識がわかりません。任期途中に非公開会社になった場合には、必要だと思いますが。

Q2
 監査役の権限が会計監査に限定されている非公開小会社ですが、定款に、取締役会の決議の省略のための規定を定めときに、「当該提案について監査役が異議を述べたときを除く」と定め、定款認証して設立登記も完了済です。
 この規定が定款の自治として認められないとするならば、この記載部分については定款規定は無効となるのでしょうか?
 千問P366では、「監査役の監査の範囲を会計に関する事項に限定した会社の監査役であっても、自らの権限の範囲内において、報告徴収権や子会社調査権等を有しており(389条)、当該権限行使のために取締役会への出席が必要となる場合もありうる。」とありますが、この定款記載部分は、会社法29条の「この法律の規定に違反しないもの」という解釈には無理があるのでしょうか?
投稿 としお | 2006/11/01 8:03:51
A2
 定款の認証には、定款の効力を有効とする効力はありません。
 以前もお答えしたと思いますが、当該定めは、無効だと思います。

Q3
本日のA2についてですが、「業務執行取締役がやったすべての『職務』について報告すれば何の心配もいりません。」ということですが、今回の会社法では、報告すべき事項について、あえて旧商法の『業務』という言葉から『職務』に変えたわけですよね。しかもその『職務』とは、このブログでは「総会の手続き、役員等の選定、監査関係」を指すと。
普段の取締役の行動でこの『職務』に該当することがどんなものがあるとお考えですか? 条文を『職務』にしたのがおかしいのか、ブログでの『職務』の定義がおかしいか、どちらかしか考えられないのですが、いかがですか?
投稿 悩み続けて早3ヶ月 | 2006/11/01 9:20:01
A3
「職務」の意味を誤解されていると思います。
 おそらく、「業務とはなにか」という質問に対する答えを見て、「職務というのは、業務以外のものだから、総会の手続き、役員等の選定、監査関係を指す」と考えられたのではないでしょうか?
 このブログで答えられていたのは、「業務」の定義であって、「職務」の定義ではありません。
 業務執行取締役の「職務」には、業務執行も含まれていますので、そういう文脈で、条文をお読みください。

Q4
株式の譲渡制限の承認機関を取締役会としている取締役会設置会社が、解散の登記を申請する際、同時に株式の譲渡制限に関する規定の変更(承認機関を取締役会以外の機関とする)の登記をする必要性はあると考えますが、必ず解散と同時にしなければならないのでしょうか。
旧商法時代は、解散すると株式の譲渡は停止すると考えられ、譲渡制限規定はそのままとされてきましたが、会社法では、解散後に株式を譲渡することについて、特に制限する規定がないめ、解散後も株式の譲渡が可能とされ、解散すれば取締役会設置会社でなくなるめ、譲渡制限規定を解散登記と同時に必ず変更しなければならない。との考えがあるため。
投稿 びんぞう | 2006/11/01 9:58:46
A4
 取締役会のない会社が、「株式の譲渡に取締役会の承認を要する」という定めを設けても、無効ですし、登記も受け付けてくれません。
 とすると、解散すれば、取締役会の承認を要する旨の定めは無効になりますし、そういう無効な定めを登記上残していてはいけないという要請もあるでしょう。
 そうすると、譲渡制限規定を解散登記と同時に必ず変更しなければならないという考え方は、妥当であるように思います。

Q5
会社清算について第500条(債務の弁済の制限)で債権者への公告・催告の期間中は債務の弁済ができないことになっていますが、解散確定申告による税金の納付、つまり租税債務の履行はこの期間中でも当然にできると理解してよろしいのでしょうか?
投稿 会社法初心者 | 2006/11/01 21:00:30
A5
これは、難問ですね。
裁判所の許可は得られるはずですから、裁判所の許可を得るのが妥当でしょう。

Q6
3月決算会社ですが、平成18年8月に増資して資本金が1億円から10億円になりました。平成19年3月決算にかかる定時株主総会(19年6月開催)で最終の計算書類の承認を経て、総会終結後に大会社になると思います。この場合、大会社に義務付けられている内部統制の取締役会決議は、いつまでに行えばよいのでしょうか?①定時株主総会までの取締役会で決議しなければならないのでしょうか?それとも②定時株主総会後最初の取締役会でもよいのでしょうか。
また、①の場合、平成19年3月期の事業報告に内部統制の概要を記載する
必要はありますか?もし記載義務があるとすれば、18年6月定時株主総会直前
の取締役会(たとえば計算書類等承認の取締役会)で内部統制決議をしていては事実上事業報告への記載が難しいと思いますが。どう考えればよいでしょうか?
投稿 ぴえぴえ | 2006/11/01 22:27:52
A6
 大会社になった瞬間に義務違反が生じますから、総会前に内部統制の決議をして置くべきでしょう。
 ちなみに、大会社以外の会社でも、善管注意義務の内容として内部統制システムの構築義務が生ずる場合があるので、できるだけ早く決めておく方が安全です。
 設例の会社が事業報告を作成した時点で、すでに内部統制システムについての決議をしていれば、平成19年3月期の事業報告に記載すべきでしょうし、作成時点で、決議がなければ、記載する必要はありません。

Q7
 株式の無償割当てと株式の分割との違いについて質問させてください。
 株式の無償割当てでは 定款に別段の定めがある場合、決議機関を変えることができます(186条3項但書)。
 ところが株式の分割ではそのような規定は存在しません。
 この違いはどこから生じるのでしょうか?
投稿 maru | 2006/11/01 23:43:24
A7
 295条2項により、定款で、株主総会「も」、株式の分割を決定することができるようにすることは可能です。
 とすると、186条3項ただし書は、
(1) 非取締役会設置会社で、取締役に無償割当てを決定させる定め
(2) 取締役会設置会社で、取締役に無償割当を決定させる定め
(3) 取締役会設置会社で、取締役会から決定権を奪い、株主総会で決定する定め
等が可能であるというところに意味があります。
 さて、こうした規定が、なぜ株式分割にないのかは、その立案をした者が遠くにいってしまったので、正確なところはわかりません。
 株式分割をする場合には、株式会社は、株主総会の決議によらないで、発行可能株式総数を増加する定款変更をすることができますが、上記(1)(2)のような定めを株式分割で認めると、取締役会があずかり知らぬうちに、株式分割のほか、定款変更までできてしまうのは大丈夫だろうかという疑問があったため、株式分割には186条3項ただし書のような規定を設けなかったのではないでしょうか。

Q8
新会社法100問の第35問について教えてください。
p173、三、1で
「③Eについて名義書換がされている場合には、甲社の取締役会が承認することが必要である。」とありますが、
1、Dからの買取には、承認不要ということでしょうか?なぜですか?
2、当該記載は、D・Eからの買取ることをセットで考えていて、E名義に書き換えられているということは、前提としてD名義にもなっているから、D・Eそれぞれについて承認が必要という意味でしょうか?
3、D名義にまでは書き換えられているが、まだE名義には書き換えられていない場合は、極稀であるので、想定していないのでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2006/11/02 2:49:34
A8
 もちろんDが既に遺産分割で株式を取得し、名義書換をしている場合には、Dから買い取るときに承認は必要です。
 解答例は、Dが共同相続人であることから、Dのみが名義書換をしていることを想定していないように思います。
 「③Eについて」という部分を、「③D,Eについて」とする方が正確でしょう。

Q9
 当社(親会社)と子会社が合併した際に資本準備金・利益準備金・その他利益剰余金を増加させております。ここで増加させた準備金は会社計算規則178条4号の額に含まれるのでしょうか。含まれるとすれば、合併に伴って増加した準備金が分配可能額に含まれてしまい、資本充実の趣旨と合わなくなってしまうと感じた次第です。
投稿 財務本部会社法ファン | 2006/11/02 7:31:13
A9
すいませんが,質問の意味がよくわかりません。
増加したその他利益剰余金は分配可能額を増加させますが,増加した準備金は分配可能額を増加させません。

Q10
株式会社の代表取締役として就任している者が、当該株式会社の支配人になれますか?
投稿 南斗六星 | 2006/11/02 8:14:29
A10
使用人兼務代表取締役は、無理だと思います。

Q11
質問ですが、資本金の減少の効力発生日の変更については、業務執行者の決定で足りるとのお話を拝見しました。
これに附随して、一旦株主総会で決議した資本金減少の決議を、その効力発生日前に再度株主総会を開催して取り消すことは可能でしょうか?
この場合に以下の各状況によって、取消の可否または異議を述べた債権者への対処方法に相違点は出てくるのでしょうか。
 ①官報公告申込前及び知れたる債権者への個別通知発送前
 ②官報公告掲載済申出期間満了前で個別通知発送前
  (官報入稿の申込みが先行するためありえます)
 ③公告掲載、通知発送済であるが共に期間満了前
 ④公告掲載、通知発送済であり、共に期間経過後
投稿 seiquro | 2006/11/02 13:21:10
A11
 一般原則によれば,株主総会の決議は,効力発生前であれば,それを撤回することができるはずです。
 資本金の減少についても,同様であると思います。

Q12
 任意事項の電子公告の可否についてお教えください。
 定款に「株主名簿管理人を変更するときは公告する」と定めたり、いわゆる転換社債の要項に「株式分割により転換価額を調整するときは公告する」と定めるケースを見かけますが、電子公告を採用している場合、法定でない事項を公告することは実際にできるのでしょうか。(cf.日刊紙の場合は、公告かどうかはともかくとして物理的に掲載することができます。) もし電子公告できるとしたら、その根拠条文や公告期間をどうなるのでしょうか???
投稿 しん | 2006/11/02 14:55:03
A12
 法律によらない公告については,特に法律に制限はありませんので,適当な方法で,電子公告をすればよいのではないでしょうか。
 公告期間や調査機関による調査も不要です。

Q13
 設立無効の治癒に関する質問です。
設例
「発起人Aが1000万円で100株を引き受けたが、設立後に500万円分が実は見せ金であって、(争いあるが)その払込みが無効とされた場合、その後Aないし他の者が500万円を会社に払い込むことによって、無効事由が治癒されるか(もしくは治癒するための手段はあるか)。」
 江頭111頁や神田(7版)53頁などを参照にすると、治癒されるように思われます。
 しかし、1000問のQ46(いったん設立されると、未履行の発起人は当然に失権する)、Q47(一部払込みが未履行である発起人は、引き受けた全部の株式について払込みが未了と扱われる。この点につき、江頭80頁注5の記述を読むと、江頭先生は全部が未了となるわけではない、とお考えのように読めます。)を読むと、上記設例において、発起人Aは1株も引き受けていないことになり、事後的な出資によっては治癒されないように思われます。
投稿 迷える法曹の卵 | 2006/11/02 19:20:11
A13
 旧商法の下では,発起人の払込が無効であっても,払込義務自体は存続し,また,払込担保責任があったので,それらの義務を履行することにより,設立無効を治癒することはできました。
 しかし,会社法のもとでは,発起人の払込義務は,設立によって消滅し,払込担保責任も廃止されたので,設立の無効を治癒する余地はないと思います。
 詳しくは,会社法100問を見てください。

Q14
実は、当社のグループ会社の一つを、取締役会廃止会社にしようと思っております。しかし、この場合、今まで取締役会での決議事項が原則、株主総会に委譲されていまうのかで、困っております。これは、定款で定めれば取締役の過半数の一致とすることや、代表取締役に委譲することも可能でしょうか?もし、可能であれば、一つのラインをご指導いただけたら助かります。また、取締役会のない会社であっても、複数名いる取締役も何ヶ月かに1回は一同に会する必要があるのでしょうか?実務的な運用についてもあわせてお願いいたします。
それから、取締役が複数人する場合の報告事項等は、個別通知による取締役の報告の省略ができると思ってよろしいですか?
よろしくお願いいたします。
投稿 法務部員 | 2006/11/02 20:31:30
A14                                                             
 会社法の規定を見て,「定款に別段の定めがあるときは,この限りでない」などという文言がある場合には,取締役に委譲することができますし,そうした文言がない場合には委譲することはできません。
 この基準で,株主総会の権限とされている条文を見てリストアップしてください。

 非取締役会設置会社では,3か月に一度は集まれ等という規定はありません。
 実務的な運用は,各会社の特質に応じて決めることなので,申し訳ありませんが,答えることはできません。
 報告の省略は,「取締役会」が存在するからこそ特別の規定が必要なのです。
 各取締役に報告すべきときに,個別に報告するのは,報告の省略ではなく,報告そのものです。

Q15
 取締役会の報告省略について確認させてください。会社法372条2項で、同条1項の規定は「3か月に1回の取締役の職務執行の状況の報告」には適用しないとあり、また、千問の道標Q506の表にも「業務執行の状況報告は省略できない。」と明確に記載されています。
しかし、商事法務1744号103ページ九2の(注40)では、「本規定の意味するところは、業務執行権限を有する取締役が行う自己の職務の状況の報告については、必ず報告の省略ができないとするものではなく、・・・。」とあります。これによれば、最低3か月に一回取締役会を開催している会社の取締役が、そのうちの1回の取締役会に出席できなかった場合、当該取締役会で報告すべき事項は省略によることができるという解釈でいいのでしょうか。また、毎月開催している会社でたまたまある月が業務執行報告1件のみである場合、省略で行ってもよいのでしょうか。(取締役の善管注意義務の問題はあるかもしれませんが。) 
投稿 ??? | 2006/11/02 21:21:19
A15
 直近の報告から3か月が経過していないときに,業務執行報告をする場合には,取締役会の報告の省略をすることはできます。

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