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2006年10月31日 (火)

所在不明株主の要件

 今日は,以前のQ&Aの訂正をひとつ。

 やや古い話ですが,10月3日のブログのQ5で
「株主所在不明の場合の株式の売却についてお聞きしたいことがあるのですが、所在不明等の株主の株式を会社法第197条2項の規定により売却する場合、前提要件として、同条第1項各号を満たさなければなりませんが、同2号の「剰余金の配当を受領しなかった」とは、剰余金の配当が5年間無配だった場合も含まれると解してよいのでしょうか?」
という質問に対し,

「2項の売却は、1項の規定による競売に代えて行うものですから、1項の適用がなければ、行うことはできないと解されます。
 無配の場合は、株主の意思が不明ですから、2号の「剰余金の配当を受領しなかった」に含まれないと解されます。」
と答えました。

 ところが,つい最近,
「法務省は,旧商法では,無配の場合でも,所在不明株主に該当するという解釈をとっていたのではないでしょうか」
というご指摘があり,調べてみたところ,確かに,平成14年改正時の法務省の見解というか,立案担当者の見解として,無配でもよいことになっていることがわかりました。

 私は,残念ながら,その見解を知らず,担当者も近くにいなかったために
「無配の場合には,197条1項2項の適用はない」
と答えてしまったのですが,当時の立案担当者の見解を変更することを意図した条文ではありませんし,「剰余金の配当を受領しなかった」という文言の中に,
「配ってくれなかったから,受領しなかった」
という意味を含めることもできなくはないので,
「無配でも197条1項2項の適用はある」
と考えることにします。

 ただ,197条1項1号の
「その株式の株主に対して前条第一項又は第二百九十四条第二項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの」
について,196条1項の
「株式会社が株主に対してする通知又は催告が五年以上継続して到達しない場合」
を,どう考えるかは,別の問題です。
 たとえば,会社が,株主に通知すべき義務を負っているのに,通知しなかった場合に
「通知が・・到達しない」
に含まれると考えるのは,おかしいですよね。
 また,無議決権株式のように総会招集通知が発せられず,配当もないような場合に,
「通知が・・到達しない」
という解釈を採ると,無議決権株主に帰責性がないまま,株式を売却することになり,憲法違反になりそうです。
 やはり196条1項については,「通知をしたのに,到達しない」と解釈すべきように思いますが,いかがでしょうか?
 
(質問コーナー)
Q1
株主総会における議題提案権(303条)及び議案通知請求権(305条)について2つ程質問させてください。
質問その① 議題提案権及び議案通知請求権は、取締役会設置会社において、6ヶ月前から総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権保有を要件としています。しかし 取締役会非設置会社においてはそのような要件を置いていません。この違いはなぜ生じるのでしょうか?
質問その② 取締役会設置会社のおける議題提案権、議案通知請求権は 300個以上の議決権保有を その要件のひとつとしています。しかし 他の少数株主権は 総株主の10分の1 だとか 100分の1保有という分数値を要件としています。なぜ 議題提案権、議案通知請求権のみが300個以上という具体的な数値を要件としているのでしょうか?
投稿 maru | 2006/10/30 1:26:39
A1
① 非取締役会設置会社は,所有と経営の分離の程度が低く,非公開会社でもあります。
 非公開会社である場合には,新しい株主が議決権を行使するためには,取締役会の承認が必要なので,6か月の継続保有要件を課す意味がありません。
 また,所有と経営の分離が低い非取締役会設置会社では,株主が,万能機関である株主総会の決議を通じて経営上の意思決定に広く関わることを前提にしているので,提案権に,議決権数の要件を課さず,提案権を積極的に行使するのが適当です。
② 上場企業の場合,100分の1といっても,むちゃくちゃ多いので,もしその要件しかないと,普通の株主は,事実上,議題提案権などが行使できなくなってしまうからです。

Q2
会社法363条1項に「業務を執行」する取締役が定められ、2項でこれらの者が自己の「職務の執行」の状況を報告しなければならないとあります。以前このブログ(10月5日Q5で、「総会の手続、役員等の選定、監査関係意外はみな業務執行だと思えばよい」と回答されておりましたが、この回答だと、上記363条2項の「職務の執行の状況」は何を報告すればいいのか理解できません。分かりやすく解説いただけませんでしょうか?
投稿 悩み続けて早3ヶ月 | 2006/10/30 8:36:43
A2
 あてはめの問題なので,解説しようがありません。
 不安でしたら,業務執行取締役がやった全ての職務について報告すれば,何の心配もいりません。

Q3
株式譲渡と対抗要件についてです。
会社の遅滞などによって会社に対して対抗要件無しに株式譲渡を対抗できる場合は、第三者に対しても対抗できると考えるのでしょうか。
例えば、株券不発行会社において株式譲受人が譲渡人と名簿の書換えを請求したものの、会社が不当に遅滞させている場合において、譲渡を譲受人らが会社に対して名簿の記載なしに対抗できると判例で解されていますが、同時に、譲渡人の債権者が株式の差押えをした場合などです。
また、書換えを請求している間や譲渡制限株式について承認請求・買取人指定請求をしている最中に差押えられた場合などは、やはり未だ株主名簿に記載されていないため、たとえ請求が差押えよりも早い時期になされていたとしても、差押えが優先するのでしょうか。
投稿 勉強中 | 2006/10/30 16:45:06
A3
 前段は,難しい問題ですが,第三者が信義則違反をしているわけではないので,第三者には対抗できないと解するべきであるように思います。

 後段の書換えを請求している間や譲渡制限株式について承認請求・買取人指定請求をしている最中に差押えられた場合は,当然,株券不発行会社で,名義書換前ならば,第三者に対抗することができません。

Q4
業績連動型報酬について2点お尋ねしたいのですが、
①取締役には、業績連動型報酬が規定されておりますが(361Ⅰ②)、なぜ監査役には 業績連動型報酬の適用条文がないのでしょうか。ほぼ同様の職務についている監査委員には 409Ⅲ②で業績連動型報酬を採用できるのと比べると、監査役と監査委員の両者で規定の仕方 がどうして違うのか理由が分かりません。
②409条3項但書で会計参与については、確定額報酬に限っておりますが、その反対解釈でそれ以外の機関である監査役に業績連動型報酬を採用しても違法とならないのでしょうか。
投稿 N&K | 2006/10/30 20:42:01
A4
① 監査委員は,監査しているだけではなく,取締役として業務執行の意思決定も行っていますから,業績連動型報酬を採用してもよいと思います。確かに,監査が甘くなるのではないかという不安はありますが,それは委員会設置会社制度の限界としてやむをえません。
② 409条は,委員会設置会社の規定ですから,監査役についての規定がないのは当たり前です。ですから,反対解釈をすることは不可能です。
 監査役の報酬は,「額」を定める必要があるので,上限のない業績連動型報酬を定めることはできません。
 ただし,上限のある業績連動型報酬を定めることはできます。
 詳しくは,千問や100問の第2版を読んでください。

Q5
最近になって100問を始め、最初に「本書を使った勉強法」を見てからやっています。事例問題については3つの力をどうやって行使するか何となくはイメージできるのですが、一行問題においては具体的にどうやって使っていけばいいのかまだつかみきれません(例えば、オウム返しの能力を磨くためにノートに書き出す、などです)。
なので、一行問題における3つの力の使い方を具体的に教えていただけたら幸いです。
非常に抽象的な質問で申し訳ありませんが、可能な範囲で結構ですのでよろしくお願いします。
投稿 ビギナー | 2006/10/30 21:15:08
A5
一行問題でも,「問いに対して,端的に答える」ということは,事例問題と全く同じです。
たとえば,100問の問3に
「各種の会社における債権者保護の態様について述べよ。」
とありますが,その答えとして
「会社法では,会社債権者の保護について,各会社の性質や想定する事業規模を勘案しつつ
① 取引開始や債権保全の決定をするための情報提供をするため,会社財産の状況の適切な開示を行い,
②会社債権者のための責任財産となる会社財産の流出を防止するという二つの観点から,債権者保護制度を構築している」
と,まず答えた上で(オウムの力),各種の会社ごとに,①と②に該当する条文を示していく(キリンの力)という感じです。
 100問の解答例は,ほぼ,そういうパターンになっています。

Q6
合併による債権者保護手続きについて教えて頂きたいことがあります。
知れたる債権者には格別に催告しなければなりませんが、催告の内容は
公告内容と同じこと(次に掲げる事項)でいいのでしょうか。789条2項の「格別にこれを催告…」の「これ」とは何を指すのかがよくわかりません。旧商法も同じ様な文言になっていますが実務上は例えば貸借対照表は催告書に記載していなかったようであるので教えてください。
投稿 補助者 | 2006/10/31 0:23:09
A6
催告する内容は,公告する内容と同じだと解しています。

Q7
全部取得条項付種類株式の取得についてお伺いいたします。
株主総会で全部取得条項付種類株式の取得し、取得の対価を募集株式の払込金のみとする特定募集を行う場合に、議案は、全部取得条項付種類株式の取得の件と募集株式の発行の件は同一議案としないとまずいと思うのですが如何ですか。
全部取得条項付種類株式の取得の件だけ可決とか募集株式の発行の件だけが可決などないと思いましたのでご質問させて頂きました。
投稿 南斗六星 | 2006/10/31 8:14:04
A7
目的を達成するために必要ならば,一つの議案にすればよいと思います。

Q8
監査報告についてお教えください。
監査役会設置会社においては、「監査役の監査報告」と「監査役会の監査報告」があります。招集通知に添付すべきは後者のみとされていますが(会社法施行規則第133条1項2号ロ)、備え置くべき監査報告(会社法442条1項)については特段の定めがありません。監査役・監査役会のいずれの監査報告も備置対象となるという理解でよろしいでしょうか。
投稿 しん | 2006/10/31 12:57:37
A8
 そうですね。両方とも備置対象になると思います。

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2006年10月29日 (日)

社債権者集会決議の省略の可否

マイナーな話題ではありますが、最近、質問を受けた事項の中で気になっている
  「社債権者集会の決議の省略の可否」
についてお話しします。

ご存じのように、株主総会の決議や取締役会の決議については、決議の省略の規定があります。

しかし、監査役会、委員会と社債権者集会の決議については、「決議の省略」の規定がありません(監査役会と委員会への「報告の省略」の規定はあります)。

このうち、監査役会と委員会の決議の省略については、取締役会の決議の省略の規定を設けるにあたり、法制審議会の過程で話題になったものの、省略は妥当ではないということになったので、省略の規定は設けませんでした。

また,社債権者集会の決議については、省略のことが中間試案に載っていましたが,旧商法でも、株主総会の決議の省略があるにもかかわらず、社債権者集会の決議の省略はなかったことや、社債権者の保護の観ら決議の省略を肯定するのが妥当だろうかという疑問もあり、決議の省略の規定は設けませんでした。

 ところが、最近、ある人から、
「社債権者の全員が同意すれば、社債権者集会の決議は省略できるのではないか」
という質問を受けましたので、解釈として、決議の省略が可能かどうかを、再度、検討してみましたが、やはり
 法律の規定がない以上、社債権者集会の決議の省略は、できない
と答えざるをえないように思います。

 極めてラフに考えれば「社債権者がみんな同意しているのだから、決議を省略してもいいのではないか」という考え方も成り立たないわけではないでしょう。

 しかし、社債権者集会は、単純に、私的自治だけに委ねられているわけではありません。

 社債権者は、一般公衆である蓋然性が高いので、社債権者を後見的に保護する見地から、社債権者集会の決議を行ったとしても、裁判所の認可を受けなければ、その決議は効力を生じないとされているのです(734条2項)。
 そして、裁判所は、①社債権者集会の招集の手続又はその決議の方法が法令又は第六百七十六条の募集のための当該社債発行会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料に記載され、若しくは記録された事項に違反するとき、②決議が不正の方法によって成立するに至ったとき③決議が著しく不公正であるとき、④決議が社債権者の一般の利益に反するときには、認可することができないこととされていることを考えると、会社法は、社債権者の手続的利益には、ことのほか気をつかっているように見受けられます。

 「社債権者がみんな同意している」というと聞こえはいいのですが、法律家としては、社債権者が、適切な情報のもとで、自由な意思のもとで、同意したのかどうかが気になります。
 株主総会の決議が省略されるよう会社の株主は、株主相互の関係が緊密な小規模会社が多いと思いますが、社債権者は、会社の外部者であり、社債権者相互の緊密な関係も類型的には想定しにくいことを考慮すると、招集手続や集会における議論や決議という手続を重視する方が、自由意思の確保という点からは安全です。
 社債権者集会の決議の省略の規定を設けなかったのは、そうした疑問を払拭できなかったということも理由のひとつでありますし、現実問題として、同意書面や議事録の備置・閲覧等の規定も用意されていないので、解釈によって、決議の省略を認めるというのは、相当ハードルが高いと思います。

 さらに、社債権者集会の決議要件は、普通決議なら定足数はないし、特別決議ならば、議決権の総額の五分の一以上が定足数なので、書面投票を含めて考えれば、社債権者集会の開催を省略しなければ困るというほどの必要性もないのではないでしょうか(ニーズとしては、期間の短縮が考えられますが、社債権者集会を開催しなければならないほどの事態が生じているのに、期間の短縮の利益をどこまで重視すべきかは立法論としても検討する必要があります)。

 以上の理由から
 社債権者が全員同意していたとしても、社債権者集会の決議の省略は認められない
というのが、私の結論ですが、解釈はいろいろあっていいので、オウンリスクでトライするのを否定するものではありません。
 ただ、裁判所が認可してくれない可能性が高いので、やめた方がいいのではないかとも思います。

(質問コーナー)
Q1
会社法100問について最近勉強を始めたものですが質問させてください。問14P86(二)(1)につき借り入れは発起人としてなし、その後代表取締役になっているにすぎないため、利益相反にあたらないのでは?問16P93につき報酬について定款の記載があったか否かで場合分けしてもよろしいですか? 宜しくお願いします
投稿 東洋 | 2006/10/27 1:37:47
A1
発起人には、株式会社の設立を条件として、設立後の会社の資金を貸し付ける権限はありません。したがって、株式会社の資金を貸し付けているとすれば、代表取締役のはずで、貸し付けていないとすれば、単純な業務上横領です
財産引受以外の開業準備行為に対する報酬について、一切、帰属する余地がないという見解にたてば、定款の記載の有無で場合分けをする意味がありません。逆に、財産引き受けの規定の類推適用をする見解にたてば、場合分けをすることになるでしょう。

Q2
Q7について回答していただきありがとうございます。やはり会社法では一部の株式の転換することに関する条文はなかったのですね。
A7について重ねて質問をさせいていただきたいのですが、なぜ会社法は一部の株式の転換について定めていないのですか?
よろしくお願いします。
投稿 リー | 2006/10/27 8:40:53
A2
同一種類の株式の一部についてのみ、種類を転換するのは、株主平等の原則との関係で難しい問題があるからです。

Q3
当期純損失を計上したので、①期末配当は無配、②資本準備金を取り崩して資本の欠損のてん補に充てる・・・ということを考えている場合、株主総会での決議の仕方はどのようになるでしょうか?
まず「剰余金の処分の件」を付議して、期末配当を行わない旨のみを決議し、さらに別途「準備金の額の減少の件」を付議し、資本準備金を取り崩して資本の欠損のてん補に充てる旨を決議すればよろしいのでしょうか?
投稿 悩める株式課員 | 2006/10/27 11:40:56
A3
期末配当を無配にするのには、特に決議は必要ありません。
資本準備金を取り崩して、資本の欠損のてん補に当てるためには、欠損の額に相当する額の資本準備金を減少させる決議を行います。
Q4
弊社では新株予約権を発行しており、行使条件として、「権利者である社員は行使時においても社員であることを要する」旨を定めています。
今般、権利者の1人である社員が退職し、行使することができなくなるので、新株予約権の一部消滅の登記を申請したら認められました。
ただ、10/7の質問コーナーA3のご回答「現在の新株予約権者が行使できなくなったから,当然に消滅するのではなく,誰が新株予約権者になったとしても行使できなくなったときに消滅するということです。」ということであれば、弊社の取った方法および法務局が消滅登記を認めたのは間違いだったということはないでしょうか?(自己新株予約権として取得してから取締役会決議の基づき消却するのが正しいやり方?)
ご教示の程何卒よろしくお願い申し上げます。
投稿 ストックオプショニア | 2006/10/27 12:09:53
A4
まあ、新株予約権の条件の解釈にかかる問題ですので、必ずしも間違いではないのでしょう。
Q5
 関連当事者との注記(同140条)の記載対象となる取引の範囲について、Q5・A5(10月27日)で「今のところ,会計基準と異なる取扱いをする予定はありません。」とのご回答をいただきました。ありがとうございました。会計基準の制定により、解釈が変わったという理解でよろしいのでしょうか?
投稿 MALLORCA | 2006/10/27 17:53:20
A5
8月9日の段階から、事情によっては関連当事者に該当するという答えですので、解釈が変わっているわけではないと思うのですが。
Q6
新株予約権の消滅(会社法287条)について、会社法で新設された規定のため、文献には記述がなかなか見当たらないので、教えていただければと思います。
 例えば、新株予約権をABそれぞれに有利条件で1000株ずつ付与する取締役会決議+株主総会特別決議がなされ、ABそれぞれと1000株ずつ付与する契約を交わし登記しました。ところが、Bが懲戒解雇されたため新株予約権の行使条件を充足しなくなったので、Bに付与した新株予約権1000株が消滅しました。
 この場面で、Bに付与して消滅すべき枠を流用して、同じ条件でCに1000株付与することはそもそも可能でしょうか?可能だとして取締役会の決議のみで足りるのでしょうか、再度株主総会の特別決議も必要となるのでしょうか?
 株式の消却については神田秀樹会社法第7版116頁に取締役の決議だけで消却分の再度発行が可能っぽい話が出ていました。新株予約権の消滅も授権資本制度をスライドさせて同様に考えることが合理的ではないかと思いますが、他方、新株予約権の数に変更が生じた場合は登記事項であるところ(会社法911条3項12号イ→915条1項)、2000株で登記しているので、Bの新株予約権消滅によりいったん1000株に減少させる登記をなすのが筋であるため、このような流用を想定していないようにも思えたので、いずれも分があるように見えるのです。
投稿 ろぼっと軽ジK | 2006/10/27 18:08:32
A6
発行可能株式総数の話と、発行決議の話がごっちゃになっていませんでしょうか?
1000個の新株予約権を有利発行する決議をして、1000個の新株予約権を発行しているのですから、「枠」という話は出てこないはずです。
ちなみに、有利発行した株式を消却したからといって、次に同種の株式の有利発行を取締役会決議で行えるわけではありません。
Q7
会社法370条に関連して。監査役の権限が会計監査に限定されている非公開小会社ですが、定款に、取締役会の決議の省略のための規定を定めときに、「当該提案について監査役が異議を述べたときを除く」と定める事は可能でしょうか。
投稿 はりこのトラ | 2006/10/27 22:45:57
A7
370条の規定ぶりから考えると、会計監査限定監査役の異議を要件とすることはできないと思います。

Q8
資本金の額を減少する場合について質問させてください。
株式会社は 資本金の額の減少がその効力を生ずる日前ならば、いつでも当該日を変更することができますよね(449条7項参照)。
 そして、この条文につき 商事法務No1746 p32において 決定機関の定めはないので 株主総会や取締役の決議によらず、業務を執行するものが変更することができる との記載があります。
 しかし、個人的には 447条1項3号において 株主総会の特別決議を経て定めた 資本金の減少がその効力を生ずる日 を株主総会の決議を経ずに変えてしまうことに違和感を覚えています。これは株主総会の決議を蔑ろにするものではないでしょうか?
投稿 maru | 2006/10/29
A8
ないがしろにすると感じる人もいれば、感じない人もいるでしょう。どう感じようとも、法律論ではありません。
仮に変更を許したくないのならば、株主総会で、その趣旨の決議をすれば、取締役には忠実義務があるので、その決議に拘束されると思います。

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2006年10月27日 (金)

共有持分の売り渡し請求

 今週は、会社法100問のCM週間になっていますが、本日は、私が、チェックした二版の解答例の中で、初版からかなり論点を追加した
 「相続人に対する譲渡制限株式の売り渡し請求権」
について、お話しします。

 会社訴訟は、家事事件と言われるくらい、会社をめぐる争いは、兄弟喧嘩や相続に端を発するものが多いのが実情です

 そうした実態の中で、相続人に対する譲渡制限株式の売り渡し請求権は、
 「後継者として働いている子供に株式を独占的に相続させる」
ということを実現することができる制度であり、マイナーながらも期待の高い制度の一つです。

 実際、これからの時代、社長をしている親父さんが、真剣に後継者である子供達のことを考えるのならば、
①遺言を書いて、株式を後継者に全部相続させるか、②売り渡し請求権を定款に定めた上で、後継者を取締役にするくらいの配慮が欲しいところです。

 このうち、①は、相続財産のほとんどが株式であるというような場合には、遺留分等の問題から実現が難しいこともありますし、遺言を書くのは、他の財産のことも含めて考えなければならないため、身構えてしまいがちになります。
 しかし、②の売り渡し請求権ならば、とりあえず遺産分割で相続分に応じて株式を分けた上で、会社の資金で株式を買い取れるし、遺言を書くより定款変更の方が気が楽です(登記は不要なのでお金もいりません)から、なかなかお勧めの制度です。

 ただし、この売り渡し請求権については、
 株式会社が相続を知った日から一年を経過してしまうと、請求できなくなる
という制限があります。

 ここで、よく質問されるのが
「遺産分割協議が整わないうちに、1年経過してしまいそうなときは、どうしたらいいのか」
という問題です。
 
 一番、単純なのは、会社が、相続財産である譲渡制限株式の全部について、その共有者である相続人全員に対して、売り渡し請求をすることです。

 ただし、この方法は、全株式が相続財産になっていたらどうするかという問題や分配可能額が足りなくなる可能性が高いという問題があります。
 
 それで、より現実的な方法はないかと、みんなで、色々と議論したところ
 相続人に対する売り渡し請求権は、株式の売り渡しだけではなく、株式の共有持分の売り渡しを含むと考える
という解釈が優勢になりました。

 確かに、株式の共有持分を処分した場合の権利移転要件や対抗要件は、株式に準じて取り扱われるという解釈をとるしかありませんし、譲渡制限株式の共有持分を譲渡するときも、譲渡承認を採らなければならないと考えるべきでしょう。

 このように株式の共有持分に関する規律は、株式の規律に従うという私法の一般原則からすれば、相続人に対する株式の売り渡し請求権により、株式の共有持分の売り渡しを請求することができると解するのが合理的です。

 もちろん、色々な解釈論があってもよいのですが、私は、持分売渡請求を肯定するのが、妥当性と論理性の両面で優れていると思いますし、私がチェックした会社法100問の二版の解答例でも、その見解を採っていました。初版から、大きく記述が変わったところなので、二版を買った方は、読んでみると参考になると思います。

 さて、この相続人に対する売り渡し請求権については、toraさんから次の質問が来ています。

「174条「相続人等に対する売渡請求」において,会社が直接買い取るのではなく、会社が売渡先を指定できることを定款に定めることは可能でしょうか。
 相続人の株式を売渡請求を利用して、会社の指定する者に買取させたいと考える場合、
(相続人→会社→指定人)
という流れよりも
(相続人→指定人)
の方が結果は同じなのですが、手続きが簡便になると思います。
 174条の考え方についてご教授頂けますでしょうか。
 また174条において会社が売渡先を指定できない場合、その理由を教えて頂けると大変助かります。」

 この質問に対する答えは、NOです。
 つまり、会社が売渡先を指定することはできません。
 相続人に対する売り渡し請求権は、条文を見れば明らかなとおり、「株式会社に」売り渡すことを請求することができる権利です。

 立法論として、指定買取人への売り渡しを請求することができるようにするのは、ありうるかもしれませんが、そうすると、取締役会が、株主でない者(たとえば、株主でない代表取締役)を指定したりすることもできるようになり、強力すぎるような気がします。
 また、現行法のように分配可能額の範囲内でなければならないという縛りがかかるくらいが、バランスが良い制度のように思います。

 売り渡し請求権を使いやすくするために、持分の売り渡し請求を認める一方で、指定買取人はダメと言ったりして、首尾一貫していないように思う方がいるかもしれませんが、条文の枠内で、バランスの採れた解釈をするのが、仕事なので勘弁してください。

Q1
サミー先生、前回のQ1にお答え下さり、ありがとうございました。
「第三百十九条第一項の場合」とは、そういう意味(提案をした場合)なんですね。目からウロコと申しますか、あたりまえと申しますか・・・勝手に一人で「全員が賛成した場合」とか「株主総会の決議があったものとみなされた場合」だと思い込んでおりました。お恥ずかしい・・・。
投稿 みひろ | 2006/10/24 23:53:47
A1
 すいません。
 答えた後に仲間内から指摘をうけたのですが,みひろさんは,招集手続の省略(300条)で株主総会を実際に開催した場合の質問をされていたんですね。
私は,株主総会決議の省略(319条1項)の話だと勘違いして,答えました。
さて,招集手続きを省略したとしても,株主総会を開催する以上,備置開始日は,総会の日の2週間前からになります。
 したがって,もし2週間前から備置していなかった場合には,備置義務に違反することになり,これが合併無効事由になるかどうかという解釈問題になると思います。

Q2
「決議のときに分配可能額はなくても,配当のときに分配可能額があれば,461条に違反しません。」についてですが、本件のようなケースで配当の時にも分配可能額がない場合、
①違法配当ではない(配当決議、配当行為自体には違法性はない)
②462条あるいは465条1項10号の責任が生じるのみ
という考え方で宜しいのでしょうか?
この場合、465条1項10号ロについてですが、
設例のように減資後、資産の部1200万円、資本金0円、剰余金1200万円となり配当時においても同様の資産状況の中1200万円全額を配当した場合、株主・取締役の責任はどのようになるのでしょう?465条2項ので取締役の責任については免除可となっていますが・・・
剰余金の配当を行う場合、461条2項との関係で配当時に最低でも300万円の純資産を残した形にしておかなければならないと思うのですが、この基準を満たさずに配当がなされてしまった場合(本例のように配当時においても減資直後と同じ資産状況のようなケース)、株主・取締役は誰にいくらのどういった義務を負担するのでしょうか?
何度も条文その他を読んでいるのですが、そのあたりが理解できません。
お多忙と存じますが、再度ご教示いただければ幸いです。
投稿 スケスケ | 2006/10/25 10:06:56
A2
 配当のときに,分配可能額がなければ,違法配当で(仮に決議のときにあったとしても,違法配当です),462条の責任が生じます。
 設問の場合には,すくなくとも残存純資産額300万円を超えて配当するのなら,461条に違反し,462条の責任が生じます。
 465条は,配当時には分配可能額の範囲内であっても,その後最初の決算期の計算書類によって計算される分配可能額を超える場合の責任であり,設問の事例とは,直接関係ないと思います。

Q3
株式無償割当ての件でご回答いただき、ありがとうございます。
毎回のまずい質問で、すみません。
無償割当ての実質が株式分割と同じというのは分かるのですが
無償割当は、(ぱかっと割れる)分割と異なり、
割り当てるための株式の存在が必要ですよね?その株式が、
①既に発行され、自社が保有している株式に限られるのか、
②割当てるために新規に発行することもできるかが、
わからないのです。
投稿 らくだ | 2006/10/25 11:20:42
A3
無償割当てで,株式を発行することも可能です。

Q4
サミーさん、監査役会の権限について教えてください。
「会社に対する取締役の責任免除に関する議案の同意権」、「会社が取締役を補助する為の訴訟参加に関する同意権」は、以前は商法特例法で監査役会の権限とされていたと思いますが、会社法では「『監査役』とあるのを『監査役会』とする」という規程がないようです。
実務上、監査役会における監査役全員一致決議という形で同意したこととしてよいでしょうか?
投稿 トボッケー | 2006/10/25 13:48:00
A4
 監査役会に監査役が全員出席し,全員一致の決議をすれば,監査役の全員の同意となります。監査役会への読み替えを置いていないのは,監査役会の開催をしなくてもよいようにするためです。

Q5
 サミーさま 初めて質問いたします。ご指導、よいyくお願いします。
 「2006年08月09日 人的分割」 でのアンサーで、葉玉先生に次のように教えてもらいました。この回答に関連して、お教えいただきたいことがあります。
 下の問の 2、平取Bについていえば、第三者(相手方会社)のために当社との間で行う取引であり、10月17日公表の企業会計基準第1号「関連当事者の開示に関する会計基準」の用語の定義5、には、「関連当事者との取引」に含まれるとあります。また、Q3の1、の取引についても同様です。会社法ではこの会計基準とは異なる扱いとなるのでしょうか?
<問>
 貸借対照表の注記事項のうち、取締役・監査役に対する金銭債権の総額(会社計算規則134条6号)の対象範囲と関連当事者との注記(同140条)の記載対象となる取引の範囲についてお教えください。
次の取引は対象となりますか? 
1、会社が取締役のために第三者とする取引(いわゆる間接取引)
  例:取締役が代取をしている他の会社のために債務者である銀行に対し保証する取引
2、当社の代取Aと相手方の会社の代取Cとの間の取引
  当社:代取A、平取B 相手方:代取B、代取C とする。
3、会社が監査役のために第三者とする取引(いわゆる間接取引)
4、当社の代取Aと相手方の会社の代取Cとの間の取引
  当社:代取A、監査役B 相手方:代取B、代取C とする。
Posted by MALLORCA at 2006年08月08日 16:01
A5
 今のところ,会計基準と異なる取扱いをする予定はありません。

Q6
34条1項では「発起人は・・・引受け後遅滞なく・・金銭の全額を払い込み(を)しなければならない。」と規定されていますが、この点に関し、93条1項で設立時取締役の事前調査が許容されている(千問Q66)のと同じく、事前払込も許容されるが、近接した日付であることを要求するという運用が登記実務ではなされているとお聞きしております。先日設立登記の際、登記申請日より1ヵ月半前に口座開設のため1000円を振り込み、その後定款認証日より1週間前に29万9000円を振り込み、計30万円を「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(以下、「出資額」)とした登記を申請したところ、1ヵ月半前の1000円に関しては、「近接」性を満たしていないと法務局の方から指摘を受けました。私は何回かに分けて「出資額」を振り込んだ場合、「近接」性の判断は、定款認証日と最終の払込日(本事例では、29万9000円を振り込んだ時点)ですべきと思いますが、如何でしょうか?例えば会社設立を考えるサラリーマンが毎月5万円を貯金して1年後60万貯まった時点で会社設立をしようとした時、1年前の時点から「近接」性を判断されるのは不合理だと思います。また、「近接」性の判断は、当該会社の「目的」をも考慮すべきだと思います。具体的には鉄道会社のように設立に多大な準備が必要とされるような会社の場合、「近接」性は通常の会社より長めに考えるべきではないでしょうか?もっとも実務的には「近接」とは2週間のことである、と決めていただくのがやりやすいのですけど。
別件ですが、「振込み」は良いが「入金」は不可、との運用がなされているともお聞きしますが本当でしょうか?通帳を忘れた者が振り込んだ場合は良くて、通帳を持参したものが入金した場合は不可、との運用は合理性がないと思いますが。
開業率向上のため設立手続きを簡素化し、ただ健全な設立のため最低限の規制は置き、あとは事後規制に委ねる、というのが会社法の意図するところだとすれば、現在の運用は不合理な面があるのではないかと思います。御意見を頂戴できれば有難いです。
投稿 NK | 2006/10/25 20:58:09
A6
 申し訳ありませんが,具体的な事例に対するあてはめについては,お答えすることはできません。

Q7
株式の内容の変更についての質問です。
非公開会社(全ての株式について譲渡制限のみ定めている)で、一部の株式を取得条項付株式に転換する場合には、何条が適用されるのでしょうか?110条では、発行する全ての株式の内容を変更する場合に適用されるようですし、111条だと、種類株式発行会社を対象にしているようですので、この場合には適用できないのではないかと思っています。
よろしくお願いします。

投稿 リー | 2006/10/26 11:06:37
A7
一部の株式のみを転換するというのは,本来,会社法では予定していない方式です。
ただ,解釈により,株主全員の同意があれば,可能だと言われています。

Q8
サミー様 現物出資財産の「給付」についてご質問させてください。
この給付とは、「所有権の移転」という意味で宜しいのでしょうか。①「引渡し(占有の移転・登記必要書類の交付)」②「対抗要件」を備えることまで意味しているのでしょうか。
①については、旧法下の下級審判例で、登記に必要な書類が会社に交付されなければ無効とする判例(東京地判S38.10.31)があるようですし、そうすべきように思います。
②につきましては、設立に関する会社法34Ⅰでは、「発起人全員の同意があるときは」対抗要件は、「会社の成立後」にすることができるとの規定がありますが、会社法208Ⅱは「給付しなければならない」とのみ記載するにとどまっております。旧法では、設立の規定が準用されていたのですが、会社法では、それが見当たりません。募集株式の発行の場合も、対抗要件を備えるのは、払込み期日又は払込み期間の末日(株主となる日)以降であっても構わないと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、よろしくお願い致します。
投稿 moremi | 2006/10/26 11:34:25
A8
 募集の場合には,すでに会社に法人格があるので,給付期日までに,対抗要件を備えるべきだと思います。
Q9
施行規則76条2項3号では「現に監査役であるときは(その)地位及び担当」を書くべきこととなっておりますが、監査役の「担当」とは何でしょうか?
(地位は、常勤/非常勤でしょうね。特定監査役についても記載すべきでしょうか?)
よろしくお願い申し上げます。
投稿 S.N. | 2006/10/26 15:25:29
A9
 担当は,各会社で役割分担(計算書類を中心に監査するとか,業務中心とか)を決めている場合には,それぞれの役割を,なければ,会社の業務全般に対する監査ということになるでしょう。
 特定監査役かどうかは,「地位」にはあたらないと思います。

Q10
譲渡制限株式について承認を受ける事柄が、商法時代は「株式の譲渡」だったことに対し、会社法では「株式の譲渡による"取得”」とその言い方が変わりましたが、単に言い回しの違い(意味は同じ)と理解すればよいのでしょうか?それとも「株式の譲渡」という表現だけではカバーできない状況が想定されているのでしょうか?
投稿 ヤサオトコ | 2006/10/26 16:33:07
A10
譲渡は,譲り渡すこと,譲渡による取得は,取得することなので,立場が違います。
それだけのことです。

Q11
会社法433条の帳簿閲覧権についてご教示ください。株主が会社に対し、帳簿閲覧権を行使した際、会社が当該株主に対して「秘密保持契約を締結しない限り、閲覧に応じることはできない」することは適法でしょうか。
433条2項各号のいずれかに該当することを会社が立証しない限り、困難であるようにも思うのですが、いかがでしょうか
投稿 SMOKY | 2006/10/26 17:35:48
A11
そのような抗弁は,違法で,成り立ちません。

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2006年10月24日 (火)

100問の使い方(初心者編)

 新会社法100問2版は,順調にいけば,11月中旬には,書店に並ぶようです。

 ダイヤモンド社さんのお話によれば,初版のときには品不足が著しかったので,初版よりも多めに刷るみたいですが,会社法ブームも去り,競合の本も沢山出たためか,あまり強気の数を刷るわけではないようです。2版が初刷で絶版ということにはならないでしょうが,勉強を早めにしたい人は,予約しておいた方が安全かもしれません。この時期に1月待たされると,時間的にはかなり厳しくなりますから。

 葉玉さん自身も,法務省から去っていきましたが,他の会社法立案担当者の会のメンバーも,ほとんど全員が法務省民事局から去ってしまったため,端から見ていても,改訂作業は大変そうでした。

 初版のときは,みんな
「とにかく実務家や受験生に対して,一刻も早く,会社法に関する総合的な情報を提供しなければならない」
という使命感をもって,時間優先で書いていましたが,今回は,この1年間の議論を踏まえて,論証を磨きつつ,初心者から上級者まで,誰にでも使いやすく,分かりやすいものにするということを主眼にじっくりと改訂しているように思います。

 私が,見た限りでは
1 初心者は,とりあえずComprehention Test(確認テスト)だけを全部解く。
2 次に,What's Missing(間違い探し)を全部解く。
3 1・2で間違ったところを再度,見ながら,3つ星の論文問題の答案構成をする。
というだけでも,相当な実力がつくのではないかと思います。

 まあ,それだけで,論文が書けるようになるほど甘くはないでしょうが,時間の足りない人の即効薬としての効力は高いでしょう。

 他方,答案の方は,ご承知のように,論点の拾い方もハンパではなく,論述も
「本当に,よく,ここまで書きますね。実は,暇なんですか?」
というくらい詳しく書かれています。実務家や研究者が見ても,読み応えがあるでしょう。

 私が勉強していたころに,こんなに詳しい論述があれば,苦労は少なかったと思いますが,初心者は,長いというだけで,根気が続かず,挫折しがちになるのが世の常です。

 そこで,ズボラな私の論文勉強法をひとつお教えします。

 それは,
初心者が,長い論文を読むときは,論文の中の記述を
A 条文を引用したり,条文の内容を単に説明している部分
B 条文の趣旨を説明している部分
C 反対説や自説を述べている部分
の3つに分類して,記述の横に,A,B,Cと書き込んでいく
というものです。

 こうした単純作業を入れると,集中力がとぎれにくくなりますし,内容をそれなりに理解しないと分類できないので,理解力も高まります。

 また,この作業をすると,
「実は,論文の中には,Aの部分がすごく多い」
ということに気がつくはずです。これは,基本書だって,普通の論文だって同じで,実は,条文の内容を単に説明するだけで,すごくスペースを取るのです。

 このことは,
論文を書くときに,必要となる条文を探してきて,六法を見ながら,その内容をかみ砕いて書くだけで,かなりの分量が稼げる
=条文を探し出す力さえ,あれば,それなりに論文の骨格はできあがる
ということを意味します。

 こうした骨格に,Bの条文の趣旨という肉付けをして,書けるようになれば,残りのCは,
  塩こしょう
みたいなものです。
 全く塩こしょうをかけないと,味気ないですが,その場の状況で,適当な分量を加えればなんとか,形の整った論文になるのではないでしょうか。

 私は,わりとユルい感じの論文スタイルで,論文試験に合格したので,根気のない学生さんは,以上の勉強法を参考にしてみてください。

<追伸>

 昨日のQ4で,親会社が孫会社に現物出資をする場合の資本金増加額の話について
「すいません。通常の現物出資を前提に答えました。共通支配下なら、帳簿価格の範囲で資本金の増加額を決めることになります。」
と答えました。
 この答えは間違っていませんが,親会社が,孫会社に現物出資をするときに,共通支配下の取引になるのは,「事業」を現物出資したときです。
 事業以外のものを現物出資したときの会計処理は,会計基準ではよく分からないところですが,通常の現物出資と同様,時価と考えるのが妥当ではないかと思います。

(質問コーナー)
Q1
   会社法782条などの「吸収合併契約等備置開始日」についてお尋ねします。
例えば、11月1日に、合併契約を締結する旨の取締役会決議を行って当該合併契約を締結した後、同日、会社法300条の規定に基づき(あるいは全員出席総会で)招集手続を経ずに臨時株主総会を開催してその合併契約を承認したとします。
この場合、当該臨時株主総会の2週間前の日が会社法782条などの「吸収合併契約等備置開始日」に当たるとすると、その日にはまだ備置すべき合併契約書が存在しません。
このような場合には、次のどれが正しいのでしょうか。
1.備置すべき書類が完成した日から備置すればよい。従って、11月1日から備置する。
2.上記のような事例では、会社法300条の規定に基づく(あるいは全員出席総会による)招集手続を経ずに開催する臨時株主総会は不可となる。
3.その他
ところで、氷屋さん、とは、郡谷さんですよね。新キャラかと思いました。
投稿 みひろ | 2006/10/23 0:25:13
A1
782条2項1号に「第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日」とあります。
したがって,提案の日から備置を開始すれば足ります。

Q2
減資・剰余金の配当について質問です。
BS上の資産の部が現金・預金1200万円、負債の部が0円、純資産の部が資本金1000万円、剰余金200万円の場合において、資本金の額を1000万円減資する決議と、減資が効力を生じるのを条件に1200万円の剰余金の配当を行う決議を行ったとします。
このような剰余金の配当は、財源規制を無視したもので違法な配当になると思いますが、葉玉さん時代のブログに「違法配当も配当としては当然に有効である」旨が重ね重ね記されていたと記憶しています。
本件のような配当も配当としては有効であり、事実上出資財産全額の払戻を受けることが可能と考えますが、いかがでしょうか?
また、本件のように債権者がいないようなケースでは、配当を行った会社側に債権者等に対する責任は生じないと思いますが、このような手続を行った場合に生じうる問題点というのがあればご指摘いただければ幸いです。
投稿 スケスケ | 2006/10/23 8:29:08
A2
 減資をすれば,分配可能額が1200万円になる場合に,減資を条件に1200万円の剰余金の配当を行う決議は,「財源規制を無視」してはいませんので,有効です。
 決議のときに分配可能額はなくても,配当のときに分配可能額があれば,461条に違反しません。
 ただし,出資するときから,減資して全額払戻を受けるつもりだった場合には,見せ金として,払込自体を無効にされる可能性もあります。

 ちなみに,「違法配当が有効である」ということと,「事実上出資財産全額の払戻しを受ける」ということは,別です。
 たとえば,質問の事例で,1000万円の減資をせずに,配当すれば,その配当は有効ですが,株主は,交付を受けた金額を会社に返還する義務を負います。
 また,違法配当は有効でも,違法配当罪は成立します。

Q3
Q9で回答を頂いた猫太郎です。登記原因にも勿論興味はあります。しかし,質問の真意は,取締役兼代表取締役Aが死亡した場合,取締役としては民法653条1号により退任し,①代表取締役としては,取締役と代表取締役の地位は未分化であり別個の委任契約が存在しないため,代表取締役であるための資格(会349Ⅲ,同362Ⅲ)を失うことで退任すると考えるのか,それとも②代表取締役イコール取締役であるため,取締役と同一の原因で退任すると考えるのか,そのいずれかをお聞ききしたかったのです。
また,これは死亡だけでなく,取締役としての退任事由が生じた場合に共通していえることなのかも気になっています。改めて質問させて頂ければと思います。
投稿 猫太郎 | 2006/10/23 11:49:25
A3
 法的にいえば,「死亡」すれば,権利義務の帰属主体になりえないので,取締役と代表取締役の関係をどのように考えるにしても,取締役・代表取締役は,「死亡」により,その地位を失います。こう考えれば,同一の原因でしょう。
 また,取締役としての委任契約は,受任者の死亡により終了しますが,その場合に,取締役の地位を失う結果,代表取締役の地位も失うと考えることもできれば,取締役の委任の内容として代表取締役となることが含まれているのだから,取締役としての委任契約が終了すれば,当然に代表取締役の地位も消滅すると考えることもできるでしょう。
 以上のように「死亡」に関して言えば,取締役の地位の喪失原因と,同一の原因と,異なる原因が混在しているということができます。

Q4
9月決算会社の非公開会社で、17年9月末には中会社、同年12月に減資により小会社となったものの、商法特例法27条により小会社特例規定は適用されず、会社法施行日まで監査役の権限に会計監査限定はありません。
会社法施行日に整備法53条により定款に会計監査限定の定めがあるものとみなされるところですが、監査権限の維持のために、法の施行を停止条件として会計監査限定の定めがないものとする旨の定款変更決議をあらかじめ行っておいた場合(経過措置本70ページ)、
1)監査役の任期には変更がないのでしょうか、
2)それとも会社法施行日に、会社法336条4項3号の定款変更が効力発生したものとして、監査役の任期が満了するのでしょうか。
会社法336条4項3号が監査役の権限の限定が解除される点を意識しているのであれば、1)が合理的だと考えます。しかし、ほんの一瞬だけみなし規定が置かれ、次の瞬間それが廃止されているという気もしなくもないので、迷っています。
投稿 Junior Comptroller | 2006/10/19 20:05:58
A4
監査役の任期は変更されません。

Q5
185条の無償割当てができる株式は,自己株式のほかに、何がありますか?
(募集株式の方式では、対象となる株主全員に,申し込ませる必要がある〔擬制可能かもしれませんが〕上に、払込金額をゼロ円にすることはできないはずです)
あまりにも基本的な質問で恐縮ですが、ほかに具体例が思いつきません。
投稿 らくだ | 2006/10/23 15:04:17
A5
無償割当てについて,根本的な誤解があると思います。
無償割当ては,会社が,株主に対し,自己の株式を無償で発行する特別な制度であり,株式分割のようなものです。

Q6
サミーさん。解散手続に関してご質問させてください。
旧商法407条では、会社が解散したときは、株主へその旨の通知を発しなければならないと定められておりました。
会社法には同様の条文が見当たりませんが、会社法の下では、このような通知は発しなくてもよいという理解でよろしいでしょうか。
投稿 ガバナンス | 2006/10/23 15:07:15
A6
発する必要はありません。

Q7
合同会社へ出資して加入する場合や現在社員である者が追加出資をする場合に全額を資本剰余金にして資本金を増加させないことはできますでしょうか。
株式会社ですと法445条で2分の1は資本金にしなければならないと思いますが、合同会社には法445条のような規定がないので全額資本に組入れなくてもよいように思いますので。
投稿 keipyon | 2006/10/23 16:36:05
A7
2分の1以上というような制限はないので,資本金を全額組み入れなくても結構です。

Q8
サミー様、取締役の「増員」の意義について教えてください。1000問のQ422のケースでは、補欠にならない取締役のことが記載されていましたが、例えば、5名在任の取締役の内、1名だけ辞任し、「後任者」として1名を選任した株式会社の、定款には、「3名以上7名以下の取締役を置く」「補欠または増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする」との規定がある場合、当該「後任者」取締役の任期は、「増員」とみなして、他の取締役と同時に任期満了となる、と考えて良いのでしょうか。
投稿 会社法難民 | 2006/10/23 19:32:13
A8
それは,定款の解釈問題なので,私は答えようがありません。
増員と「みなす」かどうかではなく,増員に「あたるか」どうかですね。
取締役の任期は短縮することができますから,定款の定め方次第で,可能な場合もあるでしょう。

Q9
 従来は、定款で「当会社の株式の譲渡には取締役会の承認を要する」とか「株式の譲渡には取締役会の承認を要する」と規定していましたところ、これを改正にあわせて「株式の譲渡による取得には取締役会の承認を要する」というように変更しましたが、登記は変更しておりませんでした。(ちなみに、全部の株式が譲渡制限株式です)
 商事法務1739号38ページでは、「会社法においては、譲渡制限株式の定義として、「譲渡について当該株式会社の承認を要すること」ではなく、「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること」の表現を用いると解説されていますが、このような定款の変更の場合にも、「登記の内容と定款の内容が実質的に同一」と考えて変更登記は不要と考えてよろしいのでしょうか?
投稿 実務初級EX | 2006/10/23 19:54:15
A9
施行前から譲渡制限会社である場合,登記は「取締役会の承認」のままになっています。
ですから,登記を変更する必要はありません。

Q10
自己株式の合意取得について質問させてください。
 自己株式の合意取得では原則として、株主総会の授権決議(156条1項)及び取締役会の取得決議(157条1項2項)が必要です。
 ただ、この株主総会の授権決議と取締役会の取得決議との関係がわかりません。例えば、156条1項1号で 取得する株式の数を定めているのに、157条1項1号で再び、取得する株式の数を定めていることが分かりません。
 また、156条1項2号で株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額を定めているのに、157条1項3号で再び、株式を取得するのと引換えに交付する
金銭等の総額を定めていることもわかりません。
 さらにいうならば、156条1項2号で定める 株式を取得するのと引換え
に交付する金銭等の内容及びその総額と 157条1項2号で定める株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法 がどう違うのかわかりません。
これらの関係もしくは違いについてご教授願います。
投稿 maru | 2006/10/24 1:40:30
A10
 自己株式の取得は,株主総会で,あらかじめ取得の枠を決めて,その枠の中で,取締役会が,誰から何株を取得するかを決めます。
 たとえば,156条の株主総会決議で,「決議の日から1年間に,合計1000株を,1億円以内で取得してよい」と決めます。
 そして,取締役会で「いっぺんに買わず,6月末と9月末と12月末の3回に分けて,取得することにしよう」と考えた場合には,3月末の取得の前に,「3月末を申込み期日として,300株を1株8万円で買うことにしよう」と決めます。その後,6月と12月にも,それぞれ,何株ずついくらで買うかを決めていくのです。この取得の都度に行われる決定が157条の決定です。

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2006年10月22日 (日)

新会社法100問の重要問題

 新・会社法100問第2版の校正の真っ最中です。
 だださんから
「もし出来れば、100問のランク付けを先取りで教えて頂けないでしょうか」
というリクエストを受けましたので、聞いてきました。

三つ星30問は、次のとおりです。
3、6、8、11、13
15、20、21、23、25
28、29、33、37、43
44、46、48、59、61
62、65、71、79、80
83、85、90、92、93

 このランク付けが、今回のウリの一つなのに、発売前に明らかにしていいのかという疑問がなくはないのですが(^_^;)、いい加減なところが、私達の良さなので、ここは太っ腹に公開させていただきます。

 さて、各種試験の受験勉強をしている皆さんは、この時期何をしていますか。

 私も、こう見えて司法試験に合格したことがあります(葉玉さんや氷屋さんに、こき使われているときは、自分が法曹なのか、下僕なのか、不安になるときもありますが・・・・)。

 それで、私が、受験時代に、合格する前の年の10月下旬に何をしていたか振り返ってみると、ひたすら択一の過去問を解き、毎週2通ずつくらい、論文を解いていました。

 普通の受験生は、択一の勉強は、もう少し後から始める人が多かったのですが、私は、勉強を始めて2年目で、まともに択一を解いたことがなかったので、「他人と比べて自分に足りないのは、演習だなあ。過去問の量が多いから、年明けに始めたのでは間に合わないな。」と思い、学校もいかず、大変な時間をかけて、ひたらすら択一の過去問を解いていました。

 当然のことながら、最初は、非常に悲惨な正答率です(50%切るくらいだったと思います。)
 私は、最初の頃こそ、間違ったところを一つ一つ調べながら復習していましたが、実力がないので、1問復習するのに30分とか、1時間とかかかるんで、最初の1週間で、それはあきらめました。
 正直にいえば、あまりにも、間違いが多いので、詳しく調べるのが、嫌になったんです。
 それで、
 「どうせ時間をかけて復習しても忘れるんだから、まず一通りやって、二回目、三回目で理解すればいいや。」
と開き直り、間違った問題に×、正解の問題に○をつけて、とりあえず1問3分で解き、間違ったら解説を3分だけ読んで、どんどん前に進めました。
 
 結果的には、これが良かったと思います。

 1回目を解き終わったあと、すぐに2回目を始めたのですが、×のところだけ解くので、問題数が半分くらいに減ります。
 さすがに、1度やった問題ですから、2回目は、その2分の1から3分の1くらいは解けるようになっていて、それでも、また間違ったところの×を増やします。
 これをやると、3回目は、さらに問題数が少なくなって、早く進みます。
 これを繰り返していると、なぜか「何回も間違う問題」というのが出てきて、「ああ、ここが俺の弱点だなあ」とわかります。
 そこで、はじめて、いろいろ調べて勉強するのです。

 1から100まで調べて勉強する姿は、けなげですが、はっきり言って時間がありません。

 ですから、この時期は
「自分が理解できているものと、理解できていないものを区別する」
ということが重要だと思います。

 新司法試験は科目数も多く、択一と論文を同時に実施するので、この作業を年明けにやると、択一を3回回すだけで、結構な時間がかかるので、弱点に気づくころには、試験前1か月くらいになってしまい、それを補強する暇がなくなると思います。

「間違うこと」「自分に能力がないと分かること」は、ストレスになりますが、能率的に勉強するためには、自分のありのままの姿を把握することが大切なので、そういう目的意識をもって演習をやるといいのではないでしょうか。

 そうした視点からだと思うのですが、新・会社法100問2版の一問一答式テストには、各問の前に
 □□□
という不正解の問題をチェックする欄が設けられています。
 1200問も、3回チェックすれば、200問くらいに絞れるはずです。
 まずは、時間を決めて、3回チェックすることをおすすめします。

(質問コーナー)
Q1
株式の分割について質問します。
神田先生の会社法の教科書の株式の分割のところに、
①株価を下げるニーズがある場合
実務界の用語によれば②通常の新株発行を時価発行で行った後にそのプレミアムを株主に還元する場合
③いわゆる株式配当を行う場合
などに利用される。
と書かれているのですが、②の場面が具体的にイメージできません。
既存の株主にプレミアムが発生しているので、ここでいう時価とは、純資産を発行済株式総数で割った持分価値の値よりも高い場合を指すと思います。この価格で新株発行を行えば、株式分割をしなくとも、理論的には既存株主の持分価値は上がります。しかし、株式分割をしなければ、既存株主の持っている株数は新株発行前と変わらないので、株式分割をして持っている株数を増やして、よりたくさんの株式を市場で取引し、投下資本の回収ができるようにする。その意味で、プレミアムを株主に還元、と言っているのでしょうか?
投稿 かんかん | 2006/10/19 23:20:44
A1
株式の分割で交付を受けた株式を一種の利益と捉えれば、②の説明は分からなくはないです。ただ、その前提自体が現代ではあやしいところなので、軽くその記述は読み流せばいいと思います

Q2
株式無償割当てにおける株式の分割との違いについて質問させてください。
 株式の無償割当てでは 株式の無償割当ての効力発生日後遅滞なく 株主及びその登録株式質権者に対し 当該株主が割当てを受けた株式の数を通知しなければならない(187条2項)との定めが置かれています。
 一方株式の分割ではこの様な定めが置かれていません。
この違いが生じる理由についてご教授ください。
投稿 maru | 2006/10/20 18:16:29
A2
 株式の分割は、基準日を定めなければならないので、事前の基準日公告で、株式の分割が行われることが分かります。逆に、事後の通知はする必要がありません。
 株式無償割当は、必ずしも基準日を設定するとは限りません。そうすると、各株主が、いつ、どの程度の株式の割当を受けられるのか、よく分かりません。それで、事後通知を要求して、株主に知らせています。

Q3
合同会社の登記すべき事項(914条)について質問させてください。
合同会社では 登記すべき事項として 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称(914条6号)が定られています。一方 合名会社および合資会社では登記すべき事項として 社員の氏名又は名称及び住所(912条5号 913条5号)が定められています。
 持分会社の社員であれば定款で定めないかぎり業務執行権をもつので(590条1項)、合同会社でも合名会社及び合資会社と同様に登記すべき事項が定められても問題ないと思いますが・・この様な違いが生じる理由についてご教授ください。
 また、合同会社では 登記すべき事項として 合同会社を代表する社員の氏名または名称及び住所(914条7号)をも定められています。一方 合名会社及び合資会社では登記すべき事項として 合名・合資会社を代表する社員の氏名又は名称(合名・合資会社を代表しない社員がある場合に限る)(912条6号913条8号)が定められています。この様な違いが生じる理由についてもあわせてご教授ください。 
投稿 maru | 2006/10/20 18:43:37

A3
<前段>
 合資会社・合名会社の社員は、直接責任を負うので、会社が支払いをしなかったときに社員を訴えられるように住所を登記します。
合同会社の社員は、間接責任が原則なので、債権者のために社員の住所を登記する必要はありません。

<後期>
少なくとも、代表者の住所を登記しなければならないというのは、法人共通ですが、合名会社・合資会社は、社員全員の住所を登記しているので、後は、誰が代表者かを明らかにすれば足りるというだけです。

Q4
質問が不十分で、申し訳ありません。再度ご質問いたします。
1.土地の時価が1億円の場合、募集事項としての「財産の価額」(199Ⅰ③)はその時価相当額1億円と定めた上で、募集株式の数は1株と定めることはできないのでしょうか。
例えば、現物出資前のCの1株当たりの時価が約1万円であれば、募集株式の数も1000株位とするのが通常のように思いますので、1株あたり1億円というのは、非常に不利な発行となります。このようなことが、会社法上、可能でしょうか。なにか問題は生じないでしょうか。
2.もし、これが可能であるとして、資本金を計算する場合、ご回答では、時価がベースとされていますが(一般的な質問と考えられたのかもしれないのですが)、共通支配下(計算規則2Ⅲ31)に完全孫会社も含むとすれば、計算規則の37Ⅰ①のロではなく、ハを適用して、帳簿価額(1億2000万円と時価よりも高くなっております)がベースになるように思うのですが、いかがでしょうか。
よろしくお願い致します。
投稿 moremi | 2006/10/20 20:34:42
A4
1 引受人に不利な価格でも、会社法上は、問題ありませんが、場合によっては、詐害行為取消になるおそれはあります。他の株主がいれば、課税されるリスクは高いですが、完全親子会社で、他の株主はいないということですね。
2 すいません。通常の現物出資を前提に答えました。共通支配下なら、帳簿価格の範囲で資本金の増加額を決めることになります。

Q5
上場株式を現物出資する場合についてのご質問です。
仮に、募集事項として、募集株式の数を100株、1株と引換に給付する財産の額を1万円、現物出資の価額を100万円と定めたとします。
そして、上場株式の価額変動により、給付日の時価が、募集事項で定めた価額と相違してしまった場合、どのようになりますでしょうか。
(以下は、自己株式を使用せず、準備金の増加もないものとする前提です)
1.給付日の価額が、90万円だった場合、増加する資本金90万円、増加する株式100株となるのでしょうか。
2.給付日の価額が、110万円だった場合、増加する資本金110万円、増加する株式100株となるのでしょうか(株式数は110株ですか)。
 それとも、増加する資本金100万円、増加する株式100株となるのでしょうか。
3.そもそも、募集事項として定める現物出資財産の価額は、任意に設定できるのでしょうか(例えば、上記事例で決議当日の時価100万円であった場合に、50万円とできますか)。
4.そもそも、計算規則37条1項1号ロによれば、現物出資財産の価額は給付日の時価とされているようですが、上記事例で、給付日の時価が105万円であった場合に、その範囲内で100万円としたり、給付日の時価が95万円である場合に90万円とすることはできますでしょうか(趣旨としては、上場株式の出資なので、どうしてもその相場により、金額に端数が出るので、どのように処理したらよいのかと悩んでいます)。
以上、よろしくお願いいたします。
投稿 ぼやっき~ | 2006/10/20 21:49:03
A5
1・2 基本的にはそうですが、発行する株式も上場株式なのでしょうか?
3 任意に設定できます。
4 できません。

Q6
10/17のQ10の質問について、会社法としては×である、というSammyさんのお答えがありましたが、質問が正しくありません。端株原簿に記載するのでなく、端株の寄せ集めを「株主名簿」に記載する(割当てた結果、合計で端株になってしまうものは、当然割り当てられませんよね。)総合計で、1株ずつ11名の株主があり、1:1.1の分割があると、割り当て不能株が合計1.1株生じます。これを1株分、株主名簿上の端株管理人に割り当て処分し、0.1株は切り捨てるのであって、端株原簿に割当てるのではありません。これならよいですよね。これをだめと、いうのなら、割当て不能株を生じさせる、小数点以下の割り当てがある株式分割や企業再編は、すべて、株主平等の原則に反してしまいます。
投稿 T/A | 2006/10/21 2:10:15
A6
それなら、正解です。

Q7
株式分割を予定していますが、実務的なことでなやんでいます。「千問の道標」Q261株式分割の効果(p189)で、「ただし、株券不所持申出がされている株式については、増加した株式の数について新たに株券不所持申出をしなくても、不所持の取扱いをすることができる。」とあります。従来、当社では株券発行が前提ですので、株券不所持申出を株主さまからいただいておりました。今後、いらないとの考えは、従来と異なることから、「不所持の取扱いをすることができる。」理由を教えていただければと思います。株券を発行する会社で、譲渡制限はない公開会社ですので、株券を発行すべきと考えており、株主さまから株券不所持申出を提出いただくものと考えていますので、よろしくお願いいたします。
投稿 ひろし | 2006/10/21 2:15:18
A7
会社法は、株式の発行と株式の分割を区別しており(215条1項3項)、株式の分割については、既存株式が、その性質を変えず、単にその数が増加する(イメージとしては、パカッと割れる)ものと整理しています。
 したがって、株式の分割により増加する株式についても、株券不所持の申出があった株式としての性質が維持されると考えるべきであるというのが理由です。
 なお、不安があるのであれば、不所持の申し出をさせるのは、別段問題はないと思います。

Q8
サミーさん、事業再編について質問です。
消滅会社の取締役が著しく不当な合併契約を締結した場合、
消滅会社の株主が、
合併契約締結そのものが善管注意義務違反にあたるとして
消滅会社の取締役に対して責任追及をすることは可能でしょうか?
できれば積極に解したいのですが、その理屈が思いつきません。
投稿 えがちゃん | 2006/10/21 10:44:30
A8
 消滅会社の株主に不利な合併契約をして、株主に損害を与えたのならば、取締役の第三者責任を追及することはできると思います。
 ところで、理屈というのは、何でしょう?条文に該当すれば、請求できます。

Q9
サミーさん。権利義務取締役を代表取締役に選定した場合の質問です。
取締役ABC,代表取締役Aの取締役会設置会社において,取締役ABCの全員が任期満了退任した後,取締役兼代表取締役Aが死亡した場合,例外的に権利義務取締役BCが取締役会を開き,代表取締役として権利義務取締役Bを選定できるはずです(千問Q425p308)。
 新たに選定した代表取締役Bが死亡した場合,旧法では退任原因を代表取締役については「死亡」,取締役については任期満了による「退任」と捉えていたのですが,取締役と代表取締役の地位が未分化という理解の下では,代表取締役の退任原因は,「解任」の場合及び間接選定方式で認められる「辞任」の場合以外は一律に「退任」となるのでしょうか。仮に,死亡(民653①)を代表取締役の退任原因にできるとした場合,その理由はどう説明することになるのでしょうか。
投稿 猫太郎 | 2006/10/21 16:20:58
A9
登記原因のことは、法務局に質問していただければ幸いです。

Q10
(1)会社法では新株発行不存在確認の訴えについて明文規定が設けられましたが、会社分割について同様の規定が設けられなかったのは、単に、今まで裁判で問題にされなかったから、という理由なのでしょうか。それとも、もっと他の理由があるのでしょうか。
(2)会社分割についても不存在確認の訴えが認められうるとして、分割計画書の「承継する資産」の記載が虚偽(過大評価)であって、真実は債務超過となるのにそれを隠して会社分割した場合、会社分割は不存在となるのでしょうか(なお、不存在にこだわっているのは、無効の提起期間は経過している事例だからです)。
投稿 新人っこ | 2006/10/22 20:37:07
A10
(1) 不存在確認の訴えを設ける意味は、第三者に対する判決効の拡張に意味があります。会社分割の不存在については、特にそのようなニーズがないので、民事訴訟法の一般原則に従い、不存在を前提に請求すればいいのではないでしょうか。

(2)確認の訴えの利益があるのかどうかが疑問なので、「認められうる」ことは前提にできません。
 ただし、設問の事情は、不存在とはいいません。

Q11
会社計算規則の第6条第2項第3号なのですが、貸借対照表上の負債について、時価又は適正な価格を付すことが適当な負債については貸借対照表日の時価又適当な価格を付すことができると規定されています。
この時価又は適当な価格を付すことができる負債とはどのようなものをいうのでしょうか?
A11
会計基準で決めて下さいという部分です。

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2006年10月19日 (木)

定款自治の範囲(3)

「ふぉーりんあとーにーの憂鬱」で有名な47thさんから,ご質問をいただきましたので,今日も,定款自治の範囲の話をします。

「種類株主総会の拒否権に時間的制限を設ける件については、A「○○の事項につい
ては、▲▲までの間、X種種類株主総会の決議があることを必要とする。」という
ことは書けなくても、B「定款第×条に規定する事項につき拒否権を有する」とし
た上で第×条で「▲▲までの間になされた○○の事項」という書き方にすれば、
実質的に同様の効果を持つことができるという趣旨だと理解したのですが、その
ような理解で宜しいでしょうか。
もし、そうした理解で宜しいとした場合ですが(誤解があればご教示いただければ
幸いです)、B方式では会社法上問題なく認められることについて、敢えてA方式で
書くことが禁じられる理由はどこにあると考えればよろしいのでしょう?
また、○○の事項が取締役の選解任のように定款ではなく法令上既に株主総会の
権限とされている事項についてはB方式のような記載方法は難しいようにも思われ
るのですが、どう考えればいいのでしょう?」

 私達は,「定款への記載方法」については,当該定めについて一般的な解釈を行った場合に,会社法が明文で許容している定めと読めるのならば,有効であると考えています。
 説例でいえば,Aにせよ,Bにせよ,108条2項8号に掲げる事項を定めたものであるならば,許されるでしょう。
 ただし,種類株式の内容を登記する際に,AやBが,108条2項8号に掲げる事項を定めたものであるということが,誰にでもわかるようでなければ登記できないリスクがあることは,47thさんもご承知のとおりです。
 
 さて,トラックバックしていただいた47thさんのブログも拝見させていただきましたので,それを踏まえて,もう少し掘り下げてみますと
   「○○という定款の定めを置くことができるか」
という議論がされる場合,その定めは
 1 会社法で認められている定めを使えば,同じことが実現できるもの
 2 会社法で認められている定めでは,実現できないもの
の2つに大きく分類することができます。

 このうち,1に該当するような定めは,定款の定め方が,ノーマルか,アブノーマルかという違いに過ぎず,アブノーマルになればなるほど,「会社法で認められている定め」と世間の人が思ってくれなくなるだけで,会社法で認められる定めであると読める限りにおいては,有効です。

 たとえば,宍戸教授が提起された議決権拘束契約についていえば,一定の条件のもとで議決権拘束をやりたいというのであれば,ほとんどの場合,議決権行使条項付株式を用いることにより実現することができます。

 ただ,正面から
「議決権拘束契約を定款で定めることができるか」
と言われると,
「種類株式を発行するのかどうか」,「登記するのかどうか」
等を明らかにしてもらわないと判断できませんと答えるしかありません。

 種類株式であり,登記もするつもりだというのならば,議決権行使条項付株式について定めるべき事項がきちんと定まっているかどうかを検証すればよいだけです。

 逆に,議決権拘束契約の定めをしたいが,種類株式を出すわけではないということであれば,それは,2の問題,つまり,「会社法で認められている定めでは実現できないことをやろうとしている」ことになります。

 この場合,前回,分類したとおり,
「その定めが,会社法が規律している事項かどうか」
が問題になりますが,議決権拘束契約は,「株式の内容」に関する定めになるので,会社法が規律している事項になるでしょう。
 そして,会社法107条は,議決権拘束条項を認めていないので,そのような定めは認められないという結論になります。

 こうした論理に対し,議決権拘束契約の定めを肯定する論者の中には
   「株式の内容にはならないが,拘束力のある定めにはなる」
とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。
 しかし,定款の定めに同意した株主だけではなく,それに反対した株主や,その後に株式を取得した者に対しても,善意悪意を問わず,議決権拘束の効力を及ぼすとすれば,それは,「株式の内容」になっているといわざるをえないでしょう。

 宍戸教授は,会社法が,株式関係のところで定款自治の範囲を明確化していない部分が多いという分析をされていましたが,実は,「株式の内容」は,107条や108条など会社法に明文の規定がない限り,定款で定めることができないというルールがあるので,私は,定款自治の範囲は十分明確だと思っています。

 まあ,これを言うと
  「会社法=強行法規」という前提に立てば明確かもしれないが,そうでない立場の人に立てば不明確ではないか。
と反論されそうですが,逆にいえば,
 だからこそ,不明確性をなくすために,「会社法=強行法規」と解する必要がある
ということになります。

47thさんのブログにあった
 「何故,会社法の条文の任意法規性が限定されなければならないのか?」
という問に対する答えの出発点は,この「定款自治の範囲を明確化する」ことにあるでしょう。

 47thさんのブログを引用すれば,従来,商法の条文の中で,何を強行法規として,何を任意法規とすべきかという点についての関心は
「立法者よりも当事者の方が社会的に効率的なアレンジ(契約)を結ぶ情報と能力を有している場合があるという前提の下で、会社法規範 のうち、どの部分について当事者自治あるいは手続的規制に委ねることが可能で、どの部分についてはそれが許されないかという線引きをどうするかという問題」
だと捉えられてきました。

 しかし,株式会社の定款は,株主全員の同意によって成立する契約ではなく,多数決によって決められるものですから,少数株主や能力のない株主の保護の観点から,定款自治の範囲を限定する必要があります。
 「立法者よりも当事者の方が社会的に効率的なアレンジ(契約)を結ぶ情報と能力を有している場合がある」ことを否定するものではありませんが,そこでいう当事者は,必ずしも株主全体の利益のために活動する当事者ではなく,また,情報と能力のない当事者がいる場合にその者をどう保護するか,という限界があるのも,また事実です。

 能力のない者が不利益を受けるのは仕方がないという反面,そうした能力が無くてもお金を出資したら株主になれるようにすることで,お金を集めるのが株式会社制度であることを考えると,「株式会社」そのものに対する最低限の安心感を与えるため,強行法規性が必要であることは誰も否定しないでしょう。

 そして,その趣旨からすれば,高度な能力を持つ取締役や株主が
「この定款の定めと矛盾することが,会社法に書かれているけれど,この規定は任意規定だから,定款の定めは有効だよ」
と言って,能力の低い株主を説得できるという法制度よりも
「会社法には,こう書いてあるから,それと矛盾する定款の定めは無効だよ」
という法制度の方がわかりやすく,少数株主保護のためには効果的です。

 また,会社法は,登記を始め,形式的手続的要件の固まりであり,そうした方面から「画一性」が要求されることもあります。定款自治の範囲が不明確であれば,登記の前提となる手続きが履行されたかどうか,登記ができる事項なのかどうか等が不明確になり,審査が困難になるのは必定です。

 なお,私達は,世の中に,経営能力のある者同士がプライベートな会社を作るため,全員一致の定款を作り,新規株主も入ってこないという場面があることは,重々承知しています。

 ただ,
 「そういう用途で会社を作りたければ,合同会社でやったらいいのに」
ということは抜きにしても,
 「そうした用途については,普通,株主間契約で縛れば十分でしょう」
ということは言いたくなります。
 逆に,契約でまかなえないのだとすれば,それは,
「取締役が裏切って誰かに株式を発行した」
「株主の一人が破産して株式が差し押さえられ,見知らぬ株主がやってきた」
とかいう場面のことですから,やはり新規株主の保護を考えてあげなければいけません。

新規株主にについては,「定款を知り,または,知るべくして株式を購入したのだから,定款に何が書かれていても拘束されるのは当然」という理屈もあり,それを全否定はしませんが,「知るべくして」というところに擬制があることを忘れてはならず,また,三角合併や人的分割のように「欲しくてもらった株式じゃない」という場面もあることを忘れることはできません。そうすると,定款変更に参加していない新規株主をも拘束する定款は何かを明確にしてあげる必要はあると思うのです。
 
 以上のようなことをいろいろ考えると,会社法が
(1) 定款自治の範囲を商法よりも大幅に広げるかわりに,
(2) 会社法で規律している事項については,定款で別段の定めができるという規定がない限り,すべて強行法規(定款で変えられないルール)とし,
(3) それで,まかなえないニーズは,多数決ではなく,株主間で納得の上,契約ベースで処理してください(同意をしていない反対株主や,新規に入ってくる株主を拘束するのはやめてください)
というスタンスをとっているのは,正しいと思うのです。

 もちろん,定款自治の範囲の明確化といっても,
「会社法が規律している事項かどうか」
「会社法に違反しているかどうか」
という点については,当然,解釈の余地はあるわけですし,そんなところまで,
「全部決まっています」
というつもりは,毛頭ありません。

また,
「会社法に反する定款の定めでも有効とすべきものがある」
ということであれば,積極的に議論して,次期改正で採用するとうこともあると思います。

 その意味で,任意規定説の論者が,どんどん,会社法で実現できないような定めを提案し,その議論が深まるのは望むところであり,会社法が,定款自治を不当に狭くしていないかどうかを今後も検証していきたいなと思っています。

(質問コーナー)
Q1
従来から、定款に書くことができる事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があると整理されてきたと思います。その整理と、会社法29条の整理には対応関係があるのでしょうか?29条は、①27条、28条に掲げる事項、②この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項、③その他の事項でこの法律の規定に違反しないものという整理ですが、株主を代理人に限る旨の定款規定に関する本日の回答を考慮すると、相対的記載事項は、28条のほかに②と③に分散して整理されていることになりますが、任意的記載事項も③に含まれるという整理でしょうか?よろしくおねがいします。
投稿 ロゴス | 2006/10/17 23:59:08
A1
 相対的記載事項と任意的記載事項という分類は,論者によって意義が異なっていると思いますが,ロゴスさんは,どういう定義でその言葉を用いられているのでしょうか?

Q2
国公立ロースクール入試に向けて勉強中の大学4年の者ですm(_ _)m
入試に備えて葉玉先生の「会社法100問」で実力強化したいと思っているのですが、100問全てやり遂げる時間を確保できそうにありません。
そこで重要問題に絞って取り組みたいと思うのですが、重要度ランクの付いている改訂版の発売はまだ先になるようです。。
もし出来れば、100問のランク付けを先取りで教えて頂けないでしょうか?
投稿 だだ | 2006/10/18 0:34:02
A2
すいません。私も100問のゲラの校正をやっている最中ですが,自分の担当分しか分かりません。葉玉さんに聞きますから,もうしばらくお待ち下さい。

Q3
あまり実務上は問題にならないでしょうが,募集設立について質問させてください。
募集設立において,全部取得条項付種類株式の定めを設ける場合に,
種類創立総会における決議要件が,譲渡制限を設定する場合と同様に
されている(会社法85条3項)理由は何でしょうか?
「具体的な状況がまだない設立時においては,全部取得条項付種類株式の
定めを設けることには慎重になるべき」とか,
「創立総会の決議要件との調整」といった理由が成り立つかどうか
考えてみたのですが,どうもしっくり来ません。
以前,葉玉先生が回答されていたような気もするのですが,
どうも見つけられません。
立案にあたって,どのようなお考えで設立後とは決議要件を区別されたのか,
お教えただければ幸いです。
投稿 たつきち | 2006/10/18 1:13:52
A3
種類創立総会の決議は,いわゆる普通決議はなく,特別決議が原則です(85条2項)。
種類株主総会の決議は,普通決議が原則です(324条1項)。
全部取得条項の設置の定款の変更の決議要件は,原則的決議要件よりも厳しくすべきであるという価値観で考えると,種類創立総会では,特殊決議になるという感じでしょうか。

Q4
ある特定の者より会社に対して株式買い上げの依頼があったときは、会社は自己株式取得の決議を株主総会で行こなわなければなりません。
そして、議案及び招集通知には、取得株式の総数及び取得価額の総額のほかに、
「会社法第160条3項の規定に基づき、他の株主から本総会会日の5日前までに書面をもって売主として追加の申し出があったときは、上記株数、取得価額の範囲内おいてその株主からの取得も追加するものとする。」を記載することになっています。
この場合、取得株式の総数及び取得価額の総額を買い取り申し出があった株主の株数、金額と同数、同額にしておいたのでは、他の株主から申し出があったときに、最初に申し出のあった株主の希望数を買い上げることができなくなります。
方法として、
①取得株式の総数及び取得価額の総額を財源規制の範囲内で多目に設定しておく。
②株主総会当日に先ず追加申し出のあった他の株主からの株式数を追加して、
 取得株式の総数及び取得価額の総額について議案修正する。
ことが考えられますが、どちらが一般的なのでしょうか?また、②の方法だと欠席株主は議案の内容を知ることができないことになりますが、法律が許容した議案の追加なので、欠席者は保護されないと見ることでよろしいでしょうか?
投稿 KIRABO | 2006/10/18 8:58:47
A4
好きな方でやればよいと思います。
議案が総会で修正されることは,株主提案があった場合を含め,法が許容しているところなので,欠席する方が悪いというしかありません。

Q5
前回のQA11について:
「1.当会社の剰余金の配当の基準日は、毎年3月31日及び9月30日とする。」として
「2.前項に定める場合の他、当会社は基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。」
の規定を置かないのは、定款によって取締役会の権限を制限したものとはなりませんでしょうか?
そもそも、配当決定の権限を取締役会に与えるには定款規定が必要ですから、会社法自体ではなく定款が与えた権限だと思いますが。
そういうのを「定款が与えた」といって悪ければ、「株主総会が定款を通じて与えた」権限と言ってもいいと思います。
まさに、本日の本文の「定款で定められる旨の規定がない事項で、この法律の規定の違反しないもの」ではないでしょうか。
投稿 銀行屋は荒野の藤袴 | 2006/10/18 12:14:46
A5
銀行屋は荒野の藤袴さんのような定款の解釈をすれば,定款で「基準日を定めて剰余金の配当をすることができる」と書かない限り,定款で,総会の配当決定権も制限したことになりませんでしょうか?
 「できる」という規定がないことを,制限規定と読む解釈は不自然だと思います。
 あえていえば,上記2の規定を
「基準日を定めずに剰余金の配当をすることを制限した規定である」
と解釈するのならば,わからないわけではありません。
 いずれにしても,定款で取締役会に配当決定権を与えた場合には,法律上,その配当決定権には何の制約もされていませんから,わざわざ「基準日を定めて・・」と書かなくても,配当をすることができます。

Q6
設立中の会社概念が会社法でも有用と解した場合、たとえば以下のように整理すれば、
「百問」(とくに第15問)の論筋と矛盾しないと考えたのですが
いかがでしょうか?
①発起人がなした行為は、その権限に基づくものに限り別段の意思表示なくとも、成立した会社に効果帰属する
②発起人の権限は、会社の組織的・財産的基礎をつくるために必要な範囲でのみ認められる(ゆえに開業準備行為・事業行為はそもそも権限外)が、権限の具体的範囲は法に規定するもののほか、定款で定めてもよい
(権限内での売買契約等は28条1号が根拠、賃貸借・雇用契約等は、その債務額を基準とし、同4号が根拠)
③発起人の権限外の行為を設立後の会社が追認することは、発起人の権限制限の潜脱に利用されるおそれがあり、ひいては出資者間の公平を害することになるから、認められない

どうやら私は、設立に伴う債務が会社と発起人のどちらに帰属するかについて、会社成立の前後で区別するのが原則だと誤解していたようです。
一般的には、発起人の権限の有無で区別するんですよね?
投稿 らくだ | 2006/10/18 15:57:00
A6
②の「権限の具体的範囲は法に規定するもののほか、定款で定めてもよい」というのは,言い過ぎでは?
 定款によっても,財産引受以外の開業準備行為はできないというのが財産引受の規定の類推適用を否定する立場の結論です。
 それ以外は,よいと思いますが。

Q7
完全孫会社への現物出資について、ご質問させてください。
1.完全親会社A⇒完全子会社B⇒完全孫会社C の関係にある場合、AがCに対して現物出資を行います。引受人Aに割当てる株式の総数がCの発行済株式総数の10分の1を越えなければ、検査役の調査は不要となると思います。AがそれでOKというのであれば、この方法は、常に法律上問題なく可能といういうことで宜しいのでしょうか。
2.たとえば現物出資財産の時価がにかかわらず、1株とするということも可能ということになりますでしょうか。
よろしくお願い致します。
投稿 moremi | 2006/10/18 22:02:31
A7
1 それで宜しいのでしょうかというのに答えられるほどの事実が記載されていませんが,発行済み株式総数の10分の1を超えなければ検査役の調査は不要です。
2 現物出資財産の時価がいくらであろうと,そのその価額はいくらにすることもできます。ただし,時価の方が著しく低ければ,責任が生じます。
 また,資本金は,時価がベースになります。

Q8
 会社法施行規則77条7号において記載しなければならない内容は「非監査業務の対価」だと思いますが、「・・・会計監査人としての報酬等及び公認会計士法2条1項の業務の対価を除く・・・」の「会計監査人としての報酬等」とは何が該当するのでしょう?
 また、会社法施行規則126条により記載しなければならない事項は、1号は「当該会社が監査業務及び非監査業務として会計監査人に支払わなければならない報酬額」、8号イは「当該会社及びその子会社が監査業務及び非監査業務として会計監査人に支払わなければならない報酬額の合計」を記載するという考えで、宜しいでしょうか?
なお、旧商法105条については旬刊商事法務1672号27頁を、126条については日本公認会計士協会「法務研究委員会研究報告第5号(中間報告)」を参考に質問させて頂きました。
投稿 AB | 2006/10/18 22:05:56
A8
・前段の質問
  会計監査人の職務は,会計以外の不正行為を監査役に報告する義務等必ずしも公認会計士法2条1項の業務でカバーできるものではないので,会計監査人としての報酬等の全てが,公認会計士法2条1項の業務の対価に含まれているとは限りません。
 それで,「会計監査人としての報酬等」が入っています。
・後段の質問
 「当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額」は,会計監査人としての報酬等の額なので,非監査業務は含みません。

Q9
事業譲渡についての質問です。
467条1項1号2号により、株式会社は、事業の全部または重要な一部の譲渡には株主総会の特別決議が必要ですし、また取締役会設置会社では、362条4項1号により重要な財産の処分および譲受けの業務執行の決定には取締役会の決議が必要です。株式会社が重要な一部の事業を譲渡する場合には、まず株主総会の特別決議を経てから、取締役会決議で事業譲渡について執行の決定して、それから具体的に業務執行していくということですか?手続きの順番がよくわかりません。
投稿 リー | 2006/10/18 23:20:46
A9
取締役会の決議が1番です。
その後,総会決議をして,事業譲渡契約を締結するか,事業譲渡契約をして,その効力発生日の前日までに総会決議をするかは,どちらでもよいと思います。

Q10
取締役会設置会社で且つ、代表取締役がA・Bの2名いる会社で、代表取締役印はAのみ作成し法務局に登録してあります。この会社が契約を交わす場合、契約書の記名押印欄に代表取締役Bの名前だけしか記載していないにも関わらず、A名義で登録された代表取締役印で押印しても問題はないのでしょうか?
取締役会議事録のように厳格に考える必要はないのでしょうか?
投稿 アウトソーシング | 2006/10/18 23:57:08
A10
問題はないかと言う質問は,むずかしいですね。
押印というのは,契約成立要件でも,効力発生要件ではないので。
契約の相手方が問題だというのなら,問題だし,問題ないと言えば問題ないと思います。

Q11
整備法には「この法律の施行の際」(整備法10条など)と「施行日前」(整備法11条など)という言い回しが色々な条文で登場してきますが、両者の違い(施行の際と施行日の言い回しの違い)がよくわからないのでご教授いただければ幸いです。
投稿 KOKO | 2006/10/19 0:39:28
A11
単に言い回しの違いです。「施行の際の前」とはいわないので,「施行日前」になります。

Q12
新株予約権付社債の発行に瑕疵・無効原因が含まれている場合、新株予約権部分の差止・発行無効が問題となるだろうとは思うのですが、その際、社債部分についてはどのような処理になるのか、ご教示いただければ幸いです。
投稿 大杉謙一@異端児? | 2006/10/19 8:23:45
A12
 解釈によると思いますが,私は,差し止めと,発行無効は分けて考えるべきではないかと思います。

 まず,新株予約権の差し止めです。
 会社側は,新株予約権部分抜きで社債のみ発行する意思がないでしょうし,引受人側も,新株予約権がついているからこそ,低い利率で我慢するので社債だけならいらないというのが通常でしょう。
 ①新株予約権付社債の発行決議は,新株予約権と社債を一体的に決議するものであること,②新株予約権と社債を切り離して譲渡することができないため,新株予約権の発行の差し止めの仮処分がかかった状態で,社債部分だけを発行しなければならないことになると,後の差し止めの本案が認められなかった場合の処理に困難を来すこと等を考えると,新株予約権の発行の差し止めが行われる場合には,新株予約権付社債自体が差し止められると解すべきだと思います。

 これに対し,新株予約権発行無効の訴えが確定した場合には,既に効力の発生している社債をも効力を失わせるかという問題ですから,慎重に解すべきです。私は,新株予約権の行使期間が経過して消滅した場合であっても社債自体は存続することとパラレルに考え,無効の訴えが確定しても新株予約権のみが無効となり,社債としては存続すると考えています(会社法100問の58問の最後の方にこの論点が載っています)。

 ちなみ,大杉先生は,異端児ではなく,王道を行く者でしょう。
 会社法立案担当者の会のメンバーは,異端児というか,極端児です。

Q13
取締役会の決議の省略と会計参与の関係について質問します。
会計参与は、計算書類の承認に関する取締役会に出席する義務がありますが(376条1項)、計算書類の承認に関する取締役会を決議省略(370条)で行う場合、会計参与について何の手当も無いのは何故でしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/10/19 13:26:51
A13
会計参与が,取締役会に出席する義務を負うのは,主として,自己の作成した計算書類について,取締役からの質問等を受けたりすることができるようにするためであり,取締役を監査するためではありません。
そこで,会計参与には,取締役会の決議の省略について異議権を認めていません。

Q14
会社法11条3項について質問いたします。
支配人が,代理権に対する内部制限に違反して約束手形を振り出した場合,直接
の相手方だけでなく,手形の転得者も「第三者」に含まれ,転得者が善意の場合
には,会社は手形債務を負うことになるのでしょうか。
私は,民法上の表見代理規定が手形行為に適用される場合,「第三者」は直接の
相手方に限られる,という判例の見解を支持しております。この見解との整合性
を考慮すると,支配人の代理権に対する内部制限違反の場合も,「第三者」は直
接の相手方に限るというのが自然ではないか,というのが,私が到達した結論で
す。
A14
そのような見解もありでしょう。

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2006年10月17日 (火)

定款自治の範囲(2)

定款自治の問題の続きです。

 ロゴスさんから、次のような質問をいただきました。

「本日の記事の「会社法に規定されている事項であって、定款で定められると書かれていないことは、定款では定められないという整理は、間違っていないという感触を持ちました」という点に関して、お尋ねします。「代理人は株主に限る」旨の定款規定は有効のはずですが、議決権の代理行使を認める310条1項には、定款で可能とは書かれていません。冒頭の整理では、説明できないものがあるのではないでしょうか?よろしくおねがいします。」

この質問を答える前提として、29条の解釈をしたいと思います。
同条は、「第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。」と規定しており、同条から、定款に書くことができる事項には
①27条、28条に掲げる事項
②この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項
③その他の事項でこの法律の規定に違反しないもの
の3種類に限定されることを規定しています。

このうち①の内容は明らかですから、②と③の意味が問題となります。
②は、会社法に「定款に定める事項」「定款の定めの例に従い」「定款の定めがある場合」「定款で定めている場合」「定款に別段の定めがある」など文言上、定款で定めることができる事項のことを言います。
③は、①②の事項以外の事項、つまり、定款で定められる旨の規定がない事項で、この法律の規定の違反しないもののことを言います。
 問題は、③の「この法律の規定に違反しない」の解釈ですが、
(1) 会社法は、強行法規性を有するので、会社法が規律している事項については、定款で別段の定めをすることができるということが文言上書かれていない限り、それは定款自治を許さない趣旨なので、そのような事項については「この法律の規定に違反」する
(2) 会社法が規律していない事項については、会社法に違反(潜脱を含む)しない限り、定款に記載することができる
ということを意味するものと考えています。
 たとえば、
(1)取締役会から業務執行の決定権を剥奪する定款の定めについては、362条2項に定款で別段の定めをすることが認められていないから、無効
(2)株主の剰余金配当請求権に除斥期間を設ける定めについては、会社法ではそもそも規律していない事項であり、特に強行法規に反するものではないので、有効
というように考えます。

ロゴスさんの質問にある「代理人は株主に限る」旨の定めについてですが、
 代理人の資格については、特に会社法に規定は無いので、会社法に規律する事項に当たらないので、(2)の類型になり、議決権の代理行使を認める310条1項を潜脱するような定めでなければ有効になります。

宍戸教授が列挙された定めの有効性についても、上の基準で整理できるはずであるというのが、私達の考えです。

(質問コーナー)
Q1
会社側-知れていない債権者に催告する義務を負わない
不法行為債権者側-通常は、個別催告を省略できる場合であっても、個別催告を受ける権利がある。
この両者の均衡を図るため、自己を債権者と認識していない不法行為債権者には詐害行為取消権を認める。
以上のような考えで宜しいのでしょうか?
投稿 南斗六星 | 2006/10/16 9:01:31
A1
そうです。

Q2
会社法で「設立中の会社」概念は必要でしょうか?
以下の考えは、解釈として正しいでしょうか?
《私の考える答え》
財産引受の追認を認める(その法的説明として、設立中の会社概念を立てる)必要があったのは
①設立に時間がかかるため、成立を待っていたのでは、会社に有益な財産を獲得し損ねるおそれがある
②変態設立事項に当たる場合、定款変更が必要なのに、それが不可能ないし困難という理由だった。
・・・
従って、発起人(組合)と成立後の会社を同一視する必要はないし、すべきでもない
投稿 らくだ | 2006/10/16 17:06:01
A2
解釈は自由なので、正しいか間違いかということはありませんが、財産引受の追認を認めることと、設立中の会社の概念を認めることは、別次元の問題です。
たとえば、判例も、追認は否定していますが、設立中の会社の概念は認めています。
設立中の会社の概念は
①発起人の個人財産と、会社に将来帰属する社団財産を区別する。
②会社が、成立した時点で、社団財産については、特段の手続きを取ることなく、会社に帰属する
という効果を説明するための概念です。
 したがって、設立中の会社の概念は、会社法でも有用であると思います。

Q3
9月決算の大会社が18年4月に減資をし、資本金5億円未満の会社になり、その後、役員選任のための臨時株主総会を18年6月に開催しました。ご回答いただいた考え方でいきますと、この会社は18年9月期すなわち18年12月の定時総会まで大会社ということになり、18年5月以降の最初の取締役会で強制的に内部統制の構築義務が発生する、また、会社法施行規則附則第6条の規定も排除され、18年9月期の事業報告に内部統制の決議の概要を記載する必要があるのでしょうか
A3
そうです。

Q4
株主総会の議案につきお教えください。
剰余金の配当については、法454条1項で決議内容が規定されているかと思いますが、法445条4項との関係で、準備金を積立てる場合、配当議案1議案だけで準備金積立ても決議することができるのか、あるいは配当議案とは別議案で準備金積立議案をかける必要があるのか、どちらか迷っております。
投稿 ピエール | 2006/10/16 22:30:04
A4
配当議案だけです。

Q5
内部統制システムがらみで質問させてください。設定は、大会社・取締役会設置会社・監査役会設置会社・非公開会社という機関設計のオーナー会社(一人会社でオーナー社長)という会社です。
この会社が内部統制システムを設けないという決定をした場合、内部統制システムを構築しないが故に、構築した会社と比べて、何らかの法律上のリスク(不利益)はありますでしょうか?(1000問では423条1項の責任追及の可能性について示唆されていますが、設定の会社では事実上問題にならないと思います。)私が考えられるのは、429条の責任追及があった場合に、システムを構築していた方が取締役にとって有利になる場合がある、こと位です。勉強不足で申し訳ありませんが、ご教授頂ければありがたいです。
投稿 NK | 2006/10/17 0:54:16
A5
おっしゃるように、429条の責任追及時には、取締役の職務懈怠を問われるおそれはあるでしょう。

Q7
新株予約権の払込みに関する質問です。
新株予約権の払込みは246条2項で金銭以外の財産等に代えることができるとあり、これに対する検査役の調査は不要ということですが、その趣旨を教えてください。
それと、もし払込みとして給付された財産の価額が著しく不足する場合は、誰がどのような責任を負うのですか?
投稿 リー | 2006/10/17 9:40:50
A7
 現物出資の場合には、価額が不足していても、定められた現物を出資すれば、給付としては有効です。
 それに対し、246条2項の場合、給付した財産が払込金額に相当しないものだったら、246条2項が適用できませんので、払込未了になります。その結果、新株予約権は発行されても,行使することができません。
 だから、検査役の調査は不要なのです。
 なお、著しく不足しているにもかかわらず、新株予約権を行使させた場合には、瑕疵ある株式の発行をしたことになりますから、会社に損害(無効な新株予約権証券の回収費用等)が生じたら、任務懈怠責任が生じると思います。

Q8
損失の処理についてお教えください。
旧商法では当期未処分損失の全額を次期繰越損失としたい場合、株主総会にその内容の損失処理案を上程し決議をとれば良かったのですが、会社法では損失(利益)処分案を株主総会に上程できません。
会社法においてはこの場合、単に繰越利益剰余金の当期末残高がマイナスの株主資本等変動計算書を作成し、監査を受け、取締役会で承認し、株主総会で報告すれば足りるのでしょうか?
ちなみに、次期繰越損失を出さないため、会社法452条に定める剰余金の処分として、別途積立金を取り崩して繰越利益剰余金をその分増加させようと思えばできるのですが、あえて損失を次期に繰り越したい場合の話です。
また、会社法452条をみると「損失の処理」をする場合は株主総会の決議が要るように読めるのですが、本件のような旧商法でいうところの、未処分損失の全額を次期に繰越す場合は「損失の処理」には該当しないと考えてよろしいでしょうか?
投稿 おばかな総会担当者 | 2006/10/17 0:13:19
A8
452条は、任意準備金の取り崩し等なので、そのようなことを何もしないのならば、株主総会の決議は不要です。

Q9
問題:「全額払い込み義務を負う合同会社の社員(578条)は、間接有限責任であるから、直接責任を負うことはない」の正誤。答えは誤り。
宮島新会社法エッセンス第2版P369では、直接責任の余地はないとあります。しかし、払い込みが無効取り消しされた場合、未履行部分に直接責任を負う場合もあるからです。
宮島前掲も580条から合同会社は、本当に間接有限責任か?という書きぶりです。いかほどに考えたらよろしいでしょうか。
基本書を調べると、多数派は間接有限責任と書いてありますが、神田先生は直接とは書かずに有限責任とだけ書いてあります。
投稿 初学者の疑問 | 2006/10/16 21:40:19
A9
 会社法100問に載っていると思いますが、制度的には、間接有限責任を実現しようとしていますが、合資会社で未出資の有限責任社員がいる場合に、無限責任社員が全員死んだりすと、当然に合同会社になる結果、直接有限責任社員のいる合同会社になってしまいます。
 その意味で、株式会社のように間接有限責任が徹底しているわけではありません。

Q10
端数株式の処理に関してお伺いします。
会社法第234条および第235条において、株式無償割当や株式交換あるいは株式分割等の際に、1株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数を競売または売却し、その端数に応じて代金を端数株主に交付するものとされています。
商法(第220条)下における上場会社の実務では、この端数の合計を、「**株式会社端株管理人」といった肩書をつけて例えば株式課長の名前で端株原簿に記載し、同人名義で端株の買取請求を行わせた上で、端数株主に代金を交付していました。これにより、計算の名義上、自己株式の取得/処分ではない形で処理していたのです。
このような処理は、会社法下でも認容されますか。
投稿 Junior Comptroller | 2006/10/17 19:22:06
A10
端数処理は、端株の買取ではないので、会社法上は、そのような処理はゆるされません。
端株制度が残っている会社でも、株式無償割当等の場合の端数については、端株は生じませんので、同様です。

Q11
サミーさん、定款について、基本的なことなのですが、ご教示ください。
剰余金の配当の基準日について、一般的な定款には、以下のように定められています。
1.当会社の剰余金の配当の基準日は、毎年3月31日及び9月30日とする。
2.前項に定める場合の他、当会社は基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。

しかし、当社は、(剰余金の配当等を取締役会決議としておりますが)上記1しか定めておりません。中間・期末以外に配当を実施する場合は、取締役会で基準日を定め公告するつもりでおりましたが、定款に上記2の規定がないと、それはできないのでしょうか。(定款で基準日を定めると、それに限定されてしまうのでしょうか。)
投稿 しん | 2006/10/17 20:06:48
A11
剰余金の配当の決定権は、定款によって生じる権限ではなく、会社法によって生じる権限です。
したがって、2の規定がなくても、法律上、剰余金の配当の決議をすることができる機関が決定すれば、剰余金の配当をすることはできます。

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2006年10月15日 (日)

定款自治の範囲

 本日は、宍戸教授の「定款自治の範囲の拡大と明確化」(商事法務1775号)の中で、会社法上、定めることができるかどうか不明確な定款の定めと指摘されたものについて検討してみたいと思います。

 宍戸教授は、これらの定めを
1 定款自治が明文で認められていないが、一概に否定されるものではなく、解釈の余地が残るもの
2 明文で定款自治が認められているが、定款自治の限界が明らかでないもの
3 定款自治を認める規定はあるが、定款自治が認められる対象が明確でないもの
の3種に分類されていますので、私も、その分類にしたがって考えてみます。

1 定款自治が明文で認められていないが、一概に否定されるべきものではなく、解釈の
余地が残るもの                                                            
(1) 任意種類株主総会を、一定期間のみ存続するものと定めること
 種類株主総会の決議事項には、「定款で定めた事項」(321条)が含まれます。
 したがって、定款で、特定の事項について任意に種類株主総会を開催し、決議することはできますし、定款の「決議事項」の規定を一定期間のみ効力を有する旨規定すれば、設問の定めと同様のことが実現できます。
 宍戸教授は、この定めを1の、「定款自治が明文で認められていない」というところに分類していますが、私は、「定款自治が明文で認められている」と考える方がよいと思います。
                                                                           
(2) 議決権拘束契約
 議決権拘束契約の内容が不明なので、なんともいえないところですが、株主の議決権行使の賛否をあらかじめ定めておく契約のことだとすると、認められないと思います。
 賛否が決まっているのならば、もともと、当該内容の定めを置けばよいし、当該定めについて、すぐに効力を生じさせたくなければ、効力の発生時期の問題にすればよいように思います。
 そのような処置になじまないものだとすれば、株主総会の決議事項について、本来の決議要件よりも軽くするための定めになるか、株主総会が法律上決議できる事項について、決議をすることができないという定めになるか、どちらかになってしまいそうです。

(3) 普通株式のみが発行されている場合に、配当可能利益の一定割合を利益配当する旨
 「株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。」(454条1項)ので、定款の定めに基づき、当然に、剰余金の配当の効力が認められることはないです。
 次に、定款で、株主総会の決議の内容を「配当可能利益の一定割合」に拘束することができるかということですが、それは、107条1項各号の定めにないので、できないと思います。
 実質的に考えても、登記もされないような条項に株主が拘束されるのは、株式取得者に不測の損害を与えるおそれがあるように思います。このことは、全員一致の定款でも同じです。
 ただし、取締役会が配当議案を決定する際の制限としてならば、許される余地はありそうです。取締役の行動制限については、355条の忠実義務を根拠に幅広い定款の定めを置くことができるでしょう。

2 明文で定款自治が認められているが、定款自治の限界が明らかでないもの
(1)期間を限定して、無条件の譲渡制限を定めること
 無条件の譲渡制限というのは、取締役会が承認をすることもできない譲渡制限ということだとすると、それは、できません。139条1項但書は、承認機関について定めているだけで、承認機関を置かないことは定めていません。同項は、譲渡について「株式会社の承認」を要する株式についての規定ですから、「無条件の譲渡制限」というのは、そもそも対象外です。その意味で、この定めは、むしろ会社法に規定のない事項だと思います。

(2) 株主総会の普通決議要件を全員一致と定めること・頭数要件を加えること
  309条1項に基づきできます。
 (2)(3)は、いずれも株主平等の原則のもとで許される決議方法ですから、それを普通決議事項について定めることは可能です。

(4)議決権10%以上を有する株主全員の同意を決議要件に加えること
 これは、拒否権付株式と同じことを、普通株式でやろうとしているのでできません。

(5) 種類株主総会決議事由として、定款で具体的な契約等に言及すること
 321条に基づきできます。特に限界を考える必要は無いように思います。

 (1)から(5)までを見てみると、この分類については「原則として、定款でどんな事項でも定めることができるが、他の強行規定に抵触するものは許されない」という当然の結論になっているように思います。

(6) 利益配当に関する種類株式の配当額の算定の基準の具体性の程度・
(7)参加型配当優先株式に対する分配割合を、普通株式の2倍と定めること
 (6)(7)は、解釈論というより、単なる当てはめの問題だと思います。これは、会社法が、一般的な規定である以上、現行法以上に明確化することはできないと思われます。

3 定款自治を認める規定はあるが、定款自治が認められる対象が明確でないもの
(1)複数の種類株式について、単一の種類株主総会を設定すること
 「種類株主総会」の定義そのものは、そのような種類株主総会の存在を認めています。
 たとえば、拒否権付株式の種類株主総会や、任意的な種類株主総会では、そのような二種類以上の種類株式の株主が単一の種類株主総会を構成することはできます。
 ただし、文理上、322条の種類株主総会は、1種類ごとに構成される種類株主総会を予定しており、定款で、これを変えることはできないと思います。

(2) 残余財産の分配に関する種類株式につき、合併、企業買収等をみなし解散事由として定めること
 合併は、法定解散事由ですが、残余財産の分配は生じません。合併を定款で解散事由と定めることで、残余財産の分配が可能になればよいのでしょうが、合併の性質上、それは無理のように思います。
 逆に、TOB等の企業買収については、定款で解散事由にすることは可能ですし、残余財産の分配も可能です。

以上、ざっと検討してみましたが、1から3の結論を見る限り、今のところ、会社法に規定されている事項であって、定款で定められると書かれていないことは、定款では定められないという整理は、間違っていないという感触を持ちましたが、いかがでしょうか。

(質問コーナー)
Q1
旧商法214条2項および215条3項により、株式併合を行う際に「併合に適する株券」は併合後もみなし規定により発行不要でしたが、会社法には相当する規定が見あたりません(というより、会社法215条2項では発行しなければならない、とあります)。
で、旧商法時代に株式併合を行って、みなし規定により新たな株券を発行しなかった会社は、
・併合時点で「併合後の株数を表彰するものとなった」ので、会社法に相当規定が無くなっても発行し直す必要は無い、と考えるのか、
・旧商法215条3項はあくまで「みなす」規定なので、みなし規定がなくなった以上発行しなおす必要がある、と考えるのか、
個人的には前者でよいような気もするのですが、今ひとつよくわかりません。
投稿 たろすけ | 2006/10/13 10:56:03
A1
前者でしょう。

Q2
「確定していない計算書類に基づいてなされた剰余金の配当は瑕疵を帯びることになる」(法学教室no.307.2006Apr. P218)という記述を読みました。
会社法下において、瑕疵ある計算書類に基づく剰余金の配当決議は瑕疵を帯びるのでしょうか(直ちに法律上の問題が生じるのでしょうか)。
また、瑕疵を帯びるとした場合、取消、無効のいずれになりますでしょうか。
計算書類に問題がある場合、配当可能利益の算定には影響するかとは思いましたが、法律上、配当決議に直接影響を与えるものなのか、疑問を感じました。
投稿 ki | 2006/10/13 11:40:56
A2
法学教室の文章を読んでいないので、文脈がわかりませんが、会社法のもとでは、計算書類の確定の瑕疵と剰余金の配当は、直接の関係はありません。
ですから、計算書類が確定しなくても、分配可能額さえあれば、剰余金の配当が瑕疵を帯びることはありません。
もちろん、直近の計算書類が確定しなかったがために、増えると思っていた分配可能額が増えなかったという場合に、配当が分配可能額を超えれば、遺法配当になります。

Q3
内部統制の構築義務についてご教授ください。
大会社の定義としては、法2条6号に規定してあり、また「千問の道標」380問についても記載がありますので、3月決算の資本金1億円の取締役会設置会社が期中に増資し、19年7月に資本金が5億円になった場合には、翌20年6月の総会までは大会社ではないと考えています。
とすると、内部統制の構築義務についても、強制適用となるのは、同20年6月以降であり、総会後の取締役会で体制につき決議すればよいという認識でよろしいでしょうか?また、そうなると、翌21年3月期の事業報告に決議内容の概要を記載すればよいという認識でよろしいでしょうか?
投稿 ピエール | 2006/10/13 22:17:37
A3
 そのとおりです。

Q4
質問を確実に取り上げて貰える(回答して貰える)には、どうしたらいいのでしょう。
投稿 飢餓海峡 | 2006/10/14 0:20:21
A4
なるべく全部取り上げるようにしていますが、私は、普通の仕事についてさえ、忘れやすいので、確実に取り上げてもらえる方法はありません。
何度か、最新の記事にコメントしてもらえれば、普通は取り上げると思います。
過去の記事にコメントされると、見過ごす恐れが高いです。

Q5
 種類株主総会の決議について質問させて下さい。
 会社法322条1項2号~13号に掲げる行為をする場合であっても種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができますが(同法322条2項)、これらの行為の一部だけにについて種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができますか?
 「論点解説 新・会社法 千問の道標」P104・Q142・2・3段落目には、
 「同条1項各号に掲げられている事項ごとに定めることができる」とありますが、
 「立案担当者による新・会社法の解説」P89(商事法務1743号掲載分)には、
 「同条1項に掲げられている行為の一部につき同項の種類株主の決議を要しない旨を定めることはできないこととされている」
 とあります。
 どちらが正しいのでしょうか?
投稿 種類株主総会 | 2006/10/14 14:52:51
A5
 解釈にどちらが正しいというものはありません。
 当初は、「できない」という説明をしていましたが、その後、条文の文言を素直に解釈すると、例示列挙説は難しいのではないかという説が有力になり、千問を書く段階では、限定列挙+一部でも可能という説で書くことになりました。

Q6
 質問は、会社法100問のP283(66番)についてです。
[解答例]一1において、①~③の要件が挙げられています。
この根拠はどこにあるのでしょうか?
 条文の根拠なく要件列挙されているので、疑問に思いました。
 当然の前提のようなものに私が気づいていない可能性も大いにあるのですが、要件①~③の根拠教えていただきたく、質問しました。
 よろしくお願いします。
投稿 丁です。 | 2006/10/14 17:17:17
A6
 代理の3要件と言われるもので、根拠は、民法99条類推でしょうね。

Q7
民法の平仮名化でも、今日のコメントのように、
『法律の立案においては「二義を許さないこと」が求められますから,私達が「ここのところは,わざとあいまいにして,解釈に委ねようと思います」などと言えば,内外を問わず「バカ」という言葉がから返ってくるのではないかと思います。』
という状況だったのでしょうか。
葉玉先生の商事法務の論文のように、条文上一義的でないことが、最近になってあれこれ分かり、正直参っています。有限会社法時代から曖昧なことは、そのままにしておこうという意見は、立案担当者の中にはあまりないのでしょうか。
投稿 甲 | 2006/10/14 22:20:06
A7
 民法も、定義を置く案を公開したりして紆余曲折がありましたが、法制審議会も開かず、単なる現代語化をするということで改正しましたので、結果的には、旧民法の表現が残る形になりました。これは、最近の立法では、例外的なスタンスです。
 葉玉さんの商事法務の論文は、実務が混乱しないように、担当部署と話し合いの上で、これまでの実務を継続するために書いたものだったと思います。
 もともと実務上混乱していた部分もあったので、「これは、実務どおり」という声もあれば、「これは、従来の実務とは違う」という声もありましたが、基本的には、実務を基礎付けるための論文だったと思います。
 最後の質問については、一般的規範である以上、個別具体的な事実の当てはめにおいて、あいまいなものは、当然あります。ただ、「どういう規範なのかわからない」というものを、そのまま放置しようという意見はあまりありません。

Q8
私も実務家ですが、「解釈の余地のない」条文や解説が事後に邪魔になることがあります。起草時に想定もしていなかったようなことが起きるのが常ですから。
ついでにやや苦言めいたことを二つほど。
要綱できまったことから合理的に導かれると述べておられます。当の法制審部会長でさえ想像できなかったことを、会社法ユーザーに向かって、分からない方がおかしい旨を述べられるのは、やや思い上がりが過ぎるように考えます。
また、実務相談シリーズは、実務から相談に対して一問一答を行っていることが中心であるのに対して、今般の一連の著作は、問題にされてもいないことを先回りして「ペラペラ」と叙述されている部分があることに特徴があると思います。
投稿 通りすがり | 2006/10/15 10:01:55
A8
 条文が邪魔になれば、基本的には、改正するしかありません。
 解説が邪魔になれば、解説よりも説得的な準備書面を書いて、裁判所を味方につければ克服できます。
 記事を見ていただければわかるとおり、要綱できまったことから合理的に導かれるこちについて「わからない方がおかしい」とは言っておりません。要綱から合理的に導かれるよう制度の整備をしなければ、不合理な規定が残ったまま、審査を受けることになり、審査の過程で修正されることになります。ですから、要綱でも、所要の整備を行うことが織り込まれているので、そうした整備を行ったという話です。
 なお、会社法グループが「思い上がってる」という点は、本当にそうだと思います。
 次に、解説のスタンスについてですが、問題になって初めて解説するというスタンスをとれば、解説しないうちに「これはできるだろう」と思って色々とやった人が、解説によって、具体的な被害を受ける場合が出てきます。
 問題にされていない段階で先回りして「ペラペラ」解説するスタンスをとれば、その解説を見て、事前に問題が生じないような回避手段をとることができます。
 解説が気に入らない人は、「問題にもなっていないのに、解説しやがって」という気になりますが、そのような人は、リスクを覚悟で、解説と異なる手段をとる自由は残されています。
 また、事前に見解を発表すれば、こうしたブログを通じて、議論し、担当者が当初の見解を変える余地もあります。
 問題が生じた後に、初めて解説すれば、その問題に対して神の声で、「それは、ダメ」といわれるだけです。
 私は、事前に見解を明らかにし、オープンに議論する方が優れたスタンスであると思います。

Q9
「法令は国家権力が国民に提供する製品・商品・サービスである」というやや極端な「比喩」が許されるとすれば、「お客様(ユーザー)本位」で考えて欲しいと思います。そして、解釈・運用の局面は「アフターサービス」とすれば、こちらにも責任を持って欲しいと思います。法令は「独占的な商品」でユーザー側に選択肢はないのですから。・・・あまりに突拍子もjない比喩で単なる戯言にしか聞こえませんね。今日のやりとりを拝見した感想です。
投稿 法令ユーザー | 2006/10/15 12:48:09
A9
 会社法は、一般的には、「お客様本位」過ぎる、といわれている法律ですが、まだ、ユーザーサービスが足りないとすれば、今後も、サービス改善に勤めていきたいと思います。
 
Q10
人的分割においては、分割会社の全ての債権者が債権者保護手続きを受けるのに、「詐害行為取消権」(P693の下から2行目)は行使できるのですか?
投稿 南斗六星 | 2006/10/15 13:05:24
A10
「知れていない」債権者については、会社が催告をする義務を負わず、その結果、催告を受けなかった場合でも、分割会社と承継会社の双方に請求をすることができません。
 それで、会社に「知れていない」だけでなく、自己が債権者であることすら知らない不法行為債権者をどのように保護するかということが問題になります。
 そこで、そのような場合には、詐害行為取消権しか保護手段がないのではないかという解釈論を展開しているわけです。

Q11
譲渡制限株式に係る事項を変更,廃止する場合の株券提供公告についてですが,具体的な承認機関の記載び一定の場合には承認を要しないとする旨の定めは株券の記載事項となっていない為(会216③参照),株券提供公告は不要となるのでしょうか。ここのところの理由がわからないのでご教示ください。
投稿 迷いの森 | 2006/10/15 15:08:46
A11
譲渡制限を設定するときは、株券に記載しなければ、譲受人が不利益を受けるので、提出を求めなければならないこととされています。
それ以外の場合には、義務化されていませんが、任意に株券の提出を求めて書き換えることはできます。

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2006年10月12日 (木)

要綱と条文の違い

日本私法学会での質問第2弾は,
「なぜ,法制審の要綱に書かれていないことが,会社法で成文化されているのか」
ということです。

私達は,よくこの質問を受けるのですが,
「それで,どの部分が要綱に書かれていないことなのでしょうか」
と尋ねると,それは,ほとんどが,要綱で決まったことから合理的に導かれるものであることが多いように思います。

 例えば,払込担保責任の廃止が例にあげられましたが,①原始定款から設立時発効株式の総数を記載しないこととし,②設立時における打切発行を実現し,かつ,③資本金の額を発行価額ではなく,払込価額にすることが決まったのですから,この責任を存続させる合理性はありません。
 「いくつの株式について引受担保責任を負わせるのか」も明らかではなく,払い込まれていないものはそもそも資本に組み入れられないから,資本充実の点からも意味はないからです。
 もちろん,この「合理的に説明ができない」という部分の感覚は人によって様々なので,そこの違いから「要綱に無いことを入れた」と言われれば「ごめんなさい」というしかないのですが,「そうはいっても,こういう選択肢の方が合理的ですよね」と言いかえすことにしています。

 以上のように,要綱で定められたことを実現するために,合理的に旧商法を改変せざるをえなかった部分の他に,古いカタカナ法では許される表現でも,現代の立法技術では許されない表現というものも多数ありました。
 私達は,用例に沿って,法案を作らなければならず,しかも,戦後まもなくのカタカナ法をひらがな化しただけの用例は某所が受け入れてくれないので,最近の法律の用例をとことん探さなければなりません。

 また,カタカナ法の表現では,範囲が不明確であるため,それを明確化しなければならない場合もありました。
 学会の中では「解釈の余地がなくなった」という批判をお受けした部分ですが,現代の法律の立案においては「二義を許さないこと」が求められますから,私達が
「ここのところは,わざとあいまいにして,解釈に委ねようと思います」
などと言えば,内外を問わず
「バカ」
という言葉がから返ってくるのではないかと思います。
 さらに,法令協議で他省庁から質問が来たとき
「それは解釈にゆだねられいます」
と答えたら,きっと
「それで,法務省としては,どのような解釈を採っているのですか」
と言われ,結局は,その解釈で固めざるをえなくなってしまうでしょう。

 会社法は,行為規範としての側面を持っているので,会社法に携わる人たちのために明確な行為規範を提示する必要がありますし,特に今回のような大改正では,判例の射程すら不明確になるおそれがありますから,すでに確立した判例・実務がある場合には, それを採り入れて「解釈の余地のない」条文を作ることが要求されます。解釈の余地がないと面白くないという気持ちもわかりますが,解釈の余地があると困る人もたくさんいるのです。

 さらに,学会の中では,「法律というのは,国会が作るのではなく,法務省と内閣法制局で作る」という冗談をおっしゃった方がいらっしゃいましたが,現実には,国会で法律は作られるものであり,法案提出・審議のプロセスで,国会議員の皆さんに納得していただける内実が要求されます。
 この部分は,「法制審議会の要綱で決まっていますから」という言葉はむなしく響くだけであり,要綱に反しない限りで,どのように要望を採り入れていくかは,所管官庁として相当に気を遣うところです。
 特に会社法は大改正であった上,審議直前に敵対的買収がおこなわれて,大変,盛り上がった時期でしたから,「要綱」から削られたものすらあったくらい,シビアな審議でした。
 ですから,要綱にない部分で,会社法が救われたことも多々あったのも事実です。

 以上のような,いろいろな要因があって,要綱と条文のずれが生じているというのが,冒頭の問いに対する答えです。
 ご批判を含めて,できあがった条文の解釈論が繰り広げられるのを楽しみにしています。

 そういえば,もう一つ学会で
「今回の立案担当者は,口が多すぎる。いろいろなものを書き過ぎている。」
というご批判を受けました。
 私達が,実務に携わる方に対して一定の解釈を示すことが,スムーズな導入のために必要であり,現実に沢山の質問を毎日のように受けていましたから,そのことは,ずっと以前からの法務省の伝統であるということでご理解をいただきたいと思います。
 私達も好きでやっているのではないのですが(中には,葉玉さんのように好きでやっている人もいます),まだ私達の著書も,「実務相談」シリーズほどの長さには達していないので,それを超えない程度に留めたいと思います。

(質問コーナー)
Q1
新株予約権と募集株式の払込みの際での債権との相殺の取り扱いが違うのが、今ひとつ分かりません。新株予約権の払い込みの際に、全額を債権との相殺で行いその後、払込みなしで新株予約権の行使をした場合、実質募集株式で債権と相殺を行ったことと同じにはならないのでしょうか?また資本充実の原則との絡みとかが今ひとつ理解できません。
投稿 B | 2006/10/11 13:41:12
A1
 会社法では,①募集新株予約権の払込み(つまり,発行時の払込み)については相殺が許され(246条2項),新株予約権の行使時の払込みについては,相殺は許されない(281条3項)という整理になっています。
 これは,発行時の払込価額は,資本金に直接組み込まれるものではなく,「新株予約権の帳簿価額」と「行使時の払込価額」が資本金にベースとなるため,発行時の払込みは,直接は資本充実とは関係がないからだと思います。

Q2
小会社監査役の業務範囲について質問させて下さい。
整備法53条で「旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、監査役の業務範囲は会計に関するものに限ると定めがあるものとみなす」とされているため、先日の総会で「監査役の業務の範囲は会計に"限らない"」と定款変更しました。 (それ以前の定款には何も記載されてませんでした)
これによって、監査役の業務範囲が拡大された為、定款変更の承認時点で監査役の任期が終了、新たに同じ監査役を選任しました。
ところが、登記をしようとしたところ、現状の業務範囲が会計に関するものに限定されていないので、「重任」が正しいという指摘を受けました。
法務局には別の担当者が出向いたので、根拠法がはっきり確認出来ていないのですが、
監査役が就任した時は「みなし大会社」でその後減資して「小会社」になっている為(昨年の決算前に減資しました。今回は減資後2回目の総会です)、就任した時の業務範囲がそのまま引き継がれていて現在でも業務監査権限がある。
というのが理由のようです。
法務局の指摘のように、整備法53条にかかわらず、小会社でも監査役の業務監査権限がある場合もあるのでしょうか?
総会議案で業務範囲変更により任期満了の承認を得てしまったので、どうしたら良いものか困っています。ご指導いただきたく、宜しくお願いいたします。
(6月決算、資本金1億以下の非公開会社です)
投稿 MA | 2006/10/11 16:32:46
A2
整備法53条は,旧商法特例法の経過措置の適用のない通常の小会社に適用されるものと解釈していますので,小会社でも監査役の業務監査権限がある場合もあります。詳しくは,経過措置本を見てください。
ところで,今後の措置ですが,「任期満了の承認」は特に法的な意味はないと思いますが,事実をよく見ると,監査役としては一旦辞任して,また,選任されたと解釈するのが正しそうですが,それでは,駄目なのでしょうか。

Q3
特例有限会社の監査役の任期満了についての質問です。
特例有限会社の定款で、監査役を1名置く旨の定めがあり、今般この定めを廃止する定款変更決議をした場合、現任監査役の任期も当然に満了すると考えますが、いかがでしょうか。
特例有限会社の役員の任期については、整備法第18条で会社法第336条を適用除外としていることから、同条第4項第1号の任期満了規定は当該監査役には適用されないとの法務局の指摘を受けました。
監査役廃止の定款変更議案の中で、監査役の任期満了についても触れているのですが、法務局は退任には消極的です。
そもそも、監査役の解任は普通決議で可能なのに、決議要件の重い定款変更では監査役を退任登記させることができないというのも整合性に欠けると思うのですが…
投稿 seiquro | 2006/10/12 8:46:25
A3
調整が必要ですが,336条4項1号は,定款の廃止を任期の満了と捉えることを規定しているだけであり,同条が適用されないからといって,監査役が定款廃止後も職務を継続することができることを意味するものではありません。登記原因を何とするかはともかく,退任するものと思います。

Q4
大会社かつ公開会社かつ上場会社の場合、会社法による内部統制方針の決定や金商法(の中のいわゆるJ-SOX法)による内部統制報告書の作成など、対外的にも恥ずかしくないコーポレートガバナンスの充実を図らなければならなくなってきました。
その際、グループ会社(特に子会社)に対して、内部統制の仕組みの整備を指示したり実態の調査(監査ではなく執行としての内部チェックという意味です)をしなければなりませんが、親会社がこれらを実行する権限(権原)はどこに求めればよいのでしょうか?
内部統制に限らず、そもそもの子会社管理の問題だと考えておりますが、いずれにしても会社法上の株主権(帳簿閲覧権等)だけでは根拠として充分ではないように思えますし、さりとて子会社の取締役を通して間接的に親会社の指示を実現させているというのも実務感覚に合わない気がするものですから・・・。
投稿 ルイドブルボン | 2006/10/12 14:53:18
A4
親会社は,株主に過ぎませんから,子会社に対して,原則として,実体調査をする権限はありません。上位下達ではなく,親会社・子会社の取締役・監査役間の意思疎通等によって,内部統制システムを作ってください。

Q5
役員の選任に関する株主総会の客足数について「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数」(341条)とありますが、106条により相続などで共同相続人が株式を共有することになった場合に権利行使者を定めなければ、当該株式については権利行使ができない場合、「議決権を行使することができる株主」というのは、この共同相続人以外の株主となるのですか?もしこの会社が一人会社であれば、遺産分割手続きが終了するまで株主総会は開催できないということですか?
投稿 リー | 2006/10/12 17:36:38
A5
共有で権利行使者を定めていなくても,「議決権を行使することができる株主」には含まれるものと思います。
一人会社で,遺産分割手続が終了していない場合についてのご質問は,定足数の問題ではないですね。その場合に,権利行使者を定めておらず,会社側の同意がなければ,定足数をどう考えるにせよ,総会は成立しません。その場合は,会社が106条ただし書の同意をして権利行使をさせるれば,総会は開けます。

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2006年10月11日 (水)

擬似発起人の責任

 昨日、私達は、葉玉さんと一緒に、日本私法学会のシンポジウム「新会社法の意義と問題点」に参加してまいりました。
 会社法の担当者としては大変有意義な意見を聞くことができて、参加した甲斐がありましたが、シンポジウムにおける質問の中でいくつか気になる点がありましたので、思いつくまま、本日から何回かにわたって、答えを探ってみようと思います。

本日は、擬似発起人の責任です。

<質問1>
 旧商法198条は、「発起人ニ非ズシテ株式申込証ノ用紙、目論見書、株式募集ノ広告其ノ他株式募集ニ関スル文書ニ自己ノ氏名及会社ノ設立ヲ賛助スル旨ノ記載ヲ為スコトヲ承諾シタル者ハ発起人ト同一ノ責任ヲ負フ」と規定していたが、学説上は、擬似発起人は、任務懈怠責任を負わないとするのが有力であった。
 これに対して、会社法103条2項は「第五十七条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前項の規定を適用する。」と規定しているため、擬似発起人も、任務懈怠責任を負うことが明らかになった。
 これは、法制審にあがっていなかった実質的な変更ではないか?
<回答1>
 旧商法198条も「発起人ト同一ノ責任ヲ負フ」と規定され、文理解釈をすれば、発起人の任務懈怠責任を含むと読むのが素直な条文でした。
 それにもかかわらず、「擬似発起人には、任務は存在しないのだから、任務懈怠責任は含まれない」という限定解釈を採ることができたのだとすれば、会社法103条2項についても、同様の解釈をすることもできると思います。
 私は、擬似発起人の責任の趣旨は、募集の広告等を信頼した者の保護にあることにあると考えますし、取締役でないにもかかわらず、取締役として登記された者に任務懈怠責任を認めることができるのと同様、擬似発起人にも任務懈怠責任を認めることはできると思いますので、会社法103条2項を限定解釈するのは妥当ではなく、任務懈怠責任も含まれると思います。

<質問2>
 会社法103条2項が、擬似発起人に任務懈怠責任を認めることを明らかにする一方で、取締役でないにもかかわらず、取締役として登記された者に任務懈怠責任を認める条文がないことを考えると、後者に、908条2項(不実登記の規定)を類推適用して任務懈怠責任を認めることができなくなったのではないか?
<回答2>
  両者は、「法律上、任務を負っていない者が任務懈怠責任を負うか」という点では共通していますが、擬似発起人の責任の明確化と908条2項類推適用は、必ずしも論理的に関連しているわけではありません。
 そのことは、旧商法で、①擬似発起人の責任について任務懈怠責任を認めないが、②不実登記(旧商法14条)の類推適用で登記上の取締役の任務懈怠責任は認める、というのが通説であったことからも分かっていただけると思います。
 103条2項も、908条2項も、旧商法の条文を現代化したにすぎないので、いろいろな解釈があってよいと思いますが、私は、擬似発起人(103条2項)も、登記上の取締役(908条2項類推)も、任務懈怠責任を負うと解するのが妥当であると思います。

(質問コーナー)
Q1
会社法786条「消滅会社等の買取請求は、買取価格協議成立いかんにかかわらず、再編の効力発生時に、(無理やり?)売買が成立する」と、その5項に記載があります。となれば、売買効力が発生する以上、株券発行会社は株券を押さえにかかるわけですが、さらに、その6項で、「株券発行会社で株券がある場合は株券と引き換えに代金を支払う」とあります。つまり、代金支払まで株券を押えずして売買の効力を発生させることは困難かと思います。株主は、協議が成立し無ければ株券を提出しないので、株主のやりっぱなしが横行する気がいたします。上場会社での保振制度では、別の問題もあります。どのような実務対応を想定されておられるのか、ご教授ください。
投稿 T/A | 2006/10/08 1:03:24
A1
「株券を押さえにかかる」という意味が分かりません。
吸収合併の効力発生日に、株式買取請求の効力が生ずることにより、買取請求権を行使した者は、合併の対価の交付を受けることはできず、存続会社に対して、代金の支払いだけを請求することができます。
その者が、協議が成立せずに、消滅会社の株券を譲渡したとしても、その株券は、消滅会社の法人格が既に消滅している以上、株式を表彰するものではありませんし、合併対価の交付請求権を表彰したものではないので、「株主のやりっぱなし」というのはありえないと思います。

Q2
非公開会社が公開会社に移行する場合,取締役等選解任権付株式の定めは当然に失効すると解してよいのですか。員数に足りる数の取締役等を選任できない場合には定めのみなし廃止の規定を設けながら(会112),当該場合にはみなし規定を置かなかったのは,非公開会社が公開会社に移行する場合,取締役等が任期満了退任するとのみなし規定(会332Ⅳ③)を設けていることと何か関連しているのでしょうか。また,他の法律効果の発生により定款変更がされたものとみなす必要がある場合には,明文の規定を設けることとする整理とは,どのような関係に立つのでしょうか。
投稿 猫太郎 | 2006/10/08 8:53:58
A2
旧商法時代から条文構造が変わっていないので、解釈に委ねられているのだと思いますが、私は、取締役等選解任権付株式を発行している会社は、譲渡制限の定めを廃止したり、譲渡制限のない株式の定めを置いたりすることはできない(つまり、公開会社になることができない)と思います。

Q3
葉玉論文(商事法務No1778)によれば,間接選定方式で代表取締役を選定した場合の就任承諾の意味を就任拒否権を行使しない旨の確認行為と位置付けています。そうだとすれば,就任拒否権が行使されない限り,選定時点から就任の効力が発生すると理解する方が自然な感じがするのですが,なぜ,就任承諾の時点から就任の効力が生ずることになるのでしょうか。
投稿 猫太郎 | 2006/10/08 8:55:24
A3
葉玉論文でいう「就任拒否権」は、辞任権とは異なり、就任自体を拒否する権利です。代表取締役に選定された場合に、「就任承諾権がある」というのは表現としておかしいので、「就任を承諾しない限り、代表取締役としての選定の効力を生じさせない権利」という意味で「就任拒否権」と呼んでいるのだと思います。
 したがって、選定されて、いきなり就任の効力が発生してしまうと、就任拒否ができなくなってしまいますので、就任承諾の時点から就任の効力が生ずることになります。

Q4
ものの本には全部取得条項付種類株式について、いわゆる100%減資を可能とするために考案されたとあります。
しかしながらこれがどのように活用されるのかイメージがわきません。
倒産を前提として設立ないし新株発行をするとは考えられませんし、上場株式はほぼ普通株だけですので、仮に上場廃止したとしても全部取得条項付種類株式にいちいち転換するのは大変だと思います。
どのような使われ方が想定されているのでしょうか。
ついでに旧法下の倒産会社でしばしば強制的な100%減資が行われていましたが、同時に増資をするとはいえ株主を総とっかえするなんて、いかように実行され、また適法視されていたのでしょうか。
投稿 セガ | 2006/10/09 18:52:37
A4
債務超過の会社が、資金繰りに窮したとしても、その会社の事業自体に魅力があるのならば、その会社に出資して救済しようという人もあらわれることはあります。
たとえば、発行済株式総数1000株、発行可能株式総数4000株、債務超過が1000万円ある会社に、Aさんが、9000万円を出資して、会社を建て直したいと考えたとしましょう。
Aさんの出資により、その会社は債務超過を解消し、8000万円の純資産が形成されます。
Aさんに授権枠一杯の3000株を発行すると、発行済株式総数は4000株になり、1株あたりの純資産額は2万円になります。しかし、よく考えてみると、Aさんは、9000万円も出資したのに、6000万円分の株式しか取得することができません。
他方、既存の株主は、もともと債務超過会社の株式、つまり、一株あたり純資産額マイナス1万円(間接有限責任なので、株式の価値は0円未満にはなりませんが)の株式が、労せずして、一株あたり2万円の株式になります。
 債務超過分を負担するのならともかく、既存の株主に利益を享受させるために、出資してくれる人は、普通存在しないので、既存の株主に退場していただかないと、このような救済スキームを実現することはできません。
 そこで、すでに価値のない株式しか有しない株主を追い出す制度が必要とされたわけであり、さらに、会社法は、株式に価値がある場合であっても、買取請求権・価格決定申立権を株主に与えることにより、株式の全部取得を可能にしているのです。

Q5
簡易株式交換において、完全子会社株主に交付する対価を親会社株式のみとした場合、第799条の債権者保護手続は不要となるのですが、この際の資本金等について定めた会社計算規則第68条について教えてください。
この場合、同条第1項第2号によれば、資本準備金の増加額をゼロにすることはできないように読めます(資本金の増加額は株式交換契約によりゼロ)。
親会社株式のみを対価とする場合に、任意で債権者保護手続を行い、株主払込資本変動額を資本準備金ではなく資本剰余金に組み入れることは可能でしょうか。
できないとすれば、準備金減少に関する本則である第448条に基づいて株式交換により増加する資本準備金と同額を減少させる(減少の効力発生は株式交換の効力発生と同時とする)旨の取締役会決議を行い、第449条に基づく債権者保護手続を行うことで、同様の結果を得ることは可能でしょうか。
そもそも、対価が親会社株式のみの場合と親会社株式以外を含む場合とで、後者の方が簡易な手続となることに違和感を覚えるのですが、この点についても教えていただけると助かります。
よろしくご指導願います。
A5
 任意の債権者保護手続をするのは自由ですが、799条の債権者保護手続に該当しないので、それをやったからといって、その他資本剰余金に組み入れることはできないと思います。
 簡易株式交換による準備金の増加額と同額を減少させて、準備金を増加させない方法は可能でしょう(448条3項)。
 なお、最後の質問については、親会社株式のみの場合の方が債権者保護手続がないので、手続きは簡易だと思うのですが・・・。

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2006年10月 7日 (土)

異議を述べた債権者

ニモさんが,会社分割における債権者保護手続について,質問されています。

要するに,債権者が現に異議が述べられたにもかかわらず、分割会社が789条5項に定める担保提供等の措置を執らなかったときに,当該債権者が,分割会社に対して,履行を請求することができるかということです。

ニモさんの問題意識は,,789条2項の催告義務違反の場合は、759条2項で,分割会社への履行請求権が認められていますが、789条5項の担保提供等義務違反の場合は、759条2項に相当するような分割会社への履行請求権を特に定めた規定はないところです。

しかし,759条2項は,債権者に異議申述権があることを前提に,債権者がその権利を行使しなかった場合でも,保護されるという特別な規定ですから,異議を述べた債権者について,同様の規定がないことを根拠に,分割会社への請求を否定するのは無理です。

では,異議を述べた債権者は,何条を根拠に分割会社に対して請求することができるかというと,まずは789条5項でしょう。

同項は,「債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。」と規定しています。

簡単にいえば,分割会社は,異議を述べた債権者に,履行期が到来していれば弁済し(特定物の給付を含みます。),そうでなければ,担保提供等の義務を負います。

この分割会社の義務は,会社分割の効力発生日後も,当然に継続しますから,ニモさんの事例のように,分割会社が担保提供義務を拒否しても,単に債務不履行に過ぎず,ずっと担保提供等義務を負い続けているのです。

 そして,その後,履行期が到来すれば,分割会社は,789条5項に基づき,担保提供義務ではなく,弁済する義務を負うと考えます。
 もちろん,ニモさんの事例のように,特定物の引渡債務である場合には,分割会社は,履行不能で損害賠償義務が生ずるだけでしょうが,いずれにせよ,担保提供を怠っている場合には,履行期後は,分割会社は,損害賠償義務を負う点は,催告義務違反の場合と同じです。

なお,もう一つのアプローチは,789条4項の反対解釈として、異議を述べた債権者は,吸収分割を承認したものとはみなされないことです。

合併の場合には,消滅会社の法人格自体が消滅してしまいますから,異議を述べた債権者が「存続会社に移転されたくない」と考えても,合併無効の訴えを提起する以外,その望みは通りません。

しかし,会社分割は,分割会社の法人格はあるので,「債務の移転の効果は生ずるが(会社分割は有効),異議を述べた債権者については,「免責」を認めない」という解釈も十分なりたちます(労働契約承継法で労働者が異議を述べたときも,似たような処理ですが,同法は,労働者に対する権利を含めた契約の移転の承継自体を認めないものなので,ちょっと違います。)

 もっとも,こちらは,789条5項ただし書に該当する場合の解釈が難しく,異議を述べれば,常に,分割会社の「免責」を認められないというわけにはいかないと思います。
 このあたりは,どこにも文献がない世界なので,私も断言するのは差し控えたいと思いますが,789条5項ただし書に該当しない限りでは,免責を認めないというアプローチはあるではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

(質問コーナー)
Q1
A種,B種に譲渡制限の定めが設けられている場合に,譲渡制限の定めがないC種の株式を新たに定めた場合,336条4項による役員の退任はあるのでしょうか?
 条文の文言は「~の定めを廃止する定款の変更」の時に任期が終了すると去れていますが,条文の趣旨から考えると上記の場合にも非公開会社から公開会社になる場合なので,役員が退任する場合のように感じます。
投稿 ヒーロー | 2006/10/05 21:11:58
A1
なるほど,そういうパターンもありますね。
調整の必要がありますが,全部の株式の内容としては,廃止されたと見て,退任と捉えるべきでしょう。

Q2
サミー様、Q2で質問をさせて頂いた会社法初級です。
私の理解が悪いので、再度具体的に質問をさせていただきます。
たとえば、総会決議日が6/15日、配当支払開始日が6/18日からとしますと、
剰余金の効力発生日は6/18日になるということでしょうか。
ご回答願います。
投稿 会社法初級 | 2006/10/05 23:23:49
A2
発想が間違っています。
総会でどのように定めたかによって決まるので,総会決議日を効力発生日と定めれば,総会決議日が効力発生日であり,配当支払開始日を効力発生日と定めれば,配当支払開始日です。
 通常は,配当支払開始日を決めているのなら,その日が効力発生日と見るのでしょう。

Q3
千問のQ352に関してご教示ください。
読解力がないもので、回答の4行目以降の「株式会社が自己新株予約権を取得した場合には、当該新株予約権が自己新株予約権でないとすれば、行使することが可能なものである限り、当該株式会社が当該自己新株予約権を処分することにより、別の者が新株予約権者として再び新株予約権を行使することができることとなるので、287条の規定の適用はない」・・・の意味が全く理解できません。。。
具体的にどのようなケースのことを言っているのか、お教えいただけましたら幸甚に存じます。どうぞ宜しくお願い申しあげます。
投稿 悩める株式課員 | 2006/10/06 12:20:18
A3
読解力というより,分かりにくい文章でした。ようするに,現在の新株予約権者が行使できなくなったから,当然に消滅するのではなく,誰が新株予約権者になったとしても行使できなくなったときに消滅するということです。

Q4
サミーさん、「株主総会の目的たる事項」の範囲につきお尋ねいたします。
旧商法では、232条2項に「会議の目的たる事項」という表現があり、一般的に報告事項と決議事項を総称して「会議の目的事項」と称していたと思います。各社の招集通知もそのような記載となっていました。
会社法319条では「株主総会の目的である事項について提案をした場合において」とあり、決議事項は「目的である事項」なのだと思いますが、320条では「株主総会に報告すべき事項を通知した場合において」とあり、「目的である事項」という用語が用いられていません。これは報告事項は「株主総会の目的である事項」に含まないという趣旨でしょうか。
そうだとすると、招集通知は
(報告事項)
○○報告の件
(本株主総会の目的である事項)
第1号議案 ××の件
のように記載するのが正しいでしょうか。
投稿 CCC | 2006/10/06 18:26:08
A4
報告を目的とする総会を否定するものではありませんので,報告事項も「株主総会の目的である事項」に含みます。

Q5
御質問は,「機関」概念は改正前商法と会社法では実質的に変容したのでしょうか?何故このようなことを疑問に思ったかと申しますと,会社法においては,「会計監査人」が「機関」とされたからです。「会計監査人は,昭和49年商法改正以来導入されたものであるが,旧会社法のもとでは会社の外部にあって会社と契約関係で結ばれているものと解されており」(前田庸「会社法入門[第11版]」(有斐閣・2006)331頁),改正前商法のセンスからすると,どうも「機関」というのがしっくりきません。私は「機関設計の自由化」のパーツとして,会計監査人を入れざるを得なかったので,これを会社法上は「機関」の扱いにしただけと思うのですが,だとすれば会社法に規定されている「機関」という概念は,従来の講学上の「機関」概念と異なり,機関設計の自由化のための単なる機能概念になったのではないかとも考えられるような気もします。裏返せば,会計監査人って,ほんとに機関なのかという単純な疑問なのですが,いかがでしょうか?実務上はどうでもいいことですが。
投稿 T.I.ネットワーク | 2006/10/06 20:49:08
A5
もともと,「機関」という概念は不明確なものでした。会社法は,旧商法では機関とされていなかった取締役・会計監査人も機関に含めていますので,機関概念は変わったのでしょう。なぜ変わったのかは,会社法100問の機関設計自由の原則のところを読んでください。

Q6
葉玉先生時代に既出かとは思うのですが、譲渡制限株式の譲渡承認機関?(139条1項但書)ついて質問させてください。
① 譲渡承認機関を定款で監査役にしても良いか?
② 同じく譲渡承認機関を三委員会のいずれかの機関にしても良いか?
③ 特定の大株主にしても良いか?
④ 株主でない会社と全く関係のない個人にしても良いか?構わないとするならば、その個人が死亡した場合、その地位は相続されるのか?
以上お答えを頂ければ大変ありがたいです。激務の中大変恐縮ですが宜しくお願いいたします。
P.S ライブドアのブログの検索機能はもうちょっと向上できませんでしょうか?
激務の方々に同じ質問をしてお手数をかけることが申し訳ないので。
投稿 NK | 2006/10/06 21:51:35
A6
①監査役の職責と矛盾しないかどうかですね。断言するのは難しいです。防衛策の一環だといえば,大丈夫かもしれないです。
② ①と同じです。あまり普通じゃないですが,駄目とまでいえるかどうか。
③ 会社の機関ではないので,駄目そうです。
④ 駄目だと整理しています。

Q7
以前このブログで、「総会終了時に退任した役員に支払った報酬については次の事業報告での開示義務がなくなった。すると、その退任役員に支払われた退職慰労金は、事業報告では開示されないが、それで良いですか?」と
いう趣旨の質問に対し、初代サミーさんは、何らかの形で記載したほうが良い旨を
回答されておられました。この記載の要否の明確化については、今回の省令改正案
の中では特に触れられていないようですが、やはり、記載すべきであるということなのでしょうか?
投稿 みひろ | 2006/10/06 22:58:23
A7
その点は,今回の改正案にはありません。
重要な事項ならば,開示すべきですが,重要でなければ,開示は不要です。一般的には,①退任する総会に提出する事業報告に与える予定の退職慰労金を記載する必要がある,あえていえば、過去の事業報告に記載してない報酬を与えるので、よっぽどのことがない限り、重要事項なので個別に開示する必要がある
②ただし,あくまで与える予定の退職慰労金であり、賞与と同じように、結果的に、少しくらい違っても仕方がない
③退職慰労金を与える予定がなかったのに、退任する総会(ないし、その後の総会)で与えることが決まったのなら、よっぽどのことがない限り、重要事項なので,個別に開示する必要がある

ということでしょうか。

Q8
LEC司法試験課の最新パンフ(商品コード:LV06025)17ページに、12月開講予定の講座として、
『新会社法100問徹底整理講座』
『C-BOOK会社法徹底攻略講座』
が掲載されており、紹介文には、
・立法担当官の視点から、わかりやすく解説いたします。
・立法担当官以外の見解にも言及します。
との記載がありました。
もしかして・・・、上記2講座の担当者は、サミー先生でしょうか??
投稿 昭允 | 2006/10/07 7:11:01
A8
違います。

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2006年10月 5日 (木)

法務省令の改正案

会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=300080003&OBJCD=&GROUP=
がはじまりました(2006年11月2日まで)。

名無しさんから「法務省が意見募集にかけている省令の改正の趣旨について、簡単にご説明いただければ幸いです。」というご依頼がありましたので,簡単にご説明します。

今回の省令改正は,普通はあまり関わり合いのない分野の改正です。

会社法施行規則のうち実質的な改正点は,公開会社の事業報告において,
「株式会社が,当該事業年度に株式その他の持分又は新株予約権の「処分」の状況を記載しなければならないこととする。」
ということくらいです。
 既に記載事項となっている「取得」と同程度の重要性をもつ「処分」を記載すべきであるという声に対応しました。
 残りの部分は,現行規則の明確化又はチョンボ直しです。

 次に,会社計算規則の実質的な改正点は次の通りです。

1 創立費・株式発行費の資本控除規定を当分の間凍結する。
 (趣旨)
 国際会計基準では創立費等は資本控除とされていたので,現行規則は資本控除の規定を置いていました。ところが,その後,会計基準の世界で流れが代わり,結局,企業会計基準委員会が「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」として,当面は,資本控除を行わないことになってしまいました。法務省としては,企業会計基準委員会の事務局と密に連絡を取り合いながら,現行規則を制定したのですが,企業会計基準委員会の流れがそちらにいった以上,会社計算規則でも,当分の間は,創立費等の資本控除の規定を凍結することにしました。
 W大学の某教授はお喜びになると思いますが,当分の間,凍結されただけで,削除したものではありません。

2 抱き合わせ株式(存続会社が有する消滅会社株式)の会計処理
 共通支配下関係にある会社間で吸収合併する場合に,抱き合わせ株式について
消滅会社の株主資本の額から抱き合わせ株式の帳簿価額を控除した上で,のれんの額・資本金等の変動額を算定することにしました。

3 子会社・孫会社間の吸収合併等の会計処理
 現行規則では,親会社と子会社間で吸収合併をする場合には,共通支配下関係の取引の特則が置かれているのですが,子会社・孫会社間の吸収合併には,特則が置かれていません(通常の共通支配下関係と同じ取扱い)。
 今回の改正では,子会社と孫会社間の吸収合併について,最上位の親会社と子会社の間の吸収合併等と同じ取扱をすることにしました。

4 共通支配下関係にある会社間の無対価の吸収合併・新設合併の会計処理
 当該場合においては,持分プーリング法に準じた処理(ただし,資本金・資本準備金は増えません)をすることを許容することとしました。

5 その他詳しいことは,「省令案の概要」をご覧下さい。

(質問コーナー)
Q1
ところで、質問コーナーでは、質問者の名前を書いていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
投稿 エル | 2006/10/03 21:55:19
A1
どうも,すいません。慣れないもので。
以後,名前を書くことにします。

Q2
剰余金の配当の効力日とはいつを指すのでしょうか。総会、役会の決議日または支払開始日のどちらでしょうか。
①今度の取締役会で中間配当金を決議するのですが、会社法は効力発生日を 決議とありますが、当然支払開始日を決議するのでしょうか?
②個別注記表、株主資本等変動計算書で効力発生日を記載するようになっていますが、これも支払日ですか?
 また、この6月の株主総会では効力発生日については、特に決議しませんでしたが。とりあえずこれも支払日でよいですか。
投稿 会社法初級 | 2006/10/04 1:19:10
A2
(1) 配当の決定時において「当該剰余金の配当がその効力を生ずる日」(454条1項3号)として定めた日が効力発生日です。
(2)株主総会で定めるときも,本当は,効力発生日を定める必要がありますので,特に決議しなかったというのはまずいと思いますが,その場合は,株主総会の決議の日を効力発生日とする決議があったものと見るのが通常でしょう。

Q3
吸収分割に関する質問ですが、ある会社(A社)が、吸収分割により事業に係る権利義務の一部を他社(B社)に承継させる際、承継先であるB社の代表取締役がA社の代表取締役でもある場合、A社における分割契約の承認取締役会の議決には、A社の代表取締役は「特別利害関係人」として加わることができないのでしょうか?
但し、「B社はA社の完全子会社ではない」ことを前提としています。
会社法356条に定める「取引」の概念に、会社分割による事業承継が含まれるかどうか、といった内容になるかと思いますが、ご解答の程よろしくお願いいたします。
投稿 naga | 2006/10/04 17:59:09
A3
356条の「取引」には,吸収分割契約も含まれまると思います。
ご質問の場合には,双方代理になっているわけですから,特別利害関係人として加わることはできないでしょう。

Q4
今日は、立案担当者の方々が書かれた文献の記載について教えてください。
「立案担当者による新・会社法の解説」88頁の中段後ろから2行目に、会社法になって株式の買受け及び減資・減準備金の場合に一般的に種類株主総会が必要とされなくなったことの理由として、「株式の買受けおよび剰余金の配当に統合された資本金等の減少に伴う払戻しについては、原則として定款の定めに基づかなければ種類ごとに格別の取扱いをすることができない」とあります。
しかし、減資+自己株取得として行う場合は、定款に定めがなくても種類ごとに異なる取扱い(減資の後、ある種類の株式のみ買い受ける)ができるのではないでしょうか。
この記載の意味について教えてください。
投稿 ジェフリー・サルポン | 2006/10/05 0:47:09
A4
すいませんが,当該記載をした者が近くにいないので,その真意は確かめられません
おっしゃるとおり,定款の定めがなくても,自己株式の取得は,種類ごとにできます。

Q5
会社法では、取締役や監査役がする仕事に関し、「業務の執行」と「職務の執行」とは明確に区別しているようです。これに関し、「論点解説新・会社法(初版)」のQ398では、「業務の執行」とは、「会社の目的である具体的事業活動に関与すること」を意味する旨の記述があり、「職務の執行」については、具体例を掲げて説明されています。
ここの記述を読んでみても、私の悪い頭では、これら二つの仕事の線引きが難しいです。私の頭では、「職務の執行」とは、「会社法における取締役や監査役の個々の仕事を遂行すること」をいい、取締役については、会社の売上に絡む職務を執行すれば、「業務の執行」をしたことになり、監査役については、「業務の執行」は有り得ず、「職務の執行」だけをしたことになるのかな? と考えます。
なにか分かりやすい線引きみたいなところを教えて頂けませんでしょうか。
A6
判断が難しければ,総会の手続,役員等の選定,監査関係以外はみな業務執行だと思えばよいのではないでしょうか。

Q7
例えば、会社法施行前からある株式会社で、代表取締役以外の取締役や監査役で、実際には名前だけでなんらの仕事もしていない役員がいるケースがあると思います。このような名目上の役員に対し報酬等を支給している場合、その報酬等には、「職務執行の対価」としての性格がないように思います。だとすれば、このような報酬等の支給は、違法になるのでしょうか。
投稿 とっちー | 2006/10/05 10:56:17
A7
名目上の役員も,役員としての任務を負っており,その任務に対して対価が支払われています。その役員は,単に任務懈怠をしているだけであり,報酬の支給自体が違法になるわけではありません。

Q8
剰余金の配当がその効力を生ずる日」を定めるにあたり、その日を当該配当の決議を行う日の半年先で、翌事業年度となる日を定めることは可能でしょうか。
葉玉先生の「引退宣言」の日の質問コーナーでは、基準日から3ヶ月を超えるケースのお話がありましたが、基準日を定めずに配当決議を行う(非公開会社ではあり得る話だと思います)とすれば、効力発生日における財源規制の問題が生じるリスクはあるものの、翌事業年度に配当を支払う決議も可能だと思われますが、いかがでしょうか。
投稿 たろすけ | 2006/10/05 17:06:39
A8
 なかなか難しい問題です。基準日を定めた場合の「効力発生日」は,剰余金の配当請求権の発生日で,かつ,支払期日となると考えるのが一般的です。
 基準日を定めない場合には,効力発生日の株主に剰余金の配当請求権が発生するので,ご質問の方法では,目的が達成できないように思います。
 たろすけさんの問題意識を分析すると,基準日や効力発生日とは,別の「支払期日」を設けることができるかという問題なのでしょう。
 あまり議論されたことのない問題なので,断言できませんが,効力発生日=支払期日でなければ,461条1項の財源規制がうまく働かないところが気になるところです。

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2006年10月 3日 (火)

はじめまして

 はじめまして。サミーです。
 昨日、葉玉さんから引き継ぎを受け、このブログを書くことになってしまいました。

 実は、葉玉さんからは
「スケベなおやじという設定だから、よろしく。」
ということしか引き継いでいませんので、若干戸惑い気味です。
 私も男ですから、スケベであることは否定しませんが、仕事で遅くなったときに、カプセルホテルに泊まってビデオを見るのが趣味であること以外は、真面目な日常生活を営んでいますので、葉玉さんの設定に反して、実直なブログを目指したいと思います。

 本日は、ブログという不特定人に向けたものを書くのは初めてで、少しアガッてますから、このへんで質問コーナーに移ります。

 いたらないところも多々あると思いますが、これから、よろしくお願いします。

(質問コーナー)
Q1
 数日前の記事で、「昭和25年改正前は、株主総会万能主義で、取締役に各自代表だった。昭和25年改正後は、株主総会万能主義は有限会社に任せて、株式会社は、株主総会の権限を限定して、所有と経営の分離を進めた。平成17年の会社法は、昭和25年改正前に近い状態になった。というブーメラン現象が起こっただけ。」とありましたが、会社法295条2項の取締役会設置会社は、昭和25年改正後と同じなのではないでしょうか。
なぜ、取締役会設置会社も含めて昭和25年改正前に近い状態なのか、教えて頂けませんか?
A1
 株式会社の性質を考えるときに、特定の機関設計の会社だけを捉えて旧商法の株式会社と近いかどうかを論ずるのは、妥当ではないと思います。
 たとえば、「委員会設置会社については、昭和25年改正前とは違うのではないか」と言われれば、「はい。昭和25年改正前には委員会設置会社はありませんでした」と答えるしかありません。
 また、「取締役会設置会社では、取締役会の設置が義務づけられているので、旧商法と同じだ」と言われることがありますが、取締役会の設置を法律で強制しているわけではなく、定款で自律的に設置しているのですから、その存立基盤は、昭和25年改正前と大きく異なります。
 昭和25年改正は、法律で取締役会の設置を強制し、かつ、株主総会の権限を制限するという立法政策を採ったのですから、例えば、株主総会の決議事項である「定款で定めた事項」とは何かを考えるときでも、その立法政策を前提に
「定款で定めることができる事項には限界があり、業務執行の決定を株主総会で行うことはできない」という解釈が出てきやすい。
 それに対し、会社法は、取締役会を設置せず、かつ、株主総会の権限を制限しないを株式会社の基本に置き、会社が、定款で任意に取締役会を設置することを選択したときに、295条2項が適用されることになります。
 言葉を変えれば、295条2項を適用するかどうかは、会社の任意なのですから、295条2項は、会社の通常の意思を類型化した規定に過ぎず、「定款で定めることができる事項には限界がない」という解釈につながりやすい。
 このように、機関については、ある機関構成におけるある特定の条文だけを捉えて旧商法の株式会社と同じかどうかを論ずるのは、本質を見失うように思います。
 それを前提に、取締役会設置会社と旧商法の株式会社で何が大きく異なるかというと、「代表取締役を取締役の一種と考え、取締役との分化を否定している」というところでしょう。昭和25年改正は、取締役から業務執行権を奪い、「取締役自体は機関ですらない」ということを前提にして、代表取締役を取締役から分化させることが改正の柱でしたから。

Q2
 取締役会設置会社の代表取締役の選定について、9ページの1段目では、会社法362条2項3号により取締役会で選定するとされていますが、同ページの3段目の注「定款で代表取締役を選定できると解される」とありますが、これは、設立に際してのみならず、常に定款で定めることが可能と考えてよろしいのでしょうか?
A2
 解釈問題ですが、千問の道標では、設立時代表取締役について定款で定められると解釈していますから、設立時代表取締役以外でも、可能と解するのが整合的であると思います。このように解釈することが、定款で「代表取締役の選定」を株主総会の決議事項とすることができるという解釈とも整合的です。
ただし、取締役の任期との関係で、その定款の定めは2年間しか効力は有しないことになるでしょう。

Q3 
 同ページ2段目の「他方・・・」以下の定款を定めた場合、先日の質問の例のBCに代表権が付与され、その旨の登記がなされることとなりますが、BCについては過去に印鑑証明書の添付がなされたjことのないケースが多々生じますが、この場合、商業登記法施行規則61条の趣旨に反することになるのでは? (旧規則第82条について、虚無人を防止するための趣旨と理解しています。)
A3
 問題の所在が把握できませんが、就任承諾が必要かどうかという問題と、印鑑証明書の添付の要否は、必ずしも一致しないのではないでしょうか?

Q4
 下記のような質問が来ました。私は、可能と考えますが、「発起人全員で決めるのだから、よさそうにも思いますが、可とすると、事実上の信用労務出資を認めることに通じます。また、株主平等(109条)は設立前にも影響する営利社団の基本原則と解します。 」との考えにより不可とする考えもありますが、いかがでしょうか?
 発起設立の56条までには、募集設立の58条3項にあるような募集条件均等の規定が見当たらないのですが、ということは、発起人が払い込む金額は「1株あたりは不均等」でもいいということでしょうか?
 具体的には、現物出資もからむのですが、
・発起人A : 現金出資 5000万円・5000株 → 10000円/1株・発起人B : 現物出資 500万円・5000株   → 1000円/1株
A4
 発起設立では、不均等でも構いません。引受条件の均等性は、株主になる前の話ですので、株主平等の原則は、直接影響を与えません。

Q5
サミーさん、はじめまして。株主所在不明の場合の株式の売却についてお聞きしたいことがあるのですが、所在不明等の株主の株式を会社法第197条2項の規定により売却する場合、前提要件として、同条第1項各号を満たさなければなりませんが、同2号の「剰余金の配当を受領しなかった」とは、剰余金の配当が5年間無配だった場合も含まれると解してよいのでしょうか?
A5
 2項の売却は、1項の規定による競売に代えて行うものですから、1項の適用がなければ、行うことはできないと解されます。
 無配の場合は、株主の意思が不明ですから、2号の「剰余金の配当を受領しなかった」に含まれないと解されます。

Q6
早速ですが、上記Q12のご回答について、
条文上の根拠は第何条になるのかご教示いただけませんでしょうか?
A6

吸収分割の場合には,789条4項5項です。

Q7
旧試験の短答試験で、以前、”60点を目指す勉強法は全く違う”といった旨の話をされていましたがどのように違うのでしょうか。
私にとっては、60点はともかく、55点以上を取る事ですらまだ見えません。
来年が50点前後の合格ラインになりそうである以上、それに備えたいのです。
ご教授いただけたら、幸いです。
A7
葉玉さんと違って、受験テクニックは素人ですから、それを前提に聞いていただきたいのですが、葉玉さんの言いたかったことは、
「満点を採るためには、完全に網羅的で正確な知識を身につけた上、択一的な論理的思考力を養うために過去の択一問題の選択肢の選び方について全部暗記するくらいの勉強をしなければならないから、時間がいくらあっても足りない。そんな勉強をするな。」
ということを言いたかったのではないでしょうか。

Q8
民事局付検事として長らくご活躍だったとのこと。私もそういう方面で働きたいという思いを持っているのですが、今更ながらふと疑問に思った事があります。それは(会社法関係の質問ではないので非常に恐縮ですが)、国家公務員試験を通過して法務省で働いていらっしゃる方々とは、どういう具合で仕事の分担をなさっていたのかということです。会社法立案担当者の会には法務省の方はいらっしゃらなかったように思うのですが・・・。検事はより専門的な集団という具合なのでしょうか。お答えを頂戴できると大変嬉しいです。
A8
民事局付の中には、国家公務員試験を合格した方もいらっしゃって、検察官・裁判官と同じ仕事をしています。ただ、登記や戸籍等の行政に携わっている方の方が多いと思います。

Q9
会社法の判例でしばしば登場する「合理的に~」とはどういう判断基準なのでしょうか?具体的な判例を交えて教えていただけると助かります。
「~は合理性がない」など合理的という言葉であいまいに片付けられているような気がしていつも腑に落ちません。
何が合理的でないのか・・・・いつもそこで引っかかってしまいます。
A9
「合理的に」と書かれている判例を検索するのは大変なので、ご勘弁いただきたいと思います。
「合理的」という言葉があいまいに使われているかどうかは、判例によります。
私達が判例を読むときには、「合理的」という言葉を重視しているわけではなく、合理性を基礎づける事実や論理を見ていますから、「合理的」という言葉にこだわる必要はないのではないでしょうか。

Q10
その論文試験の発表も、あと1ヵ月後となりました。口述試験に向けて勉強しているのですが、葉玉先生なら口述試験についても意見や面白い話があるのではないかと思い、お聞きしたくて、書き込むことにしました。
 口述試験の対策、ご自身の思い出など、なんでもいいので(←無責任な聞き方ですが)、もし何かあればぜひ教えていただきたいと思います。
A10
 葉玉さんでなくて申し訳ありませんが、私が口述試験を受けたときは
・定義をしっかりと言えるようにする。
・どんな質問がきても、黙り込むことがないようにするために、普段、あまり勉強しないようところを中心に勉強し、択一・論文でよく勉強したところは勉強しない。
・試験委員の質問に簡潔に答えるようにするため、それぞれの論点について一言で結論を言ってみる。
というようなことをやりました。

Q11
「A1
1回目でも,修習生は,給料がもらえなくなりました」
という記述は、どのような意味ですか?
修習生はしばらくの間は給与制を維持するということで、貸与制には切り替えらないですよね?
A11
裁判法67条2項の改正により給与制は廃止されますが,その施行は平成22年11月1日ですので,それまでは,給与制は維持されます。

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