« 代表取締役の就任・退任 | トップページ | 引退宣言 »

2006年9月28日 (木)

研修所の卒業試験

100問第2版のゲラ直しで忙しいので、今日は、ブログお休みしようかなと思ったら、司法研修所の修習生の落第のニュースが飛び込んできました。

今年は、修習生1493人が卒業試験を受験し、
不合格者が10人
合否の判定が留保された人が97人
という恐ろしい数であり、「刑事弁護」の論文で合格水準に達していないと判断された修習生が46人と最も多かったそうです。

 私が修習生のころは、この卒業試験(二回試験)で不合格になる人は、一人もいないのが普通で、たまに1人くらい追試になり、それでも、なんとか追試で合格するという状態でしたから、昔とは雲泥の差です。

 最近は、十人以上が追試の対象になると聞いていましたし、今年の修習生が司法試験に合格した年は、合格推定点が下がった年だったので、増えてもおかしくはないのですが、それにしても、合計107人というのは、唖然とします。

 ちなみに、来年、二回試験を受ける修習生は、もっと司法試験の合格推定点が下がった年だったと思いますし、これからも、司法試験の合格者数が増えていくにつれ、法律の力がないまま、合格する人の数も増えるでしょうから、二回試験の不合格者は、これからも年々増えていくまもしれません。

 社会のためには、あまりにも能力がない人が法曹にならないようにすることも重要ですが、他方で、「不合格」になった人は、修習やり直しですから、正直、生活は厳しいですよね。

 修習生の給与がなくなることも考えると、そろそろ修習生のアルバイトを認めるような政策に転換しなければならないのではないでしょうか。
 貸与制度はありますが、ロースクールで3年間奨学金を受け、修習生で1年間生活費の貸与を受ければ、相当な額になります。
 弁護士の初任給も下がっていることですし、あまりに債務が多額だと、二回試験合格したのはいいものの、卒業した直後に
「返済不能なので、破産します」
とか言って、いきなり欠格事由になったりして・・・。

それに、二回試験合格率が下がってくると、予備校が「二回試験合格講座」とか始めたりして・・・。

 冗談は抜きにして、人間は、かすみを食っては生きていけないので、夜のバイトくらいは認めてあげないと、過酷すぎるように思います。

 受験生の皆さんは、目の前の司法試験が大きな壁に見えるでしょうが、実は、その後に、さらにキツイ壁があることを忘れてはならないようです。
 「法律家をやめるまで、法律の勉強を続けなければならない」という私の口癖は、まんざら嘘じゃないということが分かっていただけたのではないかと思います。

(質問コーナー)
Q1
 取締役会の書面決議についても,会社法第369条第3項及び会社法施行規則第101条第4項一号に基づき,議事録の作成が義務付けられているという理解で宜しいでしょうか。その場合の会社法第371条1項の趣旨なのですが,書面決議に係る備置については,議事録あるいは「前条(=第370条会社法)の意思表示を記載し,若しくは記録した書面」のどちらかを任意で選択すればよいということでしょうか。
投稿 shrek | 2006/09/28 0:24:34
A1
議事録の作成を行い、議事録と意思表示を記録した書面の双方を備置します。

Q2
会社法361条の「報酬等」についてです。個人的には、報酬等は、役員賞与・役員報酬・ストックオプション等で構成されていて、職務執行の対価とは考えづらい退職慰労金は含まれないと整理しているのですが、この理解で正しいでしょうか。
投稿 くろすけ | 2006/09/28 0:32:31
A2
会社法100問にも載せていますが、退職慰労金は、報酬の後払い的性質があるので、報酬等に含まれます。

Q3
発行可能株式総数と発行可能種類株式総数との関係について、ご教示いただきたい点がございます。
「新・会社法100問」(第24問譲渡制限株式・株主優待等)132頁6行目以下に、以下の記述がございます。
「3 また当該定款変更が、剰余金の配当について異なる定めをした種類株式(108条1項1号)を発行すること及び既存の株式については、発行可能種類株式総数を当該種類の発行済株式の総数まで減少すること(114条1項)を定めたものだとすれば、本問の定款変更を行うことも許される余地がある。」
ここで、
【質問①】「既存の株式については、発行可能種類株式総数を当該種類の発行済株式の総数まで減少する」ことが必要となるのは、なぜでしょうか?(114条を読み直しましたが、よくわかりませんでした。)
【質問②】「本問の定款変更を行うことも許される余地がある。」との記載ですが、具体的に「許されない場合」としては、先生はどのような場面を想定していらっしゃいますか。
投稿 tanaka | 2006/09/28 0:42:04
A3
① 問題が平成19年以降に発行する株式については、別に取扱うということなので、それ以前に発行された株式と同一内容の株式を以後発行しないようにするためです。
② 設問の内容からかなり離れた趣旨解釈をしたので、そのような定款の変更と考えることができない場合もあるかなあと思ったので、「余地がある」という表現になっただけです。

Q4
全部取得条項付種類株式の全部取得決議の結果,現に発行している株式全部が自己株式として、その上で,募集株式の引受人の募集を株主割当ての方法により行い,自己株式を処分したすることによって、所在不明株主の株式だけを金銭に変えることができるか?
投稿 たつきち | 2006/09/28 1:57:12
A4
いまいち、スキームが分かりませんが、
(1)最初に、全部取得条項付種類株式を取得して、株主に対価として金銭を交付する。
(2)次に、株主に割当てを受ける権利を与え、払込金額1円とかで、有利発行する。
(3)そうすると、普通の株主は、割り当て権を行使するが、所在不明株主は、割り当て権を行使しないので、普通の株主だけが株式を取得して、所在不明株主は金銭が残る。
ということでしょうか?
 そうだとすると、(1)の段階で、みんな株主でなくなってしまうので、(2)の株主割り当てができなくなります。
 とすると、(2)を先にやって、その後、(1)をやるのかなあ?はっきりいって、その株主割り当ては、取消事由が生じそうですね。

Q5
(1)会社法174条に基づいて相続人等に対する売渡請求を認める定款を定めた場合で、
(2)多数派株主(オーナー側)と少数株主(例えば経営陣が少数株主であるとき)とが対立しているときに、
(3)オーナー側に相続が発生すると、会社法175条2項(同条1項2号)により、オーナー側は株主総会決議に加わることができないので少数株主(経営陣側)が多数派株主(オーナー側株式)を買い取ってしまう危険性がある。
(4)防衛策はないか?
【私の回答(案)】
(1)【防衛策1】オーナー側所有株式についてのみ譲渡制限をはずす。
  しかし、譲渡制限を外すことは、オーナー側の相続人の構成によってはリスクがある。
 そこで、
(2)【防衛策2】「会社法176条1項の売渡請求をするときには、必ずオーナー側所有株式所有者のみの株主総会(種類株主総会)の議決を経なければならない」旨を定款に規定する(会社法108条1項8号)。
  ◎(私の質問)そこで問題点ですが、このような定款の定めは有効なのでしょうか。
 確かに、このような定款は会社法175条2項に反するようにも思えます。しかし、175条2項の趣旨は利害関係人が議決権を行使することによって不合理な議決が行われることを防ぐ趣旨と思われるので、更に二重のチェックとして、当該種類株主総会の議決を得る旨定款に規定することは不合理ではないように思うのですが。条文の文言上も、175条2項は「同項の株主総会において」と規定しているので、上記のような種類株式を発行することも許されるように思うのですが如何でしょうか。
投稿 はなしか? | 2006/09/28 12:38:42
A5
拒否権付株式で対応することも可能であるように思いますが、ややテクニカルでリスクがないとはいいきれないような感じもしますね。
非公開会社みたいなので、株主ごとに異なる取扱いの定めをして、少数派株主は、当該事項について議決権を行使することができないと定めるのも一つの手です。定款変更の決議要件が重くなりますが、その分、正面突破で安定性があるように思います。
他にもいくつか手段はありそうですが。

Q6
合併の事前開示について教えてください。
会社法施行規則第191条において吸収合併存続会社の事前開示事項が定められておりますが、第6項の「吸収合併が効力を生ずる日以後における吸収合併存続会社の債務の履行の見込みに関する事項」とは具体的にはどう表現すべき(何を書くべき)なんでしょうか?
投稿 くろ | 2006/09/28 15:58:22
A6
存続会社が承継した債務を払えそうならば、債務の履行の見込みあり
払えそうにないならば、債務の履行の見込みなし
ですね。

Q7
日本を代表するある超大手会社が吸収分割をすることになり、同社に対し特定物の引渡しを目的とする債権を有する債権者から異議申し出があったところ、同社は、
「金銭給付以外を目的とする債権については、789条5項に定める担保提供、信託といった措置は執ることができないことから、このような債権の債権者は同項に言う債権者には含まれない。したがって、この者に対して、同項に定める措置は一切執らない。」
という見解を示し、現にそのような対応を行ったのです。
 ・・・それにしても、訴訟に必要なエネルギー、資力を考えると、このような無理無体な主張でも、大会社が行えば、事実上それが世の中に行われてしまい、相手方は泣き寝入りということが多いのが実態ですね。
投稿 ニモ | 2006/09/28 20:53:26
A7
まあ、よろしいんじゃないでしょうか。
異議を述べることができる債権者に催告していない場合は、分割会社にも、承継会社にも、債権を行使することができますから、ポケットが2つになって儲けた感じです。

|

« 代表取締役の就任・退任 | トップページ | 引退宣言 »

コメント

>卒業した直後に
「返済不能なので、破産します」
とか言って、いきなり欠格事由になったりして・・・。

冗談ではなく、ありうるかと。学部の時からずっと奨学金で通っていたら、1000万円超になりますから。

投稿: 奨学金生活者 | 2006年9月28日 (木) 23時43分

ちょっとした疑問なんですが、修習って2回目でも給料もらえるんですか?

投稿: 通りすがり | 2006年9月29日 (金) 00時41分

>(1)最初に、全部取得条項付種類株式を取得して、株主に対価として金銭を交付する。
(2)次に、株主に割当てを受ける権利を与え、払込金額1円とかで、有利発行する。
(3)そうすると、普通の株主は、割り当て権を行使するが、所在不明株主は、割り当て権を行使しないので、普通の株主だけが株式を取得して、所在不明株主は金銭が残る。
ということでしょうか?
 そうだとすると、(1)の段階で、みんな株主でなくなってしまうので、(2)の株主割り当てができなくなります。
 とすると、(2)を先にやって、その後、(1)をやるのかなあ?はっきりいって、その株主割り当ては、取消事由が生じそうですね。

葉玉先生
 言葉足らずを補っていただきありがとうございます。
 私もさすがにまずいのではないかと考えたのですが,
 この会社が定款で「株主割当てに関する募集事項の決定は
 取締役の決定による(又は取締役会決議による)」(会社法202条3項
 1号2号)としている場合には,その決定(又は決議)に無効原因がある
 ということになるのでしょうか?

 何度も申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。

投稿: たつきち | 2006年9月29日 (金) 00時53分

葉玉先生

なるほど。まだまだ勉強不足です。よく分かりました。
これからもロースクール生と一緒に会社法をもっと勉強したいと思います。

今回の会社法は、使い手の頭が柔軟であれば本当に上手に使える反面、よくよく考えないと大きなリスクもあるという点で、まさに「パズル」のようだな、と日々実感しています。

先生は本当にお忙しいと思います。家族の皆様のために時々ブログの更新が止まると何だか「葉玉家のためによかったなあ」と勝手に思っております。
先生の益々の御活躍と御健康、時々の家族サービスを遠方から心より祈念しております。ありがとうございました。

投稿: はなしか? | 2006年9月29日 (金) 06時11分

9月17日に質問した者ですが、ご解答が頂けないので再度カキコします。
千問Q375(272ぺーじ)についてお伺いいたします。
 非取締役会設置会社が、監査役会設置会社となる旨の定款変更→効力を生じない
 非取締役会設置会社が、株式の譲渡制限の廃止(公開会社となる)する旨の定款変更→効力を生じる
 と、書かれていますが、会社法327条1項は、1号で、公開会社は取締役会を置かなければならない、2号で、監査役会設置会社は取締役会を置かなければならない、とされ、前者も後者も同じように取締役会設置義務があるにも係らず、結果を異にしているのは何故でしょうか?


投稿: ホー | 2006年9月29日 (金) 08時49分

葉玉先生。こんにちは。
以前,配当のことなどで御質問させていただきましたT.I.ネットワークと申します。
「千問の道標」は会社の実務に本当に役に立ちます(この良さは学生さんでは分からないかも)。いい本をつくっていただきありがとうございます。また,9月21日付日経夕刊への先生の御登場おめでとうございます。
さて,御質問ですが,会計監査人の報酬を決定するのに「取締役会決議」は必要でしょうか。N法律事務所から出されている「新会社法実務相談」(商事法務)の239頁~241頁には,取締役会決議を経ることを当然の前提として,それが監査役会等の同意の前後どちらでもよいと書かれています。私は,会計監査人の報酬の決定は,(代表)取締役の業務執行権限に属するものと思っておりましたし,「千問の道標」Q569もそう解しているものと思いますが,いかがでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが,御回答いただだければ幸いに存じます。

投稿: T.Ⅰ.ネットワーク | 2006年9月29日 (金) 11時35分

新株引受権と新株予約権とはどのような違いがあるのでしょうか。かつての新株引受権というものは、会社法上はすべて新株予約権となったのでしょうか。

投稿: DAN | 2006年9月29日 (金) 12時41分

葉玉先生、
私も上のT.I.ネットワークさんと同じ疑問を持っていました。
「新会社法実務相談」239頁では「監査契約の締結は取締役会決議を経るべきとされており(3)」とあり、注(3)をみると旧商法260条2項と大隈=今井の中巻が引用されているのですが、少なくとも旧商法260条2項から「監査契約は取締役会決議事項」とはいえないように思うのですが・・。会計監査人が同条2項4号の「重要なる組織」に含まれると解しても(そう解すべきかどうかかなり疑問ですが)、取締役会決議事項なのは「設置、変更及び廃止」です。

投稿: ひよりは実はワーム | 2006年9月29日 (金) 15時51分

ハダマ先生、いつも勉強させていただいております。
さて、先日質問させていただいた件の続きなんですが、
特例有限会社を株式会社に移行と同時に、株式分割を考えております。このとき、株式会社であれば、株式分割前に基準日公告が必要ですが、特例有限会社の場合は、株式分割をする際に公告は不要なのでしょうか?不要であれば、分割決議をして即日分割の効力発生ということになるのでしょうか?宜しく御願い致します。

投稿: 飯島 | 2006年9月29日 (金) 16時25分

葉玉先生、基本的な質問で恐縮なのですが、現物出資が発起人に限定されている理由をお教え願えませんか?江頭先生の説明によると、実質的理由が「現物の実価が定款所定の価額に著しく不足する場合には出資者に一種の瑕疵担保責任として無過失責任を負わせる必要があるが・・それを履行できる資力の有無が不明では困るからである」とされていますが、いまひとつピンとこないのです。

投稿: 会社法初学者 | 2006年9月29日 (金) 17時43分

立て続けに基本的な質問ですみません。江頭先生の教科書によると、発起人が選任しなければならない設立時取締役は「発起人の監督機関」とされているので、本来は発起人と設立時取締役は別人となるのが好ましいと思われます。しかし、会社法においては発起人が設立時取締役になれないとする規定はなく、世の中の企業においても、発起人と設立時取締役が同一人物であるのが、むしろ多数のような気がします(一人会社など)。これは、本来の趣旨からすれば決して好ましい状況ではないけれども、発起人が設立時取締役になれないとすると起業活動が阻害されてしまうため、政策的に発起人が設立時取締役の地位を兼ねることを認めた、と理解してよいのでしょうか?

投稿: 会社法初学者 | 2006年9月29日 (金) 18時21分

質問コーナーの場所がよくわからなかったのでここに記述させていただきます。

清算結了について教えてください。
旧商法にもとづく清算手続で旧商法第427条の規定により株主総会の承認をうける場面です。
この承認は、清算事務が終了した後に残余財産があればその額につき承認を受け分配し、無ければB/S上、例えば資産の部0円、負債の部0円、純資産の部資本金1億円、欠損金1億円として処理すべきものだと思います。
ここでお聞きしたいのは、細かい話なのですが、法人税の均等割等細かい処理についてです。実際上、結了後でなければ納税できませんので、納税分を現金として保有しておくことになります。
旧427条の規定による承認を受ける際に、この税金納付予定分の現金をB/Sに計上して、議事録(清算事務報告書等)にその旨を記載して行う清算結了は法的に有効といえるでしょうか?
また、このように残余財産を分配しないケースにおいて、現金が計上されているB/Sが登記の添付書類とされた場合、この清算結了の登記は受理すべきでしょうか?

私としては、前段は承認決議は一応有効で税金(債務)を支払ったときに結了の効果が生じると解することは可能ではないかと思いますが、債務がある以上、結了の効果は生じないとするのが当然とも思います。
登記については、納税予定分として現金で計上したB/Sであっても、目一杯善解の理論を行使していただければ、受理することも可ではないかと思うのですが・・・

上記につき是非ともご教示いただきたくお願い申し上げます。


投稿: ダイさん | 2006年9月29日 (金) 18時51分

葉玉先生、いつも楽しく勉強させていただいております。

さて、剰余金の配当に関する決議について、定款で3/31を期末配当の基準日と定めた会社が、6/末日に株主総会を開催し、その際に剰余金の配当議案で「翌日の7/1」を配当の効力発生日とする旨決議することは可能でしょうか?
会社法124条2項により、株主による配当請求権の行使期間が3ヶ月を超えてしまうため、不可能と思われるのですが、いかがでしょうか?

基本的な質問で恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

投稿: naga | 2006年9月29日 (金) 19時06分

会社法100問第二版リクエストで
条文索引を挙げたのに載ってないです!

投稿: みつば | 2006年9月29日 (金) 19時09分

条文索引は、初版からついてますよ。

投稿: とおりすがり | 2006年9月29日 (金) 20時16分

法律用語ではないのですが(国語辞書だと意味が違う可能性があるので)お聞きしたいことがあります。
しばしば判例や教科書に「専ら~の目的で」というような形で「専ら」という言葉が出てきますが、これは、①~のみという意味で使う言葉なのでしょうか、それとも、②主だったもの(主要なもの)は~(つまり別の要素もある)という意味で使う言葉なのでしょうか。
様々な人の論文を読んでいて、①の意味でも②の意味でも使われているような気がするのですが、葉玉先生はこの言葉をどう理解されてらっしゃいますでしょうか。
お手数をおかけして恐縮ですがご回答お願い致します。

投稿: 日本語の質問です | 2006年9月29日 (金) 20時59分

葉玉先生

上記でコメトいただいたQ7の投稿者です。
極めてお忙しいのに、毎回コメントありがとうございます。

>異議を述べることができる債権者に催告していない場合は、
>分割会社にも、承継会社にも、債権を行使することができ
>ますから、ポケットが2つになって儲けた感じです。

仮に法律上はポケットが2つになるとしても、会社側がそれ
を認めないかぎりは訴訟を起こさなければ実行されないわけ
ですから、一般人にとってはつらいところです。

それはともかく、上記のコメントは、
個別催告に係る789条2項、及び、分割会社がそれを
怠った場合に分割会社への履行請求権を認めた759条3項
の適用のお話かと思います。
しかし、実は、本件では官報及び定款に定める新聞掲載により
公告することによって催告が行われています。
したがって、789条3項により個別催告の必要はないことに
なるため、759条3項は直ちには適用されないことになると
思われます。
このような状況の下で、(分割会社に対して特定物の引渡を
請求する債権を有する)債権者が現実に異議を述べたにも
かかわらず、分割会社が789条5項に定める担保提供等の
措置を執ることを拒んだというのが本件のケースです。

789条5項については、2項の場合と異なり、分割会社が
そこに定める措置を怠った場合の債権者保護手段が特別には
規定されていないようにお見受けするのですが、
このような場合、

1.吸収合併の効力は一般的には(当該債権者以外に対し
ては)認めるものの、
現に債権者が異議を申し立てており、かつ、これに対して
分割会社が789条5項に定める措置を執っていない以上、
当該債権者については789条4項による吸収合併の
みなし承認は適用されず、分割会社は当該債権者に対して
吸収合併がなされたという事実をもって対抗することは
できない。したがって、当該債権者に対しては、
従来どおり、分割会社(のみ)が履行の責任を負う。
(承継会社は履行責任を負わない。もし承継会社が履行
する場合は第三者弁済となる。)

2.吸収合併の効力は対世的に(当該債権者に対しても)
認める一方で、債権者保護という法目的から、
759条3項が類推適用されるとし、分割会社に対しても
履行請求権を認める。
(承継会社と分割会社の双方が共同履行責任を負う。)

3.吸収合併の効力を対世的に否定する。
当該債権者(及びその他訴えの利益を有するものは誰でも)
は吸収合併無効確認訴訟を提起でき、無効確認判決が出た
場合は、合併の効力は遡及的・確定的に否定され、
合併に係る登記等も抹消される。
したがって、すべての債権者に対して、従来どおり、
元の会社(のみ)が履行の責任を負う。
(承継会社という観念自体が存在しないことになる。)

といった解釈が考えられるかと思います。
3はさすがにドラスティックであり、789条2項の
場合との均衡などからは、1よりも2の方が実質的には
妥当な解決かなとは思うのですが、法律に定めがなく、
類推適用であるというネックがあります。
先生はどうお考えになられますでしょうか?

投稿: ニモ | 2006年9月29日 (金) 21時08分

不合格の場合は、実務修習ではなく、和光での後期集合修習から参加と聞きましたが、そうなのでしょうか?

投稿: a | 2006年9月29日 (金) 21時17分

葉玉先生 こんにちは

二回試験の不合格者が激増したということは、
今後二回試験は事実上選抜試験の要素を
帯びてくるということでしょうか(今回のおしおき
はその予告で、来年以降はより大量の不合格者
を出すことにより事実上法曹人口を調整する・・)。

司法試験には合格しやすくなるとは言ったけど、
二回試験に全員合格させるとは言ってないもんね・・
という理屈であれば、全ての責任は学生の不勉強
ということになり、文部科学省をはじめとする関係者
の責任はないということになります(ロースクール
は責められそうですが・・)

能力のない人は法曹になるべきではない、という
ことは全くの正論で反論の余地もないのですが、
学生や修習生にとっては大量に二回試験で落とされる
ということは不意打ちなのではないかと思います。

司法試験の合格者増が極端な質の低下を招いて
いて看過しがたいということであれば、司法試験の
合格者を絞るという方法の方がシンプルな気がします。
但し、そうすると今度はロースクール制度自体が
おかしくなる訳ですが・・・・。

投稿: 参事官室によく電話する人 | 2006年9月29日 (金) 22時38分

修習期間が短縮されていることの影響はあえて書かないのか?バカだから気づかないのか、どっちでしょうか。

投稿: Julie | 2006年9月29日 (金) 23時12分

 最近の司法試験は,合格者数が増えたとはいえ,昭和の頃に比べると択一も非常に難しく複雑な問題を解いているし,論文についても長い長い事案を短時間で処理しているため,決してレベルが下がっているとは思えません。昭和の頃に比べると,覚えなければならない判例の量も全然違うし,毎年改正される条文を追いかけなければなりません。
 また,今の受験生は,昭和の頃の受験生とは違い,訴訟法は民訴も刑訴も勉強しなければならず,国際法とか会計学を受験することはできません。

 昭和の頃の合格者が今の司法試験を受けたところで,択一に合格できるかどうかも危ういだろうし,論文も1500番どころか,5000番にはいることも難しいのではないでしょうか。
 

投稿: PB | 2006年9月29日 (金) 23時52分

 葉玉先生、いつも拝見させていただいております会計士受験生の者です。
 会社法100問の最後に載っているオウム、キリン、サイの勉強法のことで質問させていただきたいことがあります。来年の試験に向けて、オウム、キリン、サイの力について勉強法にしたがいノートにまとめているのですが、キリンの力の「②その条文の要件の問題か、効果の問題か」についてはどのようにノートすればよろしいでしょうか?「~が必要となる要件」のように書ける条文もあるのですが、そのように書きづらい条文もあり、いまいちこの部分についてのノートの記述の仕方が定まらないのです。
 私の未熟さから変な(?)質問になっていたら申し訳ありません。どうかご回答よろしくお願いいたします。
 

投稿: 会計士受験生 | 2006年9月30日 (土) 11時55分

100問と論点解説等を頼りに会社法を勉強しているものです。
質問がありますので、よろしくお願いします。
100問によりますと見せ金を無効と考えておられる一方で、預合を有効と考えておられるようですが(「論点解説新・会社法 ~千問の道標~」より)、見せ金が預合の潜脱行為として問題とされてきたことを考えると、矛盾するように思われるのですが、いかがでしょうか。
また、払込取扱銀行は見せ金を無効とした場合には、会社法64条2項の責任を負わないと考えるのでしょうか。
会社法64条2項の責任を負う状況について、具体的に教えていただけたら、幸いです。

投稿: よちよち | 2006年9月30日 (土) 15時48分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 研修所の卒業試験:

» 司法制度「改革後」偶感 [カンニングした勉三]
今年の司法修習生の落第が過去最多の107人だったらしいです。 引用しますと、 最高裁は28日、9月に実施された司法修習の卒業試験の結果を発表した。  受験した修習生1493人のうち107人が、「不合格」または「合格留保」で、法曹資格の取得が見送られた。落第した人数、割合(7・2%)とも、過去10年で最多で、100人を超えたのは初めて。  司法制度改革の一環で司法試験合格者数が年々増える中、質の確保が問題になりそうだ。  司法修習は、司法試験の合格者が裁判官、検事、弁護士..... [続きを読む]

受信: 2006年9月29日 (金) 02時49分

» Free teen lesbian porn galleries. [Free teen porn galleries.]
Teen porn galleries. Free teen porn galleries. Young teen porn galleries. [続きを読む]

受信: 2007年9月11日 (火) 09時36分

« 代表取締役の就任・退任 | トップページ | 引退宣言 »