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2006年9月30日 (土)

引退宣言

 突然ですが,私は,10月2日に
 法務省民事局から東京地検特捜部に
異動することなりました。

 それで,いろいろ考えた結果・・・
 私こと葉玉匡美は,このブログから引退します。

 このブログについて東京地検から何か言われたわけではないですし,検察官が趣味で担当事件と関係のないブログを書くのは何の問題もないということは分かっています。
 しかし,異動場所が異動場所だけに,担当事件についての書き込みがあったり,マスコミに過度に騒がれたりすると,
 「他人に迷惑をかけない」
という私のポリシーが守れないおそれがあるので,自粛する方がベターと判断しました。

 もっとも,毎日沢山の人に,このブログを見ていただいていますし,会社法等の質問も毎日書き込まれますので,いきなり
  本日をもって,「会社法であそぼ」は閉鎖します。
と宣言するのでは,これはこれで
 「他人に迷惑をかけない」
というポリシーに反します。

 それで,私は,会社法立案担当者の会のメンバーにお願いし,このブログを承継していただくことにしました。
 ただ,同会のメンバーは,私みたいに,恥知らずに実名を出すような方々ではないし,実名だと答えにくいことも多いと予想されますので,次のような方式を採ることにしました。

 1 このブログは,インターネット上の架空人物である「サミーさん」が運営する。
  「サミーさん」は,「会社法に詳しく,親切だが,スケベなオヤジ」である。
  その他のキャラクター設定は未定。

 2 会社法立案担当者の会のメンバーは,自分が好きなときに記事を書いてよいが,誰が書くにしても(たとえ,美人弁護士T嬢が書く場合でも),「サミーさん」になりきって,「親切だがスケベ」な感じで,記事を書く。

 3 読者の皆さんは,質問をするときに「サミーさん」宛てに質問する。
 (例1)サミーさん,こんにちは。実は,事業報告の記載事項について分からないことがあるのですが・・。
 (例2)サミーさんが,司法試験に合格したときは,誰とお祝いをしたのですか?

 4 質問があったときは,会社法立案担当者の会の誰かが,きちんと調べて返事をする。他と調整が必要な事項については,できるだけ調整をして答える。

 以上の方式を採れば,皆さんも,これまでと,あまり変わらない感じで,この「会社法であそぼ」を使ってもらえるのではないかと思います。

 私は,5年6か月という長期間(検事としては空前絶後の期間)にわたり,法務省民事局付検事として働かせてもらいました。
 民事局に来る前は,民事局が何をするところか知りませんでしたが,ここは
 ①やりたいことを自由にやらせてくれる懐の深い上司
 ②信頼できる有能な仲間達
 ③やり甲斐のある仕事
と3拍子そろった最高の職場でした。

 また,仕事を通じて,大学の先生方をはじめ,金融庁,経産省,経団連,株式懇話会,全銀協,日証協,全中などなど,いろいろな方とおつきあいをさせていただき,大変,勉強させていただきました。
 本来なら,一件一件,ご挨拶に伺うべきところですが,私には異動後過酷なスケジュールが待っているようなので,しばらくは挨拶の時間も採ることができそうにありません。
 とりあえず,この場を借りて,御礼とお別れのご挨拶をさせていただきます。
 本当にありがとうございました。

 会社法と関係のない部署に異動することになったとはいえ,「書かなければならない原稿」が私の背中に多数くっついていて,しばらくは,会社法と縁切りすることはできそうにありません。私の身に付けた知識を後任に伝えるためにも,執筆活動を続ける倫理的な義務があることは認識しておりますので,たまに論文の中で私の名前を見つけることがあるかもしれません。そのときは
 「検事のくせに,まだ,会社法にしがみついていやがるな。」
等と思わずに,温かい目で見守ってやってください。

 また,このブログを通じて,旧司法試験・新司法試験の受験生の皆さんに,それぞれ深い悩みがあることを知りました。
 私は,いつも「悩む人の味方でありたい」と思っていて,何らかの形で,制度の移行期で苦しむ受験生の皆さんの力になれないかと考えているところです。もし私にリクエストがあれば,これからもこのブログに書き込みをしてください。毎日,チェックして,参考にさせていただきます。

 ということで,約11か月間でありましたが,葉玉匡美の「会社法であそぼ」は,これにて閉幕です。
 私のマニアックな雑文を愛していただいた読者の皆さんには,心から御礼を申し上げます。

 次回からは,サミーさんの「会社法であそぼ」としてリニューアル・オープンいたします(といっても,デザインを変えるわけではありません)。
 サミーさんは,きっと私以上に,親切でスケベなはずですので,これからもよろしくご愛顧のほどをお願い申し上げます。
 それでは,さようなら。

(質問コーナー)
Q1
ちょっとした疑問なんですが、修習って2回目でも給料もらえるんですか?
投稿 通りすがり | 2006/09/29 0:41:54
不合格の場合は、実務修習ではなく、和光での後期集合修習から参加と聞きましたが、そうなのでしょうか?
投稿 a | 2006/09/29 21:17:47

A1
1回目でも,修習生は,給料がもらえなくなりました。
後期修習からという噂を聞いたことはありますが,ぜんぜん分かりません。

Q2
 この会社が定款で「株主割当てに関する募集事項の決定は,取締役の決定による(又は取締役会決議による)」(会社法202条3項1号2号)としている場合には,その決定(又は決議)に無効原因があるということになるのでしょうか?
投稿 たつきち | 2006/09/29 0:53:19
A2
 所在不明株主の株式の売却制度を利用せずに,その制度を潜脱するような自己株取得と株主割り当てをやれば,株主平等の原則違反・公序良俗違反で無効になるのでしょうね。

Q3
千問Q375(272ぺーじ)についてお伺いいたします。
 非取締役会設置会社が、監査役会設置会社となる旨の定款変更→効力を生じない
 非取締役会設置会社が、株式の譲渡制限の廃止(公開会社となる)する旨の定款変更→効力を生じる
 と、書かれていますが、会社法327条1項は、1号で、公開会社は取締役会を置かなければならない、2号で、監査役会設置会社は取締役会を置かなければならない、とされ、前者も後者も同じように取締役会設置義務があるにも係らず、結果を異にしているのは何故でしょうか?
A3
 監査役会と取締役会は,ともに会社の機関であり,監査役会を置いたときに,取締役会がないと,機関に関する規定が正常に機能しません。委員会設置会社も同じです。
 これに対し,公開会社の取締役会設置義務は,政策的に取締役会の設置を義務づけるものであり,取締役会がなくても,機関に関する規定がうまく機能しないということはありません。
 そういう違いです。

Q4
会計監査人の報酬を決定するのに「取締役会決議」は必要でしょうか。N法律事務所から出されている「新会社法実務相談」(商事法務)の239頁~241頁には,取締役会決議を経ることを当然の前提として,それが監査役会等の同意の前後どちらでもよいと書かれています。私は,会計監査人の報酬の決定は,(代表)取締役の業務執行権限に属するものと思っておりましたし,「千問の道標」Q569もそう解しているものと思いますが,いかがでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが,御回答いただだければ幸いに存じます。
投稿 T.Ⅰ.ネットワーク | 2006/09/29 11:35:40
A4
業務執行の一環として,取締役会の決議事項ですが,取締役に委任することはできると思います。

Q5
新株引受権と新株予約権とはどのような違いがあるのでしょうか。かつての新株引受権というものは、会社法上はすべて新株予約権となったのでしょうか。
投稿 DAN | 2006/09/29 12:41:32
A5
新株引受権のうち,譲渡不可能なものは,株式の割当てを受ける権利になり,それ以外のニーズは,新株予約権で吸収することになりました。

Q6
特例有限会社を株式会社に移行と同時に、株式分割を考えております。このとき、株式会社であれば、株式分割前に基準日公告が必要ですが、特例有限会社の場合は、株式分割をする際に公告は不要なのでしょうか?不要であれば、分割決議をして即日分割の効力発生ということになるのでしょうか?宜しく御願い致します。
投稿 飯島 | 2006/09/29 16:25:40
A6
基準日の設定が必要ですから,通常,公告が必要です。

Q7
現物出資が発起人に限定されている理由をお教え願えませんか?江頭先生の説明によると、実質的理由が「現物の実価が定款所定の価額に著しく不足する場合には出資者に一種の瑕疵担保責任として無過失責任を負わせる必要があるが・・それを履行できる資力の有無が不明では困るからである」とされていますが、いまひとつピンとこないのです。
投稿 会社法初学者 | 2006/09/29 17:43:46
A7
 現物出資は,変態設立事項として,原始定款に記載しなければ,効力が生じません。
原始定款の作成の時点では,引受人の募集がされていませんから,載せようと思っても,載せられないということが表面的な理由です。
 もちろん,募集時に現物出資をさせるような法制を採ることも理論的には可能だと思いますが,発起設立してすぐに新株発行をしても同じことはできるので,わざわざ作る必要はないということでしょうね。

Q8
江頭先生の教科書によると、発起人が選任しなければならない設立時取締役は「発起人の監督機関」とされているので、本来は発起人と設立時取締役は別人となるのが好ましいと思われます。しかし、会社法においては発起人が設立時取締役になれないとする規定はなく、世の中の企業においても、発起人と設立時取締役が同一人物であるのが、むしろ多数のような気がします(一人会社など)。これは、本来の趣旨からすれば決して好ましい状況ではないけれども、発起人が設立時取締役になれないとすると起業活動が阻害されてしまうため、政策的に発起人が設立時取締役の地位を兼ねることを認めた、と理解してよいのでしょうか?
投稿 会社法初学者 | 2006/09/29 18:21:38
A8
まあ,そんなところでしょうね。複数人が必要になると,起業するのが大変ですから。

Q9
清算結了について教えてください。
旧商法にもとづく清算手続で旧商法第427条の規定により株主総会の承認をうける場面です。
この承認は、清算事務が終了した後に残余財産があればその額につき承認を受け分配し、無ければB/S上、例えば資産の部0円、負債の部0円、純資産の部資本金1億円、欠損金1億円として処理すべきものだと思います。
ここでお聞きしたいのは、細かい話なのですが、法人税の均等割等細かい処理についてです。実際上、結了後でなければ納税できませんので、納税分を現金として保有しておくことになります。
旧427条の規定による承認を受ける際に、この税金納付予定分の現金をB/Sに計上して、議事録(清算事務報告書等)にその旨を記載して行う清算結了は法的に有効といえるでしょうか?
また、このように残余財産を分配しないケースにおいて、現金が計上されているB/Sが登記の添付書類とされた場合、この清算結了の登記は受理すべきでしょうか?
私としては、前段は承認決議は一応有効で税金(債務)を支払ったときに結了の効果が生じると解することは可能ではないかと思いますが、債務がある以上、結了の効果は生じないとするのが当然とも思います。
登記については、納税予定分として現金で計上したB/Sであっても、目一杯善解の理論を行使していただければ、受理することも可ではないかと思うのですが・・・
投稿 ダイさん | 2006/09/29 18:51:32
A9
正面から問われると,現金がある段階では,清算の結了はしていないですね。
実務上の工夫はいくらでもできると思いますが。

Q10
剰余金の配当に関する決議について、定款で3/31を期末配当の基準日と定めた会社が、6/末日に株主総会を開催し、その際に剰余金の配当議案で「翌日の7/1」を配当の効力発生日とする旨決議することは可能でしょうか?
会社法124条2項により、株主による配当請求権の行使期間が3ヶ月を超えてしまうため、不可能と思われるのですが、いかがでしょうか?
投稿 naga | 2006/09/29 19:06:17
A10
剰余金の配当における「行使」とは,何か? という難問ですね。
「不可能」と言われると「不可能とはいえないのではないか」という気もしますが,あえて危険を冒さないという意味では,そんなことはやめた方が良いですね。

Q11
しばしば判例や教科書に「専ら~の目的で」というような形で「専ら」という言葉が出てきますが、これは、①~のみという意味で使う言葉なのでしょうか、それとも、②主だったもの(主要なもの)は~(つまり別の要素もある)という意味で使う言葉なのでしょうか。
投稿 日本語の質問です | 2006/09/29 20:59:26
A11
 ①の場合と②の場合の両方あるでしょう。通常は①だと思いますが,名誉毀損の真実性の証明における公益目的は②ですよね。解釈論の世界ですから,どちらもありうるでしょう。

Q12
個別催告に係る789条2項、及び、分割会社がそれを怠った場合に分割会社への履行請求権を認めた759条3項の適用のお話かと思います。
しかし、実は、本件では官報及び定款に定める新聞掲載により公告することによって催告が行われています。
このような状況の下で、(分割会社に対して特定物の引渡を請求する債権を有する)債権者が現実に異議を述べたにもかかわらず、分割会社が789条5項に定める担保提供等の措置を執ることを拒んだというのが本件のケースです。
A12
ニモさんのケースの場合,債権者が実際に「異議を述べた」わけですから,分割会社は,履行義務等を負っています。
分割会社が勘違いして,履行しなかったわけですから,やはり分割会社に対しても,債権を主張することができます。

Q13
二回試験の不合格者が激増したということは、今後二回試験は事実上選抜試験の要素を帯びてくるということでしょうか。
学生や修習生にとっては大量に二回試験で落とされるということは不意打ちなのではないかと思います。
投稿 参事官室によく電話する人 | 2006/09/29 22:38:12
A13
二回試験も国家試験なので,実力のない人は合格させないというのは当たり前です。
しかも,二回試験は,相対評価ではなく,絶対評価ですから,「不意打ち」という批判はあたらないでしょう。ハードルを急にあげたのならばともかく,最高裁の話によれば,基準は変えていないということですから,もともと設定されたハードルに届かない人が増えただけでしょう。

Q14
修習期間が短縮されていることの影響はあえて書かないのか?バカだから気づかないのか、どっちでしょうか。
投稿 Julie | 2006/09/29 23:12:24
A14
私の修習の経験から言えば,修習期間が半年短縮したくらいで,不合格者が極端に増えるほど修習生の実力が下がるとは到底思えません。

Q15
 最近の司法試験は,合格者数が増えたとはいえ,昭和の頃に比べると択一も非常に難しく複雑な問題を解いているし,論文についても長い長い事案を短時間で処理しているため,決してレベルが下がっているとは思えません。昭和の頃に比べると,覚えなければならない判例の量も全然違うし,毎年改正される条文を追いかけなければなりません。
 また,今の受験生は,昭和の頃の受験生とは違い,訴訟法は民訴も刑訴も勉強しなければならず,国際法とか会計学を受験することはできません。
 昭和の頃の合格者が今の司法試験を受けたところで,択一に合格できるかどうかも危ういだろうし,論文も1500番どころか,5000番にはいることも難しいのではないでしょうか。
投稿 PB | 2006/09/29 23:52:43
A15
 旧試験の択一については,民法は昭和の頃より易しく,刑法は昭和の頃より難しくなったように思います。新試験の択一は,私も解きましたが,全体に易しくなっています。
 逆に,論文は,旧試験よりも新試験の方が実力差が出やすい問題だと思います。
 平成になって新判例も出ていますから,覚えなければならない判例は昭和より増えているとは思いますが,全体からすれば,誤差の範囲です。
 改正される条文を追いかけなければならないのは,昭和の頃も同じでしたが,会社法については,明らかに昭和の頃より大変だったと思います。
 民訴を勉強するより,国際法や会計学の方が易しいかというと,そんなことは全然ありません。きちんと勉強しようとすると,資料も少ないし,答練も少ないし,ばくち的要素が増えると思います。私が受験生の頃は,法律選択というのがあり,行政法とか破産法と同じレベルで,両訴を選択することができましたが,両訴選択の人も結構多かったと記憶しています。
 「昭和の頃の合格者が今の司法試験を受けてもたところで,択一に合格できるかどうかも危うい」というのは,何かの勘違いでしょう。
 私は,新司法試験の上位500人と,私が合格した昭和63年の旧試験の合格者と比べたときに,それほど実力の差はないと予想しますが,合格者数が増えれば,実力がない人も合格するということは,真理だと思います。
 問題は,そうした司法試験合格者を,研修所が,どういうレベルに達した段階で,法曹として送り出すかということです。
 研修期間中に飛躍的に法律の知識が増えるということはないので(実務的ノウハウは増えますが,法律の知識そのものは,大して増えません),研修所が,従来と同じレベルを設定すると,3000人合格時代には,かなりの不合格者が出るのではないかと想像されます。

Q16
100問によりますと見せ金を無効と考えておられる一方で、預合を有効と考えておられるようですが(「論点解説新・会社法 ~千問の道標~」より)、見せ金が預合の潜脱行為として問題とされてきたことを考えると、矛盾するように思われるのですが、いかがでしょうか。
また、払込取扱銀行は見せ金を無効とした場合には、会社法64条2項の責任を負わないと考えるのでしょうか。
会社法64条2項の責任を負う状況について、具体的に教えていただけたら、幸いです。
投稿 よちよち
A16
次の2つの記事を読んでください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50055555
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50388172

Q17
 会社法100問の最後に載っているオウム、キリン、サイの勉強法のことで質問させていただきたいことがあります。来年の試験に向けて、オウム、キリン、サイの力について勉強法にしたがいノートにまとめているのですが、キリンの力の「②その条文の要件の問題か、効果の問題か」についてはどのようにノートすればよろしいでしょうか?「~が必要となる要件」のように書ける条文もあるのですが、そのように書きづらい条文もあり、いまいちこの部分についてのノートの記述の仕方が定まらないのです。
 私の未熟さから変な(?)質問になっていたら申し訳ありません。どうかご回答よろしくお願いいたします。
A17
 分からなければ,適当にやりましょう。難しく考えず,先に進むことです。
 何が要件で,何が効果かというのは,先に進めば,分かることがほとんどです。
 ただ,「~が必要とある要件」という表現を見ると,要件と効果の考え方がややずれているのではないかと思います。
 一度,具体例をあげて質問してみてください。
 

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2006年9月28日 (木)

研修所の卒業試験

100問第2版のゲラ直しで忙しいので、今日は、ブログお休みしようかなと思ったら、司法研修所の修習生の落第のニュースが飛び込んできました。

今年は、修習生1493人が卒業試験を受験し、
不合格者が10人
合否の判定が留保された人が97人
という恐ろしい数であり、「刑事弁護」の論文で合格水準に達していないと判断された修習生が46人と最も多かったそうです。

 私が修習生のころは、この卒業試験(二回試験)で不合格になる人は、一人もいないのが普通で、たまに1人くらい追試になり、それでも、なんとか追試で合格するという状態でしたから、昔とは雲泥の差です。

 最近は、十人以上が追試の対象になると聞いていましたし、今年の修習生が司法試験に合格した年は、合格推定点が下がった年だったので、増えてもおかしくはないのですが、それにしても、合計107人というのは、唖然とします。

 ちなみに、来年、二回試験を受ける修習生は、もっと司法試験の合格推定点が下がった年だったと思いますし、これからも、司法試験の合格者数が増えていくにつれ、法律の力がないまま、合格する人の数も増えるでしょうから、二回試験の不合格者は、これからも年々増えていくまもしれません。

 社会のためには、あまりにも能力がない人が法曹にならないようにすることも重要ですが、他方で、「不合格」になった人は、修習やり直しですから、正直、生活は厳しいですよね。

 修習生の給与がなくなることも考えると、そろそろ修習生のアルバイトを認めるような政策に転換しなければならないのではないでしょうか。
 貸与制度はありますが、ロースクールで3年間奨学金を受け、修習生で1年間生活費の貸与を受ければ、相当な額になります。
 弁護士の初任給も下がっていることですし、あまりに債務が多額だと、二回試験合格したのはいいものの、卒業した直後に
「返済不能なので、破産します」
とか言って、いきなり欠格事由になったりして・・・。

それに、二回試験合格率が下がってくると、予備校が「二回試験合格講座」とか始めたりして・・・。

 冗談は抜きにして、人間は、かすみを食っては生きていけないので、夜のバイトくらいは認めてあげないと、過酷すぎるように思います。

 受験生の皆さんは、目の前の司法試験が大きな壁に見えるでしょうが、実は、その後に、さらにキツイ壁があることを忘れてはならないようです。
 「法律家をやめるまで、法律の勉強を続けなければならない」という私の口癖は、まんざら嘘じゃないということが分かっていただけたのではないかと思います。

(質問コーナー)
Q1
 取締役会の書面決議についても,会社法第369条第3項及び会社法施行規則第101条第4項一号に基づき,議事録の作成が義務付けられているという理解で宜しいでしょうか。その場合の会社法第371条1項の趣旨なのですが,書面決議に係る備置については,議事録あるいは「前条(=第370条会社法)の意思表示を記載し,若しくは記録した書面」のどちらかを任意で選択すればよいということでしょうか。
投稿 shrek | 2006/09/28 0:24:34
A1
議事録の作成を行い、議事録と意思表示を記録した書面の双方を備置します。

Q2
会社法361条の「報酬等」についてです。個人的には、報酬等は、役員賞与・役員報酬・ストックオプション等で構成されていて、職務執行の対価とは考えづらい退職慰労金は含まれないと整理しているのですが、この理解で正しいでしょうか。
投稿 くろすけ | 2006/09/28 0:32:31
A2
会社法100問にも載せていますが、退職慰労金は、報酬の後払い的性質があるので、報酬等に含まれます。

Q3
発行可能株式総数と発行可能種類株式総数との関係について、ご教示いただきたい点がございます。
「新・会社法100問」(第24問譲渡制限株式・株主優待等)132頁6行目以下に、以下の記述がございます。
「3 また当該定款変更が、剰余金の配当について異なる定めをした種類株式(108条1項1号)を発行すること及び既存の株式については、発行可能種類株式総数を当該種類の発行済株式の総数まで減少すること(114条1項)を定めたものだとすれば、本問の定款変更を行うことも許される余地がある。」
ここで、
【質問①】「既存の株式については、発行可能種類株式総数を当該種類の発行済株式の総数まで減少する」ことが必要となるのは、なぜでしょうか?(114条を読み直しましたが、よくわかりませんでした。)
【質問②】「本問の定款変更を行うことも許される余地がある。」との記載ですが、具体的に「許されない場合」としては、先生はどのような場面を想定していらっしゃいますか。
投稿 tanaka | 2006/09/28 0:42:04
A3
① 問題が平成19年以降に発行する株式については、別に取扱うということなので、それ以前に発行された株式と同一内容の株式を以後発行しないようにするためです。
② 設問の内容からかなり離れた趣旨解釈をしたので、そのような定款の変更と考えることができない場合もあるかなあと思ったので、「余地がある」という表現になっただけです。

Q4
全部取得条項付種類株式の全部取得決議の結果,現に発行している株式全部が自己株式として、その上で,募集株式の引受人の募集を株主割当ての方法により行い,自己株式を処分したすることによって、所在不明株主の株式だけを金銭に変えることができるか?
投稿 たつきち | 2006/09/28 1:57:12
A4
いまいち、スキームが分かりませんが、
(1)最初に、全部取得条項付種類株式を取得して、株主に対価として金銭を交付する。
(2)次に、株主に割当てを受ける権利を与え、払込金額1円とかで、有利発行する。
(3)そうすると、普通の株主は、割り当て権を行使するが、所在不明株主は、割り当て権を行使しないので、普通の株主だけが株式を取得して、所在不明株主は金銭が残る。
ということでしょうか?
 そうだとすると、(1)の段階で、みんな株主でなくなってしまうので、(2)の株主割り当てができなくなります。
 とすると、(2)を先にやって、その後、(1)をやるのかなあ?はっきりいって、その株主割り当ては、取消事由が生じそうですね。

Q5
(1)会社法174条に基づいて相続人等に対する売渡請求を認める定款を定めた場合で、
(2)多数派株主(オーナー側)と少数株主(例えば経営陣が少数株主であるとき)とが対立しているときに、
(3)オーナー側に相続が発生すると、会社法175条2項(同条1項2号)により、オーナー側は株主総会決議に加わることができないので少数株主(経営陣側)が多数派株主(オーナー側株式)を買い取ってしまう危険性がある。
(4)防衛策はないか?
【私の回答(案)】
(1)【防衛策1】オーナー側所有株式についてのみ譲渡制限をはずす。
  しかし、譲渡制限を外すことは、オーナー側の相続人の構成によってはリスクがある。
 そこで、
(2)【防衛策2】「会社法176条1項の売渡請求をするときには、必ずオーナー側所有株式所有者のみの株主総会(種類株主総会)の議決を経なければならない」旨を定款に規定する(会社法108条1項8号)。
  ◎(私の質問)そこで問題点ですが、このような定款の定めは有効なのでしょうか。
 確かに、このような定款は会社法175条2項に反するようにも思えます。しかし、175条2項の趣旨は利害関係人が議決権を行使することによって不合理な議決が行われることを防ぐ趣旨と思われるので、更に二重のチェックとして、当該種類株主総会の議決を得る旨定款に規定することは不合理ではないように思うのですが。条文の文言上も、175条2項は「同項の株主総会において」と規定しているので、上記のような種類株式を発行することも許されるように思うのですが如何でしょうか。
投稿 はなしか? | 2006/09/28 12:38:42
A5
拒否権付株式で対応することも可能であるように思いますが、ややテクニカルでリスクがないとはいいきれないような感じもしますね。
非公開会社みたいなので、株主ごとに異なる取扱いの定めをして、少数派株主は、当該事項について議決権を行使することができないと定めるのも一つの手です。定款変更の決議要件が重くなりますが、その分、正面突破で安定性があるように思います。
他にもいくつか手段はありそうですが。

Q6
合併の事前開示について教えてください。
会社法施行規則第191条において吸収合併存続会社の事前開示事項が定められておりますが、第6項の「吸収合併が効力を生ずる日以後における吸収合併存続会社の債務の履行の見込みに関する事項」とは具体的にはどう表現すべき(何を書くべき)なんでしょうか?
投稿 くろ | 2006/09/28 15:58:22
A6
存続会社が承継した債務を払えそうならば、債務の履行の見込みあり
払えそうにないならば、債務の履行の見込みなし
ですね。

Q7
日本を代表するある超大手会社が吸収分割をすることになり、同社に対し特定物の引渡しを目的とする債権を有する債権者から異議申し出があったところ、同社は、
「金銭給付以外を目的とする債権については、789条5項に定める担保提供、信託といった措置は執ることができないことから、このような債権の債権者は同項に言う債権者には含まれない。したがって、この者に対して、同項に定める措置は一切執らない。」
という見解を示し、現にそのような対応を行ったのです。
 ・・・それにしても、訴訟に必要なエネルギー、資力を考えると、このような無理無体な主張でも、大会社が行えば、事実上それが世の中に行われてしまい、相手方は泣き寝入りということが多いのが実態ですね。
投稿 ニモ | 2006/09/28 20:53:26
A7
まあ、よろしいんじゃないでしょうか。
異議を述べることができる債権者に催告していない場合は、分割会社にも、承継会社にも、債権を行使することができますから、ポケットが2つになって儲けた感じです。

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2006年9月27日 (水)

代表取締役の就任・退任

商事法務の9月25日号に「代表取締役の就任・退任」という論文を載せました。

以前から、司法書士の方を中心に、代表取締役の選任・退任の時期や就任承諾の要否、登記原因について、よく質問を受けていましたので、一度、この問題について整理しようという目的で書いたものです。

この論文自体は、個人的な見解ですが、登記実務で受け入れられる結論にするために、関係部署に確認しましたので、基本的には、商事法務に載せた表の取扱いで実務を回すことができると思います。

最初は、結論だけ書いて終わりにしようと思ったのですが、書いているうちに、登記実務についての旧商法下での説明が、会社法の下では必ずしもうまくいかないという思いが強くなり、取締役と代表取締役との関係について理論的な考察を加えてみました。

その中でつくづく感じたのは、昭和25年の商法改正以来、「代表取締役」というものについてちょっと背伸びをした解釈をしてきたんだなあということです。

 巷では
「会社法は、旧商法の株式会社法と有限会社法をガッチャンコしただけ」とか
「会社法の株式会社は、所有と経営が分離していないのが原則となっている」とか
いうことを理由として、会社法では、「株式会社の本質」や「原理」が損なわれているという人もいます。

 しかし、その人たちが、有限会社特有という
①取締役が各自代表権を有すること
②株主総会が万能機関とされること
などは、有限会社だけに認められる特殊な制度ではなく、昭和25年商法改正前の株式会社で採用されていたものばかりです。

 ですから、これらは「株式会社の本質」でも、「原理」でもなく、単なる政策の問題に過ぎません。
 昭和25年改正前の株式会社についても、やはり所有と経営は分離していたし、昭和13年改正前にいたっては、取締役は、株主中から選任でなければならなかったにもかかわらず、やはり所有と経営は分離しているといわれていました。なぜならば、「株主」が経営をするのではなく、「取締役」が経営をするからです。
 所有と経営の分離のもっとも根源的なものは、そこにあるということは、以前の記事で述べたところです。

 改正経緯を簡単に説明すれば、
 昭和25年改正前は、株主総会万能主義で、取締役に各自代表だった。
 昭和25年改正後は、株主総会万能主義は有限会社に任せて、株式会社は、株主総会の権限を限定して、所有と経営の分離を進めた。
 平成17年の会社法は、昭和25年改正前に近い状態になった。
というブーメラン現象が起こっただけ。
 それに伴い、代表取締役の地位も
 昭和25年改正前は、代表取締役は、取締役のうち代表権を持つものという位置づけであり
 昭和25年改正後は、代表取締役は、取締役と代表取締役は違うものだと位置づけられ
 平成17年の会社法は、昭和25年改正前に近い状態になった(47条)
というブーメラン現象が起こっただけなのです。

 いずれにしても、昭和25年改正では、株式会社を所有と経営の分離を徹底した会社を作ろうといきこんでみたものの、結局、日本では、非公開会社がほとんどで、実質的にも所有と経営の分離を徹底するのになじまない会社だったことから、会社法でその現実に即した株式会社法制が整えられ、それが結果的には、原点回帰だったといってよいかもしれません(もちろん、違うところも沢山あります)。

 ところが、昭和25年改正後の会社法では、徹頭徹尾「所有と経営の分離」が強調されたため、「株主総会の権限限定」や「取締役と代表取締役の分離」という命題が「株式会社の本質」のように信じられてしまいました。
 そのため、先祖帰りした会社法における「所有と経営の分離」の考え方を、うまく理解・説明できない人が多いように思います。

そもそも、昭和25年商法改正は、所有と経営の分離の徹底という観点から、「取締役と代表取締役とは異なるものだ」という説明をしたにもかかわらず、条文をあまりきちんと整備していないために、いろいろな点で、苦しい解釈が強いられていました。

 たとえば、代表取締役に就任するためには、「取締役としての就任契約」のほかに、
 「代表取締役としての就任契約」
を締結しなければならないと考えたのもその一つ。

 論文の中でもちょこっと触れました、もし、「取締役」と「代表取締役」は別物であり、「取締役」というのは、「代表取締役」に選任されるための資格に過ぎないとするのならば、
(1) 「会社と取締役との関係は、委任の規定に従う」という規定
(2) 取締役を解任したときの規定
(3) 取締役の報酬についての規定
など沢山の規定を整備すべきだったと思います。

 それにもかかわらず、そうした整備をやらずに、解釈だけを先走りさせたので、旧商法で「取締役」と書いてある場合に、それが代表取締役を指すものか、単なる取締役を指すものか分からない規定がたくさんありました。

 また、通説は、「代表取締役としての就任契約」なるものを考え出しちゃったもんだから、その契約が委任の規定に従うことを説明するため、
「代表取締役の概念は、取締役概念を内包している」
という苦しい言い訳をするはめになりました。
 私は、その言い訳は、昭和13年改正前、株主の中から取締役を選んでいた時代に
「取締役の概念は、株主概念を内包している」
と言うのと、あまりかわらないくらい説得的ではないと思いますし、もしそのような解釈をするのならば、
「取締役会が、代表取締役を解職する場合でも、正当な理由がない場合には、損害賠償を請求することができる」
「取締役の報酬のほかに、代表取締役としての報酬を、株主総会の決議で定めなければならない」
という結論になるはずなのですが、そこらへんは、あまりうまい説明がないまま、うやむやだったように思います。

 しかも、本来、昭和25年改正の思想から言えば、
 「取締役」は、業務執行権をもたない
と解するのが素直だったはずですが、実際には、代表取締役以外の取締役に、業務執行権を与える実務は覆らず、そのうち商法自体も「業務執行取締役」という概念を受け入れることになりました。
 その結果、
 有限会社は、取締役が業務執行権を有するのがデフォルトであり、例外的に奪われる
 株式会社は、取締役が業務執行権を有しないのがデフォルトであり、例外的に与えられる
というデフォルトの違いに過ぎないことになってしまいました。

 このように昭和25年改正後の「取締役」と「代表取締役」関係は、理念に走りすぎてしまい、法律的にも十分な整備がされていなかったのに対し、会社法は、代表取締役を
  「株式会社を代表する取締役」
と定義して、取締役の一種と捉えています。

そのため
『「代表取締役としての就任契約」というものは存在せず、代表権を持ったり、業務執行権を持ったり、特別取締役になったり、委員になったりすることを全部ひっくるめた
 「取締役としての就任契約」
しか観念しえないと考えるべきですし、そのように考えると、委任の規定にせよ、解任の規定にせよ、選任と選定の区別にせよ、すべて整合的に解釈することができますよ』
というのが、今回の論文のキモとなっております。

そして、もう一つのキモは、取締役会設置会社の代表取締役のように、その人自体が選定に関与することができる場合(間接選定方式)には、選定関与権の保障のために
 「取締役としての委任契約」
の内容として「代表取締役への就任拒否権」や「辞任権」が認められると構成していることでしょう。

 こうした就任拒否権や辞任権は、聞きなれない構成かもしれませんが、論文のような結論を取れば、どんな複雑な経緯で代表取締役が選定された場合でも、代表取締役の就任承諾が必要かどうかを理論的にすっきりと説明することができますし、結論として、これまでの登記実務を変更する必要がないという大きなメリットがあります。

 司法書士の方に限らず、機関に関心のがある方は、一読していただければ幸いです。

この論文について、早速、内藤さんから質問が来ていますので、これについてお答えしておきましょう。

<質問1>
 代表取締役の選定方式を変更する決議は、「従来の代表取締役が再度選定される可能性を許容しつつ、新選定方式により選定された者を選定後の唯一の代表取締役とする趣旨であると解される。」(10頁上段ほか)とありますが、その理由は明らかにされていません。ご教示いただけますでしょうか。
<回答1>
 これは、その決議にどのような意思が込められているかという意思解釈の問題ですから、通常の意思解釈をしただけです。その決議が、それとは異なる趣旨ならば、その旨を明らかにすべきでしょう。

<質問2>
 そのような解釈を採ると、たとえば、代表取締役Bが存する場合に、同人に加えて代表取締役としてAを選定するときは、代表取締役Bの選定後に選定方式の変更決議がなされていないかの確認が不可欠となります。
 ① 選定方式の変更決議がない場合は、単にAを選定すればよい。
 ② 選定方式の変更決議がある場合は、ABの両名を選定する必要がある。
②の場合において、万一Aのみを選定した時は、会社が意図しないBの退任という事態が生じ、その後にBが代表取締役として行った行為が法的瑕疵を帯びる等、法律関係が複雑なものとなり、問題が多いと考えられますが、いかがでしょうか。
<回答2>
 選定方式の変更をしていながら、Aのみを選定したのに「意図しない」というのは、無理があるのではないでしょうか?
 逆に、取締役会を設置して、取締役会でAだけを選定したのに、株主総会で選定された代表取締役Bもあいかわらず、代取のままだという方が混乱が起こるように思います。
 この問題は、デフォルト・ルールをどちらにするかというだけの話であり、論文の考え方の方が、より一般的だと思います。

<質問3>
 代表取締役の地位のみの辞任について、たとえば、取締役の任期が10年の株式会社であれば、8~9年前に選定された代表取締役が代表取締役の地位のみを辞任したいということもありえますが、そのような場合に、「株主総会の決議を撤回する方法による」というのは、違和感があります。
 したがって、従前どおり株主総会の承認があれば可能と解する方がよいと考えますが、いかがでしょうか。
<回答3>
 「辞任+株主総会の承認」という構成をとるかどうかは、単なる言葉の問題です。
 ①辞任がない場合でも、株主総会の決議で解職・決議の撤回をすることは可能です。
 ②辞任をしても、株主総会が承認しなければ、辞任することはできません。
この2つを考えれば、実は、代表取締役が辞任するかどうかは、代表取締役の地位を失うことについて、何の影響力もなく、株主総会が一方的に決めているということがわかっていただけるはずです。
 形式として「辞任の承認」の決議をすることは可能だと思いますが、要するにそれは、法的には「解職」「退任」の決議をしているだけだと思います(決議内容によって、登記原因は変わる可能性がありますが)。

<質問4>
 代表取締役の選定方式を変更する決議は、単に「以後新たに代表取締役を選定するときは当該方法によるという趣旨である」と解すべきであると考えます。そのように解すれば、法律関係を簡明なものとすることができ、また、一般の株式会社の意思に沿うものであると思われるからです。「代表取締役や取締役の権限について、選定方式によって有意的な差異が認められない」(7頁上段)のであれば、そのように解することも十分可能であると考えます。
<回答4>
 そのように考えるべきではないというのは、回答2で述べたとおりです。
 また、そのような考え方は、有限会社が、互選の定めを置いた場合や、株式会社に組織変更をした場合についての、これまでの登記実務とも異なるのではないでしょうか。取締役会を廃止し、株主総会の決議で選定したときに、取締役会で選定した代表取締役をそのまま続投させるつもりでしょうか?様々な方式の変更を考えると、論文の考え方をデフォルトにすべきであるように思います。

(質問コーナー)
Q1
会社法施行規則126条に会計監査人設置会社の特則として記載すべき事項が列挙されておりますが、「四  会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」の記載に悩んでおります。そもそも解任・不信任の決定の方針というのは会社として定めるべき事項なのでしょうか。もし、方針がないのであれば特段記載不要という理解でよろしいのでしょうか。

A1
方針を定める必要はありませんが、定めてなければ「なし」と記載する必要があります。

Q2
会社法施行規則127条「株式会社が当該株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めている場合には、次に掲げる事項を事業報告の内容としなければならない。 」とあり、基本方針等を列挙する旨が記載されておりますが、ここは買収防衛策を導入している企業のみが買収防衛策について記載しなさいということなのでしょうか。
投稿 くろすけ | 2006/09/25 23:53:21
A2
基本方針を定めていない場合は、記載する必要がありません。

Q3
1000問の272問目をみていたら、図表2-10に無償割当てと株主割当てが並んで整理されていたので、質問です。
202条1項1号の株主割当は同種株式の割当しか許していませんが、原則として特別決議が必要なのに対して、無償割当ては異種株式の割当も可能で普通決議が原則です。有償で異種株主割当という選択肢をなくしているのは、どう説明すればいいでしょうか。
よろしくおねがいします。
投稿 | 2006/09/26 8:29:10
A3
株主に割当てを受ける権利を与えることの意味は、①公開会社が有利発行をする場合でも総会決議が要らなくなる、②譲渡制限株式を発行する場合でも、種類株主総会の決議が要らなくなるというところにあります。
このうち、特に②を実現するためには、「同一種類」という限定が必要です。
株式無償割当で、譲渡制限株式を交付する場合には、322条で種類株主総会が要求されると解すべきですから、実質的には、それほど違いはありません。

Q4
千問の道標Q165ついて質問させてください。
A社はB社の議決権を24%、C社の議決権を15%有しており、B社はA社の議決権を24%、C社の議決権を15%有しており、C社はA社B社の議決権を24%有する関係にあります。
たとえば、A社がB社C社以外の株主から8%自己株式取得した場合、この自己株式については、議決権を有しないことになるため、A社におけるB社とC社の議決権割合は、26.08%(4分の1以上)となり、A社はB社とC社に対して議決権を行使できなくなるということで宜しいのでしょうか?
また、B社においては、A社の議決権割合が0%となったため、C社の議決権割合は31.5%となりますが、千問123頁3によれば、B社はC社に対して議決権を行使できるということで宜しいのでしょうか?
投稿 永田町のタッキー | 2006/09/26 11:20:39
A4
頭がこんがらがりそうですが・・・
1 A社は、B社・C社に議決権を行使することはできません。
2 C社の「議決権割合」という言葉がややミスリーディングのようです。施行規則67条の適用においては、議決権行使ができなくなったA社が保有するB社株式(24%)も、分母にするから、それを前提にすると、C社の議決権割合は24%のままなんですよね?

Q5
吸収合併で、(100%子会社を吸収合併するのではありませんが、適格合併です。)消滅会社の株式を存続会社が60%保有・代表取締役(双方同一の代表取締役)が40%保有しています。
吸収合併により、株式を発行せず、資本金の額を変更せず、定款変更もしない場合、代表取締役の保有する40%にあたる数字は存続会社の資本準備金として
増加させてよろしいでしょうか?
投稿 なりたて司法書士 | 2006/09/26 17:31:04
A5
株式を発行しない場合には、資本準備金は増加しません。
のれんになります。

Q6
 計算省令2条39号イで「吸収型再編対象財産(資産(吸収型再編受入会社の自己株式となる株式を含む。) に限る。) に付すべき価額」という条文があります。
 これはつまり、自己株式も吸収型再編対象財産に含まれるという意味ですよね?先生の御著書ではありませんが、会社法計算詳解のP398を拝見しましたところ、下から7行目に「承継する財産(吸収合併存続会社の自己株式を除く財産)」との説明がありました。
 これって、吸収型再編対象財産の説明ですよね?こちらでは自己株式を「除く」となっています。
 この条文はどう理解するのが正しいのでしょうか?それとも会社法の計算詳解のこの部分は、他の条文の説明なのでしょうか?
投稿 てれてれてれ | 2006/09/26 20:03:45
A6

Q7
株主総会決議の省略(319条)と辞任した監査役に対する総会招集通知義務(345条3項)の関係について質問させて下さい。
会社法千問Q654の図表5-2によりますと、株主総会決議の省略をする場合、298条の手続も省略できるとのことですが、かかる場合、会社は辞任した監査役に対して、総会の日時・場所ではなく、総会決議が省略されたことを通知することになるのでしょうか?
それとも、345条2項が「辞任後最初に招集される株主総会」となっているので、株主総会決議の省略の場合は「招集される株主総会」にあたらず、辞任した監査役には、次回以降の実際に招集される株主総会の日時・場所を通知することになるのでしょうか?     
今後、100%子会社(非公開会社)では定時総会についても株主総会決議を省略することを検討しておりますが、定時総会まで省略してしまうと、次回以降、実際に株主総会を招集するのがいつの事になるのか分からないため、辞任した監査役の株主総会での意見陳述権を奪うことにならないか疑問です。
よろしくお願い申し上げます。
投稿 hi | 2006/09/26 20:31:58
A7
 総会決議が省略された場合には、総会は招集されていないので、345条2項でいう「最初に招集される株主総会」に該当しません。
 一回も総会を招集しないならば、辞任した監査役の意見陳述権を奪うことになるでしょうが、特殊な事案ですね。通常、そのような会社では、監査役は、株主である親会社に、事実上、意見を述べれば足りるものと思います。

Q8
吸収分割に当たり、吸収分割承継株式会社によって免責的債務引受けがなされる場合、789条5項により、分割に異議を述べた債権者に対しては、弁済の実行、担保の提供又は信託という措置をとらなければならないところである。
ここで、同項に言う債権者には、金銭給付以外の給付を目的とする債権の債権者は含まれるのか否か。
(具体的には、売買契約に基づき、現在製作途上にある特定物の引渡しを目的とする債権(履行期未到来)を念頭)
A8
 すべての債権者が含まれます。

Q9
給付の対象は特定物であり、しかも、当該対象物は製作途上にあって現在は存在しないことから、当該特定物の引渡しの実行自体を担保することや、当該特定物の引渡しの実行自体を目的とする信託を行うことは困難ないし不可能であるとも考えられる。
その場合は、将来、履行期が到来した際に、当該特定物の引渡しが履行されなかったとした場合に発生することとなる損害賠償債権について担保提供又は信託を行うべきこととなるか。
投稿 ニモ | 2006/09/26 21:15:30
A9
特定物の引渡請求権についての担保提供とは、通常、損害賠償請求権についての担保提供のことを意味していると思います。

Q10
>全部取得条項付種類株式の取得で,所在不明株主の有する株式も取得することができますが,他の株主と同じ内容の対価を支払う必要がありますので,所在不明株主の株式だけをお金に換えるのは難しいのではないでしょうか。
とのことですが,この場合に株主割当ての方法によって募集株式を募集し,取得した自己株式を処分した場合,どうなるのだろうか,と疑問に思っています。
(所在不明株主からは申込みがないでしょうから,その分は自己株式のままになると思いますが)
非公開会社では,募集事項の決定権限を定款で取締役(取締役会設置会社では取締役会)とすることも可能と思いますので。
もちろん,そのようなことを目的とする取得の総会決議自体に瑕疵があるのではないか,ということも問題にはなるものと思います。
投稿 たつきち | 2006/09/27 1:07:57
A10
1 「この場合に株主割当ての方法によって募集株式を募集し,取得した自己株式を処分した場合」という部分の意味が分かりません。
2 「非公開会社で,募集事項の決定権限を定款で取締役(取締役会設置会社では取締役会)とする」という部分については、なぜ定款なのか、よく分かりません。定款で定める場合でも、募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めなければならないので、株主総会の決議ではなく、定款にする意味が乏しいように思いますが。

Q11
 新株予約権を行使した新株予約権者の責任について定めている285条には,募集株式の引受人の責任とは異なり(212条),新株予約権を行使する際の払込みが不公正な価格であった場合の責任が掲げられていませんが,これには何か理由があるのでしょうか?
投稿 新株予約権とともに去りぬ | 2006/09/27 2:16:
A11
 新株予約権の行使価格は、発行時に定められているので、新株予約権者が、「取締役と通じる」ことができません。行使価格の不公正は、発行時の払込金額の不公正として捉えるべきなので、285条1項2号で処理すべき問題です。

Q12
清算結了した株式会社の重要書類保管者選任の申立てについて教えてください。
商法時代は株式会社の重要書類保管者について全て裁判所へ申立てが必要でしたが、会社法508条では1項で原則清算人が保管者となり、2項で利害関係人の申立てにより清算人に代わる保管者を選任することができるとあります。
この2項の選任申立人が商法の「清算人其の他の利害関係人」から「利害関係人」と条文から清算人が削除されていますが、清算人からの申立てはできないのでしょうか?
清算人自体は当事者とは言えないので利害関係人の一人とも考えられるのですが、それとも清算には当事者と捕らえているのでしょうか?
今抱えている案件では、清算結了した子会社の重要書類保管者として親会社を候補者として清算人から申立てしておりますが、裁判所から問い合わせがあり、現在検討中とのことですので・・
投稿 教えて君 | 2006/09/27 11:57:52
A12
 清算人も利害関係人に含まれます。単に用例・平仄の関係で例示を省いているだけです
Q13
自社株式の消費貸借(貸し株)についてお尋ね致します(既に書かれていたら申し訳ありません)。
自社株式を消費貸借する場合、会社法上の手続きはどのようなものがあるのでしょうか? … 自社株の取得・売却と同様に、取締役会の承認(貸出時)、株主総会の決議(返却時)(・他の株主による売主追加請求?)等の手続きが発生する?
投稿 うぶうぶ | 2006/09/27 14:24:43
A13
自社株式の消費貸借をやりたければ、買入時に自己株式の取得、それを何らかの用途に使用する場合に自己株式の処分、さらに返済のために取得するときに自己株式の取得、それを返済するときに自己株式の処分の手続きが必要です。

Q14
52、55条の読み方を教えていただきたいのですが、
「52条1項の規定により発起人または設立時取締役の負う義務・・・は、総株主の同意がなければ、免除することができない。」
となっており、52条3項の証明者が入っていません。
これは、
①証明者は総株主の同意をもってしても免除できないという意味なのか、
②証明者は総株主の同意でなくても免除できるという意味なのか、
③それとも、52条3項で「1項に規定する場合には、・・・証明者は、発起人・設立時取締役と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う」ことになっているので、55条でいう「義務」とは「不足額を支払う義務」のみを指し、証明者も「不足額を支払う義務」を負っているので、その証明者の負う義務も55条により(総株主の同意により)免除できる、という意味でしょうか?
投稿 ムーニーマン | 2006/09/27 16:11:29
A14
②です。

Q15
現に株券を発行している公開会社「A社」が、全ての株式について、譲渡制限規定を設定するとともに、株式併合をすることになりました。
(株主総会決議で定めた効力発生日は同一日です。)
そこで、A社は、法219条に従って株券提出公告及び通知を行い、発行している全ての株券を回収しました。
効力発生日後、非公開会社となったA社は、215条2項ではなく、4項が適用されると考え、併合した株式にかかる株券を未だ発行していません。
また、株主からの株券発行の請求もありません。
この場合、A社は、株券発行規定廃止に関する218条公告をしないまま、現実に存在していた株券を消滅させることができ、さらに準株券廃止会社になることにも成功しました。
A社はこのまま株券を発行しなくてもよいのでしょうか?
上記の手続のうち、違法・解釈違いなところはありますか?
投稿 頭がウニ | 2006/09/27 16:16:10
A15
株主の請求があれば、株券を発行する必要があります。なければ、株券を発行する義務はありません。
株券発行の定めを廃止しないわけですから、218条公告は関係ないですよね?

Q16
新株予約権の発行の件です。
旧商法時代、新株予約権の有利発行の決議を商法280条の21の規定に基づき行った会社があります。まだその決議より1年以内であるところ、このたび、その株主総会決議に基づき取締役会決議を行い、発行事項を決定することになりました。
整備法98条1項によると施行日前の発行決議の場合にはその発行手続きについては従前の例によるとあります。そこで質問です。
会社法施行後の取締役会で定める新株予約権の内容は旧商法に基づくものなのでしょうか。それとも会社法に基づくものなのでしょうか。
A16
 決議事項や手続などはすべて旧商法が適用されます。

Q17
山口厚『刑法』(有斐閣、2005年)より。
①HS式無熱高周波療法を業として行った事件に関して、最高裁は、処罰の対象を「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為」に限定(「有害性」)。
②その後の判例は次第に「有害性」の内容を緩やかに解する。(17頁)
③クエン酸等を主成分とする「つかれず」を販売した事件で、「人体に対し有益無害なものであるとしても」薬事法違反の罪が成立するとした判決にそれが窺われる。(17頁)
この判決(最高裁昭和57・9・28刑集36巻8号787頁)に関して山口先生は以下のような注をつけておられます。(17頁)
「同判決には,積極的な危険がなくとも,適切な医療を失わせるおそれがあることが処罰の根拠となるが,本件では積極的な弊害はもとより消極的な弊害も生ずる虞はないとする,木戸口裁判官の反対意見が付されている。」
「多数意見も,こうした消極的弊害をも問題としていないとまでは断じることができない」
→反対意見は積極的な弊害もなければ、消極的な弊害もないので無罪とすべきだと考えているが、多数意見が積極的弊害に加えて、消極的な弊害まで問題ないと考えていると解釈することはできない(→つまり多数意見は消極的な弊害に関しては問題がありうると考えている、と解する余地がある)ということでしょうか。
投稿 質問(刑法) | 2006/09/27 20:54:05
A17
すいませんが、その判例を知りませんし、山口先生がどのようなお考えで、そのような注をつけられたかも分かりません。質問の内容を読む限り、多数意見は、消極的弊害を問題にしているようにも見えるし、消極的弊害も不要としているように見えますが、どちらかと考えているかは、最高裁判事以外は、分からないでしょう。

<新会社法100問についてのリクエスト>
リクエスト1
 出版社さんと調整のつく何らかの形で誤植・訂正を発表するコーナーを設けていただけると本当に助かります。
投稿 メタルスライム | 2006/09/25 21:09:52

・・・私は、やってあげたいのですが、また返本騒ぎになると迷惑をかけるので、出版社の判断にゆだねます。

リクエスト2
100問についてですが、本文の(最判00年00月0日と同旨)という判例が百選にある場合、百選の番号を左側のコメント欄に記していただけませんか。
・・・がんばってみます。

リクエスト3
新会社法100問(第2版)へのリクエストなのですが、伊藤眞先生の民事訴訟法の索引のように、言葉の中心的な説明をしているページを太字にして頂けたら幸いです。
・・・がんばってみます

リクエスト4
会社法100問2版では
(1)判例のさくいんの作成
(2)赤字と黒字の分け方
を検討していただけると大変助かります。
投稿 新司受験生 | 2006/09/26 13:10:48
・・・判例索引は、ちょっと考えます。赤字は、目にちかちかするので、少し減らします。

リクエスト5
某予備校(W)が出版されている『○○100』ような受験生が1時間で仕上げた実践的な答案例も載せていただければ、めちゃくちゃ嬉しいです(が、多分無理でしょうね・・・)。
投稿 旧司法試験受験生 | 2006/09/26 13:29:58
・・・受験生が1時間で仕上げた実践的な答案例は、ちっとも実践的ではありません。実践的というのは、自分が本試験を受けたときに役に立つことをいいます。人は、それぞれ自分の言葉を持っているので、ある人が1時間で仕上げた実践的な答案例を勉強して、自分でそれを再現しようと思っても、せいぜいその80%程度の内容しか再現することができず、それでは、合格しません(そもそも、知識が不十分な読者が、短い表現を読んでも、その短い表現がどのような意図で使われているかを理解することはできません)。
 長い答案を理解しながら、自分で短くする努力をして、はじめて自分の言葉・自分の表現で、100%の内容を書くことができるのです。
 また、本試験で、過去問とまったく同じ問題が出ることは、きわめて稀です。必ずひねりがあり、そのひねりによって、答案は、ぜんぜん違う答案になります。
 過去問は、素材であり、それをもとに、いろいろな応用的な問題について準備しておくことが、真の実践的な勉強です。
 解答例を使った勉強というのは、解答例を暗記することではありません。
 解答例を使って、自分の論述スタイルを確立することが重要です。
 だから、私の教育方針として、短い答案は、絶対に出しません。

<千問のミス>
千問の記載内容にケアレスミスと思われるところがありましたので、確認の為に指摘させていただきます。
①P74のQ100のAの2~3行
  ・・・総数を控除して得た数は(誤)⇒・・・総数を控除して得た数を(正)
  ・・・次の数の合計数を(誤)⇒・・・次の数の合計数は(正)
②P240のQ332のAの最下行の式の記号
  >(誤)⇒≧(正)
③P537の図表8-1資本金等の増減
  「剰余金の資本組入」から「資本金」への矢印に「その他資本剰余金のみ」を 付すべき(計算規則48条Ⅰ②より)
重箱の隅をつつくようで恐縮ですが気になりましたので初めて書き込みをさせていただきました。
投稿 百個桃 | 2006/09/26 10:53:38

・・・百個桃さんありがとうございました。

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2006年9月25日 (月)

会社法100問第2版

新司法試験のことについては、まだまだ語りたいことがあるの
ですが、今日は、新会社法100問【第2版】について、耳呈さん
から、ご質問を受けましたので、第2版の内容についてお話し
します。
まだ、正確な出版日程が決まっていないので(まだ初稿のチェ
ックをしている段階なので)、内容についてのアナウンスをす
ることは控えていたのですが、Amazonに出たということなので
、とりあえず「第2版」における変更点を簡単にお話します。

1 まず、初版の解答例について、省令対応や分かりやすい表
現にする等の改訂を行いました。
 初版後に、正式な省令が出ましたので、その条文番号を組み
込むなどの形式的な対応をしていますし、そのほか、約30問
については、省令をベースに表現を調整し、あるいは、省令と
は関係なく、ブログなどで質問があった事項について、より詳
しく、より分かりやすい表現にするなど大小の改変をしていま
す。
 特に、預合い、違法配当、取締役の責任、相続人に対する売
渡請求権、組織再編時の計算等は、初版後に研究が進んだこと
もあり、かなり変えています(ただし、各論点の結論について
は、基本的に変わっていません)

2 平成18年新旧司法試験
 今年(平成18年)の新司法試験と、旧司法試験の解答例を
入れました。
 最初、初版の解答例から2問分削ろうかなと思ったのですが
、邪魔になるほどのものではないと思い、削りませんでした。
 ですから、解答例は102問載っています。でも、題名は、
あいかわらず「100問」です。JAROにいかないでください
(笑)
 なお、今年の会計士試験の問題は、タイミング的に間に合わ
なかったので、入っていません。

3 重要度ランク
 初心者が会社法を100問も、のんべんだらりとやると、挫折
するという声を受け、102問を3ランクにわけ、星をつけま
した。
 3つ星 初心者用 30問
 2つ星 中級者用 約30問
 1つ星 上級者用 約40問
というところです。
 初心者用は、一行問題的なものを中心に基本を学び
 中級者用は、事例問題を多くして、新司法試験などで必要な
分析能力を高める
という観点から分類しています。
 「100問は多いから、もっと少ない問題数の問題集を買お
う」
という気持ちの方は、カッターナイフで3つ星マークの問題だ
けを切り取って、
「新会社法30問」
を自分で作れるようにしたわけです(笑)。

4 条文索引に1000問のQ番号を入れる等検索を充実させる。
 勉強が進んだ人が、千問の道標を参照しやすいようにするた
めに、条文索引に、千問の道標のQ番号をいれました。また、
索引も、大幅に強化する予定です。

5 基本テスト・間違い探し1200問
 【第2版】の最大の売りは、各解答例の後ろに、
  基本テスト「Comprehension Test」
  間違い探し「What's Missing」
という一問一答形式の問答を約10問ずつ、合計1200問を
載せたことです。

 実は、今年の春ころ、私は、あるロースクール生から「会社
法は、憲法・民法・刑法のように択一の過去問がないので、何
を勉強したらいいでしょうか?」という質問を受け、
「司法書士の過去問をやるしかないかなあ」
と答えたことがありました。
 しかし、司法書士の過去問は、当然のことながら旧法時代の
ものが多く、会社法に特有の問題は載っていませんし、書店で
見る限り、市販の問題集は、やや問題数が少ないようなので、
「基本的な知識の確認用に何か作れないか?」
と思うようになりました。

 それで、考えたのが、基本テスト「Comprehension Test」と
間違い探し「What's Missing」という形式の一問一答です。
(1) Comprehension Testは、
<例>
 Q1 所有と経営の分離とは、何か。 
 A1 出資者以外の者が会社の業務執行をすることができる
制度のことをいう。

というように、会社法の基本概念や、基本判例の知識を確認す
るための問答です。
 各解答例の後ろに、その解答例と関係する問題を5-8問づ
つくらい載せていますが、解答例に書かれていないことも幅広
に質問にしています。

(2) What's Missingは、
<例>
 誤6 株式会社は、所有と経営が分離しているので、株主は
、取締役になることができない。
 正6 株主であることは、取締役の欠格事由ではなく(33
1条1項)、取締役になることはできる。

というように、「誤りのある文章を見て、どこが誤っているか
を答える」形式のテストです。これも、各解答例の後ろに5問
以上載せています。

 以前の記事でも話したことがあるとおり、択一試験は
「間違いを探す試験」
です。
 択一を解くときに、「この肢は正しい。」という立証を正面
からやるのは悪魔の立証で、必ず迷いが生じます。ですから、
「他の肢に間違いがあるから、この肢は正しい」
という消去法こそが、択一試験を勝ち残る最大の秘法だと思い
ますし、択一が得意な人は、ほぼ例外なく、このような解き方
を身につけています。

 そこで、私は、会社法を聞きかじったことがある人が間違い
やすそうな箇所について、あえて「間違いのある肢」を作って
、その間違いを探してもらおうと考えたわけです。
 答えを○×で問う形式も考えたのですが、それでは、「この
頁の答は、○○×××」とかいう風に内容を理解せず、○×の
組み合わせを覚えて、理解したような気持ちになってしまう弊
害が生じます。
 それで、「必ず間違いがある」という前提で、「どこが間違
っているか」を答えてもらうことにしたのです。
 この方式ですと、「この頁は、×××××」とかいうような
覚え方はできないでしょ?

 基本的には、解釈を含まない問題(条文・基本的判例の知識
)をチェックするという用途なので、条文・判例について「こ
こは、勘違いが多そうだなあ」というところを抜き出していま
す。

 以上の2つの形式の1問1答を、合計1200問も作るのは
、正直言って、むちゃくちゃ大変でした。
 作っている最中、何度
「まだ誰にも言ってないから、この企画は、こっそりやめにし
ようかなあ。」
と思ったことか・・。
 しかし、昨日の記事でもお話ししたとおり、「基本事項の確
実な習得が試験には必要不可欠」というのが私の信念ですから
、それに少しでも役に立てればという気持ちから、なんとか最
後までたどり着くことができました。
 これは、新司法試験に限らず、司法書士試験、公認会計士試
験の方にも、かなり役に立つと思います。全然、役に立たなか
ったら、(涙)という感じです。

 今のところ、「第2版」は、発売時期も価格も決まっていな
い(少なくとも私は知らない)ので、初版を持っている人が買
い替えをする必要があるかどうかは、なんともいえません。
 ただ、編著者の私としては、第2版を買った人が
「おい、これで、また金を取るのかよ?」
と落胆して、座布団が飛んでこないように、できる限り充実し
た第2版にしたいと思っています。何かリクエストがあれば、
気軽にコメントに書き込んでください。
 できることなら、取り入れられる余地はあります。


(質問コーナー)
Q1
組織再編に於ける債権者保護手続きについて質問いたします。
789条2項及び799条2項では「次に掲げる事項を官報に公告し、
かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告」するものと
し、同項1号から4号に定める事項が掲げられています。
さて、個別の債権者に対する催告書にも、公告と同様、3号に
定める組織再編当事者双方の決算公告に関する事項(規則188
条及び規則199条)を記載しなければならないのでしょうか。
現在準備中の吸収分割手続きで、分割会社、承継会社共、(官
報による)決算公告をしておらず、吸収分割の公告と同時に決
算公告をする形をとらざるを得ません。
従いまして、3号に定める事項も催告書に記載すべきとすると
、催告書の発送は、官報公告のあった日以降にならざるを得ま
せん。1号乃至4号に定められた事項は、公告すべき事項を定め
たものであって、催告書に記載しなければならない事項では無
いように思うのですが・・・
A1
公告の内容と催告の内容は、同じです。
決算公告をしていなければ、その要旨を書かなければいけませ
ん。


Q2
会社法437条と計算規則161条の関係についてご教授ください。
取締役会設置会社で会計限定の監査役がいる会社では、法437
条によると計算書類の監査報告を招集通知に際して株主に提供
しなければならないとされていると思います。一方、規則161
条1項では、会計限定監査役のいる会社は監査役設置会社では
ないため、同項1号が適用され、提供すべきものは計算書類の
みで監査報告は含まれていないとも思えます。提供義務は会社
法で規定され、161条は株主への提供方法に関する定め過ぎず
、監査報告については、161条の提供方法に限定されないとの
趣旨なのでしょうか?
投稿 法務課員 | 2006/09/21 20:13:45
A2
条文を素直に読めば、会計監査限定監査役の監査報告について
は、法律上は提供義務があり、計算規則161条の方法によら
ず、適宜の方法で提供するということですね。

Q3
新司法試験合格の弁護士か旧司法試験合格の弁護士か調べるに
はどうしたらよいんでしょうかね。
投稿 ABC | 2006/09/23 2:07:40
A3
一期の中に新旧が混在している場合には、そういう方法は、な
いでしょう。
新司法試験だけになれば、期によって分かりますよね。
もっとも、旧でも、いろいろな弁護士さんがいますし、新でも
、いろいろな弁護士さんがいるので、試験の新旧で弁護士を選
ぶのは、あまり意味がないでしょうね。

Q4
今日の記事とは関係ない質問で恐縮ですが、敵対的買収につい
ての議論が全然理解できず、質問させて頂ければと思い投稿さ
せて頂きます。
何となく、世間では、
A 買収者は、『買収後にちゃんとこのようにして企業を経営
していくぞ!』というプランを示すべきだ。
B 現経営陣には、そのプランに対抗するプランを提示する時
間を与えるべきだ。
C 株主には、上記プランを比較検討する時間を与えるべきだ
。
などという考えが常識になっているような気がしますが、これ
は正しいのでしょうか?
株主が株式を買収者に売るか否かを決める判断材料は、
①現経営陣のプランが遂行されることを考慮した株式価値と、
②買収者の提案する株式買取価格
のいずれが高いかということだけで、買収者のプランは関係な
いと思います(ここの説明は長くなるので省略しますが、必要
であれば後に述べます)。
そうすると、上記Aは不要だということになると思います。ま
た、経営陣のプランは通常既に明らかになっているはずですか
ら、上記Bの時間も不要だと思います。上記Cの時間は、TOBの
期間で十分だと思いますし、それが短いかどうかは証取法の立
法論だと思います。
このような考え方を持っているため、上記A、B、Cを前提とし
た敵対的買収の相当性や、敵対的買収防衛策の適法性の議論が
全然理解できません。私の考えの誤っている点があればご指摘
頂けないでしょうか。
投稿 ポイズンピル | 2006/09/23 15:40:00
A4
ポイズンピルさんのベースには、
「株主は、株価が高くなればハッピー」
という考えがあるように思います。
 もちろん、そういう株主が多いことは否定しませんが、そん
な株主ばかりではないというのも現実です。
 株主の中には
「株価がどんなに高くなっても、売らない。その代わり、長期
にわたって安定した配当がほしい。」
「取引の前提として、株主になっているのだから、買収が成功
した際に、取引が継続するかどうかに最大の関心がある」
という人もいるでしょう。
 そういう長期保有目的株主(会社によっては、そういう株主
の方がずっと多いと思います)にとっては「株式買取価格がい
くらか」より、「買収者はどんな経営をしようとしているか」
という方に関心があるでしょう。
 買収防衛の目的は、株主共通の利益の保護にありますが、株
価だけに焦点を絞った議論はやや危険であり、また、二段階買
収の防止などの観点からも、買収者が過半数を取った後の経営
方針について既存株主に情報提供をすることは意味があるよう
に思います。

Q5
非取締役会設置会社の業務執行権限についてお尋ねします。
非取締役会設置会社の取締役は各々業務執行権限を有する旨が
規定されております(会社348条1項)。
他方、株主総会の権限について会社法295条1項に「株主総
会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管
理その他株式会社に関する一切の事項について決議することが
できる」とあります
この規定を踏まえ、支配人の選任OR解任や支店の設置・移転・
廃止等を株主総会で定めることも可能かと思いますが、株主総
会で選任した支配人を取締役が業務執行権に基づき解任するこ
とは可能でしょうか?
投稿 横山 | 2006/09/24 1:05:48
A5
株主総会で選任した支配人を、取締役が解任することは可能で
すが、忠実義務違反になる可能性はあります。

Q6
自己株式の処分を行ったものの、何らかの理由により828条
1項3号の無効の訴えがあり、その訴えの認容判決が確定した
場合、当該処分だけでなく、交付された株式(処分された自己
株式)自体も将来に向かって効力を失う(839条)。とのこ
とですが、これは、自己株式を消却した時のように、無効にか
かる株式がこの世から消滅し、発行済株式の総数も減少すると
いう意味でしょうか?
例えば、発行済株式の総数1000株のうち200株が自己株
式である会社が、自己株式全部を処分した場合に無効となると
、無効確定後は、会社の発行済株式の総数が800株になると
いうことでしょうか?
投稿 ムーニーマン | 2006/09/24 17:41:10
A6
自己株式の処分が無効になれば、発行済み株式総数は、減少し
ます。

Q7
商法時代からもそうなのですが、決算公告を怠った株式会社に
対して、会社法下においては過料の制裁等の検討はなされてい
るのか、なされていないのか、今後なされる予定等があるのか
、ご存じでしたら教えて下さい。過料制裁がないと会社法下に
おいても中小会社の決算公告というのは形骸化してしまうので
はないかと私は考えています。過料制裁についてもう一点お聞
きしたいのですが、会社の機関設計の自由度が増し、役員の任
期も会社によってまちまちとなってきておりますが、公開会社
である小会社の監査役が会社法施行日に任期満了する登記を怠
った場合の過料制裁(6か月以内に登記すること)以外で、役
員変更の懈怠における過料制裁がありますでしょうか。教えて
下さい。
投稿 柴里達徳 | 2006/09/25 9:23:54
A7
 条文を見てもわかるとおり、決算公告を怠った会社は、過料
の制裁がかされます。ただし、裁判所が過料の制裁をどの程度
行うかは、私の知るところではありません。
 役員変更の登記をすべきにもかかわらず、登記を怠れば、過
料になりますが、ご質問の趣旨は、経過措置の話でしょうか?
会計監査人の登記とかも同じだったと思います。

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2006年9月24日 (日)

新司法試験合格の要

もう一本,新司法試験についての記事を書くことにします。

 実は,私が今回,一番驚いたのは,東京大学の択一合格率の異常な低さです。

 私は,東大至上主義者ではないのですが,一卒業生として,「本当に東大は,大丈夫か?」と思うくらい低いです。

 私自身東大の出身で,司法試験受験生の友人をずっと見てきましたし,また,予備校講師時代に沢山の東大生を教えてきたこともありますから,東大生は,一般的には択一に強いという印象をもっていました。
 大学受験時代からマークシート方式の解き方に熟知している,事務処理能力が高い,知識を正確に理解している等いろいろと原因はあるのでしょうが,模試のデータでも,むちゃくちゃ択一に強かったと思います。

 また,法科大学院入試の模試を見ると,東大の偏差値は最も高いのですから,法科大学院に入った時点における学生の能力は高いはずです。

 それが,蓋を開けてみると,択一の合格率が,全体と同じくらいだったわけですから,東大にとっては,第1回目の新司法試験対策は「失敗」と言われてもしかたがありません。

 たかが,択一と甘く見てはいけません。
 実務に出れば,「他の誰にもやれない難しい事件を,知恵を絞ってやりとげる能力」が,どんなにあったとしても
「誰もがやれる典型的な事件で,アホな間違いをして失敗する」
ようでは,上司や仲間から,「こいつとは,一緒に仕事ができない」と評価されるでしょう。
 典型的な多数の事件を要領よく確実に解決することができる能力は,実務家として飯を食っていくための必要最小限度の能力であり,今年の択一は,まさに,そのような能力を計る上では良い問題でした。
 問題の内容も,形式も,あまり捻りのないもので,普通に解けば,かなりの高得点が採れるはずなのです。

 それにもかかわらず,あの程度の合格点が採れない東大卒「博士」が,約16%もいるというのでは,博士の名が廃ります。

 ただ,見方を変えれば,この東大の不振に,新司法試験の合格の秘訣が隠されているように思うのです。

 私は,東大の受験生を知らないので,択一合格率が平凡だった真の原因は分かりませんが,次のような原因が想像できます。

1 択一の問題が単純だったので,東大生が得意とする高度の事務処理能力を生かすことができず,差を付けることができなかった(逆に,論文では,その能力を生かすことができた)。
2 勉強中,難しいことに拘りすぎ,基本的な知識を確実に身に付ける努力を怠った。
3 択一と論文が同じ時期に行われることに気をとられ,「択一はなんとかなるだろうから,論文に力をいれよう」という奢りが出て,択一の勉強を十分にしなかった。
4 予備校に行くなと言われたので,予備校主催の模試や演習に全く行かず,かといって,法科大学院では択一模試をしてくれないため,結果的に演習不足に陥った(笑)。
5 法科大学院で基本的なことを教えてくれなかったので,基本的な知識がそもそもなかった(笑)。

最後の2つは冗談ですが,1から3は,それなりに当たっているような気がします。

もし,私が,受験生の指導担当ならば,来年の新司法試験を受験する人には,
1 単純な形式で,基本的な知識を確実に身に付けるための演習(一問一答)を繰り返す。
2 今年の11月くらいまでには,試験科目全部について基本的な知識のINPUTを完了しておく。
3 今年の12月くらいまでには,憲・民・刑の旧試験の過去問で手に入るものは,全部解いておく。
4 試験前2ヶ月間は,択一7,論文3くらいの割合で勉強し,とにかく演習を繰り返す。
5 模試をできるだけ沢山受ける。
ということをアドバイスするでしょう。

 本当言うと,択一の過去問なんて,もうこの時期には終わっていなければならないことなのですが,それをやっていない人だって沢山いるでしょうから,とりあえず上記のようなスケジュールを立ててみました。

 有名ロースクール生に会うと,どうも択一を若干軽視しているように思います。
 択一合格者の論文試験合格率が50%程度あるうちは,戦術的には,択一対策が合格の要になります。
 また,択一に強い者こそ,「安心できる法曹」になる資質を持っているということもできます。
 「誇り」をもって択一対策をしましょう。

(質問コーナー)
Q1
109条2項で一部の株主の議決権を奪った場合、その決議に反対した(実際に不利益を被った)少数株主の保護はどうなるのでしょうか?株式買取請求権等を認める条文(根拠)を探すことができなかったのですが。
 それと、質問が前後するのですが、ある司法書士の先生が書いた本を読んだところ、109条2項は比重株(ある特定の株には複数の議決権があると規定し、その株の株主が交替するとその複数議決権も一緒に移動していく)、VIP株(ある特定の株主のみ複数議決権を認める。手放せはもとに戻る)やヒーロー株(ある一定の条件が生じた場合のみ、複数議決権化する)として利用可能と述べ、議決権を奪うことまでは述べていませんでしたが、ある特定株主の議決を奪う方法も認められると考えてよいということですね。
投稿 葉玉門下生 | 2006/09/21 11:09:42
A1
1 109条2項の定めをする場合の株主保護は,株主総会決議取消の訴えや,不法行為に基づく損害賠償しかないです。
2 ある特定の議決権を制限する定めも可能です。

Q2
株式会社の設立の手続について質問させてください。
発起人1名、現金出資100万円+自動車の現物出資(評価200万円)、1株5万円で60株発行予定の会社の定款を作成する場合、現物出資の履行がされない場合(会社法36条)にそなえて、定款に記載する「設立に際して出資される財産の最低額」を5万円(現物出資財産の評価額を下回る金額)とすることは可能でしょうか。なお、会社法32条1項に関する事項は、定款では定めません。
可能な場合で、現物出資の履行がされなかった場合(会社法36条)、定款の現物出資に関する部分を変更(削除)する内容の書面に、発起人が記名押印して公証人の認証を受ければよいのでしょうか(千問Q18)。
不可能な場合で、現物出資の履行がされなかった場合(会社法36条)は、200万円を現金出資し、可能な場合と同様の手続をとればよいのでしょうか。
千問Q26では、不可のように読めるのですが…
投稿 きっちん | 2006/09/21 12:52:18
A2
1 定款に記載する「設立に際して出資される財産の最低額」を5万円にすることは,当然可能です。
2 現物出資の履行がされなかった場合の処理は,そうすることが一番確実でしょうね。

Q3
中小会社の監査補助者として監査役監査に携わる機会があり、そこでの疑問です。
質問は、中小会社が連結計算書類を作成し、任意で会計監査人の監査を受けているが、会計監査人設置会社であることを登記していなかった場合、有効に連結計算書類を作成することが出来るか否かです。Noの場合、法律上、監査役は個別計算書類について監査報告書を作成すべきことになるのでしょうか?その場合、会計監査人が連結計算書類に監査意見を出す一方で、監査役は個別にしか意見を出さないといったことになるかと思いますが、このネジレたような関係はしっくりきません。
会社法においては、大会社でなくても会計監査人を設置することができるようになり、また、会計監査人設置会社は連結計算書類を作成することができます(444条)が、監査人を登記しないまま、連結財務諸表の任意監査を受けているような中小会社は多いと思います。この場合、監査役は連結と個別のどちらに監査意見を出せば良いのか悩むと思うのですが、ご意見お聞かせ頂ければありがたいです。
投稿 こうちん | 2006/09/21 13:06:50
A3
登記懈怠でも,定款に会計監査人を置くの定めがあるならば,会計監査人設置会社です。
したがって,連結計算書類を作成することができます。
連結計算書類を作成する場合には,監査役の監査報告は,個別,連結ともに監査の対象となります。

Q4
.本日(9/21)Q1の文中、「109条2項の場合、…(省略)…。この場合、…(省略)…登記には反映されるものではなく、登記簿上は普通株式だけだが、定款をみれば議決権のない株主も存在することが分かる…」との記載があり、この部分については先生は特に触れていらっしゃいませんでした。しかし、109条3項の、2項の株主が有する株式は内容の異なる種類株式とみなす旨の規定から、登記簿上に種類株式と同様にその内容が登記されるとも考えられるのですが、いかがでしょうか。
A4
 109条2項の定めは登記されません。

Q5
.取得条項付株式において株式の取得と引換えに交付する金銭の額または算定方法として、
A.取得時に、会社財産の状況を踏まえて、代表取締役が(取締役会or株主総会の決議により)定める。
B.金●●万円以上で、取得時に代表取締役が(取締役会or株主総会決議により)定める。
などの定めは、有効でしょうか。全部取得条項付株式の場合は、取得する旨も価額の決定も株主総会の特別決議で定める上、反対株主に価格決定申立権が与えられているので、事前に具体的に決定する必要はないとは思いますが、取得条項付株式の場合は、事前に具体的に決定しないと株主の保護に欠けると思われ、上記のような定めは無効であると考えますが、いかがでしょうか。
投稿 みなと | 2006/09/21 16:44:45
A5
定款で対価が定まっていなければならないので,設問の定めは,無効になると思われます。

Q6
株主総会の決議取り消しについて確認させてください。
株主総会の決議取り消しの訴えの提訴権者は、旧法では単元未満株主は除かれていたと思いますが、会社法では明確な条文はあるのでしょうか。会社法831条には「株主等」とあり、「株主等」の定義は828条2項1号で「株主、・・・をいう。」とあります。単元未満株主の権利制限に関する会社法189条辺りにも根拠となりうる条文はないように思います。よろしくお願いします。
投稿 難しい・・・ | 2006/09/21 19:09:57
A6
単元未満株主でも,株主総会決議取消の訴えを提起することはできます。
ただし,定款で制限することはできます。

Q7
 いわゆる所在不明株主がいる場合に,新たな種類株式を定めた上で,現在発行している株式(現状では種類株式ではない)全部を全部取得条項付種類株式とし,所在不明株主の有する株式も含めて取得することは可能でしょうか?
(もちろん所在不明株主以外で特別決議は成立するものとします。)
 会社法の規定からすると可能なように思われるのですが,そうすると会社法197条の規定が置かれている意味はどこにあるのか疑問に思いました。
投稿 たつきち | 2006/09/21 22:25:20
A7
全部取得条項付種類株式の取得で,所在不明株主の有する株式も取得することができますが,他の株主と同じ内容の対価を支払う必要がありますので,所在不明株主の株式だけをお金に換えるのは難しいのではないでしょうか。

Q8
 A3についてですが、 「1000問の道標」にもあるとおり、取得対価を取得条項付株式として、その後一部取得を行い、その対価として目的たる種類株式を交付することにより可能ではないでしょうか。
 あるいは、全部の株式の内容を取得請求権付株式と変更して、その対価を選択的対価(目的たる種類株式を選択肢の一とする。)とし、株主に取得請求権を行使してもらう、という手法もありえるのではないでしょうか。
投稿 内藤卓 | 2006/09/21 23:10:25
A8
取得条項付株式の一部取得は可能ですが,取得の対象となる株式を恣意的に選ぶことができないので,一部の株主をターゲットにその内容を変更するという用途には向かないように思います(取得条項を付すには,全員の同意が必要ですが)。
 また,株主に選択権を与えることも,会社のイニシアティブではないので,設問の想定とは違うように思いますが,この場合は,特別決議で可能です(ただし,株主が取得請求権を行使しない限り,ある種類の株式の一部だけが別の株主になることはありません)。

Q9
取締役ABC(ABは夫婦) 代取A 株主D の会社があります。
代取Aが重要書類の横流しをしたので、Aを取締役から早急に解任をする場合、どうすれば宜しいでしょうか。
297条1項で株主総会を召集しても、298条4項で取締役会の決議が必要です。この場合、ABの協力は得られないので、決議を成立させるのは難しそうです。もし、召集の理由をA、Bの解任とすれば、ABは特別利害関係人となり、Cの決議のみで、株主総会を開くことは可能でしょうか?
やはり、上記のケースは裁判所の許可を得て株主自らが開催するしか方法は無いのでしょうか?
投稿 葉玉門下生 | 2006/09/22 0:18:45
A9
Dが全員出席総会でやる又は決議の省略でやるという方法をとれば,いいんじゃないでしょうか。招集の決定も,招集通知も不要です。

Q10
設立時に、無配の種類株式=甲種、無議決の株式=乙種株式の2種類を発行する場合、会社法32条1項2号に定める「設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額」は、種類ごとに異なる額を定めてもよいのでしょうか?
投稿 よっち | 2006/09/19 20:48:58
A10
 種類ごとに払い込む金銭の額を変えることはできます。

Q11
調べていた内容は、債務超過の会社どうしが合併できるのかどうか?ということです。改正前の商法ではできなかったようなのですが、新会社法ではできるようになったとあるのですが、この件はどう判断すべきでしょうか?どこかヒントだけでもあるようなサイトでもかまいませんし、情報を得る場所はあるでしょうか?
投稿 たかはし | 2006/09/20 0:14:30
A11
債務超過の会社どうしで合併することは可能です。
ライブドアブログで,記事にもしています。

Q12
利益剰余金の資本組入れについてお尋ねします。
現在、資本金300万の特例有限会社です。
貸借対照表の純資産には資本金と利益剰余金のみの会社です。
今回、株式会社へ商号変更するとともに、利益剰余金を原資に帳簿上の資本金を700万増資し1000万としたいと考えております。 
商業登記法69条では、資本準備金もしくは利益準備金又は剰余金の資本組入れの既定があります。
一方会計計算規則48条では資本組入れは資本準備金(剰余金)に限るとあります。 弊社は上記のように資本準備金(剰余金)は有りません。
A12
利益剰余金の資本組入はできません。商業登記法は,会計処理で,それが可能になった場合の念のための規定で,現状では,できません。

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2006年9月22日 (金)

新司法試験ランキング

新司法試験の合格発表がありました。
合格者のみなさん,本当におめでとうございます。

不合格だった方は,ショックは隠せないと思いますが,人生は一生勉強です。合格は通過点に過ぎません。
マラソンと同じで,通過点までのタイムで優勝が決まるわけではありません。大事なことは,長い人生をにらみながら,レースを組み立てること。通過点を思い通りのタイムでいけなかったら,それを前提に次の展開を考え,最終的に自己ベストをたたき出せばいいのです。

ところで,まさか
「よーし,夏にリフレッシュしたから,これからまじめに勉強するぞ」
なんて言っている人はいないでしょうね。
もし,そんな人がいるとすれば,
「てめえ,そんなことだから,合格しなかったんだよ。法律家をやめるまでは,毎日が勉強だって,あれほど言っただろ。これから,1日14時間勉強しないと来年も同じだぞ。」
という言葉を贈りたいと思います(ちなみに,もう秋になって1か月です。)

ところで,今回の合格発表は,法科大学院ごとの合格率が出せるようなデータが公表されていて,法科大学院としての「合格発表」がされているように思います。

私は,四谷大塚系の塾講師をはじめ,大学受験,司法試験受験と,いろいろな試験の講師をしてきましたので,本日は,「予備校講師の目から見た法科大学院ランキング」について書いてみたいと思います。
 こうした記事を書くと「試験勉強のために法科大学院の授業があるわけではない」というお堅い批判を浴びそうです。
 しかし,私は,新司法試験の問題は「法曹としての基本的な力」「考える力」「事務処理能力」を計るために練り上げられた問題だと思っていますので
「新司法試験に合格させることもできないような授業しかしてない法科大学院は,法曹としての基本的な力,考える力,事務処理能力すら,身に付けさせることができなかった学校であり,そういう法科大学院の単位は,司法試験の資格要件としてふさわしくない。そういう学校は,法科大学院ではなく,通常の大学院として運営するのが制度趣旨に合致する。」
という信念をもっていますので,不快に思われる方は,今日の記事はスルーしていただければと思います。

さて,試験という目からランキングを付けるとすると,気になるのは,最終合格率でしょう。受験者(出願者じゃないです)のうち,何人が最終合格したかということを示したランキングを示したいと思います。 なお,率だけでいうと,島根大学は1人中,1人で100%合格になり,1位ですが,統計的な見地から,ここでは10名以上の受験者がいる法科大学院を対象にランキングをみてみます。

また以下のランキングに計算上のミスがあったら,本当にごめんなさい。

まちがっていたら,後日,すみやかに訂正します。


<最終合格率ランキング(受験者10名以上)>
1位 一橋大 83.0%
2位 愛知大 72.2%
3位 東大 70.6%
4位 北大 70.3%
5位 大阪市立大 69.2%
6位 京大 67.4%
7位 神戸大 64.5%
8位 慶大 63.4%
9位 早大 63.2%
10位 名大 60.7%

司法試験を長年見てきた人には,1位から5位の第一グループの構成は,意外感があるのではないでしょうか。6位から10位の第二グループについては,京都,慶応,早稲田という旧試験の強豪校が名を連ねているものの,ちょっと物足りなさを感じます。神戸大学は,旧試験時代から実力のある大学でしたが,このポジションはかなり躍進していると思います。
 ちなみに,合格者数1位の中央大は,合格率は,54.8%であり,11位の千葉,12位の創価大に続く,13位です。その後,14位 山梨学院,15位 九大,16位 南山,17位 新潟,18位 横浜国立と続き,これより下は,全体の合格率48.3%よりも下になります(10名未満の受験者数を入れれば,島根,福岡,金沢,近畿,國學院,西南,白鴎も,全体よりも上の合格率です)。

次に,第一グループの「意外感」がなぜ生じたのか,その謎を解き明かしましょう。これは,「合格の仕方」に特徴があり,これが見えると,来年の新司法試験の対策が見えてきます。この謎を解く鍵は,択一合格率ランキングです。
<択一合格率ランキング(受験者10名以上)>
1位 一橋大 96.2%
2位 北大 94.6%
3位 愛知大 94.4%
4位 神戸大 93.5%
5位 創価大 92.9%
6位 大阪市立大 92.3%
7位 広島大 91.7%
8位 明治大 90.5%
9位 早稲田大 89.5%
10位 中央大 88.7%

ここでは,一橋大学の驚異の合格率は,ただただ拍手ですが,最終合格率の第一グループである北大,愛知大,大阪市立大の躍進の秘密は,択一合格率の高さにあることは一目瞭然です。第二グループの神戸大も,ここで4位と非常に素晴らしい成績を残しています。

 これに対し,11位以下は,11位 千葉大,12位 成蹊大,13位 都立大,14位 京大,15位 名大,16位 神奈川大,17位 慶大,18位 東大,19位 関西大,20位 甲南大,21位 大阪大であり,それより下は全体の択一合格率である80.7%以下になります。

 今年の択一の問題は,はっきりいって,旧試験に比べて,簡単な問題であり,これができなきゃ基本ができていないと言われても仕方がないようなものです。
 ところが,前評判の高かった大学のうち,京大は86.8%,慶応と東大は84.1%と,全体の合格率と比べて大したことはない成績になっており,これらの大学の法科大学院生は,本来持っている力(後で,分析します)を考えると
「基本的な知識の習得をおろそかにしていた人が多かった」
のではないかと推測されます。
 
さらに分析を進めて,択一合格者のうちで,最終合格した率をランキングにします。簡単にいえば「論文力」のランキングです。
<論文力ランキング(受験者10名以上)>
1位  一橋大 86.3
2位  東京大 83.9
3位  京都大 77.7
4位  愛知大 76.5
5位 慶應大 75.4
6位  大阪市立大 75.0
7位  山梨学院大 75.0
8位  北海道大 74.3
9位  横浜国立大 71.4
10位  名古屋大 70.8

この論文力ランキングでも,一橋は,東大を凌駕しており,新司法試験の真の王者は,一橋であることがはっきりと分かります。
東大も,3位の京大を大きく引き離す合格率で,択一の失敗を取り返し,なんとか第一グループに入り込んだというところです。
 これに対し,京都,愛知,慶応,大阪市立,山梨学院,北大は,論文力における第二グループを形成しており,愛知,大阪市立,北大は,択一と論文の総合力において,京大や慶応に勝ったという結論になります。
 ちなみに,11位は, 早稲田大 70.6,12位は,九州大 70.0,13位が 神戸大 69.0,14位 千葉大 65.2,15位 南山 62.5,16位 新潟 62.5 17位中央 61.8,18位 創価大 61.5 19位 東北 60.6 ,それより下は,全体の平均以下です。
 個人的には,少数精鋭で望んだ早稲田大に,やや物足りなさを感じますが,真の実力は来年明らかになるでしょう。

 ちなみに,択一合格率で素晴らしい成績をとった広島大は27.3,明治大は50.0であり,論文力の強化が課題ですね。

以上のように今年の新司法試験の実績を見る限り,
基本をしっかりと身に付けさせて択一に必ず合格すること
が合格の秘訣であると思われます。

来年は,受験者数が7000人くらいと,今年の3倍以上になりますが,択一合格者が同じ率で伸びるとは考えがたいので,「択一に合格すること」が今年以上に最終合格率に影響を与えます。
その意味で,今年,択一合格率が低かった東大,京大,慶大という大御所が,きちんと基本の習得に目を向けなければ,最終合格率の第一グループがさらに変動する可能性も大いにあります。

それでは,最後にお遊びのランキングをひとつ。
その名も,「生徒の伸び率ランキング」
まず,法科大学院の入試の難易度について,某予備校で公表されている模試の結果から私が偏差値を推定します。
次に,それぞれ法科大学院の最終合格率の偏差値を出します。
そして,前者と後者と見比べて,後者が大きい順にランキングを出しました。
つまり,「入学するのはやさしいけれど,最終合格率は高い」という法科大学院はどこかということです。
入学時の偏差値の算定がいいかげんですので,目安程度に見てください。
<伸び率ランキング(受験者10名以上)>
1位 愛知大
2位 創価大
3位 明治学院大8
4位 大阪市立大
5位 横浜国立大
6位 一橋大
7位 北海道大
8位 大東文化大
9位 日本大
10位 山梨学院大

ちなみに,慶応は27位,早稲田は28位,京大は31位,中央が32位,東大は35位です。
入学が難しいところは,最終合格率をかなり高くしないとこのランキングはきついわけですし,最終合格者数が少ないところは,来年は,大きく合格率を下げて,このランキングからもすぐに退場してまうリスクはあります。

具体的な数字は出しませんが,愛知大は,他をぶっちぎって,伸び率ランキング1位。
また,一橋は,入学時の偏差値がトップクラスなのに,ここでもランクインするところがすごい。
個人的には,一橋のすごさと,愛知大のがんばりに感心した試験結果の発表でした。

本日は,試験分析で疲れたので,質問コーナーは,明日にします。

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2006年9月21日 (木)

新株予約権の目的である株式の数

 ライブドア時代の9月10日の記事のQ1に
「新株予約権の内容の1つである「当該新株予約権の目的である株式の数又はその数の算定方法」(会社法236条1項1号)とは、新株予約権1個当たりの目的となる株式の数(たとえば1000株)でしょうか、それとも、その総数(1個当たりの株式数×新株予約権の総数)でしょうか。236条は新株予約権の基本的な内容を定めるものであり前者だと思うのですが、いかがでしょうか。」
という質問があり、それに対し、私が
「新株予約権1個当たりの目的となる株式の数です。」
と答えたことがありました。

それに対し、ある人から
「では、新株予約権の登記をするときも、1個あたりの目的となる株式の数を登記するんですか」
という質問を受けました。

この質問には、正直ドキッとしたのですが、結論から言えば、新株予約権の登記をする場合には、発行された新株予約権の目的である株式の「総数」を登記しなければなりません(これは、担当部署に確認してきました)。

つまり、取扱いは、旧商法上の取扱いと同じです。

整備法は、旧商法上の新株予約権の登記について、特に経過措置を設けておらず、また、あえて登記事項を変更する必要性もないことからすると、911条3項12号ロの「第二百三十六条第一項第一号・・・に掲げる事項」は、「総数」と解釈するべきだと思います。

では、この結論を導くためには、どんな解釈論を採るべきでしょうか。
私は、2つの解釈論がありうると思います。

1つ目は、9月10日の私の結論とは異なり、236条1項1号を「総数」と解釈することです(A説)。

この場合には、「総数」が新株予約権の内容となるので、238条1項1号で募集事項の決定をする場合にも、「総数」を定めることになります。

ただ、この解釈の難点は、募集の際、一部の引受人が払込をせず、打ち切り発行されたら、どうなるかが分かりにくいということです。

例えば、1新株予約権あたり、1個の株式を発行する新株予約権を1000個募集したとしましょう。

 この場合、236条1項1号を「総数」だと考えると、238条1項1号で募集事項で決定すべき「新株予約権の内容」としては
「新株予約権の目的である株式の数は、1000株」
ということになります。

 ところが、当該募集において、200株について払込がなかったため、800個の新株予約権しか発行されなかった場合には、登記すべき新株予約権の目的となる株式の数は、実際に発行された新株予約権についての「800株」となりますから、そこのところの説明がやや難しいです。

その場合、911条3項12号ロを「実際に発行された新株予約権についての新株予約権の目的である株式の数」と限定解釈することになるでしょう。

これに対し、第二の解釈論としては、236条1項1号を9月10日の私の結論と同様、1新株予約権あたりの株式の数と解釈した上で
(1)募集事項としても「1新株予約権あたりの株式の数」を決議するが
(2)911条3項12号ロについては、旧商法の取扱いを維持したものとして、「実際に発行された新株予約権についての新株予約権の目的である株式の総数」と解釈することです(B説)。

条文が舌足らずであったと反省していますが、実務上の取扱いとしては、どちらの解釈をとってもあまり違いはありません。

というのも、募集事項の決定において
 A説に立って、「株式の総数」を定めたとしても
 B説に立って「1新株予約権あたりの株式の数」を定めた上で、新株予約権の数を定め、その二つの数を乗じて「株式の総数」が決定できる場合であっても
単に表現の仕方の違いに過ぎず、どちらにしても、
「実際に発行された新株予約権についての新株予約権の目的である株式の総数」
を登記をすることはできるからです。

個人的には、911条3項12号ロを分かりやすく改正するのが望ましいように思いますが、当面は、上記のような取扱いになるものと思われます。

(質問コーナー)
Q1
株式の一部のみについての内容の変更については、総株主の同意が必要とのことですが、109条2項の場合はいかがでしょうか?
109条2項の場合、非公開会社のみという制約はありますが、決議(309条4項)は総株主の同意まで必要なく、一部の株主の議決権を奪うことができます。この場合、登記には反映されるものではなく、登記簿上は普通株式だけだが、定款をみれば議決権のない株主も存在することが分かるという理解をしています(違っていたら御指摘願います)が、109条2項を使えば、株式の一部のみについての内容の変更を総株主の同意なく実現できるのではないでしょうか。
投稿 葉玉門下生 | 2006/09/20 15:51:52
A1
おっしゃるように、非公開会社では、109条2項の定めを使えば、株式の一部のみについて、内容の変更をするのとほぼ同等の効果を生じさせることができます。
しかし、109条2項の定めを用いた場合、特定の株主が、他の株主に株式を譲渡すれば、その株式は、通常の取扱いがされることになる(109条2項の定め方次第で譲受人も、特定の株主にすることは可能かもしれませんが)のに対し、株式の内容の変更をすれば、譲受人も、同じ内容の株式を取得することになる点は、異なります。

Q2
吸収合併等の手続き及び新設合併等の手続きにおける株主への通知(785条3項本文・797条3項・806条3項)について質問させてください。
 まず、吸収合併の手続きにおいて、株式会社等は効力発生日の20日前までに株主に対し通知をする必要があります。(785条3項本文・797条3項)
 一方、新設合併等の手続きにおいて、株式会社等は決議の日から2週間以内に株主に対し通知をする必要があります。(806条3項)
 このように、吸収合併等の手続きと新設合併等の手続きでは、株主への通知の起算法及び起算日数が異なります。(吸収では、効力発生日の20日前まで。新設では、決議の日から2週間以内)
 この様な違いが生じる理由についてお教えください。
投稿 maru | 2006/09/20 17:47:44
A2
吸収合併は、合併契約で予め定めた効力発生日に効力が発生しますから、効力発生日を起算点として、その20日前という定め方ができますが、新設合併は、決議後に明らかになる登記日(登記予定日ではない)に効力が発生しますから、その日を起算点として20日前という定め方をすることができません。吸収合併方式の方が、早く効力を発生させることができるので、吸収合併の方だけ、そのような手続にしています。
なお、起算日数の点については、新設合併の方も、通知・公告から20日間の買取請求を認める(806条5項)ことになっていますから、吸収合併と実質は同じです。単に起算点から遡って通知・公告日を規定しているのか、起算点から後の日を通知・公告日とするかの違いによって、後者の場合には、「直ちにやれ」というのは、大変なので、2週間という余裕を与えているに過ぎません。

Q3
 想定事例は、経営者株主(100%所有ではない。)がその所有している普通株式の一部を種類株式に転換するものです。
 少数株主保護の視点から言えば、不利益を受ける株主の同意が得られるのであれば、敢えて株主全員の同意を要求する必要はないように思います。
 会社法上認めてよいか否か明らかではないが、株主全員の同意があればよいであろうという考え方もありますが、実務的には便宜ですが、個人的には若干疑問です。
 全部取得条項付種類株式を用いる等その他の手法により、同じ結果を実現できると解される以上、それによるべきだとも考えますし、また、それらの手法による場合特別決議だけで実現できる以上、本件でも特別決議で足りると解してもよいように考えます。
投稿 内藤卓 | 2006/09/21 1:19:11
A3
 全部取得条項付種類株式を用いる場合には、171条2項により、株主の有する株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければなりません(ここの「数に応じて」は、109条2項とは別にあえて定めている以上、比例的にという意味です)から、株式の一部だけに別の対価を渡すのは難しいと思います(端数や株式買取請求権は別として)。

Q4
「電子広告会社は電磁的公示の方法によるバランスシートの公開ができない。」
とありますが「電磁的公開あるいは公示」と「電子広告」のちがいがよく分かりません。どちらもインターネットによる公開だと思っていたのですが・・・教えてください。
投稿 ろーひー | 2006/09/21 1:25:42
A4
 まず、「広告」ではなく、「公告」です。前者は、商業的な広告ですが、後者は、会社法上、株主・債権者に知らせるための正式な「公告」なので、字が違います。
 この公告方法は、「定款」で官報、日刊新聞紙、電子公告の3つのうちのどれかを定めます(何も定めなければ、官報になります)。
 電子公告を定めた場合には、貸借対照表の公告も当然にインターネットでできますが、官報・日刊新聞紙を定めた会社は、本来、貸借対照表も官報・日刊新聞紙でしなければなりません。
 ただ、当該公告は、毎年、やらなければならないことなので、コスト削減のために、「電磁的公示」という公告とは別の制度を設けて、インターネットでできるようにしているのです。
 逆に、電子公告を採用している会社では、電磁的公示を認める意味がないので、適用が除外されています。

Q5
無記名式の取得条項付新株予約権の取得の対価が、記名式の新株予約権付社債(会社法下では発行可能になったと理解しています)、あるいは、記名社債である場合で、新株予約権証券が株式会社に提出されない場合の、社債原簿への氏名または名称・住所の記載についての規定がないのはなぜでしょうか?
記名式新株予約権付社債に付された新株予約権部分については、294条5項6項がカバーしていますが、社債部分についてはどうなりますか?681条以下にも相当する規定がないので困惑しております。また、社債原簿についてのそうした規定がないことで、どのような効果が生じるでしょうか?
A5
記名社債の場合、社債原簿に書こうと思っても書けないので、294条5項が類推適用されるのでしょう。

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2006年9月20日 (水)

株式の一部のみについての内容の変更

 株式の内容の変更の記事に対して、内藤卓さんから、次のような質問を頂きました。

「既発行の普通株式の一部を別の種類の株式に内容を変更する場合、従来は株主全員の同意があれば可と解されていましたが、本日のお話の論理からすると、この点についても株主総会の特別決議で可とお考えのように感じました。私は、会社法の下では特別決議で足りると解してもよいのではないかと考えていますが、いかがでしょうか。」

結論から言えば、その場合には、やはり「株主全員の同意」が必要であると思います。

内藤さんが質問されているのは、例えば、普通株式の株主について、ある株主はA種類株式、ある株主はB種類株式にするという変更のことですよね。

普通株式を丸ごとA種類株式に変更するのは、一昨日の記事に書いたとおり、原則として、株主総会の特別決議で足りますが、株主XにはAを、株主YにはBを、と分けて変更する場合には、「株主平等の原則」に配慮する必要があるでしょう。

 株主平等の原則は、種類が異なれば、別異取扱いを許しますが、同一種類の株式については、株式数に応じた取扱いを要請します。株主XにはA種類株式を、株主YにはB種類株式をという取扱いは、株式数に応じた取扱いということはできず、原則として許されません。

 もっとも、株主平等の原則は、少数派株主の保護のための制度なので、少数派株主を含め、株主が全員同意するならば、例外を認めても良いというのが、通説的な考えです。

 それで、従来から、株主が全員同意すれば、ある種類の株式をAとBに分けるということを許容してきましたし、会社法でも、許容することになると思います。

 本当言うと、今まで、全員同意でこのような変更を許してきたこと自体に若干違和感があり、会社法上も、そのような株式の内容の変更は、どんな手続でできるのか、不明確な点もあるので、あまりお勧めしたくはありませんが、むきになって否定するほどのことではないですよね。

(質問コーナー)
Q1
初歩的な質問で恐縮ですが、取締役・監査役の選解任についての種類株式の発行主体について質問がございます。
108条1項但書によりますと、委員会設置会社は、108条1項9号の取締役・監査役の選解任についての種類株式を発行することはできません。
そして、その理由として、例えば前田庸先生の『会社法入門〔第11版〕』(有斐閣、2006年)109頁は、「委員会設置会社においては、指名委員会が株主総会に提出する取締役の選解任に関する議案の内容を決定する権限を有し(404条1項)、このことと種類株主によって取締役を選任することとは矛盾するからである」としています。
ですが、何故、矛盾するのかがよく分かりません。
投稿 ロースクール生 | 2006/09/17 22:48:31
A1
取締役・監査役選任権付株式がある場合、「種類株主総会」で取締役・監査役を選任することになりますが、指命委員会は、「株主総会」に議案を提出する委員会です。
もし取締役・監査役選任権付株式を導入してしまうと、指名委員会は、仕事がなくなってしまいます。

Q2
 株式会社が持分会社に組織変更する場合、総株主の同意が要求されています(会社法第776条第1項)が、素直に読めば、株主総会の法定決議事項とされていないように読めます。すると、取締役会設置会社においては、定款で定めない限り、たとえ全員出席、満場一致であっても、株主総会では決議できず(第295条第2項)、個別に同意書を徴求しなければならないことになりますが、そういう解釈でしょうか。
 また、自己株式が存する場合、この総株主の同意には、発行会社自らの同意も含まれる(除外する規定がないので)ということになりますが、そういう解釈でしょうか。
投稿 内藤卓 | 2006/09/18 17:38:45
A2
全員出席満場一致の決議があれば、それを株主総会と見るかどうかは別として、全員の同意に当たります。その同意の証明方法を、同意書とするか、「議事録」とするかは、登記の問題ですね。

Q3
葉玉先生が以前、教壇に立たれていた、LEC司法試験課の最新パンフ(商品コード:LV06025)17ページに、12月開講予定の講座として、
『新会社法100問徹底整理講座』
『C-BOOK会社法徹底攻略講座』
が掲載されており、紹介文には、
・立法担当官の視点から、わかりやすく解説いたします。
・立法担当官以外の見解にも言及します。
との記載がありました。
もしかして・・・、上記2講座と担当者は、葉玉先生でしょうか??
投稿 輝光 | 2006/09/18 23:37:00
A3
残念ながら、私は、公務員なので、そのような連続的な講座を受け持つことはできません。

Q4
9/17のQ2にて質問させていただいた者ですが、ご回答有難うございます。
取締役会の決議の省略には、「成立」という概念がないと言うことで、以下のようなケースでは法律関係がどうなるのかと疑問に思いました(ちなみに、下記①~③とも、取締役の全員から同意があった後に、監査役が異議を述べたケースを想定してます。)
①決議があったものとみなされた日(監査役の誰からも異議がなく、取締役の全員の同意が揃った日)に議事録を作成し、その議事録を本店に備え置いたが、その後、監査役から異議が述べられた場合に、その議事録は意味のないものになるのか。
②決議があったものとみなされた日以降に、取締役が、当該みなし決議に基づく一定の行為を行った後に、監査役から異議が述べられた場合に当該行為の効力、
③監査役から異議を言わないことを確認したが、監査役の気が変わり、異議を述べた場合の効果
投稿 ひょっとこ | 2006/09/19 8:51:43

A4
①「意味のないものになるか」というのは、ちょっと抽象的な言い回しですね。みなし決議が効力を失った以上、議事録の備置義務は消滅すると思われます。
② 取締役会の決議がないにもかかわらず、代表取締役が行為をした場合の効力ですから、民法93条の類推適用だと思います。
③ 監査役が一旦「異議を言わない」と言った以上、錯誤等の特段の事情がない限り、異議権は、その時点で喪失するものと考えます。したがって、その後に異議を述べても無効だと思います。

Q5
お世話になっております。369条の「議決に加わることができる」取締役についてご質問します(既出でしたら申し訳ありません)。「議決に加わることができない取締役」は2項の特別利害関係を有する取締役だけでしょうか?それ以外にも「議決に加わることができない」という場面はあるのでしょうか?(現状では,ないという理解でよいでしょうか)
投稿 akiko | 2006/09/19 15:38:47
A5
特別利害関係人だけだと思います。

Q6
合併対価の柔軟化の施行延期について,千問912で「会社法の施行後1年間は,金銭を対価の全部または一部とする合併等も許されない」(附則4項関係)の「…合併等」の中に「対価を交付しない合併」は含まれるのでしょうか。先生のブログのバックナンバーでは,「無対価吸収合併はできると思います」と1行でコメントされていますが,その理由は旧法409条4項においても「支払を為すべき金額を定めたるときは」の文言から「支払を為すべき金額を定めない場合」も想定できるとの解釈が可能だから,ということでしょうか。
 また,仮に現時点において無対価吸収合併が許されないとの立場に立ったとしても,存続会社と消滅会社とがいずれも同一の親会社の完全子会社であった場合,実際問題として,会社債権者を害することも,株主を害することも全く想定できないので,かかる合併が問題となる場面は想定できないように思えるのですが,いかがなものでしょうか。
投稿 すみたにさん | 2006/09/19 20:39:58
A6
現在は、旧商法が適用されているのではなく、経過措置で、合併の規定を読み替えています。その読み替えられた規定を見れば、無対価合併ができることは明らかです。

Q7
設立時に、無配の種類株式=甲種、無議決の株式=乙種株式の2種類を発行する場合、会社法32条1項2号に定める「設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額」は、種類ごとに異なる額を定めてもよいのでしょうか?
投稿 よっち | 2006/09/19 20:48:58
A7
発起人の引受条件は、もともと均等性が要求されていません。
募集設立の引受人の条件は、均等性が求められますが、種類ごとに均等であれば足ります。

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2006年9月17日 (日)

株式の内容の変更

 先日ご紹介した日本私法学会シンポジウム資料(商事法務1775号)の中に、藤田友敬教授による「組織再編」が掲載されています。

 この論文は、組織再編の規律と問題点について詳細に分析された読み応えのあるものですが、この中で、全部取得条項付種類株式について
「株式買取請求権による救済さえ与えれば、株主の権利の内容を、特別多数決によって変更することが自由に認められることになるのかという疑問が生ずる。」
という問題提起がされています。

 普通株式を、別の種類の株式に変更したい場合には、いくつかのルートがありますが、①株主総会の特別決議で全部取得条項を付し、②その後に、株主総会の特別決議で、全部取得と他の株式を対価とすることを決定するというルートもその一つです。

 藤田先生は、この論文の中で、「適切な対価さえ払えば、どんな場合でも多数決によって株式の権利内容が変更できる」というルールは、多数株主による濫用のおそれがあるので、全部取得条項付種類株式の利用には、「正当な事業目的」といった制約をかける必要があるのではないかという提言をされています。

 多数株主による濫用を何らかの方法で回避すべきであるという問題意識は、まっとうなものであり、私も何らかの方法で防止すべきであると思うのですが、実は、この問題は、全部取得条項付種類株式だけにとどまるものではありません。

 例えば、株式の内容についての定款変更は、取得条項を付す場合や種類株主総会の決議を要しない旨の定めをする場合を除き、株主総会の決議・種類株主総会の決議という「多数決」によって行うことができます。
 この場合、116条1項2号に規定する変更以外は、株式買取請求すら認められないわけですから、
「株主全員の承諾もなく、株式の内容を変更してよいのか?」
という疑問が生ずる人も多いでしょう(実際、旧商法では、株主全員の承諾が必要であるという見解が有力だったと思います)。

では、この「多数決で株式の内容を変更してよい」というルールは、会社法で初めて採用されたものなのでしょうか?

私は、そうは思いません。
実質的には、旧商法において種類株式の発行を認められたときから、ずっと多数決によって、既存株式の内容の変更が行われてきたのです。

なぜならば、種類株式が存在する場合の株式の内容(=株主の権利の内容)は、一種の「ゼロサムゲーム」で決まるからです。

 例えば、普通株式(便宜上A種株式と言います)しかない会社において、今度、新たに議決権制限株式(B種株式)を定め、発行することになったとしましょう。
 その際、ついでに、既存のA種株式に対し、配当についてB種株式に劣後する定めを設ける定款変更をするために、どのような要件が必要でしょうか?
 この定めは「A種株式の内容を不利に変更するものだから、A種株式の株主の全員の同意が必要である」と考えるのでしょうか?

 しかし、A種株式の内容はそのままにして、B種株式の内容について配当優先条項を付けることは可能であり、その場合には、A種株式について種類株主総会の決議こそ必要であれ、株主全員の承諾はいりません。

 このように株式の内容は、配当にせよ、議決権にせよ、会社が株主に対して与えることができるものを、複数の種類株式で分け合うことで実現するもので、Aに多く与えれば、Bの取り分は減るという一種の「ゼロサムゲーム」なのです。

 ですから、種類株式の追加について、既存株主の権利の保護としては、株主総会と種類株主総会の決議(いずれも多数決で決まります)しか用意されていない以上、既存の株式の内容を変更する場合にだけ、変更される株式の株主の全員の承諾を要求する意味はありません。

 旧商法は、そこらへんのところに目をつぶって、条文上もはっきりしない形で規定されていたわけですが、会社法は、明確にできるところは明確にするという観点から、株式の内容を、株主総会・種類株主総会の決議という多数決で行うことができることを明示したものと解するべきです。

 では、藤田先生のおっしゃるように、そうした多数決主義を、多数株主が濫用したら、どうやって少数株主は保護したらよいのでしょうか?

 少数株主に、株式買取請求権が認められる場合であれ、そうでない場合であれ、こうした保護策は必要です。

私は、株式の内容の変更が多数株主にとって著しく有利な内容である場合には、
1 特別利害関係人の議決権行使により、著しく不公正な決議がなされたものとして、決議取消事由とする
2 現在の株式の内容について、少数株主にのみ不利益に変更した行為を株主平等の原則に違反するものとして(この場合は、株式の内容そのものの不平等を問題にするのではなく、現在、保有している権利の内容の変更行為の不平等を問題にするので、109条1項違反はありえます)、当該定款変更決議は無効とする(決議内容の法令違反)
というのが妥当な保護策であると考えています。

 また、多数株主が違法に少数株主の権利を侵害するために株式の内容の変更を行ったのならば、提案者である取締役には任務懈怠責任、多数株主には不法行為責任を追及することも可能でしょう。

 なお、藤田先生のご提案の背景には、全部取得条項付種類株式の取得の際には、組織再編のときのようなシナジーを含めた「公正な価格」が算定されないのではないかという危惧感があるようです。
 しかし、少なくとも条文上は、組織再編時と全部取得条項付種類株式の取得時の買取価格は、ともに「公正な価格」となっており、解釈としては、後者についても、シナジーを含めるのは当然だと思います。この点は、論文の中でご指摘のあるとおり、運用の問題で解決すべき問題でしょう。

 また、その場合、決議取消事由である「著しく不公正」を考える際の要素として、多数株主によるシナジーの独占を加味して判断することもできると思います。

 他方、藤田先生のご提案のように全部取得の要件として「正当な事業目的」を付加することについては、反対株主がいなかったり、株主間の不平等が全く生じない場合でも、目的が正当といえない場合には、決議の法令違反として決議が無効になってしまうというのでは、ちょっと厳しすぎるように思います。

 既存株主の権利保護の手段として
①既存株主の承諾を要件とする
②株主総会・種類株主総会の決議とした上で、取消事由・無効事由の問題として処理をする
③行為自体に一定の制約をつける
等いろいろなアプローチがあると思いますが、私は、今のところ、②で十分対応可能ではないかと考えています。

(質問コーナー)
Q1
反対株主の株式買取請求について質問させてください。
785条1項2号は、吸収分割会社が簡易組織再編をする場合に反対株主の株式買取請求を認めない例外を定めています。
これは株主にとって不利益がほとんど生じないからなのでしょうか?
そうだとすれば、なぜ他の簡易組織再編で 株式買取請求をみとめない例外規定を定めないのでしょうか?例えば797条で受け手側が簡易組織再編をする場合に 反対株主の買取請求を認めない例外を定めてもいい気がするのですが・・・
個人的には 簡易組織再編の受け手側の場合も 株主にとって不利益がほとんど生じないので 797条は例外を定めてもいいのでは?と思っています。
投稿 maru | 2006/09/15 4:39:08
A1
同様の例外は、事業の一部譲渡でも置かれていて、簡易事業譲渡の場合には、株式買取請求権の行使は認められません。
つまり、会社法は、送り手側の簡易については、株式買取請求権の行使は認めず、受け手側の簡易には、株式買取請求権を認めるという整理をしています。
受け手側の簡易も、株式買取請求権を不要とする立法論は、ありうると思います。
ただ、送り手の会社は、権利を失い、義務を免れる方であるのに対し、受け手の会社は、権利を取得する反面で、事業に伴う義務を負う方です。事業の承継に伴い、「そんな事業を抱え込むと、これまでの事業の利益まで食われてしまう」という受け手側の株主の利益保護を会社法は、重視しているのだと思います。

Q2
取締役会の決議の省略(会社法370条)について教えてください。
本提案がなされた直後に、当該提案に対して監査役が異議を述べる間もなく、取締役の全員がさっさと同意の意思表示をした場合にも、みなし決議は有効に成立するのでしょうか?たとえば、取締役の全員から同意があり、その時点では監査役の誰からも異議が述べられていないということで、みなし決議が成立し、その直後に監査役から異議が述べられた場合には、成立したはずのみなし決議は取り消されてしまう(無効になってしまう)のでしょうか?
投稿 ひょっとこ | 2006/09/15 13:00:37
A2
「成立」という概念はないと思います。監査役の異議は、いつまでも述べることができ、述べたら、みなしの効果が消滅するのだと思います。
ですから、実務的には、監査役が、異議を言わないことを確認すべきなのでしょうね。

Q3
Q8とA9(←番号不一致)についてですが、商事法務誌1739号(H17.8)の以下の記事の相沢さん見解との関係はいかがでしょうか?
投稿 Bank-N | 2006/09/15 14:34:33
A3
相澤さんに確認したわけではありませんが、記述間に、矛盾はないと思います。発行可能株式総数を定款で定めることは、会社法上認められていて、問題は、その定め方として、どの程度まで許容されるかということだと思うのです。仮に、発行可能株式総数自体が変更されないとしても、内部的なルールとして、あえて「消却された分については、新規発行は許さない」と定めることには合理性がある場合もあるので、その定めを無効とする必要はないように思います。その場合、「発行可能株式総数」は変わらず、忠実義務を解して、取締役を拘束することになるでしょう。

Q4
利益相反取引(365条)について教えてください。
例えば、ある会社(A社)が、親会社(B社)が有するA社子会社(C社)の株式をB社から有償取得するケース(しかもC社は債務超過会社)で、A社の平取締役であるDが、B社の代表取締役を兼ねている場合、本件取引は、取締役DとA社との間での利益相反取引に当たり、A社の取締役会での事前承認が必要となるのでしょうか?
投稿 ひょっとこ | 2006/09/15 16:58:43
A4
A社の契約の相手方は、B社代表取締役Dということですね?。そうすると、A社の取締役Dは、第三者B社のためにA社と取引をすることになりますから、利益相反の直接取引になります。
A社は、事前承認が必要です。

Q5
合同会社について株式会社のいわゆる優先株式(優先配当や議決権の制限)のようなことを考えているらしいのですが可能でしょうか。
株式会社は法108条に規定があります。
合同会社は利益配当(損益分配)は法621条以下に残余財産の分配は法666条に規定があります。しかし議決権を制限できる規定は見あたりません。
規定がないので合同会社の社員について議決権の制限はできないと解してよろしいでしょうか(制限してはいけないという規定がないからできるという人もいますので)。
投稿 keipyon | 2006/09/15 20:12:32
A6
業務執行権についても、定款で別段の定めができます。

Q7
A銀行の代表取締役が、B会社の取締役をしているケースです。A銀行が通常の融資条件でB会社に融資する場合、A銀行では、利益相反にあたらない通常の融資であることを確認するために、この融資に対して取締役会の事前承認がいるのでしょうか。
投稿 勉強中 | 2006/09/15 21:53:21
A7
B会社にとっては、利益相反になるが、A銀行にとっては、利益相反取引にならないと思いますが、A銀行の取締役会の事前承認を採るべきかという質問でしょうか?

Q8
商事課の一係長さんが最近書かれた「会社法施行後における商業登記実務の諸問題」で、割当の決議が省けるような書き方をされていたので期待したのですが・・・・。あれは、募集事項の決定と割り当ての決定を同じ機関で行う場合に限るのだと理解します。
安易に質問していけないとおもいつつ、今ひとつ質問させてください。
会社法32条1項3号の「及び」のことですが、正しい理解は次の何れでしょうか?
設立時、定款に資本金を決めていなければ、①資本準備金を計上しない場合であれば、資本金決定のための発起人の同意は必要なく決めてよい。②資本準備金を計上しない場合であっても、資本金を発起人の同意をもって決定する必要がある。
投稿 サル頭 | 2006/09/15 22:21:53
A8
割当の決定については、私の見解が絶対ではないので、法務局で受けてくれるのならば、それは、それでいいのではないでしょうか?
32条1項3号については、②でしょう。

Q9
有限会社への出資金は、会社法施行後においても「出資金」という科目で貸借対照表に表示してよいのでしょうか?実体が株式会社であるため、「有価証券」や「投資有価証券」等の科目に変更すべきでしょうか?
また、特例有限会社と株式会社に名称変更した有限会社で出資金の表示は変わりますか?
投稿 tito | 2006/09/15 23:53:40
A9
会社法の問題ではないので、会計慣行しだいです。

Q10
「新・会社法100問」の「61.競業避止義務」の解答例一.1.(一)に、「(会社)Aは、(競業行為をなした取締役)甲に対して、Aに損害が生ずる恐れがあるか否かに関わらず、当該義務の履行として競業行為の差止を求めることができる」旨の記述があります。
「会社に著しい損害が生ずる恐れがある場合」に§360、§385等による差止請求をなしうることは明らかですが、かかる恐れがなくとも会社自身が競業行為をなした取締役に差止請求をなしうるというのは、§356Ⅰ①、§365Ⅰの当然の帰結ということなのでしょうか。
「当然に会社自身が差止を請求できる」ことと、「著しい損害の恐れがある場合にのみ監査役等が§385等で差止を請求できる」ことの関係につき頭を整理できず、質問させて頂きました。
投稿 Nobu | 2006/09/16 4:55:09
A10
 監査役による違法行為差し止め請求権は、監査役が、訴訟担当として、取締役の違法行為の差し止めを求める場合の一般的規定です。
 これに対し、100問のQ61で照会した考えは、「会社と取締役との間の委任契約の内容として、競業避止義務が存在するはずである」ということを前提に、会社が、委任契約に基づき不作為を請求することができるというものです。
 会社が取締役と委任契約を締結する際に、会社法上の競業避止義務の範囲を超えて、競業避止義務を定める場合もありますよね(たとえば、取締役を退任した後、5年間は競業をしてはならない等)。この場合、その取締役が、当該契約に違反して競業をはじめれば、損害賠償のほかに、契約上の差し止め請求をすることができると思います。
 とすると、会社法上の競業避止義務についても、その範囲内で、委任契約の内容に取り込まれていて、一般的な規定である監査役による違法行為差止請求をすることができない場合であっても、会社は、委任契約に基づく差し止め請求をすることができるように思います。
 この場合、会社の訴訟の相手方は取締役なので、監査役が会社を代表します(訴訟担当ではありません)。

Q11
会社法と関係ないのですが、先生のライブドアのブログに部分社会の法理の話題がでており、気になることがあるので、質問させてください。
一般的な理解として、ある事件が法律上の争訟であっても、司法審査が及ばない限界の一例と理解していたのですが、それで良いのでしょうか?
ある人に、富山大学事件判決の「あらゆる法律上の係争を意味するものではない」という一文から、判例通説は法律上の争訟でないから審査権が及ばないと結論付けているといわれ、困惑しています。
しかし、法律上の争訟は具体的事件性の有無の話であり、具体的事件性があっても、司法審査が及ばないというのが判例通説の部分社会の法理の理解でよろしいのですよね?
A11
 「司法審査が及ばない」という言葉の意味は、多義的です。
少なくとも、①司法権が及ばないから、訴え自体が不適法となる、という意味と②裁判所は、部分社会(私人)の判断を尊重し、その判断について当不当を判断しない(訴えは適法であり、請求棄却等の実体判断をする)という意味の二義があります。
 法律上の争訟ではない(その一内容として具体的事件性がないということが含まれます)場合には、①の意味で「司法審査が及ばない」ことになります。
 部分社会の法理については、概念的には、①の問題に純化したいところではありますが、実際の裁判では、②の問題として取り扱われる場合が多いように思います。質問の中に「具体的事件性があっても、司法審査が及ばない」という表現がありますが、②の意味で言う場合には、まさにその通りです。

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2006年9月14日 (木)

日本私法学会

 このブログのデザインを、「次の日ケロリ」にしたところ、緑は目が痛いというご指摘を受けました。
 私は、「次の瞬間ケロリ」というくらい立ち直りが早いので、このケロリ君に親近感を覚えていましたが、確かに、私も目が痛い(笑)。
 その上、「次の日ケロリ」という感じで痴漢をする人もいるので、あまりケロリとしてばかりはいかんのではないかと思い、ブログのデザインを変えることにしました。

 ところで、今度、10月9日に大阪市立大学で開催される日本私法学会で「新会社法の意義と問題点」というシンポジウムが開かれるそうです。岩原先生をはじめ、宍戸先生、野村先生、神作先生、弥永先生、藤田先生という豪華メンバーですので、会社法を巡る熱い議論が繰り広げられるはずであり、非常に期待しています。
 できれば、私も見に行きたいと思っているのですが、私の休日の処分権は、家族が有しており、私は無権限者です。今のところ、そこら辺が、私の出席についての最大の障害となっています。
 でも、会社法に興味のある方は、見に行かれると本当に面白いと思いますよ。飛び入りでも見にいけますし、会社法のシンポジウム以外にも興味深いシンポジウムや研究発表が多数行われます。
 
 私は、いけるかどうか分かりませんが、商事法務1775号に掲載されたシンポジウムの資料を、「なるほど」とか「そうかなあ」とか、ブツブツつぶやきながら、楽しんで読んでいます。
 ここで指摘されている会社法の問題点についての私なりの答えを、そのうち、このブログでも紹介したいと思いますが、本日は、飲み会で頭がもうろうとしていますので、ここまでということで。ちなみに、もうろうとしながらも、飲んだ帰りの電車の中では、両手でつり革を掴見続けていたのは、防衛本能でしょうか。

(質問コーナー)
Q1
 会社法349条3項の「取締役の互選」とは取締役が複数いる場合は取締役の全員一致という解釈でよろしいでしょうか?
A1
 互選は、取締役の過半数で決めます。

Q2
親子関係に無い株式会社2社があるのですが、無増資にて合併を予定しております。そのため、合併対価を金銭として消滅会社の株主に与える予定ですが、この金銭を0円として合併し、消滅会社の資産をすべて剰余金に組み入れることは出来るのでしょうか?出来れば、存続会社の資本金を増やさず剰余金を増やしたいという考えです。
投稿 法務1年目 | 2006/09/14 1:30:22
A2
無対価合併では、資本金を増やすことはできません。ただし、のれんになります。

Q3
法務局から非公開会社の取締役設置会社の株式募集の際の割当は取締役会が決定するので(会社法204②)、株主総会で募集事項を決定する時一緒に割当の決議を行っているケースであっても、別に取締役会が必要だと指導を受けましたが、定款変更も可能である特別決議で割当決定を行っているのだから取締役会は省けると思うのですがどうでしょうか?
あと、4月頃のQAで株券廃止と譲渡制限付与の決議を同時に行い、譲渡制限の効力発生日を調整することで株券提供公告せずに行えるのではないかとする件は調整されたのでしょか?
投稿 サル頭 | 2006/09/14 13:05:18
A3
割当は、定款に別段の定めがなければ、取締役会の決議です。特別決議が取れるのなら、定款で別段の定めをすれば、できたのですが。
なお、公告の件は、すっかり忘れていました。

Q4
会社法463条1項に「・・・効力を生じた日における分配可能額を超えることにつき善意の株主は、当該株主が交付を受けた金銭等について・・・求償の請求に応ずる義務を負わない。」とあります。
この「善意」の判定について、少し具体的に教えてくださいませんでしょうか。
例えば、定時株主総会の決議による剰余金の配当の場合、当該株主総会の招集関係書類を基に計算すると分配可能額が不足していることが明らかであった場合(最終事業年度の末日後も分配可能額は増加していないものとします)、その招集関係書類を受け取った株主は善意となるのかどうか、というようなことです。
先生のお考えでは、例えばどのようなケースで、株主は善意となるのでしょうか。
投稿 みひろ | 2006/09/14 0:43:55
A4
事実認定としては、悪意と認定されることはあるでしょうが、貸借対照表を見ていないとういう株主だっているかもしれませんから、善意の場合もありうるでしょう。
もっとも、通常は、粉飾決算がされていて、分配可能額が本当はないのに、あるように見せかけている場合が、善意の典型例でしょう。

Q5
ところで、投稿者のnameをみると「Sammy」と書いてありました。 これは、ネットの世界での先生のお名前でしょうか?
投稿 実務者はつらいよ | 2006/09/14 9:56:46
A5
基本的には、私は実名主義なのですが、ニックネームを入れろというところが多いので、そういうときは、Summyと名乗ります。でも最近、Sammy's Cafeというのをやっているので、Sammyにしました。

Q6
貸借対照表の公告に代わる電磁的方法による措置を利用する場合に、旧商法下では取締役会決議を必要とする旨明言がありますが(旧商283⑦)、会社法では特に決定機関が定められていません(440③)。
これは、業務執行の決定として当然に取締役会決議を要する趣旨という理解でよろしいでしょうか。それとも、単なる業務執行として代表取締役が決定できると解することも可能でしょうか。
投稿 yasuko | 2006/09/14 15:12:44
A6
原則は取締役会で決定しますが、委任することはできます。

Q7
累積投票によって選任された設立時取締役(89条)は、株式会社の成立の時までの間、解任できないということでよろしいでしょうか?
91条、92条に解任の規定がありますが、どちらにも当てはまらない気がします。
成立後に解任すれば、十分でしょ。ということで、規定しなかったのでしょうか?
投稿 パラリーギャル | 2006/09/14 16:41:32
A7
累積投票で選任する場合も、88条により選任したことになるので、91条で解任することができると思います。

Q8
当社は法施行後最初の総会をまだ行っておらず、定款の発行可能株式総数の規定には「株式消却が行われた場合はそれに相当する株式数を減ずる旨」の但書があります。
千問Q248では当該定めは有効とありますが、『会社法施行前後の法律問題』(P18の3行目~)では「定款の記載事項について、会社法に相当する概念等が存在しない場合には、特に経過措置ない限り、その規定は効力を失う」旨の記載があります。
当社の場合は施行後最初の総会をまだ行っていないので、今は但書の規定は効力がない。しかし最初の総会後そのまま但書の規定を残しておくと効力が生ずると考えればよいのでしょうか。
投稿 つよしです | 2006/09/14 17:58:36
A9
最初の総会を開催するかどうかにかかわらず、ただし書きは有効であると思います。

Q10
旧商法では責任一部免除規定の設定には、監査役の業務権限の範囲は関係なかったところ、会社法では責任免除の規定を設置できるのは監査役設置会社のみとなりました。当該会社は、会社法施行当時、監査役の業務権限の範囲は会計監査のみであり、このたび定款を変更して、会社法に基づく責任免除の規定に変更する場合には、監査役の業務権限についても(会計監査)から(会計監査+業務監査)に変更し、監査役の退任・選任の手続きが必要になるのでしょうか?
A10
取締役会による一部免除をやるならば、監査役の業務監査権限が必要です。
業務監査権限を与える場合には、監査役は任期満了で退任しますので、選任の必要があります。

Q11
定款変更しなかった場合の旧規定の効力は、施行日前の行為に基づく損害賠償責任についてだけ及ぶのか?それとも施行日後の行為に基づく損害賠償責任にも及ぶのか?
投稿 眠り猫 | 2006/09/14 21:02:30
A11
施行日前の行為に基づく損害賠償責任についてだけ、旧規定は適用されます。

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2006年9月13日 (水)

財源規制違反の効力(補足)

財源規制違反の配当の効力について、商事法務で論文を書いたのですが、その後、2点ほど、この問題について質問を受けたので、今日は、有効説にたって、その質問にお答えしたいと思います。

疑問1 財源規制違反の配当を有効だとすると、違法な配当決議がされた場合に、株主が、違法な配当を請求することができることになるので、おかしい。

 有効説にたっても、株主は、違法配当を請求することはできません。財源規制に違反する配当は、461条1項に違反するので、株主の配当請求権の行使に対しては、分配可能額がないことが抗弁となります。有効説は、配当してしまったら、有効と評価すると言っているだけです
 会社法の解釈では、行為規範と評価規範という二つの面を区別して考える必要があります。
 行為規範というのは、これから行為を行う際に、どのような行為を行うべきかというルール、評価規範というのは、既に行われた行為について、その効力をどのように評価するかというルールのことです。
 たとえば、株主総会の特別決議なしで、株式の有利発行をやろうとするときに、行為規範としては、有利発行をすることは違法であり、株式発行の差し止めの対象となります。 しかし、一旦、株式が発行されてしまえば、その発行は有効と評価されます。これが、行為規範と評価規範の違いです。会社法は、法律関係の安定の見地から、行為規範と評価規範が別れる論点が多く、違法配当もその一つだと思うのです。

 つまり、配当前であれば、「財源規制違反の配当をすべきではない」という行為規範が働くので、取締役の違法行為差し止めの対象となるが、一旦、配当されてしまえば、これを有効と評価して、株主と業務執行者の責任により債権者を保護する。これが、有効説のアプローチです。

疑問2 財源規制違反の決議は、株主総会の決議無効の典型例なのに、有効説が、その決議を有効と考えているのは、おかしい。

 有効説は、必ずしも財源規制違反の配当をした株主総会の決議を有効だとする見解ではありません。疑問1で述べたとおり、配当が行われた場合には、財源規制に違反していても、その配当は有効となるという見解です。
 ただし、私は、無効説のように、単純に「株主総会決議は、内容が法令違反なので、無効」と考えているわけではありません。

 461条1項は、「次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。」と規定しています。

 ポイントは、「その効力を生ずる日における」というところです。

 つまり、①株主総会の決議時の分配可能額を超えていなくても、配当の効力発生日の分配可能額を超えるのならば、配当はできないし、②株主総会の決議時の分配可能額を超えるような配当決議であっても、配当の効力発生日の分配可能額を超えないならば、配当してもよいのです。

無効説は、株主総会の決議が無効だから、それに基づく配当も無効であるという旧来の論理の延長線上にあるように思いますが、「利益配当は、年1回だけ」という旧商法では、それで対応できても、配当の回数が無制限になった会社法では、その考えでは対応できません。

 たとえば、6月1日の時点で分配可能額が1000万円の会社が、その日、株主総会で総額800万円の配当決議をし、効力発生日を7月1日にしたとしましょう(第一配当)。この決議は有効です。
 ところが、6月15日に株主総会を開催し、その日を効力発生日として500万円の配当決議をする(第二配当)とどうなるでしょうか。第二配当の効力発生日である6月15日の時点では、まだ第一配当がされていないので、分配可能額は1000万円であり、第二配当は、461条1項に違反しません。
 そして、第二配当で500万円を配当すると、その時点で分配可能額は500万円になるので、第一配当の効力発生日である7月1日の時点では、800万円の第一配当は、その日の分配可能額を超えてしまいます。
 この場合、無効説は、どのような論理で、第一配当の効力を説明するのでしょうか?
 
 逆の例も、あります。
 たとえば、6月1日の時点で分配可能額が1000万円の会社が、その日、株主総会で総額1200万円の配当決議をし、効力発生日を7月1日にしたとしましょう(無効説ですと、その決議は無効であると考えるでしょう)。
 しかし、6月15日に株主総会を開催し、その日を効力発生日として500万円の資本金の減少を行い、剰余金を増加させると(債権者保護手続きは終了しているものとします)、6月15日に分配可能額は1500万円になり、7月1日の1200万円の配当は、分配可能額の配当になります。

 このように財源規制違反の問題は、配当の効力発生日における分配可能額を基礎に論理を構成すべきでなのです。

 仮に、無効説が、財源規制違反の配当の効力を、株主総会決議の効力とダイレクトにリンクさせて考えているとすれば、会社法上、対応できない事例が出てくるものと思われます。
 これに対し、有効説は、株主総会の決議の有効・無効にかかわらず、配当の効力発生日における分配可能額を超えていたら配当できないという行為規範があることを前提に、その行為規範に違反して配当しても、その配当は有効と評価するという見解ですから、無効説のような問題は生じません。

 なお、財源規制違反の配当を内容とする株主総会の決議が、どんな場合でも無効とならないかというと、そうではありません。例えば、株主総会の決議の日を配当の効力発生日として、財源規制違反の配当をすれば、決議内容の法令違反で決議は、無効になるでしょう。決議の日と効力発生日が異なる場合でも、配当の効力発生日に配当額が分配可能額を超えることを避けることができないような決議であるならば、決議が無効とされることになるでしょう。ただし、その場合でも、配当してしまえば、その配当は有効と評価されることになりますが。

 以上のように、会社法では、剰余金の配当の回数制限を無くしたり、財源規制について配当と自己株式の取得とを統一的に規律することにしたために、様々な場面を想定した財源規制の在り方が検討され、現在の条文に結実しています。

 有効説は、こうした検討の結果を最も合理的な解決が得られるということで主張しているものなので、できれば、私が論文であげた事例や今日ブログであげた事例において、無効説だと、どのような結論を採るのかを知りたいところです。

(質問コーナー)
Q1
子会社による親会社(連結配当規制適用会社)株式の保有に関して、2006.8.3のQ11で回答されていましたが、この点に関する「千問の道標」等の解説をどう理解すべきかについて、いまだ疑問があるので、改めて質問させていただきます。
千問Q237では、「135条3項は、・・・親会社の株式を取得した子会社について、これを相当の時期に処分すべき・・・。」「当該親会社株式の市場価格等の諸事情を勘案して、・・・状況によっては、相当長期間保有することになる場合もあるものと考えられる。」と原則を解説したうえで、さらに、「連結配当規制適用会社については、・・・相当の時期についても、より柔軟な解釈が可能となる・・・。」とされています。(同趣旨のより詳細な解説として、商事法務1760号7頁、1767号45頁(共に相澤・郡谷)もあります。)
とすると、連結配当規制適用会社については、子会社による保有に伴う実質的な弊害がなく、かつ、経営判断として合理的な理由がある場合には、1年以内あるいは数年といった数値的な目安によることなく、相当期間保有し続けることも違法ではないと考えますが、いかがでしょうか
投稿 平蔵 | 2006/09/13 0:44:08
A1
そうですね。1年以内とかいう数値目標はないですね。1年以上保有し続けたから、即、違法となるということはありません。

Q2
子会社による親会社株式取得規制の例外として、会社法施行規則23条12号は、「親会社株式を発行している株式会社(連結配当規制適用会社に限る。)の他の子会社から当該親会社株式を譲り受ける場合」と規定していますが、ここでの「他の子会社」とは、連結子会社および持分法適用子会社に限られると解釈すべきでしょうか。あるいは、文言どおり、非連結の子会社も含まれていると解釈すべきでしょうか。
投稿 平蔵 | 2006/09/13 0:46:42
A2
うーん。23条12号は、連結配当規制が及んでいる場合には、子会社が、他の子会社が既に保有している親会社株式を取得しても、資本の空洞化が進むわけではないという趣旨によるものなので、非連結の子会社は、その趣旨からは逸脱してしまいますねえ。ちょっと調整マターですね。

Q3
書籍についてお聞きしたいのですが、会社の合併手続(手順)について書かれているお奨めの書籍などありましたら教えて頂けないでしょうか?
投稿 www | 2006/09/13 1:13:38
A3
実務本は、まだないように思いますが、郡谷さん達が書いた計算規則の詳解の組織再編のところは、一番、分かりやすいです。

Q4
 取締役会非設置会社についてです。
 会社法202条3項1号の「取締役の決定」とは取締役が複数いる場合は、「取締役の過半数の一致」という解釈でよろしいのでしょうか?
A4
 そうえす。

Q5
 債権者保護手続きについてです。
 例えば、会社法789条2項の官報の公告ですが、会社債権者が一人もいない場合は公告・債権者への個別催告は不要と考えてよろしいのでしょうか?特に個別催告については、債権者がいないわけですから、催告しようがないと思われます。
A5
公告は、不法行為債権者がいるかもしれめんから、必要です。
催告は知れている債権者がいないので、不要です。

Q6
相続人等に対する売渡し請求についてです。
会社法177条2項・5項で売渡し請求後20日以内に価格決定の申立てがない場合、請求の効力が失われるとのことですが、失効時点で、未だ176条の1年以内であった場合、再度請求可能でしょうか(既判力類似の効力があるのでしょうか)?
A6
再請求は可能でしょう。

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2006年9月12日 (火)

ライブドアから承継された質問

まず、ライブドアで受けた質問を答えておきますね。

(質問コーナー)
Q1
特例有限会社を株式会社にしようと考えております。この定款変更と同時に株式分割を考えていますが、公告が必要なので事前に(有限会社のときに)株主総会で株式会社に移行することを条件として株式分割決議をし、それまでに基準日公告をすませることによって、株式会社移行決議日に株式分割は可能でしょうか?もしくは条件付としなくても、有限会社のままで株式分割及びそれに伴う発行可能株式総数の変更は可能なのでしょうか?事前に株式分割決議が可能な場合、取締役一人で株式分割決議をすることは可能でしょうか?
Posted by 飯島 at 2006年09月10日 23:44
A1
特例有限会社は、株式分割・発行可能株式総数の変更をすることができます(中小会社・有限会社の新・会社法145ページ)。
株式分割は、株主総会の普通決議ですので、取締役一人ではできません。

Q2
取締役に対するストックオプションの発行決議につきお尋ねいたします。
職務の報酬として取締役会決議とするにせよ、「念のため」総会で有利発行決議をとるにせよ、実際の割当者の氏名とそれぞれの割当数は取締役会で決議することになると思います。この場合、割当てられる取締役は特別利害関係人となるのでしょうか。
そうだとするとたとえば取締役10名の会社で10名全員に新株予約権を割当てる場合、取締役会の議案は10本に分けて、「取締役Aに新株予約権を付与する件」では「Aは本議案に関し特別の利害関係を有するので議決に参加しなかった」とし、以下これを10人分繰返すのでしょうか。あるいは、議案は1本で、10人分の割り当てを行い、「なお取締役AからJは、それぞれ自己に対する新株予約権の割当に関し特別の利害関係を有するため、自己に対する割当の部分については議決に加わらなかった」とまとめてしまってよいものでしょうか。
Posted by CCC at 2006年09月11日 10:30
A2
割り当てられる取締役は、特別利害関係人になると思います。
ですから、10本に決議を分けることになるでしょう。
議案が1本という構成は、難しい感じがします。

Q3
発行可能株式総数と発行可能種類株式総数との関係についての質問に回答いただいた者です。
千問の道標Q78では、「発行可能株式総数と同数発行されているA種類株式のすべてを取得してB種類株式を発行することも可能である」旨記述がありますが、この場合、取得したA種類株式と新たに発行するB種類株式を合わせるとどうしても総授権枠を超えることになるかと思います。
この記述は、取得したA種類株を消却することを前提とした記述という理解でよいでしょうか。
Posted by yasuko at 2006年09月11日 12:37
A3
発行可能株式総数と同数が既に発行されている場合には、取得と同時に消却して、B種類株式を発行することになるでしょう。

Q4
設立時代表取締役の選定方法(千問の道標Q58)についてくどいのですが少し質問させて下さい。
非取締役会設置会社では定款に規定することで様々な選定方法を採ることが可能ですが、取締役会設置会社では47条1項により設立時取締役による互選以外の選定方法は認められないのではないですか?
また、取締役会設置会社で設立時取締役による互選がされない場合はそもそもありえないのではないですか?
だとすれば、40頁図表1-4の2、3行目も非取締役会設置会社と取締役会設置会社とを区分し、書かれている内容は全て非取締役会設置会社に限るべきではないでしょうか?
Posted by chigmog at 2006年09月11日 15:11
A4
まず、取締役会設置会社において、定款の定めにより、代表取締役を選定することができるかという点については、295条2項で可能だと考えます。
とすると、定款の定めにより、設立時代表取締役を選定することも可能であると考えるべきです。
したがって、図表は、正しいです。
もっとも、取締役会設置会社は、47条1項があるので、各自代表のままでは、設立の登記ができませんから、事実上、取締役会設置会社の各自代表はありません。

Q5
 立案担当者による 新・会社法の解説(相澤参事官編著)のP123に株式会社の親会社社員(31条3項:親会社の株主とします)の会計帳簿閲覧・謄写権の解説があります。「株式会社の親会社社員は433条1項の株主に相当する者として同項の請求をすることになるので、3%要件は親会社社員と親会社の関係として同様に課されることになる」との記述があります。433条3項には、「「株式会社の親会社社員」は、第1項各号に掲げる請求をすることができる」とあるのみです。「1項の株主に相当する者として」とは書かれておらず、親会社の株を1株持つ株主にも請求権があるのではありませんか?この条文からは「433条1項の株主に相当する者として」とは読めないように思いますが・・・
A5
 読めるか、読めないかは、気合の入り方の問題です(笑)。
 私どもは、読めると考えていますが、分かりにくいということから、改正予定には入っています。

Q6
会社法施行規則67条の終わりの方にある「(当該議案を決議する場合に限る)」はどういう趣旨で限定されているのですか?子会社に20%の株式を保有される完全親会社を想定してこの条文の後半を読んでみましたが、この括弧書きの意味がよくわかりません。
Posted by SHU at 2006年09月11日 15:22
A6
ある株主総会において、他の株主が、A議案については議決権を行使できるが、B議案については議決権を行使することができない場合に、B議案については、相互保有株主が議決権を行使することができるという意味だと思います。完全親会社の場合には、いつでも行使できます。

Q7
関係ないのですがロー制度について一言だけ言わせて下さい。三振者に対し学費の何割かを返還させるような立法は難しいでしょうか。受験生が強烈なリスクをとる一方で、高い学費をとり、教育能力が疑問視されるロー側が全くリスクを負わないのは不公平です。こうすれば、返還額増加の恐怖によりロー側も真剣になり、募集定員削減、教員の質の向上を図り、乱立による混乱をソフトランディングさせられると思います。
Posted by ABC at 2006年09月11日 22:05
A7
憲法に違反しない限り、立法は可能です。

Q8
整備法61条5項の過料対象者に清算人が含まれていることから、会社法施行前に解散していた株式会社(資本金5億以上の大会社)についても、同法3項1号の登記が要求されると考えますが、いかがでしょうか?
また、(前記質問の回答が『要求される』として)
監査役会設置会社であれば、清算人会を設置する必要があると思いますが、千問Q371によると、『設置が強制されるものであっても定款の定めが必要』とのこと。となると、当該会社は、臨時株主総会を開き、定款変更決議をしなければならないのでしょうか?
Posted by ほにょ at 2006年09月04日 13:42
A8
清算大会社については、旧法の規定に基づく清算人会及び監査役会と、会社法上の清算人会及び監査役会は、清算人の最低員数が異なるなど規律に違いがあるので、整備法においては、清算人会についての定款のみなし規定が設けられておらず、整備法52条も旧清算株式会社については適用されないと解されます。
 したがって、監査役会設置会社であることを前提とするその旨の登記及び社外監査役である旨の登記をする必要もありません。

Q9
「株主が出資した金については原則として取り戻せない(剰余金でしか払い戻さない→461Ⅱ資本維持の原則)」
とはどういうことか教えて頂けないでしょうか。
Posted by 初心者 at 2006年09月12日 11:55
A9
すでに記事に書いたところなので、バックナンバーを見てください。
また、教科書に書かれているので、そちらも参照してください。

Q10
法人格否認の法理で、「株主の行為の効果を会社に帰属させる」とは具体的にはどのような状況で問題となるのか教えて頂けないでしょうか。
Posted by 初心者 at 2006年09月12日 12:00
A10
株主が商品を購入する売買契約を締結した場合に、会社に代金の支払いを請求することができるということです。

Q11
I.現物出資 例えば不動産、特許権による出資。
 ←過大評価の危険があり(他の株主や債権者に損)、検査役の調査が必要。
   法人成りのための現物出資は多いはずだがあまり使われない—調査、税金が必要
   ⇒実際は出資せずに貸し付けという形をとる(その土地が値上がり→会社に売ったのと同じ扱いに)。
「土地が値上がり→売ったのと同じ扱いに」というのは
どういうことなのかご説明願えないでしょうか。
Posted by 初心者 at 2006年09月12日 12:26
A11
 意味がわかりません。

Q12
1000問のQ892について確認したいのですが、664頁最終行に記載ある「株主総会の日の20日前」は、「効力発生日の20日前」の間違いではないでしょうか。株式買取請求の通知は如何なる場合も効力発生日を基準として20日前に行えばよいと理解しておりますが、間違っていたらご指摘ください。
Posted by ぱらりーがーる at 2006年09月12日 13:12
A12
Q892は、株主総会の決議の日の翌日を効力発生日とするために、どうしたらよいかという文脈で書かれていますので、おっしゃるように、正確にいうと「効力発生日=株主総会の日の翌日の20日前」というのが正しいと思います。

Q13
相続人に対する株式売渡請求について質問させてください。
発行済1000株の相続人に対する株式売渡請求の定款規定のある会社において、800株を有する株主Aに相続が発生し、B、Cが相続し、分割協議により各々400株を相続した場合で、会社がB、Cに売渡請求をする場合
①株主総会の議案としてはB、Cに対する請求として1つの議案で決議できますか?Bに対する請求、Cに対する請求と2つの議案に分けるべきですか?
②もし、2つの議案に分けるべきとした場合、Bに対する議案についてはCが、Cに対する議案についてはBが議決権を行使することができますか?
③1つの議案で決議できるとする場合、(あるいは、遺産未分割の場合には1つの議案で決議することとなると思いますが)可決されるべきところ、2つの議案に分けることになると、Bの議案でCが、Cの議案でBがそれぞれ反対すると否決されることになると思うのですが・・・
Posted by みなみ at 2006年09月12日 15:05
A13
①1つの議案でもできると思います。
②2つの議案にわければ、Bは、Cについて、CはBについての議決権を行使することができます。
②遺産未分割の場合には、株式は、B・Cの共有になりますから、権利行使者を定めますが、その権利行使者も、議決権を行使できません。説例の場合、200株分については、別の株主が議決権をもつので、その株主が決めることになります。
 分割後、2つの議案に分けることになったら、おっしゃるように、B・Cは、互いに相手の議案について拒否権があるような状態になります。

Q14
千問の道標Q678について、細かいことですが質問させていただきます。
回答の3(1)③で、その末尾に会社法461条1項1号が掲げられていますが、同条はこの文章の根拠にはならないと思われますがいかがでしょうか。(代わりに掲げるとしたら、会社法446条1号でしょうか。)
Posted by DE at 2006年09月12日 19:00
A14
461条2項1号の誤植ですね。

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