引退宣言
突然ですが,私は,10月2日に
法務省民事局から東京地検特捜部に
異動することなりました。
それで,いろいろ考えた結果・・・
私こと葉玉匡美は,このブログから引退します。
このブログについて東京地検から何か言われたわけではないですし,検察官が趣味で担当事件と関係のないブログを書くのは何の問題もないということは分かっています。
しかし,異動場所が異動場所だけに,担当事件についての書き込みがあったり,マスコミに過度に騒がれたりすると,
「他人に迷惑をかけない」
という私のポリシーが守れないおそれがあるので,自粛する方がベターと判断しました。
もっとも,毎日沢山の人に,このブログを見ていただいていますし,会社法等の質問も毎日書き込まれますので,いきなり
本日をもって,「会社法であそぼ」は閉鎖します。
と宣言するのでは,これはこれで
「他人に迷惑をかけない」
というポリシーに反します。
それで,私は,会社法立案担当者の会のメンバーにお願いし,このブログを承継していただくことにしました。
ただ,同会のメンバーは,私みたいに,恥知らずに実名を出すような方々ではないし,実名だと答えにくいことも多いと予想されますので,次のような方式を採ることにしました。
1 このブログは,インターネット上の架空人物である「サミーさん」が運営する。
「サミーさん」は,「会社法に詳しく,親切だが,スケベなオヤジ」である。
その他のキャラクター設定は未定。
2 会社法立案担当者の会のメンバーは,自分が好きなときに記事を書いてよいが,誰が書くにしても(たとえ,美人弁護士T嬢が書く場合でも),「サミーさん」になりきって,「親切だがスケベ」な感じで,記事を書く。
3 読者の皆さんは,質問をするときに「サミーさん」宛てに質問する。
(例1)サミーさん,こんにちは。実は,事業報告の記載事項について分からないことがあるのですが・・。
(例2)サミーさんが,司法試験に合格したときは,誰とお祝いをしたのですか?
4 質問があったときは,会社法立案担当者の会の誰かが,きちんと調べて返事をする。他と調整が必要な事項については,できるだけ調整をして答える。
以上の方式を採れば,皆さんも,これまでと,あまり変わらない感じで,この「会社法であそぼ」を使ってもらえるのではないかと思います。
私は,5年6か月という長期間(検事としては空前絶後の期間)にわたり,法務省民事局付検事として働かせてもらいました。
民事局に来る前は,民事局が何をするところか知りませんでしたが,ここは
①やりたいことを自由にやらせてくれる懐の深い上司
②信頼できる有能な仲間達
③やり甲斐のある仕事
と3拍子そろった最高の職場でした。
また,仕事を通じて,大学の先生方をはじめ,金融庁,経産省,経団連,株式懇話会,全銀協,日証協,全中などなど,いろいろな方とおつきあいをさせていただき,大変,勉強させていただきました。
本来なら,一件一件,ご挨拶に伺うべきところですが,私には異動後過酷なスケジュールが待っているようなので,しばらくは挨拶の時間も採ることができそうにありません。
とりあえず,この場を借りて,御礼とお別れのご挨拶をさせていただきます。
本当にありがとうございました。
会社法と関係のない部署に異動することになったとはいえ,「書かなければならない原稿」が私の背中に多数くっついていて,しばらくは,会社法と縁切りすることはできそうにありません。私の身に付けた知識を後任に伝えるためにも,執筆活動を続ける倫理的な義務があることは認識しておりますので,たまに論文の中で私の名前を見つけることがあるかもしれません。そのときは
「検事のくせに,まだ,会社法にしがみついていやがるな。」
等と思わずに,温かい目で見守ってやってください。
また,このブログを通じて,旧司法試験・新司法試験の受験生の皆さんに,それぞれ深い悩みがあることを知りました。
私は,いつも「悩む人の味方でありたい」と思っていて,何らかの形で,制度の移行期で苦しむ受験生の皆さんの力になれないかと考えているところです。もし私にリクエストがあれば,これからもこのブログに書き込みをしてください。毎日,チェックして,参考にさせていただきます。
ということで,約11か月間でありましたが,葉玉匡美の「会社法であそぼ」は,これにて閉幕です。
私のマニアックな雑文を愛していただいた読者の皆さんには,心から御礼を申し上げます。
次回からは,サミーさんの「会社法であそぼ」としてリニューアル・オープンいたします(といっても,デザインを変えるわけではありません)。
サミーさんは,きっと私以上に,親切でスケベなはずですので,これからもよろしくご愛顧のほどをお願い申し上げます。
それでは,さようなら。
(質問コーナー)
Q1
ちょっとした疑問なんですが、修習って2回目でも給料もらえるんですか?
投稿 通りすがり | 2006/09/29 0:41:54
不合格の場合は、実務修習ではなく、和光での後期集合修習から参加と聞きましたが、そうなのでしょうか?
投稿 a | 2006/09/29 21:17:47
A1
1回目でも,修習生は,給料がもらえなくなりました。
後期修習からという噂を聞いたことはありますが,ぜんぜん分かりません。
Q2
この会社が定款で「株主割当てに関する募集事項の決定は,取締役の決定による(又は取締役会決議による)」(会社法202条3項1号2号)としている場合には,その決定(又は決議)に無効原因があるということになるのでしょうか?
投稿 たつきち | 2006/09/29 0:53:19
A2
所在不明株主の株式の売却制度を利用せずに,その制度を潜脱するような自己株取得と株主割り当てをやれば,株主平等の原則違反・公序良俗違反で無効になるのでしょうね。
Q3
千問Q375(272ぺーじ)についてお伺いいたします。
非取締役会設置会社が、監査役会設置会社となる旨の定款変更→効力を生じない
非取締役会設置会社が、株式の譲渡制限の廃止(公開会社となる)する旨の定款変更→効力を生じる
と、書かれていますが、会社法327条1項は、1号で、公開会社は取締役会を置かなければならない、2号で、監査役会設置会社は取締役会を置かなければならない、とされ、前者も後者も同じように取締役会設置義務があるにも係らず、結果を異にしているのは何故でしょうか?
A3
監査役会と取締役会は,ともに会社の機関であり,監査役会を置いたときに,取締役会がないと,機関に関する規定が正常に機能しません。委員会設置会社も同じです。
これに対し,公開会社の取締役会設置義務は,政策的に取締役会の設置を義務づけるものであり,取締役会がなくても,機関に関する規定がうまく機能しないということはありません。
そういう違いです。
Q4
会計監査人の報酬を決定するのに「取締役会決議」は必要でしょうか。N法律事務所から出されている「新会社法実務相談」(商事法務)の239頁~241頁には,取締役会決議を経ることを当然の前提として,それが監査役会等の同意の前後どちらでもよいと書かれています。私は,会計監査人の報酬の決定は,(代表)取締役の業務執行権限に属するものと思っておりましたし,「千問の道標」Q569もそう解しているものと思いますが,いかがでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが,御回答いただだければ幸いに存じます。
投稿 T.Ⅰ.ネットワーク | 2006/09/29 11:35:40
A4
業務執行の一環として,取締役会の決議事項ですが,取締役に委任することはできると思います。
Q5
新株引受権と新株予約権とはどのような違いがあるのでしょうか。かつての新株引受権というものは、会社法上はすべて新株予約権となったのでしょうか。
投稿 DAN | 2006/09/29 12:41:32
A5
新株引受権のうち,譲渡不可能なものは,株式の割当てを受ける権利になり,それ以外のニーズは,新株予約権で吸収することになりました。
Q6
特例有限会社を株式会社に移行と同時に、株式分割を考えております。このとき、株式会社であれば、株式分割前に基準日公告が必要ですが、特例有限会社の場合は、株式分割をする際に公告は不要なのでしょうか?不要であれば、分割決議をして即日分割の効力発生ということになるのでしょうか?宜しく御願い致します。
投稿 飯島 | 2006/09/29 16:25:40
A6
基準日の設定が必要ですから,通常,公告が必要です。
Q7
現物出資が発起人に限定されている理由をお教え願えませんか?江頭先生の説明によると、実質的理由が「現物の実価が定款所定の価額に著しく不足する場合には出資者に一種の瑕疵担保責任として無過失責任を負わせる必要があるが・・それを履行できる資力の有無が不明では困るからである」とされていますが、いまひとつピンとこないのです。
投稿 会社法初学者 | 2006/09/29 17:43:46
A7
現物出資は,変態設立事項として,原始定款に記載しなければ,効力が生じません。
原始定款の作成の時点では,引受人の募集がされていませんから,載せようと思っても,載せられないということが表面的な理由です。
もちろん,募集時に現物出資をさせるような法制を採ることも理論的には可能だと思いますが,発起設立してすぐに新株発行をしても同じことはできるので,わざわざ作る必要はないということでしょうね。
Q8
江頭先生の教科書によると、発起人が選任しなければならない設立時取締役は「発起人の監督機関」とされているので、本来は発起人と設立時取締役は別人となるのが好ましいと思われます。しかし、会社法においては発起人が設立時取締役になれないとする規定はなく、世の中の企業においても、発起人と設立時取締役が同一人物であるのが、むしろ多数のような気がします(一人会社など)。これは、本来の趣旨からすれば決して好ましい状況ではないけれども、発起人が設立時取締役になれないとすると起業活動が阻害されてしまうため、政策的に発起人が設立時取締役の地位を兼ねることを認めた、と理解してよいのでしょうか?
投稿 会社法初学者 | 2006/09/29 18:21:38
A8
まあ,そんなところでしょうね。複数人が必要になると,起業するのが大変ですから。
Q9
清算結了について教えてください。
旧商法にもとづく清算手続で旧商法第427条の規定により株主総会の承認をうける場面です。
この承認は、清算事務が終了した後に残余財産があればその額につき承認を受け分配し、無ければB/S上、例えば資産の部0円、負債の部0円、純資産の部資本金1億円、欠損金1億円として処理すべきものだと思います。
ここでお聞きしたいのは、細かい話なのですが、法人税の均等割等細かい処理についてです。実際上、結了後でなければ納税できませんので、納税分を現金として保有しておくことになります。
旧427条の規定による承認を受ける際に、この税金納付予定分の現金をB/Sに計上して、議事録(清算事務報告書等)にその旨を記載して行う清算結了は法的に有効といえるでしょうか?
また、このように残余財産を分配しないケースにおいて、現金が計上されているB/Sが登記の添付書類とされた場合、この清算結了の登記は受理すべきでしょうか?
私としては、前段は承認決議は一応有効で税金(債務)を支払ったときに結了の効果が生じると解することは可能ではないかと思いますが、債務がある以上、結了の効果は生じないとするのが当然とも思います。
登記については、納税予定分として現金で計上したB/Sであっても、目一杯善解の理論を行使していただければ、受理することも可ではないかと思うのですが・・・
投稿 ダイさん | 2006/09/29 18:51:32
A9
正面から問われると,現金がある段階では,清算の結了はしていないですね。
実務上の工夫はいくらでもできると思いますが。
Q10
剰余金の配当に関する決議について、定款で3/31を期末配当の基準日と定めた会社が、6/末日に株主総会を開催し、その際に剰余金の配当議案で「翌日の7/1」を配当の効力発生日とする旨決議することは可能でしょうか?
会社法124条2項により、株主による配当請求権の行使期間が3ヶ月を超えてしまうため、不可能と思われるのですが、いかがでしょうか?
投稿 naga | 2006/09/29 19:06:17
A10
剰余金の配当における「行使」とは,何か? という難問ですね。
「不可能」と言われると「不可能とはいえないのではないか」という気もしますが,あえて危険を冒さないという意味では,そんなことはやめた方が良いですね。
Q11
しばしば判例や教科書に「専ら~の目的で」というような形で「専ら」という言葉が出てきますが、これは、①~のみという意味で使う言葉なのでしょうか、それとも、②主だったもの(主要なもの)は~(つまり別の要素もある)という意味で使う言葉なのでしょうか。
投稿 日本語の質問です | 2006/09/29 20:59:26
A11
①の場合と②の場合の両方あるでしょう。通常は①だと思いますが,名誉毀損の真実性の証明における公益目的は②ですよね。解釈論の世界ですから,どちらもありうるでしょう。
Q12
個別催告に係る789条2項、及び、分割会社がそれを怠った場合に分割会社への履行請求権を認めた759条3項の適用のお話かと思います。
しかし、実は、本件では官報及び定款に定める新聞掲載により公告することによって催告が行われています。
このような状況の下で、(分割会社に対して特定物の引渡を請求する債権を有する)債権者が現実に異議を述べたにもかかわらず、分割会社が789条5項に定める担保提供等の措置を執ることを拒んだというのが本件のケースです。
A12
ニモさんのケースの場合,債権者が実際に「異議を述べた」わけですから,分割会社は,履行義務等を負っています。
分割会社が勘違いして,履行しなかったわけですから,やはり分割会社に対しても,債権を主張することができます。
Q13
二回試験の不合格者が激増したということは、今後二回試験は事実上選抜試験の要素を帯びてくるということでしょうか。
学生や修習生にとっては大量に二回試験で落とされるということは不意打ちなのではないかと思います。
投稿 参事官室によく電話する人 | 2006/09/29 22:38:12
A13
二回試験も国家試験なので,実力のない人は合格させないというのは当たり前です。
しかも,二回試験は,相対評価ではなく,絶対評価ですから,「不意打ち」という批判はあたらないでしょう。ハードルを急にあげたのならばともかく,最高裁の話によれば,基準は変えていないということですから,もともと設定されたハードルに届かない人が増えただけでしょう。
Q14
修習期間が短縮されていることの影響はあえて書かないのか?バカだから気づかないのか、どっちでしょうか。
投稿 Julie | 2006/09/29 23:12:24
A14
私の修習の経験から言えば,修習期間が半年短縮したくらいで,不合格者が極端に増えるほど修習生の実力が下がるとは到底思えません。
Q15
最近の司法試験は,合格者数が増えたとはいえ,昭和の頃に比べると択一も非常に難しく複雑な問題を解いているし,論文についても長い長い事案を短時間で処理しているため,決してレベルが下がっているとは思えません。昭和の頃に比べると,覚えなければならない判例の量も全然違うし,毎年改正される条文を追いかけなければなりません。
また,今の受験生は,昭和の頃の受験生とは違い,訴訟法は民訴も刑訴も勉強しなければならず,国際法とか会計学を受験することはできません。
昭和の頃の合格者が今の司法試験を受けたところで,択一に合格できるかどうかも危ういだろうし,論文も1500番どころか,5000番にはいることも難しいのではないでしょうか。
投稿 PB | 2006/09/29 23:52:43
A15
旧試験の択一については,民法は昭和の頃より易しく,刑法は昭和の頃より難しくなったように思います。新試験の択一は,私も解きましたが,全体に易しくなっています。
逆に,論文は,旧試験よりも新試験の方が実力差が出やすい問題だと思います。
平成になって新判例も出ていますから,覚えなければならない判例は昭和より増えているとは思いますが,全体からすれば,誤差の範囲です。
改正される条文を追いかけなければならないのは,昭和の頃も同じでしたが,会社法については,明らかに昭和の頃より大変だったと思います。
民訴を勉強するより,国際法や会計学の方が易しいかというと,そんなことは全然ありません。きちんと勉強しようとすると,資料も少ないし,答練も少ないし,ばくち的要素が増えると思います。私が受験生の頃は,法律選択というのがあり,行政法とか破産法と同じレベルで,両訴を選択することができましたが,両訴選択の人も結構多かったと記憶しています。
「昭和の頃の合格者が今の司法試験を受けてもたところで,択一に合格できるかどうかも危うい」というのは,何かの勘違いでしょう。
私は,新司法試験の上位500人と,私が合格した昭和63年の旧試験の合格者と比べたときに,それほど実力の差はないと予想しますが,合格者数が増えれば,実力がない人も合格するということは,真理だと思います。
問題は,そうした司法試験合格者を,研修所が,どういうレベルに達した段階で,法曹として送り出すかということです。
研修期間中に飛躍的に法律の知識が増えるということはないので(実務的ノウハウは増えますが,法律の知識そのものは,大して増えません),研修所が,従来と同じレベルを設定すると,3000人合格時代には,かなりの不合格者が出るのではないかと想像されます。
Q16
100問によりますと見せ金を無効と考えておられる一方で、預合を有効と考えておられるようですが(「論点解説新・会社法 ~千問の道標~」より)、見せ金が預合の潜脱行為として問題とされてきたことを考えると、矛盾するように思われるのですが、いかがでしょうか。
また、払込取扱銀行は見せ金を無効とした場合には、会社法64条2項の責任を負わないと考えるのでしょうか。
会社法64条2項の責任を負う状況について、具体的に教えていただけたら、幸いです。
投稿 よちよち
A16
次の2つの記事を読んでください。
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50055555
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50388172
Q17
会社法100問の最後に載っているオウム、キリン、サイの勉強法のことで質問させていただきたいことがあります。来年の試験に向けて、オウム、キリン、サイの力について勉強法にしたがいノートにまとめているのですが、キリンの力の「②その条文の要件の問題か、効果の問題か」についてはどのようにノートすればよろしいでしょうか?「~が必要となる要件」のように書ける条文もあるのですが、そのように書きづらい条文もあり、いまいちこの部分についてのノートの記述の仕方が定まらないのです。
私の未熟さから変な(?)質問になっていたら申し訳ありません。どうかご回答よろしくお願いいたします。
A17
分からなければ,適当にやりましょう。難しく考えず,先に進むことです。
何が要件で,何が効果かというのは,先に進めば,分かることがほとんどです。
ただ,「~が必要とある要件」という表現を見ると,要件と効果の考え方がややずれているのではないかと思います。
一度,具体例をあげて質問してみてください。
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