2009年7月 1日 (水)

略式株式交換と株式買取請求権

6月29日号の日経ビジネスの「ビジネス弁護士ランキング2009」で
   総合部門 第2位
   M&A・企業再編・買収防衛策部門 第4位
に評価していただきました。
 投票していただいた方には、心より感謝します。
 特に顧問や個別案件についても評価していただいていたことは、心底うれしかったです。
 これからも、目の前の案件の解決に全力を尽くしますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、先週、先々週は、株主総会で忙しかったんですが、その間を縫って、5件も裁判があり、私は、毎日のように総会会場であるホテルと東京地方裁判所を渡り歩いていました。

皆様もご想像のとおり、私は、会社法関係の訴訟が多く、訴訟ならではの面白い論点もあるので、このブログでも時期を見ながらご紹介したいと思います。

ただ、訴訟係属中の事件は書きづらいので、本日は、すでに終了している
  略式株式交換における株式買取請求権行使者の株式価格の決定申立事件
についてお話をしたいと思います。

事案の概要は次のとおりです。

1 S社は、上場企業であるD社の株式の90%以上をTOBで取得した後、完全子会社化するため、S社とD社は、株式交換契約を締結した。
2 この株式交換において、D社は、基準日を定めて臨時株主総会を開催し、当該総会で株式交換が承認された。
3 X社は、当該総会の基準日後に株式を取得し、D社に対して株式買取請求権を行使したが、D社は、「基準日後の株式取得者は、株式買取請求権を行使することができない」として買取を拒否した。

以上の事案において、私は、株主のX社側の代理人として対応いたしました。
本来、私は、発行会社側の代理人になることが多いのですが、この問題は会社法の解釈上、大変興味深いので、X社のご依頼をお受けすることにしました。

この事案のように発行会社が株式買取請求権の存在を否定した場合、株主としては、代金の支払いを求めたいところですが、代金が決定しないことには、代金支払請求訴訟を提起することはできません。

そこで、こういうときには、発行会社と株主との間で協議がまとまらないという理由で、価格決定の申立(非訟事件)を行うのが一番適切な解決法だと思います。

価格決定の申立は、株式買取請求権の行使が有効であることを前提とした申立ですから、本事案では、発行会社は、その申立てに対し
「株式買取請求権は存在しないから、申立は不適法却下すべきである」
と主張しました。

 つまり、株式買取請求権があるのかないのかは、
   申立が適法とされ価格決定のプロセスに入るのか
   申立が不適法却下されるのか
というレベルで判断されることになるわけです。

この申立ての争点に入る前に、株式交換において完全子会社となる会社側の株式買取請求権について、前提知識の確認をしておきまししょう。

完全子会社となる会社側の株式買取請求権は、785条に規定されており
(1) 株主総会の決議を要する場合(2項1号)
イ 当該総会で議決権を行使できる株主は、反対の通知をし、実際に反対した者だけが株式買取請求権を行使できる(1号イ)。
ロ 議決権を行使することができない株主は、全員株式買取請求権を行使することができる(1号ロ)
(2) 株主総会の決議を要しない場合(2項2号)
 すべての株主(効力発生日の前日までに株式を取得した株主)が株式買取請求権を行使することができる
ということになっています。

たとえば、通常の株式交換は、「株主総会の決議を要する場合」なので、1号が適用され、普通株式しか発行していない会社であれば、1号イが適用されることになります。
 1号ロは、議決権制限株式の株主のことをいい、株主総会の「基準日後に株式を取得した株主」は議決権を行使することはできませんが、1号ロの適用はなく、株式買取請求権を行使することができないとするのが通説です(争いはありますが、実務では、この考え方で確立しています)。

こうした解釈を前提に、この事案では、
  略式合併の要件を満たしているため、本来、2号に該当して株式買取請求権を行使することができた株主が、会社が「任意の株主総会」を開催することにより、1号が適用されることとな、「基準日後に株式を取得した株主」として買取請求権を行使することができなくなってしまうのか?
ということが問題になりました。

実は、略式株式交換ではなく
  簡易組織再編
においては、「任意の株主総会」を開催し、その株主総会の基準日後に株式を取得した株主については、株式買取請求権の行使を認めないという有力な見解があります(武井一浩先生と郡谷大輔先生が論文を書かれています)。

私も、簡易組織再編については、
  組織再編契約の締結の時点では、効力発生日において簡易要件を充たすのか、充たさないのか、不明の場合があるため、株主総会の決議をスケジュールに組み込む必要がある
という理由から、任意の株主総会を開催すべき場合があることは認識しています。

 ただ、任意の株主総会を開催したとしても、基準日後に株式を取得した株主の株式買取請求権を制限することができるかどうかは、別問題です。

 理論的には、任意の株主総会を開催しても、簡易要件を満たした場合には、基準日後株主にも買取請求を肯定するという見解はありうるでしょうし、少なくとも、会社が、買取請求を封ずるために、株主総会を開催したような場合には,株主の保護のために、買取請求を認めるべきであるという見解もありうるでしょう。

 私は、簡易組織再編については、任意の株主総会を開催しても、必ずしも承認されるとは限らない状況であれば、組織再編の当否を問う株主総会を開催することは合理的であり、場合によっては、基準日後株主の買取請求を制限するという解釈もありうるのではないかと思いますが、常に制限することができるというのは、行き過ぎであるようにも思えます。
 少なくとも、簡易要件を定款で変更し、当該組織再編が、簡易要件に該当しないという形式を整えた上で、基準日後株主の買取請求権を行使する方が安全でしょう。

他方、略式株式交換については、任意の株主総会を開催することにより、基準日後株主の買取請求権を制限することには、かなりの違和感を感じざるを得ません。

 簡易組織再編と略式組織再編は、株主総会の決議を要しない場合として、同じ条文に規定されているので、なんとなく同じようなものと捉えがちですが、

 簡易組織再編は、当該組織再編が会社に与える影響が軽微であることから、総会を省略したもの(株主構成によっては、総会を開催しても、承認されるかどうか分からない)であるのに対し
 略式組織再編は、組織再編の相手方が90%以上を保有する株主であり、承認されるのが確実であることから、総会を省略したものである

という大きな違いがあります。

 そもそも、略式要件を満たした状態で、なぜ「任意の株主総会」を開催するのでしょうか?
 開催しても、承認されることは確実であり、簡易要件を満たす場合の任意の株主総会のように「株主の意思を確認する」という合理性はありません。

 結局、当該総会は、基準日後株主の株式買取請求権の行使を制限する目的で開催されたものと考えるのが素直であり、私は、会社法上の株主保護制度を、合理性のない総会を開催するだけで、無力化するのはおかしいと主張しました(相手方は、「新株予約権の償却のために株主総会を開催する必要があった」のだから、785条1項1号が適用されると主張しましたが、私は、「本来、償却できない新株予約権を償却するために任意の株主総会を開催することは、新株予約権者の利益を害するものであり、合理性がない」と反論しました)。

785条1項1号の文言を見ても、株主総会の決議を「要する場合」と規定されており、株主総会の決議を得た場合というような表現にはなっていません。
 略式要件(784条1項)を充たせば、783条の適用が除外され、株主総会の決議を「要しない」ことは明らかであり、このように「要しない場合」に任意に株主総会を開催したとしても、「要する場合」に変化することはないと思うのです。

実際の裁判では、もう少し、肌理の細かい議論をして学術的にも大変興味深い論争をしたのですが(相手方の代理人にも、有名な会社法学者が名を連ねていらっしゃったので、炉論争というのにふさわしい議論でした)、最終的には、裁判所(当初は単独でしたが、後に合議になりました)は
  株式買取請求権を認めざるを得ないので、価格についての主張をしてください
という指揮をされ、
  略式株式交換では、任意に株主総会の決議を得ても、基準日後株主の株式買取請求権を制限することはできない
という結論になりました。

 私は、自説が採用されて、とりあえず何らかの勝ちは得られると思ったのですが、その後、価格についての協議が長引きそうだったため、申立ての取り下げることとなり、結局、裁判という形で、裁判所の判断が示されることはありませんでした。

 最近は、株式買取請求権を行使する株主が増え、その点を巡る紛争が頻発しているので、個人的には、地裁の決定を見たかったものの、クライアントの意向が最優先なので、特に残念という気持ちはありません。

ただ、この案件で交わされた議論や裁判所の判断は、実務に役に立つと思いましたので、このブログで簡単にご紹介しました。そのうち、商事法務かどこかで論文を書いてみようかなと思っています。

 なお、登記手続では、簡易要件・略式要件を備えていても、任意の株主総会を開催して、議事録を添付すれば、組織再編の登記をすることはできます。その意味で「任意の株主総会」が認められるかどうか、という話と、その株主総会の開催で基準日後株主の株式買取請求権を制限できるか、という話は区別して理解していただければ幸いです。

(質問コーナー)
Q1
連結対象の会社がないのなら、いらないのでは。
投稿: | 2009年6月16日 (火) 00時46分
A1
適用除外規定がないので、義務がないとはいいづらいというところです。
義務があるけれども、連結対象がないのだから、単体と同じと考えるのが落ち着きどころでしょうか。

Q2
委員会設置会社において、内部統制(ガバナンス)の不備により当社において様々な不祥事が起きたとします。
 株主がその不祥事の責任を追求し解任を求める場合、取締役兼代表執行役(社長)の責任としてその社長のみを解任するか、416条1号1項・2項の取締役会の任務懈怠として取締役全員を解任するか、または監査委員の任務懈怠を重視し解任するか、どれが最も理論的でしょうか。
投稿: kuma | 2009年6月16日 (火) 02時50分
A2
論理の問題ではないですね。

Q3
> という法律家ならすぐに気づく大きな穴があるのですが・・。
二人が本当に隠したかったのは、最初の殺人そのものではなく、
雪穂が売春させられていたことです。
たとえ、少年法で守られているとはいっても、雪穂が売春させられていた事実を
他の誰にも知られたくないという気持ちが 2人には強かったのです。
投稿: 白夜行ファン | 2009年6月16日 (火) 07時26分
白夜行」は、原作も(のほうが)面白いですよ。
投稿: EQⅡ | 2009年6月16日 (火) 12時37分
白夜行は原作とドラマで描かれ方が全く違うので、是非原作を読んでいただきたいと思いました。
投稿: | 2009年6月17日 (水) 18時43分
A3
小説は、ドラマよりも知的・理系的、本格的な推理小説で、これも傑作です。余韻が多く、解釈の余地が大きいところが傑作たるゆえんでしょう。ただ、このまま連続ドラマにするのでは、視聴者がついてこれないから、ネタばらししながら、心の動きを演出をする必要があったのでしょう。
二人が何を隠したかったかについては、ドラマでは、時効に焦点があたっていましたから、殺人事件という方が強いのかと私は感じました。小説では、時効の要素はほとんどないし、雪穂は自分が売春させられた事実を義理の娘にほのめかしているし、よりミステリアスです。小説の雪穂の方がずっと強く、ミステリアスで、スカーレット的です。

Q4
会社の解散手続きについて質問なのですが、
清算人が弁済等の手続きを経て、残余財産の確定をする際に
実務上、財産目録等を作成しますが、この財産目録等に関しては
会社法492条3項の株主総会の承認決議は不要なのでしょうか。

法務省の方に電話で問い合わせをしたところ、株主総会の決議は必要だと言われました。法律上、作成が求められていない財産目録等に対して492条3項の決議が必要なのか疑問ですし、実務上は、清算人の決定もしくは清算人会の決議で残余財産を確定してしまい、株主に分配する処理をするところがほとんどだと聞きます。いったい、どちらが正しいのでしょうか。
投稿: おおい | 2009年6月16日 (火) 23時58分
A4
492条3項の財産目録以外に実務上作成される残余財産の確定の際の財産目録は、株主総会の承認の対象ではありません。

Q5
ろくにデートもせずに勉強ばかりしていてたら、彼女にフラれました。
僕は間違っていたんでしょうか。
(家族法に、妻のいいつけは守らなければならない。彼女には精一杯サービスしなければならない。と、ちゃんと書いてあれば、法令遵守したんですが…)
投稿: ニャア | 2009年6月17日 (水) 19時09分
A5
女にフラれることが、自らの間違いの証明であるならば、私は、数え切れないくらい間違いを起こしてきたことになります。

Q6
会社法360条について質問させてください。

先生は、「会社法の実務」の講義の中で、360条の法令違反には、善管注意義務は含まれないのが通説であるとおっしゃっていましたが、どの文献を見ても、善管注意義務が含まれると記載されています。

先生のお考えは、講義レジメに記載されているだけで、千問、百問、115講座を見ても書かれていないのですが、何か他の論文に書かれていますか?

今年の新司法試験の問題で類似の論点が出題されましたが、法令違反に善管注意義務違反は含まれないと論述したのは周りで私だけで不安を感じています。できましたら、右法令違反の解釈についてご教授していただけると助かります。
投稿: | 2009年6月18日 (木) 01時25分
A6
「通説」というのは言い過ぎでしたが、経営判断原則の問題となる狭義の善管注意義務については、監査役・株主の経営判断と取締役の経営判断が異なる場合に、事前の差し止めまで認めてよいか、という問題意識で、これを否定する見解はあります(百選にも少数説として紹介されています)。
 狭義の善管注意義務違反も差し止めの対象となる「法令違反」であるという見解が現在は一般的なようですが、取締役が行為を行う前に、株主が、当該行為を経営判断原則の適用のない著しく不合理な行為と立証するのは困難であり、実際には、否定説と肯定説は紙一重だと思います。

Q7
もし、定款変更が株主総会で決議された後に、明らかな誤植が見つかった場合、やはりこの誤植は、のちの株主総会で定款変更議案として決議しなければ修正できないのでしょうか?
投稿: mina | 2009年6月18日 (木) 22時33分
A7
考え方にもよりますが、私は、誤植は、総会の決議無く、修正できると考えます。

Q8
>outputが足りません。それと、穴埋めについての解き方のノウハウが足りないのでしょう。
過去問は1度解答したものですが、既出の問題を時間はかって解くの有益ですか?
あと、穴埋めのノウハウについてどこでならえばよいしょうか?
先生が講師をされていたとき択一の指導をどのようにされていました?
投稿: 受験生 | 2009年6月19日 (金) 21時02分
A8
過去問は、間違いをしなくなるまで、何回も解きます。
穴埋めのノウハウは、予備校で聞いたり、自分で試行錯誤して身につけます。

Q9
 A22のご教授ありがとうございました。
 実はこの案件は家族経営の中小企業で,発行済み株式の9割を保有していた社長が死亡して,会社を継いだ長男が社長となったが,共同相続人が相続について争っているので,この株式も遺産分割ができていないという事例です(他の相続人は長男を共有株式の代表者とすることに同意しません)。
 そこで,定時総会の時期となったので,被相続人名義の株式はどう扱えばいいですかという相談がきました。被相続人名義の株式に係る議決権が株主総会の定足数算定の基礎に入ると考えると,そもそも株主総会が成立しないし,長男が保有する残り1割の株式に係る議決権のみで株主総会決議ができるとすると,1割の議決権だけで本当にいいのだろうかという疑問が湧きます。先生は実務上は工夫しているので問題にならないとおっしゃっていましたが,具体的にはこういう場合も何か方策があるでしょうか。
 上記の補足です。会社の方から議決権行使を同意すればいいのではとも考えたのですが,こういう事例で社長という地位を利用して自分自身の権利行使を認めることは公正さに欠けますし,長男も,他の相続人から会社にどういう責任追及がされるかわからないので,できればそれはしたくないと考えています。
投稿: ポケット | 2009年6月20日 (土) 10時43分
A9
 具体的な案件は、オウンリスクで解決をお願いします。

Q10
農地も現物出資できるのですか??
加えて、会社法に禁止する条文、文言がないので、
どんな不動産でも現物出資可能となるのでしょうか??
投稿: 大志 | 2009年6月20日 (土) 16時58分
A10
株式会社でも農業ができる場合もあるので、農地も現物出資できる場合はあるでしょう。ただし,一般的には、農地を株式会社に移転することはできないので、現物出資は困難であると思います。

Q11
社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低限で除して得た数が50を下回る場合って、要はどういう意味でしょうか。
投稿: 簡単かもしれませんがご質問 | 2009年6月21日 (日) 01時35分
A11
15億円の社債券、5億円の社債券、5000万円の社債券が発行されたら、20億5000万円を5000万円で割ります。すると、答えは41ですから、50を下回っています。そういう意味です。

Q12
葉玉先生は学生時代に麻雀をかなりやっていたそうですが、
世間で黙認されている程度のレートのかけ麻雀は違法でしょうか?

同窓会とかで麻雀をすることになっても
最高で1、2万円くらいしか動かないレートであっても
お金を賭けることは拒否すべきでしょうか?
投稿: F | 2009年6月22日 (月) 21時42分
A12
お金をかけることは、賭博罪の例外には該当しないので、レートがどういうものであれ、基本的には賭博罪の構成要件に該当します。
ただ、同窓会で点ピンでやるくらいの麻雀を摘発する警察はいないと思います。

Q14
先生はお若い頃からハードワーカーでいらっしゃるとお見うけしますが、こだわりの健康法はありますか?
投稿: 山道 | 2009年6月22日 (月) 22時04分
A14
健康法をやっていないので、不健康です。

Q15
はじめまして。
先生のこのブログで会社法を勉強させていただきたく
コメントを書かせていただきました。
またよろしければ、私のブログとリンクを
貼らせていただければと思います。
投稿: 総務コンサルタント | 2009年6月23日 (火) 21時53分
A15
どうぞ、ご自由にリンクして宇田債。

Q16
24歳で、今年の2月から本格的に法律を勉強し始めた初心者です。
民法はとても興味深く楽しく勉強出来ているのでスイスイ進むのですが、会社法になるとと興味はあるものの、どうしても出て来るの言葉や、実際の生活からはかけ離れた内容のため分かり難いイメージを持ってしまいます。
慣れるしかないと言われればそれまでですが、何か良い方法はないものでしょうか?
投稿: まるこめ | 2009年6月25日 (木) 08時37分
A16
良い先生に話を聞くことがもっとも早道です。
次のコメントも参考にしてください。
 まるこめさんへ、企業小説を読んで少しでもイメージを持ちやすくするのがよいのではないでしょうか。私(47期)が受験生だった頃は、無味乾燥な鈴木会社法しか基本書がなく、それこそ予備校の手助けがなければ会社法の本を読むことすら地獄でした。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。かろうじて企業小説を読んだものの、清水一行と城山三郎しか著者がいず、これまた砂を噛むような思いをしたものです。
 今は、高杉良・牛島信・真山仁・・・むしろ枚挙に暇がありません。肝心なのはあくまで企業小説は会社法学習のスパイス、切欠に過ぎないと割り切ること。企業小説を読むことが楽しくなりすぎてしまえば、タダの読書家になってしまい、受験生ではなくなってしまいます。そういうバランス感覚も大事でしょうね
投稿: ろぼっと軽ジK | 2009年6月25日 (木) 17時31分

Q17
ご無沙汰しております。A12ですが、
>①462条は、債権者保護のための責任だからです。462における株主は、平等に配当をもらった立場であり、責任を追及する立場ではありません
850条4項の文言からすれば、462条の取締役の対会社責任は代表訴訟で追及可能であることが前提であるように思われますが、いかがでしょうか。
なお、462条に該当しない場合(たとえば監査役等)には、違法配当により役員等が423条により対会社責任を負うことはないのではないかと考えており、この点では葉玉先生のA12は正しいのではないかと考えております(という趣旨をブログで書いたところ、同業者からは批判されましたが(笑))。
投稿: 大杉謙一 | 2009年6月26日 (金) 09時33分
A17
株主は、取締役に対して、代表訴訟で、462条の責任を追求することは可能です。
株主vs株主と異なり、取締役は、善管注意義務を負っているので、取締役が会社に与えた損害を追求することを禁止する必要はないということでしょう。
特に善意の少数株主であれば、代表訴訟を起こす意味は大きいと思います。
逆に悪意の大株主だと、代表訴訟を起こすのは、訴権の濫用になるでしょう。

私は、462条は、423条の特則(損害額のみなし規定)と考えており、462条に該当しない者も423条を根拠に責任を負う場合はありうると思います。実際には、違法配当の前提として、粉飾決算が行われることがほとんどなので、あまり実益はない議論かもしれませんが。

Q18
新司法試験の受験生です。
このところ、法科大学院生を中心に、新司法試験に関する署名活動が行なわれています。
内容は、
1 新司法試験合格者数の目安維持、
2 司法修習の給費の継続
を法務大臣と最高裁に嘆願するものです。
http://syomei.seesaa.net/

私は、法科大学院を通じた法曹養成制度の立て直しにとって、上記の施策がベストかどうかはともかく、少なくともプラスに働くだろうと考え、署名活動に賛同しています。上記の施策は制度の信用を回復ないし維持させる方向にあるからです。
先生はどのように思われますか?
投稿: おおや | 2009年6月26日 (金) 16時42分
A18
私は、法科大学院を通じた法曹養成制度の立て直しには、法科大学院のカリキュラムをより実践的なものにし、学生のトレーニングを重視する方式に変更することが重要だと思います。「受験勉強」的かどうかなどを気にしながら、学生を教育しなければならないのは、ナンセンスです。

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2009年6月16日 (火)

2ヶ月間のご無沙汰でした。

皆様、お久しぶりです。
ふと気づくと2ヶ月近く更新していませんでした。このブログ史上、最長不更新記録であります。

更新しようという気持ちはあったものの、土日は家事育児で疲れ果て、たまに早く帰ることがある平日の夜は、ついドラマにはまってしまい、ブログを書く心の力が枯渇していました。

特に最近は、「白夜行」というドラマにはまり、「花より男子」に続き、DVDBOXを大人買いして、深夜に涙を流しながら見ていました。
「白夜行」は、視聴率はとれなかったものの、私の見た日本のドラマの中では、3本の指に入る傑作です。

白夜行は、11歳の男の子が、初恋の女の子を買春していた自分の父親を殺し、その女の子は男の子を守るため、その犯行を自分の母親がやったように偽装して母親を殺し、二人は。その後も、その時の犯行を隠すため、次々と犯罪を重ねながら大人になっていくという悲惨な話です。が、二人の心のつながりが純粋で、悲惨さや無残さを超えた切なさを感じるドラマでした。
 雪穂という主人公を演じる綾瀬はるかは、これまで、いまいち表現力が不足している女優という印象を持っていました。しかし、このドラマでは、雪穂が残酷な行為を繰り返しても、彼女の持つ変わらない清廉な美しさにその残酷さが飲み込まれてしまい、見る者は「理性では許せないけど、感情としてはつい許してしまう」という不思議な感覚を覚えます。まさにキャスティングの妙です。

「11歳の時の二人の殺人事件」というこの物語の背骨となるエピソードについては
「刑事未成年だし、少年法があるんだから、時効なんか待たなくても、さっさと警察に自首すれば、すぐに太陽の下で二人で手をつないで歩けるのに」
という法律家ならすぐに気づく大きな穴があるのですが・・。
まあ、無粋なことを言わずに見ると、得がたい感動が得られると思います。

さて、本日は、長期間の不更新により、質問がたまりまくっていますので、とりあえず、それに回答し、心の負担を軽くしたいと思います。

次回から会社法ネタを考えますので、今後ともご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

(質問コーナー)
Q1
さっそくですが、本日のQ1後段に対するご回答は、合併対価として、本合併により承継した自己株式ではなく、別途、新たに株式を発行して交付した場合を想定されたものでしょうか?
自己株式(本合併により承継したものを含む。)のみを交付した場合、発行済株式総数は増加しないものと理解しております。
投稿: まーや | 2009年4月22日 (水) 17時40
A1
もちろん自己株式のみ交付すれば、発行済株式総数は増加しません。

Q2
株式併合の結果、単元株式数の上限規制に抵触する場合、①そもそもそのような株式併合が制限されるのか、②それとも単元株式数の効力に影響(無効又は一部無効)が生ずるのか、③いずれにも何ら影響はないのか、どうなのでしょうか。

投稿: 猫太郎 | 2009年4月23日 (木) 10時47分
A2
株式の併合を制限する条文はないので、単元株式数の定款の定めが188条2項違反で無効になると解します。

Q3
私は、法科大学院に進学したばかりなのですが、先日、自動車を運転していて、不注意にもオービスにやられてしまいました(スピード違反)。その場所だけ制限速度が低く設定されており、赤切符確実な状態です。

青切符は反則金ですみますが、赤切符だと、罰金刑を受け、犯罪者として扱いを受けることになります。

法務省の管轄する司法試験に影響するのかが心配ですが、どうなのでしょうか?
検察庁の保管する記録に前科が永遠に残ってしまうのでとても心配です。
投稿: 地方人 | 2009年4月24日 (金) 00時03分
A3
司法試験には影響しないと思います。

Q4
自己株式を銀行借入金の担保として、差入れることに問題はないでしょうか。?
また、差入れに際して、取締役会決議等の手続は不要でしょうか。
担保権が実行されれば、発行済株式数が増加するため、取締役会の決議等が必要かと思ったのですが・・・・・。
投稿: | 2009年4月24日 (金) 20時16分
A4
自己株式の担保差し入れは、難しい問題です。
担保差し入れも、自己株式の処分ですから、本来、199条の手続が必要ですが、質権の場合、払込みを想定できません。譲渡担保なら、工夫することで、やれないことはありませんが、結構テクニカルです。

なお、自己株式の処分は、発行済株式総数は増加しません。

Q5
このたび、A社の事業を全部B社(A社はB社の100%子会社)に譲渡して、A社は解散することになりました。
簡易+略式事業譲渡に該当するケースなのですが、この場合、Aは解散するため株主の株式買取請求権の行使は不可となりますが、譲受会社であるB社の株主には買取請求権の行使が可能なのでしょうか?
事業の一部ではなく全部を譲受けるため条文を見ると必要のような気もします。
ただ、必要とする根拠もわかりません。
投稿: 法務部員 | 2009年4月26日 (日) 02時07分
A5
事業の全部の譲り受けは、「事業譲渡等」に該当し、469条によりB社の株主も、株式買取請求権を行使することができます。

Q6
会社法444条3項で連結計算書類の作成義務が規定されていますが、該当する会社であっても子会社がいない場合は連結計算書類を作成しなくてもいいのでしょうか。それとも、大会社である有報提出会社に子会社がいないとは法は考えてないという理解で正しいでしょうか。あるいは、連結の対象となるべき子会社がない旨を連結計算書類に記載するのでしょうか。
投稿: 短答が近くて忙しい50歳 | 2009年4月27日 (月) 13時41分
A6
連結計算書類の作成義務はあると考えざるをえないでしょう。

Q7
適格合併における株式端数の処理について質問させてください。(市場価格のない株式であることが前提です。)
 合併においてはその比率によりどうしても株式端数が生じてしまうと考えております。
 その場合、まずは、消滅会社側で株式分割 無償割当等の処理を行い端数がでないようにすべきと考えております。
 ただ、上記の処理にもかかわらず適格合併において端数が生じる場合はどうすべきなのでしょうか?
 私見では、会社法234条2項に基づき、市場価格のない株式を裁判所の許可を得て売却し、同条4項により買い取ろうとも考えております。また、この場合は法人税基本通達1-4-2により合併対価とはならないので適格合併には抵触しないことも理解しております。
 ただ、小規模の合併において裁判所の許可を得てまでして競売に代わる許可を得なければならないとすれば費用が多大になってしまいます。だからといって、端数処理につき234条の手続きによらず金銭等ですましてしまえば適格合併の要件にあたらないように思われます。
 このような、適格合併における端数処理について何か良い知恵はないのでしょうか?ご多忙のところ大変申し訳ありませんが、どうぞご教示いただけませんか?よろしくお願いします。
投稿: 登記職人見習中 | 2009年4月27日 (月) 22時15分
A7
 端数の生じ方によって対応策が異なりますので、一般論として教えるのは難しいですね。

Q8
僕は,検察官を目指していた修習生ですが,検察官になることができませんでした。今は志望者が多く,競争が激化しているようです。うまく気持ちを切り替えることができず,少し悩んでいます。何かアドバイスをいただけませんか。
投稿: poi | 2009年4月28日 (火) 23時46分
A8
自分の希望職種につけない人は、日本全国に山のようにいます。
現実を見てください。

Q9
善管注意義務違反と過失の区別について質問させてください。
葉玉先生の立証責任の分配論、すなわちどちらがどのような事実を立証するかという点については、概ね共感することができました。

しかし、そのような観点のみから任務懈怠と過失の区別の議論を進めることが果たして妥当なのか疑問があります。
つまり、先生の指摘される立証責任の分配の観点は、「間接反証」の問題や「事実上の推定」の問題として解消可能な点ばかりであり、かならずしも先生のいう帰結(善管注意義務違反と過失はあらゆる場合に区別可能であり、区別しなければならないという帰結)を導かないように思います。つまり、善管注意義務と過失とを(一定の場合に)同じく考えたとしても解決可能な問題と思います(つまり、②、③の類型に関しましては、善管注意義務と過失とを同じく考えたとしても、先生のおっしゃるような妥当な結論を導くことは可能だと思います。)。

葉玉先生は、暗黙のうちに民法にいうところの善管注意義務の意味と会社法にいうところの善管注意義務の意味とを区別しているように見受けられますが、会社法330条の「委任に関する規定にしたがう」との規定の存在により、条文上厳しいように思います。

民法上の委任契約における善管注意義務違反は、個別具体的な事情をもとに判断されることと解されており、まさに過失の問題と重なるように議論されていると思います。このことからすると、会社法においても、善管注意義務違反の意味は、同じように解釈されるのが本来的なところではないでしょうか。

先生のご説明は、おそらく、会社法の場面においては、民法と異なり、善管注意義務違反の判断を、「取締役が具体的に把握していた情報ではなく、会社が把握していた情報を前提とすべきである」との見解に立ち、取締役が具体的に把握していたかどうかなどの点は過失の問題で議論すべきとのお考えだと思います。

しかし、この問題も結局は、会社が把握していた情報を前提として著しく不合理な決定がされた場合には、個々の取締役についても民法上のものと同じ善管注意義務違反が一応推定されるが、個々の取締役に関する事情について取締役側が主張・立証をすることによって、その推定を妨げることができるという説明で十分であると思います(つまり、あえて会社法上の善管注意義務を民法のものと別異に考える必要はないと思いますし、善管注意義務を民法のものと同義で捉えれば善管注意義務と過失の区別はやはり困難と言わざるをえないと思います。)。

以上のように考えると、おそらく、民法の善管注意義務と会社法の注意義務とを別異に捉える実質的な理由(ある意味形式的ですが)は、会社法428条が「任務懈怠」と「責めに帰すべき事由」を分けているという点を説明できるという点です。しかし、428条にとらわれると今度は以上に述べたような330条との整合性を欠いてしまう結論を招く気がいたします。

とりとめがなくなってしまい申し訳ございませんが、何かしらのレスをお願いいたします。

投稿: AAA | 2009年4月28日 (火) 23時52分
A9
任務懈怠と過失を分けて考えない見解でも、実質的に立証責任の転換を図ることは理論的に可能ですが、間接反証にせよ、事実上の推定にせよ、ある事実から経験則によって導かれる事実があるからこそ、できることであり、取締役の責任が問題となる事例で、本当にそのような経験則が存在するか、微妙です。
 また、当該見解は、会社が法令違反行為を行った場合についてまで、「過失」として一体的に考えるのでしょうか。私は、簡単に分けられる事例についてまで、一体的にとらえた上、過失の立証責任を請求者側に負わせるのはおかしいと思います。
 330条は強行法規であり、契約自由を前提とする善管注意義務とは異なります。もし会社法が民法の議論をそのまま適用するつもりならば、330条など不要のはずで、なぜ330条が置かれているのかを考える必要があります。
 善管注意義務の内容は、民法では、第一次的には、契約の内容に関する当事者の意思解釈から導かれるのに対し、会社法330条は、そのような考え方を採りません。民法における善管注意義務の議論が、強行法規を前提としたときにどれほど通用するのかを検討する必要があると思います。
 また、「428条にとらわれると今度は以上に述べたような330条との整合性を欠いてしまう結論を招く気がいたします。」という考え方はおかしいと思います。会社法の善管注意義務を解釈するのですから、428条や330条が存在することを前提に解釈すべきであり、428条や330条と矛盾する解釈をすることは採用できません。

Q10

はじめまして,取調の可視化に関するお答えに疑問があります。
>可視化するならば、短時間の取調べに留める必要があります。これは、録画コストだけではなく、録画した取調状況を、裁判関係者(検事・弁護士・裁判官・裁判員)が見るコストを考えると不可避です。

とありますが,すべての取調を録画しても,それをすべて見る必要はないはずです。可視化は,任意性を疑わせるような取調があったか無かったかを判断するためですから,被告人が不当な取調があったと主張する時期の取調の録画だけを見ればよいはずです。取調の最初から最後まで任意性を失わせる不当な取調べをすることは考えがたく,仮に最初から最後まで不当な取調であったのなら,最初だけ見ればわかるはずです。
取調の全過程が可視化されると,不当な取調は抑制されるはずですから,任意性がないとの主張自体なくなり,録画を見る機会そのものは不要になると思います。

投稿: インビーム | 2009年4月30日 (木) 02時15分
A10
そんなに単純なものではありません。
まず、被告人が、時期を特定できるとは限りません。特定できなければ、全部見ていくしかありません。
また、一言で任意性が飛ぶことは希であり、任意性を疑わせるような言動を丹念にたどってはじめて取調官の言動が被告人の自白に与えた影響を明らかにすることができます。
 また、取調の全課程が可視化されても、自白したことが不利だと考える被告人が任意性の主張をすることは、絶対になくならないと思います。すべての被告人が合理的な行動をとるわけではないのえす。もし抽象的な任意性の主張をする被告人がでてきたら、検事も弁護士も裁判官も全部見なければならなくなります。

Q11
そこで、ひとつ教えて頂きたいのですが、新会社法では、株主総会後の決算の訂正が認められるけれど、いくつか条件を満たさないといけないと聞いたのですが、どのような条件かご存知でしょうか?

私の勤めている日本支社の、親会社が子会社を作り、その子会社と契約を結ぶことになったのですが、そこが2008年度分のサービス料を払うと言ってきたのです。 もう決算も株主総会も終わった今ごろになって。 (もともとそういう契約だったのですが、12月の締めになっても何も言ってこないので)
投稿: 利絵子 | 2009年4月30日 (木) 15時42分
A11
おっしゃるような事例では、決算の訂正は無理だと思います。

Q12
①847条で212条1項の支払を求める訴えが規定されているのに、なぜ462条の支払を求める訴えは規定されていないのか?
②212条1項2号については取締役の支払義務が規定されている(213条)のに、なぜ212条1項1号について、取締役の支払義務が規定されていないのか?
投稿: さとう | 2009年5月 2日 (土) 16時39分
A12
①462条は、債権者保護のための責任だからです。462における株主は、平等に配当をもらった立場であり、責任を追及する立場ではありません
①1号は、取締役と通じることが要件となっているので、何も規定しなくても423条の責任が生じるからでしょう。

Q13

葉玉式方法論マニアです。脱時空勉強術などの先生独自の方法論はどのようにつくり上げたのですか?そのような方法論は実践の中でつくり上げられるとしても、単に試行錯誤を繰り返しているだけでは方法論は生み出されませんよね。なにかヒントをください。なにかの本を読むべきでしょうか。

投稿: デューイ | 2009年5月 3日 (日) 00時13分
A13
私は、中学高校時代の試験勉強に始まる試験人生の中で身につけました。
本を読むよりも、人から聞いた話などが多かったです。

Q14

【個別株主通知の受付票について】
大変お忙しい中恐縮ですが、前々回の記事「会社訴訟・非訟と個別株主通知」に関して、質問させてください。

この記事の中で、

>受付票は、振替法が義務づけている制度ではありませんが、
>株主が口座管理機関に個別株主通知の請求をしたときには、
>必ず交付される実務になっていますので、
>  個別株主通知をしたこと
>  請求日
>  株式数
>等を確認するには最適です。
とあります。
しかし、受付票に、「株式数」は記載されないように思えるのですが、いかがでしょうか??

私が何か基本的なところで勘違いしているだけかもしれないのですが、実務で悩んでしまっているので、なにとぞ御教示をお願い申し上げます。
投稿: HH | 2009年5月 4日 (月) 15時00分
A14
すいません。確かに株式数は受付票には記載されませんでした。

Q15
これまではずっと就職をするつもりだったのですが、どうしても医療過誤の問題に関わりたいとの思いを抱いたことから、今年になって法律の勉強を始めました。
1月から勉強して今やっと七法を一回ししたところです。

質問なのですが、今年未習コースを受験し入学すべきでしょうか?

私としては、司法試験の基礎はロースクールで習っても自分で勉強しても同じように身に付くのではないかと思うこと、また来年の旧試と既習を受験するという身近な目標を立てることでより危機感をもって勉強できるのではないかと思うことから、今年も無謀ながら既習のみチャレンジしてみようかと思うのです。

ただ、既習のみの受験だと浪人の可能性が高まるのも事実です。親は私に学生の身分がなくなるのは嫌だという思いが強いこと、浪人して一人で勉強するよりもロースクールに入学したほうが勉強がはかどるのではないかということ、入試や就職で不利になるのではないかということから、今年の未習受験を薦めています。

特にロー入試の段階で大学既卒者は不利に扱われるのかを考えると、私も不安になります。(就職についてはGPAや新試の成績での挽回も可能かと思うので)
投稿: aki | 2009年5月 5日 (火) 20時58分
A15
akiさんの実力が分からないので、適切なアドバイスをすることは困難ですが、浪人するより、未習に入った方がいいと思います。

Q16
会計監査人設置会社における計算書類の承認特則要件の件です。

会社計算規則が平成21年4月1日に改正されたことにより、同規則135条(改正前163条)が規定する承認特則要件は、「次の各号(監査役設置会社であって監査役会設置会社でない株式会社にあっては、第3号を除く。)のいずれにも該当すること」とされ、改正前同規則と比較すると(括弧書き)が追加されました。

改正前においては、改正前163条が規定する承認特則要件は「次のいずれにも該当すること」とされ、改正前163条3号に「会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと」とあるため、計算書類について定時株主総会の承認を要しない株式会社は、監査役会設置会社または委員会設置会社に限定されている、と解されていたように思います。(それとも、改正前においても、監査役会設置会社でない監査役設置会社は、承認特則を適用することが可能である、と解されていたのでしょうか。)

この度の改正によって、「監査役設置会社であって監査役会設置会社でない株式会社にあっては、第3号を除く」と確認的に記載がされたことにより、監査役会設置会社でない監査役設置会社においても、会計監査人設置会社であって、かつ、改正後135条1,2,4,5号の要件すべてに該当すれば、承認特則の適用が可能である、との認識でよろしいでしょうか。
投稿: ツェーベーツェー | 2009年5月 5日 (火) 22時43分
そうです。

いつもどんな質問にも答えてくれる葉玉先生に甘えて、ひとつ知恵をお貸しください。

Q17
まったく勉強もしないし、人格向上の努力もしない親が子供に向かって「勉強しなさい!努力しなさい!」といいます。
子供は「自分だって勉強も努力もしないくせに!」といいます。

このとき、親と子供はどちらが正しいのでしょうか?理由は?
私はやっぱり親のほうが正しいと直感的に思うのですが、理由がはっきりしません。
知恵をお貸しください。

投稿: 相談者 | 2009年5月 7日 (木) 04時30分
A17
親が正しいでしょう。
親は、子供に向かって「お父さんのような人生でよければ、勉強も努力もいらないよ。でも、結構、悲しいよ」と言えば、子供はゾッとするでしょう。

Q18
3年ほど前からこのブログを楽しませていただいているものです。
特例有限会社の株式の譲渡承認のことでどうしてもわからないことがあり、ここでお伺いしても良いものかどうか迷ったのですが、お伺いさせていただきます。

甲さん:特例有限会社Xの株式を100%所有している。
Cさん:甲さんの子供
特例有限会社X:取締役は代表者の甲さんとその妻乙さん

このたび、甲さんの所有しているX株をすべてCさんに贈与しようと考えているのですが、
この場合、甲さんはX社に対して譲渡承認申請をすると思うのですが、
その申請を受けたX社は特別利害関係者である甲さんしか株主がいないので、
決議が出来ないと思うのですが、この場合どのようにすれば合法的にX株を贈与できるのでしょうか?
投稿: 会社法を独学で勉強しているサラリーマン | 2009年5月 7日 (木) 22時29分
A18
株主全員の同意があるから、贈与できます。

Q19
市民運動的な株主代表訴訟の提訴を行ない、訴訟の追行過程において政治的、社会的目的の達成に拘泥する訴訟活動を行なう場合、「悪意」(847条8項)が認められるとともに、提訴請求権の濫用(847条1項但書)にも当たるのでしょうか?提訴請求権の濫用と担保提供の関係がよくわかりません。

投稿: ただし | 2009年5月 8日 (金) 01時10分
A19
847条8項は、取締役に対する損害をあたえる場合、847条1項ただし書は会社に対する損害を与える場合です。

Q20
葉玉先生の母校の、東大法学部の最優秀層(及びそれに準ずる方々)は、予備試験がスタートすれば、

・学部3年時に予備試験に合格
・学部4年時に新司法試験に合格

というルートを経由して法律家を目指すであろうことは想像に難くなく、それ故にこそ、旧司浪人や3振法務博士の方々にとって、予備試験につけ入る隙は、残念ながら、微塵も残されていないのではないかなぁ、と危惧しています。

この点について、先生はどのようにお考えでしょうか。

投稿: 石田三之介 | 2009年5月 8日 (金) 12時28分
A20
私の頃の旧司法試験では、東大法学部の3年4年がかなり受験していましたが、現役で合格する数は一握りで、その多くは、他大学を含む浪人でした。あまり心配はいりません。

Q21
答案練習会に参加すべきかどうかの相談です。
 ロースクールで無料の択一が月に2回の頻度で答案練習会があります。参加すべきでしょうか。頭に入ってないものを練習しても仕方ないように思う一方、強制的に問題を解くことはいいことだと思い決めかねています。先生はどう思われますか。
 ちなみに、私はロースクール未修2年生です。普段の勉強内容は、授業の予習復習に加えて、基本書や問題集等を使って会社法100問の巻末に紹介されているような勉強をしています。ですから、択一はほとんど手をつけていません。
投稿: tora | 2009年5月11日 (月) 20時01分
A21
参加してください。書くことにより、何を学ぶべきかを実感できます。

Q22
ひとつ教えていただきたいのですが,会社法106条本文の「権利を行使することができない」との規定ぶりからすると,株主が亡くなり相続人の共有状態にあるが,相続人が紛争中で会社法106条本文の通知がなく,かつ,会社の方から同条但書の同意をしない場合,当該共有株式については,定足数算定の基礎となる「議決権を行使することができる株主の議決権」(会社法309条1項他)に算入しないという考え方でよろしいでしょうか?
投稿: ポケット | 2009年5月12日 (火) 13時05分
A22
あまり考えたことはありませんでしたが、理屈の上ではそうなりそうですね。
ただ、相続時の名義書換請求で、共同相続ならば、必ず代表者を記載させるように実務上工夫しているので、あまり起こらない問題かもしれません。

Q23

択一試験の勉強方法で質問です。

解答への到達スピードが遅いのが今悩みです。
その原因として、憲法や刑法の穴埋めの事務作業が遅いんですが、
どのような勉強が効果的でしょうか?
1問3分以上は確実にかかっています。

INPUTが足りないのか、output足りないのでしょうか?

択一の合格レベルというのは各肢の○、×を即答できるレベルをさすのでしょうか?

投稿: 択一受験生 | 2009年5月13日 (水) 12時52分
A23
outputが足りません。それと、穴埋めについての解き方のノウハウが足りないのでしょう。

Q24
 葉玉先生、こんばんわ。論文答練の選び方について質問させてください。

 以前、「添削の内容はあまり気にしなくてよい」との回答をいただきましたが、解説講義についてはどうでしょうか。
 受講を考えていた答練の解説をストリーミングで見てみたのですが、そこでの解説は「論点の知識」は講義してくれますが、一番重要な「どのような処理手順で解いていくか」についてはストリーミングの中では説明がありませんでした。
 葉玉先生は添削の内容と同様、解説講義についても内容はあまり気にしなくてよいとお考えでしょうか。
投稿: 不孤 | 2009年5月14日 (木) 19時59分
A24
講義は、誰が講師かによって、ぜんぜん違います。論点解説でも、いい講義なら受けた方がよいと思います。

Q25
①見せ金について払込取扱い機関が悪意・重過失である場合に
かかる機関が保管証明責任(64条2項)を負うとの見解があります。
保管証明責任は64条2項の文言を見ると、
「金銭の返還に関する制限」を
「成立後の株式会社に対抗できない」と書かれており、
例えば預け合いの場合に払込金の返還を拒否できないと事だと思います。
しかし、見せ金の場合には、預け合いと異なり
借入金を返済するまでは払込金を引き出せない
との特約がないため
もともと拒否できないのではないでしょうか?
とすれば、見せ金の場合の保管証明責任とは何を意味するのでしょうか?
A25
その考え方は、私は取りえないと思っています。

Q26
②対内的にも対外的にも取締役のような業務をしているが取締役ではない
いわゆる事実上の取締役に429条1項を類推する見解があります。
しかし事実上の取締役に対会社の場合にも、
423条1項を類推し責任追及する
事は可能でしょうか?

ちなみに私はできないと考えてます。
第3者にはその者が取締役かわかりにくいので保護する必要があるのに
対して
会社にとってはその者が取締役であることは明らかだからです。
このような理解で正しいでしょうか?
投稿: F | 2009年5月15日 (金) 19時31分
A26
そういう考え方でもよろしいと思います。

Q27
「89年版私の司法試験現役合格作戦」の中に葉玉先生の体験記「『今年はだめだ。来年に賭けよう』では一生受からない」を発見しました。体験記の中では、論点ブロックのカード化、参考答案の論理の流れのまとめが具体的な勉強方法として挙げられていましたが、カードの内容や論理の流れを答案等に再現できるレベルまで記憶するためにはどのような方法をとられたのでしょうか?(6月4日のセミナーでお会いできるのを楽しみにしています。)
投稿: ポニョ | 2009年5月17日 (日) 09時53分
A27
キーワードと流れは繰り返しカードを見て暗記し、あとは、たくさん論文を書いて文章化するという方法で記憶しました。

Q28
葉玉先生は、条文の素読は不要と考えていらっしゃるようですが、会社法・商法で択一9割以上を確実に確保するためには、どのような勉強方法が有効だと思われますか。
投稿: もも | 2009年5月17日 (日) 10時47分
A28
条文と関連づけながら、INPUT、OUTPUTを行う。
資料を限定し、繰り返し勉強する。たとえば、会社法100問を繰り返しやれば、たいていの問題は解けるようになるはずです。

Q29
A社を存続会社とし、B社・C社を消滅会社とする吸収合併をする場合、B社(又はC社)の吸収合併契約承認議案には、C社(又はB社)の最終事業年度に係る計算書類等の添付は不要となると考えてよろしいのでしょうか。
会社法施行規則182条6項1号を見る限り、存続会社(A社)の最終事業年度に係る計算書類等だけで良いように思うのですが...
投稿: 一服 | 2009年5月18日 (月) 14時36分
A29
そうです。

Q30

特別損失を計上した会社において、役員報酬を減額することは、当然のような気がしますが、各社のリリースを見ると、ほとんどの場合、監査役も報酬を返上しているようです。減額ではなく、自主返上ではありますが、会社が大きな損失を被るような状況に至ったのは、監査役にも責任があると考えるべきなのでしょうか?

投稿: ポニョ | 2009年5月18日 (月) 17時29分
A30
監査役には責任はないでしょう。

Q31
監査役が4名いて、補欠監査役を1名予選している(誰の補欠までかは定めていない)大会社において、任期を2年残している監査役と、任期を1年残している監査役が全く同時に辞任したという場合、補欠監査役はどちらの後任となるのでしょうか? 定款に、補欠として選任された監査役の任期は退任した監査役に任期の残存期間と定めている場合、どちらの補欠になるかにより、任期が違ってくるので、非常に気になりました。どちらの後任とするか、会社が選ぶことができるのでしょうか?
投稿: 悩める株式課員 | 2009年5月18日 (月) 20時26分
A31
補欠選任時の株主総会決議の趣旨によりますが、会社が選ぶことになると思います。

Q32
はじめまして。ロースクールのゼミで、356条の「承認」とは事前承認のことであり、事後承認は駄目だとの、生徒による発言がありました。理由は?と聞いたところ、『神田の基本書にそう書いてある。』でした。ただ、『神田の基本書に、理由の記述はない』とのことでした。事後承認はどうして駄目なのでしょうか?同条は、取締役に対する行為規範でもあるからという理由でよいのでしょうか?
投稿: 桜井 | 2009年5月19日 (火) 22時38分
A32
条文の書き方からして、事前承認です。事後承認は通常「追認」でしょう。
実質的にも356条の承認をえずに利益相反取引等をやれば、それが任務懈怠になり、取締役に損害賠償責任が生じます。取締役の責任は、株主全員の同意がなければ免除できませんから、取締役会の事後承認で責任が消えるのはまずいです。

Q33
インサイダー取引に関し、お教え願います。
従業員持株会における退職時の買取請求権(払い戻しをうける権利)の行使は、インサイダー取引の適用除外には該当しない、という理解で良いのでしょうか。
例えば、従業員が退職するに伴い、従業員が持株を持株会に戻し、払い戻しを時価でうけるとします。規約には特に定めがないため、たまたま従業員が退職する時期が重要事実の公表前であり、時価が重要事実の公表後には下がることが予見されていたにもかかわらず、退職したら自動的にそのときの時価で払い戻す、という運用がなされていた場合です。
こうした場合にはインサイダーに該当しないように、あらかじめ規約で時価の算定時期と、その払い戻し時期を制限し(1ヶ月後に払い戻す等)ておくことが賢明なのでしょうか。
それとも、そもそもインサイダーの適用除外に該当するから、特に定めておかず自動的に払い戻す、という運用でも問題ない、ということになるのでしょうか。

http://shoko-hajime.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_e61c.html

こちらの見解では(単元未満株の買取請求権の場合ですが)、適用除外に該当しないと考えられるため、規約でインサイダー防止のための規定を定めておくべきだとは感じましたが。
投稿: | 2009年5月20日 (水) 11時09分
A33
時価で払い戻すのは、インサイダーになりえます。
ただし、規定の仕方によっては、知る前契約で適用除外になる可能性もあります。

Q34
423条3項3号による任務懈怠推定は、取締役会の承認決議に特別利害関係人が参加していた結果決議が違法無効である場合にも、依然として働くのでしょうか?
投稿: XYLA | 2009年5月20日 (水) 12時33分
A34
任務懈怠の推定は、いつでも働きます。

Q35
株主の死亡後の株主数のカウント方法について教えていただけませんか?
例えば、株主総数ABCの3名の会社があったとします。この場合において、株主Cが死亡し、Cの法定相続人がDE2名、遺産分割協議は成立しておりません。
 このとき、株主総数は3名とカウントするという理解で正しいでしょうか?
投稿: 登記職人見習中 | 2009年5月23日 (土) 01時02分
A35
「株主総数」は何のための数でしょうか?
名義書換がなければ、会社にとっては、3名です。

Q36
未修1年ですが、先生は論文を書く勉強がよいということなので、今は論証ノート作成と論文を書く勉強をしています。

これと並行して択一の勉強もすべきでしょうか?
去年から択一の配点が下がりあまり択一の勉強に比重を置くべきでないと思うので迷ってます。それとも、択一の勉強の過程で論文の能力も磨かれるのでしょうか。

また、ほぼゼロからですが来年の旧試を受けるという選択肢はどうでしょうか?先生のいうとおり試験勉強をする過程で能力がつくとも思えるのですが、いかんせん合格者数が低すぎて現実味がなさすぎて…。
投稿: ニシコイ | 2009年5月23日 (土) 21時13分
A36
択一は、1年のときから、習った分野の問題をどんどん解いてください。

旧司法試験は受ける必要ありません。

Q37
漢検協会理事が背任罪というニュースをみました。
自己(A)のペーパーカンパニー(B)に、会計事務の処理権限がある社員(A)が
自社(C)の通帳やカードを使って金を振り込んだならば、横領というより、背任でしょうか?
投稿: 新司法試験受験生 | 2009年5月24日 (日) 11時46分
A37
理論的には、背任が素直だと思いますが、実務では、業務上横領にすることもあります。
銀行預金というのは、難しくて、たとえば、預金者をだまして振り込み送金させれば、2項詐欺ではなく、1項詐欺で起訴している例がほとんどです。
この点については、私は、河上和雄古希記念論文集で、新しい「財物」概念が必要であるという論文を書いたことがあります。」

Q38
書面による議決権の行使と、委任状による議決権の代理行使が重複してなされた場合、これをどのように取り扱うべきでしょうか?
基本書や100問に記述が見当たらず、質問させていただきました。
投稿: ついでに | 2009年5月25日 (月) 01時27分

A38
最新の意思が優先するので、委任状による議決権代理行使の方が優先するのが原則です。
もっとも、委任状に議決権行使書面を添付させる等の方法により、重複行使を防止することも可能です。

Q39
昨日(5/26)日本監査役協会主催の経営リスクマネジメント講座で有意義で楽しいお話をありがとうございました。

さて、資本勘定の振替え(資本準備金⇒その他資本剰余金⇒損失の処理)には株主総会の決議が必要と理解していますが、ある会社で下記のような事例があることを発見しました。どんな問題があるでしょうか。

H17年3月期の株主総会(H17年6月)に「資本準備金をその他資本剰余金に振替える議案」が提出され決議されています。その結果、H18年3月末のBSでは資本準備金が減少し、その他資本剰余金が同額増加しています。

H18年3月期の株主総会(H18年6月)には資本勘定の振替えに関わる議案は提出されていませんが、H19年3月末のBSでは、その他資本剰余金が取り崩され、繰越利益剰余金の補填に充てられています。

株主総会の決議を経ず、「その他資本剰余金」を「その他利益剰余金」に振替えるというようなことができるのでしょうか。会社法違反のような気がするのですがいかがでしょうか。違反の場合、どのような是正が必要になるのでしょうか。

A39
その他資本剰余金を、その他利益剰余金に振替ることはできません。

そうした処理が故意に行われたとすれば、そもそも、当該計算書類は確定していないことになるかもしれません。
そうでなくても、過年度修正をする必要はありそうです。

Q40
私は公認会計士試験の受験生ですが、
利益相反取引規制について質問させてください。
会社が利益相反取引を行う場合で、株主総会または取締役会の承認がない場合の取引の効果については明文規定がなく論点となっていますが、私が使っている専門学校のテキストには
「この点、原則として無権代表行為として無効であると解する。なぜなら、承認を経た場合は民法108条を適用しないとする356条2項の反対解釈から承認を経た場合には民法108条違反の場合と同様、無権代表行為になると解されるし、取締役・執行役が地位を利用して会社利益を犠牲にすることを防止しようとした本条の実効性を確保するために、無効と解する必要があるからである。」
と、記述されています。
確かに代表取締役が承認を受けずに直接取引を行う場合には、
民法108条の適用により無権代表行為になりますが、
それ以外の場合、例えば代表権を有しない取締役が直接取引を
行う場合には民法108条の適用を受けず無権代表行為にはならない
ので上記の論証はあまりよくないのではないかと思うのですが、
投稿: 受験生 | 2009年5月27日 (水) 21時44分
A40
おっしゃるとおり、利益相反取引は、自己取引や双方代理より広いので、それを理由に無権代表とするのは、あまりよくないと思います。
判例・通説は、相対的無効説です。

Q41
特別決議は、3分の2以上の賛成多数で可決だと思います(会社法309条2項)。

そこで、当該会社での3分の2が4万であるときに、3万9千950の賛成票しか集まらず、反対票が2万であるとどうなるのでしょうか?

否決ということなのでしょうか??
しかし、そうすると賛成者の方が反対者より多くても事実上、反対者の意見が採用されたのと同じことになってしまい不当にも思えるのですが・・・・

投稿: 学部2年生 | 2009年5月30日 (土) 17時10分
A41
特別決議は、過半数ではなく、3分の2の賛成で決議が成立する以上、賛成者より反対者の数が少なくても、否決されるのは当然です。
その結論は、反対者の意見が通ったというよりも、「現状維持」となったというだけで、別に不当ではありません。

Q42
従業員持株会について質問です。
T&A №304の『SAMMY'S Cafe』拝見しました。

そのなかで、「重要事実を知っている者が、持株会からの退会することはインサイダー取引に該当しない。持株会が当該従業員のための株式の購入を行わないため」とコメントされていますが、退会時に、単元未満株式の買取・買増行為がある場合は、インサイダー取引に該当するという理解で宜しでしょうか?

該当する場合、インサイダー取引を回避するためには、退会時期を遅らせる措置をとる必要があるかと思いますが、これでは従業員にとって持株会の利便性が低くなります。退会時の単元未満株式の買取・買増行為をインサイダー取引に該当しないようにする方法はありますでしょうか?
(持株会と当該従業員のクロ・クロ取引といったことはできるのでしょうか?)
投稿: 紫陽花の時期 | 2009年5月31日 (日) 17時47分
A42
理論的には、単元未満株式の買取・買増がインサイダー取引に該当することはありえます。
回避手段は、いくつかありえますが、どの方法にしろ、丁寧に工夫しないとインサイダー取引と評価されるおそれがあるので、ここで紹介するのは差し控えます。
クロクロ取引も、一つの手段です。ただ、持株会の代表者に未公表の重要事実を完全に伝えきれるのか、守秘義務との関係は大丈夫か、代表者が持株会以外で取引できなくなるがそれでよいか等の問題はあります。

Q43
先日、新会社法の本を探しておりまして、先生の「論点解説 新・会社法 千問の道標」が、各論点間のリンクなどとても細やかに整理されて書かれていて、感動して買わさせていただきました。

私は今、昔に出来た合資会社について調べておりまして、恐縮ですが先生に質問させて下さい。

明治や大正時代に設立された合資会社の場合、今と貨幣価値が違いますので、会社の資本全部が「1000円」で、そのうち「100円」を有限責任社員Aさんが出資した、というような場合があると思います。

Aさんが今、この合資会社から退社する場合(Aさんご長命です)、この合資会社が成功してその企業価値が10億円相当になっていて、外部からの債務が0円ならば、Aさんは持分払戻で1億円を合資会社からもらえる・・・と思います(あってますでしょうか?)。

では、この合資会社が経営を失敗していて、債務が10億円ある場合、Aさんは、100円の責任を取ればよろしいのでしょうか?1億円なのでしょうか?それとも別個の法律か何かがあるのでしょうか?

稚拙なことを伺って申し訳ありません(むしろ、めちゃくちゃアホなことを伺っておりますような気が・・・(ノ_-。))。
ですが、何を見ましても、「千問の道標」Q769を拝見いたしましても、「出資の価額」という言葉しか見つけられないのです。
本当に100円でよいのでしょうか??
投稿: 六月 | 2009年6月 1日 (月) 18時20分
A43
100円の出資をすでに行っているのならば、Aさんは、既に責任を果たしており、何の責任も負いません。

Q44
株主総会を控え、剰余金の分配可能額のチェックをしていたところ、以下の疑問が出てきました。

・投資有価証券の含み損の場合は、「その他有価証券評価差額金」のマイナス金額を分配可能額から控除します。
・一方で、ヘッジ会計を適用中のデリバティブが評価損となった場合、評価換算差額金の「繰延ヘッジ損益」の値はマイナスとなりますが、こちらは控除しなくてもよいのでしょうか。
・計算規則の条文を見ても、有価証券と土地の再評価差額金が出てくるだけで、繰延ヘッジ損益は出てきません。
・レベルの低い質問で恐縮です。既出かもしれませんが、よろしくお願いいたします。
投稿: Tax | 2009年6月 4日 (木) 14時52分
A44
繰延ヘッジ損益は、分配可能額からの控除対象とはなっていません。

Q45
可視化に関する議論で、
「現在、自白の任意性で、「強要」に該当するような主張がされること自体非常に少なく、」
とおっしゃっておられるのですが、素朴な疑問として、であれば、録画しても、コストをかけて、裁判官や弁護士が見ることも少ないように思います。

足利事件のような事件で、自白の任意性や取調べの適法性を証言のみで争うことの方が遥かにコストがかかるし、勿論、無実の人を有罪にする可能性も高まるような気がするのですが・・・
投稿: ぞう | 2009年6月 9日 (火) 14時53分
A45
強要に該当するような主張がされないのならば、すべての刑事事件について録画する必要がないのではないでしょうか。
また、任意性の争われた事件で、20日にわたって取り調べられた被疑者の取調録画を全部見るのは、普通は、無理です。裁判員を20日間缶詰にして、毎日、被疑者の取調録画を見せるのが非現実的であるのと同じように、多数の事件を処理している裁判官、検事、弁護士にそれを全部確認させるのは非現実的です。
もし、そういう制度にするのならば、財務省が、録画の反訳の予算をつけてくれることが必要不可欠でしょう。

Q46
可視化とラフジャスティスのお話、大変興味深く拝見しました。

こちらに比べれば、マイナーな論点かもしれませんが、私個人としては、
「取調べ時の弁護士同席を認めること」のほうが、コストの点でも、より現実的かつ有効な人権保障の手法ではないかと思っております。
葉玉先生は、「取調べ時の弁護士同席の可否」をどうお考えですか?ご意見お聞かせ下さい。
投稿: しんじろう | 2009年6月11日 (木) 15時20分
A46
個人的には、取調時の弁護士同席を許したって構わないと思いますが、実際には、問題が山積みでしょう。たとえば、20日間にわたり弁護士を同席させることができる富裕な被疑者はいいですが、その資金のない被疑者は、どうにもなりません。
 そのため、この制度を機能させるためには、弁護士立ち会いのない取調べの拒否権を被疑者に与えることが必要ですが、取調受忍義務というイデオロギー的な問題の解決抜きに、そうした制度を採用することは困難です。

Q47
会社法改正前の,会社が不法行為責任を負う場合の適用条文について質問です。附則2条により,会社法350条が適用されるということでよいのでしょうか。裁判例においても,会社法350条を適用するものがあったり,旧商法261条3項等を適用するものがあったり,まちまちで,ぜひ御教示願いたいです。
投稿: KI | 2009年6月14日 (日) 23時18分
A47
会社法350条であると考えます。

Q48
司法試験の勉強に、音読は有効でしょうか?
ノートを作ることに、意味を感じなくなってきたのです。
先生のお考えをご教授いただけたらとても嬉しいです。
投稿: 音読マン | 2009年6月15日 (月) 21時39分
A48
長時間勉強するためには、五感を適宜使い分けしながら勉強するのが効果的です。
したがって、音読も有効な勉強法の一つです。

しかし、ノートを作ることも重要です。

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2009年4月22日 (水)

善管注意義務

1か月ほど前は、原稿書きの仕事が多くて死にそうだったのですが、その成果
が、また1冊の本になりました。

 会社法マスター115講座【第3版】
(ロータス21)
 本体 2400円+税

であります。

 先月出た
   株券電子化ハンドブック(商事法務)
は、実務本、特に弁護士に必携の本にしようという発想で作ったのに対し、会
社法マスター115講座【第3版】は、初学者から専門家まで、誰でも手軽に
利用できる本をめざした本です。

【第3版】は、私は、昨年、上智のロースクールで第2版を使って授業をした経
験を生かし、学習上も実務上も重要であるにもかかわらず、第2版では記述が
薄かった
   ○代表取締役
   ○善管注意義務と忠実義務
   ○役員などの報酬
   ○利益相反取引
   ○利益供与
   ○事業報告
を補充しました

また、
 「学習の効率化のために、本当に必要な判例だけを厳選した判例要旨集が欲
しい」
というロー生の要望を取り入れ、超重要判例集を巻末に載せています。

 しかも、編集中に、会社法施行規則・会社計算規則のパブコメが始まったも
のですから、
   日本で一番早く会社法施行規則・会社計算規則の改正に対応した本にし
よう
という野望に燃え、最新の会社法施行規則・会社計算規則に対応しました。

 会社法マスター115講座第2版は、会社法の教科書では3本指に入るくらい
売れている定評のあるテキストですし、実務家が会社法の全体像を知るために
必要十分な内容が詰まっているので、私が講師をしているDVD「会社法と実
務」
http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html
でもテキストにしていました。

この第2版をパワーアップした第3版は、幅広い層にお勧めできる本ですので、
会社法の本をお探しの方は、ぜひ書店で手にとって検討対象の一つに加えてい
ただければ幸いです。

 さて、本日は、会社法マスター115講座【第3版】発売を記念いたしまし
て、第3版で加筆した項目の一つである
   善管注意義務
についてお話ししたいと思います。

 善管注意義務については、取締役の責任(423条、429条)との関係を含め、
会社法で最も熱い議論がされているところです。

取締役の責任の発生要件である任務懈怠は、一般に
  善管注意義務違反のことをいう
と理解されており
 ○ 任務懈怠と過失は、同一要件か、別の要件か
 ○ どんな場合に善管注意義務違反となるか
 ○ 経営判断原則の内容と位置づけ
 ○ 内部統制構築義務との関係
等の重要な論点が目白押しです。

しかし、司法試験受験生を見ていると、これらの論点をバラバラに理解してい
ることが多いので、今日は、こうした論点の相互関係を踏まえながら解説しま
す。

まず、「任務懈怠と過失は、同一要件か、別の要件か」という論点です。

この論点については、契約責任論や任務懈怠と過失の区別の困難性を理由とし
て、これらを同一要件と見る見解もありますが、私は、会社法423条では、任
務懈怠と過失は別要件であると解するのが当然だと考えています。

会社法の善管注意義務は強行法規であり、契約自由の原則を基礎とする契約責
任論を適用する前提が欠けていますし、任務懈怠と過失は、明確に区別するこ
とができるから、同一要件と考える必要はないからです。

 私は、任務懈怠と過失の区別について議論が錯綜している理由は
 1 業務執行・意思決定・監督という異なる性質を持つ職務を区別しないま
ま、業務執行の面ばかりが強調されて議論されていること
 2 任務懈怠とは何か、ということを明確にしないまま議論されていること
の2点にあると思います。

 会社の業務の執行は、
 ①取締役会等の意思決定機関が意思を決定し
 ②代表取締役・業務執行取締役等の業務執行機関が、その意思決定に従って
業務を執行する
というプロセスで行われます。
 そして、①や②について、取締役は
 ③他の取締役や従業員の行為を監督
しなければなりません。

 ①から③の職務のうち、よく問題にされるのは、②の業務執行ですが、取締
役の責任の要件を考える上では、①や③に関与した取締役の任務懈怠も統一的
に考える必要があります。

 任務懈怠は、取締役の①から③の権限の行使が
①会社法その他の法令・定款・株主総会の決議に違反する場合(逸脱)
②自己又は第三者の利益を図る目的又は会社に損害を与える目的で行使される
場合(濫用)
③関連業界の通常の経営者を基準として事実に基づく判断が著しく不合理であ
った場合(著しく不合理な判断)
に認められます。

 任務懈怠と過失の区別が最も付きやすいのは、①の権限逸脱の場合です。
 
 たとえば、食品会社の代表取締役Aが、取締役会の決議に基づき、無許可で
医薬品を販売したとしましょう。

 この場合、代表取締役による販売行為は違法であり、任務懈怠となります。
また、その販売行為は、取締役会の決議に基づくものですから、その取締役会
の決議において賛成した取締役も、任務懈怠は認められます。

しかし、例えば、その取締役会の決議で、提案した取締役が、その医薬品を、
医薬品であると説明せず、他の取締役に対し、「外国で見つけてきたおいしい
お菓子です。」と説明していた場合はどうでしょうか。

そのように虚偽の説明がなされた場合、取締役ごとに事実に対する認識の差が
出てくるわけですが、取締役がどのような主観的意図をもっていたにせよ、薬
事法上の許可をえずに医薬品を販売したという違法行為に賛成したのですから
、客観的には任務懈怠を構成するものと考えるべきです(善管注意義務の一内
容である忠実義務(法令、定款等に従って職務を行うべき義務)に違反します
)。

 また、任務懈怠と過失を区別するということは、423条の立証責任の分配を
   任務懈怠=損害賠償の請求者が負担する
   善意・無過失=取締役が負担する
とすることを意味します(逆に区別しない見解では、取締役の悪意・有過失に
ついて請求者が立証責任を負担するということになります)。

 この立証責任の分配という点についても、会社の稟議書や説明資料等にアク
セスすることができない請求者(例えば、代表訴訟における株主)が、各取締
役の認識という主観的要素についてまで、立証責任を負うというのは酷であり
、任務懈怠と過失を区別する方が公平であると思います。

したがって、①の権限逸脱場面では、任務懈怠と過失は、会社の行為が、客観
的に法律に違反しており、取締役がその違法な行為を直接行ったり、その意思
決定に賛成したりしたか否かで、任務懈怠を判断すればよいわけです。

 ①の権限逸脱を、より細かく分類すれば、
 ①-a 行為そのものが法令等に違反する場合
 ①-b  法令等の定める手続に違反して行為が行われる場合
の2つになりますが、いずれにしても、ある行為が法令等に違反しているかど
うかは、客観的に判断することができますので、この点については、経営判断
原則が出てくる余地はありません。

 次に②の権限濫用については、外形上は法律違反の行為ではないが、主観的
意図により任務懈怠となる場合です。

 たとえば、代表取締役が、愛人関係の維持を目的として、取締役会の決議に
基づき、愛人の経営するクラブに適正な利息を付し、かつ、担保をとって多額
の融資を行ったところ、クラブの経営が傾き、担保も値下がりしたため、貸付
が焦げ付いたという事例を考えます。

 この場合は、代表取締役の「愛人関係の維持を目的」がなければ、③の「著
しく不合理な判断」という類型に入りますが、そのような下心がある場合には
、いくら適正な利息・担保を取っていたとしても、「善良な管理者」というこ
とはできず、善管注意義務違反になると解されます。

 つまり、請求者が、「愛人関係の維持を目的としていること」を立証するこ
とにより、代表取締役による融資が権限濫用による任務懈怠行為だと主張する
ことができます。

 この場合、代表取締役は、自己の濫用目的を立証されてしまっているわけで
すから、無過失の反証は、ほぼ不可能ですが、取締役会の決議に賛成した取締
役についても、「代表取締役の愛人関係の維持を目的とした融資」に賛成して
しまったのですから、任務懈怠が認められると考えるべきだと思います。

 取締役が、代表取締役が、他の取締役に対し、その主観的意図を隠していた
場合もありえますが、裁判所で濫用的意図があると立証されるような取引は、
不自然な取引であることが一般的であり、その主観的意図が立証されたときに
、その取引に賛成した取締役に任務懈怠を認めても過酷とはいえません。
 また、取締役は「そのような目的があるとは知らなかったし、実際に知るこ
ともできなかった」という事実を反証すれば、善意無過失で免責されるのです
から、取締役が無過失の立証責任を負担する方が公平であると思います。

最後に、③の「著しく不合理な判断」の類型についてお話しします。

 この③が、「任務懈怠と過失の区別が困難である」と言われる典型的な類型
です。

 たとえば、代表取締役が、通常人ならば絶対にやらないような高リスク低リ
ターンの取引を、取締役会の決議に基づき、行ったという事例を考えます。

 この場合、代表取締役は、法令等に違反する行為を行ってもいないし、権限
乱用の意図もありませんが、
「関連業界の通常の経営者を基準として事実に基づく判断が著しく不合理であ
った場合」
には、その行為は善管注意義務に違反するものと評価されます。

 よく経営判断原則という言葉を耳にしますが、この原則は
 取締役の判断が、関連業界の通常の経営者を基準として事実に基づく判断が
著しく不合理であると認められない限り、善管注意義務に違反しない
という原則であり、③を裏から表現したものです。

 この③の類型で「任務懈怠と過失の区別が困難」という話が持ち出されるの

  法律には、取締役が、どの程度のリスクファクターを認識すれば任務懈怠
が認められるかという明文の要件がない
ということに起因しています。

 すなわち、任務懈怠と過失を区別することができないという論者は
  取締役が、通常の経営者ならば、その行為を中止するほどのリスクファク
ターを認識していたのならば任務懈怠も過失も認められるし、
  それほどのリスクファクターについて認識がなかったのならば、任務懈怠
も過失も認められないはずである
と主張しているわけです。

 しかし、私は、この考え方は、各取締役の認識という過失の要素を「任務懈
怠」の判断要素に先取りしているため、区別ができなくなっているだけだと思
います。

 会社の業務執行は、代表取締役、業務担当取締役、取締役、部長、課長等沢
山の役職員の関与を経て行われるのが一般的であり、ある会社の行為について
、役職員が知っている情報や執行への関与の仕方はバラバラです。

 この認識や関与形態がバラバラな役職員が、決裁規程等に基づき、稟議をあ
げ、場合によっては、取締役会や株主総会の決議を得ることによって、「会社
としての」意思決定や業務執行が行われるわけです。

 このように、ある業務執行や意思決定が、取締役の任務懈怠となるかどうか
を判断する際には、当該業務執行が、集団的な意思決定プロセスを経て集団的
に執行されていることに鑑み、
 ①まず、業務執行自体や意思決定の内容が、会社が把握していた情報を前提
として著しく不合理なものであったかどうかを検討し、そのように客観的に著
しく不合理な意思決定や業務執行に関与した取締役については、任務懈怠を認

 ②各取締役が、当時自分に与えられていた情報や権限等を主張して善意無過
失を立証すべきである
と考えます。

以上のように「任務懈怠」と「過失」の判断プロセスを理解すれば、任務懈怠
と過失を混同することはなくなりますし、実際に行われている裁判も、このよ
うなプロセスで判断されていると思います。

なお、取締役の監督責任についても、①から③の善管注意義務違反の類型が妥
当します。

 ただし、監督権の行使は、多くの場合、不作為による善管注意義務違反が問
題となるため、若干、ひねりが必要で、次のように考えます。
① 権限逸脱 法令等に定められた具体的な監督義務に違反する場合
  (例) 取締役会への出席義務に違反し、欠席した。
      
② 権限濫用 自己の利益を図る目的で監督を怠った場合
  (例) 取締役が、代表取締役から賄賂を受け取り、代表取締役の行為に
ついて詮索することをやめた。

③ 著しく不合理 取締役が、通常の経営者であれば、当然に行使する監督権
の行使を行わず、その監督権の不行使が著しく不合理であるような場合
  (例)代表取締役の背任行為を知ったにもかかわらず、監査役や取締役会
に報告をしない場合
  部下が会社に損害を与える事実を知りながら、これを放置した場合

なお、内部統制システムの構築は、③の著しく不合理な監督権の不行使と言わ
れないようにするために行うもので、具体的には

 その企業の規模等に応じて、適切な内部統制システムが構築され、かつ、そ
のシステムが機能していることを監督すれば、個々の取引について具体的な監
督を行っていないとしても、監督責任を負わない

というものです(内部統制システムの構築については、経営判断原則の適用が
あると言われているのは、内部統制性システムの構築も、③の分類に属する事
項だからです)。

 以上のような任務懈怠と過失の判断プロセスは、取締役の責任に関する条文
構造とも整合的ですし、裁判実務にも沿っていると思います。また、経営判断
原則や内部統制システムの構築の位置づけを合理的に説明することもできます

 「任務懈怠と過失の区別ができない」と嘆くのは簡単ですが、きちんと整理
すれば、区別するのは簡単で、理論的にもすっきりするので、特に司法試験受
験生の皆さんは、頭を整理しておいてください。

(質問コーナー)
Q1
突然の質問で申し訳ありません。
100パーセント子会社による親会社の合併の場合、吸収合併される親会社が持
っている子会社の株式は、合併により存続会社たる子会社の自己株式となり、
子会社の株式資本から控除されるとされています。
合併に際し、吸収合併される親会社の株主に、存続する子会社の株式を付与す
る場合、登記事項としての発行済み株式総数は、子会社の自己株式の消却が行
われない限り、子会社の発行済み株式総数と合併に際して吸収合併された親会
社の株主に付与された株式数の合計になると考えますが、いかがでしょうか。
会計上の処理がなかなか理解できず、悩んでおります。
投稿: さぬきうどん | 2009年4月 1日 (水) 02時06分
A1
そのとおりです。
前段は、会計上の金額の問題、後者は株式数の問題です。

Q2
今回の論点について
「取引債務限定説は捨てました。」「今回の最高裁判決は、ある意味、ほっと
しています。」
とのことですが,本最高裁判決が
 『土地の所有権に基づくAへの真正な登記名義の回復を原因とする所有権移
転登記手続請求(主位的請求)』
について却下した原審判断を結論において是認し,
 『Aとその取締役である被上告人との間で締結された被上告人所有名義の借
用契約の終了に基づく,Aへの真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転
登記手続請求(予備的請求)』
を適法としたのであれば,取引債務限定説のように読めてしまうと思ったので
すが,読み方が間違っているのでしょうか。。。
会社法100問初版第1刷318頁では肯定されているCに対する移転登記請求も甲
株式会社の所有権に基づく請求とすれば,本最高裁判決に照らすと不適法却下
となってしまうのでしょうか?
投稿: 受験間近 | 2009年4月 1日 (水) 04時57分
A2
最高裁の射程をどう考えるかは難しいところです。
ただ、取引を取り消した場合の不当利得返還請求権には、代表訴訟を認めない
と都合が悪いでしょうし、物権変動的移転登記請求権も認めないと都合が悪い
でしょうから、真の意味での「取引債務限定説」は採れないんじゃないでしょ
うか。

Q3
4月1日の(質問コーナー)A12でご回答いただきありがとうございました。ご
回答は、「理論的にはおっしゃるとおりです。ただし、事業報告で書くべきと
きに書かなかったということで、独禁法違反行為のあった事業年度の事業報告
について不記載の違法があったことになります。また、処分があったときに重
要事実として書くべきであるという考え方もあるでしょう。」 ということで
すが、次の2点について確認させていただければと思います。
①「書くべきときに書かなかった・・・不記載の違法があった」とされており
ますが、当局の調査が入ったということを 『法令又は定款に違反する事実そ
の他不当な業務執行が行なわれた事実があるとき』 と判断しなければならな
いということになるのでしょうか。 調査に入られた時点では、会社は違法な
行為があったと考えておらず、処分があったときや調査の過程のなかで違法行
為と判断せざるを得ない状況になって初めて「違法行為があった」と考えると
思うのですが。
②「処分があったときに重要事実として書くべきである」という考え方は、
124条4号ニの内容として記載するのではなく、120条1項9号の内容として記載
するということでしょうか。
投稿: Oh NO! | 2009年4月 1日 (水) 09時32分
A3
① 主観をベースにするか、客観をベースにするかという問題です。私は、客
観的に独禁法違反行為があったとすれば、事業報告に書くべき義務はあるが、
違法性の認識がない場合には、記載者の悪意・過失の問題として処理するべき
だと思います。
 OhNO!さんのように考えるのならば、会社が違法性を認識した処分時に
事業報告に記載すべきであると考えるのが素直でしょうが、私は、客観説を採
ります。
② そうですね。

Q4
今回、ご質問させていただくのは、ロースクールの成績と就職についてです。
現在、私は、某都内私立ロースクールに通っています。先日今年度の履修科目
が決まったところです。
履修の際には、多くの学生が、GPAをあげようとして、いわゆる楽勝科目(
出席と1、2回の発表で履修者のほぼ全員にAがつく)をとろうとします。
そういう科目を中心に履修すれば、必修科目でミスをしてもGPAははねあが
ります。
ところで、いわゆる大手の事務所は、新司合格発表前に募集をするのでローの
成績を大きな考慮要素にしていますよね?
そうすると、上述したような楽勝科目でGPAをあげた人が有利になりはしな
いのでしょうか??
私は、はっきりいって楽勝科目の履修は、Aという成績は残るが、得られるも
のは少ないと思います。

私は、一年間ローで過ごしてみて、ローでは有能な先生の授業に真剣に取り組
めば、法的思考力はかなり研かれると実感しました。これは、新司のみならず
、二回試験にも役立つ土台になるものと考えています。

そのため、今期の履修も、楽勝科目とかではなく、思考力が研かれるであろう
授業を中心に履修しました。
しかし、そういった科目は、いわゆる楽勝科目ではないため簡単にAはつきま
せん(その中でAをとろうと努力するからこそ、力がつくのでしょうけど)。
っていっても、もう履修が決まってしまったので、後戻りはできないのですが
(笑)
先生は、採用に際して、ローの成績はどういった位置付けにあるとお考えです
か??
新司の順位は考慮なさらないのですか??
投稿: 新司まであと一年 | 2009年4月 1日 (水) 13時45分
A4
ローの成績も、新司法試験の順位も、当然、考慮の対象でしょう。
GPAをあげた人に有利なのは当然です。
あなたが、思考力が研かれる授業に取り組むのは、就職のためなのでしょうか
?自分に実力がつくのならば、就職とは関係なしに、その授業に没頭すればよ
いと思います。
GPAはあがらないけれども、就職で思考力が研かれる授業を受けたことを評
価してもらいたいということであれば、それを就職先に説得的にアピールすべ
きですが、相当難しいでしょう。

Q5
私は、今年ロースクール既習を卒業し、本試験を目前に控えているのですが、
ここにきて燃え尽き気味です。

ロースクール入学後すぐ母親の癌が発覚しまして、去年の夏季休講期間中に亡
くなりました。
1年目はそれなりに勉強したつもりでしたが、振り返ってみれば、やはり不足
だったかもしれません。
2年目は春から母の体調が悪化し、介護、通院により、時間が制約され、精神
的にも集中できず、春から開始した選択科目(労働法)の授業についていくの
がやっとで、それ以外は特にしていません。
夏休みはじめに入院し、危篤状態が続きましたので、家族で交代して病室に通
いつめたため、夏休みは全く勉強できませんでした。
葬儀終了後、2週間ほどで後期授業が開始し、やはり勉強不足と思われた労働
法と苦手意識のある行政法、会社法を中心に勉強し、1月の定期試験終了後は
総復習・記憶喚起を行ってきましたが、3月いっぱいで全科目を回し終えたま
した。

ところが、一通りやり終えたところ、今になってやる気喪失してしまいました
。いまさらですが、母が生きているうちに、部屋に引きこもって勉強などせず
に、もっと一緒にいてやればよかったなどと、考えても仕方のないことを考え
たり、他の受験生が勉強していないときに充分勉強していなった自分が受かる
わけないと客観的でないことを考えたりしてしまいます。

司法試験に受かるには客観的に実力も必要ですが、精神的な勢いも重要と思い
ます。先生なら、どう精神コントロールしますか。

投稿: ネネム | 2009年4月 1日 (水) 17時41分
A5
私の母が末期ガンの宣告を受けたとき、私は、検事3年目でした。
母は、会社を経営しており、急に入院となったため、私は、検事をしながら、
母親の看病と、実家の会社の経営の手伝い(資金繰り等)、そして、会社の売
却を同時にしなければなりませんでした。
私は、母が亡くなった後も、会社のM&Aがクロージングを迎えるまでの約5
年間は、「母が生きていたら、自分に何を望むのか」を考えて、自分や家族の
幸せ、そして、会社の従業員の幸せを実現するためにガムシャラにがんばりま
した。私は、会社の銀行借入で10億円の連帯保証をしていましたし、従業員
50人の生活を守らなければならず、「精神をコントロールする」という余裕
もなく、「やるべきことを精一杯やる」しかありませんでした。
ネネムさんが、受からないと思うならば、受からないでしょう。
でも、私の教え子には、試験の前年にお父さんが亡くなって、それでも旧司法
試験に合格した大学3年生の女の子がいました。
肉親の死があったからこそ、やるべきことをガムシャラにやったのだと思いま
す。

Q6
先生のポリシーは、「目の前の仕事を楽しんでやること」とおっしゃっていま
すが
その楽しみ方はどのような方法ですか?
成果か出て結果として楽しいと思うのか。それとも自分なりの楽しくするため
のグッツなどかあるのかなと思い質問させていただきます。
投稿: トモ | 2009年4月 1日 (水) 22時03分
A6
 自分の立てた作戦を確実に遂行するのは楽しいですし
 思う通りにいかないときに、苦しみ、工夫して、なんとかやり遂げるのも楽
しいです。
 楽しくするためのグッズは、「苦しさを楽しむ」マゾヒズムです。

Q7
司法試験論文試験において、法的三段論法が重要といわれていますが、あまり
よくイメージがわきません。

 ①法的三段論法とはどのようなものでしょうか。
 ②また、法的三段論法についてわかりやすく解説している本をご存知でした
ら、ご教示ください。
投稿: 不孤 | 2009年4月 2日 (木) 00時07分
A7
 会社法100問の最後にある勉強の仕方を見てください。

Q8
 さて、私は「5月には二度目の新司挑戦」という立場の者ですが、私も質問
させていただきたく思います。
 
 新司法試験について、予備校データによれば、現役組と浪人組の合格率にほ
とんど差がないということです(既修も未修も)。
 個々人の能力の差はあるにしても、手持ちの時間に大きな差がある以上、全
体として見れば浪人組の方が合格率が上がるに決まっていると思っていたので
、正直驚きです。
 例えば、時間をかけてもどうにもならない「何か」があり、司法試験では「
それ」が問われる側面もあるということなのでしょうか。
 是非、葉玉先生のご意見(できればそれについての対策も)をお聞かせ下さ
い。
投稿: べあ | 2009年4月 2日 (木) 01時04分
A8
 司法試験で1番になるかどうかは、才能もあるかもしれませんが、合格する
かどうかは、勉強時間によって決まります。
 通常、頭が良いと言われる人ほど沢山勉強し、才能がないと嘆く人ほど勉強
しません。
 未習か、既習か、司法試験受験歴があるかないか、など様々な要素が入り交
じっている現時点で、浪人と現役で比べるのはあまり意味はないです。

Q9
このたびの小沢代表公設秘書の逮捕につき、代表の検察批判には首肯しがたい
ところが多くあるのは同感です。
しかし、より一般的に、検察の問題として、
①政治資金規正法上の虚偽記載程度の被疑事実で、48時間+10日+10日の起訴
前勾留、そして起訴後勾留という長期の身柄拘束を続ける正当性につき、重大
な疑問があります。刑訴法上の要件を満たしているとは到底思えません。
付言すれば、自殺の可能性を危惧してのことと考えられますが、それが身柄拘
束を正当化できないことは当然で、脱法行為に他なりません。
次に、
②検察がマスメディアを通じて情報をリークし、世間に有罪の雰囲気を醸成す
る正当性も批判されるべきと考えます。
起訴前にも拘らず、記者クラブを通じ、情報を欲しがるマスコミを手玉にとっ
て、捜査状況・内容をリークし続ける行為は、著しく攻撃防御方法を欠く被疑
者・弁護人側に比して、極めてアンフェアでしょう。今回はこの傾向が顕著で
、不起訴や無罪が許されない(と思い込みすぎている)検察の自信のなさの表
れと思えます。
以上2点につき、お考えをお聞かせ願います。
投稿: そろそろ | 2009年4月 4日 (土) 18時29分
A9
① 政治資金規正法の虚偽記載「程度」という点が理解できません。法定刑も
軽いものではなく、また、企業献金を隠蔽するための虚偽記載であるならば、
罪状としても悪質です。刑訴法上の要件を充たしているからこそ、勾留状が出
たのだと思います。
 ちなみに、勾留されたのは、自殺の可能性を危惧したのではなく、罪証隠滅
のおそれがあったからだと思います。
② 検察が、捜査中にどの程度の事実をマスコミに公表するのかは、大変、難
しい問題です。検察が、マスコミからの取材を完全にシャットアウトすれば、
国民の知る権利を害するとして、批判されるでしょう。また、弁護人の中には
、マスコミのインタビューに答える人もおり、その点でアンフェアだとは思い
ません。
 ちなみに、刑事裁判は、捜査段階のマスコミ情報によって結論が左右される
ことはあまりないので、検察が「有罪の雰囲気を醸成」しても無意味です。
 また、被疑者・弁護人が「著しく攻撃防御方法を欠く」というのは誤った固
定観念です。被疑者は、一番、事件の核心部分を知っており、弁護人が適切に
被疑者から事情を聞き出せば、検察以上の証拠収集も可能な場合も多いのです
。実際、私は、刑事弁護もやりますが、必ずしも検察や警察より不利だとは思
いません。

Q10
私が今回の事件で一番疑問なのは,果たして今回の事件が(実質的な)刑法の
構成要件に該当するのか,ということです。
政治資金規正法では,個人献金は禁止しているが,政治団体からの献金は禁止
していないと理解しています。そうだとすると,仮に資金の拠出元が個人であ
ったとしても,それが政治団体を経由して献金されており,それが政治団体名
義で報告書に記載されている以上,少なくとも刑事罰に処するのは困難なので
はないでしょうか。
確か,だいぶ前の記事で,見せ金について預け合いの刑事罰の規定を「類推」
することはできない,とおっしゃっていましたが,実質的に云々というのが,
刑事法においても妥当するのかどうか疑問に思います。
政治団体からの献金を政治団体からの献金として政治資金収支報告書に記載し
ている場合に,その政治団体が形骸化していて実質的には個人からの献金と同
視でき,それを認識している場合に,刑事罰を科せられるのはなぜなのでしょ
うか。
資金拠出元に関しては,普通は形式説(名義説)をとると思うのですが,こと
政治資金規正法の解釈においては,「法の趣旨を没却する」という言葉で刑事
罰を科すことが正当化されるものなのでしょうか。
投稿: 巷 | 2009年4月 5日 (日) 09時14分
A10
 私は、経済事件の捜査経験が長いせいか、特捜部の法律構成には、違和感を
感じません。政治資金規正法の趣旨が、真実を正確に記載することである以上
、ダミーにより形式的な要件を整える行為は、処罰の対象となると考えます。

Q11
>可視化はラフジャスティスの採用とバーターです。
この意味がよくわかりません。もう少し噛み砕いてお教えいただけないでしょ
うか?
操作・取調べの可視化が、裁判コスト(弁護側・検察側ともに)増加とバータ
ーであると言うのであればわかります。
しかし、なぜラフジャスティスとバーターになるのでしょうか?
むしろ可視化されれば、自白や検面調書の正当性などが高まるでしょうし、正
確な裁判に繋がるというのが一般的な考え方のように思います。
それとも、「捜査の可視化なんかされたら、弁護サイドからの突っ込みどころ
満載になってしまう。強引な自白強要もばれちゃうだろ!だから、ラフジャス
ティスにしてもらわんと、全員無罪になっちゃうじゃないか!」と言う意味な
んでしょうか?
(別に皮肉でもなんでもなく、純粋な疑問です)
捜査の可視化の是非、というのは、多くの一般人が疑問に思う部分ではないか
と思うので、ぜひ葉玉先生のお考えをお聞かせください。
投稿: きたろう | 2009年4月 6日 (月) 12時54分
A11
私がイギリスに在外研究にいったとき、可視化の最も進んだイギリスの被疑者
の取調べは、重大な殺人事件であろうと、30分くらいしか行われないことが
多いと聞きましたし、実際に裁判の証拠を見せて貰ったら、日本ではとても有
罪にならないような証拠で有罪になっている例が多数ありました。

可視化するならば、短時間の取調べに留める必要があります。これは、録画コ
ストだけではなく、録画した取調状況を、裁判関係者(検事・弁護士・裁判官
・裁判員)が見るコストを考えると不可避です。たとえば、20日間連続で10時
間ずつ取調べをしたビデオを、裁判関係者が全部見るのは現実的ではありませ
ん。かといって、反訳させると、さらに莫大なコストがかかります。

短時間の取調べで、事実認定しようとするならば、少ない供述証拠で(犯行に
至る経緯や動機等が不十分でも)、被疑者や参考人の供述の矛盾や変遷等もあ
まり気にせずに、事実認定をしなければなりません。
これがラフジャスティスです。
現在、自白の任意性で、「強要」に該当するような主張がされること自体非常
に少なく、私は、そのような観念論ではなく、より良い事実認定のプロセスを
確保するためには、可視化などない方がよいと思います。

Q12
非上場子会社の80%の株式を親会社が持っており、子会社の取締役3名のうち
、2名が親会社の取締役です。(子会社代表取締役は親会社取締役です。)こ
の場合、子会社取締役会で親会社に対する配当の決議ができるのでしょうか?
投稿: 細マッチョ | 2009年4月 6日 (月) 17時53分
A12
 配当の決議は可能です。配当との関係では特別利害関係はないと考えます。

Q13
「剰余金の配当議案」の記載についての質問ですが、会社法454条1項1号では
「配当財産の種類」を決議しなくてはならない、とされています。
この点について、一般的には「1株当たり金○円」など記載することによって
、種類を金銭とすることを特定されていますが、これについて「金○円との記
載では、配当財産の種類を金銭と特定したことにはならない」とする見解が存
在するようです。
「金○円」と記載した場合でも、「金銭で○円」という意味を含む表現であっ
て、配当財産の種類は特定されていると思いますが、いかがでしょうか? 
投稿: | 2009年4月 7日 (火) 17時13分
A13
「金○円」で、当然、金銭として特定されています。

Q14
司法試験の勉強をしているものです。
勉強しながら、法律家は紛争解決を仕事にするものだと思っています。
自分はほとんど日常では争いごとやケンカをしたことありませんから、紛争の
中に自らはいっていって仕事をできるのかな・・と思ってしまい不安になるこ
とがあります。もし、紛争解決できればとてもやりがいが感じられる仕事だと
思っていますけど
そうはいっても資格をとってから考えるのもよいでしょうか?
投稿: 受験生 | 2009年4月 8日 (水) 10時51分
A14
資格をとってから考えてください。

Q15
金商法上の内部統制におけるリスクマネジメントは、会社法上の内部統制にお
けるリスクマネジメントに包含されると考えても良いのでしょうか?もし、包
含されると考えた場合、金商法上のリスクマネジメントも、弊社の「内部統制
システム構築の基本方針」中の「損失の危険の管理に関する規程その他の体制
」で定められた方針に従って整備されることになると思うのですが、いかがで
しょうか?
投稿: ゴリマッチョ | 2009年4月 9日 (木) 15時22分
A15
基本的には、そのとおりです。
詳しくは過去の記事を見てください。

Q16
 いわゆる取締役選解任権付株式により選任された取締役の任期は,選任後2
年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時
までなのでしょうか?
 選任・解任は,種類株主総会で行うにもかかわらず,会社法上は,定時株主
総会の終結時が任期満了の時点とされていることに疑問を感じています。
投稿: 司法書士X | 2009年4月11日 (土) 16時20分
A16
 そのとおりです。種類株主総会は、定期的に行うものではないので、任期の
基準には向かないんです。
 今の規範であれば、定時総会と同時に種類株主総会を開くので、問題ありま
せん。

Q17
代表取締役(A)を同じくする甲、乙会社間で土地の売買契約を締結する場合
に、取締役の決議においてその代表取締役Aは議決権を行使できるかにつき質
問させてください。
この場合当然に利益相反になりますが、代表取締役Aが特別利害関係人にあた
り議決権を行使できるか否かにつき疑義があります。
 登記実務では、この場合は会社間の取引なので(会社と取締役の取引ではな
い)Aは特別利害関係人にあたらないと解しているようです。(日本法令 事
項別 不動産登記のQ&A200選 登記研究139号49項 454号131項)
 また、特別利害関係人の具体例としては基本書には取締役と会社間の取引と
記載しており、代表取締役を共通する会社間の取引における代表取締役と記載
したものを目にしたことはありません。
 ただ、私見としては、本事例のAは「決議」(会社法369条)に利害関係を持
たないわけがないこと、会社を代表して行う場合にも 取締役の忠実義務違反
をもたらす恐れのある個人的利害関係(特別の利害関係)があると言えるので
はないかと考えております。
 現状の登記実務のあり方及び私見の是非につきご意見を伺えれば幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: 登記職人見習中 | 2009年4月12日 (日) 03時46分
A17
 代表取締役が共通の場合、利益相反取引になるのですから、特別利害関係が
あると考える方が素直だと思います。
 実務上は、一人会社の一人社長みたいな場合が多いので、特別利害関係の範
囲を広げると、違法な議事録ばかりが出てきて大変ですから、緩い方が楽です
が、コンプライアンスの見地からすれば、自分の利益相反取引について、自分
で一票投じるのは、あまりよろしくないので、特別利害関係があるとして処理
する方がよいと思います。

Q18
早速ですが、新司法試験の勉強の仕方について質問させて下さい。
私は、択一の会社法・商法9割(今は、5割にも届かない状態ですが。)を目
指して、判例六法の素読を始めました。
引用条文が多い章は、なかなか次の章に行けず、大変です。
時間を掛けてやっているのだから、漫然と読むのではなくポイントを押さえて
読みたいと思っています。
私なりに、
①主体(ex.「取締役」なのか「取締役会」なのか)
②ただし書き
③文末(「できる」なのか「しなければならない」なのか)
に気を付けて読んでいますが、その他素読をする際に気を付けることがあれば
、アドバイスを頂ければと思います。
投稿: もも | 2009年4月12日 (日) 14時07分
A18
素読はしなくていいんじゃないでしょうか。

Q19
取締役の責任について質問させてください。

423条も429条も任務懈怠が要件だと思うのですが、
文言上、423条は「任務を怠った」と直接的に書いてあるのに対し、
429条は「職務を行うについて」としかありません。
このように表現が違うのはなぜでしょうか?
投稿: くそべて | 2009年4月14日 (火) 09時28分
A19
歴史です。

Q20
「特別の利害関係」は取締役候補者としての欠格事由に該当するのでしょうか

また「特別の利害関係」を整理して理解するためには、どの条文を取り上げれ
ばよいでしょうか?
投稿: ポニョ | 2009年4月14日 (火) 18時28分
A20
欠格事由ではありません。
後段の質問はよく分かりません。
取締役会の議決権と、利益相反取引と、計算書類等ですか?

Q21
現在未修1年のロー生です。
ロースクールの教授は予備校本は論理が見につかないと口をそろえて言います
がそれは本当ですか?
私としては予備校本のほうがわかりやすいので新司対策として問題ないのなら
予備校本メインでやりたいのですが…。
科目ごとの意見や予備校本を使うとき気をつける点などもできればお伺いした
いです。
投稿: SS | 2009年4月15日 (水) 01時09分
A21
基本書でも論理が身につかないものが多いので、予備校本メインでも良いと思
います。

Q22
わが社は中小の同族会社ですが、親族の役員が退職する際は、その役員が保有
する株式を会社がいったん買取り、会社がその子息等に売渡してその者が役員
に就任するといった形をとっています。

そういった決まり事が、定款にではなく、取締役会が規定する株式取扱規定で
定められています。
しかも、その規定には「株式保有資格」という項目があり、株主が死亡したと
きや株主が役員の場合はその退任時に「保有資格」がなくなり、会社指定の譲
受人に譲渡する義務が盛り込まれています。

さらに、会社の決算が赤字でも一期限りなら株式の配当を行うという規定まで
あります。

最近総務?になったばかりなので、正直こういった株式取扱規定が通常のもの
かどうかもわかりませんが、これをこのまま会社法下の現行法規にも通用する
ものなのでしょうか?

また訂正するにしても定款で定めるような株主の権利義務などを株主総会の下
位機関である取締役(取締役会非設置)が定める株式取扱規定にゆだねる事は
適切なのでしょうか?
投稿: 中小企業の総務かな? | 2009年4月15日 (水) 15時56分
A22
その株式取扱規則は、法的には、効力がなさそうですね。
定款できちんと定めれば、法的に有効なものも作れそうですが。

Q23
会社法100問について質問させていただきます。
今,100問の各問題を1枚の紙にまとめて,短時間でざっと復習できるようにし
ております。なので,合計100頁になる予定。
そこで,質問です。
①会社法100問の使い方として,このような方法は適切でしょうか。
②まとめるにあたって,パソコンでも良いのでしょうか。パソコンのほうが早
いし見直すのにきれいだし。答案を書くわけではなく,ノートだからパソコン
でもいいのかなと。
投稿: こんにちは。 | 2009年4月16日 (木) 15時28分
A23
①②ともよろしいと思います。

Q24
強制わいせつ罪の上告審判決で逆転無罪判決がありました。
警察庁で痴漢捜査の検討会議もするそうです。

これまでは目撃者がなくたとえ立証が難しい場合であっても、無実の証明に成
功しない限り、有罪になることが多かったと思います。
今後冤罪のおそれが減るのは良いことですが、同種の事件の場合に、捜査がい
っそう難しくなりそうです。

痴漢の被害に会われた方は大変な心の痛み・苦しみをもっているのはわかりま
す。しかし、満員電車で間違われるのだけは勘弁して、と思ってしまいます。
痴漢捜査のあり方について先生のお考えをお聞かせください。
(疑われた場合の有効な対処も教えていただけますとなお嬉しいです!)
投稿: 満員電車 | 2009年4月17日 (金) 00時34分
A24
痴漢に限らず、被害者の証言しかない事件は沢山あります。私は、被害者の供
述の信用性も、事件ごとに異なるのだから、今回の最高裁判決も、「被害者の
供述しかなければ、無罪」という話ではないと理解しています。
 私の捜査の経験上も、被害者の供述だけで起訴したときもありますし、被害
者の供述だけでは無理と判断して不起訴にしたときもあります。このあたりは
、捜査側で、妙なルールを作らずにケースバイケースで対応した方がよいと思
います。
 
Q25
 会社法マスター115講座第3版を丸沼書店で購入した者です。臨時計算書類
の承認についてご教示賜りたくお願い申し上げます。
 千問のQ713で「臨時計算書類が株主総会の承認を経ずに確定した場合、株主
総会への報告をすることも要しない」とありますが、会社法マスター115講座
第3版 P.179では、一定の要件を満たせば報告で足りるとの記載があります
。441条4項ただし書の法務省令の要件に該当する場合には株主総会の承認は
不要だということはわかりましたが、この場合株主総会への報告は必要なので
しょうか。
投稿: 短答が近くて忙しい50歳 | 2009年4月17日 (金) 16時48分
A25
報告は不要です。

Q26
最近、条文との付き合い方に悩んでおります。
どんな問題であっても、条文があれば先に一言でも触れておかないと、どうし
ても気がすまないのです。 
 
例えば、違法な逮捕に引き続いて勾留請求できるかという論点がありますが、
参考答案などでは、「・・・勾留請求が認められるかが問題となる」と、いき
なり論点の問題提起に入っています。
でも自分の場合、まず勾留請求の条文を指摘しておかないと、どうしても気が
すまないのです。
 
条文を指摘すること自体は大事なことだと思うのですが、例えば訴訟物が売買
代金支払請求である場合でも、民法555条に一言だけでも必ず触れてしまい
ます。
 
条文があるなら条文を指摘して、
解釈はそのあとだと思うのです。
しかしこれは、論文の書き方という観点からは妥当でしょうか?
わざわざ民法555条まで挙げたりするのは細かすぎますかね? 
投稿: ぶるぼん | 2009年4月17日 (金) 21時16分
A26
条文を書くことは良いことです。

Q27
今年の4月1日付の施行規則、計算規則の改正を受けて、4月16日付で、日
本監査役協会の「監査報告の雛形」が一部改正されていますが、その解説では
「今年の3月決算会社が作成する監査報告については、計算規則の条数改正(
具体的には「会計監査人の職務の遂行に関する事項(159条→131条)」
)によって、改正後の条数を記載することになるが、施行規則の改正による条
数変更(具体的には「支配に関する基本方針(127条→118条)」)につ
いては、事業報告作成の経過措置により、改正前の条数を記載する」と言及さ
れています。

この内容について、計算規則の改正については、特段の経過措置が存在しない
ことから、対応が必要となることは理解できるのですが、施行規則の改正につ
いては、あくまで「事業報告の作成」について、従前の例によるとされている
ことから、事業報告作成後の監査報告で記載すべき条数については、監査報告
作成時の条数(118条)を記載すべきと考えるのですが、いかがでしょうか

投稿: naga | 2009年4月18日 (土) 07時23分
A27
難問ですね。監査報告は、事業報告を監査した結果を記載するので、事業報告
の記載と揃えるべきだという考え方もありえます。
分かりやすければ、どちらでもいいと思いますが。

Q28
株主提案権が行使された際の招集通知の記載について、会社法305条では、
その「議案の要領」を招集通知に記載する旨規定されていますが、書面投票に
よる場合にも、「狭義の招集通知」には「議案の要領」の記載が必要となるの
でしょうか?

施行規則93条は「株主提案」による議案の記載を定めていますが、これによ
り参考書類にその内容が記載されるので、同74条4項の「重複記載を避ける
」規定によって、狭義の招集通知には要領の記載は不要と考えますが、いかが
でしょうか?
投稿: | 2009年4月18日 (土) 07時42分
A28
招集通知の記載は、省略できません。

Q29
今度新司法試験を初めて受けるロー卒業生です。
既修なのですが旧試験の経験はありません。
択一の勉強について質問させてください。

これまで、択一は新試験の過去問(民法は旧もやりました)で勉強しました。

刑法や憲法について、新試験の過去問であれば、8~9割とれるのですが、
模試では、なかなか伸びず、平均点を下回るほど悪いです。

新試験は過去問がまだ量が少ないためにそういった穴ができてしまうのかもし
れませんが、予備校の問題や旧試験の問題を今からでもやり始めたほうがいい
のでしょうか。

記憶力が良くて、過去問を何回も解きなおしているうちに問題を覚えてしまっ
たようなのです。

傾向が旧と新ではかなり違うので、悩んでいます。
あともう20日前後しかないのも悩みですが。
投稿: まよまよ | 2009年4月20日 (月) 17時58分
A29
新試験の過去問だけでは、全く足りません。
予備校や旧試験の問題もやりましょう。
時間が足りませんが。

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2009年4月 1日 (水)

代表訴訟の対象となる責任

 大人は子供が悪いことをすると「謝れ」と怒るのに、大人はなかなか謝れないですね。

最近は企業不祥事で、謝り方が悪いと、マスコミに散々叩かれて瀕死の重傷を負わされることも多いので、リスク管理の観点から、取締役は、毎朝、「ごめんなさい」という練習をしてもよいくらいです(笑)。

 他方、小沢氏は謝り下手で、部下たちはその謝り下手をコントロールすることもできず、なんとなくミートホープとか、船場吉兆とかを思い出します。

 謝らないのは、報道ステーションも同じ。
 放送倫理・番組向上機構の放送と人権等権利に関する委員会(BPO)が、徳島県の土地改良区横領事件を伝えた報道ステーションで、重大な放送倫理違反があったと認定したにもかかわらず、古舘さんは
「勧告を真摯に受け止め、放送倫理や人権に十分配慮してまいります」
とコメントしただけで謝りませんでした。

BPOが名誉毀損を認めなかったから、謝らなかったのかもしれません。

しかし、自ら重大な放送倫理違反をやったにもかかわらず、謝罪できないようなキャスターが企業倫理違反や政治倫理違反を批判するのは、ちゃんちゃら可笑しいです。

 倫理違反は、法的責任をとる必要はありませんが、職業人として恥ずべき行為であり、倫理違反で人に嫌な気持ちを起こさせたのならば、その人に謝るのが常識です。
 字幕の誤字脱字は謝るのに、倫理違反の報道を謝らないのは事の軽重を取り違えています。
 倫理違反を犯した番組としては、プライドを捨て素直に謝った方が、今後の報道の信頼性を高めたのではないかと思いました。

まあ、自分自身、奥さんから「なんで謝らないの!」と怒られることもあるので、「謝らない」ことに批判めいたことを言うのはこの辺にしておきます。

さて、西武鉄道の損害賠償のニュースも気になりますが、「会社法であそぼ。」としては、

代表訴訟の対象となる「取締役の責任」について、損害賠償責任に限定されない旨の最高裁判決

に触れざるを得ないので、今日は、代表訴訟の話題にします。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37404&hanreiKbn=01

少しでも会社法の勉強をしたことがある人は、株主が代表訴訟で追求することができる取締役の責任が、会社法423条等取締役の地位に基づく責任に限定されるのか(限定説)、それ以外の取締役が会社に対して負っている債務も含まれるのか(非限定説)という論点をご存じであろうと思います。

今回の最高裁判決は、旧商法の判例ではありますが、
  「同法(商法)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づく責任のほか,取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると解するのが相当である。」
と判示して、限定説を採用しないことを明らかにしました。

実は、この論点は、会社法の立案当時、個人的に相当悩んだところでした。

旧商法267条1項は、会社法847条1項になり次のように規定されています。
「・・株主・・は、・・役員等・・の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。」

現代の法制執務では、基本的に、二義を許さないワーディングをする必要があります。
特に同項は、原告適格を定めるものですから、訴訟手続を混乱させないためには、「第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え」のように訴えの内容を条文によって明確にするのが普通です。学者の皆さんは、よく「解釈に委ねるべき」とおっしゃいますが、内閣法制局の参事官に向かって、「ここの文言の意義は、解釈に委ねます」とはなかなか言えないのです。

 立法は、ある文言について、日常用語を離れた特別な限定を加えるのならば、定義規定を置くのが当然という世界ですから、会社法423条の責任等に限定するのであれば、
  「第四百二十三条に規定する責任を追及する訴え」
と書くべきですし、逆に
  「役員等の責任を追及する訴え」
と書けば、責任は一般的な意味での責任を意味し、会社法上の責任に限定されないと解釈される覚悟をしなければなりません。

私は、個人的には、旧商法267条1項は同法266条の責任を意味すると解する方が論理的であると思っていたので、「第四百二十三条に規定する責任を追及する訴え・・」等とする案も作ってみました。

限定説の良さは、代表訴訟の対象となる権利の範囲が明確になることです。

非限定説は、取締役が取締役になる前に負った債務や、取締役を退任した後に負った債務も、代表訴訟の対象となるかどうかすら、よく分からないのが気持ち悪いし、所有権移転登記の申請義務等を代表訴訟の対象にすることを明らかにしてしまうと、代表訴訟で勝訴判決を得ても、株主が強制執行する手段がないという代表訴訟の致命的欠陥が目立ってしまうというのも嫌でした。

しかし、当時、非限定説を採っていた下級審判例もありましたので、こうした下級審判例が最高裁で破棄されるかどうかを考えてみたところ
代表訴訟の多くは、相続人らの身内の争いだから、金だけではなく、取締役が公私混同して会社から個人に移転させた財産を会社の財産に戻したりするのに使われる可能性も高いな。そうしたゴタゴタを解決しやすい方に最高裁は流れるんじゃなかろうか。
非限定説の方が、旧商法の条文とほぼ同じだから、法制局に指摘されにくいかもしれないし、非限定説に立っても、取締役の就任期間中に生じた責任に限定すれば、範囲が不当に広がることもないだろう。
と思い、結局、今の条文に落ち着いたのです。
 幸い、法制局でも民事局でも特にこの点について指摘をされなかったのですが、もし質問されたら、非限定説の合理性を説き、
  非限定説を殺すようなワーディングはすべきではありません
とでも答えようと思っていました。

なお、今回の最高裁判決を「423条の責任等+取引債務」を対象としたものと解釈する方もいらっしゃいます(取引債務限定説)。

取引債務限定説については、立案当時も考えてみたのですが、取締役の責任については、論理的には
    契約に基づく責任(取引債務・債務不履行に基づく損害賠償席に・法定担保責任等)
    契約以外の原因に基づく責任 不当利得・事務管理・不法行為等
があるわけで、このうち、取締役が債務不履行や不法行為をやれば、
    会社法423条の責任
になりますし
    取引行為についての責任
を認めるのならば、
   法定担保責任
   取引を解除した場合の現状回復義務
   取引が無効だった場合の不当利得返還義務
も認められるないのはおかしいだろうと考えました。

 すると、取引債務限定説と非限定説の違いは、実質的には、事務管理に基づく責任を認めるかどうかぐらいしかなく、会社法847条1項の文言を徒に複雑にする取引債務限定説を採る意味はないな、と思い、取引債務限定説は捨てました。

以上のようにいろいろ悩んだ末に会社法847条1項の原案を作ったので、今回の最高裁判決は、ある意味、ほっとしています。
立案担当者の考え方が、そのまま裁判で採用される保障などどこにもないのですが、作るときは、かなり真剣に先を読んで作っているので、読みがあたったときは、素直にうれしいところです。

(質問コーナー)
Q1
いつも楽しく拝見させていただいております。法科大学院未修1年の者です。
この春休みに百選をざっとさらって(いつでも見直して暗記できるように)ノートに数行で規範とあてはめをまとめているのですが、質問です。
(1)このようなことをやって意味がありますでしょうか(私は新試験の択一対策にとくに意味があると思っています)。
(2)百選の解説欄は事案や判旨が分からないときのみ読んでいるのですが(時間の関係でほとんど読んでいません。解説よりもむしろ多くは基本書を読むようにしています)、この方針について何かご指摘があればお願いします。
投稿: 公爵 | 2009年3月22日 (日) 20時38分
A1
大変素晴らしい勉強法であると思います。

Q2
今進路のことで悩んでます。
今日WBCの日本チームを見てて
「好きな事を仕事にする」っていいなあって思いました。
自分も「やりたいこと、したいこと」を仕事にしたいなとおもっています。
じゃあ自分の好きな事て何?と問いかけてもなかなか仕事につながるものがないおうな気がします。

自分の好きな事はスポーツ、特に海のスポーツをすることが好きですが、それが仕事になるともおもえません。
今は大学で法律を少しかじっていたので、自分で勉強して弁護士を目指そうとしてます。
でも、それは「好きな事」ではないような気がします。
実際よくわかりません。
「好きな事」を仕事にするってどういうことなんでしょうか?
投稿: 悩める子羊 | 2009年3月23日 (月) 14時41分
A2
「好きなこと」には2種類あります。

 憧れることと、やってみて楽しいことです。
 憧れることを仕事でやるのは、成功すれば楽しいですが、多くの人は挫けます。
 やってみて楽しいことは、やってみるまで本当の楽しさはわかりません。
 私のポリシーは、目の前の仕事を楽しんでやることなので、結果的には、いつも「好きなこと」を仕事にしています。

Q3
葉玉先生が早稲田のロー生にゼミを開いて大変よい成果をあげられたエントリーを拝見させていただきました。
そこでは、各自答案を書き、それを各自読んで、適当に採点して、議論は手短に、
という方針で行われていたとのことでした。
この各自で採点する際には、添削のようにコメントを入れたりしたのでしょうか。
これをやると時間が相当かかるのですが、
しかし、かといってやらないとどこが悪いのかよくわからないともいえます。
ゼミを行うについて、是非参考にさせていただきたいので、
ゼミでやった内容を具体的教えていただけると幸いです。
投稿: だる | 2009年3月23日 (月) 18時20分
A3
添削はコメントを入れることが大事だと思います。
それによって、はじめて採点者も考えるのです。
ゼミでやったことは、私が答案のポイントを解説したり、質問したりするだけでたいしたことはやっていません。

Q4
4月に既習に入学予定の者です。
(人によるとかいうのでなく、一般論として)新試験の合格者は旧試験の合格者より使えないという話を聞いたりしますが、葉玉先生はこの見解をどう思いますでしょうか。

わたしはローの理念(多様な科目を勉強できる)がいいと思うので様々な科目(複数の選択科目など)を履修しようと思っていますが、就職の際にはそのような点よりもやはり新司の順位などが重視されるのでしょうか。
試験科目重視で授業をとるべきか、さまざまな科目をとるべきか友人との間でも議論になっています。

あと、TMIは知財に特化してるという話や、実際はそんなことなくオールラウンドだという話など様々な話を聞くのですが、実際はどうなのでしょうか。

TMIを目指すならこれを特にがんばれ!みたいなことがあるなら教えてください。(経歴などでなく、努力でなんとかなるものです)

質問を羅列してしまったのですが、もしよかったら回答お願いします。
投稿: ななし | 2009年3月24日 (火) 05時34分
A4
新試験は、合格する人が多いので、実力のない人も合格しています。
上位の方は、能力的に昔と変わらないと思います。

いろいろな科目を履修しても就職では評価しません。どうせ役に立ちませんから。

TMIの知財の割合は25%くらいです。訴訟、M&A、ファイナンスなどいろいろやっています。
TMIを目指すなら、まずローの成績をあげ、司法試験の成績をあげてください。それが最低条件です。

Q5
検察の説明責任についてはどうお考えでしょうか。
同じ元検察でも不要という方と必要という方いらっしゃいます。
「法令遵守が日本を滅ぼす」を書いた郷原さんは、
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090323/189737/?P=1
にて、民主主義という観点からその必要性を説いています。
私も法の運用如何でどうとでもなりそうな穴だらけの法律とも考えられるゆえ、
同感なのですが、葉玉さんはどのように考えますか?

「悪法もまた法なり」で、どんだけ悪用されようが公務員である以上、法には
従っていれば問題ないのでしょうか。
自身が検察をしているときに、そのような事態に遭遇したことはなかったですか?
遭遇した場合、思考停止させない限り、自身を正当化できないように思うのですが、どう思われますか?
蛇足ですが、私は特定の政党に思い入れはないです。

衆愚政と「遵法精神」の生み出した「あってはならないもの」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090319/189540/?P=1
投稿: | 2009年3月24日 (火) 15時21分
A5
私は、郷原さんの言っていることは間違いだと思います。
私は、今回の事件で、検察に説明責任があるとすれば
 悪質な犯罪なので公判請求しました
という一言で十分だと思います。。
そもそも、検察は、粛々と捜査と起訴又は不起訴処分を行うところであり、いちいち政治家関係の事件をやるたびに、なんで公判請求をしたのかという説明を求められるとすれば、処分に政治的配慮をいれるようになってしまいます。

総理大臣だろうと、野党の党首だろうと、その秘書だろうと、犯罪を犯せば、適切に処分するのが当然です。

私は、ほとんど無党派層ですが、小沢さんが言っているのは、
  みんながスピード違反しているのに、うちの秘書だけ捕まるのはおかしい
と言っているに等しいと思います。
 政治資金規正法が、献金の透明性を確保するという趣旨ならば、ダミーの政治団体を使って企業献金であることを隠す行為は、法の趣旨を没却することになります。
「記載しない」ことと、「ダミーを使って資金拠出者を隠す」のは、実質的には何もかわりません。
 正々堂々と、「小沢一郎は、西松建設から3500万円もらいました」と言えば良かったです。そうした事実が明らかになれば、国民は、「西松はなぜそんなに献金するのだろう」と不思議がるでしょうし、マスコミは献金の影響で公共工事が左右されるようなことがないかどうかを一生懸命監視するでしょう。
 政治団体の寄付にするから、監視の目が行き届かなくなった。それだけでも、大問題です。
 民主党は、党首の廉潔性が問われているのに、なぜ事実を調査しないのでしょうか?
 民主党には、自浄能力はないのでしょうか?
 国民は、小沢氏の秘書がなぜ政治団体を使ったのか、その理由も知りたいし、なぜダミーだとわかったにも、かかわらず献金を返金しないのか、知りたいと思っているのではないでしょうか。
 それとも、民主党は「企業が民主党の議員に献金する場合、ダミーの政治団体に寄付させれば問題ない」という見解を採っているのでしょうか。
 また、小沢氏は、「企業ならば、政党支部に寄付させればよい」という趣旨の発言をしていますが、この発言自体、政治家に対する企業献金を禁止した法の趣旨を無視しているように聞こえます。たとえ、それが実態だとしても、正々堂々と発言するような内容ではないと思います。
 企業献金であることを隠すためにダミーの政治団体を使って献金を受けたという行為自体、弁解できない行為であるにもかかわらず、つべこべ言い訳を続けるのは、傷を深くするだけです。

Q6
 やはり、全面的に開示すべきでしょうか?弁護士の先生は「被疑者の人権が」とか、検察の先生は「被疑者との信頼関係が」とか言いますけど、ビミョーな問題ですよね。葉玉先生はどうお考えでしょうか?
  私自身は、検察の説明責任含め、素人的立場からして、検察の実体みたいなものがイマイチ掴めません。(HEROとかそれでも僕はやっていないとか見たけど、やっぱわかんない。)捜査の密行性っていうけど、逮捕された後、どんな捜査が行われているのか全くわかりません。このような心境からいうと、やっぱり大なり小なり捜査の可視化は必要だ、と思うのですが、どうでしょうか?
投稿: しがない | 2009年3月24日 (火) 21時15分
A6
私はイギリスで、在外研究をやっていたので、捜査の可視化には一家言あります。
イギリスのように、むちゃくちゃ薄い証拠で有罪にできるラフジャスティスなら、捜査状況を全部ビデオにとっても問題ありません。
日本のように精密司法では、コストの面でも運用の面でも、可視化は、すぐに行き詰まります。
可視化はラフジャスティスの採用とバーターです。

Q7
事案:
株主に対しての貸付です。
取締役会での承認をとり、金利や担保を取ることで問題は無いことは確認をいたしました。
担保として、弊社の株式(譲渡承認が必要)をとることも問題は無いということです。

ただ、株主が期限に返済できず、他に財産がないとなった場合、弊社株式が担保としてあるわけで、それを実行したときです。

自社株式の取得となるわけですが、金庫株にするとき、その手続きをどうするかです。
取締役会の承認や臨時株主総会での承認やその他手続きが必要になるのでしょうか。

それとも、担保権実行として会社の金庫株とすることで名義を自動的に書き換えることで問題は無いのでしょうか。
投稿: ご苦労さん | 2009年3月25日 (水) 09時24分
A7
まず自己株式について担保権を設定する行為については、
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&CLASSNAME=Pcm1090&KID=300080050&OBJCD=&GROUP=
法務省の会社法施行規則の改正案のパブコメの結果概要第3の2を見てください。

Q8
弁護士の就職についてご質問があります。

現在、金融危機等の影響で、一般的な就職活動は大変厳しいものとなっています。

企業法務を専門とする大手ローファームは、ここ2・3年は大量採用による拡大傾向にありましたが、最近の景気後退により、弁護士の新規採用枠の減少や拡大路線の変更などの傾向の変化はあるのでしょうか。

弁護士はその職務の性質上、世間がダウンサイドにあるときにも逆に業務量が多くなるなどの特殊な事情がありますし、また各々のローファームの長期的な経営方針もそれぞれ異なるとは思いますが、現場の先生方の感覚としては全体の流れとしてどのようにお感じなのでしょうか。

漠然とした質問で申し訳ありません。お答えできる範囲で構いませんので、よろしくお願いします。
A8
事務所ごとに違うと思いますが、大手ローファームも、新規採用枠が広がるということはないように思います。現状維持か、減少傾向ではないでしょうか。

Q9
他学部から法科大学院に進学し、今年卒業しました。
本試験が迫ってきて、今何をすべきなのか、よく分かりません。
とりあえず、毎日、早朝から一日中短答の問題集ばかりやってます。
アドバイスをください。どうしても合格したいのです。
投稿: コヘレト | 2009年3月25日 (水) 21時50分
A9
その質問は、法科大学院に入学したときにしてもらいたいところです。
今、何をすべきかわからないこと自体が問題です。
私は、コヘレトさんの実力を知らないので、アドバイスをするのは難しいというほかありません。

Q10
企業が開示する「取締役選任に関するお知らせ」の中で、候補者について「当社との間には特別の利害関係はありません」という注意書が必ずといって良いほどありますが、これは法律上の規定に基づき、記載しなければならない事項なのでしょうか?また「特別の利害関係」は候補者としての欠格事由に該当するのでしょうか?
投稿: ポニョ | 2009年3月26日 (木) 11時06分
A10
特別の利害関係は、会社法施行規則74条2項3号で株主総会参考書類の記載事項となっています。

Q11
不祥事発覚の対応についてですが、
上智大学のローは長沼先生の問題について完全に隠れるという対策でいきましたね。
これが企業ならば正解だと思いますが、法科大学院としては法曹として廉潔性に欠けるところかと思います。
本人から最低限の釈明なり謝罪なりはするべきだと私は考えるのですが葉玉先生はどう考えられますか?
投稿: ロー生 | 2009年3月26日 (木) 12時13分
A11
私は、上智ローの教授なので、ここで私見を申し上げるのは差し控えさせていただきます。

Q12
事業報告への記載について教えてください。
最近、いろいろな会社で不祥事が発覚しており、該当する会社にとっては、事業報告に、会社法施行規則124条4号ニなどの記載をどうしようか悩むところだと思います。
同号ニでは、社外役員の選任議案のように「過去5年間」という文言がなく、「当該事業年度中に法令又は定款に違反する事実・・・が行われた事実があるとき」は、その予防のために行なった行為等の概要を記載しなければならないとされています。
しかし、事案によっては、法令又は定款に違反する事実が 「当該事業年度より前(数年前の場合もある)」 に行なわれ、これに対する行政処分などが 「当該事業年度」 になされる場合があります。
この場合、条文をそのまま捉えると、会社法施行規則124条4号ニの記載対象ではないと思えます。
もちろん、同120条1項9号などとして不祥事があった事実を記載することは必要だと思いますし、124条4号ニとして記載しない場合には「妥当性」の問題はあると思いますが 「適法性」からは問題ないような気がしますが、いかがでしょうか。
やはり、法令の趣旨は、この場合でも124条4号ニの記載を要求していると解するのでしょうか。たとえば、独占禁止法違反などは、調査が入ってもそれだけでは法令違反行為があったとは言えず、数年後に、「違反行為があった」 として排除命令などの行政処分が出ることがありますので、上記のようなことがおこると思いますが。
投稿: Oh NO! | 2009年3月26日 (木) 14時21分
A12
理論的にはおっしゃるとおりです。ただし、事業報告で書くべきときに書かなかったということで、独禁法違反行為のあった事業年度の事業報告について不記載の違法があったことになります。
また、処分があったときに重要事実として書くべきであるという考え方もあるでしょう。

Q13
役員の任期についてです。
会社法332条4項3号には『発行する全部の株式の内容として』譲渡制限の定めを廃止した場合に取締役は任期満了退任するとあります。他の役員(監査役・会計参与)も同様ですよね。
つまり、非公開会社が公開会社になった場合には役員が任期満了退任する。

では、ある会社(取締役3名・監査役1名・会計参与1名・役会設置会社)が普通株式とA種類株式(剰余金の配当につき普通株式より配当が多い株式)を発行していて現在は全部の株式につき譲渡制限の定めがある。この時に、臨時株主総会において定款変更決議がなされ『当会社の普通株式を譲渡により取得するには取締役会の承認を要する』と言うように、A種類株式についてのみ譲渡制限の定めが外された場合、この会社は非公開から公開になります。そこで、役員の任期は満了するのでしょうか?

会社法332条4項3号を素直に読み取ると『全部の株式の内容として』との文言があるため、これは種類株式を発行していない単一株式発行会社の事を指しているのだと読み取れ、種類株式発行会社には適用が無いと解釈できる。
一方で、実質的には非公開から公開会社になっているのだから、役員を選び直す必要が生じ任期満了退任させるべきでは…。とも考えられ悩んでいます。
種類株式発行会社の場合には退任させるべきなのでしょうか?させないべきなのでしょうか?
投稿: るい | 2009年3月30日 (月) 01時33分
A13
役員の任期は満了すると考えます。

Q14
葉玉先生、こんにちは。先生は、ハーグ間接保有証券の準拠法に関わる条約に関わる作業にも従事されていたかと記憶しておりますので、以下のようなケースで振替株式を担保にとった際についてご意見をお聞かせいただければと思います。

現在の証券振替制度では、外国の金融機関が外国間接参加者として、日本国外でも口座管理機関になることができるのはご承知の通りです。それで、この外国間接参加者(例:ロンドンにある銀行等)が、振替株式を日本国内にいる担保権設定者から担保をとることになり、証券振替制度に基づいて、日本国外にある参加者の口座(帳簿)にその旨記載することになりました。この場合に、この担保権設定者(債務者)の債権者に対して、対抗要件の具備が日本法以外になってしまうリスクはあると考えるべきか、それとも、あくまで振替法の中の話で、日本法で問題ないと考えるべきでしょか?特に、この担保権設定者に日本国外の債権者がいる場合にどうでしょうか?  

とても「株券電子化ガイドブック 実務編」には出てきそうにないマニアックな話なので、お考えをお聞かせください。
投稿: ロンドン一番 | 2009年3月30日 (月) 04時58分
A14
この問題は、結構、複雑なので具体的な事情を聞かないと答えられませんが、外国法が準拠法になるリスクはあります。

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2009年3月21日 (土)

会社訴訟・非訟と個別株主通知

 DVD「会社法と実務」全10巻は、おかげさまで、沢山のお申し込みをいただいております。大変ありがとうございます。
http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 更新の度にコマーシャルをするのは申し訳ないのですが、実は、もう一つコマーシャルさせていただきます。

 この度、民事局時代に株券の電子化の担当者だった私と仁科さんで、商事法務から

 「株券電子化ガイドブック 実務編」

という本を出しました。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A0%AA%E5%88%B8%E9%9B%BB%E5%AD%90%E5%8C%96%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%AE%9F%E5%8B%99%E7%B7%A8-%E4%BB%81%E7%A7%91-%E7%A7%80%E9%9A%86/dp/4785716347

 この本は、上場株式の株主、質権者、株式事務に携わる担当者、株主名簿管理人、証券会社の法務担当者等、上場株式に関係する方にとって役に立つQ&Aや資料等を集めたものです。

 内容は、盛りだくさんですが、一般の株主さんをはじめ、株式質をとっている金融機関、弁護士、上場企業の総務法務担当者等あらゆる人に役に立つのは
  上場株式の株主・株式質権者のためのQ&A
というパートだと思います。
 
 たとえば、
  株式、新株予約権、転換社債、ETF, REIT等が株券電子化によってどうなったのか。
  失念株主や略式質権者が電子化後に自分の権利を守るためにどうしたらよいか。
  株主が配当を受けたり、少数株主権等を行使する場合の手続きはどうするか。
  株式を市場外で売買したり、担保に入れたりする場合の注意点は何か。
  振替株式に対して強制執行するときにどうしたらよいか
等上場株式その他の有価証券について、よくある質問に、できるだけ分かりやすく回答しています。

 回答の中には、この本にしか載っていないこともありますし、どの説明も、実務的な回答をしていますので、きっと役に立つと思います。

 それから、
 有価証券担保提供証書(担保差入書)
 売買契約書
 定款変更議案
 株式取扱規則
 ストックオプション引受契約
 持株会規約
等のひな型を、ポイント解説付で掲載しています。

 特に、有価証券担保提供証書は、金融機関や事業会社が株式担保を取るときのスタンダードになっているものですから、株式担保に関わっている方は、ぜひ逐条解説を読んでいただければ、と思います。

 また、情報提供請求権や総株主通知請求権における「正当な事由」について、株式取扱規則に規定していない上場会社も多数あるようですが、株式取扱規則のひな型と解説をみて、導入を検討した方がよいでしょう。

 さらに、主として弁護士向けに、
  振替株式の差押命令申立書、仮差押命令申立書
のひな型も掲載しています。これも、たぶん、この本にしか掲載されていません。

 このように、ひな型とポイントの解説だけでも価値のある本であると自負しております。

 そして、この本で、一番ページ数を割いているのは
     読み替え、折り込み版の振替法
です。
 振替法は、政令省令委任が多い上、株式等の規定を準用して読み替え表を置いている規定も多いため、弁護士でも、その内容を読み取るのに苦労します。
 そこで、読み替え規定が置かれているものは読み替えた上、政令省令の条文を法律の該当部分に織り込んで、読みやすくしました。
 振替法の条文を調べなければならない人にとっては、天国のような条文集です。

 さらに、
   振替法によって変更される会社法の規定
を抜粋して掲載しています。
 どのように会社法のルールが変容しているのか、コメントをつけていますので、上場会社について会社法の適用が問題になるような場合には、ガイドブックを参照していただき、振替法の特例が置かれていないかどうか、チェックしてください。

 この他、証券保管振替機構の業務規程のように、上場株式に関わる人にとって重要だけど六法に掲載されていないものや、情報提供請求権のガイドライン等、株券電子化に関わる資料がてんこ盛りです。

 弁護士だけではなく、上場株式の法務に携わる人にとって必携の本だと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、「株券電子化ガイドブック」刊行記念として、
      株券電子化時代の会社訴訟・非訟の手続
についてお話ししたいと思います。

 会社法は
  代表訴訟や株主総会決議取消しの訴えのような特殊な訴訟手続
  株式買取請求における株式価格決定の申立てや株主総会検査役の選任申立てのような非訟手続
を用意し、株主に提訴権・申立権を認めています。

 このような提訴や申立ては、一定の要件を満たした株主だからこそ認められるものですから、
  原告・申立人が株主であることは、訴訟要件
であり、株主でなければ、訴えや申立ては却下されます。

 そこで、従来から、提訴や申立てにおいて、原告・申立人は、自ら「株主であること」を疎明しなければならないこととなっており、株主としては、株主名簿の謄本を示したり、株券を保有していることを示したりしていました。

 株券電子化後も、原告や申立人が自らが株主であることを疎明しなければならないのは、同じなのですが、振替法では
  株主が単独株主権・少数株主権を行使する場合には、個別株主通知をしなければならない
というルールがあるので、
  株主が、個別株主通知をし、会社に到達後2週間(改正後は4週間)以内に提訴・申立てをしなければ、当該提訴・申立ては、不適法
となります。

 つまり、振替法は、少数株主権等を会社に対して行使する場合においては、
   株主名簿ではなく、
   個別株主通知を会社に対する対抗要件にする
こととしているのです。

 したがって、裁判所が株主から提訴・申立てを受けた場合には、株式が上場株式であるときは
   株主に「個別株主通知をしたこと」を疎明させる
のが適切です。

 ところが、今のところ、裁判所は、このあたりの取扱いが確立していないせいか、従来のように株主名簿の謄本等をもとにした疎明が行われているようです。

 会社が被告となったり、申立ての相手方として審尋が行われれば、会社が
   原告・申立人が個別株主通知をしていないこと
を主張・立証することで、判決や決定がなされることを防止することができますが
      株主総会検査役の選任申立て
のように、会社が審尋を受けることがないまま手続きが進行すると
  申立人が個別株主通知をしていないにもかかわらず、選任の決定が行われる
ことになりかねません。

 裁判官も万能ではないので
   個別株主通知という制度を知らない
人がいるのは仕方がないことですが、その確認を怠ったまま、決定を出せば
   会社が即時抗告をすれば、取り消されてしまう
ことになり、裁判所や申立人にとって、手間、時間、コストの無駄が生じます。

 したがって、裁判所においては、上場会社の株主であることの疎明として
   個別株主通知の受付票
を確認する実務を確立させてもらいたいと思います。

 受付票は、振替法が義務づけている制度ではありませんが、株主が口座管理機関に個別株主通知の請求をしたときには、必ず交付される実務になっていますので、
  個別株主通知をしたこと
    請求日
    株式数
等を確認するには最適です。

 個別株主通知が会社に到達した日は、受付票からは読み取れないため、「到達後」2週間(改正後は4週間)以内の提訴・申立てかどうかは、分からない場合もあるものの、とりあえず通知の日付を基準に判断し、期限ぎりぎりの場合には、申立人に「会社への到達日がいつか」を疎明するよう指揮すれば十分だと思います。

なお、株主であることの確認において、注意を要するのは
  株式買取請求権における価格決定の申立て
のときです。

 たとえば、合併に伴う株式買取請求権の場合
   存続会社の株主からの買取の効力は、会社が株主に代金を支払った時
に生ずるのに対し、
   消滅会社の株主からの買取の効力は、合併の効力発生日
に生じます。

 そのため、価格決定の申立てを行う時点において
   存続会社の株主は、まだ株式を保有しており、個別株主通知をすることができますが
   消滅会社の株主は、すでに株式を失っており、振替口座上の記録も抹消されていますから、個別株主通知をすることはできません。

 したがって、消滅会社の株主が、価格決定の申立をする場合には

   合併の効力発生日の直前において、消滅会社の株主で「あった」こと
      (株式買取請求権の行使のときの個別株主通知の受付票)
を疎明すれば足り、
   価格決定の申立時の個別株主通知は不要
と解すべきです。

 理論的に言えば、会社法上、価格決定の申立権は
      存続会社では、「株主」に認められる権利であるのに対し
  消滅会社では、効力発生日の直前に「株式買取請求権を行使した株主であった者」に認められる権利
であるため、後者については、振替法の個別株主通知に関する規定が適用されないということになります。

 「株券電子化ガイドブック」には、こうした細かな問題点を含めて、実務の知恵が詰まっていますので、参考にしていただければ幸いです。
 
 商事法務の京美人編集者のボーナスが、この「株券電子化ガイドブック」の売れ行きにかかっているという噂もあるので、本日は、普段よりも五割増しのコマーシャルをさせていただきました。

(質問コーナー)
Q1
お忙しく働いておられる先生がスタッフとして一緒に仕事したい!と思われる人はどのような素質を備えた人でしょうか?
投稿: ruru | 2009年3月 6日 (金) 08時52分
A1
 スタッフは、それぞれの役割があり、必要とされる素質も役割ごとに違います。
 ただ、共通するのは、
  正直であること
  責任感があること
  時間を守ること
の3点です。

Q2
今回のA2でご紹介のあった下記の記事に目を通してみたのですが、そのなかに、、
「弁護士の年俸として、「年収500万円だと弥生時代から働らかなければならない」というほど稼ぐのは無理だと思いますが、アテネオリンピックくらいの収入がないと、先行きが不安になってくるでしょう。」
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_7d09.html
とありますが、
1、「弥生時代から働く」とは、具体的にどのくらい働くことを意味するのですか?
また、なぜその働きぐあいを「弥生時代から働く」と表現するのですか?
2、「アテネオリンピックくらいの収入」とは、具体的に年収にして何円のことを意味するのですか?
また、なぜその金額を「アテネオリンピックくらいの収入」と表現するのですか?
投稿: 平石眞男 | 2009年3月 6日 (金) 12時32分
A2
1 年表を見てください。表現はしゃれです。
2 あなたの思う金額です。表現はしゃれです。

Q3
弁護士という仕事(刑事弁護)について、「なぜ犯罪者の味方をするのですか?」と聞かれたら、葉玉先生はどのようにお答えになりますか?
また、仮にその質問をした人が小学生くらいであるとしたら、回答をどのような表現でお伝えになりますか。
投稿: あべ | 2009年3月 7日 (土) 02時02分
A3
 犯罪者も人間だからです。
 人間は、良いところも、悪いところも含めて一人の人間です。
 あなたも、お父さん、お母さんから叱られるような悪いことをしたことはあるでしょう。
 でも、一度悪いことをしたからといって、あなたは、救いようのない悪人というわけではないですよね。
 弁護士が犯罪者の味方をするのは、裁判官に、犯罪者の悪いところだけではなく、良いところも見てもらって、その人の「本当の姿」を分かってもらうためです。

Q4
小沢氏の秘書逮捕について、東京地検特捜部は、どうもその先の汚職逮捕を見据えて逮捕したようで、小沢氏はご自身の息のかかった幹部クラス検事がいることから、不起訴にさせる圧力の意味を込めて強気の記者会見をしたようですね。
A4
収賄罪は、あっせん収賄以外は、行為者に職務権限がないと成立しません。
小沢氏は、野党党首であり、国会議員に過ぎません。
プロであれば、汚職の成立は可能性が薄いことが、捜査の開始時から分かっていると思います。
 また、特捜部が、被疑者を逮捕して、起訴しないことは、普通ありません。逮捕の時から、起訴は決まっているといっても過言ではなく、不起訴にさせる圧力をかけても何の意味もありません。

Q5
実は、私、現行司法試験を7年ほど前に挫折したのですが、
葉玉先生のレジュメを使っていた(何回もまわした)憲法は
ずっと択一、論文ともに良い結果が出ておりました。
7年のブランク明けでも憲法は何もしないでもバッチリなほどです。
(私が大学入学するのと入れ替わりに葉玉先生は東京へ行かれた
 と伺っておりました。そのゼミからかなり合格者が出ておりました。)
一度はあきらめた司法試験ですが、退職して一念発起。
ロースクールの教授の中には、
新司法試験は旧司と違う、等と力説される方もいます。
ですが、入学して1年。私は勉強の基本スタイルは
旧司のときと何ら変わっておらず、
INPUT教材としてであれば、かつての葉玉先生の
レジュメがいちばんいいなと改めて痛感しております。
葉玉先生のレジュメは今もあるのでしょうか?
早稲田のロー生ゼミではあの形式のレジュメは
復活していたのでしょうか?
投稿: 葉玉ゼミ生の後輩 | 2009年3月 7日 (土) 14時52分
A5
 一問一答と、過去問の解答例ですね。
 昔のパソコンのハードディスクの中を探せば、どこかにあると思いますが、最近は使っていません。

  Q6
清算人の解任について質問です。
清算結了登記まで済んでいる会社の代表清算人(清算人は当該1名のみ)を解任して、新たに別の者を代表清算人に選任するには、どのような手続きが必要でしょうか。
会社法では株主総会の決議によって解任・選任できると規定されていますが、清算結了してしまっているので株主がおらず総会決議ができないと理解しています。
例えば、親会社のサラリーマンが子会社の代表清算人を引き受けて処理したが、その後退職するにあたり10年間の重要書類保管義務を後任に引き継ぎたい、といったケースです。
投稿: ジャッキー | 2009年3月 7日 (土) 15時54分
A6
 508条2項は使えませんでしょうか。

Q7
今回の地検は、あまりに政治的影響が強すぎる捜査ではないかと思うのですけれど、もと検事である先生はどうお感じですか。
国策捜査などというつもりはさすがにありませんが(笑)、
政治的な影響を司法が与えてしまうということについて、
無頓着すぎるような気がいたしますが、実際のところ考えないのでしょうか。
投稿: 教え子その1 | 2009年3月 7日 (土) 19時14分
A7
 今回の事件の着手時期は、適切です。
 証拠関係を考えれば、西松の事件をやっている最中なので、参考人聴取がやりやすいというメリットがあります。
 しかも、これから選挙が近づけば近づくほど、逮捕しにくくなりますし、小沢氏が総理大臣になった直後にその秘書を逮捕するのは、今よりももっと社会的影響が大きいでしょう。
 犯罪がそこにあり、逮捕しなければならないというシチュエーションに置かれたとしたら、どこで逮捕するのが適当か、考えてみてください。
 今がベストです。

Q8
今日は,株式市場の低迷についてお尋ね致します。
先生は日本株の低迷は今後何年間くらい続くとお考えでしょうか?
私は現在数銘柄を保有しておりますがどれも膨大な含み損で憂鬱な日々です。
「あと1-2年で底打つ」と根拠の無い希望を持っていますが,著明な経済学者の中にはあと10年間景気悪化は続くという方もいます。
法的問題ではないので根拠は不要です。
投稿: だいざぶろう | 2009年3月 8日 (日) 08時46分
A8
低迷というのは、相対的なものです。
日経平均7000円で株を始めた人は、短期間で10%以上利ざやが取れています。
バブル期に購入した株式は、いまだに含み損です。
株価の値上がり益を目指すならば、保有銘柄が値上がりすることを期待するよりも、損切りして、値上がりする銘柄に乗り換える方が得策です。
そうでなければ、配当のよい銘柄を長期保有した方が、普通預金よりも有利です。

Q9
先生の著書「新・会社法100問」の第3版について、近日中に出版される予定はございますでしょうか。

以前のブログ(2008年3月 9日 (日))では、現在発売されている第2版について、当分改訂のご予定はないとのことでしたが、ちょうど1年が経過していたので、ご質問させていただきました。
投稿: 法科大学院生 | 2009年3月 9日 (月) 23時50分
A9
改訂予定はありません。
省令改正があるので、改訂したいところですが、暇がありません。

Q10
ある要件の該当性(たとえば刑罰法規の明確性の有無)が問題となる際、判例や学説では、一般人を基準として判断すべきであるとしつつ、担当裁判官ないし学者の個人的見解をもって、(あたかもそれが一般人の見解であると断定するかのように)結論を導く、ということがよく見受けられます。その見解につき一般人多数からアンケートをとって検証したわけでもないのに、どうしてこのような判断が正当化されるのか不思議に思っていますが、裁判官や学者は、自らを一般人の代表であるかのように振る舞うことが許されるということでしょうか?
投稿: 一般人の一人 | 2009年3月10日 (火) 03時04分
A10
一般人として振る舞っているわけではありません。
裁判においては、裁判官が、法律を解釈・適用する権限を持っているので、法律要件として、一般人基準が要請されるのならば、裁判官が、自ら信ずるところに従い、一般人基準が何かを考え、事実に当てはめているだけなのです。もし、その裁判官の考え方が間違っていれば、上訴すればよく、裁判という制度の中で裁判官が下す判断の信頼性を確保しているのです。

Q11
先生は,「基本書の読み込みをしてもよいが,3時間で読めるものが良い」と,おっしゃっていると思います。
これは,「3時間で読めるものを選択すべき」なのか,「3時間で読めるように1冊を何度も読んで,最終的にそうなるようにする」なのか,それとも違う考えなのか,どうなのでしょうか?
一番膨大な量を読まなくてはならない民法に限っていいますと,試験に必要な知識が整理された予備校の択一本でも約700頁くらいあります。となると,これが最低限抑えておきたい知識の量だと思います。そうすると,なかなか3時間で読むことは難しいと思います。しかも,論文用も併記するとさらに困難が伴うのではないかと。
体的に,何をどのように「3時間で読む」かについて,教えていただければと存じます。
よろしくお願いいたします。
投稿: こんにちは | 2009年3月11日 (水) 13時52分
A11
もちろん最初から3時間で読めるはずはありません。
テキストを何度も読む中で、「読まなくてよい部分」「ここだけ読めばよいという部分」に印をつけていき、3時間で読めるようなテキストを自分で作るのです。

Q12
実務において英語はどういったところで役に立つのでしょうか。渉外事務所でしか役に立たないのでしょうか、教えていただけると幸いです。
投稿: | 2009年3月11日 (水) 17時54分
A12
私は、日本人を相手にする仕事がほとんどですが、今の日本企業は多かれ少なかれ、外国企業と取引をしていますし、検事だって、英語の証拠物が押収されることもありますから、時々、英語を使います。

Q13
弁護士の就職難が叫ばれるなかですが、なんとか就職口がみつかりそうです。
地方都市の小規模事務所です。いわゆる「マチベン」です。
私は脱サラして実家のある地方ローに入り、昨年の試験に合格しました。
もともとは渉外事務所で「最先端」の仕事に就くことに憧れがありました。
大手への就職が難しいと思ったとき、苦労しても都会の大きなローに行くべきだったかとも思いました。
しかし、ローで過ごした3年間の喜怒哀楽を思えば後悔はしていませんし、現実的にそれ以外の選択肢もありませんでした。
今年三十路を迎えるのに就職先が確保できるだけでも万歳と思っています。
そこで、地方の事務所で「最前線」の弁護士としてキャリアスタートする決意をしました。
どんな仕事でも誇りをもってやっていくつもりです。そして、最前線でキャリアを積みながら、いつか渉外事務所で勤務できるようになりたいとも思っています。弁護士の就職難は当分続くでしょうから、仮に渉外事務所への再就職の可能性があったとしても、即戦力を求められるでしょうし、その壁は中小企業に就職した新卒が国際優良企業に総合職として転職するより難しいことは想像できます。
 そこで、先生やお知り合いの事務所をみて、そのようなキャリア形成の方はいらっしゃるのでしょうか(おそらく過去にはいたでしょうが、5年、10年後にはどうでしょうか)。また、弁護士大増員を前提に、新人弁護士として、渉外事務所に再就職するために、どのような仕事や知識を身につけていくのがよいのでしょうか(はじめは仕事は選べないでしょうが、心持やあえて専門形成など)。
 それとも、いっそのこと「最前線の鬼小隊長」のような弁護士を目指すべきでしょうか。
投稿: 小隊長 | 2009年3月11日 (水) 20時45分
A13
 法律の世界には、事実と法律があるだけで、最前線というものはないように思います。
 どんなケースでも、そのケースに特異の部分があり、最適の解決法があります。あえていえば、目の前の事実に最適解を見つけることができれば、それが「最前線」でしょう。
 地方の法律事務所に勤めた後、お金を貯めて自費で留学したり、役所の任期付任用のキャリアを経て、大事務所に入っている人は、結構いると思います。
 夢があるのならば、それに向かって努力すれば、どうにでもなります。

Q14
2006年07月17日の会社法における基本的制度というテーマについて質問させてください。

『4 株主 vs 株式会社
  → 株主権(配当請求権・議決権・残余財産分配請求権・単独株主権・少数株主権)
  → 株式譲渡自由の原則
  → 反対株主の株式買取請求権』
とありました。ここに株主平等原則を加えるのは間違っていますでしょうか?
株主平等の原則は
『1 株主 vs 株主
  → 株主平等の原則』
とでておりました。
投稿: 短答が近くて忙しい50歳 | 2009年3月14日 (土) 12時01分
A14
 間違いではないでしょう。

Q15
今年の東大入試(前期)ですが、久留米大附設からの合格者は38人でした。
ちなみに、先生は中学から附設なのでしょうか?
また、東大を目指したのはいつ頃でしょうか?(小学生、中学生、高校生)
投稿: ルージュの伝書鳩 | 2009年3月14日 (土) 12時57分
A15
私は、中学から附設です。
附設は、中学入試の偏差値はそれほど高くないのですが、大学合格実績は、東京の有名私立高校よりも良いので、結構、お得な学校です。
東大を目指し始めたたのは、高2の3学期くらいだったかなあ。
法律家になることは全然考えておらず、「東大文Ⅰなら潰しがきくだろう。」と思って、決めましたね。

Q16
757条、762条、2条29号30号から、合名会社・合資会社は分割会社になれないと読み取れます。
その趣旨ですが、私が持っている教科書には「分割会社の債権者に不利益をもたらすから」と書いてあります(江頭)。これは無限責任に期待していた債権者が、無限責任社員にかかっていけなくなる可能性があるから、ということなのだと思います。
しかし、それは合併において持分会社が消滅会社になってしまう場合も同じことだと思います。しかし会社法は合名会社と合資会社が消滅会社になることを否定していません。
消滅会社になるのはOKで分割会社になるのはダメな理由は何なのでしょう。
投稿: yasuchan | 2009年3月14日 (土) 13時22分
A16
組織変更ができるのですから、合併ができるとしても問題ないからです。
会社分割は、分割会社の法人格を残したまま、債務だけを分割することもできるので、悪用されるリスクがあるから、制限しているのでしょう。

Q17
持分会社の種類変更につきまして質問させていただきます。
種類変更の際、債権者保護手続は不要でありますが、どのような趣旨で不要と解せばいいでしょうか?
合名が合同に種類変更しても従前の無限責任を負う社員として変更後も居続けるからといったことでしょか?
投稿: 匿名希望 | 2009年3月16日 (月) 14時27分
A17
そうです。

Q18
現在、毎日論文の勉強をしています。
具体的に申しますと、
1.パソコンで答案を作成する

2.予備校やローの勉強をする

3.2と同様の範囲の答案を復習する

4.2で参考になることがあった場合には、
それを具体的な答案の内容として反映させる
という形で勉強をしています。
 
こうして答案を日々更新しているのですが、
たとえ自分で納得のいく答案が出来ても、
独善的になっていないかどうか、それが気がかりです。
(もちろん誰かに見てもらうのが一番ですが、
すべての答案を添削してもらうことは不可能ですし・・・)
 
論文の勉強において、独善的な答案にならないために、
気をつけるべき点があれば、教えていただけないでしょうか?
大変恐縮なのですが・・・どうかお願いします。
投稿: モッフン | 2009年3月16日 (月) 20時08分
A18
声を出して読んでみることです。独善的な答案は、自分で読んでみても不自然さを感じます。
なお、「答案は絶対に手で書く」こと。パソコンは駄目です。書き始めたら、後戻りできないという手書きで答案を書くことに大きな意味があります。

Q19
記者会見についての法的判断と、政治的判断は、違うんですかね。
正直、最初の記者会見で、小沢さんがいわば平身低頭していたとしても、どれほどプラスだったか、疑問です。つまり、強面というイメージが、ある種の売りであったのに、捜査機関が出てくると腰砕けになる、というマイナスのイメージが出来てしまい、穏便にすませた会見が賢明だ、穏当だという評価を受けることは、なかったのではないかと思います。それに、今回の事件は無理筋のようにも思え、今後は、世論を見極めながら落としどころを探るという、後出し的な解決に落ち着くような気もします。印象論で申し訳ありませんが。法的な発想、過去の特定の経験に基づいたコツなるものの、限界を感じますが、いかがでしょうか。
投稿: 失礼しますが、 | 2009年3月16日 (月) 22時44分
A19
今回の事件は、全く無理筋ではありません。
事実の把握と処分の予測が正確であれば、起訴ないし有罪になったとき、小沢氏が不利な立場に置かれるのは、最初から見えています。
この確実な予測を前提に、最初の報道対応をすることが重要なのです。

実際、前回の記事を書いた後、小沢氏と民主党の支持が急降下し、小沢氏の態度はやや変容していますが、最初に検察批判を展開したため、小沢氏としては、対応が難しくなっています。

もし「政治資金規正法違反ではない」ということを前提に代表の座に居座り続ければ、選挙で政権交代を訴えても、有権者は、しらけてしまうのではないでしょうか。
他方、小沢氏が、世論の動きを見ながら、態度を変えてしませば、麻生総理と同じように、小沢氏も、「言うことがコロコロ変わる」と批判されるのではないでしょうか。

今後の展開としては、起訴時の記者会見が重要でしょう。
ここで小沢氏が徹底抗戦の構えを見せれば、民主党も、それに追随せざるをえず、選挙戦では窮地に立たされるでしょうし、小沢氏が、しぶしぶ「愚痴」「言い訳」がにじみ出るような謝罪会見をすれば、それも批判されるでしょう。

もし謝罪するのならば、「潔い」印象を与えてほしいところです。

ただ、私の勘では、仮に謝るとしても、プライドを捨てきれない会見になるような気がします。
最初に記者会見で言ったことを自己否定することは、人間にとって難しいことで、どうしても引きずられます。だからこそ、最初の記者会見で、先を見通すことが大事なのです。

マスコミ対応は、政策論ですので、どのような対応がベストなのかは、事後的に評価するしかないのですが、落ち着いた頃に、私の考えた対応が適切だったか、「失礼しますが」さんが考えた対応が適切だったかを、検討するのも面白そうですね。

Q20
合資会社が株式会社に組織変更する場合の登記手続きで要求される資本金の額の計上に関する書面について質問させてください。
 この書面の記載内容につき、「資本金○〇円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号の規定に従って計上されたことに相違ありません。」としている書籍と「資本金○〇円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号及び第53条第1項の規定に従って計上されたことに相違ありません。」としている書籍とに分かれています。
 合資会社が株式会社に組織変更する場合は、あくまで会社がその同一性を維持しながらその組織を変更する手続きであり、資本金の構成はそのまま維持されます。(会社法千問Q880)
 そこで、会社計算規則第57条第1号を資本金の額の計上に関する書面の記載内容とすることについては理解できます。
 しかし、会社計算規則第53条第1項の規定に従って計上されたことまで要求しているとすれば、それは組織変更時の資本金の計上だけではなく、合資会社が設立されてから組織変更するまでの資本金の計上まで証明しなければならないこととなりますよね?

このような理解を前提として、
1 登記の添付書面として登記が通るものかどうかということは抜きにして、理論的に、会社計算規則第53条第1項を資本金の額の計上に関する書面の記載内容とすることを先生はどう考えられますか?合資会社では、資本金が登記事項ではないので組織変更前の資本金の計上についても会社計算規則第53条第1項を記載内容とすることで証明しなければいけないのでしょうか?

2 仮に、会社計算規則第53条第1項を記載内容とするとして、

  ①社員が履行した出資の価格(②を除く)        金○〇円
  ②社員が履行した出資のうち帳簿価格を付すべき場合の帳簿価格の合計額
                                   金○〇円
  ③資本金の額又は資本剰余金の額から減ずるべき額と定めた額
                                   金○〇円
  ④資本金等限度額(①+②-③)             金●●円
  ⑤資本金の額                         金●●円

上記のとおり、資本金●●円は会社法第615条、会社計算規則第57条第1号及び第53条第1項の規定に従って計上されたことに相違ありません。

と記載することになりますが、最後三つの●●部分は同じ金額が入るという理解で良いでしょうか?

計算規則について、理解が不十分なため質問が膨大になってしまいましたが、
どうかご教授していただけませんか?よろしくお願いいたします。

投稿: | 2009年3月16日 (月) 23時33分
A20
合資会社も出資時に資本金を計上しますが、登記されないので、その計上の正確性について法務局は何の証明も受けていません。
 そこで、法務局に組織変更の登記をするときに、組織変更時の資本金の計上(=組織変更前の資本金)だけではなく、組織変更前の資本金がきちんと計上されたことを証明をさせるのは、理論的にはおかしくないと思います。

Q21
剰余金の分配に関してご教示お願いします。
中間期に利益が見込めない(中間期に赤字となる見込みの)場合に中間配当を行おうとする場合、その前の定時株主総会で任意積立金を取り崩して「中間配当積立金」などに計上して対応していたと思いますが、この考え方は会社法の下でも変わってないと考えてよいのでしょうか。(貸借対照表上、「別途積立金」は十分に計上されている前提です。)
投稿: 悩ましい | 2009年3月18日 (水) 19時31分
A21
変わっていません。

Q22
会社法31条で定款の備置き及び閲覧等とありますが、会社成立後は、本店及び支店にて、株主及び債権者と裁判所の許可を得た親会社社員が会社の営業時間内に会社の定めた手数料をもって閲覧可能となっていますよね。
では株主になろうとして、または自社の従業員がどんな定款なんだろうと調査の目的で定款(特に相対的記載事項など)を見る場合の方法はあるのでしょうか?
特に非公開会社で株主兼オーナーの場合になると、役員や幹部クラスすら定款を見せてもらえないような場合もあるとききます。
誰でも取得可能な登記事項証明書には必要最低限の事項しか確認できないようなので不思議に思っています。
投稿: ぴんぽん | 2009年3月18日 (水) 20時46分
A22
株主・債権者以外の者が定款を見る権利はありません。

Q23
ブログをいつも有効に活用させていただいております。先般取り上げておられました個別株主通知と総会検査役について質問させてください。実は総会検査役選任事件に仕事上よく関わるのですが、株主(原告)資格の確認(=継続保有)を裁判所が発行会社に対して照会しているケースを殆ど(≒全く)聞いたことがありません。電子化以前は、申立人が疎明していることなのかなあ、と思っておりましたが、電子化後は決定的に個別株主通知(現在は抹消減少証明も)での確認が必要ですよね。裁判所が原告資格を確認しているのでしょうか? 発行会社が株主提案(特に共同提案など)を受ける場合はかなり神経を尖らして資格審査をしていますが、一方似たような検査役選任申立では、会社法874で不服申し立てすらできないのに、裁判所の審査面でどうも疑問があるのですが・・・。
投稿: T/A | 2009年3月18日 (水) 23時51分
A23

Q24
現在会計士試験を目指しているものでして、度々、貴サイトを閲覧させて頂いております。
リンクの方はフリーでしょうか?
投稿: 作山 | 2009年3月19日 (木) 02時31分
A24
フリーです。

Q25
 葉玉先生、こんにちは。
 ロー未修(4月から)2年目の者です。
 今回のコメントにある「こんにちは」さんの質問ともかぶりますが、民法の「直前に見回す資料」として、「判例六法」を使うか「択一六法」を使うかで迷っています。
 ①両者のメリット・デメリット
 ②「判例六法」はどんな人向けで、「択一六法」はどんな人向けか
 ③どの時期から「買い替え」を控えるべきか(2011年に試験があるとして、現在出版されている択一六法or判例六法で臨んでもいいのか、それとも、2010年に出版される最新のものを買うべきか)
 ④それらをどのように使うか(間違った箇所にマークする、過去問に出た箇所をチェックする等)
 ⑤その他、思い浮かぶこと
を教えてください。
投稿: 春から未修2年目 | 2009年3月19日 (木) 09時22分
A25
 好きなものを使ったらいいでしょう。
 ただし、六法は、常に最新の六法を使うべきです。
 

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2009年3月 6日 (金)

記者会見のコツ

 確定申告の申告期限が近くなってきたので、申告の準備をぼちぼちしていま
す。

 同僚の弁護士の中には、税理士に依頼している人もいるのですが、私は、税
金関係の仕事をすることも多いので、申告の肌感覚を失わないように自分で帳
簿をつけて申告書も書いています。

 このように私は、自分の収支を全て管理しているので、入出金の詳細もすべ
て把握しているのですが、小沢代表ほどの人になると、そういうわけにもいか
ないようですね。

 秘書の政治資金規制法違反被疑事件で、大揺れに揺れています。

 この事件は、非常にシンプルな話であり
   政治家個人の資金管理団体は、企業から政治献金を受けることができな

というルールがあるにもかかわらず、
   政治家個人の資金管理団体の会計責任者が、企業からの政治献金である
と知りつつ、ダミーの政治団体から政治献金を受けた
という疑いがあるというものです。

 小沢代表は、この逮捕に対し、昨日、記者会見を開きましたが、本日は、こ
の記者会見をネタに
   不祥事発覚時の記者会見
についてお話をします。

 私は、企業向けにマスコミ対策のセミナーをやったことがあるせいか、企業
の不祥事が起こったときに
  企業の法的責任を最小化しつつ
  報道被害を被らないような報道対策をアドバイスする
という仕事を依頼されることが比較的多いように思います。

 また、私は、以前、義父に対する深刻な報道被害に対し、義父を助けながら
週刊誌・テレビ・夕刊紙・スポーツ新聞と、数年にわたって戦い続けたことが
あるので、その時の経験から
  各種マスコミが、取材対象に対し、どのような対応を取るのか。
ということをそれなりに理解しているつもりです。

 私のこうした経験に照らして考えれば、今回の小沢代表の記者会見は
  失敗だった
と思います。

 不祥事が発覚し、マスコミ対応を迫られるときの最大のポイントは
   過剰な連鎖的報道を防止すること
です。
 なぜならば
  1回ないし短期間の報道ならば、レピュテーションは対して低下しないが
  長期間にわたる連鎖的報道は、致命的な風評被害や社会的な死をもたらす
からです。
 
 マスコミで報道されると、報道された人は、多かれ少なかれ、ショックを受
けるのですが、単発の報道であれば、世間の多くの人は気付かないか、気付い
てもあっと言う間に忘れます。

 それに対し、連鎖的報道がなされると、本当は大した不祥事ではないにもか
かわらず、世間の人は、重大事件のように感じて、報道された人に「悪人」の
レッテルを貼り、そのうち、
   見ず知らずの人が、根拠のないデマをあたかも見たことのように喋りは
じめたり
   違法ではない行為を、極悪非道の行為のように評価されたり
するようになります。

 こうした連鎖的報道が企業を倒産に追い込むことすらあることは、昨今の各
種「偽装」事件で明らかとなっているところです。

 では、そうやったら連鎖的報道を予防できるのでしょうか。

 そのコツは、ケースバイケースではあるものの、大雑把に言えば
   1 マスコミから完全に隠れる
   2 とことん謝る
   3 他のもっと重大な事件に関心を移させる
のどれかということになるでしょう。

 たとえば、1の「完全に隠れる」というのは、あまり有名でない人や企業の
場合には、有効な手法です。

 マスコミは、国民が感心を持ちそうな事件を報道することで飯を食っている
ので
  「人」又は、その人がやった「行為」
のいずれかで関心を引く必要があります。

 このうち「行為」は、一度報道してしまうと、他に報道するに値するような
「行為」を見つけてこない限り、すぐにネタ切れになってしまうので、連鎖的
報道には向きません。大量殺人や猟奇的殺人のような場合は、行為そのものに
対する関心で、それなりに長期間報道されますが、それでも「行為」だけなら
ば、通常1週間が限度でしょう。


 これに対し、国民が、その「人」自体に関心を持ってくれると
  その人の生い立ち、知人友人からの評価等、比較的取材しやすいネタで間
を持たすことができるし
  その人に突撃取材をすれば、その人の取材に対する対応自体がネタになる
という点で、長期間、報道を継続することができます。

 逆に、国民が、その「人」に対する関心を持つことができなければ、報道は
、比較的短期間で収束します。

 そのため、あまり有名でない人や企業の場合、マスコミの取材から完全に隠
れ(場合によっては海外に身を潜め)ていると、ネタがなくなり、報道はすぐ
に収束に向かいます。

 この場合、大事なのは、「完全に隠れる」ことであり、渦中の人が、中途半
端に記者の質問に答えたり、ぶら下がりの取材に捕まったりすると、思わず
  テレビカメラの前で、視聴者の怒りを買うような言動をしてしまい
いきなり
   「有名人」に格上げ
されてしまいます。

 もっとも、今回の小沢代表のようにもともと有名人の場合には、「完全に隠
れる」という方法は採れません。

 有名人が隠れると、朝青龍のときのように、その所在探し自体が、ネタにな
るので、かえって連鎖的報道を誘発します。

 ですから、有名人や有名企業の場合には、不祥事が発覚したら、すみやかに
(できれば、その日のうちに)、記者会見を開く方がベターでしょう。

 その際、できる限り、「目立たない」「無個性」な言動で、冷静な会見を行
うことに気をつけるべきです。

 テレビの視聴者にとって、記者会見は、一種のショーです。

 面白ければ、何度でも見たくなるし、型どおりならば、一度見れば十分です
。きっと、二度目からは、別のチャンネルに回したくなるでしょう。

 だからこそ、有名人の記者会見でも、連鎖的報道を避けるために、目立たな
い、無個性な会見を心がけるべきなのです。

 ところが、小沢代表は、今回の逮捕について、怒りを露わにし

   政治的にも法律的にも、非常に不公正な国家権力、検察権力の行使だ

等と、かなり目立つ会見を行いました。

 この会見は強烈で、今後、事件の進展の度に、テレビで何度でも報道される
でしょう。
 その一点だけを考えても、不祥事発覚時の記者会見としては、あまり適切な
対応とはいえません。
 小沢代表は、強面のおじ様なので、テレビ的には、非常に悪役にしやすいキ
ャラですから、
    沈痛な面持ちで、誠実な回答
を心がけないと、視聴者の反感を買うだけです。

 また、秘書の行為が適法である旨断言した点については

    記者会見前になすべき基礎的な事実調査をやっていないか
    事実認定の見通しが甘いか

のどちらかであり、後日、マスコミから
    適法であると断言したこと自体を非難される
のは、ほぼ確実であるように思われます。

 本件は、報道を見る限り
   客観的にダミーの政治結社からの献金であるという点は反論できないだ
ろう
と思われ、そうすると、政治資金規正法違反かどうかの分水嶺は
   秘書が、西松建設からの企業献金であるということを知っていたか
という点になります。

 このように、客観的事実については争う余地がほとんどなく、秘書の主観に
よって左右されるような状況で、小沢代表が

   何ら政治資金規正法に違反する点はない

等と断言するのは、危険です。

 案の上、今日になって
   秘書が西松建設宛てに送った請求書
という主観的要素を裏付ける客観的証拠が存在することが明らかになり、たっ
た一日にして
 
  小沢代表の昨日の発言は、何だったの?

ということになってしまいました。

 請求書の内容にもよりますが、そのような請求書が実在するとすれば、起訴
される可能性は極めて高く、しかも、否認事件であれば
   次の衆議院議員選挙までに、判決が確定しない可能性
も、かなり高いです。

 この請求書の存在は、逮捕前からマスコミはある程度知っていたようであり
、小沢代表サイドが
   そのような重要証拠の存在を知らなかったとすれば、調査が甘く
   知っていたとすれば、見通しが甘かった
というほかないでしょう。

 いずれにせよ、この事件は、自白事件にでもならない限り、長引くのはほぼ
確実であり、今後、小沢代表は、マスコミと接する度に
  「何ら政治資金規正法に違反する点はない」と断言したことについて、厳
しいツッコミがされる
でしょうし、起訴されたり、有罪判決が出たりすれば、
  「今でも、不公正な国家権力、検察権力の行使だと思われていますか?」
などという答えるのが大変むずかしい質問が浴びせられるでしょう。

 私は、
   客観的事実について確実に争うことができる証拠を握っているとき
ならば、小沢代表のように

   あえて潔白を強く主張することにより、ピンチをチャンスに変える

という方法を採るかもしれませんが、本件のように客観的事実を争うことが難
しい場合において、秘書が被疑者となっている事件について
   断定的な発言をすること
は、絶対にしません。

 たとえば、本件ならば
   秘書が逮捕されたことにより、世間をお騒がせして申し訳ない。
   秘書からは企業献金とは知らなかったと聞いており、私としては、長年
、一緒にがんばってきた秘書を信じたい気持ちで一杯である。
しかし、秘書の主観がどうであれ、実質的な企業献金だったすれば、今
回の献金は許されないことであるから、事実関係を調査の上、もし企業
献金であった場合には、即刻、返金する。
   また、万が一、秘書が本当に政治資金規正法違反を犯しているとすれば
、私は責任逃れをするつもりはない。
   私は、私の目で、検察の主張が正しいのか、秘書の主張が正しいのかを
確認し、政治資金規正法違反の事実があったと判断すれば、当然、その責任を
取る。
とでも答え、基本的には
    とことん謝る
という路線をとるの正解であるように思います。

 部下が悪いことをしたときに、責任逃れをせず、しっかり謝る上司は、評判
があがるので、今回のケースでは、小沢代表が思いっきり謝った方がよかった
のではないでしょうか。

 おそらく、小沢代表が強気の発言に終始したのは
   責任問題に言及すれば、秘書の起訴と同時に、どんな責任を取るのかと
いう点に関心が集まってしまう
ということが念頭にあったのかもしれません。

 しかし、小沢代表がどのような発言をしようとも、党首の秘書が政治資金規
正法違反の刑事裁判を抱えたままで、政権をかけた選挙に突入するというのは
、民主党にとっては、考えにくいシナリオであり、起訴がほぼ確実であるとみ
るのならば
    引き際の好感度をどう高めるのか
を考えた方が得策ではないでしょうか

(私なりに好感度を高めるシナリオは考えているのですが、実際に進行中の事
件に関することなので、自粛します)

 いずれにせよ、この件を短期間で幕引きさせることができれば
    献金問題が他の党に飛び火して
いつの間にか、この件の印象が薄くなったり、
    別の問題で与党が沈んだり
して、選挙までに盛り返すことも不可能ではないでしょう。

 私は、民主党の味方でも、自民党の味方でもありませんが、今回のような不
祥事においては
   迅速な調査により、希望的観測ではなく、事実を見すえ
   今後の検察や裁判の動きについての正確に予測し
マスコミを早く落ち着かせる
ことが大事なのに、小沢代表は、今のところ、どれもうまくやれてないように
見えるのは、私だけでしょうか。

追伸

 DVD「会社法と実務」全10巻は、おかげさまで、大変、好調な滑り出し
を見せております。
http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 企業の法務研修用に1セットあれば、今後、低コストで、かつ、担当者が楽
をして(笑)、研修を実施できますので、ぜひご検討ください。
 よろしくお願いします。

(質問コーナー)
Q1
 私は不真面目な法学部卒で、未修としていわゆる一流の法科大学院に通って
おります。恥ずかしながらGPAの数値も、それ以外での評価もそれなりに高
いものをいただいております。司法試験の過去問にあたっても、客観的に判断
してもいい勝負をしているのではないかと思えます。

しかし、私自身、「私は法律をマスターした、または、マスターしつつある」
という実感を全く持てておりません。司法試験が法曹資格を得るための試験で
あることを考えると、合格レベルに達したときには、そのような実感が得られ
るはずだと思っていたのですが、このような理解は誤りでしょうか。

また、葉玉先生ご自身が、法律をマスターしたと感じられたのは、いつ頃でし
ょうか。

投稿: 未修2年系男子 | 2009年3月 3日 (火) 01時22分

A1
 法律を「マスター」した実感なんて、実務に出て、自分で何件か事件を解決
してはじめて生まれてくるものでしょう(しかも、その事件と同種の事件につ
いてだけ)。
 合格レベルに達しただけでは、マスターなどほど遠いと思います。

 
Q2
ご多忙の中、ブログ更新、楽しみにしています。
法曹を目指す私にとって、新司すら高いハードルですが、先生は、日経弁護士
ランキングに載るなど、数多いる普通の弁護士の中でも、他にはない優れた特
質をお持ちだと思っています。(先生ご自身は否定されるかもしれませんが。

そこで、下記についてどのようにお考えか、これからの勉強も含めた指針にな
るような言葉をいただければ幸いです。いつか、どこかでお会いしたり、一緒
に仕事できる日を目指して。。。

○優れた法律家として持つべき特質(複数回答可。←偉そうにすみません。た
だし、下記と重複しないような、法律家特有の思考・法解釈の姿勢・視点等の
観点から)。
○クライアントの信頼を得て、満足してもらえるために持つべき特質。

投稿: 希望を現実に | 2009年3月 5日 (木) 11時14分
A2
とりあえず、次の記事を読んでください。

http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_7d09.html

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2009年3月 1日 (日)

個別株主通知

久しぶりの更新で、いきなりコマーシャルというのもナンですが、ずーっと以前に告知しておりました

  DVD「会社法と実務」 全10巻

が、LOTUS21のサイトで発売開始となりました。

http://www.lotus21.co.jp/works/streaming/kaisha115/kaisha115_DVD.html

 このDVDは、私が、全10回にわたり、

   企業の法務総務担当者
   法律専門家
   司法試験、司法書士試験、公認会計士試験等の受験生

等を対象に会社法の使い方を実務に則して分かりやすく解説したものです。

 1回から3回は、お試しでインターネットで見ることができますから、それを見ていただければ分かりますが、できる限り初心者にも理解できるよう心掛けて講義しているものの、実

務に役立たないことを勉強しても仕方がないので

  こういうことをやりたいときには、どうしたらよいのだろう?

  この規定が邪魔になるときには、どういう工夫をすればよいのだろう?

 というプロの疑問にも答えられるよう、実務上の小ネタ、裏技の類もふんだんに盛り込んでいます。

 
  講義は、各巻ごとに、独立したテーマを扱い、それぞれ完結しています。
  
  これは、条文に沿って勉強するよりも、あるテーマで問題になる条文を有機的に解説する方が「生きた知識」になると考えているからです。

  また、1回約2時間で1テーマとなっているので、会社の研修等にも使いやすいと思います。

 
 このDVDについては、さっそく「久留米在住の人」さんから、次のようなご質問をいただきました。

「ついに115講のDVD発売ということですが、このDVDの対象者に法科大学院の生徒は含まれますか?
つまり、率直に聞きますと、新司法試験に「使える」講義でしょうか?学生は常に金欠なものでして・・・」

 私は、「使える」と思います。

 このDVDは、具体的な答案の書き方を教えるものではありませんが、新司法試験は具体的事例に対し条文を使いまわす試験なので、このDVDの中で解説される事例の分析の仕方や

条文解釈のポイントは、新司法試験に役に立ちます。
(各種試験に役に立つと思われるので、学生限定のストリーミングサービスを用意しています)

 
 なお、各講義中、その場をもりあげるために、やや過激な発言をしていることもあります。
 そこらへんは、笑って許して下さい。

 価格は
  DVD10巻セット 98,000円(税込)のところを
           3月31日までの特別価格は、なんと「8万8000円」

  単品販売は、各回 1万2000円

  学生限定 ストリーミングサービス 10回 2万8000円

です。

 この手のDVDは数が出ないので、映画のように安くできないの心苦しいのですが、法律系のDVDとしては破格の値段に設定しているつもりです(通常、実務に役に立つ法律系セミ

ナーは、一人1回2-3万円はとられると思いますが、特別価格ならば、1巻8800円です。)
 
 会社で1セット購入して、毎年、新人研修に使ってもらえれば、非常にお徳用なのではないかと思います。

 また、学生限定のサービスは、予備校の会社法の講義より安くすることを目指しました。

 ちなみに、パブコメ中の会社法施行規則等の改正には、まだ対応していませんが、公布された時点で、購入者に対して、追加情報を提供する予定ですので、安心してお買い求めくださ

い。

 私のノウハウを詰め込んだDVDですので、一人でも多くの人に見ていただけると、大変、嬉しいです。

 さて、長い前振りはこの辺でおしまいにして、本日のテーマ

     「個別株主通知」

について、お話しましょう。

 最近、この個別株主通知について、「社債、株式等の振替に関する法律施行令の一部を改正する政令案」のパブリックコメントが開始されました。

 個別株主通知は、振替法(社債、株式等の振替に関する法律)の制度であり、振替株式(≒上場株式)の株主が、単独株主権・少数株主権を行使する前提として行わなければならない

通知のことです。

 
 株券の電子化の前は、上場会社の株主が、少数株主権等を行使するためには、株主名簿または実質株主名簿に株主の氏名等が記録されることが必要でした。

 そのため、株式を購入した人が、少数株主権等を行使したい場合には  

    (1)株券の交付を受けて株主名簿の名義書換をする
または、(2)証券保管振替機構に預託されている株券ならば、決算期・中間決算期に実質株主名簿が作成されるのを待つ

という方法を取る必要がありました。

 この方法については、株主にとって、それぞれ次のデメリットがありました。

 (1)名義書換

  ① 名義書換に時間と手間がかかる
  ② 株式市場で株式を売却するときには、株券を預託しなければならない証券会社が多いため、一旦、名義書き換えをすると、売却をしたくても、すぐに市場売却できない。
  ③ 名義書換をした後に、株券を機構に預託すると、機構名義に書き換えられてしまうため、次の実質株主名簿に載るまで、単独株主権・少数株主権は行使することができず、また

、継続保有期間が途切れてしまう。

 (2)実質株主名簿
  ① 原則として、1年に2回しかアップデートされないので、株式を購入してすぐに単独株主権・少数株主権を行使することはできない。
  ② 6か月の継続保有要件がある少数株主権等に関しては、実質的に約1年間行使することができない場合がある。
   (実質株主名簿に2回連続で株主の氏名等が記録されることが要件となるので、たとえば、3月決算会社の株式を4月に購入した株主は、その年の9月末の翌年の3月末の実質株

主名簿に記録される翌年の4月まで、当該少数株主権等を行使することができない。
  ③ 機構から株券の交付を受けた場合、次の基準日までに名義書換をしないと、機構名義の失念株主となり、名義書換をするまで株主としての権利を行使することができない。

 
 また、株券の電子化後は、上場株式は、すべて振替株式になり、株主名簿は、原則として、決算期と中間決算期の2回しか、アップデートされません。

 そのため、次のような問題を解決する必要がありました。

  ① 期中に株式を購入した株主が、すぐに少数株主権等を行使したい場合、従来のように株券を引き出して名義書き換えをするという手段を取ることができない。

  ② 株主名簿に記録されている株主が株式を売却しても、株式取得者が名義書換を行うことができないので、株主名簿に記録されている株主が、現在も株式を保有しているという蓋

然性は高くなく、会社が、期中において、株主名簿を基準に株主に少数株主権等を行使させることは困難である。
  (従来は、株主名簿に記録されている株主から株式を買った人は、すぐに名義書換をするため、株主名簿に記録されている株主が、現在も株式を保有しているという蓋然性が高かっ

た)。

 以上のような従来の制度のデメリットを克服し、かつ、新制度の問題点を解決するための制度が「個別株主通知」なのです。

 つまり、振替株式の株主が、少数株主権等を行使したい場合には、まず、その振替株式が記録されている口座を管理している証券会社や信託銀行等(口座管理機関等)に対し
    「個別株主通知」の請求
をします(その際、実務上、口座管理機関等から「受付票」を交付されます)。
 
 すると、口座管理機関等及び振替機関(機構)を通じて、その振替株式の発行会社に対し、
   ① その株主の氏名等
   ② その口座に、何株記録されているか
   ③ その株式が、通知対象期間(請求前6か月+14日間)において、いつ何株購入され、何株売却されたのか
等という情報が通知されます(個別株主通知)。

 これで、会社は、その株主が少数株主権等を行使することができる要件を備えているかどうかが分かるので
   株主は、株主名簿に記録されているか、どうかにかかわらず、少数株主権等を行使することができる
ようになるのです。

 この個別株主通知制度には、次のようなメリットがあります。
 
 ① 株主は、名義書換をしなくても、少数株主権等を行使することができるようになった。
 ② 6か月の継続保有期間は、実際に株式を購入した日からカウントされるようになった。
 ③ 従来のように機構への株券の預託や機構からの株券の引き出しによって、少数株主権等の行使が制限されるような事態がなくなった。
 ④ 少数株主権等を行使した株主であっても、株式を迅速に売却することができるようになった。
 ⑤ 会社は、個別株主通知を見て、株主の6カ月間の株式保有状況を知ることができるので、安心して株主からの権利行使に応ずることができるようになった。

 反面、従来の制度と比べると

  株主名簿に記録されている株主でも、個別株主通知をしなければ、少数株主権等を行使することができない

というデメリットもあります。
 
 ただ、このデメリットは、株主名簿のアップデートが年2回に限定されていることから、やむをえない制約です。

 
 立案プロセスにおいては、「株主名簿に記録されている株主の少数株主権等の行使については、個別株主通知は不要である」
という法制度も検討されたのですが、もしそのような制度を採用すると、

  ① 会社は、少数株主権等の行使の度ごとに、情報提供請求権を行使して、その株主の株式の保有状況を調査しなければならなくなる。
   (情報提供請求権は、会社が振替機関等に費用を支払って行わなければならないので、一部の株主の権利行使により、会社(ひいては、すべての株主)が高いコストを負担しなけ

ればならなくなる。)

  ② 会社が、その株主の株式の保有状況を調査している間は、履行遅滞に陥らないものとしなければならないが、その期間を法定することは困難であった。

  ③ 法律上、情報提供請求権は、会社が、株主の口座がどこの証券会社等に開設されているかを知らなければ行使できないこととされており、株主が、自分の口座の所在を隠すと、

会社は情報提供請求権を行使することができない(この問題点は、実務の工夫によって、解決されましたが、立案当時は、そのような実務上の工夫がされるかどうか不明でした)

という問題があり、採用されませんでした。

 つまり、個別株主通知は

  株主の少数株主権等の行使に伴うデメリットの解消と
  会社が情報提供請求権等により株主の株式保有状況を確認せずに権利行使に応じられる状況の確保

という2つの要請を満たすことを目的とした制度なのです。

そこで、今回のパブリックコメントに付された政令の改正について、その妥当性を検討します。

 今回の改正は、簡単にいえば、
  
  「個別株主通知が会社に到達した後、どのくらいの期間、その通知は有効か?」という点について、
   従来は、「2週間」だったものを「4週間」に延長する

というものです。

 この期間が短ければ
   株主は、個別株主通知が到達した後、すぐに権利行使をしないと、もう一度、個別株主通知をしない限り、権利行使できなくなる
ので、期間が長い方が、株主にとっては有利です。

 他方、個別株主通知は、個別株主通知の請求時までの株式の保有状況を通知するものですから、この期間が長くなりすぎると
   個別株主通知の請求後に、株主が株式を売却することができる期間が長くなり
   「個別株主通知の内容が、現在も継続している」という蓋然性
は薄れます。

 その結果、会社は、通知後の株主の株式保有状況を確認するために、情報提供請求等を行使しなければならなくなるでしょう。

 こうしたバランスを取るために、現行政令は、利害関係者の意見を聞きながら、その期間を
   2週間
と定めたわけです。

 この2週間は、理論的に導かれるものではなので、1週間でも、10日間でも、4週間でも、バランスが取れていればOKなのですが、それにしても、現行政令の施行直後に、いきな

   4週間

という案が出たのは何故なのでしょうか。

 通常、単独で株主権を行使するような場合には、2週間もあれば十分ですから、今回の期間の延長は、複数の株主が共同で株主提案権を行使する場合に対応するためであろうと推測さ

れます。

 提案権は、議決権の1%または300個以上の議決権を持っている株主が行使することができる権利であり、複数の株主であわせて300個の議決権を持っている場合には、共同で請

求することができます。

 共同請求の場合には、通常、各株主が個別株主通知の請求を行い、各株主が中心となる株主に受付表と委任状を交付し、中心となる株主が、他の株主を代理して、共同で提案権を行使

するという手順を踏むことになります。

 株主の一部について、個別株主通知が2週間以上遅れたり、証券会社の一部の対応が遅れたりした場合には、2週間以内に全員の受付表や委任状が集まらないこともあるので、改正案は、4週間に延長しようとしているのでしょう。

しかし、2週間を4週間にすれば解決できる程度の不都合なら、提案権を共同で行使する株主がきちんと協調すればよく、施行直後に政令を改正するほどの必要性があるのか、疑問は残ります。

そもそも、そうしたニーズに対応するためには、本当は、政令改正など必要ではありません。

証券保管振替機構の規則改正で、個別株主通知の通知対象期間を7か月に延長してもらえば十分です。

そうした上で、たとえば、ABCという3人の株主が、共同で提案権を行使する場合において、Cの個別株主通知の手続きが遅れたような場合には

 先に個別株主通知の手続きができたABが通知の到達後2週間以内に、後日、Cの提案権行使が行われることを停止条件として、共同の株主提案権を行使する

こととすればよく、わざわざ政令を改正するほどのことはありません。

 仮に、株券の電子化直後で個別株主通知に関する証券会社等のシステム整備が遅れているという理由で政令改正をするのであれば、

   経過措置として、今年に限って、4週間とする

ということでも良さそうです。

 さらに、どうしても政令の本則を改正するというのであれば

  株主提案権の行使のみ4週間とし、それ以外は2週間とする

という改正も考えられます。

 施行後に、実際に生じた不都合を是正するために、必要な政令の改正を行うのは当然ですが、施行直後のこの時期に、すべての少数株主権等について、具体的な不都合が生じていると

は考えにくいところであり、こんな時期に改正案が出てくると、多くの人が

   現行政令のときにパブコメをし忘れた声の大きな人が、株券の電子化後に法務省に圧力をかけたのではないか。

と憶測してしまいます。

 個別株主通知については、法制審議会以来、利害関係者との長く困難な調整と、パブリックコメント手続きを経て決定されたものであり

   施行直前に、よく分からないルートから苦情があったので、施行後すぐに改正する

というのは、あまり格好のよいことではありません。

 この改正は、理論的な話ではないので、前の記事にとりあげた

    200単元制限という理論的におかしく、誰の役にも立たない改正
   (しかも、わざわざ法制審議会を開いて改正するようなマターではないため、ずっと不合理な規定が残り続ける改正)

とは異なり、理論的に4週間がおかしいというわけではありません。

 しかし、現行政令の「2週間」は、法制審議会の当時から考えると、6年の歳月をかけて議論してきた結晶ですから、

   これが、実際の不都合が生じていないのに、あっけなく4週間に変わる

ということになると
   法務省は、当時の議論を反故にした
と感じる人もいるだろうというのが、気になります。

 少なくとも、当時、利害関係者が妥協した線とは大きく異なるので、個別株主通知をめぐる解釈論を少し会社よりにする必要がありそうです。

 たとえば、この期間が4週間に伸びれば、その分、通知の内容が、現在の状況と同じであるという蓋然性は下がるので

   会社が、情報提供請求権を行使し、情報を取得するまでは、株主の少数株主権等の行使に応じなくても、履行遅滞に陥らない。

と解釈すべきであろうと思います。

 さらに、過激なことをいえば

  会社は、株式取扱規則により、個別株主通知に記録されている株式が記録された口座の特定に関する情報(口座番号等)を株主に質問することができる

とか

  会社は、株式取扱規則により、情報提供請求権の手数料を株主に対して償還することができる

とか、そういう解釈を検討するのもアリなのではないでしょうか。
 

 株式取扱規則の部分は、半分、冗談ですし、きっと法務省も政治的に苦しい立場におかれたのだとは思いますので、4週間について反対するわけではありませんが、施行直後の政令改正案は、そうした政治的な部分が鮮明に見えてしまうため

   せめてシステムの対応の遅れを理由に経過措置のみ改正して、今年の年末ころに、再度、本則の改正について議論する

という落とし所の方が、関係者の理解を得やすかったのではないか、と思ってしまいます。 

(質問コーナー)
Q1
 葉玉先生が刑事弁護までされているのはちょっと意外でした。
 私は、検察の起訴罪名が謙抑的に過ぎるのではないかと思うことがあります。私なんかは「これだけの間接事実じゃちょっと弱いかもしれない。でも、裁判所が認めてくれる確率は五

分五分かな」と思ったら、重い罪を主位的訴因として、軽い罪を予備的訴因として起訴することは構わないと思うのです。それを軽い罪で起訴してしまうのは、被害者にとっては不満だ

と思います。
 もちろん捜査を尽くすことが前提ですが、それでも「五分五分」だと思ったら、検事はチャレンジすべきなのでしょうか?そうすべきでないとすれば、なぜでしょうか?
投稿: ロー生 | 2009年2月12日 (木) 15時21分
A1
 起訴時から予備的訴因として起訴することはないですね。
 私は、自分の事実認定の見通しについては、かなり絶大な自信を持っているので、「もしダメなら・・」ということは考えません。
 「証拠が弱いから、軽い罪で・・」というようなことも、ほとんどしたことありません。
 
Q2
今回は検察時代の話ですので、刑法がらみの話題でもよろしいでしょうか。
教室事例のような現実の事件です。
仮にこれが真実であれば、条件説といわれる判例の立場では既遂罪が成立すると思うのですが、
相当因果関係説では未遂罪にとどまるのでしょうか。
結構、限界事例だと思うのですが。
また、先生がこのような事件を弁護するとしても、
本日の記事のようにされるのでしょうか。
 A市で2007年某月、横断歩道上で女性が首を絞められている最中にタンクローリーにひかれて死亡した事件があり、殺人罪に問われた同市B区、元会社員○○被告の初公判が12日

、C地裁(××裁判長)で行われた。
 ○○被告は「殺意はなかった。首を絞めたことも覚えていない」と殺意を否定し、起訴事実を否認した。
 起訴状によると、○○被告は07年某月日早朝、B区の横断歩道上で、あおむけになった同区の飲食店従業員△△さんに馬乗りになって首を絞めた。
その後、〈1〉頚部圧迫による心停止〈2〉頸部骨折で身動きできなくなった後、通りかかったタンクローリーに頭部をひかれて脳挫滅――のいずれかで△△さんを殺害した、としてい

る。
2月12日の読売新聞HPより(実名等一部省略しました)
投稿: | 2009年2月12日 (木) 17時50分
A2
 経緯次第ですが、たぶんその事例は、実務的には、相当因果関係がほぼ確実に認められるでしょう。

Q3
 私は法科大学院の未修2年生です(もうすぐ3年生)。
 法科大学院の成績が伸びなくて悩んでいます。成績が優秀な人は、ローの授業も淡々とこなして着実に力をつけていっているように感じます。
 自分のように、法科大学院の授業にもあまりついていけず単位をとるので精いっぱいな人間は、これからどのように勉強していけばいいのかがわかりません。
2年間でたまった膨大なレジュメ、ケースブック等々も、結局積み上げてあるばかりで途方に暮れてしまいます。
 春休み期間中の勉強計画を立てていたら、こうした悩みで頭がいっぱいになってしまいました・・・
投稿: 苦労院生 | 2009年2月12日 (木) 19時26分
A3
 予備校に通い、 予備校のテキストと択一の問題集と論文過去問だけをやりましょう。たまったものは、全部捨てましょう。たまったものを見直そうなどと考えてたら、絶対に自滅し

ます。
 まず、勉強する対象を絞り込み、それを繰り返すこと。
 そして、勉強時間は1日12時間以上確保すること
 最後に択一と論文の演習を毎日すること
 これだけ考えてください。
Q4
現在パブリックコメント手続中の会社法施行規則の改定案を見てこれは無茶な改正
ではないかとふと思ったことがあるのですが、第74条2項2号の改正案です。
同改正では、候補者が選任された場合において重要な兼職に該当する事実があることとなるときは、その事実を参考書類に記載しろとあります。
従来では、参考書類作成時点での兼職の状況を書けばよかったと思いますが、この
改正案のとおり改正されると、参考書類作成時点ではなく、役員に就任した時点で、
要するに「見込み」で兼職の状況を書かなければならなくなってしまいます。
仮に自社の総会が6月26日に開催するとして、同日やその前日などに他の上場会社で役員(しかも代表取締役)に就任する予定がある場合なども参考書類に書かなければならないことにな

らないでしょうか?未上場会社での役員就任予定の話ならまだしも、上場会社で、しかも未公表の代表取締役就任予定の話を他の会社の参考書類で開示することは現実的に不可能ではな

いかと思いましたので。
投稿: ここりこ | 2009年2月13日 (金) 08時12分
A4
 そこらへんは、パブコメで指摘してください(と書いて気付きましたが今日までですね)。
 まあ、省令が交付されてから考えましょう。

Q5
どのテキストでも授業でも"株式"とは「均等に細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位」といった感じで書いてあります。
「均等に細分化された」とか「株式会社の社員たる地位」はわかるのですが、「割合的単位」という聞きなれない言葉の意味がわかりません。法律独特の言い回しなのでしょうか?
投稿: かな | 2009年2月13日 (金) 22時52分
A5
 割合的単位というのは、非個性化されていることを表す言葉です。
 持分会社の持分は、各社員がそれぞれ持分をもち、その持分の内容がそれぞれ違います。たとえば、Aは100万円の持分で業務執行権なし、Bは1000万円の持分で業務執行権あ

りというかんじです。
 株式会社の場合には、同一種類の株式の権利内容は、どれも皆、同じであり、それをAが100個、Bが1000個持っているというように、何個持っているかで、AやBが行使でき

る権利の内容が決まります(100個持っているひとは1000円配当をもらえ、1000個持っている人は10000円配当が貰えるとか)。
 つまり、株式は、各株主の権利内容を決めるための単位となっているということです。割合的というのは、各会社の配当や残余財産の分配は、配当原資や残余財産を発行済み株式総数

で割って配ることから、「割合的」といっているのでしょう。

Q6
前回Q15について、アドバイスありがとうございました。脱時空勉強術も非常に興味深く読ませていただきました。ところで「必ず真一に1時間以上」はどの程度の頻度でしょうか?

また、記憶用に何かツールのようなもの(単語カード等)は利用されたでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月14日 (土) 11時03分
A6
 毎日1時間以上ということです。
 単語カードはあまり使わず、A5カードをつかっていました。

Q7
1日12時間勉強するにはリビドーが必要だと聞きました。
葉玉先生のリビドーも知りました。
僕には1日12時間も頭をフル回転させるほどのリビドーが今現在ありません。
リビドーはどんな風に得られるものなのでしょうか。
投稿: ぱっしょん | 2009年2月14日 (土) 13時07分
A7
最近は、草食系男子が増えているようなので、リビドーが足りないのかもしれません。
私は、リビドーの塊なので、どんな風に得られるかと聞かれても困ります。
私が分けてあげたいくらいです。

Q8
株式移転について質問させていただきます。
株式移転の対価として、株式移転完全親会社の株式を交付する場合、完全子会社が自己株式を持っていたら、自己株式にも親会社の株式の割り当てを受けることができるとのことですが

、同様の事例で合併では消滅会社が所有する自己株式には存続会社の株式の割り当ては出来ないとされています。
 株式移転と合併でこのような違いがあるのはどういった趣旨なのでしょうか?
投稿: 匿名希望 | 2009年2月14日 (土) 22時08分
A8
 合併の場合には、存続会社が自分に自己株式を割り当てることになるので意味がありませんが、株式移転の場合は、完全子会社にとって自己株式の割り当てではなく、親会社株式の割

り当てだからです。
Q9
会社法制における役員等の相互間の信頼の原則と監視監督責任との関係を
任務け怠乃至過失責任の観点からなんらかの法令違反を考慮すべきときのファクターには、どのようなものがありますか?
A9
質問が抽象的すぎて何ともいいようがありません。

Q10
任務け怠と過失の関係について、前者があれば後者があると一応の推定があるのかないのでしょうか?
投稿: ある法学を学ぶ初学者 | 2009年2月15日 (日) 00時10分
A10
「一応の推定」というのは、立証責任が請求者側にある場合に、立証責任を転換するための概念です。
任務け怠を立証すれば、法律上、取締役が無過失を立証しなければならないので、「一応の推定」という概念は必要ありません。
また、任務け怠を立証できなければ、そもそも過失を問うまでもなく、責任は認められません。

Q11
今回は刑事実務の検察官側について主にご教授してもらったわけですが、個人的に疑問に思うのは、刑事実務の弁護人側における「真実義務」についてです。
弁護人は、人権保障のため、被告人にとって不利益になる行為をしてはならないわけですよね。でも、被告人が無罪を主張するけど、弁護人の内心・本音としては「絶対嘘言ってるよ」

と感じてしまった場合でも、やはり自分の本音は隠して被告人の主張どおりに弁護すべきなのでしょうか?または、被告人が本当のことを言ってくれるまで接見し続けるべきなのですか

?それとも、信頼関係が成り立ってないとして被告人の弁護人を降りるべきなのでしょうか?
さらに、刑事実務の大半は反社会的勢力関連の事件だと法曹の先生に聞いたのですが、実際私のように反社会的勢力とは縁の薄い者が、弁護士にしろ、検察にしろ、(裁判官にしろ?)

反社会的勢力と向き合っていくには、どのような信念をもつべきでしょうか?
お忙しいところなのは百も承知であり、守秘義務とかもあるとは思いますが、刑事実務の本音みたいなのが聞きたいので、可能な限りご教授よろしくお願いします。
投稿: しがない受験生 | 2009年2月15日 (日) 14時03分
A12
 被疑者・被告人が真実を言ってくれないことなんてよくあります。
 その「嘘」が証拠から明らかに嘘ならば、接見のときに「それは言わない方がいい。それなら黙秘の方がまし」と言います。
 それでも、「嘘」を前提とした主張をしたいというのなら、仕方がないので、私なら、捜査官の主張の中にある嘘を立証し、その信用性を疑わせる弁護をします。被疑者被告人が嘘を

言っているからといって、捜査官が本当のことを言っているわけではないので。
 それから、反社会的勢力についてですが、被疑者・被告人は、反社会的勢力じゃない人もたくさんいます(むしろそちらの方が多いでしょう)。長年刑事事件をやってきましたが、検

事でも、弁護士でも、反社会的勢力だからといって、特別に身構えないことが一番大事だと思います。普通のことをきちんとやれば、何の問題もありません。

Q13
会社法349条第4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」とあり、私は、代表取締役を設置すれば取締役会非設置会社にお

いても代表権だけでなく、業務執行権も代表取締役に一本化できると思っていたのです。
しかし今回のQ5や会社法第363条の規定から、取締役会非設置会社では代表取締役への業務執行権の一本化をはかるには、定款に記載する必要があるのでしょうか?
投稿: 中小企業の法務担当者? | 2009年2月16日 (月) 16時58分
A13
 取締役は、原則として業務執行権を持っていますから、代表取締役を選定しても、それにより、当然に業務執行権がなくなるわけではありません。ですから、厳密にいえば、業務執行

権を定款で制限すべきでしょう。

Q14
2008年2月28日のエントリ「失念株主に対する配当」で、先生は、外国人制限銘柄で、名義書換が拒否された外国人株主に配当をすることについて、①株主平等の原則、及び、②放送法第

52条の8第2項の趣旨(議決権制限制度ではなく、あえて名義書換拒否制度を残したこと)から、消極的な考えを示されておられました。
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_4936.html
一方で、昨年末に、㈱フジ・メディア・ホールディングスが、名義書換が拒否された外国人株主にも配当する旨のニュースリリースを行いました。
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20081225165328.pdf
この件に関して、現時点で、先生はどのようにお考えでしょうか。
投稿: Koenig | 2009年2月17日 (火) 16時06分
A14
 他の失念株主との関係で株主平等の原則を守ることができるか、日本人株主が本来自分に配当することができるお金を株主名簿に載っていない外国人に配当することを認めてくれるか

、などの問題を経営者がリスクをとって、実行するというのですから、見守る以外に方法はありません。
Q15
「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」
で、「株式会社が資本金の額を増加する場合の原資を資本準備金及びその他資本剰余金に限定しないものとすること(同規則第48条)」
という改正案があるのですが、改正する趣旨がわかりません。
確か、商法の時代では配当可能利益の資本組入が認められていましたが、資本と利益の明確な峻別という観点から会社法では認められなくなったと記憶しています。
それを、今になってなぜまた改正するのでしょうか。
国際的な会計基準とのコンバージェンスが関係しているのでしょうか。それとも、金融不安の影響から資本金を増強できる選択肢を増やしたのでしょうか。
宜しくお願いします。
投稿: 猫野ゴエモン | 2009年2月19日 (木) 12時18分
A15
コンバージェンスや金融不安は関係ないでしょう。
理論的にも何の説明もつかないでしょう。
ただ、理論的でなくても、あった方が便利ですので、改正するのではないでしょうか。

Q15
役員報酬に関してちょっとお聞きしたいです。
明らかに過大な役員報酬につき一部の大株主の賛成により総会で承認されてしまったとします。その場合当該報酬の支払により流出した会社財産を取り戻すために株主が取れる手段とし

てはどのようなものがあるのでしょうか?
総会決議の取消(831条1項3号)をして不当利得返還請求(代表訴訟)でしょうか?この場合、報酬を受ける役員と決議に賛成した大株主が同一人物でなくても、ある種の緊密な関係があ

れば特別利害関係を有するといえるでしょうか?
この他なにか方法はありますでしょうか?423条の責任追及をしたり、120条の責任を追及することは厳しいですよね?
投稿: 素朴な疑問 | 2009年2月19日 (木) 20時42分
A15
明らかに過大なら、そのような議案を提出した取締役の責任が認められる可能性はあるのではないでしょうか。特別利害関係は、実質的に判断するので、場合によっては認められる余地

はあります。

Q16
一つ教えていただきたいのですが、葉玉先生が修習生の頃、簿記1級の勉強をされなかったのは、法曹として1級までは必要ないとお考えになったからなのでしょうか。
私は現在、司法修習生なのですが、簿記の勉強をどこまでやるべきか悩んでいます。
どうぞよろしくお願いします。
投稿: 大分トリニータ | 2009年2月23日 (月) 08時04分
A16
簿記2級でいいんじゃないでしょうか。
細かいことより、簿記の考え方、見方がわかればよいのです。

Q17
まず事業譲渡なんですが、事業と一緒に債権や債務も譲渡されることは多いと思うのですが、債権譲渡の場合の債務者対抗要件や第三者対抗要件、免責的債務引受の場合の債権者の承諾

についても、別途当然に手続をする必要があるのでしょうか。
A17
 普通の売買契約なので、対抗要件も債務者の承諾もそれぞれ必要です。

Q18
次に、株式交換の完全親会社に合同会社がなれて合名合資会社がなれない理由、株式移転の完全親会社に合同会社がなれない理由がよくわかりません。
基本的な質問で恐縮ですが教えてください。
投稿: Tak | 2009年2月23日 (月) 19時20分
A18
政策的なもので理屈はありません。
 
Q19
葉玉先生、こんばんわ。刑事訴訟法について質問させてください。
 捜査の論点で「捜査機関への不出頭と逮捕の必要性」があります。
 ここで、捜査機関への不出頭が重なった場合、逮捕の必要性を満たすかという論点で、肯定説をとる場合、
  1,刑事訴訟規則143条の3だけではなく、刑事訴訟法199条1項但書きも根拠条文とした方がよいでしょうか。
  2,刑事訴訟法199条1項但書きを根拠とした場合、但書きは「正当な理由なく、出頭要求に応じない場合、逃亡・罪証隠滅の恐れがなくとも逮捕を許す趣旨である」と読むべきなので

しょうか。また、そうであるとした場合、「限られる」の文言をどのように解釈したらよいでしょうか。
  3,2の解釈をした場合、逮捕の必要性については、逃亡及び罪証隠滅の恐れがある場合に限られないと解釈して大丈夫でしょうか(それとも、不出頭が重なる→経験則上、逃亡・罪

証隠滅の恐れが高まる→逮捕の必要性を推認しうるとした方がよいでしょうか)
  4,この論点について検察講義案や書研の刑事訴訟法講義案・元検事の渡辺咲子先生の刑事訴訟法講義を読んでみましたが、通常逮捕の要件として、「被疑者が~任意出頭の求めに応

じない場合に限られる」とあり、逮捕の要件を加重したように読めます。捜査実務や判例は一般的には肯定説をとっているといわれていますが、そのような理解でよいでしょうか。
投稿: 不孤 | 2009年2月23日 (月) 23時35分
A19
 1-3 いずれも自分の信じるところを書けばいいと思います。
 4 実務は、出頭拒否だけで、逮捕することはないように思います。ただ、通常、出頭拒否以外にも逮捕の必要性があることが多いので、それらの理由とあわせて出頭拒否についても

捜査報告書に書きます。

Q20
さて、「会社法であそぼ」で会社法以外の話題なのですが最近話題の(?)民法改正についてうかがいたいと思います。
民法の改正は、現在のところ某内○先生とする学者中心のメンバーで進められ、いわゆる実務家のメンバーがほとんど参加してないそうです。
ここのあたり、同じ大改正でも会社法の検討過程とは大分異なる(もっといえば正反対?)のような感じがしますが、葉玉先生は民法のような私法の大原則となる法律を改正するに当た

ってその改正案を考えるメンバーとしては、どのようなメンバーの配分が望ましいとお考えでしょうか?
投稿: いつかTMIを見返してやろうと企む修習生 | 2009年2月24日 (火) 21時49分
A20
法務省民事局の実力派参事官も入っていますし、内閣法制局があるので、あまり心配はしていませんが、現在公表されているのは、ちょっと気が遠くなる感じを受けています。
弁護士・裁判官・その他民間の方の意見も幅広く取り入れて、立案した方がいいのではないでしょうか。
特に、ニーズがないような改正は、実務家から反対されて、国会にたどりつかない可能性もありますから。

Q21
>A6
>持分会社は、多数決ではなく、社員の全員一致によって重要な意思決定をす>る点に意味があり、実際に、合同会社は、沢山、利用されています。
とありますが、590条2項では「社員が2人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。」と
なっております。
ということは、定款に別段の定めをして、「全員一致」とすることが常態化しているということなのでしょうか。それとも「業務」は「重要な意思決定」でなないということなのでしょ

うか。
投稿: 安直な初心者 | 2009年2月25日 (水) 14時50分
A21
合同会社をどう使うかは、人それぞれなので、何が常態化しているかというのは、私にもよくわかりません。株式会社よりも、各会社の定款に個性があるように思います。

Q22
葉玉先生の高校の後輩が、今度の日曜日にテレビに出ます。
もし、お時間があれば、ご覧に・・・
毎日放送(TBS系) 情熱大陸 3月1日 23:00~
上田泰己氏(理化学研究所)
http://www.mbs.jp/jounetsu/
投稿: カフェ丸 | 2009年2月25日 (水) 23時18分
A22
上田さんは、すごい人です。情熱大陸は、いつも見てます。

Q23
持分会社において社員Aが社員Bに対して持分の全部譲渡をした場合について質問させてください。この場合、社員Aは社員たる地位を喪失して退社し、社員Bの持ち分は増加します。
 この場合、社員Bの持分が増加するということの具体的な意味がよく分かりません。
このことについて、
1、社員Bが将来退社するときの持分払戻額が増加すると言う意味でしょうか
2、持分単一主義により、社員Bの議決権は持分を譲り受けたにもかかわらず、
一議決権のままですよね
という理解で正しいでしょうか? 
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 00時48分
A23
 1・2ともそのとおりです。

Q24
先生の事務所のサマークラークは、GPAが3.0の私のような学生でもいかせてもらえる可能性はあるのでしょうか。
投稿: naoko | 2009年2月26日 (木) 20時47分
A24
可能性はあります。

Q25
旧商法時に設立された合資会社の有限責任社員について質問させてください。
旧商法時には、合資会社の有限責任社員は業務を執行することを禁じられていました(旧商法156条)
ということは、旧商法時には、わざわざ定款において合資会社の有限責任社員の業務執行を禁じる規定を授けることは少なかったと推測しています。 
 このように、旧商法時に定款において合資会社の有限責任社員の業務執行権を禁じる規定がなかった場合、この合資会社の有限責任社員は会社法上、業務執行権を有するのでしょうか


 整備法66条3項では、旧合資会社の定款は存続する合資会社の定款とみなされます。ということは、旧商法時に業務執行権を禁ずる旨定款に記載がなければ、存続する定款にも業務執行

を禁ずる旨の記載がないとみなすと考えられます。
 この場合、存続する合資会社の有限責任社員は業務執行権を有するとされるのでしょうか?
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 22時46分
A25
 理論的には、定款の解釈の問題です。定款に明確に書かれていないから、業務執行権を有すると考えるのが素直だと思いますが、制限していると解釈することも不可能ではないように

思います。

Q26
 合資会社において、業務を執行する有限責任社員が無限責任社員に持分全部を譲渡した場合の同意書の記載方法について質問させてください。
 前提として、無限責任社員をA、有限責任社員をB,C,Dとします。この場合において①有限責任社員Bが無限責任社員Aに持分を全部譲渡します。
 次に②有限責任社員Cが無限責任社員Aに持分を全部譲渡します。
 このとき①においてⅠBからAへの譲渡及びⅡBを削除、Aの持分増加の定款変更につきACDの同意が必要となります。
 また②においてⅡCからAへの譲渡及びⅡCを削除、Aの持分増加の定款変更につきADの同意が必要となります。(Cは、すでに退社済みなので②の同意権者ではない)
 この場合、①②を同一の書面で同意の対象とした場合の同意書の記載をうまくかくことはできないでしょうか?
 ①ⅠBからAへの譲渡→②ⅡCからAへの譲渡→③B及びCの削除、Aの持分増加の定款変更という順に記載し、同意権者としてACDに押印してもらうと③において退社済みのCま

で同意をしているような記載になってしまいます。
 このような記載の仕方でやむを得ないのでしょうか?
 もしくは、一枚の同意書の中に①ⅠBからAへの譲渡及びⅡBを削除、Aの持分増加の定款変更②ⅡCからAへの譲渡及びⅡCを削除、Aの持分増加の定款変更という順に記載し同意

権者としてACDに押印してもらったほうがまだわかりやすいのか(②においてCも同意しているような記載になっているが項目をわけたのでわかりやすい?)、もしくは他にいい案が

あるのか、先生のご意見を聞かせてくださいませんか?どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: 登記職人見習中 | 2009年2月26日 (木) 23時44分
A26
 わざわざ一枚で処理しなくてよいのではないでしょうか。

Q27
 葉玉先生こんにちは。「副検事」について質問をさせてください。
 私は現在ロースクールの学生で、将来、検察官検事、もしくは、検察官検事になれなかった場合、検察官副検事になりたいと考えております。
  現在、副検事になるためには、数種のルートがあると思いますが、私は、検察庁法18条2項1号で定められる、「裁判所法66条1項の試験に合格した者」、すなわち司法試験合

格者として副検事になるための考試を受けようと考えています。
 そこで、葉玉先生に質問をさせていただきます。
例年、副検事受験者は200人程度で合格者は20人程度ですが、そのうち、司法試験合格者あるいは弁護士有資格者の受験者・合格者はどれくらいなのでしょうか。
 また、選考基準に、筆記試験・口述試験の結果並びに「調査書」等と書いてあるので、検察事務官や裁判所事務官以外の出身の受験者は、「調査書」はどのように考慮されるのでしょ

うか。
 わかる範囲で構いませんので、回答よろしくお願いします。 
投稿: ロースクール生 | 2009年2月27日 (金) 09時29分
A27
 なぜ司法試験に合格しているのに、副検事なのか、よくわかりませんが、私の知る限り、司法試験合格者の副検事というのは聞いたことがありません。また、司法警察員等としての捜

査についての実務経験が全くないまま、副検事は厳しいのではないでしょうか。

Q28
会社法436条計算書類等の監査について質問をさせてください。
436条は、各事業年度にかかる計算書類および「事業報告」並びにこれらの付属明細書について、会計監査権限定の監査役であっても監査をしなければならない旨が規定されています

が、
会計監査権限定の監査役がなぜ「事業報告」を監査できるのでしょうか?
投稿: Tです。 | 2009年2月27日 (金) 19時37分
A28
会社法施行規則129条2項を見てください。

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2009年2月11日 (水)

捜査と弁護

 長男の中学受験が終わりました。
 長男の表情を見ていると、この数ヶ月間つらく、苦しいこともあったと思います。
 ただ、自分の一番行きたかった中学に合格したことで、今は憑き物が落ちたように穏やかな表情が戻ってきました。
 私も、ここ数ヶ月、何かと心にひっかかっていた中学受験のことから解放されて、のびのびと仕事に集中できる環境が整いました。

 ところで、ザ・ローヤーズという雑誌の最新号の表紙に、私が偉そうに載っております。
http://www.fujisan.co.jp/Product/1281681227/b/233116/
 
 突如、インタビューの申込みがあって、何を聞かれるかよく分からないまま、インタビューを受けたのですが、会社法のことより、検事時代の経験やコンプライアンス系の話が多くなりました。そして、つけられたタイトルが
 「特捜検事の経験から言える「社長のひとことで会社は変われる」」。

 私は、特捜部の在籍期間は、あまり長くないので、「特捜検事」と言われると、気恥ずかしいのですが、特捜部に在籍していないときも、沢山の特捜事件の捜査に携わってきましたし、自分自身でそれなりの数の独自捜査をこなしてきましたから、そうした経験から感じたことを率直に話しました。

 検事は、警察等から送致された事件を処理する場合と、独自捜査(自分自身がつかんだ情報から事実を解明して事件を立件すること)の場合がありますが、私は、どちらかと言えば、独自捜査が好きでした。

 独自捜査では、どういう犯罪が誰に成立するかということもハッキリしない状態で、秘密裏に事実を明確にしていき、被疑者が捜査が行われているということに気付く前に、事件の本筋が動かないように固めておくことが重要です。
 捜索差押をやるタイミングや逮捕状をとるタイミングを図りながら、
    動かない事実と
    動く事実と
    判明していない事実
を徐々に確定していき、
    動く事実を固定し
    判明していない事実を減らしていく
ことによって、事件の本筋が固まります。

 刑事弁護や刑事訴訟法の本などでは、捜査官が「事件の絵を描く」ことについて、予断に基づく捜査として非難されることがありますが、証拠は最初から捜査官の目の前に並べられているものではありませんから、限られた証拠をもとに
    このような事実があったのではないかと推論し、
    その推論が正しければ、必ず残っているはずの証拠を探していく
というのが捜査の王道です。

 たとえば、私が1年生検事のときに、覚せい剤の自己使用で逮捕されたXが、「別の男Yと一緒に、同じ注射器を使って回し打ちしていた。その時、Yは3回左腕に注射した」と供述したので、Yを逮捕しましたが、残念ながら、使用日から日数が経っていたため、Yの尿からは覚せい剤が検出されませんでした。

 私は、Xの供述の信用性を立証するために、Yの左腕に注射痕が残っていないか目視してみたのですが、Yは、覚せい剤の前科を多数持っている常習者であり、古い注射痕だらけで、Xと一緒に注射したときの痕があるのかどうか、分かりませんでした。

 「Yが3回左腕に注射した」という事実は、この時点では、まだ目撃証拠しかない「動く事実」です。覚せい剤使用者のXの供述だけでは、裁判所は信用してくれませんから、その事実は、このままでは、「存在しない」と判断される可能性が大です。
 かといって、「新しい注射痕が3個ある」という立証の仕方など、どの本を見ても、検事仲間に聞いても、分かりませんでした。

 しかし、この「動く事実」は、間違いなく、存在する事実であると確信していたので、医師等と相談したところ、
   オキシフルを塗れば、まだ皮膚が固まっていない注射痕からは、泡が出る
というアドバイスを受けました。

 そこで、Yの同意を得て、Yの左腕にオキシフルを塗ってみたところ、3個の泡が確認できたのです。
 これにより、「動く事実」が「動かない事実」になりました。

 また、私は、Xから、Yが覚せい剤を打つまでの行動について、細かく聞き出しているとき
   Yは、コップの裏に覚せい剤を乗せて水を入れ、注射器でかき回していた
という供述を得たので、
   コップをすべて押収して、その裏を顕微鏡で確認させたところ、1個のコップから針のようなものでかき回した痕跡
が検出されました。

 そのほかにも、
   もしYがこのとき覚せい剤を使用していたとすれば、どういう行動を取ったのだろうか
ということをできるだけ具体的に想像し、Xから情報を聞き出し、具体的事実を証明する方法を考えることを繰りかえしていくうちに
   「動く事実」が動かなくなり
    判明していない事実が減っていき
やがて事件の本筋が固まったのです。

 これは、ひとつの例ですが、こうした捜査を何度も経験すると
   証拠が少ない時点で、事件の大筋が見えてきて
   その大筋をより具体的に事実にしていくために必要な証拠の採集方法も見えてくる
ようになります。

 私は、今は、弁護士として、刑事事件の弁護や証券取引等監視委員会・公正取引委員会の調査に対する弁護などもやりますが、弁護の本質も、独自捜査のときも同じです。

 おおざっぱにいえば、弁護の方法には
  捜査機関の捜査結果を否定する弁護

  捜査機関よりも先に真実にたどり着き、真実をもって対抗する弁護
の2種類があると思います。

 私は、検事・弁護士の双方の経験から、前者の弁護方法は、あまり効果的ではないと感じます。
 それは、捜査機関の捜査の方法や事実の見方について、その非を主張するだけでは、捜査機関の手の内で暴れているだけで、捜査機関側も、そうした主張に対する防御策を用意しているからです。

 私は、真実をもって対抗する弁護が、有効で正義に叶う弁護方法であると信じています。
 よく「捜査機関は、国家権力による強大な捜査権を持っているのに対し、弁護士は、捜査権がない」ということを言いますが、私は
    権力があるかどうかなんて、真実の解明においては大した意味はない
    真実を解明しようとする者の洞察力と想像力と実行力が真実を解明する
と思います。
 弁護士は、クライアントという最も真実を知る者から率直な供述を得ることができるのですから、その点において、捜査機関よりも数段有利な立場にあります。

 捜査機関が捜査しているのだから、当然、クライアントには、犯罪等を行った疑われる証拠があるはずです。

 弁護人として大事なことは、そうした証拠から目をそらさず、
  不利な事実のうち、何が「動く事実」で「動かない事実」か
  動かない不利な事実を、有利な事実に転換するには、どういう事実が必要か
を考え付くし、
  犯罪等を行っていないという事実を「動かない事実」にすること
です。

 私は、犯罪事実について「検察官が立証責任を負っている」などということを考えながらやる弁護は、負け戦であると思います。

 弁護士であろうと、検事であろうと、
    より具体的な真実に近づいたものが勝つ
のです。

 ところで、2月3日に村上ファンドの控訴審判決で

「重要事実にあたるかどうかは、企業の計画や対外交渉などの状況を総合的に検討し、個別具体的に判断すべきであり、投資家の判断に影響を及ぼす程度の相応の実現可能性が必要である」

との判断をしました。
 この控訴審判決は、一審判決が「実現可能性があれば足り、可能性の高低は問題とならない」と判断していたことからすれば、弁護側にとって有利な解釈です。
 しかも、故意の内容として「実現可能性の認識」が必要になるわけですから
    被疑者がどの程度の実現可能性を認識していれば、故意が認められるか
という検察側にとっては、やっかいな法律問題を抱え込むことになります。

 しかし、私は、実際には、インサイダー取引の捜査や弁護の実務において、「投資家の判断に影響を及ぼす程度の相応の実現可能性」という抽象的な要件の有無で結論が分かれるようなことはないと思います。

 実際、控訴審判決は、有罪判決にした上で、「違法性の認識が薄い」ということを情状として斟酌したにすぎません。

 インサイダー取引の事件では
  「重要事実の認識」
が最大の争点になりますから、弁護において最も重要なのは、被疑者が
  どんな具体的事実を、誰から、どのような方法で伝えられたか
  どんな理由で株式の売買を行ったか
という点について、捜査機関より先に真実にたどり着くことであり、
  被疑者が具体的事実を何も知らなかった又は大したことを聞いていなかった
  被疑者が、その時期に売買をした理由が重要事実と無関係なものであった
ということが客観的に立証できれば、これまでもインサイダー取引として立件されることはあまりなかったと思います。

 控訴審判決の解釈は、刑法理論的には
  167条の規定から、「実現可能性」という規範的な要素を導かれる根拠は何か
  規範的構成要件要素の認識は、故意の要素か
等という面白い問題を含んでいますが、この解釈によって
  違法性の意識のない「うっかりインサイダー」が無罪になる
というわけでもないので、過大な期待は禁物です

(質問コーナー)
Q1
僕は京大生ですが、
「京大生のノートの8割は例外なく汚い・読めない。
 2割ぐらいきれいな人もいて、残りの8割はそんな美しいノートを借りていた。」
と言う感じでした。
 かといって、そのキレイな2割が成績がいいかと言うとそうでもないんですよね。
 自分が読める最低限のレベルで字を書けば早くたくさんの情報を書き取れるし、ほかの人にはわけわからんぐらいに必要なエッセンスだけを集約したノートが情報素材としても、ベストのように考えているのですが。。。
葉玉先生の御考えもまたお教え下さい。
投稿: たけし | 2009年2月 1日 (日) 18時46分
A1
 私は
「自分が、何も見ず、何も意識せず、使いこなせるようになった知識だけが、知恵となる」
と考えています。
 ノートは、自分の中に知識を染みこませるための道具に過ぎません。
 だから、時間をかけて、綺麗なノートを作るような無駄なことはせず、自分の頭に入りきらないものを断片的に記録していました。
 イメージとしては、
   ノート+自分の頭の中=必要な知識
という感じでしょうか。
 だから、知識が身についたら、そのページはバインダーから外して捨てていました。

Q2
>好きだからやっているだけです
弁護士の仕事を始めて、好きだと気づいたことなんでしょうか?
受験生のころから検察官、弁護士の仕事についてどのようにかんがえていらっしゃいましたか?
また、他の職業を選択する際には、仕事をしたことのない場合どのレベルまで調べたうえで志望すべきなのでしょうか?
投稿: 受験生 | 2009年2月 1日 (日) 23時46分
A2
 「好き」というのは、瞬間瞬間、自分の心の中に生じる「こういうことをやってみたいな」という程度のものです。
 検事の仕事も弁護士の仕事も、目の前の仕事を「葉玉流」に片付けるのは楽しいから、あまり「弁護士の仕事だから楽しい」ということでもないです。
受験生のころは、検察官がどんな仕事をしているのか知りませんでしたし、弁護士だって、あまり具体的なイメージは持っていませんでした。
 仕事の面白さなんて、実際に仕事をしてみなければわかりませんし、多くの人は、漠然としたイメージで仕事を選んでいるんじゃないでしょうか。
 実際に働いている人から話を聞くのが、一番いいでしょうが、あれこれ悩む前に勉強した方が建設的かなと思います。
 私は、弁護士も検事も裁判官もこなせる「法律家」でありたいし、法律家の仕事なら何でも面白いです。

Q3
前回いただいた回答「監査役監査規定、監査役監査基準、監査役会議事録は、監査役会ないし監査役が作りますが、それは、会社法の善管注意義務や議事録の作成義務を果たすために作成するものであって、金商法の内部統制整備の一環として行うものではありません。」からすると、監査役は金商法の内部統制整備とは完全に一線を画し、統制環境中の監査役に関わる評価項目の評価についても社内のどこかの部署が規程類のチェック、監査役へのヒアリングを通じて行うべきであり、監査役は監査役監査に専念した方が良いということでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月 2日 (月) 10時29分
A4
 禅問答のようになっていますが、金商法上は、内部統制の評価は、経営者がやるべきものであり、監査役は、金商法上の評価義務を負っていません。
 他方、監査役は、会社法上、監査権限を持っており、その監査権限を適切に行使することができない事情があれば、経営者に対しその事情を取り除くことを求めるべきでしょう。それが監査役の内部統制整備なのだと思います。

Q5
非取締役会設置会社の取締役(2人以上いて、定款により取締役の互選で代表取締役を選定することとしているケース)は、原則として、代表取締役として選定されている者以外の取締役も業務執行取締役となります(会社法348条1項)が、いろいろな事情で実態としては業務執行していないご意見番あるいはアドバイザー的な取締役がいる場合の対応として、定款で、「当会社の業務は、代表取締役のほか、取締役の互選により業務を執行する取締役として選定された取締役が執行する」と定めた場合、この規定およびこれにより運用することは有効でしょうか? すなわち、会社法348条1項の「定款に別段の定めがある場合」に該当しますでしょうか?(間接的なので厳しいでしょうか)
ひな形などでは、「専ら代表取締役が執行する」としているものもあるようですが・・・。
投稿: スケジューラ | 2009年2月 4日 (水) 10時53分
A5
よろしいと思います。

Q6
質問というか、元立法担当官に問いたいのですが、
何で持分会社なんかあるんですか??
株式会社が1円で設立できるならば、
持分会社、特に合同会社なんぞ不要じゃないですか。
人的保証の強化というならば、
社長に個人保証(連帯保証)させればいいだけでしょう。
持分会社の意義は何でしょうか??
特に合同会社なんて、へんちくりんなものの存在意義は??
あと、加えて株式会社でも委員会設置会社の意義は何なんでしょうか??
アメリカに上場するために必要なだけなんでしょうか??
まあ、立法担当官も自分の意思だけではなく、多方面から、いろいろ事前に注文つけられて妥協の産物が会社法だと思うので
投稿: | 2009年2月 4日 (水) 18時05分
A6
持分会社は、多数決ではなく、社員の全員一致によって重要な意思決定をする点に意味があり、実際に、合同会社は、沢山、利用されています。
社員の責任は、持分会社と株式会社を区別する指標にはなりません。
委員会設置会社は、ガバナンスの強化と業務執行の自由度を増すことを同時に実現するために設計された会社ですが、使うか使わないかは、好みです。

Q7
素朴な疑問ですが、取締役会設置会社においては、株主提案権は原則、総会の8週間前までに行使しなければならないことになっていますが、よくよく考えれば、8週間も前となると、定時株主総会にしてもそれが何月何日に開かれるかは通常機関決定されていないので、株主に分かるはずがなく、会社に問い合わせたとしても、機関決定されていないことについて会社は回答しないはずです。

例年集中日に開催している会社に対し、株主が例年通りの日程で開催するとの思惑でギリギリに提案権を行使した場合、その対応をしたくないので、3日前倒しで開催することを機関決定して期限オーバーで不受理扱いにし、株主には「実は、その日しか会場であるホテルの空きがなくてずっと以前から決まっていたんです」とでも回答しておくような荒業もでき得ると思われます。それは極端すぎますが、逆に、意図的でなく、本当に会場が取れなくてやむなく3日前倒しで開催するケースもあり、厳密にルールを適用しようとすれば不受理扱いとせざるを得ない、ということも起こり得るかと思われます。
投稿: にっち | 2009年2月 5日 (木) 12時42分
A7
 理論的にはそうでしょうが、実際には、8週間よりもずっと前から提案権を行使していることが多いので、あまり問題にはならないでしょう。
 また、故意に総会の日を前倒しすれば、権利乱用で、総会手続自体の瑕疵を主張される可能性が高いでしょう。

Q8
吸収分割について質問させて下さい。
完全子会社Aが完全親会社Bの株式を保有しています。
この状況を解消するために、Aを分割会社、Bを承継会社として吸収分割を行い、B株式のみをAからBへ移動させることは可能でしょうか。
簿価のまま親会社株式を移動させることが目的なのですが、そもそも、親会社株式が「事業に関して有する権利義務」と言えるかどうか、先生はどのように考えられますでしょうか。
投稿: hana | 2009年2月 6日 (金) 21時02分
A8
親会社株式だけだと、税務署も会計士も納得しないでしょうね。

Q9
資産60、負債70、資本金40の会社が
①100%減資をして、
②負債額すべてデッド・エクイティ・スワップ
した場合の仕訳はどのようになるのでしょうか。
投稿: ほいほほい6 | 2009年2月 6日 (金) 22時00分
A10
仕分けは、会計士に聞いてください。
ちなみに100%減資というだけでは、何をやろうとしているかは、必ずしも明確になっていません。

Q11
「発行可能株式総数」について教えて下さい。
会社法113条3項によって、公開会社の「発行可能株式総数」は、「発行済株式総数」の4倍までと規定されています。
また、同4項で、権利行使期間の到来した新株予約権の目的となる株式の数は、
「発行可能株式総数」から「発行済株式総数」を控除して得た数を超えてはならないと
あります。
転換期の到来した転換社債等の新株予約権の行使によって発行される株式の数が、
発行可能株式総数を越えてしまう様な場合、超えてしまう転換社債等の新株予約権は行使できないと考えて宜しいのでしょうか?
A12
行使できません。

Q12
将来、新株予約権を全部行使すると、その新株予約権の目的となる株式の数が、
現在の「発行可能株式総数」の上限(「発行済株式総数」×4)を超えてしまう場合、
あらかじめ公開会社は「発行可能株式総数」を、新株予約権を全部行使できるような上限まで引き上げることはできるのでしょうか?
A12
できません。

Q13
会社法113条4項は、
①「予め新株予約権や転換社債を発行するときは、
その目的となる株式の数が発行済株式総数内にしなければならない」
と読むのか、
②「権利行使期間が到来した新株予約権や転換社債は、
発行可能株式総数内でのみ権利行使できる」
と読むのか教えてください。
A13
行使期間の到来した新株予約権の潜在株式数が発行可能株式総数内でなければならないということです。
たとえば、行使期間が到来していない新株予約権ならば、いくらでも発行できます。

Q14
昔、旧商法時代だったかと思いますが、
何かのセミナーで、
「発行可能株式総数(会社が発行する株式の総数)」=
(発行済株式総数+潜在株式)×4
もOKと聞いたような気がします。
考えてみれば、商業登記の際に却下されそうな気もしますが、潜在株式を考慮して発行可能株式総数を定めるのは、会社法113条3項の違反になりますよね?
投稿: UR | 2009年2月 7日 (土) 22時10分
A14
113条3項に書かれているとおりです。

Q15
先生の中学受験に関する記事を読み、一人っ子の長男の受験を思い出しました。なんとか受験を通過し、今は高校受験がないため、世の中が受験シーズンであることを尻目に高校の部活に一足早く参加してサッカー三昧の毎日ですが、4年前は私が仕事を終えた後、塾通いをする長男の帰りを待ち受け、帰りの電車内で宿題を教えながら(1時間ほど)、帰宅するということを1年間続けていました。メネラウスの定理など、中学受験の内容を自分が結構覚えていることに驚き、幼い頃の記憶は何と強固なのだろう・・・と思ったものです。
それに引き換え、最近はなかなか「強固な記憶」といかないことが多いのですが、先生は受験勉強中、定義・趣旨・条文番号・論証のキーワードといった知識については、特に記憶の時間を確保されたでしょうか?記憶の方法を意識されたでしょうか?また記憶のためのツールは用意されたでしょうか?あるいはそういったものをただ繰り返し読むうちに自然に記憶していったというような感じでしょうか?司法試験合格には相当量の知識が必要になると思われますが、それらをどう会得されたのでしょうか?
投稿: hiro | 2009年2月 9日 (月) 15時43分
A15
記憶と記憶の喚起の訓練は、必ず真一に1時間以上行うようにしていました。
記憶方法は
①まず書いてみること
②書いたことを覚えているかどうかを確かめてみること
③①と②を繰り返すこと
という程度です。
詳しくは、脱時空勉強術をお読みください。2×4です。

Q16
(旧司法試験の受験生です)
1.民法の親族相続の択一問題練習について
 過去問の中でも、親族相続の部分は、暗記が主体だという固定観念が私の中にあるのです。 直前期にやるよりも、平素からどんどん繰り返し過去問・択一模試の復習などを練習してもかまわない・・・ですか?
2.刑法の各論について
 すべての犯罪について、学習できていないのが素直な現状です。
 出題傾向を考え、優先順位をつけて学習すべきか・・・
 それとも、ある程度は抜け目なくやるべきか・・・
 ちょっと悩みが生じてきました。
 でもやはり、メリハリ付けをつけたほうがよいかな・・・という気がするのですが、いかがですか?
3.憲法の統治について
 統治の問題で落とすのは、非常にくやしいのですが、点にならないことも多いです。
 確認のために質問させていただきたいのですが、条文の正確な知識と徹底した問題練習しかない・・・ですよね?
投稿: ミナミアルプス | 2009年2月 9日 (月) 17時24分
A16
 択一で苦労するのは、勉強量が絶対的に不足しているからです。
 勉強時間を増やし、ボーッとしている時間をなくし、徹底的に勉強してください。
 
Q17
従来の配達記録郵便が諸事情により廃止され、今後は特定記録郵便という
ものに生まれ変わるようです。ただ、特定記録郵便によると受取人側が受領した
ということまでは明らかとなるわけではなく、従来の配達記録郵便の代替としては十分ではないような気もしているのです。企業実務について従来の配達記録郵便と同等の効果を得ようとする場合には、簡易書留による方が良いのでしょうか。
投稿: smoky | 2009年2月 9日 (月) 17時58分
A17
ケースバイケースとしか言いようがない問題です。
確実性を求めるならば簡易書留になるでしょう。

Q18
三角合併における合併対価の割り当てについてです。
存続会社Bと消滅会社Cの合併において、Bの完全親会社であるA社(国内の株式会社)の株式をCの株主に割り当てる計画ですが、Cの株主の一部にAが存在します。このとき契約書に定める合併対価と割り当ての規定を
「Bは、合併に際してBの完全親会社であるA社の普通株式を交付することとし、効力発生日前日最終のCの株主名簿に記載されたCの株主(但し“Aを除く”)に対して、C株式1株に対しA社の普通株式●株の割合で割り当てる」とすることは、割当に関する株主平等の原則には反しないという理解でよろしいですよね?
株式交換の場合に完全親会社が有する完全子会社の株式に対しては割当不可(会社法768Ⅲ)を根拠にそう思いました。よろしくお願いします。
投稿: ヤサオトコ | 2009年2月 9日 (月) 17時58分
A18
駄目でしょう。750条3項に反します。

Q19
さて、会社法100問の92問目(司法試験平成14年)について質問させてください。
解答例には、「Xは、①株主総会の決議の取消しの訴えを提起するとともに、②取締役の違法行為の差止め請求権(360条)を本案として、吸収合併の差止めの仮処分を申立てることができる。」
とありますが、取締役の違法行為に該当するのは、どの行為でしょうか。
合併契約の締結手続は、合併契約を締結する→合併契約に関する書類等の備え置き等→株主総会の特別決議による承認→合併する旨の通知・公告→反対株主の株式買取請求権の行使→会社債権者の意義手続→合併の効力発生という流れになると理解しています。
この中で、差止めの対象となる「取締役」の「行為」(360条1項)は、どれになるのか、良く分かりません。
投稿: まほろば | 2009年2月10日 (火) 22時15分
A19
法定の手続に限らず、合併に関する事実行為も行為になりうるでしょう。


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2009年2月 1日 (日)

会社法施行規則等改正案

ご存知の方も多いと思いますが、現在、会社法施行規則・会社計算規則の改正案がパブリックコメント中です(2月27日まで)。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=300080050&OBJCD=&GROUP=

これが、なかなか大きな改正ですので、会社法の実務に携わる皆様は、特に会社法施行規則を読んで、法務省に建設的な意見を送っていただけると、民事局も喜んでくれると思います。

たとえば、
改正案122条に「当該種類株式」とありますが、同条には「種類株式発行会社」という文言は出てきているものの、「種類株式」という文言は出てきていないので、「当該」では受けられないし、まして「当該種類株主」という文言は、全く出てきていないので、「当該」は使えない
というような形式面の指摘でも、立案担当者は大変助かるはずです。

実質的な中身については、合理的な改正や従来の解釈をより明確にしたものが多いので、その点は賛成意見を法務省に出しましょう。パブリックコメントは、賛成する人はあまり意見を出さないので、意見だけ見ていると、反対ばかりに見えてしまうので、賛成意見もほしいでしょう。

他方、【H21.2.3追記 初出時「第20条のように会社のファイナンスの自由度を制限する条項」と書きましたが、逆に、自由度を増す条項でした。謹んで訂正させていただきます)「王政復古」的な改正もあります。

たとえば、改正案122条は、大株主の氏名等について、「発行済み株式の10分の1以上」から「上位10名」に戻っています。こうした改正は、私のように会社法を飯の種にしている弁護士にとっては、仕事が増えてうれしいのですが、上位10名に戻さなければまずいような出来事があったとも思えず、
  あえて今変更しなければならないのかなあ
と不思議に思います。

ただ、この改正は趣味の問題なので、最後は、どちらでもいいのですが、改正案34条の単元株式数の設定について
  「発行済株式の総数の二百分の一に当たる数」
を追加する改正は、改正をなすべき実質的な意味もなければ、会社法の規定とも整合しない不合理なものです。

この改正案は、要するに
  単元株式数を設定するときには、最低200単元以上になるようにしなさい
というルールであり、旧商法にあったルールを会社法で排除したものです。

このルールは、
  発行済み株式総数は、200株以上にしなければならない
  株式の併合により、200株未満になる場合には、株式の併合をすることができない
というルールが存在する場合に、はじめて意味を持つ規定であり、
  1円出資で1株の株式会社が存在する会社法の世界で、なぜ200単元以上ないと単元株式数が設定できないのか
  種類株式発行会社で、無議決権株式等を含めた「発行済み株式の総数」を基準とすることに、何の合理性があるのか
私には、全く分かりません。

 実質的に見ても
 株式市場は、単元が取引単位になっている関係で、200単元等という上場会社はありえず、この規定は上場会社には無関係な規制であり
 多くの非上場会社では、「単元株式数」を設定するほどの株式を発行していない上、単元株式数を設定する定款変更ができるオーナー株主ならば、少数派株主をスクイーズアウトすることも可能であり、わざわざ200単元以上という制限を設ける必要性もない
と思います。
そもそも200単元という数自体が
  最低資本金1000万円÷1株あたりの純資産額最低5万円=200単元
という、いずれも、会社法で存在しない制度をもとに算定された数なのですから、
  会社法において、なぜ200単元という数が基準となりうるのか
という点も、問われるべきです。

 また、単元株制度ができた平成13年当時の少数派株主の保護のあり方と、ブルドック事件を始め買収防衛策の採用が一般的となり、全部取得条項付種類株式や現金対価株式交換を用いたスクイーズアウトが多数行われている現在における少数派株主の保護のあり方は、根本的に変化しており、ここで200単元基準を復活させるのは、
  時代遅れ
というほかありません。

 しかも、仮に、この改正により
  既に200単元未満になっている会社が、変更登記をしなければならない
ということになれば、法務局は、全株式会社について200単元未満になっていないかどうかをチェックしなければならないし、会社は、会社法施行規則の改正によって、実質的な不利益を受けることになります。

当然、経過措置を置かれると思いますが、
 200単元未満の会社は許さない
という価値観で会社法施行規則を改正するのならば、猶予期間を置いて
 変更登記の義務を課す
ことにならざるをえないのではないでしょうか。

 この改正案は、
   既存の適法に登記している会社に対し、省令改正により、登記義務を課すことが許されるか
という憲法問題を含めて、検討すべきもので
   そこまでして、こんな意味のない不合理な改正をする必要はない
というのが、私の感想です。

【H21.2.3追記 経過措置を置くようです。ただ、自己株式の消却により発行済み株式総数が減少する場合などは、どうなるのか、よく分かりません。改正前の単元株式数がずっと有効であるという経過措置だとすると、なぜ200単元規制を復活させるのかよく分かりません。定款変更により少数株主の議決権を奪うのがまずいというのならば、設立時から単元株式数を規制するのは過剰規制ではないでしょうか。こうした問題が起こるのは、すべて、200単元規制がナンセンスな規制だからです。】

 昔、現行の会社法施行規則を制定したときに、200単元の規制を撤廃したときに、ある学者の先生から
  法制審議会で議論すべきだ
と批判を受けましたので、元に戻す場合も、法制審議会で議論した方がよいでしょう(笑)。

 以上のように改正案34条は
  多くの会社にとってほとんど意味がなく
  少数は株主の保護にも役に立たず、
 一部の会社には無意味に登記義務を課すという有害で、憲法違反の疑いがあり
 しかも、会社法との論理的整合性もない
ものであり、私は、この案だけは、削るべきだと考えます。

 せっかく書いたので、このブログを、このままメールにして、パブリックコメントに投稿しようかなあ、という気持ちになりました。私の意見に賛同していただける方がいらっしゃれば、ぜひパブリックコメントに応募してください。
 
(質問コーナー)
Q1
非取締役会設置会社(特例有限会社も同じ)の業務執行は、取締役の過半数で決定する(会社法348条2項)とありますが、取締役会設置会社における取締役会議事録のように、何か証拠となるものを書面などで残しておく必要はなく、任意の方法で決をとればよいのでしょうか?
そうであれば、株主3名全員が、そのまま取締役であるというような場合、株主総会を開くのも取締役会を開くのも手間はほとんど同じなので、取締役会を設置するよりも楽という気がしております。3か月に1回以上の業務執行報告取締役会も開催しなくて済むかと思いますので・・・。
投稿: 悩める法務担当者 | 2009年1月22日 (木) 13時08分
A1
 そうですね。非取締役会設置会社の方が楽です。

Q2
法学教室2月号で連載されている「事例で考える会社法」64頁で、
「東京高裁決定・平成20年6月12日」が、
125条3項3号を立証責任の転換規定と解したことで、
会計帳簿閲覧請求(433条)と株主名簿閲覧請求(125条)の拒絶理由は、
条文は同じ構造だが、株主名簿閲覧請求の拒絶理由だけ(125条3項3号)は、
立証責任転換規定だとしていると書いていますがどうなんでしょうか??
そんな解釈できるんですかね??
投稿: 太郎 | 2009年1月22日 (木) 17時02分
A2
私は、実質的には、同じ結論になりますが、拒絶権の権利濫用と考えた方がよいと思います。

Q3
非取締役会設置会社に関して3点お教えください!
① 株主総会で、例えば自己取引の承認を株主総会で決議する場合、利害関係を有する取締役は議長になれますでしょうか?
② ①の場合で、利害関係を有する取締役(議長を含む)が株主であったとしても、総会で議決権を行使できると考えて良いでしょうか?
③ 総会で決議する程でもない案件を、取締役の過半数で決する場合において、当該案件について利害関係を有する取締役がいるとき、その人は決を採ることに加わることができますでしょうか? 会社法348条2項は、同369条1項のように「議決に加わることができる取締役」というようには表現されていないので、加われるのではないかと考えておりますが…。
投稿: リアルヴォイス | 2009年1月22日 (木) 17時49分
A3
① なれます。
② できます。
③ できます。

Q4
いきなりで失礼なのですが、基準日に関して質問させてください。
(1)新・会社法百問51(296ページ二1)では、、基準日後に株式の第三者割当てを受けた者に対して議決権を付与できるかという問題について、「Cの議題提出権等の持株要件には影響を与えないから、」124条4項ただし書にはあたらないとされています。しかし、124条4項ただし書の、「当該株式の基準日株主権利」という文言からすれば、同ただし書は基準日の時点で存在していた株式についての条文であって、基準日後の第三者割当てのような場合にはそもそも適用がないように読めるのですが、いかがでしょうか。
(2)同じ問題についてのなのですが、297ページ二2において、議題提出権等の継続保有要件は、議題提出権等の行使日と基準日のいずれか遅い日まで充たし続ける必要があるとされており、その理由づけとして、「①議決権のない者に議題提出権のみ認めるのは不合理である」という点が挙げられています。しかし、本問においては、新株発行によって1%の保有要件は下回っているものの、議決権がなくなっているわけではないことから、上記の理由づけは説得的ではないように思えます。この点についてはどのように考えればよろしいでしょうか。
投稿: カリヨン | 2009年1月22日 (木) 23時00分
A4
(1) 124条4項は、基準日後の株式を発行を主として念頭においている規定です。
(2) 一般的な規範とあてはめを区別した方がよいでしょう。

Q5
会社法以外の質問で恐縮ですが、私も現在、小学2年生の子供を持っています。
先生は、「中高一貫の良さを長男にも経験させたいと思い」とありますが、
中高一貫の良さって具体的に何ですか??
私も、子供の進路を考えるのですが
私は中学受験したこともないし、私が小学生の頃は中学受験する子供なんて学年に1人いる程度で、中学受験に関してよくわからないですし。
中高一貫を経験したことがないのですが、
やはり先生のように上りつめた方から見ても中高一貫のほうが子供は伸びると思われますか??
投稿: 親子 | 2009年1月23日 (金) 00時13分
A5
 中高一貫もいろいろだと思いますが、私の母校久留米大学附設中学高校は、その良さを生かしている学校でした。
 私は、長年教える側だったので、生徒を伸ばす授業をするためには
  1 生徒の能力が均等であること
  2 習得スピードに応じた授業のスピードを確保できること
  3 同じことを角度を変えて、繰り返し教えること
が重要な要素であると感じています。
 中高一貫校は、中学受験を通じて、
  ある程度能力が均等の生徒に一から教えることができる
  能力の高い生徒を集めることで、授業スピードをあげられる
  6年間同じ先生が同一科目を教えることもできるので、計画的に反復をさせることができる
等のメリットもあります。
 また、友達も、中学から高校という思春期をともにすごすと
  30年経っても、あっという間に昔に戻れる
ような友達ができます。

Q6
はじめまして。いつも楽しく拝読させていただいております。
質問なのですが、新株予約権の行使に基づく株式の発行を差し止めることはできるのでしょうか。
判例タイムズ1282号の「ピコイ新株発行差止事件」で認められているのですが、判決文を読む限りでは特に争点とはなっていないのですが、210条または247条の文言とは整合しないような気がします(ちなみに判タは参照条文として247条を掲げています)。また、これが一般的に認められると、新株予約権者に新株予約権の取得額相当の損害が生じてしまい妥当でないと思います(もっとも、当該事件では無償割当のようです)。
手元の基本書等に当たっても判然としなかったので、ご教示頂けますでしょうか。宜しくお願いします。
投稿: 法科大学院生 | 2009年1月23日 (金) 01時42分
A6
 論点ではありますが、仮の地位を定める仮処分で差し止めをすることができると考えます。

Q7
当社非公開の会社です。今、合併といいますかM&Aの話があります。
相手も非公開の会社で、株式の取得による方法を考えていますが、
双方とも取締役会を設置しています。
この場合、発行済みの株式をそれぞれの株主が譲渡するについて
取締役会で承認をするだけでいいと思うのですが、その場合、
発行済み全株式について譲渡が結果的になった場合、完全子会社に
なると思うのですが、株式移転の場合、株主総会での承認が必要と
されているようですが、結果的に100%譲渡であっても、株主
総会での承認は必要なく、取締役会での譲渡承認だけで問題は
無いのでしょうか。

投稿: ご苦労さん | 2009年1月23日 (金) 11時30分
A7
譲渡ならば、取締役会の承認で結構です。

Q8
自己株式の消却が合理性を欠く件、なぜか投資家さんが理解してくれないので発行会社としても困っています。やむなく消却要請に応じるにしても、「希薄化防止」を理由にしてはうそになりますし、不合理と思っているので、開示文書が歯切れの悪いこと。財務指標の1株当たり情報では、分母から自己株式を除く(会計基準による)ので、こちらにも影響はありませんし。取引所を巻き込んで教育キャンペーンでも行うしかありませんかね。
投稿: 金庫株番 | 2009年1月23日 (金) 20時43分
A8
本当にそのとおりですよね。
まあ、世の中は、合理的なことばかりではないですが。

Q9
先生のいつも明朗かつ端的な回答に毎回感銘を受けているものです。
この時期に突然法務省から択一の配点が半分になることが発表されました。
この点について先生はどうお考えになるか聞いてみたく質問しました。
個人的には嬉しい変更なのですが、周囲は戸惑っている人が多いみたいです
投稿: 三十路 | 2009年1月23日 (金) 23時53分
A9
択一の点と論文の点は、相関関係にあるので(択一のできる人は論文もできる、択が苦手な人は論文も苦手)、実は、あまり関係ないように思います。

Q10
会社法第298条(株主総会の招集の決定)および同施行規則第63条(招集の決定事項)についてのご質問です。(当該会社は取締役会設置会社で、株主による招集の場合は除くものとします。)
前回の株主総会招集に関する取締役会において、招集決議事項とあわせて、「以後当社が開催する株主総会については、別段の決議がない限り、当該決議事項を有効なものとする」と決議することにより、今回の株主総会招集に関する取締役会決議を一部省略することは可能なのでしょうか。
例えば、前回の取締役会決議において、「日時:事業年度末から××日を経過した後の最初の木曜日、場所:○○市△△ □□ホール、株主総会に出席しない株主は、書面(電磁的方法)によって議決権を行使できる…」と決議している場合、当該事項に変更がなければ、当該事項については、今回の取締役会で決議しなくともよいのでしょうか。
施行規則63条に規定される事項(特に3号ロハニヘ)については、このような扱いをすることができると解される、とする実務書が多いようです。この扱いは、298条1項の各号(2号はさすがに無理だと思いますが…)においても、することが可能なのでしょうか。
以前、当ブログで「298条1項各号に掲げる事項は、複数回の取締役会決議等で決定することが予定されている(施行規則67条参照)」との記載を見た記憶があるのですが、上記は、まさにこのようなケースと理解すればよいのでしょうか。また、310条2項には「株主総会ごとに」との文言がありますが、298条ではそのような文言が特にないことから、上記のような扱いができると理解すればよいのでしょうか。
投稿: ツェーベーツェー | 2009年1月24日 (土) 13時34分
A10
 決議を一部省略するというよりも、前の決議で決められたことを取り込んで、決議をするという方が正しいでしょう。
 それは、決議内容の解釈の問題に過ぎず、適宜、かつての決議を援用することは可能でしょう。

Q11
前回Q6&A6の続きです。
監査役監査規程、監査役監査基準や監査役会議事録等は、取締役、監査役のどちらが整備すべきものでしょうか?
金商法上の内部統制に関して、「監査役の監査を適切に行いうる体制の整備」が全社統制評価項目の4,5辺りで問われており、評価を有効とするためには監査役監査規程、監査役監査基準や監査役会議事録等を整備する必要があると考えられます。
もしこれらを監査役が整備しなければならないとし、実際に監査役により整備が行われているとすれば、結果として内部統制上の統制環境の一部の整備を監査役が行っていることなりますが、その場合には監査役も内部統制整備の一翼(あくまでも一翼です)を担っていると考えることはできないでしょうか?
投稿: hiro | 2009年1月24日 (土) 15時30分
A11
監査役監査規定、監査役監査基準、監査役会議事録は、監査役会ないし監査役が作りますが、それは、会社法の善管注意義務や議事録の作成義務を果たすために作成するものであって、金商法の内部統制整備の一環として行うものではありません。

Q12
議題提案権(303)についてですが、
非公開会社かつ取締役会設置会社には議決権数要件を課しているのに、
非公開会社かつ取締役会非設置会社には議決権数要件を課していない、
これはなぜでしょうか。
私が学んだ範囲では「前者には議題提案権の濫用の余地があり、後者にはないから」という理由が思い当たりますが、どちらも非公開会社である以上、どちらにも濫用の余地はないのではないかと思われて仕方ありません。
濫用といえば総会屋や市民団体による濫用が思い浮かびますが、譲渡制限がかかっている以上、彼らのような方々による濫用の危険は、いずれにしても考える必要はないと思うのです。
非公開会社からスタートして更に類型分けをし、制限に違いを設ける必要が本当にあるのでしょうか。
これに派生して葉玉先生は
「非公開会社かつ取締役会設置会社」
をどのような会社とイメージしておいでなのでしょうか。非公開会社かつ取締役会非設置会社については所有と経営の分離を前提としていない家族経営の会社などを思い浮かべられますが、上についてはいまいちピンときません。
よろしくお願いいたします。
投稿: yasuchan | 2009年1月25日 (日) 11時06分
A12
旧有限会社と旧譲渡制限株式会社の違いでしょう。

Q13
先生、はじめまして。上場はしておりませんが、上場企業との取引がある地方中小企業の総務法務担当の者です。みずほセミナー「反社会的勢力の排除・関係遮断への組織的実践」(成21年3月2日)に参加させていただきます。
 基本方針の策定、一応の社内教育、暴排条項の装備は行いましたが、データベースについては構築や運用のノウハウ・ドゥハウがなく、田舎弁護士さんに聞いても、金融機関さまに聞いてもいまひとつな状況です。
 今回、有意義なセミナー参加にいたしたく存じますので、事前に確認しておくとよい資料、書籍やWEB情報等がございましたらご教授のほど、よろしくお願いいたします。また、BLOG記事でも反社会ネタを扱っていただければ幸甚です。m(_ _)m
なお小職では、次の確認をいたしております。
・BLOG内をキーワード検索
・「ビジネス法務 2009.3 特別企画」
・指針、指針の解説
・第一東京弁護士会民事介入暴力対策委員会のHPの確認
・「共生者」、「ヤクザマネー」、「ブラックマネー」
・「反社会的勢力関係遮断チェックリスト」
・「内部統制による企業防衛指針の実践」
投稿: | 2009年1月25日 (日) 12時23分
A13
それだけ勉強されていれば、十分です。
セミナーでは、かなり生々しい実践的な話をします。

Q14
進路に悩んでます。
以前司法試験を受験した動機についてのお話がありましたが、その後どの段階でどのように変わっていったのでしょうか?
弁護士の仕事は、やっているうちに意義などがわかってくるものでしょうか?
投稿: 受験生 | 2009年1月25日 (日) 15時51分
A14
 私は、弁護士の仕事に「意義」があるからやっているのではなく、好きだからやっているだけです。
 「意義」を求めるのならば、自分で意義を考えればよいし、わざわざ「意義」を求める必要もないように思います。

Q15
自己株式の消却について、おっしゃる通りだと思いますが、若干の補足です。
自己株式の処分の場合、金融商品取引法では売出しに当たり、第三者割当を行う際に、実務上、有価証券届出書、通知書による開示を不要としているようです。
企業の財務担当者としては、有価証券届出書を作成する手間は相当大変であり、自己株式を消却した場合、特定の相手先(持合先など)に対して、開示なしで割当できるというメリットを放棄することになるのではないでしょうか。
投資家やアナリストがそんなことまで考えているとは思えませんが・・・・
投稿: 竹下ゼミOB | 2009年1月26日 (月) 10時45分
A15
これまた、全くそのとおりです。

Q16
困ったことが起きそうで、ご質問させていただいております。ぜひともご教示くださいませ。
小さい株式会社で、株主は10人程度です。取締役会決議により書面投票制度を採用し、株主総会を開催しようとして、招集通知と議決権行使書用紙を株主に送付したところ、株主全員から行使書が返送されてきた場合、出席株主はいなくなってしまいますが、どのように開催したらよいのでしょうか? 無人の株主席に向かって、淡々と議事を進行したらよいでしょうか?
当日、先に行使書を返送した株主がやっぱり出席したいと言ってやって来るかもしれませんし、開催しないわけにはいかないと思っております。
投稿: いさりび | 2009年1月26日 (月) 12時13分
A16
無人でも開催しましょう。行使書を送った株主も出席株主です。

Q17
質問ではないのですが、一言お礼を言わせて下さい。
自分は、働きながら独学で司法書士試験の勉強をしているのですが、去年の秋に、腕試しに行政書士試験を受けたところ、こちらの方は本日結果発表で、合格する事ができました。
会社法については、このブログの入門編で、テキストだけでは解らない事を1から学ばせてもらっていたのです。
初学者にも優しく、かつ読んで楽しく学べるこのブログと、そして葉玉先生へ、本当にありがとうございます。また、これからも引き続き勉強させて戴きます。失礼致します。
投稿: ニャア | 2009年1月26日 (月) 21時25分
A17
おめでとうございます。
勉強になるようなことや、無駄なことなどを取り混ぜてこれからもがんばります。

Q18
親会社が子会社株式を売却する以外に親会社としての地位を失うパターンについて質問させていただきます。
とりあえず、典型例としては、子会社が第三者割当増資を行うとか、子会社がある会社から事業を譲り受け対価として株式を発行した場合に親会社の持分が減少するとかが考えられます。
その他にも何か典型例等あれば御教示いただければ幸いです。
投稿: ポン | 2009年1月26日 (月) 22時47分
A18
子会社が第三者に株式を交付する場合は、たくさんあります。新株予約権の行使とか、取得条項付株式の取得の対価として株式を交付する場合とか。

Q10
今回のブログに、「中高一貫の良さを長男にも経験させたいと思い」ということがありました。
実は私も中高一貫でしたが必ずしも子供に中学受験をさせたいという訳ではないというより、むしろさせたくないかな、と思っております。
私が通っていたところは都内でもそれなりに進学実績があるところで、私もそれなりの大学は卒業できましたが、学校内が勉強第一で中高の思い出のうち勉強が占める割合が多く、また男子校だったのでそういった面の思い出もなかったので、必ずしも中学受験したことがいいとは言い切れないかなと感じているからです。
ですので子供(まだ低学年です)を公立に進ませたほうがいいかと思っているのですが、葉玉先生が中高一貫がよいと感じられたところを教えていただけないでしょうか?(私が見逃している視点があるかと思うので。)
投稿: KK | 2009年1月27日 (火) 00時27分
A10
 学校によるのではないでしょうか。
 私は、あまり「勉強第一」という感じではなかったです。
 柔道部や演劇部の思い出や
 友達とむちゃくちゃなことをやっていた思い出
 の方が強烈です。
 附設は、基本的に自由な学校でした。

Q11
企業法務をするにあたって、葉玉先生は税務と会計が必須だとおっしゃられましたが、
就職の際にその能力を判断する基準はどのようなものなのでしょうか。
事務所によってその判断は様々だとは思われますが、
たとえば、税務だと税理士試験の法人税法だけ合格するとか、会計だと、簿記1級を取得するというのは、どのような評価なのでしょうか。
というよりは、まず事務所に入ってから、身につけるスキルなのでしょうか??

投稿: ほいほほい5 | 2009年1月27日 (火) 10時18分
A11
評価は、面接担当者によって違うのではないでしょうか。
資格があれば、それだけ客観的な根拠になるし、なければないで、どういうことをやったのかが明確に話せるのならば、プラスにすることもあります。

Q12
勉強の進め方についてご教示下さい。
個別の論点の論証はそれぞれ暗記をする必要があるでしょうか?先生は論証の暗記をなさいましたか?もし、論証の暗記をなさったのであれば、どのような点に留意して暗記をされましたか?また、具体的にはどのような方法で暗記作業を行われましたか(ツール、時間帯など)?
投稿: hiro | 2009年1月27日 (火) 13時23分
A12
 論証の丸暗記は無意味です。
 キーワードやキーフレーズが自然と頭に浮かび、それをその場で文章化する能力は必要です。
 私のノートは、キーワードと矢印と接続詞しかなく、私以外の誰も読めませんでした。
 「東大生のノートは例外なく美しい」という本があるそうですが、
 私は、例外に該当します。

Q13
1、新司法試験の配点変更は合格率で東大を凌駕する一橋、慶應、中央の3校を懲らしめるための高橋宏志氏のお灸だとの見解がまことしやかに人口に膾炙しています。この当否、適否、是非につき貴殿はどうお考えですか。
A13
 高橋先生に聞いてください。
 大変、馬鹿馬鹿しい意見です。
 東大ローの合格率が低いのは、受験勉強をしていないからではないでしょうか。

Q14
2、貴殿はごじぶんが資本の犬であるとのご自覚がありますか。
A14
 私は犬というより、熊に似ています。

Q15
3、貴殿はことわざの飼い犬に手を噛まれるよろしく資本を噛んだことがありますか。
投稿: 苅部徂徠 | 2009年1月27日 (火) 23時04分
A15
 資本を噛んだことはありません。

Q16
いわゆる「信託型ライツプラン」には,自ら委託者となる「直接型」と,間にSPCを介在させて委託者にさせる「SPC型」があると理解しています。しかしながら,間にSPCを介在させることに何の意味があるのか,いまいちわかりません。
形式的にでもSPCを委託者にすることで,直接型と比較して,何かメリットがあるとか,何らかのリスクヘッジになるのでしょうか?
投稿: 信託型ライツプラン | 2009年1月29日 (木) 10時27分
A16
SPC型の中身をみないと分かりません。
SPCを噛ませることにより、信託的譲渡が、会社の計算による自己株式の取得にならないようにしているんでしょうか?

Q17
株式会社の決算公告について質問があり、メールさせていただきました。
会社法第440条第3項の規定は、5年間提供を継続することを求めていますが、ホームページ等で決算公告をしている会社が、解散し清算結了する場合は、清算結了時まで提供が継続されていれば、法令を順守したことになるのでしょうか?
会社法第509条第2号で、第440条第3項が除外されていることからすると、清算会社にも同項の適用があり、5年間提供を継続することが必要にも読めますし、清算結了してしまえば(そもそも「清算会社」ではなくなり)、ホームページ等は当然閉鎖しますので、提供は必要ないようにも思います。
投稿: 夢男 | 2009年1月29日 (木) 15時57分
A17
清算結了により法人格が消滅するので、公告義務もなくなると考えるべきでしょう。
Q18
はじめまして、ペンギンと申します。くだらない質問ですがよろしくお願いします。
①、「通説」「多数説」などとありますが、ある説がどれに該当するかは法学会にて決められるのでしょうか?
②、最も権威ある学者数名が唱えるA説と、その他大勢の学者達が唱えるB説となら、どちらが有力になるのでしょうか?
③、会社法において最も権威ある学者はどなたでしょうか?

投稿: ペンギン | 2009年1月31日 (土) 21時55分
A18
① 教科書や論文を書く人の主観で決められます。
② A説です。
③ 「最も」という冠は、危険です。私に踏み絵を踏ませないでください(笑)。
権威のある先生でも、間違っていることだってあるし、
裁判所が、権威のある先生の意見書ではなく、権威のない先生の意見書を採用することも、頻繁にあります。
私は、誰が最も権威があるかより、誰の見解が一番説得的か、の方が大事だと思います。

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2009年1月22日 (木)

自己株式の消却

 現在、長男が中学受験の真っ最中で、願書の提出や受験の付き添いで、仕事以外の時間がふさがっております。

 自分が中学受験をしたころと比較して、問題が難しくなったように感じますが、テキスト等は飛躍的に良くなっており、レベルの高い勝負をしていますね。

 私は、中高一貫の良さを長男にも経験させたいと思い、小学3年生の頃から徐々に意識付けと勉強をさせてきました。なだめたり、すかしたり、怒鳴ったりの繰り返しの中、頑張ってきた長男の努力のことを思うと、本番間近の今、本当に「合格してもらいたい」という気持ちで一杯になります。

 長男もきっと不安を抱えていると思います。ただ、親も、期待と不安を抱えながら、ただ見守ること、励ますことしかできず、隔靴掻痒の思いで、アシストを続けなければなりません。
 これまで、司法試験受験生には
  「お前だけで受験してるんじゃない。親御さんが支えているからお前は受験できるんだ」
等と言って叱咤激励してましたが、自分が受験生の親になってみると、本当に親が支えなければならないことは多く、苦労の連続です。
 子供のために苦労するのは親の喜びですから、それ自体がつらいわけではありませんが、友人達が言っていた「自分が受験した方が気が楽」という言葉が胸に染みる今日この頃です。
 
 さて、本日は、自己株式の消却について、お話しします。

 先日、新聞で、最近、上場企業が自己株式の消却をする件数が増えたという趣旨の記事が載っていました。

 そういえば、最近、自己株式の消却の開示が多いような気がします。
 自己株式の消却の理由として上がっているのは
  資本効率の向上
  発行済み株式数の減少を通じた株主の利益の増進
等ですが、ほとんどは理由を書いていません。

 実際、機関投資家等の株主が、株式の希薄化を防止するという理由で上場会社に自己株式の消却を提言することもあり、上場会社側も、大量の自己株式を使用するあてもないので、消却してもかまわないと思って、消却しているのでしょう。

ただ、正直いえば、株主が、緊急の必要性がないにもかかわらず、自己株式の消却を求めるのは、法的には、無意味であるのみならず、株主の利益を自損することになります。

旧商法においては、自己株式の消却をすることにより、授権枠が縮減していたため、株式の希薄化を防止するために、買い入れた自己株式を消却する意味がありました。

しかし、会社法では、自己株式の消却をしても、授権枠が縮減しないため、消却では、株式の希薄化を防止することはできません。

たとえば、発行可能株式総数 1億株、発行済み株式総数5000万株の会社が、1000万株の自己株式を取得したとします。

この場合、会社が、新株の発行または自己株式の処分のための募集手続をすることができる株式数は、6000万株(=1億株-(5000万株-1000万株)となります。

他方、会社が、自己株式1000万株の消却を行い、発行済み株式総数が4000万株に減少した時点で、会社が、新株の発行のための募集手続きをすることができる株式数は、先ほどと同じ6000万株(=1億株-4000万株)です。

自己株式の消却により、発行可能株式総数が1000万株減少するという旧商法の解釈ならば、9000万株-4000万株=5000万株の授権枠となり、株式の希薄化の防止につながりますが、自己株式の消却では、発行可能株式総数は減少しないので、
 「株式の希薄化の懸念を払拭するために、自己株式の消却を行う」
というのは、間違いです。

 もし、その目的を達成したいのならば、発行可能株式総数を減少させる旨の定款変更決議を行い、登記すべきであり、そのような定款変更を行わずに、自己株式の消却を行うことが、株主の利益になるものとは思えません。

あえていえば、定款において、「自己株式の消却が行われた場合には、発行可能株式総数は、当然に減少する。」旨の定めがあれば、授権枠の減少を認める余地があるものの、それでも、発行可能株式総数の減少を行う旨の変更登記は必要となるでしょう。

そもそも、会社法では、新株の発行と自己株式の処分の募集手続は、同一であるため、代表取締役が勝手に自己株式の処分をすることはできませんし、違法な自己株式の処分であれば、株主が差し止めることも可能であり、株主の立場からすれば、どちらの方法によっても、既存株主に与える影響は同じです。

自己株式の処分という制度があるのは、募集手続や新株予約権の行使等株式を交付すべき場面において、発行済み株式総数や資本金を増加させることなく(=登記をすることなく)、株式を交付させるためです。

資本金が増えれば、登録免許税がかかりますし、新株予約権の行使等株式の交付が少数づつ行われる場合には登記手続きの手間と費用を回避するために、自己株式の処分が最良の方法です。

したがって、自己株式の処分は、会社のコスト削減のために有益な制度であって、株主に何の不利益ももたらしません。

もし、自己株式を多数抱えた会社が、資本金を増やすために新株発行をしたいと考えるのならば、その時点で自己株式の消却手続きをすれば、授権枠はそのままで新株発行をできる枠が広がります。手続きは、上場会社であれば、自己株式を記録した口座を管理する証券会社等に抹消の申請をすれば、すぐにできるので面倒なことは何もありません。

このように必要もないのに、自己株式の消却をすることは、株主にとって何のメリットもなく、会社が、自己株式の処分というコスト削減のためのオプションを奪うだけ行為といえるでしょう。

株式市場というのは、不思議なところで、法律的には誤った考えが、あたかも真実のように株価の上下に影響を与えます。自己株式の消却が、株式の希薄化を防止する効果が全くなくても、投資家が「きっとそういう効果があるだろう」と誤解すれば、株価の上昇に寄与するかもしれません(しかし、株式の希薄化を防止するというのは誤解ですから、誤解に基づき株式を購入したとしても、誰も守ってはくれません。)

法律的に正しいことが、経済的にも正しいとは限りませんが、自己株式の消却は会社の行為なのですから、開示においては、正確にその理由を説明しなければなりません。もし自己株式の消却の理由を開示するのならば、株主に「株式の希薄化が防止できる」というような誤解を与えないことが必要でしょう。
また、自己株式の消却をしても資本の効率化にはつながりませんし、それで株主の利益が増進することもありません。

株式の評価指標のうち、自己株式を含めた発行済株式総数を分母とするようなものは、自己株式を消却し、発行済み株式総数を減少させることにより、評価が上がることもあるでしょうが、それは、数字のマジック=見せかけであり、自己株式の消却により、株式の価値があがることはありません。

以上のように、必要もないのに自己株式を消却することは、会社にとって決してプラスとならないので、個人的には、あまりお勧めはできません。

(質問コーナー)
Q1
新司法試験に向けた学習について、質問させていただければ幸いです。
先生はよく、「基本書を通読したことはない(不要)」と仰っておりますが、その趣旨は、基本書を通読するのは、かえって有害だ、というところまで含んでいないとの理解でよろしいでしょうか。
最近、基本書を読むことの有用性を解く合格者の方も多く、場合によっては積極的に評価すべき点があるようにも思われます。(一貫した視点からの解釈に学ぶ、そこから応用力を養う、穴を作らない、等)
ただ、基本書を読むことが目的のようになって、これを通読することでかえって効率的な勉強が妨げられるならば、本末転倒である、という意味なのでしょうか。あるいは、もっと積極的に、基本書通読に落とし穴があることを指摘するものなのでしょうか。
投稿: 受験生 | 2009年1月 9日 (金) 17時23分
A1
1科目3時間で読めるようになるのであるならば、基本書だろうと、予備校のテキストだろうと何でも構いません。
また、最初に1読するのに、1科目50時間かかるような基本書は、通読は痛毒です。

Q2
昨年、恥ずかしながら法科大学院に落ちてしまい浪人が決定してしまいました。
学部の学歴がパッとせず、しかも今年上位といわれるローに受かっても学部浪人・ロー浪人という2年のマイナスがある状況ですが、英米資本の事務所を熱烈に志望しています。
このような経歴では上位ローに受かり、新司法試験に合格しても夢への道はかなり厳しい戦いになると予想しています。
そのため、この1年を使って法律以外にアピールできる武器を手に入れたいと思っているのですが具体的にはどのようなものが武器となりえるでしょうか。
先生のブログでTMIにおいては「一芸に秀でた」人は強いというアドバイスを参考にしていますが、なかなか思いつかず考えあぐねています。
TOEICは900点台まであと少しなので、それ以外に何かありましたら是非アドバイスをお願いいたします。
投稿: 受験生 | 2009年1月11日 (日) 07時53分
A2
まず、ローに合格してください。
ローに入ってから、英語の勉強をしてください。

Q3
大変お世話になっております(ブログ上で)。
会社法100問についてご質問させていただきます。
P525の(四)(1)の第2段落「間接取引にも該当しない」
とありますが,P355(三)の第2段落の「監査役は取締役と異なり,…業績連動報酬を受け」ないから,監査役の会社との取引は間接取引に当たらないとあります。
ということは,P525のところでは業績連動報酬を強調して間接取引に当たると認定することは可能ですか?
仮に可能なら,自社の取締役が相手方会社の取締役である場合,利益相反の間接取引にあたるのが有力なのでしょうか。それとも当たらないのが有力でしょうか。有力かどうかが不明であれば,葉玉先生のご意見で結構です。
投稿: こんにちは | 2009年1月13日 (火) 00時12分
A3
相手方の単なる取締役なら、間接取引にはなりません。
業績連動報酬であったとしても、原則として間接取引にはなりません。
ただ、取締役が、会社の利益の全部を報酬として取るような業績連動報酬であれば、100%株主のえる利益とあまりかわらなくなるので、間接取引とする余地が出てくるかもしれません。

Q4
訴外Aは、本件建物をXから賃借していたが、AはXの承諾を得ることなく、本件建物の賃借権をYに転貸し、現在はYが本件建物に居住している。Xは、Aの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除し、Yに対して建物収去土地明渡請求の訴えを提起した。この訴訟において、「Xの同意」ならびに「賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情」という事実の有無が争点となった場合に、
これらの事実についての証明責任の所在について、どのように論じればよいのでしょうか??
投稿: | 2009年1月13日 (火) 17時54分
A4
質問の趣旨がよく分かりません。訴訟物を特定し、法規説に従い、条文から淡々と証明責任を論ずればよいのではないでしょうか。

Q5
本日、買収防衛策のセミナーを受講させていただきました。
非常にわかりやすいご説明をいただき、ありがとうございました。
さて、ひとつ確認させていただきたいことがございます。
買収防衛策発動時には株主総会決議を得ておくことで適法性を高めうる、
というご説明があったかと思いますが、
大規模買付者が東京高裁4類型に該当すると考えられるとして、
取締役会で新株予約権無償割当て決議をした場合に、
裁判所で差し止められるリスクは高いとお考えですか?
投稿: msm | 2009年1月13日 (火) 22時34分
A5
4類型に該当することが疎明できれば、取締役会の決議でも差し止めを受けないでしょう(ただし、著しい財産的損害を与える場合は差し止められる可能性はあります)。

Q6
内部統制(全社統制)に関して、監査役との間に見解の相違があります。
内部統制のQ&A3では、「監査役が監査役の取締役職務執行に対する監視機能の状況について、監査人(監査法人)の確認を受ける。」とされていますが、ここで「確認を受ける」ということは、その前提として、監査役には監査人から確認を受ける事項について整備の責任があり、その根拠は、会社法施行規則上の「監査役に監査役監査の環境整備責任がある」旨の規定(100、105②)である、と考えています。
また、監査人(監査法人)から確認を受ける内容はQ&A3の(注)に記載されており、この点は全社統制の評価項目の一部に取り込まれています。
そこで、監査役が実際に整備を担当している監査役規程等の整備状況の評価の一部を監査役に依頼したところ、「内部統制整備の責任は取締役にあり、監査役が内部統制の評価に関わるわけにはいかない。」とのことでした。
上記回答の根拠には「金商法上、内部統制整備に監査役が責任を負うとは書いてない。」という主張があるようですが、冒頭のような考え方からするとこの主張には実質的に意味がなく、また、監査役が評価に関わることは内部統制整備の責任が取締役にあることと矛盾するものでもなく、かつ実際に整備を担当している監査役こそ整備状況を最も把握しており、全社統制上、監査役監査の環境整備に関して監査役も取締役の評価を受ける立場にある以上、むしろ環境整備の状況について表明すべき立場にあるのではないか。と思われますが、いかがでしょうか?
※弊社では整備状況の評価については、整備担当者による自己評価+独立的モニタリングで行うこととしています。
投稿: hiro | 2009年1月14日 (水) 11時26分
A6
監査役は、会社法上、内部統制の構築義務を負っていません。会社法施行施行規則100条等は、取締役会が内部統制を構築する上で、監査役の監査が適切に行いうる体制を整備することを求めているだけです。
むしろ、監査役が内部統制の構築に携わることは、監査役による内部統制監査が自己監査になってしまうため、避けるべきです「監査役監査の環境整備に関して監査役も取締役の評価を受ける」という点は、やや誤解があり、環境整備は取締役が行い、その体制を自己評価すべきであり、その環境において監査役の監査が機能しているかどうかが評価の対象になるだけであると考えます。
それから、金商法は、内部統制整備義務を課したものではないので、監査役のみならず、取締役ですら、金商法上の義務・責任を負ってはいません。

Q7
2008年7月1日付のブログ(競業避止義務における名義説、計算説に関して論じた部分があるもの)に関連して、質問させていただければ幸いです。

その1:次のような事例で、名義説、計算説から、自分なりに検討したのですが、葉玉先生はどのように考えられるでしょうか。念のため、自分は、現在は計算説に立ちつつも、名義説のほうが実は優れているのではないかと思えてきたところ、単純な事例ながら、計算説・名義説のいわんとしているのは、実は何なのか(バリエーションがあるのでは)、と思い始めているところです。

事例「A社の取締役Bが、C社の取締役となって、C社の名義において、A社と競業取引となる取引を行ったが、Bは、C社の代表取締役Dの夫であったような場合。」

名義説①:C社が名義であるので、取引の結果、Bが利益を得たとしても、規制の対象とならない。Bは、自分が利益を得られると思いつつも、法的効果としては、C社に帰属させようと思っているので。
名義説②:この場合、BとDは、経済的一体性があるので、名義説によっても、実質的には、B名義と同視できる。
計算説①:Bが実質的な損益の帰属主体となるので、規制の対象となる。
計算説②:Bは、Dとは経済的に一体的とはいえない経済・生活実態を有しているので(なお、別産制)、計算説にたっても、承認が必要とはいえない。
A7
BがC社のために取引を行っているのならば、Bは、C社の代理人として取引をしているのではないでしょうか。その際、契約書に「C社代表取締役D」と当事者名が表記されているとしても、意思表示をしているのは、あくまでもBなので、機関方式でC社に効果を帰属させる契約をしているに過ぎません(代表取締役Dが妻かどうかは、全く関係ありません)。そして、当該取引は、第三者C社のためになした取引となります。
 なお、計算説は①②とも成り立たないのではないでしょうか?

 計算説が意味をなすとすれば、「C社に効果帰属するように見えるけれども、C社の帳簿には取引の結果が何も記載されておらず、取引によって得たお金も、Bが公私混同で使いまくっている。」というような場合に、「第三者のために」ではなく、「自己のために」とする点にあるのではないでしょうか。ただ、名義説に立っても、C社という表記が、単にB個人の屋号として使われているだけで、その法的効果がBに帰属すると認定されるような場合は、「自己のために」になるでしょう。

Q8
その2:名義説が優れている点の一つとして、形式的な基準を提供しているところと思われます。(承認を得るかどうか、事前に判断する必要がある。)その点、計算説は、実質的な損益の帰属主体をみるので、競業避止規制が、予防的・形式的に規制を課したとするならば、名義説をとるのが簡明とも思われます。そこで、逆に計算説の立場にたったとすると、どのような反論が考えられるでしょうか。
投稿: まんじゅう | 2009年1月14日 (水) 23時34分
A8
計算説は、反論できないんじゃないでしょうか。

Q9
先ほどの事例、「A社の取締役Bが、C社の取締役となって、C社の名義において、A社と競業取引となる取引を行ったが、Bは、C社の代表取締役Dの夫であったような場合。」で、仮に、Bは、C社の代表取締役Dの夫ではなく、ただの取締役であったとしても、C社からは報酬を得られます。

そこで、計算説にたったとしても、(間接的に)報酬を得られることで、損益の帰属主体とみられるのでしょうか。若干、主体というにはためらわれます。(規制が広くなる)。他方、そうでないとした場合、競業避止義務をかけられないとなれば、A社の取締役であるので、A社の営業秘密も知っており、C社に間接的に貢献して、A社に損害を与える可能性もあるので、やはり、規制すべきようにも思われます。立法趣旨としては、いずれの説に立つかは別として、取締役が、自己・第三者に、いかなる程度で損益が帰属するならば、規制の対象とする趣旨である、とお考えでしょうか。このような場合には、忠実義務違反のみで捕捉しようとしているのでしょうか。
投稿: まんじゅう | 2009年1月15日 (木) 00時06分
A9
大事なのは、Bが取引(契約)をしたのか、Bが単に取締役に就任しているに過ぎないのか、であって、論点がずれているように思います。

Q10
司法試験合格後に税理士試験か公認会計士試験のどちらかを受験しようと私は考えています。
葉玉先生なら、どちらを勧めますか?
投稿: こんちゃん | 2009年1月15日 (木) 05時57分
A10
どちらでもいいと思います。

Q11
直接損害・間接損害について、ご質問させていただければ幸いです。直接的には、百問27問の問題です。
いちおう、ネットで検索して、2006年1月7日のブログに、間接損害も含まれる、その損害は、端的には株価の下落である、とありました。

そこで、間接損害について、もしかしたら定義の問題に過ぎないかもしれませんが、(百問27問を下敷きにして)

「親会社Pが、子会社Qに不当な影響力を行使して、廉価で製品を買い入れ、Q社に損害を与えた場合、P社(および代表取締役・取締役)との関係では、Q社の株主Aに生じた損害は、直接損害になるのか、間接損害になるのか。」

ということで頭を悩ませています。
Q社の取締役に任務懈怠があれば、間接損害となりそうですが、P社にとってみれば、Q社の株主は、第三者であり、Q社に株価の下落が生じても、P社への代表訴訟によるわけにもいかず、「P社」との関係では、直接損害になるようにも思われます。

そうすると、一般の教科書で、間接損害につき、「取締役の悪意・重過失による任務懈怠から会社が損害を被り、その結果第三者に損害が生ずる場合」とありますが、ここでの、「会社」は、任務懈怠をした取締役が属する「会社」であって、「第三者」も、当該「会社」が損害を被ったことにより、損害が生じた第三者であって、「他の会社」に損害を与え、当該「他の会社」の株主に損害が生じた場合は、間接損害にあたらず、「直接損害」にあたる、と考えることになりそうです。

議論の実益、前提に誤解があるかもしれませんが、考え方をご教示いただければ幸いです。
投稿: 論文は辛いよ | 2009年1月15日 (木) 15時47分
A11
Q社の取締役の責任を追及する場合には、Q社が損をした結果、Q社の株式の価値が下落したのならば、Q社の株主にとっては、間接損害です。
P社の取締役に対して第三者責任を追及する場合には、直接損害です。

Q12
刑法の学説は、行為無価値と結果無価値に大別されますが、実務ではどちらに立ってるのでしょうか。

法律の勉強を始めて、約1年になります。
実務は行為無価値だと聞いていましたが、実務家は行為無価値や結果無価値にとらわれることなく、妥当な結論を追求しているっていう人もいます。

個人的には、学説(理論)は虫眼鏡のような、物事を分析するための道具であり、行為無価値的な立場から検討している(=事実を行為無価値に合わせるのではない)と想像します。
投稿: | 2009年1月16日 (金) 21時58分
A12
行為無価値という言葉は判例にでてきません。
結果無価値も、行為無価値も、学者が自説を説明するときの説明の仕方に過ぎません。
ただ、実務は、結果のみならず、行為の悪質性も違法性の度合いとして評価しているので、行為無価値の方が説明しやすいでしょう。

Q13
完全子会社が債務超過の場合に、完全親会社と合併する場合のことで
御教授ください。増資で債務超過を解消してから合併する場合と債務超過の
まま合併する場合でそれぞれメリット・デメリットを教えてください。
なお、簡易合併ではありません。
投稿: 不景気 | 2009年1月17日 (土) 23時00分
A13
増資するなら、キャッシュが必要になりますし、登録免許税が高くつくでしょう。
キャッシュを出すのならば、簡易合併にできるような方法を採るべきで、あまり増資するメリットはないのではないでしょうか。昔は、実質債務超過会社は合併できないとかいう議論があったので、解消してましたが。

Q14
>30秒のキスはしてもらえたのでしょうか?
>さらに、その先に良いことはあったのでしょうか?
>教えて下さい!
>投稿: 受験生 | 2008年12月25日 (木) 18時33分
>A1
>この質問の回答には、チャージが必要です

この質問のチャージ料は、いくらですか?
面白そうなので、100円だったら送るので、100円でよろしい場合は、
振込先口座も合わせてご回答して下さい。
投稿: 質問者 | 2009年1月18日 (日) 14時49分
A14
私のチャージは、1時間4万2000円で、2時間程度必要になります。
聞くも涙、語るも涙の事件なので。

Q15
略式合併について質問です。
784条1項本文における略式手続において総会特別決議が不要とされることの例外として同ただし書が規定されていることの意味は,譲渡制限への定款変更と同じ(=特殊決議を要する)だからと説明されており,それは理解できましたが,

796条1項本文の例外である同ただし書について,その趣旨がよくわかりません。
基本書には,非公開会社が株主割当以外の新株発行をするのと同じだから,という説明があったのですが,非公開会社が第三者割当をする場合にも,特別決議で足りるのが通常のはずで,なお承認総会を要求しても,承認されることは明らかであり,あえて特別決議を要するとする意味はないように思えるのですが…
投稿: ビギナー | 2009年1月18日 (日) 20時36分
A15
著しく不当な決議が決議がされそうなときは、略式よりも少数株主にとって有利です。
取消事由があれば、合併無効事由にもなります。

Q16
この度、地方国立LSに未修枠で進学することとなりました。
そして合格者のブログ等で情報収集した結果、入学後は判例百選等判例を中心とした勉強をしようと考えております。
そこで質問です。
効率よく学習するにはどのように判例を読み進めるのがよろしいでしょうか?
できればオウム、キリン、サイの力を前提に、①初学者②中級者③上級者の利用法に分けてご教授ください。
もし過去に書いてある場合は「○年○月あたりに書いてます」と教えていただけませんか?過去ログも読んだのですが見逃した可能性があるので。
よろしくお願いします。
投稿: noah | 2009年1月19日 (月) 01時26分
A16
判例だけでは足りませんが、判例を勉強するのならば、判例百選を勉強すればよいのではないでしょうか。
ただし、解説は読む必要はないかも知れません。
民法は、判例六法とかに書いてある短いものを数多くこなすほうがよいかもしれません。

Q17
株主総会における定足数等について質問させて下さい。

 代表取締役である筆頭株主が死亡し、相続人は相続放棄を行なうかどうかの熟慮期間中のため、名義書換も、議決権行使の代表者届も行なわない場合、

1.上記の状態のまま、死亡者あての招集通知を送って欠席扱いとした場合、会社は善意無重過失と言えないので免責されないことになりましょうか?
2.上記の場合も、死亡者の株式は「議決権を行使することができる株主」として扱わざるを得ず、定足数には算入するしかない。従って、他の株主の議決権で定足数が満たされない場合は、議決ができないことになりましょうか?
3.上記1、2の結論は、実際に相続放棄が行なわれ、相続人が不存在となり相続財産管理人が未選任の場合も同じことになりましょうか?

投稿: genmai | 2009年1月20日 (火) 06時54分
A17
1 株主名簿記載の住所に送れば足ります。
2 相続人が相続している以上、議決権を行使することができる株主となり、定足数に算入されます。他の株主で定足数を充たさないならば、議決はできません。
3 同じです。

Q18
葉玉先生がロータス21さんから出される予定のDVDは、
いつ頃発売になるのでしょうか??
ロータス21のHPではかれこれ半年ほど編集中になっております。
地方のローに通っていますと、
どうしても会社法や知的財産系など新しい法律の授業がいまいちになり、
理解度も浅くなります。
選択科目は労働法とかをとればいいのですが、
会社法は避けて通れません。

そこで、先生のDVDで予習・復習しようと考えています。
来年度の授業のために聞くには2月中に手元に欲しいのですが、
それくらには発売されるのでしょうか?
また、内容は実務よりでローの授業・新試対策には向かないのでしょうか?

先生やロータスさんの懐事情もあるでしょうが、
購入者の何割かはロー生だと予想されますので、
貧しいロー生の懐にありがたい価格でとうれしいです。
投稿: | 2009年1月20日 (火) 14時54分
A18
お待たせしております。2月中は難しいと思いますが、もうほとんどできあがっています。
内容は実務よりですが、司法試験受験生も聞くべき事項がたくさん入っています。

代金はロータスさんが決めるので、きっとロー生に優しい価格も設定すると思いますが、あまりダンピングはできないかもしれまえん。

Q19
葉玉せんせー、あけましておめでとうございます。

某国立大未修一年の者です。
さて、今日はTMIの大御所、升永英俊先生についての質問です。
以前に升永先生のお話を伺ったことがあり、ものすごく情熱的で、半端じゃない人だなーと思っていたのですが、弁護士としては、イチロー並に凄い方ですよね。

TMIの同僚として、葉玉先生がプロの視点で、間近でごらんになっていて、どんな努力をしたらあそこまでいけるのか、とか、何が普通の弁護士と違うのか、とか、と升永先生の凄さについて感じられた点があれば、その辺をお教えいただけないでしょうか。

私が、世界で二番目に尊敬し、目標としている弁護士が升永先生なので、良かったら葉玉先生のコメントをお聞きしたいです。

(ちなみに、一番は、もちろん葉玉先生でございます( ̄▽ ̄)。)

投稿: はるくん | 2009年1月21日 (水) 15時14分
A19
私も知りたいぐらいです。
まずは、忙しいときは、事務所で寝袋で寝ることから見習おうかと思っています(笑)。
冗談はさておき、たぶん、升永先生の強さは、「信念の強さ」であるように思います。
他人と比較して自分を評価するのではなく、自分の信念に従って主張を組み立てる強さです。

Q20
株券電子化について質問いたします。
信託銀行が株主から上場企業の株券を提出された場合、無効になったからといって穿孔して細断廃棄してしまってもよいものでしょうか。あるいは株券はあくまでも株主の所有物なのだから返却すべきでしょうか。ご教示ください。
投稿: さかしら | 2009年1月21日 (水) 21時06分
A20
どういう経緯で株主から株券を提出を受けたかによります。
1年後に廃棄するのが無難でしょう。

Q21
 いつも楽しく拝見しております。上場会社の一担当者です。
 以前、インサイダー取引に関して、
「売買を禁止された役職員の不満のはけ口(代替措置)が必要」
とおっしゃってましたが、具体的にはどのようなものでしょうか。
 その後の世の中の状況も大して変わっていませんので、
会社としての実のある取組みの必要性を感じる今日この頃なのですが。。。
 チャージ料もお支払いできず不躾で申し訳ございませんが、
よろしくご教示くださいませ。
投稿: 悩んでいます。 | 2009年1月21日 (水) 21時39分
A21
すいません。代替措置については、飯のタネなので、公開は差し控えさせていただきます。

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